JP2019177341A - 複合半透膜および複合半透膜の製造方法 - Google Patents

複合半透膜および複合半透膜の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高い造水性と除去性、耐酸性を達成する膜を提供する。【解決手段】本発明は、基材と、前記基材上に位置する多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に位置する分離機能層とを備えた複合半透膜であって、前記分離機能層は、架橋ポリアミドを主成分とする薄膜を有し、前記薄膜は第13族元素をさらに含有し、前記複合半透膜100cm2を25℃の純水200mLに30分間浸漬したときの前記純水中に溶出した前記第13族元素濃度が0.20mg/L以下である複合半透膜に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、液状混合物の選択的分離に有用な複合半透膜に関する。本発明によって得られる複合半透膜は、例えば海水またはかん水の淡水化に好適に用いることができる。
混合物の分離に関して、溶媒(例えば水)に溶解した物質(例えば塩類)を除くための技術には様々なものがあるが、近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして膜分離法の利用が拡大している。
膜分離法に使用される膜には、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などがあり、これらの膜は、例えば海水、かん水、有害物を含んだ水などから飲料水を得る場合、または工業用超純水の製造、排水処理、有価物の回収などに用いられている。
現在市販されている逆浸透膜およびナノろ過膜の大部分は複合半透膜であり、微多孔性支持膜上にゲル層とポリマーを架橋した活性層を有するものと、微多孔性支持膜上でモノマーを重縮合した活性層を有するものとの2種類がある。
なかでも、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との重縮合反応によって得られる架橋ポリアミドからなる分離機能層を多孔性支持膜上に被覆して得られる複合半透膜(特許文献1)は、透水性および除去性の高い分離膜として広く用いられている。
また、これらの膜のさらなる高性能化として、特許文献2には、複合半透膜にチタンまたはシリカを含ませることで透水性を向上させる方法、特許文献3には、膜の酸洗浄時の耐久性、すなわち耐酸性を向上させるために、複合半透膜に硫酸環状エステルを接触させる方法などが開示されている。
日本国特開2001−79372号公報 日本国特開2011−245419号公報 日本国特許第5177056号
しかしながら、従来の複合半透膜は、透水性、除去性、耐酸性の全てを満足するものではない。
本発明は透水性、除去性、耐酸性に優れる複合半透膜、および複合半透膜の製造方法の提供を目的とする。
上記目的を達成するための本発明は、以下の構成をとる。
[1]基材と、前記基材上に位置する多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に位置する分離機能層とを備えた複合半透膜であって、
前記分離機能層は、架橋ポリアミドを含有する薄膜を有し、
前記薄膜は第13族元素をさらに含有し、
前記複合半透膜100cmを25℃の純水50 mLに30分間浸漬したときの前記純水中に溶出した前記第13族元素濃度が0.20mg/L以下である複合半透膜。
[2]前記第13族元素がホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムのいずれかである[1]に記載の複合半透膜。
[3]前記分離機能層は凹凸構造を有し、前記凹凸構造の凸部高さの平均値が100nm 以上300nm以下である[1]、[2]のいずれかに記載の複合半透膜。
[4]基材および多孔性支持層を有する多孔性支持膜と、前記多孔性支持層上に設けられた分離機能層とを備える複合半透膜の製造方法であって、
第13族元素を含有する化合物の存在下で界面重縮合により架橋ポリアミドを形成することで多孔性支持層上に分離機能層を設けること
を含む複合半透膜の製造方法。
[5]前記界面重縮合を、多官能性アミンを含有する水溶液と、多官能性酸ハロゲン化物および前記第13族元素を含有する化合物を含有する有機溶媒溶液とを用いて行う
[4]に記載の複合半透膜の製造方法。
[6]前記第13族元素を含有する化合物は、ホウ素、アルミニウム、ガリウムおよびインジウムからなる群より選択される少なくとも1種の第13族元素を含む
[3]から[5]のいずれかに記載の複合半透膜の製造方法。
[7]前記第13族元素を含有する化合物が、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムのアルコキシドである[3]から[6]のいずれかに記載の複合半透膜の製造方法。
[8]前記分離機能層を一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物(I)に接触させてジアゾニウム塩を形成させる工程と、前記分離機能層を前記化合物(I)との反応性をもつ水溶性化合物(II)を接触させる工程
を、さらに備える、
[3]から[7]のいずれかに記載の複合半透膜の製造方法。
本発明の、薄膜に第13族元素を含有し、前記複合半透膜100cmを25℃の純水50 mLに30分間浸漬したときの前記純水中に溶出した前記第13族元素濃度が0.20mg/L以下である複合半透膜は、薄膜中での結合状態の第13族元素の存在により末端官能基を中性化することで高い造水性と除去性、耐酸性を達成することができる。
本発明の一実施形態である複合半透膜における分離機能層の断面図
(1−1)微多孔性支持膜
本発明において微多孔性支持膜は、実質的にイオン等の分離性能を有さず、実質的に分離性能を有する後述の分離機能層に強度を与えるためのものである。微多孔性支持膜の孔のサイズおよび分布は特に限定されないが、例えば、均一で微細な孔、あるいは分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面まで徐々に大きな微細孔をもち、かつ、分離機能層が形成される側の表面で微細孔の大きさが0.1nm以上100nm以下であるような微多孔性支持膜が好ましい。
