JPWO2017094600A1 - パウダー状害虫忌避組成物、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
害虫忌避製品の形態としてパウダータイプに着目し、害虫忌避効果、及び人体や動物への安全性に優れていることは勿論のこと、使用感や持続性の点でも満足のいくアルコールフリーのパウダー状害虫忌避組成物を提供する。ディート、３−（Ｎ−ｎ−ブチル−Ｎ−アセチル）アミノプロピオン酸エチルエステル、及びイカリジンからなる群から選択される少なくとも一種を有効成分とする害虫忌避剤と、グリコール系溶剤を有効成分とする刺激緩和剤と、タルクを有効成分とする水分保持剤と、ケイ酸化合物を有効成分とする油分吸収剤と、を含有するパウダー状害虫忌避組成物であって、前記水分保持剤の配合量（ａ）と前記油分吸収剤の配合量（ｂ）との比（ａ：ｂ）は、重量比で３：１〜２０：１であるパウダー状害虫忌避組成物。
Description
本発明は、蚊、ブヨ、サシバエ、イエダニ、ナンキンムシ等の害虫から人体や動物を守るためのパウダー状害虫忌避組成物、及びその製造方法に関する。
従来の害虫忌避製品は、アルコールをベースとしたエアゾールタイプのものが主流であった。例えば、従来のエアゾールタイプの害虫忌避製品として、特許文献１及び特許文献２が知られている。特許文献１の害虫忌避組成物は、無機粉末又は有機粉末と無水ケイ酸とを特定の比率で配合し、これを害虫忌避成分、アルコール、噴射剤とともにエアゾール容器に充填したものである。特許文献２の忌避剤組成物は、無水ケイ酸多孔質微粒子に害虫忌避剤を担持させ、これを合成樹脂微粒子、アルコール、噴射剤とともにエアゾール容器に充填したものである。また、エアゾールタイプ以外の害虫忌避製品として、特許文献３のようなウェットティッシュタイプの製品も開発されている。特許文献３の害虫忌避剤は、不織布に、ケイ酸化合物、害虫忌避成分、アルコールを含浸させたものである。
しかしながら、特許文献１及び特許文献２のようなエアゾールタイプの害虫忌避製品は、害虫忌避成分を微粒子化して皮膚面に噴霧するため、塗布面の塗りむらが生じ易くなる。その結果、皮膚に薬剤が付着しない僅かな部分が発生することがあり、この僅かな部分において蚊の刺咬、吸血行動を招く虞がある。また、アルコールや害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物（薬剤）の飛散によって鼻粘膜に刺激を感じることがあり、使用感の点において改善が求められる。特許文献３の害虫忌避剤は、エアゾールタイプではないため、薬剤の飛散の問題は少ないが、特許文献１及び特許文献２の害虫忌避製品と同様にアルコールを使用しているため、アルコール等の刺激に過敏な人にとっては依然として使い辛いものである。
このような理由から、最近では、薬剤が飛散し難く、アルコールを使用しないタイプの害虫忌避製品を求めるニーズが増加しつつある。本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、害虫忌避組成物の製品形態としてパウダータイプに着目し、害虫忌避効果、及び人体や動物への安全性に優れていることは勿論のこと、使用感や持続性の点でも満足のいくアルコールフリーのパウダー状害虫忌避組成物、及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明にかかるパウダー状害虫忌避組成物の特徴構成は、
ディート、３−（Ｎ−ｎ−ブチル−Ｎ−アセチル）アミノプロピオン酸エチルエステル、及びイカリジンからなる群から選択される少なくとも一種を有効成分とする害虫忌避剤と、
グリコール系溶剤を有効成分とする刺激緩和剤と、
タルクを有効成分とする水分保持剤と、
ケイ酸化合物を有効成分とする油分吸収剤と、
を含有するパウダー状害虫忌避組成物であって、
前記水分保持剤の配合量（ａ）と前記油分吸収剤の配合量（ｂ）との比（ａ：ｂ）は、重量比で３：１〜２０：１であることにある。
ディート、３−（Ｎ−ｎ−ブチル−Ｎ−アセチル）アミノプロピオン酸エチルエステル、及びイカリジンからなる群から選択される少なくとも一種を有効成分とする害虫忌避剤と、
グリコール系溶剤を有効成分とする刺激緩和剤と、
