JP5531981B2 - モータ - Google Patents
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Description
図30に従来のセンサレス制御のモータ構成の例を示す(特許文献1、2参照)。2Eは直流電圧源、451、452はU相電流Iuを通電するトランジスタ、453、454はV相電流Ivを通電するトランジスタ、455、456はW相電流Iwを通電するトランジスタである。457、458、459、45A、45B、45Cは前記の各トランジスタに逆並列に接続されたダイオードである。45DはモータのU相巻線、45EはV相巻線、45FはW相巻線である。45Nは前記3相の巻線をY結線するときの接続点であり、電位的には中性点である。
なお、本発明に関わるモータの例は、特許文献3に示されるモータである。これは2個のループ状巻線を備えるモータで、3相交流の不平衡な巻線のモータがある。
また、ロータが停止している場合、あるいは、低速で回転している場合には、各巻線の誘起電圧が小さく、ロータ回転位置θreの検出が難しい。従って、低速回転でのセンサレス制御には適さない面がある。なお、低速回転での位置検出が難しい場合、停止状態からセンサレス位置検出が可能となるある程度の中速の回転速度までは、3相電流を低速から徐々に中速の回転速度まで周波数を高めて、同期運転で始動させる方法が一般的に使用されている。
120°通電方式は、U、V、W相の3線の内の2線に通電して順次通電相を変えてモータを回転する方法である。この駆動方法における特有のセンサレス位置検出方法も使用されている。3線の内の1線には電流が通電されていないので通電しない相の高調波電圧が少ないことを利用して、前記の中性点45Nが零ボルトになる位相を検出する方法がある。このセンサレス位置検出方法は、簡素な構成であり、低コストなモータシステムとすることができる。
しかしこの方法は、巻線のインダクタンスが大きい場合、相電流の切り替え時に発生するいわゆるスパイク電圧の時間幅が広くなり、センサレス位置検出の時間的検出マージンが低下する問題がある。また、当然のことながら、150°通電方式、180°通電方式、正弦波通電方式などの駆動方式に適用することはできない。従って、低騒音化の限界などの問題がある。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、不平衡なV結線の巻線構成においてセンサレスで制御するモータを提供することにある。
請求項1に記載の発明は、3相の交流モータにおいて、モータの入力である端子あるいはリード線をX端子、Y端子、Z端子とし、前記X端子とY端子との間に配置したU相巻線WUと、前記Z端子とX端子との間に配置したW相巻線WWと、前記U相巻線WUのU相電圧Vuを検出する電圧検出手段DVutと、前記U相巻線WUに通電する電流Iyを検出する電流検出手段DIyと、前記W相巻線WWに通電する電流Izを検出する電流検出手段DIzと、前記U相巻線WUの誘起電圧成分Vurを計算する計算手段CVurと、前記計算手段CVurの出力Vurを基にロータの回転位置θreを検出する位置検出手段POSuとを備え、前記U相巻線WUの誘起電圧成分Vurを使用してロータの回転位置θreの情報を検出して制御するモータの構成である。
この構成によれば、3相モータの各巻線の内部インピーダンスが異なっていても、正確に各巻線の誘起電圧成分を検出することができ、センサレスで制御を行えるモータとすることができる。
この構成によれば、巻線の抵抗による電圧降下も計算するので、特に巻線抵抗による電圧降下の比率の大きい小型のモータにおいて、より正確なセンサレスで制御を行えるモータとすることができる。
この構成によれば、2相、あるいは、3相の誘起電圧成分を用いてセンサレスで制御を行えるので、精度の向上と応答性の向上を行えるモータとすることができる。
この構成によれば、請求項3において巻線の抵抗による電圧降下も計算するので、特に巻線抵抗による電圧降下の比率の大きい小型のモータにおいて、より正確なセンサレスで制御を行えるモータとすることができる。
この構成によれば、2相、あるいは、3相の誘起電圧成分を用いてセンサレスで制御を行えるので、精度の向上と応答性の向上を行えるモータとすることができる。