本発明において、微多孔性支持膜は、基材とその上に形成された多孔性支持体から構成される。
(1−1−1)基材
上記基材としては、例えば、ポリエステルまたは芳香族ポリアミドから選ばれる少なくとも一種を主成分とする布帛が例示される。
基材に用いられる布帛としては、長繊維不織布または短繊維不織布を好ましく用いることができる。基材には、基材上に高分子重合体の溶液を流延した際にそれが過浸透により裏抜けしたり、基材と多孔性支持体が剥離したり、さらには基材の毛羽立ち等により膜の不均一化またはピンホール等の欠点が生じたりすることがないような優れた製膜性が要求される。そのため、基材には長繊維不織布をより好ましく用いることができる。
長繊維不織布としては、熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布などが挙げられる。基材が長繊維不織布からなることにより、短繊維不織布を用いたときに起こる、毛羽立ちによって生じる高分子溶液流延時の不均一化または膜欠点を抑制することができる。また、複合半透膜を連続製膜する工程においては、基材の製膜方向に張力がかけられることからも、基材としては、寸法安定性に優れる長繊維不織布を用いることが好ましい。
特に、基材の多孔性支持体と反対側に配置される繊維の配向が、製膜方向に対して縦配向であることにより、基材の強度を保ち、膜破れ等を防ぐことができるので好ましい。ここで、縦配向とは、繊維の配向方向が製膜方向と平行であることを言う。逆に、繊維の配向方向が製膜方向と直角である場合は、横配向と言う。
不織布基材の繊維配向度としては、多孔性支持体と反対側における繊維の配向度が0°以上25°以下であることが好ましい。ここで繊維配向度とは、微多孔性支持膜を構成する不織布基材の繊維の向きを示す指標であり、連続製膜を行う際の製膜方向を0°とし、製膜方向と直角方向、すなわち不織布基材の幅方向を90°としたときの、不織布基材を構成する繊維の平均の角度のことを言う。よって、繊維配向度が0°に近いほど縦配向であり、90°に近いほど横配向であることを示す。
複合半透膜の製造工程およびエレメントの製造工程には、加熱工程が含まれるが、加熱により微多孔性支持膜または複合半透膜が収縮する現象が起きる。特に連続製膜において、幅方向には張力が付与されていないので、幅方向に収縮しやすい。微多孔性支持膜または複合半透膜が収縮することにより、寸法安定性等に問題が生じるため、基材としては熱寸法変化率が小さいものが望まれる。
不織布基材において多孔性支持体と反対側に配置される繊維と、多孔性支持体側に配置される繊維との配向度差が10°以上90°以下であると、熱による幅方向の変化を抑制することができ好ましい。
基材の通気度は2.0cc/cm/sec以上であることが好ましい。通気度がこの範囲だと、複合半透膜の透過水量が高くなる。これは、微多孔性支持膜を形成する工程で、基材上に高分子重合体を流延し、凝固浴に浸漬した際に、基材側からの非溶媒置換速度が速くなることで多孔性支持体の内部構造が変化し、その後の分離機能層を形成する工程においてモノマーの保持量または拡散速度に影響を及ぼすためと考えられる。
なお、通気度はJIS L1096(2010)に基づき、フラジール形試験機によって測定できる。例えば、200mm×200mmの大きさに基材を切り出し、サンプルとする。このサンプルをフラジール形試験機に取り付け、傾斜形気圧計が125Paの圧力になるように吸込みファン及び空気孔を調整し、このときの垂直形気圧計の示す圧力と使用した空気孔の種類から基材を通過する空気量、すなわち通気度を算出することができる。フラジール形試験機は、カトーテック株式会社製KES−F8−AP1などが使用できる。
また、基材の厚みは、10μm以上200μm以下の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは30μm以上120μm以下の範囲内である。
(1−1−2)多孔性支持体
本発明における多孔性支持体は、上記基材上に位置する。
多孔性支持体の素材としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシドなどのホモポリマーあるいはコポリマーを単独であるいはブレンドして使用することができる。
ここでセルロース系ポリマーとしては、酢酸セルロース、硝酸セルロースなど、ビニルポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどが使用できる。
中でもポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどのホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。ポリスルホン、酢酸セルロース及びポリ塩化ビニル、またはそれらを混合したものがより好ましく使用され、化学的、機械的、熱的に安定性の高いポリスルホンを使用するのが特に好ましい。
具体的には、次の化学式に示す繰り返し単位からなるポリスルホンを用いると、孔径が制御しやすく、寸法安定性が高いため好ましい。
Figure 2019177341
また、多孔性支持体の厚みは、10〜200μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは20〜100μmの範囲内である。多孔性支持体の厚みが10μm以上であることで、良好な耐圧性が得られると共に、欠点のない均一な支持膜を得ることができるので、このような多孔性支持体を備える複合半透膜は、良好な塩除去性能を示すことができる。多孔性支持体の厚みが200μm以下であることで、製造時の未反応物質の残存量が増加せず、透過水量が低下することによる耐薬品性の低下を防ぐことができる。
上記基材に上記多孔性支持体を形成した微多孔性支持膜の厚みは、複合半透膜の強度およびそれをエレメントにしたときの充填密度に影響を与える。本発明の複合半透膜が、十分な機械的強度および充填密度を得るためには、微多孔性支持膜(基材と多孔性支持膜の合計)の厚みは30〜300μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは50〜250μmの範囲内である。