タルクを有効成分とする水分保持剤と、
ケイ酸化合物を有効成分とする油分吸収剤と、
を含有するパウダー状害虫忌避組成物であって、
前記水分保持剤の配合量（ａ）と前記油分吸収剤の配合量（ｂ）との比（ａ：ｂ）は、重量比で３：１〜２０：１であることにある。
本構成のパウダー状害虫忌避組成物によれば、タルクを有効成分とする水分保持剤と、ケイ酸化合物を有効成分とする油分吸収剤とを上記の適切な配合比で含んでいるため、使用者がパウダー状害虫忌避組成物を皮膚に塗布すると、皮脂等の油分がケイ酸化合物に適度に吸収されつつ、タルクが適度に水分を保持することにより、べとつきを抑えながら、しっとりとした感触が得られる。また、タルク及びケイ酸化合物は安定した物質であるため、害虫忌避剤の効果を弱める虞がなく、刺激緩和剤の効果と相まって、低刺激でありながら忌避効果の高い製品となる。
本発明にかかるパウダー状害虫忌避組成物において、
前記グリコール系溶剤は、１，３−ブチレングリコールであることが好ましい。
前記グリコール系溶剤は、１，３−ブチレングリコールであることが好ましい。
本構成のパウダー状害虫忌避組成物によれば、グリコール系溶剤として１，３−ブチレングリコールを使用することにより、優れた使用感を実現しながら、特に刺激緩和効果を高めることができる。
本発明にかかるパウダー状害虫忌避組成物において、
前記タルクは、ＪＩＳ Ｋ５１０１に準拠して測定される見かけ比重が０．４〜０．６ｇ／ｃｃであることが好ましい。
前記タルクは、ＪＩＳ Ｋ５１０１に準拠して測定される見かけ比重が０．４〜０．６ｇ／ｃｃであることが好ましい。
本構成のパウダー状害虫忌避組成物によれば、タルクの見かけ比重が上記の適切な範囲にあるため、タルクに水分が適度に保持され、よりしっとり感を得ることができる。
本発明にかかるパウダー状害虫忌避組成物において、
前記タルクは、平均粒径が２０μｍ以上であることが好ましい。
前記タルクは、平均粒径が２０μｍ以上であることが好ましい。
本構成のパウダー状害虫忌避組成物によれば、タルクの平均粒径を２０μｍ以上とすることで、タルクが皮膚に確実に付着し、よりしっとり感を得ることができる。
本発明にかかるパウダー状害虫忌避組成物において、
前記ケイ酸化合物は、無水ケイ酸であることが好ましい。
前記ケイ酸化合物は、無水ケイ酸であることが好ましい。
本構成のパウダー状害虫忌避組成物によれば、ケイ酸化合物として無水ケイ酸を使用することにより、油分の吸収性がとくに良好なものとなり、皮脂の多い人にとってべとつき感を低減できる有効な製品となる。
本発明にかかるパウダー状害虫忌避組成物において、
前記ケイ酸化合物は、比表面積が５〜１００ｍ２／ｇであることが好ましい。
前記ケイ酸化合物は、比表面積が５〜１００ｍ２／ｇであることが好ましい。
本構成のパウダー状害虫忌避組成物によれば、ケイ酸化合物の比表面積が上記の適切な範囲にあるため、皮脂等の油分を効率よく吸収することができる。
本発明にかかるパウダー状害虫忌避組成物において、
アルコールを含まないことが好ましい。
アルコールを含まないことが好ましい。
本構成のパウダー状害虫忌避組成物によれば、アルコールを含まないため、刺激に過敏な人でも安心して使用することができる。
上記課題を解決するための本発明にかかるパウダー状害虫忌避組成物の製造方法の特徴構成は、
ディート、３−（Ｎ−ｎ−ブチル−Ｎ−アセチル）アミノプロピオン酸エチルエステル、及びイカリジンからなる群から選択される少なくとも一種を有効成分とする害虫忌避剤、及びグリコール系溶剤を有効成分とする刺激緩和剤を混合する混合工程と、
前記混合工程により得られた混合物を、ケイ酸化合物を有効成分とする油分吸収剤に吸収させる吸収工程と、
前記吸収工程が完了した油分吸収剤に、タルクを有効成分とする水分保持剤を添加する添加工程と、
前記添加工程により得られた各成分の混合物を撹拌する撹拌工程と、
を包含するパウダー状害虫忌避組成物の製造方法であって、
前記添加工程における前記水分保持剤の添加量（ａ）と、前記吸収工程における前記油分吸収剤の使用量（ｂ）との比（ａ：ｂ）は、重量比で３：１〜２０：１であることにある。
