JPWO2018025649A1 - 全固体リチウム電池 - Google Patents
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Abstract
Description
前記配向正極板上に設けられ、リチウムイオン伝導材料で構成される固体電解質層と、
前記固体電解質層上に設けられる、リチウムを含む負極層と、
前記配向正極板の前記固体電解質層と反対側の面に、接着剤を含まない非接着状態で全面的に接触されている、厚さ5μm以上30μm以下の金属箔である正極集電体と、
を備えた、全固体リチウム電池が提供される。
図1及び2に本発明による全固体リチウム電池の一例を模式的に示す。図1及び2に示される全固体リチウム電池10は、配向正極板12、固体電解質層14、負極層16、及び正極集電体20を備える。図1に示される全固体リチウム電池10は、配向正極板12、固体電解質層14、負極層16、及び正極集電体20で構成される2個の単位電池を負極集電体24を介して上下対称に並列積層した構成を有している。もっとも、これに限らず、図3に模式的に示されるように1つの単位電池10’からなる構成であってもよいし、2つ以上の単位電池を並列又は直列に積層した構成であってもよい。配向正極板12は、配向焼結体からなる厚さ20μm以上の自立した板であって、配向焼結体は層状岩塩構造を有するリチウム複合酸化物で構成される複数の結晶粒を含む。これらの複数の結晶粒は(003)面が配向正極板12の板面に対して平行に配向している。固体電解質層14は、配向正極板12上に設けられ、リチウムイオン伝導材料で構成される。負極層16は、固体電解質層14上に設けられ、リチウムを含む層である。正極集電体20は、厚さ5μm以上30μm以下の金属箔であり、配向正極板12の固体電解質層14と反対側の面に、接着剤を含まない非接着状態で全面的に接触されている。このように、焼結体からなる厚い配向正極板を採用した全固体リチウム電池において、配向正極板を、接着剤を伴わない非接着状態で薄い正極集電体に全面的に接触させることにより、繰り返し使用時の抵抗増加率を有意に低減でき、その結果、長期的な信頼性を大幅に改善することができる。すなわち、厚さ5μm以上30μm以下の金属箔である正極集電体20は柔軟性のある薄い導電性材料であるため、配向正極板12の表面に全面的に均一に密着することができる。もっとも、金属箔である正極集電体20と配向正極板12とは、微視的には互いに点接触となるため、面内で集電ムラが生じうる。しかしながら、接触点の間隔は配向正極板12の厚さ(20μm以上)に対して有意に小さいことから、接触点から位置ずれによる集電ムラを配向正極板12の厚さ方向へのLiイオン拡散で相殺できるため、板面内での充放電ムラを無くすことができる。しかも、配向正極板12が正極集電体20に接着剤フリーの非接着状態で集電が行われるため、配向正極板12の膨張収縮によっても、正極集電体20は基本的に追随されない。また、仮にそうではなかったとしても正極集電体20は薄い金属箔であるためそれ自体の延性により膨張収縮にある程度は追随することができる。いずれにしても、配向正極板12は膨張収縮に応じて、正極集電体20との接触を確保しながら、正極集電体20に対して相対的に動くことができる。このため、配向正極板12と正極集電体20の間での界面応力が発生せず、それ故界面剥離等の劣化要因を排除することができる。こうして長期的な信頼性が大幅に改善されるものと考えられる。すなわち、配向正極板12が充放電で膨張収縮することに起因する界面剥離及びそれによる接触抵抗の増大を有意に抑制することができ、長期的な信頼性を改善することができる。しかも、後述するように、(003)面が配向正極板の板面に対して平行に配向した配向正極板の採用により、レート特性及びサイクル特性といった電池特性も良好となる。
正極集電体20は金属箔である。金属箔の厚さは5〜30μmであり、好ましくは5〜25μm、より好ましくは10〜25μm、さらに好ましくは10〜20μmである。このように厚くすることで十分な集電機能を確保することができる。正極集電体20は、配向正極板12の固体電解質層14と反対側の面に、接着剤を含まない非接着状態で全面的に接触されている。このため、上記のように極めて薄い金属箔であると柔軟性に富むため、配向正極板12の表面に全面的に均一に密着させやすくなる。正極集電体20を構成する金属は、配向正極板12と反応しないものであれば特に限定されず、合金であってもよい。そのような金属の好ましい例としては、ステンレス、アルミニウム、銅、白金、ニッケルが挙げられ、より好ましくはステンレス及びニッケルが挙げられる。
