JP5019182B2 - 永久磁石形同期電動機の駆動装置 - Google Patents

永久磁石形同期電動機の駆動装置 Download PDF

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Description

本発明は、永久磁石形同期電動機を商用電源で駆動する電力変換器を制御する駆動装置に関し、特に、電源と電動機とを双方向性の半導体スイッチで直接接続する交流直接変換器を制御する駆動装置に関する。
電動機を可変速駆動する装置にインバータがある。インバータは、商用電源からダイオードなどの整流回路により一旦直流電圧を生成し、MOS−FET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのパワー半導体を用いて任意の周波数の電圧を制御する装置であり、広く知られている。
一方、常時可変速駆動を行わない小容量のファンやポンプなどの用途では、商用電源から誘導電動機などを直接駆動していることが多い。これは、インバータでは商用電源から一度直流を介して電動機に電力を供給するため、パワー半導体の損失や、直流平滑コンデンサが大型化する等の課題があり、コストや装置の大型化に問題があったためである。しかし、商用電源から直接駆動すると、始動時に大きな電流が誘導電動機に流れ、電動機の故障などの問題がある。また、周波数を制御できないため、省エネルギー化に問題がある。
特許文献1に示す従来技術には、インバータに対してパワー半導体スイッチ数を減らした簡単な装置が開示されている。特許文献1に示す従来技術では、負荷に誘導電動機を接続し、電源周波数は変えずに電圧の振幅を制御することでスムーズな起動を行うことができ、高効率な運転が実現できる旨記載されている。
また、近年では、マトリックスコンバータのように直流平滑コンデンサを有さずに直接交流電圧を出力する方法も盛んに研究されている。
特開2004−80924号公報
近年、誘導電動機に比べて、体積が小さく効率が高い永久磁石形同期電動機が広く用いられている。しかし、永久磁石形同期電動機を駆動する場合には、永久磁石がつくる磁束と出力電圧の位相とを一致させなければトルクが発生せず、起動することができない。特許文献1に記載の制御方式では、電圧の振幅のみしか制御できないため位相を制御できず、適用不可能である。また、インバータを接続すると、既に述べたように装置のコストや大型化に課題がある。マトリックスコンバータを適用すると、直流平滑コンデンサは不要であるが、双方向スイッチの数が多く、低コスト化に課題がある。
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、誘導電動機を駆動するよりも高効率で、かつ、インバータやマトリックスコンバータを駆動するよりも小型で低コストな、永久磁石形同期電動機の駆動装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、多相交流を電源とし、少なくとも1相は入力端子と出力端子とを直接接続し、他の各相は入力端子と出力端子との間に半導体スイッチを接続し、前記直接接続された相の入力端子と他の各相の出力端子との間にはそれぞれ半導体スイッチを接続し、負荷としての永久磁石形同期電動機をスイッチングパタンにより駆動する電力変換器を制御する駆動装置において、電源電圧を検出する電源電圧検出手段と、前記永久磁石形同期電動機への出力電流を検出する出力電流検出手段と、所望の条件で前記永久磁石形同期電動機を駆動するための出力電圧指令を演算する出力電圧指令演算手段と、前記出力電圧指令演算手段により演算された出力電圧指令と前記電源電圧検出手段により検出された電源電圧とに基づいて前記半導体スイッチのオン時間を演算するオン時間演算手段と、前記永久磁石形同期電動機への出力電圧が前記電源電圧による出力可能範囲外になった場合に、前記オン時間演算手段により演算されたオン時間によるスイッチングパタンに最も近く、かつ、前記出力可能範囲内となるスイッチングパタンを生成する生成手段とを備えたことを特徴とする永久磁石形同期電動機の駆動装置を提供する。