ディート、３−（Ｎ−ｎ−ブチル−Ｎ−アセチル）アミノプロピオン酸エチルエステル、及びイカリジンからなる群から選択される少なくとも一種を有効成分とする害虫忌避剤、及びグリコール系溶剤を有効成分とする刺激緩和剤を混合する混合工程と、
前記混合工程により得られた混合物を、ケイ酸化合物を有効成分とする油分吸収剤に吸収させる吸収工程と、
前記吸収工程が完了した油分吸収剤に、タルクを有効成分とする水分保持剤を添加する添加工程と、
前記添加工程により得られた各成分の混合物を撹拌する撹拌工程と、
を包含するパウダー状害虫忌避組成物の製造方法であって、
前記添加工程における前記水分保持剤の添加量（ａ）と、前記吸収工程における前記油分吸収剤の使用量（ｂ）との比（ａ：ｂ）は、重量比で３：１〜２０：１であることにある。
本構成のパウダー状害虫忌避組成物の製造方法によれば、上述したパウダー状害虫忌避組成物と同様の優れた作用効果を奏する。すなわち、添加工程におけるタルクを有効成分とする水分保持剤の添加量と、吸収工程におけるケイ酸化合物を有効成分とする油分吸収剤の使用量とが上記の適切な重量比に設定されているため、その後の撹拌工程を経て得られたパウダー状害虫忌避組成物は、使用者が皮膚に塗布すると、皮脂等の油分がケイ酸化合物に適度に吸収されつつ、タルクが適度に水分を保持することにより、べとつきを抑えながら、しっとりとした感触が得られる。また、タルク及びケイ酸化合物は安定した物質であるため、害虫忌避剤の効果を弱める虞がなく、刺激緩和剤の効果と相まって、低刺激でありながら忌避効果の高い製品を製造することができる。
本発明のパウダー状害虫忌避組成物は、基本的な成分として、（１）害虫忌避剤、（２）刺激緩和剤、（３）水分保持剤、及び（４）油分吸収剤を含有する。一方、本発明のパウダー状害虫忌避組成物は、エタノール、イソプロパノール、プロパノール等のアルコールを含まない。以下、本発明のパウダー状害虫忌避組成物の各成分について詳細に説明する。
（１）害虫忌避剤
害虫忌避剤は、害虫に対して忌避作用や吸血阻害作用を有する物質である。害虫忌避剤の例として、ディート、３−（Ｎ−ｎ−ブチル−Ｎ−アセチル）アミノプロピオン酸エチルエステル、イカリジン、ピカリディン、シトロネラール、シトロネロール、シトラール、リナロール、テルピネオール、メントール、ｐ−メンタン−３，８−ジオール、α−ピネン、カンファー、ゲラニオール、カラン−３，４−ジオール等の合成化合物が挙げられる。また、桂皮、シトロネラ、レモングラス、クローバ、ベルガモット、月桂樹、ユーカリ等の天然物も使用可能である。天然物は、精油や抽出液などの形態で使用することができる。上掲の害虫忌避剤のうち、ディート、３−（Ｎ−ｎ−ブチル−Ｎ−アセチル）アミノプロピオン酸エチルエステル、及びイカリジンが好ましく使用される。ディートは、長年にわたる使用実績がある。３−（Ｎ−ｎ−ブチル−Ｎ−アセチル）アミノプロピオン酸エチルエステルは、ディートとほぼ同等の忌避効果を有しながら、ディートよりも人体に対する安全性が高い。イカリジンは、害虫忌避効果が高く、安全性も高い。なお、上掲の各害虫忌避剤は、単独で用いてもよいし、二種以上の混合物として用いてもよい。害虫忌避剤の配合量は、パウダー状害虫忌避組成物の全体量に対して１〜１５重量％、好ましくは３〜１４重量％、より好ましくは６〜１２重量％とされる。配合量が１重量％より少ない場合、十分な害虫忌避作用が得られない虞がある。配合量が１５重量％より多い場合、刺激が強くなり過ぎる虞がある。
害虫忌避剤は、害虫に対して忌避作用や吸血阻害作用を有する物質である。害虫忌避剤の例として、ディート、３−（Ｎ−ｎ−ブチル−Ｎ−アセチル）アミノプロピオン酸エチルエステル、イカリジン、ピカリディン、シトロネラール、シトロネロール、シトラール、リナロール、テルピネオール、メントール、ｐ−メンタン−３，８−ジオール、α−ピネン、カンファー、ゲラニオール、カラン−３，４−ジオール等の合成化合物が挙げられる。また、桂皮、シトロネラ、レモングラス、クローバ、ベルガモット、月桂樹、ユーカリ等の天然物も使用可能である。天然物は、精油や抽出液などの形態で使用することができる。上掲の害虫忌避剤のうち、ディート、３−（Ｎ−ｎ−ブチル−Ｎ−アセチル）アミノプロピオン酸エチルエステル、及びイカリジンが好ましく使用される。ディートは、長年にわたる使用実績がある。