JP2016154140A - リチウム二次電池用リチウム複合酸化物焼結板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】リチウム二次電池の正極を構成するリチウム複合酸化物焼結板の製造に関し、リチウム二次電池の放電電圧の低下を抑えるのに有効な技術を提供する。
【解決手段】リチウム二次電池用リチウム複合酸化物焼結板の製造方法は、厚さが10μm以上であり、空隙率が15%以下であり、平均気孔径が5μm以下であるリチウム複合酸化物焼結板としてのコバルト酸リチウム焼結板を準備する第1ステップと、第1ステップで準備したコバルト酸リチウム焼結板の板表面に有機金属化合物の溶液若しくは分散液を付加して含浸させた後に、この有機金属化合物を300℃以上の熱処理温度で熱分解する第2ステップとを含む。
【選択図】図3

Description

本発明は、リチウム二次電池の正極を構成するリチウム複合酸化物焼結板を製造する技術に関する。
従来、活物質の粉末とバインダーとの混練物を成形することによって形成される電極(以下、「粉末電極」ともいう。)が知られている。この粉末電極は、容量に寄与しないバインダーが比較的多量(例えば10重量%程度)に添加されることにより、正極活物質としてのリチウム複合酸化物の充填密度が低くなるため不利である。そこで、粉末電極に代えて、リチウム複合酸化物の充填密度を高めることができる点について有利な、リチウム複合酸化物焼結板からなる電極(以下、「焼結板電極」ともいう。)を用いるのが良い。この種の焼結板電極の製造方法の一例が特許文献1,2に開示されている。例えば、特許文献1に開示の製造方法(以下、「従来方法」ともいう。)では、電池特性(サイクル特性、レート特性)を向上させるために、正極を構成するリチウム複合酸化物焼結板(正極活物質層)に形成される空隙の状態(空孔の大きさ及び割合)を調整している。
特開2012−009193号公報 特開2012−009194号公報
上記の従来方法で製造された焼結板電極は、粉末電極に比べて活物質の表面積が小さく、単位表面積当たりの電荷移動量が大きいことが知られている。この焼結板電極は、粉末電極に比べて単位重量あたりの電荷移動抵抗が大きく、電池の全抵抗に及ぼす影響が大きいため、例えば1Cのようなハイレートでの放電電圧低下の要因に成り得る。即ち、この焼結板電極では、焼結板に形成される空隙の状態を調整することのみで放電電圧を高いレベルに維持するのには限界があり、更なる改善の余地があった。特に、焼結板の厚さが大きい場合(例えば、30μm以上の場合)は電荷移動抵抗が大きくなり易い。
そこで、本発明者は、リチウム複合酸化物の充填密度について有利な焼結板電極の使用を前提とし、焼結板に形成される空隙の状態を調整した上で、ハイレートでの放電電圧の低下を抑えるのに有効な技術について鋭意検討した。その検討の結果、本発明者は、焼結板の製造過程に電荷移動抵抗を低く抑えるための特定の処理を追加することによって、従来方法によって製造された焼結板を用いる場合に比べて、ハイレートでの放電電圧の低下を抑えることができることを見出すことに成功した。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、リチウム二次電池の正極を構成するリチウム複合酸化物焼結板の製造に関し、リチウム二次電池の放電電圧の低下を抑えるのに有効な技術を提供することである。
(課題を解決するための手段)
上記目的を達成するため、本発明に係る二次電池用リチウム複合酸化物焼結板の製造方法は、リチウム二次電池の正極を構成するリチウム複合酸化物焼結板を製造するための方法である。この製造方法は、第1ステップ及び第2ステップを含む。各ステップが複数のステップに分割されてもよい。ここで「リチウム複合酸化物」とは、LiMO(0.05<x<1.10、Mは少なくとも1種類の遷移金属:典型的にはMはCo,Ni,Mnのうちの1種以上を含む。)で表される酸化物である。ここで「リチウム複合酸化物焼結板」とは、リチウム複合酸化物を含む材料がシート状に成形された状態で融点以下の温度で加熱されることによって作製された板状の焼結板である。この焼結板によって構成される焼結板電極は、活物質の粉末と導電助剤、バインダーとの混練物を成形することによって形成される粉末電極に比べて、リチウム複合酸化物の充填密度を高めることができる点について有利である。
第1ステップは、厚さが10μm以上であり、空隙率が15%以下であり、平均気孔径が5μm以下であるリチウム複合酸化物焼結板を準備するステップである。ここで、「厚さ」は、リチウム複合酸化物焼結板のうち略平行な2つの板表面間の距離として規定される。この厚さは、典型的には、リチウム複合酸化物焼結板の断面をSEM(走査電子顕微鏡)によって観察した場合における、略平行に観察される2つの板表面間の距離を測定することで得られる。「空隙率(voidage)」は、リチウム複合酸化物焼結板における、気孔(開気孔及び閉気孔を含む)の体積比率である。この空隙率は、「気孔率(porosity)」と称されることもある。この空隙率は、例えば、断面SEM(走査電子顕微鏡)写真の画像処理や、焼結板の嵩密度と真密度とから計算上求められる。「平均気孔径」は、リチウム複合酸化物焼結板内の気孔の、直径の平均値である。かかる直径は、典型的には、当該気孔を同体積あるいは同断面積を有する球形と仮定した場合の、当該球形における直径である。平均気孔径は、例えば、断面SEM(走査電子顕微鏡)写真の画像処理や、水銀圧入法等の、周知の方法によって取得され得る。
