JP6906522B2 - 全固体リチウム電池 - Google Patents
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Description
前記配向正極板上に設けられ、リチウムイオン伝導材料で構成される固体電解質層と、
前記固体電解質層上に設けられ、リチウムと合金化可能な金属を含む、厚さ0.001〜1μmの中間層と、
を備えた、全固体リチウム電池が提供される。
図1及び2に本発明による全固体リチウム電池の一例を模式的に示す。図1及び2に示される全固体リチウム電池10は、配向正極板12、固体電解質層14、中間層15、及び所望により負極層16を備える。図1に示される全固体リチウム電池10は、配向正極板12、中間層13、固体電解質層14、中間層15、負極層16、及び正極集電体20で構成される2個の単位電池を負極集電体24を介して上下対称に並列積層した構成を有している。もっとも、これに限らず、図3に模式的に示されるように1つの単位電池10’からなる構成であってもよいし、2つ以上の単位電池を並列又は直列に積層した構成であってもよい。配向正極板12は、配向焼結体で構成される厚さ30μm以上の板であって、配向焼結体は層状岩塩構造を有するリチウム複合酸化物で構成される複数の一次粒子を含む。これらの複数の一次粒子は配向正極板の板面に対して0°超30°以下の平均配向角度で配向している。平均配向角度とは各一次粒子の(003)面が板面方向に対して成す傾斜角度の平均値である。固体電解質層14は、リチウムイオン伝導材料で構成され、配向正極板12上に設けられる。中間層15は、リチウムと合金化可能な金属を含む、厚さ0.001〜1μmの層であり、固体電解質層14上に設けられる。このように、(i)複数の一次粒子が配向正極板12の板面に対して0°超30°以下の平均配向角度で配向した配向正極板12を採用し、かつ、(ii)固体電解質層14の配向正極板12と反対側の面(すなわち負極側の面)に所定の中間層を介在させることにより、充放電を繰り返した際のサイクル性能が大幅に改善した全固体リチウム電池を提供することができる。このことは以下のように説明することができる。
本発明の全固体リチウム電池10では、複数の一次粒子が配向正極板12の板面に対して0°超30°以下の平均配向角度で配向した配向正極板12を採用することで、固定電解質層との界面に発生しうる応力を低減させ、短絡不良を無くすことができる。具体的には以下のように考えられる。一次粒子を構成する層状岩塩構造のリチウム複合酸化物は、リチウムイオンが抜けるのに伴い、層間距離が広がる性質がある。すなわち、図5に概念的に示されるようにリチウム複合酸化物の一次粒子11は(003)面と平行にリチウムイオン移動方向LiDを有するとともに、(003)面と垂直に膨張収縮方向ECDを有している。したがって、図6に示されるように、(003)面が板面に対して45〜75°傾斜するように一次粒子が配向した従来の配向正極板12’においては、複数個の一次粒子11の膨張収縮が、全体として配向正極板12’の板面と平行方向の膨張収縮をもたらす、すなわち膨張収縮方向ECDが板面と平行となる。これに対し、本発明で採用される配向正極板12は、図7に概念的に描かれるように、一次粒子の平均配向角度、すなわちその(003)面の平均配向角度が0°超30°以下となることで、リチウムイオンが抜けることに伴う配向正極板12の面方向の膨張が小さくなる。このため、充放電時における配向正極板12の膨張収縮による固体電解質層14への引張応力が低減され、固体電解質層14の破損や剥がれ、クラック発生等による電気的なショートや抵抗増加を防止することができ、サイクル特性の向上につながる。
しかしながら、平均配向角度0°超30°以下の配向正極板を採用した場合、面内位置による抵抗値のバラつきが生じやすいとの別の問題が起こりうる。そして、この抵抗値のバラつきは、特に高速で充放電した際に固体電解質層14の配向正極板12と反対側の面(すなわち負極側の面)においてリチウムが析出しやすい箇所とリチウムが析出しにくい箇所とが生じさせ、(特に高レートで)充放電を繰り返した際のサイクル性能を低下させうる。これは、平均配向角度0°超30°以下の配向正極板は、図7からも理解されるように、リチウムイオンの出入り面(例えば(101)面や(104)面)のみならず、リチウムイオンが出入りしない(003)面が固体電解質層14の負極側表面に顕著に露出するためである。すなわち、リチウムイオンの出入り面(例えば(101)面や(104)面)の露出表面ではリチウムが析出しやすい一方、リチウムイオンが出入りしない(003)面の露出箇所ではリチウムが析出しにくい。特に、本発明のように厚さ30μm以上の配向正極板を採用してエネルギー密度を高めた全固体リチウム電池においては、リチウムの絶対量が多いため、上記問題がより顕著となる。この点、本発明の全固体リチウム電池10では、固体電解質層14上に、リチウムと合金化可能な金属を含む、厚さ0.001〜1μmの中間層15を設けることで、上記問題を解消して、(特に高レートで)充放電を繰り返した際のサイクル性能が大幅に改善することができる。これは、中間層15がリチウム析出に影響を与える固体電解質層14の抵抗を面内方向に均質化することによるものと考えられる。