配向正極板12は配向焼結体からなる厚さ20μm以上の自立した板である。配向焼結体は層状岩塩構造を有するリチウム複合酸化物で構成される複数の結晶粒を含む。リチウム複合酸化物は、LixMO2(0.05<x<1.10であり、Mは少なくとも1種類の遷移金属であり、Mは典型的にはCo、Ni及びMnから選択される1種以上を含む)で表される酸化物である。リチウム複合酸化物は、典型的には層状岩塩構造を有する。層状岩塩構造とは、リチウム層とリチウム以外の遷移金属層とが酸素の層を挟んで交互に積層された結晶構造、すなわち、酸化物イオンを介して遷移金属イオン層とリチウム単独層とが交互に積層した結晶構造(典型的には、α−NaFeO2型構造、すなわち立方晶岩塩型構造の[111]軸方向に遷移金属とリチウムとが規則配列した構造)をいう。リチウム複合酸化物の例としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル・マンガン酸リチウム、ニッケル・コバルト酸リチウム、コバルト・ニッケル・マンガン酸リチウム、コバルト・マンガン酸リチウムなどが挙げられる。リチウム複合酸化物には、Mg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ag,Sn,Sb,Te,Ba,Bi、W等から選択される一種以上の元素が含まれていてもよい。特に好ましいリチウム複合酸化物はコバルト酸リチウムである。すなわち、結晶粒がコバルト酸リチウム結晶粒であるのが特に好ましい。
固体電解質層14を構成するリチウムイオン伝導材料は、ガーネット系セラミックス材料、窒化物系セラミックス材料、ペロブスカイト系セラミックス材料、リン酸系セラミックス材料、硫化物系セラミックス材料、又は高分子系材料で構成されるのが好ましく、より好ましくは、ガーネット系セラミックス材料、窒化物系セラミックス材料、ペロブスカイト系セラミックス材料、及びリン酸系セラミックス材料からなる群から選択される少なくとも一種である。ガーネット系セラミックス材料の例としては、Li−La−Zr−O系材料(具体的には、Li7La3Zr2O12など)、Li−La−Ta−O系材料(具体的には、Li7La3Ta2O12など)が挙げられる。窒化物系セラミックス材料の例としては、Li3N。ペロブスカイト系セラミックス材料の例としては、Li−La−Zr−O系材料(具体的には、LiLa1−xTixO3(0.04≦x≦0.14)など)が挙げられる。リン酸系セラミックス材料の例としては、リン酸リチウム、窒素置換リン酸リチウム(LiPON)、Li−Al−Ti−P−O,Li−Al−Ge−P−O、及びLi−Al−Ti−Si−P−O(具体的には、Li1+x+yAlxTi2−xSiyP3−yO12(0≦x≦0.4、0<y≦0.6)など)が挙げられる。
負極層16はリチウムを含む層であり、典型的にはリチウム金属により構成される。負極層16は、固体電解質層14又は負極集電体24上に箔形態のリチウム金属を載置することにより作製してもよいし、あるいは固体電解質層14または負極集電体24上にリチウム金属の薄膜を真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法等で形成してリチウム金属の層を形成することにより作製することができる。
所望により、負極層16と固体電解質層14の間に中間層を介在させてもよい。すなわち、全固体リチウム電池10は、固体電解質層14の負極層16側の面にリチウムと合金化可能な金属を含む中間層をさらに含むことができる。中間層の構成材料としては、リチウムと合金化する金属、酸化物系材料等を用いることができる。こうすることで、リフローはんだ付けプロセス等の加熱を伴うプロセス(例えば200℃以上の温度で行われるプロセス)に付されても、リチウム金属の融け出し等が有意に抑制され、それ故、内部短絡や負極層の剥離を効果的に防止することができる。また、充放電サイクル特性を向上させることができる。