JPWO2018003944A1 - 複合半透膜および複合半透膜の製造方法 - Google Patents

複合半透膜および複合半透膜の製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、高い透水性と塩除去率とを両立する半透膜を提供することを目的とする。本発明は、分離機能層が、ポリアミドを主成分とする薄膜を有し、前記薄膜は、複数の凸部と凹部とを備えるひだ構造を有し、前記凸部の40%以上が、25℃の純水中で前記凸部を5nNの力で押し込んだ際の変形量が5nm以下であり、前記複合半透膜に500mg/L NaCl水溶液を0.5MPaの操作圧力で透過した際の純水透過係数Aが2.0×10−11m/s/Pa以上であり、500mg/L 2−プロパノール水溶液を、0.5MPaの操作圧力で透過した際の前記2−プロパノール除去率Rとの間にR(%)=100×[1−(1−0.232/r)の関係を満たす孔半径r(nm)と前記純水透過係数Aとが、A/r>1.7×10−9m/s/Pa/nmの関係を満たす複合半透膜に関する。

Description

本発明は、液状混合物の選択的分離に有用な複合半透膜に関する。本発明によって得られる複合半透膜は、例えば海水やかん水の淡水化に好適に用いることができる。
混合物の分離に関して、溶媒(例えば水)に溶解した物質(例えば塩類)を除くための技術には様々なものがあるが、近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして膜分離法の利用が拡大している。
膜分離法に使用される膜には、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などがあり、これらの膜は、例えば海水、かん水、有害物を含んだ水などから飲料水を得る場合や、工業用超純水の製造、排水処理、有価物の回収などに用いられている。
現在市販されている逆浸透膜およびナノろ過膜の大部分は複合半透膜であり、微多孔性支持膜上にゲル層とポリマーを架橋した活性層を有するものと、微多孔性支持膜上でモノマーを重縮合した活性層を有するものとの2種類がある。
なかでも、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との重縮合反応によって得られる架橋ポリアミドからなる分離機能層を多孔性支持膜上に被覆して得られる複合半透膜は、透過性や選択分離性の高い分離膜として広く用いられており、透過性には分離機能層の孔径、孔数構造が、選択分離性すなわち除去率には分離機能層の緻密さが重要であると考えられている。
分離機能層の緻密さを向上させた例として、特許文献1には分離機能層のアミド基率が0.88以上である膜、特許文献2にはカルボキシ基/アミド基のモル比xが0.54以下である膜の記載がある。
日本国特願2014−133715号 日本国特願2014−133716号
しかしながら、特許文献1、及び特許文献2のいずれに記載の膜も、溶質の除去率や薬品に対する耐性は向上しているものの、透水性の低下が認められる。
本発明は、高い透水性および塩除去率を有する複合半透膜を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明は、以下の構成をとる。
[1]基材と、前記基材上に位置する多孔性支持体と、前記多孔性支持体上に位置する分離機能層とを備えた複合半透膜であって、
前記分離機能層は、ポリアミドを主成分とする薄膜を有し、
前記薄膜は、複数の凸部と凹部とを備えるひだ構造を有し、
前記凸部の40%以上が、25℃の純水中で前記凸部を5nNの力で押し込んだ際の変形量が5nm以下であり、
前記複合半透膜に500mg/L NaCl水溶液を、0.5MPaの操作圧力で透過した際の純水透過係数Aが2.0×10−11m/s/Pa以上であり、
前記複合半透膜に500mg/L 2−プロパノール水溶液を、0.5MPaの操作圧力で透過した際の2−プロパノール除去率Rとの間にR(%)=100×[1−(1−0.232/r)の関係を満たす孔半径r(nm)と前記純水透過係数Aとが、
A/r>1.7×10−9m/s/Pa/nmの関係を満たす複合半透膜。
[2]前記薄膜の表面を25℃の純水中で5nNの力で押し込んだ際の10点平均変形量B nm、および前記薄膜の裏面を25℃の純水中で5nNの力で押し込んだ際の10点平均変形量C nmが、B/C≧1.1を満たす、[1]に記載の複合半透膜。
[3]前記薄膜の表面をpH10、NaCl 10mMの条件で測定した際のゼータ電位が−15mV以下となる、[1]または[2]に記載の複合半透膜。
[4]前記薄膜の表面をpH10、NaCl 10mMの条件で測定した際のゼータ電位D mV、および前記薄膜の裏面をpH10、NaCl 10mMの条件で測定した際のゼータ電位E mVが、E/D≧1.1を満たす、[1]から[3]のいずれか1に記載の複合半透膜。
[5]前記薄膜の表面方向から深さ5nmまでのpH10における解離カルボキシル基量F mol/kg、および前記薄膜の表面方向から深さ15nmまでのpH10における解離カルボキシル基量G mol/kgが、G/F≧0.5となる、[1]から[4]のいずれか1に記載の複合半透膜。
[6]前記凸部の高さの中間値が80nm以上である、[1]から[5]のいずれか1に記載の複合半透膜。
[7]前記凸部における前記薄膜の膜厚が20nm以下である[1]から[6]のいずれか1に記載の複合半透膜。
[8]基材と、前記基材上に位置する多孔性支持体と、前記多孔性支持体上に位置する分離機能層とを備えた複合半透膜の製造方法であって、
前記多孔性支持体上に分離機能層を形成する工程を備え、
前記工程は、
前記多孔性支持体上で、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との界面重縮合反応によりポリアミドの層を形成するステップと、
前記界面重縮合反応の反応場にSP値7〜15(cal/cm1/2の化合物および多官能性酸ハロゲン化物を、界面重縮合反応の開始から1秒以上、60秒以内に添加するステップと、
を備えることを特徴とする複合半透膜の製造方法。
本発明の複合半透膜が、孔半径r(nm)と前記純水透過係数Aとが、A/r>1.7×10−9m/s/Pa/nmの関係を満たすということは、水を透過させ、かつ塩を通さない多くの孔を有することを意味する。よって、本発明の複合半透膜は、高い透水性と塩除去率を有する。
また、上記製造方法は、本発明の複合半透膜を製造するのに好適である。
図1は、分離機能層を構成するひだ構造の例を示す図である。 図2は、原子間力顕微鏡(AFM)のタッピングモードで測定する凸部の変形量(Deformation)を示すグラフである。 図3は、微多孔性支持膜に多官能性アミン溶液および多官能性酸ハロゲン化物溶液を塗布する方法を示す模式図である。
(1−1)微多孔性支持膜
本発明において微多孔性支持膜は、実質的にイオン等の分離性能を有さず、実質的に分離性能を有する後述の分離機能層に強度を与えるためのものである。微多孔性支持膜の孔のサイズや分布は特に限定されないが、例えば、均一で微細な孔、あるいは分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面まで徐々に大きな微細孔をもち、かつ、分離機能層が形成される側の表面で微細孔の大きさが0.1nm以上100nm以下であるような微多孔性支持膜が好ましい。
本発明において、微多孔性支持膜は、基材とその上に形成された多孔性支持体から構成される。
(1−1−1)基材
上記基材としては、例えば、ポリエステルまたは芳香族ポリアミドから選ばれる少なくとも一種を主成分とする布帛が例示される。
基材に用いられる布帛としては、長繊維不織布や短繊維不織布を好ましく用いることができる。基材には、基材上に高分子重合体の溶液を流延した際にそれが過浸透により裏抜けしたり、基材と多孔性支持体が剥離したり、さらには基材の毛羽立ち等により膜の不均一化やピンホール等の欠点が生じたりすることがないような優れた製膜性が要求される。そのため、基材には長繊維不織布をより好ましく用いることができる。
長繊維不織布としては、熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布などが挙げられる。基材が長繊維不織布からなることにより、短繊維不織布を用いたときに起こる、毛羽立ちによって生じる高分子溶液流延時の不均一化や、膜欠点を抑制することができる。また、複合半透膜を連続製膜する工程においては、基材の製膜方向に張力がかけられることからも、基材としては、寸法安定性に優れる長繊維不織布を用いることが好ましい。
特に、基材の多孔性支持体と反対側に配置される繊維の配向が、製膜方向に対して縦配向であることにより、基材の強度を保ち、膜破れ等を防ぐことができるので好ましい。ここで、縦配向とは、繊維の配向方向が製膜方向と平行であることを言う。逆に、繊維の配向方向が製膜方向と直角である場合は、横配向と言う。
不織布基材の繊維配向度としては、多孔性支持体と反対側における繊維の配向度が0°以上25°以下であることが好ましい。ここで繊維配向度とは、微多孔性支持膜を構成する不織布基材の繊維の向きを示す指標であり、連続製膜を行う際の製膜方向を0°とし、製膜方向と直角方向、すなわち不織布基材の幅方向を90°としたときの、不織布基材を構成する繊維の平均の角度のことを言う。よって、繊維配向度が0°に近いほど縦配向であり、90°に近いほど横配向であることを示す。
複合半透膜の製造工程やエレメントの製造工程には、加熱工程が含まれるが、加熱により微多孔性支持膜または複合半透膜が収縮する現象が起きる。特に連続製膜において、幅方向には張力が付与されていないので、幅方向に収縮しやすい。微多孔性支持膜または複合半透膜が収縮することにより、寸法安定性等に問題が生じるため、基材としては熱寸法変化率が小さいものが望まれる。
不織布基材において多孔性支持体と反対側に配置される繊維と、多孔性支持体側に配置される繊維との配向度差が10°以上90°以下であると、熱による幅方向の変化を抑制することができ好ましい。
基材の通気度は2.0cc/cm/sec以上であることが好ましい。通気度がこの範囲だと、複合半透膜の透過水量が高くなる。これは、微多孔性支持膜を形成する工程で、基材上に高分子重合体を流延し、凝固浴に浸漬した際に、基材側からの非溶媒置換速度が速くなることで多孔性支持体の内部構造が変化し、その後の分離機能層を形成する工程においてモノマーの保持量や拡散速度に影響を及ぼすためと考えられる。