配向正極板12は、配向焼結体で構成される厚さ30μm以上の板である。配向焼結体は、層状岩塩構造を有するリチウム複合酸化物で構成される複数の一次粒子を含み、複数の一次粒子が配向正極板の板面に対して0°超30°以下の平均配向角度で配向している。図8に配向正極板12の板面に垂直な断面SEM像の一例を示す一方、図9に配向正極板12の板面に垂直な断面における電子線後方散乱回折(EBSD:Electron Backscatter Diffraction)像を示す。また、図10に、図9のEBSD像における一次粒子11の配向角度の分布を面積基準で示すヒストグラムを示す。図9に示されるEBSD像では、結晶方位の不連続性を観測することができる。図9では、各一次粒子11の配向角度が色の濃淡で示されており、色が濃いほど配向角度が小さいことを示している。配向角度とは、各一次粒子11の(003)面が板面方向に対して成す傾斜角度である。なお、図8及び9において、配向正極板12の内部で黒表示されている箇所は気孔である。
固体電解質層14を構成するリチウムイオン伝導材料は、ガーネット系セラミックス材料、窒化物系セラミックス材料、ペロブスカイト系セラミックス材料、リン酸系セラミックス材料、硫化物系セラミックス材料、リチウム−塩化物系材料、又は高分子系材料で構成されるのが好ましく、より好ましくは、ガーネット系セラミックス材料、窒化物系セラミックス材料、ペロブスカイト系セラミックス材料、及びリン酸系セラミックス材料からなる群から選択される少なくとも一種である。ガーネット系セラミックス材料の例としては、Li−La−Zr−O系材料(具体的には、Li7La3Zr2O12など)、Li−La−Ta−O系材料(具体的には、Li7La3Ta2O12など)が挙げられる。窒化物系セラミックス材料の例としては、Li3N。ペロブスカイト系セラミックス材料の例としては、Li−La−Zr−O系材料(具体的には、LiLa1−xTixO3(0.04≦x≦0.14)など)が挙げられる。リン酸系セラミックス材料の例としては、リン酸リチウム、窒素置換リン酸リチウム(LiPON)、Li−Al−Ti−P−O、Li−Al−Ge−P−O、及びLi−Al−Ti−Si−P−O(具体的には、Li1+x+yAlxTi2−xSiyP3−yO12(0≦x≦0.4、0<y≦0.6)など)が挙げられる。
中間層15は、リチウムと合金化可能な金属を含む厚さ0.001〜1μmの層であり固体電解質層14の配向正極板12と反対側の面(すなわち負極側の面)に設けられる。リチウムと合金化可能な金属は、Al(アルミニウム)、Si(シリコン)、Zn(亜鉛)、Ga(ガリウム)、Ge(ゲルマニウム)、Ag(銀)、Au(金)、Pt(白金)、Cd(カドミウム)、In(インジウム)、Sn(スズ)、Sb(アンチモン)、Pb(鉛)、及びBi(ビスマス)からなる群から選択される少なくとも1種を含むのが好ましく、より好ましくはAu(金)、Si(シリコン)、Sn(スズ)、Al(アルミニウム)、及びBi(ビスマス)からなる群から選択される少なくとも1種を含む。中間層の形成は、エアロゾルデポジション(AD)法、パルスレーザー堆積(PLD)法、スパッタリング法、蒸着法等の公知の方法により行えばよい。中間層の寸法は特に限定されないが、厚さは抵抗の均質化の観点から、0.001〜1μmであり、好ましくは0.001〜0.5μm、さらに好ましくは0.001〜0.1μm、特に好ましくは0.003〜0.03μmである。
全固体リチウム電池10は中間層15上に負極層16をさらに備えるのが典型的である。もっとも、本発明の全固体リチウム電池10は負極層16を有しなくても作動可能である。これは、充電時に中間層15上に析出するリチウム金属も負極活物質として利用できるためである。負極層16はリチウムを含む層であり、典型的にはリチウム金属により構成される。負極層16は、中間層15又は負極集電体24上に箔形態のリチウム金属を載置することにより作製してもよいし、あるいは中間層15又は負極集電体24上にリチウム金属の薄膜を真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法等で形成してリチウム金属の層を形成することにより作製してもよい。負極層16の寸法は特に限定されないが、厚さは、厚い配向正極板12の採用に伴い全固体リチウム電池10におけるリチウム総量を多く確保する観点から、10μm以上が好ましく、より好ましくは50〜10μm、さらに好ましくは40〜10μm、特に好ましくは20〜10μmである。
所望により、端部絶縁部18が固体電解質層14の端部を絶縁被覆するように設けられてもよい。端部絶縁部18は、固体電解質層14と接着又は密着可能な有機高分子材料を含むのが好ましい。端部絶縁部18がそのような有機高分子材料を含むことで、配向正極板12と負極層16との短絡防止をより効果的に実現することができる。有機高分子材料は、バインダー、熱溶融樹脂及び接着剤からなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。バインダーの好ましい例としては、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、及びその組合せが挙げられる。熱融着樹脂の好ましい例としては、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。熱溶融樹脂は後述するように熱融着フィルムの形態で供されるのが好ましい。接着剤の好ましい例としてはエポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂を用いた熱硬化型接着剤が挙げられる。したがって、有機高分子材料は、特許文献1に開示されるように、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂及びエポキシ系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が好ましいといえる。