本発明によれば、出力電圧の出力可能範囲に制約があっても、オン時間演算手段により演算されたオン時間によるスイッチングパタンに最も近く、かつ、出力可能範囲内となるスイッチングパタンを生成して、永久磁石形同期電動機を駆動することができ、誘導電動機を駆動するよりも高効率で、かつ、インバータやマトリックスコンバータを駆動するよりも小型で低コストに電力変換を行うことが可能となる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の駆動装置において、前記出力電圧指令演算手段は、前記永久磁石形同期電動機の回路モデルに基づいて出力電流推定値を演算し、該演算された出力電流推定値と、前記出力電流検出手段により検出された出力電流検出値と、速度起電力とに基づいて出力電圧指令値を演算し、前記オン時間演算手段は、前記電源電圧検出手段により検出された電源電圧と、前記出力電圧指令演算手段により演算された出力電圧指令値とに基づいて前記オン時間を演算し、前記出力電圧が前記電源電圧による出力可能範囲外になったときに、前記出力電圧が前記出力可能範囲になるように前記オン時間を補正することを特徴とする。
本発明によれば、出力電圧の出力可能範囲に制約があっても、出力電圧が出力可能範囲になるようにオン時間を補正することができるため、永久磁石形同期電動機を駆動することが可能となる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の駆動装置において、前記各相の半導体スイッチは双方向に個別に電流を制御できるスイッチであり、前記生成手段は、出力電流指令値の符号、又は出力電流検出値若しくは出力電流推定値の符号に応じて、前記半導体スイッチを個別にオン又はオフするためのスイッチングパタンを生成することを特徴とする。
本発明によれば、出力電流指令と異なる符号の電流が流れるのを防ぐことができ、トルクが逆方向に発生しないので、永久磁石形同期電動機を起動することが可能となる。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか1項に記載の駆動装置において、出力電流指令値に、前記電源電圧と前記出力電圧指令値とに基づいて演算された制限値を設け、前記生成手段は、前記制限値以下に制限された出力電流指令値の符号が切り替わるまでに出力電流をゼロにするスイッチングパタンを生成することを特徴とする。
本発明によれば、出力電流指令値に制限値を設けることで、出力電流指令値が正から負に変化する前に電流をゼロに収束させるように出力電流指令値を補正することができ、電流の符号の切り替りを迅速化し、スムーズな永久磁石形同期電動機の運転を実現できる。
本発明によれば、出力電圧の出力可能範囲に制約があっても、オン時間演算手段により演算されたオン時間によるスイッチングパタンに最も近く、かつ、出力可能範囲内となるスイッチングパタンを生成して、永久磁石形同期電動機を駆動することができ、誘導電動機を駆動するよりも高効率で、かつ、インバータやマトリックスコンバータを駆動するよりも小型で低コストに電力変換を行うことが可能となる。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において参照する各図では、他の図と同等部分は同一符号によって示されている。
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態について説明する。第1実施形態は、請求項1及び2に記載した発明に対応する実施形態である。
図1は、本発明の第1実施形態に係る電力変換制御装置1の全体構成を示すブロック図である。同図に示すように、電力変換制御装置1は、三相電源10と、高調波除去のための入力フィルタ20と、PMSM(permanent magnet synchronous motor;永久磁石形同期電動機)40と、PMSM40を駆動する電力変換器30と、電力変換器30を制御する駆動装置50とで構成される。三相電源10は、高調波除去のための入力フィルタ20を介し、入力端子(電源端子)R相と出力端子U相に双方向スイッチが接続される。入力端子S相と出力端子V相とは直接接続され、入力端子T相と出力端子W相とは双方向スイッチで接続される。また、入力端子S相と出力端子U相、入力端子S相と出力端子W相とはそれぞれ双方向スイッチで接続される。出力端子U、V、W相には、PMSM40が接続される。ここで、双方向スイッチは、交流電流をどちらの方向にもスイッチングにより制御可能であり、図2(a)に示すように、逆耐圧性を有するIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)で構成したり、或いは、図2(b)に示すように、一般的なIGBTを逆直列に接続して構成することが可能である。以下、入力端子R相と出力端子U相を接続する双方向スイッチをSru、入力端子Sと出力端子Uとを接続する双方向スイッチをSsu、入力端子S相と出力端子W相とを接続する双方向スイッチをSsw、入力端子T相と出力端子W相とを接続する双方向スイッチをStwという。さらに、双方向スイッチで入力端子R、S、Tから出力端子U、V、Wの方向に電流を流す向きをp、出力端子から入力端子の方向に電流を流す向きをnとする。