この構成によれば、電流検出に使用するシャント抵抗の機能をボンディングワイヤ等を使用して構成することができるので、小型化、低コスト化を行えるモータとすることができる。
この構成によれば、モータ巻線の電流通過により発生する電圧降下の温度変化を考慮することができるので、センサレス位置検出の検出精度を向上したモータとすることができる。
この構成によれば、3個の巻線をY結線とした3相交流モータにおいて、相電圧を検出してセンサレス位置検出を行えるモータとすることができる。
この構成によれば、3個の巻線をY結線とした3相交流モータにおいて、端子間電圧を検出してセンサレス位置検出を行えるモータとすることができる。
この構成によれば、各相の電圧、電流の通電角幅を145°以上の種々の値とすることにより、電圧、電流の波形をより正弦波に近づけ、高調波を低減でき、簡素なセンサレス位置検出において低騒音の運転を行えるモータとすることができる。
本発明で示す3相の不平衡な巻線を備えるモータの例は、特許文献3に示されるモータであり、2個のループ状巻線を備えている。但し、3相の不平衡な巻線を備えるモータのセンサレス制御は、今までにその様な不平衡な巻線のモータに関する試みがなかったため、発明者らの知る限り、公知技術がない。
そこで、本発明では、制御回路を含め、簡素で低コストなモータシステムを提案する。また、生活の場に近いところで使用される各種のファンなどの用途では静かさが重要であり、極めて静粛なモータ構成も提案する。
図2は前記永久磁石Q12の円周方向の表面形状を直線状に展開した図で、円周方向を紙面で水平方向として示し、機械的角度を付記している。Q21はN極永久磁石、Q22はS極永久磁石であり、8極のロータの例である。
図3は図1に示すロータの永久磁石に対向するU、V、W各相のステータ磁極の円周方向形状を直線状に展開した図である。U相ステータ磁極Q13、V相ステータ磁極Q14、W相ステータ磁極Q15は相互に機械角で30°の位相差、電気角で120°の位相差を持たせて配置している。
また、図5に示すように、各相のステータ磁極の形状を台形とひし形の組み合わせとすることもできる。Q41はU相ステータ磁極、Q42はV相ステータ磁極、Q43はW相ステータ磁極である。各相ステータ磁極形状の面積は同じであり、相対的な位相差は電気角で120°である。この場合、各ステータ磁極を通過する磁束のロータ回転角θreと共に変化する値は、図4の場合が矩形形状であるのに比較して、より正弦波形状に近くなり、トルクリップルが低減する効果がある。
図7は図1および図6に示した環状形状の各相巻線の円周方向形状を直線状に展開した図である。
ここで、図1に示した巻線Q16とQ17は、同一のスロットに平行に巻回した巻線であり、1個の環状巻線に統合することが可能である。具体的には、図7の負のU相巻線Q16と正のV相巻線Q17の巻線を、図8の巻線Q71へ等価に置き換えることができる。但し、巻線Q71へ通電する電流はU相巻線Q16とV相巻線Q17へ通電する電流を加算した値の電流を通電する必要がある。
同様に、図7の巻線Q18、Q19も図8の巻線Q72へ置き換えることが可能であり、簡素化できる。図8の巻線の場合、図1のモータは、巻線が2個の3相交流モータとなる。
以上示したように、図1および図8に示すようなモータは、巻線が環状形状の簡素な構成の巻線なので巻線の製作が容易で、巻線占積率の向上も期待できる。そして、従来のコイルエンドの有るモータに比較してロータ軸方向の長さを短縮でき小型化できる特徴がある。
Ix=Iu−Iw (1)
Iy=Iv−Iu (2)
Iz=Iw−Iv (3)
このように、図1に示したモータは、2個の巻線Q71、Q72でいわゆるV結線を構成することができる。3相の不平衡な2個の巻線ではあるが、原理的には3相交流モータを構成することができる。
特に、図1に示すモータが表面磁石形のロータである場合には、下記の電圧方程式となる。
Vu=Vur−Iy・R−Ls・(dIy/dt)
−Lm・(dIz/dt) (4)
Vw=Vwr+Iz・R+Ls・(dIz/dt)
+Lm・(dIy/dt) (5)
両相の誘起電圧成分Vur、Vwrを求めると次式となる。
Vur=Vu+Iy・R+Ls・(dIy/dt)
+Lm・(dIz/dt) (6)
Vwr=Vw−Iz・R−Ls・(dIz/dt)
