以下、本発明の一実施形態および各種変形例を図面に基づいて説明する。なお、図面においては同様な構成および機能を有する部分については同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。また、図面は模式的に示されたものであり、各図における各種構造のサイズおよび位置関係等は適宜変更され得る。
<(1)一実施形態>
<(1−1)一実施形態の概要>
例えば、異なる分光測色装置の間では、測色の対象物(測色対象物とも言う)が同一であっても、光学系の違いおよび波長の校正法の違い等に応じて、分光反射率の測定値が相違し得る。このため、例えば、同一製品等と言った同様な測色対象物の測定に、異なる分光測色装置が並行して使用されれば、分光測色装置毎に得られる分光反射率および該分光反射率から算出される色彩値が相違する場合がある。この場合、測色対象物の色を適切に管理することが難しい。
このような問題に対しては、一実施形態に係る第1分光測色装置1m(図1参照)において、該第1分光測色装置1mを用いた測定で取得される分光反射率(第1分光反射率とも言う)が、第1分光測色装置1mとは異なる第2分光測色装置1t(図2参照)を用いた測定で取得され得る分光反射率(第2分光反射率とも言う)に変換されれば良い。このとき、第2分光測色装置1tは、第1分光測色装置1mで得られた第1分光反射率の変換先としての他の分光測色装置(変換先分光測色装置とも言う)である。なお、本実施形態では、例えば、第1分光測色装置1mと第2分光測色装置1tとが、機種が異なる装置であっても良いし、同一機種の異なる装置であっても良い。
但し、従来の上記式(1)を用いて第1分光反射率を第2分光反射率に変換するルール(変換ルールとも言う)を設定するためには、多数の校正用の試料の準備を要し、該多数の校正用の試料を用いた測定に長時間を要する。更に、校正用の試料の選択の仕方に依る変換の精度(ロバスト性)を確保することは容易でない。このため、変換ルールの設定には、煩雑な作業や操作を要し、該変換ルールを精度良く設定することは容易でなかった。
そこで、本実施形態では、第1分光反射率と第2分光反射率との間におけるずれが、反射率の直線性に係るずれ(適宜、直線性に係るずれと略称する)と、分光感度に係るずれと、に分けて扱われて、変換ルールが設定される。これにより、少数の校正用の試料を用いて、変換ルールを設定することが可能となる。すなわち、異なる分光測色装置の間における測定値の高精度な変換ルールが容易に設定され得る。
ここで、直線性に係るずれは、例えば、各波長について測色対象物上で実際に生じる反射光の強度と測定される反射光の強度との関係が装置間で異なることに因って生じる分光反射率の反射率の方向におけるずれ(第1のずれとも言う)である。つまり、直線性に係るずれは、第1分光反射率と第2分光反射率との間における各波長についての反射率に係るずれの成分(ずれ成分とも言う)としての反射率の差(反射率差とも言う)に相当する。また、分光感度に係るずれは、例えば、分光感度の校正において装置間で異なる波長の校正法に因って生じる誤差(校正誤差とも言う)としての分光反射率の波長の方向におけるずれ(第2のずれとも言う)である。
<(1−2)分光測色装置の概略的な構成>
図1は、一実施形態に係る第1分光測色装置1mの一構成例を模式的に示す図である。図2は、第2分光測色装置1tの一構成例を模式的に示す図である。ここでは、国際照明委員会(CIE)が推奨する45/0(45°照明、垂直受光)の構成が採用されている例を挙げて説明する。なお、例えば、CIEが推奨する0/45(垂直照明、45°受光)の構成が採用されても良い。
第1分光測色装置1mおよび第2分光測色装置1tは、例えば、ともに筐体2ならびに該筐体2内に格納された光源11、発光回路12、受光部13、制御部14、記憶部15および入出力部16を備えている。
筐体2は、開口部2oを有している。ここでは、第2分光測色装置1tには、開口部2oを介した筐体内2への物体(塵や埃等)の侵入を防ぐための透明な部材(透明部材とも言う)17tが設けられているのに対して、第1分光測色装置1mには、透明部材が設けられていない例が採用されている。透明部材17tは、例えば、凸レンズまたは板の形状を有しており、透明部材17tの素材としては、例えば、無色透明のガラスまたはアクリル等が採用され得る。開口部2oは、光源11から発せられる光(照明光とも言う)を筐体2の外部に向けて通過させることで、筐体2の外部のうちの開口部2oの近傍に配置された測色対象物100に該照明光を照射させる。また、開口部2oは、光源11から発せられる照明光の測色対象物100に対する照射に応じて測色対象物100の表面で生じる反射光を、筐体2の内部に向けて通過させる。
光源11は、例えば、白色光を発する。白色光を発する光源11としては、例えば、キセノン(Xe)フラッシュランプ等のランプが採用され得る。
発光回路12は、制御部14の制御に応じて光源11を発光させる回路である。
受光部13は、光源11から発せられる照明光の測色対象物100に対する照射に応じて該測色対象物100の表面で生じる反射光を分光して、該反射光の強度に係る分光スペクトルを測定する。図3は、受光部13の一構成例を模式的に示す図である。図3で示されるように、受光部13は、例えば、スリット板131、分光部132およびセンサー部133を有する。
