以下、一実施の形態について図に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は本実施の形態の半導体装置全体または一部の外観態様を示している。すなわち図1が半導体装置の一部である場合には、図1は半導体装置全体の一部のみを切り取った態様を示している。図1を参照して、本実施の形態の半導体装置100は、たとえばパワーエレクトロニクス機器に搭載される電力変換装置に用いられる。半導体装置100は、プリント基板11と、電子部品12と、放熱用筐体13と、ネジ14とを主に有している。
プリント基板11は、半導体装置100全体の土台をなす、たとえば平面視において矩形状を有する平板状の部材である。プリント基板11には後述する複数の配線すなわち導体層が形成されており、この複数の導体層は、電子部品12と、図示されない他の周辺回路部品とを、電気的に接続している。
電子部品12は、プリント基板11の一方の主表面側すなわち図1の上側に接合されている。電子部品12は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、またはダイオードなどを含む半導体チップが樹脂で封止されたパッケージである。この半導体チップは大電力を制御するため、半導体装置100の動作時における電子部品12の発熱量は数ワットから数十ワットと大きい。このため半導体装置100の動作時には、水冷または空冷などにより半導体装置100を放熱する構造が必要となる。
放熱用筐体13は、プリント基板11の一方の主表面と反対側の他方の主表面側すなわち図1の下側に固定された、放熱器としての部材である。放熱用筐体13は、半導体装置100に別途設置される図示されない空冷または水冷などの装置によって一定温度以下に冷却された状態が保たれる。放熱用筐体13は半導体装置100の構成によっては、筐体ではなく、ヒートシンクまたはヒートパイプなどの放熱用機器を使用することもできる。しかし以降においては放熱器は放熱用筐体13であるものとして説明がなされる。
ネジ14は、プリント基板11を放熱用筐体13に接触するように固定する固定部材として用いられる。固定部材はプリント基板11と放熱用筐体13とを固定できればよいため、ネジ14に限らず、たとえばリベットなどの他の接続部材が代用されてもよい。また図1においてネジ14は、平面視において概ねプリント基板11の4つの角部に隣接する領域に配置されている。しかしネジ14の設置本数は4本に限らず、プリント基板11に放熱用筐体13を締結により固定することが可能である限り任意の本数とすることができる。ネジ14などの固定部材によりプリント基板11と放熱用筐体13とが固定されることにより、電子部品12で発生した熱をプリント基板11を介して放熱用筐体13まで伝導させ放熱用筐体13から半導体装置100の外部へ放熱させることができる。
図2〜図6は、図1の2つのネジ14と、電子部品12とを通るように切断された断面の態様の例を示している。このことはこれ以降の各実施の形態(各例)において示される断面図においても同様である。次に、図2〜図6を用いて、本実施の形態の半導体装置100の具体的な構造の例を詳細に説明する。
図2を参照して、本実施の形態の半導体装置100の第1例としての半導体装置101においては、プリント基板11が、一方の主表面11aと、その反対側の他方の主表面11bとを有している。そしてプリント基板11は、絶縁層11Cと、複数の導体層15とを含む構成を有している。
絶縁層11Cは、プリント基板11の本体をなす部材である。絶縁層11Cはたとえばガラス繊維とエポキシ樹脂とにより構成されているが、これに限定することなく、たとえばアラミド樹脂とエポキシ樹脂とにより構成されていてもよい。あるいは絶縁層11Cはセラミックス材料により形成されてもよい。
導体層15は、絶縁層11Cの主表面、すなわちプリント基板11の一方の主表面11aおよび他方の主表面11bに沿うように拡がっている。導体層15は、電子部品12側すなわちプリント基板11の上側から、放熱用筐体13側すなわちプリント基板11の下側まで、絶縁層11Cの一部を介して複数積層されている。すなわち複数積層される導体層15のうち一の導体層15とこれに隣接する他の導体層15との間には、絶縁層11Cの一部が挟まれている。半導体装置101においては導体層15は、図の上下方向に関して互いに間隔をあけて4層、積層されている。
またこの4層積層される導体層15は、図の左右方向に関して、電子部品12と電気的に接続された複数すなわち4層の第1の導体層15Aと、第1の導体層15Aとの間に互いに間隔をあけ、電気的に絶縁されて(たとえば絶縁層11Cを介して)配置されている複数すなわち4層の第2の導体層15Bとを有している。第1の導体層15Aおよび第2の導体層15Bは、いずれもプリント基板11の一方の主表面11aおよび他方の主表面11bに沿うように拡がっている。電子部品12はプリント基板11の平面視における比較的中央の部分に接合されるため、電子部品12と電気的に接続される第1の導体層15Aは、プリント基板11の比較的中央の部分に配置されている。これに対して、第1の導体層15Aとの間に絶縁層11Cを介して配置されている第2の導体層15Bは、第1の導体層15Aとは電気的に接続されておらず電気的に分離された態様であり、プリント基板11の比較的外側の部分に配置されている。
第1の導体層15Aは、図の下層(放熱用筐体13側)から上層(電子部品12側)へ向けて、第1の導体層15A1、第1の導体層15A2、第1の導体層15A3、第1の導体層15A4の順に積層されている。また第2の導体層15Bは、図の下層(放熱用筐体13側)から上層(電子部品12側)へ向けて、第2の導体層15B1、第2の導体層15B2、第2の導体層15B3、第2の導体層15B4の順に積層されている。第1の導体層15A1と第2の導体層15B1とは同一の層として形成されている。同様に、第1の導体層15A2および第2の導体層15B2、第1の導体層15A3および第2の導体層15B3、ならびに第1の導体層15A4および第2の導体層15B4のそれぞれは、いずれも同一の層として形成されている。このように同一の層として並ぶ第1の導体層15Aと第2の導体層15Bとは、一方の主表面11aに沿う図の左右方向に関して互いに間隔をあけて配置されている。同一の層であるたとえば第1の導体層15A2(15A3)と第2の導体層15B2(15B3)との間隔は、半導体装置101の扱う電圧によって変化するが、たとえば0.4mm以上である。
図2においては、第1の導体層15A1および第2の導体層15B1は、プリント基板11の他方の主表面11b上に形成されている。第1の導体層15A2,15A3および第2の導体層15B2,15B3は、互いに他の導体層との間隔を保ちつつ、プリント基板11の内部に、絶縁層11Cに埋もれるように配置されている。第1の導体層15A4および第2の導体層15B4は、プリント基板11の一方の主表面11a上に形成されている。
図2に示すように、互いに積層された第1の導体層15Aは、プリント基板11内部の互いに隣接する1対の第1の導体層15A同士の距離より、一方または他方の主表面11a,11b上の第1の導体層15Aとそれに隣接する第1の導体層15Aとの距離の方が小さくなるように配置される。具体的には、第1の導体層15A1と第1の導体層15A2との図2の上下方向の距離、および第1の導体層15A3と第1の導体層15A4との図2の上下方向の距離は、第1の導体層15A2と第1の導体層15A3との図2の上下方向の距離よりも小さい。以上は第1の導体層15Aと同一の層として形成される第2の導体層15Bについても同様である。すなわち第2の導体層15B1と第2の導体層15B2との図2の上下方向の距離、および第2の導体層15B3と第2の導体層15B4との図2の上下方向の距離は、第2の導体層15B2と第2の導体層15B3との図2の上下方向の距離よりも小さい。