リチウムと合金化可能な金属は、Al(アルミニウム)、Si(シリコン)、Zn(亜鉛)、Ga(ガリウム)、Ge(ゲルマニウム)、Ag(銀)、Au(金)、Pt(白金)、Cd(カドミウム)、In(インジウム)、Sn(スズ)、Sb(アンチモン)、Pb(鉛)、及びBi(ビスマス)からなる群から選択される少なくとも1種を含むのが好ましく、より好ましくはAu(金)、In(インジウム)、Si(シリコン)、Sn(スズ)、Zn(亜鉛)、及びAl(アルミニウム)からなる群から選択される少なくとも1種を含む。例えば、好ましいリチウムと合金化可能な金属は、Au(金)及びIn(インジウム)から選択される少なくとも1種を含むものでありうる。リチウムと合金化可能な金属は、Mg2SiやMg2Sn等の2種類以上の元素により構成された合金であってもよい。酸化物系材料の例としては、Li4Ti5O12、TiO2、SiO等が挙げられる。中間層の形成は、エアロゾルデポジション(AD)法、パルスレーザー堆積(PLD)法、スパッタリング法、蒸着法等の公知の方法により行えばよい。中間層の寸法は特に限定されないが、厚さは加熱時の合金化促進の観点から、厚さ0.05〜1μmが好ましく、より好ましくは0.05〜0.5μm、さらに好ましくは0.08〜0.2μm、特に好ましくは0.1〜0.15μmである。なお、ここで中間層として例示した材料はそれ自体で負極として充放電に寄与するため、これらの材料から選択される少なくとも1種の材料で負極を構成してもよい。
所望により、端部絶縁部18が固体電解質層14の端部を絶縁被覆するように設けられてもよい。端部絶縁部18は、固体電解質層14と接着又は密着可能な有機高分子材料を含むのが好ましい。端部絶縁部18がそのような有機高分子材料を含むことで、配向正極板12と負極層16との短絡防止をより効果的に実現することができる。有機高分子材料は、バインダー、熱溶融樹脂及び接着剤からなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。バインダーの好ましい例としては、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、及びその組合せが挙げられる。熱融着樹脂の好ましい例としては、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。熱溶融樹脂は後述するように熱融着フィルムの形態で供されるのが好ましい。接着剤の好ましい例としてはエポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂を用いた熱硬化型接着剤が挙げられる。したがって、有機高分子材料は、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂及びエポキシ系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が好ましいといえる。セルロース系樹脂の例としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、及び上記のアルカリ金属塩、及びアンモニウム塩が挙げられる。アクリル系樹脂の例としては、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸塩、並びにこれらの無水マレイン酸変性物、マレイン酸変性物及びフマル酸変性物が挙げられる。フッ素系樹脂の例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、ヘキサフルオロプロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、並びにこれらの無水マレイン酸変性物、マレイン酸変性物及びフマル酸変性物が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、並びにこれらの無水マレイン酸変性物、マレイン酸変性物及びフマル酸変性物が挙げられる。
負極層16の外側には負極集電体24が設けられるのが好ましい。負極集電体24は負極の外側を被覆する負極外装材を兼ねていてもよい。例えば、図4に示されるように、図1に示される構成とは逆に、2個の単位電池を1枚の正極集電体20を介して上下対称に並列積層して負極集電体24を全固体リチウム電池の外側に露出させた構成としてもよい。このような並列積層型電池に構成される場合、正極集電体20を隣り合う2個の単位電池に共通の集電体として機能させることができる。