微多孔性支持膜の形態は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡及び原子間顕微鏡等により観察できる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば、基材から多孔性支持体を剥がした後、これを凍結割断法で切断して断面観察のサンプルとする。このサンプルに白金または白金−パラジウムまたは四塩化ルテニウム、好ましくは四塩化ルテニウムを薄くコーティングして3〜6kVの加速電圧で、高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)で観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、日立製S−900型電子顕微鏡などが使用できる。
本発明に使用する微多孔性支持膜は、ミリポア社製“ミリポアフィルターVSWP”(商品名)または、東洋濾紙社製“ウルトラフィルターUK10”(商品名)のような各種市販材料から選択することもできるが、“オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法に従って製造することもできる。
上記基材および多孔性支持体、複合半透膜の厚みは、デジタルシックネスゲージによって測定することができる。また、後述する分離機能層の厚みは微多孔性支持膜と比較して非常に薄いので、複合半透膜の厚みを微多孔性支持膜の厚みとみなすこともできる。従って、複合半透膜の厚みをデジタルシックネスゲージで測定し、複合半透膜の厚みから基材の厚みを引くことで、多孔性支持体の厚みを簡易的に算出することができる。デジタルシックネスゲージとしては、尾崎製作所株式会社のPEACOCKなどが使用できる。デジタルシックネスゲージを用いる場合は、20箇所について厚みを測定して平均値を算出する。
なお、基材および多孔性支持体、複合半透膜の厚みを上述した顕微鏡で測定してもよい。1つのサンプルについて任意の5箇所における断面観察の電子顕微鏡写真から厚みを測定し、平均値を算出することで厚みが求められる。なお、本発明における厚みおよび孔径は平均値を意味するものである。
(1−2)分離機能層
本発明の複合半透膜において、実質的にイオン等の分離性能を有するのは、分離機能層である。
本発明における分離機能層は、ポリアミドを主成分とする薄膜を含有する。分離機能層を構成するポリアミドは、例えば、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との界面重縮合反応により形成することができる。ここで、多官能性アミンまたは多官能性酸ハロゲン化物の少なくとも一方が3官能以上の化合物を含んでいることが好ましい。
分離機能層の厚みは、十分な分離性能および透過水量を得るために、通常0.01〜1μmの範囲内、好ましくは0.1〜0.5μmの範囲内である。
ここで、多官能性アミンとは、一分子中に少なくとも2個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有し、そのアミノ基のうち少なくとも1つは第一級アミノ基であるアミンをいい、例えば、2個のアミノ基がオルト位またはメタ位、パラ位のいずれかの位置関係でベンゼン環に結合したフェニレンジアミン、キシリレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミンなどの芳香族多官能アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの脂肪族アミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4−アミノピペリジン、4−アミノエチルピペラジンなどの脂環式多官能アミン等を挙げることができる。
中でも、膜の選択分離性および透過性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有する芳香族多官能アミンであることが好ましい。このような多官能芳香族アミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン等が好適に用いられる。中でも、入手の容易性または取り扱いのしやすさから、m−フェニレンジアミン(以下、m−PDAと記す)を用いることがより好ましい。これらの多官能性アミンは、単独で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。2種以上を同時に用いる場合、上記アミン同士を組み合わせてもよく、上記アミンと一分子中に少なくとも2個の第二級アミノ基を有するアミンを組み合わせてもよい。一分子中に少なくとも2個の第二級アミノ基を有するアミンとして、例えば、ピペラジン、1,3−ビスピペリジルプロパン等を挙げることができる。
多官能性酸ハロゲン化物とは、一分子中に少なくとも2個のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物をいう。例えば、3官能酸ハロゲン化物としては、例えば、トリメシン酸クロリド、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸トリクロリド、1,2,4−シクロブタントリカルボン酸トリクロリドなどを挙げることができる。
2官能酸ハロゲン化物としては、例えば、ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、ナフタレンジカルボン酸クロリドなどの芳香族2官能酸ハロゲン化物、アジポイルクロリド、セバコイルクロリドなどの脂肪族2官能酸ハロゲン化物、シクロペンタンジカルボン酸ジクロリド、シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド、テトラヒドロフランジカルボン酸ジクロリドなどの脂環式2官能酸ハロゲン化物を挙げることができる。
多官能性アミンとの反応性を考慮すると、多官能性酸ハロゲン化物は多官能性酸塩化物であることが好ましく、また、膜の選択分離性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の塩化カルボニル基を有する多官能性芳香族酸塩化物であることが好ましい。中でも、入手の容易性または取り扱いのしやすさの観点から、トリメシン酸クロリドを用いるとより好ましい。これらの多官能性酸ハロゲン化物は、単独で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。
