(実施の形態の概要)
図1は、実施の形態に係るレーダ装置10の概要例を示している。図1に示すように、実施の形態に係るレーダ装置10は、アンテナ(レーダアンテナ)11、並進駆動部12、駆動制御部13を備えている。
アンテナ11は、飛翔体などの移動体に設けられ、観測対象14との間で電波を送受信する。並進駆動部12は、観測対象14へ向かう方向または観測対象14から遠ざかる方向である並進方向にアンテナ11を駆動(並進駆動)する。駆動制御部13は、アンテナ11の変位に基づいて、アンテナ11の駆動を制御する。
また、図2は、実施の形態に係るレーダアンテナ装置20の概要例を示している。図2に示すように、実施の形態に係るレーダアンテナ装置(アンテナ機構)20は、アンテナ(レーダアンテナ)11、並進駆動機構部21、回転駆動機構部22を備えている。
アンテナ11は、観測対象14との間で電波を送受信する。並進駆動機構部21は、観測対象14へ向かう方向と略並行な並進方向へ並進駆動可能にアンテナ11を支持する。並進方向には、観測対象14へ近づく方向と、観測対象14から遠ざかる方向が含まれる。回転駆動機構部22は、エレベーション軸及びアジマス軸などの第1の軸23及び第2の軸24周りへ回転駆動可能に並進駆動機構部21を支持する。
図1のようにアンテナの変位に基づいてアンテナを並進方向に制御することにより、また、図2のようにアンテナを2軸に回転させる回転駆動機構に加えて並進方向へ並進させる並進駆動機構を備えることにより、アンテナを並進方向へ駆動することができるため、より観測精度を向上することができる。
上記のように、関連する合成開口レーダ装置ではアンテナを2軸ジンバルにより駆動していた。関連する技術では、機体動揺の小さい大型航空機にレーダ装置を搭載することを目的としていたため、2軸ジンバルによる回転制御を用いてアンテナを駆動するだけで観測画像の生成が可能であった。しかしながら、小型航空機やヘリコプターにレーダ装置を搭載すると、図3に示すように飛行経路に対して、機体の振動及び動揺が大きいため、アンテナも同様に大きく振動及び動揺する。そうすると、アンテナ面が大きく動揺し波長位相ずれが発生するため、観測精度が低下し、観測結果として表示する観測画像が劣化するという問題がある。
そこで、以下の実施の形態では、機体動揺が大きい機体に搭載した場合でも、観測精度の低下を抑え、良好な観測画像を取得することが可能な合成開口レーダ装置を提供することを目的とする。図4に示すように、実施の形態では、飛行軌道(目標経路)に対してアンテナ面を並進方向へ駆動することで、目標経路に対する誤差を圧縮し、アンテナ面変動を抑えることができる。
(実施の形態1)
以下、図面を参照して実施の形態1について説明する。図5は、本実施の形態に係る飛翔体1を模式的に示している。本実施の形態に係る飛翔体1は、例えば小型航空機やヘリコプターなどの移動体であり、レーダ装置100を搭載している。
レーダ装置100は、合成開口レーダであり、主に、アンテナを含むアンテナ部101、アンテナが送受信する電波を信号処理する信号処理部102を備える。例えば、アンテナ部101は、飛翔体1の機体下部に設置されて、アンテナから機体下方の地表へ向けて電波を照射する。信号処理部102は、飛翔体1の機体内部に設置されて、アンテナを介して観測した観測画像をリアルタイムで表示する。
図6は、本実施の形態に係るレーダ装置100の機能ブロックを示している。図6に示すように、本実施の形態に係るレーダ装置100は、送信部110、受信部111、画像処理部112、サーキュレータ113、制御部120、アンテナ201、アンテナ駆動機構202、アンテナセンサ103、機体センサ104を備えている。例えば、アンテナ部101には、アンテナ201、アンテナ駆動機構202、アンテナセンサ103が含まれ、信号処理部102には、送信部110、受信部111、画像処理部112、サーキュレータ113、制御部120、機体センサ104が含まれる。
送信部110は、合成開口レーダで観測を行うための送信信号を生成する。サーキュレータ113は、送信部110が生成した送信信号をアンテナ201から送信し、アンテナ201が受信した受信信号を受信部111へ出力する。
アンテナ駆動機構202は、制御部120の制御に応じて最適な方向や位置となるようにアンテナ201を駆動する。アンテナ201は、送信波(送信信号)を観測対象へ送信し、観測対象から反射した受信波(受信信号)を受信する。