全固体リチウム電池10は配向正極板12の固体電解質層14と反対側の面に正極集電体20をさらに備えるのが好ましい。正極集電体20は金属箔である。金属箔の厚さは5〜30μmであり、好ましくは5〜25μm、より好ましくは10〜25μm、さらに好ましくは10〜20μmである。このように厚くすることで十分な集電機能を確保することができる。また、上記のように極めて薄い金属箔であると柔軟性に富むため、配向正極板12の表面に全面的に均一に密着させやすくなる。正極集電体20を構成する金属は、配向正極板12と反応しないものであれば特に限定されず、合金であってもよい。そのような金属の好ましい例としては、ステンレス、アルミニウム、銅、白金、ニッケルが挙げられ、より好ましくはステンレス及びニッケルが挙げられる。
負極層16の外側(負極層16が無い場合には中間層15の外側)には負極集電体24が設けられるのが好ましい。負極集電体24は負極の外側を被覆する負極外装材を兼ねていてもよい。例えば、図4に示されるように、図1に示される構成とは逆に、2個の単位電池を1枚の正極集電体20を介して上下対称に並列積層して負極集電体24を全固体リチウム電池の外側に露出させた構成としてもよい。このような並列積層型電池に構成される場合、正極集電体20を隣り合う2個の単位電池に共通の集電体として機能させることができる。
全固体リチウム電池10には、正極集電体20及び負極集電体24で被覆されていない、配向正極板12、固体電解質層14、中間層15、負極層16及び(存在する場合には)端部絶縁部18の露出部分を封止する、封着材で構成される端部封止部26がさらに設けられるのが好ましい。端部封止部26を設けて、正極集電体20及び負極集電体24で被覆されていない、配向正極板12、固体電解質層14、中間層15、負極層16及び端部絶縁部18の露出部分を封止することで、優れた耐湿性(望ましくは高温における耐湿性)を確保することができる。端部封止部26は封着材で構成される。封着材は、正極集電体20、負極集電体24及び端部絶縁部18で被覆されていない上記露出部分を封止して優れた耐湿性(望ましくは高温における耐湿性)を確保可能なものであれば特に限定されない。もっとも、封着材は正極集電体20と負極集電体24の間の電気的絶縁性を確保することが望まれるのはいうまでもない。その意味で、封着材は1×106Ωcm以上の抵抗率を有するのが好ましく、より好ましくは1×107Ωcm以上であり、さらに好ましくは1×108Ωcm以上である。封着材は、樹脂を含む樹脂系封着材であるのが好ましく、樹脂系封着材は樹脂(好ましくは絶縁性樹脂)と無機材料の混合物からなるものであってもよい。あるいは、封着材は、ガラスを含むガラス系封着材であってもよい。これらの封着剤は特許文献1に開示されるような公知のものが利用可能である。
全固体リチウム電池は、単位電池1個を備えた構成の場合、60〜5000μmの厚さを有するのが好ましく、より好ましくは、70〜4000μm、さらに好ましくは、80〜3000μm、特に好ましくは、90〜2000μm、最も好ましくは、100〜1000μmである。本発明によれば、配向正極板を比較的厚くできる一方、集電体で外装材を兼用するため電池全体の厚さを比較的薄く構成することができる。
本発明の全固体リチウム電池に用いられる配向正極板ないし配向焼結板は、いかなる製法によって製造されてもよいが、好ましくは、以下に例示されるように、(1)LiCoO2テンプレート粒子の作製、(2)マトリックス粒子の作製、(3)グリーンシートの作製、及び(4)配向焼結板の作製を経て製造される。
Co3O4原料粉末とLi2CO3原料粉末とを混合する。得られた混合粉末を500〜900℃で1〜20時間焼成して、LiCoO2粉末を合成する。得られたLiCoO2粉末をポットミルにて体積基準D50粒径0.1〜10μmに粉砕して、板面と平行にリチウムイオンを伝導可能な板状のLiCoO2粒子を得る。得られたLiCoO2粒子は、劈開面に沿って劈開しやすい状態となっている。LiCoO2粒子を解砕によって劈開させることで、LiCoO2テンプレート粒子を作製する。このようなLiCoO2粒子は、LiCoO2粉末スラリーを用いたグリーンシートを粒成長させた後に解砕する手法や、フラックス法や水熱合成、融液を用いた単結晶育成、ゾルゲル法など板状結晶を合成する手法によっても得ることができる。
‐ LiCoO2テンプレート粒子のアスペクト比及び粒径の少なくとも一方を調整することによって、配向角度が0°超30°以下である低角一次粒子の合計面積割合を制御することができる。具体的には、LiCoO2テンプレート粒子のアスペクト比を大きくするほど、また、LiCoO2テンプレート粒子の粒径を大きくするほど、低角一次粒子の合計面積割合を高めることができる。LiCoO2テンプレート粒子のアスペクト比と粒径は、それぞれ、Co3O4原料粉末及びLi2CO3原料粉末の粒径、粉砕時の粉砕条件(粉砕時間、粉砕エネルギー、粉砕手法等)、並びに粉砕後の分級のうち少なくとも1つを調整することによって制御することができる。
‐ LiCoO2テンプレート粒子のアスペクト比を調整することによって、アスペクト比が4以上である一次粒子11の合計面積割合を制御することができる。具体的には、LiCoO2テンプレート粒子のアスペクト比を大きくするほど、アスペクト比が4以上である一次粒子11の合計面積割合を高めることができる。LiCoO2テンプレート粒子のアスペクト比の調整手法は上述のとおりである。
‐ LiCoO2テンプレート粒子の粒径を調整することによって、一次粒子11の平均粒径を制御することができる。
‐ LiCoO2テンプレート粒子の粒径を調整することによって、配向正極板12の緻密度を制御することができる。具体的には、LiCoO2テンプレート粒子の粒径を小さくするほど、配向正極板12の緻密度を高めることができる。
