JP2019177340A - 複合半透膜 - Google Patents

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Hiroki Minehara
宏樹 峰原
田中 宏明
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宏明 田中
萌菜美 鈴木
Monami Suzuki
萌菜美 鈴木
貴史 小川
Takashi Ogawa
貴史 小川
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Abstract

【課題】高い透水性能と高い耐久性を有する複合半透膜を提供する。【解決手段】本発明の複合半透膜は、基材と、前記基材上に形成された多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に形成分離機能層とを備えた複合半透膜であって、以下(A)、(B)および(C)を満たす。(A) DSCで測定した含水量において、不凍水量に対する自由水量の比が12以上(B) IRで測定した分離機能層中の可溶成分のアミド基量がポリアミド分離機能層のアミド基量に対して0.02以下(C) 前記分離機能層が架橋全芳香族ポリアミドを含有し、RBSで測定した末端カルボキシル基量が1.2×10−9mol/cm2以上【選択図】なし

Description

本発明は、液状混合物の選択的分離に有用な複合半透膜に関する。本発明によって得られる複合半透膜は、例えば海水やかん水の淡水化に好適に用いることができる。
混合物の分離に関して、溶媒(例えば水)に溶解した物質(例えば塩類)を除くための技術には様々なものがあるが、近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして膜分離法の利用が拡大している。膜分離法に使用される膜には、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などがあり、これらの膜は、例えば海水、かん水、有害物を含んだ水などから飲料水を得る場合や、工業用超純水の製造、排水処理、有価物の回収などに用いられている。
現在市販されている逆浸透膜およびナノろ過膜の大部分は複合半透膜である。複合半透
膜としては、多孔性支持層上にゲル層とポリマーを架橋した活性層を有するものと、多孔
性支持層と該多孔性支持層上でモノマーが重縮合することで形成された活性層とを有する
ものとの2種類がある。後者の複合半透膜のなかでも、多官能アミンと多官能酸ハロゲン
化物との重縮合反応によって得られる架橋ポリアミドを含有する分離機能層を有する複合
半透膜が、透過性および選択分離性の高い分離膜として広く用いられている(特許文献1)。
造水プラントで用いられる逆浸透膜は、ランニングコストの一層の低減を図るため、より高い透水性能が求められている。複合半透膜の透水性に影響を及ぼす因子として、分離活性層のひだ構造があげられる。ひだを大きくすることによって、実質的な膜面積を大きくし、透水性を上げる方法が示されている(特許文献2、3)。
特開平5−76740号公報 特開平9−19630号公報 WO2013/108788
複合半透膜を使用し続けると、使用経過時間とともに膜表面に汚れが付着し、膜の造水量が低下する。そのため、ある期間運転後に薬液による洗浄が必要となる。その一つがアルカリによる洗浄である。現行のポリアミド系複合半透膜もある程度液性の変動に対する耐久性を有しているが、多様な水質の原水をろ過するためには、より過酷なアルカリ洗浄を受けても高い分離性能と実用レベルの透水性を維持できる複合半透膜が望まれている。したがって、長期間にわたって安定な運転を継続するために、薬液洗浄前後での膜性能変化が少なく耐久性の高い複合半透膜の開発が望まれている。
本発明は、高い造水性と除去性および高い耐アルカリ性を有する複合半透膜を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は以下の(1)〜(5)の構成をとる。
(1)基材と、前記基材上に形成された多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に形成分離機能層とを備えた複合半透膜であって、
以下(A)(B)(C)を満たすことを特徴とする複合半透膜。
(A) DSCで測定した含水量において、不凍水量に対する自由水量の比が12以上
(B) IRで測定した分離機能層中の可溶成分のアミド基量がポリアミド分離機能層のアミド基量に対して0.02以下
(C) 前記分離機能層が架橋全芳香族ポリアミドを含有し、RBSで測定した末端カルボキシル基量が1.2×10−9mol/cm以上
(2)末端カルボキシル基量が1.2×10−9〜2.0×10−9 mol/cmである(1)に記載の複合半透膜。
(3)前記多孔性支持層の前記分離機能層に対向する面における平均細孔径 が10nm以下であって、前記多孔性支持層において、前記分離機能層側表面から10nmから5μmの位置に長径が5μm以上のボイドの一部または全体が偏在しており 、前記多孔性支持層の膜面に垂直な断面において、長径が5μm以上の前記ボイドの占める面積の総和が前記断面の全面積の30%以上85%以下である(1)または(2)に記載の複合半透膜。
(4)前記分離機能層がポリアミドからなり、該ポリアミドを形成させる重合中にカルボン酸、ホウ酸またはその塩またはそのエステルを共存させ、
かつ、引き続く工程において、水酸基を2個以上有する親水性化合物に接触させることを特徴とする複合半透膜の製造方法
(5)水酸基を2個以上有する親水性化合物の分子量が100Da以上である請求項4に記載の複合半透膜の製造方法。
本発明によって、複合半透膜における高い透水性および耐久性の両立が実現される。
本発明の一実施形態である複合半透膜における分離機能層の断面図
1.複合半透膜
複合半透膜は、基材および前記基材上に設けられた多孔性支持層を含む支持膜と、前記
多孔性支持層上に設けられた分離機能層とを備える。
(1−1)微多孔性支持膜
本発明において微多孔性支持膜は、実質的にイオン等の分離性能を有さず、実質的に分離性能を有するポリアミド分離機能層に強度を与えるためのものである。微多孔性支持膜の孔のサイズや分布は特に限定されないが、例えば、均一で微細な孔、あるいはポリアミド分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面まで徐々に大きな微細孔をもち、かつ、ポリアミド分離機能層が形成される側の表面で微細孔の大きさが0.1nm以上100nm以下であるような微多孔性支持膜が好ましい。
微多孔性支持膜に使用する材料やその形状は特に限定されないが、例えば、基材に多孔性支持体を形成した膜を例示することができる。上記基材としては、例えば、ポリエステルまたは芳香族ポリアミドから選ばれる少なくとも一種を主成分とする布帛が例示される。
基材に用いられる布帛としては、長繊維不織布や短繊維不織布を好ましく用いることができる。基材上に高分子重合体の溶液を流延した際にそれが過浸透により裏抜けしたり、基材と多孔性支持体が剥離したり、さらには基材の毛羽立ち等により膜の不均一化やピンホール等の欠点が生じたりすることがないような優れた製膜性が要求されることから、長繊維不織布をより好ましく用いることができる。
長繊維不織布としては、熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布などが挙げられる。基材が長繊維不織布からなることにより、短繊維不織布を用いたときに起こる、毛羽立ちによって生じる高分子溶液流延時の不均一化や、膜欠点を抑制することができる。また、複合半透膜を連続製膜する工程においては、基材の製膜方向に張力がかけられることからも、基材としては、寸法安定性に優れる長繊維不織布を用いることが好ましい。
特に、基材の多孔性支持体と反対側に配置される繊維の配向が、製膜方向に対して縦配向であることにより、基材の強度を保ち、膜破れ等を防ぐことができるので好ましい。ここで、縦配向とは、繊維の配向方向が製膜方向と平行であることを言う。逆に、繊維の配向方向が製膜方向と直角である場合は、横配向と言う。
不織布基材の繊維配向度としては、多孔性支持体と反対側における繊維の配向度が0°以上25°以下であることが好ましい。ここで繊維配向度とは、支持膜を構成する不織布基材の繊維の向きを示す指標であり、連続製膜を行う際の製膜方向を0°とし、製膜方向と直角方向、すなわち不織布基材の幅方向を90°としたときの、不織布基材を構成する繊維の平均の角度のことを言う。よって、繊維配向度が0°に近いほど縦配向であり、90°に近いほど横配向であることを示す。
複合半透膜の製造工程やエレメントの製造工程には、加熱工程が含まれるが、加熱により支持膜または複合半透膜が収縮する現象が起きる。特に連続製膜において、幅方向には張力が付与されていないので、幅方向に収縮しやすい。支持膜または複合半透膜が収縮することにより、寸法安定性等に問題が生じるため、基材としては熱寸法変化率が小さいものが望まれる。
不織布基材において多孔性支持体と反対側に配置される繊維と、多孔性支持体側に配置される繊維との配向度差が10°以上90°以下であると、熱による幅方向の変化を抑制することができ好ましい。
基材の通気度は2.0cc/cm2/sec以上であることが好ましい。通気度がこの範囲だと、複合半透膜の透過水量が高くなる。これは、支持膜を形成する工程で、基材上に高分子重合体を流延し、凝固浴に浸漬した際に、基材側からの非溶媒置換速度が速くなることで多孔性支持体の内部構造が変化し、その後の分離機能層を形成する工程においてモノマーの保持量や拡散速度に影響を及ぼすためと考えられる。
なお、通気度はJIS L1096(2010)に基づき、フラジール形試験機によって測定できる。例えば、200mm×200mmの大きさに基材を切り出し、サンプルとする。このサンプルをフラジール形試験機に取り付け、傾斜形気圧計が125Paの圧力になるように吸込みファン及び空気孔を調整し、このときの垂直形気圧計の示す圧力と使用した空気孔の種類から基材を通過する空気量、すなわち通気度を算出することができる。フラジール形試験機は、カトーテック株式会社製KES−F8−AP1などが使用できる。