アンテナセンサ103は、アンテナ駆動機構202の駆動に応じて変位したアンテナ201の変位量や、アンテナ201の振動などを検出する。機体センサ104は、飛翔体1の機体の姿勢(ロール、ピッチ、ヨーの変位)や振動などを検出する。アンテナセンサ103及び機体センサ104は、例えば、姿勢センサ、GPS(Global Positioning System)、速度センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、レゾルバ、変位センサ、レートセンサなどである。
受信部111は、アンテナ201が受信した受信信号に対して信号処理を行い、画像処理部112が処理可能な信号を生成する。画像処理部112は、受信部111が処理した受信信号に対して画像処理を行い、観測対象の検出、観測画像の生成及び表示を行う。
制御部(駆動制御部)120は、レーダ装置の各部を制御する制御部であり、アンテナセンサ103及び機体センサ104の検出結果や、画像処理部112の観測結果に基づいて、アンテナ駆動機構202などを制御する。制御部120は、観測モードに応じた制御として、ストリップマップモードの場合、飛行方向に対して一定の角度で電波を照射するように、アンテナ駆動機構202を制御し、スポットライトモードの場合、常に観測対象に対して電波を照射するように、アンテナ駆動機構202を制御する。本実施の形態では、制御部120は、飛翔体1の移動や観測モードに応じたアンテナ201の変位に基づいて、アンテナ201の並進方向の駆動を制御する。制御部120は、飛翔体1の移動や回転等に応じたアンテナ201の並進方向の変位量が低減(補正)するように、アンテナ201の駆動量を制御する。
次に、本実施の形態に係るアンテナ部101の構成について説明する。図7〜図11は、アンテナ部101の外観構成を示しており、図7及び図8はその斜視図、図9はその平面図、図10及び図11はその側面図である。図12〜図15は、アンテナ部101の並進機構部230の外観構成を示しており、図12はその斜視図、図13はその平面図、図14及び図15はその側面図である。各図において、飛翔体の進行方向に対し電波の照射方向を垂直とした場合、X方向がアジマス(AZ)方向であり、Y方向がレンジ方向であり、Z方向がエレベーション(EL)方向となる。
図7〜図11に示すように、アンテナ部101は、主に、アンテナ201、ジンバルベース部210、ジンバル支持部220、並進機構部230を有している。アンテナ201は、例えばX方向に平板状に延びるレーダアンテナである。アンテナ201は、平板表面(Y方向負側)から法線方向へ電波を送信し、さらに、平板表面で電波を受信する。なお、アンテナ201は、観測対象へ向けてマイクロ波などの電波を送信及び受信できれば、平板形状に限らず、その他の形状でもよい。
並進機構部(並進駆動機構部)230は、アンテナ201の略中央部を支持し、アンテナ201を一軸の並進方向に向かって前後に変位(移動)させる。並進方向は、Y方向、つまり、アンテナ201の電波照射方向(法線方向)である。並進方向において、並進機構部230から見てアンテナ201側(観測対象により近い側)を前側(Y方向負側)、反対側(観測対象からより遠い側)を後側(Y方向正側)とも言う。
ジンバル支持部220及びジンバルベース部210は、アンテナ201を2軸(第1の軸及び第2の軸)方向に回動させる2軸ジンバル機構部(回転駆動機構部)203を構成する。第1の軸または第2の軸は、エレベーション軸またはアジマス軸である。2軸ジンバル機構部203に並進機構部230を組み込むことで、アンテナ部101を小型化することができる。
ジンバル支持部(エレベーション回転支持部)220は、エレベーション軸221で並進機構部230を支持し、エレベーション軸221を回転軸として、並進機構部230(及びアンテナ201)をZ方向(エレベーション方向)へ変位させる。ジンバル支持部220は、並進機構部230をX方向両端で支持する支持アーム部222及び223と、支持アーム部222及び223を連結するアーム連結部224を有している。例えば、支持アーム部222及び223は、Z方向に延びており、アーム状に延びる先端部(Z方向正側)近傍で並進機構部230を支持し、アーム状の根元部(Z方向負側)近傍でアーム連結部224により連結される。アーム連結部224は、ジンバルベース部210と同様の形状であり、例えば円板形状である。
例えば、支持アーム部222及び223は、一方にエレベーション用モータ(不図示)を内蔵しており、供給されるエレベーション駆動電圧に応じてエレベーション用モータを回転動作させることで、並進機構部230(及びアンテナ201)をエレベーション軸221周りに回転変位させる。例えば、エレベーション用モータはブラシレスモータである。また、支持アーム部222及び223のもう一方には、エレベーション用モータによる駆動回転角度を検出するセンサであるレゾルバ(不図示)を内蔵している。
