JPWO2018034111A1 - フィブロイン様タンパク質を含むコンポジット成形組成物及びその製造方法 - Google Patents

フィブロイン様タンパク質を含むコンポジット成形組成物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

天然の、又は、人工的に改変されたフィブロイン由来タンパク質に、βシート構造を有するペプチド又はポリアミノ酸を配合させることにより向上した引張強度、ひずみ及び靱性等の特性を有するコンポジットフィルム、コンポジット繊維等のコンポジット成形組成物、該コンポジット成形組成物を製造する方法、並びにフィブロイン由来タンパク質を含むコンポジット成形組成物の物理的特性を向上させる方法を提供する。

Description

本発明は、フィブロイン様タンパク質を含むコンポジット成形組成物及びその製造方法に関する。
フィブロインからなる天然のクモの糸は、引張強度(tensile strength)、靱性(toughness)及び伸展性(extensibility)等の物理的な変化に対する特性に優れ、例えば、靱性は同一重量の鉄と比較して約5倍を有するポリペプチド繊維である。また、耐熱性にも優れ、さらに、ポリペプチドで形成されているところから、高い生体適合性(biocompatibility)及び生分解性(biodegradability)を有する。しかし、天然糸を産業上利用するカイコと相違し、クモは大量飼育が困難であるところから、クモの糸を模倣した人工合成繊維を製造し、前記物理的な変化に対する特性、並びに、生体適合性及び生分解性を有する糸、敷布等の素材や材料への応用が試みられている(特許文献1〜5)。しかし、上記の特性について天然のクモ糸に匹敵する人工繊維の製造は、成功していない。
天然のクモ糸は、その構造中にβシート構造を形成するポリアラニンとグリシンを多く含む極性領域とが繰り返されてコア部分となり、その両側に高度に保存された非反復型のアミノ末端とカルボキシル末端ドメインが配置されることにより、ランダムコイル状構造、βシート構造及びへリックス構造を有し、これらの構造の混在が天然のクモ糸の優れた特性の理由と考えられ、その構造的特性が検討されている(非特許文献1〜3)。また、クモの体内で紡糸される際、通常のタンパク質の場合と相違し、クモタンパク質は高濃度で貯蔵されている際には高い可溶性を示すが、必要に応じて極めて丈夫な繊維へと変化する(非特許文献2)。しかし、構造的特性やクモ糸の産生機構が必ずしも明らかにされていない。
本発明者は、ジョロウグモの牽引糸腺における牽引糸の製造過程を明らかにし、クモ糸フィブロインタンパク質のβシート構造による顆粒構造の形成が、クモ糸の物理的特性の発揮に重要であることを明らかにした(特許文献6)。
国際公開公報WO2007/078239 国際公開公報WO2010/123450 国際公開公報WO2011/112046 国際公開公報WO2012/165476 国際公開公報WO2013/065650 国際公開公報WO2017/030197
Numata Kら、Soft Matter 2015年6月30日、11、6335-6342 Hagn Fら、Nature. 2010; 465(7295): 239-242 Teule Fら、Nature Protocols 2009; 4: 341-355
天然のクモの牽引糸のクモ体内での産生機構及び高い特性をもたらす要因を基に、この機構を人工繊維の製造に応用することにより、高い強度及び靱性等の特性を有するフィブロイン様タンパク質を含むコンポジット成形組成物、該組成物を製造する方法、及び、該製造方法で製造されるコンポジット繊維、コンポジットフィルム及びコンポジット樹脂等のコンポジット成形組成物、並びに該コンポジット成形組成物の物理的特性を向上させる方法を提供する。
本発明者らは、天然フィブロインタンパク質、又は、人工的に製造されたフィブロイン様タンパク質に、βシート構造を有するポリペプチド又はポリアミノ酸を配合し、成形することにより製造したコンポジット成形組成物が、βシート構造を有するポリペプチド又はポリアミノ酸を配合しない成形組成物と比較して、優れた引張強度、ひずみ及び靭性等の物理的特性を発揮することを見出し本発明を完成させた。
具体的には、本発明は、フィブロイン由来タンパク質と、βシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸とを含む組成物を提供する。
また、前記組成物は、コンポジット成形組成物であって、フィブロイン由来タンパク質にβシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸が配合され、成形されている組成物であってもよい。
前記コンポジット成形組成物は、前記ポリペプチド及び/又はポリアミノ酸由来のβシート構造が保持されているコンポジット成形組成物である場合がある。
前記コンポジット成形組成物は、コンポジット繊維、コンポジットフィルム、コンポジットゲル又はコンポジットモールド成形体から選択されるコンポジット成形組成物である場合がある。
また、本発明は、フィブロイン由来タンパク質にβシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸が配合されたコンポジット成形組成物であって、
該コンポジット成形組成物は、コンポジット繊維、コンポジットフィルム又はコンポジットゲルから選択され、
(i) フィブロイン由来タンパク質と、βシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸とを溶解したドープ液を調製するステップ、
(ii) 前記ドープ液よりコンポジット成形組成物を成形するステップ、
を含む製造方法で製造されるコンポジット成形組成物を提供する。
さらに、本発明は、コンポジット成形組成物であって、該コンポジット成形組成物が、コンポジット繊維又はコンポジットフィルムから選択され、
前記ステップ(i)、(ii)に加えて、さらに、
(iii) 前記(ii)で得られたコンポジット成形組成物を溶媒中で延伸し、乾燥するステップ、
を含む製造方法で製造される前延伸コンポジット成形組成物を提供する。
また、本発明は、コンポジット成形組成物であって、前記コンポジット成形組成物は、モールド成形体であって、
(i) フィブロイン由来タンパク質と、βシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸とを混合し、混合物を調製するステップ、
(ii) 前記混合物に圧力を負荷し、加熱するステップ、
を含む製造方法で製造されるコンポジットモールド成形体であるコンポジット成形組成物を提供する。
本発明のコンポジット成形組成物において、前記フィブロイン由来タンパク質が、
(i) 天然のフィブロイン由来タンパク質、及び/又は、
(ii) 改変されたフィブロイン由来タンパク質
から選択される場合がある。
本発明のコンポジット成形組成物において、前記天然のフィブロイン由来タンパク質が、絹フィブロイン由来のシルクタンパク質(シルクフィブロインタンパク質)、クモ糸フィブロイン由来のクモ糸タンパク質(クモ糸フィブロインタンパク質)、及びホーネットシルクフィブロイン由来のホーネットシルクタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種である場合がある。
本発明のコンポジット成形組成物において、前記改変されたフィブロイン由来タンパク質が、下記式(I)で表されるドメイン配列を含む改変されたフィブロイン由来タンパク質であり;
Figure 2018034111
ただし、前記ドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、少なくともREP中の1又は複数のグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されており、グリシン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列を有する、改変フィブロインタンパク質:
[式I中、
(A)モチーフは2〜20アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、かつ、
(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が40%以上であり、
REPは2〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、
mは2〜300の整数であり、
複数存在する(A)モチーフは、相互に同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよく、
複数存在するREPは、相互に同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい]
コンポジット成形組成物である場合がある。
本発明のコンポジット成形組成物の前記改変されたフィブロイン由来タンパク質において、前記ドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、REP中のGGX及びGPGXX(ただし、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を表す。)から選ばれる少なくとも1つのモチーフ配列において、少なくとも1又は複数の当該モチーフ配列中の1つのグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたことに相当するアミノ酸配列を有し、かつグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたモチーフ配列の割合が、全モチーフ配列に対して、10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、もっとも好ましくは40%以上である場合がある
前記改変されたフィブロイン由来タンパク質において、N末端側からC末端側に向かって、隣り合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのREPのアミノ酸残基数を順次比較して、アミノ酸残基数が少ないREPのアミノ酸残基数を1としてとき、他方のREPのアミノ酸残基数の比が2〜3.5となる前記隣り合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのアミノ酸残基数を足し合わせた合計値をxとし、前記ドメイン配列の総アミノ酸残基数をyとしたときに、x/y(%)の最大値が20%以上である場合がある。
コンポジット成形組成物は、前記式(I)で表される改変されたフィブロイン由来タンパク質が、配列番号1〜19で表されるアミノ酸配列を有する改変されたフィブロイン由来タンパク質である場合がある。
本発明のコンポジット成形組成物において、前記フィブロイン由来タンパク質が、前記フィブロイン由来タンパク質のアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上の相同性を有するフィブロイン由来タンパク質である場合がある。
本発明のコンポジット成形組成物において、前記βシート構造を有するポリアミノ酸がポリアラニンである場合がある。
本発明のコンポジット成形組成物において、前記ポリアラニンが、ライナー型ポリアラニン(L-polyAla)又はテレケリック型ポリアラニン(T-polyAla)から選択される場合がある。
また、本発明は、フィブロイン由来タンパク質にβシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸が配合された、コンポジット繊維、コンポジットフィルム、コンポジットゲルから選択されるコンポジット成形組成物の製造方法であって、
(i) フィブロイン由来タンパク質と、βシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸とを溶解したドープ液を調製するステップ、
(ii) 前記ドープ液を紡糸又は延伸することにより前記コンポジット成形組成物を製造するステップ、
を含む製造方法を提供する。
さらに、本発明は、フィブロイン由来タンパク質にβシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸が配合された、モールド成形体のコンポジット成形組成物の製造方法であって、
(i) 粉状のフィブロイン由来タンパク質と、粉状のβシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸とを混合し、混合体を調製するステップ、
(ii) 前記混合体に圧力を負荷し、加熱するステップ、
を含む製造方法を提供する。
さらに、本発明は、前延伸コンポジット成形組成物の製造方法であって、
(i) 前記の製造方法で製造されたコンポジット成形組成物を溶媒中で延伸するステップ、及び、
(ii) 延伸されたコンポジット成形組成物を乾燥させるステップ、
を含む製造方法を提供する。
本発明の製造方法において、前記フィブロイン由来タンパク質が、
(i) 天然のフィブロイン由来タンパク質、及び/又は、
(ii) 改変されたフィブロイン由来タンパク質
から選択される場合がある。
本発明の製造方法において、前記天然のフィブロイン由来タンパク質が、絹フィブロイン由来のシルクタンパク質(シルクフィブロインタンパク質)、クモ糸フィブロイン由来のクモ糸タンパク質(クモ糸フィブロインタンパク質)、及びホーネットシルクフィブロイン由来のホーネットシルクタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種である場合がある。
本発明の製造方法において、前記改変されたフィブロイン由来タンパク質が、下記式(I)で表されるドメイン配列を含む改変されたフィブロイン由来タンパク質である場合がある;
Figure 2018034111
ただし、前記ドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、少なくともREP中の1又は複数のグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されており、グリシン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列を有する、改変フィブロインタンパク質:
[式I中、
(A)モチーフは2〜20アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、かつ、
(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が40%以上であり、
REPは2〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、
mは2〜300の整数であり、
複数存在する(A)モチーフは、相互に同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよく、
複数存在するREPは、相互に同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい]。
本発明の製造方法の前記改変されたフィブロイン由来タンパク質において、前記ドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、REP中のGGX及びGPGXX(ただし、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を表す。)から選ばれる少なくとも1つのモチーフ配列において、少なくとも1又は複数の当該モチーフ配列中の1つのグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたことに相当するアミノ酸配列を有し、かつグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたモチーフ配列の割合が、全モチーフ配列に対して、10%以上、20%以上、より好ましくは30%以上、もっとも好ましくは40%以上である場合がある。
本発明の製造方法の前記改変されたフィブロイン由来タンパク質において、N末端側からC末端側に向かって、隣り合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのREPのアミノ酸残基数を順次比較して、アミノ酸残基数が少ないREPのアミノ酸残基数を1としてとき、他方のREPのアミノ酸残基数の比が2〜3.5となる前記隣り合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのアミノ酸残基数を足し合わせた合計値をxとし、前記ドメイン配列の総アミノ酸残基数をyとしたときに、x/y(%)の最大値が20%以上である場合がある。
本発明の製造方法において、前記式(I)で表される改変されたフィブロイン由来タンパク質が、配列番号1〜19で表されるアミノ酸配列を有する改変されたフィブロイン由来タンパク質である場合がある。
前記フィブロイン由来タンパク質が、配列番号1〜19で表されるフィブロイン由来タンパク質のアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上の相同性を有するフィブロイン由来タンパク質である場合がある。
本発明の製造方法において、前記βシート構造を有するポリアミノ酸がポリアラニンである場合がある。
本発明の製造方法において、前記ポリアラニンが、ライナー型ポリアラニン又はテレケリック型ポリアラニンから選択される場合がある。
さらに、フィブロイン由来タンパク質に、βシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸を配合させることにより、コンポジット成形組成物の物理的特性を向上させる方法を提供する。
本発明は、さらに、前記コンポジット成形組成物の物理的特性を向上させる方法に、さらに、前記コンポジット成形組成物を溶媒中で延伸後、乾燥させることにより、コンポジット成形組成物の物理的特性を向上させる方法を提供する。
前記コンポジット組成物の物理的特性を向上させる方法において、前記物理的特性の向上が、引張強度の増加、ひずみの増加及び/又は靭性の増加である場合がある。
高い靱性、ひずみ(破断点変位)及び引張強度(応力)等の物理的特性を有するフィブロイン様ポリペプチド繊維を含むコンポジット繊維、コンポジットフィルム、コンポジットゲル等のコンポジット成形組成物、及びその製造方法を提供できる。