より具体的には、第1の導体層15A1と第1の導体層15A2との図2の上下方向の距離、および第1の導体層15A3と第1の導体層15A4との図2の上下方向の距離はたとえば0.2mm程度であり、概ね0.1mm以上0.3mm以下である。また第1の導体層15A2と第1の導体層15A3との図2の上下方向の距離はたとえば1.0mm程度であり、概ね0.7mm以上1.3mm以下である。上記距離については第2の導体層15Bについても第1の導体層15Aと同様のことがいえる。
第1の導体層15A1,15A4は、平面視における電子部品12と重なる領域からその外側の領域まで、一方の主表面11aおよび他方の主表面11bの広い範囲に拡がるように形成されている。このため第1の導体層15A1,15A4と互いに間隔をあけて配置される第2の導体層15B1,15B4は、プリント基板11の平面視における最外縁およびそれに隣接する比較的狭い領域のみに拡がるように形成されている。これに対し、第1の導体層15A2,15A3は、少なくとも図2においては、電子部品12の真下の一部の領域すなわち平面視における電子部品12の比較的中央部のみに拡がるように形成されている。このため図2の第2の導体層15B2,15B3は、第2の導体層15B1,15B4に比べて平面視における内側の領域まで拡がるように配置されており、電子部品12の一部と平面的に重なるように配置されている。
その結果、第1の導体層15Aと第2の導体層15Bとは少なくとも一部において平面的に互いに重なっていてもよい。具体的には、図2においては、たとえば第1の導体層15A4と、その下側に隣接する第2の導体層15B3とは、部分的に互いに対向するように重なっており、両者の間に絶縁層11Cが介在している。すなわち第1の導体層15A4と第2の導体層15B3とは、図2の上下方向に関して互いに対向している。同様に、たとえば第1の導体層15A1と、その上側に隣接する第2の導体層15B2とは、図2の上下方向に関して部分的に互いに対向するように重なっており、両者の間に絶縁層11Cが介在している。図2に示すように、複数の第1の導体層15Aと複数の第2の導体層15Bとは、電子部品12の周囲すなわち電子部品12と図の左右方向に関して隣接する領域において、平面的に互いに重なる領域を備えることが好ましい。
複数の導体層15すなわち第1の導体層15Aおよび第2の導体層15Bは、特にたとえば絶縁層11Cが樹脂材料からなる場合には、たとえば銅の薄膜により形成されることが好ましい。銅の薄膜からなる導体層15は一般的に十数μm以上数百μm程度の厚みを有する。導体層15を厚くするほど、一方の主表面11aなどに沿う水平方向へ熱を広範囲に広げることが可能となり、半導体装置101としての放熱性能がより向上する。
但し当該導体層15は、特にたとえば絶縁層11Cがセラミックス材料からなる場合には、銅または銀を主成分とする合金の薄膜として形成されてもよい。ただし絶縁層11Cが樹脂材料からなる場合においても、導体層15が銅または銀を主成分とする合金の薄膜により形成されてもよい。すなわち導体層15(第1の導体層15Aおよび第2の導体層15B)は、銅の薄膜、銅を主成分とする合金の薄膜、銀を主成分とする合金の薄膜からなる群から選択されるいずれかである。
プリント基板11には、複数の配線として、上記の導体層15のほか、貫通部16が形成されている。貫通部16は、プリント基板11の一方の主表面11aから他方の主表面11bに達するように、一方の主表面11aおよび他方の主表面11bに交差(たとえば直交)するように延びている。
貫通部16は、第1の貫通部16Aと、第2の貫通部16Bとを有している。第1の貫通部16Aは、第1の導体層15A1,15A2,15A3,15A4に交差するように、互いに間隔をあけて複数(図2においては5本)形成されている。第1の貫通部16Aは、第1の導体層15A1から第1の導体層15A4に達するようにプリント基板11に形成されたビアホールの内部を充填するように形成された導体部分であり、複数の第1の導体層15A1,15A2,15A3,15A4のそれぞれと互いに電気的に接続されている。基本的に第1の貫通部16Aは、銅または銅を主成分とする合金により形成されている。これにより、第1の貫通部16Aと、複数の第1の導体層15A1,15A2,15A3,15A4のそれぞれとは互いに電気的および機械的に接続されており、これらがあたかも1つのまとまった第1部材を構成するように配置されている。
互いに隣り合う第1の貫通部16A同士の間隔は、たとえば0.5mm以上1.0mm以下である。また第1の貫通部16Aは平面視においてたとえば円形であり、その円形の直径すなわち図2における第1の貫通部16Aの左右方向の幅はたとえば0.2mm以上0.3mm以下であることが好ましい。
また第2の貫通部16Bは、平面視における第1の貫通部16Aの外側に配置されている。具体的には、プリント基板11には、平面視における電子部品12よりも外側の領域において、一方の主表面11aから他方の主表面11bに達するスルーホール17が形成されている。このスルーホール17の内壁部に、筒状の導体膜としての第2の貫通部16Bが形成されている。スルーホール17は、第2の導体層15B1,15B2,15B3,15B4に交差するように接続されているため、スルーホール17内の第2の貫通部16Bは、第2の導体層15B1,15B2,15B3,15B4に交差するように接続されている。このため第2の貫通部16Bは、第2の導体層15B1,15B2,15B3,15B4と互いに電気的に接続されている。基本的に第2の貫通部16Bは、銅または銅を主成分とする合金により形成されている。これにより、第2の貫通部16Bと、複数の第2の導体層15B1,15B2,15B3,15B4のそれぞれとは互いに電気的および機械的に接続されており、これらがあたかも1つのまとまった第2部材を構成するように配置されている。
スルーホール17の内部には、固定部材としてのネジ14が配置されている。ネジ14は一方の主表面11aから他方の主表面11bに達しプリント基板11を貫通し、さらにその下側の放熱用筐体13の内部まで達するように、図2の上下方向に延びている。したがってネジ14は第2の貫通部16Bの内部に設けられている。これによりネジ14は、プリント基板11を放熱用筐体13に固定している。ネジ14の頭の部分は第2の導体層15B4と接触するように配置されており、かつネジ14の延びる部分の表面は第2の貫通部16Bと接触するように配置されていてもよい。
その他、半導体装置101には以下の各部材が配置されている。電子部品12には電極22が形成されている。電極22は、電子部品12の内部と外部との通電、および放熱を可能とすべく配置されている。電極22は電子部品12の下側の面の一部に埋もれるように配置されているが、このような態様に限られない。
電子部品12の電極22と、プリント基板11の第1の導体層15A4との間には接合部材23が配置されており、この接合部材23により、電極22と第1の導体層15A4とが互いに接合されている。接合部材23が電極22と第1の導体層15A4とを互いに接合することにより、電子部品12とプリント基板11とが互いに接合固定されている。
