本発明の第1の実施の形態による電動工具について図1〜図15に基づき説明する。図1に示されているように本発明の第1の実施の形態による電動工具の一例である電動丸鋸1は、鋸刃8を回転可能に支持するハウジング2と、ベース3とを備えており、ベース3を被加工材に摺動させながら鋸刃8の回転により被加工材を切断する工具である。説明の便宜のため、図1において、図中の矢印で示されている前を前方向、後を後方向、上を上方向、下を下方向と定義し、後方向から見て右を右方向と定義し、左を左方向と定義する(図1の紙面手前が右方向、紙面奥が左方向)。
図1〜図4に示すように、ハウジング2は、本体ハウジング21と、ハンドル部22と、ソーカバー23とを備えており、ベース3に対して左右に傾動可能に設けられている。またベース3は、例えばアルミ等の金属製の板形状の部材であり、ベース3には前後方向に延びるとともに上下方向に貫通する図示せぬ孔が形成されており、図示せぬ孔は鋸刃8の進入を許容している。図1は、電動丸鋸1の外観を示す右側面図、図2は、電動丸鋸1の外観を示す左側面図、図3は、電動丸鋸1の外観を示す平面図、図4は、電動丸鋸1のハウジング2内部を示す一部断面平面図である。
本体ハウジング21は、例えば樹脂製であり、鋸刃8を回転可能に支承している。また、図3に示されているように本体ハウジング21は、電源コード21Aと、回転数設定スイッチ21Bとを備えており、内部にはモータ4及び制御基板部5を収容している。モータ4及び制御基板部5の詳細については後述する。
図3に示されている電源コード21Aは、本体ハウジング21の後部左側から左方に延出しており、その先端は商用交流電源Pに接続可能な形状をなしている。また、電源コード21Aは、本体ハウジング21内部において制御基板部5に接続されており、商用交流電源Pの電力は電源コード21A及び制御基板部5を介してモータ4に供給される。
回転数設定スイッチ21Bは、モータ4の目標回転数を選択するためのスイッチであり、本体ハウジング21の上面に設けられている。ユーザは、回転数設定スイッチ21Bを操作することによりモータ4の回転数を「高速」、「中速」、「低速」の3種類の中から選択することが可能である。回転数設定スイッチ21Bは、ユーザに押される毎に「高速」、「中速」、「低速」の順に目標回転数の選択状態が切替わり、ユーザは回転数設定スイッチ21Bを複数回押すことで所望の目標回転数を選択することができる。回転数設定スイッチ21Bは、本体ハウジング21内部において制御基板部5に接続されており、「高速」、「中速」、「低速」のうちの選択された速度に応じた目標回転数を示す信号を選択的に制御基板部5に出力する。
図1及び図2に示されているように鋸刃8は、円板形状をなし、本体ハウジング21の右側において回転可能に設けられており、モータ4の回転により回転駆動される。
図2に示されているようにハンドル部22は、ユーザが電動丸鋸1を使用する場合に把持される部分であり、本体ハウジング21の上方において前後方向に延びている。またハンドル部22には、モータ4の駆動を制御するためのトリガスイッチ22Aが設けられている。トリガスイッチ22Aは、本体ハウジング21内部において制御基板部5に接続されている。ユーザによってトリガスイッチ22Aが上方に押し込まれると、モータ4を始動させるための始動信号が制御基板部5に出力される。
図1及び図3に示すようにソーカバー23は、例えば金属製であり、本体ハウジング21の右側に設けられている。ソーカバー23は、側面視において円弧形状に形成され、鋸刃8の上側の略半分を覆っている。また、ソーカバー23は、保護カバー23Aを備えている。保護カバー23Aは、例えば樹脂製であり、ソーカバー23の後方側に鋸刃8の外縁に沿って回動可能に設けられている。保護カバー23Aは、図示せぬ付勢部材によってソーカバー23の円周方向において鋸刃8の下側半分を覆う方向に付勢されており、切断作業を行っていない状態において、鋸刃8の前方の一部を除く下側半分を覆っている。
次に、モータ4について説明する。図4〜図6に示されているようにモータ4は、3相巻線を有するステータ41、ロータ42、位置検出部43及び回転軸44を備える3相ブラシレスモータである。図5は、モータ4の内部を示す図4のV−V断面図である。図6は、モータ4及び後述の制御回路部54の電気的構成を示すブロック図を含む回路図である。
ステータ41は、円筒部41Aと、6個のティース41B〜41Gと、3相巻線すなわちU相巻線41U、V相巻線41V及びW相巻線41Wとを備えている。円筒部41Aは、左右方向に延びる円管形状をなしている。図5に示されているように6個のティース41B〜41Gのそれぞれは、円筒部41Aの内周面から円筒部41Aの半径方向内方に向かって突出している。また、6個のティース41B〜41Gは、円筒部41Aの円周方向に沿って互いに略等間隔に配置されている。
図5に示されているように、U相巻線41U、V相巻線41V及びW相巻線41Wは、スター結線された3相巻線である。また、図6に示されているように、それぞれの巻線は6個のティース41B〜41Gに巻回されている。詳細には、図5に示されているように、U相巻線41Uは、ティース41B及び円筒部41Aの軸心に関してティース41Bの反対側に位置するティース41Eに巻回されており、U相巻線41Uのティース41Bに巻回された部分とティース41Eに巻回された部分との巻数比は、同一に構成されている。また、V相巻線41Vは、ティース41C及び円筒部41Aの中心に関してティース41Cの反対側に位置するティース41Fに、W相巻線41Wは、ティース41D及び円筒部41Aの中心に関してティース41Dの反対側に位置するティース41Gに巻回されている。U相巻線41U、V相巻線41V及びW相巻線41Wは、本発明における「複数の巻線」の一例である。
図4及び図5に示されているようにロータ42は、左右方向に延びる円筒形状をなしており、ステータ41に対して回転可能に設けられている。また、ロータ42は、永久磁石42A及び42Bを備えている。永久磁石42A及び42Bは、ロータ42の縁周部に設けられており、ティース41B〜41Gと対向している。また、永久磁石42A及び42Bは、それらの磁極が、ロータ42の円周方向において反時計回りに永久磁石42AのN極、S極、42BのN極、S極の順となるように等間隔に配置されている。
図5及び図6に示されているように位置検出部43は、ロータ42のステータ41に対する回転位置を検出するためのホールIC43A〜43Cを備えている。ホールIC43A〜43Cは、永久磁石42A及び42Bに対向するようにステータ41の円周方向において略60°間隔で設けられている。より詳細には、ホールIC43Aは、ティース41Bとティース41Cとの間に設けられ、ホールIC43Bは、ティース41Fとティース41Gとの間に設けられ、ホールIC43Cは、ティース41Gとティース41Bとの間に設けられている。また、ホールIC43A〜43Cは、それぞれ、近接している永久磁石42A及び42Bの磁極に対応したデジタル信号(ハイ信号及びロー信号)を制御基板部5に出力する。具体的には、ホールIC43A〜43Cは、それぞれ、N極に近接対向している場合、ロー信号を出力し、S極に近接対向している場合、ハイ信号を出力する。制御基板部5は、ホールIC43A〜43Cのそれぞれが出力するデジタル信号に基づいて、ステータ41に対するロータ42の回転位置を算出する。ホールIC43A〜43Cのそれぞれが出力するデジタル信号及び回転位置の算出については、後述する。
回転軸44は、ロータ42と一体回転可能に設けられた左右方向に延びる軸であって、ロータ42が回転することによって回転駆動される。また、回転軸44には同軸回転可能にファン44Aが設けられており、回転軸44が回転駆動されることで、ファン44Aが回転し、モータ4及び制御基板部5は冷却される。また、回転軸44は図示せぬ減速機構を介して鋸刃8に接続されており、回転軸44の回転駆動によって鋸刃8は回転する。
次に、制御基板部5について説明する。図4及び図6に示されているように、制御基板部5は、基板5Aと、基板5Aに実装された電圧変換回路51、インバータ回路52、ブリッジ回路53及び制御回路部54とを備えている。
図6に示されているように、電圧変換回路51は、商用交流電源Pから供給される交流電圧を周期的に変動する直流脈動電圧に変換する回路であり、接続端子部51Aと、ダイオードブリッジ回路51Bと、第1プラスライン51C及び第1マイナスライン51Dと、第1コンデンサ51Eと、逆流防止ダイオード51Gと、第2コンデンサ51FGとを備えている。電圧変換回路51は、本発明における「変換手段」の一例、直流脈動電圧は、本発明における「変動電圧」の一例である。
接続端子部51Aは、プラス接続端子51a及びマイナス接続端子51bを有している。プラス接続端子51a及びマイナス接続端子51bは、商用交流電源Pに電源コード21Aが接続されることで、商用交流電源Pに接続される。ダイオードブリッジ回路51Bは、接続端子部51Aに接続されており、商用交流電源Pから接続端子部51Aを介して入力される交流電圧を全波整流し、全波整流波形の電圧に変換して出力する回路である。
第1プラスライン51C及び第1マイナスライン51Dは、電圧変換回路51から出力される直流脈動電圧をインバータ回路52に出力する電路である。なお、第1マイナスライン51Dは、図示せぬGNDに接続されている。第1コンデンサ51Eは、高周波数域のノイズ吸収のために設けられた小容量(4.7〜10μF程度、好ましくは4.7μF)のコンデンサ(フィルムコンデンサ)であり、第1プラスライン51Cと第1マイナスライン51Dとの間に接続されている。逆流防止ダイオード51Gは、第1プラスライン51Cと第1マイナスライン51Dとの間に第2コンデンサ51Fと直列に接続されており、第2コンデンサ51Fに蓄積された電荷が第1プラスライン51Cに逆流することを防止する。第2コンデンサ51Fは、第1コンデンサ51Eによって吸収されるノイズとは周波数域の異なるノイズを吸収するために設けられた容量27〜68μF程度(好ましくは27μF)の電解コンデンサであり、逆流防止ダイオード51Gのカソードと第2マイナスライン52Bとの間に接続されている。