第2ステップは、第1ステップで準備したリチウム複合酸化物焼結板の板表面に有機金属化合物の溶液若しくは分散液を付加(或いは供給)して含浸させた後に、この有機金属化合物を300℃以上の熱処理温度で熱分解するステップである。この有機金属化合物には、炭素原子と金属原子間の共有結合をもち、300℃以上の熱処理温度で酸化反応を伴いながら熱分解する化合物が広く包含される。これにより、リチウム複合酸化物焼結板に付加された有機金属化合物が熱分解によって酸化する。本発明者は、このような熱処理を繰り返し実行した結果、得られたリチウム複合酸化物焼結板の電荷移動抵抗を低く抑えることができた。その理由として、熱分解によって酸化した有機金属化合物がリチウム複合酸化物焼結板の表面状態を変化させる表面改質機能を発揮するものと考えられる。この表面改質機能の1つとして、熱分解によって酸化した有機金属化合物が、リチウム複合酸化物焼結板の板表面に残留したLi化合物を吸収する(電荷移動抵抗を下げるのに不利なLiのゲッターとして作用する)という機能が考えられる。
本発明者は、上述の製造方法によって製造されたリチウム複合酸化物焼結板を用いてリチウム二次電池の正極を構成したところ、リチウム複合酸化物焼結板の厚さが10μm以上であっても、例えば1Cのようなハイレートでの放電電圧の低下を抑えることができるという知見を得た。その結果、取り出せる電力が大きくなるという作用効果が得られることとなった(この点の詳細については後述する)。
前記の製造方法では、第1ステップにおいて準備するリチウム複合酸化物焼結板が層状岩塩構造を有するのが好ましい。「層状岩塩構造」とは、リチウム層とリチウム以外の遷移金属層とが酸素の層を挟んで交互に積層された結晶構造、すなわち、酸化物イオンを介して遷移金属イオン層とリチウム単独層とが交互に積層した結晶構造(典型的にはα−NaFeO型構造:立方晶岩塩型構造の[111]軸方向に遷移金属とリチウムとが規則配列した構造)をいう。これにより、層状岩塩構造を有するリチウム複合酸化物焼結板を用いて正極板が構成されたリチウム二次電池を提供できる。
前記の製造方法では、第1ステップにおいて準備するリチウム複合酸化物焼結板がコバルト酸リチウムを材料とした焼結板であるのが好ましい。これにより、コバルト酸リチウムからなるリチウム複合酸化物焼結板を用いて正極板が構成されたリチウム二次電池を提供できる。
前記の製造方法では、第2ステップで用いる有機金属化合物がTi、Al及びZrからなる金属元素群から選択される1種類の金属元素を含むのが好ましい。この有機金属化合物は、リチウム二次電池の放電電圧の低下を抑えるのに効果的である(この点の詳細については後述する)。
前記の製造方法では、第2ステップにおける有機金属化合物の溶液若しくは分散液をリチウム複合酸化物焼結板の板表面に単位表面積当たり1×10−7〜1×10−3g/cmの割合で付加するのが好ましい。これにより、熱分解によって生じた金属化合物がリチウム複合酸化物焼結板の板表面に必要以上に残留せず、不純物となって信頼性などの電池性能に悪影響を与えづらい。
前記の製造方法では、第2ステップにおいて有機金属化合物を300℃から600℃までの範囲に属する所定の熱処理温度で熱分解するのが好ましい。この熱処理温度は、リチウム二次電池の放電電圧の低下を抑えるのに効果的である(この点の詳細については後述する)。
図1は、本発明の実施形態にかかるリチウム二次電池の概略構成を模式的に示す図である。 図2は、図1中の正極の拡大断面図である。 図3は、本発明の実施形態にかかるコバルト酸リチウム焼結板の製造工程のフローチャートである。 図4は、実施例1のコバルト酸リチウム焼結板の断面についてのSEM写真である。 図5は、比較例1について放電電圧と放電容量との相関を表す放電カーブを示す図である。 図6は、実施例1について放電電圧と放電容量との相関を表す放電カーブを示す図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、以下の実施形態に関する記載は、法令で要求されている明細書の記載要件(記述要件・実施可能要件)を満たすために、本発明の具体化の単なる一例を、可能な範囲で具体的に記述しているものにすぎない。従って、本発明が、以下に説明する実施形態や実施例の具体的構成に何ら限定されるものではない。
(リチウム二次電池の概略構成)
図1に示されるように、本実施形態のリチウム二次電池100は、電池ケース101、セパレータ102、電解質103、負極110及び正極120を備えている。
電池ケース101は、セパレータ102、電解質103、負極110及び正極120を収容する収容体である。セパレータ102は、電池ケース101内の空間を、負極110が配置される領域と正極120が配置される領域とに区画するように設けられている。即ち、電池ケース101内には、負極110及び正極120が、セパレータ102を隔てて対向するように配置されている。
(電解質)
電解質103として、例えば、電気的特性や取り扱い易さの点から、液系電解質を好適に用いることができる。かかる液系電解質としては、有機溶媒等の非水系溶媒にリチウム塩等の電解質塩を溶解させることによって調製された、非水溶媒系の電解質が好適に用いられる。電解質103は、正極活物質層(後述する図2における正極活物質層122)に設けられた開気孔に充填されている、もしくは浸み込んでいる方が、正極活物質からのリチウムイオン出入りが活発になる点で好ましい。尚、この電解質103として液系電解質に代えて、イオン液体、ポリマー電解質、ゲル電解質、又は固体電解質等を用いることもできる。イオン液体は、常温溶融塩とも呼ばれ、カチオンおよびアニオンの組み合わせからなる塩である。イオン液体として、例えば、四級アンモニウム系カチオンを含むイオン液体およびイミダゾリウム系カチオンを含むイオン液体などが挙げられる。また、固体電解質としては、例えば、固体高分子型の有機固体電解質、若しくは、酸化物系又は硫化物系などの無機固体電解質が好適に使用できる。