なお、通気度はJIS L1096(2010)に基づき、フラジール形試験機によって測定できる。例えば、200mm×200mmの大きさに基材を切り出し、サンプルとする。このサンプルをフラジール形試験機に取り付け、傾斜形気圧計が125Paの圧力になるように吸込みファン及び空気孔を調整し、このときの垂直形気圧計の示す圧力と使用した空気孔の種類から基材を通過する空気量、すなわち通気度を算出することができる。フラジール形試験機は、カトーテック株式会社製KES−F8−AP1などが使用できる。
また、基材の厚みは、10μm以上200μm以下の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは30μm以上120μm以下の範囲内である。
(1−1−2)多孔性支持体
本発明における多孔性支持体は、上記基材上に位置する。
多孔性支持体の素材としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシドなどのホモポリマーあるいはコポリマーを単独であるいはブレンドして使用することができる。
ここでセルロース系ポリマーとしては、酢酸セルロース、硝酸セルロースなど、ビニルポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどが使用できる。
中でもポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどのホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。ポリスルホン、酢酸セルロース及びポリ塩化ビニル、またはそれらを混合したものがより好ましく使用され、化学的、機械的、熱的に安定性の高いポリスルホンを使用するのが特に好ましい。
具体的には、次の化学式に示す繰り返し単位からなるポリスルホンを用いると、孔径が制御しやすく、寸法安定性が高いため好ましい。
Figure 2018003944
また、多孔性支持体の厚みは、10〜200μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは20〜100μmの範囲内である。多孔性支持体の厚みが10μm以上であることで、良好な耐圧性が得られると共に、欠点のない均一な支持膜を得ることができるので、このような多孔性支持体を備える複合半透膜は、良好な塩除去性能を示すことができる。多孔性支持体の厚みが200μm以下であることで、製造時の未反応物質の残存量が増加せず、透過水量が低下することによる耐薬品性の低下を防ぐことができる。
上記基材に上記多孔性支持体を形成した微多孔性支持膜の厚みは、複合半透膜の強度およびそれをエレメントにしたときの充填密度に影響を与える。本発明の複合半透膜が、十分な機械的強度および充填密度を得るためには、微多孔性支持膜(基材と多孔性支持膜の合計)の厚みは30〜300μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは50〜250μmの範囲内である。
微多孔性支持膜の形態は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡及び原子間顕微鏡等により観察できる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば、基材から多孔性支持体を剥がした後、これを凍結割断法で切断して断面観察のサンプルとする。このサンプルに白金または白金−パラジウムまたは四塩化ルテニウム、好ましくは四塩化ルテニウムを薄くコーティングして3〜6kVの加速電圧で、高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)で観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、日立製S−900型電子顕微鏡などが使用できる。
本発明に使用する微多孔性支持膜は、ミリポア社製“ミリポアフィルターVSWP”(商品名)や、東洋濾紙社製“ウルトラフィルターUK10”(商品名)のような各種市販材料から選択することもできるが、“オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法に従って製造することもできる。
上記基材や多孔性支持体、及び複合半透膜の厚みは、デジタルシックネスゲージによって測定することができる。また、後述する分離機能層の厚みは微多孔性支持膜と比較して非常に薄いので、複合半透膜の厚みを微多孔性支持膜の厚みとみなすこともできる。従って、複合半透膜の厚みをデジタルシックネスゲージで測定し、複合半透膜の厚みから基材の厚みを引くことで、多孔性支持体の厚みを簡易的に算出することができる。デジタルシックネスゲージとしては、尾崎製作所株式会社のPEACOCKなどが使用できる。デジタルシックネスゲージを用いる場合は、20箇所について厚みを測定して平均値を算出する。
なお、基材や多孔性支持体、複合半透膜の厚みを上述した顕微鏡で測定してもよい。1つのサンプルについて任意の5箇所における断面観察の電子顕微鏡写真から厚みを測定し、平均値を算出することで厚みが求められる。なお、本発明における厚みや孔径は平均値を意味するものである。
(1−2)分離機能層
本発明の複合半透膜において、実質的にイオン等の分離性能を有するのは、分離機能層である。
本発明における分離機能層は、ポリアミドを主成分として含有する。分離機能層を構成するポリアミドは、例えば、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との界面重縮合反応により形成することができる。ここで、多官能性アミンまたは多官能性酸ハロゲン化物の少なくとも一方が3官能以上の化合物を含んでいることが好ましい。
分離機能層の厚みは、十分な分離性能および透過水量を得るために、通常0.01〜1μmの範囲内、好ましくは0.1〜0.5μmの範囲内である。
ここで、多官能性アミンとは、一分子中に少なくとも2個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有し、そのアミノ基のうち少なくとも1つは第一級アミノ基であるアミンをいい、例えば、2個のアミノ基がオルト位やメタ位、パラ位のいずれかの位置関係でベンゼン環に結合したフェニレンジアミン、キシリレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミンなどの芳香族多官能アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの脂肪族アミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4−アミノピペリジン、4−アミノエチルピペラジンなどの脂環式多官能アミン等を挙げることができる。
中でも、膜の選択分離性や透過性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有する芳香族多官能アミンであることが好ましい。このような多官能芳香族アミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン等が好適に用いられる。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさから、m−フェニレンジアミン(以下、m−PDAと記す)を用いることがより好ましい。これらの多官能性アミンは、単独で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。2種以上を同時に用いる場合、上記アミン同士を組み合わせてもよく、上記アミンと一分子中に少なくとも2個の第二級アミノ基を有するアミンを組み合わせてもよい。一分子中に少なくとも2個の第二級アミノ基を有するアミンとして、例えば、ピペラジン、1,3−ビスピペリジルプロパン等を挙げることができる。
多官能性酸ハロゲン化物とは、一分子中に少なくとも2個のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物をいう。例えば、3官能酸ハロゲン化物としては、例えば、トリメシン酸クロリド、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸トリクロリド、1,2,4−シクロブタントリカルボン酸トリクロリドなどを挙げることができる。
2官能酸ハロゲン化物としては、例えば、ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、ナフタレンジカルボン酸クロリドなどの芳香族2官能酸ハロゲン化物、アジポイルクロリド、セバコイルクロリドなどの脂肪族2官能酸ハロゲン化物、シクロペンタンジカルボン酸ジクロリド、シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド、テトラヒドロフランジカルボン酸ジクロリドなどの脂環式2官能酸ハロゲン化物を挙げることができる。
多官能性アミンとの反応性を考慮すると、多官能性酸ハロゲン化物は多官能性酸塩化物であることが好ましく、また、膜の選択分離性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の塩化カルボニル基を有する多官能性芳香族酸塩化物であることが好ましい。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさの観点から、トリメシン酸クロリドを用いるとより好ましい。これらの多官能性酸ハロゲン化物は、単独で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。
また、分離機能層において、薄膜は、複数の凸部と凹部とを有するひだ構造を形成する。より具体的には、ひだ構造においては、凸部と凹部が繰り返される。
本発明における分離機能層の凸部とは、10点平均面粗さの5分の1以上の高さの凸部のことをいう。10点平均面粗さとは、次のような算出方法で得られる値である。
まず電子顕微鏡により、膜面に垂直な方向の断面を観察する。観察倍率は10,000〜100,000倍が好ましい。
得られた断面画像には、図1に示すように、分離機能層(図1に符号“1”で示す。)の表面が、凸部と凹部が連続的に繰り返されるひだ構造の曲線として表れる。この曲線について、ISO4287:1997に基づき定義される粗さ曲線を求める。上記粗さ曲線の平均線の方向に2.0μmの幅で断面画像を抜き取る。なお、平均線とは、ISO4287:1997に基づき定義される直線であり、測定長さにおいて、平均線と粗さ曲線とで囲まれる領域の面積の合計が平均線の上下で等しくなるように描かれる直線である。