全固体リチウム電池10には、正極集電体20及び負極集電体24で被覆されていない、配向正極板12、固体電解質層14、負極層16及び(存在する場合には)端部絶縁部18の露出部分を封止する、封着材で構成される端部封止部26がさらに設けられるのが好ましい。端部封止部26を設けて、正極集電体20及び負極集電体24で被覆されていない、配向正極板12、固体電解質層14、負極層16及び端部絶縁部18の露出部分を封止することで、優れた耐湿性(望ましくは高温における耐湿性)を確保することができる。それにより、全固体リチウム電池10内への望ましくない水分の侵入を効果的に阻止して電池特性を向上できる。端部封止部26は封着材で構成される。封着材は、正極集電体20、負極集電体24及び端部絶縁部18で被覆されていない上記露出部分を封止して優れた耐湿性(望ましくは高温における耐湿性)を確保可能なものであれば特に限定されない。もっとも、封着材は正極集電体20と負極集電体24の間の電気的絶縁性を確保することが望まれるのはいうまでもない。その意味で、封着材は1×106Ωcm以上の抵抗率を有するのが好ましく、より好ましくは1×107Ωcm以上であり、さらに好ましくは1×108Ωcm以上である。このような抵抗率であれば自己放電を有意に小さくすることができる。
全固体リチウム電池は、単位電池1個を備えた構成の場合、60〜5000μmの厚さを有するのが好ましく、より好ましくは、70〜4000μm、さらに好ましくは、80〜3000μm、特に好ましくは、90〜2000μm、最も好ましくは、100〜1000μmである。本発明によれば、配向正極板を比較的厚くできる一方、集電体で外装材を兼用するため電池全体の厚さを比較的薄く構成することができる。
本発明の全固体リチウム電池に用いられる配向正極板ないし配向焼結板は、いかなる製法によって製造されてもよいが、好ましくは、以下に例示されるように、(1)LiCoO2テンプレート粒子の作製、(2)マトリックス粒子の作製、(3)グリーンシートの作製、及び(4)配向焼結板の作製を経て製造される。
Co3O4原料粉末とLi2CO3原料粉末とを混合して焼成(500〜900℃、1〜20時間)することによって、LiCoO2粉末を合成する。得られたLiCoO2粉末をポットミルにて体積基準D50粒径0.2μm〜10μmに粉砕することによって、板面と平行にリチウムイオンを伝導可能な板状のLiCoO2粒子が得られる。このようなLiCoO2粒子は、LiCoO2粉末スラリーを用いたグリーンシートを粒成長させた後に解砕する手法や、フラックス法や水熱合成、融液を用いた単結晶育成、ゾルゲル法など板状結晶を合成する手法によっても得ることができる。得られたLiCoO2粒子は、劈開面に沿って劈開しやすい状態となっている。LiCoO2粒子を解砕によって劈開させることで、LiCoO2テンプレート粒子を作製する。
Co3O4原料粉末をマトリックス粒子として用いる。Co3O4原料粉末の体積基準D50粒径は特に制限されず、例えば0.1〜1.0μmとすることができるが、LiCoO2テンプレート粒子の体積基準D50粒径より小さいことが好ましい。このマトリックス粒子は、Co(OH)2原料を500℃〜800℃で1〜10時間熱処理を行なうことによっても得ることができる。また、マトリックス粒子には、Co3O4のほか、Co(OH)2粒子を用いてもよいし、LiCoO2粒子を用いてもよい。
LiCoO2テンプレート粒子とマトリックス粒子を100:3〜3:97に混合した粉末と分散媒とバインダーと可塑剤と分散剤とを混合しながら、減圧下で撹拌して脱泡するとともに所望の粘度に調整することによってスラリーを調製する。次に、LiCoO2テンプレート粒子にせん断力を印加可能な成形手法を用いて、調製したスラリーを成形することによって、成形体を形成する。これによって、各一次粒子の平均配向角度を0°超30°以下とすることができる。LiCoO2テンプレート粒子にせん断力を印加可能な成形手法としては、ドクターブレード法が好適である。ドクターブレード法を用いる場合には、調製したスラリーをPETフィルムの上に成形することによって、成形体としてのグリーンシートが形成される。