Co3O4原料粉末をマトリックス粒子として用いる。Co3O4原料粉末の体積基準D50粒径は特に制限されず、例えば0.1〜1.0μmとすることができるが、LiCoO2テンプレート粒子の体積基準D50粒径より小さいことが好ましい。このマトリックス粒子は、Co(OH)2原料を500〜800℃で1〜10時間熱処理を行なうことによっても得ることができる。また、マトリックス粒子には、Co3O4の他、Co(OH)2粒子を用いてもよいし、LiCoO2粒子を用いてもよい。
‐ LiCoO2テンプレート粒子の粒径に対するマトリックス粒子の粒径の比(以下、「マトリックス/テンプレート粒径比」という。)を調整することによって、配向角度が0°超30°以下である低角一次粒子の合計面積割合を制御することができる。具体的には、マトリックス/テンプレート粒径比を小さくするほど、すなわちマトリックス粒子の粒径が小さいほど、後述する焼成工程においてマトリックス粒子がLiCoO2テンプレート粒子に取り込まれやすくなるため、低角一次粒子の合計面積割合を高めることができる。
‐ マトリックス/テンプレート粒径比を調整することによって、アスペクト比が4以上である一次粒子11の合計面積割合を制御することができる。具体的には、マトリックス/テンプレート粒径比を小さくするほど、すなわちマトリックス粒子の粒径が小さいほど、アスペクト比が4以上である一次粒子11の合計面積割合を高めることができる。
‐ マトリックス/テンプレート粒径比を調整することによって、配向正極板12の緻密度を制御することができる。具体的には、マトリックス/テンプレート粒径比を小さくするほど、すなわち、マトリックス粒子の粒径が小さいほど、配向正極板12の緻密度を高めることができる。
LiCoO2テンプレート粒子とマトリックス粒子を100:3〜3:97に混合して混合粉末を得る。この混合粉末、分散媒、バインダー、可塑剤及び分散剤を混合しながら、減圧下で撹拌して脱泡し且つ所望の粘度に調整してスラリーとする。次に、LiCoO2テンプレート粒子にせん断力を印加可能な成形手法を用いて、調製したスラリーを成形することによって成形体を形成する。こうして、各一次粒子11の平均配向角度を0°超30°以下とすることができる。LiCoO2テンプレート粒子にせん断力を印加可能な成形手法としては、ドクターブレード法が好適である。ドクターブレード法を用いる場合には、調製したスラリーをPETフィルムの上に成形することによって、成形体としてのグリーンシートが形成される。
‐ 成形速度を調整することによって、配向角度が0°超30°以下である低角一次粒子の合計面積割合を制御することができる。具体的には、成形速度が速いほど、低角一次粒子の合計面積割合を高めることができる。
‐ 成形体の密度を調整することによって、一次粒子11の平均粒径を制御することができる。具体的には、成形体の密度を大きくするほど、一次粒子11の平均粒径を大きくすることができる。
‐ LiCoO2テンプレート粒子とマトリックス粒子との混合比を調整することによっても、配向正極板12の緻密度を制御することができる。具体的には、LiCoO2テンプレート粒子を多くするほど、配向正極板12の緻密度を下げることができる。
スラリーの成形体をジルコニア製セッターに載置し、500〜900℃で1〜10時間て加熱処理(一次焼成)して、中間体としての焼結板を得る。この焼結板をリチウムシート(例えばLi2CO3含有シート)で上下挟み込んだ状態でジルコニアセッター上に載置して二次焼成することで、LiCoO2焼結板を得る。具体的には、リチウムシートで挟み込まれた焼結板が載置されたセッターをアルミナ鞘に入れ、大気中にて700〜850℃で1〜20時間焼成した後、この焼結板をさらにリチウムシートで上下挟み込んで750〜900℃で1〜40時間焼成して、LiCoO2焼結板を得る。この焼成工程は、2度に分けて行ってもよいし、1度に行なってもよい。2度に分けて焼成する場合には、1度目の焼成温度が2度目の焼成温度より低いことが好ましい。なお、二次焼成におけるリチウムシートの総使用量はグリーンシート中のCo量に対する、グリーンシート及びリチウムシート中のLi量のモル比であるLi/Co比が1.0になるようにすればよい。
‐ 焼成時の昇温速度を調整することによって、配向角度が0°超30°以下である低角一次粒子の合計面積割合を制御することができる。具体的には、昇温速度を速くするほど、マトリックス粒子同士の焼結が抑えられて、低角一次粒子の合計面積割合を高めることができる。
‐ 中間体の加熱処理温度を調整することによっても、配向角度が0°超30°以下である低角一次粒子の合計面積割合を制御することができる。具体的には、中間体の加熱処理温度を低くするほど、マトリックス粒子同士の焼結が抑えられて、低角一次粒子の合計面積割合を高めることができる。
‐ 焼成時の昇温速度及び中間体の加熱処理温度の少なくとも一方を調整することによって、一次粒子11の平均粒径を制御することができる。具体的には、昇温速度を速くするほど、また、中間体の加熱処理温度を低くするほど、一次粒子11の平均粒径を大きくすることができる。
‐ 焼成時のLi(例えば、Li2CO3)量及び焼結助剤(例えば、ホウ酸や酸化ビスマス)量の少なくとも一方を調整することによっても、一次粒子11の平均粒径を制御することができる。具体的には、Li量多くするほど、また、焼結助剤量を多くするほど、一次粒子11の平均粒径を大きくすることができる。
‐ 焼成時のプロファイルを調整することによって、配向正極板12の緻密度を制御することができる。具体的には、焼成温度を遅くするほど、また、焼成時間を長くするほど、配向正極板12の緻密度を高めることができる。