非水系溶媒としては、特に限定はないが、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート又はメチルプロピオンカーボネート等の鎖状エステル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート又はビニレンカーボネート等の誘電率の高い環状エステル、若しくは、鎖状エステルと環状エステルの混合溶媒等を用いることができ、鎖状エステルを主溶媒とした環状エステルとの混合溶媒が特に適している。
上述の非水系溶媒に溶解させる電解質塩として、例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、LiCSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(RfSO)(Rf′SO)、LiC(RfSO、LiC2n+1SO(n≧2)、又はLiN(RfOSO[ここでRfとRf′はフルオロアルキル基]等を用いることができる。かかる電解質塩としては、1種のみが単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上述の電解質塩の中でも、炭素数2以上の含フッ素有機リチウム塩が特に好ましい。この含フッ素有機リチウム塩は、アニオン性が大きく、且つイオン分離しやすいために、上述の溶媒に溶解し易いからである。非水電解液としての電解質13中における電解質塩の濃度は、特に限定はないが、例えば、0.3mol/l以上、より好ましくは0.4mol/l以上であって、1.7mol/l以下、より好ましくは1.5mol/l以下であることが好ましい。
(負極の構造)
負極110に係る負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵及び放出できるものであればよい。よって、例えば、炭素質材料(黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、及び活性炭等)を負極活物質として用いることができる。また、黒鉛の一部を、リチウムと合金化し得る金属や酸化物等と置き換えることができる。更に、金属リチウム、金属リチウムと他の元素(ケイ素、スズ、インジウム等)とを含む合金、リチウムに近い低電位で充放電できるケイ素又はスズ等の酸化物、若しくは、Li2.6Co0.4N等のリチウムとコバルトとの窒化物等の、リチウム吸蔵物質も、負極活物質として用いることができる。
負極活物質として黒鉛を用いた場合、満充電時の電圧を、リチウム基準で約0.1Vとみなすことができる。このため、電池電圧に0.1Vを加えた電圧で正極15の電位を便宜上計算することができる。よって、この場合、正極15の充電電位が制御しやすく、好適である。
(正極の構造)
図2に示されるように、正極120は、正極集電体121、正極活物質層122及び導電性接合層123を備えている。正極集電体121は、金属等の導電性物質(例えばアルミニウム箔)からなり、導電性接合層123を介して正極活物質層122と接合されている。正極活物質層122は、厚さが10μm以上であり、空隙率が15%以下であり、平均気孔径が5μm以下であるリチウム複合酸化物焼結板によって構成されている。このリチウム複合酸化物焼結板は、空隙率が15%以下であり、平均気孔径が5μm以下であるため、気孔の局所において応力集中が発生するのを阻止するのに有効であり、充放電サイクルに伴う結晶格子の伸縮の際に発生する内部応力を良好に分散させることができる。以下では、リチウム複合酸化物焼結板の一例として、コバルト酸リチウムが材料種であるコバルト酸リチウム焼結板を挙げ、その製法例について説明する。勿論、この製法例を、コバルト酸リチウム以外のリチウム複合酸化物を材料種とするリチウム複合酸化物焼結板の製法に適用することもできる。以下、正極活物質層122を「コバルト酸リチウム焼結板122」とも記載する。
(コバルト酸リチウム焼結板)
コバルト酸リチウム焼結板(LiCoO焼結板)122は、主として層状岩塩構造を有するLiCoOからなるのが好ましい。LiCoOは、リチウム層とリチウム以外の遷移金属層とが酸素の層を挟んで交互に積層された結晶構造、すなわち、酸化物イオンを介して遷移金属イオン層とリチウム単独層とが交互に積層した結晶構造(典型的にはα−NaFeO型構造:立方晶岩塩型構造の[111]軸方向に遷移金属とリチウムとが規則配列した構造)を有する。このコバルト酸リチウム焼結板122には、Mg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ag,Sn,Sb,Te,Ba,W,及びBi等の元素が1種以上更にドーピング又はそれに準ずる形態(例えば結晶粒子の表層への部分的な固溶、又は偏析)で微量添加されていてもよい。
(コバルト酸リチウム焼結板の製造方法)
上記構成のコバルト酸リチウム焼結板122は、例えば、図3を参照しつつ説明する以下の製造方法によって、容易かつ確実に形成される。
図3に示されるように、コバルト酸リチウム焼結板122の製造方法は、グリーンシート作製工程S101と、グリーンシート焼成工程S102と、コバルト酸リチウム焼結板作製工程S103と、有機金属化合物熱分解工程S104とに大別される。尚、必要に応じて、これら4つの各工程の前後に1又は複数の別工程を追加することもできる。ここでいうグリーンシート作製工程S101、グリーンシート焼成工程S102及びコバルト酸リチウム焼結板作製工程S103によって構成される一連の処理が本発明の「第1ステップ」に相当する。有機金属化合物熱分解工程S104の処理が本発明の「第2ステップ」に相当する。