ジンバルベース部(アジマス回転支持部)210は、アジマス軸211でジンバル支持部220を支持し、アジマス軸211を回転軸として、ジンバル支持部220(並進機構部230及びアンテナ201)をX方向(アジマス方向)へ変位させる。ジンバルベース部210は、例えば円板形状であり、円板表面側(Z方向正側)でジンバル支持部220のアーム連結部224を支持し、円盤裏面側(Z方向負側)で飛翔体1の機体に固定される。ジンバルベース部210の外周部には、複数の連結穴(連結固定部)212が形成されており、複数の連結穴212を介してネジなどの連結部材を用いることで、ジンバルベース部210を飛翔体1の機体に連結固定する。
例えば、ジンバルベース部210は、アジマス用モータ(不図示)を内蔵しており、供給されるアジマス駆動電圧に応じてアジマス用モータを回転動作させることで、ジンバル支持部220(並進機構部230及びアンテナ201)をアジマス軸211周りに回転変位させる。例えば、アジマス用モータはブラシレスモータである。また、ジンバルベース部210は、アジマス用モータによる駆動回転角度を検出するセンサであるレゾルバ(不図示)を内蔵している。
図12〜図15に示すように、並進機構部230は、フレームの概略構成として、主に、並進フレーム231、軸受フレーム232、延伸フレーム233を有している。
並進フレーム231は、アンテナ201の平板裏面(Y方向正側)の略中央部を支持し、並進方向に移動可能なフレームである。並進フレーム231は、アンテナ201の二か所にそれぞれ一端が固定されてY方向に延びる並進側面フレーム231a及び231bと、並進側面フレーム231a及び231bのZ方向両端部近傍をそれぞれ連結する並進平面フレーム231c及び231dを有する。並進側面フレーム231a及び231bは、アンテナ201の略中央部を支持することで、アンテナ201をバランスよく支持できる。なお、並進平面フレーム231c及び231dによりアンテナ201を支持してもよい。並進側面フレーム231a及び231b、並進平面フレーム231c及び231dに、複数の開口部を形成することで、所望の重量や強度を得ることができる。
軸受フレーム232は、エレベーション軸を受けてエレベーション方向に回転可能であり、並進フレーム231を並進可能に支持するフレームである。軸受フレーム232は、並進側面フレーム231a及び231bより外側(X方向両側)で、並進側面フレーム231a及び231bと略並行に設けられた軸受側面フレーム232a及び232bと、並進平面フレーム231c及び231dより外側(Z方向両側)で並進平面フレーム231c及び231dと略並行に設けられた軸受平面フレーム232c及び232dを有する。
軸受側面フレーム232a及び232bは、略中央にエレベーション軸を受ける軸受穴234を有する。すなわち、軸受穴234がジンバル支持部220から支持され、軸受穴234を中心として、並進機構部230及びアンテナ201がエレベーション方向へ回転する。
軸受平面フレーム232c及び232dは、軸受側面フレーム232a及び232bのZ方向両端部をそれぞれ連結する。軸受平面フレーム232c及び232dと並進平面フレーム231c及び231dとの間に、それぞれ並進用モータ235a及び235bが配置されている。例えば、並進用モータ235a及び235bは、リニアモータの一例であるボイスコイルモータである。軸受平面フレーム232c及び232dは、並進用モータ235a及び235bを介して並進平面フレーム231c及び231dを並進可能に支持していると言える。供給される並進駆動電圧(VCM印加電圧)に応じて並進用モータ235a及び235bをリニア駆動することで、並進フレーム231(及びアンテナ201)をY方向(並進方向)に変位させる。
軸受フレーム232の後ろ側(Y方向正側)に、軸受平面フレーム232c近傍から軸受平面フレーム232d近傍まで延びる板バネ(変位抑制部)236が設けられている。板バネ236は、一端(Z方向正側の固定端)が軸受平面フレーム232dに固定され、他端(Z方向負側)が軸受平面フレーム232cの近傍で、並進フレーム231と摺動可能に接する(摺接する)。
例えば、並進平面フレーム231cの端部に挟持部236aが設けられており、挟持部236aが、板バネ236の他端を摺動可能に挟み込んでいる。並進フレーム231が所定範囲よりも後ろ(Y方向正側)に移動する場合、並進平面フレーム231cの端部が板バネ236の他端を押圧するため、逆方向(Y方向負側)に板バネ236の弾性力が作用する。板バネ236の弾性力により並進フレーム231の移動を抑えることで、並進フレーム231が所定範囲を超えて移動することを防いでいる。また、逆方向(前側)に並進フレーム231が移動した場合も同様に、板バネ236が並進フレーム231の変位を所定範囲に抑えている。