改変フィブロインのドメイン配列を示す模式図である。 天然由来のフィブロインのx/y(%)の値の分布を示す図である。 天然由来のフィブロインのz/w(%)の値の分布を示す図である。 本発明のコンポジット成形組成物であるコンポジット繊維を紡糸するためのドープ液からの紡糸方法の概略を表す図である。 天然カイコ・フィブロインタンパク質にL-polyAla又はT-polyAlaを各種の割合で配合させて製造したコンポジットフィルムを100%の延伸率で前延伸した前延伸コンポジットフィルムについて、引張強度、ひずみ及び靭性の変化を測定した結果を表す図である。 改変クモ糸フィブロインタンパク質であるADF3 Kai-noNRにT-polyAlaを5wt%の割合で配合させて製造したコンポジットフィルムを、メタノール中で各種延伸率で延伸して製造した前延伸コンポジットフィルムについて、引張強度、ひずみ及び靭性の変化を測定した結果を表す図である。 改変クモ糸フィブロインタンパク質であるADF3 Kai-noNRにL-polyAla又はT-polyAlaを各種の割合で配合させて100%の延伸率で前延伸して製造したコンポジットフィルムについて、広角X線散乱(WAXD)を測定した結果を表す図である。
1.コンポジット成形組成物
1−1.非延伸コンポジット成形組成物
本発明の実施形態の一つは、フィブロイン由来タンパク質と、βシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸とを含む組成物であり、特に、前記組成物は、コンポジット成形組成物であって、フィブロイン由来タンパク質にβシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸が配合され、成形されている組成物である非延伸コンポジット成形組成物である。
本非延伸のコンポジット成形組成物を用い、後に記載する前延伸コンポジット成形組成物を製造することができる。
前記コンポジット成形組成物の例としては、前記ポリペプチド及び/又はポリアミノ酸由来のβシート構造が保持されており、前記コンポジット成形組成物は、コンポジット繊維、コンポジットフィルム、コンポジットゲル又はコンポジットモールド成形体から選択されるコンポジット成形組成物が挙げられる。
(1)フィブロイン由来タンパク質
フィブロインは、昆虫とクモ類等のシルクを構成し、その70%を占める繊維状のタンパク質の総称として知られる。本明細書において、「フィブロイン」とは、昆虫とクモ類の天然のシルク、及び、これらの天然のシルクの組成及び特性を模倣又は指向した人工的に製造される人工的なシルクも含む。本明細書において、「フィブロイン」は、下記のスピドロインI及びII等のスピドロインタンパク質も「フィブロイン」に含まれるが、これらのクモ糸由来のフィブロインのみならず、カイコの絹糸に由来するフィブロイン等も含まれる。天然のフィブロイン以外でも、フィブロインは、遺伝子組換え法により、例えば、所望のアミノ酸配列をコードする核酸配列を製造し、これを発現ベクターに組み込んで、組換え発現ベクターを公知の方法で作製し、細菌、酵母、哺乳動物細胞、植物、昆虫細胞等の適当な宿主に導入して形質転換体を作製し、これらを単離精製して利用することができる(国際公開公報WO2012/165476等)。また、フィブロインの一部は、商業的に利用可能であり、例えば、これらを入手して使用できる。
本発明に係るフィブロイン由来タンパク質は、特に限定されるものではなく、天然のフィブロインであってもよいし、或いは遺伝子組換え技術により微生物等で製造したものや合成により製造した、所謂天然フィブロイン由来のタンパク質であってもよい。
また、そのようなフィブロイン由来タンパク質は、例えば、絹フィブロイン由来のシルクタンパク質(シルクフィブロインタンパク質)、クモ糸フィブロイン由来のクモ糸タンパク質(クモ糸フィブロインタンパク質)、及びホーネットシルクフィブロイン由来のホーネットシルクタンパク質からなる群より選択される1種以上であってよい。これらの中でも、クモ糸フィブロイン由来のクモ糸タンパク質が好適に用いられる。
本明細書において、「フィブロイン由来のタンパク質」とは、前記の昆虫とクモ類等の天然由来のフィブロインを構成するタンパク質、これらの天然のタンパク質以外の、例えば、遺伝子組換え法により人工的に製造されるフィブロインと構造及び特性が類似するタンパク質が含まれる。
フィブロインの構造が類似するとは、天然のフィブロインのアミノ酸配列と、そのアミノ酸配列が、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上の同一性を有するタンパク質、及び、これらのタンパク質の部分配列を有するタンパク質断片、又は、これらのタンパク質若しくはタンパク質断片と他のタンパク質若しくはペプチドとの融合タンパク質等が含まれる。また、本明細書において、「フィブロイン由来のタンパク質」を、その構造的特性に基づき「フィブロイン由来のポリペプチド」と記載する場合がある。
また、フィブロインと特性が類似するタンパク質とは、天然のフィブロインが有する引張強度、靭性及び伸縮性から選択される少なくとも1つの特性が天然のフィブロインと比較して、少なくとも80%、好ましくは85%以上、より好ましくは95%以上、もっとも好ましくは100%以上の優れた特性を有することをいう。また、本明細書において、このようなフィブロインの構造及び物理的特性に関して記載する場合等に、「フィブロイン様ポリペプチド」又は「フィブロイン様タンパク質」と記載する場合がある。
フィブロインとしては、以下のような改変フィブロインを用いることもできる。改変フィブロインは、式(I):[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。改変フィブロインは、ドメイン配列のN末端側及びC末端側のいずれか一方又は両方に更にアミノ酸配列(N末端配列及びC末端配列)が付加されていてもよい。N末端配列及びC末端配列は、これに限定されるものではないが、典型的には、フィブロインに特徴的なアミノ酸モチーフの反復を有さない領域であり、100残基程度のアミノ酸からなる。この式(I):[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質については、PCT/JP2017/016917及びPCT/JP2017/016925に詳細に記載され、引用により本明細書に取り込まれる。
本明細書において「改変フィブロイン」とは、人為的に製造されたフィブロイン(人造フィブロイン)を意味する。改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列とは異なるフィブロインであってもよく、天然由来のフィブロインとアミノ酸配列と同一であるフィブロインであってもよい。本明細書でいう「天然由来のフィブロイン」もまた、式(I):[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。
「改変フィブロイン」は、本発明で特定されるアミノ酸配列を有するものであれば、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列をそのまま利用したものであってもよく、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列に依拠してそのアミノ酸配列を改変したもの(例えば、クローニングした天然由来のフィブロインの遺伝子配列を改変することによりアミノ酸配列を改変したもの)であってもよく、また天然由来のフィブロインに依らず人工的に設計及び合成したもの(例えば、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより所望のアミノ酸配列を有するもの)であってもよい。
本明細書において「ドメイン配列」とは、フィブロイン特有の結晶領域(典型的には、アミノ酸配列の(A)モチーフに相当する。)と非晶領域(典型的には、アミノ酸配列のREPに相当する。)を生じるアミノ酸配列であり、式(I):[(A)モチーフ−REP]で表されるアミノ酸配列を意味する。ここで、(A)モチーフは、アラニン残基を主とするアミノ酸配列を示し、nは2〜20、好ましくは4〜20、より好ましくは8〜20、更に好ましくは10〜20、更により好ましくは4〜16、更によりまた好ましくは8〜16、特に好ましくは10〜16の整数であってよい。また、(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数の割合は40%以上であればよく、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましく、90%以上であることが更により好ましく、100%(アラニン残基のみで構成されることを意味する。)であってもよい。REPは2〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。mは2〜300の整数を示す。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。大吐糸管しおり糸由来のタンパク質の具体例としては、天然配列の部分配列である配列番号1〜3、天然配列を改変した配列番号4〜19で示されるアミノ酸配列等を含むタンパク質を挙げることができる。
配列番号6で示されるアミノ酸配列(Met-PRT313)は、天然由来のフィブロインであるNephila clavipes(GenBankアクセッション番号:P46804.1、GI:1174415)のアミノ酸配列における、アラニン残基が連続する領域「(A)モチーフ」中の連続するアラニン残基の数を5つになるよう欠失する等、アミノ酸残基の改変を行った配列を有する。配列番号12で示されるアミノ酸配列(PRT313)は、配列番号6で示されるアミノ酸配列(Met−PRT313)のN末端に配列番号21で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)を付加したものである。
配列番号7で示されるアミノ酸配列(Met−PRT399)は、配列番号6で示されるアミノ酸配列から、N末端側からC末端側に向かって2つおきに(A)モチーフ((A))を欠失させ、更にC末端配列の手前に[(A)モチーフ−REP]を1つ挿入したものであり、配列番号13で示されるアミノ酸配列(PRT399)はこの配列番号7で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号21で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)を付加したものである。
配列番号8で示されるアミノ酸配列(Met−PRT380)は、配列番号6で示されるアミノ酸配列のREP中の全てのGGXをGQXに置換したものであり、配列番号14で示されるアミノ酸配列(PRT380)はこの配列番号8で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号21で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)を付加したものである。
配列番号9で示されるアミノ酸配列(Met−PRT410)は、配列番号7で示されるアミノ酸配列のREP中の全てのGGXをGQXに置換したものであり、配列番号15で示されるアミノ酸配列(PRT410)はこの配列番号9で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号21で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)を付加したものである。
配列番号10で示されるアミノ酸配列(Met−PRT468)は、配列番号9で示されるアミノ酸配列に対し、配列番号6中のポリA領域にAを2残基挿入し、配列番号9で示されるアミノ酸配列の分子量とほぼ同じになるよう、C末端側の繰り返し配列2回分を削除し、QからSもしくはPに13箇所置換したものであり、配列番号16で示されるアミノ酸配列(PRT468)はこの配列番号10で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号21で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)を付加したものである。
配列番号11で示されるアミノ酸配列(Met−PRT799)は、配列番号9で示されるアミノ酸配列中に存在する20個のドメイン配列の領域を4回繰り返した配列のC末端側の数アミノ酸残基を、配列番号21で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)を付加したものであり、配列番号17で示されるアミノ酸配列(PRT799)はこの配列番号11で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号21で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)を付加したものである。
以上のアミノ酸配列をまとめると以下のとおりである。
配列番号1 Araneus diadematusのアミノ酸配列
配列番号2 Araneus diadematusのアミノ酸配列
配列番号3 Araneus diadematusのアミノ酸配列
配列番号4 recombinant spider silk protein ADF3KaiLargeNRSH1のアミノ酸配列
配列番号5 配列番号4よりHisタグのアミノ酸配列を削除した配列
配列番号6 Met-PRT313: Met-CRY1_L_A5のアミノ酸配列
配列番号7 Met-PRT399: Met-CRY1_L_A5_gizaのアミノ酸配列
配列番号8 Met-PRT380: Met-CRY1_L_A5_QQQのアミノ酸配列
配列番号9 Met-PRT410: Met-CRY1_L_A5_giza_QQQのアミノ酸配列
配列番号10 Met-PRT468: Met-CRY1_L_A7_giza_QQQのアミノ酸配列
配列番号11 Met-PRT799: Met-CRY1_200_A5_giza_QQQ_WHis6のアミノ酸配列
配列番号12 PRT313のアミノ酸配列
配列番号13 PRT399のアミノ酸配列
配列番号14 PRT380のアミノ酸配列
配列番号15 PRT410のアミノ酸配列
配列番号16 PRT468のアミノ酸配列
配列番号17 PRT799のアミノ酸配列
配列番号18 ADF3Kai_noNRのアミノ酸配列
配列番号19 配列番号18のアミノ酸配列よりHisタグを除いたアミノ酸配列
配列番号20 Hisタグ及びスタートコドンのアミノ酸配列
配列番号21 Hisタグのアミノ酸配列
改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のフィブロインの遺伝子配列に対し、例えば、1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変を行うことで得ることができる。アミノ酸残基の置換、欠失、挿入及び/又は付加は、部分特異的突然変異誘発法等の当業者に周知の方法により行うことができる。具体的には、Nucleic Acid Res.10,6487(1982)、Methods in Enzymology,100,448(1983)等の文献に記載されている方法に準じて行うことができる。
天然由来のフィブロインは、式(I):[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質であり、具体的には、例えば、昆虫又はクモ類が産生するフィブロインが挙げられる。
昆虫が産生するフィブロインとしては、例えば、ボンビックス・モリ(Bombyx mori)、クワコ(Bombyx mandarina)、天蚕(Antheraea yamamai)、柞蚕(Anteraea pernyi)、楓蚕(Eriogyna pyretorum)、蓖蚕(Pilosamia Cynthia ricini)、樗蚕(Samia cynthia)、栗虫(Caligura japonica)、チュッサー蚕(Antheraea mylitta)、ムガ蚕(Antheraea assama)等のカイコが産生する絹タンパク質、スズメバチ(Vespa simillima xanthoptera)の幼虫が吐出するホーネットシルクタンパク質が挙げられる。
昆虫が産生するフィブロインのより具体的な例としては、例えば、カイコ・フィブロインL鎖(GenBankアクセッション番号M76430(塩基配列)、AAA27840.1(アミノ酸配列))が挙げられる。
クモ類が産生するフィブロインとしては、例えば、オニグモ、ニワオニグモ、アカオニグモ、アオオニグモ及びマメオニグモ等のオニグモ属(Araneus属)に属するクモ、ヤマシロオニグモ、イエオニグモ、ドヨウオニグモ及びサツマノミダマシ等のヒメオニグモ属(Neoscona属)に属するクモ、コオニグモモドキ等のコオニグモモドキ属(Pronus属)に属するクモ、トリノフンダマシ及びオオトリノフンダマシ等のトリノフンダマシ属(Cyrtarachne属)に属するクモ、トゲグモ及びチブサトゲグモ等のトゲグモ属(Gasteracantha属)に属するクモ、マメイタイセキグモ及びムツトゲイセキグモ等のイセキグモ属(Ordgarius属)に属するクモ、コガネグモ、コガタコガネグモ及びナガコガネグモ等のコガネグモ属(Argiope属)に属するクモ、キジロオヒキグモ等のオヒキグモ属(Arachnura属)に属するクモ、ハツリグモ等のハツリグモ属(Acusilas属)に属するクモ、スズミグモ、キヌアミグモ及びハラビロスズミグモ等のスズミグモ属(Cytophora属)に属するクモ、ゲホウグモ等のゲホウグモ属(Poltys属)に属するクモ、ゴミグモ、ヨツデゴミグモ、マルゴミグモ及びカラスゴミグモ等のゴミグモ属(Cyclosa属)に属するクモ、及びヤマトカナエグモ等のカナエグモ属(Chorizopes属)に属するクモが産生するスパイダーシルクタンパク質、並びにアシナガグモ、ヤサガタアシナガグモ、ハラビロアシダカグモ及びウロコアシナガグモ等のアシナガグモ属(Tetragnatha属)に属するクモ、オオシロカネグモ、チュウガタシロカネグモ及びコシロカネグモ等のシロカネグモ属(Leucauge属)に属するクモ、ジョロウグモ及びオオジョロウグモ等のジョロウグモ属(Nephila属)に属するクモ、キンヨウグモ等のアズミグモ属(Menosira属)に属するクモ、ヒメアシナガグモ等のヒメアシナガグモ属(Dyschiriognatha属)に属するクモ、クロゴケグモ、セアカゴケグモ、ハイイロゴケグモ及びジュウサンボシゴケグモ等のゴケグモ属(Latrodectus属)に属するクモ、及びユープロステノプス属(Euprosthenops属)に属するクモ等のアシナガグモ科(Tetragnathidae科)に属するクモが産生するスパイダーシルクタンパク質(クモ糸タンパク質)が挙げられる。スパイダーシルクタンパク質としては、例えば、MaSp(MaSp1及びMaSp2)、ADF(ADF3及びADF4)等の牽引糸タンパク質、MiSp(MiSp1及びMiSp2)等が挙げられる。
