JPWO2017103973A1 - 合成開口レーダ装置 - Google Patents
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Abstract
Description
プラットフォームが実際に移動している軌道(以下、実軌道と記載する)と想定軌道との間のずれは動揺と呼ばれており、動揺があったときの電波の受信信号からSAR画像を再生した場合、SAR画像にぼけが生じることがあった。このため、動揺がある場合は、観測対象に電波が送信され、観測対象で反射された電波が受信された電波の送受信時刻、電波の受信信号の位相などを、プラットフォームが想定軌道を移動したときに得られる値に近付ける動揺補償処理が実施される。
従来のSAR装置では、例えば、特許文献1に記載されるように、SAR画像の再生に使用される全ての信号に動揺補償処理を実施してSAR画像のぼけの低減を図っている。
例えば、実際のプラットフォームは必ずしも想定軌道とは異なる軌道を移動するばかりでなく、風の影響が弱くなるなどしてプラットフォームが想定軌道を適切に移動するときもある。このようにプラットフォームが想定軌道を移動しているときに得られた電波の受信信号は、本来、動揺補償の必要がない信号であり、SAR画像にぼけを生じさせない信号である。これにもかかわらず、従来のSAR装置では、このような信号に対しても動揺補償処理が実施されることになる。
例えば、SAR画像の再生に使用される信号の1つが、プラットフォームが想定軌道を移動しているときに得られた信号に比べて位相のみがずれている場合、この信号に対しては位相のみの補償処理を実施すればよい。
しかしながら、従来のSAR装置が、電波の受信信号の位相と送受信時刻の両方の補償処理を実施する場合、位相のみの補償でよい信号に対しても電波の送受信時刻の補償処理も実施されるため、SAR画像が再生されるまでに余分な時間がかかってしまう。
例えば、SAR画像の再生に使用される信号の1つが、プラットフォームが想定軌道を移動しているときに得られた信号と比較して電波の受信信号の位相と送受信時刻の両方がずれている場合、この信号に対しては電波の受信信号の位相の補償処理と電波の送受信時刻の補償処理が必要となる。
しかしながら、従来のSAR装置が位相の補償処理のみを実施する場合、前述したような信号に対しても位相の補償処理のみが実施されて、電波の送受信時刻の補償処理が実施されない。このように必要な内容の動揺補償処理が実施されていない信号からSAR画像を再生すると、SAR画像にぼけが残る可能性がある。
実施の形態1.
図1は、この発明に係るSAR装置2を備えたSARシステム1の構成を示すブロック図である。SARシステム1は、地表、海面などを観測して観測対象のSAR画像を得るシステムであり、SAR装置2、SARセンサ3、計測センサ4、記憶装置5および表示装置6を備えている。また、SAR装置2は、SARセンサ3および計測センサ4により得られた観測データに基づいて、観測対象のSAR画像を再生する装置である。
SARセンサ3では、送受信機によって生成された電波のパルスを、SARアンテナを介して空間に放射し、空間内の観測対象で反射された電波をSARアンテナで受信する。
送受信機がSARアンテナで受信された信号を信号処理し、処理後の信号をアナログデジタルコンバータがデジタル信号に変換することで、パルス波の受信信号が得られる。
なお、計測センサ4は、SARセンサ3とともにプラットフォームに搭載されている。
プラットフォームの姿勢を示す情報としては、例えば、プラットフォームのロール角、ピッチ角、ヨー角、速度、加速度などが挙げられる。
なお、プラットフォームの位置を示す情報は、地球固定座標系、プラットフォーム固有のローカル座標系であってもよい。
さらに、データ取得部20は、SARセンサ3および計測センサ4によって一定の間隔もしくは不等間隔で検出された観測データを取得する。
例えば、判定部22は、軌道解析部21によって算出された電波の送受信時刻ごとに対応する上記距離差に基づいて、電波の受信信号ごとに動揺補償の要否を判定する。
参考文献;A. Moreira, Y. Huang, “Airborne SAR Processing of Highly Squinted Data Using a Chirp Scaling Approach with Integrated Motion Compensation”, IEEE Transactions on Geoscience and Remote Sensing, Volume 32, Issue 5, pp. 1029-1040, 1994.