本発明の複合半透膜は、薄膜に第13族元素を含有する。第13族元素とはIUPACの周期律表第13族に位置する元素であり、具体的にはホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムなどが挙げられる。これらの元素の含有を検出する方法としては限定されないが、例えばX線光電子分光法(XPS)により、各元素の測定される結合エネルギーでのピーク強度を検出する方法がある。
XPSはX線を試料に照射することによって固体内の準位に対応したエネルギーの電子を励起し、真空中に放出された光電子の運動エネルギーを測定する分光法であり、第13族元素では、ホウ素では、光量子エネルギー185〜195eVに、アルミニウムでは70〜80eVに、ガリウムでは16〜22eVに、インジウムでは442〜455eVにそれぞれの元素の電子軌道に対応する光電子の放出が検出される。
例えば、複合半透膜の薄膜に対しXPSの分析を行い、それぞれの元素に関して上記範囲の光量子エネルギーにおいて明らかなピーク強度が観測される場合に第13族元素を薄膜に含有すると判断することができる。
また、本発明の複合半透膜は複合半透膜100cmを25℃の純水50 mLに30分間浸漬したときの前記純水中に溶出した前記第13族元素濃度が0.20mg/L以下となる。濃度の定量法としては限定されないが、例えばICP発光分析を用いる方法がある。
ICP発光分析とは高周波誘導結合プラズマ(ICP)を光源とする発光分光分析法であり、試料溶液を霧状にしてArプラズマに導入し、励起された元素が基底状態に戻る際に放出される光を分光して、波長から元素の定性、強度から定量を行うものである。
薄膜に第13族元素を含有し、上述の方法により溶出される第13族元素濃度が0.20mg/L以下である複合半透膜は、第13族元素が薄膜中のアミン部と特に良好な親和性を示すことにより、膜中での荷電反発を抑制し、高い造水性と除去性を両立することができる。
また、アミン部との親和性により酸性条件下でのアミン部のイオン化を抑制することで、酸性条件下においても高い性能を維持しうる膜となる。
また、分離機能層において、薄膜は、複数の凹部と凸部とを有するひだ構造を形成する。より具体的には、ひだ構造においては、凹部と凸部が繰り返される。
本発明における分離機能層の凸部とは、10点平均面粗さの5分の1以上の高さの凸部のことを言う。10点平均面粗さとは、次のような算出方法で得られる値である。まず電子顕微鏡により、膜面に垂直な方向の断面を観察する。観察倍率は10,000〜100,000倍が好ましい。得られた断面画像には、図1に示すように、分離機能層(図1に符号“1”で示す。)の表面が、凸部と凹部が連続的に繰り返されるひだ構造の曲線として表れる。この曲線について、ISO4287:1997に基づき定義される粗さ曲線を求める。上記粗さ曲線の平均線の方向に2.0μmの幅で断面画像を抜き取る。なお、平均線とは、ISO4287:1997に基づき定義される直線であり、測定長さにおいて、平均線と粗さ曲線とで囲まれる領域の面積の合計が平均線の上下で等しくなるように描かれる直線である。
抜き取った幅2.0μmの画像において、上記平均線を基準線として、分離機能層1における凸部の高さと、凹部の深さをそれぞれ測定する。最も高い凸部から徐々に高さが低くなって5番目の高さまでの5つの凸部の高さH1〜H5の絶対値について平均値を算出し、最も深い凹部から徐々に深さが浅くなって5番目の深さまでの5つの凹部の深さD1〜D5の絶対値について平均値を算出して、さらに、得られた2つの平均値の絶対値の和を算出する。こうして得られた和が、10点平均面粗さである。
分離機能層の断面は、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡により観察できる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば、複合半透膜サンプルに白金、白金−パラジウムまたは四酸化ルテニウム、好ましくは四酸化ルテニウムを薄くコーティングして3〜6kVの加速電圧で高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)を用いて観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、日立製S−900型電子顕微鏡などが使用できる。観察倍率は5,000〜100,000倍が好ましく、凸部の高さを求めるには10,000〜50,000倍が好ましい。得られた電子顕微鏡写真において、観察倍率を考慮して、凸部の高さをスケールなどで直接測定することができる。
また、凸部の平均高さは次のようにして測定される。複合半透膜において、任意の10箇所の断面を観察したときに、各断面において、上述の10点平均面粗さの5分の1以上である凸部の高さを測定して、1個の凸部当たりの高さ平均を算出する。さらに、10箇所の断面についての算出結果に基づいて、相加平均を算出することで、平均高さが得られる。ここで、各断面は、上記粗さ曲線の平均線の方向において、2.0μmの幅を有する。
本発明における分離機能層薄膜の凸部は高い造水性と強度を両立するために前述の方法により測定される各断面における平均高さが100nm以上300nm以下であることが好ましい。
2.複合半透膜の製造方法
以上に説明した本発明の複合半透膜の製造方法の一例を示す。製造方法は、支持膜の形成工程及び分離機能層の形成工程を含む。
(2−1)支持膜の形成工程
支持膜の形成工程は、基材に高分子溶液を塗布する工程及び高分子溶液を塗布した前記基材を凝固浴に浸漬させて高分子を凝固させる工程を含む。
基材に高分子溶液を塗布する工程において、高分子溶液は、多孔性支持層の成分である高分子を、その高分子の良溶媒に溶解して調製する。
高分子溶液塗布時の高分子溶液の温度は、高分子としてポリスルホンを用いる場合、10℃以上60℃以下であることが好ましい。高分子溶液の温度が、この範囲内であれば、高分子が析出することがなく、高分子溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。その結果、アンカー効果により多孔性支持層が基材に強固に接合し、良好な支持膜を得ることができる。なお、高分子溶液の好ましい温度範囲は、用いる高分子の種類または、所望の溶液粘度等によって適宜調整することができる。
