JP5211721B2 - 全固体リチウム二次電池 - Google Patents
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Description
しかしながら、このような湿式法は、前駆体溶液を塗布して焼成することで目的物を得るが、核生成がランダムに起きるために配向制御ができず結晶制御が困難である。このために、結晶性に異方性がある電極材料を用いた場合、得られた電極層等の抵抗が上がるなどしてレート特性が低下し、出力を向上させることが困難になるという問題があった。
A.全固体リチウム二次電池
まず、本発明の全固体リチウム二次電池について説明する。本発明の全固体リチウム二次電池は、正極集電体と、上記正極集電体上に形成された配向層と、上記配向層上に湿式法を用いて形成されたLiCoO2正極層とからなる正極電極体を有し、上記LiCoO2のc軸が上記正極集電体の法線に対して傾いていることを特徴とするものである。
図1は、本発明により得られる全固体リチウム二次電池の一例を模式的に示す概略断面図である。図1に示される全固体リチウム二次電池は、正極集電体1と、上記正極集電体1上に形成された配向層2と、上記配向層2上に湿式法を用いて形成されたLiCoO2正極層3とからなる正極電極体4、負極集電体5と負極層6とからなる負極電極体7、正極電極体4と負極電極体7との間に配置された固体電解質層8、および固体電解質層8が正極電極体4と負極電極体7とにより挟持されたものの側面を覆うような絶縁(電池ケース)部9を有するものである。ここで、図示しないが、上記LiCoO2のc軸は上記正極集電体1の法線に対して傾いていることを特徴とするものである。
このような本発明の全固体リチウム二次電池においては、少なくとも、上記正極電極体を有するものであれば特に限定されるものではない。
以下、本発明の全固体リチウム二次電池について、構成ごとに詳細に説明する。
まず、本発明に用いられる正極電極体について説明する。本発明に用いられる正極電極体は、上述した図1で例示したように、正極集電体1と、上記正極集電体1上に形成された配向層2と、上記配向層2上に湿式法を用いて形成されたLiCoO2正極層3とからなり、上記LiCoO2のc軸が上記正極集電体の法線に対して傾いていることを特徴とするものである。
本発明においては、上記正極電極体中の上記配向層上に湿式法を用いて形成されたLiCoO2正極層におけるLiCoO2のc軸が上記正極集電体の法線に対して傾いていることにより、LiCoO2正極層の抵抗を小さくすることができる。このため、湿式法を用いることにより、正極電極体の製造コストを下げることができる。さらに、上記LiCoO2正極層を有することにより、抵抗を小さくして、レート特性を向上させた正極電極体とすることができる。
以下、本発明に用いられる正極電極体について、構成ごとに説明する。
まず、本発明におけるLiCoO2正極層について説明する。本発明におけるLiCoO2正極層は、上記配向層上に湿式法を用いて形成され、LiCoO2のc軸が上記正極集電体の法線に対して傾いていることを特徴とするものである。このような特徴を有することにより、製造コストを下げることを可能とし、さらにLiCoO2正極層の抵抗を小さくすることができるものである。
例えば、図3は所定の基板上に積層されたLiCoO2の結晶方位を説明する基板上に積層されたLiCoO2結晶断面の模式図であるが、図3に示されるように、X線回折法(XRD)によって解析できる、(101)、および(104)のピークがより強く出るようにすれば、LiCoO2のc軸を上記正極集電体の法線に対してより傾けることができる。すなわち、電気抵抗率の低いab軸を法線方向により近く並べることができるためLiCoO2正極層の抵抗を小さくすることができる。一方、XRDによって解析できる(003)のピークが強く出るほど、上記c軸が上記正極集電体の法線方向に並ぶことになるため、LiCoO2正極層の抵抗はより大きくなってしまう。