尚、本明細書では、グリーンシート焼成工程S102で得られるシート状の焼成体、即ち、リチウムが導入される前の焼成体を「焼成板」として記載し、コバルト酸リチウム焼結板作製工程S103以降で得られるシート状の焼成体、即ち、リチウムが導入された後の焼成体を「焼結板」として記載している。また、リチウムが導入される前のシート状の焼成体、及びリチウムが導入された後のシート状の焼成体のいずれも「焼成板」と称呼することもできる。
(グリーンシート作製工程)
グリーンシート作製工程S101では、Co原料(典型的には、リチウム化合物を含まないCo(四酸化三コバルト)粒子)を含む未焼成のシート状のグリーンシートを作製する。この工程において、典型的にはCo粒子を含む原料を準備する。Co粒子の体積基準D50粒径は、0.1〜0.6μmであるのが好ましい。さらに、粒成長を促進する目的で、酸化ホウ素、酸化ビスマス又は酸化アンチモン等の低融点酸化物、塩化ナトリウム又は塩化カリウム等の低融点塩化物、若しくは、ホウケイ酸ガラス等の低融点ガラスが、0.001〜30wt%添加され得る。
更に、所望の大きさ及び割合の空孔を形成するための添加剤である空孔形成材が、適宜、均一に混合され得る。かかる空孔形成材として、続く仮焼成工程において分解(蒸発あるいは炭化)される物質の、粒子又は繊維を好適に用いることができる。具体的には、例えば、テオブロミン、ナイロン、グラファイト、フェノール樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、又は発泡性樹脂等の有機合成樹脂の、粒子又は繊維を、空孔形成材として好適に用いることができる。勿論、かかる空孔形成材がなくても、原料粒子の粒径や、仮焼成工程における焼成温度等を適宜調整することによって、所望の大きさ及び割合の空孔を形成することが可能である。
原料粒子あるいはその混合物をシート成形することで、「独立した」シート状の成形体(グリーンシート)が得られる。ここで、「独立した」シート(「自立膜」と称されることもある。)とは、他の支持体から独立して単体で取り扱い可能なシートのことをいう(アスペクト比が5以上の薄片も含む)。すなわち、「独立した」シートには、他の支持体(基板等)に固着されて当該支持体と一体化された(分離不能あるいは分離困難となった)ものは含まれない。
上述のシート成形は、周知の様々な方法で行われ得る。すなわち、このシート成形のために、ドクターブレード式シート成形機(ドクターブレード法)、ドラムドライヤー、ディスクドライヤー、又はスクリーン印刷機等を用いることができる。シート状の成形体の厚さは、焼成後に上述の所望厚さとなるように、適宜設定される。
(グリーンシート焼成工程)
グリーンシート焼成工程S102では、上述のシート成形によって得られたグリーンシートを、後述するリチウム導入に先立ち、仮焼成する(例えば700〜1400℃)。これにより、比較的大きめの気孔が多数含まれる多孔質状のシート状中間焼成体(Co焼成板)が得られる。かかる仮焼成処理は、例えば、エンボス加工が施されたジルコニア製セッター上に成形体を載置した状態で、大気雰囲気中で行われる。
(コバルト酸リチウム焼結板作製工程)
コバルト酸リチウム焼結板作製工程S103では、上記の中間焼成体に、リチウム化合物原料を付加して、熱処理することにより、当該中間焼成体にリチウムを導入する。これにより、「独立した」シート状のコバルト酸リチウム焼結板(リチウム複合酸化物焼結板)が得られる。かかるリチウム導入処理は、例えば、中間焼成体とリチウム化合物原料を坩堝中に投入して熱処理する方法、中間焼成体にリチウム化合物原料溶液又はリチウム化合物分散液を滴下塗布若しくはスプレーコーティングした後に熱処理する方法、又は、リチウム化合物原料のグリーンシートを作製し、中間焼成体上に載置して熱処理する方法などが挙げられる。特にスプレーコーティングやグリーンシートの載置によるリチウム導入処理が、中間焼成体に対してリチウムを均一に導入できるため、好ましい。
リチウム源であるリチウム化合物として、例えば、炭酸リチウム、硝酸リチウム、過酸化リチウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、塩化リチウム、シュウ酸リチウム又はクエン酸リチウム等の各種リチウム塩、若しくは、リチウムメトキシド又はリチウムエトキシド等のリチウムアルコキシドを用いることができる。リチウム化合物は、一般式LiMOで表される焼結板におけるリチウムとMとのモル比Li/Mが1以上となるように添加される。
上述の仮焼成処理によって得られた多孔質状の中間焼成体に対して、リチウム導入を行う際に、当該中間焼成体内の気孔が小さくなり、所望の大きさ及び割合となる。
コバルト酸リチウム焼結板作製工程S103で得られるコバルト酸リチウム焼結板の厚さは、好ましくは10〜50μmである。コバルト酸リチウム焼結板のサイズは、好ましくは5mm×5mm平方以上、より好ましくは10mm×10mm〜100mm×100mm平方であり、さらに好ましくは10mm×10mm〜50mm×50mm平方であり、別の表現をすれば、好ましくは25mm以上、より好ましくは100〜10000mmであり、さらに好ましくは100〜2500mmである。コバルト酸リチウム焼結板は、空隙率が15%以下であり、且つ平均気孔径が5μm以下である。このような性状のコバルト酸リチウム焼結板は、気孔の局所において応力集中が発生するのを阻止するのに有効であり、充放電サイクルに伴う結晶格子の伸縮の際に発生する内部応力を良好に分散させることができる。