クモ類が産生するフィブロインのより具体的な例としては、例えば、fibroin−3(adf−3)[Araneus diadematus由来](GenBankアクセッション番号AAC47010(アミノ酸配列)、U47855(塩基配列))、fibroin−4(adf−4)[Araneus diadematus由来](GenBankアクセッション番号AAC47011(アミノ酸配列)、U47856(塩基配列))、dragline silk protein spidroin 1[Nephila clavipes由来](GenBankアクセッション番号AAC04504(アミノ酸配列)、U37520(塩基配列))、major ampullate spidroin 1[Latrodectus hesperus由来](GenBankアクセッション番号ABR68856(アミノ酸配列)、EF595246(塩基配列))、dragline silk protein spidroin 2[Nephila clavata由来](GenBankアクセッション番号AAL32472(アミノ酸配列)、AF441245(塩基配列))、major ampullate spidroin 1[Euprosthenops australis由来](GenBankアクセッション番号CAJ00428(アミノ酸配列)、AJ973155(塩基配列))、及びmajor ampullate spidroin 2[Euprosthenops australis](GenBankアクセッション番号CAM32249.1(アミノ酸配列)、AM490169(塩基配列))、minor ampullate silk protein 1[Nephila clavipes](GenBankアクセッション番号AAC14589.1(アミノ酸配列))、minor ampullate silk protein 2[Nephila clavipes](GenBankアクセッション番号AAC14591.1(アミノ酸配列))、minor ampullate spidroin−like protein[Nephilengys cruentata](GenBankアクセッション番号ABR37278.1(アミノ酸配列)等が挙げられる。
天然由来のフィブロインのより具体的な例としては、更に、NCBI GenBankに配列情報が登録されているフィブロインを挙げることができる。例えば、NCBI GenBankに登録されている配列情報のうちDIVISIONとしてINVを含む配列の中から、DEFINITIONにspidroin、ampullate、fibroin、「silk及びpolypeptide」、又は「silk及びprotein」がキーワードとして記載されている配列、CDSから特定のproductの文字列、SOURCEからTISSUE TYPEに特定の文字列の記載された配列を抽出することにより確認することができる。
改変フィブロインは、改変絹フィブロイン(カイコが産生する絹タンパク質のアミノ酸配列を改変したもの)であってもよく、改変クモ糸フィブロイン(クモ類が産生するスパイダーシルクタンパク質のアミノ酸配列を改変したもの)であってもよい。それらのうちでも改変クモ糸フィブロインが、好適に用いられる。
改変フィブロインの具体的な例として、クモの大瓶状線で産生される大吐糸管しおり糸タンパク質に由来する改変フィブロイン[第1の実施形態に係る改変フィブロイン]、グリシン残基の含有量が低減された改変フィブロイン[第2の実施形態に係る改変フィブロイン]、(A)モチーフの含有量が低減された改変フィブロイン[第3の実施形態に係る改変フィブロイン]、グリシン残基の含有量、及び(A)モチーフの含有量が低減された改変フィブロイン[第4の実施形態に係る改変フィブロイン]が挙げられる。
第1の実施形態に係る改変フィブロインとしては、式(I):[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質が挙げられる。第1の実施形態に係る改変フィブロインは、式(I)中、nは3〜20の整数が好ましく、4〜20の整数がより好ましく、8〜20の整数が更に好ましく、10〜20の整数が更により好ましく、4〜16の整数が更によりまた好ましく、8〜16の整数が特に好ましく、10〜16の整数が最も好ましい。第1の実施形態に係る改変フィブロインは、式(I)中、REPを構成するアミノ酸残基の数は、10〜200残基であることが好ましく、10〜150残基であることがより好ましく、20〜100残基であることが更に好ましく、20〜75残基であることが更により好ましい。第1の実施形態に係る改変フィブロインは、式(I):[(A)モチーフ−REP]で表されるアミノ酸配列中に含まれるグリシン残基、セリン残基及びアラニン残基の合計残基数がアミノ酸残基数全体に対して、40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましい。
第1の実施形態に係る改変フィブロインは、式(I):[(A)モチーフ−REP]で表されるアミノ酸配列の単位を含み、かつC末端配列が配列番号1〜3のいずれかに示されるアミノ酸配列又は配列番号1〜3のいずれかに示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列であるポリペプチドであってもよい。
配列番号1に示されるアミノ酸配列は、ADF3(GI:1263287、NCBI)のアミノ酸配列のC末端の50残基のアミノ酸からなるアミノ酸配列と同一であり、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列のC末端から20残基取り除いたアミノ酸配列と同一であり、配列番号3に示されるアミノ酸配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列のC末端から29残基取り除いたアミノ酸配列と同一である。
第1の実施形態に係る改変フィブロインのより具体的な例として、(1−i)配列番号4又は配列番号5(配列番号4のアミノ酸配列よりHisタグを除いたアミノ酸配列)で示されるアミノ酸配列、又は(1−ii)配列番号4で示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。前記配列同一性は、100%であってもよい。
配列番号4で示されるアミノ酸配列は、N末端に開始コドン、His10タグ及びHRV3Cプロテアーゼ(Human rhinovirus 3Cプロテアーゼ)認識サイトからなるアミノ酸配列(配列番号20)を付加したADF3のアミノ酸配列において、第1〜13番目の反復領域をおよそ2倍になるように増やすとともに、翻訳が第1154番目アミノ酸残基で終止するように変異させたものである。配列番号4で示されるアミノ酸配列のC末端のアミノ酸配列は、配列番号8で示されるアミノ酸配列と同一である。
(1−i)の改変フィブロインは、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
第2の実施形態に係る改変フィブロインは、上述のグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたモチーフ配列の割合が、全モチーフ配列に対して、10%以上であってもよい。
第2の実施形態に係る改変フィブロインは、式(I):[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含み、上記ドメイン配列から、最もC末端側に位置する(A)モチーフから上記ドメイン配列のC末端までの配列を除いた配列中の全REPに含まれるXGX(但し、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を示す。)からなるアミノ酸配列の総アミノ酸残基数をzとし、上記ドメイン配列から、最もC末端側に位置する(A)モチーフから上記ドメイン配列のC末端までの配列を除いた配列中の総アミノ酸残基数をwとしたときに、z/w(%)が30%以上であるアミノ酸配列を有するものであってもよく、50.9%以上であるアミノ酸配列を有するものであってもよい。(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数は83%以上であればよいが、86%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましく、100%であること(アラニン残基のみで構成されることを意味する)が更により好ましい。
第2の実施形態に係る改変フィブロインは、GGXモチーフの1つのグリシン残基を別のアミノ酸残基に置換することにより、XGXからなるアミノ酸配列の含有割合を高めたものであることが好ましい。第2の実施形態に係る改変フィブロインは、ドメイン配列中のGGXからなるアミノ酸配列の含有割合が30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、6%以下であることが更により好ましく、4%以下であることが更によりまた好ましく、2%以下であることが特に好ましい。ドメイン配列中のGGXからなるアミノ酸配列の含有割合は、下記XGXからなるアミノ酸配列の含有割合(z/w)の算出方法と同様の方法で算出することができる。
z/w(%)の算出方法を更に詳細に説明する。まず、ドメイン配列から、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列を除いた配列に含まれる全てのREPから、XGXからなるアミノ酸配列を抽出する。XGXを構成するアミノ酸残基の総数がzである。例えば、XGXからなるアミノ酸配列が50個抽出された場合(重複はなし)、zは50×3=150である。また、例えば、XGXGXからなるアミノ酸配列の場合のように2つのXGXに含まれるX(中央のX)が存在する場合は、重複分を控除して計算する(XGXGXの場合は5アミノ酸残基である)。wは、ドメイン配列から、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列を除いた配列に含まれる総アミノ酸残基数である。例えば、図1に示したドメイン配列の場合、wは4+50+4+100+4+10+4+20+4+30=230である(最もC末端側に位置する(A)モチーフは除いている。)。次に、zをwで除すことによって、z/w(%)を算出することができる。
ここで、天然由来のフィブロインにおけるz/w(%)について説明する。まず、上述のように、NCBI GenBankにアミノ酸配列情報が登録されているフィブロインを例示した方法により確認したところ、663種類のフィブロイン(このうち、クモ類由来のフィブロインは415種類)が抽出された。抽出された全てのフィブロインのうち、式(I):[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含み、フィブロイン中のGGXからなるアミノ酸配列の含有割合が6%以下である天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から、上述の算出方法により、z/w(%)を算出した。その結果を図3に示す。図3の横軸はz/w(%)を示し、縦軸は頻度を示す。図3から明らかなとおり、天然由来のフィブロインにおけるz/w(%)は、いずれも50.9%未満である(最も高いもので、50.86%)。
第2の実施形態に係る改変フィブロインにおいて、z/w(%)は、50.9%以上であることが好ましく、56.1%以上であることがより好ましく、58.7%以上であることが更に好ましく、70%以上であることが更により好ましく、80%以上であることが更によりまた好ましい。z/w(%)の上限に特に制限はないが、例えば、95%以下であってもよい。
第2の実施形態に係る改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のフィブロインの遺伝子配列から、グリシン残基をコードする塩基配列の少なくとも一部を置換して別のアミノ酸残基をコードするように改変することにより得ることができる。このとき、改変するグリシン残基として、GGXモチーフ及びGPGXXモチーフにおける1つのグリシン残基を選択してもよいし、またz/w(%)が50.9%以上になるように置換してもよい。また、例えば、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から上記態様を満たすアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより得ることもできる。いずれの場合においても、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列からREP中のグリシン残基を別のアミノ酸残基に置換したことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変を行ってもよい。
上記の別のアミノ酸残基としては、グリシン残基以外のアミノ酸残基であれば特に制限はないが、バリン(V)残基、ロイシン(L)残基、イソロイシン(I)残基、メチオニン(M)残基、プロリン(P)残基、フェニルアラニン(F)残基及びトリプトファン(W)残基等の疎水性アミノ酸残基、グルタミン(Q)残基、アスパラギン(N)残基、セリン(S)残基、リシン(K)残基及びグルタミン酸(E)残基等の親水性アミノ酸残基が好ましく、バリン(V)残基、ロイシン(L)残基、イソロイシン(I)残基及びグルタミン(Q)残基がより好ましく、グルタミン(Q)残基が更に好ましい。
第2の実施形態に係る改変フィブロインのより具体的な例として、(2−i)配列番号8、配列番号9、配列番号10若しくは配列番号11で示されるアミノ酸配列、又は(2−ii)配列番号8、配列番号9、配列番号10若しくは配列番号11で示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。
(2−i)の改変フィブロインについて説明する。配列番号8で示されるアミノ酸配列は、天然由来のフィブロインに相当する配列番号6で示されるアミノ酸配列のREP中の全てのGGXをGQXに置換したものである。配列番号9で示されるアミノ酸配列は、配列番号8で示されるアミノ酸配列から、N末端側からC末端側に向かって2つおきに(A)モチーフを欠失させ、更にC末端配列の手前に[(A)モチーフ−REP]を1つ挿入したものである。配列番号10で示されるアミノ酸配列は、配列番号9で示されるアミノ酸配列の各(A)モチーフのC末端側に2つのアラニン残基を挿入し、更に一部のグルタミン(Q)残基をセリン(S)残基に置換し、配列番号9の分子量とほぼ同じとなるようにN末端側の一部のアミノ酸を欠失させたものである。配列番号11で示されるアミノ酸配列は、配列番号10で示されるアミノ酸配列中に存在する20個のドメイン配列の領域(但し、当該領域のC末端側の数アミノ酸残基が置換されている。)を4回繰り返した配列のC末端にHisタグが付加されたものである。
配列番号6で示されるアミノ酸配列(天然由来のフィブロインに相当)におけるz/w(%)の値は、46.8%である。配列番号8で示されるアミノ酸配列、配列番号9で示されるアミノ酸配列、配列番号10で示されるアミノ酸配列、及び配列番号11で示されるアミノ酸配列におけるz/w(%)の値は、それぞれ58.7%、70.1%、66.1%及び70.0%である。また、配列番号6、8、9、10及び11で示されるアミノ酸配列のギザ比率(後述する)1:1.8〜11.3におけるx/y(%)の値は、それぞれ15.0%、15.0%、93.4%、92.7%及び89.3%である。
(2−i)の改変フィブロインは、配列番号8、配列番号9、配列番号10又は配列番号11で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(2−ii)の改変フィブロインは、配列番号8、配列番号9、配列番号10又は配列番号11で示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(2−ii)の改変フィブロインもまた、式(I):[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上であることが好ましい。
(2−ii)の改変フィブロインは、配列番号8、配列番号9、配列番号10又は配列番号11で示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上の配列同一性を有し、かつREP中に含まれるXGX(但し、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を示す。)からなるアミノ酸配列の総アミノ酸残基数をzとし、上記ドメイン配列中のREPの総アミノ酸残基数をwとしたときに、z/w(%)が50.9%以上であることが好ましい。
上述の改変フィブロインは、N末端及びC末端のいずれか一方又は両方にタグ配列を含んでいてもよい。これにより、改変フィブロインの単離、固定化、検出及び可視化等が可能となる。
タグ配列として、例えば、他の分子との特異的親和性(結合性、アフィニティ)を利用したアフィニティタグを挙げることができる。アフィニティタグの具体例として、ヒスチジンタグ(Hisタグ)を挙げることができる。Hisタグは、ヒスチジン残基が4から10個程度並んだ短いペプチドで、ニッケル等の金属イオンと特異的に結合する性質があるため、金属キレートクロマトグラフィー(chelating metal chromatography)による改変フィブロインの単離に利用することができる。タグ配列の具体例として、例えば、配列番号21で示されるアミノ酸配列(Hisタグを含むアミノ酸配列)が挙げられる。