次に、本発明における配向層について説明する。本発明における配向層は、上記正極集電体上に形成され、上記配向層上に湿式法を用いてLiCoO2正極層を形成することができ、上記LiCoO2のc軸を上記正極集電体の法線に対して傾けることができることを特徴とするものである。
本発明における、上記配向層は、例えば、特定の結晶方位を有することにより、配向層表面でのLiCoO2の核形成を制御して結晶を成長させることができるような性質(以下単に、配向性と称する場合がある。)を持つため、LiCoO2のc軸を上記正極集電体の法線に対して傾けることができるのである。
例えば、後述する正極集電体と一体となっているものを挙げることができる。すなわち、正極集電体自体が配向性を表面に持つようなものである。具体的には、特定の結晶方位を有する半導体材料等を挙げることができる。上記半導体材料としては、例えば、SrTiO3等を挙げることができる。
また、配向性を持たない金属集電体上に、気相法でイオンビームを当てたり、電子ビーム等を照射したりして凹凸を形成する等して配向性を持たせたものを、配向層として用いることもできる。
また、配向層と正極集電体が異なる材料からなるものであっても良く、半導体材料、金属集電体等の上に、蒸着等の膜形成法により配向性を有する膜を形成して配向層としたものを用いても良い。
次に、本発明に用いられる正極集電体について説明する。本発明における正極集電体は、上記LiCoO2正極層の集電を行うものである。
上記正極集電体としては、LiCoO2正極層の集電を行うことができるものであれば、特に限定されるものではない。上記正極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、導電性のある半導体材料、金属材料等を用いることができる。中でも、集電をより効率よく行うことができるなどの理由から、金属材料であることが好ましい。このような金属材料においては、例えばアルミニウム、SUS、ニッケル、鉄およびチタン等を挙げることができ、中でもアルミニウムおよびSUSが好ましい。
また、上述したように、準備、取り扱い等が簡便である、効果的にLiCoO2正極層の抵抗を小さくすることができる等の観点からは、上記正極集電体が、配向層と一体となっていることが好ましい。すなわち、正極集電体自体が配向性を表面に持つようなものであり、具体的には、特定の結晶方位を有するSrTiO3半導体材料等を挙げることができる。
また、上記正極集電体は、配向性を持たない金属集電体上に、気相法でイオンビームを当てたり、電子ビーム等を照射したりして凹凸を形成する等して配向層を形成したようなものであっても良い。
上記全固体リチウム二次電池において、上述した正極電極体以外の構成、例えば、負極電極体、固体電解質層、およびその他の構成について、以下詳細に説明する。
(1)負極電極体
本発明に用いられる負極電極体について説明する。本発明に用いられる負極電極体は、少なくとも負極集電体と、負極層とからなるものである。
本発明に用いられる固体電解質層について説明する。
上記固体電解質層としては、固体電解質層としての機能を有するものであれば特に限定されるものではない。上記固体電解質層に用いられる固体電解質材料としては、一般的な全固体リチウム二次電池に用いられるものと同様のものを用いることができる。例えば酸化物系固体電解質、硫化物系結晶化ガラス、チオリシコン、塩化物系固体電解質、フッ化物系固体電解質等を挙げることができ、中でも酸化物系固体電解質、硫化物系結晶化ガラス、チオリシコン、特に酸化物系固体電解質が好ましい。
次に、上述した負極電極体、固体電解質層以外の構成、例えば、固体電解質層が正極電極体と負極電極体とにより挟持されたものの側面を覆うような絶縁(電池ケース)部、上記電池ケースが例えばコイン型であり、樹脂等で密閉する際の樹脂等について説明する。
上記絶縁(電池ケース)部、上記樹脂等に関しては、特に限定されるものではなく、一般的な全固体リチウム二次電池と同様のものを用いることができる。