軸受フレーム232と並進フレーム231の間に並進検出センサ237が配置されている。例えば、並進検出センサ237は、並進平面フレーム231c近傍と軸受側面フレーム232bとの間に配置されている。なお、並進検出センサ237は、アンテナ201の並進方向の変位を検出できれば、任意の場所に設けてもよい。
並進検出センサ237は、例えば、差動変圧器(LVDT)である。差動変圧器とすることで、航空機などの飛翔体における環境条件(耐熱、耐震、防水)の下でも、精度よくアンテナ201の変位を検出できる。並進検出センサ237は、円筒状に延びるセンサ本体237aと、センサ本体237aから出入可能に延びるプローブ237bを有している。軸受フレーム232の内部にセンサ本体237aを固定し、プローブ237bの先端をアンテナ201の裏面(Y方向正側)に固定する。アンテナ201の並進方向の移動に応じて、プローブ237bがセンサ本体237aから出入されることにより、アンテナ201の変位量を検出する。
軸受フレーム232にはカウンターウェイト238が配置されている。例えば、カウンターウェイト238は、軸受平面フレーム232cに固定されている。カウンターウェイト238は、軸受側面フレーム232a近傍から軸受側面フレーム232b近傍まで平板状に延びている。
カウンターウェイト238の重さ及び位置により、並進機構部230及びアンテナ201の重心の位置を調整する。例えば、カウンターウェイト238を、軸受穴234(エレベーション軸)の近傍に配置しエレベーション軸上に重心が位置するようにすることで、エレベーション軸周りでバランスよく回転可能とする。
軸受フレーム232から後ろ側(Y軸方向正側)に向かって延びるように延伸フレーム233が設けられている。延伸フレーム233は、一端が軸受平面フレーム232dの端部に固定され、他端にアンテナ姿勢センサ239が取り付けられている。アンテナ姿勢センサ239は、ジャイロセンサなどであり、アンテナ201のアジマス方向及びエレベーション方向の姿勢や変位量を検出する。延伸フレーム233の先端部にアンテナ姿勢センサ239を配置することで、効率よくアンテナ201の姿勢や変位量を検出する。
次に、本実施の形態に係るアンテナを駆動制御するための構成について説明する。図16は、図6のブロックのうち、主に制御部120の機能ブロックを示している。なお、アンテナ駆動機構202は、図7等の2軸ジンバル機構部203、並進機構部230を含み、アンテナセンサ103は、図12等の並進検出センサ237、アンテナ姿勢センサ239を含む。
図16に示すように、制御部120は、例えば、センサ処理部130、制御演算部140、ドライバ部150を備えている。なお、センサ処理部130、制御演算部140、ドライバ部150の一部は、制御部120の内部に限らず、別のブロックとしてもよい。
センサ処理部130及び制御演算部140は、2軸ジンバル機構部203、並進機構部230を駆動するための駆動信号(駆動指令値)を生成する制御部を構成するとも言える。センサ処理部130は、アンテナセンサ103、機体センサ104が検出した検出信号を処理する。センサ処理部130は、ノイズ除去部131、連成制御演算部132を備えている。ノイズ除去部131は、アンテナセンサ103、機体センサ104が検出した検出信号からノイズを除去する。例えば、ノイズ除去部131は、ローパスフィルタなどである。
連成制御演算部132は、アンテナセンサ103、機体センサ104の検出信号に基づき、2軸ジンバル機構部203と並進機構部230を駆動に必要な座標変換や目標値の演算を行う。目標値の演算は、2軸ジンバル制御と並進制御をそれぞれ単独の動作をするのではなく、両者を連成して(対応させて)制御することが好ましい。特に並進制御については、2軸ジンバルの姿勢(AZ方向及びEL方向の姿勢)を演算に取り込みながら目標値を生成する。
連成制御演算部132は、観測モード、機体の姿勢や移動量、アンテナの姿勢や変位量などに基づき目標値を決定する。連成制御演算部132は、AZ(アジマス)制御パラメータとして、AZ目標角度、AZ角度、AZ角速度を生成し、EL(エレベーション)制御パラメータとして、EL目標角度、EL角度、EL角速度を生成し、並進制御パラメータとして、並進目標値、並進制御量を生成する。