接合部材23は、はんだなどの、電気抵抗が小さくかつ熱伝導率が高い材料が用いられることが好ましい。このようにすれば接合部材23は、電子部品12の電極22とプリント基板11の第1の導体層15Aとを接合するように固定することで、電子部品12とプリント基板11とを接合固定することができる。
プリント基板11の一方の主表面11aの一部および図2に示されないが他方の主表面11bの一部には、レジスト層21が配置されている。具体的には、たとえば電子部品12の最外縁の外側に隣接する領域からその内側に隣接する領域にかけて、レジスト層21が電子部品12とプリント基板11との間に挟まれるように配置されている。レジスト層21は、はんだなどの接合部材23の平面視における外側の領域に配置されている。レジスト層21ははんだなどの接合部材23の濡れ広がりを抑制しており、かつ電子部品12の外側の領域における電子部品12と第1の導体層15A4との電気的絶縁を簡易的に確保している。
レジスト層21の素材は樹脂材料であるため、レジスト層21が電子部品12とプリント基板11との間の領域に挟まれれば、その部分において電子部品12からプリント基板11への熱伝導性が低下する。そのため、ネジ14と接触する領域およびそれに隣接する領域においては、一方の主表面11a上であってもレジスト層21は除去されていることが好ましい。
プリント基板11の他方の主表面11bと放熱用筐体13との間には、絶縁部材24が配置されている。具体的には、他方の主表面11b上に形成された第1の導体層15A1と放熱用筐体13との間に、絶縁部材24が配置されている。ただし図2においては、他方の主表面11b上には第1の導体層15A1を覆うように熱拡散板25が配置されている。このため絶縁部材24は、熱拡散板25と放熱用筐体13との間に配置されている。
絶縁部材24は、液体状の物質をたとえば放熱用筐体13の表面に薄く塗布することにより形成されたものであってもよいし、たとえばシート状の部材が熱拡散板25と放熱用筐体13との間に挟まれるように配置されたものであってもよい。絶縁部材24に用いられる材料は、半導体装置101に要求される性能により選定される。具体的な半導体装置101の性能の例としては、電子部品12に搭載される半導体チップと放熱用筐体13との間で2.5kV/min以上の絶縁性能を確保すること、または放熱用筐体13の温度が60℃でありの発熱量が20Wであれば熱抵抗が2.5K/W以下であること、が要求される。
熱拡散板25は、複数の第1の導体層15のうち最も他方の主表面11b側に配置される第1の導体層15A1上に、図示されないがたとえばはんだ等の接合部材を介して接合されていることが好ましい。熱拡散板25は、銅などの熱伝導率の高い材質で構成されることが好ましい。
電子部品12の駆動により電子部品12が発する熱は、その一部は電子部品12のパッケージの表面からその周囲の空気へ自然空冷される。しかし基本的に、電子部品12が発する熱はその下側、すなわちプリント基板11および放熱用筐体13の側へ伝わり、放熱用筐体13から半導体装置101の外部へ放熱される。そのための構造が図2に示されている。
このように第1の導体層15A1と放熱用筐体13との間には絶縁部材24と熱拡散板25とが挟まれる。このため、放熱用筐体13の一方の主表面13aすなわち図2の上側の主表面と、それと反対側の他方の主表面13b(図2の下側)との距離が、第1の導体層15Aの真下において、第2の導体層15Bの真下よりも短くなっている。言い換えれば一方の主表面13aは、第1の導体層15Aの真下において、第2の導体層15Bの真下よりも図2の下側に窪んでいる。
図3を参照して、本実施の形態の半導体装置100の第2例としての半導体装置102は、基本的に図2の第1例としての半導体装置101と同様の構成を有している。このため図3においては図2と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その態様が同じである限りその説明を繰り返さない。図3の半導体装置102は、第1の導体層15A2,15A3および第2の導体層15B2,15B3の平面視における面積において、図2の半導体装置101と異なっている。
具体的には、図3の半導体装置102においては、第1の導体層15A2,15A3は、平面視における電子部品12の真下の領域のほぼ全体、より詳しくはたとえば電極22と重なる領域の全体に重なるように拡がっており、その分だけ第1の貫通部16Aの本数が図2よりも多く(図3においては7本)形成されている。またこれに伴い第2の導体層15B2,15B3は、半導体装置101に比べてその広がる範囲が狭くなっている。なお第1の導体層15A1,15A4および第2の導体層15B1,15B4については、基本的に半導体装置101と同様である。
図4を参照して、本実施の形態の半導体装置100の第3例としての半導体装置103は、基本的に半導体装置101,102と同様の構成を有している。このため図4においては図2および図3と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その態様が同じである限りその説明を繰り返さない。図4の半導体装置103は、第1の導体層15A2,15A3および第2の導体層15B2,15B3の平面視における面積において、半導体装置101,102と異なっている。
具体的には、図4の半導体装置103においては、第1の導体層15A2,15A3は、平面視における電子部品12の真下の領域からその外側の領域まで拡がるように、図3の半導体装置102よりもさらに広い範囲に形成されている。より詳しくは、図4における第1の導体層15A2,15A3は、たとえば第1の導体層15A1,15A4と重なる領域の全体に重なるように拡がっており、その分だけ第1の貫通部16Aの本数が図3よりも多く(図4においては15本)形成されている。またこれに伴い第2の導体層15B2,15B3は、半導体装置101,102に比べてその広がる範囲が狭くなっている。なお第1の導体層15A1,15A4および第2の導体層15B1,15B4については、基本的に半導体装置101と同様である。
半導体装置103においては、第1の導体層15Aの占める面積が非常に広く、第2の導体層15Bの占める面積が狭いため、第1の導体層15Aと第2の導体層15Bとが平面視において互いに重畳するように対向する領域を含まない。しかし半導体装置103においても少なくとも、第1の導体層15Aと第2の導体層15Bとは、絶縁層11Cを介して互いにたとえば0.4mm以上の間隔をあけて配置されている。このため第1の貫通部16Aと第1の導体層15Aとが互いに接続されることによる1つのまとまった第1部材と、第2の貫通部16Bと第2の導体層15Bとが互いに接続されることによる1つのまとまった第2部材とは、互いに電気的に絶縁されている。
図5を参照して、本実施の形態の半導体装置100の第4例としての半導体装置104は、基本的に図2の第1例としての半導体装置101と同様の構成を有している。このため図5においては図2と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その態様が同じである限りその説明を繰り返さない。図5の半導体装置104は、第1の導体層15Aおよび第2の導体層15Bの層数において、図2の半導体装置101と異なっている。