スリット板131は、測色対象物100からの反射光の一部の光(入射光とも言う)L0を受光部13内に入射させるスリット状の開口部(スリット部とも言う)131sを有する板状の部材である。
分光部132は、スリット部131sから入射された入射光L0を波長に応じて分光する部材であり、例えば、回折格子等を有して構成される。なお、図3では、分光部132で入射光L0が分光されることで得られる複数の波長の光のうち、赤色の光(赤色光とも言う)Lr1の光束の外縁が実線の矢印によって描かれており、青色の光(青色光とも言う)Lb1の光束の外縁が一点鎖線の矢印によって描かれている。
センサー部133は、分光部132で分光された光の強度を波長毎に測定する部分であり、例えば、複数の受光素子が一列に配されたラインセンサー(リニアアレイセンサーとも言う)等を有して構成される。
このような構成を有する受光部13では、スリット部131sから入射された入射光L0が、分光部132で分光された後にセンサー部133に照射されることで、該センサー部133によって入射光L0における波長毎の光の強度が測定される。
制御部14は、各種情報処理を行う電気回路であり、主にプロセッサーP0およびメモリーM0を有する。制御部14では、プロセッサーP0が、記憶部15内に格納されたプログラム(第1分光測色装置1mではプログラムP1、第2分光測色装置1tではプログラムP2)を読み込んで実行することで、第1分光測色装置1m(または第2分光測色装置1t)における各部の制御および各種演算を行う機能が実現される。また、メモリーM0は、例えば、RAM等の揮発性の記憶媒体であり、制御部14における各種演算で生成されるデータ等を一時的に記憶する。
記憶部15は、例えば、不揮発性の記憶媒体によって構成され、プログラム(第1分光測色装置1mではプログラムP1、第2分光測色装置1tではプログラムP2)および制御部14における各種演算に使用される各種情報等を記憶する。なお、第1分光測色装置1mおよび第2分光測色装置1tでは、制御部14で実行されるプログラムP1,P2が異なるため、制御部14で実現される各種機能が異なる。
入出力部16は、例えば、操作部および表示部等を有している。該入出力部16は、例えば、ユーザーによる操作部の操作に応じた信号を入力する機能、および制御部14における演算結果としての各種情報等を表示部において可視的に出力する機能を有する。
<(1−3)装置間における分光反射率のずれ>
図4は、測色対象物100としての同一の赤色のタイルについて、第1分光測色装置1mで測定された分光反射率(第1分光反射率)Rm(λ)、および第2分光測色装置1tで測定された分光反射率(第2分光反射率)Rt(λ)を例示するグラフである。なお、図4では、横軸が、光の波長λを示し、縦軸は、測色対象物100の表面における分光反射率R(λ)を示す。図5は、第1分光測色装置1mで得られた第1分光反射率Rm(λ)と、第2分光測色装置1tで得られた第2分光反射率Rt(λ)との差ΔR(λ)(=Rm(λ)−Rt(λ))を例示するグラフである。なお、図5では、横軸は、波長λを示し、縦軸は、反射率の差ΔRを示しており、波長λと反射率の差ΔRとの関係が実線で描かれている。
図5で示されるように、同一の赤色のタイルが測定されても、装置間において分光反射率の測定値が異なる。この装置間における分光反射率のずれについては、上述したように、直線性に係る第1のずれと、分光感度に係る第2のずれと、に分類される。ここで、直線性に係る第1のずれおよび分光感度に係る第2のずれについて具体的に説明する。
<(1−3−1)直線性に係るずれ(第1のずれ)>
図6は、透明部材17tにおける分光反射率の一例を示す図である。第2分光測色装置1tに設けられている透明部材17tは、例えば、表面に施された反射防止コートによって、図6で示されるような分光反射率を呈する。
図2で示されるように、第2分光測色装置1tでは、例えば、光源11から発せられた照射光が測色対象物100の表面で反射した後に、透明部材17tを透過する光、ならびに更に透明部材17tの表面および測色対象物100の表面で順に反射する再帰反射が行われた上で透明部材17tを透過する光が、受光部13によって受光される。一方、図1で示されるように、第1分光測色装置1mでは、例えば、光源11から発せられた照射光が測色対象物100の表面で反射した後に、受光部13によって単純に受光される。このように、第1分光測色装置1mと第2分光測色装置1tとの間では、測色対象物100が同一であったとしても、光源11から受光部13に至るまでの光の経路が異なるため、取得される分光反射率が異なり得る。