上記のように、本実施の形態においては、高周波数域のノイズ吸収のために設けられた小容量の第1コンデンサ51Eと逆流防止ダイオード51Gを介して設けられた第2コンデンサ51Fとを用いているため、ダイオードブリッジ回路51Bで全波整流された全波整流波形の電圧は、僅かにしか平滑されない。このため、電圧変換回路51の第1プラスライン51Cから出力される直流脈動電圧の波形は、全波整流波形に極めて近い波形(以下、略全波整流波形)となり、ロータ42の回転によってモータ4に発生する誘起電圧よりも低い期間が生じ、当該期間はモータ4に電流が流れない。すなわち、本実施の形態における第1コンデンサ51Eの容量は、ダイオードブリッジ回路51Bが出力した全波整流波形の電圧を、モータ4に電流が流れない期間が生じる程度にしか平滑することができない容量である。
インバータ回路52は、第2プラスライン52A及び第2マイナスライン52Bと、3相ブリッジ形式に接続された6個のスイッチング素子52C〜52Hとを備えている。第2プラスライン52Aは、インバータ回路52の母線であり、電圧変換回路51の第1プラスライン51Cに接続されている。第2マイナスライン52Bは、第1マイナスライン51Dに電流検出抵抗5Bを介して接続されている。第2プラスライン52A及び第2マイナスライン52Bは、電圧変換回路51から出力された直流脈動電圧をスイッチング素子52C〜52H及びブリッジ回路53を介してU相巻線41U、V相巻線41V及びW相巻線41Wに出力する。第2プラスライン52A及び第2マイナスライン52Bは、本発明における「出力ライン」の一例である。
スイッチング素子52C〜52Hは、例えば、MOSFET等であり、第2プラスライン52A及び第2マイナスライン52Bと3相巻線すなわちU相巻線41U、V相巻線41V及びW相巻線41Wとの間に接続されている。より具体的には、スイッチング素子52C〜52Hのそれぞれのゲートは制御回路部54に接続され、それぞれのドレイン又はソースはスター結線されたU相巻線41U、V相巻線41V及びW相巻線41Wに接続されており、制御回路部54と、から出力される駆動信号に従ってオン/オフが切替わる。
スイッチング素子52C、52D、52Eは、オン状態において、それぞれ、U相巻線41U、V相巻線41V、W相巻線41Wを第2プラスライン52Aに接続する。スイッチング素子52F、52G、52Hは、オン状態において、それぞれ、U相巻線41U、V相巻線41V、W相巻線41Wを第2マイナスライン52Bに接続する。
ブリッジ回路53は、スター結線されたU相巻線41U、V相巻線41V及びW相巻線41Wの中性点4Aを第2プラスライン52A又は第2マイナスライン52Bに選択的に接続する回路であり、スイッチング素子53A及び53Bを備えている。
スイッチング素子53Aは、例えば、MOSFET等であり、ドレインは第2プラスライン52Aに接続され、ソースは中性点4A及びスイッチング素子53Bのドレインに接続され、ゲートは制御回路部54に接続されている。スイッチング素子53Aは、制御回路部54からの駆動信号に従ってオン/オフが切替わり、オン状態で第2プラスライン52AをU相巻線41U、V相巻線41V及びW相巻線41Wのいずれも介さずに中性点4Aにバイパス接続し、オフ状態で第2プラスライン52Aと中性点4Aとのバイパス接続を遮断する。
スイッチング素子53Bは、例えば、MOSFET等であり、ドレインはスイッチング素子53Aのソース及び中性点4Aに接続され、ソースは第2マイナスライン52Bに接続され、ゲートは制御回路部54に接続されている。スイッチング素子53Bは、スイッチング素子53Aと同様に制御回路部54からの駆動信号に従ってオン/オフが切替わり、オン状態で第2マイナスライン52BをU相巻線41U、V相巻線41V及びW相巻線41Wのいずれも介さずに中性点4Aにバイパス接続し、オフ状態で第2マイナスライン52Bと中性点4Aとのバイパス接続を遮断する。
本実施の形態においては、上述したインバータ回路52及びブリッジ回路53のスイッチング素子52C〜52H、53A及び53Bのオン/オフを切替えることで、U相巻線41U、V相巻線41V及びW相巻線41Wのうちから第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間に接続される巻線(相)を選択し、選択した巻線に電圧変換回路51から出力される直流脈動電圧を供給することが可能となっている。
制御回路部54は、電流検出回路54Aと、母線電圧検出回路54Bと、ゲートドライブ回路54Cと、回転位置検出回路54Dと、制御信号出力回路54Eと、制御部54Fとを備えており、モータ4の駆動を制御する。
電流検出回路54Aは、電流検出抵抗5Bの電圧降下を読取ることで、モータ4に流れる電流すなわち第1マイナスライン51D及び第2マイナスライン52Bに流れる電流を検出し、当該検出結果である電流値を示す信号を制御部54Fに出力する回路である。
母線電圧検出回路54Bは、第1プラスライン51Cに接続されており、第1プラスライン51Cに現れる電圧(第1プラスライン51Cと第1マイナスライン51Dとの間の電圧)を検出し、当該検出された電圧に応じた母線電圧信号を制御部54Fに出力する。ロータ42が回転している場合、第1プラスライン51Cには、ロータ42の回転によってU相巻線41U、V相巻線41V及びW相巻線41Wに発生する誘起電圧も印可されるため、第1プラスライン51Cに現れる電圧は、電圧変換回路51が出力する直流脈動電圧と誘起電圧との合成となる。このため、母線電圧信号は、直流脈動電圧が当該誘起電圧よりも高い期間では、直流脈動電圧を示し、直流脈動電圧が当該誘起電圧以下の期間では、当該誘起電圧を示す。なお、本実施の形態においては、第1プラスライン51Cに現れる電圧と第2プラスライン52Aに現れる電圧とは同一である。母線電圧検出回路54Bは、本発明における「電圧検出手段」の一例である。
ここで、図7の(a)及び(b)を参照しながら、インバータ回路52を介して第2プラスライン52Aに現れる誘起電圧について説明する。図7は、第2プラスライン52Aに現れる誘起電圧を説明する図であり、(a)は、三相巻線のそれぞれに発生する誘起電圧を電源とみなした場合のモータ4及びインバータ回路52の電気的構成を示す回路図、(b)は、3相巻線のそれぞれに発生する誘起電圧及び第2プラスライン52Aに現れる誘起電圧を示す図である。
図7の(a)に示されているように、U相巻線41U、V相巻線41V及びW相巻線41Wのそれぞれに発生する誘起電圧を電源とみなした場合、モータ4は三相電源であるとみなすことができる。従って、図7の(b)に示されているように、ロータ42の回転によってU相巻線41U、V相巻線41V及びW相巻線41Wのそれぞれに発生する誘起電圧は、互いの位相が120°ずれた三相交流電圧となる。また、図7の(a)に示されているように、インバータ回路52のスイッチング素子52C〜52Hには、図6においては図示を省略したが、それぞれ、並列に還流ダイオード52I〜52Nが設けられている。このため、モータ4で発生した三相交流電圧は、還流ダイオード52I〜52Nによって整流されるとともに第2プラスライン52A上で合成され、図7の(b)に示されている僅かに脈動する電圧となる。なお、当該僅かに脈動する電圧は、巨視的に見れば略一定であるとみなせるため、他の図においては直線で示している。
図6に戻り、ゲートドライブ回路54Cは、スイッチング素子53A及び53Bの各ゲートに接続され、制御部54Fから入力される駆動信号に基づいて両ゲートのうちの一に選択的に電圧を印可する回路である。スイッチング素子53A及び53Bのうち、ゲートに電圧が印加されたスイッチング素子はオン状態となり、電圧が印加されていないスイッチング素子はオフ状態となる。
回転位置検出回路54Dは、モータ4の3つのホールIC43A〜43Cのそれぞれから出力されるデジタル信号を受信し、受信した3つのデジタル信号のパターンに応じた回転位置情報を制御部54Fに出力する。
ここで、図8を参照しながら、ステータ41に対するロータ42の回転位置に応じてホールIC43A〜43Cのそれぞれから出力されるデジタル信号及び回転位置検出回路54Dが出力する回転位置情報について説明する。図8は、ロータ42の回転位置、ホールIC43A〜43Cから出力されるデジタル信号及び回転位置検出回路54Dが出力する回転位置情報の互いの対応関係を示す図であり、(a)は、ロータ42が回転位置0°、(b)は、30°、(c)は、60°、(d)は、90°、(e)は、120°、(f)は、150°の場合を示している。
まず、図8の(a)に示されているように、ロータ42の永久磁石42AのN極と永久磁石42BのS極との間の箇所(以下、極間箇所という)がホールIC43Aに対向している状態(ロータ42の回転方向において略一致している状態)を、ロータ42のステータ41に対する回転位置0°(機械的な角度)と定義する。
ロータ42が回転位置0°から時計回りに30°回転すると、回転位置30°となり、極間箇所がホールIC43AとホールIC43Cとの間に位置する。回転位置0°〜30°の間、ホールIC43AはN極に対向しているためロー信号を回転位置検出回路54Dに出力し、ホールIC43Bも同様にN極に対向しているためロー信号を出力し、ホールIC43CはS極に対向しているためハイ信号を出力する。また、この間、回転位置検出回路54Dは、ホールIC43A、43B及び43Cから出力されるデジタル信号のパターンがホールIC43A、43B、43Cの順でロー、ロー、ハイであるため制御部54Fに回転位置情報として「0」を出力する。
ロータ42が回転位置30°から時計回りに60°回転すると、回転位置60°となり、極間箇所がホールIC43Cと対向する位置となる。回転位置30°〜60°の間、ホールIC43AはN極に対向しているためロー信号を回転位置検出回路54Dに出力し、ホールIC43BはS極に対向しているためハイ信号を出力し、ホールIC43Cも同様にS極に対向しているためハイ信号を出力する。また、この間、回転位置検出回路54Dは、デジタル信号のパターンがホールIC43A、43B、43Cの順でロー、ハイ、ハイであるため制御部54Fに回転位置情報として「1」を出力する。
ロータ42が回転位置60°から回転し、回転位置60°〜90°の間は、ホールIC43A、43B、43Cは、それぞれ、ロー信号、ハイ信号、ロー信号を出力し、回転位置検出回路54Dは、デジタル信号のパターンがロー、ハイ、ローであるため制御部54Fに回転位置情報として「2」を出力する。ロータ42が回転位置90°から回転し、回転位置90°〜120°の間は、ホールIC43A、43B、43Cは、それぞれ、ハイ信号、ハイ信号、ロー信号を出力し、回転位置検出回路54Dは、デジタル信号のパターンがハイ、ハイ、ローであるため制御部54Fに回転位置情報として「3」を出力する。
