JPWO2016189580A1 - 吸引加圧鋳造方法 - Google Patents
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Abstract
溶湯2を蓄えた保持炉3と、中子4とともにキャビティ5を形成する金型6と、加圧用気体を供給する溶湯加圧手段7と、キャビティ5内を吸引排気する吸引排気手段8とを備えた鋳造装置1を用い、鋳造過程に応じて予め設定した設定減圧パターンと、実際の鋳造中に測定したキャビティ及び中子の測定圧力パターンとを比較して、双方の差分に基づいて補正減圧パターンを算出し、次回の鋳造時における設定減圧パターンを補正減圧パターンにより補正する吸引加圧鋳造方法とし、中子の水分量やバインダーによる硬化状態が異なる場合でも、湯周り不良やガス欠陥の発生を抑制する。
Description
本発明は、金型のキャビティに溶湯を加圧充填するとともにキャビティを吸引排気するようにした吸引加圧鋳造方法に関するものである。
溶湯の充填時にキャビティの吸引排気を行う鋳造方法としては、鋳物の部分減圧注湯方法の名称で引用文献1に記載されているものがある。引用文献1に記載の鋳造方法は、中子とともにキャビティを形成する鋳型を用い、キャビティに溶湯を流し込むと共に、排気ポンプによってキャビティを吸引排気するものである。引用文献1の鋳造方法では、溶湯を重力により充填するのであるが、例えば、低圧鋳造装置を用いて、キャビティに溶湯を加圧充填する際に同キャビティを吸引排気する吸引加圧鋳造方法も周知である。
また、吸引加圧鋳造方法において、キャビティの吸引排気の制御では、真空タンクと、真空タンクからキャビティに至る吸引排気経路を開閉する排気バルブとを用い、排気バルブの開度を調整する方法が採用されている。
ところで、上記の吸引加圧鋳造方法では、真空タンク及び排気バルブを用いて吸引排気の制御を行うことから、排気ポンプに比べれば応答性が高くなるものの、溶湯の充填時間が短い場合、排気バルブの動作に遅れが生じ、キャビティ内の圧力に基づいて排気バルブの開度をリアルタイムでフィードバック制御することが難しい。そこで、一連の鋳造工程に応じて予め設定した設定減圧パターン(排気バルブの開度パターン)を用い、この設定減圧パターンに従って排気バルブの開度を制御していた。
しかしながら、中子を使用する鋳造では、中子に含まれる水分量やバインダーによる硬化状態(バインダーの焼成状態や重合状態)などが異なり、中子の製造ロットや保管状態によっても、水分量や硬化状態が異なるものとなる。このため、従来の吸引加圧鋳造方法では、鋳造時に中子から発生するガス量が変化して、設定減圧パターンと、実際に発生したガス量を含めて吸引排気するのに必要な理想的な減圧パターンとの間に差が生じ、その差によって湯周り不良やガス欠陥が発生するおそれがあることから、このような問題点を解決することが課題であった。
本発明は、上記従来の課題に着目して成されたもので、中子を使用する吸引加圧鋳造方法において、鋳造時にキャビティ及び中子の圧力を測定し、その測定結果に基づいて次回の鋳造における設定減圧パターンを補正することにより、中子の水分量や硬化状態が異なる場合でも、湯周り不良やガス欠陥の発生を抑制することができる吸引加圧鋳造方法を提供することを目的としている。
本発明に係わる吸引加圧鋳造方法は、溶湯を蓄えた保持炉と、中子とともにキャビティを形成する金型と、保持炉内に加圧用気体を供給するための溶湯加圧手段と、キャビティ内を吸引排気するための吸引排気手段とを備えた鋳造装置を用い、金型のキャビティに溶湯を加圧充填するとともにキャビティを吸引排気する。
この際、吸引加圧鋳造方法は、鋳造過程に応じて予め設定した吸引排気手段の設定減圧パターンと、実際の鋳造中に測定したキャビティ及び中子の測定圧力パターンとを比較して、双方の差分に基づいて吸引排気手段の補正減圧パターンを算出し、次回の鋳造時における設定減圧パターンを補正減圧パターンにより補正する構成としており、上記構成をもって従来の課題を解決するための手段としている。