また、基材の厚みは、10μm以上200μm以下の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは30μm以上120μm以下の範囲内である。
多孔性支持体の素材としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシド、AS(アクリロニトリル‐スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン)樹脂などを単独であるいはブレンドして使用することができる。
中でもポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどのホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。中でも、ポリスルホン、酢酸セルロース及びポリ塩化ビニル、またはそれらを混合したものが好ましく使用され、化学的、機械的、熱的に安定性の高いポリスルホンを使用するのが特に好ましい。
具体的には、次の化学式に示す繰り返し単位からなるポリスルホンを用いると、孔径が制御しやすく、寸法安定性が高いため好ましい。
Figure 2019177340
また、多孔性支持体の厚みは、10〜200μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは20〜100μmの範囲内である。多孔性支持体の厚みが10μm以上であることで、良好な耐圧性が得られると共に、欠点のない均一な支持膜を得ることができるので、このような多孔性支持体を備える複合半透膜は、良好な塩除去性能を示すことができる。多孔性支持体の厚みが200μm以内であることで、製造時の未反応物質の残存量が増加せず、透過水量が低下することによる耐薬品性の低下を防ぐことができる。
上記基材に上記多孔性支持体を形成した微多孔性支持膜の厚みは、複合半透膜の強度およびそれをエレメントにしたときの充填密度に影響を与える。本発明の複合半透膜が、十分な機械的強度および充填密度を得るためには、微多孔性支持膜の厚みは30〜300μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは50〜250μmの範囲内である。
微多孔性支持膜の形態は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡及び原子間顕微鏡等により観察できる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば、基材から多孔性支持体を剥がした後、これを凍結割断法で切断して断面観察のサンプルとする。このサンプルに白金または白金−パラジウムまたは四塩化ルテニウム、好ましくは四塩化ルテニウムを薄くコーティングして3〜6kVの加速電圧で、高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)で観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、日立製S−900型電子顕微鏡などが使用できる。
本発明に使用する微多孔性支持膜は、ミリポア社製“ミリポアフィルターVSWP”(商品名)や、東洋濾紙社製“ウルトラフィルターUK10”(商品名)のような各種市販材料から選択することもできるが、“オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法に従って製造することもできる。すなわち、所定量のポリスルホンをジメチルホルムアミド(以降、DMFと記載)に溶解し、所定濃度のポリスルホン樹脂溶液を調製する。次いで、このポリスルホン樹脂溶液をポリエステル布あるいは不織布からなる基材上に一定の厚さに塗布した後、一定時間空気中で表面の溶媒を除去した後、凝固液中でポリスルホンを凝固させることによって得ることが出来る。この時、凝固液と接触する表面部分などは溶媒のDMFが迅速に揮散するとともにポリスルホンの凝固が急速に進行し、DMFの存在した部分を核とする微細な連通孔が生成される。
また、上記の表面部分から基材側へ向かう内部においては、DMFの揮散とポリスルホンの凝固は表面に比べて緩慢に進行するので、DMFが凝集して大きな核を形成しやすく、したがって、生成する連通孔が大径化する。勿論、上記の核生成の条件は、膜表面からの距離によって徐々に変化するので、明確な境界のない、滑らかな孔径分布を有する支持膜が形成されることになる。本発明は、この形成工程において用いるポリスルホン樹脂溶液ポリスルホン樹脂溶液の温度やポリスルホンの濃度、塗布を行う雰囲気の相対湿度、塗布してから凝固液に浸漬するまでの時間、凝固液の温度や組成等を調節することにより平均空隙率と平均孔径を制御したポリスルホン膜を得ることができる。
上記基材や多孔性支持体、複合半透膜の厚みは、デジタルシックネスゲージによって測定することができる。また、後述するポリアミド分離機能層の厚みは微多孔性支持膜と比較して非常に薄いので、複合半透膜の厚みを微多孔性支持膜の厚みとみなすこともできる。従って、複合半透膜の厚みをデジタルシックネスゲージで測定し、複合半透膜の厚みから基材の厚みを引くことで、多孔性支持体の厚みを簡易的に算出することができる。デジタルシックネスゲージとしては、尾崎製作所株式会社のPEACOCKなどが使用できる。デジタルシックネスゲージを用いる場合は、20箇所について厚みを測定して平均値を算出する。
なお、基材や多孔性支持体、複合半透膜の厚みを上述した顕微鏡で測定してもよい。1つのサンプルについて任意の5箇所における断面観察の電子顕微鏡写真から厚みを測定し、平均値を算出することで厚みが求められる。なお、本発明における厚みや孔径は平均値を意味するものである。
本発明において、細孔とは中に存在する空孔(ボイド)およびポリマーの粒子状物あるいは円柱状物の隙間のことであり、細孔径および平均細孔径は以下に述べる方法により求めることができる。まず、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて多孔性支持層の表面を撮影する。複合半透膜の多孔性支持層表面の細孔径は、複合半透膜の分離機能層を塩素等で溶解することで分析できる。観察倍率は、1,000〜50,000倍程度が好ましい。特に、細孔径と層の厚みを測定する場合には5,000〜20,000倍が好ましい。最後に、撮影した写真を画像解析ソフトに読み込み、解析を行うことで、細孔径および平均細孔径を求める。上記の方法で求めた本発明多孔性支持層の表面平均細孔径は10nm以下である。
本発明におけるポリスルホン膜の粒子状物あるいは円柱状物の平均径は5〜80nm、好ましくは10〜70nm、さらに好ましくは15〜50nmである。平均径が小さすぎると分離膜の透過性が小さくなり好ましくない。また、平均径が大きすぎると膜表面に凹凸ができやすくなり好ましくない。
本発明におけるボイドが占める面積は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡で、支持膜断面の分離機能層との境界から基材との境界までの範囲にあるボイドを観察することによって、求めることができる。例えば走査型電子顕微鏡の断面写真の場合は、膜サンプルを液体窒素に浸漬して凍結させたものを、製膜原液を流延させた方向に対して垂直に割断して乾燥させた後、膜断面に白金/パラジウムまたは四酸化ルテニウム、好ましくは四酸化ルテニウムを薄くコーティングして1〜6kVの加速電圧で高分解能電界放射型走査電子顕微鏡にて観察する。最適な観察倍率は、微多孔性表面から基材表面までの膜断面全体が観察できる倍率であればよいが、例えば支持膜の膜厚が60μmであれば、100〜5,000倍が好ましく、ボイドの面積を求めるには500〜2,000倍が好ましい。得られた電子顕微鏡写真から観察倍率を考慮してボイドの大きさをスケールなどで直接測ることが出来る。
ボイドの面積とは、支持膜断面の電子顕微鏡観察写真で観察される支持膜断面のボイドを閉じた曲線で囲んだときの、その曲線で囲まれた面積である。マクロボイド占有率を求める場合、具体的には、走査型電子顕微鏡による1,000倍の膜断面写真において、5μm以上の長径を有する一つ一つのボイドの外周をトレースして、閉じた曲線で囲んで面積を求める。断面積におけるボイド面積の占める割合は次の方法で求めることが出来る。ボイドの面積は、曲線で囲んだ各ボイドの図形を一つ一つ切り取り、面積の総和(x)を測定する。さらに、写真から支持膜断面の外周をトレースしてその図形を切り取って面積(y)を測定し、前記ボイドの図形の面積の総和と膜断面の図形の面積の比(x/y×100)を断面積におけるボイド面積の占める割合(%)とする。支持膜断面の外周とは、写真にとらえられ、測定を対象としている断面全体の外周のことをいう。
一般に、分離機能層上の突起を拡大すると、透水性は向上するものの塩透過性も大きくなる。このような場合、突起の成長にモノマーの供給が追いつかず、緻密さに差が生じており、薬液洗浄時に膜の緻密さが低い部分が局所的に劣化し、膜性能低下が起こりやすいと考えられる。
分離機能層の形成においては、支持膜に後述の多官能アミン水溶液が接触し、多官能アミン水溶液は重縮合時に多孔性支持層の内部から表面へと移送される。さらに、多孔性支持層の表面から重合場へとモノマーが供給されることで、分離機能層の突起が成長する。
本発明者らは、鋭意研究を重ねる過程で、多孔性支持層からの多官能アミン水溶液の供給量と重合反応量のバランスが、分離機能層の緻密さの均一性や突起の高さに影響すると考察した。多孔性支持層の空隙率が高いと、モノマーが重合場に対して効率的に供給されるため、突起の高さが大きい分離機能層が形成されるが、突起の成長にモノマーの供給が追いつかず、緻密さに差が生じると考えられる。多孔性支持層の空隙率が小さいと、緻密さの差は小さくなるが、突起の高さが小さくなると考えられる。
本発明者らによる鋭意検討の結果、多孔性支持層の内部の空隙率が高く、表層の空隙率が小さく孔径が小さい構造であり、また、内部の空隙率の大部分を占める長径5μm以上のボイド(以下、「マクロボイド」とする)が、基材に対向する面から多孔性支持層の厚みの90%の範囲内に偏在しており、マクロボイドの占める面積の総和が多孔性支持層断面の全面積の40%以上85%以下であることによって、分離機能層の突起が高く、緻密さを均一化できることを見出した。