また、グルタチオンに特異的に結合するグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースに特異的に結合するマルトース結合タンパク質(MBP)等のタグ配列を利用することもできる。
さらに、抗原抗体反応を利用した「エピトープタグ」を利用することもできる。抗原性を示すペプチド(エピトープ)をタグ配列として付加することにより、当該エピトープに対する抗体を結合させることができる。エピトープタグとして、HA(インフルエンザウイルスのヘマグルチニンのペプチド配列)タグ、mycタグ、FLAGタグ等を挙げることができる。エピトープタグを利用することにより、高い特異性で容易に改変フィブロインを精製することができる。
さらにタグ配列を特定のプロテアーゼで切り離せるようにしたものも使用することができる。当該タグ配列を介して吸着したタンパク質をプロテアーゼ処理することにより、タグ配列を切り離した改変フィブロインを回収することもできる。
タグ配列を含む改変フィブロインのより具体的な例として、(2−iii)配列番号14、配列番号15、配列番号16若しくは配列番号17で示されるアミノ酸配列、又は(2−iv)配列番号14、配列番号15、配列番号16若しくは配列番号17で示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。
配列番号12、13、14、15、16及び17で示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号6、7、8、9、10及び11で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号21で示されるアミノ酸配列(Hisタグを含む)を付加したものである。
(2−iii)の改変フィブロインは、配列番号14、配列番号15、配列番号16又は配列番号17で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(2−iv)の改変フィブロインは、配列番号14、配列番号15、配列番号16又は配列番号17で示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(2−iv)の改変フィブロインもまた、式(I):[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上であることが好ましい。
(2−iv)の改変フィブロインは、配列番号14、配列番号15、配列番号16又は配列番号17で示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上の配列同一性を有し、かつREP中に含まれるXGX(但し、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を示す。)からなるアミノ酸配列の総アミノ酸残基数をzとし、上記ドメイン配列中のREPの総アミノ酸残基数をwとしたときに、z/w(%)が50.9%以上であることが好ましい。
上述の改変フィブロインは、組換えタンパク質生産系において生産されたタンパク質を宿主の外部に放出するための分泌シグナルを含んでいてもよい。分泌シグナルの配列は、宿主の種類に応じて適宜設定することができる。
第3の実施形態に係る改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、(A)モチーフの含有量が低減されたアミノ酸配列を有する。当該改変フィブロインのドメイン配列は、天然由来のフィブロインと比較して、少なくとも1又は複数の(A)モチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列を有するものということができる。
第3の実施形態に係る改変フィブロインは、天然由来のフィブロインから(A)モチーフを10〜40%欠失させたことに相当するアミノ酸配列を有するものであってもよい。
第3の実施形態に係る改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、少なくともN末端側からC末端側に向かって1〜3つの(A)モチーフ毎に1つの(A)モチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列を有するものであってもよい。
第3の実施形態に係る改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、少なくともN末端側からC末端側に向かって2つ連続した(A)モチーフの欠失、及び1つの(A)モチーフの欠失がこの順に繰り返されたことに相当するアミノ酸配列を有するものであってもよい。
第3の実施形態に係る改変フィブロインは、そのドメイン配列が、少なくともN末端側からC末端側に向かって2つおきに(A)モチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列を有するものであってもよい。
第3の実施形態に係る改変フィブロインは、式(I):[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含み、N末端側からC末端側に向かって、隣り合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのREPのアミノ酸残基数を順次比較して、アミノ酸残基数が少ないREPのアミノ酸残基数を1としたとき、他方のREPのアミノ酸残基数の比が1.8〜11.3となる隣り合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのアミノ酸残基数を足し合わせた合計値の最大値をxとし、ドメイン配列の総アミノ酸残基数をyとしたときに、x/y(%)が20%以上であるアミノ酸配列を有するものであってもよく、50%以上であるアミノ酸配列を有するものであってもよい。(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数は83%以上であればよいが、86%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましく、100%であること(アラニン残基のみで構成されることを意味する)が更により好ましい。
x/y(%)の算出方法を図1を参照しながら更に詳細に説明する。図1には、改変フィブロインからN末端配列及びC末端配列を除いたドメイン配列を示す。当該ドメイン配列は、N末端側(左側)から(A)モチーフ−第1のREP(50アミノ酸残基)−(A)モチーフ−第2のREP(100アミノ酸残基)−(A)モチーフ−第3のREP(10アミノ酸残基)−(A)モチーフ−第4のREP(20アミノ酸残基)−(A)モチーフ−第5のREP(30アミノ酸残基)−(A)モチーフという配列を有する。
隣り合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットは、重複がないように、N末端側からC末端側に向かって、順次選択する。このとき、選択されない[(A)モチーフ−REP]ユニットが存在してもよい。図1には、パターン1(第1のREPと第2のREPの比較、及び第3のREPと第4のREPの比較)、パターン2(第1のREPと第2のREPの比較、及び第4のREPと第5のREPの比較)、パターン3(第2のREPと第3のREPの比較、及び第4のREPと第5のREPの比較)、パターン4(第1のREPと第2のREPの比較)を示した。なお、これ以外にも選択方法は存在する。
次に各パターンについて、選択した隣り合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニット中の各REPのアミノ酸残基数を比較する。比較は、よりアミノ酸残基数の少ない方を1としたときの、他方のアミノ酸残基数の比を求めることによって行う。例えば、第1のREP(50アミノ酸残基)と第2のREP(100アミノ酸残基)の比較の場合、よりアミノ酸残基数の少ない第1のREPを1としたとき、第2のREPのアミノ酸残基数の比は、100/50=2である。同様に、第4のREP(20アミノ酸残基)と第5のREP(30アミノ酸残基)の比較の場合、よりアミノ酸残基数の少ない第4のREPを1としたとき、第5のREPのアミノ酸残基数の比は、30/20=1.5である。
図1中、よりアミノ酸残基数の少ない方を1としたときに、他方のアミノ酸残基数の比が1.8〜11.3となる[(A)モチーフ−REP]ユニットの組を実線で示した。本明細書中、この比をギザ比率と呼ぶ。よりアミノ酸残基数の少ない方を1としたときに、他方のアミノ酸残基数の比が1.8未満又は11.3超となる[(A)モチーフ−REP]ユニットの組は破線で示した。
各パターンにおいて、実線で示した隣り合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットの全てのアミノ酸残基数を足し合わせる(REPのみではなく、(A)モチーフのアミノ酸残基数もである。)。そして、足し合わせた合計値を比較して、当該合計値が最大となるパターンの合計値(合計値の最大値)をxとする。図1に示した例では、パターン1の合計値が最大である。
次に、xをドメイン配列の総アミノ酸残基数yで除すことによって、x/y(%)を算出することができる。
第3の実施形態に係る改変フィブロインにおいて、x/y(%)は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、65%以上であることが更に好ましく、70%以上であることが更により好ましく、75%以上であることが更によりまた好ましく、80%以上であることが特に好ましい。x/y(%)の上限に特に制限はなく、例えば、100%以下であってよい。ギザ比率が1:1.9〜11.3の場合には、x/y(%)は89.6%以上であることが好ましく、ギザ比率が1:1.8〜3.4の場合には、x/y(%)は77.1%以上であることが好ましく、ギザ比率が1:1.9〜8.4の場合には、x/y(%)は75.9%以上であることが好ましく、ギザ比率が1:1.9〜4.1の場合には、x/y(%)は64.2%以上であることが好ましい。
第3の実施形態に係る改変フィブロインが、ドメイン配列中に複数存在する(A)モチーフの少なくとも7つがアラニン残基のみで構成される改変フィブロインである場合、x/y(%)は、46.4%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、55%以上であることが更に好ましく、60%以上であることが更により好ましく、70%以上であることが更によりまた好ましく、80%以上であることが特に好ましい。x/y(%)の上限に特に制限はなく、100%以下であればよい。
ここで、天然由来のフィブロインにおけるx/y(%)について説明する。まず、上述のように、NCBI GenBankにアミノ酸配列情報が登録されているフィブロインを例示した方法により確認したところ、663種類のフィブロイン(このうち、クモ類由来のフィブロインは415種類)が抽出された。抽出された全てのフィブロインのうち、式(I):[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列で構成される天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から、上述の算出方法により、x/y(%)を算出した。ギザ比率が1:1.9〜4.1の場合の結果を図2に示す。
図2の横軸はx/y(%)を示し、縦軸は頻度を示す。図2から明らかなとおり、天然由来のフィブロインにおけるx/y(%)は、いずれも64.2%未満である(最も高いもので、64.14%)。
第3の実施形態に係る改変フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のフィブロインの遺伝子配列から、x/y(%)が64.2%以上になるように(A)モチーフをコードする配列の1又は複数を欠失させることにより得ることができる。また、例えば、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から、x/y(%)が64.2%以上になるように1又は複数の(A)モチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより得ることもできる。いずれの場合においても、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から(A)モチーフが欠失したことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変を行ってもよい。
第3の実施形態に係る改変フィブロインのより具体的な例として、(3−i)配列番号7、配列番号9、配列番号10若しくは配列番号11で示されるアミノ酸配列、又は(3−ii)配列番号7、配列番号9、配列番号10若しくは配列番号11で示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。
(3−i)の改変フィブロインについて説明する。配列番号7で示されるアミノ酸配列は、天然由来のフィブロインに相当する配列番号6で示されるアミノ酸配列から、N末端側からC末端側に向かって2つおきに(A)モチーフを欠失させ、更にC末端配列の手前に[(A)モチーフ−REP]を1つ挿入したものである。配列番号9で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列のREP中の全てのGGXをGQXに置換したものである。配列番号10で示されるアミノ酸配列は、配列番号9で示されるアミノ酸配列の各(A)モチーフのC末端側に2つのアラニン残基を挿入し、更に一部のグルタミン(Q)残基をセリン(S)残基に置換し、配列番号9の分子量とほぼ同じとなるようにN末端側の一部のアミノ酸を欠失させたものである。配列番号11で示されるアミノ酸配列は、配列番号10で示されるアミノ酸配列中に存在する20個のドメイン配列の領域(但し、当該領域のC末端側の数アミノ酸残基が置換されている。)を4回繰り返した配列のC末端にHisタグが付加されたものである。
配列番号6で示されるアミノ酸配列(天然由来のフィブロインに相当)のギザ比率1:1.8〜11.3におけるx/y(%)の値は15.0%である。配列番号7で示されるアミノ酸配列、及び配列番号9で示されるアミノ酸配列におけるx/y(%)の値は、いずれも93.4%である。配列番号10で示されるアミノ酸配列におけるx/y(%)の値は、92.7%である。配列番号11で示されるアミノ酸配列におけるx/y(%)の値は、89.3%である。配列番号6、7、9、10及び11〜12で示されるアミノ酸配列におけるx/y(%)の値は、それぞれ46.8%、56.2%、70.1%、66.1%及び70.0%である。
(3−i)の改変フィブロインは、配列番号7、配列番号9、配列番号10又は配列番号11で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(3−ii)の改変フィブロインは、配列番号7、配列番号9、配列番号10又は配列番号11で示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(3−ii)の改変フィブロインもまた、式(I):[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上である。
(3−ii)の改変フィブロインは、配列番号7、配列番号9、配列番号10又は配列番号11で示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上の配列同一性を有し、かつN末端側からC末端側に向かって、隣り合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのREPのアミノ酸残基数を順次比較して、アミノ酸残基数が少ないREPのアミノ酸残基数を1としたとき、他方のREPのアミノ酸残基数の比が1.8〜11.3(ギザ比率が1:1.8〜11.3)となる隣り合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのアミノ酸残基数を足し合わせた合計値の最大値をxとし、ドメイン配列の総アミノ酸残基数をyとしたときに、x/y(%)が64.2%以上であることが好ましい。
上述の改変フィブロインは、N末端及びC末端のいずれか一方又は両方に上述したタグ配列を含んでいてもよい。
タグ配列を含む改変フィブロインのより具体的な例として、(3−iii)配列番号13、配列番号15、配列番号16若しくは配列番号17で示されるアミノ酸配列、又は(3−iv)配列番号13、配列番号15、配列番号16若しくは配列番号17で示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。
配列番号12、13、14、15、16及び17で示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号6、7、8、9、10及び11で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号21で示されるアミノ酸配列(Hisタグを含む)を付加したものである。
(3−iii)の改変フィブロインは、配列番号13、配列番号15、配列番号16又は配列番号17で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(3−iv)の改変フィブロインは、配列番号13、配列番号15、配列番号16又は配列番号17で示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(3−iv)の改変フィブロインもまた、式(I):[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(3−iv)の改変フィブロインは、配列番号13、配列番号15、配列番号16又は配列番号17で示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上の配列同一性を有し、かつN末端側からC末端側に向かって、隣り合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのREPのアミノ酸残基数を順次比較して、アミノ酸残基数が少ないREPのアミノ酸残基数を1としたとき、他方のREPのアミノ酸残基数の比が1.8〜11.3となる隣り合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのアミノ酸残基数を足し合わせた合計値の最大値をxとし、ドメイン配列の総アミノ酸残基数をyとしたときに、x/y(%)が64.2%以上であることが好ましい。