本発明に係わる吸引加圧鋳造方法は、上記構成を採用したことにより、中子の水分量やバインダーによる硬化状態が異なる場合でも、設定減圧パターンと、実際に発生したガス量を含めて吸引排気するのに必要な理想的な減圧パターンとの間に差が小さくなり、湯周り不良やガス欠陥の発生を抑制することができる。
図1に示す吸引加圧鋳造装置1は、本発明に係わる吸引加圧鋳造方法が適用可能な装置であって、低圧鋳造装置を基本構成として、キャビティに溶湯を充填するための手段、キャビティを排気するための手段、これらの手段の制御系を備えたものである。
すなわち、吸引加圧鋳造装置1は、溶湯2を蓄えた保持炉3と、中子4とともにキャビティ5を形成する金型6と、保持炉3内に加圧用気体を供給するための溶湯加圧手段7と、キャビティ5内を吸引排気するための吸引排気手段8とを備えている。
また、吸引加圧鋳造装置1は、金型6及び保持炉3を上下に配置するための基盤9と、保持炉3からキャビティ5に至る溶湯2の上昇経路であるストーク10と、基盤9上で金型6を気密的に包囲する減圧用筐体11を備えている。
保持炉3は、上側の開放部3Aにおいてストーク10の上部を保持しており、溶湯2を加熱するためのヒーター(図示せず)などを備えている。ストーク10は、上部に湯溜まりを有すると共に、下端部が保持炉3の溶湯2に浸漬した状態になっている。減圧用筐体11は、図示を省略した複数のハウジングで形成され、金型6と同様に開閉可能である。
金型(成形型・鋳型)6は、基盤9に固定した下型6Lと、下型6Lに対向して昇降可能な上型6Uと、下型6Lと上型6Uの間に配置した進退可能な中型6Mとを備え、中子4とともに鋳造空間としてのキャビティ5を形成する。下型6Lは、ストーク10の上側に連通する湯口12を備えている。
中子4は、中子砂とバインダーとの混合物を用い、この混合物を成形型により所定形状に成形して硬化させたものであって、有機バインダーを用いたもの(以下、『シェル中子』とする。)と、無機バインダーを用いたもの(以下、『無機中子』とする。)とがある。また、図示例の中子4は、両側に巾木4Aを有しており、金型6内においては、下型6Lと中型6Mとの間に巾木4Aを挟んだ状態にして位置決めされている。
溶湯加圧手段7は、加圧用気体を充填した加圧ガスタンク7Aと、加圧ガスタンク7Aから保持炉3に至る給気配管7Bと、給気配管7Bの途中を開閉する給気バルブV1とを備えている。加圧用気体は、一例として空気である。また、保持炉3には、センサー用配管7Cを通して保持炉3内の圧力を検出する保持炉圧力センサーS1が設けてある。
吸引排気手段8は、真空タンク8Aと、真空タンク8A内を吸引排気する真空ポンプ8Bと、真空タンク8A内の圧力を検出するタンク圧力センサーS2とを備えている。さらに、吸引排気手段8は、真空タンク8Aから金型6のキャビティ5に至る第1排気配管8Cと、真空タンク8Aから金型6内における中子4の巾木4Aの部分に至る第2排気配管8Dと、真空タンク8Aから減圧用筐体11に至る第3排気配管8Eとを備えている。第1〜第3の排気配管8C〜8Eには、その途中を開閉する第1〜3の排気バルブV2〜V4が夫々設けてある。
また、吸引排気手段8は、センサー用配管8Fを通してキャビティ5内の圧力を検出するキャビティ圧力センサーS3と、別のセンサー用配管8Gを通して中子4の巾木4Aの部分の圧力を検出する中子圧力センサーS4と、さらに別のセンサー用配管8Hを通して減圧用筐体11内の圧力を検出する減圧用筐体圧力センサーS5とを備えている。さらに、各センサー用配管8F〜8Gには、夫々の圧力センサーS3〜S5に加えて、圧力計M1〜M3が設けてある。
さらに、吸引加圧鋳造装置1は、コンピュータで構成される主制御装置13と、各種データ類を表示する表示手段としてのモニター14を備えている。主制御装置13は、各圧力センサーS1〜S5からの検出信号を入力すると共に、真空ポンプ8B、給気バルブV1、及び第1〜3の排気バルブV2〜V4に駆動用の指令信号を出力する。
この主制御装置13は、上記の吸引加圧鋳造装置1を用いて本発明に係わる吸引加圧鋳造方法を実行するものであり、一連の鋳造工程に応じて予め設定した吸引排気手段8の設定減圧パターンが入力されている。この設定減圧パターンは、実験的に求めることが可能であり、その具体例は後述する。