マクロボイドはさらに、分離機能層に対向する面から多孔性支持層の厚みの90%以内に偏在することが好ましい。分離機能層形成時に、アミン供給量が多くなりすぎず、適量に制御できる。
マクロボイドが無い部分を「緻密層」と呼び、マクロボイドが存在する部分を「マクロボイド層」よぶ。つまり、多孔性支持層では、基材上にマクロボイド層が設けられ、マクロボイド層と分離機能層との間に緻密層が設けられていてもよいし、マクロボイド層と基材との間にさらに緻密層が設けられていてもよい。
多孔性支持層の平均細孔径が同じ程度であれば、空隙率が小さいほど膜の骨格部分の占有割合は大きく膜自体の強度も大きいので、運転圧力が高くなっても支持膜の圧密化は起こりにくい。よって、多孔性支持層の空隙率は85%以下であることが好ましい。その一方で、空隙率が大きいほど透過水の透過抵抗が小さくなり、透水性能が向上する。よって、空隙率は30%以上であることが好ましい。
(1−2)ポリアミド分離機能層
本発明の複合半透膜において、実質的にイオン等の分離性能を有するのは、分離機能層である。分離機能層の組成および厚み等の構成は、複合半透膜の使用目的に合わせて設定される。
本発明における分離機能層は、ポリアミドを主成分とし含有する。分離機能層を構成するポリアミドは、例えば、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との界面重縮合により形成することができる。ここで、多官能性アミンまたは多官能性酸ハロゲン化物の少なくとも一方が3官能以上の化合物を含んでいることが好ましい。
ポリアミド分離機能層の厚みは、十分な分離性能および透過水量を得るために、通常0.01〜1μmの範囲内、好ましくは0.1〜0.5μmの範囲内である。
ここで、多官能性アミンとは、一分子中に少なくとも2個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有し、そのアミノ基のうち少なくとも1つは第一級アミノ基であるアミンをいい、例えば、2個のアミノ基がオルト位やメタ位、パラ位のいずれかの位置関係でベンゼン環に結合したフェニレンジアミン、キシリレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミンなどの芳香族多官能アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの脂肪族アミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4−アミノピペリジン、4−アミノエチルピペラジンなどの脂環式多官能アミン等を挙げることができる。
中でも、膜の選択分離性や透過性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有する芳香族多官能アミンであることが好ましい。このような多官能芳香族アミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン等が好適に用いられる。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさから、m−フェニレンジアミン(以下、m−PDAと記す)を用いることがより好ましい。これらの多官能性アミンは、単独で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。2種以上を同時に用いる場合、上記アミン同士を組み合わせてもよく、上記アミンと一分子中に少なくとも2個の第二級アミノ基を有するアミンを組み合わせてもよい。一分子中に少なくとも2個の第二級アミノ基を有するアミンとして、例えば、ピペラジン、1,3−ビスピペリジルプロパン等を挙げることができる。
多官能性酸ハロゲン化物とは、一分子中に少なくとも2個のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物をいう。例えば、3官能酸ハロゲン化物としては、例えば、トリメシン酸クロリド、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸トリクロリド、1,2,4−シクロブタントリカルボン酸トリクロリドなどを挙げることができ、2官能酸ハロゲン化物としては、例えば、ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、ナフタレンジカルボン酸クロリドなどの芳香族2官能酸ハロゲン化物、アジポイルクロリド、セバコイルクロリドなどの脂肪族2官能酸ハロゲン化物、シクロペンタンジカルボン酸ジクロリド、シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド、テトラヒドロフランジカルボン酸ジクロリドなどの脂環式2官能酸ハロゲン化物を挙げることができる。
多官能性アミンとの反応性を考慮すると、多官能性酸ハロゲン化物は多官能性酸塩化物であることが好ましく、また、膜の選択分離性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の塩化カルボニル基を有する多官能性芳香族酸塩化物であることが好ましい。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさの観点から、トリメシン酸クロリドを用いるとより好ましい。これらの多官能性酸ハロゲン化物は、単独で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。
また、添加物として単官能性酸ハロゲン化物あるいは1つの酸クロリド基が加水分解したトリメシン酸クロリド、あるいは2つの酸クロリド基が加水分解したトリメシン酸クロリドを用いても良い。このような単官能性酸ハロゲン化物としては、例えば、ベンゾイルフルオリド、ベンゾイルクロリド、ベンゾイルブロミド、メタノイルフルオリド、メタノイルクロリド、メタノイルブロミド、エタノイルフルオリド、エタノイルクロリド、エタノイルブロミド、プロパノイルフルオリド、プロパノイルクロリド、プロパノイルブロミド、プロペノイルフルオリド、プロペノイルクロリド、プロペノイルブロミド、ブタノイルフルオリド、ブタノイルクロリド、ブタノイルブロミド、ブテノイルフルオリド、ブテノイルクロリド及びブテノイルブロミドなどを挙げることができる。これらの添加物は、単独で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。
本発明者らによる鋭意検討の結果、上記の界面重縮合によって架橋ポリアミドを含む分離機能層を形成するに際し、前記界面重縮合を、炭素数が5以上の直鎖型または分枝鎖型アルキル基を有するカルボン酸またはホウ酸またはスルホン酸、またはそれらの塩またはそれらのエステルの存在下で行うことで、末端官能基の分布を精密に制御することが可能となり、透水性と除去性を両立できることが分かった。これらは、上記多官能アミンの水溶液や上記多官能酸ハロゲン化物を含む水と非混和性の有機溶媒溶液に加えたり、多孔性支持膜にあらかじめ含浸させたりすることができる。
さらに、前記主鎖が直鎖または分枝鎖アルキル基からなる脂肪族カルボン酸としては、直鎖飽和アルキルカルボン酸として、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸などを、分岐鎖飽和アルキルカルボン酸として、カプリル酸、イソ酪酸、イソペンタン酸、ブチル酢酸、2−エチルヘプタン酸、3−メチルノナン酸などを、さらに、不飽和アルキルカルボン酸として、メタクリル酸、trans−3−ヘキセン酸、cis−2−オクテン酸、trans−4−ノネン酸などを用いることができる。
エステル基を有する脂肪族有機化合物である直鎖飽和アルキルカルボン酸エステルとしては、カプロン酸エチル、ヘプタン酸エチル、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、ペラルゴン酸メチル、ペラルゴン酸エチル、ノナン酸エチル、デカン酸メチル、デカン酸エ
チル、ウンデカン酸メチル、ウンデカン酸エチル、ドデカン酸メチル、ドデカン酸エチル、トリデカン酸メチル、トリデカン酸エチルなどを用いることができる。また、分岐鎖飽和アルキルカルボン酸エステルとしては、カプリル酸イソアミル、イソ酪酸イソブチル、イソペンタン酸イソブチル、ブチル酢酸イソプロピル、2−エチルヘプタン酸エチル、3−メチルノナン酸メチルなどを用いることができる。さらに、不飽和アルキルカルボン酸エステルとしては、メタクリル酸ヘキシル、trans−3−ヘキセン酸エチル、cis−2−オクテン酸エチル、trans−4−ノネン酸エチルなどを用いることができる。
ホウ酸の好ましい例としてはホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリヘキシル、ホウ酸トリオクチル、ホウ酸トリデシルである。
スルホン基を有する脂肪族有機化合物である直鎖飽和アルキルスルホンとしては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などを用いることができる。また、分岐鎖飽和アルキルスルホンとしては、2−メチルブタンスルホン酸、t−ブチルスルホン酸、ネオペンチルスルホン酸、またはそれらの塩またはエステルなどを用いることができ、スルホン基を有するエステルの例としては、メタンスルホン酸メチル、エタンスルホン酸メチル、ブタンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、エタンスルホン酸エチル、ブタンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸プロピル、エタンスルホン酸プロピル、ブタンスルホン酸プロピル、ベンゼンスルホン酸プロピル、p−トルエンスルホン酸プロピルメタンスルホン酸ブチル、エタンスルホン酸ブチル、ブタンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸ブチルなどを用いることができる。また、分岐鎖飽和アルキルスルホン酸エステルとしては、2−メチルブタンスルホン酸メチル、t−ブチルスルホン酸メチル、ネオペンチルスルホン酸メチル、2−メチルブタンスルホン酸エチル、t−ブチルスルホン酸エチル、ネオペンチルスルホン酸エチル、2−メチルブタンスルホン酸プロピル、t−ブチルスルホン酸プロピル、ネオペンチルスルホン酸プロピル、2−メチルブタンスルホン酸ブチル、t−ブチルスルホン酸ブチル、ネオペンチルスルホン酸ブチルなどを用いることができる。