−Lm・(dIy/dt) (7)
各制御変数の値Vu、Vw、Iy、Izを検出することにより、誘起電圧成分Vur、Vwrを求めることができる。そして、これらの誘起電圧成分よりロータの電気角での回転位置θreを求めることができる。
NB3はU相電圧Vuの検出手段で、その出力はU相電圧検出値Vusである。NB4はW相電圧Vwの検出手段で、その出力はW相電圧検出値Vwsである。NB5はY相電流Iyの検出手段で、その出力はY相電流検出値Iysである。NB6はZ相電流Izの検出手段で、その出力はZ相電流検出値Izsである。NB7は微分器で、Y相電流検出値Iysの微分値(dIy/dt)を得る。NB8は微分器で、Z相電流検出値Izsの微分値(dIz/dt)を得る。
NC9は制御対象のモータを示している。U相巻線Q71、W相巻線Q72、Y相電流検出用のシャント抵抗NB1、および、Z相電流検出用のシャント抵抗NB2は、図13と同じである。図13のその他の検出および演算を行っている部分がセンサレス位置検出手段NCBである。NCEは電流情報で、NCCはロータ回転位置θreなどの位置情報である。NCDは速度検出手段で、その出力ωreはロータの回転速度信号である。
ωrcは速度指令であり、加減算器NC1でロータ回転速度ωreとの差分を求め、電流制御手段NC3へ出力する。電圧制御手段NC5は、電流制御手段NC3の出力である電流振幅指令NC4と前記位置情報NCCを入力とし、U相電圧指令NC6およびW相電圧指令NC7を出力する。
NC8はパワートランジスタを含む電力変換器で、モータの電圧と電流を制御する。NC8の一つである前記電流情報NCEにより、モータの巻線へ過大な電流が流れた場合の電流制限を行い、パワートランジスタおよびモータ巻線の過電流保護を行っている。特に自動車の補機用小型モータの制御においては、バッテリー電源電圧が12ボルト近傍の低電圧なので、200ボルト系のモータ制御に比較して低電圧大電流モータとなり、過電流保護に対する制御法が異なることがある。
(VO−VC)={(V1−VC)−(V2−VC)}×RV2/RV1 (8)
=(V1−V2)×RV2/RV1 (9)
VO=(V1−V2)×RV2/RV1 (10)
この(10)式は加減算(V1−V2)と増幅(RV2/RV1)とを行う加減算増幅器である。従って、検出手段NB3、NB4、NB5、NB6等に使用することができる。また、図17の(a)は入力抵抗RR1を並列に付加することにより多入力とすることもできる。前記演算器NB9、NBAは4入力の加減算器なので、図17の(a)を応用して構成することができる。
図17の(b)は微分器であり、IN3は入力信号でその電位をV3とし、CC1はコンデンサでありその値をCV1とし、RR4は抵抗器でありその抵抗値をRV4とし、OUT2は出力電位VOとすると、それらの関係は次式となる。
(VO−VC)=−CV1×RV4×d(V3−VC)/dt (11)
さらに、コモン電位VCが零ボルトであれば、次式の微分器となる。
VO=−CV1×RV4×d(V3)/dt (12)
また、図13の各構成要素は、演算増幅器とデジタル論理回路で構成することもできる。あるいは、アナログ電圧信号をAD変換器でデジタル信号に変換して、デジタル論理回路で構成することができる。あるいは、アナログ電圧信号をAD変換器でデジタル信号に変換して、マイクロコンピュータを使用してそのソフトウェアで制御し構成することができる。このように、図13に示した各機能を具現化するハードウエアは種々のものを選択することができる。
STARTでモータ運転を開始し、421で「起動位置への位置決め」が完了しているかを判定し、「起動位置への位置決め」が完了していない場合は422の「起動位置への位置決め」を実行する。起動位置への位置決めは、例えば、各相の電流に特定電流を通電して、ロータが同期位置へ位置決めする動作である。
422の「起動位置への位置決め」が実行された後は、423の起動へ進む。421で「起動位置への位置決め」が完了している場合は、423の起動へ進む。
425では、所定回転数Nmin以上であって、前記の各相誘起電圧成分Vur、Vvr、Vwrによりロータの回転位置θreの検出が可能であるかどうかを判定する。ロータ回転位置検出ができていないか、あるいは、所定回転数Nmin以下の場合には、421へもどり、起動動作を継続する。所定回転数Nmin以上である場合には、426へ進む。