基材上に高分子溶液を塗布した後、凝固浴に浸漬させるまでの時間は、0.1秒以上5秒以下であることが好ましい。凝固浴に浸漬するまでの時間がこの範囲であれば、高分子を含む有機溶媒溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。なお、凝固浴に浸漬するまでの時間の好ましい範囲は、用いる高分子溶液の種類または、所望の溶液粘度等によって適宜調整することができる。
凝固浴としては、通常水が使われるが、多孔性支持層の成分である高分子を溶解しないものであればよい。凝固浴の組成によって得られる支持膜の膜形態が変化し、それによって得られる複合半透膜も変化する。凝固浴の温度は、−20℃以上100℃以下が好ましく、さらに好ましくは10℃以上50℃以下である。凝固浴の温度がこの範囲以内であれば、熱運動による凝固浴面の振動が激しくならず、膜形成後の膜表面の平滑性が保たれる。また、凝固浴の温度がこの範囲内であれば、凝固速度が適当で、製膜性が良好である。
次に、このようにして得られた支持膜を、膜中に残存する溶媒を除去するために熱水洗浄する。このときの熱水の温度は40℃以上100℃以下が好ましく、さらに好ましくは60℃以上95℃以下である。熱水の温度がこの範囲内であれば、支持膜の収縮度が大きくならず、透過水量が良好である。また、熱水の温度がこの範囲内であれば、洗浄効果が十分である。
(2−2)分離機能層の形成工程
次に、複合半透膜を構成する分離機能層の形成工程を説明する。本発明の分離機能層の形成工程は、
多官能アミンを含有する水溶液(水層)と、多官能酸ハロゲン化物を有機溶媒(有機層)に溶解した溶液とを用い、前記基材及び前記多孔性支持層を含む支持膜の表面で界面重縮合を行う。
本発明者らによる鋭意検討の結果、上記の界面重縮合によって架橋ポリアミドを含む分離機能層を形成する工程に際し、第13族元素を含有する化合物の存在下で前記界面重縮合を行うことで第13族元素とアミンとの高い親和性を有する複合半透膜が得られることを見出した。
第13族元素を含有する化合物の存在下で前記界面重縮合を行う方法は、例えば前記多孔性支持層に第13族元素を含有する化合物を含ませる方法、水層に第13族元素を含有する化合物を含ませる方法、有機層に第13族元素を含有する化合物を含ませる方法があるが、アミンとの過剰な親和による重合反応阻害または副反応を防ぐため、有機層に含ませる方法が好ましい。
前記第13族元素を含有する化合物は、用いる化合物の実用性の観点からホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムからなる群より選択される少なくとも1種の第13族元素を含むことが好ましく、中でもアミンとの高い親和性からホウ素、アルミニウムから選択される少なくとも1種の第13族元素を含むことが特に好ましい。
第13族元素を含有する化合物の種類としては第13族元素のハロゲン化物、有機物、無機物、酸化物、酸エステルがあるが、
中でも化学的安定性、溶解性を考慮すると第13族元素の酸エステル、特にアルコキシドであることが好ましい。第13元素のアルコキシドの好ましい例としてはホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリヘキシル、ホウ酸トリオクチル、ホウ酸トリデシル、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムsec−ブトキシド、アルミニウムtert−ブトキシド、ガリウムエトキシド、ガリウムイソプロポキシド、ガリウムn−ブトキシド、ガリウムsec−ブトキシド、ガリウムtert−ブトキシド、インジウムエトキシド、インジウムイソプロポキシド、インジウムn−ブトキシド、インジウムsec−ブトキシド、インジウムtert−ブトキシドである。
用いる第13族元素を含有する化合物の濃度は種類により適宜決定されるが、具体的には、0.01〜10質量%の範囲内にあると好ましく、0.03〜1質量%の範囲内であるとさらに好ましい。
濃度が上記範囲にあることで、重合反応が過剰に阻害されること無く、分離機能層中でのアミンとの親和性を十分有することができる。
上記界面重縮合を微多孔性支持層上で行うために、まず、上述の多官能性アミン水溶液を微多孔性支持膜に接触させる。接触は、微多孔性支持膜の表面上に均一にかつ連続的に行うことが好ましい。具体的には、例えば、多官能性アミン水溶液を微多孔性支持膜に塗布する方法、コーティングする方法、または微多孔性支持膜を多官能性アミン水溶液に浸漬する方法を挙げることができる。微多孔性支持膜と多官能性アミン水溶液との接触時間は、1〜10分間の範囲内であることが好ましく、1〜3分間の範囲内であるとさらに好ましい。
多官能性アミン水溶液を微多孔性支持膜に接触させた後は、膜上に液滴が残らないように十分に液切りする。十分に液切りすることで、膜形成後に液滴残存部分が膜欠点となって膜性能が低下することを防ぐことができる。液切りの方法としては、例えば、特開平2−78428号公報に記載されているように、多官能性アミン水溶液接触後の微多孔性支持膜を垂直方向に把持して過剰の水溶液を自然流下させる方法、またはエアーノズルから窒素などの気流を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させて水溶液の水分を一部除去することもできる。
次いで、多官能性アミン水溶液接触後の微多孔性支持膜に、多官能性酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液を接触させ、界面重縮合により架橋ポリアミド分離機能層の骨格を形成させる。
有機溶媒溶液中の多官能性酸ハロゲン化物の濃度は、0.01〜10重量%の範囲内であると好ましく、0.02〜2.0重量%の範囲内であるとさらに好ましい。0.01重量%以上とすることで十分な反応速度が得られ、また、10重量%以下とすることで副反応の発生を抑制することができるためである。さらに、この有機溶媒溶液にDMFのようなアシル化触媒を含有させると、界面重縮合が促進され、さらに好ましい。