具体的には、上記絶縁(電池ケース)部としては、固体電解質層が正極電極体と負極電極体とにより挟持されたものの側面のみを覆うような絶縁リングであっても良く、固体電解質層が正極電極体と負極電極体とにより挟持されたものの全面を覆うような電池ケース等であっても良い。上記電池ケースとしては、一般的には、金属製のものが用いられ、例えばステンレス製のもの等が挙げられる。上記樹脂としては、吸水率の低い樹脂が好ましく、例えばエポキシ樹脂等が挙げられる。また、上記電池ケースは、集電体の機能を兼ね備えたものであっても良い。具体的には、SUS(ステンレス鋼)製の電池ケースを用意し、その一部を集電体として用いる場合等を挙げることができる。
本発明の全固体リチウム二次電池の製造方法としては、上記の全固体リチウム二次電池を得ることができる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、後述する「B.全固体リチウム二次電池の製造方法」に記載される方法等を挙げることができる。
本発明の全固体リチウム二次電池の用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、自動車用の全固体リチウム二次電池等として、用いることができる。
本発明の全固体リチウム二次電池の形状は、コイン型、ラミネート型、円筒型、角型等を挙げることができ、中でも角型、ラミネート型が好ましく、特にラミネート型が好ましい。
次に、本発明の全固体リチウム二次電池の製造方法について、詳細に説明する。
本発明の全固体リチウム二次電池の製造方法は、正極集電体上に形成された配向層上に、LiCoO2正極層用塗工液を塗布してLiCoO2正極層前駆体膜を形成する塗布工程と、上記塗布工程により得られた上記LiCoO2正極層前駆体膜を焼成することにより結晶化させてLiCoO2正極層を得る焼成工程とを有することを特徴とするものである。
また、上記LiCoO2正極層は、所定の配向層上に形成されるため、上記配向層の配向性を利用してLiCoO2の核形成を制御して、結晶を成長させることができる。このため、LiCoO2のc軸が上記正極集電体の法線に対して傾いているものとすることを可能とし、LiCoO2正極層の抵抗を小さくしてレート特性を向上させた全固体リチウム二次電池を得ることができるのである。
例えば、次に示すような湿式法の一つであるゾルゲル法を用いて形成することができる。まず、上記正極集電体上に形成された配向層上に、LiCoO2正極活物質を構成する有機金属化合物と、溶媒とを含むLiCoO2正極層用塗工液を塗布した後、乾燥するなどしてLiCoO2正極層前駆体膜を形成する塗布工程を行う。その後、上記LiCoO2正極層前駆体膜を焼成する焼成工程を行ってLiCoO2正極層を形成する。
上記塗布工程においては、LiCoO2正極層用塗工液を塗布した後、上記有機金属化合物の分解温度以上の温度で仮焼しても良い。仮焼した後、室温等まで冷却して再びLiCoO2正極層用塗工液を塗布する等することにより、LiCoO2正極層前駆体膜を厚膜化することができる。このようなLiCoO2正極層用塗工液を塗布した後、上記有機金属化合物の分解温度以上の温度で仮焼し、仮焼した後、冷却するという1サイクルを2サイクル以上繰り返してLiCoO2正極層前駆体膜の膜厚を所望の膜厚として容量を向上させても良い。
次に、上記LiCoO2正極層上に固体電解質層を形成する固体電解質層形成工程を行った後、負極層を上記固体電解質層上に形成する負極層形成工程を行う。その後、負極集電体を負極層上に形成する負極集電体形成工程を行う。
さらに、上記固体電解質層が、上記LiCoO2正極層および上記正極集電体と、上記負極層および上記負極集電体とにより挟持されたものを電池ケース内に設置するなどして電池セルを形成する電池セル形成工程を行うことにより、上述した所望の全固体リチウム二次電池を得ることができる。
次に、固体電解質材料をプレス成形する等して固体電解質層を形成する固体電解質層形成工程を行った後、負極層を上記固体電解質層上に形成する負極層形成工程を行う。その後、負極集電体を負極層上に形成する負極集電体形成工程を行って、固体電解質層、負極層、および負極集電体からなるもの(以下、負極電極体側シートと称する場合がある)を得る。