427では「回転終了」の判定を行う。「回転終了」でない場合は、421へ戻り、速度制御を継続する。「回転終了」の指令がある場合には、428へ進み、モータ各相の電流を遮断し、終了する。
図13およびその説明で、U相の誘起電圧VurとW相の誘起電圧Vwrとを検出し、ロータの回転位置情報を検出する方法を示した。エンコーダ等の位置検出器を使用しない、いわゆるセンサレス位置検出である。センサレス位置検出にも種々のニーズがあり、位置検出分解能を高く必要とする用途、センサレス位置検出の応答速度が重要である用途、コストが優先される用途、信頼性が要求される用途などである。ここで、ファンなどの回転速度制御においては、回転速度の増減は必要であるが急激な加減速を行う必要性が低く、そのような用途も多い。その様な場合、U相の誘起電圧Vurだけの、単相の電圧検出でも十分に速度制御が可能である。
また、高効率モータでは巻線抵抗を小さく設計するので、巻線抵抗Rは小さな値となり、センサレス位置検出の計算では無視することも可能である。その様な場合には、演算器NB9のU相の誘起電圧の計算において、巻線抵抗の電圧降下(Iy・R)の計算を省略することができる。
小型のモータで、例えば、モータ効率が50%から80%くらいのモータでは、巻線抵抗Rの電圧降下(Iy・R)が大きくなる。その場合には、巻線抵抗の電圧降下(Iy・R)を求めてU相の誘起電圧の計算を行うことにより、より正確なU相の誘起電圧Vurを検出することができる。そして、より正確なロータ回転位置を検出することができる。
センサレス位置検出の応答速度がある程度求められ、また、位置検出分解能もある程度求められる場合には、図13およびその説明で示した2相のセンサレス位置検出、あるいは、3相のセンサレス位置検出が適している。なお、U相の誘起電圧VurとW相の誘起電圧Vwrとを検出できれば、V相の誘起電圧は、Vvr=−Vur−Vwrとして求められるので3相の誘起電圧検出ができる。また、高効率モータでは巻線抵抗を小さく設計するので、巻線抵抗Rは小さな値となり、センサレス位置検出の計算では無視することも可能である。
なお、図14に示す各相誘起電圧成分Vur、Vvr、Vwrの値から、Puvwに示すように、電気角360°の範囲を電気角60°ごとの領域A1、A2、A3、A4、A5、A6に分けて領域検出を行うことができるが、さらに、高分解能な位置検出も可能である。良く知られているように、論理的、数学的には、Vur、Vvr、Vwrの値から、無限大の分解能の位置検出が可能である。実際には、電流や電圧の検出誤差、モータの不完全性、ノイズなどにより有限の分解能のセンサレス位置検出となる。
電流検出用のシャント抵抗として駆動回路用の集積素子LSIのボンディングワイヤあるいはリード端子の抵抗値を利用する方法を図19に示し、説明する。小型モータの駆動回路は高集積化が進んでおり、制御回路とパワートランジスタの全てが1個の半導体チップに集積することも増えている。その場合には、半導体素子からモータへ直接配線され、従来使用されているプリント基板も省略されることがある。このような使い方の場合には、電流検出用にシャント抵抗の大きさとその発熱量が問題となる。
図19において、NE5はMOSFETなどのモータ電流を制御するパワートランジスタを含む集積回路を示している。NE3は半導体のチップ、NE4はボンディングワイヤ、NE2は集積回路NE5の外部と電気的に接続するためのリード端子である。NE1は樹脂などのパッケージである。
シャント抵抗器として求められる特性として、放熱特性、抵抗値精度、抵抗値の温度変化特性がある。放熱特性に関しては、通常の抵抗値が十分小さく設計されているので、熱的には問題ない。逆に、検出電圧が小さい問題があるが、その近傍に差動増幅器を設けることにより解決できる。抵抗値精度については、そのバラツキを許容するか、抵抗値を個別に計測する方法もある。抵抗値の温度変化特性については、抵抗値の変化を計測するか、あるいは、近傍の温度を計測して温度補償を行うことも可能である。なお、ボンディングワイヤNE4の機能は電気的な接続であり、他の電気的接続体に置き換えることもできる。