(有機金属化合物熱分解工程)
有機金属化合物熱分解工程S104では、上記のコバルト酸リチウム焼結板の板表面に有機金属化合物の溶液若しくは分散液を付加(或いは供給)して含浸させた後に、この有機金属化合物を300℃以上の熱処理温度で熱分解する。好ましくは、300℃から600℃までの範囲に属する所定の熱処理温度で有機金属化合物を熱分解する。この熱分解によって酸化した有機金属化合物がコバルト酸リチウム焼結板の表面状態を変化させる表面改質機能(例えば、熱分解によって酸化した有機金属化合物が、焼結板の板表面に残留したLi化合物を吸収する(電荷移動抵抗を下げるのに不利なLiのゲッターとして作用する)という機能)を発揮する。この熱処理温度(300〜600℃)は、リチウム二次電池の放電電圧の低下を抑えるのに効果的である。300℃以上の温度で熱処理することによって、有機金属化合物を十分に熱分解することができる。また、600℃以下の温度で熱処理することによって、有機金属化合物とリチウム複合酸化物焼結板が反応して、金属元素が焼結板内部に吸収、拡散されることを抑制できるため、上記のような表面改質機能を十分に発揮できる。
有機金属化合物として典型的には、酢酸塩又はシュウ酸塩といったカルボン酸の金属塩、若しくは、金属アルコキシド等の化合物が挙げられる。この有機金属化合物は、Ti、Al、Zr、Mg及びWからなる金属元素群から選択される1種類の金属元素を含むのが好ましく、Ti、Al及びZrからなる金属元素群から選択される1種類の金属元素を含むのが特に好ましい。ここで、「金属アルコキシド」とは、M(OR)nの一般式で表される(Mは金属元素、Rはアルキル基、nは金属元素の酸化数)。
かかる熱分解では、コバルト酸リチウム焼結板の板表面に金属化合物が不純物として残留することが想定される。そこで、有機金属化合物の溶液若しくは分散液をコバルト酸リチウム焼結板の板表面に単位表面積当たり1×10−7〜1×10−3g/cmの割合で付加するのが好ましい。これにより、有機金属化合物の熱分解によって生じた金属化合物がコバルト酸リチウム焼結板の板表面に必要以上に残留せず、不純物となって信頼性などの電池性能に悪影響を与えづらい。
本発明の好ましい実施形態及びその作用効果は、表1及び図4〜図6を参照しつつ以下に説明する比較例及び実施例によってより明確化される。尚、以下の説明では、各処理や各操作の実行主体である発明者の記載を便宜上省略している。
<比較例1>
以下の手順により、有機金属化合物が付加されないLiCoO焼結板(比較例1)を作製した。この種のLiCoO焼結板を単に「LCO」ともいう。
(グリーンシートの作製)
Co原料粉末(体積基準D50粒径2μm、正同化学工業株式会社製)粉末100重量部と、分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)10重量部と、可塑剤(DOP:Di(2−ethylhexyl)phthalate、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(製品名レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。この混合物を、減圧下で撹拌することで脱泡するとともに、4000cPの粘度になるように調製した。尚、この調製時の粘度をブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。上記のようにして調製したスラリーを、ドクターブレード法によってPETフィルムの上に供給して乾燥し、乾燥後の厚さが56μmとなるようにシート状に成形することによって、未焼成のグリーンシートを作製した。
(Co焼成板の作製)
前記のPETフィルムから剥がしたグリーンシートを、カッターで20mm角に切り出し、突起の大きさが300μmのエンボス加工を施したジルコニア製のセッター(寸法が90mm角で、高さ1mmの治具)の中央に載置し、1000℃の温度で5時間焼成した後、降温速度50℃/hにて降温し、セッターに溶着していない部分をCo焼成板として取り出した。
(リチウムの導入)
水酸化リチウムとしてのLiOH・HO粉末をジェットミルで1μm以下に粉砕し、この粉末(粉砕物)がエタノールに分散したスラリーを作製した。このスラリーをCo焼成板にLi/Co=1.04になるように塗布し、乾燥した。その後、乾燥後のCo焼成板を、大気中にて760℃の温度で12時間加熱処理することによってLiCoO焼結板を得た。このLiCoO焼結板の気孔率(空隙率)は12%であった(表1参照)。尚、上述のLiOH・HOのスラリー(エタノール分散液)は、以下のようにして調製したものである。まず、LiOH・HO粉末(和光純薬工業株式会社製)を、ジェットミルを用いて、電子顕微鏡観察による目視粒径で1μm以下になるように粉砕した。この粉末をエタノール(片山化学株式会社製)100重量部に対し1重量部の割合で加え、超音波により粉末が目視によって確認することができなくなるまでエタノールに分散させた。
<実施例1〜3>
前記のLiCoO焼結板(比較例1)を、2−エトキシエタノールを用いて0.3mol/Lに希釈したジルコニウムブトキシド溶液に浸漬させた後、乾燥させた。こうしてジルコニウムブトキシド溶液を板表面に付加して含浸させたLiCoO焼結板を大気中にて300〜500℃の温度で5時間熱処理して、ジルコニア化合物によって表面処理されたLiCoO焼結板を得た。この場合、300℃での熱処理によって得られたLiCoO焼結板を実施例1とし、400℃での熱処理によって得られたLiCoO焼結板を実施例2とし、500℃での熱処理によって得られたLiCoO焼結板を実施例3とした。