制御演算部140は、PID(Proportional Integral Derivative)制御器や位相進み遅れ制御器、最適制御器などにより、各目標値に追従する制御を行う。制御演算部140は、AZ制御部141、EL制御部142、並進制御部143を備えている。
AZ(アジマス)制御部141は、入力されるAZ目標角度、AZ角度、AZ角速度に基づいて、アンテナ201がAZ目標角度まで移動するように、アンテナ201をアジマス方向に駆動するためのAZ駆動指令値を生成する。EL(エレベーション)制御部142は、入力されるEL目標角度、EL角度、EL角速度に基づいて、アンテナ201がEL目標角度まで移動するように、アンテナ201をエレベーション方向に駆動するためのEL駆動指令値を生成する。並進制御部143は、入力される並進目標値、並進制御量に基づいて、アンテナ201が並進目標値まで移動するように、アンテナ201を並進方向に駆動するための並進駆動指令値を生成する。
ドライバ部150は、アンテナ駆動機構202を駆動する駆動信号を生成する。ドライバ部150は、モータドライバ151、VCMドライバ152を備えている。モータドライバ151は、2軸ジンバル機構部203を駆動するための駆動部である。モータドライバ151は、入力されるAZ駆動指令値に基づいてAZ駆動電圧を生成し、生成したAZ駆動電圧を2軸ジンバル機構部203(ジンバルベース部210のアジマス用モータ)へ供給する。モータドライバ151は、入力されるEL駆動指令値に基づいてEL駆動電圧を生成し、生成したEL駆動電圧を2軸ジンバル機構部203(ジンバル支持部220のエレベーション用モータ)へ供給する。
VCM(ボイスコイルモータ)ドライバ152は、並進機構部230を駆動するための駆動部である。VCMドライバ152は、入力される並進駆動指令値に基づいて、並進方向にアンテナ201を駆動するVCM印加電圧を生成し、VCM印加電圧を並進機構部230(ボイスコイルモータである並進用モータ235a及び235b)へ供給する。
次に、本実施の形態に係るアンテナの駆動制御動作の例について説明する。なお、以下の制御動作は、制御部120のうちセンサ処理部130と制御演算部140のいずれかまたは両方で行われてもよい。図17及び図18を用いて、スポットライトモード時における、アンテナがアジマス方向に変位した場合の動作について説明する。スポットライトモード時、飛翔体1の移動に応じてアンテナの並進方向の位置が変位するため、このアンテナの変位量を低減するように制御する。すなわち、アジマス軸(第1の回転軸)周りの回転に応じた変位を補正する。なお、アンテナがアジマス方向及びエレベーション方向に変位した場合、アジマス方向及びエレベーション方向の回転による変位量に基づいてアンテナを並進制御する。すなわち、アジマス軸(第1の軸)周りの回転及びエレベーション軸(第2の軸)周りの回転に応じた変位を補正してもよい。
図17に示すように、高度一定かつ機体の向きと座標系が一致する直線飛行を想定すると、スポットライトモードの場合、飛行軌道上のt11、t12、t13におけるアジマス方向の制御として、それぞれ電波の照射方向が観測対象30へ向かうようにアンテナ201の角度を制御する。
t11において、制御部120は、飛翔体1の位置と観測対象30の位置から、飛行軌道の垂直方向に対し観測対象30への角度がθ1と求まるため、アジマス軸211を中心としてアンテナ201が(例えば飛行軌道の垂直方向から)このθ1の角度となるように2軸ジンバル機構部203を回転制御する。t12において、制御部120は、飛翔体1の位置と観測対象30の位置から、飛行軌道の垂直方向に観測対象30が位置することが求まるため、アンテナ201が(例えばθ1から)飛行軌道の垂直方向となるように2軸ジンバル機構部203を回転制御する。t13において、制御部120は、飛翔体1の位置と観測対象30の位置から、飛行軌道の垂直方向に対し観測対象30への角度がθ2と求まるため、アンテナ201(例えば飛行軌道の垂直方向から)がこのθ2の角度となるように2軸ジンバル機構部203を回転制御する。
このとき、本実施の形態では、図18に示すように、さらにアンテナ201を並進方向に制御する。制御部120は、観測モードに応じたアンテナの変位量に応じて並進制御し、また、アジマス方向の回転に応じたアンテナの変位量に応じて並進制御する。すなわち、アジマス制御により、アンテナ姿勢角が観測対象に向かうようにAZ目標角度を制御し、さらに、並進制御により、このAZ目標角度に基づいて、アジマス方向の回転に伴う並進補正量を決定する。例えば、並進方向の原点位置をA0とすると、A0より前(Y方向負側)のA1から、A0より後ろ(Y方向正側)A2までを並進機構部230での並進補正量とする。