スラリーの成形体をジルコニア製セッターに載置して加熱処理(500℃〜900℃、1〜10時間)することによって、中間体としての焼結板を得る。次に、合成したリチウムシートをLi/Co比が1.0になるように、焼結板をリチウムシートで上下挟み込み、ジルコニアセッター上に載せる。次に、セッターをアルミナ鞘に入れ、大気中にて焼成(700〜850℃、1〜20時間)した後、焼結板をリチウムシートで上下挟み、さらに焼成(750〜900℃、1〜40時間)することによって、LiCoO2焼結板を得る。この焼成工程は、2度に分けて行ってもよいし、1度に行なってもよい。2度に分けて焼成する場合には、1度目の焼成温度が2度目の焼成温度より低いことが好ましい。
(1)LCOテンプレート粒子の作製
Co3O4原料粉末(体積基準D50粒径0.8μm、正同化学工業株式会社製)とLi2CO3原料粉末(体積基準D50粒径2.5μm、本荘ケミカル製)を混合し、800℃〜900℃で5時間焼成することでLiCoO2原料粉末を合成した。この際、熱処理温度とLi/Co比を調整することによって、LiCoO2原料粉末の体積基準D50粒径を表1に示すように調整した。
Co3O4原料粉末(正同化学工業株式会社製)をマトリックス粒子とした。マトリックス粒子の体積基準D50粒径は、表1に示すとおりとした。ただし、例A4ではマトリックス粒子を用いなかった。
LCOテンプレート粒子とCoOマトリックス粒子を混合した。LCOテンプレート粒子とCoOマトリックス粒子の重量比は、表1に示すとおりとした。ただし、例A4ではマトリックス粒子を用いなかったため、重量比は、100:0である。
PETフィルムから剥がしたグリーンシートをジルコニア製セッターに載置して一次焼成することによってCo3O4焼結板を得た。表1に示すとおり、例A1〜A6,A8では焼成条件を900℃、5時間とし、例A7では焼成条件を800℃、5時間とした。
直径4インチ(約10cm)のリン酸リチウム焼結体ターゲットを準備し、スパッタリング装置(キャノンアネルバ社製 SPF−430H)を用いてRFマグネトロン方式にてガス種N2を0.2Pa、出力0.2kWにて膜厚2μmとなるようにスパッタリングを行なった。こうして、厚さ2μmのLiPON系固体電解質スパッタ膜をLiCoO2焼結板上に形成した。
イオンスパッタリング装置(日本電子社製 JFC−1500)を用いたスパッタリングにより、固体電解質層上に厚さ500ÅのAu膜を形成した。
後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製FE−SEM、SU5000及びオックスフォード・インストゥルメンツ製EBSD検出器、NordlyNano)を用いて、正極の板面に垂直な断面におけるEBSD像を取得した。そして、EBSD像上において、前述の条件で選択した30個程度の一次粒子の配向角度を算術平均することによって、一次粒子の平均配向角度を算出した。算出結果は表2に示すとおりであった。いずれの例においても、板面と(003)面がなす角度が30度以内、より典型的には25度以内、さらに典型的には20度以内、特に典型的には15度以内、特に典型的には10度以内、最も典型的には5度以内である複数の結晶粒(一次粒子)を含んでおり、(003)面が配向正極板の板面に対して平行に配向している複数の結晶粒が含まれていることが確認された。
CP研磨した正極の断面における1000倍率のSEM画像を2値化した。そして、2値化画像上において、固相と気相の合計面積に対する固相の面積割合を緻密度として算出した。算出結果は表2に示すとおりであった。
リチウムイオン電池を0.1[mA]定電流で4.2[V]まで充電した後、定電圧で電流が0.05[mA]になるまで充電した。そして、0.2[mA]定電流で3.0[V]まで放電し、放電容量W0を測定した。また0.1[mA]定電流で4.2[V]まで充電した後、定電圧で電流が0.05[mA]になるまで充電し、そして、2.0[mA]定電流で3.0[V]まで放電し、放電容量W1を測定した。W1をW0で除することでレート性能を評価した。
リチウムイオン電池を0.1[mA]定電流で4.2[V]まで充電した後、定電圧で電流が0.05[mA]になるまで充電した。そして、0.2[mA]定電流で3.0[V]まで放電し、放電容量W0を測定した。この測定を30回繰り返し、30回目の放電容量W30を測定した。W30をW0で除することでサイクル容量維持率を評価した。
本例は、(104)面が板面に対して平行に配向した(すなわち(003)面が板面と平行に配向していない)配向正極板が集電板へ接着された状態の全固体リチウム電池を作製及び評価した比較例である。
(1a)グリーンシートの作製
