JPWO2017047346A1 - 電子デバイス及び電子デバイスの封止方法 - Google Patents

電子デバイス及び電子デバイスの封止方法

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Abstract

本発明の課題は、高いガスバリアー性能を有する封止層を具備する電子デバイス、及び当該封止層を用いた電子デバイスの封止方法を提供することである。
本発明の電子デバイスは、基材上に機能性素子及び当該機能性素子を封止する封止層を有する電子デバイスであって、前記封止層が、第12〜14族の非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層と、当該第1のガスバリアー層に接して配置された遷移金属(M2)の酸化物を含有する第2のガスバリアー層の積層体であるか、又は前記非遷移金属(M1)及び前記遷移金属(M2)の複合酸化物を含有するガスバリアー層であるか、若しくは当該複合酸化物を含有する領域を有することを特徴とする。

Description

本発明は、電子デバイス及び電子デバイスの封止方法に関する。より詳しくは、高いガスバリアー性能を有する封止層を具備する電子デバイス、及び当該封止層を用いた電子デバイスの封止方法に関する。
電子デバイス、特に有機エレクトロルミネッセンスデバイス(以下、有機ELデバイス又は有機EL素子ともいう。)は、用いられている有機材料や電極の水分による劣化を防止するため、素子を被覆する封止層が形成される。有機EL素子用の封止層には、25±0.5℃、90±2%RHの環境下での水蒸気透過度(WVTR)として、10−5〜10−6g/m・24h台の非常に高いガスバリアー性が必要であるといわれている。
従来、ガスバリアー性基材として、気相成膜装置を用いたガスバリアーフィルムが製造されている。特に10−3g/m・24h台のガスバリアーフィルムについてはスパッタ法等の物理蒸着(PVD)成膜装置により製造されている。
また、水蒸気透過度が低く、光線透過率が高い透明ガスバリアー基材を得るために積層ガスバリアー膜が検討されている。例えば、特許文献1には、A群(タンタル(Ta)やニオブ(Nb)等を含む)酸化物、窒化物、酸化窒化物及びB群(ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、シリカ(Si)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)等を含む)酸化物、窒化物、酸化窒化物等をスパッタ法等にて積層成膜することで、積層ガスバリアー膜を得る技術が開示されているが、ガスバリアー性能が十分ではなく、10−2g/m・24h台のガスバリアー膜しか得られていない。
また、例えば特許文献2には、CVD(chemical vapor deposition:化学気相蒸着ともいう。)成膜法による窒化ケイ素(SiN)膜(厚さ2μm)と、ポリシラザン塗布膜(厚さ500nm)とを組み合わせた封止膜が提案されている。ただし、ポリシラザン塗布膜は塗布乾燥したのみで形成されており、吸湿能力のみを利用するものであるため、初期性能としては吸湿能力による見かけ上の水蒸気遮断機能を有するものの、吸湿能力が飽和した後には水蒸気遮断機能は失われ、限定した効果しか得られない。また、厚さ2μmのSiN膜の形成にも長い成膜時間を要する工程が必要である上に、厚さ2μmのSiN膜のみでは、要求されるガスバリアー性を満足することはできない。
また、上記のような方法では、デバイスが長時間、高温下や強い紫外線(UV)にさらされるため、素子性能が著しく劣化する問題もあった。そのため、高温や紫外線(UV)にさらされる時間を最小化し、要求性能を満足するガスバリアー性を有する封止層を具備する電子デバイス、及び当該封止層を用いた電子デバイスの封止方法が必要である。
さらに、有機化合物及び無機化合物(金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属炭化物等)の積層膜をいずれも蒸着法にて形成する方法が検討されてきたが、水蒸気透過度が低く、有機EL素子の封止を満足するものではなかった。
したがって、有機EL素子用の封止層として、生産性が高く、更にガスバリアー性能の高い封止層が求められていた。
特開2005−035128号公報 特開2013−200985号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、高いガスバリアー性能を有する封止層を具備する電子デバイス、及び当該封止層を用いた電子デバイスの封止方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、電子デバイスの封止層が、特定の金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層と、特定の金属(M2)の酸化物を含有する第2のガスバリアー層の積層体であるか、又は前記金属(M1)及び前記金属(M2)の複合酸化物を含有するガスバリアー層であるか、若しくは当該複合酸化物を含有する領域を有することによって、高いガスバリアー性能を有する封止層を具備する電子デバイスが得られることを見出した。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.基材上に機能性素子及び当該機能性素子を封止する封止層を有する電子デバイスであって、前記封止層が、第12〜14族の非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層と、当該第1のガスバリアー層に接して配置された遷移金属(M2)の酸化物を含有する第2のガスバリアー層の積層体であるか、又は前記非遷移金属(M1)及び前記遷移金属(M2)の複合酸化物を含有するガスバリアー層であるか、若しくは当該複合酸化物を含有する領域を有することを特徴とする電子デバイス。
2.前記第1のガスバリアー層及び第2のガスバリアー層の積層体の厚さ方向の一部に、前記非遷移金属(M1)及び前記遷移金属(M2)の複合酸化物を含有する領域が存在することを特徴とする第1項に記載の電子デバイス。
3.前記複合酸化物を含有するガスバリアー層又は領域が、非遷移金属をM1、遷移金属をM2、酸素をO、及び窒素をNとしたときに、(M1)(M2)で表される複合酸化物を含有し、当該複合酸化物の組成が、下記関係式(1)を満たすことを特徴とする第1項又は第2項に記載電子デバイス。
関係式(1)(2y+3z)/(a+bx)<1.0
(ただし、M1:非遷移金属、M2:遷移金属、O:酸素、N:窒素、x、y、z:化学量論係数、0.02≦x≦49、0<y、0≦z、a:M1の最大価数、b:M2の最大価数を表す。)
4.前記非遷移金属(M1)を含有する層が、ポリシラザン及びポリシラザンの改質体を含有することを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の電子デバイス。
5.前記遷移金属(M2)が、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、及びバナジウム(V)から選択されることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の電子デバイス。
6.前記機能性素子上に少なくとも1層の有機ポリマー層が、積層されていることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の電子デバイス。
7.前記機能性素子が、一対の電極と当該電極間に少なくとも1層の発光層を含む有機機能層を有することを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載の電子デバイス。
8.基材上に機能性素子及び当該機能性素子を封止する封止層を形成する電子デバイスの封止方法であって、当該封止層として、少なくとも1層の第12〜14族の非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層と、当該第1のガスバリアー層に接して配置された遷移金属(M2)の酸化物を含有する第2のガスバリアー層の積層体か、又は前記非遷移金属(M1)及び前記遷移金属(M2)の複合酸化物を含有するガスバリアー層か、若しくは当該複合酸化物を含有する領域を、気相成膜法又は塗布法によって形成することを特徴とする電子デバイスの封止方法。
9.前記封止層として、前記機能性素子側に、前記非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層を形成することを特徴とする第8項に記載の電子デバイスの封止方法。
10.前記遷移金属(M2)の酸化物を含有する第2のガスバリアー層を、前記非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層の上に、気相成膜法にて形成することを特徴とする第8項又は第9項に記載の電子デバイスの封止方法。
11.前記非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層が、ポリシラザン及びポリシラザンの改質体を含有し、当該ポリシラザンの改質体を、ポリシラザンを含有する塗布液を塗布して、真空紫外光を照射することにより形成することを特徴とする第8項から第10項までのいずれか一項に記載の電子デバイスの封止方法。
本発明の上記手段により、高いガスバリアー性能を有する封止層を具備する電子デバイス、及び当該封止層を用いた電子デバイスの封止方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明は、有機EL素子に適用可能な高いガスバリアー性を有する封止層を具備する電子デバイスであり、当該封止層が、第12〜14族の非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層と、当該第1のガスバリアー層に接して配置された遷移金属(M2)の酸化物を含有する第2のガスバリアー層の積層体であるか、又は前記非遷移金属(M1)及び前記遷移金属(M2)の複合酸化物を含有するガスバリアー層であるか、若しくは当該複合酸化物を含有する領域であることを特徴とするものである。
前記ガスバリアー層が前記積層体の場合は、前記第1のガスバリアー層と第2のガスバリアー層を気相成膜したときに、積層界面において、前記非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)とが組成として同時に存在する領域が形成され、当該領域が化学量論的な組成に対して、酸素が欠損した組成を有する金属酸化物を含有する領域になった場合に、金属酸化物の高密度な結合を有する領域を形成し高いガスバリアー性を発現するものと考えられる。
前記非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の複合酸化物を含有するガスバリアー層、又は当該複合酸化物を含有する領域の場合は、例えば、Si(又はSiO)とNb(又はNbO)とをスパッタターゲットとして同時にスパッタし(共蒸着、共スパッタともいう。)、反応性ガスとして酸素を導入して、SiとNbとの複合酸化物を成膜する際に、化学量論的組成よりも酸素が不足する条件で成膜すると、得られる複合酸化物はSi−Nb結合を有する構造をとるものと考えられる。これにより、化学量論的組成の複合酸化物に対して、前記関係式(1)を満たすように、酸素が欠損した組成になった場合は、金属同士の高密度な結合を有する複合酸化物を含有するガスバリアー層又は当該複合酸化物を含有する領域となり、高いガスバリアー性を発現するものと推定される。
本発明の一実施形態に係る封止層を具備する電子デバイスを示す断面模式図 本発明の一実施形態に係る封止層を具備する電子デバイスを示す断面模式図 本発明の一実施形態に係る封止層を具備する電子デバイスを示す断面模式図 本発明の別の実施形態に係る有機ポリマー層とガスバリアー層を有する封止層を具備する電子デバイスを示す断面模式図 本発明の別の実施形態に係る有機ポリマー層とガスバリアー層を有する封止層を具備する電子デバイスを示す断面模式図 封止層の厚さ方向における非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の組成分布をXPS法により分析したときの元素プロファイルと複合組成領域を説明するためのグラフ WVTRの測定のための評価用デバイスの模式図 本発明に係る封止層の形成に適用可能な真空紫外光照射装置の一例を示す概略断面図
本発明の電子デバイスは、基材上に機能性素子及び当該機能性素子を封止する封止層を有する電子デバイスであって、前記封止層が、第12〜14族の非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層と、当該第1のガスバリアー層に接して配置された遷移金属(M2)の酸化物を含有する第2のガスバリアー層の積層体であるか、又は前記非遷移金属(M1)及び前記遷移金属(M2)の複合酸化物を含有するガスバリアー層であるか、若しくは当該複合酸化物を含有する領域を有することを特徴とする。この特徴は、各請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記第1のガスバリアー層及び第2のガスバリアー層の積層体の厚さ方向の一部に、前記非遷移金属(M1)及び前記遷移金属(M2)の複合酸化物を含有する領域が存在することが、ガスバリアー性の高い封止層を形成する観点から、好ましい。
また、前記複合酸化物を含有するガスバリアー層又は領域が、非遷移金属をM1、遷移金属をM2、酸素をO、及び窒素をNとしたときに、(M1)(M2)で表される複合酸化物を含有し、当該複合酸化物の組成が、前記関係式(1)を満たすことが、金属化合物の高密度な構造が当該領域において形成される観点から、好ましい態様である。前記関係式(1)は、前記複合酸化物を含有する領域が、化学量論的な組成に対して、酸素が欠損した組成を有することを表すものである。
また、前記非遷移金属(M1)を含有する層が、ポリシラザン又はポリシラザンの改質体を含有する層であることが、前記機能性素子を均一に封止する観点から、好ましく、前記遷移金属(M2)が、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、及びバナジウム(V)から選択されることが、前記複合酸化物を形成してガスバリアー性をより向上する観点から、好ましい。
また、基材及び有機機能層上に少なくとも1層の有機ポリマー層と、前記第1のガスバリアー層及び第2のガスバリアー層の積層体と、又は前記複合酸化物を含有するガスバリアー層、若しくは領域と、が積層されていることが、基材とガスバリアー層、有機機能層とガスバリアー層との密着性を向上し、使用環境変動におけるガスバリアー層への機械的又は熱的ストレスによる層の損傷や欠陥を防ぎ、ガスバリアー性の劣化を抑制する観点から、好ましい態様である。
また、前記機能性素子が、一対の電極と当該電極間に少なくとも1層の発光層を含む有機機能層を有することが、本発明に好ましい電子デバイスの態様である。
本発明の電子デバイスの封止方法は、基材上に機能性素子及び当該機能性素子を封止する封止層を形成する電子デバイスの封止方法であって、当該封止層として、少なくとも1層の第12〜14族の非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層と、当該第1のガスバリアー層に接して配置された遷移金属(M2)の酸化物を含有する第2のガスバリアー層の積層体か、又は前記非遷移金属(M1)及び前記遷移金属(M2)の複合酸化物を含有するガスバリアー層か、若しくは当該複合酸化物を含有する領域を、気相成膜法又は塗布法によって形成することを特徴とする。