有機溶媒は、水と非混和性であり、かつ多官能性酸ハロゲン化物を溶解し、微多孔性支持膜を破壊しないものが好ましく、多官能性アミン化合物および多官能性酸ハロゲン化物に対して不活性であるものであればよい。好ましい例として、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカンなどの炭化水素化合物が挙げられる。
多官能性酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液の多官能性アミン化合物水溶液相への接触の方法は、上記の多官能性アミン水溶液の微多孔性支持膜への被覆方法と同様に行えばよい。特に、多孔性支持層上に溶液を塗布する方法、多孔性支持層を溶液でコーティングする方法が好適である。
多官能性アミン水溶液と多官能性酸ハロゲン化物溶液とを接触させた直後の膜面の温度は25〜60℃の範囲内であることが好ましく、30〜50℃の範囲内であるとさらに好ましい。温度が25℃未満では、分離機能層の凸部が大きくならず、透過流束の低下につながり、温度が60℃より高温では、除去率が低下する傾向があるためである。多官能性アミン水溶液と多官能性酸ハロゲン化物溶液とを接触させた直後の膜面の温度を25〜60℃の範囲内にすることにより、微多孔性支持膜1μm長さあたりの分離機能層の実長を2μm以上5μm以下にすることができ、高い透過流束と塩除去率を得ることができる。
温度付与方法は、微多孔性支持膜を加温してもよく、加温した多官能性酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液を接触させてもよい。多官能性アミン水溶液と多官能性酸ハロゲン化物溶液とを接触させた直後の膜面の温度は、放射温度計のような非接触型温度計により測定することができる。
上述したように、多官能性酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液を接触させて界面重縮合を行い、微多孔性支持膜上に架橋ポリアミドを含む分離機能層を形成したあとは、余剰の溶媒を液切りするとよい。液切りの方法は、例えば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法を用いることができる。この場合、垂直方向に把持する時間としては、1〜5分の間にあることが好ましく、1〜3分間であるとより好ましい。短すぎると分離機能層が完全に形成せず、長すぎると有機溶媒が過乾燥となり欠点が発生しやすく、性能低下を起こしやすい。
(2−3)その他の処理
上記方法により得られた複合半透膜は、50〜150℃、好ましくは70〜130℃で、1秒〜10分間、好ましくは1分〜8分間熱水処理する工程などを付加することにより、複合半透膜の除去性能および透水性を向上させることができる。
また、本発明で得られる複合半透膜は、熱水処理後に分離機能層上の第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物(I)と接触させ、その後前記化合物(I)との反応性をもつ水溶性化合物(II)を接触させる工程を含むことにより、塩除去率をさらに向上させることができる。
接触させる第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物(I)としては、亜硝酸およびその塩、ニトロシル化合物などの水溶液が挙げられる。亜硝酸またはニトロシル化合物の水溶液は気体を発生して分解しやすいので、例えば、亜硝酸塩と酸性溶液との反応によって亜硝酸を逐次生成するのが好ましい。
一般に、亜硝酸塩は水素イオンと反応して亜硝酸(HNO)を生成するが、水溶液のpHが7以下、好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下で効率よく生成する。中でも、取り扱いの簡便性から水溶液中で塩酸または硫酸と反応させた亜硝酸ナトリウムの水溶液が特に好ましい。
前記第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物(I)、例えば亜硝酸ナトリウムの濃度は、好ましくは0.01〜1重量%の範囲である。この範囲であると十分なジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する効果が得られ、溶液の取扱いも容易である。
該化合物の温度は15℃〜45℃が好ましい。この範囲だと反応に時間がかかり過ぎることもなく、亜硝酸の分解が早過ぎず取り扱いが容易である。
該化合物との接触時間は、ジアゾニウム塩および/またはその誘導体が生成する時間であればよく、高濃度では短時間で処理が可能であるが、低濃度であると長時間必要である。そのため、上記濃度の溶液では10分間以内であることが好ましく、3分間以内であることがより好ましい。
また、接触させる方法は特に限定されず、該化合物の溶液を塗布(コーティング)しても、該化合物の溶液に該複合半透膜を浸漬させてもよい。該化合物を溶かす溶媒は該化合物が溶解し、該複合半透膜が侵食されなければ、いかなる溶媒を用いてもかまわない。また、溶液には、第一級アミノ基と試薬との反応を妨害しないものであれば、界面活性剤または酸性化合物、アルカリ性化合物などが含まれていてもよい。
次に、ジアゾニウム塩またはその誘導体が生成した複合半透膜を、ジアゾニウム塩またはその誘導体と反応する水溶性化合物(II)と接触させる。ここでジアゾニウム塩またはその誘導体と反応する水溶性化合物(II)とは、塩化物イオン、臭化物イオン、シアン化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化ホウ素酸、次亜リン酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸イオン、芳香族アミン、フェノール類、硫化水素、チオシアン酸等が挙げられる。
亜硫酸水素ナトリウム、および亜硫酸イオンと反応させると瞬時に置換反応が起こり、アミノ基がスルホ基に置換される。また、芳香族アミン、フェノール類と接触させることでジアゾカップリング反応が起こり膜面に芳香族を導入することが可能となる。これらの化合物は単一で用いてもよく、複数混合させて用いてもよく、異なる化合物に複数回接触させてもよい。接触させる化合物として、好ましくは亜硫酸水素ナトリウム、および亜硫酸イオンである。
ジアゾニウム塩またはその誘導体と反応する水溶性化合物(II)と接触させる濃度と時間は、目的の効果を得るために適宜調節することができる。