Co3O4原料粉末(体積基準D50粒径0.3μm、正同化学工業株式会社製)に5wt%の割合でBi2O3(体積基準D50粒径0.3μm、太陽鉱工株式会社製)を添加して混合粉末を得た。この混合粉末100重量部と、分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)10重量部と、可塑剤(DOP:ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(製品名レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。この混合物を、減圧下で撹拌することで脱泡するとともに、4000cPの粘度に調整した。なお、粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。上記のようにして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの上に、乾燥後の厚さが40μmとなるように、シート状に成形してグリーンシートを得た。
PETフィルムから剥がしたグリーンシートを、カッターで40mm角に切り出し、突起の高さが300μmのエンボス加工を施したジルコニア製セッター(寸法90mm角、高さ1mm)の中央に載置し、1300℃で5時間焼成後、降温速度50℃/hにて降温し、セッターに溶着していない部分をCo3O4配向焼結板として取り出した。
LiOH・H2O粉末(和光純薬工業株式会社製)をジェットミルで1μm以下に粉砕し、エタノールに分散したスラリーを作製した。このスラリーを上記Co3O4配向焼結板にLi/Co=1.3になるように塗布し、乾燥した。その後、ジルコニアセッター上に載せ、大気中にて840℃で20時間加熱処理して厚さ45μmからなるLiCoO2配向焼結板を配向正極板として得た。得られた焼結板の嵩密度をアルキメデス法で測定し、嵩密度をコバルト酸リチウムの真密度5.05g/cm3で除することにより、緻密度を算出した。その結果、焼結板の緻密度は97%であった。
(2a)導電膜の作製
イオンスパッタリング装置(日本電子製、JFC−1500)を用いたスパッタリングにより、コバルト酸リチウム配向正極板の片面に厚さ1000ÅのAu膜を導電膜として形成した。
上記コバルト酸リチウム配向焼結板を10mm角に切出し、配向焼結板の導電膜面を、導電性カーボンを分散させたエポキシ樹脂系の導電性接着剤で、ステンレス集電板(正極外装材、13mm角、厚さ100μm)上に固定することによって、平板状の配向正極板/導電性接着剤/正極外装材の積層板を得た。
直径4インチ(約10cm)のリン酸リチウム焼結体ターゲットを準備した。このターゲットに対して、スパッタリング装置(キャノンアネルバ製、SPF−430H)を用いてRFマグネトロン方式にてガス種N2を0.2Pa、出力0.2kWの条件にて衝突させて上記配向正極板の板表面に薄膜を設けるスパッタリングを行なった。こうして、配向正極板上に、膜厚3.5μmのLiPON(リン酸リチウムオキシナイトライドガラス電解質)系の固体電解質スパッタ膜を固体電解質層として形成した。
リチウム金属を載せたタングステンボートを準備した。真空蒸着装置(サンユー電子製、カーボンコーターSVC−700)を用いて、抵抗加熱によりLiを蒸発させて上記固体電解質層の表面に薄膜を設ける蒸着を行った。このとき、マスクを用いて負極層のサイズを9.5mm角として、負極層が10mm角の正極領域内に収まるようにした。こうして、固体電解質層上に膜厚10μmのLi蒸着膜を負極層として形成した単電池を作製した。
上記単電池の端部(正極集電板の外周部)に、変性ポリプロピレン樹脂フィルム(厚さ100μm)を積層することにより、端部封止部を作製した。
上記単電池の負極層上に、負極集電体(負極外装材)として厚さ20μmのステンレス集電板を積層し、減圧下、200℃のホットプレートを使用して加熱圧着した。こうして全固体リチウム電池を得た。
全固体リチウム電池を0.1mA定電流で4.1Vまで充電し、その後定電圧で電流が0.02mAになるまで充電して、充電容量を得た。その後、0.1mA定電流で3.0Vまで放電した。この操作を50回繰り返した。放電開始から10秒後のIRドロップから電池の内部抵抗Rを算出し、5回目の放電時の内部抵抗をR5、50回目の放電時の内部抵抗R50とした。R50をR5で除した値を抵抗変化率とした。5つの電池を作製及び評価し、その平均を取ったところ、抵抗変化率は220%であった。