前記封止層として、前記機能性素子側に、前記非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層を形成することが、前記複合酸化物を含有するガスバリアー層、若しくは領域を効率よく形成する観点から、好ましい。
また、前記遷移金属(M2)の酸化物を含有する第2のガスバリアー層を、前記非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層の上に、気相成膜法にて形成することが、前記複合酸化物を含有するガスバリアー層、若しくは領域を生産性良く、効率的に形成する観点から、好ましい。
さらに、前記非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層が、ポリシラザン及びポリシラザンの改質体を含有し、当該ポリシラザンの改質体を、ポリシラザンを含有する塗布液を塗布して、真空紫外光を照射することにより形成することが、前記複合酸化物を含有するガスバリアー層、若しくは領域を精度良く安定に形成し、透過率等の光学特性に優れたガスバリアー性の高い封止層が得られる観点から、好ましい態様である。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
≪本発明の電子デバイスの概要≫
本発明の電子デバイスは、基材上に機能性素子及び当該機能性素子を封止する封止層を有する電子デバイスであって、前記封止層が、第12〜14族の非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層と、当該第1のガスバリアー層に接して配置された遷移金属(M2)の酸化物を含有する第2のガスバリアー層の積層体であるか、又は前記非遷移金属(M1)及び前記遷移金属(M2)の複合酸化物を含有するガスバリアー層であるか、若しくは当該複合酸化物を含有する領域を有することを特徴とする。
なお、本願では「封止層」を「ガスバリアー層」という場合があるが、その場合は実質的に同一な層である。
本発明に係る前記機能性素子とは、特に限定されるものではないが、好ましくは有機EL素子や有機薄膜太陽電池、液晶表示装置、タッチパネル等の有機材料からなる素子をいい、特に本発明に係る機能性素子が有機EL素子であることが好ましい。
本発明に係る前記機能性素子の好ましい一例である有機EL素子は、一対の電極と当該電極間に少なくとも1層の発光層を有する有機機能層によって構成されていることが好ましい。当該有機EL素子を封止する封止層のガスバリアー性は、25±0.5℃、90±2%RHの環境下での水蒸気透過度(WVTR)として10−5〜10−6g/m・24h台の非常に高いガスバリアー性が必要とされている。
本発明は前記高いガスバリアー性を、第12〜14族の非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層と、当該第1のガスバリアー層に接して配置された遷移金属(M2)の酸化物を含有する第2のガスバリアー層の積層体か、又は前記非遷移金属(M1)及び前記遷移金属(M2)の複合酸化物を含有するガスバリアー層か、若しくは当該複合酸化物を含有する領域を有する封止層によって、実現するものである。
なお、本発明でいう「非遷移金属(M1)」とは、遷移金属以外の金属であって長周期型周期表の第12〜14族に属する金属をいい、「遷移金属(M2)」とは第3〜11族に属する金属をいう。
図1は、本発明の一実施形態に係る封止層を具備する電子デバイスを示す断面模式図である。
図1Aに示す電子デバイス10は、基材1上に機能性素子として、一対の電極2と当該電極間に少なくとも1層の発光層を有する有機機能層3が形成されてなる。なお、基材の一方の面に有機機能層3が配置される形態だけではなく、基材の両面に電極2と有機機能層3が形成されていてもよい。前記有機機能層3上には、当該有機機能層3及び基材1の一部を覆うようにして封止層4を形成する。封止層4は、非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層5、遷移金属(M2)の酸化物を含有する第2のガスバリアー層6を有し、当該ガスバリアー層5及びガスバリアー層6の界面に非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)の複合酸化物を含有する領域7A(以下、複合組成領域ともいう。)が存在する。図1Aでは封止層4は前記ガスバリアー層5、ガスバリアー層6及び領域7Aの3層構成を示してあるが、更に複合組成領域である領域7Aを複数有していてもよい。また、第1のガスバリアー層5と第2のガスバリアー層6の層順は順不同であってよい。
図1Bに示す電子デバイス10は、基材1上に一対の電極2と当該電極間に少なくとも1層の発光層を有する有機機能層3が形成され、封止層4として、前記非遷移金属(M1)及び前記遷移金属(M2)の複合酸化物で構成されたガスバリアー層7B(本願では、複合組成ガスバリアー層ともいう。)を有する。ここで示すガスバリアー層7Bは、後述する共蒸着によって、非遷移金属(M1)の酸化物及び前記遷移金属(M2)の酸化物をスパッタターゲットとして同時にスパッタし、反応性ガスとして酸素を導入して、前記非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)との複合酸化物を成膜する際に、化学量論的組成よりも酸素が不足する条件で成膜したガスバリアー層である。
図1Cに示す電子デバイス10は、図1Aに示す電子デバイスの構成において、基材1が樹脂フィルムのような水分透過性の基材の場合は、基材の少なくとも一方の面か、好ましくは両面にガスバリアー層8を有する実施形態を示している。
図2は、本発明の別の実施形態に係る有機ポリマー層及び封止層を具備する電子デバイスを示す断面模式図である。
図2Aに示す電子デバイス10は、基材1上に一対の電極2と当該電極間に少なくとも1層の発光層を有する有機機能層3が形成されてなり、当該有機機能層3上には、当該有機機能層3の全部及び基材1の一部を覆うようにして有機ポリマー層9を形成した後、封止層4によって封止する態様である。封止層4は、非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層5、遷移金属(M2)の酸化物を含有する第2のガスバリアー層6を有し、当該層5及び層6の界面に非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)の複合酸化物を含有する領域7A(複合組成領域)が存在する。
図2Aではさらに、上層として有機ポリマー層9及び封止層4が積層形成されている。
図2Bに示す電子デバイス10は、封止層4が、前記非遷移金属(M1)及び前記遷移金属(M2)の複合酸化物で構成されたガスバリアー層7B(複合組成ガスバリアー層)を有する態様であり、同様に有機ポリマー層9及び封止層4が積層形成されている。
また、図示はしていないが、基材と有機機能層の間、有機機能層と封止層との間、及び基材のもう一方の表面には、適宜他の機能性層や中間層を形成してもよい。
[複合組成領域]
本発明に係る「前記非遷移金属(M1)及び前記遷移金属(M2)の複合酸化物を含有する領域7A」を「複合組成領域」として以下説明する。
本発明いう「複合組成領域」とは以下のXPSによる組成分析によって、組成内容と層厚を求めることができる。
〈XPSによる組成分析と複合組成領域の厚さの測定〉
本発明でいう複合組成領域とは、封止層の厚さ方向の組成分布をXPS法により分析したとき、前記非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1ガスバリアー層と遷移金属(M2)の酸化物を含有する第2ガスバリアー層との界面領域に、非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)とが共存し、かつ、後述する遷移金属(M2)/非遷移金属(M1)の原子数比率の値が、0.02〜49の範囲内にあり、厚さが5nm以上である領域と定義する。
以下、XPS分析法による複合組成領域の測定方法について説明する。
本発明に係る封止層の厚さ方向における元素濃度分布(以下、デプスプロファイルという。)は、具体的には、非遷移金属(M1)分布曲線(例えば、ケイ素分布曲線) 、遷移金属(M2)分布曲線(例えば、ニオブ分布曲線)、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)分布曲線等を、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、封止層の表面より内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比(単位:atom%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間は層厚方向における前記封止層の厚さ方向における封止層の表面からの距離におおむね相関することから、「封止層の厚さ方向における封止層の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出される封止層の表面からの距離を採用することができる。また、このようなXPSデプスプロファイル測定に際して採用するスパッタ法としては、エッチングイオン種としてアルゴン(Ar)を用いた希ガスイオンスパッタ法を採用し、そのエッチング速度(エッチングレート)を0.05nm/sec(SiO熱酸化膜換算値)とすることが好ましい。
以下に、本発明に適用可能なXPS分析の具体的な条件の一例を示す。
・分析装置:アルバック・ファイ社製QUANTERA SXM
・X線源:単色化Al−Kα
・スパッタイオン:Ar(2keV)
・デプスプロファイル:SiO換算スパッタ厚さで、所定の厚さ間隔で測定を繰り返し、深さ方向のデプスプロファイルを求める。この厚さ間隔は、1nmとした(深さ方向に1nmごとのデータが得られる)。
・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて定量した。データ処理は、アルバック・ファイ社製のMultiPakを用いる。なお、分析した元素は、非遷移金属M1(例えば、ケイ素(Si))、遷移金属M2(例えば、ニオブ(Nb))、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)である。
得られたデータから、組成比を計算し、非遷移金属M1と遷移金属M2とが共存し、かつ、遷移金属M2/非遷移金属M1の原子数比率の値が、0.02〜49になる範囲を求め、これを複合組成領域と定義し、その厚さを求めた。複合組成領域の厚さは、XPS分析におけるスパッタ深さをSiO換算で表したものである。
本発明において、複合組成領域の厚さは5nm以上であるときに「複合組成領域」と判定する。ガスバリアー性の観点からは、複合組成領域の厚さの上限はないが、光学特性の観点や、生産性の観点から、好ましくは5〜200nmの範囲内であり、より好ましくは8〜100nmの範囲内であり、さらに好ましくは、10〜60nmの範囲内である。
図3に、複合組成領域を含めた封止層の厚さ方向の非遷移金属M1及び遷移金属M2の組成分布をXPS法により分析したときの元素プロファイルの模式的なグラフを示す。
図3は、封止層の表面(グラフの左端部)より深さ方向に、M1、M2、O、N、Cの元素分析を行い、横軸にスパッタの深さ(膜厚:nm)を、縦軸にM1とM2の含有率(atom%)を示したグラフである。
図3では、左側より遷移金属(M2)の酸化物を含有する第2ガスバリアー層の元素組成、複合組成領域の元素組成、非遷移金属(M1:図ではSi)の酸化物を含有する第1ガスバリアー層における元素組成プロファイルを示しており、複合組成領域が、M2/M1の原子数比率の値が、0.02〜49の範囲内であり、厚さ5nm以上の領域である。
<本発明の電子デバイスの構成>
〔1〕基材
本発明に係る基材としては、具体的には、ガラス又は樹脂フィルムの適用が好ましく、フレキシブル性を要求される場合は、樹脂フィルムであることが好ましい。
好ましい樹脂としては、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂を含む基材が挙げられる。該樹脂は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
基材は耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、線膨張係数が15ppm/K以上100ppm/K以下で、かつガラス転移温度(Tg)が100℃以上300℃以下の基材が使用される。該基材は、電子部品用途、ディスプレイ用積層フィルムとしての必要条件を満たしている。すなわち、これらの用途に本発明に係る封止層を用いる場合、基材は150℃以上の工程に曝されることがある。この場合、基材の線膨張係数が100ppm/Kを超えると、前記のような温度の工程に流す際に基板寸法が安定せず、熱膨張及び収縮に伴い、遮断性性能が劣化する不都合や、又は、熱工程に耐えられないという不具合が生じやすくなる。15ppm/K未満では、フィルムがガラスのように割れてしまいフレキシビリティが劣化する場合がある。
基材のTgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。基材として用いることができる熱可塑性樹脂のより好ましい具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:70℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン株式会社製、ゼオノア(登録商標)1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報に記載の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学株式会社製、ネオプリム(登録商標):260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報に記載の化合物:300℃以上)等が挙げられる(括弧内はTgを示す)。
本発明の電子デバイスは、有機EL素子等の電子デバイスに好適であることから、基材は透明であることが好ましい。すなわち、光線透過率が通常80%以上、好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。光線透過率は、JIS K7105:1981に記載された方法、すなわち積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率及び散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
また、上記に挙げた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。当該基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。これらの基材の製造方法については、国際公開第2013/002026号の段落「0051」〜「0055」の記載された事項を適宜採用することができる。
基材の表面は、密着性向上のための公知の種々の処理、例えばコロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、又はプラズマ処理等を行っていてもよく、必要に応じて上記処理を組み合わせて行っていてもよい。また、基材には易接着処理を行ってもよい。
該基材は、単層でもよいし2層以上の積層構造であってもよい。該基材が2層以上の積層構造である場合、各基材は同じ種類であってもよいし異なる種類であってもよい。