さらにロータ42が回転位置120°から回転し、回転位置120°〜150°の間は、ホールIC43A、43B、43Cは、それぞれ、ハイ信号、ロー信号、ロー信号を出力し、回転位置検出回路54Dは、デジタル信号のパターンがハイ、ロー、ローであるため制御部54Fに回転位置情報として「4」を出力する。ロータ42が回転位置150°から回転し、回転位置150°〜180°の間は、ホールIC43A、43B、43Cは、それぞれ、ハイ信号、ロー信号、ハイ信号を出力し、回転位置検出回路54Dは、デジタル信号のパターンがハイ、ロー、ハイであるため制御部54Fに回転位置情報として「5」を出力する。
さらにロータ42が回転位置180°から回転位置360°まで回転した場合、ホールIC43A〜43Cのそれぞれが出力するデジタル信号及び回転位置検出回路54Dが出力する回転位置情報は、回転位置0°〜180°の場合と同一である。デジタル信号のパターン及び回転位置情報は、ロータ42のステータ41に対する180°回転を一周期として上記のように繰り返される。このように、回転位置情報の繰り返しの周期すなわち電気的角度0°〜360°は、ロータ42の機械的角度180°に相当する。
図6に戻り、制御信号出力回路54Eは、スイッチング素子52C〜52Hの各ゲートに接続され、制御部54Fから入力される駆動信号に基づいて各ゲートに電圧を印可する回路である。スイッチング素子52C〜52Hのうち、ゲートに電圧が印加されたスイッチング素子はオン状態となり、ゲートに電圧が印加されていないスイッチング素子はオフ状態となる。
制御部54Fは、処理プログラムとデータに基づいて駆動信号を出力するための図示せぬ中央処理装置(CPU)と、処理プログラム、制御データ、各種閾値等を記憶するための図示せぬROMと、データを一時記憶するための図示せぬRAMと、を含んで構成されている。
制御部54Fは、インバータ回路52及びブリッジ回路53を用いて、ロータ42を所定の回転方向に回転させる通電制御を行い、モータ4の駆動を制御する。当該通電制御においては、回転位置検出回路54Dから出力された回転位置情報に基づいて、インバータ回路52及びブリッジ回路53のスイッチング素子52C〜52H、53A及び53Bのうちの所定のスイッチング素子をオン状態とする駆動信号を制御信号出力回路54Eに出力し、3相巻線のうちの第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間に接続される巻線(通電巻線)を切替える。この場合、負電源側に接続されているスイッチング素子52F〜52H及び53Bをオン/オフするための駆動信号は、PWM信号として出力される。制御部54Fは、回転数設定スイッチ21Bから出力される目標回転数を示す信号に基づいてPWM信号のデューティ比を変更することで、モータ4への電力供給量を調整し、モータ4の回転数を選択された目標回転数となるように制御する。制御部54F、インバータ回路52及びブリッジ回路53は、本発明における「通電切替手段」の一例である。
また、制御部54Fは、回転位置検出回路54Dから入力された回転位置情報からロータ42の回転数を算出する。また、制御部54Fは、算出した回転数から3相巻線に発生する誘起電圧を算出する。制御部54F及び回転位置検出回路54Dは、本発明の「誘起電圧算出手段」及び「回転数検出手段」の一例である。
さらに、制御部54Fは、通電制御として第1通電制御及び第2通電制御を使用し、算出した誘起電圧及び母線電圧検出回路54Bから出力される母線電圧信号が示す第1プラスライン51Cの電圧に基づいて、通電制御を第1通電制御と第2通電制御との間で切替える。
ここで、図9及び図10を参照しながら、第1通電制御について説明する。図9は、第1通電制御における回転位置情報、通電巻線及びオン状態とするスイッチング素子の互いの関係を示す図であり、(a)は、ロータ42が回転位置0°、(b)は、30°、(c)は、60°、(d)は、90°、(e)は、120°、(f)は、150°の場合を示している。図10は、第1通電制御における通電巻線の通電方向を示す図である。
第1通電制御は、ブリッジ回路53のスイッチング素子53A及び53Bを常にオフ状態として、インバータ回路52の6個のスイッチング素子52C〜52Hをオン/オフしてロータ42を所定回転方向(図9における時計回り)に回転させる通電制御である。また、第1通電制御においては、常に3相巻線のうち2相の巻線を第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間に直列に接続して通電巻線とし、且つ、回転位置情報に基づいて当該通電巻線を切替えることでロータ42を所定回転方向に回転させる。すなわち、第1通電制御における通電巻線の数(通電相の数)は常に2であり、且つ、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間に直列に接続されている巻線の最大数(最大直列数)は2である。このように、第1通電制御においては、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間に常に3相巻線のうちの2相が直列に接続されて通電巻線となっているため、当該直列に接続された2相に発生する誘起電圧の合成よりも直流脈動電圧が高い期間のみモータ4に電流が流れる。第1通電制御における通電巻数の数である2は、本発明における「第1通電数」の一例であり、第1通電制御における最大直列数である2は、本発明における「第1直列数」の一例である。
図9の(a)及び(b)に示されているように、回転位置0°〜30°の間、回転位置検出回路54Dは制御部54Fに回転位置情報として「0」を出力する。回転位置情報「0」が出力されている期間、制御部54Fは、ロータ42を図9における時計回り(図9の回転方向)に回転させるため、インバータ回路52のスイッチング素子52C及び52Hをオン状態とする駆動信号を制御信号出力回路54Eに出力する。
スイッチング素子52C及び52Hがオン状態となると、図10に示されているように、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間にU相巻線41U及びW相巻線41W(3相のうち2相)が直列に接続される。当該接続状態となると、U相巻線41Uには、第2プラスライン52Aから中性点4Aに流れる方向の図10の矢印Aで示されている電流が流れ、W相巻線41Wには、中性点4Aから第2マイナスライン52Bに流れる方向の図10の矢印Bに示されている電流が流れる。以下、説明の便宜のため、矢印Aのように第2プラスライン52Aから中性点4Aに流れる方向の電流を正電流といい、矢印Bのように中性点4Aから第2マイナスライン52Bに流れる方向の電流を負電流という。なお、図10においては、図面を煩雑を避けるため、ブリッジ回路53の図示は省略している。
U相巻線41Uに正電流が流れ、W相巻線41Wに負電流が流れると、U相巻線41Uが巻回されたティース41B及び41EはS極となり、W相巻線41Wが巻回されたティース41D及び41GはN極となる。図9の(a)に示されているように、回転位置0°〜30°の間、S極となっているティース41B及び41Eは、ロータ42のS極の回転方向下流側に対向しており、ティース41B及び41Eとロータ42のS極との間には斥力が働き、当該斥力によってロータ42を図9の時計回りに回転させる回転トルクが発生する。また、この期間、W相巻線41Wが巻回されたティース41D及び41Gは、ロータ42のS極の回転方向上流側に対向しており、ティース41D及び41Gとロータ42のS極との間には引力が働き、当該引力によってロータ42を時計回りに回転させる回転トルクが発生する。
図9の(b)及び(c)に示されているように、回転位置30°〜60°の間、回転位置検出回路54Dは回転位置情報として「1」を出力する。回転位置情報「1」が出力されている期間、制御部54Fは、インバータ回路52のスイッチング素子52C及び52Gをオン状態とする駆動信号を制御信号出力回路54Eに出力する。
スイッチング素子52C及び52Gがオン状態となると、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間にU相巻線41U及びV相巻線41V(3相のうち2相)が直列に接続され、U相巻線41Uには正電流が流れ、V相巻線41Vには負電流が流れる。この期間、U相巻線41Uが巻回されたティース41B及び41EはS極となり、V相巻線41Vが巻回されたティース41C及び41FはN極となり、回転トルクを発生させる。
図9の(c)及び(d)に示されているように、回転位置60°〜90°の間、回転位置検出回路54Dは、回転位置情報「2」を出力し、制御部54Fはスイッチング素子52E及び52Gをオン状態とする。当該期間、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間にW相巻線41W及びV相巻線41V(3相のうち2相)が直列に接続され、W相巻線41Wには正電流が流れ、V相巻線41Vには負電流が流れる。また、当該期間、W相巻線41Wが巻回されたティース41D及び41GはS極となり、V相巻線41Vが巻回されたティース41C及び41FはN極となり、回転トルクを発生させる。
図9の(d)及び(e)に示されているように、回転位置90°〜120°の間、回転位置検出回路54Dは、回転位置情報「3」を出力し、制御部54Fはスイッチング素子52E及び52Fをオン状態とする。当該期間、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間にW相巻線41W及びU相巻線41U(3相のうち2相)が直列に接続され、W相巻線41Wには正電流が流れ、U相巻線41Uには負電流が流れる。また、当該期間、W相巻線41Wが巻回されたティース41D及び41GはS極となり、U相巻線41Uが巻回されたティース41B及び41EはN極となり、回転トルクを発生させる。
図9の(e)及び(f)に示されているように、回転位置120°〜150°の間、回転位置検出回路54Dは、回転位置情報「4」を出力し、制御部54Fはスイッチング素子52D及び52Fをオン状態とする。当該期間、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間にV相巻線41V及びU相巻線41U(3相のうち2相)が直列に接続され、V相巻線41Vには正電流が流れ、U相巻線41Uには負電流が流れる。また、当該期間、V相巻線41Vが巻回されたティース41C及び41FはS極となり、U相巻線41Uが巻回されたティース41B及び41EはN極となり、回転トルクを発生させる。