なお、SAR画像の再生方法には、チャープスケーリング法、ω−k法、ポーラフォーマット法、レンジドップラー法などがあり、これらのいずれかを利用してもよい。
なお、図2では、表示装置6が表示制御部6aを備える場合を示したが、SAR装置2が表示制御部6aを備えるように構成してもよい。
SAR装置2におけるデータ取得部20、軌道解析部21、判定部22、動揺補償部23および画像再生部24の各機能は、処理回路により実現される。
すなわち、SAR装置2は、図4に示す、上記観測データを取得するステップST1、上記観測データに基づいて想定軌道と実軌道の差分に関する情報を電波の送受信時刻ごとに算出するステップST2、上記差分に関する情報に基づいて電波の受信信号ごとに動揺補償の要否を判定するステップST3、動揺補償が必要と判定された電波の受信信号に対して動揺補償処理を実施するステップST4、判定の結果に応じて動揺補償処理が実施された電波の受信信号および不実施となった電波の受信信号に対して画像再生処理を実施して観測対象のSAR画像を再生するステップST5を逐次行うための処理回路を備えている。処理回路は、専用のハードウェアであっても、メモリに格納されたプログラムを読み出して実行するCPU(Central Processing Unit)であってもよい。
ソフトウェアとファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ102に格納される。CPU101は、メモリ102に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。すなわち、SAR装置2は、CPU101によって実行されるときに、前述したステップST1からステップST5までの処理が結果的に実行されるプログラムを格納するためのメモリ102を備える。
これらのプログラムは、データ取得部20、軌道解析部21、判定部22、動揺補償部23および画像再生部24の手順または方法をコンピュータに実行させるものである。
例えば、データ取得部20は、専用のハードウェアの処理回路100でその機能を実現し、軌道解析部21、判定部22、動揺補償部23および画像再生部24は、CPU101が、メモリ102に格納されたプログラム実行することによりその機能を実現する。
このように、上記処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって前述の機能を実現することができる。
図5は、図4におけるステップST2の具体的な処理を示すフローチャートである。
また、図6は、SARシステム1の観測ジオメトリを示す図であり、航空機のプラットフォーム103から地表Gを観測する場合を示している。
図6には、想定軌道M1で移動した場合のプラットフォーム103と実軌道M2を移動しているプラットフォーム103の両方を記載している。プラットフォーム103に搭載されたSARセンサ3は、地表Gに向けてプラットフォーム103の移動方向に直交するレンジ方向に走査させながら電波のパルス波を照射する。これにより、観測範囲Rの観測アンテナビームBが形成される。
以下、図6の観測ジオメトリを参照して軌道解析部21の動作を説明する。
なお、想定軌道M1は画像再生処理の内容によって異なるが、以降では、想定軌道M1が直線軌道であるものと仮定する。
軌道解析部21は、直線フィッティングで得られた直線軌道上で等間隔に電波のパルス波の送受信位置を規定し、パルス波の送受信位置の空間座標とプラットフォーム103の姿勢を示す情報を算出する。
このような想定軌道M1に規定するパルス波の送受信位置の間隔として、実軌道M2における電波のパルス波の送受信位置の間隔を平均した値を使用してもよく、実軌道M2における電波のパルス波の送受信位置の間隔の最小値を使用してもよい。
なお、この発明は、想定軌道M1と実軌道M2を同一の3次元空間内に規定することができる方法であれば、上記以外の方法で想定軌道M1を規定してもよい。
さらに、基準位置Fを規定する場所は地表Gであってもよいが、地表Gより高いまたは低い位置に規定してもよく、観測範囲Rの外部に規定してもよい。
図6において、視線方向ベクトルVE1を、想定軌道M1を移動するプラットフォーム103のSARセンサ3から基準位置Fへ向かう単位ベクトルとする。
また、ベクトルVE2を、実軌道M2を移動するプラットフォーム103のSARセンサ3と基準位置とを結ぶベクトルとする。
このとき、上記距離差はベクトルVE2と視線方向ベクトルVE1との内積として算出することができる。
図7は、図4におけるステップST3の具体的な処理を示すフローチャートである。
まず、判定部22は、軌道解析部21によって算出された上記距離差の中から、判定対象のパルス番号ICの受信信号の前後に観測された受信信号に対応する上記距離差を抽出する(ステップST1b)。