上述の改変フィブロインは、組換えタンパク質生産系において生産されたタンパク質を宿主の外部に放出するための分泌シグナルを含んでいてもよい。分泌シグナルの配列は、宿主の種類に応じて適宜設定することができる。
第4の実施形態に係る改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、(A)モチーフの含有量が低減されたことに加え、グリシン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列を有するものである。当該改変フィブロインのドメイン配列は、天然由来のフィブロインと比較して、少なくとも1又は複数の(A)モチーフが欠失したことに加え、更に少なくともREP中の1又は複数のグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたことに相当するアミノ酸配列を有するものということができる。すなわち、上述した第2の実施形態に係る改変フィブロインと、第3の実施形態に係る改変フィブロインの特徴を併せ持つ改変フィブロインである。具体的な態様等は、第2及び第3の実施形態に係る改変フィブロインで説明したとおりである。
第4の実施形態に係る改変フィブロインのより具体的な例として、(4−i)配列番号9、配列番号10若しくは配列番号11で示されるアミノ酸配列、(4−ii)配列番号9、配列番号10若しくは配列番号11で示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。配列番号9、配列番号10又は配列番号11で示されるアミノ酸配列を含む改変フィブロインの具体的な態様は上述のとおりである。
<タンパク質の製造方法>
本実施形態に係るタンパク質は、例えば、当該タンパク質をコードする核酸配列と、当該核酸配列に作動可能に連結された1又は複数の調節配列とを有する発現ベクターで形質転換された宿主により、当該核酸を発現させることにより生産することができる。
タンパク質をコードする核酸の製造方法は、特に制限されない。例えば、天然のフィブロインをコードする遺伝子を利用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などで増幅しクローニングし、遺伝子工学的手法により改変する方法、又は、化学的に合成する方法によって、当該核酸を製造することができる。核酸の化学的な合成方法も特に制限されず、例えば、NCBIのウェブデータベースなどより入手したタンパク質のアミノ酸配列情報をもとに、AKTA oligopilot plus 10/100(GEヘルスケア・ジャパン株式会社)などで自動合成したオリゴヌクレオチドをPCRなどで連結する方法によって遺伝子を化学的に合成することができる。この際に、タンパク質の精製及び/又は確認を容易にするため、上記のアミノ酸配列のN末端に開始コドン及びHis10タグからなるアミノ酸配列を付加したアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸を合成してもよい。
調節配列は、宿主における改変フィブロインの発現を制御する配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合配列、転写終結配列等)であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。プロモーターとして、宿主細胞中で機能し、改変フィブロインを発現誘導可能な誘導性プロモーターを用いてもよい。誘導性プロモーターは、誘導物質(発現誘導剤)の存在、リプレッサー分子の非存在、又は温度、浸透圧若しくはpH値の上昇若しくは低下等の物理的要因により、転写を制御できるプロモーターである。
発現ベクターの種類は、プラスミドベクター、ウイルスベクター、コスミドベクター、フォスミドベクター、人工染色体ベクター等、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。発現ベクターとしては、宿主細胞において自立複製が可能、又は宿主の染色体中への組込みが可能で、タンパク質をコードする核酸を転写できる位置にプロモーターを含有しているものが好適に用いられる。
宿主として、原核生物、並びに酵母、糸状真菌、昆虫細胞、動物細胞及び植物細胞等の真核生物のいずれも好適に用いることができる。
原核生物の宿主の好ましい例として、エシェリヒア属、ブレビバチルス属、セラチア属、バチルス属、ミクロバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属及びシュードモナス属等に属する細菌を挙げることができる。エシェリヒア属に属する微生物として、例えば、エシェリヒア・コリ等を挙げることができる。ブレビバチルス属に属する微生物として、例えば、ブレビバチルス・アグリ等を挙げることができる。セラチア属に属する微生物として、例えば、セラチア・リクエファシエンス等を挙げることができる。バチルス属に属する微生物として、例えば、バチルス・サチラス等を挙げることができる。ミクロバクテリウム属に属する微生物として、例えば、ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム等を挙げることができる。ブレビバクテリウム属に属する微生物として、例えば、ブレビバクテリウム・ディバリカタム等を挙げることができる。コリネバクテリウム属に属する微生物として、例えば、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス等を挙げることができる。シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物として、例えば、シュードモナス・プチダ等を挙げることができる。
原核生物を宿主とする場合、タンパク質をコードする核酸を導入するベクターとしては、例えば、pBTrp2(ベーリンガーマンハイム社製)、pGEX(Pharmacia社製)、pUC18、pBluescriptII、pSupex、pET22b、pCold、pUB110、pNCO2(特開2002−238569号公報)等を挙げることができる。
真核生物の宿主としては、例えば、酵母及び糸状真菌(カビ等)を挙げることができる。酵母としては、例えば、サッカロマイセス属、ピキア属、シゾサッカロマイセス属等に属する酵母を挙げることができる。糸状真菌としては、例えば、アスペルギルス属、ペニシリウム属、トリコデルマ(Trichoderma)属等に属する糸状真菌を挙げることができる。
真核生物を宿主とする場合、改変フィブロインをコードする核酸を導入するベクターとしては、例えば、YEP13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)等を挙げることができる。上記宿主細胞への発現ベクターの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができる。例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,69,2110(1972)〕、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、プロトプラスト法、酢酸リチウム法、コンピテント法等を挙げることができる。
発現ベクターで形質転換された宿主による核酸の発現方法としては、直接発現のほか、モレキュラー・クローニング第2版に記載されている方法等に準じて、分泌生産、融合タンパク質発現等を行うことができる。
タンパク質は、例えば、発現ベクターで形質転換された宿主を培養培地中で培養し、培養培地中に当該タンパク質を生成蓄積させ、該培養培地から採取することにより製造することができる。宿主を培養培地中で培養する方法は、宿主の培養に通常用いられる方法に従って行うことができる。
宿主が、大腸菌等の原核生物又は酵母等の真核生物である場合、培養培地として、宿主が資化し得る炭素源、窒素源及び無機塩類等を含有し、宿主の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、上記形質転換微生物が資化し得るものであればよく、例えば、グルコース、フラクトース、スクロース、及びこれらを含有する糖蜜、デンプン及びデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸及びプロピオン酸等の有機酸、並びにエタノール及びプロパノール等のアルコール類を用いることができる。窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム及びリン酸アンモニウム等の無機酸又は有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、並びにペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕及び大豆粕加水分解物、各種発酵菌体及びその消化物を用いることができる。無機塩類としては、例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅及び炭酸カルシウムを用いることができる。
大腸菌等の原核生物又は酵母等の真核生物の培養は、例えば、振盪培養又は深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行うことができる。培養温度は、例えば、15〜40℃である。培養時間は、通常16時間〜7日間である。培養中の培養培地のpHは3.0〜9.0に保持することが好ましい。培養培地のpHの調整は、無機酸、有機酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム及びアンモニア等を用いて行うことができる。
また、培養中、必要に応じて、アンピシリン及びテトラサイクリン等の抗生物質を培養培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
発現させたタンパク質の単離、精製は通常用いられている方法で行うことができる。例えば、当該タンパク質が、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、宿主細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液に懸濁した後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー及びダイノミル等により宿主細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、タンパク質の単離精製に通常用いられている方法、すなわち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA−75(三菱化成社製)等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の方法を単独又は組み合わせて使用し、精製標品を得ることができる。
また、タンパク質が細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に宿主細胞を回収後、破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分としてタンパク質の不溶体を回収する。回収したタンパク質の不溶体はタンパク質変性剤で可溶化することができる。該操作の後、上記と同様の単離精製法によりタンパク質の精製標品を得ることができる。当該タンパク質が細胞外に分泌された場合には、培養上清から当該タンパク質を回収することができる。すなわち、培養物を遠心分離等の手法により処理することにより培養上清を取得し、その培養上清から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
(2)βシート構造を有するポリペプチド及びポリアミノ酸
本発明のコンポジット成形組成物において、上記実施形態は、前記βシート構造を有するポリペプチド又はポリアミノ酸を配合する。この場合、ポリアミノ酸の例としてはポリアラニンが挙げられる。
前記ポリアラニンは、ライナー型ポリアラニン(L-polyAla)又はテレケリック型ポリアラニン(T-polyAla)から選択可能である。ライナー型ポリアラニンは、酵素化学重合法を利用することにより製造可能であり、公知の文献を基に製造し、使用できる(Baker P Jら、Biomacromolecules 2012, 13, 947-951)。また、テレケリック型ポリアラニンは、下記実施例に記載のとおり、酵素化学重合法を利用することにより製造可能であり、Tsuchiya Kら、Macromol. Biosci. 2016, 1001-1008にも記載され、引用によって本明細書に取り込まれる。
(3)フィブロインと、βシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸とを含むコンポジット成形組成物の製造
本明細書において、「βシート構造を有するポリペプチド」とは、その二次元構造中で、βシート構造を有する限り任意のポリペプチドが含まれ、天然のポリペプチド及び人工的に製造されるポリペプチドが含まれ、好ましくは、人工的に製造されるポリペプチドをいい、より好ましくは下記のポリアミノ酸の配列を含むポリペプチドをいう。
本明細書において、「ポリアミノ酸」とは、アミノ酸又はその誘導体を単量体として、1段の重合反応によって得られる高分子量のアミノ酸重合体をいう。
また、βシート構造を有するポリアミノ酸は、人工的に製造され、L-又はD-アミノ酸の重合体であり、その二次構造でβシート構造を有する任意のポリアミノ酸をいい、好ましくは、ポリアラニン、ポリフェニルアラニン、ポリシステイン、ポリバリン、ポリロイシン、ポリイソロイシン、ポリチロシン、ポリトリプトファン、ポリグルタミン、ポリメチオニン及びそれらの誘導体から選択されるホモポリアミノ酸及びその誘導体、さらに、これらのホモポリアミノ酸及びその誘導体のみならず、アラニン、フェニルアラニン、システイン、バリン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、トリプトファン、グルタミン、メチオニン等のアミノ酸、並びにそれらの誘導体から選択される複数種、好ましくは2〜5種の、より好ましくは2〜4種の、もっとも好ましくは2又は3種のアミノ酸の共重合体からなるポリアミノ酸を含む。これらのポリアミノ酸は、例えば、化学酵素重合法などの公知の方法によって製造できる(Numata K.ら、Polymer Journal, 2015; 47: 537-545、及び、Baker J. P.ら、Biomacromolecules 2012, 13, 947-951等)。ポリアミノ酸の重合度は、2〜100の範囲であり、好ましくは5〜50の範囲であり、より好ましくは10〜30、もっとも好ましくは10〜20の範囲である。
本明細書において、ポリアミノ酸、ポリペプチド及びタンパク質の構造は、当業者に周知慣用のアミノ酸の3文字又は1文字による表記法で記述される。明細書においてアミノ酸は、特に記載のない限りL体である。
クモ糸由来のシルクを構成する構造体の一つであり、特に、ナノ小繊維を構成する小型の顆粒状構造体であるナノ顆粒状構造体は、高いアスペクト比を有する顆粒状の形態を有し、シルクに特徴的なグリシン及びアラニンを多く含み、βシート構造を含むペプチド又はポリペプチドを主成分とする構造体をいう。Nephila edulis のクモ絹糸の場合、17%±4%のβシート構造を有すると報告されている(Ling Sら、Biomacromolecules, 2011, 12, 3344-3349)。また、もっとも強いクモ牽引糸は、45〜65%がβシートドメインと報告されている(Vollrath Fら、Polymer, 2009, 50, 5623-5632)。
そこで、本発明のコンポジット成形組成物は、原料であるフィブロイン様タンパク質にβシート構造を多く含むポリペプチド又はポリアミノ酸を混合して溶解したドープ液を調製し、コンポジット繊維、コンポジットフィルム、コンポジットゲル、コンポジット多孔質体、コンポジットパーティクル及びコンポジットモールド成形体等を成形することにより製造することができる。
コンポジットフィルムを製造する場合には、フィブロイン由来タンパク質を原料としフィルムを製造する方法が国際公開公報WO2014/103799に記載されており、基本的にこれに従って製造できる。コンポジット繊維を製造する場合には、フィブロイン由来タンパク質より繊維を紡糸する方法が国際公開公報WO2012/165476に記載されており、基本的にこの方法に従って製造できる。コンポジットゲルを製造する場合には、国際公開公報WO2014/175177にフィブロイン由来タンパク質よりゲルを製造する方法が記載されており、基本的にこの方法に従って製造できる。また、コンポジット多孔質体を製造する場合には、フィブロイン由来タンパク質より多孔質体を製造する方法が国際公開公報WO2014/175178に記載されており、基本的にこの方法に従って製造できる。さらに、コンポジットパーティクルを製造する場合には、フィブロイン由来タンパク質よりパーティクルを製造する方法が国際公開公報WO2014/175179に記載されており、基本的にこの方法に従って製造できる。また、コンポジットモールド成形体を製造する場合には、特願2015-185777の明細書にフィブロイン由来タンパク質よりモールド成形体を製造する方法が記載されており、基本的にこの方法に従って製造できる。
コンポジット成形組成物が、前記ドープ液を使用して製造するコンポジットフィルムの場合には、コーティング方法として、本技術分野で一般に知られる、例えば、キャスティング法、スピン・コーティング法、ディッピング法、スプレー・コーティング法、電界重合法、蒸着法、蒸着重合法、ブラシコーティング法、ブレードコーティング法、ローラコーティング法、グラビアコーティング法及びロール・ツー・ロール法等の方法が使用できる。