本例は、(104)面が板面に対して平行に配向した(すなわち(003)面が板面と平行に配向していない)配向正極板が集電板へ接着されていない状態の全固体リチウム電池を作製及び評価した比較例である。
(1a)グリーンシートの作製
Co3O4原料粉末(体積基準D50粒径0.3μm、正同化学工業株式会社製)に5wt%の割合でBi2O3(体積基準D50粒径0.3μm、太陽鉱工株式会社製)を添加して混合粉末を得た。この混合粉末100重量部と、分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)10重量部と、可塑剤(DOP:ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(製品名レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。この混合物を、減圧下で撹拌することで脱泡するとともに、4000cPの粘度に調整した。なお、粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。上記のようにして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの上に、乾燥後の厚さが40μmとなるように、シート状に成形してグリーンシートを得た。
例B1と同様の手順により、厚さ45μmからなるLiCoO2配向焼結板を配向正極板として得た。
(2a)導電膜の作製及び配向正極板の切り出し
イオンスパッタリング装置(日本電子製、JFC−1500)を用いたスパッタリングにより、コバルト酸リチウム配向正極板の片面に厚さ1000ÅのAu膜を導電膜として形成した。さらに、配向正極板を10mm角に切り出した。
直径4インチ(約10cm)のリン酸リチウム焼結体ターゲットを準備した。このターゲットに対して、スパッタリング装置(キャノンアネルバ製、SPF−430H)を用いてRFマグネトロン方式にてガス種N2を0.2Pa、出力0.2kWの条件にて衝突させて上記配向正極板の板表面に薄膜を設けるスパッタリングを行なった。こうして、配向正極板上に、膜厚3.5μmのLiPON(リン酸リチウムオキシナイトライドガラス電解質)系の固体電解質スパッタ膜を固体電解質層として形成した。
リチウム金属を載せたタングステンボートを準備した。真空蒸着装置(サンユー電子製、カーボンコーターSVC−700)を用いて、抵抗加熱によりLiを蒸発させて上記中間層の表面に薄膜を設ける蒸着を行った。このとき、マスクを用いて負極層のサイズを9.5mm角として、負極層が10mm角の正極領域内に収まるようにした。こうして、固体電解質層上に膜厚10μmのLi蒸着膜を負極層として形成した単電池を作製した。
厚さ20μmのステンレス箔を13mm角に切り出して正極集電板とした。また、外縁形状が13mm角で、その内側に11mm角の孔が打ち抜かれた、1mm幅の枠状の変性ポリプロピレン樹脂フィルム(厚さ100μm)を用意した。この枠状の樹脂フィルムを正極集電板上の外周部に積層し、加熱圧着して端部封止部を形成した。正極集電板上の端部封止部で囲まれた領域内に上記単電池を載置した。載置した単電池の負極側にも上記同様に厚さ20μmのステンレス箔を載置し、端部封止部に対して荷重を加えながら、減圧下、200℃で加熱した。こうして外周全体にわたって端部封止部と上下2枚のステンレス箔とを貼り合せて単電池を封止した。こうして、封止形態の全固体リチウム電池を得た。こうして得られた電池は、配向正極板が集電板へ接着されていない状態のものである。すなわち、得られた電池は、正極集電体が、配向正極板の固体電解質層と反対側の面に、接着剤を含まない非接着状態で全面的に接触されているものである。
上記のようにして得られた全固体リチウム電池5個を例B1と同様にして評価したところ、すべてサイクル途中で漏れ電流が発生したため、不良品と判定した。
本例は、(003)面が板面と平行に配向した配向正極板が集電板へ接着されていない状態の全固体リチウム電池を作製及び評価した実施例である。
例A2と同様にして、表1に示される条件に従い、(003)面が板面と平行に配向した配向正極板を作製した。得られた配向正極板の特性は表2に示されるとおりである。