また、上記負極電極体側シートを得る場合は、負極集電体上に負極層を形成する負極層形成工程を行った後、固体電解質層を上記負極層上に形成する固体電解質層形成工程を行っても良い。
次に、上記正極電極体シートと上記負極電極体側シートを張り合わせて得られた、上記固体電解質層が、上記LiCoO2正極層および上記正極集電体と、上記負極層および上記負極集電体とにより挟持されたものを電池ケース内に設置するなどして電池セルを形成する電池セル形成工程を行うことにより、上述した所望の全固体リチウム二次電池を得ることができる。
なお、正極電極体シート、および負極電極体側シートは同時に形成してもよく、負極電極体側シートを形成した後、正極電極体シートを形成しても良い。
上記ゾルゲル法は、水溶液系の前駆体を加水分解等することにより目的物を得ることができることに特徴を有するが、上記MOD法は、非水溶液系の前駆体を熱分解等することにより目的物を得ることができるという特徴を有している。上記MOD法のより具体的な手法としては、例えば、「Focus NEDO Vol.3 No.12 p.7−8」に記載された手法を挙げることができる。
以下、本発明の全固体リチウム二次電池の製造方法における各工程について、詳細に説明する。
本発明における塗布工程について説明する。本発明における塗布工程とは、正極集電体上に形成された配向層上に、LiCoO2正極層用塗工液を塗布してLiCoO2正極層前駆体膜を形成する工程である。本工程に用いられる塗布方法は、正極集電体上に形成された配向層上に、LiCoO2正極層前駆体膜を形成することができる方法であれば、特に限定されるものではない。
例えば、上記正極集電体上に形成された配向層上に、LiCoO2正極活物質を構成する有機金属化合物と、溶媒とを含むLiCoO2正極層用塗工液を塗布した後、乾燥し、その後冷却するなどしてLiCoO2正極層前駆体膜を形成する方法等を挙げることができる。
また、本工程においては、例えば、LiCoO2正極層用塗工液を塗布した後、上記有機金属化合物の分解温度以上の温度で仮焼しても良い。仮焼した後、冷却して再びLiCoO2正極層用塗工液を塗布する等することにより、LiCoO2正極層前駆体膜を厚膜化することができる。このようなLiCoO2正極層用塗工液を塗布した後、上記有機金属化合物の分解温度以上の温度で仮焼し、仮焼した後、冷却するという1サイクルを2サイクル以上繰り返してLiCoO2正極層前駆体膜の膜厚を所望の膜厚とすることもできる。
また、上述したように、仮焼等を行って、LiCoO2正極層前駆体膜の膜厚を所望の膜厚とすることにより、高容量化させることもできる。また、上記仮焼によりLiCoO2正極層前駆体膜中の副生成物等の不純物量を低減することもできる。
上記増粘剤としては、上記溶媒中に添加して、所望の粘性とすることができるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、PVP(ポリビニルピロリドン)、パラフィン、ポリエチレン、ポリオクタニウム、ポリビニルアルコール等を挙げることができ、さらに、パルミチン酸類、セルロース類、PEG(ポリエチレングリコール)類、アミド類、ポリアクリル酸類等を挙げることができる。
上記電子伝導剤としては、後述する焼成後に電子伝導性を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、カーボン類(グラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレン、アモルファスカーボンなど)等を挙げることができる。
また、上記表面調整剤としては、表面張力を調整して上記正極層前駆体膜表面をより平滑にすることができるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、界面活性剤等を挙げることができる。