この場合、パルス番号Iが|I−IC|≦NSA/2を満たす電波の受信信号に対応する上記距離差が抽出される。なお、合成開口点数NSAとは、画像再生処理における積分点数であって、下記式(1)から算出される。
ただし、R0は観測中心までの距離、Vはプラットフォームの速度、TPRIはパルス繰返し周期、λはSARセンサ3によってパルス波として送信された電波の波長である。
また、ΔaはSAR画像にぼけ(デフォーカス)がないときのアジマス分解能であり、SAR画像におけるプラットフォーム103の移動方向の分解能である。
NSA=(2R0/VTPRI)tan(λ/4Δa) (1)
φ(I)=4πr(I)/λ (2)
ここで、下記式(3)に示すフィッティングの結果が得られる。ただし、A2は2次関数の係数、A1は1次関数の係数、A0は定数、tはパルス番号ICの送受信時刻を原点とする時間である。
A2t2+A1t+A0 (3)
Eφ=A2/(TSA/2)2 (4)
例えば、2次位相誤差Eφが0(rad)であるときアジマス分解能比は1.00となり、2次位相誤差Eφがπ/4(rad)であればアジマス分解能比は1.01となる。
また、2次位相誤差Eφがπ/2(rad)のときはアジマス分解能比が1.06となり、2次位相誤差Eφが3π/4(rad)であるときはアジマス分解能比が1.20となる。このように2次位相誤差Eφに対してアジマス分解能比は一意に決定可能である。
換算の方法としては、例えば、2次位相誤差Eφとアジマス分解能比との関係を多項式フィッティングして求めた換算式を用いる方法が挙げられる。
また、2次位相誤差Eφとアジマス分解能比との対応表を用意し、この対応表における2次位相誤差Eφに最も近い値に対応するアジマス分解能比を換算結果として採用してもよい。
例えば、アジマス分解能比に対してSAR画像にぼけがないときのアジマス分解能Δaを乗算して、SAR画像にぼけがあるときのアジマス分解能を求める。
このとき上記処理が未実施の基準位置Fがある場合(ステップST7b;NO)、ステップST1bに戻り、上記処理を実施する。全ての基準位置Fについて上記処理が実施された場合(ステップST7b;YES)、ステップST8bの処理に移行する。
例えば、ステップST3bの2次関数の係数、ステップST4bの2次位相誤差、ステップST5bのアジマス分解能比、ステップST6bのSAR画像にぼけがあるときのアジマス分解能は、これらのいずれかの値が決まればその他の値を算出できる。このため、2次関数の係数、2次位相誤差、アジマス分解能比のいずれかを判定基準値と比較してもよい。
ステップST1cにおいて、判定部22は、軌道解析部21によって算出された上記距離差の時間の2次微分を算出する。
例えば、パルス番号Iの電波の受信信号のうち、パルス番号ICの電波の受信信号に対応する距離差の時間の2次微分d2r/dt2は、下記式(5)に従って算出することができる。
d2r/dt2=(r(IC+2)+r(IC)−2r(IC+1))/TPRI 2 (5)
Eφ=(π/2λ)(d2r/dt2)TSA 2 (6)
例えば、ステップST1cの2次微分、ステップST2cの2次位相誤差、ステップST3cのアジマス分解能比、ステップST4cのSAR画像にぼけがあるときのアジマス分解能は、これらのいずれかの値が決まればその他の値を算出できる。このため、2次微分、2次位相誤差、アジマス分解能比のいずれかを判定基準値と比較してもよい。
また、2次位相誤差を判定基準値と比較する場合、ステップST6cにおける判定基準値が2次位相誤差に関する値となり、ステップST3cからステップST4cまでの処理を省略することができる。
同様に、アジマス分解能比を判定基準値と比較する場合、ステップST6cにおける判定基準値がアジマス分解能比に関する値となり、ステップST4cの処理を省略することができる。
動揺補償部23は、判定部22によって動揺補償が必要と判定されたパルス番号の電波の受信信号に対して動揺補償処理を実施し、動揺補償が不要と判定されたパルス番号の電波の受信信号には動揺補償処理を実施しない。
上記参考文献に記載される動揺補償の方法では、先に1次動揺補償を実施し、この後に2次動揺補償を実施することで、基準位置Fを含む観測範囲Rの位置ごとに動揺の影響を補償している。
なお、1次動揺補償では基準位置Fが1つであることが前提となっており、複数の基準位置Fがある場合は、これらの平均の位置を1次動揺補償で使用する基準位置Fとする。また、観測範囲Rの中心に最も近い位置を基準位置Fに設定してもよい。
2次動揺補償は、基準位置Fに対応する電波の受信信号の位相および送受信時刻の補償量と観測範囲Rにおけるその他の位置に対応する電波の受信信号の位相および送受信時刻の補償量との差異を補償する処理である。このように2次動揺補償によって1次動揺補償の結果がさらに補償される。