(1)配向正極板の作製
(1a)LCOテンプレート粒子の作製
Co3O4原料粉末(体積基準D50粒径0.8μm、正同化学工業株式会社製)とLi2CO3原料粉末(体積基準D50粒径2.5μm、本荘ケミカル株式会社製)を混合し、800℃〜900℃で5時間焼成することでLiCoO2原料粉末を合成した。得られたLiCoO2粉末を粉砕することによって板状LiCoO2粒子(以下、LCOテンプレート粒子という)を得た。LCOテンプレート粒子の体積基準D50粒径を0.5μmに調整した。
Co3O4原料粉末(正同化学工業株式会社製)をマトリックス粒子として用意した。マトリックス粒子の体積基準D50粒径は0.3μmとした。
LCOテンプレート粒子とCo3O4マトリックス粒子を混合した。LCOテンプレート粒子とCo3O4マトリックス粒子の重量比は、50:50とした。この混合粉末100重量部と、分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)10重量部と、可塑剤(DOP:Di(2−ethylhexyl)phthalate、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(製品名レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。この混合物を、減圧下で撹拌することで脱泡するとともに粘度を4000cPに調整することによってスラリーを調製した。なお、粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルムの上に、乾燥後の厚さが48μmとなるように、成形速度100m/hでシート状に成形してLCO/Co3O4グリーンシートを得た。
Li2CO3原料粉末(体積基準D50粒径2.5μm、本荘ケミカル株式会社製)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)5重量部と、可塑剤(DOP:フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、黒金化成株式会社製)2重量部と、分散剤(製品名レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。得られた混合物を減圧下で撹拌して脱泡するとともに、粘度を4000cPに調整することによって、Li2CO3スラリーを調製した。粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。調製されたLi2CO3スラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルム上にシート状に成形することによって、Li2CO3グリーンシート(以下、リチウムシートという)を形成した。
PETフィルムから剥がしたLCO/Co3O4グリーンシートをジルコニア製セッターに載置して900℃で5時間一次焼成することで、中間体としての焼結板を得た。この焼結板をリチウムシートで上下挟み込んだ状態でジルコニアセッター上に載置して二次焼成することで、LiCoO2焼結板を得た。具体的には、リチウムシートで挟み込まれた焼結板が載置されたジルコニアセッターを90mm角のアルミナ鞘に入れて大気中にて800℃で5時間保持した後、この焼結板をさらにリチウムシートで上下挟み込んで900℃で20時間焼成した。こうして厚さ40μmのLiCoO2焼結板を配向正極板として得た。なお、二次焼成におけるリチウムシートの総使用量は、LCO/Co3O4グリーンシート中のCo量に対する、LCO/Co3O4グリーンシート及びリチウムシート中のLi量のモル比であるLi/Co比が1.05になるような量とした。
縦5インチ(約12.7cm)×横15インチ(約38.1cm)のリン酸リチウム焼結体ターゲットを準備し、スパッタリング装置(キャノンアネルバ株式会社製、ILC−702)を用いてRFマグネトロン方式にてガス種N2を0.4Pa、出力1.2kWにて膜厚3μmとなるようにスパッタリングを行った。こうして、厚さ3μmのLiPON系固体電解質層を配向正極板上に形成した。
電池端部の絶縁性を確保すべく、LiPON系固体電解質層の外周に沿った幅250±100μmの領域をポリイミド樹脂で覆った。
LiPON系固体電解質層上に表1に示される組成及び厚さの中間層を以下のとおり形成した。
例A1〜A7においては、以下のようにして中間層上に負極層を形成した。まず、リチウム金属を載せたタングステンボートを準備した。真空蒸着装置(サンユー電子株式会社製、カーボンコーターSVC−700)を用いて、抵抗加熱によりLiを蒸発させながら蒸着により中間層の表面にLi薄膜を形成した。このとき、マスクを用いて負極層のサイズを10mm角として、負極層が10.5mm角の正極領域内に収まるようにした。こうして、固体電解質層上に膜厚10μmのLi蒸着膜を負極層として形成した単電池を作製した。
厚さ20μmのNi箔と厚さ15μmのナイロン樹脂を貼り合せた積層シートを13mm角に切り出して集電板とした。外縁形状が12.8mm角でその内側に11mm角の孔が打ち抜かれた、0.9mm幅の枠状のポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(厚さ50μm)を集電板のNi箔側に貼り付けて端部封止部を形成した。こうして得られた複合部材を集電板のNi箔側を上にして置き、端部封止部で囲まれた領域内に上記(5)で得られた単電池を負極が下になるように載置した。載置した単電池の正極上には集電板をNi箔側が下になるように載置し、パルスヒート式加熱装置(日本アビオニクス株式会社製、HT−13X13(40)NTN)を用いて、減圧下、端部封止部に対して荷重3kgを加えながら420℃で加熱した。こうして単電池の外周全体を覆うように端部封止部と上下2枚の集電板とを貼り合せて封止することで、封止形態の全固体リチウム電池を得た。