<実施例4〜6>
前記のLiCoO焼結板(比較例1)を、純水を用いて0.3mol/Lに希釈した酢酸アルミニウム水溶液(分散液)に浸漬させた後、乾燥させた。こうして酢酸アルミニウム水溶液を板表面に付加して含浸させたLiCoO焼結板を大気中にて300〜500℃で5時間熱処理して、アルミニウム化合物によって表面処理されたLiCoO焼結板を得た。この場合、300℃での熱処理によって得られたLiCoO焼結板を実施例4とし、400℃での熱処理によって得られたLiCoO焼結板を実施例5とし、500℃での熱処理によって得られたLiCoO焼結板を実施例6とした。
<比較例2>
以下の手順により、有機金属化合物が付加されないLi(Ni0.8,Co0.15,Al0.05)O焼結板(比較例2)を作製した。この種のLi(Ni0.8,Co0.15,Al0.05)O焼結板を単に「NCA」ともいう。
(スラリー調製)
Ni(OH)粉末(株式会社高純度化学研究所製)81.6重量部と、Co(OH)粉末(和光純薬工業株式会社製)15.0重量部と、Al・HO粉末(SASOL社製)3.4重量部と、を秤量した。次に、純水97.3重量部と、分散剤(日油株式会社製:品番AKM−0521)0.4重量部と、消泡剤としての1−オクタノール(片山化学株式会社製)0.2重量部と、バインダー(日本酢ビ・ポバール株式会社製:品番PV3)2.0重量部と、からなるビヒクルを作製した。続いて、かかるビヒクルと原料粉末(上述の秤量物)とを湿式で混合及び粉砕することで、スラリーを調製した。湿式の混合及び粉砕は、直径2mmのジルコニアボールを用いたボールミルで24時間処理した後、直径0.1mmのジルコニアビーズを用いたビーズミルで40分間処理することによって行った。
(造粒)
二流体ノズル方式のスプレードライヤーに調製後のスラリーを投入することで、造粒体を形成した。この場合、スプレードライヤーの噴出圧力、ノズル径、循環風量、等のパラメータを適宜調整することで、種々の大きさの造粒体を形成することが可能である。
(熱処理(仮焼成))
前記の造粒体を、1100℃の温度で3時間(大気雰囲気)熱処理することで、ニッケル、コバルト、及びアルミニウムの酸化物((Ni0.8,Co0.15,Al0.05)O)の粒子である、正極活物質前駆体粒子を得た。
(グリーンシートの作製)
得られた正極活物質前駆体粒子粉末100重量部と、分散媒(キシレン:ブタノール=1:1)50重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)10重量部と、可塑剤(DOP:Di(2−ethylhexyl)phthalate、黒金化成株式会社製)4.5重量部と、分散剤(花王株式会社製 製品名「レオドールSPO−30」)3重量部とを混合した。この混合物を、減圧下で撹拌することで脱泡するとともに、4000cPの粘度になるように調製した。尚、この調製時の粘度をブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。上記のようにして調製したスラリーを、ドクターブレード法によってPETフィルムの上に供給して乾燥し、乾燥後の厚さが56μmとなるようにシート状に成形することによって、未焼成のグリーンシートを得た。
(仮焼成板の作製)
前記のPETフィルムから剥がしたグリーンシートを、カッターで20mm角に切り出し、突起の大きさが300μmのエンボス加工を施したジルコニア製セッター(寸法が90mm角で、高さ1mmの治具)の中央に載置し、900℃の温度で5時間焼成して成形体の脱脂および仮焼成を行い、仮焼板を作製した。かかる成形体仮焼成の温度は、上述の熱処理(造粒体仮焼成)温度よりも低い。これは、成形体の仮焼成時に内部の粒子間の焼結の進行を抑制することで、後続する本焼成時にリチウムが均一に拡散及び反応するようにするためである。
(リチウムの導入)
LiOH・HO粉末(和光純薬工業株式会社製)をジェットミルで1μm以下に粉砕し、エタノールに分散したスラリーを作製した。このスラリーを前述の仮焼板にLi/M=1.02(M=Ni,Co,Al)になるように塗布し、乾燥した。その後、大気中にて750℃の温度で6時間加熱処理してLi(Ni0.8,Co0.15,Al0.05)Oの組成を有する焼結板を得た。この焼結板の気孔率(空隙率)は14%であった(表1参照)。
<実施例7>
前記のLi(Ni0.8,Co0.15,Al0.05)O焼結板(比較例2)を、2−エトキシエタノールを用いて0.3mol/Lに希釈したチタンテトライソプロポキシド溶液に浸漬させた後、乾燥させた。こうしてチタンテトライソプロポキシド溶液を板表面に付加して含浸させたLi(Ni0.8,Co0.15,Al0.05)O焼結板を大気中にて400℃の温度で5時間熱処理して、チタン化合物によって表面処理されたLi(Ni0.8,Co0.15,Al0.05)O焼結板を得た。
<比較例3>
以下の手順により、有機金属化合物が付加されないLiCoO緻密焼結板(比較例3)を作製した。この種のLiCoO緻密焼結板を単に「LCO」ともいう。
(グリーンシートの作製)