ここで、例えば、第1および第2分光測色装置1m,1tにおいて、それぞれ反射率が約100%である白色校正板を用いた白色校正および反射率が約0%である黒色校正板を用いた黒色校正が行われるものとする。この場合、測色対象物100が白色であれば、第1および第2分光測色装置1m,1tによって白色校正板に値付けされた分光スペクトルがそれぞれ測定され得る。また、測色対象物100が黒色であれば、第1および第2分光測色装置1m,1tによって黒色校正板に値付けされた分光スペクトルがそれぞれ測定され得る。すなわち、測色対象物100が白色または黒色であれば、第1分光測色装置1mと第2分光測色装置1tとの間でそれぞれ同一の分光反射率が取得され得る。一方、測色対象物100が白色と黒色の概ね中間の反射率(例えば、約50%)を有する場合に、第1および第2分光測色装置1m,1tでそれぞれ測定される分光スペクトルにおいて、再帰反射に起因した最も大きなずれを生じ得る。
また、図6で示されるように、透明部材17tの分光反射率は、波長に対して一定ではない。このため、例えば、透明部材17tの反射率が0%である波長については、透明部材17tと測色対象物100との間における再帰反射が発生しない。一方、透明部材17tの反射率が比較的大きな波長については、透明部材17tと測色対象物100との間における再帰反射によって、取得される分光反射率のずれが装置間で大きく異なる。このように、取得される分光反射率のうちの再帰反射に起因して生じる直線性に係る第1のずれは、光の波長および測色対象物100の反射率に依って異なる。
なお、図4および図5で示される例では、650〜740nm付近の波長の範囲において、波長の変化に対する反射率の変化が比較的小さい。このため、図4および図5で示される装置間において取得される分光反射率のずれのうち、650〜740nm付近の波長における分光反射率のずれが、再帰反射による直線性に係る第1のずれに相当する。
<(1−3−2)分光感度に係るずれ(第2のずれ)>
図7は、受光部13のセンサー部133を構成する各受光素子における分光感度を示す図である。第1および第2分光測色装置1m,1tでは、受光部13がそれぞれ異なる分光感度を有している。このため、例えば、装置毎に異なる波長の校正法によって、各受光素子における分光感度を規定する関数(例えば、重心波長および半値幅等を規定する関数)が校正されることで、各受光素子の分光感度に応じた補正が施され得る。ここで、波長の校正法としては、例えば、次のモノクロメーターを用いた校正法および輝線光源を用いた校正法等と言った多数の校正法が存在しており、機種毎に異なる波長の校正法が採用され得る。
モノクロメーターを用いた校正法では、例えば、モノクロメーターで発せられる単色光の波長が時間順次にシフトされつつ分光測色装置に入射され、各波長の単色光の分光スペクトルと、分光測色装置で検出される分光スペクトルとが一致するように、波長が校正される。なお、単色光の波長がシフトされるピッチとしては、例えば、1nm等が採用され得る。但し、モノクロメーターを用いた校正法では、各波長の単色光が微弱な光量のものとなり易いため、分光測色装置において単色光を受光する際の露光時間が長くなり得る。さらに、複数の波長の単色光の走査波長点数が非常に多く、波長の校正に長時間を要する。
輝線光線を用いた校正法では、例えば、輝線光源から発せられる複数の特定波長の光が分光測色装置に入力され、各特定波長の光の強度に係る分光スペクトルと、分光測色装置で検出される分光スペクトルとが一致するように、波長が校正される。なお、輝線光源としては、例えば、水銀ランプまたは水銀カドミウムランプ等が採用され得る。輝線光線を用いた校正法については、例えば、輝線光線から同時に複数の特定波長の光が発せられ、各特定波長の光の光量も高いため、校正に要する時間が短縮され得る。但し、輝線光線を用いた校正法では、複数の特定波長からずれた波長については校正の精度が低くなる。
ここで、第1分光測色装置1mと第2分光測色装置1tとの間で、波長の校正法が異なっていれば、例えば、第1分光測色装置1mと第2分光測色装置1tとの間で、各受光素子の分光感度の重心波長および半値幅に係る校正の精度が異なる。そして、第1分光測色装置1mと第2分光測色装置1tとの間で波長の校正法が異なっていれば、測色対象物100が同一であっても、各分光測色装置1m,1tで取得される反射光に係る分光スペクトルが異なるものとなる。具体的には、第1分光測色装置1mと第2分光測色装置1tとの間において、波長の校正法の違いに応じて取得される分光反射率が波長方向にずれたり、該分光反射率の波形がなまったりして、測定結果としての分光反射率に差が生じる。
なお、図4および図5で示される例では、550〜650nm付近の波長の範囲において、波長の変化に対する反射率の変化が大きい。このため、図4および図5で示される装置間において取得される分光反射率のずれのうち、550〜650nm付近の波長における分光反射率のずれが、分光感度に係る第2のずれに相当する。
<(1−4)装置間における分光反射率のずれの補正>
例えば、第1および第2分光測色装置1m,1tが同一のメーカーの製品で、第1分光測色装置1mが、第2分光測色装置1tの後継機であれば、ユーザーは、同一の測色対象物100について、第1分光測色装置1mでも第2分光測色装置1tと同様な測定値が得られるものと期待する。このような期待に応えるために、本実施形態では、装置間における分光反射率のずれが考慮されて、第1分光測色装置1mで取得される分光反射率が、第2分光測色装置1tで取得され得る分光反射率に変換される。