また、フィブロイン由来タンパク質にβシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸を配合させたドープ液を用いて紡糸する場合には、紡糸工程で勢断応力を負荷しながら、ドープ液のpH、塩の種類及び濃度、湿度又は水分濃度等のクモ糸等のフィブロイン由来のポリペプチド繊維の環境に関連する要素を変化させることにより、フィブロイン由来のコンポジット繊維を製造することができる。これらの要素の1種以上を変化させることにより、又は、複数の要素を組み合わせて変化させることにより、フィブロイン由来のコンポジット繊維を製造することができる。本発明のフィプロイン由来のコンポジット繊維の製造方法として、具体的には、湿式紡糸法、乾式紡糸法、乾湿式紡糸法及び溶融紡糸法等の公知の紡糸方法を挙げることができる。
本発明の態様において、湿式紡糸法や乾湿式紡糸法を用いる場合、繊維軸方向に剪断応力を負荷しながら、ドープ液に凝固剤を添加する、又は、凝固剤を含む溶媒中に前記ドープ液を射出、押し出す又は浸漬することにより、フィブロイン由来のポリペプチド繊維を製造することができる。
湿式防止法や乾湿式紡糸法の凝固剤としては、ドープ液からフィブロイン由来タンパク質等を溶解させた溶媒を除去(脱溶媒ともいう)し得るものであれば特に限定されない。例えば、凝固剤として、メタノール、エタノール、2-プロパノールなどの炭素数1〜5の低級アルコール又はアセトン等を使用してもよい。また、無機塩を含む水溶液を用いてもよい。この無機塩水溶液は、弱酸性〜酸性の溶媒が好ましい。
例えば、コンポジットモールド成形体を製造する場合には、タンパク質を含む組成物(タンパク質のみ、或いは他の成分を含む)を加圧成形機の金型に導入した後、金型を加熱すると共に組成物に対して加圧する。所定の加圧下でタンパク質粉末が所定の温度に達するまで加熱及び加圧を継続して、加熱加圧された組成物を得る。次いで、冷却器(例えばスポットクーラー)を用いて金型の温度を下降させ、組成物が所定の温度になったところで、内容物を取り出してモールド成形体を得る。加熱は、80〜300℃で行うことが好ましく、100〜180℃がより好ましく、100〜130℃が更に好ましい。加圧は、5kN以上で行うことが好ましく、10kN以上がより好ましく、20kN以上が更に好ましい。また、所定の加熱加圧条件に達した後、その条件での処理を続ける時間(保温条件)は、0〜100分が好ましく、1〜50分がより好ましく、5〜30分が更に好ましい。
例えば、樹脂を製造する場合には、前記の本発明の組成物を溶媒に溶解又は懸濁したドープ液を調製し、当業者に周知慣用の方法で、このドープ液のタンパク質を不溶化することにより、本発明の樹脂を製造できる。溶媒としては、例えば、水若しくは極性有機溶媒又はこれらの混合溶媒が挙げられる。本発明のタンパク質を不溶化する方法として、ドープ液の溶媒の留去、溶媒中の塩の種類及び/又は濃度の変化、イオン強度若しくは塩濃度の変化、及び/又はpHの変化等が挙げられる。
本明細書において、「ドープ液」とは、コンポジット繊維やコンポジットフィルム等のコンポジット成形組成物を製造するための原料であるフィブロイン由来タンパク質及びβシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸とを混合し、溶解した溶液をいう。
前記のドープ液に使用する極性有機溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド若しくは1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)、蟻酸又は、これらの混合液から選択することができるが、これらに限定されない。
また、ドープ液は、無機塩を更に含有してもよい。無機塩は、タンパク質の溶解促進剤として機能し得る。無機塩としては、例えば、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属硝酸塩、及びチオシアン酸塩が挙げられる。無機塩の具体例としては、リン酸アルミニウム、炭酸リチウム、炭酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、酢酸第二鉄、酢酸アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化第一鉄、水酸化マンガン、水酸化クロム、水酸化第二鉄、水酸化アルミニウム、塩化ニッケル、塩化コバルト、塩化亜鉛、塩化第一鉄、塩化マンガン、塩化クロム、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、硝酸リチウム、硝酸ストロンチウム、硝酸ニッケル、硝酸カルシウム、硝酸コバルト、硝酸亜鉛、硝酸マグネシウム、硝酸第一鉄、硝酸マンガン、硝酸クロム、硝酸第二鉄、硝酸アルミニウム、臭化リチウム、臭化バリウム、臭化ストロンチウム、臭化ニッケル、臭化カルシウム、臭化コバルト、臭化亜鉛、臭化マグネシウム、臭化第一鉄、臭化マンガン、臭化クロム、臭化第二鉄、臭化アルミニウム、塩素酸バリウム、塩素酸ストロンチウム、塩素酸ニッケル、塩素酸カルシウム、塩素酸コバルト、塩素酸亜鉛、塩素酸マグネシウム、塩素酸第一鉄、塩素酸マンガン、塩素酸クロム、塩素酸第二鉄、塩素酸アルミニウム、ヨウ化ルビジウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化銅、ヨウ化リチウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化ストロンチウム、ヨウ化ニッケル、ヨウ化カルシウム、ヨウ化コバルト、ヨウ化亜鉛、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化第一鉄、ヨウ化マンガン、ヨウ化クロム、ヨウ化第二鉄、ヨウ化アルミニウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸鉛、過塩素酸銅、過塩素酸リチウム、過塩素酸バリウム、過塩素酸ストロンチウム、過塩素酸ニッケル、過塩素酸カルシウム、過塩素酸コバルト、過塩素酸亜鉛、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸第一鉄、過塩素酸マンガン、過塩素酸クロム、過塩素酸第二鉄、過塩素酸アルミニウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸鉛、チオシアン酸銅、チオシアン酸リチウム、チオシアン酸バリウム、チオシアン酸ストロンチウム、チオシアン酸ニッケル、チオシアン酸カルシウム、チオシアン酸コバルト、チオシアン酸亜鉛、チオシアン酸マグネシウム、チオシアン酸第一鉄、チオシアン酸マンガン、チオシアン酸クロム、チオシアン酸第二鉄、チオシアン酸アルミニウム、シアン酸アンモニウム、シアン酸セシウム、シアン酸ルビジウム、シアン酸カリウム、シアン酸ナトリウム、シアン酸鉛、シアン酸銅、シアン酸リチウム、シアン酸バリウム、シアン酸ストロンチウム、シアン酸ニッケル、シアン酸カルシウム、シアン酸コバルト、シアン酸亜鉛、シアン酸マグネシウム、シアン酸第一鉄、シアン酸マンガン、シアン酸クロム、シアン酸第二鉄、及びシアン酸アルミニウムが挙げられる。これらのうちの少なくとも1種類の無機塩を溶媒に添加してもよい。
ドープ液に含まれる無機塩の量は、特に限定されず、無機塩の種類、フィブロイン由来タンパク質の量等に応じて適宜に決定される。無機塩の量は、例えば、タンパク質の全量100質量部に対して、1.0質量部以上、5.0質量部以上、9.0質量部以上、15質量部以上、20質量部以上であってもよい。また、無機塩の量は、例えば、タンパク質の全量100質量部に対して、40質量部以下、35質量部以下、30質量部以下であってもよい。
本明細書において、フィブロイン由来タンパク質に添加するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸の添加量は、フィブロイン由来タンパク質と添加するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸との合計重量に対する、ポリペプチド及び/又はポリアミノ酸の重量の割合で表される。例えば、「polyAla 5 wt%のコンポジット成形組成物」と記載した場合、(フィブロイン由来タンパク質):(ポリペプチド及び/又はポリアミノ酸)が、重量比で95:5の割合で配合されたコンポジット成形組成物を表す。また、場合によっては、質量に対する割合で表される。
本発明のフィブロインとβシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸とを含む組成物は、例えば、フィブロインを溶解したドープ液に、βシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸の水溶液又は水懸濁液を添加し、混合後、成形し、乾燥させることによって製造できる。βシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸の配合割合は、0.1〜50.0%の範囲であり、好ましくは0.5〜30.0%の範囲であり、より好ましくは、1〜10.0%の範囲であり、もっとも好ましくは1〜5%の範囲である。
βシート構造を有するポリアミノ酸としてポリアラニンを使用する場合には、ポリアラニンの重合度は、2〜100の範囲であり、好ましくは3〜50の範囲であり、より好ましくは10〜30の範囲であり、もっとも好ましくは10〜20の範囲である。また、ポリアラニンの配合率は、0.1〜30.0%の範囲であり、好ましくは0.5〜20.0%の範囲であり、より好ましくは1.0〜10.0%の範囲であり、もっとも好ましくは3.0〜5.0%の範囲である。
1−2.前延伸コンポジット成形組成物
本発明のもう1つの実施形態は、前延伸コンポジット成形組成物である。前延伸コンポジット組成物は、前記コンポジット成形組成物の製造工程に、さらに前延伸を行う工程を含めることにより製造され、非延伸のコンポジット成形組成物と比較して、より優れた物理特性をもたらすことができる。
具体的には、本実施形態の前延伸コンポジット成形組成物は、フィブロイン由来タンパク質にβシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸が配合された前延伸コンポジット成形組成物であって、
該コンポジット成形組成物は、繊維又はフィルムから選択され、
(i) フィブロイン由来タンパク質と、βシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸とをドープ液を調製するステップ、
(ii) 前記ドープ液よりコンポジット成形組成物を成形するステップ、
さらに、
(iii) 前記(ii)で得られたコンポジット成形組成物を溶媒中で延伸し、乾燥するステップ、
を含む製造方法で製造される前延伸コンポジット成形組成物である。
前延伸工程を追加することにより、引張強度、ひずみ及び/又は靭性等の物理特性はさらに向上する。前延伸工程の例として、湿熱延伸、乾熱延伸等が挙げられる。
湿熱延伸は、温水中、温水に有機溶剤等を加えた溶液又は有機溶剤中、スチーム加熱中で行うことができる。温度としては、例えば、50〜90℃であってよく、75〜85℃が好ましい。湿熱延伸では、非延伸繊維又はフィルム(又は前延伸繊維又はフィルム)を、例えば、1〜10倍延伸することができ、1〜4倍延伸することが好ましい。
乾熱延伸は、電気管状炉、乾熱板等を使用して行うことができる。温度としては、例えば、140〜270℃であってよく、160〜230℃が好ましい。乾熱延伸では、非延伸繊維又はフィルム(又は前延伸繊維又はフィルム)を、例えば、0.5倍から8倍延伸することができ、1〜4倍延伸することが好ましい。
湿熱延伸及び乾熱延伸はそれぞれ単独で行ってもよく、またこれらを多段で、又は組み合わせて行ってもよい。すなわち、一段目延伸を湿熱延伸で行い、二段目延伸を関越延伸で行う、又は一段目延伸を湿熱延伸を行い、二段目延伸を湿熱延伸し、さらに三段目延伸を乾熱延伸で行う等、湿熱延伸及び乾熱延伸を適宜組み合わせて行うことができる。
これらの本発明のコンポジット成形組成物より、例えば、これを使用する糸、敷布、不敷布、メッシュ及びネット等を製造することができる。これらのコンポジット成形組成物の、耐熱性、高い引張強度、靱性及び/又は伸展性(伸度)等の優れた特性を活かし、例えば、防弾衣、パラシュート、自動車の車体等の高い耐衝撃性が必要な材料の製造に利用できる。また、高強度、高伸展性及び高靱性並びに生分解性及び生互換性を利用した創傷閉止材、縫合糸、絆創膏、再生医療用の足場材料等の医療材料として使用できる。
2.本発明のコンポジット成形組成物の製造方法
2−1.非延伸コンポジット成形組成物の製造方法
本発明のもう1つの実施形態は、前記コンポジット成形組成物の製造方法である。より具体的には、本発明は、フィブロイン由来タンパク質にβシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸が配合された、繊維、フィルム、ゲルから選択されるコンポジット成形組成物の製造方法であって、
(i) フィブロイン由来タンパク質と、βシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸を溶解したドープ液を調製するステップ、
(ii) 前記ドープ液を紡糸又は延伸することにより前記コンポジット成形組成物を製造するステップ、
を含む製造方法である。
前記に記載のとおり、例えば、フィブロイン由来タンパク質は、天然のフィブロインタンパク質は商業的に利用可能であり、これを入手して本発明に使用できる。また、前記に記載のとおり遺伝子組換え法によって人工的に作製したDNAを導入した微生物によって製造し、これを単離精製することにより改変されたフィブロイン由来タンパク質を利用できる。これらの方法によって、フィブロインを入手し、別途、例えば、化学酵素重合法等の公知の方法(Numata K.ら、Polymer Journal, 2015; 47: 537-545、及び、Baker J. P.ら、Biomacromolecules 2012, 13, 947-951等)で、βシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸を製造し、フィブロイン由来タンパク質を含むドープ液にポリペプチド及び/又はポリアミノ酸の水懸濁液を混合後、乾燥等により不溶化させることによって、本発明の組成物を製造できる。
この不溶化の方法としては、乾燥する方法以外にも、例えば、前記コンポジット繊維の製造方法で記載したと同様の方法、具体的には、溶媒中の塩の種類及び/又は濃度の変化、イオン強度若しくは塩濃度の変化、及び/又はpHの変化等方法を使用できる。
さらに、フィブロイン由来タンパク質以外の材料についても、上記コンポジット成形組成物で詳細に説明した各種の材料を使用し、上記で詳細に説明した使用態様で使用することにより、本発明の製造方法を実施できる。
2−2.前延伸コンポジット成形組成物の製造方法
本発明のもう1つの実施形態は、本発明は、前延伸コンポジット成形組成物の製造方法であって、
(i) 前記の製造方法で製造されたコンポジット成形組成物を溶媒中で延伸するステップ、及び、
(ii) 延伸されたコンポジット成形組成物を乾燥させるステップ、
を含む製造方法である。
前延伸工程を追加することにより、引張強度、ひずみ及び/又は靭性等の物理特性はさらに向上する。前延伸工程の例として、湿熱延伸、乾熱延伸等が挙げられる。
湿熱延伸は、温水中、温水に有機溶剤等を加えた溶液又は有機溶剤中、スチーム加熱中で行うことができる。温度としては、例えば、50〜90℃であってよく、75〜85℃が好ましい。湿熱延伸では、非延伸繊維又はフィルム(又は前延伸繊維又はフィルム)を、例えば、1〜10倍延伸することができ、1〜4倍延伸することが好ましい。
乾熱延伸は、電気管状炉、乾熱板等を使用して行うことができる。温度としては、例えば、140〜270℃であってよく、160〜230℃が好ましい。乾熱延伸では、非延伸繊維又はフィルム(又は前延伸繊維又はフィルム)を、例えば、0.5倍から8倍延伸することができ、1〜4倍延伸することが好ましい。
湿熱延伸及び乾熱延伸はそれぞれ単独で行ってもよく、またこれらを多段で、又は組み合わせて行ってもよい。すなわち、一段目延伸を湿熱延伸で行い、二段目延伸を乾熱延伸で行う、又は一段目延伸を湿熱延伸を行い、二段目延伸を湿熱延伸し、さらに三段目延伸を乾熱延伸で行う等、湿熱延伸及び乾熱延伸を適宜組み合わせて行うことができる。
これらの本発明の製造方法で製造されたコンポジット成形組成物は、さらに、例えば、これを使用する糸、敷布、不敷布、メッシュ及びネット等を製造することができる。これらのコンポジット成形組成物の、耐熱性、高い引張強度、靱性及び/又は伸展性等の優れた特性を活かし、例えば、防弾衣、パラシュート、自動車の車体等の高い耐衝撃性が必要な材料の製造に利用できる。また、高強度、高伸展性及び高靱性並びに生分解性及び生互換性を利用した創傷閉止材、縫合糸、絆創膏、再生医療用の足場材料等の医療材料として使用できる。
3.本発明のコンポジット成形組成物の物理的特性を向上させる方法
本発明のもう1つの好ましい実施形態は、フィブロイン等のポリペプチドからなるコンポジット成形組成物の引張強度、靭性及び伸展性等から選択される少なくとも1つの物理的特性を向上させる方法である。コンポジット成形組成物の例としては、ポリペプチドからなるコンポジットフィルム、コンポジット繊維、コンポジットゲル、コンポジット多孔質体、コンポジットパーティクル及びコンポジットモールド成形体などが挙げられる。
コンポジット成形組成物の物理的特性を向上させる方法は、例えば、樹脂、フィルム及び繊維等の成形組成物原料に、ポリアラニン等のβシートを有するポリアミノ酸を配合させてコンポジット成形組成物とすることによる。より具体的には、例えば、、コンポジットフィルム、コンポジット繊維、コンポジットゲル及びコンポジット樹脂等のコンポジット成形組成物を製造するために、フィブロイン等の原料を溶解したドープ液に、βシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸を添加し、混合後、例えば、溶媒を留去し、ポリペプチドを不溶化することによって、βシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸を添加しない成形組成物と比較して、物理的特性が向上したコンポジット成形組成物を取得できる。