このため、動揺補償部23では、上記参考文献に記載される動揺補償処理と同じ演算で電波の受信信号ごとに動揺補償処理を実施することができる。
また、画像再生部24は、再生したSAR画像を表示制御部6aに出力し、さらに画像格納部5bに格納する。表示制御部6aは、画像再生部24から入力されたSAR画像を表示部6bに表示する。
従来は、観測で得られた電波の受信信号ごとに動揺補償の要否を判定せず、常に動揺補償処理を実施する場合と常に動揺補償処理を実施しない場合とのいずれかを選択するだけであった。これに対して、本発明に係るSAR装置2では、動揺補償が必要と判定された電波の受信信号に対して動揺補償処理を実施し、動揺補償が不要と判定された電波の受信信号には動揺補処理を実施しない。これにより、動揺補償に必要な時間が短縮されて、動揺補償でぼけが軽減されたSAR画像が再生されるまでに必要な時間を短縮することができる。
そして、軌道解析部21は、3次元空間に設定した基準位置Fと実軌道M2との間の距離と、基準位置Fと想定軌道M1との間の距離と、の距離差を電波の送受信時刻ごとに算出する。判定部22は、上記距離差に基づいて電波の受信信号ごとに動揺補償の要否を判定する。このようにすることで、電波の受信信号ごとの動揺補償の要否を的確に判定することができる。
このようにすることで、電波の受信信号ごとの動揺補償の要否を的確に判定することができる。
このようにすることで、電波の受信信号ごとの動揺補償の要否を的確に判定することができる。
このようにすることで、電波の受信信号ごとの動揺補償の要否を的確に判定することができる。
また、SAR画像にぼけがあるときのアジマス分解能を算出するために使用する基準位置Fを観測範囲Rにおける重要な位置に設定することで、この重要な位置のSAR画像の結像を最大化することができる。
さらに、観測範囲Rの中央位置および両端位置に基準位置Fを設定することで、SAR画像全体で許容範囲内のアジマス分解能を確保することができる。
実施の形態1では、観測で送受信された電波の受信信号ごとに動揺補償の要否を判定する構成を示したが、実施の形態2は、電波の受信信号ごとに動揺補償の要否だけでなく、動揺補償処理の内容を選択する構成となっている。
以下、図6の観測ジオメトリを参照して実施の形態2に係るSAR装置を説明する。
SAR装置2Aは、データ取得部20、軌道解析部21、動揺補償部23A、画像再生部24および選択部25を備える。また、選択基準値格納部5dは、選択部25の選択処理に使用される選択基準値が格納される記憶部である。この選択基準値格納部5d、画像格納部5b、基準位置格納部5cは、例えば、記憶装置5の記憶領域に構築される。
動揺補償部23Aは、観測で得られた電波の受信信号に対して選択部25によって選択された内容の動揺補償処理を実施する。
すなわち、SAR装置2Aは、図10に示す、観測データを取得するステップST1d、観測データに基づいて、想定軌道と実軌道の差分に関する情報を電波の送受信時刻ごとに算出するステップST2d、上記差分に関する情報に基づいて、電波の受信信号ごとに動揺補償処理の内容を選択するステップST3d、電波の受信信号に対して選択された内容の動揺補償処理を実施するステップST4d、選択された内容の動揺補償処理が実施された電波の受信信号に対して画像再生処理を実施して、観測対象のSAR画像を再生するステップST5dを逐次行うための処理回路を備えている。
処理回路は、専用のハードウェアであっても、メモリに格納されたプログラムを読み出して実行するCPUであってもよい。
ソフトウェアとファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ102に格納される。CPU101は、メモリ102に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。すなわち、SAR装置2Aは、CPU101によって実行されるときに、前述したステップST1dからステップST5dまでの処理が、結果的に実行されるプログラムを格納するためのメモリ102を備える。
これらのプログラムは、データ取得部20、軌道解析部21、動揺補償部23A、画像再生部24および選択部25の手順または方法をコンピュータに実行させるものである。
例えば、データ取得部20は、専用のハードウェアの処理回路100でその機能を実現し、軌道解析部21、動揺補償部23A、画像再生部24および選択部25は、CPU101が、メモリ102に格納されたプログラム実行することによりその機能を実現する。
このように、上記処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって前述の機能を実現することができる。