本発明に係る基材の厚さ(2層以上の積層構造である場合はその総厚)は、10〜200μmであることが好ましく、20〜150μmであることがより好ましい。
また、樹脂フィルムの場合は、ガスバリアー層付き樹脂フィルム基材であることが好ましい(図1C)。
前記ガスバリアー層は、フィルム基材の表面には、無機物、有機物の被膜又はその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、25±0.5℃、90±2%RHの環境下の水蒸気透過度が0.01g/m・24h以下のガスバリアー性フィルムであることが好ましく、更には、JIS K 7126−2006に準拠した方法で測定された、85℃・85%RH環境下での酸素透過度が、1×10−3mL/m・24h・atm以下、水蒸気透過度が、1×10−3g/m・24h以下の高ガスバリアー性フィルムであることが好ましい。
前記ガスバリアー層を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。更に該層の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
当該ガスバリアー層は、特に限定されないが、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素や窒化ケイ素等の無機ガスバリアー層の場合は、無機材料をスパッタリング法(例えば、マグネトロンカソードスパッタリング、平板マグネトロンスパッタリング、2極AC平板マグネトロンスパッタリング、2極AC回転マグネトロンスパッタリングなど、反応性スパッタ法を含む。)、蒸着法(例えば、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、イオンビーム蒸着、プラズマ支援蒸着など)、熱CVD法、触媒化学気相成長法(Cat−CVD)、容量結合プラズマCVD法(CCP−CVD)、光CVD法、プラズマCVD法(PE−CVD)、エピタキシャル成長法、原子層成長法等の化学蒸着法等によって層形成することが好ましい。
さらに、ポリシラザン、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)などの無機前駆体を含む塗布液を支持体上に塗布した後、真空紫外光の照射などにより改質処理を行い、無機ガスバリアー層を形成する方法や、樹脂基材への金属めっき、金属箔と樹脂基材とを接着させる等のフィルム金属化技術などによっても、無機ガスバリアー層は形成される。
また、無機ガスバリアー層は、有機ポリマーを含む有機層を含んでいてもよい。すなわち、無機ガスバリアー層は、無機材料を含む無機層と有機層との積層体であってもよい。
有機層は、例えば、有機モノマー又は有機オリゴマーを樹脂基材に塗布し、層を形成し、続いて、例えば、電子ビーム装置、UV光源、放電装置、又はその他の好適な装置を使用して重合及び必要に応じて架橋することにより形成することができる。また、例えば、フラッシュ蒸発及び放射線架橋可能な有機モノマー又は有機オリゴマーを蒸着した後、有機モノマー又は有機オリゴマーからポリマーを形成することによっても形成することができる。コーティング効率は、樹脂基材を冷却することにより改善され得る。
有機モノマー又は有機オリゴマーの塗布方法としては、例えば、ロールコーティング(例えば、グラビアロールコーティング)、スプレーコーティング(例えば、静電スプレーコーティング)等が挙げられる。また、無機層と有機層との積層体の例としては、例えば、国際公開第2012/003198号、国際公開第2011/013341号に記載の積層体などが挙げられる。
無機層と有機層との積層体である場合、各層の厚さは同じでもよいし、異なっていてもよい。無機層の層厚は、好ましくは3〜1000nmの範囲内、より好ましくは10〜300nmの範囲内である。有機層の層厚は、好ましくは100nm〜100μmの範囲内、より好ましくは1〜50μmの範囲内である。
〔2〕有機機能層
本発明に係る封止層は、空気中の化学成分(酸素、水、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等)によって性能が劣化する機能性素子に好ましく適用できる。
本発明に係る機能性素子の例としては、例えば、有機EL素子、液晶表示素子(LCD)、薄膜トランジスタ、タッチパネル、電子ペーパー、太陽電池(PV)等を挙げることができる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、有機EL素子又は太陽電池が好ましく、有機EL素子が特に好ましい。
前記機能性素子は、基材上に一対の電極と当該電極間に少なくとも1層の発光層を有する有機機能層であることが好ましく、有機EL素子を構成する。
〔2.1〕有機EL素子
本発明に係る一対の電極と当該電極間に少なくとも1層の発光層を有する有機機能層を具備する有機EL素子は、例えば、透明基材上に、陽極、第1有機機能層群、発光層、第2有機機能層群、陰極が積層されて構成されている。第1有機機能層群は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層等から構成され、第2有機機能層群は、例えば、正孔阻止層、電気輸送層、電子注入層等から構成されている。第1有機機能層群及び第2有機機能層群はそれぞれ1層のみで構成されていても良いし、第1有機機能層群及び第2有機機能層群はそれぞれ設けられていなくても良い。
以下に、有機EL素子の構成の代表例を示す。
(i)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(ii)陽極/正孔注入輸送層/発光層/正孔阻止層/電子注入輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔注入輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子注入輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(v)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(vi)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極
更に、有機EL素子は、非発光性の中間層を有していても良い。中間層は電荷発生層であっても良く、マルチフォトンユニット構成であっても良い。
本発明に適用可能な有機EL素子の概要については、例えば、特開2013−157
634号公報、特開2013−168552号公報、特開2013−177361号公報、特開2013−187211号公報、特開2013−191644号公報、特開2013−191804号公報、特開2013−225678号公報、特開2013−235994号公報、特開2013−243234号公報、特開2013−243236号公報、特開2013−242366号公報、特開2013−243371号公報、特開2013−245179号公報、特開2014−003249号公報、特開2014−003299号公報、特開2014−013910号公報、特開2014−017493号公報、特開2014−017494号公報等に記載されている構成を挙げることができる。
〔3〕封止層
〔3.1〕封止層の概要及び複合組成領域
本発明に係る封止層は、ガスバリアー性を発現する層であって、本発明に係る機能性素子を基材とともに挟持して封止する層であり、長周期型周期表の第12族〜第14族の金属から選択される非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層及び遷移金属(M2)の酸化物を含有する第2のガスバリアー層の積層体であるか、又は、前記非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)の複合酸化物を含有するガスバリアー層であるか、若しくは当該複合酸化物を含有する領域であることを特徴とする。
封止層のガスバリアー性は、基材上に当該封止層を形成させた積層体で算出した際、JIS K 7126−2006に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10−3mL/m・24h・atm以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、25±0.5℃、90±2%RHの環境下での水蒸気透過度が、1×10−3g/m・24h以下の高ガスバリアー性であることが好ましく、1×10−5g/m・24h以下であることが特に好ましい。
第1のガスバリアー層及び第2のガスバリアー層の積層体である場合は、前記第12族〜第14族の金属から選択される非遷移金属(M1)の酸化物及び遷移金属(M2)の酸化物の酸素欠損領域が封止層の厚さ方向に連続して所定値以上(具体的には、5nm以上)の厚さで存在する(このことを、本明細書では「複合組成領域」と表現している。)ように構成されていることが好ましい。この特徴の詳細については後述するが、この特徴を満たす限り、封止層の複合組成領域以外の領域は、例えば、複合組成領域には該当しない非遷移金属(M1)の酸化物及び遷移金属(M2)の酸化物(酸素欠損領域であっても、化学量論的な組成の領域であってもよい。)の層でありうる。
前記第12族〜第14族の金属から選択される非遷移金属(M1)としては特に制限されず、第12〜第14族の任意の金属が単独で又は組み合わせて用いられうるが、例えば、Si、Al、Zn、In及びSnなどが挙げられる。なかでも、非遷移金属(M1)はSi、Sn又はZnを含むことが好ましく、Siを含むことがより好ましく、Si単独であることが特に好ましい。
遷移金属(M2)としては特に制限されず、任意の遷移金属が単独で又は組み合わせて用いられうる。ここで、遷移金属とは、長周期型周期表の第3族元素から第11族元素を指し、遷移金属としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、及びAuなどが挙げられる。
なかでも、良好なガスバリアー性が得られる遷移金属(M2)としては、Nb、Ta、V、Zr、Ti、Hf、Y、La、Ce等が挙げられる。これらのなかでも、種々の検討結果から、特に第5族元素であるNb、Ta、Vが、封止層に含有される非遷移金属(M1)に対する結合が生じやすいと考えられるため、好ましく用いることができる。
特に遷移金属(M2)が第5族元素(特に、Nb)であって、上述した非遷移金属(M1)がSiであると、著しいガスバリアー性の向上効果が得られる。これは、Siと第5族元素(特に、Nb)との結合が特に生じやすいためであると考えられる。さらに、光学特性の観点から、遷移金属(M2)は、透明性が良好な化合物であるNb及びTaが特に好ましい。
封止層に用いられる当該ガスバリアー層は、非遷移金属(M1)や、遷移金属(M2)を含有する無機材料をスパッタリング法(例えば、マグネトロンカソードスパッタリング、平板マグネトロンスパッタリング、2極AC平板マグネトロンスパッタリング、2極AC回転マグネトロンスパッタリングなど、反応性スパッタ法を含む)、蒸着法(例えば、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、イオンビーム蒸着、プラズマ支援蒸着など)、熱CVD法、触媒化学気相成長法(Cat−CVD)、容量結合プラズマCVD法(CCP−CVD)、光CVD法、プラズマCVD法(PE−CVD)、エピタキシャル成長法、原子層成長法、等の気相成膜法等によって形成することができる。本発明においては、スパッタリング法や、蒸着法を用いることが好ましく、スパッタリング法を用いることが特に好ましい。
また、非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)の複合酸化物を含有するガスバリアー層を形成する方法としては、公知の共蒸着法を用いることが好ましい。このような共蒸着法として、好ましくは、共スパッタ法が挙げられる。本発明において採用される共スパッタ法は、例えば、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の双方を含む合金からなる複合ターゲットや、金属(M1)及び遷移金属(M2)の複合酸化物からなる複合ターゲットをスパッタリングターゲットとして用いた1元スパッタでありうる。また、本発明における共スパッタ法は、金属(M1)の単体又はその酸化物と、遷移金属(M2)の単体又はその酸化物とを含む複数のスパッタリングターゲットを用いた多元同時スパッタであってもよい。これらのスパッタリングターゲットを作製する方法や、これらのスパッタリングターゲットを用いて複合酸化物からなる薄膜を作製する方法については、例えば、特開2000−160331号公報、特開2004−068109号公報、特開2013−047361号公報などの記載が適宜参照されうる。そして、共蒸着法を実施する際の成膜条件としては、成膜原料における前記遷移金属(M2)と酸素との比率、成膜時の不活性ガスと反応性ガスとの比率、成膜時のガスの供給量、成膜時の真空度、及び、成膜時の電力からなる群から選択される1種又は2種以上の条件が例示され、これらの成膜条件(好ましくは、酸素分圧)を調節することによって、酸素欠損組成を有する複合酸化物からなる薄膜を形成することができる。すなわち、上述したような共蒸着法を用いてガスバリアー層を形成することで、形成されるガスバリアー層の厚さ方向のほとんどの領域を複合組成領域とすることができる。このため、かような手法によれば、複合組成領域の厚さを制御するという極めて簡便な操作により、所望のガスバリアー性を実現することができる。なお、複合組成領域の厚さを制御するには、例えば、共蒸着法を実施する際の成膜時間を調節すればよい。
[酸素欠損領域]
本発明に係る封止層において、非遷移金属をM1、遷移金属をM2、酸素をO、窒素をNとして、封止層の複合組成領域の化合物の組成を(M1)(M2)としたときに、下記関係式(1)を満たすことが好ましい。
(1)(2y+3z)/(a+bx)<1.0
(ただし、M1:非遷移金属、M2:遷移金属、O:酸素、N:窒素、x、y、z:化学量論係数、0.02≦x≦49、0<y、0≦z、a:M1の最大価数、b:M2の最大価数を表す。)
上記関係式(1)は、封止層の複合組成領域が、非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)との複合酸化物の酸素欠損組成を含んでいることを表している。
上述したように、本発明に係る非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)との複合酸化物の組成は、(M1)(M2)で示される。この組成からも明らかなように、上記複合酸化物は、一部窒化物の構造を含んでいてもよい。ここでは、金属(M1)の最大価数をa、遷移金属(M2)の最大価数をb、Oの価数を2、Nの価数を3とする。そして、上記複合酸化物(一部窒化物となっているものを含む。)が化学量論的組成になっている場合は、(2y+3z)/(a+bx)=1.0となる。この式は、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の結合手の合計と、O、Nの結合手の合計とが同数であることを意味し、この場合、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)ともに、O、Nのいずれかと結合していることになる。なお、本発明において、非遷移金属(M1)として2種以上が併用される場合や、遷移金属(M2)として2種以上が併用される場合には、各元素の最大価数を各元素の存在比率によって加重平均することにより算出される複合価数を「最大価数」のa及びbの値として採用するものとする。