抜き取った幅2.0μmの画像において、上記平均線を基準線として、分離機能層1における凸部の高さと、凹部の深さをそれぞれ測定する。最も高い凸部から徐々に高さが低くなって5番目の高さまでの5つの凸部の高さH1〜H5の絶対値について平均値を算出し、最も深い凹部から徐々に深さが浅くなって5番目の深さまでの5つの凹部の深さD1〜D5の絶対値について平均値を算出して、さらに、得られた2つの平均値の絶対値の和を算出する。こうして得られた和が、10点平均面粗さである。
本発明者らは鋭意検討した結果、純水中で測定した分離機能層の凸部の変形量が小さいと、熱による変形が小さくなる知見を得た。具体的には、測定温度25℃と40℃で凸部の変形量を測定した時、測定温度25℃で変形量が5nm以下である凸部は、5nmを超える凸部に比べて、測定温度40℃にしたときの変形量の変化が小さいことがわかった。
そこで、分離機能層の緻密化により、測定温度25℃で変形量が5nm以下である凸部を増加させたところ、この変形量が5nm以下の凸部を、凸部の総数の40%以上存在させることで高い塩除去性能を有する複合半透膜が得られることを見出した。
さらに、前記複合半透膜に、500mg/L NaCl水溶液を、0.5MPaの操作圧力で透過した際の純水透過係数Aが2.0×10−11m/s/Pa以上であり、かつ、500mg/L 2−プロパノール水溶液を、0.5MPaの操作圧力で透過した際の2−プロパノール除去率Rとの間に、R(%)=100×[1−(1−0.232/r)の関係を満たす孔半径r(nm)と前記純水透過係数Aとが、A/r>1.7×10−9m/s/Pa/nmの関係を満たす膜では、特に、塩の透過を阻止可能な孔径が過剰に増大されることなく、その孔数が増大した膜となることを見出した。
ハーゲンポアズイユ式(竹原幸生著、「水理学」,株式会社コロナ社、平成24年10月10日、p.59などにその詳細が記載されている)から考えると、孔半径rの孔内を流れる流体特性が同一の場合、A/rの値が相対的に分離機能層内の孔数を表す指標となり、Aが2.0×10−11m/s/Pa以上と高い透水性を示し、かつ孔径の過剰な増大がない場合、高い透水性は孔数の増加により発現していることになり、その場合A/r>1.7×10−9m/s/Pa/nmの関係が満たされることを明らかにした。
よって本発明によって得られる膜は、分離機能層の緻密化と孔数の増加を両立することで、高い透水性と塩除去性能を有する膜となる。
具体的には、分離機能層は、以下の条件を満たすことが好ましい。分離機能層の表面を原子間力顕微鏡(AFM)にて純水中で観察し、2μm四方範囲の任意の3つの領域を選択する。これらの3つの領域に含まれる凸部を、それぞれの領域において10点選択する。さらに、選択した凸部の頂点を中心とした直径100nmの円領域内の一点を5nNの力で押し込んだときに5nm以下の変形量を示す凸部の数Xを数え、割合(X/30)を求める。割合(X/30)が40%以上であることで、本発明の所望の効果を得ることができる。また、割合(X/30)は50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。
凸部の変形量(Deformation)は、原子間力顕微鏡(AFM)のタッピングモードで測定することができる。具体的には、図2に示すように、横軸にチップ−サンプル間距離(Separation)、縦軸に荷重をとったフォースカーブ上において、カンチレバーをサンプルに近付ける前の点をH点、荷重が立ち上がる瞬間をI点、荷重が最大荷重の90%となる点をJ点、最大荷重点をK点としたとき、JK間の距離を変形量とした。
なお、フォースカーブは、カンチレバーをサンプルに近付けるときのものを使用した。原子間力顕微鏡はBruker AXS社製Dimension FastScanを用いることができる。付属のアタッチメントを利用することで、水中での観察が可能である。また、その際、使用するカンチレバーの探針の形状は、円錐形(ピラミッド型)のものを用いる。カンチレバーを使用する前には、必ず校正(Calibration)を行う。まず、十分な硬度を有する物質でカンチレバーの反り感度(Deflection Sensitivity)を測定する。十分な硬度を有する物質としては、シリコンウェハーやサファイヤを用いることができる。次に、熱振動(Thermal Tune)でカンチレバーのバネ定数を測定する。校正を行うことで、測定の精度が向上する。
本発明によって得られる複合半透膜は、500mg/L NaCl水溶液を0.5MPaの操作圧力で透過した際の純水透過係数Aが2.0×10−11m/s/Pa以上であり、500mg/L 2−プロパノール水溶液を、0.5MPaの操作圧力で透過した際の前記複合半透膜による前記2−プロパノール除去率Rとの間にR(%)=100×[1−(1−0.232/r)の関係を満たす孔半径r(nm)と前記純水透過係数Aとが、A/r>1.7×10−9m/s/Pa/nmの関係を満たす。
A/rは、A/r≧1.9×10−9m/s/Pa/nmを満たすことが好ましい。また、A/rは、A/r≦2.3×10−9m/s/Pa/nmを満たすことが好ましい。
2−プロパノールのように荷電性基を有しない中性分子の膜による除去率は、単純に膜の孔径に依存するとされる。一般に式(1)に示すFerryの式によって、中性分子の分子半径a(nm)、除去率R(%)から膜の孔半径rが計算可能となる。
R=100×[1−(1−a/r) (1)
2−プロパノールは中性分子の中でも、式(1)の適用性が特に高く、簡易的に膜の孔径を計算するのに好適な化合物である。
ここで、2−プロパノールの除去率は膜の供給水と透過水の示差屈折率(RI)計の検出値すなわち屈折率の比、もしくは膜の供給水と透過水のガスクロマトグラフ分析によって得られるピーク面積から計算されるが、供給水および透過水の溶媒が水であることから、RI計の検出値から計算するのが好ましい。
具体的には、2−プロパノール除去率Rは、R(%)=100×{(供給水の屈折率)−(透過水の屈折率)/(供給水の屈折率)}である。
屈折率とは光ビームが異なる媒体間(媒体1と媒体2間)を通過するときの入射角と屈折角の関係であり、式(2)に示すスネルの屈折法則で表される。
n=n2/n1=sinα1/sinα2 (2)
ここでnは媒体2に対する媒体1の相対屈折率、n1は媒体1の屈折率、n2は媒体2の屈折率、α1は媒体1への光の入射角、α2は媒体2への光の屈折角である。
示差屈折率計は屈折率の差を利用する検出器である。サンプル側とリファレンス側に同じ屈折率の溶媒を流し、サンプル側に試料溶液を導入するとサンプル側の屈折率が変化する。これを電気信号に変換して値を出力する。
2−プロパノールの分子半径は、Lennard−Jones potentialにおけるLennard−Jones potential diameter σの数値を用いると0.232nmであり、式(1)に代入すると式(3)となり、2−プロパノール除去率Rが分かると、膜の孔半径rが計算される。
R=100×[1−(1−0.232/r) (3)
また、本発明者らは鋭意検討の結果、分離機能層のポリアミドを主成分とする薄膜の物性について、以下の知見を得た。AFMにより分離機能層を構成する薄膜の表面を25℃の純水中で5nNの力で押し込んだ際の10点平均変形量B nm、および前記薄膜の裏面を25℃の純水中で5nNの力で押し込んだ際の10点平均変形量C nmが、B/C≧1.1となることが好ましい。
B/C≧1.1となることはすなわち、分離機能層表面の緻密さが裏面を有意に上回っていることを意味する。この条件を満たすことで、複合半透膜は、高い透水性および塩除去率を両立することができる。
また、分離機能層を構成する薄膜の表面をpH10、NaCl 10mMの条件で測定した際のゼータ電位が−15mV以下であることが好ましい。ゼータ電位がこの範囲にあるということは、分離機能層の表面のカルボキシル基量が少なく緻密な構造であることを示す。
なお、ゼータ電位は、電気泳動光散乱光度計により測定できる。例えば、平板試料用セルに、複合半透膜の分離機能層面がモニター粒子溶液に接するようにセットして測定する。モニター粒子はポリスチレンラテックスをヒドロキシプロピルセルロースでコーティングしたもので、10mM−NaCl溶液に分散させてモニター粒子溶液とする。モニター粒子溶液のpHを調整しておくことで所定のpHでのゼータ電位を測定することができる。電気泳動光散乱光度計は、大塚電子株式会社製ELS−8000などが使用できる。
分離機能層を構成する薄膜の表面をpH10、NaCl 10mMの条件で測定した際のゼータ電位D mV、および前記薄膜の裏面をpH10、NaCl 10mMの条件で測定した際のゼータ電位E mVは、E/D≧1.1を満たすことが好ましい。
E/D≧1.1となることはすなわち、分離機能層の表面のカルボキシル基量が裏面のカルボキシル基量に対し少なく、分離機能層表面の緻密さが裏面を有意に上回っていることを意味する。よって、この条件を満たすことで、複合半透膜は、高い透水性および塩除去率を両立することができる。
また、分離機能層を構成する薄膜の表面方向から深さ5nmまでのpH10における解離カルボキシル基量F mol/kgと、前記薄膜の表面方向から深さ15nmまでのpH10における解離カルボキシル基量G mol/kgとは、G/F≧0.5を満たすことが好ましい。
pH10における解離カルボキシル基量は例えばラザフォード後方散乱(RBS)測定によって定量可能である。RBS測定は試料中に高速イオンを照射し、試料中の原子核から受ける弾性散乱の散乱イオンエネルギーと収量から、試料深さ方向の元素組成を読み取る測定法である。
RBS測定によりpH10における解離カルボキシル基量を読み取る方法は例えば以下の方法を用いることができる。まず、5cm四方の試料を95℃の熱水で30分間洗浄する。続いて、試料をメタノール50%水溶液中で16時間浸漬し、さらに試料をpH10に調整した硝酸銀1×10−4M水溶液に30分浸漬する。その後遊離の銀を取り除くため、メタノールで5分ずつ浸漬洗浄する。
銀イオンは解離カルボキシル基の対イオンとなるため、得られた試料のRBS測定における銀定量結果から各深さにおける解離カルボキシル基量を導き出すことができる。
なお、RBS測定で用いられる深さ(厚さ)の単位は1015atoms/cmである。この単位をnmに換算するために以下の式を用いる。