図1において、駆動装置50は、電源電圧検出手段51と、出力電流検出手段52と、速度検出手段53と、出力電圧指令演算手段541及びオン時間演算手段542を含む演算装置54と、パルス生成手段55とを備えている。
電源電圧検出手段51は、変換器30の入力側の電圧をセンサや分圧回路により検出する。出力電流検出手段52は、変換器30の出力電流をホール電流センサ等で検出する。また、速度検出手段53は、PMSM40の回転速度をエンコーダ等を用いて検出する。なお、それぞれの検出の方法は様々あり、本発明では特に限定するものではなく、特に速度検出手段53は、出力電流等から速度を推定して制御する速度センサレス制御を用いれば不要であり、本発明の必須要件ではない。
検出された電源電圧、出力電流、回転速度は、演算装置54に入力される。演算装置54は、出力電圧指令演算手段541により出力電圧指令を演算し、オン時間演算手段542により各半導体スイッチのオン時間を演算する。パルス生成手段55は、出力電圧指令演算手段541により演算された各スイッチのオン時間からPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)によりパルスを生成する。
以下、本実施形態の動作を理解しやすくするため、本構成における出力電圧範囲について説明する。
図3に電源電圧の位相が0度から180度(0〜π)までの間に出力できる電圧の範囲を示す。図3に示すV1〜V4のベクトルは、図4に示す通り、各スイッチをオンしたときに出力される電圧を示す。例えば、V1はSruとStwとをオンした場合であり、入力端子R、S、Tと出力端子U、V、Wがそれぞれ接続されたことになり、電源電圧がそのまま出力端子に現れることを示している。また、電源端子の短絡と出力端子の開放を防止するため、出力電圧ベクトルは、初期状態を除いて図4に示す4通りとなる。
図3(a)には、電源位相が0度の場合に出力可能な電圧の範囲が示されており、このときの電源電圧は(1)式となる。
Figure 0005019182
ただし、Eは電源電圧の相電圧実効値を示している。
(1)式と図4より、出力電圧ベクトルV2、V3はゼロ電圧になり、出力電圧ベクトルがゼロ電圧とならない場合は、U相がR相に接続されるパタンとなる。
図3(a)に示す「a」、「b」は出力電圧ベクトルの大きさを示しており、それぞれ電源線間電圧実効値の(1/2)1/2、(2/3)1/2倍である。
選択できるスイッチングパタンが4種類なので、電源位相が変化すると、出力可能な電圧範囲は、図3の斜線部分に示すように変化する。したがって、電源位相に応じて出力可能な範囲に制約があり、本発明では、この範囲内で適切な制御を行うことで、従来技術では不可能であったPMSM40の駆動を実現するものである。
以下、本発明の実施形態に係る駆動装置50の主要な構成要素である出力電圧指令演算手段541とオン時間演算手段542が行う演算処理について説明する。まず、出力電圧指令演算手段541が行う演算処理について説明する。
PMSM40をデルタ結線モデルとした電圧方程式を(2)式に示す。
Figure 0005019182
ただし、Rは固定子巻線抵抗、Lは同期インダクタンス、pは微分演算子、ωeは回転子電気角速度、KEは速度起電力係数、θeは回転子電気角度を示している。また、右辺第二項の速度起電力項をそれぞれeuv、evw、ewuとする。
(2)式から一例としてUWの線間電圧指令値を演算する方法を示す。
(2)式のUWの線間電圧方程式を抜き出すと(3)式となる。
Figure 0005019182
(3)式には微分項があるので、演算装置54内の出力電圧指令演算手段541は、(3)式を離散時間方程式として扱う。サンプル点をn、サンプル周期をTとして(3)式を離散時間方程式にすると(4)式となる。
Figure 0005019182
(4)式において、1サンプル先(n+1)の出力電流推定値ieuv(n+1)を、nサンプル点での電流検出値と線間電圧から(5)式のように求める。
Figure 0005019182
さらに1サンプル先(n+2)の出力電流指令値i* uv(n+2)は、電気角速度指令値と検出値をPI制御して(6)式のように求める。
Figure 0005019182
ただし、Kは速度制御ゲインやトルク出力電流指令iq *への変換係数である。
(4)式の電圧方程式を1サンプル進めると(7)式となる。
Figure 0005019182
(7)式はnサンプルの次に発生するべき電圧を示しており、(7)式を出力電圧指令値として制御すればよい。(7)式を出力電圧指令値Vuv *として表すと(8)式となる。