モータ巻線の電流による電圧降下について考える。図13に示したように、前記の検出した電流値Iy、Izは、モータ巻線の電流による電圧降下(Iy・R)、(Iz・R)の計算に使用する。モータ巻線には、通常、銅線を使用するが、銅の温度係数は約0.4%/℃なので100℃の温度変化で抵抗値が40%変化することになる。特に、100W以下の小型モータでは巻線抵抗の電圧降下成分が大きく、図13の構成においてセンサレス位置検出の精度を上げるためには、モータ巻線の抵抗値の精度を向上する必要がある。 図20にモータ巻線の抵抗値を計測する例を示す。NL1はモータの巻線、NL2は電流検出用のシャント抵抗、Iaはモータ電流である。
このように、モータ巻線の電流による電圧降下(Iy・R)、(Iz・R)の正確に計算することができる。
他の温度影響を低減する方法として、モータを連続使用する場合においても、モータの抵抗値を計測することも可能である。例えば、モータが回転中の数msecの間、モータ電流Iaを零とする。そして、その短時間の間に電流Issを可変し、その間の巻線電圧を計測する。この時、Issの複数の電流値により、比較的緩やかな時間変化を示す誘起電圧成分を除去することができる。モータ電流Iaをごく短時間遮断しても、多くの用途では問題ない。
平衡した3相巻線を備える3相交流モータのセンサレス位置検出の構成例を図21に示す。3相巻線はY結線の例である。NBKは3相交流モータのU相巻線、NBLはV相巻線、NBMはW相巻線である。NBNはU相端子であってU相端子の電位をVuuとし、U相巻線NBKに印加する電圧はVuで、電流Iuが通電する。352はV相端子であってV相端子の電位をVvvとし、V相巻線NBLに印加する電圧はVvで、電流Ivが通電する。354はW相端子であってW相端子の電位をVwwとし、W相巻線NBMに印加する電圧はVwで、電流Iwが通電する。
図22は集中巻きの3相交流モータの縦断面図、図23は図22に示すモータの横断面図であり、4極のモータ例である。
図22の511はロータ出力軸、519はロータ表面の永久磁石、512はロータのバックヨークである。514はステータコア、515はステータ巻線のコイルエンド部である。516はモータケースで、513は軸受けである。
Vu=Vur+Iu・R+Ls・(dIu/dt)
−Lm・(dIv/dt)−Lm・(dIw/dt) (13)
Vv=Vvr+Iv・R+Ls・(dIv/dt)
−Lm・(dIu/dt)−Lm・(dIw/dt) (14)
Vw=Vwr+Iw・R+Ls・(dIw/dt)
−Lm・(dIu/dt)−Lm・(dIv/dt) (15)
ここで、各相巻線の抵抗値はR、各相巻線の自己インダクタンスはLs、各相巻線の相互インダクタンスはLm、U相巻線の誘起電圧成分はVur、V相巻線の誘起電圧成分はVvr、W相巻線の誘起電圧成分はVwrとする。なお、(13)、(14)、(15)式の各相互インダクタンスLmの各値は、一般的にはそれぞれが異なる値であるが、特に表面磁石形のロータである場合にはほぼ同一の値として扱うことができる。
Vuw=Vu−Vw (16)
Vvu=Vv−Vu (17)
Vwv=Vw−Vv (18)
また、3相モータの各相は、正弦波電圧および正弦波電流に限らず、下記式の関係となる。
Iu+Iv+Iw=0 (19)
Vuw+Vvu+Vwv=0 (20)
Vur=Vu−Iu・R−Ls・(dIu/dt)
+Lm・(dIv/dt)+Lm・(dIw/dt)
=Vu−Iu・R−(Ls+Lm)・(dIu/dt) (21)
Vvr=Vv−Iv・R−(Ls+Lm)・(dIv/dt) (22)
Vwr=Vw−Iw・R−(Ls+Lm)・(dIw/dt) (23)
図21のセンサレス位置検出では、(22)、(23)式に従い、V相巻線の誘起電圧成分Vvr、W相巻線の誘起電圧成分Vwrを求め、その後、U相巻線の誘起電圧成分Vurを下式により推定計算し、3相の誘起電圧成分よりロータ回転位置を検出している。 Vur+Vvr+Vwr=0 (24)
図21およびその説明で、V相の誘起電圧VvrとW相の誘起電圧Vwrとを検出し、ロータの回転位置情報を検出する方法を示した。エンコーダ等の位置検出器を使用しない、いわゆるセンサレス位置検出である。センサレス位置検出にも種々のニーズがあり、位置検出分解能を高く必要とする用途、センサレス位置検出の応答速度が重要である用途、コストが優先される用途、信頼性が要求される用途などである。