深さ(cm)=面密度(atoms/cm)/原子数密度(atoms/cm
これら分析に関わる前記薄膜表面の測定は、基材と多孔性支持体を含む状態で使用でき、一方裏面の測定には別途サンプルを作製する必要がある。
前記薄膜裏面測定のためのサンプルは例えば以下の方法によって作製される。まず、基材、多孔性支持体、分離機能層を含んだ複合半透膜の分離機能層側を、DMF/アセトニトリル=1/2溶媒が乗せられたシリコンウエハと接着する。70℃で20分間真空乾燥後、基材側からジクロロメタンを多孔性支持体が消失するまで滴下し、基材を剥がすことにより、分離機能層がシリコンウエハに転写され、薄膜裏面測定のためのサンプルが作製される。なお分離機能層を転写する基板は、ポリアミドと相互作用せず、分析に支障をきたさない限り、シリコンウエハに限定されるものではない。
凸部の高さの中間値は80nm以上であることが好ましい。凸部の高さの中間値が80nm以上であることで、分離機能層の表面積を大きく確保することができ、有効膜面積が大きくなるので、透水性は向上する。
さらに、凸部の分離機能層の膜厚は20nm以下である。また、凸部の分離機能層の膜厚は、10nm以上であることが好ましい。凸部の分離機能層の膜厚が20nm以下であることで、水が透過する際の抵抗が小さくなり、透水性が向上する。凸部の分離機能層の膜厚が10nm未満だと、実用的な除去率を得ることが難しくなる。
凸部の高さの中間値および膜厚は、透過型電子顕微鏡により、測定することができる。まず、透過型電子顕微鏡(TEM)用の超薄切片作製のため、サンプルを水溶性高分子で包埋する。水溶性高分子としては、サンプルの形状を保持できるものであればよく、例えばポリビニルアルコール(PVA)等を用いることができる。次に、断面観察を容易にするためにOsOで染色し、これをウルトラミクロトームで切断して超薄切片を作製する。得られた超薄切片を、TEMを用いて断面写真を撮影する。観察倍率は、分離機能層の膜厚により適宜決定すればよい。凸部の高さは、断面写真を画像解析ソフトに読み込んで解析を行うことができる。このとき、凸部の高さは、10点平均面粗さの5分の1以上の高さを有する凸部について測定される値である。凸部の高さの中間値は次のようにして測定される。複合半透膜において、任意の10箇所の断面を観察し、各断面において、上述の10点平均面粗さの5分の1以上である凸部の高さを測定する。さらに、10箇所の断面についての算出結果に基づいて、中間値を算出することで、凸部の高さの中間値を求めることができる。ここで、各断面は、上記粗さ曲線の平均線の方向において、2.0μmの幅を有する。
凸部の分離機能層の膜厚も同様に、断面写真を画像解析ソフトに読み込んで解析を行うことができる。凸部5個を選定し、凸部高さの上部から9割までの範囲の中から各凸部について10点の凸部分離機能層の厚さを測定し、計50点の相加平均値を求める。
分離機能層には、多官能芳香族アミンと多官能芳香族酸ハロゲン化物の重合に由来するアミド基、未反応官能基に由来するアミノ基とカルボキシ基が存在する。これらに加え、多官能芳香族アミンまたは多官能芳香族酸ハロゲン化物が有していた、その他の官能基が存在する。さらに、化学処理により新たな官能基を導入することもできる。化学処理を行うことで、分離機能層に官能基を導入することができ、複合半透膜の性能を向上することができる。
新たな官能基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン基、水酸基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、アルデヒド基、ニトロ基、ニトロソ基、ニトリル基、アゾ基等が挙げられる。例えば、次亜塩素酸ナトリウム水溶液で処理することで塩素基を導入できる。また、ジアゾニウム塩生成を経由したザンドマイヤー反応でもハロゲン基を導入できる。さらに、ジアゾニウム塩生成を経由したアゾカップリング反応を行うことで、アゾ基を導入することができる。
(2)製造方法
以上に説明した本発明の複合半透膜の製造方法の一例を以下に示す。
(2−1)分離機能層の形成
本形態の製造方法は、多孔性支持体上に、分離機能層を形成する工程を少なくとも備える。この工程は、
(i)多孔性支持体上で、多官能性アミン溶液と多官能性酸ハロゲン化物溶液とを接触させることで、界面重縮合反応によりポリアミドの層を形成するステップ
(ii)前記界面重縮合反応の反応場にSP値7〜15 (cal/cm1/2の化合物および多官能性酸ハロゲン化物を、多官能性アミン溶液と多官能性酸ハロゲン化物溶液との接触から1秒以上、60秒以内に添加するステップ
より具体的には(i)の工程は、
(a)多孔性支持体と多官能性アミン溶液を接触させるステップ
(b)上記(a)で得られた膜に対し多官能性酸ハロゲン化物溶液を接触させることで、界面重縮合反応により、多孔性支持体上でポリアミドを生成するステップ
から構成される。
以下、各製造工程を詳細に説明する。
上記ステップ(i)によると上述の多官能性アミンを含有する水溶液(以下、多官能性アミン水溶液ともいう)と、多官能性酸ハロゲン化物を含有する、水と非混和性の有機溶媒溶液(以下、多官能性酸ハロゲン化物溶液ともいう)とを接触させ、微多孔性支持膜の表面上で界面重縮合反応を行うことにより、ポリアミドを生成することができる。
ここで、多官能性アミン水溶液における多官能性アミンの濃度は0.1〜20重量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5〜15重量%の範囲内である。この範囲であると十分な塩除去性能および透水性を得ることができる。
多官能性アミン水溶液には、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との反応を妨害しないものであれば、界面活性剤や有機溶媒、アルカリ性化合物、酸化防止剤などが含まれていてもよい。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン構造、脂肪酸エステル構造、スルホ基を有する界面活性剤又は水酸基を有する界面活性剤が挙げられる。
ポリオキシアルキレン構造としては、例えば、−(CHCHO)−、−(CHCH(CH)O)−、−(CHCHCHO)−、−(CHCHCHCHO)−などを挙げることができる。
脂肪酸エステル構造としては、長鎖脂肪族基を有する脂肪酸が挙げられる。長鎖脂肪族基としては、直鎖状、分岐状いずれでもよいが、脂肪酸としては、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、およびその塩などが挙げられる。また、油脂由来の脂肪酸エステル、例えば牛脂、パーム油、ヤシ油等も挙げられる。
スルホ基を有する界面活性剤としては、1−ヘキサンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸などが挙げられる。
水酸基を有する界面活性剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、ソルビトール、ブドウ糖、ショ糖等が挙げられる。
界面活性剤は、微多孔性支持膜表面の濡れ性を向上させ、アミン水溶液と非極性溶媒との間の界面張力を減少させる効果がある。
有機溶媒としては、例えば、鎖状アミド化合物や環状アミド化合物等が挙げられる。
鎖状アミド化合物として、例えば、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N,−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミドが挙げられる。
環状アミド化合物として、例えば、N−メチルピロリジノン、γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム等が挙げられる。
有機溶媒は、界面重縮合反応の触媒として働くことがあり、添加することにより界面重縮合反応を効率良く行える場合がある。
アルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩及び炭酸水素塩無機化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドやテトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の有機化合物等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)及びテトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。
アミン系酸化防止剤としては、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、トリフェニルフォスファイト、オクタデシルフォスファイト及びトリノニルフェニルフォスファイト等が挙げられる。
その他の酸化防止剤としては、例えば、アスコルビン酸又はそのアルカリ金属塩、ジブチルヒドロキシトルエンやブチルヒドロキシアニソール等の立体障害フェノール化合物、クエン酸イソプロピル、dl−α−トコフェロール、ノルジヒドログアイアレチン酸、没食子酸プロピル等が挙げられる。
上記界面重縮合反応を微多孔性支持膜上で行うために、まず、上述の多官能性アミン水溶液を微多孔性支持膜に接触させる。接触は、微多孔性支持膜の表面上に均一にかつ連続的に行うことが好ましい。具体的には、例えば、多官能性アミン水溶液を微多孔性支持膜に塗布する方法、コーティングする方法、または微多孔性支持膜を多官能性アミン水溶液に浸漬する方法を挙げることができる。微多孔性支持膜と多官能性アミン水溶液との接触時間は、1〜10分間の範囲内であることが好ましく、1〜3分間の範囲内であるとさらに好ましい。
多官能性アミン水溶液を微多孔性支持膜に接触させた後は、膜上に液滴が残らないように十分に液切りする。十分に液切りすることで、膜形成後に液滴残存部分が膜欠点となって膜性能が低下することを防ぐことができる。液切りの方法としては、例えば、日本国特開平2−78428号公報に記載されているように、多官能性アミン水溶液接触後の微多孔性支持膜を垂直方向に把持して過剰の水溶液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの気流を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させて水溶液の水分を一部除去することもできる。