ジアゾニウム塩またはその誘導体と反応する水溶性化合物(II)と接触させる温度は10〜90℃が好ましい。この温度範囲であると反応が進みやすく、一方ポリマーの収縮による透過水量の低下も起こらない。
(3)複合半透膜の利用
このように製造される本発明の複合半透膜は、プラスチックネットなどの原水流路材と、トリコットなどの透過水流路材と、必要に応じて耐圧性を高めるためのフィルムと共に、多数の孔を穿設した筒状の集水管の周りに巻回され、スパイラル型の複合半透膜エレメントとして好適に用いられる。さらに、このエレメントを直列または並列に接続して圧力容器に収納した複合半透膜モジュールとすることもできる。
また、上記の複合半透膜およびそのエレメント、モジュールは、それらに原水を供給するポンプまたは、その原水を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、原水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
流体分離装置の操作圧力は高い方が塩除去率は向上するが、運転に必要なエネルギーも増加すること、また、複合半透膜の耐久性を考慮すると、複合半透膜に被処理水を透過する際の操作圧力は、0.5MPa以上、10MPa以下が好ましい。供給水温度は、高くなると塩除去率が低下するが、低くなるにしたがい膜透過流束も減少するので、5℃以上、45℃以下が好ましい。また、供給水pHは、高くなると海水などの高塩濃度の供給水の場合、マグネシウムなどのスケールが発生する恐れがあり、また、高pH運転による膜の劣化が懸念されるため、中性領域での運転が好ましい。
本発明に係る複合半透膜によって処理される原水としては、例えば、海水、かん水、排水等の50mg/L〜100g/Lの塩(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を含有する液状混合物が挙げられる。一般に、塩は総溶解固形分量を指し、「質量÷体積」あるいは「重量比」で表される。定義によれば、0.45ミクロンのフィルターで濾過した溶液を39.5〜40.5℃の温度で蒸発させ残留物の重さから算出できるが、より簡便には実用塩分(S)から換算する。
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
実施例および比較例における測定は次のとおり行った。
(膜中の第13族元素の検出)
複合半透膜5×5cmを以下条件において分離機能層面をXPS測定に供し、各元素の光量子エネルギーに該当する強度を検出することにより行った。
装置:ESCALAB220iXL(英国 VG Scientific社製)
励起X線:アルミニウム K α 1、2線(1486.6eV)
X線出力:10kV 20mV
光電子脱出角度:90° (膜を純水に浸漬した後の水溶液の第13族元素濃度)
複合半透膜100cmを切り取り、ビーカー中の25℃純水50mLに完全に浸るように30分間浸漬させた。浸漬後の水溶液を0.22μmのナイロン製シリンジフィルターでろ過し、ろ液をICP発光分析装置(日立製作所製 P−4010)で分析して第13族元素濃度を求めた。
(膜透過流束)
供給水(塩化ナトリウム溶液)の膜透過水量を、膜面1平方メートルあたり、1日あたりの透水量(立方メートル)でもって膜透過流束(m/m/d)を表した。
(塩除去率)
温度25℃、pH6.5に調整した500mg/L 塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を操作圧力0.5 MPaで複合半透膜に供給し、透過水中の塩濃度を測定した。膜による塩の除去率は次の式から求めた。
塩除去率(%)=100×{1−(透過水中の塩濃度/供給水中の塩濃度)}
(耐酸性試験)
複合半透膜をpH1に調製した硫酸水溶液に25℃雰囲気下、20時間浸漬した。その後水で十分に洗浄し、複合半透膜の膜透過流束、塩除去率を求めることによって行った。
(参考例1)
ポリエステル不織布(通気度0.5〜1cc/cm/sec)上にポリスルホンの15.7重量%DMF溶液を200μmの厚みで、室温(25℃)でキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって微多孔性支持膜(厚さ210〜215μm)を作製した。
(比較例1)
参考例1で得られた微多孔性支持膜を20cm四方に切り取り、金属製の枠に固定し、m−PDAの1.8重量%水溶液中に2分間浸漬した。該支持膜を上記水溶液から垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた。その後、TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25mlを、支持膜の表面が完全に濡れるように枠内に注ぎ込み、n−デカン溶液と支持膜の最初の接触から1分間静置した。次に、膜から余分な溶液を除去するために膜を1分間垂直に保持して液切りし、その後、80℃の熱水で2分間洗浄した。さらに洗浄後の膜を35℃、pH3の0.3重量%亜硝酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬させた後、0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、複合半透膜を得た。
(比較例2)
参考例1で得られた微多孔性支持膜を20cm四方に切り取り、金属製の枠に固定し、m−PDAの1.8重量%水溶液中に2分間浸漬した。該支持膜を上記水溶液から垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた。その後、TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25mlを、支持膜の表面が完全に濡れるように枠内に注ぎ込み、n−デカン溶液と支持膜の最初の接触から1分間静置した。次に、膜から余分な溶液を除去するために膜を1分間垂直に保持して液切りし、その後、80℃の熱水で2分間洗浄した。さらに洗浄後の膜をホウ酸を1500ppm含む水溶液に10分間浸漬させ、さらに純水に10分間浸漬した。得られた膜をpH3の0.3重量%亜硝酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬させた後、0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、複合半透膜を得た。