本明細書において、コンポジット成形組成物の物理的特性の向上とは、例えば、商業的に利用可能な引張試験機を入手し、引張強度試験を行い、被験試料が破断するときの限界応力を求め、この限界応力の値が比較対象の試料よりも高値を示すときに、引張強度が向上することを意味する。また、靭性が向上するとは、同様に、引張試験機で被験試料を測定し、応力-ひずみ曲線図における曲線の面積の値が、比較対象の試料の面積値よりも高値を示すときに、靭性が向上することを意味する。さらに、伸展性が向上するとは、同様に引張試験機で被験試料の引張試験を行い、被験試料が破断するときのひずみ(延伸率)を求め、比較対象の試料で同様の条件で測定して得られた破断時のひずみよりも被験試料の破断時の延伸率の方が、高値を示すときに、伸展率が向上することを意味する。
本発明の方法で、使用するポリアミノ酸としては、βシート構造を容易に形成するポリアミノ酸が挙げられ、より具体的には、ポリアラニン、ポリシステイン等が挙げられる。これらのポリアミノ酸は、化学酵素合成法等の公知の方法で製造できる(Numata K.ら、Polymer Journal, 2015; 47: 537-545、及び、Baker J. P.ら、Biomacromolecules 2012, 13, 947-951等)。
例えば、フィブロイン由来ポリペプチドからなる成形組成物原料に、ポリアラニンを配合させることによって実施される。コンポジット成形組成物の物理的特性を向上させる場合には、重合度が、2〜100の範囲、好ましくは、5〜50の範囲の、より好ましくは10〜30の範囲の、もっとも好ましくは10〜20の範囲のポリアラニンを、配合率として0.1〜30.0%の範囲、好ましくは0.5〜20.0%の範囲、より好ましくは1.0〜10.0%の範囲、もっとも好ましくは3.0〜5.0%の範囲の配合率でドープ液に配合させる。
本発明の方法を使用することにより、よりその物理的特性が向上した糸、敷布、不敷布、メッシュ及びネット等を製造することができる。これらのコンポジット成形組成物の、耐熱性、高い引張強度、靱性及び/又は伸展性等の優れた特性を活かし、例えば、防弾衣、パラシュート、自動車の車体等の高い耐衝撃性が必要な材料の製造に利用できる。また、高強度、高伸展性及び高靱性並びに生分解性及び生互換性を利用した創傷閉止材、縫合糸、絆創膏、再生医療用の足場材料等の医療材料の製造にも使用できる。
なお、本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
天然のカイコ・シルクフィブロインタンパク質又は改変クモ糸フィブロインタンパク質にポリアラニン(L-polyAla又はT-polyAla)を配合したコンポジット成形フィルムの製造とその物理学的特性の評価
1.天然のカイコ・シルクフィブロインタンパク質にポリアラニンを配合したコンポジット成形フィルムの製造
以下に記載の方法で、polyAla(L-polyAla又はT-polyAla)を合成し、天然のカイコ・フィブロインタンパク質(Bombix mori)と下記の方法で製造したポリアラニン(L-polyAlaを5 wt%若しくは10 wt%又はT-polyAlaを1 wt%若しくは2.5 wt%)とを溶解したドープ液を調製し、該ドープ液よりキャスティング法によりコンポジット成形フィルムを製造し、張力変形試験を行い、物理的特性の変化を評価した。
張力変形試験は、小型卓上試験機(EZ -LX型、株式会社島津製作所、京都)で実施された。初期の試料長さは、15.0 mmであり、一定の速度0.5 mm/minで延伸した。結果が記録され、TRAPEZIUM (ver. 1.3.0, 株式会社島津製作所、京都)で解析された。測定は58%湿度、室温下で実施された。
2.polyAla(L-polyAla又はT-polyAla)の製造
(1) テレケリック型ポリアラニン(T-polyAla)の合成
(i) ロイシンイニシエータ(Leu-initiator)を使用した合成
(a) ロイシンイニシエータの合成
ロイシンイニシエータ(Leu-initiator)を使用したテレケリック型ポリアラニンの合成は、パパインを使用する化学酵素合成法で製造した。具体的には、L-ロイシンエチルエステル塩酸塩(6.07g)、トリエチルアミン(9.2 mL)及びジエチルエーテル(100mL)を0℃、窒素環境下のフラスコに添加し、この溶液に塩化スクシニル(1.7 mL)のジエチエルエーテル溶液(50 mL)を30分間で滴下し、0℃で2時間撹拌した。反応液を室温まで温めた後、水を加え、水層がジエチルエーテルで抽出された。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。粗生成物を真空乾燥後、ヘキサン/酢酸エチル=5 : 1(v/v)で再結晶し、ロイシンイニシエータ(Leu-initiator)の黄色針状結晶3.57g(収率60%)を得た。
(b) 化学酵素合成法によるテレケリック型ポリアラニン(T-polyAla)の合成
アラニンエチルエステル塩酸塩(0.645 g)、上記ロイシンイニシエータ(0.080 g)、リン酸緩衝液(2mL、1M、pH 8.0)及びエタノール(1 mL)がガラスチューブに添加され、全ての基質が溶解するまで40℃で撹拌された。この溶液に、パパイン(0.300 g)のリン酸緩衝液(2.2 mL)溶液を一時に注いだ。アラニン及びパパインの最終濃度は、各々0.7 M及び50 mg/mLであった。この混合物を40℃で6時間撹拌した。撹拌後の混合物を室温まで冷却し、遠心分離(7000 rpm、4℃、10分間)で沈殿させた。粗沈殿物を脱イオン水で2回洗浄し、凍結乾燥し、白色固体のオリゴペプチド0.071 gを得た。
(ii) ビス(アラニンエチルエステル)イニシエータを使用したテレケリック型ポリアラニンの合成
(a) ビス(アラニンエチルエステル)イニシエータの合成
ビス(アラニンエチルエステル)イニシエータを使用した合成は、200 mLのフラスコに、アラニンエチルエステル塩酸塩(4.76 g)、トリエチルアミン(9.2 mL)及びクロロホルム(100 mL)を加え、この混合溶液に、塩化スクシニル(1.7 mL)のクロロホルム(50 mL)溶液を、0℃、窒素雰囲気下滴下した。この混合液を0℃、2時間撹拌した後、水を添加し反応を停止させた。この混合物を水、1 M炭酸水素ナトリウム水溶液、塩水(brine)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。粗生成物が、ヘキサン/酢酸エチルで再結晶され、白色の針状結晶3.58 gを得た(収率76%)。
赤外吸収スペクトル及びNMRスペクトル測定並びに燃焼元素分析の結果は以下のとおりである。
Infrared(IR) (neat): ν = 3301, 2991, 1729, 1639, 1545, 1356, 1238, 1204,1168, 1020 cm-1. 1H NMR (500 MHz, CDCl3, 25 °C, ppm): δ6.66(s, 2H), 4.53 (m, 2H) 4.20 (q, J = 7.1 Hz, 4H), 2.57 (m, 4H), 1.40 (d,J = 7.1 Hz, 6H), 1.28 (t, J = 7.1 Hz, 6H). 13C NMR (125 MHz,CDCl3, 25 °C): δ 173.16, 171.73, 61.37, 48.18, 31.55, 17.97, 14.04.Anal. Calcd for C14H24N2O6: C, 53.15; H, 7.65; N, 8.86. Found: C, 53.08; H, 7.61; N, 8.85.
(b) 化学酵素合成法によるテレケリック型ポリアラニン(T-polyAla)の合成
10 mLのガラスチューブにアラニンエチルエステル塩酸塩(0.922 g)、上記ビス(アラニンエチルエステル)イニシエータ(0.190 g)、リン酸緩衝液(2.0 mL、1 M、pH 8.0)及びテトラヒドロフラン (1.0 mL)を加え、全ての基質が完全に溶解するまで40℃で撹拌した。パパイン(0.300 g)のリン酸緩衝液溶液(2.0 mL)を一時に注いだ。アラニンエチルエステルとパパインの最終濃度は、各々1 M及び50 mg/mLであった。この混合液を40℃で6時間撹拌した。撹拌後の混合物を室温まで冷却後、遠心分離(7000 rpm、4℃、10分間)で沈殿させた。粗生成物を脱イオン水及びメタノールで2回洗浄後、凍結乾燥し、白色粉末0.221 g(61%)を得た。
(2) ライナー型(直鎖状)ポリアラニンの製造
ビス(アラニンエチルエステル)イニシエータのない条件以外、テレケリック型ポリアラニン(T-polyAla)と同様の方法を使用してライナー型(直鎖状)ポリアラニン(L-polyAla)を合成した。
(3) ポリアラニンの平均重合度と平均分子量の測定
製造されたL-polyAla及びT-polyAlaの平均分子量をNMR(Varian NMR System 500、Varian Medical Systems, Palo Alto, CA、米国)で測定し、算出したところ、L-polyAlaの平均重合度が5.8、平均分子量は531であり、T-polyAlaの平均重合度が5.9、平均分子量は593であった。
このようなのテレケリック型ポリアラニン(T-polyAla)の合成の実施例は例えば、Tsuchiya K.らの文献(Tsuchiya K.ら、Macromol. Biosci. 2016, 16, 1001-1008)に詳細に記載され、開示されており、この開示内容全体が本明細書中に引用によって取り込まれる。
3.改変クモ糸フィブロインタンパク質の製造と、polyAlaを配合したコンポジットフィルムの製造
改変クモ糸フィブロインタンパク質として、遺伝子組換えクモ糸シルクタンパク質(recombinant spider silk protein ADF3KaiLargeNRSH1;配列番号4、及び、ADF3Kai_noNR:配列番号:18)を公知の方法(特開2014-129639号公報)に従って製造し、コンポジット成形フィルムの製造に使用した。
上記の改変クモ糸フィブロインタンパク質を用い、上記天然カイコ・フィブロインタンパク質のコンポジットフィルムの製造と同様の方法で、改変クモ糸フィブロインタンパク質のコンポジットフィルムをキャスティング法で製造した。
4.コンポジットフィルムの張力変形試験
上記のコンポジットフィルムに対して、上記天然フィブロインタンパク質のコンポジットフィルムと同様の方法で、張力変形試験を実施した。
5.前延伸コンポジットフィルムの製造と張力変形試験
上記のシルク(天然フィブロインタンパク質又は改変フィブロインタンパク質)にpolyAla(L-polyAla又はT-polyAla)を配合させたコンポジットフィルムを使用して、以下の方法により前延伸を負荷して製造した前延伸コンポジットフィルムに対して張力変形試験を行った。
シルクのみ、T-polyAla配合シルク、及びL-polyAla配合シルクの3種が小片(3 mm x 15 mm)に切断され、メタノールに5分間浸漬し、緩徐に手動一軸延伸機(IMC-1A11型、井元製作所)を用いて1.25、1.5、1.75又は2倍の長さまで前延伸した(各延伸率は、25%、50%、75%又は100%)。各前延伸されたガラス製ペトリ皿上に両面テープで固定され、室温下、3時間、デシケータで真空乾燥した。各前延伸フィルムを使用し、引張速度0.5 mm/min、25℃、相対湿度55〜60%下、引張試験機(小型卓上試験機 EZ Testシリーズ EZ-LX HS、島津製作所)によって、機械測定され、応力−歪曲線より、最大張力、ひずみ(限界延伸率)及び靭性が算定された。各測定は、5例ずつ実施され、平均値及び標準偏差を求めた。
6.広角X線回折(WAXD)の測定
100%前延伸された、シルクのみフィルム及びpolyAlaを含むフィルムの広角X線回折(WAXD)は、BL45XU型ビームライン(SPring-8、播磨)で実施された。
7.結果
(1)天然カイコ・フィブロインタンパク質のコンポジットフィルムに対する張力変形試験結果
天然カイコ・フィブロインタンパク質にライナー型ポリアラニン(L-polyAla)を5 wt%若しくは10 wt%又はテレケリック型ポリアラニン(T-polyAla)を1 wt%若しくは2.5 wt%配合して製造したフィルムの非延伸時の物理的特性の結果をそれぞれ表6、7及び図5に示した。
天然カイコ・フィブロインタンパク質にライナー型ポリアラニン(L-polyAla)を5wt%配合した場合、引張強度、ひずみ及び靭性の向上を認めた。
Figure 2018034111
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(2) 天然カイコ(Bombyx mori)シルクフィブロインタンパク質と改変クモ糸フィブロインタンパク質を使用したコンポジットフィルムの物理的特性の比較
カイコシルクフィブロイン(Bombyx. mori fibroin)にL-polyAla 5 wt%又はT-polyAla 1wt%を配合したコンポジットフィルム(表3、5)、及び改変クモ糸タンパク質にL-polyAla 10 wt%又はT-polyAla 1wt%を配合したコンポジットフィルム(表4、6)について、張力変形測定を行い、その物理特性を比較した。
カイコシルクフィブロインにL-polyAla 5 wt%を配合した場合、コンポジットフィルムのひずみが11.1%、靭性が16.9%増加した。一方、改変クモ糸フィブロインタンパク質(ADF Kai-noNR)にT-polyAlaを1 wt%添加した場合、ひずみが66.8%、靭性が133%の増加を認め、顕著な物理特性の向上を示した。
Figure 2018034111
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(3) 前延伸を加えたコンポジットフィルムに対する張力変形試験結果
テレケリック型ポリアラニン(T-polyAla)を5%配合して製造したコンポジットフィルムの製造工程で、延伸率0、25、50、75又は100%の前延伸をさらに負荷して製造したコンポジットフィルムに対して張力変形試験を行った結果を図6に示した。前延伸操作を行うことにより、テレケリック型ポリアラニンを添加しないコンポジットフィルムと比較した引張強度、ひずみ及び靭性は、より明確な増加を示した(図6)。
(4) 広角X線回折(WAXD)の測定結果
L-polyAla又はT-polyAlaを0、1、2.5、5又は10 wt%の割合で配合させたコンポジットフィルムを延伸率100%で前延伸して製造した前延伸コンポジットフィルムのWAXDの結果を、それぞれ図7に示した。図7aはL-poyAlaを添加した場合、図7bは、T-polyAlaを添加した場合のWAXDの変化を表す。
シルクのみのフィルムは、ADF3のβシートに基づく結晶格子の(020), (210), (211)面に由来するピークを示す。それぞれの面間隔dは0.51, 0.45, および0.37 nmである。
T-、L-polyAも同様にβシート結晶に基づくピークを示すが、(210)面の面間隔dは0.43 nmであり、シルクのそれと異なっている。
図7aは、前延伸100%のフィルム間の比較として、L-polyAla添加量を変えて測定した。添加量が増えるに従い、L-polyAの、すべてのβシートに基づくビーク強度が増加した。添加量が5%を超えると、ポリアラニンの(210)面のピークではなく、シルクの(210)面のピーク強度がさらに増加した。本結果は、L-polyAとシルクの、配列の構造上の類似性に起因して、L-polyAlaがシルクの結晶構造に影響を与えていることを示唆している。L-polyAlaによるシルクの結晶成長の促進が、フィルムの応力の向上につながっていると考えられる。
T-polyAlaを添加した場合のWAXDの変化を表す図7bでは、添加量を増やしていくと、ポリアラニンの全てのピーク強度が増加するものの、シルクの(210)面に基づくピークの強度について、顕著な変化は認められなかった。T-polyAlaは、そのテレケリック型の構造のために、シルクのβシートにほとんど影響を与えていないと考えられる。ポリアラニンが単独で結晶をつくり分散して存在するため、わずかな添加量でフィルムの靭性が向上すると思われる。
以上の結果において、改変クモ糸タンパク質に5 wt%のT-polyAlaを配合させたコンポジットフィルムのWAXDは、T-polyAla又はL-polyAlaの配合比率を増加させるに従い、結晶を示すピーク強度は増加した(図7a、b)。T-polyAla又はL-polyAlaがシルク中のβシート結晶の増加を促進し、これが物理的特性に影響を与えていると考えられる。
コンポジット繊維組成物の製造と、その物理学的特性の評価
1.実験材料及び方法
以下に記載する試薬以外の試薬及び溶媒は、和光純薬工業株式会社(大阪)より購入し、使用した。タンパク質粉末(配列番号17)は、下記の方法により取得した。ドープ液を調製する前に、タンパク質粉末を真空下、100℃で2時間乾燥した。ドープ液の溶媒としてギ酸を用いた。1型卓上型の紡糸装置(Spiber株式会社、山形)で、同装置のマニュアルに従って紡糸した。紡糸された繊維の直径、引張応力、引張歪み(ひずみ)、靭性が確認された。直径は、ニコン社製(東京)ECLIPSE LV100NDで測定した。応力と歪率は、INSTRON(東京)で測定し、評価した。靭性は、ブルーヒル・ソフトウェア(INSTRON、東京)を使用して計算した。
2.クモ糸タンパク質(PRT799)の製造
(クモ糸タンパク質をコードする遺伝子の合成、及び発現ベクターの構築)
ネフィラ・クラビペス(Nephila clavipes)由来のフィブロイン(GenBankアクセッション番号:P46804.1、GI:1174415)の塩基配列及びアミノ酸配列に基づき、配列番号17で示されるアミノ酸配列を有するクモ糸タンパク質(以下、「PRT799」ともいう。)を設計した。
配列番号17で示されるアミノ酸配列は、配列番号15で示されるアミノ酸配列中に存在する20個のドメイン配列の領域(但し、当該領域のC末端側の数アミノ酸残基が置換されている。)を4回繰り返した配列のC末端にHisタグが付加されたアミノ酸配列に対し、N末端に配列番号21で示されるアミノ酸配列(Hisタグを含む)を付加したものである。
設計したPRT799をコードする核酸を合成した。当該核酸には、5’末端にNdeIサイト及び終止コドン下流にEcoRIサイトを付加した。当該核酸をクローニングベクター(pUC118)にクローニングした。その後、同核酸をNdeI及びEcoRIで制限酵素処理して切り出した後、タンパク質発現ベクターpET−22b(+)に組換えて発現ベクターを得た。
得られたpET22b(+)発現ベクターによって、大腸菌BLR(DE3)を形質転換した。当該形質転換大腸菌を、アンピシリンを含む2mLのLB培地で15時間培養した。当該培養液を、アンピシリンを含む100mLのシード培養用培地(表7)OD600が0.005となるように添加した。培養液温度を30℃に保ち、OD600が5になるまで約15時間、フラスコ培養を行って、シード培養液を得た。