図9の(f)及び(a)に示されているように、回転位置150°〜180°の間、回転位置検出回路54Dは、回転位置情報「5」を出力し、制御部54Fはスイッチング素子52D及び52Hをオン状態とする。当該期間、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間にV相巻線41V及びW相巻線41W(3相のうち2相)が直列に接続され、V相巻線41Vには正電流が流れ、W相巻線41Wには負電流が流れる。また、当該期間、V相巻線41Vが巻回されたティース41C及び41FはS極となり、W相巻線41Wが巻回されたティース41D及び41GはN極となり、回転トルクを発生させる。
次に、図11及び図12を参照しながら、第2通電制御について説明する。図11は、第2通電制御における回転位置情報、通電巻線及びオン状態とするスイッチング素子の互いの関係を示す図であり、(a)は、ロータ42が回転位置0°、(b)は、30°、(c)は、60°、(d)は、90°、(e)は、120°、(f)は、150°の場合を示している。図12は、第2通電制御における通電巻線の通電方向を示す図であり、(a)は、回転位置0°〜30°の場合、(b)は、回転位置90°〜120°の場合を示している。
第2通電制御は、インバータ回路52の6個のスイッチング素子52C〜52H及びブリッジ回路53のスイッチング素子53A及び53Bをオン/オフしてロータ42を所定の回転方向に回転させる通電制御である。また、第2通電制御においては、常に3相巻線のうち1相のみを第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間に接続して通電巻線とし、且つ、回転位置情報に基づいて当該通電巻線を切替えることでロータ42を所定回転方向に回転させる。すなわち、第2通電制御における通電巻線の数(通電相の数)は常に1であり、且つ、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間に直列に接続されている巻線の最大数(最大直列数)は1である。このように、第2通電制御においては、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間に常に3相巻線のうちの1相のみが接続されて通電巻線となっているため、当該1相に発生する誘起電圧よりも直流脈動電圧が高い期間のみモータ4に電流が流れる。なお、当該1相に発生する誘起電圧は、直列に接続された2相それぞれに発生する誘起電圧の合成の略半分となる。第2通電制御における通電巻数の数である1は、本発明における「第2通電数」の一例であり、第2通電制御における最大直列数である1は、本発明における「第2直列数」の一例である。
第2通電制御においては、図11の(a)〜(f)に示されているように、回転位置に応じて回転位置検出回路54Dが出力する回転位置情報は、第1通電制御の場合と同一であるが、回転位置情報に応じて制御部54Fが出力する駆動信号、オン状態とされるスイッチング素子及び通電巻線は異なる。
図11の(a)及び(b)に示されているように、回転位置0°〜30°の間、制御部54Fは、ロータ42を所定回転方向(図11における時計回り方向)に回転させるため、インバータ回路52のスイッチング素子52C及びブリッジ回路53のスイッチング素子53Bをオン状態とする駆動信号を制御信号出力回路54Eに出力する。
スイッチング素子52C及び53Bがオン状態となると、図12の(a)に示されているように、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間にはU相巻線41Uのみ(3相のうち1相)が接続される。当該接続状態となると、U相巻線41Uには正電流が流れ(矢印A)、中性点4Aからは第2マイナスライン52Bにスイッチング素子53Bを介して、すなわち、V相巻線41V及びW相巻線41Wを介さずに電流が流れる(矢印C)。以下、説明の便宜上、矢印Cのように中性点4Aから巻線を介さずにスイッチング素子53Bを介して第2マイナスライン52Bに直接流れる方向の電流をバイパス負電流といい、第2プラスライン52Aから巻線を介さずにスイッチング素子53Aを介して中性点4Aに直接流れる電流をバイパス正電流という。
U相巻線41Uに正電流が流れ、スイッチング素子53Bにバイパス負電流が流れると、U相巻線41Uが巻回されたティース41B及び41EはS極となる。図11の(a)に示されているように、回転位置0°〜30°の間、S極となっているティース41B及び41Eは、ロータ42のS極の回転方向下流側に対向しており、ティース41B及び41Eとロータ42のS極との間には斥力が働き、当該斥力によってロータ42を図11において時計回りに回転させる回転トルクが発生する。なお、この期間、V相巻線41V及びW相巻線41Wは、通電に起因する磁界を発生させておらず、U相巻線41Uのみがロータ42の回転トルクを発生させている。
図11の(b)に示されているように、回転位置30°〜60°の間、制御部54Fは、回転位置情報「1」に基づいてインバータ回路52のスイッチング素子52D及びブリッジ回路53のスイッチング素子53Aをオン状態とする駆動信号を制御信号出力回路54Eに出力する。
スイッチング素子52G及び53Aがオン状態となると、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間にはV相巻線41Vのみ(3相のうち1相)が接続され、スイッチング素子53Aにはバイパス正電流が流れ、V相巻線41Vには負電流が流れる。この期間、V相巻線41Vが巻回されたティース41C及び41FはN極となり、回転トルクを発生させる。
図11の(c)に示されているように、回転位置60°〜90°の間、制御部54Fは、回転位置情報「2」に基づいてインバータ回路52のスイッチング素子52E及びブリッジ回路53のスイッチング素子53Bをオン状態とする。当該期間、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間にはW相巻線41Wのみ(3相のうち2相)が接続され、W相巻線41Wには正電流が流れ、スイッチング素子53Bにはバイパス負電流が流れる。また、当該期間、W相巻線41Wが巻回されたティース41D及び41GはS極となり、回転トルクを発生させる。
図11の(d)に示されているように、回転位置90°〜120°の間、制御部54Fは、回転位置情報「3」に基づいてインバータ回路52のスイッチング素子52F及びブリッジ回路53のスイッチング素子53Aをオン状態とする。図12の(b)に示されているように、当該期間、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間にはU相巻線41Uのみ(3相のうち2相)が接続され、スイッチング素子53Bには矢印Dで示されているバイパス正電流が流れ、U相巻線41Uには矢印Bで示されている負電流が流れる。また、当該期間、U相巻線41Uが巻回されたティース41B及び41EはN極となり、回転トルクを発生させる。
図11の(e)に示されているように、回転位置120°〜150°の間、制御部54Fは、回転位置情報「4」に基づいてインバータ回路52のスイッチング素子52D及びブリッジ回路53のスイッチング素子53Bをオン状態とする。当該期間、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間にV相巻線41Vのみ(3相のうち2相)が接続され、V相巻線41Vには正電流が流れ、スイッチング素子53Bにはバイパス負電流が流れる。また、当該期間、V相巻線41Vが巻回されたティース41C及び41FはS極となり、回転トルクを発生させる。
図11の(f)に示されているように、回転位置150°〜180°の間、制御部54Fは、回転位置情報「5」に基づいてインバータ回路52のスイッチング素子52H及びブリッジ回路53のスイッチング素子53Aをオン状態とする。当該期間、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間にW相巻線41Wのみ(3相のうち2相)が接続され、スイッチング素子53Aにはバイパス正電流が流れ、W相巻線41Wには負電流が流れる。また、当該期間、W相巻線41Wが巻回されたティース41D及び41GはN極となり、回転トルクを発生させる。
次に、制御部54Fによるモータ4の駆動制御について説明する。制御部54Fによる駆動制御においては、上記した第1通電制御と第2通電制御との間で通電制御を切替えて通電巻線の数(すなわち巻線のインダクタンス)を変更することで、モータ4の3相巻線に電流が流れる期間、すなわち、回転トルクが発生している期間を長くし、トルク脈動を抑制する。
通電制御においては、通電巻線から発生する誘起電圧の合成よりも電圧変換回路51から出力される直流脈動電圧(略全波整流波形の電圧)が高い期間のみ、巻線に電流が流れて回転トルクが発生する。このため、第1通電制御においては、直列に接続された2相の通電巻線から発生する誘起電圧の合成よりも直流脈動電圧が高くなければ、回転トルクが発生しない。一方、第2通電制御においては、1相分の誘起電圧よりも直流脈動電圧が高ければ、回転トルクが発生する。すなわち、仮に第1通電制御のみを行った場合の回転トルクの発生期間は、仮に第2通電制御のみを行った場合の回転トルクの発生期間よりも短くなる。また、第1通電制御においては、2相の巻線が回転トルクを発生させるが、第2通電制御においては、1相の巻線のみが回転トルクを発生させる。このため、第1通電制御における回転トルクは、第2通電制御における回転トルクよりも大きくなる。
上記に鑑み、制御部54Fによる駆動制御においては、直流脈動電圧の最大値(ピーク値)よりも低く且つ通電巻線2相分の誘起電圧よりも高い値を有する通電切替閾値を設定し、直流脈動電圧が通電切替閾値以上の場合、回転トルクを優先させて第1通電制御を行い、直流脈動電圧が低下して通電切替閾値未満となった場合、第2通電制御に切替え、回転トルクの発生期間を長くし、モータ4で発生するトルク脈動を抑制する。また、通電切替閾値を通電巻線2相分の誘起電圧と一致させず、通電巻線2相分の誘起電圧よりも高い値とすることで、直流脈動電圧が通電巻線2相分の誘起電圧よりも低くなって回転トルクが発生しなくなる前に確実に第2通電制御に移行できるようにしている。すなわち、制御部54Fは直流脈動電圧に同期して第1通電制御と第2通電制御を切り替えている。通電切替閾値は、本発明における「電圧閾値」の一例である。