V相の誘起電圧Vvrだけを検出する場合は、図21の検出回路において、W相用のNB4とNB6とNB8とNBRが不要であり、NBBとNBCのW相部分を簡略化することができる。そして、小型化、低コスト化も可能となる。
また、高効率モータでは巻線抵抗を小さく設計するので、巻線抵抗Rは小さな値となり、センサレス位置検出の計算では無視することも可能である。その様な場合には、演算器NBQのU相の誘起電圧の計算において、巻線抵抗の電圧降下(Iv・R)の計算を省略することができる。
図26の場合は、Y結線の中性点NBPの電位を検出せずにロータ回転位置を検出する方法である。通常、モータとモータの制御回路とは分離して配置する場合が多く、モータの端子間電圧は制御回路側で容易に検出することができる。しかし、中性点NBPの電位を検出するためには、その検出のためにモータから制御装置までの配線を1本追加する必要があり、コスト的、物理的な増加となり負担である。この対応として、図26では、中性点NBPの電位を使用せず、Y結線の端子間電圧を検出してロータ回転位置を検出する方法を示す。
図25の各相の間の誘起電圧成分Vuwr、Vvur、Vwvrは次式となる。
Vuwr=Vur−Vwr (25)
Vvur=Vvr−Vur (26)
Vwvr=Vwr−Vvr (27)
3相の端子間電圧Vuw、Vvu、Vwvは、図24、図25の関係であり、(16)、(17)、(18)式へ(13)、(14)、(15)式を代入し、変形すると下式となる。
−Lm・(dIv/dt)−Lm・(dIw/dt)
−(Vwr+Iw・R+Ls・(dIw/dt)
−Lm・(dIu/dt)−Lm・(dIv/dt)
=Vur−Vwr+(Iu−Iw)・R
+(Ls+Lm)・(d(Iu−Iw)/dt) (28)
Vvu=Vvr−Vur+(Iv−Iu)・R
+(Ls+Lm)・(d(Iv−Iu)/dt) (29)
Vwv=Vwr−Vvr+(Iw−Iv)・R
+(Ls+Lm)・(d(Iw−Iv)/dt) (30)
Vuwr=Vuw−(Iu−Iw)・R
−(Ls+Lm)・(d(Iu−Iw)/dt) (31)
Vvur=Vvu−(Iv−Iu)・R
−(Ls+Lm)・(d(Iv−Iu)/dt) (32)
Vwvr=Vwv−(Iw−Iv)・R
−(Ls+Lm)・(d(Iw−Iv)/dt) (33)
Vur=(Vuwr−Vvur)/3 (34)
Vvr=(Vvur−Vwvr)/3 (35)
Vwr=(Vwvr−Vuwr)/3 (36)
なお、ここで、3相の誘起電圧はバランスしていると仮定して、下式とする。
Vur+Vvr+Vwr=0 (37)
Vuwr+Vvur+Vwvr=0 (38)
U相とW相との相関の誘起電圧成分Vuwrを検出して、ロータの回転位置θreを検出する方法である。(31)式に従い、図26の構成で誘起電圧成分Vuwrを求めることができる。
図26のNB3はW相巻線NBMの端子354に対するU相巻線NBKの端子NBNの443で示す端子間電圧Vuwを検出する電圧検出手段である。図26のNB5はV相の電流検出手段であり、シャント抵抗NB1の両端電位からV相電流Ivを検出する。NB6はW相の電流検出手段であり、シャント抵抗NB2の両端電位からW相電流Iwを検出する。
図26のNBQは演算器で、U相とW相との相関の誘起電圧成分Vuwrを求めるため、(31)式に従って演算する。すなわち、モータパラメータであるR、Ls、Lmとの比例計算と加減算を行う。その出力449はU相とW相との相関の誘起電圧成分Vuwrであり、高調波ノイズをフィルタNBBで除去し、コンパレータNBCで比較し論理信号NBDを得る。その論理信号NBDは図14のPuに対して、(U−W)の相なので、位相が電気角で30°進んでいる。
この時、(38)式の関係から、同時にW相とV相との相関の誘起電圧成分Vuwrについてもその論理信号NBFを求めることができ、図14のPwに対して、(W−V)の相なので、位相が電気角で30°進んでいる。
ここで、図1、図8、図10、図13に示したモータとその制御装置において、3相各相の電圧を電気角でほぼ150°幅の通電角で制御するシミュレーションの例を図27に示す。定常回転、定常負荷トルクの場合の例である。図27の電位Vx、Vy、Vzは、直流電圧源2Eの出力電圧が0ボルト、12ボルトとしたときのインバータ出力の電位である。図27のVuはQ71のU相巻線に印加する電圧Vu=(Vx−Vy)である。図27のVwはQ72のW相巻線に印加する電圧Vw=(Vz−Vx)である。各相の通電区間内では、パルス幅変調PWMを行い、制御している。