具体的には、図5の半導体装置104においては、第1の導体層15Aは第1の導体層15A1,15A2,15A3の3層であり、第2の導体層15Bは第2の導体層15B1,15B2,15B3の3層となっている。この点において半導体装置104は、第1の導体層15Aが第1の導体層15A1〜15A4の4層であり、第2の導体層15Bが第2の導体層15B1〜15B4の4層である半導体装置101〜103と構成上異なっている。
図5の第1の導体層15A3は図2〜図4の第1の導体層15A4に相当し、図5の第2の導体層15B3は図2〜図4の第2の導体層15B4に相当する。そのため図5の第1の導体層15A3は図2〜図4の第1の導体層15A4と同様に一方の主表面11a上に形成され、形成される領域および平面視における面積も同様である。また図5の第2の導体層15B3は図2〜図4の第2の導体層15B4と同様に一方の主表面11a上に形成され、形成される領域および平面視における面積も同様である。なお第1の導体層15A2は図5の上下方向に関する第1の導体層15A1と第1の導体層15A3とのほぼ中央部に配置され、第2の導体層15B2は図5の上下方向に関する第2の導体層15B1と第2の導体層15B3とのほぼ中央部に配置される。
このように、第1の導体層15Aおよび第2の導体層15Bは、互いに間隔をあけて3層以上の任意の層数が積層された構成とすることができる。すなわち第1の導体層15Aおよび第2の導体層15Bは3層および4層に限らず、5層以上であってもよい。半導体装置104においても、第1の導体層15A2および第2の導体層15B2の平面積が、図3および図4におけるそれらと同様であってもよい。
図6を参照して、本実施の形態の半導体装置100の第5例としての半導体装置105は、基本的に図2の第1例としての半導体装置101と同様の構成を有している。このため図6においては図2と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その態様が同じである限りその説明を繰り返さない。図6の半導体装置105は、プリント基板11とネジ14との間の領域と、プリント基板11と放熱用筐体13との間の領域との少なくともいずれかに第1の伝熱用部材31をさらに備えている点において、図2の半導体装置101と異なっている。
具体的には、図6の半導体装置105においては、プリント基板11の第2の導体層15B4とネジ14の頭との間に挟まれた領域、およびプリント基板11の第2の導体層15B1とその真下の放熱用筐体13との間に挟まれた領域の双方に、第1の伝熱用部材31が配置されている。ただし第1の伝熱用部材31はこれらのうちいずれか一方の領域のみに配置されてもよい。第1の伝熱用部材31としては絶縁性の伝熱用グリスなどが用いられることが好ましい。
なお図6の半導体装置105は図2の半導体装置101に第1の伝熱用部材31が適用された例が示されるが、図3〜図5の半導体装置102〜104に第1の伝熱用部材31が適用されてもよい。
次に、図7を用いて半導体装置100の伝熱態様を説明しながら、本実施の形態の作用効果について説明する。
図7は、たとえば図3に示す半導体装置102の、電子部品12およびプリント基板11の一部の領域を切り取り、その領域における電子部品12からの伝熱態様を示している。図7を参照して、上記の第1の導体層15Aおよび第1の貫通部16Aからなる銅または銅を主成分とする合金のまとまった部分である第1部材においては、図中実線の矢印で示す第1の放熱経路HAを伝って、電子部品12から放熱用筐体13へ伝熱される。具体的には、電子部品12で発生した熱は、電極22および接合部材23を伝ってその下方のプリント基板11の第1の貫通部16Aを電子部品12側から放熱用筐体13側へ伝わる。その後当該熱は、熱拡散板25および絶縁部材24を経由して放熱用筐体13に達し、そこから半導体装置の外部へ放熱される。なお第1の放熱経路HAとしては、実線の矢印が図示されないが第1の導体層15A1,15A2,15A3,15A4に沿って水平方向に伝わる経路も存在する。
このように、まず発熱する電子部品12と電気的に接続された複数の第1の導体層15A、および第1の導体層15Aと接続されプリント基板11を上下方向に延びる第1の貫通部16Aとの第1部材による第1の放熱経路HAが形成されている。これにより本実施の形態においては、たとえばこのような電子部品12と電気的に接続されずそこから平面的に離れた領域のみに放熱経路を有する場合に比べて、電子部品12を中心としてそこから高い熱伝導率で伝熱可能な第1部材の第1の放熱経路HAにより、広範囲にわたって放熱用筐体13に放熱することができる。したがって電子部品12と放熱用筐体13との間の領域の熱抵抗を低減することができ、電子部品12から放熱用筐体13への放熱効率を高めることができる。
なお図2の半導体装置101よりも図3の半導体装置102の方が、さらに図3の半導体装置102よりも図4の半導体装置103の方が、第1部材の第1の放熱経路HAが広く形成されている。このため半導体装置101より半導体装置102の方が、半導体装置102より半導体装置103の方が、放熱効果はいっそう高くなる。
ただし、電子部品12の真下にこれと電気的に繋がる第1の放熱経路HAのみを有する場合、その周辺部からの放熱が弱くなる可能性がある。そこで本実施の形態においては、複数の第1の導体層15Aと互いに間隔をあけて配置される複数の第2の導体層15B、および第2の導体層15Bと接続されプリント基板11を上下方向に延びる第2の貫通部16Bとの第2部材による第2の放熱経路HBが形成されている。第2の放熱経路HBは図7中において点線の矢印で示されており、主に第2の導体層15B2,15B3に沿って水平方向に伝わる経路と、第2の貫通部16Bとにより構成されている。第2の放熱経路HBを第1の放熱経路HAとたとえば対向させるように配置することで、特に第1の放熱経路HAの平面視における外側の領域における熱抵抗を低減させ、この領域の放熱効率を高めることができる。したがって放熱用筐体13側への放熱効率をいっそう高めることができる。
このように、電子部品12の真下の領域と、それよりも平面視における外側の領域との双方に放熱経路が設けられている。このため平面視におけるいっそう広い範囲において電子部品12から放熱用筐体13への放熱が可能となるため、半導体装置100を小型化させることができる。
なお第1の放熱経路HAをプリント基板11の平面視における全体に形成せず、第2の放熱経路HBを第1の放熱経路HAと電気的に接続しないように第1の放熱経路HAから電気的に絶縁させる理由は、ネジ14および第2の貫通部16Bを介して電子部品12と放熱用筐体13とが互いに電気的に短絡することを抑制するためである。半導体装置100では安全上、一般的には電子部品12と放熱用筐体13とは電気的に絶縁されることが要求される。このためプリント基板11の他方の主表面11bと放熱用筐体13との間には絶縁部材24が配置され、両者間の電気的な絶縁性が確保されている。
第1の放熱経路HAと第2の放熱経路HBとの間に絶縁層11Cを挟むことにより、これを挟まず第1の放熱経路HAと第2の放熱経路HBとが直接電気的に接続される場合に比べて第2の放熱経路HBへの放熱性はやや劣ることになる。しかし図7に示す絶縁層11Cの厚みH1および厚みH3を厚みH2よりも薄くし、たとえば厚みH1,H3を0.2mm程度(0.1mm以上0.3mm以下)とすることにより、第1の放熱経路HAから第2の放熱経路HBに至る絶縁層11Cの部分の熱抵抗を小さくすることができ、第1の放熱経路HAから第2の放熱経路HBまでの絶縁層11Cの領域での伝熱効率の低下を抑制することができる。したがって図中左右方向の矢印で示すような第1の導体層15Aおよび第2の導体層15Bを放熱経路として、第1の導体層15Aなどの第1部材と第2の導体層15Bなどの第2部材との間の伝熱効率を高めることができる。