ここで、図13を参照しながら、制御部54Fによる駆動制御の具体的処理について説明する。図13は、制御部54Fによる駆動制御を示すフローチャートである。
図13に示されているようにS101において、トリガスイッチ22Aがユーザによって押込まれると、トリガスイッチ22Aから始動信号が出力され、回転数設定スイッチ21Bから出力される目標回転数を示す信号に基づいたデューティ比でモータ4のロータ42を回転させる。ロータ42が回転すると、回転軸44がロータ42と一体に回転する。回転軸44の回転力は、図示せぬ減速機構を介して鋸刃8に伝達され、鋸刃8が回転する。鋸刃8が回転することで切断作業が可能となる。
S101で、ロータ42が回転駆動すると、S102において、第1プラスライン51Cの電圧(Vinv)を検出する。当該検出は、母線電圧検出回路54Bによって行われる。S102で、第1プラスライン51Cの電圧(Vinv)を検出した後、S103でロータ42の回転数(ω)を算出する。当該算出は、回転位置検出回路54Dから入力された回転位置情報に基づいて行われる。
次に、S104において、モータ4の3相巻線で発生する誘起電圧の2相分の誘起電圧(Es)を算出する。3相巻線で発生する1相分の誘起電圧は、モータ4の特性によって決まる誘起電圧定数(Ke)に回転数(ω)を乗じることで得ることができ、当該算出結果から2相分の誘起電圧(Es)を算出する。S104で、誘起電圧を算出した後、S105において、閾値係数(D)を算出する。閾値係数(D)は、通電切替閾値を決定するための係数である。閾値係数(D)は、1よりも大きく、且つ、電圧変換回路51から出力される直流脈動電圧の最大値を2相分の誘起電圧(Es)で割った数よりも小さく設定される。閾値係数(D)は、誘起電圧の大きさ、第1通電制御と第2通電制御との間での切替に要する時間等に基づいて算出される。
次に、S106で、通電切替閾値(Vth)を算出する。通電切替閾値(Vth)は、2相分の誘起電圧(Es)に閾値係数(D)を乗じて算出される。S106で、通電切替閾値(Vth)を算出した後は、S107において、第1プラスライン51Cの電圧(Vinv)が通電切替閾値未満であるか否かを判断する。
第1プラスライン51Cの電圧(Vinv)が通電切替閾値未満であると判断した場合(S107:Yes)、S108において、第2通電制御を実行する。すなわち、S108の処理の時点で、第2通電制御を行っている場合は、第2通電制御を継続し、第1通電制御を行っている場合は、第2通電制御に切替える。一方、第1プラスライン51Cの電圧(Vinv)が通電切替閾値未満でないと判断した場合(S107:No)、S109において、第1通電制御を実行する。すなわち、S109の処理の時点で、第1通電制御を行っている場合は、第1通電制御を継続し、第2通電制御を行っている場合は、第1通電制御に切替える。
S108及び109でいずれかの通電制御が実行された後は、S102に戻り、トリガスイッチ22Aからの始動信号の出力が停止するまで、上記の処理が繰り返される。
次に、図14及び図15に基づいて、制御部54Fによる駆動制御を行った場合の第1プラスライン51Cの電圧及びモータ4に流れる電流の時間変化について説明し、併せて従来の電動工具における駆動制御との比較を行う。図14は、制御部54Fによる駆動制御における第1プラスライン51Cの電圧及びモータ4に流れる電流の時間変化を示す図である。図15は、従来の電動工具の駆動制御によるインバータ回路の母線電圧及びモータに流れる電流の時間変化を示す図である。
最初に図14を参照しながら、制御部54Fによる駆動制御を行った場合を説明する。図14において破線で示されているVpは、電圧変換回路51から出力される略全波整流波形の直流脈動電圧であり、Eaは、通電巻線1相分の誘起電圧であり、Esは、通電巻線2相分の誘起電圧であり、Vthは、通電切替閾値である。また、図14において実線で示されているVinvは、母線電圧検出回路54Bが検出する第1プラスライン51Cの電圧であり、Iaはモータ4に流れるモータ電流である。なお、図14に示されているEa及びEsは一例である。
図14に示されているように、制御部54Fによる駆動制御を行った場合、時刻t0〜t3の期間は、第1プラスライン51Cの電圧Vinvが通電切替閾値Vth未満であるため(S107のYesに相当)、第2通電制御が行われている。このため、当該期間においては、直流脈動電圧Vpが通電巻線1相分の誘起電圧Ea以下の時刻t0〜t1ではモータ電流Iaは流れず、直流脈動電圧Vpが通電巻線1相分の誘起電圧Eaよりも高くなる時刻t1〜t3ではモータ電流Iaが流れている。なお、時刻t2は、直流脈動電圧Vpが通電巻線2相分の誘起電圧Esよりも高くなる時刻である。
時刻t3〜t4の期間は、第1プラスライン51Cの電圧Vinvが通電切替閾値Vth以上であるため(S107のNoに相当)、第1通電制御が行われている。当該期間においては、直流脈動電圧Vpが通電巻線2相分の誘起電圧Esよりも高いため、モータ電流Iaが流れ続ける。
時刻t4〜t7の期間は、第1プラスライン51Cの電圧Vinvが、再び、通電切替閾値Vth未満となるため、(S107のYesに相当)、第2通電制御が行われている。このため、当該期間においては、通電する巻線の数を減らすことで巻線のインダクタンスが小さくなり、直流脈動電圧Vpが通電巻線1相分の誘起電圧Eaよりも高い時刻t4〜t6ではモータ電流Iaは流れ、直流脈動電圧Vpが通電巻線1相分の誘起電圧Ea以下となる時刻t6〜t7ではモータ電流は流れなくなる。時刻t7以降は、上記の時刻t0〜t7を繰り返している。なお、時刻t5は、直流脈動電圧Vpが通電巻線2相分の誘起電圧Es以下となる時刻である。
このように、本実施の形態における電動丸鋸1の制御部54Fによる駆動制御においては、時刻t1〜t6の期間はモータ4に電流が流れ、時刻t0〜t1の期間及び時刻t6〜t7の期間はモータ4に電流が流れていない。すなわち、モータ4に回転トルクが発生している期間は、時刻t1〜t6の期間である。言い換えると、変動電圧が下降している区間(例えば時刻t3とt4の中間の電圧ピークの時刻から時刻t7までの区間)において第1通電制御から第2通電制御に切り替える(通電する巻線の数を少なくする)ことで、通電する巻線のインダクタンスを小さくしている。一方、電圧変動が上昇している区間(例えば時刻t7から次の変動電圧の電圧ピークまでの区間)において第2通電制御から第1通電制御に切り替える(通電する巻線の数を多くする)ことで、通電する巻線のインダクタンスを大きくしている。
続いて、図15を参照しながら、従来の電動工具における駆動制御を行った場合について説明する。図15に破線で示されているEcは、通電巻線2相分の誘起電圧であり本実施の形態のEsと同一の値である。図15に破線で示されているVcは、従来の電動工具における直流脈動電圧であり、本実施の形態のVpと同一の波形である。また、図15に実線で示されているVdは、従来の電動工具におけるインバータ回路の母線電圧であり、Icは、モータに流れる電流である。なお、図15に示されている時刻t0〜t7は、図14に示されている時刻t0〜t7と同一の時刻である。
図15に示されているように、従来の電動工具においては、本実施の第1通電制御に相当する通電制御のみが行われており、通電巻線の数を変更する通電制御の切替えは行われていない。すなわち、従来の電動工具における通電制御の全期間に亘って、直流脈動電圧Vcが通電巻線2相分の誘起電圧Ecよりも高い場合のみ、モータ電流Icが流れる。このため、従来の電動工具における直流脈動電圧Vcが通電巻線2相分の誘起電圧Ecよりも高い時刻t2〜t5の期間のみモータ電流Icが流れ、回転トルクが発生する。
このように、従来の電動工具による駆動制御においては、時刻t2〜t5の期間のみ回転トルクが発生しているのに対し、本実施の形態による駆動制御においては、時刻t2〜t5の期間を含み且つ当該期間よりも長い時刻t1〜t6の期間、回転トルクが発生している。すなわち、本発明の第1の実施の形態による電動丸鋸1による駆動制御を行った場合、従来の電動工具と比較して、回転トルクが発生している期間を長くすることができ、モータ4に発生するトルク脈動を効果的に抑制することができる。
上述したように、本発明の第1の実施の形態による電動工具の一例である電動丸鋸1は、スター結線された3相巻線(U相巻線41U、V相巻線41V及びW相巻線41W)を有するステータ41とステータ41に対して回転可能なロータ42とを有するモータ4と、商用交流電源Pから供給される交流電圧を直流脈動電圧に変換する電圧変換回路51と、直流脈動電圧を検出する母線電圧検出回路54Bと、スター結線された3相巻線に直流脈動電圧を印加する第2プラスライン52A及び第2マイナスライン52Bとを有し3相巻線のうちの直流脈動電圧が印加される通電巻線を切替えてロータ42を回転させるインバータ回路52、ブリッジ回路53及び制御部54Fと、ロータ42の回転によって3巻線に発生する誘起電圧を算出する回転位置検出回路54D及び制御部54Fと、を備えており、直流脈動電圧及び当該誘起電圧に基づいて、通電巻線の数を2から1に変更している。
上記構成によると、通電巻線の数を変更できるため、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間に印加される通電巻線に発生する誘起電圧の合成を変更することができる。このため、直流脈動電圧が当該誘起電圧の合成よりも高くなりモータ4に電流が流れる期間、すなわち、トルク発生期間を長くすることができ、トルク脈動を抑制することができる。また、上記構成においては、通電巻線の数を変更することで当該誘起電圧の合成を変更するため、弱め界磁制御等を行って界磁を弱める電流を流すことで誘起電圧を変更する構成と比較して、電力消費が少なく且つロータの永久磁石の減磁を抑制することができる。
また、電動丸鋸1においては、直流脈動電圧が通電切替閾値未満の場合、通電巻線を1個とするため、通電巻線が2個の場合よりも通電巻線に発生する誘起電圧の合成を低くすることができる。このため、通電巻線2個の誘起電圧の合成よりも直流脈動電圧が低い場合であっても、モータ4に電流を流すことができ、モータ4に電流を流す期間を長くすることができる。これにより、トルク脈動を抑制することができる。また、電動丸鋸1においては、通電切替閾値が通電巻線2個の誘起電圧の合成よりも高いため、直流脈動電圧が通電巻線2個の誘起電圧の合成よりも低くなる前に確実に通電巻線を2から1に変更できる。これにより、確実にトルク脈動を抑制できる。