また、上述したように、例えば、塗工液を塗布した後、仮焼し、冷却して、再び塗工液を塗布するなどして複数回塗布するような場合は、所望の上記LiCoO2正極層前駆体膜が形成できるように、塗布する回数等に応じて、1回の塗布に用いられる塗工液の量を適宜決定すればよい。
上記配向層については、上述した「A.全固体リチウム二次電池 1.正極電極体 (2)配向層」に記載したものと同様のものであるので、ここでの説明は省略する。
本発明においては、上記塗布工程の後に、焼成工程を行う。
上記焼成工程とは、上述した「1.塗布工程」にて得られたLiCoO2正極層前駆体膜を用いて、焼成してLiCoO2正極層を得る工程である。
本発明においては、本発明に必須の工程である上記塗布工程、上記焼成工程の他に、必要に応じて、固体電解質層を形成する固体電解質層形成工程、負極層を形成する負極層形成工程、負極集電体を形成する負極集電体形成工程、上記固体電解質層が、上記LiCoO2正極層および上記正極集電体と、上記負極層および上記負極集電体とにより挟持されたもの、すなわち、上記固体電解質層が、正極電極体と、負極電極体とにより挟持されたものを電池ケース内に設置するなどして電池セルを形成する電池セル形成工程等を有する。これらの工程としては、より具体的には、例えば上述したように2つの実施態様を挙げることができる。
本実施態様は、塗布工程、および焼成工程によりLiCoO2正極層を形成して、正極集電体、配向層、およびLiCoO2正極層とからなる上記正極電極体を得た後に、上記LiCoO2正極層上に、固体電解質層、負極層、および負極集電体の順で形成することを特徴とする。
本実施態様においては、例えば、上記LiCoO2正極層上に固体電解質層を形成する固体電解質層形成工程を行った後、負極層を上記固体電解質層上に形成する負極層形成工程を行う。その後、負極集電体を負極層上に形成する負極集電体形成工程を行う。
さらに、上記固体電解質層が、上記正極電極体と、上記負極電極体とにより挟持されたものを電池ケース内に設置するなどして電池セルを形成する電池セル形成工程を行うことにより、上述した所望の全固体リチウム二次電池を得ることができる。
以下、各工程について詳細に説明する。
本工程は、上記正極集電体上の上記配向層上に形成された上記LiCoO2正極層上に固体電解質層を形成する工程である。上記LiCoO2正極層上に固体電解質層を形成する具体的な方法としては、通常、電着等の薄膜を形成する方法により形成することが好ましい。プレス成形等する必要がなく、プレス成形による不純物の混入等を抑制することができるからである。
本実施態様における上記負極層形成工程は、負極層を上記固体電解質層上に形成する工程である。上記負極層を上記固体電解質層上に形成する具体的な方法としては、通常、電着等の薄膜を形成する方法により形成することが好ましい。プレス成形等する必要がなく、プレス成形による不純物の混入等を抑制することができるからである。
本工程は、負極集電体を上記負極層上に形成する工程である。上記負極集電体を上記負極層上に形成する具体的な方法としては、通常、電着等の薄膜を形成する方法により形成することが好ましい。プレス成形等する必要がなく、プレス成形による不純物の混入等を抑制することができるからである。
本工程は、上記固体電解質層が、上記正極電極体と、上記負極電極体とにより挟持されたものを電池ケース内に設置するなどして電池セルを形成する工程である。上記電池セルを形成する具体的な方法としては、所望の上記容量を向上させた全固体リチウム二次電池を得ることができる方法であれば良く、一般的な全固体リチウム二次電池における工程に用いられる方法と同様の方法を用いることができ、特に限定されるものではない。例えば、上記固体電解質層が、上記正極電極体と、上記負極電極体とにより挟持されたものを絶縁リングで側面を覆ったり、上記固体電解質層が、上記正極電極体と、上記負極電極体とにより挟持されたものをコイン型の電池ケース内に設置して、樹脂等で密閉したりする等して全固体リチウム二次電池を得る方法等を挙げることができる。