上記(1)で得られたコバルト酸リチウム配向正極板を用いたこと以外は、例B2と同様にして、封止形態の全固体リチウム電池を得た。こうして得られた電池は、配向正極板が集電板へ接着されていない状態のものである。すなわち、得られた電池は、正極集電体が、配向正極板の固体電解質層と反対側の面に、接着剤を含まない非接着状態で全面的に接触されているものである。
上記のようにして得られた全固体リチウム電池5個を例B1と同様にして評価したところ、抵抗増加率は120%であった。
Claims (14)
- 配向焼結体からなる厚さ20μm以上の自立した配向正極板であって、前記配向焼結体が層状岩塩構造を有するリチウム複合酸化物で構成される複数の結晶粒を含み、前記複数の結晶粒は(003)面が前記配向正極板の板面に対して平行に配向している、配向正極板と、
前記配向正極板上に設けられ、リチウムイオン伝導材料で構成される固体電解質層と、
前記固体電解質層上に設けられる、リチウムを含む負極層と、
前記配向正極板の前記固体電解質層と反対側の面に、接着剤を含まない非接着状態で全面的に接触されている、厚さ5μm以上30μm以下の金属箔である正極集電体と、
を備えた、全固体リチウム電池。 - 前記配向正極板の厚さが20〜100μmである、請求項1に記載の全固体リチウム電池。
- 前記配向焼結体の断面を電子線後方散乱回折法(EBSD)により解析した場合に、解析された前記断面に含まれる結晶粒のうち前記板面に対する(003)面の角度が0°超30°以下である結晶粒の合計面積が、前記断面に含まれる結晶粒の総面積に対して70%以上である、請求項1又は2に記載の全固体リチウム電池。
- 前記リチウム複合酸化物がコバルト酸リチウムである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の全固体リチウム電池。
- 前記焼結体の緻密度が90%以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の全固体リチウム電池。
- 前記配向正極板が、前記固体電解質層と反対側の面に、厚さ0.01μm以上5μm未満の導電膜をさらに備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の全固体リチウム電池。
- 前記導電膜が金属及び/又はカーボンで構成される、請求項6に記載の全固体リチウム電池。
- 前記正極集電体が、前記固体電解質層側の面にカーボン膜をさらに備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載の全固体リチウム電池。
- 前記正極集電体が、前記配向正極板に対して押圧されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の全固体リチウム電池。
- 前記正極集電体の前記配向正極板に対する押圧は、前記正極集電体の内外気圧差によってもたらされている、請求項9に記載の全固体リチウム電池。
- 前記配向正極板、前記固体電解質層及び前記負極層を含む積層体が外装材で包装又は封止されており、前記正極集電体が前記外装材の一部を構成し、前記外装材で包装又は封止される前記積層体の収容空間が減圧されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の全固体リチウム電池。
- 前記固体電解質層を構成する前記リチウムイオン伝導材料が、ガーネット系セラミックス材料、窒化物系セラミックス材料、ペロブスカイト系セラミックス材料、リン酸系セラミックス材料、硫化物系セラミックス材料、又は高分子系材料で構成されている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の全固体リチウム電池。
- 前記固体電解質層を構成する前記リチウムイオン伝導材料が、Li−La−Zr−O系セラミックス材料及び/又はリン酸リチウムオキシナイトライド(LiPON)系セラミックス材料で構成される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の全固体リチウム電池。
- 前記固体電解質層の前記負極側の面にリチウムと合金化可能な金属を含む中間層をさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の全固体リチウム電池。
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