Co原料粉末(体積基準D50粒径0.3μm、正同化学工業株式会社製)に10wt%の割合でBi(体積基準D50粒径0.3μm、太陽鉱工株式会社製)を添加して混合粉末を得た。この混合粉末100重量部と、分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)10重量部と、可塑剤(DOP:Di(2−ethylhexyl)phthalate、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(製品名レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。この混合物を、減圧下で撹拌することで脱泡するとともに、4000cPの粘度に調製した。尚、粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。上記のようにして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルムの上に、乾燥後の厚さが11μmとなるように、シート状に成形してグリーンシートを得た。
(焼結板の作製)
PETフィルムから剥がしたグリーンシートを、カッターで50mm角に切り出し、突起の大きさが300μmのエンボス加工を施したジルコニア製セッター(寸法90mm角、高さ1mm)の中央に載置し、1300℃の温度で5時間焼成後、降温速度50℃/hにて降温し、セッターに溶着していない部分をCo焼成板として取り出した。
(リチウムの導入)
LiOH・HO粉末(和光純薬工業株式会社製)をジェットミルで1μm以下に粉砕し、エタノールに分散したスラリーを作製した。このスラリーをCo配向焼結板にLi/Co=1.3になるように塗布し、乾燥した。その後、大気中にて840℃の温度で10時間加熱処理してLiCoO緻密焼結板を得た。この焼結板の気孔率(空隙率)は0%であった(表1参照)。
<実施例8>
前記のLiCoO緻密焼結板(比較例3)を、2−エトキシエタノールを用いて0.3mol/Lに希釈したチタンテトライソプロポキシド溶液に浸漬させた後、乾燥させた。こうしてチタンテトライソプロポキシド溶液を板表面に付加して含浸させたLiCoO緻密焼結板を大気中にて500℃の温度で5時間熱処理して、チタン化合物によって表面処理されたLiCoO緻密焼結板を得た。
<評価>
上述の手順で作製された各焼結板(比較例1〜3、実施例1〜8)について以下の評価を行った。この評価に際しては、前述の有機金属化合物の熱分解による効果を適正に確認するために、同種の焼結板であり、板厚が同一であり、且つ気孔率が同一である、比較例と実施例とを組み合わせて互いに比較した。具体的には、表1が参照されるように、比較例1と実施例1〜6とを比較し、比較例2と実施例7とを比較し、比較例3と実施例8とを比較した。
(SEM観察)
各焼結板の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用いて15kVの加速電圧で観察した。尚、断面試料の作製にはCP研磨機(IB−09010CP、日本電子株式会社製)を用いた。例えば、実施例1のLiCoO焼結板については、図4に示されるような断面SEM画像が得られた。この断面SEM画像から各焼結板について略平行に観察される2つの板表面間の距離を厚さ(表1中の「板厚(μm)」)として測定した。更に、断面SEM画像を画像処理することによって、各焼結板における気孔(開気孔及び閉気孔を含む)の体積比率(表1中の「気孔率(%)」)を算出した。加えて、断面SEM画像を画像処理することによって、各焼結板における気孔の直径の平均値(平均気孔径)を算出した。尚、表1には記載しないものの、比較例1〜3、実施例1〜8の各焼結板についての平均気孔径は、いずれも5μm以下の範囲に属する。
(リチウム二次電池の作製及び評価)
各焼結板を5mm角程度の試料片に分割した。この試料片の片面に厚さ1000ÅのAu膜を集電層としてスパッタリング成膜して正極板を得た。正極板、リチウム金属箔からなる負極、ステンレス集電板、及びセパレータを、集電板−正極板−セパレータ−負極−集電板の順に配置し、この集積体を電解液で満たすことで、コインセルを作製した。電解液としては、エチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートを等体積比で混合した有機溶媒に、LiPFを1mol/Lの濃度となるように溶解したものを使用した。このようにして作製した電池(コインセル)を用いて、電池容量(放電容量)及び1Cレートでの平均放電電圧の評価を行った。
この平均放電電圧の評価では、先ず、放電レートが0.1Cレート(10時間で放電終了となる電流値)の場合の充放電を実施した。具体的には、(i)0.1Cレートの電流値で電池電圧が4.3Vとなるまで定電流充電を実施した。その後、(ii)電池電圧を4.3Vに維持する電流条件で、その電流値が1/10に低下するまで定電圧充電した後、この充電を10分間休止した。続いて、(iii)0.1Cレートの電流値で電池電圧が2.8Vになるまで定電流放電した後、この放電を10分間休止した。その後、放電レートを1Cレート(1時間で放電終了となる電流値)とした以外は、上記(i)〜(iii)と同様の条件で充放電を実施した。その結果、図5及び図6に示されるような放電カーブが測定された。尚、この測定は25℃の条件下で行った。この放電カーブの測定結果に基づいて、0.1Cレートでの放電終了時の値(放電容量)を表1中の「電池容量(mAh/g)」とし、1Cレートでの放電終了までの電圧の平均値(平均放電電圧)を表1中の「1Cレートでの平均放電電圧(V)」とした。
表1に示されるように、1Cレートでの平均放電電圧は、比較例1が3.47Vであったのに対して、実施例1〜6は、3.64V〜3.72Vの範囲にあり、いずれの実施例も3.47Vを上回った。同様に、1Cレートでの平均放電電圧は、実施例7(3.52V)が比較例2(3.38V)を上回り、実施例8(3.36V)が比較例3(3.25V)を上回った。その結果、対応する各比較例と各実施例との比較によれば、放電レートを0.1Cレートから1Cレートへと大きくしたときの放電電圧の低下の度合いは、当該比較例に比べて当該実施例の方が小さいことが確認された。これにより、各実施例の場合は、急速放電を行っても電圧を高く維持することができ、その結果、取り出せる電力が大きくなるという作用効果が得られる。さらに、充放電を繰り返し実施しても、電池の内部抵抗が高くなるのを抑えるのに有効である。各実施例の場合は、充放電を繰り返し実施しても、電池の内部抵抗が高くなるのを抑えるのに有効である。その結果、取り出せる電力が大きくなるという作用効果が得られる。