Figure 0005019182
(8)式に対して、(5)式のienv(n+1)と、(6)式のi* uv(n+2)と、現在の速度起電力からサンプル時間進めたeuv(n+1)とを用いれば、出力電圧指令値を演算できる。また、VW間やWU間も同様に演算する。
次に、オン時間演算手段542が行う演算処理について説明する。
U相のスイッチング関数を(9)式に示す。
Figure 0005019182
また、各相の電源短絡と負荷開放を防止するためスイッチングには(10)式の条件を満たす必要がある。
Figure 0005019182
ただし、ersは電源RS間の線間電圧であり、Dru、DsuはRU、SU間のそれぞれ1スイッチング周期あたりのオン時間割合(オンデューティ)を示す。
(10)式からU相のオンデューティを、Vuvを出力電圧指令、ersを電源電圧検出値として求めると(11)式となる。
Figure 0005019182
他のスイッチについてのオンデューティも求めると(12)式となる。
Figure 0005019182
以上よりすべてのスイッチのオンデューティが演算できる。
しかし、既に述べたように、(8)式の出力電圧指令は、電源電圧の位相によって必ず実現できる訳ではない。本発明はこのように出力可能範囲外の場合には、出力電圧指令に近い電圧ベクトルを選択し、トルクを必要な向きに出力する。以下、本発明におけるパルスの選択方法について述べる。
図5は、出力電圧指令ベクトルv*と、出力電圧可能範囲とを示したベクトル図である。図5(a)では、出力可能範囲に出力電圧指令ベクトルが含まれており、(12)式の演算結果でスイッチングを行えば、所望の出力電圧が得られる。
一方、図5(b)では、出力電圧指令ベクトルが出力可能範囲外となっている。このとき、パルス生成手段55は、出力電圧指令ベクトルv*に近いベクトルvを出力するように制御する。すなわち、(12)式で演算したオンデューティを出力範囲内で最も指令値に近くなるように補正を行う。
(12)式で示すオンデューティは、0から1の範囲内であれば出力電圧指令どおりの出力電圧が出力できる。すなわちいずれか一つでもオンデューティの計算結果が0から1の範囲外であるとき、出力電圧範囲外の条件になる。よって、(12)式の演算結果から一例として、Dru(n+1) *のオンデューティを補正しDru(n+1)を求めると(13)式となる。
Figure 0005019182
他相のオンデューティも同様に補正する。(13)式のように各相を補正すると、出力される電圧ベクトルは、出力可能範囲となり、さらに、予め(12)式の演算結果を基に0から1の範囲にないもののみを補正するので、結果として出力電圧指令に最も近いベクトルが選択される。
パルス生成手段55では、(13)式とその他の相のオンデューティをPWMし、半導体スイッチのパルスを生成する。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、請求項3に記載した発明に対応する実施形態である。図6は、第2実施形態に係る電力変換制御装置1の全体構成を示すブロック図である。本実施形態では、第1実施形態に係る電力変換制御装置1が備える構成に対して、出力電流指令値の符号と、出力電流推定値又は出力電流検出値の符号に応じて、双方向スイッチを個別に制御するスイッチ条件部543が追加されている。それ以外の構成は第1実施形態と同様であり、説明を省略する。まず出力電流の向きによるスイッチ条件が必要な理由を説明する。
図7には、出力電圧指令ベクトルv*と出力可能範囲と1相分の等価回路図とを示す。図7に示すグラフでは、図5に示すグラフに対して電源位相が変化し、出力可能範囲が移動している。図7(a)では、出力電圧指令ベクトルv*は出力可能範囲から大きく異なっており、このとき第1実施形態で説明した方式に基づいて出力電圧を演算すると、ゼロ電圧ベクトルが選択される。ゼロ電圧ベクトルを出力すると、図7(a)の回路図のとおり、双方向スイッチSsupとSsunが共にオンし、電源S相で出力相UV相を短絡することになる。すると、U相の電流は、速度起電力の向きに応じて変換器内を還流するので、出力電流指令で正の電流を流してトルクを発生させたくても、速度起電力の向きが逆方向であるとSsunを通して、出力電流指令と逆向きの電流が流れる。結果的にPMSM40にトルクを与えられずに起動できない恐れがある。そこで、双方向スイッチSsupとSsunを個別に制御することで、逆向きに流れる電流を防止する必要がある。