本実施態様は、上述したような塗布工程、および焼成工程により得られる、正極集電体、配向層、およびLiCoO2正極層とからなる上記正極電極体(正極電極体シート)と、固体電解質層、負極層、および負極集電体からなるもの(負極電極体側シート)とを、別々に形成することを特徴とする。
本実施態様においては、例えば、上記正極電極体シートを得た後に、固体電解質材料をプレス成形等する等して固体電解質層を形成する固体電解質層形成工程を行った後、負極層を上記固体電解質層上に形成する負極層形成工程を行う。その後、負極集電体を負極層上に形成する負極集電体形成工程を行って、固体電解質層、負極層、および負極集電体からなる負極電極体側シートを得る。
また、上記負極電極体側シートを得る場合は、負極集電体上に負極層を形成する負極層形成工程を行った後、固体電解質層を上記負極層上に形成する固体電解質層形成工程を行っても良い。
次に、上記正極電極体シートのLiCoO2正極層表面と上記負極電極体側シートの固体電解質層表面とを張り合わせて得られた、上記固体電解質層が、上記正極電極体と、上記負極電極体とにより挟持されたものを電池ケース内に設置するなどして電池セルを形成する電池セル形成工程を行うことにより、上述した所望の全固体リチウム二次電池を得ることができる。
なお、正極電極体シート、および負極電極体側シートは同時に形成してもよく、負極電極体側シートを形成した後、正極電極体シートを形成しても良い。
以下、各工程について詳細に説明する。
本工程は、固体電解質層を形成する工程である。上述したように負極電極体側シートを形成する際に、固体電解質層を先に形成する場合には、固体電解質層を形成する具体的な方法としては、所定のプレス成形装置に所定の固体電解質材料を充填してプレス成形する方法等を挙げることができる。また、負極電極体側シートを形成する際に、負極集電体上に負極層を形成する負極層形成工程を行った後、固体電解質層を上記負極層上に形成する場合には、固体電解質層を形成する具体的な方法としては、通常、電着等の薄膜を形成する方法により形成することが好ましい。プレス成形等する必要がなく、プレス成形による不純物の混入等を抑制することができるからである。
本工程は、上述したように、負極層を上記固体電解質層上、もしくは上記負極層上に形成する工程である。上記負極層を形成する具体的な方法としては、通常、電着等の薄膜を形成する方法により形成することが好ましい。プレス成形等する必要がなく、プレス成形による不純物の混入等を抑制することができるからである。
本工程は、上述したように、負極集電体を上記負極層上に形成する工程である。上記負極集電体を上記負極層上に形成する具体的な方法としては、通常、電着等の薄膜を形成する方法により形成することが好ましい。プレス成形等する必要がなく、プレス成形による不純物の混入等を抑制することができるからである。
なお、上記負極電極体側シートを形成する際に、負極集電体上に負極層を形成する負極層形成工程を行った後、固体電解質層を上記負極層上に形成するような場合には、所定の金属薄膜等を負極集電体として用いることができる。
本発明により得られる全固体リチウム二次電池については、上記「A.全固体リチウム二次電池」に記載したものと同様のものであるので、ここでの説明は省略する。
(LiCoO2正極層用塗工液調製)
i−(CH3)2CHOLiと、PVPと、CH3COOHと、2−C3H7OHとをモル比が1.1:1:10:20となるように混合して、溶液Aを調製した。次に、Co(CH3COO)2・4H2OとH2Oとをモル比が1:50となるように混合して、溶液Bを調製した。上記の溶液Aと溶液Bとを混合してLiCoO2正極層用塗工液を得た。
(LiCoO2正極層形成)
LiCoO2正極層用塗工液調製で得られたLiCoO2正極層用塗工液15μLを1cm□の(100)SrTiO3:0.5wt%Nbドープ基板(信光社製)に滴下し、4000rpmで20secスピンコートした。次に、500℃で10min仮焼した後、冷却した。スピンコート、仮焼(500℃)、および冷却を繰り返し行い、目的の厚さとなった後、800℃で1時間の焼成を行い、LiCoO2正極層を得た。