上述したように、装置間における分光反射率のずれは、直線性に係る第1のずれと、分光感度に係る第2のずれとが、混合したものである。このため、仮に、直線性に係る第1のずれと分光感度に係る第2のずれとが、区別されなければ、例えば、従来の上記式(1)を用いて第1分光反射率を第2分光反射率に変換する変換ルールを設定するような手法を採用せざるを得ない。但し、式(1)は、非常に複雑な式であり、各受光素子に係る波長λ(i)毎に係数A(i),B(i),C(i),D(i),E(i)が求められる必要がある。このため、多数の校正用の試料の準備を要し、該多数の校正用の試料を用いた測定に長時間を要する。更に校正用の試料の特性によって、求められる係数A(i),B(i),C(i),D(i),E(i)のロバスト性が低下し得る。
そこで、本実施形態では、第1分光測色装置1mで取得される第1分光反射率と第2分光測色装置1tで取得される第2分光反射率との間におけるずれが、直線性に係る第1のずれと、分光感度に係る第2のずれと、に分けて扱われて、変換ルールが設定される。これにより、少数の校正用の試料の使用によって、異なる分光測色装置の間における測定値の高精度な変換ルールが容易に設定され得る。
なお、例えば、第1および第2分光測色装置1m,1tの双方が、同一のメーカーの製品であれば、当該メーカーでは、各種校正に係る情報が既知である。このため、第1分光測色装置1mでは、例えば、既知である各種校正に係る情報が利用されることで、異なる分光測色装置の間における測定値の高精度な変換ルールが容易に設定され得る。
図8は、装置間における分光反射率のずれを補正するために第1分光測色装置1mの制御部14で実現される機能的な構成を例示する図である。
図8で示されるように、第1分光測色装置1mの制御部14は、プロセッサーP0によってプログラムP1が実行されることで実現される機能的な構成として、算出部14ma、取得部14mbおよび変換部14mcを有する。
算出部14maは、第1分光測色装置1mの受光部13で測定された測色対象物100からの反射光に係る分光スペクトルから該測色対象物100に係る分光反射率(第1分光反射率)を算出する。算出部14maでは、例えば、予め設定された光源11から発せられる光の分光スペクトルと、測定された反射光に係る分光スペクトルとに基づいて、第1分光反射率が算出され得る。
取得部14mbは、算出部14maで算出された第1分光反射率と記憶部15に記憶されている関係情報A1とに基づいて、第1分光反射率と第2分光反射率との間における光の各波長についての反射率に係るずれ成分としての反射率差を取得する。ここで、関係情報A1は、光の各波長について反射率と反射率差との関係を示す情報であり、第1分光反射率Rm(λ)を第2分光反射率Rt(λ)に変換するために直線性に係る第1のずれを補正する変換ルール(第1変換ルールとも言う)を規定する情報である。
ここで、第1分光反射率Rm(λ)は、第1分光測色装置1mを用いた実際の測定で取得される。第2分光反射率Rt(λ)は、第1分光測色装置1mとは異なる変換先分光測色装置としての第2分光測色装置1tを用いた測定で取得され得るものと推定される推定値(第2推定分光反射率とも言う)である。各波長についての反射率差は、例えば、予め、同一の校正用の試料を対象とした、第1分光測色装置1mを用いた測定によって得られる分光反射率と、第2分光測色装置1tを用いた測定によって得られる分光反射率との差分に基づいて取得され得る。これにより、例えば、各波長について、第1分光測色装置1mを用いた測定によって得られる第1分光反射率に対応する反射率と反射率差との関係が取得され得る。
変換部14mcは、取得部14mbで取得された各波長についての反射率差を、算出部14maで算出された第1分光反射率に対して加算または減算することで、第1分光反射率を第2分光反射率に変換する。ここで、例えば、関係情報A1で規定される反射率差が、第2分光反射率を基準とした第1分光反射率の大小を正負の数値で表したものであれば、変換部14mcによって、取得部14mbで取得された各波長についての反射率差が、算出部14maで算出された第1分光反射率に対して減算されれば良い。逆に反射率差が第1分光反射率を基準とした第2分光反射率の大小を表すものであれば、反射率差が第1分光反射率に対して加算されればよい。
このような構成が採用される場合、分光感度に係る第2のずれとは別に、直線性に係る第1のずれについて、各波長についての反射率と該反射率に係るずれ成分としての反射率差との関係が設定される。これにより、直線性に係る第1のずれを補正するために、異なる第1および第2分光測色装置1m,1tの間における測定値の高精度な変換ルールが容易に設定され得る。
また、変換部14mcは、第1分光測色装置1mとは異なる他の第2分光測色装置1tの校正済みの分光感度(校正済み分光感度とも言う)と、第1分光測色装置1mの受光部13で測定された分光スペクトルとを用いて、該分光スペクトルから第2分光測色装置1tで取得され得るものと推定される分光反射率の推定値(第2推定分光反射率)R* t(λ* G_t(k))を算出することが可能である。ここで、kは、波長を規定するための1〜K0の自然数であり、例えば、センサー部133における1〜K0番目までの受光素子の順番を規定する数値であれば良い。