また、別の観点から見ると、電動丸鋸1は、直流脈動電圧及び誘起電圧に基づいて、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間に接続される通電巻線の最大直列数を変更しているため、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間に印加される通電巻線の誘起電圧の合成を変更することができる。このため、直流脈動電圧が当該誘起電圧の合成よりも高くなりモータ4に電流が流れる期間、すなわち、トルク発生期間を長くすることができ、トルク脈動を抑制することができる。
また、電動丸鋸1においては、直流脈動電圧が通電切替閾値未満の場合、最大直列数を1(直列接続なし)とするため、最大直列数が2の場合よりも通電巻線に発生する誘起電圧の合成を低くすることができる。このため、最大直列数が2のときの通電巻線の誘起電圧の合成よりも直流脈動電圧が低い場合であっても、モータ4に電流を流すことができ、モータ4に電流を流す期間を長くすることができる。これにより、トルク脈動を抑制することができる。
また、電動丸鋸1は、スター結線された3相巻線を有しており、第2プラスライン52A及び第2マイナスライン52Bと中性点4Aを接続するブリッジ回路53をさらに有しており、ブリッジ回路53を介して3相巻線に電圧を印加することで通電巻線の数を1、最大直列数を1としている。このように、電動丸鋸1においては、ブリッジ回路53を介して3相巻線に電圧を印加するという簡易な構成で、通電巻線の数及び最大力列数を2と1との間で変更できる。
次に本発明の第2の実施の形態による電動工具の一例である電動丸鋸200について図16〜図22に基づいて説明する。本発明の第1の実施の形態にかかる電動丸鋸1と同様の構成及び要素については同一の符号を付して説明を省略し、電動丸鋸1と相違する構成、要素及び制御について主に説明する。図16は、電動丸鋸200のモータ204及び制御回路部54の電気的構成を示すブロック図を含む回路図である。
図16に示されているように電動丸鋸200は、モータ204と制御部254Fとを備えており、電動丸鋸1が備えていたブリッジ回路53及びゲートドライブ回路54Cを備えていない。電動丸鋸200は、モータ204と制御部254Fとを備えている点及びブリッジ回路53を備えていない点において電動丸鋸1と異なり、その他の点においては同一の構成、要素を備えている。
モータ204は、デルタ結線された3相巻線、すなわち、UV相巻線241A、VW相巻線241B及びWU相巻線241Cを有している。UV相巻線241A、VW相巻線241B、WU相巻線241Cは、それぞれ、ティース41C及び41F、ティース41D及び41G、ティース41B及び41Eに巻回されている。モータ204は、上記のデルタ結線された3相巻線を有する点で電動丸鋸1のモータ4と異なり、その他の構成及び要素は同一である。UV相巻線241A、VW相巻線241B及びWU相巻線241Cは、本発明の「複数の巻線」の一例である。
制御部254Fは、第3通電制御と第4通電制御との間で通電制御を切替えてモータ204の駆動制御を行う。制御部254Fは、第3通電制御と第4通電制御との間で通電制御を切替える点で電動丸鋸1の制御部54Fと異なり、その他の構成、要素及び制御は同一である。詳細には、駆動制御の具体的処理において制御部254Fは、図13のフローチャートに示されているS108の処理「第2通電制御を実行」に替えて処理「第4通電制御を実行」を、S109の処理「第1通電制御を実行」に替えて「第3通電制御を実行」を行い、その他の処理は電動丸鋸1と同一である。このため、第2の実施の形態による電動丸鋸200においては、制御部254Fによる駆動制御の具体的処理の説明は省略する。
制御部254Fは、通電制御として第3通電制御及び第4通電制御を使用し、算出した誘起電圧及び母線電圧検出回路54Bから出力される母線電圧信号が示す第1プラスライン51Cの電圧に基づいて、通電制御を第3通電制御と第4通電制御との間で切替える。
ここで、図17〜図19を参照しながら、第3通電制御について説明する。図17は、第3通電制御における回転位置情報、通電巻線及びオン状態とするスイッチング素子の互いの関係を示す図であり、(a)は、ロータ42が回転位置0°、(b)は、30°、(c)は、60°、(d)は、90°、(e)は、120°、(f)は、150°の場合を示している。図18は、第3通電制御における通電巻線の通電方向を示す図であり、(a)は、回転位置15°〜45°の場合、(b)は、回転位置105°〜135°の場合を示している。図19は、通電巻線を電源とみなしたときのモータ204の等価回路を示しており、(a)は、第3通電制御を行っている場合、(b)は、第4通電制御を行っている場合を示している。
第3通電制御は、インバータ回路52の6個のスイッチング素子52C〜52Hをオン/オフしてロータ42を所定回転方向(図17における時計回り)に回転させる通電制御である。また、第3通電制御においては、常に3相巻線のすべての相を第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間に接続して通電巻線とし、且つ、回転位置情報に基づいて当該通電巻線を切替えることでロータ42を所定回転方向に回転させる。第3通電制御では、常に、3相のうちの2相は第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間に直列に接続され、残りの1相は当該直列接続された2相と並列に接続される。すなわち、第3通電制御における通電巻線の数(通電相の数)は常に3であり、且つ、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間に直列に接続されている巻線の最大数(最大直列数)は2である。従って、誘起電圧を発生せる通電巻線を電源とみなしたときの第3通電制御におけるモータ204の等価回路は、図19の(a)に示されているように、直列に接続された2個の電源と当該2個の電源と並列にが当該直列に接続された1個の電源となる。このため、第3通電制御においては、2相に発生する誘起電圧の合成(2相分の誘起電圧)よりも直流脈動電圧が高い期間のみモータ204に電流が流れる。第3通電制御における通電巻数の数である3は、本発明における「第1通電数」の一例であり、第3通電制御における最大直列数である2は、本発明における「第1直列数」の一例である。
図17の(a)〜(f)に示されているように、第3通電制御においては、回転位置検出回路54Dが回転位置に応じて出力する回転位置情報は、電動丸鋸1における第1通電制御及び第2通電制御の場合と同一であるが、回転位置情報に応じて制御部254Fが出力する駆動信号、オン状態とされるスイッチング素子及び通電巻線は制御部54Fとは異なる。具体的には、電動丸鋸1の第1通電制御においては、回転位置が30°変化する毎に切替わる回転位置情報に同期して駆動信号を切替えていたが、電動丸鋸200における第3通電制御では、駆動信号の切替えは回転位置情報に同期しておらず、回転位置で15°ずれたタイミングで駆動信号、オン状態とされるスイッチング素子及び通電巻線を切替える。すなわち、回転位置情報が回転位置0°、30°、60°、90°、120°、150°で切替わるのに対し、制御部254Fは出力する駆動信号を、回転位置15°、45°、75°、105°、135°、165°で切替える。
第3通電制御では、図17の(b)に示されているように、回転位置15°〜45°の間、すなわち、回転位置検出回路54Dから回転位置情報「0」が出力されている回転位置15°〜30°及び回転位置情報「1」が出力されている回転位置30°〜45°の間、制御部254Fは、ロータ42を所定回転方向に回転させるため、インバータ回路52のスイッチング素子52C及び52Hをオン状態とする駆動信号を制御信号出力回路54Eに出力する。
スイッチング素子52C及び52Hがオン状態となると、図18の(a)に示されているように、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間に、UV相巻線241AとVW相巻線241Bとが直列に接続され、WU相巻線241Cは直列接続されたUV相巻線241A及びVW相巻線241Bと並列に接続される。当該接続状態となると、UV相巻線241A及びVW相巻線241Bには、図18の(a)において矢印Lで示されている反時計回り方向の電流が流れ、WU相巻線241Cには、図18(a)において矢印Mで示されている時計回り方向の電流が流れる。以下、説明の便宜のため、矢印Lのように図18において反時計回り方向に流れる電流をプラス電流といい、矢印Mのように時計回り方向に流れる電流をマイナス電流という。
UV相巻線241A及びVW相巻線241Bにプラス電流が流れ、WU相巻線241Cにマイナス電流が流れると、UV相巻線241Aが巻回されたティース41C及び41FとVW相巻線241Bが巻回されたティース41D及び41Gは、N極になり、WU相巻線241Cが巻回されたティース41B及び41EはS極となる。図17の(b)に示されているように、回転位置15°〜45°の間、N極となっているティース41C及び41Fは、ロータ42のN極の回転方向下流側に対向し、N極となっているティース41D及び41Gは、ロータ42のS極の回転方向上流側に対向し、S極となっているティース41B及び41Eは、ロータ42のS極の回転方向下流側及びN極の回転方向上流側に対向している。このため、ティース41C及び41Fとロータ42のN極との間には斥力、ティース41D及び41Gとロータ42のS極との間には引力、ティース41B及び41Eとロータ42のS極及びN極との間には斥力及び引力が働き、当該斥力及び引力によって、ロータ42を所定回転方向に回転させる回転トルクが発生する。
図17の(c)に示されているように、回転位置45°〜75°の間、制御部254Fは、インバータ回路52のスイッチング素子52C及び52Gをオン状態とする駆動信号を制御信号出力回路54Eに出力する。
スイッチング素子52C及び52Gがオン状態となると、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間には、VW相巻線241B及びWU相巻線241Cが直列に接続され、UV相巻線241Aが並列に接続され、UV相巻線241Aにはプラス電流が流れ、VW相巻線241B及びWU相巻線241Cにはマイナス電流が流れる。この期間、UV相巻線241Aが巻回されたティース41C及び41FはN極、VW相巻線241Bが巻回されたティース41D及び41GはS極、WU相巻線241Cが巻回されたティース41B及び41EはS極となり、回転トルクを発生させる。