ただし、すベての領域の絶縁層11Cを薄くすると、標準的なプリント基板11の材料を使用することができなくなることにより製作費の増加を招く可能性がある。またプリント基板11全体の厚みが薄くなればその強度が弱くなることが懸念される。そこで対策として、熱伝導をさほど行なう必要がなく熱抵抗が大きくなっても問題がない、厚みH2で示す領域を厚みH1,H3よりも厚く(0.7mm以上1.3mm以下)することが好ましい。このようにすれば、プリント基板11全体の厚みが極度に薄くなることによるその全体の強度の低下を抑制することができる。またプリント基板11を構成する絶縁層11Cとして特殊な材料を用いずに標準的な材料を用いることができるため、その制作費の増加を抑制することができる。
第1の放熱経路HAを構成する第1部材、および第2の放熱経路HBを構成する第2部材が熱抵抗の小さい物質である銅または銅を主成分とする合金の薄膜であることから、放熱経路における放熱効率をより高めることができる。また第1の導体層15Aおよび第2の導体層15Bが互いに間隔をあけて3層以上積層されることにより、貫通部16と導体層15との双方による2方向の放熱が可能となるため、放熱効率をいっそう高めることができる。
その他、上記半導体装置105のように第1の伝熱用部材31を挟むことにより、第2の導体層15Bおよび第2の貫通部16Bと放熱用筐体13との間の接触熱抵抗を低減することができる。
さらに、第1の導体層15A1に熱拡散板25が接合されることにより、さらに熱を広範囲に拡げることが可能となり、放熱性をいっそう高めることができる。
なお図7においては一例として半導体装置102の伝熱機構を示しているが、上記の他の半導体装置101,103,104,105においても基本的に図7と同様に伝熱されるため詳細な説明を省略する。
次に図8を用いて、本実施の形態の構成を応用した半導体装置の構成および作用効果について説明する。
図8を参照して、本実施の形態の変形例(第6例)としての半導体装置106は、基本的に図2の第1例としての半導体装置101と同様の構成を有している。このため図3においては図2と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その態様が同じである限りその説明を繰り返さない。図8の半導体装置106は、プリント基板11の一方の主表面11a上に複数(図8においては2つ)の電子部品12が接合され、その他方の主表面11b上にはそれらの電子部品12に共通の放熱用筐体13が固定されている。電子部品12が配置された領域ごとに単一の半導体装置101が形成されており、この半導体装置101が複数並ぶことにより、半導体装置106が構成されている。半導体装置106においては、互いに隣り合う1対の半導体装置101の間の領域ごとにスルーホール17が形成されており、そのスルーホール17内にネジ14が設けられている。このネジ14に隣接する領域に配置される、第2部材からなる第2の放熱経路HCは、このネジ14に隣り合う1対の半導体装置101の双方により共有されるように配置されている。
このように複数の半導体装置101が同一の放熱経路を共有すれば、半導体装置106をより小型化させることができる。またこのようにすれば、各半導体装置101ごとに放熱経路が配置される構成となるため、放熱効率をいっそう高めることができる。
なお図8においては一例として半導体装置101が2つ組み合わせられた例が示されている。ただしこれに限らず、たとえば半導体装置102〜105が2つ以上の複数組み合わせられた半導体装置106が用いられてもよいし、半導体装置101〜105が適宜組み合わせられた構成の半導体装置106が形成されてもよい。
実施の形態2.
以下、図9〜図12を用いて、本実施の形態の半導体装置100の具体的な構造の例を詳細に説明する。
図9を参照して、本実施の形態の半導体装置100の第1例としての半導体装置201は、基本的に図2の半導体装置101と同様の構成を有している。このため図9においては図2と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その態様が同じである限りその説明を繰り返さない。図9の半導体装置201は、電子部品12と、複数の第2の導体層15Bのうち最もプリント基板11の一方の主表面11a側に配置される第2の導体層15B4とに固定された、第1の放熱用板金としての放熱板金26をさらに備える点において、図2の半導体装置101と異なっている。
放熱板金26は銅などの熱伝導率の高い金属材料により構成された平板状の部材である。図9においては、互いに上下方向の位置が大きく異なる電子部品12を構成するパッケージの最上面と、第2の導体層15B4の最上面との双方に密着して固定させるために、放熱板金26は第2の導体層15B4の端部、および電子部品12の真上の外側の領域において屈曲されており、帽子状の断面形状を有する態様となっている。図9に示される放熱板金26の屈曲の角度は、放熱板金26が電子部品12と第2の導体層15B4との双方の最上面に密着して固定することが可能な任意の角度とすることができる。また複数の放熱板金26を組み合わせた1つの部材とすることにより、その1つの部材が電子部品12と第2の導体層15B4との双方の最上面に固定することが可能な構成が用いられてもよい。
たとえば実施の形態1の各例においては、電子部品12が発する熱は、プリント基板11および放熱用筐体13の側へ伝わる熱以外は、電子部品12のパッケージの表面からその周囲の空気へ自然空冷される。しかし本実施の形態においては、電子部品12の最上面、および第2の導体層15B4の最上面に接触された放熱板金26が追加配置されている。そして放熱板金26は、第2の導体層15B4の真上にてネジ14によりプリント基板11に固定されている。これにより、電子部品12の発熱の一部を放熱板金26を介して第2の導体層15B4側へ熱伝導させ、第2の導体層15B4から上記第2部材の第2の放熱経路により放熱用筐体13まで伝熱させることができる。このように放熱板金26により電子部品12から第2の導体層15B4への放熱経路ができるため、放熱効率をいっそう高めることができる。
図10を参照して、本実施の形態の半導体装置100の第2例としての半導体装置202は、基本的に図9の半導体装置201と同様の構成を有している。このため図10においては図9と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その態様が同じである限りその説明を繰り返さない。図10の半導体装置202は、電子部品12と第2の導体層15B4との少なくとも一方は、第2の伝熱用部材32を介して、放熱板金26と固定されている点において、図9の半導体装置201と異なっている。