このような構成が採用される場合、直線性に係る第1のずれとは別に、分光感度に係るずれについての校正済み分光感度を示す情報(校正済み分光感度情報とも言う)S1が設定される。つまり、校正済み分光感度情報S1は、第1分光反射率Rm(λ)を第2分光反射率Rt(λ)に変換するために分光感度に係る第2のずれを補正する変換ルール(第2変換ルールとも言う)を規定する情報である。これにより、分光感度に係る第2のずれを補正するために、異なる第1および第2分光測色装置1m,1tの間における測定値の高精度な変換ルールが容易に設定され得る。
また、変換部14mcは、上述したように取得部14mbで取得された各波長についての反射率差を第1分光反射率Rm(λ)に対して加算または減算するとともに、第2分光測色装置1tの校正済み分光感度情報S1と第1分光測色装置1mで測定された分光スペクトルとを用いて、該分光スペクトルから第2分光測色装置1tで取得され得る第2分光反射率Rt(λ)が算出されても良い。このとき、例えば、変換部14mcによって、分光スペクトルと校正済み分光感度とを用いて取得される分光反射率に対して、取得部14mbで取得された各波長についての反射率差が加算または減算されることで、第2分光測色装置1tで取得され得る第2分光反射率が算出される。
このような構成が採用される場合、第1分光測色装置1mで取得される第1分光反射率Rm(λ)と第2分光測色装置1tで取得される第2分光反射率Rt(λ)との間におけるずれが、直線性に係る第1のずれと分光感度に係る第2のずれと、に分けられて、変換ルールが設定される。これにより、直線性に係る第1のずれおよび分光感度に係る第2のずれを補正するために、比較的少数の校正用の試料を用いて、変換ルールを設定することが可能となる。すなわち、異なる第1および第2分光測色装置1m,1tの間における測定値の高精度な変換ルールが容易に設定され得る。
図9は、第2分光測色装置1tの制御部14で実現される機能的な構成を例示する図である。図9で示されるように、第2分光測色装置1tの制御部14は、プロセッサーP0によってプログラムP2が実行されることで実現される機能的な構成として、算出部14taを有する。算出部14taは、第2分光測色装置1tの受光部13で測定された測色対象物100からの反射光に係る分光スペクトルから該測色対象物100に係る分光反射率(第2分光反射率)Rt(λ)を算出する。算出部14taでは、例えば、予め設定された光源11から発せられる光の分光スペクトルと、測定された反射光に係る分光スペクトルとに基づいて、第2分光反射率が算出され得る。
以下、装置間における直線性に係る第1のずれの補正および分光感度に係る第2のずれの補正について、順次説明する。
<(1−4−1)装置間における直線性に係るずれ(第1のずれ)の補正>
例えば、測色対象物100が光の波長に拘わらず反射率が略一定となる分光反射率を有する場合には、装置間における分光感度のずれに起因する分光反射率の誤差(分光感度に係る第2のずれ)が殆ど発生しない。具体的には、例えば、分光反射率において波長に拘わらず反射率が略一定であれば、各受光素子における分光感度を規定する重心波長および半値幅が装置間でずれていても、各受光素子において受光される光の強度に係る分光スペクトルは殆ど変わらない。このように、光の波長に拘わらず反射率が略一定となる分光反射率を有する測色対象物100としては、例えば、測定対象となる波長範囲のうちの全範囲において反射率が所定の値域の幅内に含まれている校正用の試料が挙げられる。
ここで、測定対象となる波長範囲としては、例えば、可視光線の波長範囲である360〜740nm程度の波長範囲が採用され得る。所定の値域の幅としては、例えば、予め設定された非常に狭い値域が採用され得る。このような条件を満たす測色対象物100としては、例えば、無彩色の試料が挙げられる。
図10は、無彩色の測色対象物100について取得される分光反射率を例示する図である。図10では、白色から黒色に至る複数種類の濃さの無彩色の試料について、第1および第2分光測色装置1m,1tによってそれぞれ取得される第1および第2分光反射率Rm(λ),Rt(λ)の例が曲線で示されている。具体的には、第1および第2分光反射率Rm(λ),Rt(λ)が、横軸が波長λであり且つ縦軸が反射率Rであるグラフにおいて示されている。
図11は、同一の無彩色の測色対象物100について取得される分光反射率の装置間における差を例示する図である。図11では、白色から黒色に至る複数種類の濃さの無彩色の試料について、第1分光測色装置1mで取得される第1分光反射率Rm(λ)と、第2分光測色装置1tで取得される第2分光反射率Rt(λ)との差ΔR(λ)(=Rm(λ)−Rt(λ))が示されている。
図10および図11では、透明部材17tの反射率が高い360〜400nmの波長範囲、ならびに650〜740nmの波長範囲において、第1分光測色装置1mと第2分光測色装置1tとの間で、装置間における分光反射率のずれが生じている様子が示されている。ここで、測色対象物100の分光反射率が変化している波長範囲を除いた波長範囲については、第1分光測色装置1mで取得される第1分光反射率Rm(λ)と第2分光測色装置1tで取得される第2分光反射率Rt(λ)との差(反射率差)ΔR(λ)は、直線性に係る第1のずれに相当する。