次に、図28は図27に類似しているが、3相各相の電圧を電気角でほぼ180°幅の通電角で制御するシミュレーションの例である。図28の電流Iy、Izの波形が図27とは、それらの高調波成分が異なることが視覚的に認識できる。どちらのモータ制御方法においても、3相の誘電圧成分Vur、Vvr、Vwrはほぼ正弦波状の電圧であり、正確に検出されることが解る。
ここで、図29は図27および図28と同様のシミュレーションであるが、印加する電位Vx、Vy、Vzがパルス幅変調PWMで正弦波状の電圧を与え、正弦波状の電流Iy、Izを通電する例である。各図を比較すると、各電圧波形、各電流波形が異なる。しかし、検出される3相の誘電圧成分Vur、Vvr、Vwrはほぼ正弦波状の電圧であり、正確に検出されることが解る。
なお、生活の場に近いところで使用される各種のファンなどの用途では極めて静粛であることを求められることも多い。一般的に、3相モータの電圧、電流を正弦波化することにより静粛化できることが知られている。本発明のセンサレス位置検出の方法は、モータの正弦波制御、あるいは、正弦波に近い制御においても適用が可能である。
また、図21および図26に示す、Y結線の3相モータのセンサレス位置検出方法においても、同様に各種のモータの電圧制御法、電流制御法において、各相の誘起電圧成分が正確に得られ、センサレス位置検出およびモータ制御を実現することができる。
また、特に、モータの各電圧は制御装置がパワートランジスタのオン、オフを決定しているので、制御装置の演算部に電圧情報を持っている。従って、モータ巻線の電圧計測は行わず、モータへの電圧指令情報を電圧検出器の代わりに、電圧検出手段として使用することができる。
パワートランジスタには、MOSFET、IGBT、SJFET、SiCなど種々の素子を使用することができる。インバータの形態についても種々変形が可能である。特に小型のモータで生産数量の多い用途では、制御回路と電力変換部とが一つのチップ上に製作される、いわゆる1チップ化も進んでいる。種々の素子、形態を使用することができる。また、モータの制御については、速度制御だけでなく、位置制御、トルク制御等も可能である。
従来のマイクロコンピュータを使用する、いわゆる回転子座標系のdq軸制御を基本としたセンサレス位置検出技術を用い、実際のモータ電流、電圧は固定座標系で制御する方法とは異なる手法である。回転子座標系のdq軸制御を使用する場合は、その演算等が必要であることからマイクロコンピュータを使用することが多く、コスト、温度使用環境などの点で制約が発生する。
センサレス位置検出の性能およびモータの制御性能についても十分な性能を確認している。その結果、自動車用、家電用、産業用などの各種用途に利用することができる。
Iy Y相電流
Iz Z相電流
Vu U相電圧
Vv V相電圧
Vw W相電圧
Q71 U相巻線
Q72 W相巻線
NB1 シャント抵抗
NB2 シャント抵抗
351 X端子
352 Y端子
354 Z端子
NB3 電圧検出手段
NB4 電圧検出手段
NB5 電流検出手段
NB6 電流検出手段
NB7 微分器
NB8 微分器
NB9 演算器
NBA 演算器
NBB フィルタ
NBC 比較器
NBH U相誘起電圧成分
NBJ W相誘起電圧成分
NBD U相論理信号
NBE V相論理信号
NBF W相論理信号
Claims (11)
- 3相の交流モータにおいて、モータの入力である端子あるいはリード線をX端子、Y端子、Z端子とし、
前記X端子とY端子との間に配置したU相巻線WUと、
前記Z端子とX端子との間に配置したW相巻線WWと、
前記U相巻線WUのU相電圧Vuを検出する電圧検出手段DVutと、
前記U相巻線WUに通電する電流Iyを検出する電流検出手段DIyと、
前記W相巻線WWに通電する電流Izを検出する電流検出手段DIzと、
前記U相巻線WUの誘起電圧成分Vurを計算する計算手段CVurと、
前記計算手段CVurの出力Vurを基にロータの回転位置θreを検出する位置検出手段POSuとを備え、