得られた全固体リチウム電池について以下の評価を行った。結果は表1に示されるとおりであった。
後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡(日本電子社製、型式JSM−7800M)を用いて、正極の板面に垂直な断面におけるEBSD像を取得した。一次粒子の平均配向角度を以下の手順で測定した。まず、95μm×125μmの矩形領域を1000倍の倍率で観察したEBSD像において、正極を厚み方向に四等分する3本の横線と、正極を板面方向に四等分する3本の縦線とを引いた。次に、3本の横線と3本の縦線のうち少なくとも1本の線と交差する一次粒子すべての配向角度を算術平均することによって、一次粒子の平均配向角度を得た。
リチウムイオン電池を0.2mAの定電流で充電電圧値4.0Vまで充電した後、4.0Vの定電圧で電流が0.04mAになるまで充電した。そして、0.2mAの定電流でカットオフ電圧値3.0Vまで放電し、放電容量W0を測定した。この測定を50回繰り返し、50回目の放電容量W50を測定した。W50をW0で除して100を乗じた値をサイクル容量維持率(%)として評価した。
中間層を形成しなかったこと以外は例A1と同様にして、電池の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであった。
Au中間層の代わりに厚さ20nmのCu中間層を形成したこと以外は、例A1と同様にして、電池の作製及び評価を行った。Cu中間層の形成は、直径4インチ(約10cm)のCuターゲットを準備し、スパッタリング装置(キャノンアネルバ株式会社製、SPF−430H)を用いてDCマグネトロン方式にてガス種Arを0.3Pa、電流0.5Aにて膜厚20nmとなるようにスパッタリングを実施することにより行った。結果は表1に示されるとおりであった。
配向正極板の作製を以下のとおり行ったこと以外は、例A2と同様にして、電池の作製及び評価を行った。結果は表1に示されるとおりであった。
Co3O4原料粉末(体積基準D50粒径0.3μm、正同化学工業株式会社製)に5wt%の割合でBi2O3(体積基準D50粒径0.3μm、太陽鉱工株式会社製)を添加して混合粉末を得た。この混合粉末100重量部と、分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)10重量部と、可塑剤(DOP:ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(製品名レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。この混合物を、減圧下で撹拌することで脱泡するとともに、4000cPの粘度に調整した。なお、粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。上記のようにして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの上に、乾燥後の厚さが45μmとなるように、シート状に成形してグリーンシートを作製した。PETフィルムから剥がしたグリーンシートを、切り出し、突起の高さが300μmのエンボス加工が施されたジルコニア製セッター(寸法90mm角、高さ1mm)の中央に載置し、1300℃で5時間焼成後、降温速度50℃/hにて降温した。セッターに溶着していない部分をCo3O4配向焼成板として取り出した。Co3O4配向焼成板にLi/Co=1.3になるようにLi2CO3シートを載置し、大気中にて840℃で10時間加熱処理してCo3O4配向焼成板にリチウムを導入した。こうして、厚さ40μmのLiCoO2配向焼結板を配向正極板として得た。
(1)配向正極板の作製
(1a)LCOテンプレート粒子の作製
Co3O4原料粉末(体積基準D50粒径0.8μm、正同化学工業株式会社製)とLi2CO3原料粉末(体積基準D50粒径2.5μm、本荘ケミカル製)を混合し、800℃で5時間焼成することでLiCoO2原料粉末を合成した。この際、焼成温度や焼成時間を調整することによって、LiCoO2原料粉末の体積基準D50粒径を表2に示される値に調整した。得られたLiCoO2粉末を粉砕することによって板状LiCoO2粒子(LCOテンプレート粒子)を得た。例B1、B2及びB4〜B8ではポットミルを用い、例B3では湿式ジェットミルを用いた。この際、粉砕時間を調整することによって、LCOテンプレート粒子の体積基準D50粒径を表2に示される値に調整した。また、LiCoO2テンプレート粒子のアスペクト比は表2に示されるとおりであった。LiCoO2テンプレート粒子のアスペクト比は得られたテンプレート粒子をSEM観察することで測定した。
Co3O4原料粉末(正同化学工業株式会社製)をマトリックス粒子として用意した。マトリックス粒子の体積基準D50粒径は表2に示されるとおりとした。ただし、例B4ではマトリックス粒子を用いなかった。