このように、分光反射率が略一定となる測色対象物100が校正用の試料として用いられることで、装置間において取得される分光反射率のずれのうち、分光感度に係る第2のずれの影響が除かれた、直線性に係る第1のずれが検出され得る。その結果、各波長についての反射率と該反射率に係るずれ成分としての反射率差との関係を求めるための複数の校正用の試料が容易に準備され得る。すなわち、各波長についての反射率と該反射率に係るずれ成分としての反射率差との関係が容易に求められ得る。
ここで、各波長について反射率と反射率差との関係を示す関係情報A1の設定について具体的に説明する。
図12は、装置間における直線性に係る第1のずれを補正するための第1変化ルールとしての関係情報A1を設定するために第1分光測色装置1mの制御部14で実現される機能的な構成を例示する図である。
図12で示されるように、第1分光測色装置1mの制御部14は、プロセッサーP0によって記憶部15内のプログラムP1が実行されることで実現される機能的な構成として、算出部14ma、演算部14mdおよび設定部14meを有する。
演算部14mdは、第1分光測色装置1mを用いた測定で得られる複数の第1分光反射率と、第2分光測色装置1tを用いた測定で得られる複数の第2分光反射率との間における各波長についての反射率と反射率差との関係を取得する。ここで、複数の第1分光反射率は、第1分光測色装置1mを用いた複数の試料に係る測定によってそれぞれ取得され得る。例えば、算出部14maによって、無彩色の校正用の各試料について、第1分光測色装置1mの受光部13で測定された測色対象物100からの反射光に係る分光スペクトルから該測色対象物100に係る第1分光反射率が算出され得る。また、複数の第2分光反射率は、第2分光測色装置1tを用いた複数の試料に係る測定によってそれぞれ取得され得る。例えば、算出部14taによって、無彩色の校正用の各試料について、第2分光測色装置1tの受光部13で測定された測色対象物100からの反射光に係る分光スペクトルから該測色対象物100に係る第2分光反射率が算出され得る。
設定部14meは、演算部14mdで取得された各波長における反射率と反射率差との関係に基づいて、第1分光測色装置1mによる測定で取得される第1分光反射率Rm(λ)を、第2分光測色装置1tによる測定で取得され得る第2分光反射率Rt(λ)に変換する変換ルールとしての関係情報A1を設定する。
図13から図32は、第1分光反射率Rm(λ)と反射率差ΔR(λ)との関係を示す図である。ここで、第1分光反射率Rm(λ)は、相互に濃さの異なる複数種類の無彩色の校正用の試料について、第1分光測色装置1mを用いた実測によって取得された測定値である。反射率差ΔR(λ)は、相互に濃さの異なる複数種類の無彩色の校正用の試料それぞれについての、第1分光測色装置1mを用いた実測によって取得された第1分光反射率Rm(λ)と、第2分光測色装置1tを用いた実測によって取得された第2分光反射率Rt(λ)との差である。
図13から図32では、360〜740nmの範囲における20nm間隔の各波長λ(λ=360,380,400,・・・,740nm)について、第1分光反射率Rm(λ)と反射率差ΔR(λ)との関係が示されている。なお、図13から図32の各図において、それぞれ白丸で示されているデータは、各校正用の試料について分光反射率が略一定である波長範囲についてそれぞれ得られたデータである。また、実線で描かれた曲線は、各波長についての第1分光反射率Rm(λ)と反射率差ΔR(λ)との関係を近似的に示している。ここでは、第1および第2分光測色装置1m,1tにおいて白色校正と黒色校正とがそれぞれ行われることで、各波長について、第1および第2分光反射率Rm(λ),Rt(λ)が50%程度となる場合に反射率差ΔR(λ)が極大値を呈する例が示されている。
ところで、測色対象物100が黒っぽく濃いものについては、第1分光反射率Rm(λ)が小さな値となり、反射率差ΔR(λ)において測定による誤差が生じ易い。この誤差は、校正用ではない実際の測色を行う際における有彩色の測色対象物100について、直線性に係る第1のずれを補正する際に、補正の精度の低下を招く。このため、第1分光反射率Rm(λ)が小さな測色対象物100については、第1分光反射率Rm(λ)を細かく変化させながら、第1分光反射率Rm(λ)と反射率差ΔR(λ)との関係が取得されれば、反射率差ΔR(λ)における測定による誤差の影響が低減され得る。
例えば、図13から図32の各図では、10%以下の第1分光反射率Rm(λ)について、多数の相互に濃さが異なる測色対象物100についての第1分光反射率Rm(λ)と反射率差ΔR(λ)との関係が実測によって取得されている様子が示されている。なお、例えば、0,5,10,20,50,100%等と言った6水準以上の第1分光反射率Rm(λ)について、第1分光反射率Rm(λ)と反射率差ΔR(λ)との関係が実測によって取得されれば、反射率差ΔR(λ)における測定による誤差がある程度低減され得る。なお、このとき、1つの校正用の試料についての測定によって、複数の受光素子の数に対応する数の波長について、分光反射率が測定され得る。つまり、少ない校正用の試料によって、数多くの分光反射率に係るデータが取得され得る。その結果、第1分光反射率Rm(λ)を第2分光反射率Rt(λ)に変換するための関係情報A1が容易に取得および設定され得る。