用いる添加剤の濃度は種類により適宜決定されるが、具体的には、0.01〜10質量%の範囲内にあると好ましく、0.03〜1質量%の範囲内であるとさらに好ましい。
濃度が上記範囲にあることで、重合反応が過剰に阻害されること無く、分離機能層中でのアミンとの親和性を十分有することができ、形成されるポリアミド分離機能層中の末端カルボキシル基量を多くできる。
これら脂肪族有機化合物の総炭素数は、5〜20の範囲内にあることが好ましく、さらに好ましくは8〜15の範囲内である。総炭素数が5未満であると、分離機能膜の透水性を向上させる効果が小さくなる傾向があり、総炭素数が20を超えると、沸点が高くなり、膜から除去しにくくなるため、高透水性を発現させることが困難となりやすい。

また、分離機能層において、薄膜は、複数の凹部と凸部とを有するひだ構造を形成する。より具体的には、ひだ構造においては、凹部と凸部が繰り返される。
本発明における分離機能層の突起とは、10点平均面粗さの5分の1以上の高さの突起のことを言う。10点平均面粗さとは、次のような算出方法で得られる値である。まず電子顕微鏡により、膜面に垂直な方向の断面を観察する。観察倍率は10,000〜100,000倍が好ましい。得られた断面画像には、図1に示すように、分離機能層(図1に符号“1”で示す。)の表面が、凸部と凹部が連続的に繰り返されるひだ構造の曲線として表れる。この曲線について、ISO4287:1997に基づき定義される粗さ曲線を求める。上記粗さ曲線の平均線の方向に2.0μmの幅で断面画像を抜き取る。なお、平均線とは、ISO4287:1997に基づき定義される直線であり、測定長さにおいて、平均線と粗さ曲線とで囲まれる領域の面積の合計が平均線の上下で等しくなるように描かれる直線である。
抜き取った幅2.0μmの画像において、上記平均線を基準線として、分離機能層1における凸部の高さと、凹部の深さをそれぞれ測定する。最も高い凸部から徐々に高さが低くなって5番目の高さまでの5つの凸部の高さH1〜H5の絶対値について平均値を算出し、最も深い凹部から徐々に深さが浅くなって5番目の深さまでの5つの凹部の深さD1〜D5の絶対値について平均値を算出して、さらに、得られた2つの平均値の絶対値の和を算出する。こうして得られた和が、10点平均面粗さである。
突起の平均高さは次のようにして測定される。複合半透膜において、任意の10箇所の断面を観察したときに、各断面において、上述の10点平均面粗さの5分の1以上である突起の高さを測定して、1個の突起当たりの平均高さを算出する。さらに、10箇所の断面についての算出結果に基づいて、相加平均を算出することで、その膜におけるひだの平均高さAが得られる。ここで、各断面は、上記粗さ曲線の平均線の方向において、2.0μmの幅を有する。
突起の高さの標準偏差は、平均高さと同様に、10箇所の断面において測定された、10点平均面粗さの5分の1以上である突起の高さに基づいて、算出される。
分離機能層の突起の平均高さは、好ましくは100nm以上、より好ましくは110nm以上である。突起の平均高さが100nm以上であることで、十分な透水性を備えた複合半透膜を容易に得ることができる。
一般に、複合半透膜に含まれる水の存在状態はポリマーと弱い相互作用をしている自由水とポリマーと強く相互作用し運動性の低い不凍水とに分けられ、そのピーク値および積分量は分離機能層を形成するポリアミドと水の相互作用の特徴を示す良い指標となる。分析手法として、例えば、示差走査熱量測定(DSC)法があり、微小領域(クラスター)に閉じ込められた氷の融点は、通常のバルク氷(融点:0℃)に比べて低下する。この現象を利用して、DSC曲線の融点の分布からクラスター半径分布、融解熱量から水分量を算出できる。DSC測定における昇温過程において、約−55℃までに凍結しない水分を不凍水、0〜5℃で凍結する水分を自由水として定義したとき、不凍水量に対する自由水量の比が高いことは、運動性の高い水分子(自由水)の割合が大きいこと、すなわち水の透過性が高い膜であることを意味する。
一般に、分離機能層を構成するポリアミド中の末端官能基のうち、カルボキシル基量が多い場合、pHが3以上の領域において、イオン化したカルボキシル基周りで水和が起きやすく、自由水量を多くすることができる。一方で、末端カルボキシル基量が多いほど、分離機能層が置かれている溶液中のpH変化によって、当該末端カルボキシル基の解離状態が変化するため、末端カルボキシル基同士の荷電反発や末端カルボキシル基とアミノ基、およびアミド基との相互作用が変化するために酸やアルカリ水溶液と接触した際のろ過性能(透水性、除去性)の変化が大きい傾向にある。
本発明者らは鋭意検討の結果、ポリアミド分離機能層中の不凍水量に対する自由水量の比が12以上であり、分離機能層中の末端カルボキシル基量が1.2×10−9mol/cm以上であり、かつ複合半透膜中に残存するイソプロピルアルコールに可溶なアミド基量が分離機能層を構成するポリアミドのアミド基量に対して0.02以下であるとき、高い透水性と塩除去性、耐アルカリ性を兼ね備えることを見出した。その原因として、詳細は定かではないが、ポリアミド分離機能層を形成する界面重合において生成し、複合半透膜中に残存する化合物のうち、可溶性アミド化合物は、分離機能層を形成するポリアミドのアミド基と水素結合や荷電性相互作用などの相互作用を通じ、分離機能層を形成するポリアミドの高次構造に影響し、当該複合半透膜を用いたろ過プロセスにおいて、溶質の分離特性に影響すると考えられる。イソプロピルアルコールに可溶なアミド化合物は、不溶なポリアミドに対して分子量が小さく、分子量に対する末端官能基量が多いために、pH変化において荷電反発が生じた際に構造変化を起こしやすく、ひいてはアミド基を介して相互作用する分離機能層を構成するポリアミドの高次構造にまで影響を及ぼすことから、このような可溶性アミド化合物の量を低減することが耐アルカリ性に影響したと考えられる。このとき自由水量が不凍水量に対して12以上であるとき、可溶性アミド化合物が除去された際にポリアミド鎖間の距離を適正化し、pHに対しても安定な構造とする効果を発現したと考えられる。
特に、複合半透膜をイソプロパノールに72時間浸漬することで複合半透膜より抽出されるアミド化合物の量が分離機能層を構成するポリアミドのアミド基量に対して0.02以下であるとき、高い透水性と除去性およびアルカリ溶液接触時の耐久性を兼ね備える複合半透膜となることが分かった。この量比が0.02より大きいと、pH変化によって可溶性のアミド化合物の構造変化に起因する、分離機能層を構成するポリアミドの構造変化が大きくなり、透水性と除去性能の変化が大きくなることを見出した。
また、末端カルボキシル基の量が1.2×10−9mol/cm未満であると、透水性が不十分となる。1.2×10−9〜2.0×10−9 mol/cmの範囲にあるとき、透水性と除去性、耐アルカリ性の観点で好ましく、2.0×10−9 mol/cmより大きいと、透水性は高まるが、耐アルカリ性が低下し始める。
ポリアミド分離機能層を上記構造にせしめる方法としては、例えば、多孔性支持層の内部の空隙率が高く、表層の空隙率が小さく孔径が小さい構造であり、また、内部の空隙率の大部分を占める長径5μm以上のボイド(以下、「マクロボイド」とする)が、基材に対向する面から多孔性支持層の厚みの90%の範囲内に偏在しており、マクロボイドの占める面積の総和が多孔性支持層断面の全面積の40%以上85%以下である支持層を用い、分離機能層の突起が高く、緻密さを均一化すること、かつ/または、架橋ポリアミドを含む分離機能層を形成するに際し、前記界面重縮合を、炭素数が5以上の直鎖型または分枝鎖型アルキル基を有するカルボン酸またはホウ酸またはスルホン酸、またはそれらの塩またはそれらのエステルの存在下で行うことで、末端官能基の量を精密に制御し、引き続いて、ポリアミド分離機能層を有する複合半透膜を、水酸基を2つ以上有する親水性化合物と接触させ、蒸留水で洗浄する方法がある。水酸基を2つ以上有する親水性化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコールなどが挙げられる。さらに好ましくはテトラエチレングリコールを使用することで、塩の除去率の低下を抑えつつ造水量を増加させることができ、アルカリ水溶液接触時の造水量および除去率の変化を抑制することができる。その詳細な機構は定かではないが、分子量100Da程度のサイズを有する、水酸基を2つ以上有する親水性化合物と接触することで、分離機能層を構成するポリアミド鎖同士、ないしは比較的低分子量のポリアミドなどの溶媒に可溶な成分と分離機能層を構成するポリアミド鎖との水素結合が切断され、可溶性アミド化合物を洗浄除去し、またそのサイズに由来して、末端官能基、特に末端カルボン酸同士の荷電反発による構造変化を受けにくい構造、すなわちポリアミド鎖間の距離を適正化したためと考えられる。当該水溶液または親水性化合物の温度が高いほど、そして接触時間が長いほど、複合半透膜の造水量の増加効果が高く、接触温度と接触時間は求める造水量により適宜選択されるが、処理時間と高造水化効果の観点では、親水性化合物の濃度は20〜100wt%が好ましい。特に、処理時間の短時間化が可能な点、さらには高透水性と耐アルカリ性向上の観点で90wt%以上がさらに好ましい。
(2)製造方法
以上に説明した本発明の複合半透膜の製造方法の一例を以下に示す。
(2−1)多孔性支持層の形成
支持膜の形成工程は、多孔性基材に高分子溶液を塗布する工程、多孔性基材に高分子溶液を含浸させる工程、および前記溶液を含浸した前記多孔性基材を、高分子の良溶媒と比較して前記高分子の溶解度が小さい凝固浴に浸漬させて前記高分子を凝固させ、三次元網目構造を形成させる工程を含んでもよい。また、支持膜の形成工程は、多孔性支持層の成分である高分子を、その高分子の良溶媒に溶解して高分子溶液を調製する工程を、さらに含んでいてもよい。