図11は、図10におけるステップST3dの具体的な処理を示すフローチャートである。図11におけるステップST1eからステップST7eまでの処理は、図7におけるステップST1bからステップST7bまでの処理を選択部25が実施した場合と同様である。また、ステップST9eの処理は、図7におけるステップST9bの処理を選択部25が実施した場合と同様であるので説明を省略する。
また、選択基準値に設定した差以上である場合は、動揺補償処理の内容として1次動揺補償と2次動揺補償の両方を選択する。
アジマス分解能の最大値が判定基準値以下であれば、選択部25は、プラットフォーム103の動揺によるアジマス分解能の劣化がないと判断して、パルス番号ICの電波の受信信号に対する動揺補償処理の内容として、動揺補償処理の不実施を選択してもよい。
一方、アジマス分解能の最大値が選択基準値よりも大きい場合、選択部25は、パルス番号ICの電波の受信信号に対応する内容の動揺補償処理を選択する。
例えば、ステップST3eの2次関数の係数、ステップST4eの2次位相誤差、ステップST5eのアジマス分解能比、ステップST6eのSAR画像にぼけがあるときのアジマス分解能は、これらのいずれかの値が決まればその他の値を算出できる。このため、2次関数の係数、2次位相誤差、アジマス分解能比のいずれかを判定基準値と比較してもよい。
また、2次位相誤差を選択基準値と比較する場合、ステップST8eにおける判定基準値が2次位相誤差に関する値となり、ステップST5eからステップST6eまでの処理を省略することができる。
同様に、アジマス分解能比を選択基準値と比較する場合、ステップST8eにおける選択基準値がアジマス分解能比に関する値となり、ステップST6eの処理を省略することができる。
ステップST1fにおいて、選択部25は、軌道解析部21によって算出された上記距離差の時間の2次微分を算出する。
実施の形態1と同様に、パルス番号Iの電波の受信信号のうち、パルス番号ICの電波の受信信号に対応する上記距離差の時間の2次微分d2r/dt2は、上記式(5)に従って算出することができる。
2次位相誤差Eφを算出した後の処理は、図11のステップST5eからステップST9eまでの処理と同様である。このようにすることで、図11におけるステップST1eからステップST3eまでの処理を省略することができる。
例えば、ステップST1fの2次微分、ステップST2fの2次位相誤差、ステップST3fのアジマス分解能比、ステップST4fのSAR画像にぼけがあるときのアジマス分解能は、これらのいずれかの値が決まればその他の値を算出できる。このため、2次微分、2次位相誤差、アジマス分解能比のいずれかを判定基準値と比較してもよい。
また、2次位相誤差を選択基準値と比較する場合、ステップST6fにおける選択基準値が2次位相誤差に関する値となり、ステップST3fからステップST4fまでの処理を省略することができる。
同様に、アジマス分解能比を選択基準値と比較する場合、ステップST6fにおける判定基準値がアジマス分解能比に関する値となり、ステップST4fの処理を省略することができる。
このように構成することで、観測で得られた電波の受信信号ごとに必要な内容の動揺補償処理が実施されて、SAR画像のぼけを軽減することができる。
また、電波の受信信号ごとに必要な内容のみの動揺補償処理が実施されるので、動揺補償に必要な時間が短縮される。これにより、動揺補償でぼけが軽減されたSAR画像が再生されるまでに必要な時間を短縮することができる。
そして、軌道解析部21は、3次元空間に設定した基準位置Fと実軌道M2との間の距離と基準位置Fと想定軌道M1との間の距離との距離差を、電波の送受信時刻ごとに算出する。選択部25は、距離差に基づいて電波の受信信号ごとに動揺補償処理の内容を選択する。このようにすることでも、電波の受信信号ごとの動揺補償処理の内容を的確に選択することができる。
このようにすることで、動揺補償が不要な受信信号には補償処理が実施されないため、動揺補償に必要な時間をさらに短縮することができる。これにより、動揺補償でぼけが軽減されたSAR画像が再生されるまでに必要な時間を、実施の形態1に示した構成よりも短縮することができる。
実施の形態1および実施の形態2は、プラットフォーム103の位置および姿勢の計測誤差がないことを前提としていたが、実施の形態3では、計測誤差に起因したSAR画像のぼけを軽減する構成について説明する。
また、判定基準値格納部5a、画像格納部5b、基準位置格納部5cおよびオートフォーカス判定基準値格納部5eは、例えば、記憶装置5の記憶領域に構築される。
図14はオートフォーカス処理部26の動作を示すフローチャートである。
まず、オートフォーカス処理部26は、観測で送受信された電波の受信信号ごとの動揺補償の要否の判定結果に基づいて、画像再生部24に再生されたSAR画像のうち、動揺補償処理が不実施の電波の受信信号から再生された領域を特定する。
そして、オートフォーカス処理部26は、動揺補償処理が不実施の電波の受信信号から再生された領域のアジマス分解能を計測する(ステップST1g)。