ここで、図1に示す吸引加圧鋳造装置1における中子4では、含有する水分量やバインダーによる硬化状態(焼成状態や重合状態)などが異なり、製造ロットや保管状態によっても水分量や硬化状態が異なる。このため、鋳造時に溶湯2が中子4に接触した際、中子4から発生するガス量が変化し、設定減圧パターンとの差により、湯周り不良やガス欠陥が発生するおそれがある。
図2及び図3には、保持炉3の圧力変化に伴う中子4の圧力変化を示す。図2には、中子4が前述のシェル中子である場合の圧力変化を示し、図3には、中子4が前述の無機中子である場合の圧力変化を示す。保持炉3の圧力は、直接的には加圧用気体の供給圧力であるが、間接的には溶湯2の充填圧力やキャビティ5内の溶湯圧力を示す。
これに対して、主制御装置13は、吸引加圧鋳造方法を実行する機能として、設定減圧パターンと、実際の鋳造中に測定したキャビティ5及び中子4の測定圧力パターンとを比較して、双方の差分に基づいて吸引排気手段8の補正減圧パターンを算出し、次回の鋳造時における設定減圧パターンを補正減圧パターンにより補正する機能を有している。
すなわち、吸引加圧鋳造方法は、図3(A)に示すように、ステップST1において鋳造を開始すると、ステップST2において設定減圧パターンを設定し、ステップST3において設定減圧パターンに従って鋳造を行う。
具体的には、溶湯加圧手段7により、保持炉3内に加圧用気体(空気)を加圧供給することで、溶湯2をストーク10に通して金型6のキャビティ5に充填すると共に、吸引排気手段8により、各排気バルブV2〜V4を動作させて、キャビティ5内及び減圧用筐体11内を吸引排気する。この際、設定減圧パターンは、排気バルブV2〜V4の開度を制御するパターンであり、図3(B)には、キャビティ5を吸引排気する第1排気バルブV2の開度パターンを代表的に示している。
また、ステップST3における鋳造時には、キャビティ圧力センサーS3、中子圧力センサーS4、及び減圧用筐体センサーS5の測定値に基づいて、測定圧力パターンを算出する。その後、ステップST4において、設定減圧パターンと測定圧力パターンとの差より補正すべき吸引排気量を算出し、真空タンク8Aの容量や内部圧力により、排気バルブV2〜V4の必要な開度を算出する。これにより、ステップST5において補正減圧パターンを算出する。この際、補正減圧パターンは、先の設定減圧パターンと同様に、排気バルブV2〜V4の開度を制御するパターンである。
そして、吸引加圧鋳造方法は、ステップST6において初期の設定減圧パターンを補正減圧パターンで補正(更新)し、ステップST7において次の鋳造サイクルに移行する。これにより、次回からの鋳造はステップST8における前サイクルから開始され、また、ステップST2の設定減圧パターンはステップST6で更新されたものとなり、以下、同様の工程を繰り返し行うこととなる。
このように、上記の吸引加圧鋳造方法では、設定減圧パターンと、測定圧力パターンとを比較して、双方の差分に基づいて補正減圧パターンを算出し、次回の鋳造時における設定減圧パターンを補正減圧パターンにより補正することから、中子4の水分量やバインダーによる硬化状態が異なる場合でも、設定減圧パターン(排気バルブの開度パターン)と、実際に発生したガス量を含めて吸引排気するのに必要な理想的な減圧パターンとの差を小さくして、湯周り不良やガス欠陥の発生を抑制することができる。
なお、上記吸引加圧鋳造方法で鋳造品を連続的に大量生産する場合、中子4も同様に連続的に生産される。このため、中子4は、個々の水分量や硬化状態が著しく異なる可能性は低く、連続的に生産されたものでは水分量や硬化状態の差が比較的小さく、製造ロットや保管状態が異なるものでは水分量や硬化状態の差が比較的大きくなる。したがって、吸引加圧鋳造方法では、各中子4の状態が著しく異なる訳ではないから、算出した補正減圧パターンを次回の鋳造に反映させことで、パターンの誤差を小さくして湯周り不良やガス欠陥の発生を抑制し得る。