LiCoO2正極層用塗工液を滴下する基板を1cm□の(111)SrTiO3:0.5wt%Nbドープ基板(信光社製)とした以外は、実験例1と同様にしてLiCoO2正極層を得た。
LiCoO2正極層用塗工液を滴下する基板を1cm□の(110)SrTiO3:0.5wt%Nbドープ基板(信光社製)とした以外は、実験例1と同様にしてLiCoO2正極層を得た。
LiCoO2正極層用塗工液を滴下する基板を多結晶金基板(10mmΦ×0.5mmt)とした以外は、実験例1と同様にしてLiCoO2正極層を得た。
SEMにより、実験例4で得られたLiCoO2正極層表面の形状観察を行った。得られた結果を図4に示す。また、比較のために、スパッタ法で作製した膜のSEM写真(J.Electrochem.Soc.,147 59 (2000))を図5に示す。図4に示されるように、湿式法で作製したLiCoO2正極層は、小さなドメインが緻密に充填され亀裂がなかった。一方、図5に示されるように、スパッタ法で作製した膜は、1μm弱の幅で、数10μmの長さの亀裂が存在している。このように、湿式法を用いることにより、亀裂等が存在しない良好なLiCoO2正極層が得られた。
実験例1、実験例2、実験例3、および実験例4で得られたLiCoO2正極層の結晶性をX線回折法(XRD)により、分析、評価を行った。実験例1、実験例2、および実験例3で得られたLiCoO2正極層のXRDパターンを図6に示す。また、実験例1、実験例2、実験例3、および実験例4のXRDパターンから得られたピーク強度比(101)/(003)、およびピーク強度比(104)/(003)を表1に示す。
このように、実験例1、実験例2、および実験例3においては、配向性を有する基板(配向層)上に形成されたLiCoO2のc軸が上記正極集電体の法線に対して傾いているものとすることができ、LiCoO2正極層の抵抗を小さくしてレート特性を向上させることができることがわかった。
このことから、実験例1よりも実験例2の方が、さらに、実験例2よりも実験例3の方が、より効果的に、LiCoO2のc軸を上記正極集電体の法線に対して傾けることができ、電気抵抗率の低いab軸を法線方向により近く並べることができるためLiCoO2正極層の抵抗を小さくしてレート特性を向上させることができることがわかった。すなわち、SrTiO3基板の結晶方位は、特に実験例3で用いられた(110)であることが好ましいことがわかった。
2 … 配向層
3 … LiCoO2正極層
4 … 正極電極体
5 … 負極集電体
6 … 負極層
7 … 負極電極体
8 … 固体電解質層
9 … 絶縁(電池ケース)部
Claims (4)
- 正極集電体と、前記正極集電体上に形成された配向層と、前記配向層上に湿式法を用いて形成されたLiCoO2正極層とからなる正極電極体を有し、前記LiCoO2のc軸が前記正極集電体の法線に対して傾いていることを特徴とする全固体リチウム二次電池。
- 前記配向層が、前記正極集電体としての機能を有するSrTiO3基板であり、前記SrTiO3基板の結晶方位が(100)、(111)、および(110)からなる群より選ばれるいずれか一種であることを特徴とする請求項1に記載の全固体リチウム二次電池。
- 前記SrTiO3基板の結晶方位が(110)であることを特徴とする請求項2に記載の全固体リチウム二次電池。
- 請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の全固体リチウム二次電池を製造する全固体リチウム二次電池の製造方法であって、
正極集電体上に形成された配向層上に、LiCoO2正極層用塗工液を塗布してLiCoO2正極層前駆体膜を形成する塗布工程と、前記塗布工程により得られた前記LiCoO2正極層前駆体膜を焼成することにより結晶化させてLiCoO2正極層を得る焼成工程とを有することを特徴とする全固体リチウム二次電池の製造方法。
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