Figure 2018034111
当該シード培養液を500mlの生産培地(下記表8)添加したジャーファーメンターにOD600が0.05となるように添加した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して培養した。また培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持した。
Figure 2018034111
生産培地中のグルコースが完全に消費された直後に、フィード液(グルコース455g/1L、Yeast Extract 120g/1L)を1mL/分の速度で添加した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して培養した。培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持しながら、20時間培養を行った。その後、1Mのイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)を培養液に対して終濃度1mMになるよう添加し、PRT799を発現誘導させた。IPTG添加後20時間経過した時点で、培養液を遠心分離し、菌体を回収した。IPTG添加前とIPTG添加後の培養液から調製した菌体を用いてSDS−PAGEを行い、IPTG添加に依存したPRT799に相当するサイズのバンドの出現により、PRT799の発現を確認した。
(クモ糸タンパク質の精製)
IPTGを添加してから2時間後に回収した菌体を20mM Tris−HCl buffer(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の菌体を約1mMのPMSFを含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)に懸濁させ、高圧ホモジナイザー(GEA Niro Soavi社)で細胞を破砕した。破砕した細胞を遠心分離し、沈殿物を得た。得られた沈殿物を、高純度になるまで20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の沈殿物を100mg/mLの濃度になるように8M グアニジン緩衝液(8M グアニジン塩酸塩、10mM リン酸二水素ナトリウム、20mM NaCl、1mM Tris−HCl、pH7.0)で懸濁し、60℃で30分間、スターラーで撹拌し、溶解させた。溶解後、透析チューブ(三光純薬株式会社製のセルロースチューブ36/32)を用いて水で透析を行った。透析後に得られた白色の凝集タンパク質(PRT799)を遠心分離により回収した。回収した凝集タンパク質から凍結乾燥機で水分を除き、PRT799の凍結乾燥粉末を得た。
得られた凍結乾燥粉末におけるPRT799の精製度は、粉末のポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果をTotallab(nonlinear dynamics ltd.)を用いて画像解析することにより確認した。その結果、PRT799の精製度は約85%であった。
上記の方法で製造された改変クモ糸タンパク質(PRT799、配列番号17)を下記の実験に使用した。
3.実験方法
(1)ドープ液の調製(L-polyAla及びT-polyAla非添加)
上記のタンパク質粉末を使用した。正確に3.6gの乾燥した粉末を秤量し、透明のバイアルに採取した。ギ酸11.1gをバイアルに添加し、40℃で終夜撹拌し、透明の深黄色の液体を得た。このドープ液においてタンパク質濃度は24 wt%である。
(2)L-polyAla又はT-polyAlaを添加したドープ液の調製
polyAla (L-polyAla又はT-polyAla)の0.036g (上記タンパク質粉末に対して1 wt%)をバイアルに採取し、ギ酸(11.364g)を添加し、40℃で1〜2時間撹拌して溶解した。透明の液体を得た後、タンパク質粉末(3.6g)を添加した。タンパク質粉末が完全に溶解するまで、40℃で激しく撹拌した(通常8〜12時間)。このドープ液においてタンパク質濃度は、24wt%である。
(3)紡糸方法
上記の卓上型紡糸装置を用い、紡糸した(図4参照)。その条件を表9と表10に示した。バス1には100%エタノール、バス2及び3には100%メタノール、バス4には水(水道水)を入れ、バス5、6は空の状態で紡糸した。紡糸した繊維は、バス4のみで延伸された。
Figure 2018034111
Figure 2018034111
(4)コンポジット繊維組成物の物理学的特性の評価
バスドラフトにおける射出速度に対する引張速度の割合が0.6又は0.5であり、各引張速度割合で洗浄水バス中の引張速度が7.0倍又は7.8倍で紡糸した場合における繊維の直径、引張強度、ひずみ、靭性、引張応力の標準偏差及び引張歪(ひずみ)の標準偏差をそれぞれ表11及び12に示した。
Figure 2018034111
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バスドラフトにおける引張速度割合(繊維の引張速度/ドープ液射出速度)が小さい程、凝集時間は長くなり、より繊維の凝集が強くなる。上記の結果は、引張速度割合が0.6及び0.5のいずれにおいてもL-polyAla又はT-polyAlaをそれぞれ1%配合したコンポジット繊維は、引張強度、ひずみ及び靭性が向上した。また、洗浄水中での引張速度が7.8倍の場合、表11及び12のいずれにおいても、polyAlaを添加しないコントロール群では、紡糸中に繊維が破断した。これらの結果は、L-polyAla又はT-polyAlaをフィブロイン由来タンパク質に配合させることにより、コンポジット繊維の物理的特性を向上させることを示すものである。
<総括>
上記で認められた結果は、天然フィブロインタンパク質、又は、人工的に改変され製造されたフィブロイン由来タンパク質のいずれに対しても、βシート構造を有するL-poyAla又はT-polyAlaなどのポリペプチド又はポリアミノ酸を配合させて、コンポジット成形組成物を作成することにより、引張張力、最大引張限界率及び靭性等の物理的特性を向上させることができることを示すものである。また、このコンポジット成形組成物の物理特性の向上は、使用するフィブロイン由来タンパク質の種類によって、最適な特性をもたらすには、βシート構造を有するポリペプチド又はポリアミノ酸の種類が異なることを示すものであった。さらに、引張張力、最大引張限界率及び靭性等の各物理的特性に対して、それぞれ至適な特性をもたらす配合量が相違することを示した。
本結果は、コンポジット成形組成物の所望とする特性に応じて、使用する原料、及び、配合量を変化させることにより、物理的特性が向上したコンポジット成形組成物を取得できることを示すものであった。
また、天然のアミノ酸によって構成されるポリペプチド又はポリアミノ酸以外にも、これらの天然のアミノ酸由来以外のβシート構造を有するポリマーをフィブロイン由来タンパク質に配合させることにより、本発明のコンポジット成形組成物の製造に使用してもよい。

Claims (26)

  1. フィブロイン由来タンパク質と、βシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸とを含むことを特徴とする、組成物。
  2. 前記組成物がコンポジット成形組成物であって、フィブロイン由来タンパク質にβシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸が配合され、成形されていることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記コンポジット成形組成物は、前記ポリペプチド及び/又はポリアミノ酸由来のβシート構造が保持されていることを特徴とする、請求項2に記載のコンポジット成形組成物。
  4. 前記コンポジット成形組成物は、コンポジット繊維、コンポジットフィルム、コンポジットゲル又はコンポジットモールド成形体から選択されることを特徴とする、請求項2又は3に記載のコンポジット成形組成物。
  5. フィブロイン由来タンパク質にβシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸が配合されたコンポジット成形組成物であって、
    該コンポジット成形組成物は、コンポジット繊維、コンポジットフィルム、コンポジットゲルから選択され、
    (i) フィブロイン由来タンパク質と、βシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸とを溶解したドープ液を調製するステップ、
    (ii) 前記ドープ液よりコンポジット成形組成物を成形するステップ、
    を含む製造方法で製造されることを特徴とする、コンポジット成形組成物。
  6. コンポジット成形組成物であって、該コンポジット成形組成物は、コンポジット繊維又はコンポジットフィルムから選択され、
    請求項5に記載のステップ(i)、(ii)に加えて、さらに、
    (iii) 前記(ii)で得られたコンポジット成形組成物を溶媒中で延伸し、乾燥するステップ、
    を含む製造方法で製造されることを特徴とする、前延伸コンポジット成形組成物。
  7. コンポジット成形組成物であって、前記コンポジット成形組成物は、コンポジットモールド成形体であって、
    (i) フィブロイン由来タンパク質と、βシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸とを混合し、混合物を調製するステップ、
    (ii) 前記混合物に圧力を負荷し、加熱するステップ、
    を含む製造方法で製造されるモールド成形体であることを特徴とする、コンポジット成形組成物。
  8. 前記フィブロイン由来タンパク質が、
    (i) 天然のフィブロイン由来タンパク質、及び/又は、
    (ii) 改変されたフィブロイン由来タンパク質
    から選択されることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載のコンポジット成形組成物。
  9. 前記天然のフィブロイン由来タンパク質が、絹フィブロイン由来のシルクタンパク質(シルクフィブロインタンパク質)、クモ糸フィブロイン由来のクモ糸タンパク質(クモ糸フィブロインタンパク質)、及びホーネットシルクフィブロイン由来のホーネットシルクタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項8に記載のコンポジット成形組成物。
  10. 前記改変されたフィブロイン由来タンパク質が、下記式(I)で表されるドメイン配列を含む改変されたフィブロイン由来タンパク質であることを特徴とする、請求項8に記載のコンポジット成形組成物;
    Figure 2018034111
    ただし、前記ドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、少なくともREP中の1又は複数のグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されており、グリシン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列を有する、改変フィブロインタンパク質:
    [式I中、
    (A)モチーフは2〜20アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、かつ、
    (A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が40%以上であり、
    REPは2〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、
    mは2〜300の整数であり、
    複数存在する(A)モチーフは、相互に同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよく、
    複数存在するREPは、相互に同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい]。
  11. 請求項10に記載の前記改変されたフィブロイン由来タンパク質において、前記ドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、REP中のGGX及びGPGXX(ただし、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を表す。)から選ばれる少なくとも1つのモチーフ配列において、少なくとも1又は複数の当該モチーフ配列中の1つのグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたことに相当するアミノ酸配列を有し、かつグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたモチーフ配列の割合が、全モチーフ配列に対して、10%以上であることを特徴とする、コンポジット成形組成物。
  12. 請求項10又は11に記載の前記改変されたフィブロイン由来タンパク質において、N末端側からC末端側に向かって、隣り合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのREPのアミノ酸残基数を順次比較して、アミノ酸残基数が少ないREPのアミノ酸残基数を1としてとき、他方のREPのアミノ酸残基数の比が2〜3.5となる前記隣り合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのアミノ酸残基数を足し合わせた合計値をxとし、前記ドメイン配列の総アミノ酸残基数をyとしたときに、x/y(%)の最大値が20%以上であることを特徴とする、コンポジット成形組成物。
  13. 前記式(I)で表される改変されたフィブロイン由来タンパク質が、配列番号1〜19で表されるアミノ酸配列を有する改変されたフィブロイン由来タンパク質であることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか1項に記載のコンポジット成形組成物。
  14. 前記フィブロイン由来タンパク質が、請求項8〜13のいずれか1項に記載のフィブロイン由来タンパク質のアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するフィブロイン由来タンパク質であることを特徴とする、コンポジット成形組成物。
  15. 前記βシート構造を有するポリアミノ酸がポリアラニンであることを特徴とする、請求項2〜14のいずれか1項に記載のコンポジット成形組成物。
  16. 前記ポリアラニンが、ライナー型ポリアラニン又はテレケリック型ポリアラニンから選択されることを特徴とする、請求項15に記載のコンポジット成形組成物。
  17. フィブロイン由来タンパク質にβシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸が配合された、コンポジット繊維、コンポジットフィルム、コンポジットゲルから選択されるコンポジット成形組成物の製造方法であって、
    (i) フィブロイン由来タンパク質と、βシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸を溶解したドープ液を調製するステップ、
    (ii) 前記ドープ液を紡糸又は延伸することにより前記コンポジット成形組成物を製造するステップ、
    を含むことを特徴とする、製造方法。
  18. フィブロイン由来タンパク質にβシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸が配合された、コンポジットモールド成形体の製造方法であって、
    (i) 粉状のフィブロイン由来タンパク質と、粉状のβシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸とを混合し、混合体を調製するステップ、
    (ii) 前記混合体に圧力を負荷し、加熱するステップ、
    を含むことを特徴とする、製造方法。
  19. 前延伸コンポジット成形組成物の製造方法であって、
    (i) 請求項17又は18に記載の製造方法で製造されたコンポジット成形組成物を溶媒中で延伸するステップ、及び、
    (ii) 延伸されたコンポジット成形組成物を乾燥させるステップ、
    を含むことを特徴とする、製造方法。
  20. 前記フィブロイン由来タンパク質が、
    (i) 天然のフィブロイン由来タンパク質、及び/又は、
    (ii) 改変されたフィブロイン由来タンパク質
    から選択されることを特徴とする請求項17〜19のいずれか1項に記載の製造方法。
  21. 前記天然のフィブロイン由来タンパク質が、絹フィブロイン由来のシルクタンパク質(シルクフィブロインタンパク質)、クモ糸フィブロイン由来のクモ糸タンパク質(クモ糸フィブロインタンパク質)、及びホーネットシルクフィブロイン由来のホーネットシルクタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項20に記載の製造方法。
  22. 前記βシート構造を有するポリアミノ酸がポリアラニンであることを特徴とする、請求項17〜21のいずれか1項に記載の製造方法。
  23. 前記ポリアラニンが、ライナー型ポリアラニン又はテレケリック型ポリアラニンから選択されることを特徴とする、請求項22に記載の製造方法。
  24. フィブロイン由来タンパク質に、βシート構造を有するポリペプチド及び/又はポリアミノ酸を配合させることを特徴とする、コンポジット成形組成物の物理的特性を向上させる方法。
  25. 請求項24に記載の方法に、さらに、前記コンポジット成形組成物を溶媒中で延伸後、乾燥させることを特徴とする、コンポジット成形組成物の物理的特性を向上させる方法。
  26. 前記物理的特性の向上が、引張強度の増加、ひずみの増加及び/又は靭性の増加であることを特徴とする、請求項24又は25に記載の方法。

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