３−（Ｎ−ｎ−ブチル−Ｎ−アセチル）アミノプロピオン酸エチルエステルは、ディートとほぼ同等の忌避効果を有しながら、ディートよりも人体に対する安全性が高い。イカリジンは、害虫忌避効果が高く、安全性も高い。なお、上掲の各害虫忌避剤は、単独で用いてもよいし、二種以上の混合物として用いてもよい。害虫忌避剤の配合量は、パウダー状害虫忌避組成物の全体量に対して１〜１５重量％、好ましくは３〜１４重量％、より好ましくは６〜１２重量％とされる。配合量が１重量％より少ない場合、十分な害虫忌避作用が得られない虞がある。配合量が１５重量％より多い場合、刺激が強くなり過ぎる虞がある。
（２）刺激緩和剤
刺激緩和剤は、害虫忌避剤による皮膚への刺激を緩和するために添加される物質である。刺激緩和剤としては、グリコール系溶剤が使用される。グリコール系溶剤は、Ｃ3〜Ｃ6のグリコールが好ましく、例えば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、１，３−ブチレングリコール等が挙げられる。これらのうち、刺激緩和作用が高い１，３−ブチレングリコールがより好ましく使用される。ちなみに、１，３−ブチレングリコールを初めとするＣ3〜Ｃ6のグリコールは、それ自体皮膚から吸収され難いので、害虫忌避剤の経皮吸収を軽減することにも有効となる。なお、上掲のグリコール系溶剤は、単独で用いてもよいし、二種以上の混合物として用いてもよい。刺激緩和剤の配合量は、パウダー状害虫忌避組成物の全体量に対して１〜１５重量％、好ましくは５〜１０重量％、より好ましくは６〜８重量％とされる。配合量が１重量％より少ない場合、害虫忌避剤の刺激を十分に緩和できない虞がある。配合量が１５重量％より多い場合、多量のグリコール系溶剤によってべとつき感が増大し、使用感が悪化することがある。
刺激緩和剤は、害虫忌避剤による皮膚への刺激を緩和するために添加される物質である。刺激緩和剤としては、グリコール系溶剤が使用される。グリコール系溶剤は、Ｃ3〜Ｃ6のグリコールが好ましく、例えば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、１，３−ブチレングリコール等が挙げられる。これらのうち、刺激緩和作用が高い１，３−ブチレングリコールがより好ましく使用される。ちなみに、１，３−ブチレングリコールを初めとするＣ3〜Ｃ6のグリコールは、それ自体皮膚から吸収され難いので、害虫忌避剤の経皮吸収を軽減することにも有効となる。なお、上掲のグリコール系溶剤は、単独で用いてもよいし、二種以上の混合物として用いてもよい。刺激緩和剤の配合量は、パウダー状害虫忌避組成物の全体量に対して１〜１５重量％、好ましくは５〜１０重量％、より好ましくは６〜８重量％とされる。配合量が１重量％より少ない場合、害虫忌避剤の刺激を十分に緩和できない虞がある。配合量が１５重量％より多い場合、多量のグリコール系溶剤によってべとつき感が増大し、使用感が悪化することがある。
（３）水分保持剤
水分保持剤は、しっとりとした感触（いわゆる、しっとり感）を出すために添加される物質である。水分保持剤としては、タルクが使用される。タルクは、ＪＩＳ Ｋ５１０１に準拠して測定される見かけ比重が０．４〜０．６ｇ／ｃｃであることが好ましい。見かけ比重が０．４ｇ／ｃｃ未満の場合、しっとり感よりもべとつき感の方が強く感じられるようになり、使用感が悪化することがある。見かけ比重が０．６ｇ／ｃｃを超える場合、サラサラ感が強くなり、粉落ちする可能性がある。また、タルクの平均粒径は、２０μｍ以上であることが好ましい。平均粒径を２０μｍ以上とすることで、タルクが皮膚に確実に付着し、よりしっとり感を得ることができる。平均粒径が２０μｍ未満の場合、皮膚に塗布したときに害虫忌避組成物が白く目立つ、いわゆる、白残りが生じる場合がある。なお、タルクは、カオリン、ベントナイト等の他の無機粉末と混合した状態で使用することも可能である。水分保持剤の配合量は、パウダー状害虫忌避組成物の全体量に対して５０〜９０重量％、好ましくは５５〜８５重量％、より好ましくは６３〜８３．５重量％とされる。配合量が５０重量％より少ない場合、十分に水分を保持できなくなるため、粉落ちが発生する虞がある。配合量が９０重量％より多い場合、しっとり感よりもべとつき感の方が強く感じられるようになり、使用感が悪化することがある。