次いで、多官能性アミン水溶液接触後の微多孔性支持膜に、多官能性酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液を接触させ、界面重縮合反応により架橋ポリアミド分離機能層の骨格を形成させる。
有機溶媒溶液中の多官能性酸ハロゲン化物の濃度は、0.01〜10重量%の範囲内であると好ましく、0.02〜2.0重量%の範囲内であるとさらに好ましい。0.01重量%以上とすることで十分な反応速度が得られ、また、10重量%以下とすることで副反応の発生を抑制することができるためである。さらに、この有機溶媒溶液にDMFのようなアシル化触媒を含有させると、界面重縮合反応が促進され、さらに好ましい。
有機溶媒は、水と非混和性であり、かつ多官能性酸ハロゲン化物を溶解し、微多孔性支持膜を破壊しないものが好ましく、多官能性アミン化合物および多官能性酸ハロゲン化物に対して不活性であるものであればよい。好ましい例として、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカンなどの炭化水素化合物が挙げられる。
多官能性酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液の多官能性アミン化合物水溶液相への接触の方法は、上記の多官能性アミン水溶液の微多孔性支持膜への被覆方法と同様に行えばよい。特に、多孔性支持体上に溶液を塗布する方法、多孔性支持体を溶液でコーティングする方法が好適である。
多官能性アミン水溶液と多官能性酸ハロゲン化物溶液とを接触させた直後の膜面の温度は25〜60℃の範囲内であることが好ましく、30〜50℃の範囲内であるとさらに好ましい。温度が25℃未満では、ひだが大きくならず、透過流束の低下につながり、温度が60℃より高温では、除去率が低下する傾向があるためである。多官能性アミン水溶液と多官能性酸ハロゲン化物溶液とを接触させた直後の膜面の温度を25〜60℃の範囲内にすることにより、微多孔性支持膜1μm長さあたりの分離機能層の実長を2μm以上5μm以下にすることができ、高い透過流束と塩除去率を得ることができる。
温度付与方法は、微多孔性支持膜を加温してもよく、加温した多官能性酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液を接触させてもよい。多官能性アミン水溶液と多官能性酸ハロゲン化物溶液とを接触させた直後の膜面の温度は、放射温度計のような非接触型温度計により測定することができる。
上述したように、多官能性酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液を接触させて界面重縮合反応を行い、微多孔性支持膜上に架橋ポリアミドを含む分離機能層を形成したあとは、余剰の溶媒を液切りするとよい。液切りの方法は、例えば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法を用いることができる。この場合、垂直方向に把持する時間としては、1〜5分の間にあることが好ましく、1〜3分間であるとより好ましい。短すぎると分離機能層が完全に形成せず、長すぎると有機溶媒が過乾燥となり欠点が発生しやすく、性能低下を起こしやすい。
本発明による、凸部の40%以上が、25℃の純水中で前記凸部を5nNの力で押し込んだ際の変形量が5nm以下であり、かつ500mg/L NaCl水溶液を0.5MPaの操作圧力で透過した際の純水透過係数Aが2.0×10−11m/s/Pa以上であり、500mg/L 2−プロパノール水溶液を、0.5MPaの操作圧力で透過した際の2−プロパノール除去率Rとの間にR(%)=100×[1−(1−0.232/r)の関係を満たす孔半径r(nm)と前記純水透過係数Aとが、A/r>1.7×10−9m/s/Pa/nmの関係を満たす複合半透膜を得るために、上記ステップ(ii)を実行する。
上記ステップ(ii)により、上記ステップ(i)の実行中に、重縮合の反応場に多官能性酸ハロゲン化物を添加することで、分離機能層凸部の表面構造が密になり、塩除去率の向上に寄与する。さらにSP値7〜15(cal/cm1/2の化合物を併せて添加することで以下のような効果が得られる。
ポリアミド形成時には、様々な分子量のアミドが反応場に存在する。分子量の小さいアミドのオリゴマーが互いに凝集すると、孔径が不均一になりやすい。
SP値とは、溶解度パラメータのことであり、溶液のモル蒸発熱ΔHとモル体積Vから(ΔH/V)1/2(cal/cm1/2で定義される値である。7(cal/cm1/2以上であり、かつ15(cal/cm1/2以下であるSP値を示す化合物は、アミドオリゴマーと高い親和性を持つ。
よって、このような化合物がアミドの重縮合の反応場にあると、分子量の小さいオリゴマーとこの化合物とが相互作用することで、オリゴマー同士の凝集を抑制することができる。その結果、均一な孔径を有する膜が得られるとともに、オリゴマーの凝集による孔数の低下を抑制し、透水性の向上に寄与する。
SP値7〜15(cal/cm1/2の化合物(以下、「添加物」と称することがある)とは、例えば炭化水素類、エステル類、ケトン類、アミド類、アルコール類、エーテル類などが挙げられる。
アミドオリゴマーとの親和性を考慮するとアルコール類、エーテル類が好ましく、とりわけ界面重合反応場への接触の際に用いる溶媒との親和性をも考慮すると、炭素数3以上のアルコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールジベンゾアート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールビス(p−トルエンスルホン酸)、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテルが特に好ましい。
SP値7〜15(cal/cm1/2の化合物と併せて添加する多官能性酸ハロゲン化物は構造を限定されるものではないが、(i)の界面重合時に用いた多官能性酸ハロゲン化物と同様のものを用いることが好ましい。同様のものを用いることで、アミド骨格の構造が一様となり、膜の孔構造の均一性を保ちやすくなるためである。
前記SP値7〜15(cal/cm1/2の化合物は、10重量%以下、好ましくは5重量%以下であり、SP値7〜15(cal/cm1/2の化合物と併せて添加する多官能性酸ハロゲン化物は(i)の界面重合時に用いた多官能性酸ハロゲン化物の濃度と同様に、0.01〜10重量%の範囲内であると好ましく、0.02〜2.0重量%の範囲内であるとさらに好ましい。
(ii)におけるこれらSP値7〜15(cal/cm1/2の化合物および多官能性酸ハロゲン化物は有機溶媒の溶液として用いる。有機溶媒の種類としては、前述した多官能性酸ハロゲン化物に用いる溶媒と同様、微多孔性支持膜を破壊しないものであり、多官能性アミン化合物および多官能性酸ハロゲン化物に対して不活性であるものであればよい。好ましい例として、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカンなどの炭化水素化合物が挙げられる。
前記SP値7〜15(cal/cm1/2の化合物を界面重合反応の反応場に添加するには、この化合物を含有する溶液を、多孔性支持体(この上でポリアミドが形成されつつある)に接触させればよい。溶液の接触方法については、多官能性酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液の多官能性アミン化合物水溶液相への接触の方法と同様に行えばよい。
また、これらの化合物の添加(つまり溶液の接触)は、ポリアミドの重縮合開始後、つまり多官能性アミン溶液と多官能性酸ハロゲン化物溶液との接触後、1秒以上、60秒以内に行うことが好ましい。これによって、ポリアミドの形成を阻害することなく、オリゴマーの凝集を充分に抑制することができる。この時間は10秒以上であることが好ましい。またこの時間は30秒以下であることが好ましい。
その際、化合物の添加前に膜面の余分な多官能性酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液を液切りしておくこともできる。液切りの方法としては膜を垂直方向に把持して過剰の溶液を自然流下させる方法やエアーノズルからエアや窒素などの気流を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。
「ポリアミドの重縮合開始」または「多官能性アミン溶液と多官能性酸ハロゲン化物溶液との接触」から添加物を添加するまでの時間は、例えば以下のように制御される。
図3に示すように、長い微多孔性支持膜を搬送しながら、この微多孔性支持膜に位置Iで多官能性アミン溶液を塗布し、次いで位置IIで多官能性酸ハロゲン化物溶液を塗布する場合、添加物および多官能性酸ハロゲン化物を含む溶液は、多官能酸ハロゲン化物の塗布位置IIより下流の位置IIIで塗布すればよい。位置IIで多官能性酸ハロゲン化物と多官能性酸ハロゲン化物とが接触し(つまり重縮合が開始し)、位置IIIで添加物が添加されるので、位置IIと位置IIIとの距離、および膜の搬送速度によって、上述の時間は調整される。なお、図3では、各溶液が層状に重なるように描いているが、これは模式図である。
反応場へのSP値7〜15(cal/cm1/2の化合物および多官能性酸ハロゲン化物接触後は、多官能性酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液について説明したのと同様の方法で液切りを行うとよい。
また、凸部の40%以上が、25℃の純水中で前記凸部を5nNの力で押し込んだ際の変形量が5nm以下であり、かつ500mg/L NaCl水溶液を0.5MPaの操作圧力で透過した際の純水透過係数Aが2.0×10−11m/s/Pa以上であり、500mg/L 2−プロパノール水溶液を、0.5MPaの操作圧力で透過した際の2−プロパノール除去率Rとの間にR(%)=100×[1−(1−0.232/r)の関係を満たす孔半径r(nm)と前記純水透過係数Aとが、A/r>1.7×10−9m/s/Pa/nmの関係を満たす複合半透膜を得るために、反応場へのSP値7〜15(cal/cm1/2の化合物、またはSP値7〜15(cal/cm1/2の化合物および多官能性酸ハロゲン化物接触後に前記多孔性支持体を加熱することも好ましい。