高分子溶液の基材への含浸を制御することで、所定の構造をもつ支持膜を得ることができる。高分子溶液の基材への含浸を制御するためには、例えば、基材上に高分子溶液を塗布した後、非溶媒に浸漬させるまでの時間を制御する方法、或いは高分子溶液の温度または濃度を制御することにより粘度を調整する方法が挙げられ、これらの方法を組み合わせることも可能である。
基材上に高分子溶液を塗布した後、凝固浴に浸漬させるまでの時間は、通常0.1〜10秒間の範囲であることが好ましい。凝固浴に浸漬するまでの時間がこの範囲であれば、高分子を含む有機溶媒溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。なお、凝固浴に浸漬するまでの時間の好ましい範囲は、用いる高分子溶液の粘度などによって適宜調整すればよい。
多孔性支持層が第1層および第2層を含む多層構造を備える場合、第1層を形成する高分子溶液Aの組成と第2層を形成する高分子溶液Bとは、互いに組成が異なっていてもよい。ここで「組成が異なる」とは、含有する高分子の種類およびその濃度、添加物の種類およびその濃度、並びに溶媒の種類のうち、少なくとも1つの要素が異なることを意味する。
以上に述べた「固形分濃度」は、「高分子濃度」に置き換えることができる。また、多孔性支持層を形成する高分子がポリスルホンである場合、以上に述べた「固形分濃度」は、「ポリスルホン濃度」に置き換えることができる。
高分子溶液塗布時の高分子溶液の温度は、例えばポリスルホンであれば、通常10〜60℃の範囲内が好ましい。この範囲内であれば、高分子溶液が析出することなく、高分子を含む有機溶媒溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。その結果、アンカー効果により支持膜が基材に強固に接合し、本発明の支持膜を得ることができる。なお、高分子溶液の温度範囲は、用いる高分子溶液の粘度などによって適宜調整すればよい。
基材上への高分子溶液の塗布は、種々のコーティング法によって実施できるが、正確な量のコーティング溶液を供給できるダイコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング等の前計量コーティング法が好ましく適用される。さらに、多層構造を有する多孔性支持層の形成においては、第1の層を形成する高分子溶液と第2の層を形成する高分子溶液を同時に塗布する二重スリットダイ法がさらに好ましく用いられる。
多層支持膜の形成においては、基材上に第1層を形成する高分子溶液Aを塗布すると同時に第2層を形成する高分子溶液Bを塗布することが好ましい。高分子溶液Aの塗布後に硬化時間を設けた場合には、高分子溶液Aの相分離によって第1層の表面に密度の高いスキン層が形成され、透過流速を大幅に低下させる場合がある。そのため、高分子溶液Aが相分離により密度の高いスキン層を形成しない程度に同時に、高分子溶液Bを塗布することが好ましく、その後凝固浴に接触し相分離することで多孔性支持層が形成されることが好ましい。例えば、「同時に塗布される」とは、高分子溶液Aが、基材に到達する前に、高分子溶液Bと接触している状態、つまり、高分子溶液Aが基材に塗布されたときには、高分子溶液Bが高分子溶液A上に塗布されている状態である。
なお、高分子溶液Aおよび高分子溶液Bが含有する高分子は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。適宜、製造する支持膜の強度特性、透過特性、表面特性などの諸特性をより広い範囲で調整することができる。
なお、高分子溶液Aおよび高分子溶液Bが含有する溶媒は、高分子の良溶媒であれば同一の溶媒でも、異なる溶媒でも良い。適宜、製造する支持膜の強度特性、高分子溶液の基材への含浸を勘案して、より広い範囲で調製することができる。
良溶媒とは、多孔性支持層を形成する高分子を溶解するものである。良溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP);テトラヒドロフラン;ジメチルスルホキシド;テトラメチル尿素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド;アセトン、メチルエチルケトン等の低級アルキルケトン;リン酸トリメチル、γ−ブチロラクトン等のエステルおよびラクトン;並びにこれらの混合溶媒が挙げられる。
前記高分子の非溶媒としては、例えば水、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、トリクロルエチレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、低分子量の水酸基を2個以上有する親水性化合物等の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族アルコール、またはこれらの混合溶媒などが挙げられる。
また、上記高分子溶液は、支持膜の孔径、空孔率、親水性、弾性率などを調節するための添加剤を含有してもよい。孔径および空孔率を調節するための添加剤としては、水;アルコール類;水酸基を2個以上有する親水性化合物、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等の水溶性高分子またはその塩;塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸リチウム等の無機塩;ホルムアルデヒド、ホルムアミド等が例示されるが、これらに限定されるものではない。親水性や弾性率を調節するための添加剤としては、種々の界面活性剤が挙げられる。
凝固浴としては、通常水が使われるが、高分子を溶解しないものであればよい。また、凝固浴の温度は、−20℃〜100℃が好ましい。さらに好ましくは10〜30℃である。温度が100℃以下であることで、熱運動による凝固浴面の振動の大きさが抑えられ、膜表面を平滑に形成することができる。また、温度が−20℃以上であることで、凝固速度を比較的大きく保つことができ、良好な製膜性が実現される。
次に、このような好ましい条件下で得られた支持膜を、膜中に残存する製膜溶媒を除去するために熱水洗浄する。このときの熱水の温度は50〜100℃が好ましく、さらに好ましくは60〜95℃である。この範囲より高いと、支持膜の収縮度が大きくなり、透水性が低下する。逆に、低いと洗浄効果が小さい。
(2−2)分離機能層の形成
次に、複合半透膜を構成する分離機能層の形成工程の一例として、ポリアミドを主成分とする層(つまりポリアミド分離機能層)の形成を挙げて説明する。ポリアミド分離機能層の形成工程では、前述の多官能アミンを含有する水溶液と、多官能酸ハロゲン化物を含有する水と非混和性の有機溶媒溶液とを用い、支持膜の表面で界面重縮合を行うことにより、ポリアミド骨格を形成することができる。
多官能アミン水溶液における多官能アミンの濃度は0.1質量%以上20質量%以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下の範囲内である。この範囲であると十分な塩除去性能および透水性を得ることができる。
多官能アミン水溶液には、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との反応を妨害しないものであれば、界面活性剤や有機溶媒、アルカリ性化合物、酸化防止剤などが含まれていてもよい。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン構造、脂肪酸エステル構造又は水酸基を有する化合物が挙げられ、ポリオキシアルキレン構造としては、例えば、−(CHCHO)−、−(CHCH(CH)O)−、−(CHCHCHO)−、−(CHCHCHCHO)−などを挙げることができる。脂肪酸エステル構造としては、長鎖脂肪族基を有する脂肪酸が挙げられる。長鎖脂肪族基としては、直鎖状、分岐状いずれでもよいが、脂肪酸としては、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、およびその塩などが挙げられる。また、油脂由来の脂肪酸エステル、例えば牛脂、パーム油、ヤシ油等も挙げられる。スルホ基を有する界面活性剤としては、1−ヘキサンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸などが挙げられる。水酸基を有する界面活性剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、ソルビトール、ブドウ糖、ショ糖等が挙げられる。界面活性剤は、微多孔性支持膜表面の濡れ性を向上させ、アミン水溶液と非極性溶媒との間の界面張力を減少させる効果がある。
有機溶媒としては、例えば、鎖状アミド化合物や環状アミド化合物等が挙げられる。鎖状アミド化合物として、例えば、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N,−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミドが挙げられる。環状アミド化合物として、例えば、N−メチルピロリジノン、γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム等が挙げられる。有機溶媒は、界面重縮合反応の触媒として働くことがあり、添加することにより界面重縮合反応を効率良く行える場合がある。
アルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩及び炭酸水素塩無機化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドやテトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の有機化合物等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)及びテトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。アミン系酸化防止剤としては、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。リン系酸化防止剤としては、トリフェニルフォスファイト、オクタデシルフォスファイト及びトリノニルフェニルフォスファイト等が挙げられる。その他の酸化防止剤としては、例えば、アスコルビン酸又はそのアルカリ金属塩、ジブチルヒドロキシトルエンやブチルヒドロキシアニソール等の立体障害フェノール化合物、クエン酸イソプロピル、dl−α−トコフェロール、ノルジヒドログアイアレチン酸、没食子酸プロピル等が挙げられる。