水分保持剤は、しっとりとした感触（いわゆる、しっとり感）を出すために添加される物質である。水分保持剤としては、タルクが使用される。タルクは、ＪＩＳ Ｋ５１０１に準拠して測定される見かけ比重が０．４〜０．６ｇ／ｃｃであることが好ましい。見かけ比重が０．４ｇ／ｃｃ未満の場合、しっとり感よりもべとつき感の方が強く感じられるようになり、使用感が悪化することがある。見かけ比重が０．６ｇ／ｃｃを超える場合、サラサラ感が強くなり、粉落ちする可能性がある。また、タルクの平均粒径は、２０μｍ以上であることが好ましい。平均粒径を２０μｍ以上とすることで、タルクが皮膚に確実に付着し、よりしっとり感を得ることができる。平均粒径が２０μｍ未満の場合、皮膚に塗布したときに害虫忌避組成物が白く目立つ、いわゆる、白残りが生じる場合がある。なお、タルクは、カオリン、ベントナイト等の他の無機粉末と混合した状態で使用することも可能である。水分保持剤の配合量は、パウダー状害虫忌避組成物の全体量に対して５０〜９０重量％、好ましくは５５〜８５重量％、より好ましくは６３〜８３．５重量％とされる。配合量が５０重量％より少ない場合、十分に水分を保持できなくなるため、粉落ちが発生する虞がある。配合量が９０重量％より多い場合、しっとり感よりもべとつき感の方が強く感じられるようになり、使用感が悪化することがある。
（４）油分吸収剤
油分吸収剤は、皮脂等の油分を吸収するために添加される物質である。油分吸収剤としては、ケイ酸化合物が使用される、ケイ酸化合物は、無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、疎水性シリカ、ケイソウ土等が挙げられる。これらのうち、油分吸収効果が高い無水ケイ酸がより好ましく使用される。ケイ酸化合物は、比表面積が５〜１００ｍ2／ｇであることが好ましい。比表面積が５ｍ2／ｇ未満の場合、油分吸収能力が不足してべとつきを生じ易くなる。比表面積が１００ｍ2／ｇを超える場合、サラサラ感が強くなり、粉落ちする可能性がある。なお、上掲のケイ酸化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上の混合物として用いてもよい。油分吸収剤の配合量は、パウダー状害虫忌避組成物の全体量に対して１〜５０重量％、好ましくは３〜３０重量％、より好ましくは４．５〜２１重量％とされる。配合量が１重量％より少ない場合、油分吸収能力が不足し、べとつきを生じ易くなる。配合量が５０重量％より多い場合、油分吸収能力が過剰となり、重みが感じられて使用感が悪化することがある。
油分吸収剤は、皮脂等の油分を吸収するために添加される物質である。油分吸収剤としては、ケイ酸化合物が使用される、ケイ酸化合物は、無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、疎水性シリカ、ケイソウ土等が挙げられる。これらのうち、油分吸収効果が高い無水ケイ酸がより好ましく使用される。ケイ酸化合物は、比表面積が５〜１００ｍ2／ｇであることが好ましい。比表面積が５ｍ2／ｇ未満の場合、油分吸収能力が不足してべとつきを生じ易くなる。比表面積が１００ｍ2／ｇを超える場合、サラサラ感が強くなり、粉落ちする可能性がある。なお、上掲のケイ酸化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上の混合物として用いてもよい。油分吸収剤の配合量は、パウダー状害虫忌避組成物の全体量に対して１〜５０重量％、好ましくは３〜３０重量％、より好ましくは４．５〜２１重量％とされる。配合量が１重量％より少ない場合、油分吸収能力が不足し、べとつきを生じ易くなる。配合量が５０重量％より多い場合、油分吸収能力が過剰となり、重みが感じられて使用感が悪化することがある。
本発明のパウダー状害虫忌避組成物は、上記の（１）害虫忌避剤、（２）刺激緩和剤、（３）水分保持剤、及び（４）油分吸収剤を原材料として、例えば、以下の手順により製造することができる。