加熱する方法としては、例えば、熱風オーブンもしくは赤外線照射、または基材側から高温物体を接触させる方法などがある。例えば熱風オーブンの場合、温度を40℃以上120℃以下とすることが好ましい。40℃以上で加熱することで、SP値7〜15(cal/cm1/2の化合物添加に伴うモノマーの反応性の低下を熱による反応の促進効果で補うことができると同時に、モノマーやオリゴマーの運動性を高めることができる。その結果、凸部を5nNの力で押し込んだ際の変形量が5nm以下となる凸部が40%以上となり、凸部高さ中間値が80nm以上であるひだ構造を形成することができる。また、120℃以下で加熱することで、濃縮によるモノマー濃度の極端な上昇や過剰なオリゴマーの生成を防ぎ、凸部の分離機能層厚みが20nm以下となる。
加熱処理は、前後の多孔性支持体中の有機溶媒の残存率が20%以上60%以下になるまで行うことが好ましい。ここで溶媒の残存率とは、加熱前の支持膜の質量に対する加熱後の支持膜の質量の割合で表される。すなわち、有機溶媒の残存率は、多孔性支持体100cmの加熱前後の質量から、下記式により求められる。
有機溶媒残存率(%)=(加熱後膜質量)/(加熱前膜質量)×100
有機溶媒の残存率を制御する方法としては、例えば、オーブン温度や膜面風速、加熱時間により制御することができる。有機溶剤の残存率が60%以下であることで、熱による界面重合反応の促進と界面重合反応中の多官能芳香族酸ハロゲン化物の濃縮による界面重合反応の促進の相乗効果により、凸部を5nNの力で押し込んだ際の変形量が5nm以下となる凸部が40%以上となる。また、有機溶剤の残存率が20%以上であることにより、界面重合反応により生成するオリゴマー分子の運動性が確保でき、界面重合反応速度の低下が抑制され、凸部を5nNの力で押し込んだ際の変形量が5nm以下となる凸部が40%以上となる。
(2−2)多孔性支持体の形成
本形態の製造方法は、多孔性支持体の形成工程を含んでもよい。基材についてはすでに例示したとおりである。
多孔性支持体は、例えば、上記ポリスルホンのN,N−ジメチルホルムアミド(以降、DMFと記載)溶液を、基材の上に一定の厚さに注型し、それを水中で湿式凝固させることによって、形成することができる。この方法によれば、表面の大部分が直径数10nm以下の微細な孔を有する微多孔性支持膜を得ることができる。
(2−3)その他の処理
上記方法により得られた複合半透膜は、50〜150℃、好ましくは70〜130℃で、1秒〜10分間、好ましくは1分〜8分間熱水処理する工程などを付加することにより、複合半透膜の除去性能および透水性を向上させることができる。
また、本発明で得られる複合半透膜は、熱水処理後に分離機能層上の第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物(I)と接触させ、その後前記化合物(I)との反応性をもつ水溶性化合物(II)を接触させる工程を含むことにより、塩除去率をさらに向上させることができる。
接触させる第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物(I)としては、亜硝酸およびその塩、ニトロシル化合物などの水溶液が挙げられる。亜硝酸やニトロシル化合物の水溶液は気体を発生して分解しやすいので、例えば、亜硝酸塩と酸性溶液との反応によって亜硝酸を逐次生成するのが好ましい。
一般に、亜硝酸塩は水素イオンと反応して亜硝酸(HNO)を生成するが、水溶液のpHが7以下、好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下で効率よく生成する。中でも、取り扱いの簡便性から水溶液中で塩酸または硫酸と反応させた亜硝酸ナトリウムの水溶液が特に好ましい。
前記第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物(I)、例えば亜硝酸ナトリウムの濃度は、好ましくは0.01〜1重量%の範囲である。この範囲であると十分なジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する効果が得られ、溶液の取扱いも容易である。
該化合物の温度は15℃〜45℃が好ましい。この範囲だと反応に時間がかかり過ぎることもなく、亜硝酸の分解が早過ぎず取り扱いが容易である。
該化合物との接触時間は、ジアゾニウム塩および/またはその誘導体が生成する時間であればよく、高濃度では短時間で処理が可能であるが、低濃度であると長時間必要である。そのため、上記濃度の溶液では10分間以内であることが好ましく、3分間以内であることがより好ましい。
また、接触させる方法は特に限定されず、該化合物の溶液を塗布(コーティング)しても、該化合物の溶液に該複合半透膜を浸漬させてもよい。該化合物を溶かす溶媒は該化合物が溶解し、該複合半透膜が侵食されなければ、いかなる溶媒を用いてもかまわない。また、溶液には、第一級アミノ基と試薬との反応を妨害しないものであれば、界面活性剤や酸性化合物、アルカリ性化合物などが含まれていてもよい。
次に、ジアゾニウム塩またはその誘導体が生成した複合半透膜を、ジアゾニウム塩またはその誘導体と反応する水溶性化合物(II)と接触させる。ここでジアゾニウム塩またはその誘導体と反応する水溶性化合物(II)とは、塩化物イオン、臭化物イオン、シアン化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化ホウ素酸、次亜リン酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸イオン、芳香族アミン、フェノール類、硫化水素、チオシアン酸等が挙げられる。
亜硫酸水素ナトリウム、および亜硫酸イオンと反応させると瞬時に置換反応が起こり、アミノ基がスルホ基に置換される。また、芳香族アミン、フェノール類と接触させることでジアゾカップリング反応が起こり膜面に芳香族を導入することが可能となる。これらの化合物は単一で用いてもよく、複数混合させて用いてもよく、異なる化合物に複数回接触させてもよい。接触させる化合物として、好ましくは亜硫酸水素ナトリウム、および亜硫酸イオンである。
ジアゾニウム塩またはその誘導体と反応する水溶性化合物(II)と接触させる濃度と時間は、目的の効果を得るために適宜調節することができる。
ジアゾニウム塩またはその誘導体と反応する水溶性化合物(II)と接触させる温度は10〜90℃が好ましい。この温度範囲であると反応が進みやすく、一方ポリマーの収縮による透過水量の低下も起こらない。
(3)複合半透膜の利用
このように製造される本発明の複合半透膜は、プラスチックネットなどの原水流路材と、トリコットなどの透過水流路材と、必要に応じて耐圧性を高めるためのフィルムと共に、多数の孔を穿設した筒状の集水管の周りに巻回され、スパイラル型の複合半透膜エレメントとして好適に用いられる。さらに、このエレメントを直列または並列に接続して圧力容器に収納した複合半透膜モジュールとすることもできる。
また、上記の複合半透膜やそのエレメント、モジュールは、それらに原水を供給するポンプや、その原水を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、原水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
流体分離装置の操作圧力は高い方が塩除去率は向上するが、運転に必要なエネルギーも増加すること、また、複合半透膜の耐久性を考慮すると、複合半透膜に被処理水を透過する際の操作圧力は、0.5MPa以上、10MPa以下が好ましい。供給水温度は、高くなると塩除去率が低下するが、低くなるにしたがい膜透過流束も減少するので、5℃以上、45℃以下が好ましい。また、供給水pHは、高くなると海水などの高塩濃度の供給水の場合、マグネシウムなどのスケールが発生する恐れがあり、また、高pH運転による膜の劣化が懸念されるため、中性領域での運転が好ましい。
本発明に係る複合半透膜によって処理される原水としては、例えば、海水、かん水、排水等の50mg/L〜100g/Lの塩(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を含有する液状混合物が挙げられる。一般に、塩は総溶解固形分量を指し、「質量÷体積」あるいは「重量比」で表される。定義によれば、0.45ミクロンのフィルターで濾過した溶液を39.5〜40.5℃の温度で蒸発させ残留物の重さから算出できるが、より簡便には実用塩分(S)から換算する。
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
実施例および比較例における測定は次のとおり行った。
(凸部の変形量)
純水で濡れた状態の複合半透膜を1cm四方に切り、接着剤を用いて分離機能層面が上になるようにサンプル台に固定し、測定サンプルを作製した。次に、測定ステージ上に磁石を用いて測定サンプルを固定し、分離機能層上に純水を滴下した後、原子間力顕微鏡(AFM)で表面の観察を行った。得られた画像のうち凸部のフォースカーブを10点抜きだし、変形量を解析した。この操作を3視野分行い、計30点の変形量を算出した。具体的な測定条件は以下のとおりである。
・装置:Bruker AXS社製Dimension FastScan
・走査モード:水中ナノメカニカルマッピング
・探針:シリコンカンチレバー(Bruker AXS社製ScanAsyst−Fluid)なお、カンチレバーは測定前に校正した。
・最大荷重:5nN
・走査範囲:2μm×2μm
・走査速度:0.5Hz
・ピクセル数:256×256
・測定条件:純水中
・測定温度:25℃
(薄膜表面、裏面を25℃の純水中で5nNの力で押し込んだ際の10点平均変形量)
薄膜表面測定の場合は、前記凸部の変形量測定時と同様の方法でAFMにより変形量を測定および解析した。薄膜裏面測定の場合は、薄膜裏面が上部となるようにシリコンウエハ上に転写したサンプルを、シリコンウエハごと接着剤を用いてサンプル台に固定した。その他は薄膜表面測定時と同様の方法でAFMにより変形量を測定および解析した。
(ゼータ電位)
試料である複合半透膜(薄膜表面サンプル)もしくは薄膜裏面サンプルを超純水で洗浄し、平板試料用セルに、複合半透膜の分離機能層面がモニター粒子溶液に接するようにセットし、大塚電子株式会社製電気泳動光散乱光度計(ELS−8000)により測定した。モニター粒子溶液としては、pH10に濃度調整したNaCl水溶液にポリスチレンラテックスのモニター粒子を分散させた測定液を用いた。
前記測定液を用い、分離機能層の表面ゼータ電位D(pH10、NaCl 10mM)、裏面ゼータ電位E(pH10、NaCl 10mM)をそれぞれ測定した。