一方、本発明に係る複合組成領域のように、(2y+3z)/(a+bx)<1.0となる場合には、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の結合手の合計に対して、O、Nの結合手の合計が不足していることを意味し、この状態が上記複合酸化物の「酸素欠損」である。酸素欠損状態においては、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の余った結合手は互いに結合する可能性を有しており、非遷移金属(M1)や遷移金属(M2)の金属同士が直接結合すると、金属の間にOやNを介して結合した場合よりも緻密で高密度な構造が形成され、その結果として、ガスバリアー性が向上すると考えられる。
また、本発明において、複合組成領域は、前記xの値が、0.02≦x≦49(0<y、0≦z)を満たす領域である。これは、先に、遷移金属(M2)/非遷移金属(M1)の原子数比率の値が、0.02〜49の範囲内にあり、厚さが5nm以上である領域と定義する、としたことと同一の定義である。この領域では、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の双方が金属同士の直接結合に関与することから、この条件を満たす複合組成領域が所定値以上(5nm)の厚さで存在することで、ガスバリアー性の向上に寄与すると考えられる。なお、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の存在比率が近いほどガスバリアー性の向上に寄与しうると考えられることから、複合組成領域は、0.1≦x≦10を満たす領域を5nm以上の厚さで含むことが好ましく、0.2≦x≦5を満たす領域を5nm以上の厚さで含むことがより好ましく、0.3≦x≦4を満たす領域を5nm以上の厚さで含むことが更に好ましい。
ここで、上述したように、(2y+3z)/(a+bx)<1.0を満たす複合組成領域が存在すれば、ガスバリアー性の向上効果が発揮されることが確認されたが、複合組成領域は、(2y+3z)/(a+bx)≦0.9を満たすことが好ましく、(2y+3z)/(a+bx)≦0.85を満たすことがより好ましく、(2y+3z)/(a+bx)≦0.8を満たすことが更に好ましい。ここで、複合組成領域における(2y+3z)/(a+bx)の値が小さくなるほど、ガスバリアー性の向上効果は高くなるものの可視光での吸収も大きくなる。したがって、透明性が望まれる用途に使用する封止層の場合には、0.2≦(2y+3z)/(a+bx)であることが好ましく、0.3≦(2y+3z)/(a+bx)であることがより好ましく、0.4≦(2y+3z)/(a+bx)であることが更に好ましい。
なお、本発明において良好なガスバリアー性が得られる複合組成領域の厚さは、SiO換算のスパッタ厚さとして、5nm以上であり、この厚さは、8nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることが更に好ましい。
上述したような構成を有する封止層は、有機EL素子等の電子デバイス用の封止層として使用可能なレベルの非常に高いガスバリアー性を示す。
ここで、本発明者が種々検討を行った結果、非遷移金属(M1)の化合物(酸化物)の酸素欠損組成膜を単独で用いて封止層を形成したり、遷移金属(M2)の化合物(酸化物)の酸素欠損組成膜を単独で用いて封止層を形成したりすると、酸素欠損の程度が大きくなるにつれてガスバリアー性が向上する傾向は観察されたものの、著しいガスバリアー性の向上にはつながらなかった。この結果を受けて、非遷移金属(M1)の酸化物を含む層と、遷移金属(M2)の酸化物を含む層とを積層し、非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)とが同時に存在する複合組成領域を形成し、更に、当該複合組成領域を酸素欠損組成とすると、酸素欠損の程度が大きくなるにつれてガスバリアー性がいっそう向上することを見出した。
これは、上述したように、非遷移金属(M1)同士の結合や遷移金属(M2)同士の結合よりも、非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)との結合が生じやすいことに起因して、複合組成領域を酸素欠損組成とすることで、複合金属酸化物の高密度な構造が複合組成領域において形成されているためであると考えられる。
ここで、上述したような非遷移金属(M1)の酸化物を含む層と、遷移金属(M2)の酸化物を含む層との積層構成では、積層界面には複合酸化物からなる複合組成領域が形成される。しかしながら、当該複合組成領域に含まれる金属元素に占める各金属元素(M1又はM2)の存在比率は、複合組成領域の厚さ方向に対してある程度大きい傾きをもって傾斜して形成される。その結果、上述した複合組成領域において非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)との複合酸化物の酸素欠損組成が形成されるが、その厚さは最大でも20nm程度であり、限定されたものとなる。
特に、ガスバリアー性の向上効果の高い、(M1)/{(M1)+(M2)}が0.1〜0.9の範囲に含まれる領域の厚さはせいぜい10nm程度までしか形成されず、上記積層構成によって到達可能なガスバリアー性は限定されたものとなっており、また、上記積層構成における各層の成層厚さを増加させたとしても上記厚さにほとんど変化は見られなかった。
上述したような知見に基づき、本発明者は、前述の非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の双方が金属同士の直接結合に関与するための好ましい条件である0.02≦x≦49を満たす、非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)との複合酸化物の酸素欠損組成の厚さを変化させて、ガスバリアー性の向上効果が見られる臨界厚さについての検討を進めた。その結果、上述したように、上記厚さが5nm以上であれば、ガスバリアー性の非常に著しい向上効果が見られることを確認し、本発明を完成させるに至ったのである。
〔3.2〕封止層の形成方法
本発明の電子デバイスの封止方法は、少なくとも1層の第12〜14族の非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層と、当該第1のガスバリアー層に接して配置された遷移金属(M2)の酸化物を含有する第2のガスバリアー層の積層体か、又は前記非遷移金属(M1)及び前記遷移金属(M2)の複合酸化物を含有するガスバリアー層か、若しくは当該複合酸化物を含有する領域を、気相成膜法又は塗布法によって形成した封止層によって、電子デバイスを封止することを特徴とする。
前記封止層として、前記機能性素子側に、前記非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層を形成することが好ましく、前記遷移金属(M2)の酸化物を含有する第2のガスバリアー層を、前記非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層の上に、気相成膜法にて形成することが好ましい。
また、前記非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層が、ポリシラザン及びポリシラザンの改質体を含有し、当該ポリシラザンの改質体を、ポリシラザンを含有する塗布液を塗布して、真空紫外光を照射することにより形成することが好ましい。
〔3.2.1〕非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層及び遷移金属(M2)の酸化物を含有する第2のガスバリアー層の形成
第1のガスバリアー層である前記非遷移金属(M1)の酸化物を含有する層及び第2のガスバリアー層である前記遷移金属(M2)の酸化物を含有する層の形成は、特に限定されず、例えば、既存の薄膜堆積技術を利用した従来公知の気相成膜法を用いることが、複合組成領域を効率的に形成する観点から好ましい。
これらの気相成膜法は公知の方法で用いることができる。気相成膜法としては、特に制限されず、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法等の物理気相成長(PVD)法、プラズマCVD(chemical vapordeposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法などの化学気相成長(CVD)法が挙げられる。なかでも、有機機能層へのダメージを与えることなく成膜が可能となり、高い生産性を有することから、物理気相成長(PVD)法により形成することが好ましく、スパッタ法により形成することがより好ましい。
スパッタ法による成膜は、2極スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、中間的な周波数領域を用いたデュアルマグネトロンスパッタリング(DMS)、イオンビームスパッタリング、ECRスパッタリングなどを単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、ターゲットの印加方式はターゲット種に応じて適宜選択され、DC(直流)スパッタリング、及びRF(高周波)スパッタリングのいずれを用いてもよい。
また、金属モードと、酸化物モードとの中間である遷移モードを利用した反応性スパッタ法も用いることができる。遷移領域となるようにスパッタ現象を制御することにより、高い成膜スピードで金属酸化物を成膜することが可能となるため好ましい。プロセスガスに用いられる不活性ガスとしては、He、Ne、Ar、Kr、Xe等を用いることができ、Arを用いることが好ましい。さらに、プロセスガス中に酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素を導入することで、非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)の複合酸化物、窒酸化物、酸炭化物等の薄膜を作ることができる。スパッタ法における成膜条件としては、印加電力、放電電流、放電電圧、時間等が挙げられるが、これらは、スパッタ装置や、膜の材料、層厚等に応じて適宜選択することができる。
第1のガスバリアー層及び第2のガスバリアー層の層厚は、1〜500nmの範囲が好ましい、より好ましくは10〜300nmの範囲である。
〔3.2.2〕非遷移金属(M1)及び前記遷移金属(M2)の複合酸化物を含有するガスバリアー層の形成
非遷移金属(M1)及び前記遷移金属(M2)の複合酸化物を含有するガスバリアー層は、非遷移金属(M1)の酸化物及び前記遷移金属(M2)の酸化物をスパッタターゲットとして、共蒸着法を採用することによって形成することができる。
共蒸着法を実施する際の成膜条件としては、成膜原料における前記非遷移金属(M1)及び遷移金属(M2)と酸素との比率、成膜時の不活性ガスと反応性ガスとの比率、成膜時のガスの供給量、成膜時の真空度、及び、成膜時の電力からなる群から選択される1種又は2種以上の条件が例示され、これらの成膜条件(好ましくは、酸素分圧)を調節することによって、酸素欠損組成を有する複合酸化物からなる薄膜を形成することができる。すなわち、上述したような共蒸着法を用いて封止層を形成することで、形成される封止層の厚さ方向のほとんどの領域を複合組成領域とすることができる。このため、かような手法によれば、複合組成領域の厚さを制御するという極めて簡便な操作により、所望のガスバリアー性を実現することができる。なお、複合組成領域の厚さを制御するには、例えば、共蒸着法を実施する際の成膜時間を調節すればよい。
共蒸着法の詳細については、スパッタリングターゲットを作製する方法や、これらのスパッタリングターゲットを用いて複合酸化物からなる薄膜を作製する方法については、例えば、特開2000−160331号公報、特開2004−068109号公報、特開2013−047361号公報などの記載が適宜参照されうる。
〔3.2.3〕非遷移金属(M1)としてポリシラザン又はポリシラザンの改質体を含有する層の形成
本発明に係る非遷移金属(M1)を含有する層は、前述のようにSiを含むことがより好ましく、Si単独であることが特に好ましい。
その場合、前記非遷移金属(M1)を含有する層が、ポリシラザン又はポリシラザンの改質体を含有する層であることも好ましく、当該ポリシラザンの改質体を、ポリシラザンを含有する塗布液を本発明に係る機能性素子上に塗布して、真空紫外光を照射することにより形成する層であることが、透過率等の光学特性に優れたガスバリアー性の高い封止層が得られることから好ましい。形成される層の数は特に限定はなく、少なくとも1層であればよく、複数の層でもよい。
改質処理は、好ましくは真空紫外光の照射処理である。真空紫外光の照射といった改質処理により、封止層はガスバリアー性を発現するようになる。
ここではまず、ケイ素化合物がポリシラザンである場合を例に挙げて、非遷移金属(M1)を含有する層の形成方法の一例を説明する。
ポリシラザンを含む塗布液を公知の湿式塗布法により塗布して改質処理を行い、封止層の一部となる層を形成することができる。
本発明に用いられる「ポリシラザン」とは、構造内にケイ素−窒素結合を持つポリマーで、酸窒化ケイ素の前駆体となるポリマーであり、下記一般式(1)の構造を有するものが好ましく用いられる。
Figure 2017047346
式中、R、R、及びRは、各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、又はアルコキシ基を表す。
本発明では、得られる封止層の膜としての緻密性の観点からは、R、R及びRの全てが水素原子であるパーヒドロポリシラザンが特に好ましい。
ポリシラザンは、有機溶媒に溶解した溶液の状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。ポリシラザン溶液の市販品としては、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製のNN120−20、NAX120−20、NL120−20などが挙げられる。
その他、ポリシラザンの詳細については、従来公知である特開2013−255910号公報の段落「0024」〜「0040」、特開2013−188942号公報の段落「0037」〜「0043」、特開2013−151123号公報の段落「0014」〜「0021」、特開2013−052569号公報の段落「0033」〜「0045」、特開2013−129557号公報の段落「0062」〜「0075」、特開2013−226758号公報の段落「0037」〜「0064」等を参照して採用することができる。
ポリシラザンを含有する塗布液の塗布は、電子デバイスの酸素や水蒸気による劣化を抑制するために、例えば、グローブボックス内といった窒素雰囲気下で行われる。ポリシラザンを含有する塗布液を塗布する方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体的には例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。塗布液を塗布した後は、塗膜を乾燥させることが好ましい。塗膜を乾燥することによって、塗膜中に含有される有機溶媒を除去することができる。形成方法については、従来公知である特開2014−151571号公報の段落「0058」〜「0064」、特開2011−183773号公報の段落「0052」〜「0056」等を参照して採用することができる。
改質処理とは、ポリシラザンの酸化ケイ素又は酸化窒化ケイ素への転化反応をいう。改質処理も、同様に、グローブボックス内といった窒素雰囲気下や減圧下で行われる。