(比較例3)
TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25ml中にアルミニウムアセチルアセトネート0.13重量%を加えたこと以外は比較例1と同様の方法で複合半透膜を得た。
(比較例4)
TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25ml中にガリウムアセチルアセトネート0.13重量%を加えたこと以外は比較例1と同様の方法で複合半透膜を得た。
(比較例5)
TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25ml中にカルシウムイソプロポキシド0.13重量%を加えたこと以外は比較例1と同様の方法で複合半透膜を得た。
(比較例6)
TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25ml中にチタンイソプロポキシド0.13重量%を加えたこと以外は比較例1と同様の方法で複合半透膜を得た。(実施例1)
TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25ml中にホウ酸トリエチル0.13重量%を加えたこと以外は比較例1と同様の方法で複合半透膜を得た。
(実施例2)
TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25ml中にホウ酸トリイソプロピル0.13重量%を加えたこと以外は比較例1と同様の方法で複合半透膜を得た。
(実施例3)
TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25ml中にホウ酸トリブチル0.13重量%を加えたこと以外は比較例1と同様の方法で複合半透膜を得た。
(実施例4)
TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25ml中にアルミニウムエトキシド0.13重量%を加えたこと以外は比較例1と同様の方法で複合半透膜を得た。
(実施例5)
TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25ml中にアルミニウムイソプロポキシド0.13重量%を加えたこと以外は比較例1と同様の方法で複合半透膜を得た。
(実施例6)
TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25ml中にアルミニウムt−ブトキシド0.13重量%を加えたこと以外は比較例1と同様の方法で複合半透膜を得た。
(実施例7)
TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25ml中にガリウムエトキシド0.13重量%を加えたこと以外は比較例1と同様の方法で複合半透膜を得た。
(実施例8)
TMC0.065重量%を含む25℃のn−デカン溶液25ml中にガリウムイソプロポキシド0.13重量%を加えたこと以外は比較例1と同様の方法で複合半透膜を得た。
表1に比較例1〜6、実施例1〜8の膜における初期性能、耐酸性試験後性能を示す。
表1に示すように、膜中に第13族元素が検出され、溶出濃度が低い実施例の膜は初期に高い膜透過流束と塩除去率を示し、耐酸性試験後の性能も高く維持されることが分かる。
Figure 2019177341
1 分離機能層
H1〜H5 最も高い凸部から5番目の高さの凸部までの5つの凸部の高さ
D1〜D5 最も深い凹部から5番目の深さまでの5つの凹部の深さ

Claims (8)

  1. 基材と、前記基材上に位置する多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に位置する分離機能層とを備えた複合半透膜であって、
    前記分離機能層は、架橋ポリアミドを含有する薄膜を有し、
    前記薄膜は第13族元素をさらに含有し、
    前記複合半透膜100cmを25℃の純水50 mLに30分間浸漬したときの前記純水中に溶出した前記第13族元素濃度が0.20mg/L以下である複合半透膜。
  2. 前記第13族元素がホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムのいずれかである請求項1に記載の複合半透膜。
  3. 前記分離機能層は凹凸構造を有し、前記凹凸構造の凸部高さの平均値が100nm 以上300nm以下である請求項1、2のいずれかに記載の複合半透膜。
  4. 基材および多孔性支持層を有する多孔性支持膜と、前記多孔性支持層上に設けられた分離機能層とを備える複合半透膜の製造方法であって、
    第13族元素を含有する化合物の存在下で界面重縮合により架橋ポリアミドを形成することで多孔性支持層上に分離機能層を設けること
    を含む複合半透膜の製造方法。
  5. 前記界面重縮合を、多官能性アミンを含有する水溶液と、多官能性酸ハロゲン化物および前記第13族元素を含有する化合物を含有する有機溶媒溶液とを用いて行う
    請求項4に記載の複合半透膜の製造方法。
  6. 前記第13族元素を含有する化合物は、ホウ素、アルミニウム、ガリウムおよびインジウムからなる群より選択される少なくとも1種の第13族元素を含む
    請求項3から5のいずれかに記載の複合半透膜の製造方法。
  7. 前記第13族元素を含有する化合物が、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムのアルコキシドである請求項3から6のいずれかに記載の複合半透膜の製造方法。
  8. 前記分離機能層を一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する化合物(I)に接触させてジアゾニウム塩を形成させる工程と、前記分離機能層を前記化合物(I)との反応性をもつ水溶性化合物(II)を接触させる工程
    を、さらに備える、
    請求項3から7のいずれかに記載の複合半透膜の製造方法。


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