アジマス分解能の計測方法としては、例えば、SAR画像の中から反射強度が高い輝点を抽出してアップサンプリングし、アップサンプリングした輝点の幅からアジマス分解能を計測する方法が挙げられる。この計測方法は、アジマス方向の分解能がSARセンサ3の観測アンテナビームBのビーム幅で決定されるため、SAR画像から抽出した輝点の幅をビーム幅とみなして計測するものである。
なお、この軌道間の距離差は、想定軌道M1を移動するプラットフォーム103のSARセンサ3と基準位置Fとの間の距離と、実軌道M2を移動するプラットフォーム103のSARセンサ3と基準位置Fとの間の距離と、の距離差である。
また、上記アジマス分解能は、例えば図7におけるステップST1bからステップST6bまでの処理もしくは図8におけるステップST1cからステップST4cまでの処理で得られた分解能である。
上記差がオートフォーカス判定基準値よりも大きい場合(ステップST3g;YES)、オートフォーカス処理部26は、SAR画像における上記領域に対してオートフォーカス処理を実施する(ステップST4g)。
そこで、予め定めたオートフォーカス判定基準値より上記差が大きければ、プラットフォーム103の位置および姿勢を示す情報に計測誤差があるとみなして、オートフォーカス処理を実施する。
このようにすることで、プラットフォーム103の位置および姿勢を示す情報に計測誤差が発生しても、オートフォーカス処理でぼけが軽減されたSAR画像を得ることができる。
実施の形態1〜3で示した構成では、動揺補償にかかる総時間を調整できなかったが、実施の形態4では、予め定められた許容時間に収まるように、動揺補償にかかる総時間を調整可能な構成について説明する。
SAR装置2Cは、データ取得部20、軌道解析部21、判定部22A、動揺補償部23B、画像再生部24、オートフォーカス処理部26Aおよび調整部27を備える。
また、判定基準値格納部5a、画像格納部5b、基準位置格納部5c、オートフォーカス判定基準値格納部5eおよび許容時間格納部5fは、例えば、記憶装置5の記憶領域に構築される。
動揺補償部23Bは、調整部27から設定された電波の受信信号ごとの動揺補償の要否に基づいて、動揺補償が必要とされた電波の受信信号に対して動揺補償処理を実施し、動揺補償が不要とされた電波の受信信号には動揺補償処理を実施しない。
オートフォーカス処理部26Aは、調整部27から設定された電波の受信信号ごとの動揺補償の要否に基づいて、動揺補償処理が不実施の電波の受信信号から再生されたSAR画像の領域を特定する。そして、オートフォーカス処理部26Aは、特定した領域を計測して得られた分解能と、この領域に対して想定軌道M1と実軌道M2の距離差を用いて算出された分解能との差が判定基準値より大きい場合、この領域に対してオートフォーカス処理を実施する。
例えば、観測で得られた電波の受信信号ごとの動揺補償にかかる時間と動揺補償が必要と判定された電波の受信信号の数とに基づいて動揺補償にかかる総時間を見積もる。この総時間が許容時間を超える場合、動揺補償が必要と判定された電波の受信信号の数を変更する。
図16は、図15の調整部27の動作を示すフローチャートである。
まず、調整部27は、判定部22Aから入力した電波の受信信号ごとの動揺補償の要否の判定結果と、許容時間格納部5fから読み出した受信信号ごとの動揺補償にかかる時間から、動揺補償にかかる総時間を見積もる(ステップST1h)。
例えば、判定部22Aにより動揺補償が必要と判定された電波の受信信号の数に対して電波の受信信号ごとの動揺補償にかかる時間を乗算した結果を、動揺補償にかかる総時間とする。
このとき、見積もった総時間が許容時間以下である場合(ステップST2h;NO)、調整部27は、判定部22Aによる判定結果をそのまま動揺補償部23Bに設定する。
例えば、動揺補償が必要と判定された電波の受信信号のうち、SAR画像にぼけがあるときのアジマス分解能が高いものから順に、動揺補償処理を実施しない電波の受信信号を決定することで、動揺補償処理を実施する電波の受信信号の数を変更する。
なお、SAR画像にぼけがあるときのアジマス分解能は、実施の形態1と同様にして、判定部22Aによって電波の受信信号ごとに算出される。
調整部27によって決定された電波の受信信号ごとの動揺補償の要否を示す情報は、動揺補償部23Bに設定される。
このようにすることで、SAR画像を再生するまでの時間に制限があっても、動揺補償でぼけが軽減されたSAR画像を制限時間内で再生することができる。