また、吸引加圧鋳造方法では、より好ましい実施形態として、図4(B)に示すように、キャビティ5及び中子4の測定圧力パターンが、溶湯2の充填開始から充填完了までの第1時間帯と、溶湯2の充填完了から中子4の周囲に溶湯2の凝固膜が形成されるまでの第2時間帯と、中子4の周囲に溶湯2の凝固膜から形成されてからキャビティ5の吸引排気を停止するまでの第3時間帯とを含むものとする。そして、吸引加圧鋳造方法では、設定減圧パターンと測定圧力パターンとの差分に基づいて吸引排気手段8の補正減圧パターンを算出すると共に、どの時間帯の測定圧力が設定減圧パターンから外れているかをモニター(表示手段)14により表示する。
上記の第1〜第3の時間帯において、溶湯2の充填開始から充填完了までの第1時間帯は、主に中子4の水分量に影響を受ける時間帯である。また、溶湯2の充填完了から中子4の周囲に溶湯2の凝固膜が形成されるまでの第2時間帯は、主に、中子4のバインダーによる硬化状態(焼成度や重合度)の影響を受ける時間帯である。さらに、中子4の周囲に溶湯2の凝固膜から形成されてからキャビティ5の吸引排気を停止するまでの第3時間帯は、金型6のシール劣化によるリークの影響を受ける時間帯である。
さらに、吸引加圧鋳造方法では、より好ましい実施形態として、一連の鋳造過程に応じて予め設定した溶湯加圧手段7の設定加圧パターンを用い、上記の第2時間帯において、溶湯加圧手段7の設定加圧パターンから求めた中子4の周囲の溶湯圧力よりも、中子4の測定圧力が高くなった場合に、鋳造品に異常が生じていると判断する。この異常の判断結果もモニター14に表示することができる。
そしてさらに、吸引加圧鋳造方法では、より好ましい実施形態として、一連の鋳造過程に応じて予め設定した溶湯加圧手段7の設定加圧パターンを用い、上記の第2時間帯において、溶湯加圧手段7の設定加圧パターンから求めた中子4の周囲の溶湯圧力と、中子4の測定圧力との差が所定値以下となるように補正減圧パターンを算出する。
ここで、図2及び図3において、中子4の周囲の溶湯圧力は、キャビティ5への溶湯2の充填完了まで(第1時間帯)はキャビティ5内の圧力とほぼ同等である。また、中子4の周囲の溶湯圧力は、溶湯2の充填後(第2時間帯)は、保持炉3内の圧力から、保持炉3内の湯面から中子4の中心に至る高さに相当する溶湯圧力を差し引いた圧力である。
溶湯2の充填前において、キャビティ5に噴出する中子4からのガスは、主として中子4に含まれる水分が蒸発したもので、鋳造品に取り込まれてガス欠陥になることは少ないが、キャビティ5及び減圧用筐体11内の吸引排気すべき気体量を変化させる。このため、中子4に含まれる水分量が多い場合は吸引減圧手段8による吸引量を高くし、水分量が少ない場合は吸引量を低く設定しないと、所期の設定減圧パターンを維持できず、薄肉部等に充填不良を生じる可能性が高くなる。
また、図2に示すようにシェル中子を用いた場合、溶湯2をキャビティ5に充填した後に中子4から発生するガスは、主にバインダーが熱変性することにより生じたもので、中子4のバインダー添加量の変動や焼成度により変動する。中子4の周囲に凝固膜が形成されるまで(第2時間帯)は、中子4の周囲の溶湯圧力よりも中子4内のガス圧力が高くなると、溶湯2内にガスが噴出し、そのガスが鋳造品に取り込まれてガス欠陥となる。中子4内のガスは、巾木4A等を介して吸引排気手段8に導かれている。
したがって、吸引排気手段8の圧力をモニターし、その圧力が所期の設定圧力よりも高い場合は、中子4からのガス発生量が吸引量に対して多く、中子4から溶湯2内にガスが噴出してガス欠陥を生じている可能性が高い。
さらに、吸引排気手段8の圧力をモニターし、その圧力が所期の設定圧力よりも低い場合は、吸引量より中子4からのガス発生量が少ない場合であり、中子4の周囲の溶湯圧力に対して低くなると、中子4の砂間に溶湯2が侵入する差し込みが生じて、焼き付き不良になる。
さらに、中子4の周囲の溶湯2が凝固膜を形成した後(第3時間帯)の減圧用筐体11やキャビティ5の圧力は、減圧用筐体11のシールからのリーク量によって変動する。この第3時間帯で、吸引排気手段8の圧力をモニターし、その圧力が所期の設定圧力まで下がらない場合は、リークが増大している可能性が高い。