t11において、アジマス制御によりアンテナ201を飛行軌道の垂直方向からθ1の角度に回転させる場合、並進制御を行わないと、アンテナ201はB11の位置となる。そうすると、飛行軌道の直線よりも後ろ側(Y方向正側)となり、観測対象との距離が長くなるため、観測精度に影響する。そこで、アンテナ201が飛行軌道の直線上となるように、すなわち、回転前後(変位前後)で並進方向の位置が同じになるように、変位前の位置へ向かって(変位した方向とは逆方向へ)アンテナ201を並進方向へ駆動する。制御部120は、アジマス軸211から飛行軌道の直線(もしくはアンテナの位置)までの直線L(回転半径)の長さとアジマス制御のθ1(回転角度)とから、θ1の回転による飛行軌道の直線(回転前の位置)までの差分(例えばA2−A1)が求まるため、これを並進補正量としてアンテナ201を並進方向の前のB12まで駆動するように並進機構部230を制御する。ここで、並進補正量dYは、例えば、回転半径Lと回転角度θ1を用いて、次の式(1)により算出する。
dY=L・(1−cos(θ1))/cos(θ1)・・・(1)
t12において、アジマス制御によりアンテナ201をθ1の角度から飛行軌道の垂直方向に回転させる場合、並進制御を行わないと、アンテナはB13の位置となる。制御部120は、直線Lの長さとアジマス制御のθ1とから並進補正量を求め、アンテナ201を並進方向の後ろのB14まで駆動するように並進機構部230を制御する。このときの並進補正量dYは、t11と同様に、例えば、上記の式(1)により算出する。
t13においてもt11と同様に、アジマス制御によりアンテナ201を飛行軌道の垂直方向からθ2の角度に回転させる場合、並進制御を行わないと、アンテナはB15の位置となる。制御部120は、直線Lの長さとアジマス制御のθ2とから並進補正量を求め、アンテナ201を並進方向の前のB16まで駆動するように並進機構部230を制御する。ここで、並進補正量dYは、例えば、回転半径Lと回転角度θ2を用いて、次の式(2)により算出する。
dY=L・(1−cos(θ2))/cos(θ2)・・・(2)
次に、図19を用いて、ストリップマップモード時における、レンジ方向に機体が動揺した場合の動作について説明する。ストリップマップモードでは、飛行軌道に対して常に垂直方向へ電波を照射するため、アンテナをアジマス方向に制御する必要はない。そのため、ここでは並進駆動制御のみを行う例について説明する。この例では、飛翔体1の移動(揺れ)に応じてアンテナの並進方向の位置が変位するため、このアンテナの変位量を低減するように制御する。また、この移動に応じたアンテナの変位量と、アンテナのアジマス軸やエレベーション軸周りの回転に応じた変位量とに基づいて、アンテナの駆動量を制御してもよい。
図19に示すように、t21で飛翔体1が飛行軌道上に位置し、t22及びt23で飛翔体1がレンジ方向に動揺し飛行軌道からずれたとする。t22において、飛翔体1が飛行軌道よりも進行方向右側(Y方向正側)へずれた場合、並進制御を行わないと、アンテナ201はB21の位置となる。そうすると、図18と同様に観測精度に影響するため、アンテナ201が飛行軌道の直線上となるように、すなわち、飛翔体の並進方向への移動に応じて、移動前後(変位前後)で並進方向の位置が同じになるように、変位前の位置へ向かってアンテナ201を並進方向へ駆動する。制御部120は、t22のときの飛翔体1の位置(実軌道)から、飛行軌道(目標軌道)の直線(移動前の位置)とアンテナの位置との差分が求まるため、これを並進補正量としてアンテナ201を並進方向の前のB22まで駆動するように並進機構部230を制御する。すなわち、飛翔体1の目標軌道(移動を予定している軌道)と飛翔体1の実軌道(実際に移動している軌道)との差分に応じて、アンテナ201の変位量及び駆動量(並進補正量)を算出する。ここで、並進補正量は、例えば、機体センサ104またはアンテナセンサ103である速度センサにより検出されたy軸方向の速度v(t)を、t21からt22までの時間積分することにより算出する。あるいは、並進補正量は、機体センサ104またはアンテナセンサ103である加速度センサにより検出されたy軸方向の角速度a(t)を、t21からt22までの二重時間積分することにより算出してもよい。
t23においてもt22と同様に、飛翔体1が飛行軌道よりも進行方向左側(Y方向負側)へずれた場合、並進制御を行わないと、アンテナ201はB23の位置となる。制御部120は、t23のときの飛翔体1の位置から並進補正量を求め、アンテナ201を並進方向の後ろのB24まで駆動するように並進機構部230を制御する。ここで、並進補正量は、例えば、機体センサ104やアンテナセンサ103である速度センサにより検出されたy軸方向の速度v(t)を、t22からt23までの時間積分することにより算出する。あるいは、並進補正量は、機体センサ104またはアンテナセンサ103である加速度センサにより検出されたy軸方向の角速度a(t)をt21からt22までの二重時間積分することにより算出してもよい。