例えば、調整部27が、動揺補償とオートフォーカス処理の両方にかかる総時間を見積もり、動揺補償が必要と判定された電波の受信信号から、総時間が許容時間に収まるように動揺補償処理を実施しない電波の受信信号を決定する。このように決定された動揺補償処理を実施しない電波の受信信号を示す情報は、調整部27からオートフォーカス処理部26Aに設定される。オートフォーカス処理部26Aは、調整部27から設定された情報に基づいて、画像再生部24から出力されたSAR画像に対してオートフォーカス処理を実施する。このようにすることで、SAR画像を再生するまでの時間に制限があっても、動揺補償およびオートフォーカス処理でぼけが軽減されたSAR画像を制限時間内で再生することができる。
図17において、図2、図13および図15に示した構成要素と同一のものには同一の符号を付している。SAR装置2Dは、データ取得部20、軌道解析部21、動揺補償部23C、画像再生部24、選択部25A、オートフォーカス処理部26Bおよび調整部27Aを備える。
また、画像格納部5b、基準位置格納部5c、オートフォーカス判定基準値格納部5eおよび許容時間格納部5gは、例えば、記憶装置5の記憶領域に構築される。
動揺補償部23Cは、調整部27Aから設定された電波の受信信号ごとの動揺補償処理の内容で、電波の受信信号に対して動揺補償処理を実施する。
オートフォーカス処理部26Bは、調整部27Aから設定された電波の受信信号ごとの動揺補償の要否に基づいて、動揺補償処理が不実施の電波の受信信号から再生されたSAR画像の領域を特定する。そして、オートフォーカス処理部26Bは、特定した領域を計測して得られた分解能とこの領域に対して想定軌道M1と実軌道M2の距離差を用いて算出された分解能との差が判定基準値より大きい場合、この領域に対してオートフォーカス処理を実施する。
また、調整部27Aは、動揺補償にかかる総時間が許容時間に収まるように選択部25Aによって選択された動揺補償処理の内容を変更して動揺補償にかかる時間を調整する。
図18は、図17の調整部27Aの動作を示すフローチャートである。
まず、調整部27Aは、選択部25Aから入力した電波の受信信号ごとの動揺補償処理の内容の選択結果と、許容時間格納部5gから読み出した動揺補償処理の内容ごとの所要時間とから、動揺補償にかかる総時間を見積もる(ステップST1i)。
例えば、選択部25Aによって電波の受信信号ごとに選択された動揺補償処理の内容に対応する所要時間をそれぞれ加算した結果を、動揺補償にかかる総時間とする。
このとき、見積もった総時間が許容時間以下である場合(ステップST2i;NO)、調整部27Aは、選択部25Aによる選択結果をそのまま動揺補償部23Cに設定する。
なお、SAR画像にぼけがあるときのアジマス分解能は、実施の形態2と同様にして、選択部25Aによって電波の受信信号ごとに算出される。
調整部27Aによって変更された電波の受信信号ごとの動揺補償処理の内容を示す情報は、動揺補償部23Cに設定される。
例えば、調整部27Aが、動揺補償とオートフォーカス処理の両方にかかる総時間を見積もり、動揺補償が必要と判定された電波の受信信号から、総時間が許容時間に収まるように動揺補償処理を実施しない電波の受信信号を決定する。このように決定された動揺補償処理を実施しない電波の受信信号を示す情報は、調整部27Aからオートフォーカス処理部26Bに設定される。オートフォーカス処理部26Bは、調整部27Aから設定された情報に基づいて、画像再生部24から出力されたSAR画像に対してオートフォーカス処理を実施する。このようにすることで、SAR画像を再生するまでの時間に制限があっても、動揺補償およびオートフォーカス処理でぼけが軽減されたSAR画像を制限時間内で再生することができる。
このようにすることで、SAR画像を再生するまでの時間に制限があっても、動揺補償でぼけが軽減されたSAR画像を制限時間内で再生することができる。
このようにすることで、SAR画像を再生するまでの時間に制限があっても、動揺補償でぼけが軽減されたSAR画像を制限時間内で再生することができる。
例えば、実施の形態1の構成に調整部を追加してもよく、実施の形態2の構成に調整部を追加してもよい。このように構成しても、上記と同様の効果が得られる。
Claims (15)
- 移動するプラットフォームから観測対象に対して送信され、前記観測対象で反射された電波の受信信号、前記電波の送受信時刻、前記プラットフォームの位置および姿勢を示す情報を含む観測データを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部によって取得された観測データに基づいて、前記プラットフォームの想定軌道と実軌道との差分に関する情報を前記電波の送受信時刻ごとに算出する軌道解析部と、
前記軌道解析部によって算出された前記差分に関する情報に基づいて、前記電波の受信信号ごとに動揺補償の要否を判定する判定部と、
前記判定部によって動揺補償が必要と判定された前記電波の受信信号に対して動揺補償処理を実施する動揺補償部と、
前記判定部の判定結果に応じて動揺補償処理が実施された前記電波の受信信号および動揺補償処理が不実施となった前記電波の受信信号に対して画像再生処理を実施して、前記観測対象の合成開口レーダ画像を再生する画像再生部と