LCOテンプレート粒子とCo3O4マトリックス粒子を混合した。LCOテンプレート粒子とCo3O4マトリックス粒子の重量比は、表2に示されるとおりとした。ただし、例B4ではマトリックス粒子を用いなかったため、重量比は100:0である。この混合粉末100重量部と、分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)10重量部と、可塑剤(DOP:Di(2−ethylhexyl)phthalate、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(製品名レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。この混合物を、減圧下で撹拌することで脱泡するとともに粘度を4000cPに調整することによってスラリーを調製した。なお、粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルムの上に、乾燥後の厚さが40μmとなるように、成形速度100m/hでシート状に成形してグリーンシートを得た。
PETフィルムから剥がしたグリーンシートをジルコニア製セッターに載置して900℃で5時間(例B1〜B6及びB8)又は800℃で5時間(例B7)一次焼成することによって中間体としての焼結板を得た。この焼結板をリチウムシートで上下挟み込んだ状態でジルコニアセッター上に載せて二次焼成することで、LiCoO2焼結板を得た。具体的には、リチウムシートで挟み込まれた焼結板が載置されたジルコニアセッターを90mm角のアルミナ鞘に入れ、大気中にて800℃で5時間保持した後、この焼結板をさらにリチウムシートで上下挟み込んで900℃で20時間焼成した。なお、二次焼成におけるリチウムシートの総使用量は、LCO/Co3O4グリーンシート中のCo量に対する、LCO/Co3O4グリーンシート及びリチウムシート中のLi量のモル比であるLi/Co比が表2に示される値になるような量とした。
直径4インチ(約10cm)のリン酸リチウム焼結体ターゲットを準備し、スパッタリング装置(キャノンアネルバ株式会社製、SPF−430H)を用いてRFマグネトロン方式にてガス種N2を0.2Pa、出力0.2kWにて膜厚2μmとなるようにスパッタリングを行なった。こうして、厚さ2μmのLiPON系固体電解質スパッタ膜をLiCoO2焼結板上に形成した。
イオンスパッタリング装置(日本電子株式会社製、JFC−1500)を用いたスパッタリングにより、固体電解質層上に厚さ500ÅのAu膜を中間層として形成した。
リチウム金属を載せたタングステンボートを準備した。真空蒸着装置(サンユー電子株式会社製、カーボンコーターSVC−700)を用いて、抵抗加熱によりLiを蒸発させて上記中間層の表面に薄膜を設ける蒸着を行った。このとき、マスクを用いて負極層のサイズを9.5mm角として、負極層が10mm角の正極領域内に収まるようにした。こうして、固体電解質層上に膜厚10μmのLi蒸着膜を負極層として形成した単電池を作製した。
厚さ20μmのステンレス箔を13mm角に切り出して正極集電板とした。また、外縁形状が13mm角で、その内側に11mm角の孔が打ち抜かれた、1mm幅の枠状の変性ポリプロピレン樹脂フィルム(厚さ100μm)を用意した。この枠状の樹脂フィルムを正極集電板上の外周部に積層し、加熱圧着して端部封止部を形成した。正極集電板上の端部封止部で囲まれた領域内に上記単電池を載置した。載置した単電池の負極側にも上記同様に厚さ20μmのステンレス箔を載置し、端部封止部に対して荷重を加えながら、減圧下、200℃で加熱した。こうして外周全体にわたって端部封止部と上下2枚のステンレス箔とを貼り合せて単電池を封止した。こうして、封止形態の全固体リチウム電池を得た。
得られた全固体リチウム電池について以下の評価を行った。結果は表3に示されるとおりであった。
(正極を構成する一次粒子の観察)
後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡(日本電子社製、型式JSM−7800M)を用いて、正極の板面に垂直な断面におけるEBSD像を取得し、以下のとおり各種パラメータの算出を行った。
‐ EBSD像上において任意に選択した30個の一次粒子の配向角度を算術平均することによって、一次粒子の平均配向角度を算出した。
‐ EBSD像において、平均配向角度の算出に用いた30個の一次粒子の総面積に対する、配向角度が0°超30°以下である一次粒子の合計面積の割合(%)を算出した。
‐ EBSD像において、平均配向角度の算出に用いた30個の一次粒子の平均粒径を算出した。具体的には、30個の一次粒子それぞれの円相当径の算術平均値を一次粒子の平均粒径とした。
‐ EBSD像において、平均配向角度の算出に用いた30個の一次粒子の平均アスペクト比を算出した。具体的には、30個の一次粒子それぞれの最大フェレー径を最小フェレー径で除した値の算術平均値を一次粒子の平均アスペクト比とした。
‐ EBSD像において、平均配向角度の算出に用いた30個の一次粒子のうちアスペクト比が4以上である一次粒子の面積割合を算出した。
CP(クロスセクションポリッシャ)研磨した配向正極板の断面における1000倍率のSEM画像を2値化した。そして、2値化画像上において、固相と気相の合計面積に対する固相の面積割合を緻密度として算出した。
リチウムイオン電池を0.1mAの定電流で4.2Vまで充電した後、定電圧で電流が0.05mAになるまで充電した。そして、0.2mAの定電流で3.0Vまで放電し、放電容量W0を測定した。また、0.1mAの定電流で4.2Vまで充電した後、定電圧で電流が0.05mAになるまで充電し、そして、2.0mA定電流で3.0Vまで放電し、放電容量W1を測定した。W1をW0で除して100を乗じることでレート性能を評価した。
リチウムイオン電池を0.1mAの定電流で4.2Vまで充電した後、定電圧で電流が0.05mAになるまで充電した。そして、0.2mA定電流で3.0Vまで放電し、放電容量W0を測定した。この測定を30回繰り返し、30回目の放電容量W30を測定した。W30をW0で除して100を乗じることでサイクル容量維持率を評価した。