本発明における改質処理は、ポリシラザンの転化反応に基づく公知の方法を選ぶことができる。本発明においては、低温で転化反応が可能なプラズマやオゾンや紫外線を使う転化反応が好ましい。プラズマやオゾンは従来公知の方法を用いることができる。本発明においては、ポリシラザン含有液の塗膜を設け、波長200nm以下の真空紫外光(VUVともいう。)を照射して改質処理することにより、非遷移金属(M1)を含有する層を形成することが好ましい。
層厚は、1〜500nmの範囲が好ましい、より好ましくは10〜300nmの範囲である。当該非遷移金属含有層のうち、層全体が改質層であってもよいが、改質処理された改質層の厚さは、1〜50nmが好ましく、1〜10nmがさらに好ましい。
本発明における真空紫外光照射工程において、ポリシラザン層塗膜が受ける塗膜面での該真空紫外光の照度は30〜200mW/cmの範囲であることが好ましく、50〜160mW/cmの範囲であることがより好ましい。真空紫外光の照度を30mW/cm以上とすることで、改質効率を十分に向上することができ、200mW/cm以下では、塗膜への損傷発生率を極めて抑え、また、基材への損傷も低減させることができるため、好ましい。
本発明の電子デバイスにおいては、前記複合酸化物を含有する領域を形成する観点から、ポリシラザン層塗膜に過度な光量の真空紫外光の照射は必要なく、また、真空紫外光の照射を行わなくても高いガスバリアー性が得られるため、機能性素子へのダメージを低減することが可能である。
真空紫外光の照射を行う場合は、ポリシラザン層塗膜面における真空紫外光の照射エネルギー量は、0.01〜0.9J/cmの範囲であることが好ましく、0.05〜0.5J/cmの範囲であることが、素子へのダメージを低減する観点からより好ましい。
なお、真空紫外光光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。真空紫外光は、酸素による吸収があるため真空紫外光照射工程での効率が低下しやすいことから、真空紫外光の照射は、可能な限り酸素濃度の低い状態で行うことが好ましい。すなわち、真空紫外光照射時の酸素濃度は、10〜10000ppmの範囲とすることが好ましく、より好ましくは50〜5000ppmの範囲、さらに好ましくは80〜4500ppmの範囲、最も好ましくは100〜1000ppmの範囲である。
改質処理は、加熱処理を用いることもできる。加熱条件としては、好ましくは50〜300℃の範囲内、より好ましくは70〜200℃の範囲内の温度で、好ましくは0.005〜60分間、より好ましくは0.01〜10分間、加熱・乾操することにより、縮合が行われ、改質体を形成することができる。
加熱処理としては、例えば、ヒートブロック等の発熱体に基材を接触させ熱伝導により塗膜を加熱する方法、抵抗線等による外部ヒーターにより雰囲気を加熱する方法、IRヒーターのような赤外領域の光を用いた方法等が挙げられるが、特に限定されない。また、ケイ素化合物を含有する塗膜の平滑性を維持できる方法を適宜選択してよい。
加熱処理時の塗膜の温度としては、50〜250℃の範囲内に適宜調整することが好ましく、50〜120℃の範囲内であることがより好ましい。
また、加熱時間としては、1秒〜10時間の範囲内が好ましく、10秒〜1時間の範囲内がより好ましい。
これらの改質処理においては、例えば、特開2012−086394号公報の段落「0055」〜「0091」、特開2012−006154号公報の段落「0049」〜「0085」、特開2011−251460号公報の段落「0046」〜「0074」等に記載の内容を参照することができる。
(添加元素)
本発明において、非遷移金属(M1)を含有する層を形成するための塗布液には、添加元素(長周期型周期表の第2族〜第14族の元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素)を含有させることができる。添加元素の例としては、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、鉛(Pb)、マンガン(Mn)、リチウム(Li)、ゲルマニウム(Ge)、銅(Cu)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、コバルト(Co)、ホウ素(B)、ベリリウム(Be)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、タリウム(Tl)、ゲルマニウム(Ge)等が挙げられる。
本発明に係る前記非遷移金属(M1)を含有する層を、特に、ポリシラザンとアルミニウム化合物、又はポリシラザンとホウ素化合物とを含有する塗布液を塗布し、乾燥して形成することが好ましい。
本発明に適用可能なアルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムイソポロポキシド、アルミニウム−sec−ブチレート、チタンイソプロポキシド、アルミニウムトリエチレート、アルミニウムトリイソプロピレート、アルミニウムトリtert−ブチレート、アルミニウムトリn−ブチレート、アルミニウムトリsec−ブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロピレートモノアルミニウム−t−ブチレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムオキシドイソプロポキシドトリマー等を挙げることができる。
また、ホウ素化合物としては、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリn−プロピル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリn−ブチル、ホウ酸トリtert−ブチル等を挙げることができる。
これらの中でも、アルミニウム化合物が好ましい。具体的な市販品としては、例えば、AMD(アルミニウムジイソプロピレートモノsec−ブチレート)、ASBD(アルミニウムセカンダリーブチレート)、ALCH(アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート)、ALCH−TR(アルミニウムトリスエチルアセトアセテート)、アルミキレートM(アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート)、アルミキレートD(アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート)、アルミキレートA(W)(アルミニウムトリスアセチルアセトネート)(以上、川研ファインケミカル株式会社製)、プレンアクト(登録商標)AL−M(アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、味の素ファインケミカル株式会社製)等を挙げることができる。
なお、これらの化合物を用いる場合は、ポリシラザンを含む塗布液と不活性ガス雰囲気下で混合することが好ましい。これらの化合物が大気中の水分や酸素と反応し、激しく酸化が進むことを抑制するためである。また、これらの化合物とポリシラザンとを混合する場合は、30〜100℃に昇温し、撹拌しながら1分〜24時間保持することが好ましい。
非遷移金属(M1)を含有する層における上記添加元素の含有量は、ケイ素(Si)の含有量100mol%に対して、上記添加元素の含有量が0.1〜20mol%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10mol%である。
〔3.3〕封止層を用いた電子デバイスの封止方法
封止層を基材及び機能性素子上に貼合して電子デバイスを封止するためには、任意の硬化型の樹脂封止材料を用いて接着することが好ましい。樹脂封止材料には、接着する封止部材との密着性の向上の観点から、好適な接着剤を適宜選択することができる。
このような樹脂封止材料としては、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
熱硬化性接着剤としては、例えば、分子の末端又は側鎖にエチレン性二重結合を有する化合物と熱重合開始剤とを主成分とする樹脂等を用いることができる。より具体的には、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等からなる熱硬化性接着剤を使用することができる。また、有機EL素子の製造工程で用いる貼合装置及び硬化処理装置に応じて、溶融タイプの熱硬化性接着剤を使用してもよい。
また、このような樹脂封止材料としては、光硬化性樹脂用いることも好ましい。例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレートを主成分とした光ラジカル重合性樹脂や、エポキシやビニルエーテル等の樹脂を主成分とした光カチオン重合性樹脂や、チオール・エン付加型樹脂等が挙げられる。これら光硬化性樹脂の中でも、硬化物の収縮率が低く、アウトガスも少なく、また長期信頼性に優れるエポキシ樹脂系の光カチオン重合性樹脂が好ましい。
また、このような樹脂封止材料としては、化学硬化型(二液混合)の樹脂を用いることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを用いることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂を用いることができる。
なお、有機EL素子を構成する有機材料は、熱処理により劣化する場合がある。このため、室温から80℃までに接着硬化できる樹脂封止材料を使用することが好ましい。
〔4〕有機ポリマー層
本発明においては、基材上に少なくとも1層の有機ポリマー層と、前記第1のガスバリアー層及び第2のガスバリアー層の積層体と、又は前記非遷移金属(M1)及び前記遷移金属(M2)の複合酸化物を含有するガスバリアー層とが積層されていることが、基材と封止層、有機機能層と封止層との密着性を向上し、使用環境変動における封止層への機械的又は熱的ストレスによる層の損傷や欠陥を防ぎ、ガスバリアー性の劣化を抑制する観点から、好ましい態様である。
好ましい層構成としては、図2A及びBを参照することができる。
本発明に係る有機ポリマー層に用いられる樹脂としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコーン樹脂、及びアルキルチタネート等を単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
好ましくは、下記重合性化合物とシランカップリング剤と重合開始剤を含む重合性組成物を層状にした後硬化して形成することもできる。
重合性組成物を層状にする方法としては、本発明では基材及び有機EL素子の上に重合性組成物を塗布して形成することができる。塗布組成物を塗布する方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体的には例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。塗布液を塗布した後は、塗膜を乾燥させることが好ましい。塗膜を乾燥することによって、塗膜中に含有される有機溶媒を除去することができる。形成方法については、従来公知である特開2014−151571号公報の段落「0058」〜「0064」、特開2011−183773号公報の段落「0052」〜「0056」等を参照して採用することができる。
上記塗布法の中では、電子デバイスは水分や親水性溶媒によって劣化する懸念があるため、一般的な溶媒塗布は好ましくなく、窒素雰囲気下、無溶媒、若しくは、親水性溶媒の含有量が少ない塗布組成物を用いたインクジェット方式を好ましく適用することができる。当該インクジェット方式は、例えば、国際公開第2014/176365号、国際公開第2015/100375号、国際公開第2015/112454号等に記載の技術内容を参照して採用することができる。具体的には、Kateeva社製のYIELDjet(登録商標)Platformを用いて有機ポリマー層を形成することも好ましい実施態様である。
また、重合性組成物を層状にする別の方法としては、公知のフラッシュ蒸着法といった気相成膜法を用いることができる。
例えば、重合性化合物とシランカップリング剤と重合開始剤を含む重合性組成物を、減圧雰囲気下において、加熱によって揮発させて基材、電極層又は有機機能層上に蒸着膜として形成することが好ましい。
当該蒸着膜を形成する方法は、特開2008−142941号公報、特開2004−314626号公報等に記載されているような公知の方法を用いることができる。
一例として、真空装置内に基材及びその上に形成された有機機能層を設置し、真空装置の中に設置された加熱ボートに前記重合性組成物を入れ、10Pa程度の減圧下、前記重合性組成物を200℃程度に加熱し、基材及び有機機能層を被覆しながら、所望の層厚になるように蒸着膜を形成することができる。
得られた蒸着膜に真空環境下で高圧水銀灯等を用いて紫外線を照射して、蒸着した重合性組成物を硬化させて有機ポリマー層を形成する。
(重合性化合物)
本発明で用いられる重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を末端又は側鎖に有する化合物、又はエポキシ又はオキセタンを末端又は側鎖に有する化合物である。これらのうち、エチレン性不飽和結合を末端又は側鎖に有する化合物が好ましい。エチレン性不飽和結合を末端又は側鎖に有する化合物の例としては、(メタ)アクリレート系化合物、アクリルアミド系化合物、スチレン系化合物、無水マレイン酸等が挙げられ、(メタ)アクリレート系化合物が好ましい。(メタ)アクリレート系化合物としては、(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートやポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が好ましい。スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、4−ヒドロキシスチレン、4−カルボキシスチレン等が好ましい。
(シランカップリング剤)
本発明で用いられるシランカップリング剤は、例えば、ハロゲン含有シランカップリング剤(2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシラン,3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシランなど)、エポキシ基含有シランカップリング剤[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、2−グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシジルオキシエチルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランなど]、アミノ基含有シランカップリング剤(2−アミノエチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−[N−(2−アミノエチル)アミノ]エチルトリメトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピル−メチルジメトキシシランなど)、メルカプト基含有シランカップリング剤(2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなど)、ビニル基含有シランカップリング剤(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなど)、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤(2−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、2−アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなど)などを挙げることができる。これらの中では、(メタ)アクリロイル基を含有するシランカップリング剤((メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤)が好ましく用いられる。