図7(b)では、出力電流指令iu *の符号により、Ssupのみをオンし、Ssunをオフにする。このようにすると、速度起電力が逆向きであっても正側のスイッチしかオンしていないので、逆向きの電流が流れずに電流はゼロになる。速度起電力によって正の電流が流れる状態であれば、Ssupを通して正の電流が流れ、出力電流指令と同方向の電流が得られる。したがって、出力電流指令と異なる符号の電流は流れず、ゼロか同方向の電流となり、トルクが逆方向に発生しないので、起動が可能になる。
上記をiuv *を例として式で表すと、演算した出力電流指令に応じて、各相のp、nのスイッチに(14)式の条件を加える。
Figure 0005019182
また、出力電流の連続性を確保するため、出力電流推定値にも(15)式の条件を加える。
Figure 0005019182
(14)式と(15)式の条件を論理和で構成し、各相のスイッチのパルスを求める。
パルス生成手段55は、(13)式のオンデューティから演算したパルスに、(14)式と(15)式の条件を加えてスイッチのオン信号を生成し、変換回路のパワー半導体スイッチを制御する。
なお、併せて出力電圧可能範囲外になった場合に、制御性能の悪化を防ぐ補正方法を以下述べる。本補正方法は第1実施形態にも適用できる方法である。
次のサンプル点では、現サンプル点での出力電圧指令値を用いて出力電流推定値を演算するので、実際の出力電圧と出力電圧指令とに乖離があると出力電流推定値の演算精度が悪化する。そこで、(13)式で補正されたオンデューティから出力電圧指令値を(16)式のように補正する。
Figure 0005019182
(16)式において、Dru(n+1) *>1のときは、(11)式より電源電圧が出力に現れることを表している。(16)式の出力電圧指令値を用いて(5)式のように(n+2)サンプル点での出力電流推定値を演算すれば、推定演算の精度悪化を防ぎ、スムーズな運転が可能となる。なお、演算された出力電流推定値を(14)式のスイッチの向きから補正することもできる。
これは、実際にpがオンしているのにも関わらず出力電流推定値の演算結果が負になるということは、演算上の誤差や検出誤差によるものなので、このとき出力電流推定値をゼロとして、出力電圧指令値を演算すれば、上記誤差の影響をなるべく減らして精度の高い制御が実現できる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態は、請求項4に記載した発明に対応する実施形態である。本実施形態では、出力電流指令が正から負へと変化する間に実電流が正側に上昇しないように、出力電流指令値に制限値を設けて、出力電流指令がゼロになるまでに実電流をゼロに保持しておき、過大な出力電流指令と異符号の電流を防ぐものである。
図8(a)に示すように、出力電流指令値i* uv<0となるP点において、速度起電力と電源電圧ersの影響で出力電流指令値i* uvとは逆方向に実電流iuvが流れ、指令どおり負の電流が得られなくなる。これは、出力電流指令値i* uvがゼロクロスになるまでに実電流iuvが大きく、PMSM40の電気時定数の影響により負方向へ瞬時に電流を切り替えられないためである。
そこで、図8(b)に示すように、出力電流指令値に制限値を設けて、予め出力電流指令値iuv *が負に変化する前に電流をゼロに収束させるように出力電流指令値を補正する。これより、電流符号の切り替りを迅速化することでスムーズな運転を実現できる。
出力電流指令値の制限値i* uvmax(n+2)は、電動機の同期インダクタンスLとサンプル点(n+2)からi* uv=0になるまでの時間T0を用いて(17)式により求める。
Figure 0005019182
ただし、
Figure 0005019182
は時間T0間の速度起電力の平均値、
Figure 0005019182
は時間T0間の最低印加電圧の平均値であり、最低印加電圧となるvuvはers(<0)又は0(ers>0)のときである。
よって、常に速度起電力の大きさと出力電圧の関係で電流をゼロに制御できるような制限値を演算しておき、(6)式の出力電流指令値が(17)式より振幅が大きい場合には(17)式の値で制限する。当然ながら、出力電流指令が負から正に変化する際は符号が逆になるだけで全く同じである。なお、平均値の演算方法は、簡易的にローパスフィルタで求めても良いし、電源位相情報から積分して演算してもよい。