前記U相巻線WUの誘起電圧成分Vurを使用してロータの回転位置θreの情報を検出して制御することを特徴とするモータ。 - 請求項1に記載したモータにおいて
前記計算手段CVurは、U相巻線WUの抵抗値Ruも使用してU相巻線WUの誘起電圧成分Vurを計算し、制御することを特徴とするモータ。 - 3相の交流モータにおいて、モータの入力である端子あるいはリード線をX端子、Y端子、Z端子とし、
前記X端子とY端子との間に配置したU相巻線WUと、
前記Z端子とX端子との間に配置したW相巻線WWと、
前記U相巻線WUのU相電圧Vuを検出する電圧検出手段DVuと、
前記U相巻線WUに通電する電流Iyを検出する電流検出手段DIyと、
前記W相巻線WWのW相電圧Vwを検出する電圧検出手段DVwと、
前記W相巻線WWに通電する電流Izを検出する電流検出手段DIzと、
前記U相巻線WUの誘起電圧成分Vurを計算する計算手段CVurと、
前記W相巻線WWの誘起電圧成分Vwrを計算する計算手段CVwrと、
前記計算手段CVurの出力Vurを基にロータの回転位置θreを検出する位置検出手段POSuと、
前記計算手段CVwrの出力Vwrを基にロータの回転位置θreを検出する位置検出手段POSwとを備え、
前記U相巻線WUの誘起電圧成分Vurと前記W相巻線WWの誘起電圧成分Vwrとを使用してロータの回転位置θreの情報を検出して制御することを特徴とするモータ。 - 請求項3に記載したモータにおいて
前記計算手段CVurは、U相巻線WUの抵抗値Ruも使用してU相巻線WUの誘起電圧成分Vurを計算し、
前記計算手段CVwrは、W相巻線WWの抵抗値Rwも使用してW相巻線WWの誘起電圧成分Vwrを計算し、制御することを特徴とするモータ。 - 請求項3に記載したモータにおいて
U相巻線WUに関わる情報とZ相巻線WZに関わる情報からV相の誘起電圧成分Vvrを求め、この誘起電圧成分Vvrを使用してロータの回転位置θreの情報を検出して制御することを特徴とするモータ。 - 請求項1または3に記載したモータにおいて
MOSFETなどの電力素子を含む半導体素子のボンディングワイヤあるいはリード端子の抵抗値を利用してモータへ通電する電流成分を検出し、制御することを特徴とするモータ。 - 請求項1または3に記載したモータにおいて
モータ巻線WAAの温度を計測、あるいは、推測して求め、ある温度で抵抗値Raaのモータ巻線WAAへ電流Iaaを通電して発生する抵抗電圧降下成分VaaRを計算し、制御することを特徴とするモータ。 - U相巻線WUとV相巻線WVとW相巻線WWとをY結線し、
V相巻線WVのV相電圧Vvを検出する電圧検出手段DVvと、
V相巻線WVの電流Ivを検出する電流検出手段DIvと、
V相巻線WVの誘起電圧成分Vvrを計算する計算手段CVvr2と、
前記計算手段CVvr2の出力Vvrを基にロータの回転位置θreを検出する位置検出手段POSvとを備え、
前記V相巻線WVの誘起電圧成分Vvrを使用してロータの回転位置θreの情報を検出し、U相、V相、W相の電圧と電流を制御することを特徴とするモータ。 - U相巻線WUとV相巻線WVとW相巻線WWとをY結線し、
直列に接続したU相巻線WUとW相巻線WWとの両端の端子間電圧Vuwを検出する電圧検出手段DVuw2と、
V相巻線WVの電流Ivを検出する電流検出手段DIvと、
W相巻線WWの電流Iwを検出する電流検出手段DIwと、
U相巻線WUの誘起電圧成分VurとW相巻線WWの誘起電圧成分Vwrとの差Vuwrを計算する計算手段CVuwr2と、
前記計算手段CVuwr2の出力Vuwrを基にロータの回転位置θreを検出する位置検出手段POSuw2とを備え、
前記U相巻線WUとW相巻線WWとの誘起電圧成分Vuwrを使用してロータの回転位置θreの情報を検出し、U相、V相、W相の電圧と電流を制御することを特徴とするモータ。 - 請求項1、3、8、9のいずれか一つに記載したモータにおいて
各相の正の電流あるいは負の電流の通電幅が電気角で145°から180°の範囲であることを特徴とするモータ。 - 請求項1、3、8、9のいずれか一つに記載したモータにおいて
各相の電流の波形形状が、概略、正弦波電流制御であることを特徴とするモータ。
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