また、その他の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤としては、1,3−ビス(アクリロイルオキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(メタクリロイルオキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(γ−アクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(γ−メタクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、アクリロイルオキシメチルメチルトリシラザン、メタクリロイルオキシメチルメチルトリシラザン、アクリロイルオキシメチルメチルテトラシラザン、メタクリロイルオキシメチルメチルテトラシラザン、アクリロイルオキシメチルメチルポリシラザン、メタクリロイルオキシメチルメチルポリシラザン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルトリシラザン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルトリシラザン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルテトラシラザン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルテトラシラザン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルポリシラザン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルポリシラザン、アクリロイルオキシメチルポリシラザン、メタクリロイルオキシメチルポリシラザン、3−アクリロイルオキシプロピルポリシラザン、3−メタクリロイルオキシプロピルポリシラザンが好ましく、更に、化合物の合成・同定が容易であるといった観点から、1,3−ビス(アクリロイルオキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(メタクリロイルオキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(γ−アクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(γ−メタクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンが特に好ましい。
本発明で用いられるシランカップリング剤は、下記に示される化合物が好ましく用いられるが、当該シランカップリング剤の合成方法は、特開2009−67778号公報を参照することができる。
Figure 2017047346
(式中、RはCH=CHCOOCHを表す。)
(重合開始剤)
本発明における重合性組成物は、通常、重合開始剤を含む。重合開始剤を用いる場合、その含有量は、重合に関与する化合物の合計量の0.1モル%以上であることが好ましく、0.5〜2モル%であることがより好ましい。このような組成とすることにより、活性成分生成反応を経由する重合反応を適切に制御することができる。光重合開始剤の例としてはBASFジャパン社から市販されているイルガキュア(Irgacure)シリーズ(例えば、イルガキュア651、イルガキュア754、イルガキュア184、イルガキュア2959、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア819など)、ダロキュア(Darocure)シリーズ(例えば、ダロキュアTPO、ダロキュア1173など)、クオンタキュア(Quantacure)PDO、ランベルティ(Lamberti)社から市販されているエザキュア(Ezacure)シリーズ(例えば、エザキュアTZM、エザキュアTZT、エザキュアKTO46など)等が挙げられる。
本発明では、シランカップリング剤と重合性化合物と重合開始剤を含む重合性組成物を、光(例えば、紫外線)、電子線、又は熱線にて、硬化させるが、光によって硬化させることが好ましい。特に、重合性組成物を25℃以上の温度(例えば、30〜130℃)をかけて加熱した後に、硬化させることが好ましい。このような構成とすることにより、シランカップリング剤の加水分解反応を進行させ、重合性組成物を効果的に硬化させかつ、基材や有機機能層等にダメージを与えずに成膜することができる。
照射する光は、通常、高圧水銀灯若しくは低圧水銀灯による紫外線である。照射エネルギーは0.1J/cm以上が好ましく、0.5J/cm以上がより好ましい。重合性化合物として、(メタ)アクリレート系化合物を採用する場合、空気中の酸素によって重合阻害を受けるため、重合時の酸素濃度若しくは酸素分圧を低くすることが好ましい。窒素置換法によって重合時の酸素濃度を低下させる場合、酸素濃度は2%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。減圧法により重合時の酸素分圧を低下させる場合、全圧が1000Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましい。また、100Pa以下の減圧条件下で0.5J/cm以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが特に好ましい。
本発明に係る有機ポリマー層は、平滑で、膜硬度が高いことが好ましい。有機層の平滑性は1μm角の平均粗さ(Ra値)として1nm未満であることが好ましく、0.5nm未満であることがより好ましい。モノマーの重合率は85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましく、92%以上であることが特に好ましい。ここでいう重合率とはモノマー混合物中の全ての重合性基(例えば、アクリロイル基及びメタクリロイル基)のうち、反応した重合性基の比率を意味する。重合率は赤外線吸収法によって定量することができる。
有機ポリマー層の層厚については特に限定はないが、薄すぎると層厚の均一性を得ることが困難になるし、厚すぎると外力によりクラックを発生してガスバリアー性が低下する。かかる観点から、有機層の厚さは50〜2000nmが好ましく、200〜1500nmがより好ましい。
有機ポリマー層の表面にはパーティクル等の異物、突起が無いことが要求される。このため、有機ポリマー層の成膜はクリーンルーム内で行われることが好ましい。クリーン度はクラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましい。有機層の硬度高いほうが好ましい。有機層の硬度が高いと、無機層が平滑に成膜されその結果としてバリア能が向上する。有機層の硬度はナノインデンテーション法に基づく微小硬度として表すことができる。有機層の微小硬度は100N/mm以上であることが好ましく、150N/mm以上であることがより好ましい。
(有機ポリマー層と封止層の積層)
有機ポリマー層と封止層の積層は、所望の層構成に応じて有機ポリマー層と封止層を順次繰り返し成膜することにより行うことができる。特に、本発明では、少なくとも2層の有機ポリマー層と少なくとも2層の封止層を交互に積層した場合に、高いガスバリアー性を発揮することができ、好ましい(図2A、B参照。)。
〔5〕その他の機能層
[保護層]
本発明に係る封止層の、基材に対して封止層が形成された側の最表層には、ポリシロキサン改質層などからなる保護層が形成されてもよい。ポリシロキサン改質層は、ポリシロキサンを含有する塗布液を湿式塗布法により塗布して乾燥した後、その乾燥した塗膜に加熱による改質処理や、紫外光の照射、真空紫外光の照射等の改質処理を施すことによって形成することができる。真空紫外光としては、上述したポリシラザンの改質処理に用いたVUVを用いることが好ましい。
その他、ポリシロキサンの詳細については、従来公知である特開2013−151123号公報の段落「0028」〜「0032」、特開2013−086501号公報の段落「0050」〜「0064」、特開2013−059927号公報の段落「0063」〜「0081」、特開2013−226673号公報の段落「0119」〜「0139」等を参照して採用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
実施例1
<評価用デバイスの作製>
Ca薄膜の電気抵抗値の変化を利用した水蒸気透過度(WVTR:water vapour transmission rate)の測定法として知られる、いわゆる、Electrical Calcium Testの方法(例えば、米国特許8664963号明細書参照。)に従い、電子デバイスを模した評価用デバイスを作製した。
評価用デバイスの構成を図4に示す。
〈基材の準備〉
基材は0.7mm厚、50mm×50mmのサイズのガラス板を用いた。
〈Ca蒸着層とアルミニウム電極の形成〉
Ca蒸着層は、前記50mm×50mmサイズの無アルカリガラス板(厚さ0.7mm)の片面をUV洗浄した。株式会社エイエルエステクノロジー製の真空蒸着装置を用い、ガラス板の中央に、マスクを介して14mm×20mmのサイズでCaを蒸着した。Ca蒸着層の厚さは80nmとした。次いで、マスクを交換し、図4に示すパターンで、アルミニウムを厚さ200nmとなるように蒸着し、電極を形成した。アルミニウム電極に被覆されていないCa蒸着層の領域は、10mm×20mmであった。
〈評価用デバイスの有機ポリマー層の形成〉
有機ポリマー層は、公知のフラッシュ蒸着法により形成した。有機ポリマー層の原料としては、下記の混合物を用いた。
1,9−ノナンジオールジアクリレート 75質量部
トリメチロルプロパントリアクリレート 14質量部
フェノキシエチルアクリレート 6質量部
2,4,6−トリメチルベンゾフェノン 5質量部
フラッシュ蒸着時の圧力は3Paとし、UV硬化処理の条件は、2J/cmとした。
有機ポリマー層の形成にはマスクを用い、ガラス板の中央に、26mm×26mmのサイズとなるように形成した。有機ポリマー層の厚さは、Ca蒸着範囲を覆う中央部22mm×22mmのサイズにおいては、1μmとなるようにし、中央部22mm×22mmの外側においては、徐々に層厚が減少するようにした。
〈評価用デバイスの封止層(ガスバリアー層)の形成〉
(スパッタ成膜方法及び成膜条件)
封止層(ガスバリアー層)の形成には、気相法・スパッタ装置としては、マグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ社製:型式EB1100)を用いた。
ターゲットとしては、下記の各ターゲットを用い、プロセスガスにはArとOとを用いて、マグネトロンスパッタ装置により、RF方式、若しくは、DC方式による成膜を行った。スパッタ電源パワーは以下に記載がないものは5.0W/cmとし、成膜圧力は0.4Paとした。また、各成膜条件において、それぞれ酸素分圧を調整した。なお、事前にガラス基材を用いた成膜により、各成膜条件において、成膜時間に対する層厚変化のデータを取り、単位時間当たりに成膜される層厚を算出した後、設定層厚となるように成膜時間を設定した。
有機ポリマー層とガスバリアー層の積層においては、成膜装置間の基材の移動は減圧状態を維持したまま行った。
〈ターゲット〉
T1:市販の多結晶シリコンターゲットを用いた。
T2:市販の酸素欠損型酸化ニオブターゲットを用いた。組成はNb1229であった。
T3:市販の金属Nbターゲットを用いた。
T4:市販の金属Taターゲットを用いた。
T5:Siが80原子%、Nbが20原子%となるように粉砕したSi及びNb粉末を混合し、Ar雰囲気下にてホットプレスを行い、焼結を行った。焼結した混合材料を機械成型した後、銅製の背板上にボンディングを行ってターゲットとした。
T6:Nb粉末を50質量%及びSiO粉末を50質量%の割合で、蒸留水を分散剤としてボールミルで混合し、得られたスラリーをスプレードライヤーを用いて造粒し、二次粒子の粒径が20〜100μmの酸化物混合粉末を得た。
一方、ターゲットホルダーとして、直径6インチ(1インチは2.54cm)の銅製のバッキングプレートを用いた。そして、上記酸化物混合粉末が溶射されるべきバッキングプレート表面部分を、Al砥粒を用いたサンドブラストにより荒らして、粗面の状態にした。
次に、Ni−Al(質量比8:2)の合金粉末を還元雰囲気下でプラズマ溶射(メトコ溶射機を使用)し、層厚50μmのNi−Al(質量比8:2)からなるアンダーコートを形成した後、上記酸化物混合粉末をアンダーコートの上に還元雰囲気下でプラズマ溶射して、ターゲットを作製した。得られたターゲットは、Siを40原子%、Nbを60原子%の比率で含む、酸素欠損型のターゲットである。
〈成膜条件〉
T1−1:ターゲットとしてT1を用い、RF方式によりスパッタ成膜した。スパッタ電源パワーは4.0W/cm、酸素分圧は20%とした。また、層厚が100nmとなるように成膜時間を設定した。
T1−2:層厚が90nmとなるように成膜時間を設定した以外は、T1−1と同様にして行った。
T1−3:層厚が200nmとなるように成膜時間を設定した以外は、T1−1と同様にして行った。
T1−4:層厚が40nmとなるように成膜時間を設定した以外は、T1−1と同様にして行った。
T2−1:ターゲットとしてT2を用い、DC方式により成膜した。酸素分圧を12%とした。また、層厚が10nmとなるように成膜時間を設定した。
T2−2:層厚が5nmとなるように成膜時間を設定した以外は、T2−1と同様にして行った。
T3−1:T1とT3とを用い、DC方式により2元同時スパッタを行った。酸素分圧を18%とした。バリア層の組成として、SiとNbの原子比率が同量となるように、T1における電源パワーと、T3における電源パワーとを調整した。また、層厚が50nmとなるように成膜時間を設定した。
T4−1:T1とT4とを用い、DC方式により2元同時スパッタを行った。酸素分圧を18%とした。バリア層の組成として、SiとTaの原子比率が同量となるように、T1における電源パワーと、T4における電源パワーとを調整した。また、層厚が50nmとなるように成膜時間を設定した。
T5−1:ターゲットとしてT5を用い、DC方式により成膜した。酸素分圧は18%とした。また、層厚が50nmとなるように成膜時間を設定した。
T6−1:ターゲットとしてT6を用い、DC方式により成膜した。酸素分圧は10%とした。また、層厚が50nmとなるように成膜時間を設定した。
T6−2:層厚が30nmとなるように成膜時間を設定した以外は、T6−1と同様にして行った。
〈封止層の厚さ方向の組成分布の測定〉
XPS分析により、封止層の厚さ方向の組成分布プロファイルを測定した。なお、XPS分析条件は以下のとおりである。
(XPS分析条件)
・装置:アルバック・ファイ社製QUANTERA SXM
・X線源:単色化Al−Kα
・スパッタイオン:Ar(2keV)
・デプスプロファイル:SiO換算スパッタ厚さで、所定の厚さ間隔で測定を繰り返し、深さ方向のデプスプロファイルを得た。この厚さ間隔は、1nmとした(深さ方向に1nmごとのデータが得られる)