このような状況に対して、吸引加圧鋳造方法では、先述したように、吸引排気手段8の補正減圧パターンを算出すると共に、第1〜第3の時間帯のうちのどの時間帯の測定圧力が設定減圧パターンから外れているかをモニター14で表示する。これにより、吸引加圧鋳造方法では、中子4の水分量やバインダーによる硬化状態(焼成度や重合度)、若しくはシール劣化によるガスリーク等の状況を速やかに把握して、例えばオペレータに異常を速やかに知らせることができ、吸引排気手段8のより正確な制御を実現すると共に、設備保全の早期対処などを図ることができる。
また、吸引加圧鋳造方法では、先述したように、溶湯加圧手段7の設定加圧パターンを用い、第2時間帯において、溶湯加圧手段7の設定加圧パターンから求めた中子4の周囲の溶湯圧力よりも、中子4の測定圧力が高くなった場合、鋳造品に異常が生じていると判断する。つまり、吸引加圧鋳造方法では、中子4の周囲の溶湯圧力よりも中子4の測定圧力が高くなった場合には、ガス欠陥を生じている可能性が非常に高いので、それを異常処理することで、不良品の流出を防止できる。
さらに、吸引加圧鋳造方法では、先述したように、溶湯加圧手段7の設定加圧パターンを用い、第2時間帯において、設定加圧パターンから求めた中子4の周囲の溶湯圧力と、中子4の測定圧力との差が所定値以下となるように補正減圧パターンを算出する。これにより、吸引加圧鋳造方法では、過剰な圧力を加えることが未然に阻止され、溶湯2が中子砂間に浸透(差し込み)することがなく、焼き付き不良の発生を防ぐことができる。
図5〜図7は、吸引排気手段8の設定減圧パターン(排気バルブの開度パターン)を設定するために行われる実験装置を説明する図である。
図5(A)に示す実験装置E1は、基準となる中子の内圧を求めるための装置であり、中心に測圧用パイプ21を設けた中子4を、巾木4Aを保持する形で真空チャンバー22に収容し、真空チャンバー22内を減圧して、真空チャンバー22内の圧力P1−1、中子4の巾木4Aの圧力P1−2、及び中子4の中心の圧力P2を求める。
その結果は、図5(B)に示すように、真空チャンバー22の圧力P1−1及び中子4の巾木4Aの圧力P1−2にあっては、吸引排気とともに圧力値が低下して、一定の圧力を維持する。また、中子4の中心圧力P2にあっては、次第に減少してキャビティ5の圧力に達する。
図6に示す実験装置E2は、溶湯2により加圧された際の中子4の内圧を求めるための装置であり、中心に測圧用パイプを設けた中子4を、巾木4Aを保持する形にして、ヘッド圧がかかるように容器23内の溶湯2に浸漬し、この際、巾木4Aは中空体24により保持して大気圧相当に晒し、中子4の中心圧力P3及び巾木4Aの圧力P1−2を測定する。
図6(B)は、中子4がシェル中子である場合(図2参照)の圧力変化であって、水蒸気の発生によるピークを経た後、バインダーの熱変性で発生したガスによるピークを有し、その後に減少する。図6(C)は、中子4が無機中子である場合(図3参照)の圧力変化であって、水蒸気の発生によるピークを経た後に減少する。対マシンでは、中子4に溶湯2が触れるタイミングから使用する。
図7に示す実験装置E3は、溶湯2の差し込みが発生する圧力を求めるための装置であり、真空ボックス25の底面に中子材料26が露出するように設置し、真空ボックス25内の圧力を変化させて、図中仮想線で示すように、容器27内の溶湯2に中子材料26を接触させる実験を行い、中子材料26の表面に差し込みが生じない圧力P4を測定する。その結果は、図7(B)に示すように、急激に低下した後に緩やかに減少する。
設定減圧パターンや設定加圧パターンに用いる中子4の中心圧力は、上記の中心圧力P2と溶湯圧力P3の和を用いる。また、中子4の中心圧力には、巾木4Aの圧力から推定される補正分を加味してもよい。
中子4の周囲の溶湯圧力は、溶湯2の充填中はキャビテイ5の圧力とし、溶湯2の充填完了時点で、保持炉3の圧力から、保持炉3内の湯面からゲートに至る高さと、中子中心から鋳造品上面までの高さを加えた溶湯高さ分の圧力を差し引いたものとする。
焼き付き限界圧は、中心圧力P2と溶湯圧力P3の和から、差し込みが生じない圧力P4を引いた圧力を用いる。若しくは、保持炉3の圧力から、保持炉3内の湯面からゲートに至る高さと、中子中心から鋳造品上面までの高さを加えた溶湯高さ分の圧力を差し引いたものと、差し込みが生じない圧力P4との差でも良い。