界面重縮合を支持膜上で行うために、まず、上述の多官能アミン水溶液を支持膜に接触させる。接触は、支持膜面上に均一にかつ連続的に行うことが好ましい。具体的には、例えば、多官能アミン水溶液を支持膜にコーティングする方法や支持膜を多官能アミン水溶液に浸漬する方法を挙げることができる。支持膜と多官能アミン水溶液との接触時間は、5秒以上10分以下の範囲内であることが好ましく、10秒以上3分以下の範囲内であるとさらに好ましい。
多官能アミン水溶液を支持膜に接触させた後は、膜上に液滴が残らないように十分に液切りする。十分に液切りすることで、複合半透膜形成後に液滴残存部分が欠点となって複合半透膜の塩除去性能が低下することを防ぐことができる。液切りの方法としては、例えば、特開平2−78428号公報に記載されているように、多官能アミン水溶液接触後の支持膜を垂直方向に把持して過剰の水溶液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの気流を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させて水溶液の水分を一部除去することもできる。
次いで、多官能アミン水溶液接触後の支持膜に、多官能酸ハロゲン化物を含む水と非混和性の有機溶媒溶液を接触させ、界面重縮合により架橋ポリアミド分離機能層を形成させる。
有機溶媒溶液中の多官能酸ハロゲン化物濃度は、0.01質量%以上10質量%以下の範囲内であると好ましく、0.02質量%以上2.0質量%以下の範囲内であるとさらに好ましい。多官能酸ハロゲン化物濃度が0.01質量%以上であることで十分な反応速度が得られ、また、10質量%以下であることで副反応の発生を抑制することができる。さらに、この有機溶媒溶液にDMFのようなアシル化触媒を含有させると、界面重縮合が促進され、さらに好ましい。
有機溶媒は、水と非混和性であり、かつ多官能性酸ハロゲン化物を溶解し、微多孔性支持膜を破壊しないものが好ましく、多官能性アミン化合物および多官能性酸ハロゲン化物に対して不活性であるものであればよい。好ましい例として、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカンなどの炭化水素化合物が挙げられる。
多官能性酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液の多官能性アミン化合物水溶液相への接触の方法は、上記の多官能性アミン水溶液の微多孔性支持膜への被覆方法と同様に行えばよい。特に、多孔性支持層上に溶液を塗布する方法、多孔性支持層を溶液でコーティングする方法が好適である。
本発明の界面重縮合工程においては、支持膜上を架橋ポリアミド薄膜で十分に覆い、かつ、接触させた多官能酸ハロゲン化物を含む水と非混和性の有機溶媒溶液を支持膜上に残存させておくことが肝要である。このため、界面重縮合を実施する時間は、0.1秒以上3分以下が好ましく、0.1秒以上1分以下であるとより好ましい。界面重縮合を実施する時間が0.1秒以上3分以下であることで、支持膜上を架橋ポリアミド薄膜で十分に覆うことができ、かつ多官能酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液を支持膜上に保持することができる。
多官能性アミン水溶液と多官能性酸ハロゲン化物溶液とを接触させた直後の膜面の温度は25〜60℃の範囲内であることが好ましく、30〜50℃の範囲内であるとさらに好ましい。温度が25℃未満では、ひだが大きくならず、透過流束の低下につながり、温度が60℃より高温では、除去率が低下する傾向があるためである。多官能性アミン水溶液と多官能性酸ハロゲン化物溶液とを接触させた直後の膜面の温度を25〜60℃の範囲内にすることにより、微多孔性支持膜1μm長さあたりの分離機能層の実長を2μm以上5μm以下にすることができ、高い透過流束と塩除去率を得ることができる。
温度付与方法は、微多孔性支持膜を加温してもよく、加温した多官能性酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液を接触させてもよい。多官能性アミン水溶液と多官能性酸ハロゲン化物溶液とを接触させた直後の膜面の温度は、放射温度計のような非接触型温度計により測定することができる。
本発明者らによる鋭意検討の結果、上記の界面重縮合によって架橋ポリアミドを含む分離機能層を形成するに際し、前記界面重縮合を、炭素数が5以上の直鎖型または分枝鎖型アルキル基を有するカルボン酸またはホウ酸またはスルホン酸、またはそれらの塩またはそれらのエステルの存在下で行うことで、末端官能基の分布を精密に制御することが可能となり、透水性と除去性を両立できることが分かった。これらは、上記多官能アミンの水溶液や上記多官能酸ハロゲン化物を含む水と非混和性の有機溶媒溶液に加えたり、多孔性支持膜にあらかじめ含浸させたりすることができる。
さらに、前記主鎖が直鎖または分枝鎖アルキル基からなる脂肪族カルボン酸としては、直鎖飽和アルキルカルボン酸として、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸などを、分岐鎖飽和アルキルカルボン酸として、カプリル酸、イソ酪酸、イソペンタン酸、ブチル酢酸、2−エチルヘプタン酸、3−メチルノナン酸などを、さらに、不飽和アルキルカルボン酸として、メタクリル酸、trans−3−ヘキセン酸、cis−2−オクテン酸、trans−4−ノネン酸などを用いることができる。
エステル基を有する脂肪族有機化合物である直鎖飽和アルキルカルボン酸エステルとしては、カプロン酸エチル、ヘプタン酸エチル、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、ペラルゴン酸メチル、ペラルゴン酸エチル、ノナン酸エチル、デカン酸メチル、デカン酸エ
チル、ウンデカン酸メチル、ウンデカン酸エチル、ドデカン酸メチル、ドデカン酸エチル、トリデカン酸メチル、トリデカン酸エチルなどを用いることができる。また、分岐鎖飽和アルキルカルボン酸エステルとしては、カプリル酸イソアミル、イソ酪酸イソブチル、イソペンタン酸イソブチル、ブチル酢酸イソプロピル、2−エチルヘプタン酸エチル、3−メチルノナン酸メチルなどを用いることができる。さらに、不飽和アルキルカルボン酸エステルとしては、メタクリル酸ヘキシル、trans−3−ヘキセン酸エチル、cis−2−オクテン酸エチル、trans−4−ノネン酸エチルなどを用いることができる。
ホウ酸エステルの好ましい例としてはホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリヘキシル、ホウ酸トリオクチル、ホウ酸トリデシルである。
スルホン基を有する脂肪族有機化合物である直鎖飽和アルキルスルホンとしては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などを用いることができる。また、分岐鎖飽和アルキルスルホンとしては、2−メチルブタンスルホン酸、t−ブチルスルホン酸、ネオペンチルスルホン酸、またはそれらの塩またはエステルなどを用いることができ、スルホン基を有するエステルの例としては、メタンスルホン酸メチル、エタンスルホン酸メチル、ブタンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、エタンスルホン酸エチル、ブタンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸プロピル、エタンスルホン酸プロピル、ブタンスルホン酸プロピル、ベンゼンスルホン酸プロピル、p−トルエンスルホン酸プロピルメタンスルホン酸ブチル、エタンスルホン酸ブチル、ブタンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸ブチルなどを用いることができる。また、分岐鎖飽和アルキルスルホン酸エステルとしては、2−メチルブタンスルホン酸メチル、t−ブチルスルホン酸メチル、ネオペンチルスルホン酸メチル、2−メチルブタンスルホン酸エチル、t−ブチルスルホン酸エチル、ネオペンチルスルホン酸エチル、2−メチルブタンスルホン酸プロピル、t−ブチルスルホン酸プロピル、ネオペンチルスルホン酸プロピル、2−メチルブタンスルホン酸ブチル、t−ブチルスルホン酸ブチル、ネオペンチルスルホン酸ブチルなどを用いることができる。
用いる添加剤の濃度は種類により適宜決定されるが、具体的には、0.01〜10質量%の範囲内にあると好ましく、0.03〜1質量%の範囲内であるとさらに好ましい。
濃度が上記範囲にあることで、重合反応が過剰に阻害されること無く、分離機能層中でのアミンとの親和性を十分有することができ、形成されるポリアミド分離機能層中の末端カルボキシル基量を多くできる。
これら脂肪族有機化合物の総炭素数は、5〜20の範囲内にあることが好ましく、さらに好ましくは8〜15の範囲内である。総炭素数が5未満であると、分離機能膜の透水性を向上させる効果が小さくなる傾向があり、総炭素数が20を超えると、沸点が高くなり、膜から除去しにくくなるため、高透水性を発現させることが困難となりやすい。
界面重縮合によって支持膜上にポリアミド分離機能層を形成した後は、余剰の溶媒を液切りする。液切りの方法は、例えば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法を用いることができる。この場合、垂直方向に把持する時間としては、1分以上5分以下であることが好ましく、1分以上3分以下であるとより好ましい。短すぎると分離機能層が完全に形成せず、長すぎると有機溶媒が過乾燥となってポリアミド分離機能層に欠損部が発生し、膜性能が低下する。
(2−3)その他の処理