図17の(d)に示されているように、回転位置75°〜105°の間、制御部254Fはスイッチング素子52E及び52Gをオン状態とする。当該期間、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間には、UV相巻線241A及びWU相巻線241Cが直列に接続され、VW相巻線241Bは並列に接続され、UV相巻線241A及びWU相巻線241Cにはプラス電流が流れ、VW相巻線241Bにはマイナス電流が流れる。また、当該期間、UV相巻線241Aが巻回されたティース41C及び41FはN極、VW相巻線241Bが巻回されたティース41D及び41GはS極、WU相巻線241Cが巻回されたティース41B及び41EはN極となり、回転トルクを発生させる。
図17の(e)に示されているように、回転位置105°〜135°の間、制御部254Fはスイッチング素子52E及び52Fをオン状態とする。図18の(b)に示されているように、当該期間、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間には、UV相巻線241A及びVW相巻線241Bが直列に接続され、WU相巻線241Cは並列に接続され、UV相巻線241A及びVW相巻線241Bにはマイナス電流(矢印M)が流れ、VW相巻線241Bにはプラス電流(矢印L)が流れる。また、当該期間、UV相巻線241Aが巻回されたティース41C及び41FはS極、VW相巻線241Bが巻回されたティース41D及び41GはS極、WU相巻線241Cが巻回されたティース41B及び41EはN極となり、回転トルクを発生させる。
図17の(f)に示されているように、回転位置135°〜165°の間、制御部254Fはスイッチング素子52D及び52Fをオン状態とする。当該期間、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間には、VW相巻線241B及びWU相巻線241Cが直列に接続され、UV相巻線241Aは並列に接続され、VW相巻線241B及びWU相巻線241Cにはプラス電流が流れ、UV相巻線241Aにはマイナス電流が流れる。また、当該期間、UV相巻線241Aが巻回されたティース41C及び41FはS極、VW相巻線241Bが巻回されたティース41D及び41GはN極、WU相巻線241Cが巻回されたティース41B及び41EはN極となり、回転トルクを発生させる。
電動丸鋸1における第1通電制御及び第2通電制御の場合と同様に、第3通電制御においても回転位置情報及び駆動信号の切替えは、回転位置が180°変化する毎に繰り返される。このため、回転位置165°〜180°の間と回転位置0°〜15°の間とを併せて、回転位置165°〜195°の間として説明する。
図17の(a)に示されているように、回転位置165°〜195°の間、制御部254Fはスイッチング素子52D及び52Hをオン状態とする。当該期間、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間には、UV相巻線241A及びWU相巻線241Cが直列に接続され、VW相巻線241Bは並列に接続され、UV相巻線241A及びWU相巻線241Cにはマイナス電流が流れ、VW相巻線241Bにはプラス電流が流れる。また、当該期間、UV相巻線241Aが巻回されたティース41C及び41FはS極、VW相巻線241Bが巻回されたティース41D及び41GはN極、WU相巻線241Cが巻回されたティース41B及び41EはS極となり、回転トルクを発生させる。
ここで、上記の第3通電制御における一のスイッチング素子、例えば、スイッチング素子52Cのオン及びオフ状態の継続期間に注目すると、回転位置15°〜75°の間(ロータ42が60°回転する間)、オン状態を継続している。一方、他のスイッチング素子、例えば、スイッチング素子52Fに注目すると、回転位置45°〜105°の間(ロータ42が60°回転する間)、オン状態を継続している。このように、第3通電制御においては、6個全てのスイッチング素子が互いにタイミングを異にしてロータ42が60°回転する間、オン状態を継続している。すなわち、第3通電制御においては、6個全てのスイッチング素子を電気的角度で120°の間、オン状態を継続させる120°通電方式で通電を制御している。
次に、図19〜図21を参照しながら、第4通電制御について説明する。図20は、第4通電制御における回転位置情報、通電巻線及びオン状態とするスイッチング素子の互いの関係を示す図であり、(a)は、ロータ42が回転位置0°、(b)は、30°、(c)は、60°、(d)は、90°、(e)は、120°、(f)は、150°の場合を示している。図21は、第4通電制御における通電巻線の通電方向を示す図であり、(a)は、回転位置0°〜30°の場合、(b)は、回転位置90°〜120°の場合を示している。
第4通電制御は、インバータ回路52の6個のスイッチング素子52C〜52Hをオン/オフしてロータ42を所定回転方向(図20における時計回り)に回転させる通電制御である。第4通電制御においては、常に3相巻線のうちの2相を第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間に並列に接続して通電巻線とし、且つ、回転位置情報に基づいて当該通電巻線を切替えることでロータ42を所定回転方向に回転させる。第4通電制御では、常に、3相のうちの2相のみが第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間に並列に接続される。すなわち、第4通電制御における通電巻線の数(通電相の数)は常に2であり、且つ、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間に直列に接続されている巻線の最大数(最大直列数)は1である。従って、誘起電圧を発生せる通電巻線を電源とみなしたときの第4通電制御におけるモータ204の等価回路は、図19の(b)に示されているように、並列に接続された2個の電源のみとなる。このため、第4通電制御においては、1相分の誘起電圧よりも直流脈動電圧が高い期間のみモータ204に電流が流れる。当該1相分の誘起電圧は、第3通電制御における直列に接続された2相分の誘起電圧の略半分となる。第4通電制御における通電巻数の数である2は、本発明における「第2通電数」の一例であり、第4通電制御における最大直列数である1は、本発明における「第2直列数」の一例である。
第4通電制御においては、図20の(a)〜(f)に示されているように、回転位置に応じて回転位置検出回路54Dが出力する回転位置情報は、第1通電制御の場合と同一であるが、回転位置情報に応じて制御部254Fが出力する駆動信号、オン状態とされるスイッチング素子及び通電巻線は異なる。
図20の(a)に示されているように、回転位置0°〜30°の間、制御部254Fは、ロータ42を所定回転方向(図20における時計回り方向)に回転させるため、インバータ回路52のスイッチング素子52C、52D及び52Hをオン状態とする駆動信号を制御信号出力回路54Eに出力する。
スイッチング素子52C、52D及び52Hがオン状態となると、図21の(a)に示されているように、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間には、VW相巻線241BとWU相巻線241Cとが並列に接続される。当該接続状態となると、VW相巻線241Bにはプラス電流(矢印L)が流れ、WU相巻線241Cにはマイナス電流(矢印M)が流れる。
VW相巻線241Bにはプラス電流が流れ、WU相巻線241Cにはマイナス電流が流れると、VW相巻線241Bが巻回された巻回されたティース41D及び41GはN極、WU相巻線241Cが巻回されたティース41B及び41EはS極となる。図20(a)に示されているように、回転位置0°〜30°の間、N極となっているティース41D及び41Gは、ロータ42のS極の回転方向上流側に対向し、S極となっているティース41B及び41Eは、ロータ42のS極の回転方向下流側に対向している。このため、ティース41D及び41Gとロータ42のS極との間には引力、ティース41B及び41Eとロータ42のS極との間には斥力が働き、引力及び引力によって、ロータ42を所定回転方向に回転させる回転トルクが発生する。
図20の(b)に示されているように、回転位置30°〜60°の間、制御部254Fは、インバータ回路52のスイッチング素子52C、52G及び52Hをオン状態とする駆動信号を制御信号出力回路54Eに出力する。
スイッチング素子52C、52G及び52Hがオン状態となると、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間には、UV相巻線241A及びWU相巻線241Cが並列にされ、UV相巻線241Aにはプラス電流が流れ、WU相巻線241Cにはマイナス電流が流れる。この期間、UV相巻線241Aが巻回されたティース41C及び41FはN極、WU相巻線241Cが巻回されたティース41B及び41EはS極となり、回転トルクを発生させる。
図20の(c)に示されているように、回転位置60°〜90°の間、制御部254Fはスイッチング素子52C、52E及び52Gをオン状態とする。当該期間、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間には、UV相巻線241AとVW相巻線241Bとが並列に接続され、UV相巻線241Aにはプラス電流が流れ、VW相巻線241Bにはマイナス電流が流れる。また、当該期間、UV相巻線241Aが巻回されたティース41C及び41FはN極、VW相巻線241Bが巻回されたティース41D及び41GはS極となり、回転トルクを発生させる。
図20の(d)に示されているように、回転位置90°〜120°の間、制御部254Fはスイッチング素子52E、52F及び52Gをオン状態とする。図21の(b)に示されているように、当該期間、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間には、VW相巻線241BとWU相巻線241Cとが並列に接続され、VW相巻線241Bにはマイナス電流(矢印M)が流れ、WU相巻線241Cにはプラス電流(矢印L)が流れる。また、当該期間、VW相巻線241Bが巻回されたティース41D及び41GはS極、WU相巻線241Cが巻回されたティース41B及び41EはNとなり、回転トルクを発生させる。