・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて定量した。データ処理は、アルバック・ファイ社製のMultiPakを用いた。なお、分析した元素は、Si、Nb、Ta、O、N、Cである。
(複合組成領域の厚さの測定)
遷移金属がNbである場合を例に取ると、上記XPS組成分析から得られたデータから、封止層の組成は、(Si)(Nb)で表すことができる。第1層及び第2層を積層した態様においては、第1層と第2層との界面領域で、非遷移金属であるSiと遷移金属であるNbとが共存し、かつ遷移金属Nb/Siの原子数比率の値xが、0.02≦x≦49の範囲内にある領域を「複合組成領域」とし、当該領域の有無とその厚さ(nm)を測定し、表に記載した。封止層を非遷移金属であるSiと遷移金属であるNb(又はTa)の複合酸化物層として形成した態様の場合も同様の測定を行い、当該領域の厚さ(nm)を表に記載した。
(複合組成領域の酸素欠損指標の計算)
上記XPS分析データを用いて、各測定点における(2y+3z)/(a+bx)の値を計算した。ここで、非遷移金属はSiであるため、a=4、また、遷移金属はNb若しくはTaであるため、a=5である。(2y+3z)/(a+bx)の値の最小値を求め、これを酸素欠損度指標として、表1に記載した。(2y+3z)/(a+bx)<1.0となる場合、酸素欠損の状態であることを示す。
<評価用デバイス101の作製>
ガラス板に、Ca蒸着層、アルミ電極を形成し、次いで、表1に示すように、成膜条件:T1−1を用いて封止層を形成し、評価用デバイス101を得た。
<評価用デバイス102〜115の作製>
同様に、表1に示す組合せで封止層を形成し、評価用デバイス102〜115を得た。
≪評価≫
各評価用デバイスの電極間の初期抵抗値を測定した後、測定装置との配線をつないだまま、各評価用デバイスを60℃・90%RH環境に保管し、抵抗値の経時変化を測定した。抵抗値が、初期抵抗値から1.1倍になった時間を求め、下記評価指標に従い、ガスバリアー性のランクを求め、表に記載した。
〈ガスバリアー性ランク〉
1: 20hr未満
2: 20hr以上、50hr未満
3: 50hr以上、100hr未満
4: 100hr以上、200hr未満
5: 200hr以上
Figure 2017047346
表1から、本発明に係る評価デバイスは比較例に対してガスバリアー性に優れており、本発明の封止層(ガスバリアー層)及び封止方法は、薄層でも極めて高いガスバリアー性能を有する効率的な封止層及び封止方法であることが分かった。
実施例2
<電子デバイス201の作製>
〈基材の作製〉
樹脂基材としては、両面に易接着処理した厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラー(登録商標)(U48))を用いた。この樹脂基材のガスバリアー層を形成する面とは反対の面に、厚さ0.5μmのアンチブロック機能を有するクリアハードコート層を形成した。すなわち、UV硬化型樹脂(アイカ工業株式会社製、品番:Z731L)を乾燥層厚が0.5μmになるように樹脂基材上に塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行った。
次に、樹脂基材のガスバリアー層を形成する側の面に厚さ2μmのクリアハードコート層を以下のようにして形成した。JSR株式会社製、UV硬化型樹脂オプスター(登録商標)Z7527を、乾燥層厚が2μmになるように樹脂基材に塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行った。このようにして、クリアハードコート層付樹脂基材を得た。以降、本実施例及び比較例においては、便宜上、このクリアハードコート層付樹脂基材を単に基材とする。
〈ガスバリアー層の形成(塗布改質法)〉
パーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NN120−20)と、アミン触媒(N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン(TMDAH))を含むパーヒドロポリシラザン20質量%のジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NAX120−20)とを、4:1(質量比)の割合で混合し、更に乾燥層厚調整のためジブチルエーテルで適宜希釈し、塗布液を調製した。
基材の機能性層を形成する表面に、スピンコート法により上記塗布液を乾燥層厚が250nmとなるように塗布し、80℃で2分間乾燥した。次いで、乾燥した塗膜に対して、波長172nmのXeエキシマランプを有する真空紫外線照射装置を用い、照射エネルギー6J/cmの条件で真空紫外線照射処理を行った。この際、照射雰囲気は窒素で置換し、酸素濃度は0.1体積%とした。また、試料を設置するステージ温度を80℃とした。この操作をもう一度繰り返し、塗布改質法によるガスバリアー層を2層形成した。
このようにして作製したガスバリアー性を有する基材を50mm×50mmのサイズに切り出し、これを基材として、下記に示すような方法で、ボトムエミッション型の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を作製した。
〈有機機能層:有機EL素子の作製〉
基材のガスバリアー層上に、陽極、取り出し配線、有機機能層、陰極を順次形成した。各層は、基材の中央部に30mm×30mmの発光領域が得られる形状で形成した。陽極として厚さ150nmのITO層を高周波スパッタ法により形成し、取り出し配線として、厚さ300nmのアルミニウム層を形成した。また、有機機能層として、正孔注入層(銅フタロシアニン(CuPc)、厚さ30nm)/正孔輸送層(NPD、厚さ100nm)/蛍光系青色発光層(厚さ30nm)/電子輸送層(アルミニウムキノレート(Alq)、厚さ30nm)/電子注入層(フッ化リチウム、厚さ1nm)を、この順に形成し、陰極として、厚さ200nmのアルミニウム層を形成した。
〈封止層の形成〉
(有機ポリマー層の形成)
実施例1と同様にして、有機ポリマー層を形成した。有機ポリマー層の形成にはマスクを用い、基材の中央に、38mm×38mmのサイズとなるように形成した。有機ポリマー層の厚さは、発光領域を覆う中央部34mm×34mmのサイズにおいては、2μmとなるようにし、中央部34mm×34mmの外側においては、徐々に層厚が減少するようにした。
(ガスバリアー層の形成)
有機ポリマー層の上に、成膜条件:T1−3を用いて厚さ200nmのガスバリアー層を形成した。ガスバリアー層形成に際しては、成膜範囲が有機ポリマー層形成範囲よりも大きくなるようにし、かつ、電極接点部分を覆わないようにマスクして成膜を行った。
さらに、同様にして、有機ポリマー層とガスバリアー層とをもう一層ずつ形成し、封止層とした。
(保護フィルムの貼合)
デバイスの基材として用いたクリアハードコートを形成した樹脂基材の2μmのクリアハードコート層を形成した側の面に、接着層を形成し、保護フィルムとした。保護フィルムのサイズは、デバイスと貼合した際に電極接点部分を覆わないサイズとした。封止層を形成したデバイスをグローブボックス内に取り出し、事前にグローブボックス内で乾燥させておいた保護フィルムを、接着層面と、デバイスの封止層面とが接するように配置し、真空ラミネートにより接着した。このようにして、比較例の電子デバイス201を得た。
電子デバイス201の封止層は、複合組成領域を有していない。
<電子デバイス202の作製>
ガスバリアー層の形成を下記のようにした以外は、電子デバイス201と同様にして、比較例の電子デバイス202を得た。
電子デバイス202の封止層は、複合組成領域を有していない。
(ガスバリアー層の形成)
市販のバッチ式プラズマCVD装置を用いた。基材を真空装置内にセットし10−4Pa台まで真空引きをした後、原料ガスとしてシランと窒素を用い、プラズマCVD法により50nmの窒化ケイ素層を形成した。
<電子デバイス203の作製>
ガスバリアー層を、評価用デバイス105と同様にして、成膜条件:T1−4とT2−1として、厚さ50nmのガスバリアー層を形成した以外は、電子デバイス201と同様にして、本発明の電子デバイス203を得た。
電子デバイス203の封止層は、22nmの複合組成領域を、厚さ方向に二箇所有していた。また、二箇所の複合組成領域の、(2y+3z)/(a+bx)の最小値はそれぞれ0.65であり、酸素欠損組成であった。
≪評価≫
各電子デバイスを、直径75mmの金属製ローラーの周囲に巻き付かせて、高温高湿下(温度60℃、相対湿度90%)の恒温恒湿槽に放置した。一定時間ごとに恒温恒湿槽から各電子デバイスを取り出して室温下で発光させ、ダークスポットの有無を確認した。この作業を、発光領域内におけるダークスポット面積比率が1%に到達するまで続け、恒温恒湿槽に放置してからダークスポット面積比率が1%に到達するまでの時間を、ガスバリアー性として評価した。時間が長いほど、ガスバリアー性が高いことを示している。
結果として、ダークスポット面積比率が1%に到達するまでの時間は、比較例の電子デバイス201が50時間、同じく比較例の電子デバイス202が200時間であったのに対し、本発明の電子デバイス203は1500時間となり、非常に良好であった。
評価の結果、本発明の電子デバイスは比較例に対してダークスポットの発生が抑制されており、本発明の封止層及び封止方法は、薄層でも極めて高いガスバリアー性能を示す、効率的な封止層及び封止方法であることが分かった。
実施例3
実施例1と同様にしてCa薄膜を有する評価用デバイスの作製を行った。また、同様に有機ポリマー層の形成も行った。
〈評価用デバイスの封止層(ガスバリアー層〉の形成〉
(ガスバリアー層1:非遷移金属(M1)含有層の形成)
非遷移金属(M1)として、Siを含有するポリシラザンを用い、塗布・改質方式により非遷移金属(M1)含有層を形成した。形成条件は下記の塗布条件P−1〜P−4と、改質条件V−1〜V−5を組合せ、表2に示した。
P−1:パーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NN120−20)と、アミン触媒(N,N,N,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン(TMDAH))を含むパーヒドロポリシラザン20質量%のジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NAX120−20)とを、4:1(質量比)の割合で混合し、さらに乾燥層厚調整のため脱水ジブチルエーテルで適宜希釈し、塗布液を調製した。
評価用デバイスの中央部、36mm×36mmの範囲に塗布されるように、それ以外の部分をマスクし、グローブボックス内の窒素雰囲気下で、スピンコート法により上記塗布液を乾燥層厚が100nmとなるように塗布し、80℃で10分間乾燥した。
P−2:乾燥層厚が250nmとなるようにした以外は、P−1と同様にした。
P−3:乾燥層厚が40nmとなるようにした以外は、P−1と同様にした。
P−4:パーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NN120−20)と、ALCH(アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート)とを、Si原子100に対するAl原子の数が1となるような比率で混合し、乾燥層厚調整のため脱水ジブチルエーテルで適宜希釈し、塗布液を調製した。次いで、P−1と同様の方法で、乾燥層厚が80nmとなるように塗布し、80℃で10分間乾燥した。
V−1:非遷移金属(M1)含有層を形成した試料を、波長172nmのXeエキシマランプを有する図5に示す真空紫外線照射装置に設置し、照射エネルギー5.0J/cmの条件で真空紫外線照射処理を行った。この際、チャンバー内に窒素と酸素とを供給し、照射雰囲気の酸素濃度を0.1体積%に調整した。また、試料を設置するステージ温度を80℃とした。
図5に示す真空紫外光照射装置(100)において、101は装置チャンバーであり、図示しないガス供給口から内部に窒素と酸素とを適量供給し、図示しないガス排出口から排気することで、チャンバー内部から実質的に水蒸気を除去し、チャンバー内の酸素濃度を所定の濃度に維持することができる。102は172nmの真空紫外光を照射する二重管構造を有するXeエキシマランプ(エキシマランプ光強度:130mW/cm)、103は外部電極を兼ねるエキシマランプのホルダーである。104は試料ステージである。試料ステージ104は、図示しない移動手段により装置チャンバー101内を水平に所定の速度で往復移動することができる。また、試料ステージ104は図示しない加熱手段により、所定の温度に維持することができる。105はポリシラザン化合物塗布層が形成された試料である。試料ステージが水平移動する際、試料の塗布層表面と、エキシマランプ管面との最短距離が3mmとなるように試料ステージの高さが調整されている。106は遮光板であり、Xeエキシマランプ102のエージング中に試料の塗布層に真空紫外線が照射されないようにしている。
真空紫外光照射工程で試料塗布層表面に照射されるエネルギーは、浜松ホトニクス社製の紫外線積算光量計:C8026/H8025 UV POWER METERを用い、172nmのセンサヘッドを用いて測定した。測定に際しては、Xeエキシマランプ管面とセンサヘッドの測定面との最短距離が、3mmとなるようにセンサヘッドを試料ステージ104中央に設置し、かつ、装置チャンバー101内の雰囲気が、真空紫外光照射工程と同一の酸素濃度となるように窒素と酸素とを供給し、試料ステージ104を0.5m/minの速度で移動させて測定を行った。測定に先立ち、Xeエキシマランプ102の照度を安定させるため、Xeエキシマランプ点灯後に10分間のエージング時間を設け、その後試料ステージを移動させて測定を開始した。
この測定で得られた照射エネルギーを元に、試料ステージの移動速度を調整することで、5.0J/cmの照射エネルギー量となるように調整した。尚、真空紫外光照射は、10分間のエージング後に行った。
V−2:照射エネルギーを3.5J/cmとした以外は、V−1と同様にした。
V−3:照射エネルギーを1.0J/cmとした以外は、V−1と同様にした。
V−4:照射エネルギーを0.5J/cmとした以外は、V−1と同様にした。
V−5:真空紫外光照射処理を行わなかった。
(ガスバリアー層2:遷移金属(M2)含有層、又は(M2)非含有層の形成)
気相法・スパッタにより形成した。スパッタ装置としては、マグネトロンスパッタ装置(キヤノンアネルバ社製:型式EB1100)を用いた。
ターゲットとしては、実施例1で用いた下記T1〜T4の各ターゲットを用い、プロセスガスにはArとOとを用いて、マグネトロンスパッタ装置により、RF方式、若しくは、DC方式による成膜を行った。スパッタ電源パワーは以下に記載がないものは5.0W/cmとし、成膜圧力は0.4Paとした。また、各成膜条件において、それぞれ酸素分圧を調整した。なお、事前にガラス基材を用いた成膜により、各成膜条件において、成膜時間に対する層厚変化のデータを取り、単位時間当たりに成膜される層厚を算出した後、設定層厚となるように成膜時間を設定した。
各試料には下記の成膜条件を適用し、表2に示した。
〈ターゲット〉
T1:市販の多結晶シリコンターゲットを用いた。
T2:市販の酸素欠損型酸化ニオブターゲットを用いた。組成はNb1229であった。
T3:市販の金属Nbターゲットを用いた。
T4:市販の金属Taターゲットを用いた。
〈成膜条件〉
T1−1:ターゲットとしてT1を用い、RF方式により成膜した。スパッタ電源パワーは4.0W/cm、酸素分圧は20%とした。また、層厚が100nmとなるように成膜時間を設定した。