比較例1の放電カーブ(図5)と実施例1の放電カーブ(図6)とを比較した場合、0.1Cレートでの放電容量と1Cレートでの放電容量のとの差ΔCは、比較例1に比べて実施例1の方が小さい。一方で、0.1Cレートでの放電容量は比較例1と実施例1とでほぼ同じ値である。従って、0.1Cレートでの放電容量に対する1Cレートでの放電容量の比率(容量維持率)は、比較例1に比べて実施例1の方が高い。特に図示しないものの、容量維持率に関するこのような結果は、対応する他の比較例と実施例との比較においても同様であり、実施例の方が優れていた。
以上の評価に基づいた場合、少なくとも上記の実施例1〜8の焼結板を正極に用いことによって、放電電圧が高く、且つ容量維持率の高い放電レート特性を有するリチウム二次電池を実現することができた。特に、実施例1〜7の焼結板は、厚さが50μmであり電荷移動抵抗が大きくなり易い不利な条件であるにもかかわらず、優れた電池性能を達成するのに有効であることが確認された。
本発明は、上記の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
上記の実施例1〜8の「LCO」及び「NCA」を含む種々のリチウム複合酸化物焼結板の製造方法に本発明を適用することができる。この場合、リチウム複合酸化物焼結板を構成するリチウム複合酸化物を、LiMO(0.05<x<1.10、Mは少なくとも1種類の遷移金属:典型的にはMはCo,Ni,Mnのうちの1種以上を含む。)で表される酸化物の中から適宜に選択することができる。
上記の実施例1〜8では、有機金属化合物を300℃、400℃、500℃の熱処理温度で熱分解する場合について記載したが、本発明では、有機金属化合物を300℃以上の熱処理温度で、好ましくは300℃から600℃までの範囲に属する所定の熱処理温度で熱分解することができる。本発明では、酢酸塩、シュウ酸塩といったカルボン酸の金属塩、金属アルコキシド等の化合物であって、且つ所定の熱処理温度で酸化反応を伴いながら熱分解する化合物の中から有機金属化合物を適宜に選択することができる。
100…リチウム二次電池、101…電池ケース、102…セパレータ、103…電解質、110…負極、120…正極、121…正極集電体、122…正極活物質層、123…導電性接合層、S101…グリーンシート作製工程、S102…グリーンシート焼成工程、S103…コバルト酸リチウム焼結板作製工程、S104…有機金属化合物熱分解工程

Claims (6)

  1. リチウム二次電池の正極を構成するリチウム複合酸化物焼結板を製造するための、リチウム二次電池用リチウム複合酸化物焼結板の製造方法であって、
    厚さが10μm以上であり、空隙率が15%以下であり、平均気孔径が5μm以下であるリチウム複合酸化物焼結板を準備する第1ステップと、
    前記第1ステップで準備した前記リチウム複合酸化物焼結板の板表面に有機金属化合物の溶液若しくは分散液を付加して含浸させた後に、この有機金属化合物を300℃以上の熱処理温度で熱分解する第2ステップと、を含む、リチウム二次電池用リチウム複合酸化物焼結板の製造方法。
  2. 請求項1に記載の、リチウム二次電池用リチウム複合酸化物焼結板の製造方法であって、
    前記第1ステップにおいて準備する前記リチウム複合酸化物焼結板が層状岩塩構造を有する、リチウム二次電池用リチウム複合酸化物焼結板の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の、リチウム二次電池用リチウム複合酸化物焼結板の製造方法であって、
    前記第1ステップにおいて準備する前記リチウム複合酸化物焼結板がコバルト酸リチウムを材料とした焼結板である、リチウム二次電池用リチウム複合酸化物焼結板の製造方法。
  4. 請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の、リチウム二次電池用リチウム複合酸化物焼結板の製造方法であって、
    前記第2ステップで用いる前記有機金属化合物がTi、Al及びZrからなる金属元素群から選択される1種類の金属元素を含む、リチウム二次電池用リチウム複合酸化物焼結板の製造方法。
  5. 請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の、リチウム二次電池用リチウム複合酸化物焼結板の製造方法であって、
    前記第2ステップにおいて前記有機金属化合物の溶液若しくは分散液を前記リチウム複合酸化物焼結板の板表面に単位表面積当たり1×10−7〜1×10−3g/cmの割合で付加する、リチウム二次電池用リチウム複合酸化物焼結板の製造方法。
  6. 請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の、リチウム二次電池用リチウム複合酸化物焼結板の製造方法であって、
    前記第2ステップにおいて前記有機金属化合物を300℃以上600℃以下の範囲に属する所定の熱処理温度で熱分解する、リチウム二次電池用リチウム複合酸化物焼結板の製造方法。
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