すなわち図10の半導体装置202は、放熱板金26と電子部品12の最上面との間の領域と、放熱板金26とプリント基板11の第2の導体層15B4との間の領域とに、第2の伝熱用部材32が配置されている点において、図9の半導体装置201と異なっている。図10においては放熱板金26と電子部品12の最上面との間の領域と、放熱板金26とプリント基板11の第2の導体層15B4との間の領域との双方に第2の伝熱用部材32が配置されている。第2の伝熱用部材32は、放熱板金26と電子部品12との双方に密着して固定されている。また第2の伝熱用部材32は、放熱板金26と第2の導体層15B4との双方に密着して固定されている。しかし第2の伝熱用部材32は、電子部品12に固定する領域と第2の導体層15B4に固定する領域とのうちいずれかのみに配置されていてもよい。
図9においては電子部品12の最上面部分が樹脂製のパッケージにより構成され、電子部品12に搭載される電子部品と、金属製の放熱板金26との電気的絶縁は確保されている。しかしたとえば電子部品12の最上面部分に電極が配置される場合には、電子部品12と放熱板金26との電気的絶縁を確保する観点から、図10に示すように、放熱板金26と電子部品12との間の領域および/または放熱板金26とプリント基板11の第2の導体層15B4との間の領域に、第2の伝熱用部材32が挟まれるように配置される。
第2の伝熱用部材32としては、たとえば放熱用のシリコーン樹脂が塗布されシート状とされたものが用いられることが好ましい。これにより、放熱板金26と電子部品12との間の領域および/または放熱板金26とプリント基板11の第2の導体層15B4との間の領域の電気的絶縁性と低い接触熱抵抗との双方を実現することができる。
あるいは図示されないが、たとえば放熱板金26の電子部品12に対向する側の表面上の全体に設置された、グラファイトシートなどの平面方向に高い熱伝導率を有する部材を第2の伝熱用部材32として用いることもできる。この場合、電子部品12の発熱は、グラファイトシートを介して放熱板金26に伝わる経路と、グラファイトシートを伝わり放熱板金26とプリント基板11の第2の導体層15B4との間の領域に達する経路との2つの経路により、第2の導体層15B4まで伝わることができる。このため電子部品12と第2の導体層15B4との間の領域の熱抵抗をいっそう低減することができ、放熱板金26による熱伝導の効果をより高めることができる。
図11を参照して、本実施の形態の半導体装置100の第3例としての半導体装置203は、基本的に図9の半導体装置201と同様の構成を有している。このため図11においては図9と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その態様が同じである限りその説明を繰り返さない。図11の半導体装置203は、電子部品12の真上の放熱板金26の、電子部品12と反対側(図の上側)の表面上に、放熱用のフィン27が設置されている点において、図9の半導体装置201と異なっている。このようにすれば、放熱板金26による電子部品12から第2の導体層15B4への放熱経路に加え、電子部品12から放熱板金26を介しフィン27から自然空冷する経路が設けられることになる。このため図9の半導体装置201に比べてさらに放熱効果を高めることができる。
図12を参照して、本実施の形態の半導体装置100の第4例としての半導体装置204は、基本的に図8の半導体装置106と同様の構成を有している。このため図11においては図9と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その態様が同じである限りその説明を繰り返さない。図12の半導体装置204は、半導体装置106と同様に複数(図12においては3つ)並ぶ半導体装置101のそれぞれの電子部品12、および各半導体装置101の間に配置されるネジ14に接触する第2の導体層15B4のそれぞれを跨ぐように、単一の大きな放熱板金26が配置されている点において、半導体装置106と異なっている。この放熱板金26は、図9〜図11と同様に、電子部品12と、複数の第2の導体層15Bのうち最もプリント基板11の一方の主表面11a側に配置される第2の導体層15B4とに固定されている。ただし図12のような単一の大きな放熱板金26を用いる代わりに、複数の半導体装置101ごとに別個の放熱板金26が設置されてもよい。
複数の電子部品12を備えた半導体装置204においては、半導体装置106と同様に、隣同士の複数の半導体装置101が同一の放熱経路を共有するため、半導体装置204をより小型化させることができる。なお図12の構成よりも放熱板金26を厚くしたり、放熱板金26と第2の導体層15B4との固定する面積を大きくしたりすることにより、放熱板金26による熱抵抗をさらに低減させることができる。
なお図12の半導体装置204に、図10の第2の伝熱用部材32および/または図11のフィン27が追加されてもよい。また本実施の形態においても図3〜図5に示すような導体層15の構成が採用されてもよい。
次に、一部上記と重複するが、本実施の形態の作用効果について説明する。本実施の形態は、実施の形態1の作用効果に加えて、以下の作用効果を奏する。
本実施の形態においては、いずれの例においても、放熱板金26が固定されることにより、電子部品12が発する熱の経路として、実施の形態1の各構成に加え、放熱板金26を伝わる経路を追加することができる。このため電子部品12から第2の導体層15B4への放熱経路の存在により、電子部品12と放熱用筐体13との間の熱抵抗を低減し、半導体装置の放熱性能を向上することができる。
実施の形態3.
以下、図13〜図14を用いて、本実施の形態の半導体装置100の具体的な構造の例を詳細に説明する。
図13を参照して、本実施の形態の半導体装置100の第1例としての半導体装置301は、基本的に図9の半導体装置201と同様の構成を有している。このため図9においては図2と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その態様が同じである限りその説明を繰り返さない。図13の半導体装置301は、電子部品12に固定された平板状の第2の放熱用板金としての放熱板金28と、複数の第2の導体層15Bのうち最もプリント基板11の一方の主表面11a側に配置される第2の導体層15B4と放熱板金28との間に配置されたスペーサ29とをさらに備える点において、図9の半導体装置201と異なっている。
ここで放熱板金28が平板状であるとは、本実施の形態の放熱板金28は、放熱板金26のように、電子部品12の最上面と第2の導体層15B4の最上面との図13の上下方向の段差を考慮した屈曲がされておらず、その全体において表面がほぼ平坦であることを意味する。放熱板金28は電子部品12の最上面上から、その図13の左右側の第2の導体層15B4の最上面上まで平坦に拡がっている。
本実施の形態においては実施の形態2のように放熱板金28が屈曲されていないため、第2の導体層15B4の真上において、放熱板金28と第2の導体層15B4との間に隙間が生じる。この隙間を埋める部材が、スペーサ29である。スペーサ29が配置されることにより、放熱板金28は、スペーサ29と電子部品12との最上面上に、両者を橋渡しするように載置される。
スペーサ29は、たとえば円柱状または直方体状の部材であり、熱伝導率が高い金属材料により構成されることが好ましい。またスペーサ29は、ネジ14により、第2の導体層15B4と放熱板金28との間の領域に固定されていてもよい。この場合、ネジ14はスペーサ29を貫通するため、スペーサ29の平面視における中央部には貫通孔が形成されていることになる。