上記方法により得られた複合半透膜は、50〜150℃、好ましくは70〜130℃で、1秒〜10分間、好ましくは1分〜8分間熱水処理する工程などを付加することにより、複合半透膜の除去性能および透水性を向上させることができる。
また、本発明で得られる複合半透膜は熱水処理後に分離機能層上の第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物(I)と接触させ、その後前記化合物(I)との反応性をもつ水溶性化合物(II)を接触させる工程を含むことにより、塩除去率をさらに向上させることができる。
接触させる第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物(I)としては、亜硝酸およびその塩、ニトロシル化合物などの水溶液が挙げられる。亜硝酸やニトロシル化合物の水溶液は気体を発生して分解しやすいので、例えば、亜硝酸塩と酸性溶液との反応によって亜硝酸を逐次生成するのが好ましい。一般に、亜硝酸塩は水素イオンと反応して亜硝酸(HNO)を生成するが、水溶液のpHが7以下、好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下で効率よく生成する。中でも、取り扱いの簡便性から水溶液中で塩酸または硫酸と反応させた亜硝酸ナトリウムの水溶液が特に好ましい。
前記第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物(I),例えば亜硝酸ナトリウムの濃度は、好ましくは0.01〜1重量%の範囲である。この範囲であると十分なジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する効果が得られ、溶液の取扱いも容易である。
該化合物の温度は15℃〜45℃が好ましい。この範囲だと反応に時間がかかり過ぎることもなく、亜硝酸の分解が早過ぎず取り扱いが容易である。
該化合物との接触時間は、ジアゾニウム塩および/またはその誘導体が生成する時間であればよく、高濃度では短時間で処理が可能であるが、低濃度であると長時間必要である。そのため、上記濃度の溶液では10分間以内であることが好ましく、3分間以内であることがより好ましい。また、接触させる方法は特に限定されず、該化合物の溶液を塗布(コーティング)しても、該化合物の溶液に該複合半透膜を浸漬させてもよい。該化合物を溶かす溶媒は該化合物が溶解し、該複合半透膜が侵食されなければ、いかなる溶媒を用いてもかまわない。また、溶液には、第一級アミノ基と試薬との反応を妨害しないものであれば、界面活性剤や酸性化合物、アルカリ性化合物などが含まれていてもよい。
次に、ジアゾニウム塩またはその誘導体が生成した複合半透膜を、ジアゾニウム塩またはその誘導体と反応する水溶性化合物(II)と接触させる。ここでジアゾニウム塩またはその誘導体と反応する水溶性化合物(II)とは、塩化物イオン、臭化物イオン、シアン化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化ホウ素酸、次亜リン酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸イオン、芳香族アミン、フェノール類、硫化水素、チオシアン酸等が挙げられる。亜硫酸水素ナトリウム、および亜硫酸イオンと反応させると瞬時に置換反応が起こり、アミノ基がスルホ基に置換される。また、芳香族アミン、フェノール類と接触させることでジアゾカップリング反応が起こり膜面に芳香族を導入することが可能となる。これらの化合物は単一で用いてもよく、複数混合させて用いてもよく、異なる化合物に複数回接触させてもよい。接触させる化合物として、好ましくは亜硫酸水素ナトリウム、および亜硫酸イオンである。
ジアゾニウム塩またはその誘導体と反応する水溶性化合物(II)と接触させる濃度と時間は、目的の効果を得るために適宜調節することができる。
ジアゾニウム塩またはその誘導体と反応する水溶性化合物(II)と接触させる温度は10〜90℃が好ましい。この温度範囲であると反応が進みやすく、一方ポリマーの収縮による透過水量の低下も起こらない。
引き続いて、ポリアミド分離機能層を有する複合半透膜を、水酸基を2つ以上有する親水性化合物と接触させ、蒸留水で洗浄する方法がある。水酸基を2つ以上有する親水性化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコールなどが挙げられる。さらに好ましくはテトラエチレングリコールを使用することで、塩の除去率の低下を抑えつつ造水量を増加させることができ、アルカリ水溶液接触時の造水量および除去率の変化を抑制することができる
なお、本欄(2−3)の処理を施される前後の膜をいずれも「複合半透膜」と称し、本欄(2−3)の処理を施される前後の膜における支持層上の層をいずれも「分離機能層」と称する。
(3)複合分離膜の利用
このように製造される本発明の複合半透膜は、プラスチックネットなどの原水流路材と、トリコットなどの透過水流路材と、必要に応じて耐圧性を高めるためのフィルムと共に、多数の孔を穿設した筒状の集水管の周りに巻回され、スパイラル型の複合半透膜エレメントとして好適に用いられる。さらに、このエレメントを直列または並列に接続して圧力容器に収納した複合半透膜モジュールとすることもできる。
また、上記の複合半透膜やそのエレメント、モジュールは、それらに原水を供給するポンプや、その原水を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、原水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
流体分離装置の操作圧力は高い方が塩除去率は向上するが、運転に必要なエネルギーも増加すること、また、複合半透膜の耐久性を考慮すると、複合半透膜に被処理水を透過する際の操作圧力は、0.5 MPa以上、10 MPa以下が好ましい。供給水温度は、高くなると塩除去率が低下するが、低くなるにしたがい膜透過流束も減少するので、5℃以上、45℃以下が好ましい。また、供給水pHは、高くなると海水などの高塩濃度の供給水の場合、マグネシウムなどのスケールが発生する恐れがあり、また、高pH運転による膜の劣化が懸念されるため、中性領域での運転が好ましい。
本発明に係る複合半透膜によって処理される原水としては、例えば、海水、かん水、排水等の50mg/L〜100g/Lの塩(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を含有する液状混合物が挙げられる。一般に、塩は総溶解固形分量を指し、「質量÷体積」あるいは「重量比」で表される。定義によれば、0.45ミクロンのフィルターで濾過した溶液を39.5〜40.5℃の温度で蒸発させ残留物の重さから算出できるが、より簡便には実用塩分(S)から換算する。
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
実施例および比較例における測定は次のとおり行った。
(塩除去率)
pH6.5に調整した塩化ナトリウム溶液500mg/Lを操作圧力0.5 MPaで複合半透膜に供給し、透過水中の塩濃度を測定した。膜による塩の除去率は次の式から求めた。
塩除去率(%)=100×{1−(透過水中の塩濃度/供給水中の塩濃度)}
(膜透過流束)
供給水(塩化ナトリウム溶液)の膜透過水量を、膜面1平方メートルあたり、1日あたりの透水量(立方メートル)でもって膜透過流束(m/m/d)を表した。
(自由水量および不凍水量)
複合半透膜から基材を物理的に剥離・除去した後、多孔性支持体をジクロロメタンによって抽出除去してポリアミド分離機能層の分析試料を作製した。当該分析試料を下記装置を用いた。
DSC 装置 : TA Instruments 社製 DSC Q100
データ処理 : 東レリサーチセンター製解析プログラム”TRC-THADAP-DSC”
測定温度範囲 : 約−55〜5 ℃
昇温速度 : 0.3 ℃/分
試料容器 : アルミニウム製密閉型試料容器
温度・熱量校正: 純水(融点 0℃、融解熱量 79.7 cal/g)
試料重量 : 4 mg
昇温過程の DSC曲線から下記の(1)式を使って自由水量 Wf を、(2)式を使って低融点水量 Wfcを求め、全水分量 Wtから差し引くことによって、不凍水量 Wnfを求める。
Figure 2019177340
ここで、mは試料の乾燥重量、dq/dt はDSCの熱流束シグナル、ΔH(0)はTでの融解エンタルピーである(T0はバルク水の融点)。
(末端カルボキシル基量)
(i)サンプル作成方法
3cm×3cm角に切り出した膜サンプルを脱イオン水中で30分間煮沸し、その後、50wt%のメタノール水溶液に15時間浸漬。次にpHを12に調製した硝酸銀水溶液(1×10−4mol/L)に30分浸漬する。さらに膜に結合していない銀を洗い流す目的で乾燥したメタノールに浸漬し、窒素雰囲気下に30分以上置いた後、RBS測定に用いた。
(ii)ラザフォート後方散乱(RBS)測定方法
膜サンプルを導電性の両面テープに固定し、以下の装置および測定条件にて行う。
装置:National Electrostatics Corporation製 Pelletron 3SDH
測定条件
測定モード:RBS単独測定
入射イオン : He++
入射エネルギー : 2300 keV
入射角 : 0度
散乱角 : 160度
試料電流 : 4 nA
ビーム径 : 2 mmφ
面内回転 : 無
照射量 : 44.8μC
RBS測定結果の解析において、銀の原子数密度がカルボキシル基数密度に対応すると仮定し、銀原子の面密度(atoms/cm2)からカルボキシル基の面密度(mol/cm2)への換算を行った。
(可溶性アミド基量)
15cm×30cm角に切り出した複合半透膜サンプルを密閉容器に入れた500mLのイソプロピルアルコールに72時間浸漬し密閉保存した後、膜を浸漬したイソプロピルアルコール溶液をサンプリングし、10mLになるまで濃縮しATR法によるIR測定に用いた。アミド基量(A)はベンズアニリド(東京化成工業社製)のイソプロパノール溶液を用いて作成した検量線を基に算出した。1690から1630cm−1間の吸収強度の面積(A)を計測した。さらに複合半透膜をATR法によりIR測定し、1690から1630cm−1間の吸収強度の面積比をBとして計測し、A/Bの値をポリアミド分離機能層に対する可溶性アミド化合物の量比として算出した。複合半透膜サンプルのIR測定においては、2cm以上離れた10箇所の点を測定し、その平均値を測定値とした。上記赤外吸収スペクトル測定には、Bruker社製FT−IRスペクトル測定装置ALPHAを用い、検出器をDTGSとし、ATR法によって、入射角45°で、分解能4cm−1の条件で64回の積算をかけて吸収強度を測定した。