初めに、害虫忌避剤及び刺激緩和剤を混合する（混合工程）。次に、混合工程により得られた混合物を、油分吸収剤に吸収させる（吸収工程）。さらに、吸収工程が完了した油分吸収剤に、水分保持剤を添加する（添加工程）。最後に、添加工程により得られた各成分の混合物を撹拌する（撹拌工程）。これにより、本発明のパウダー状害虫忌避組成物が完成する。
ここで、パウダー状害虫忌避組成物の各成分の配合量について、本発明者らが試行錯誤を行ったところ、害虫忌避効果、及び人体や動物への安全性を確保しながら、使用感及び持続性に優れた製品とするためには、上記の各成分のうち、特に、水分保持剤の配合量と油分吸収剤の配合量とを適切な比率に設定することが重要であることが判明した。具体的には、水分保持剤の配合量（添加量）をａとし、油分吸収剤の配合量（使用量）をｂとすると、水分保持剤の配合量と油分吸収剤の配合量との比（ａ：ｂ）が、重量比で３：１〜２０：１となるように、好ましくは３：１〜１９：１となるように設定する。配合比が３：１より小さい場合、すなわち、水分保持剤の配合量が油分吸収剤の配合量よりも少な過ぎる場合、十分に水分を保持できなくなるため、粉落ちが発生する虞がある。配合比が２０：１より大きい場合、すなわち、水分保持剤の配合量が油分吸収剤の配合量よりも多過ぎる場合、しっとり感よりもべとつき感の方が強く感じられるようになり、使用感が悪化することがある。配合比を上記の適切な範囲に設定すれば、使用者がパウダー状害虫忌避組成物を皮膚に塗布すると、皮脂等の油分がケイ酸化合物に適度に吸収されつつ、タルクが適度に水分を保持することにより、べとつきを抑えながら、しっとりとした感触が得られる。また、タルク及びケイ酸化合物は安定した物質であるため、害虫忌避剤の効果を弱める虞がなく、刺激緩和剤の効果と相まって、低刺激でありながら忌避効果の高い製品となる。
本発明のパウダー状害虫忌避組成物には、害虫忌避剤、刺激緩和剤、水分保持剤、及び油分吸収剤の各効果を阻害しないものであれば、他の成分が含まれていても構わない。そのような成分の例として、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、光沢剤、他の粉末、消炎剤、制汗剤、保湿剤、界面活性剤、分散剤、香料等が挙げられる。
紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤としては、パラアミノ安息香酸、アミルサリシネート、オクチルシンナメート、メトキシ桂皮酸オクチル、２,４−ジヒドロキシベンゾフェノン、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。消炎剤としては、グリチルリチン酸ジカリウム、アラントイン、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、酢酸トコフェロール、カンフル等が挙げられる。制汗剤としては、硫酸アルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム、フェノールスルホン酸亜鉛等が挙げられる。光沢剤としては、フィルム（例えば、ポリエチレンテレフタレートにアルミニウムを蒸着したフィルム、ポリエチレンテレフタレートに金を蒸着したフィルム、ポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンとの積層フィルム、ポリエチレンテレフタレートとポリメチルメタクリレートとの積層フィルム、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンとの積層フィルム）の細断片、白雲母粉、金雲母粉等の天然雲母粉、天然雲母粉を溶融し不純物を取り除いた合成雲母粉、雲母粉に酸化チタンを混合した雲母チタン等の鉱物類、モノステアリン酸エチレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、ジステアリン酸トリエチレングリコール等の多価アルコールエステル類、色素を内包した寒天カプセル等が挙げられる。また、パウダー状害虫忌避組成物には、変性デンプン、シルク繊維粉末等の有機粉末を配合することも可能である。