(RBS)
5cm四方の試料を95℃の熱水で30分間洗浄した。続いて、試料をメタノール50%水溶液中で16時間浸漬し、さらに試料をpH10に調整した硝酸銀1×10−4M水溶液に30分浸漬した。その後遊離の銀を取り除くため、メタノールで5分ずつ浸洗浄した。
得られた試料を以下の条件において測定した。
・装置:National Electrostatics Corporation製 Pelletron 3SDH
・入射イオン :He++
・入射エネルギー:2300keV
・入射角:0deg
・散乱角:160deg
・試料電流:4nA
・ビーム径:2mmφ
・面内回転:無
・照射量:72μC
試料(複合半透膜)の表層から5nmもしくは15nmまでの各元素の平均組成(atomic%)を算出した。銀含有量が解離カルボキシル基量に対応すると仮定し、以下の計算により解離カルボキシル基量の定量を行った。
(1)atomic%をwt%(重量百分率)に換算する。
(2)銀のwt%から試料1kg中の銀の重量を求める。
(3)(2)の値から銀(=解離カルボキシル基)のmol/kg値を求める。
(凸部の分離機能層の膜厚)
複合半透膜をポリビニルアルコール(PVA)で包埋し、OsOで染色し、これをウルトラミクロトームで切断して超薄切片を作製した。得られた超薄切片を、透過型電子顕微鏡を用いて断面写真を撮影した。透過型電子顕微鏡により撮影した断面写真を、画像解析ソフトImage Jに取り込み、凸部5個を選定し、凸部の高さの上部から9割までの範囲の中から各凸部について10点の凸部の分離機能層の膜厚を測定し、計50点の相加平均値を求めた。
(凸部高さの中間値)
凸部高さは、凸部分離機能層の厚みと同様、透過型電子顕微鏡により、測定することができる。上述した手法で得られた断面写真を画像解析ソフトに読み込み、長さ2.0μmの距離における凸部高さと凹部深さを測定し、上述したように10点平均面粗さを算出した。この10点平均面粗さに基づいて、10点平均面粗さの5分の1以上の高さを有する凸部について、その凸部の高さを測定した。これにより凸部高さの中間値を算出した。
(塩除去率)
温度25℃、pH6.5に調整した500mg/L 塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を操作圧力0.5 MPaで複合半透膜に供給し、透過水中の塩濃度を測定した。膜による塩の除去率は次の式から求めた。
塩除去率(%)=100×{1−(透過水中の塩濃度/供給水中の塩濃度)}
(膜透過流束)
供給水(塩化ナトリウム溶液)の膜透過水量を、膜面1平方メートルあたり、1日あたりの透水量(立方メートル)でもって膜透過流束(m/m/d)を表した。
(純水透過係数)
純水透過係数は以下の方法によって計算した。
純水透過係数(m/m/sec/Pa)=(溶液の膜透過流束)/(膜両側の圧力差−膜両側の浸透圧差×溶質反射係数)・・・(a)
尚、溶質反射係数は以下の方法で求めることができる。まず、非平衡熱力学に基づいた逆浸透法の輸送方程式として、以下の式が知られている。
Jv=Lp(ΔP−σ・Δπ) ・・・(b)
Js=P(Cm−Cp)+(1−σ)C・Jv ・・・(c)
ここで、Jvは溶液の膜透過流束(m/m/s)、Lpは純水透過係数(m/m/s/Pa)、ΔPは膜両側の圧力差(Pa)、σは溶質反射係数、Δπは膜両側の浸透圧差(Pa)、Jsは溶質の膜透過流束(mol/m/s)、Pは溶質の透過係数(m/s)、Cmは溶質の膜面濃度(mol/m)、Cpは透過液濃度(mol/m)、Cは膜両側の濃度(mol/m)、である。膜両側の平均濃度Cは、逆浸透膜のように両側の濃度差が非常に大きな場合には実質的な意味を持たない。そこで、式(a)を膜厚について積分した次式がよく用いられる。
R=σ(1−F)/(1−σF) ・・・(d)
ただし、
F=exp{−(1−σ)Jv/P} ・・・(e)
であり、Rは真の阻止率で、
R=1−Cp/Cm ・・・(f)
で定義される。ΔPを種々変化させることにより(b)式からLpを算出でき、またJvを種々変化させてRを測定し、Rと1/Jvをプロットしたものに対して(d)、(e)式をカーブフィッティングすることにより、Pとσとを同時に求めることができる。
(2−プロパノール除去率)
500mg/L 2−プロパノール水溶液を0.5MPaの操作圧力で透過した際の供給水および透過水のRIの検出値から計算した。
RI値の主な測定条件は以下の通りである。
・装置 島津製作所製 RID−6A
・測定方式 デフレクション型
・セル部温調温度 35℃
サンプル側、リファレンス側に2−プロパノール水溶液に使用したものと同様の水溶媒(水道水のRO透過水)を導入した後、サンプル側に測定対象サンプルを0.9ml×3回導入した。3回目のサンプル導入後のディスプレイ値を読み取り、2−プロパノール除去率を計算した。
(参考例1)
ポリエステル不織布(通気度0.5〜1cc/cm/sec)上にポリスルホンの15.7重量%DMF溶液を200μmの厚みで、室温(25℃)でキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって微多孔性支持膜(厚さ210〜215μm)を作製した。
(比較例1)
参考例1で得られた微多孔性支持膜を20cm四方に切り取り、金属製の枠に固定し、m−PDAの1.8重量%水溶液中に2分間浸漬した。該支持膜を上記水溶液から垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた。その後、TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25mlを、支持膜の表面が完全に濡れるように枠内に注ぎ込み、n−デカン溶液と支持膜の最初の接触から1分間静置した。次に、膜から余分な溶液を除去するために膜を1分間垂直に保持して液切りし、その後、80℃の熱水で2分間洗浄した。さらに洗浄後の膜を35℃、pH3の0.3重量%亜硝酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬させた後、0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、複合半透膜を得た。
(比較例2)
参考例1で得られた微多孔性支持膜を20cm四方に切り取り、金属製の枠に固定し、m−PDAの1.8重量%水溶液中に2分間浸漬した。該支持膜を上記水溶液から垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた。その後、TMC0.13重量%を含む25℃のn−デカン溶液25mlを、支持膜の表面が完全に濡れるように枠内に注ぎ込み、n−デカン溶液と支持膜の最初の接触から1分間静置した。次に、膜から余分な溶液を除去するために膜を1分間垂直に保持して液切りし、その後、80℃の熱水で2分間洗浄した。さらに洗浄後の膜を35℃、pH3の0.3重量%亜硝酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬させた後、0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、複合半透膜を得た。
(比較例3)
参考例1で得られた微多孔性支持膜を20cm四方に切り取り、金属製の枠に固定し、m−PDAの1.8重量%水溶液中に2分間浸漬した。該支持膜を上記水溶液から垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた。その後、TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25mlを、支持膜の表面が完全に濡れるように枠内に注ぎ込み、オーブン内に支持膜を入れ、オーブン加熱温度100℃で1分間静置させた。次に、膜から余分な溶液を除去するために膜を1分間垂直に保持して液切りし、その後、80℃の熱水で2分間洗浄した。さらに洗浄後の膜を35℃、pH3の0.3重量%亜硝酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬させた後、0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、複合半透膜を得た。
(比較例4)
参考例1で得られた微多孔性支持膜を20cm四方に切り取り、金属製の枠に固定し、m−PDAの1.8重量%水溶液中に2分間浸漬した。該支持膜を上記水溶液から垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた。その後、TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25mlを、支持膜の表面が完全に濡れるように枠内に注ぎ込み、膜を傾け余分な溶液を取り除いた後、n−デカン溶液と支持膜の最初の接触から10秒後に、ジエチレングリコールジメチルエーテル1重量%n−デカン溶液25mlを、支持層の表面が完全に濡れるように塗布して1分間静置した。次に、膜から余分な溶液を除去するために膜を1分間垂直に保持して液切りし、その後、80℃の熱水で2分間洗浄した。さらに洗浄後の膜を35℃、pH3の0.3重量%亜硝酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬させた後、0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、複合半透膜を得た。
(実施例1、2)
参考例1で得られた微多孔性支持膜を20cm四方に切り取り、金属製の枠に固定し、m−PDAの1.8重量%水溶液中に2分間浸漬した。該支持膜を上記水溶液から垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた。その後、TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25mlを、支持膜の表面が完全に濡れるように枠内に注ぎ込み、膜を傾け余分な溶液を取り除いた後、TMCのn−デカン溶液と支持膜の最初の接触から10秒後に、ジエチレングリコールジメチルエーテル1重量%とTMC0.065重量%(実施例1)とを含むn−デカン溶液25ml、またはジエチレングリコールジメチルエーテル1重量%とTMC0.015重量%とを含むn−デカン溶液(実施例2)25mlを、支持膜の表面が完全に濡れるように枠内に注ぎ込み、その後1分間静置した。次に、膜から余分な溶液を除去するために膜を1分間垂直に保持して液切りし、その後、80℃の熱水で2分間洗浄した。さらに洗浄後の膜を35℃、pH3の0.3重量%亜硝酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬させた後、0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、複合半透膜を得た。