ここで、例えば、関係情報A1が、各波長λについて、第1分光反射率Rm(λ)と反射率差ΔR(λ)との関係を近似的に示す関係式を含む場合を想定する。つまり、関係式が、各波長についての反射率と反射率差との関係を示す場合を想定する。そして、実測で得られた第1分光反射率Rm(λ)と反射率差ΔR(λ)との関係に対して、式(2)で示されるN次の関数がフィッティングされることで、係数an(λ)が求められる。式(2)において、nは、0〜Nの整数であり、Nは、適宜設定され得る2以上の任意の整数である。ここで、N次の関数のフィッティングとして、例えば、非線形の最小二乗法を用いた演算等が採用され得る。なお、第1および第2分光反射率Rm(λ),Rt(λ)が、それぞれ360〜740nmの波長範囲における10nmのピッチの39個の波長(360,370,380,・・・,740nm)についての分光反射率で構成されている場合、該39個の波長について、それぞれ係数an(λ)が求められる。
このようなフィッティングによって、第1分光反射率Rm(λ)と反射率差ΔR(λ)との関係を近似的に示す関係式が算出され得る。フィッティングによる関係式の算出は、演算部14mdにおいて実行され得る。但し、該フィッティングによる関係式の算出は、例えば、第1分光測色装置1m以外の各種情報処理装置で実行されても良い。
そして、例えば、ここで得られた波長λ毎の係数an(λ)と式(2)とが、設定部14meによって関係情報A1として記憶部15に記憶され得る。つまり、設定部14meによって、第1変換ルールとしての関係情報A1が設定され得る。すなわち、関係情報A1は、相互に分光反射率が異なる複数の無彩色の校正用の試料のうちの各試料について第1および第2分光測色装置1m,1tを用いた測定によってそれぞれ取得される第1および第2分光反射率Rm(λ),Rt(λ)に基づいて設定され得る。
これにより、任意の測色対象物100について第1分光測色装置1mを用いた測定によって第1分光反射率Rm(λ)が取得される場合、第1および第2分光測色装置1m,1tでの装置間における直線性に係る第1のずれに対応する反射率差ΔR(λ)は、第1分光反射率Rm(λ)が式(2)に代入されることで算出され得る。すなわち、取得部14mbにおいて、任意の測色対象物100に係る第1分光反射率Rm(λ)と関係情報A1に含まれる関係式とを用いた演算によって、各波長λについての反射率差ΔR(λ)が取得され得る。その結果、変換部14mcによって、相互に異なる第1および第2分光測色装置1m,1tの間において、測定値が高精度且つ迅速に変換され得る。
なお、ここでは、波長λ毎に、実測で得られた第1分光反射率Rm(λ)と反射率差ΔR(λ)との複数の組合せに対して、1つのN次の関数がフィッティングされたが、これに限られない。
例えば、第1分光反射率Rm(λ)が複数の区間に分けられて、区間毎に、第1分光反射率Rm(λ)と反射率差ΔR(λ)との複数の組合せに対してN次の関数がフィッティングされても良い。この場合、関係情報A1が、各波長についての複数の反射率の領域それぞれにおける第1分光反射率Rm(λ)と反射率差ΔR(λ)との関係式を有している。換言すれば、各波長λについて、複数の反射率の領域それぞれにおける係数an(λ)が算出されて、記憶部15に記憶されても良い。ここで、複数の反射率の領域としては、例えば、0〜10%、10〜50%および50〜100%等と言った0〜100%が複数の値域に区分けされた領域等が挙げられる。これにより、フィッティングによって得られる関係式によって第1分光反射率Rm(λ)と反射率差ΔR(λ)との関係を近似的に示す精度が向上し得る。したがって、異なる第1および第2分光測色装置1m,1tの間における測定値の高精度な変換ルールがさらに容易に設定され得る。
また、例えば、各波長について、反射率と反射率差との複数の組合せによって第1分光反射率Rm(λ)と反射率差ΔR(λ)との関係を示すテーブルが、関係情報A1として、記憶部15に記憶されても良い。この場合、例えば、取得部14mbにおいて、任意の測色対象物100に係る第1分光反射率Rm(λ)とテーブルとに基づいて、各波長λについての反射率差ΔR(λ)が取得され得る。その結果、変換部14mcによって、相互に異なる第1および第2分光測色装置1m,1tの間において、測定値が高精度且つ迅速に変換され得る。このような構成が採用される場合、各波長λについての反射率と反射率差との関係を示すテーブルが容易に設定され得るため、相互に異なる第1および第2分光測色装置1m,1tの間における測定値の高精度な変換ルールが容易に設定され得る。
このような構成では、例えば、取得部14mbにおいて、各波長について、テーブルに含まれる反射率と反射率差との2以上の組合せを用いた補間処理によって、任意の測色対象物100に係る第1分光反射率Rm(λ)に対する各波長λについての反射率差ΔR(λ)が取得され得る。これにより、記憶部15の記憶容量の低減、ならびに反射率と反射率差との多数の組合せを得るための校正用の試料の数および測定回数の低減が実現され得る。つまり、各波長についての反射率と反射率差との関係を示すデータが少なくて済むことで、当該データを容易に取得することができる。その結果、相互に異なる第1および第2分光測色装置1m,1tの間における測定値の高精度な変換ルールがさらに容易に設定され得る。