このようにして得られた本発明のパウダー状害虫忌避組成物は、害虫（特に、蚊、ブヨ、サシバエ、イエダニ、ナンキンムシ等の刺咬害虫）に対する忌避効果が高いものでありながら、人体や動物への安全性に優れており、使用感や持続性の点でも満足のいく害虫忌避製品となる。そして、本発明のパウダー状害虫忌避組成物には、アルコールが一切使用されていないため、アルコール等に過敏な人にも安心して使用することができる。
本発明のパウダー状害虫忌避組成物の効能を確認するため、害虫忌避剤、刺激緩和剤、水分保持剤、及び油分吸収剤の配合を種々変更してパウダー状害虫忌避組成物（実施例１〜１１、比較例１〜３）を調製し、夫々の組成物を使用して害虫忌避効果確認試験（初期、一定時間経過後）、並びに官能試験（べとつき感、しっとり感）を実施した。
＜パウダー状害虫忌避組成物の調製＞
初めに、害虫忌避剤と刺激緩和剤との混合物を調製し、この混合物を油分吸収剤に吸収させた。そして、さらに水分保持剤を添加し、これを十分に混合することにより、実施例１〜１１及び比較例１〜３に係るパウダー状害虫忌避組成物を得た。各実施例及び比較例における害虫忌避剤、刺激緩和剤、水分保持剤、及び油分吸収剤の配合（単位：重量部）を表１に示す。
初めに、害虫忌避剤と刺激緩和剤との混合物を調製し、この混合物を油分吸収剤に吸収させた。そして、さらに水分保持剤を添加し、これを十分に混合することにより、実施例１〜１１及び比較例１〜３に係るパウダー状害虫忌避組成物を得た。各実施例及び比較例における害虫忌避剤、刺激緩和剤、水分保持剤、及び油分吸収剤の配合（単位：重量部）を表１に示す。
害虫忌避剤として、ディート、イカリジン、又は３−（Ｎ−ｎ−ブチル−Ｎ−アセチル）アミノプロピオン酸エチルエステルを使用した。
刺激緩和剤として、１，３−ブチレングリコールを使用した。
水分保持剤として、タルクを使用した。
油分吸収剤として、無水ケイ酸（商品名：カープレックス（登録商標）８０、デグサジャパン株式会社製）を使用した。
刺激緩和剤として、１，３−ブチレングリコールを使用した。
水分保持剤として、タルクを使用した。
油分吸収剤として、無水ケイ酸（商品名：カープレックス（登録商標）８０、デグサジャパン株式会社製）を使用した。
＜害虫忌避効果確認試験＞
密閉可能な開口部を備えたボックスにアカイエカの雌成虫２０匹を放ち、開口部からボックス内に実施例１〜１１及び比較例１〜３に係るパウダー状害虫忌避組成物（各２ｇ）を塗布した被験者の片腕を夫々挿入し、被験者の片腕に付着したアカイエカの数（ｎ１）をカウントした。また、ブランクとして、同条件のボックス内にパウダー状害虫忌避組成物を塗布していない被験者の片腕を挿入し、同様に被験者の片腕に付着したアカイエカの数（ｎ０）をカウントした。そして、アカイエカの忌避率を（ｎ０−ｎ１）／ｎ０〔％〕として算出した。忌避率の算出は、パウダー状害虫忌避組成物の使用開始直後（試験開始直後）、及び使用開始から４時間後について行った。害虫忌避効果確認試験の結果を表２に示す。
密閉可能な開口部を備えたボックスにアカイエカの雌成虫２０匹を放ち、開口部からボックス内に実施例１〜１１及び比較例１〜３に係るパウダー状害虫忌避組成物（各２ｇ）を塗布した被験者の片腕を夫々挿入し、被験者の片腕に付着したアカイエカの数（ｎ１）をカウントした。また、ブランクとして、同条件のボックス内にパウダー状害虫忌避組成物を塗布していない被験者の片腕を挿入し、同様に被験者の片腕に付着したアカイエカの数（ｎ０）をカウントした。そして、アカイエカの忌避率を（ｎ０−ｎ１）／ｎ０〔％〕として算出した。忌避率の算出は、パウダー状害虫忌避組成物の使用開始直後（試験開始直後）、及び使用開始から４時間後について行った。害虫忌避効果確認試験の結果を表２に示す。
＜官能試験＞
１０人のパネラーの肌に実施例１〜１１及び比較例１〜３に係るパウダー状害虫忌避組成物を夫々塗布し、その使用感を５段階で評価した。評価基準は以下に示す内容とし、１０人のパネラーの評価点の平均値を採用した。
〔べとつき感〕
５：全くべとつきを感じない。
４：極僅かにべとつきを感じる。
３：少しべとつきを感じる。
２：べとつきを感じる。
１：非常にべとつきを感じる。
〔しっとり感〕
５：十分にしっとり感がある。
４：しっとり感がある。
３：少ししっとり感がある。
２：極僅かにしっとり感がある。
１：全くしっとり感がない。
官能試験の結果を表３に示す。