次に、図20及び図21を用いて、エレベーション方向に機体が動揺した場合の動作について説明する。ここでは、並進駆動制御のみを行う例について説明する。この例では、飛翔体1の回転(揺れ)に応じてアンテナの並進方向の位置が変位するため、このアンテナの変位量を低減するように制御する。すなわち、エレベーション軸(第1または第2の回転軸)周りの回転に応じた変位を補正する。
図20のt31からt32のように、飛翔体1が動揺しエレベーション方向に傾いたとする。飛翔体1は機体の回転中心Oを中心として回転して傾き、t32において、アンテナ201は飛翔体1と同様に傾く。そうすると、アンテナ201はB31の位置で傾くため、制御部120は、エレベーション軸221周りにアンテナ201を回転させて、B32となるようにアンテナ201の傾きを補正する。このとき、並進制御を行わないと、アンテナ201はB32の位置のままとなる。そうすると、エレベーション方向(Z方向)で見たときに、アンテナが前側(Y方向負側)となり、観測対象との距離が短くなるため、観測精度に影響する。そこで、アンテナ201がエレベーション方向から見て直線上となるように、すなわち、飛翔体の傾き(回転)に応じて、飛翔体の傾きの前後(変位前後)で並進方向の位置が同じになるように、変位前の位置へ向かってアンテナ201を並進方向へ駆動する。図21に示すように、制御部120は、t32のときの飛翔体1の傾き(回転角度)と回転中心Oからアンテナもしくは機体(回転半径)により、エレベーション方向の位置の差分が求まるため、これを並進補正量としてアンテナ201を並進方向の後ろのB33まで駆動するように並進機構部230を制御する。ここで、t31からt32までのアンテナ201の移動距離は、機体センサ104やアンテナセンサ103である速度センサにより検出されたy軸方向(EL方向)の速度v(t)の時間積分により求まるため、回転半径Rは、この速度v(t)の時間積分と、機体センサ104である姿勢センサにより検出された機体姿勢角度変化Θとを用いて、次の式(3)により算出する。
R=∫v(t)dt/Θ・・・(3)
この回転半径Rと、アンテナセンサ103である姿勢センサにより検出されたアンテナ姿勢角度変化Φを用いて、並進補正量dYは、次の式(4)により算出する。
dY=R・Θ・atan(Φ)=∫v(t)dt・atan(Φ)・・・(4)
以上のように、本実施の形態では、アンテナ面を駆動する並進機構を2軸ジンバル機構に設け、観測モードや機体動揺に対して並進機構単独ではなく2軸ジンバルと連成・協調する並進機構目標値と2軸ジンバル目標値を与えて駆動することにより、目標経路に対する誤差を圧縮し、アンテナ面変動を抑える。これにより、アンテナの並進方向の変動を抑えることができるため、観測精度を向上することができ、観測画像の劣化を抑えることができる。
関連する技術のようにアンテナを2軸ジンバルのみで制御する場合、機体動揺の大きい小型航空機やヘリコプターにレーダ装置では、アンテナから出力する波長3cm程度の電波に対して、アンテナ面が大きく動揺し波長位相ずれが発生するため、観測精度が低下し、観測結果として表示する観測画像が劣化する。例えば、2軸ジンバルのみではアンテナ面変動を波長3cmの10%である0.3cmに抑えることが困難であった。
本実施の形態では、小型機やヘリコプターの機体動揺に対して、2軸ジンバルのアジマス制御及びエレベーション制御によりアンテナ指向方向を±0.3度以下に制御しつつ、アンテナ面位置が回転により直線飛行経路に対してオフセットするため、オフセットしたアンテナ面位置を並進機構により駆動する。アンテナ面位置の駆動量は2軸ジンバルの姿勢に依存するため、2軸ジンバルの目標値と並進機構の目標値を連成して計算し、制御演算する。これにより、直線飛行経路に対してアンテナ面位置を波長3cmの10%程度である0.3cmの誤差に抑えることができるため、飛翔体上で鮮明な観測画像を取得し、地表などの観測をリアルタイムに行うことができる。
(実施の形態2)
以下、図面を参照して実施の形態2について説明する。本実施の形態では、実施の形態1に加えて、機体の動揺補正を行う。図22は、本実施の形態に係るレーダ装置100のうち、主に制御部120の機能ブロックを示している。なお、他の構成については、実施の形態1と同様である。