図14を参照して、本実施の形態の半導体装置100の第2例としての半導体装置302は、基本的に図13の半導体装置301と同様の構成を有している。このため図14においては図13と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その態様が同じである限りその説明を繰り返さない。図14の半導体装置302は、放熱板金28に板バネ33が、たとえばネジ14により固定されている点において、図13の半導体装置301と異なっている。この板バネ33は放熱板金28の上方から電子部品12に対し図の下方に押圧する。
なお図13および図14においてはいずれも単一の半導体装置301,302の領域のみを示しているが、本実施の形態においても実施の形態1(図8)および実施の形態2(図12)と同様に、複数の電子部品12を有しそれらの間で第2の放熱経路を共有する構成が採用されてもよい。また本実施の形態においても図3〜図5に示すような導体層15の構成や、図10〜図11に示すようなフィン27および第2の伝熱用部材32が採用されてもよい。
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。本実施の形態は、実施の形態1の作用効果に加えて、以下の作用効果を奏する。
本実施の形態においては、放熱板金28が平板状であることから、これを実施の形態2の放熱板金26のように屈曲するための曲げ加工を行なう必要がなくなるため、加工コストを低減させることができる。平坦な放熱板金28とその真下の第2の導体層15B4との間に距離が生じることにより、放熱板金28と第2の導体層15B4との間の熱抵抗が実施の形態2よりも大きくなる懸念がある。しかし放熱板金28と第2の導体層15B4との間に挟まれるスペーサ29の、図13の上方から平面視した断面積を大きくすることにより、放熱板金28およびスペーサ29を合わせた両部材の熱抵抗を、実施の形態2の放熱板金26の熱抵抗以下にすることもできる。
また平板状の放熱板金28を用いた場合、プリント基板11は、ネジ14により放熱用筐体13に固定されるだけでなく、電子部品12よりも図13の上方から放熱板金28により下方に向けて押圧されることにより、放熱用筐体13に固定される。このため、プリント基板11を放熱用筐体13に取り付ける際に、絶縁部材24の部分の厚みによりプリント基板11が図の上方に反るような変形およびその変形に伴う破損の発生を抑制することができる。さらにこの放熱板金28が電子部品12を下方に押圧することにより、プリント基板11と放熱用筐体13との間に配置される絶縁部材24がより薄くなるように押しつぶすことができる。これにより、プリント基板11と放熱用筐体13との間の絶縁部材24を介した熱抵抗を低減することができる。
また図14に示すように設置された板バネ33が、放熱板金28の上方から電子部品12に対し図の下方に押圧することにより、電子部品12の真下のプリント基板11に加わる下方への押圧力がより大きくなる。このため、上記のプリント基板11の変形および破損をより確実に抑制することができ、かつプリント基板11と放熱用筐体13との間の絶縁部材24を介した熱抵抗をさらに低減することができる。
なお電子部品12を下方に押さえる力は、スペーサ29の図13の上下方向の寸法を小さくすれば(すなわち高さを低くすれば)大きくなり、スペーサ29の図13の上下方向の寸法を大きくすれば(すなわち高さを高くすれば)小さくなる。このことを利用して、放熱板金28が電子部品12に与える押圧力の大きさを調整することができる。
実施の形態4.
以下、図15〜図16を用いて、本実施の形態の半導体装置100の具体的な構造の例を詳細に説明する。
図15は本実施の形態の半導体装置100の例としての半導体装置401の、電子部品12およびプリント基板11の一部の領域を切り取り、その領域における電子部品12からの伝熱態様を示している。図15を参照して、本実施の形態の半導体装置401は、基本的に図2の半導体装置101と同様の構成を有している。このため図15においては図2と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その態様が同じである限りその説明を繰り返さない。図15の半導体装置401は、第1の導体層15Aの層数および、第1の導体層15Aから第2の導体層15Bへの伝熱機構において、図2の半導体装置101と異なっている。
具体的には、図15の半導体装置401においては、他の各例と同様の第1の導体層15Aは第1の導体層15A1,15A2,15A3,15A4に加え、第1の導体層15A5,15A6を有する合計6層である。なお第2の導体層15Bは他の各例と同様に第2の導体層15B1,15B2,15B3,15B4の4層である。このように本実施の形態においては、プリント基板が5層以上の第1の導体層15Aを含んでいる。この点において半導体装置401は、第1の導体層15Aおよび第2の導体層15Bがともに4層である半導体装置101と異なっている。
図15の第1の導体層15Aにおいて、第1の導体層15A1,15A2,15A3,15A4は上記の各例と同様にこの順に図の下層から上層へ向けて積層されている。これに対し、第1の導体層15A5および第1の導体層15A6は、第1の導体層15A2と第1の導体層15A3との間に挟まれており、第1の導体層15A5が第1の導体層15A6よりも下層に積層されている。ただしこのような態様に限らず、第1の導体層15A5,15A6はたとえば第1の導体層15A3と第1の導体層15A4との間に配置されてもよい。なおこれらの6つの第1の導体層15A1〜15A6は互いに間隔をあけて積層されている。
本実施の形態においても他の実施の形態と同様に、第1の導体層15Aのうち第1の導体層15A2,15A3間の距離より、一方または他方の主表面11a,11b上の第1の導体層15A1,15A4とそれに隣接する第1の導体層15A2,15A3との距離の方が小さくなるように配置される。ただし本実施の形態においては第1の導体層15A2と第1の導体層15A3との間に第1の導体層15A5および第1の導体層15A6が割り込むように挟まれる。このためプリント基板11内部の互いに隣接する1対のたとえば第1の導体層15A5と第1の導体層15A6との間の距離より、一方または他方の主表面11a,11b上の第1の導体層15A1,15A4とそれに隣接する第1の導体層15A2,15A3との距離の方が大きい。ただしこのような態様に限らず、本実施の形態においても第1の導体層15A5と第1の導体層15A6との間の距離より第1の導体層15A1と第1の導体層15A2との距離の方が小さくてもよい。
本実施の形態においても、第1の導体層15A1,15A2,15A3,15A4のそれぞれは、第2の導体層15B1,15B2,15B3,15B4のそれぞれと同一の層として形成される。
第1の導体層15A1,15A5,15A6,15A4は、平面視における電子部品12と重なる領域からその外側の領域まで、一方の主表面11aおよび他方の主表面11bの広い範囲に拡がるように形成されている。このため第1の導体層15A1,15A4と互いに間隔をあけて配置される第2の導体層15B1,15B4は、プリント基板11の平面視における最外縁およびそれに隣接する比較的狭い領域のみに拡がるように形成されている。これに対し、第1の導体層15A2,15A3は、少なくとも図2においては、電子部品12の真下の一部の領域すなわち平面視における電子部品12の比較的中央部のみに拡がるように形成されている。このため図2の第2の導体層15B2,15B3は、第2の導体層15B1,15B4に比べて平面視における内側の領域まで拡がるように配置されており、電子部品12の一部と平面的に重なるように配置されている。