１０人のパネラーの肌に実施例１〜１１及び比較例１〜３に係るパウダー状害虫忌避組成物を夫々塗布し、その使用感を５段階で評価した。評価基準は以下に示す内容とし、１０人のパネラーの評価点の平均値を採用した。
〔べとつき感〕
５：全くべとつきを感じない。
４：極僅かにべとつきを感じる。
３：少しべとつきを感じる。
２：べとつきを感じる。
１：非常にべとつきを感じる。
〔しっとり感〕
５：十分にしっとり感がある。
４：しっとり感がある。
３：少ししっとり感がある。
２：極僅かにしっとり感がある。
１：全くしっとり感がない。
官能試験の結果を表３に示す。
害虫忌避効果確認試験の結果より、実施例１〜１１及び比較例１〜３に係るパウダー状害虫忌避組成物は、何れも使用開始直後は十分な忌避効果が認められた。しかしながら、使用開始から４時間経過すると、実施例１〜１１に係るパウダー状害虫忌避組成物は、忌避効果の低下は殆ど見られず、持続性のあるものであったが、比較例１〜３に係るパウダー状害虫忌避組成物は、忌避効果の低下が確認された。なお、この忌避効果の低下は、時間の経過とともに顕著となった（データ省略）。
官能試験の結果については、実施例１〜１１に係るパウダー状害虫忌避組成物は、全体的に見て、「べとつき感」及び「しっとり感」の両方とも高評価（すなわち、べとつき感が少なく、しっとり感がある）であったが、比較例１〜３に係るパウダー状害虫忌避組成物は、「べとつき感」及び「しっとり感」を両立することができず、評価点自体も低いものであった。
以上の結果から、本発明のパウダー状害虫忌避組成物は、使用感や持続性が優れており、しかもアルコールを一切含まないため、刺激に過敏な人でも使い易い害虫忌避製品として有用であることが明らかとなった。
本発明のパウダー状害虫忌避組成物は、人体やペット用の害虫忌避製品として利用可能なものであるが、その他の用途として、例えば、殺虫、殺ダニ、殺菌、抗菌、消臭、及び防臭の用途で利用することも可能である。
Claims (8)
- ディート、３−（Ｎ−ｎ−ブチル−Ｎ−アセチル）アミノプロピオン酸エチルエステル、及びイカリジンからなる群から選択される少なくとも一種を有効成分とする害虫忌避剤と、
グリコール系溶剤を有効成分とする刺激緩和剤と、
タルクを有効成分とする水分保持剤と、
ケイ酸化合物を有効成分とする油分吸収剤と、
を含有するパウダー状害虫忌避組成物であって、
前記水分保持剤の配合量（ａ）と前記油分吸収剤の配合量（ｂ）との比（ａ：ｂ）は、重量比で３：１〜２０：１であるパウダー状害虫忌避組成物。 - 前記グリコール系溶剤は、１，３−ブチレングリコールである請求項１に記載のパウダー状害虫忌避組成物。
- 前記タルクは、ＪＩＳ Ｋ５１０１に準拠して測定される見かけ比重が０．４〜０．６ｇ／ｃｃである請求項１又は２に記載のパウダー状害虫忌避組成物。
- 前記タルクは、平均粒径が２０μｍ以上である請求項１〜３の何れか一項に記載のパウダー状害虫忌避組成物。
- 前記ケイ酸化合物は、無水ケイ酸である請求項１〜４の何れか一項に記載のパウダー状害虫忌避組成物。
- 前記ケイ酸化合物は、比表面積が５〜１００ｍ２／ｇである請求項１〜５の何れか一項に記載のパウダー状害虫忌避組成物。
- アルコールを含まない請求項１〜６の何れか一項に記載のパウダー状害虫忌避組成物。
- ディート、３−（Ｎ−ｎ−ブチル−Ｎ−アセチル）アミノプロピオン酸エチルエステル、及びイカリジンからなる群から選択される少なくとも一種を有効成分とする害虫忌避剤、及びグリコール系溶剤を有効成分とする刺激緩和剤を混合する混合工程と、
前記混合工程により得られた混合物を、ケイ酸化合物を有効成分とする油分吸収剤に吸収させる吸収工程と、
前記吸収工程が完了した油分吸収剤に、タルクを有効成分とする水分保持剤を添加する添加工程と、
前記添加工程により得られた各成分の混合物を撹拌する撹拌工程と、
を包含するパウダー状害虫忌避組成物の製造方法であって、
前記添加工程における前記水分保持剤の添加量（ａ）と、前記吸収工程における前記油分吸収剤の使用量（ｂ）との比（ａ：ｂ）は、重量比で３：１〜２０：１であるパウダー状害虫忌避組成物の製造方法。
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