図22では、実施の形態1の図16に加えて、制御演算部140に動揺補正制御部144を備え、ドライバ部150に動揺補正ドライバ153を備え、アンテナ駆動機構202に動揺補正機構部204を備えている。本実施の形態では、連成制御演算部132は、機体センサ104が検出した機体の動揺に基づき、動揺補正目標値、動揺補正制御量を生成する。
動揺補正制御部144は、入力される動揺補正目標値、動揺補正制御量に基づいて、アンテナ201を動揺補正するための動揺補正指令値を生成する。動揺補正ドライバ153は、入力される動揺補正指令値に基づいて、アンテナを動揺補正する動揺補正駆動電圧を生成し、動揺補正電圧を動揺補正機構部204へ供給する。
次に、図23及び図24を用いて、エレベーション方向に機体が動揺した場合の動作について説明する。図23のt41からt42のように、飛翔体1が動揺しエレベーション方向に傾いたとする。飛翔体1は機体の回転中心Oを中心として回転して傾き、t42において、アンテナ201は飛翔体1と同様に傾く。このとき、動揺制御を行わないと、アンテナ201はB41の位置となる。そうすると、アンテナ201が機体と同様に傾いているため、観測対象に対し精度よく電波を照射できない。そこで、本実施の形態では、アンテナ201の傾きの変動を抑えるように、動揺補正を行う。制御部120は、t42のときの飛翔体1の傾きから、動揺補正に必要な傾きが求まるため、これを動揺補正量としてアンテナ201をエレベーション方向にB42まで回転するように、動揺補正機構部204を制御する。なお、動揺補正機構部204により、例えば、アンテナ201の略中央を中心として、アンテナ201を回転させて傾きを補正する。
さらに、図24に示すように、実施の形態1と同様にアンテナ201を並進方向に制御する。すなわち、動揺補正制御により動揺補正目標を制御し、さらに、並進制御により、この動揺補正目標に基づいて並進補正量を決定する。この例では、動揺補正に応じたアンテナの変位量が低減するように制御する。また、この動揺補正に応じたアンテナの変位量と、実施の形態1のような移動に応じたアンテナの変位量とに基づいて、アンテナの駆動量を制御してもよい。
t42において、動揺補正制御によりアンテナ201の位置をB411からB42とすると、エレベーション方向(Z方向)で見たときに、アンテナが前側(Y方向負側)となるため、観測精度に影響する。そこで、実施の形態1と同様に、アンテナ201がエレベーション方向から見て直線上となるように、アンテナ201を並進方向へ駆動する。制御部120は、t42のときの飛翔体1の傾きと動揺補正量から、エレベーション方向の位置の差分が求まるため、これを並進補正量としてアンテナ201を並進方向の後ろのB43へ駆動するように並進機構部230を制御する。ここで、t41からt42までのアンテナ201の移動距離は、機体センサ104やアンテナセンサ103である速度センサにより検出されたy軸方向(EL方向)の速度v(t)の時間積分により求まるため、回転半径Rは、この速度v(t)の時間積分と、機体センサである姿勢センサにより検出された機体姿勢角度変化Θとを用いて、次の式(5)により算出する。
R=∫v(t)dt/Θ・・・(5)
この回転半径Rと、アンテナセンサ103である姿勢センサにより検出されたアンテナ姿勢角度変化Φを用いて、並進移動量Yは、次の式(6)により算出する。
dY=R・Θ・atan(Φ)=∫v(t)dt・atan(Φ)・・・(6)
以上のように、実施の形態1に加えて動揺補正を行うことにより、飛翔体の様々な動揺に対応することができるため、小型機やヘリコプターなどの大きい動揺を補正することができる。このため、さらに観測精度を向上することができ、より鮮明な観測画像を取得することができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、上記実施の形態の適用は合成開口レーダ装置に限らない。小型航空機やへりに搭載する観測装置において、基準面の位置を一定に保つ必要のあるシステムに共通で使用可能である。例えば、捜索レーダなどに適用してもよい。
上述の実施形態における各構成は、ハードウェア又はソフトウェア、もしくはその両方によって構成され、1つのハードウェア又はソフトウェアから構成してもよいし、複数のハードウェア又はソフトウェアから構成してもよい。レーダ装置の各機能(各処理)を、CPUやメモリ等を有するコンピュータにより実現してもよい。例えば、記憶装置(記憶媒体)に実施形態における制御方法を行うための制御プログラムを格納し、各機能を、記憶装置に格納された制御プログラムをCPUで実行することにより実現してもよい。