その結果、図15においては、たとえば第1の導体層15A1,15A5,15A6,15A4と第2の導体層15B2,15B3とは、部分的に互いに対向するように重なっており、それらの間に絶縁層11Cが介在している。
本実施の形態においては、5層以上の第1の導体層15Aのうちプリント基板11の内部の(表面に露出しない)第1の導体層15Aと、当該内部の(表面に露出しない)第1の導体層15A以外の他の第1の導体層15Aとを接続する第1の伝熱ビア15AAを有している。すなわち図15に示すように、6つの第1の導体層15Aのうちプリント基板11の内部の(表面に露出しない)第1の導体層15A6の右端部と、それ以外の他の第1の導体層15Aのうちの1つである最上層の第1の導体層15A4の右端部とが、平面視での電子部品12の外側の領域において、図の上下方向に延びる第1の伝熱ビア15AAにより接続されている。また図15に示すように、6つの第1の導体層15Aのうちプリント基板11の内部の(表面に露出しない)第1の導体層15A5の右端部と、それ以外の他の第1の導体層15Aのうちの1つである最下層の第1の導体層15A1の右端部とが、平面視での電子部品12の外側の領域において、図の上下方向に延びる第1の伝熱ビア15AAにより接続されている。ただし第1の伝熱ビア15AAはこれらに限らず、プリント基板11の内部に互いに間隔をあけて配置される2つの第1の導体層15A同士が接続される態様であってもよい。
また本実施の形態においては、複数(ここでは4層)の第2の導体層15Bのうちプリント基板11の内部の(表面に露出しない)第2の導体層15Bと、当該内部の(表面に露出しない)第2の導体層15B以外の他の第2の導体層15Bとを接続する第2の伝熱ビア15BBを有している。すなわち図15に示すように、4つの第2の導体層15Bのうちプリント基板11の内部の(表面に露出しない)第2の導体層15B2の左端部と、それ以外の他の第2の導体層15Bのうちの1つである第2の導体層15B3の左端部とが、平面視にて電子部品12に重なる領域において、図の上下方向に延びる第2の伝熱ビア15BBにより接続されている。ただし第2の伝熱ビア15BBはこれらに限らず、たとえばプリント基板11の一方または他方の主表面に形成される第2の導体層15Bと、プリント基板11の内部に配置される第2の導体層15Bとを接続する態様であってもよい。
第1の伝熱ビア15AAおよび第2の伝熱ビア15BBは、第1の貫通部16Aおよび第2の貫通部16Bと同様に、導体により層間を接続するものである。ただし第1の伝熱ビア15AAおよび第2の伝熱ビア15BBは、プリント基板11の全体を貫通せずに、プリント基板11の内部の第1または第2の導体層を一方端とする点において、第1の貫通部16Aおよび第2の貫通部16Bと異なっている。第1の伝熱ビア15AAおよび第2の伝熱ビア15BBは、導体によりその内部の全体が充填された構成であっていてもよいし、図の上下方向に延びる外壁面のみが導体で覆われその内側は樹脂などの絶縁物により充填された構成であってもよい。
図15に示すように、第1の伝熱ビア15AAは、第1の導体層15A4と第1の導体層15A6との間に配置される第2の導体層15B3を貫通する態様となっている。図16は図15の、上記第1の伝熱ビア15AAが第2の導体層15B3を貫通する部分を拡大し、これをやや上方から見た概略斜視図である。図16を参照して、第2の導体層15B3には図の上下方向にこれを貫通するように形成された孔部としての開口部15PHが形成され、開口部15PH内を貫通するように第1の伝熱ビア15AAが図の上下方向に延在する。開口部15PHと第1の伝熱ビア15PHとは互いに接触しないよう、両者間に間隔を有する。第1の導体層15A4,15A6と第2の導体層15B3との間は電気的に絶縁する必要があるためである。その間隔は半導体装置401の扱う電圧によって変化するが、たとえば0.4mm以上とすることが好ましい。
次に、図15および図16を用いて半導体装置401の伝熱態様を説明しながら、本実施の形態の作用効果について説明する。
図15を再度参照して、本実施の形態においても他の実施の形態と同様に、図中実線で示す第1の放熱経路HA、および図中点線で示す第2の放熱経路HBにより、図の上層から下層へ伝熱される。ただしこの場合、たとえば第1の導体層15A4の右端部と第1の導体層15A6の右端部との間に、熱伝導量の差により温度差が発生する場合がある。この場合、これら2つの第1の導体層15Aのうち温度が低い方の層から第2の導体層15Bへの熱伝導量が小さくなり、熱伝導の効率が低下する。
そこで本実施の形態のように第1の導体層15A4の右端部と第1の導体層15A6の右端部との間に第1の伝熱ビア15AAが設けられる。これにより、第1の伝熱ビア15AAを図中鎖線の矢印で示す第3の放熱経路HDとして、図の上下方向に、第1の導体層15A4と第1の導体層15A6との間で放熱することができるため、第1の導体層15A4と第1の導体層15A6との温度差を小さくし、第1の導体層15A内の温度分布を均一化させることができる。第1の導体層15Aの温度分布が均一化されることで、そこから第2の導体層15B3への熱伝導もその上側および下側の双方から均一に、第4の放熱経路HEに示すようになされる。これにより、第2の導体層15B3の上側または下側のいずれかのみに熱が偏在する場合に比べて効率的に、第1の導体層15Aから第2の導体層15Bへ熱伝導することができる。
図16を再度参照して、開口部15PHの付近においては、第1の導体層15A4と第1の導体層15A6との間の第3の放熱経路HDを熱が伝わることにより第1の伝熱ビア15AAが発熱する。その発熱が第1の伝熱ビア15AAから開口部15PHを介し第4の放熱経路HEに示すように第2の導体層15B3に伝わる。これにより、第1部材と第2部材との間の伝熱の効率を高めることができる。
図15においては、第1の導体層15A4と第1の導体層15A6とを接続する第1の伝熱ビア15AAと、第1の導体層15A1と第1の導体層15A5とを接属する第1の伝熱ビア15AAとは分割して配置される。しかしこれらが分割されず繋がった構造であってもよい。
以上においては第1の導体層15A4と第1の導体層15A6との間の第1の伝熱ビア15AAの作用効果について述べた。しかし図15の第1の導体層15A1と第1の導体層15A5との間の第1の伝熱ビア15AA、および図15の第2の導体層15B2と第2の導体層15B3との間の第2の伝熱ビア15BB、についても基本的に上記と同様の作用効果を奏する。
以上においては6層の第1の導体層15Aを有する例について説明したが、第1の導体層15Aの層数は7層以上であってもよい。また第1の伝熱ビア15AAと第2の伝熱ビア15BBとは必ずしも双方設ける必要はなく、いずれか一方のみが設けられてもよい。以上の第1の伝熱ビア15AAおよび第2の伝熱ビア15BBは、図15の電子部品12の右側のみに配置されるべきものではなく、電子部品12の左側にも配置されてもよいし、左右のみならず前後も含め電子部品12の周囲に配置されてもよい。
以上に述べた各実施の形態(に含まれる各例)に記載した特徴を、技術的に矛盾のない範囲で適宜組み合わせるように適用してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。