そして、溶湯充填完了の直前(例えば数秒前)から溶湯充填完後(例えば数秒後)において、中子4の表面から所定厚さの凝固膜が形成されるまでの間、中子4の周囲の溶湯圧力が、中子4の中心圧力を上回り、且つ焼き付き限界圧を下回るように、保持炉3の圧力をコントロールする。
このような考え方で、吸引排気手段8の設定減圧パターン(排気バルブの開度パターン)を作成する。バルブ制御は、フィードバック制御ではなく、パターン制御とする。また、鋳造のサイクル中は、キャビティ5の圧力や巾木4Aの圧力をモニターし、設定減圧パターンとのずれ量を評価する。
そして、上記の評価値を使用して、次の鋳造サイクルの設定減圧パターンを補正(更新)する。また、実測値と設定減圧パターンとのずれ量評価法として、中子浸漬直後の区間、バインダーの変性時間帯、及び中子ガス安定の区間に注目し、パターン制御の際には、同一系統に、複数のバルブを設け、それぞれに優先順位等をつけて制御の応答速度の改善が図れる様にすることがより好ましい。
本発明に係わる吸引加圧鋳造方法は、その具体的構成が上記各実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の細部を適宜変更することが可能である。
1 吸引加圧鋳造装置
2 溶湯
3 保持炉
4 中子
5 キャビティ
6 金型
7 溶湯加圧手段
8 吸引排気手段
8A 真空タンク
V2〜V4 排気バルブ
2 溶湯
3 保持炉
4 中子
5 キャビティ
6 金型
7 溶湯加圧手段
8 吸引排気手段
8A 真空タンク
V2〜V4 排気バルブ
Claims (5)
- 溶湯を蓄えた保持炉と、中子とともにキャビティを形成する金型と、保持炉内に加圧用気体を供給するための溶湯加圧手段と、キャビティ内を吸引排気するための吸引排気手段とを備えた鋳造装置を用い、金型のキャビティに溶湯を加圧充填するとともにキャビティを吸引排気する吸引加圧鋳造を行うに際し、
鋳造過程に応じて予め設定した吸引排気手段の設定減圧パターンと、実際の鋳造中に測定したキャビティ及び中子の測定圧力パターンとを比較して、双方の差分に基づいて吸引排気手段の補正減圧パターンを算出し、
次回の鋳造時における設定減圧パターンを補正減圧パターンにより補正することを特徴とする吸引加圧鋳造方法。 - キャビティ及び中子の測定圧力パターンが、溶湯の充填開始から充填完了までの第1時間帯と、溶湯の充填完了から中子の周囲に溶湯の凝固膜が形成されるまでの第2時間帯と、中子の周囲に溶湯の凝固膜から形成されてからキャビティの吸引排気を停止するまでの第3時間帯とを含み、
設定減圧パターンと測定圧力パターンとの差分に基づいて吸引排気手段の補正減圧パターンを算出すると共に、どの時間帯の測定圧力が設定減圧パターンから外れているかを表示手段により表示することを特徴とする請求項1に記載の吸引加圧鋳造方法。 - 鋳造過程に応じて予め設定した溶湯加圧手段の設定加圧パターンを用い、
溶湯の充填完了から中子の周囲に溶湯の凝固膜が形成されるまでの第2時間帯において、
溶湯加圧手段の設定加圧パターンから求めた中子の周囲の溶湯圧力よりも、中子の測定圧力が高くなった場合に、鋳造品に異常が生じていると判断することを特徴とする請求項2に記載の吸引加圧鋳造方法。 - 鋳造過程に応じて予め設定した溶湯加圧手段の設定加圧パターンを用い、
溶湯の充填完了から中子の周囲に溶湯の凝固膜が形成されるまでの第2時間帯において、
溶湯加圧手段の設定加圧パターンから求めた中子の周囲の溶湯圧力と、中子の測定圧力との差が所定値以下となるように補正減圧パターンを算出することを特徴とする請求項2に記載の吸引加圧鋳造方法。 - 吸引排気手段が、真空タンクと、真空タンクからキャビティに至る吸引排気経路を開閉する排気バルブとを備えており、
設定減圧パターン及び補正減圧パターンが、排気バルブの開度を制御するパターンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の吸引加圧鋳造方法。
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