T1−2:層厚が10nmとなるように成膜時間を設定した以外は、T1−1と同様にして行った。
T2−1:ターゲットとしてT2を用い、DC方式により成膜した。酸素分圧を12%とした。また、層厚が10nmとなるように成膜時間を設定した。
T2−2:層厚が5nmとなるように成膜時間を設定した以外は、T2−1と同様にして行った。
T2−3:層厚が2nmとなるように成膜時間を設定した以外は、T2−1と同様にして行った。
T3−1:ターゲットとしてT3を用い、DC方式により成膜した。酸素分圧を20%とした。また、層厚が10nmとなるように成膜時間を設定した。
T4−1:ターゲットとしてT4を用い、DC方式により成膜した。酸素分圧を20%とした。また、層厚が10nmとなるように成膜時間を設定した。
<評価用デバイス301〜317の作製>
実施例1と同様にして、ガラス板に、Ca蒸着層、アルミ電極を形成し、次いで、表2に示すような、各条件を用いて封止層を形成し、評価用デバイス301〜317を得た。
〈封止層の厚さ方向の組成分布の測定〉
実施例1で用いたXPS分析により、封止層の厚さ方向の組成分布プロファイルを測定した。なお、分析した元素は、Si、Nb、Ta、Al、O、N、Cである。
今回作製したP−4を用いた試料において、(M1)と(M2)の複合酸化物を含有する領域ではAlは検出されなかった。
(複合組成領域の厚さの測定)
実施例1と同様にして複合組成領域の有無とその厚さ(nm)を測定し、表に記載した。
(複合組成領域の酸素欠損指標の計算)
上記XPS分析データを用いて、実施例1と同様にして各測定点における(2y+3z)/(a+bx)の値を計算した。表に記載した。(2y+3z)/(a+bx)<1.0となる場合、酸素欠損の状態であることを示す。
≪評価≫
各評価用デバイスの電極間の初期抵抗値を測定した後、測定装置との配線をつないだまま、各評価用デバイスを85℃・85%RH環境に保管し、抵抗値の経時変化を測定した。抵抗値が、初期抵抗値から2倍になった時間を求め、下記評価指標に従い、ガスバリアー性のランクを求め、表2に記載した。
(ガスバリアー性ランク)
1: 50hr未満
2: 50hr以上、100hr未満
3: 100hr以上、200hr未満
4: 200hr以上、300hr未満
5: 300hr以上、400hr未満
6: 400hr以上、500hr未満
7: 500hr以上
Figure 2017047346
表2から、評価の結果、本発明に係る評価デバイスは比較例に対してガスバリアー性に優れており、本発明の封止層及び封止方法は、薄層でも極めて高いガスバリアー性能を有する効率的な封止層及び封止方法であることが分かった。
実施例4
<電子デバイス401の作製>
〔基材の作製〕
樹脂基材としては、両面に易接着処理した厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムロール(東レ株式会社製、ルミラー(登録商標)(U48))を用いた。この樹脂基材のガスバリアー層を形成する面とは反対の面に、ロールtoロール方式により、厚さ0.5μmのアンチブロック機能を有するクリアハードコート層を形成した。すなわち、UV硬化型樹脂(アイカ工業株式会社製、品番:Z731L)を乾燥層厚が0.5μmになるように樹脂基材上に塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行った。
次に、樹脂基材のガスバリアー層を形成する側の面に厚さ2μmのクリアハードコート層を以下のようにして形成した。JSR株式会社製、UV硬化型樹脂オプスター(登録商標)Z7527を、乾燥層厚が2μmになるように樹脂基材に塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行った。このようにして、クリアハードコート層付樹脂基材ロールを得た。以降、本実施例及び比較例においては、便宜上、このクリアハードコート層付樹脂基材を単に基材とする。
〈第1ガスバリアー層の形成(CVD法)〉
特開2015−131473号公報の実施例に記載のCVD成膜装置を用い、a4の条件を用いて、基材ロールの厚さ2μmのクリアハードコート層を形成した面に、第1ガスバリアー層を形成した。
〈第2ガスバリアー層の形成(塗布改質法)〉
第2ガスバリアー層の形成には、第1ガスバリアー層を形成した基材ロールからシートを切り出して用いた。
第1ガスバリアー層の上に積層して、下記のようにして第2ガスバリアー層を形成した。
パーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NN120−20)と、アミン触媒(N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン(TMDAH))を含むパーヒドロポリシラザン20質量%のジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NAX120−20)とを、4:1(質量比)の割合で混合し、さらに乾燥層厚調整のためジブチルエーテルで適宜希釈し、塗布液を調製した。
基材の機能性層を形成する表面に、スピンコート法により上記塗布液を乾燥層厚が250nmとなるように塗布し、80℃で2分間乾燥した。次いで、乾燥した塗膜に対して、波長172nmのXeエキシマランプを有する真空紫外光照射装置を用い、照射エネルギー6J/cmの条件で真空紫外光照射処理を行った。この際、照射雰囲気は窒素で置換し、酸素濃度は0.1体積%とした。また、試料を設置するステージ温度を80℃とした。この操作をもう一度繰り返し、塗布改質法によるガスバリアー層を2層形成した。
このようにして作製したガスバリアー性を有する基材を50mm×50mmのサイズに切り出し、これを基材として、下記に示すような方法で、ボトムエミッション型の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を作製した。
〔機能性素子:有機EL素子の作製〕
基材のガスバリアー層上に、陽極、取り出し配線、有機機能層、陰極を順次形成した。各層は、基材の中央部に30mm×30mmの発光領域が得られる形状で形成した。陽極として厚さ150nmのITO層を高周波スパッタ法により形成し、取り出し配線として、厚さ300nmのアルミニウム層を形成した。また、有機機能層として、正孔注入層(銅フタロシアニン(CuPc)、厚さ30nm)/正孔輸送層(NPD、厚さ100nm)/蛍光系青色発光層(厚さ30nm)/電子輸送層(アルミニウムキノレート(Alq)、厚さ30nm)/電子注入層(フッ化リチウム、厚さ1nm)を、この順に形成し、陰極として、厚さ200nmのアルミニウム層を形成した。
〔封止層の形成〕
〈有機ポリマー層の形成〉
実施例2と同様にして、機能性素子上に有機ポリマー層を形成した。有機ポリマー層の形成にはマスクを用い、基材の中央に、38mm×38mmのサイズとなるように形成した。有機ポリマー層の厚さは、発光領域を覆う中央部34mm×34mmのサイズにおいては、2μmとなるようにし、中央部34mm×34mmの外側においては、徐々に層厚が減少するようにした。
〈非遷移金属(M1)含有層の形成〉
有機ポリマー層の上に、塗布条件:P−1、改質条件:V−2を用いて、厚さ100nmの層を形成した。層形成に際しては、成膜範囲が有機ポリマー層形成範囲よりも大きくなるようにし、かつ、電極接点部分を覆わないようにマスクして層形成を行った。
〈遷移金属(M2)非含有層の形成〉
非遷移金属(M1)含有層の上に、成膜条件:T1−1を用いて、厚さ100nmの層を形成した。層形成に際しては、成膜範囲が非遷移金属(M1)含有層と同サイズになるように、マスクを用いて成膜を行った。
さらに、同様にして、有機ポリマー層と、非遷移金属(M1)含有層と、遷移金属(M2)非含有層とをもう1層ずつ形成し、封止層とした。
〈保護フィルムの貼合〉
デバイスの基材として用いたクリアハードコートを形成した樹脂基材の2μmのクリアハードコート層を形成した側の面に、接着層を形成し、保護フィルムとした。保護フィルムのサイズは、デバイスと貼合した際に電極接点部分を覆わないサイズとした。封止層を形成したデバイスをグローブボックス内に取り出し、事前にグローブボックス内で乾燥させておいた保護フィルムを、接着層面と、デバイスの封止層面とが接するように配置し、真空ラミネートにより接着した。このようにして、比較例の電子デバイス401を得た。
電子デバイス401の封止層は、複合組成領域を有していない。
<電子デバイス402の作製>
さらに、同様にして、有機ポリマー層と、非遷移金属(M1)含有層と、遷移金属(M2)非含有層とをもう1層ずつ形成した以外は、電子デバイス401と同様にして、比較例の電子デバイス402を得た。
電子デバイス402の封止層は、複合組成領域を有していない。
<電子デバイス403の作製>
有機ポリマー層を形成し、この上に塗布条件:P−3、改質条件:V−2を用いて、厚さ40nmの非遷移金属(M1)含有層を形成し、さらにこの上に成膜条件:T2−2を用いて、厚さ5nmの遷移金属(M2)非含有層を形成した。これを2回繰り返して封止層を形成した以外は、電子デバイス401と同様にして、本発明の電子デバイス403を得た。
電子デバイス403の封止層は、18nmの複合組成領域を、厚さ方向に2箇所有していた。また、2箇所の複合組成領域の、(2y+3z)/(a+bx)の最小値はそれぞれ0.66であり、酸素欠損組成であった。
≪評価≫
各電子デバイスを、直径75mmの金属製ローラーの周囲に巻き付かせて、高温高湿下(温度85℃、相対湿度85%)の恒温恒湿槽に放置した。一定時間ごとに恒温恒湿槽から各電子デバイスを取り出して室温下で発光させ、ダークスポットの有無を確認した。この作業を、発光領域内におけるダークスポット面積比率が1%に到達するまで続け、恒温恒湿槽に放置してからダークスポット面積比率が1%に到達するまでの時間を、ガスバリアー性として評価した。時間が長いほど、ガスバリアー性が高いことを示している。
結果として、ダークスポット面積比率が1%に到達するまでの時間は、比較例の電子デバイス201が100時間であった。
同じく比較例の電子デバイス402は120時間であった。電子デバイス401に対して、封止層の積層数を増加させたが、性能向上はほとんどみられなかった。これは、封止層の温度85℃、相対湿度85%における耐久性が不十分であることに起因していると考えられる。
これに対して、本発明の電子デバイス403は1000時間となり、非常に良好であった。
評価の結果、本発明の電子デバイスは比較例に対してダークスポットの発生が抑制されており、本発明の封止層及び封止方法は、薄層でも極めて高いガスバリアー性能を示し、かつ、高温高湿下における高い耐久性を有する、効率的な封止層及び封止方法であることが分かった。
本発明の電子デバイスは、高いガスバリアー性能を有する封止層を具備する電子デバイスであって、特に前記封止層は有機EL素子用途として好適に用いられる。
1 基材
2 電極(陽極、陰極)
3 有機機能層
4 封止層
5 第1のガスバリアー層
6 第2のガスバリアー層
7A 複合組成領域
7B 複合組成ガスバリアー層
8 ガスバリアー層
9 有機ポリマー層
10 電子デバイス
100 真空紫外光照射装置
101 装置チャンバー
102 Xeエキシマランプ
103 エキシマランプのホルダー
104 試料ステージ
105 ポリシラザン化合物塗布層形成試料
106 遮光板

Claims (11)

  1. 基材上に機能性素子及び当該機能性素子を封止する封止層を有する電子デバイスであって、前記封止層が、第12〜14族の非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層と、当該第1のガスバリアー層に接して配置された遷移金属(M2)の酸化物を含有する第2のガスバリアー層の積層体であるか、又は前記非遷移金属(M1)及び前記遷移金属(M2)の複合酸化物を含有するガスバリアー層であるか、若しくは当該複合酸化物を含有する領域を有することを特徴とする電子デバイス。
  2. 前記第1のガスバリアー層及び第2のガスバリアー層の積層体の厚さ方向の一部に、前記非遷移金属(M1)及び前記遷移金属(M2)の複合酸化物を含有する領域が存在することを特徴とする請求項1に記載の電子デバイス。
  3. 前記複合酸化物を含有するガスバリアー層又は領域が、非遷移金属をM1、遷移金属をM2、酸素をO、及び窒素をNとしたときに、(M1)(M2)で表される複合酸化物を含有し、当該複合酸化物の組成が、下記関係式(1)を満たすことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載電子デバイス。
    関係式(1)(2y+3z)/(a+bx)<1.0
    (ただし、M1:非遷移金属、M2:遷移金属、O:酸素、N:窒素、x、y、z:化学量論係数、0.02≦x≦49、0<y、0≦z、a:M1の最大価数、b:M2の最大価数を表す。)
  4. 前記非遷移金属(M1)を含有する層が、ポリシラザン及びポリシラザンの改質体を含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電子デバイス。
  5. 前記遷移金属(M2)が、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、及びバナジウム(V)から選択されることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電子デバイス。
  6. 前記機能性素子上に少なくとも1層の有機ポリマー層が、積層されていることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の電子デバイス。
  7. 前記機能性素子が、一対の電極と当該電極間に少なくとも1層の発光層を含む有機機能層を有することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の電子デバイス。
  8. 基材上に機能性素子及び当該機能性素子を封止する封止層を形成する電子デバイスの封止方法であって、当該封止層として、少なくとも一層の第12〜14族の非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層と、当該第1のガスバリアー層に接して配置された遷移金属(M2)の酸化物を含有する第2のガスバリアー層の積層体か、又は前記非遷移金属(M1)及び前記遷移金属(M2)の複合酸化物を含有するガスバリアー層か、若しくは当該複合酸化物を含有する領域を、気相成膜法又は塗布法によって形成することを特徴とする電子デバイスの封止方法。
  9. 前記封止層として、前記機能性素子側に、前記非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層を形成することを特徴とする請求項8に記載の電子デバイスの封止方法。
  10. 前記遷移金属(M2)の酸化物を含有する第2のガスバリアー層を、前記非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層の上に、気相成膜法にて形成することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の電子デバイスの封止方法。
  11. 前記非遷移金属(M1)の酸化物を含有する第1のガスバリアー層が、ポリシラザン及びポリシラザンの改質体を含有し、当該ポリシラザンの改質体を、ポリシラザンを含有する塗布液を塗布して、真空紫外光を照射することにより形成することを特徴とする請求項8から請求項10までのいずれか一項に記載の電子デバイスの封止方法。
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