LiCoO2粉末を粉砕せずに、そのままLCOテンプレート粒子として用いたこと以外は、例B1〜B8と同様にして、電池の作製及び評価を行った。結果は表3に示されるとおりであった。
Co3O4マトリックス粒子の体積基準D50粒径を例B1〜B8よりも大きくしたこと以外は、例B1〜B8と同様にして、電池の作製及び評価を行った。本例のマトリックス粒子の体積基準D50粒径は3.0μmであり、Co3O4マトリックス粒子に対するLCOテンプレート粒子の粒径比は0.2であった。結果は表3に示されるとおりであった。
LCOテンプレート粒子を用いず、Co3O4マトリックス粒子のみを用いたスラリーでグリーンシートを作製したこと以外は、例B1〜B8と同様にして、電池の作製及び評価を行った。結果は表3に示されるとおりであった。
一次焼成の焼成温度を1200℃としたこと以外は、例B1〜B8と同様にして、電池の作製及び評価を行った。結果は表3に示されるとおりであった。
正極板の作製を以下のように行ったこと以外は、例B1と同様にして、電池の作製及び評価を行った。結果は表3に示されるとおりであった。
例B1で準備したスラリーをシート状に成形せずに、そのまま乾燥させた。乾燥物を例B1と同様に焼成した後に、#1200のSiC製研磨紙を用いて厚み40μmまで研磨して正極板を得た。
Claims (13)
- 配向焼結体で構成される厚さ30μm以上の配向正極板であって、前記配向焼結体が層状岩塩構造を有するコバルト酸リチウムで構成される複数の一次粒子で構成され、前記複数の一次粒子が前記配向正極板の板面に対して0°超30°以下の平均配向角度で配向している、配向正極板と、
前記配向正極板上に設けられ、リチウムイオン伝導材料で構成される固体電解質層と、
前記固体電解質層上に設けられ、リチウムと合金化可能な金属を含む、厚さ0.001〜1μmの中間層と、
を備えた、全固体リチウム電池。 - 前記中間層上に、リチウムを含む負極層をさらに備えた、請求項1に記載の全固体リチウム電池。
- 前記リチウムと合金化可能な金属が、Al(アルミニウム)、Si(シリコン)、Zn(亜鉛)、Ga(ガリウム)、Ge(ゲルマニウム)、Ag(銀)、Au(金)、Pt(白金)、Cd(カドミウム)、In(インジウム)、Sn(スズ)、Sb(アンチモン)、Pb(鉛)、及びBi(ビスマス)からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の全固体リチウム電池。
- 前記リチウムと合金化可能な金属が、Au(金)、Si(シリコン)、Sn(スズ)、Al(アルミニウム)、及びBi(ビスマス)からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の全固体リチウム電池。
- 前記配向正極板の厚さが30〜100μmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の全固体リチウム電池。
- 前記配向焼結体は、前記配向正極板の板面に垂直な断面を電子線後方散乱回折法(EBSD)により解析した場合に、解析された前記断面に含まれる一次粒子のうち前記配向正極板の板面に対する配向角度が0°超30°以下である一次粒子の合計面積が、前記断面に含まれる一次粒子の総面積に対して70%以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の全固体リチウム電池。
- 前記配向焼結体は、前記配向正極板の板面に垂直な断面を電子線後方散乱回折法(EBSD)により解析した場合に、解析された前記断面に含まれる一次粒子のうちアスペクト比が4以上である一次粒子の合計面積が、前記断面に含まれる一次粒子の総面積に対して70%以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の全固体リチウム電池。
- 前記複数の一次粒子の平均粒径が5μm以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の全固体リチウム電池。
- 前記配向焼結体の緻密度が90%以上である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の全固体リチウム電池。
- 前記配向正極板の前記固体電解質層と反対側の面に、厚さ5μm以上30μm以下の金属箔である正極集電体をさらに備えた、請求項1〜9のいずれか一項に記載の全固体リチウム電池。
- 前記配向正極板、前記固体電解質層及び存在する場合には前記負極層を含む積層体が外装材で包装又は封止されており、前記正極集電体が前記外装材の一部を構成し、前記外装材で包装又は封止される前記積層体の収容空間が減圧されている、請求項10に記載の全固体リチウム電池。
- 前記固体電解質層を構成する前記リチウムイオン伝導材料が、ガーネット系セラミックス材料、窒化物系セラミックス材料、ペロブスカイト系セラミックス材料、リン酸系セラミックス材料、硫化物系セラミックス材料、リチウム−塩化物系材料、又は高分子系材料で構成されている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の全固体リチウム電池。
- 前記固体電解質層を構成する前記リチウムイオン伝導材料が、Li−La−Zr−O系セラミックス材料及び/又はリン酸リチウムオキシナイトライド(LiPON)系セラミックス材料で構成される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の全固体リチウム電池。
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