を備えたことを特徴とする合成開口レーダ装置。 - 前記軌道解析部は、前記データ取得部によって取得された観測データに基づいて、前記想定軌道を3次元空間に規定し、前記3次元空間に設定した基準位置と前記実軌道との間の距離と前記基準位置と前記想定軌道との間の距離との距離差を前記電波の送受信時刻ごとに算出し、
前記判定部は、前記距離差に基づいて前記電波の受信信号ごとに動揺補償の要否を判定することを特徴とする請求項1記載の合成開口レーダ装置。 - 前記判定部は、前記距離差から変換した位相差に基づいて、前記電波の受信信号ごとに動揺補償の要否を判定することを特徴とする請求項2記載の合成開口レーダ装置。
- 前記判定部は、前記位相差を多項式関数でフィッティングして求めた前記多項式関数の係数に基づいて、前記電波の受信信号ごとに動揺補償の要否を判定することを特徴とする請求項3記載の合成開口レーダ装置。
- 前記判定部は、前記距離差の時間微分に基づいて、前記電波の受信信号ごとに動揺補償の要否を判定することを特徴とする請求項2記載の合成開口レーダ装置。
- 前記判定部は、前記距離差を用いて算出した2次位相誤差に基づいて、前記電波の受信信号ごとに動揺補償の要否を判定することを特徴とする請求項2記載の合成開口レーダ装置。
- 前記判定部は、前記距離差を用いて算出した前記基準位置ごとのアジマス分解能に基づいて、前記電波の受信信号ごとに動揺補償の要否を判定することを特徴とする請求項2記載の合成開口レーダ装置。
- 動揺補償処理が不実施の前記電波の受信信号から再生された前記合成開口レーダ画像の領域を計測して得られた分解能とこの領域に対して前記距離差を用いて算出された分解能との差が判定基準値より大きい場合、この領域に対してオートフォーカス処理を実施するオートフォーカス処理部を備えたことを特徴とする請求項2記載の合成開口レーダ装置。
- 動揺補償にかかる時間が許容時間に収まるように、前記判定部によって動揺補償が必要と判定された前記電波の受信信号のうち、動揺補償処理を実施する前記電波の受信信号の数を変更して動揺補償にかかる時間を調整する調整部を備えたことを特徴とする請求項1記載の合成開口レーダ装置。
- 移動するプラットフォームから観測対象に対して送信され、前記観測対象で反射された電波の受信信号、前記電波の送受信時刻、前記プラットフォームの位置および姿勢を示す情報を含む観測データを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部によって取得された観測データに基づいて、前記プラットフォームの想定軌道と実軌道との差分に関する情報を前記電波の送受信時刻ごとに算出する軌道解析部と、
前記軌道解析部によって算出された前記差分に関する情報に基づいて、前記電波の受信信号ごとに動揺補償処理の内容を選択する選択部と、
前記電波の受信信号に対して前記選択部によって選択された内容の動揺補償処理を実施する動揺補償部と、
前記選択部によって選択された内容の動揺補償処理が実施された前記電波の受信信号に対して画像再生処理を実施して、前記観測対象の合成開口レーダ画像を再生する画像再生部と
を備えたことを特徴とする合成開口レーダ装置。 - 前記軌道解析部は、前記データ取得部によって取得された観測データに基づいて、前記想定軌道を3次元空間に規定し、前記3次元空間に設定した基準位置と前記実軌道との間の距離と前記基準位置と前記想定軌道との間の距離との距離差を、前記電波の送受信時刻ごとに算出し、
前記選択部は、前記距離差に基づいて前記電波の受信信号ごとに動揺補償処理の内容を選択することを特徴とする請求項10記載の合成開口レーダ装置。 - 前記選択部は、前記距離差を用いて算出した前記基準位置ごとのアジマス分解能および選択基準値に基づいて、前記電波の受信信号ごとに動揺補償処理の内容を選択することを特徴とする請求項11記載の合成開口レーダ装置。
- 動揺補償処理が不実施の前記電波の受信信号から再生された前記合成開口レーダ画像の領域を計測して得られた分解能とこの領域に対して前記距離差を用いて算出された分解能との差が判定基準値より大きい場合、この領域に対してオートフォーカス処理を実施するオートフォーカス処理部を備えたことを特徴とする請求項11記載の合成開口レーダ装置。
- 動揺補償にかかる時間が許容時間に収まるように、前記選択部によって選択された動揺補償処理の内容を変更して動揺補償にかかる時間を調整する調整部を備えたことを特徴とする請求項10記載の合成開口レーダ装置。
- 前記選択部によって選択される動揺補償処理の内容には動揺補償処理の不実施が含まれることを特徴とする請求項10記載の合成開口レーダ装置。
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