(実施例3)
参考例1で得られた微多孔性支持膜を20cm四方に切り取り、金属製の枠に固定し、m−PDAの1.8重量%水溶液中に2分間浸漬した。該支持膜を上記水溶液から垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた。その後、TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25mlを、支持膜の表面が完全に濡れるように枠内に注ぎ込み、膜を傾け余分な溶液を取り除いた後、n−デカン溶液と支持膜の最初の接触から10秒後に、ジエチレングリコールジメチルエーテル1重量%n−デカン溶液25mlを、支持層の表面が完全に濡れるように塗布してからオーブン内に支持膜を入れ、オーブン加熱温度100℃で1分間静置させた。次に、膜から余分な溶液を除去するために膜を1分間垂直に保持して液切りし、その後、80℃の熱水で2分間洗浄した。さらに洗浄後の膜を35℃、pH3の0.3重量%亜硝酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬させた後、0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、複合半透膜を得た。
(実施例4)
参考例1で得られた微多孔性支持膜を20cm四方に切り取り、金属製の枠に固定し、m−PDAの1.8重量%水溶液中に2分間浸漬した。該支持膜を上記水溶液から垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた。その後、TMC0.015重量%を含む25℃のn−デカン溶液25mlを、支持膜の表面が完全に濡れるように枠内に注ぎ込み、膜を傾け余分な溶液を取り除いた後、n−デカン溶液と支持膜の最初の接触から30秒後に、ジエチレングリコールジメチルエーテル1重量%およびTMC0.065重量%n−デカン溶液25mlを、支持膜の表面が完全に濡れるように枠内に注ぎ込み、その後1分間静置した。次に、膜から余分な溶液を除去するために膜を1分間垂直に保持して液切りし、その後、80℃の熱水で2分間洗浄した。さらに洗浄後の膜を35℃、pH3の0.3重量%亜硝酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬させた後、0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、複合半透膜を得た。
(比較例5)
参考例1で得られた微多孔性支持膜を20cm四方に切り取り、金属製の枠に固定し、m−PDAの1.8重量%水溶液中に2分間浸漬した。該支持膜を上記水溶液から垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた。その後、TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25mlを、支持膜の表面が完全に濡れるように枠内に注ぎ込み、膜を傾け余分な溶液を取り除いた後、n−デカン溶液と支持膜の最初の接触から70秒後に、ジエチレングリコールジメチルエーテル1重量%およびTMC0.015重量%n−デカン溶液25mlを、支持膜の表面が完全に濡れるように枠内に注ぎ込み、その後1分間静置した。次に、膜から余分な溶液を除去するために膜を1分間垂直に保持して液切りし、その後、80℃の熱水で2分間洗浄した。さらに洗浄後の膜を35℃、pH3の0.3重量%亜硝酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬させた後、0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、複合半透膜を得た。
(実施例5、6、7)
実施例1に対し、ジエチレングリコールジメチルエーテルに代わりエチレングリコールジメチルエーテル(実施例5)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(実施例6)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(実施例7)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で複合半透膜を得た。
比較例1〜5および実施例1〜7によって得られた複合半透膜を25℃の純水中で前記凸部を5nNの力で押し込んだ際の変形量5nm以下の割合、500mg/L NaCl水溶液を0.5MPaの操作圧力で透過した際の純水透過係数A、2−プロパノール除去率から計算された平均孔半径r(nm)、A/rの値、塩除去率をそれぞれ表1に示す。
Figure 2018003944
比較例2、3ではそれぞれモノマーのTMC濃度を高めること、加熱により反応を促進させることで比較例1に対し分離機能層の表面構造が密になり、25℃の純水中で前記凸部を5nNの力で押し込んだ際の変形量変形量5nm以下の割合は大きいものの、AおよびA/rは小さかった。
また、比較例4ではTMCの再添加がないため、分離機能層表層の緻密さが不足し、Aは大きいものの、A/rは小さかった。
一方、実施例1〜3では25℃の純水中で前記凸部を5nNの力で押し込んだ際の変形量5nm以下の割合は大きく、かつAおよびA/rの値も大きく、透水性の向上が認められた。TMCの再添加および加熱により分離機能層表面を密にしながらも、ジエチレングリコールジメチルエーテルの添加により孔数が増大していることにより、透水性、塩除去率が向上した複合半透膜が得られた。
一方、比較例5のようにジエチレングリコールジメチルエーテルの添加が遅い場合はA/rが小さく、その結果、大きな性能向上は認められなかった。
実施例5、6、7のように添加剤を変更した場合も、A/rが1.7×10−9m/s/Pa/nmを超えることで、良好な性能向上の効果が認められた。
さらに比較例1〜5および実施例1〜7によって得られた複合半透膜の分離機能層(薄膜)表裏のAFM、ゼータ電位、RBSの測定によって得られた各パラメータ(B/C、E/D、G/F)を表2に示す。
Figure 2018003944
比較例1〜5によって得られた複合半透膜では、B/C<1.1、E/D<1.1、G/F<0.5となり、一方、実施例1〜7によって得られた複合半透膜では、B/C≧1.1、E/D≧1.1、G/F≧0.5となり、実施例1〜7によって得られた複合半透膜では分離機能層表面の緻密性が裏面に対して高いことを示すパラメータを有する結果となった。
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更及び変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお本出願は、2016年6月29日付で出願された日本特許出願(特願2016−128626)に基づいており、その全体が引用により援用される。
本発明の複合半透膜は、特に、海水やかん水の脱塩に好適に用いることができる。
1 分離機能層

Claims (8)

  1. 基材と、前記基材上に位置する多孔性支持体と、前記多孔性支持体上に位置する分離機能層とを備えた複合半透膜であって、
    前記分離機能層は、ポリアミドを主成分とする薄膜を有し、
    前記薄膜は、複数の凸部と凹部とを備えるひだ構造を有し、
    前記凸部の40%以上が、25℃の純水中で前記凸部を5nNの力で押し込んだ際の変形量が5nm以下であり、
    前記複合半透膜に500mg/L NaCl水溶液を、0.5MPaの操作圧力で透過した際の純水透過係数Aが2.0×10−11m/s/Pa以上であり、
    前記複合半透膜に500mg/L 2−プロパノール水溶液を、0.5MPaの操作圧力で透過した際の2−プロパノール除去率Rとの間にR(%)=100×[1−(1−0.232/r)の関係を満たす孔半径r(nm)と前記純水透過係数Aとが、
    A/r>1.7×10−9m/s/Pa/nmの関係を満たす複合半透膜。
  2. 前記薄膜の表面を25℃の純水中で5nNの力で押し込んだ際の10点平均変形量B nm、および前記薄膜の裏面を25℃の純水中で5nNの力で押し込んだ際の10点平均変形量C nmが、B/C≧1.1を満たす、請求項1に記載の複合半透膜。
  3. 前記薄膜の表面をpH10、NaCl 10mMの条件で測定した際のゼータ電位が−15mV以下となる、請求項1または2に記載の複合半透膜。
  4. 前記薄膜の表面をpH10、NaCl 10mMの条件で測定した際のゼータ電位D mV、および前記薄膜の裏面をpH10、NaCl 10mMの条件で測定した際のゼータ電位E mVが、E/D≧1.1を満たす、請求項1から3のいずれか1項に記載の複合半透膜。
  5. 前記薄膜の表面方向から深さ5nmまでのpH10における解離カルボキシル基量F mol/kg、および前記薄膜の表面方向から深さ15nmまでのpH10における解離カルボキシル基量G mol/kgが、G/F≧0.5となる、請求項1から4のいずれか1項に記載の複合半透膜。
  6. 前記凸部の高さの中間値が80nm以上である、請求項1から5のいずれか1項に記載の複合半透膜。
  7. 前記凸部における前記薄膜の膜厚が20nm以下である請求項1から6のいずれか1項に記載の複合半透膜。
  8. 基材と、前記基材上に位置する多孔性支持体と、前記多孔性支持体上に位置する分離機能層とを備えた複合半透膜の製造方法であって、
    前記多孔性支持体上に分離機能層を形成する工程を備え、
    前記工程は、
    前記多孔性支持体上で、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との界面重縮合反応によりポリアミドの層を形成するステップと、
    前記界面重縮合反応の反応場にSP値7〜15(cal/cm1/2の化合物および多官能性酸ハロゲン化物を、界面重縮合反応の開始から1秒以上、60秒以内に添加するステップと、
    を備えることを特徴とする複合半透膜の製造方法。
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