(耐アルカリ性試験)
複合半透膜をpH12に調製した水酸化ナトリウム水溶液に25℃雰囲気下、24時間浸漬した。その後水で十分に洗浄し、複合半透膜の膜透過流束、塩除去率を求めることによって行った。
(参考例1)
ポリエステル不織布(通気度0.5〜1cc/cm/sec)上にポリスルホンの15.7重量%DMF溶液を200μmの厚みで、室温(25℃)でキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって微多孔性支持膜(厚さ210〜215μm)を作製した。
(比較例1)
参考例1で得られた微多孔性支持膜を20cm四方に切り取り、金属製の枠に固定し、m−PDAの1.8重量%水溶液中に2分間浸漬した。該支持膜を上記水溶液から垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた。その後、TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25mlを、支持膜の表面が完全に濡れるように枠内に注ぎ込み、n−デカン溶液と支持膜の最初の接触から1分間静置した。次に、膜から余分な溶液を除去するために膜を1分間垂直に保持して液切りし、その後、80℃の熱水で2分間洗浄した。さらに洗浄後の膜を35℃、pH3の0.3重量%亜硝酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬させた後、0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、複合半透膜を得た。
(比較例2)
比較例1で得られた複合半透膜を、50℃に調製したトリエチレングリコール(東京化成工業社製)20重量%水溶液に3分間浸漬した。複合半透膜をトリエチレングリコール水溶液から取り出した後、水洗いした。このようにして得られた複合半透膜を評価したところ、塩除去率、膜透過流束はそれぞれ表1に示す値であった。
(比較例3)
ABS樹脂(トヨラック登録商標AX05−X38)とDMFとの混合物を攪拌しながら、100℃で2時間加熱保持することで、樹脂溶液を調整した。樹脂溶液におけるABS樹脂の濃度は16重量%であった。調整した樹脂溶液を室温まで冷却し、金属メッシュ(線径 0.03mm、メッシュ 400、関西金網株式会社製)を用いてろ過した。その後、抄紙法で製造されたポリエステル繊維からなる不織布(厚み:約90μm、通気度:1.0cc/cm/sec)上に樹脂溶液を120μmの厚みで塗布した。塗布後、直ちに純水中に浸漬して相分離させ、続いて70℃の純水で5分間洗浄することによって微多孔性支持膜を得た。得られた微多孔性支持膜を20cm四方に切り取り、金属製の枠に固定し、m−PDAの1.8重量%水溶液中に2分間浸漬した。該支持膜を上記水溶液から垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた。その後、TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25mlを、支持膜の表面が完全に濡れるように枠内に注ぎ込み、n−デカン溶液と支持膜の最初の接触から1分間静置した。次に、膜から余分な溶液を除去するために膜を1分間垂直に保持して液切りし、その後、80℃の熱水で2分間洗浄した。さらに洗浄後の膜を35℃、pH3の0.3重量%亜硝酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬させた後、0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、複合半透膜を得た。
(実施例1)
比較例3で得られた複合半透膜を、50℃に調製したトリエチレングリコール(東京化成社製)20重量%水溶液に3分間浸漬した。複合半透膜をトリエチレングリコール水溶液から取り出した後、水洗いし複合半透膜を得た。
(比較例4)
TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25ml中にホウ酸トリイソプロピル0.13重量%を加えたこと以外は比較例1と同様の方法で複合半透膜を得た。
(実施例2)
比較例4で得られた複合半透膜を、50℃に調製したトリエチレングリコール(東京化成社製)20重量%水溶液に3分間浸漬した。複合半透膜をトリエチレングリコール水溶液から取り出した後、水洗いし複合半透膜を得た。
(実施例3)
TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25ml中にホウ酸トリイソプロピル0.40重量%を加えたこと以外は実施例2と同様の方法で複合半透膜を得た。
(比較例5)
TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25ml中にステアリン酸0.13重量%を加えたこと以外は比較例1と同様の方法で複合半透膜を得た。
(実施例4)
比較例5で得られた複合半透膜を、50℃に調製したトリエチレングリコール(東京化成社製)20重量%水溶液に3分間浸漬した。複合半透膜をトリエチレングリコール水溶液から取り出した後、水洗いし複合半透膜を得た。
(比較例6)
TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25ml中にp−トルエンスルホン酸0.13重量%を加えたこと以外は比較例1と同様の方法で複合半透膜を得た。
(実施例5)
比較例5で得られた複合半透膜を、50℃に調製したトリエチレングリコール(東京化成社製)20重量%水溶液に3分間浸漬した。複合半透膜をトリエチレングリコール水溶液から取り出した後、水洗いし複合半透膜を得た。
(比較例7)
TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25ml中にホウ酸トリイソプロピル0.40重量%を加えたこと以外は比較例3と同様の方法で複合半透膜を得た。
(比較例8)
比較例7で得られた複合半透膜を、50℃に調製したジエチレングリコール(東京化成社製)20重量%水溶液に3分間浸漬した。複合半透膜をトリエチレングリコール水溶液から取り出した後、水洗いし複合半透膜を得た。
(実施例6)
比較例7で得られた複合半透膜を、50℃に調製したトリエチレングリコール(東京化成社製)20重量%水溶液に3分間浸漬した。複合半透膜をトリエチレングリコール水溶液から取り出した後、水洗いし複合半透膜を得た。
(実施例7)
比較例7で得られた複合半透膜を、50℃に調製したトリエチレングリコール(東京化成社製)50重量%水溶液に3分間浸漬した。複合半透膜をトリエチレングリコール水溶液から取り出した後、水洗いし複合半透膜を得た。
(実施例8)
比較例7で得られた複合半透膜を、50℃に調製したトリエチレングリコール(東京化成社製)85重量%水溶液に3分間浸漬した。複合半透膜をトリエチレングリコール水溶液から取り出した後、水洗いし複合半透膜を得た。
(実施例9)
比較例7で得られた複合半透膜を、50℃に調製したトリエチレングリコール(東京化成社製)95重量%水溶液に3分間浸漬した。複合半透膜をトリエチレングリコール水溶液から取り出した後、水洗いし複合半透膜を得た。
(実施例10)
比較例7で得られた複合半透膜を、50℃に調製したテトラエチレングリコール(東京化成社製)20重量%水溶液に3分間浸漬した。複合半透膜をトリエチレングリコール水溶液から取り出した後、水洗いし複合半透膜を得た。
Figure 2019177340
Figure 2019177340
本発明の複合半透膜は、特に、海水やかん水の脱塩に好適に用いることができる。

Claims (4)

  1. 基材と、前記基材上に形成された多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に設けられ、架橋全芳香族ポリアミドを含有する分離機能層とを備える複合半透膜であって、以下(A)、(B)および(C)を満たすことを特徴とする複合半透膜。
    (A) DSCで測定した含水量において、不凍水量に対する自由水量の比が12以上である。
    (B) IRで測定した分離機能層中の可溶成分のアミド基量が前記分離機能層が含有するポリアミドのアミド基量に対して0.02以下である。
    (C) 前記分離機能層についてRBSで測定した末端カルボキシル基量が1.2×10−9mol/cm2以上である。
  2. 末端カルボキシル基量が1.2×10−9〜2.0×10−9 mol/cmである請求項1に記載の複合半透膜。
  3. 前記多孔性支持層の前記分離機能層に対向する面における平均細孔径 が10nm以下であって、
    前記多孔性支持層において、前記分離機能層側表面から10nmから5μmの位置に長径が5μm以上のボイドの一部または全体が偏在しており 、前記多孔性支持層の膜面に垂直 な断面において、長径が5μm以上の前記ボイドの占める面積の総和が前記断面の全面積の30%以上85%以下である請求項1または2に記載の複合半透膜。
  4. 基材と、前記基材上に形成された多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に設けられ、架橋芳香族ポリアミドを含有する分離機能層とを備える複合半透膜の製造方法であって、
    分離機能層の形成工程を含み、前記分離機能層の形成工程は、
    (a)前記多孔性支持層上でカルボン酸、ホウ酸またはその塩またはそのエステルの存在下での重縮合により前記架橋芳香族ポリアミドを含む層を形成すること、および
    (b)前記架橋芳香族ポリアミドを含む層を水酸基を2個以上有する親水性化合物に接触させること
    を備える複合半透膜の製造方法。
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