図20の(e)に示されているように、回転位置120°〜150°の間、制御部254Fはスイッチング素子52D、52E及び52Fをオン状態とする。当該期間、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間には、UV相巻線241AとWU相巻線241Cとが並列に接続され、UV相巻線241Aにはマイナス電流が流れ、WU相巻線241Cにはプラス電流が流れる。また、当該期間、UV相巻線241Aが巻回されたティース41C及び41FはS極、WU相巻線241Cが巻回されたティース41B及び41EはN極となり、回転トルクを発生させる。
図20の(f)に示されているように、回転位置150°〜180°の間、制御部254Fはスイッチング素子52D、52F及び52Hをオン状態とする。当該期間、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間には、UV相巻線241AとVW相巻線241Bとが並列に接続され、UV相巻線241Aにはマイナス電流が流れ、VW相巻線241Bにはプラス電流が流れる。また、当該期間、UV相巻線241Aが巻回されたティース41C及び41FはS極、VW相巻線241Bが巻回されたティース41D及び41GはN極となり、回転トルクを発生させる。
ここで、上記の第4通電制御における一のスイッチング素子、例えば、スイッチング素子52Cのオン及びオフ状態の継続期間に注目すると、回転位置0°〜90°の間(ロータ42が90°回転する間)、オン状態を継続している。一方、他のスイッチング素子、例えば、スイッチング素子52Gに注目すると、回転位置30°〜120°の間(ロータ42が90°回転する間)、オン状態を継続している。このように、第4通電制御においては、6個全てのスイッチング素子が互いにタイミングを異にしてロータ42が90°回転する間、オン状態を継続している。すなわち、第4通電制御においては、6個全てのスイッチング素子を電気的角度で180°の間、オン状態を継続させる180°通電方式で通電を制御している。
次に、図22に基づいて、制御部254Fによる駆動制御を行った場合の第1プラスライン51Cの電圧及びモータ204に流れる電流の時間変化について説明する。図22は、制御部254Fによる駆動制御における第1プラスライン51Cの電圧及びモータ204に流れる電流の時間変化を示す図である。
図22において破線で示されているVpは、電圧変換回路51から出力される略全波整流波形の直流脈動電圧であり、Eaは、通電巻線1相分の誘起電圧であり、Esは、通電巻線2相分の誘起電圧であり、Vthは、通電切替閾値である。また、図22において実線で示されているVinvは、母線電圧検出回路54Bが検出する第1プラスライン51Cの電圧であり、Iaはモータ204に流れるモータ電流である。なお、図22に示されているEa及びEsは一例である。
図22に示されているように、制御部254Fによる駆動制御を行った場合、時刻t0〜t3の期間は、第1プラスライン51Cの電圧Vinvが通電切替閾値Vth未満であるため(S107のYesに相当)、第4通電制御が行われている。このため、当該期間においては、直流脈動電圧Vpが通電巻線1相分の誘起電圧Ea以下の時刻t0〜t1ではモータ電流Iaは流れず、直流脈動電圧Vpが通電巻線1相分の誘起電圧Eaよりも高くなる時刻t1〜t3ではモータ電流Iaが流れている。なお、時刻t2は、直流脈動電圧Vpが通電巻線2相分の誘起電圧Esよりも高くなる時刻である。
時刻t3〜t4の期間は、第1プラスライン51Cの電圧Vinvが通電切替閾値Vth以上であるため(S107のNoに相当)、第3通電制御が行われている。当該期間においては、直流脈動電圧Vpが通電巻線2相分の誘起電圧Esよりも高いため、モータ電流Iaが流れ続ける。
時刻t4〜t7の期間は、第1プラスライン51Cの電圧Vinvが、再び、通電切替閾値Vth未満となるため、(S107のYesに相当)、第4通電制御が行われている。このため、当該期間においては、直流脈動電圧Vpが通電巻線1相分の誘起電圧Eaよりも高い時刻t4〜t6ではモータ電流Iaは流れ、直流脈動電圧Vpが通電巻線1相分の誘起電圧Ea以下となる時刻t6〜t7ではモータ電流は流れなくなる。時刻t7以降は、上記の時刻t0〜t7を繰り返している。なお、時刻t5は、直流脈動電圧Vpが通電巻線2相分の誘起電圧Es以下となる時刻である。
このように、本実施の形態における電動丸鋸1の制御部54Fによる駆動制御においては、時刻t1〜t6の期間はモータ4に電流が流れ、時刻t0〜t1の期間及び時刻t6〜t7の期間はモータ4に電流が流れていない。すなわち、モータ4に回転トルクが発生している期間は、時刻t1〜t6の期間である。
従来の電動工具では、第3通電制御に相当する通電制御のみが行われており、通電巻線の数を変更する通電制御の切替えは行われていない。すなわち、従来の電動工具における通電制御の全期間に亘って、直流脈動電圧が通電巻線2相分の誘起電圧Ecよりも高い場合のみ、モータ電流が流れる。このため、従来の電動工具における直流脈動電圧が通電巻線2相分の誘起電圧よりも高い時刻t2〜t5の期間のみモータ電流が流れ、回転トルクが発生する。
このように、従来の電動工具による駆動制御においては、時刻t2〜t5の期間のみ回転トルクが発生しているのに対し、本実施の形態による駆動制御においては、時刻t2〜t5の期間を含み且つ当該期間よりも長い時刻t1〜t6の期間、回転トルクが発生している。すなわち、本発明の第2の実施の形態による電動丸鋸200による駆動制御を行った場合、従来の電動工具と比較して、回転トルクが発生している期間を長くし、回転トルクの発生期間を長くすることができ、モータ4に発生するトルク脈動を効果的に抑制することができる。
上述したように、本発明の第2の実施の形態による電動工具の一例である電動丸鋸200においては、直流脈動電圧及び3相巻線に発生する誘起電圧に基づいて、通電巻線の数を3から2に変更している。これにより、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間に印加される通電巻線に発生する誘起電圧の合成を変更することができる。従って、電動丸鋸200においては、直流脈動電圧が当該誘起電圧の合成よりも高くなりモータ4に電流が流れる期間、すなわち、トルク発生期間を長くすることができ、トルク脈動を抑制することができる。また、上記構成においては、通電巻線の数を変更することで当該誘起電圧の合成を変更するため、弱め界磁制御等を行って界磁を弱める電流を流すことで誘起電圧を変更する構成と比較して、電力消費が少なく且つロータの永久磁石の減磁を抑制することができる。
また、電動丸鋸200においては、直流脈動電圧が通電切替閾値未満の場合、通電巻線を2個とするため、通電巻線が3個の場合よりも通電巻線に発生する誘起電圧の合成を低くすることができる。このため、通電巻線3個の誘起電圧の合成よりも直流脈動電圧が低い場合であっても、モータ204に電流を流すことができ、モータ204に電流を流す期間を長くすることができる。これにより、トルク脈動を抑制することができる。また、電動丸鋸200においては、通電切替閾値が通電巻線3個の場合に対抗誘起電圧の合成よりも高いため、直流脈動電圧が通電巻線2個の誘起電圧の合成よりも低くなる前に確実に通電巻線を3から2に変更できる。これにより、確実にトルク脈動を抑制できる。
また、別の観点から見ると、電動丸鋸200は、直流脈動電圧及び誘起電圧に基づいて、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間に接続される通電巻線の最大直列数を変更しているため、第2プラスライン52Aと第2マイナスライン52Bとの間に印加される通電巻線に発生する誘起電圧の合成を変更することができる。このため、直流脈動電圧が当該誘起電圧の合成よりも高くなりモータ204に電流が流れる期間、すなわち、トルク発生期間を長くすることができ、トルク脈動を抑制することができる。
また、電動丸鋸200においては、直流脈動電圧が通電切替閾値未満の場合、最大直列数を1(直列接続なし)とするため、最大直列数が2の場合よりも通電巻線に発生する誘起電圧の合成を低くすることができる。このため、最大直列数が2のときの通電巻線の誘起電圧の合成よりも直流脈動電圧が低い場合であっても、モータ204に電流を流すことができ、モータ204に電流を流す期間を長くすることができる。これにより、トルク脈動を抑制することができる。
また、電動丸鋸200においては、180°通電方式を用いて、通電巻線の数を3、最大直列数を2とし、120°通電方式を用いて通電巻線の数を2、最大直列数を1としている。このように、電動丸鋸200においては、通電の方式を変更するのみで通電巻線の数及び最大直列数を変更しているため、当該変更のための回路等が不要であり、回路構成を簡略化することができ、生産コストを削減することができる。
なお、上記した実施の形態では、本発明を電動丸鋸に適用した場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。特許請求の範囲に記載した範囲で、種々の変形や改良が可能である。例えば、本発明は電動丸鋸以外にもブラシレスモータを備えた電動工具に適用可能である。さらに、本発明は、ブラシレスモータが長期間駆動させて作業を行う電動工具、例えば、ディスクグラインダ等に好適である。
また、本実施の形態においては、制御部54F及び254Fが誘起電圧をロータ42の回転数から算出する構成であったが、誘起電圧自体を検出する誘起電圧検出手段を備える構成であってもよい。
また、第1及び第2の実施形態においては、3つの巻線(U相巻線41U、V相巻線41V、W相巻線、又は、UV相巻線241A、VW相巻線241B、WU相巻線241C)を用いたが、各巻線に、直列又は並列に別の巻線を接続し、直流脈動電圧に基いて、直列接続、並列接続を切り替えるようにしても良い。この場合でも、通電する巻線のインダクタンスが変更されるため、上記第1及び第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、第1の実施の形態においては、第1通電制御と第2通電制御との間の切替タイミングは、直流脈動電圧の大きさに基づいていたが(通電切替閾値)、直流脈動電圧が第1通電制御における通電巻線の誘起電圧の合成よりも低くなる前に通電巻線の数又は最大直列数を変更できる構成であればよく、例えば、当該切替タイミングは、商用交流電源Pの交流電圧の電気角に基づいていてもよく、また、当該交流電圧のゼロクロスポイントからの時間に基づいていても良い。