図9に本発明の実施形態に係る電力変換制御装置1を用いた場合の始動特性を示す。グラフの横軸は時間であり、グラフの縦軸は、図9(a)は回転速度、図9(b)はU相電流、図9(c)はW相電流を示している。図9(a)に示すように、出力電流に出力電圧の制約に伴う歪みがあるが、0回転から1200回転付近まで加速できていることが分かり、インバータ等を用いずに可変速運転できることが示された。このように、PMSM40を定格周波数付近までスムーズに起動でき、始動時の大きな過渡電流が流れることなく、信頼性の高いPMSM40の駆動装置50を提供することができる。以上のように、図9に示すグラフから本発明の効果が証明された。
以上説明したように、インバータよりもパワー半導体が少なく、大型の平滑コンデンサが不要な、安価で小型な駆動装置50を提供することができる。また、従来のような誘導電動機ではなく、PMSM40を駆動することができるため、電動機の損失が低減し、電動機も含めた効率が改善し、省エネルギーに貢献できる。
本発明の第1実施形態に係る電力変換制御装置の全体構成を示すブロック図である。 同実施の形態に係る双方向スイッチの構成を示す図である。 同実施の形態に係る電源電圧の各位相における出力電圧可能範囲を示す図である。 同実施の形態に係る出力電圧ベクトルとスイッチングパタンとの関係を示す図である。 同実施の形態に係る出力電圧指令ベクトルと、出力電圧可能範囲とを示したベクトル図である。 本発明の第2実施形態に係る電力変換制御装置の全体構成を示すブロック図である。 同実施の形態に係る出力電圧指令ベクトルと出力可能範囲と1相分の等価回路とを示す図である。 本発明の第3実施形態に係る出力電流指令と電源電圧と実電流との関係をしめすグラフである。 本発明の実施形態に係る電力変換制御装置を用いた場合の始動特性を示すグラフである。
符号の説明
1 電力変換制御装置
10 三相電源
20 入力フィルタ
30 電力変換器
40 PMSM
50 駆動装置
51 電源電圧検出手段
52 出力電流検出手段
53 速度検出手段
54 演算装置
541 出力電圧指令演算手段
542 オン時間演算手段
543 スイッチ条件部
55 パルス生成手段

Claims (4)

  1. 多相交流を電源とし、少なくとも1相は入力端子と出力端子とを直接接続し、他の各相は入力端子と出力端子との間に半導体スイッチを接続し、前記直接接続された相の入力端子と他の各相の出力端子との間にはそれぞれ半導体スイッチを接続し、負荷としての永久磁石形同期電動機をスイッチングパタンにより駆動する電力変換器を制御する駆動装置において、電源電圧を検出する電源電圧検出手段と、前記永久磁石形同期電動機への出力電流を検出する出力電流検出手段と、所望の条件で前記永久磁石形同期電動機を駆動するための出力電圧指令を演算する出力電圧指令演算手段と、前記出力電圧指令演算手段により演算された出力電圧指令と前記電源電圧検出手段により検出された電源電圧とに基づいて前記半導体スイッチのオン時間を演算するオン時間演算手段と、前記永久磁石形同期電動機への出力電圧が前記電源電圧による出力可能範囲外になった場合に、前記オン時間演算手段により演算されたオン時間によるスイッチングパタンに最も近く、かつ、前記出力可能範囲内となるスイッチングパタンを生成する生成手段とを備えたことを特徴とする永久磁石形同期電動機の駆動装置。
  2. 請求項1に記載の駆動装置において、前記出力電圧指令演算手段は、前記永久磁石形同期電動機の回路モデルに基づいて出力電流推定値を演算し、該演算された出力電流推定値と、前記出力電流検出手段により検出された出力電流検出値と、速度起電力とに基づいて出力電圧指令値を演算し、
    前記オン時間演算手段は、前記電源電圧検出手段により検出された電源電圧と、前記出力電圧指令演算手段により演算された出力電圧指令値とに基づいて前記オン時間を演算し、前記出力電圧が前記電源電圧による出力可能範囲外になったときに、前記出力電圧が前記出力可能範囲になるように前記オン時間を補正することを特徴とする永久磁石形同期電動機の駆動装置。
  3. 請求項1又は2に記載の駆動装置において、前記各相の半導体スイッチは双方向に個別に電流を制御できるスイッチであり、前記生成手段は、出力電流指令値の符号、又は出力電流検出値若しくは出力電流推定値の符号に応じて、前記半導体スイッチを個別にオン又はオフするためのスイッチングパタンを生成することを特徴とする永久磁石形同期電動機の駆動装置。
  4. 請求項1から3の何れか1項に記載の駆動装置において、出力電流指令値に、前記電源電圧と前記出力電圧指令値とに基づいて演算された制限値を設け、前記生成手段は、前記制限値以下に制限された出力電流指令値の符号が切り替わるまでに出力電流をゼロにするスイッチングパタンを生成することを特徴とする永久磁石形同期電動機の駆動装置。
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