ここで、仮に、例えば、各波長のテーブルにおいて、0,5,10,20,50,100%の6つの反射率について、反射率と反射率差との関係が記述されている例を想定する。この例では、例えば、第1分光測色装置1mを用いた測定によって任意の測色対象物100に係る第1分光反射率Rm(λ)として15%が取得されると、各波長のテーブルにおける10%および20%の2水準の反射率についての反射率と反射率差との2つの組合せを用いた補間処理によって、15%の反射率に対応する反射率差が取得され得る。
なお、例えば、各波長のテーブルにおいて、細かいピッチの多数の分光反射率に係る反射率と反射率差との組合せを記憶する例を想定すれば、記憶部15の記憶容量、反射率と反射率差との多数の組合せを得るための校正用の試料の数、およびその測定回数等が増大し得る。しかしながら、例えば、補間処理の省略による演算負荷の低減ならびに演算速度の向上を図ることが可能となる。
ところで、例えば、測色対象物100が有彩色であっても、測色対象物100における波長の変化に対する分光反射率の変化が緩やかな場合には、装置間における分光感度に係る第2のずれは小さい。このため、このような場合には、第1分光測色装置1mを用いた測定によって取得された第1分光反射率Rm(λ)に対して、式(3)に沿って、直線性に係る第1のずれの補正が施されることで、第1分光反射率Rm(λ)が、第2分光反射率Rt(λ)に変換され得る。
図33は、第1および第2分光測色装置1m,1tを用いた測定によってそれぞれ取得された第1および第2分光反射率Rm(λ),Rt(λ)を例示する図である。図33には、波長λの変化に対する分光反射率の変化が緩やかな測色対象物100についての第1および第2分光反射率Rm(λ),Rt(λ)が例示されている。
図34は、波長λの変化に対する分光反射率の変化が緩やかな測色対象物100について、第1分光測色装置1mを用いた測定で取得された第1分光反射率Rm(λ)と、第2分光測色装置1tを用いた測定で取得された第2分光反射率Rt(λ)との差を例示する図である。図34で示されるように、測色対象物100が、波長λの変化に対する分光反射率の変化が緩やかなものであっても、第1分光反射率Rm(λ)と第2分光反射率Rt(λ)との差がある程度生じる。
図35は、波長λの変化に対する分光反射率の変化が緩やかな測色対象物100について、第1分光反射率Rm(λ)から反射率差ΔR(λ)を減じることで得られる補正後の第1分光反射率(第1分光反射率Rm(λ)−ΔR)と、第2分光反射率Rt(λ)との差を例示する図である。ここで、反射率差ΔR(λ)は、取得部14mbによって、測色対象物100に係る第1分光反射率Rm(λ)と関係情報A1とに基づいて取得される。図35で示されるように、波長λの変化に対する分光反射率の変化が緩やかな測色対象物100については、直線性に係る第1のずれの補正が行われれば、第1および第2分光測色装置1m,1tの装置間における分光反射率のずれが十分低減され得る。
なお、図4で示されるように、波長λの変化に対して分光反射率が急激に変化する測色対象物100は少ない。このため、分光感度に係る第2のずれの補正が行われずとも、直線性に係る第1のずれの補正が行われれば、第1および第2分光測色装置1m,1tの装置間における分光反射率のずれが十分低減される場合が多い。
図36は、直線性に係る第1のずれを補正するための第1変換ルールとしての関係情報A1を設定する動作フローを示すフローチャートである。
まず、ステップST1では、第1および第2分光測色装置1m,1tによって、それぞれ複数の試料のうちの各試料について分光反射率が測定される。ここで、複数の試料は、例えば、それぞれ分光反射率が相互に異なる複数の無彩色の校正用の試料である。第1分光測色装置1mでは、例えば、無彩色の校正用の各試料について、受光部13によって測色対象物100からの反射光に係る分光スペクトルが測定され、該分光スペクトルから測色対象物100に係る第1分光反射率Rm(λ)が算出部14maによって算出され得る。また、第2分光測色装置1tでは、例えば、無彩色の校正用の各試料について、受光部13に測色対象物100からの反射光に係る分光スペクトルが測定され、該分光スペクトルから測色対象物100に係る第2分光反射率Rt(λ)が算出部14taによって算出され得る。
次に、ステップST2では、演算部14mdによって、ステップST1における測定結果に基づいて、複数の第1分光反射率Rm(λ)と、複数の第2分光反射率Rt(λ)との間における各波長についての反射率と該反射率に係るずれ成分としての反射率差との関係が取得される。
次に、ステップST3では、設定部14meによって、第1変換ルールとしての関係情報A1が設定される。ここでは、ステップST2で取得された各波長における反射率と反射率差との関係に基づいて、第1分光反射率Rm(λ)を第2分光反射率Rt(λ)に変換する第1変換ルールとしての関係情報A1が設定される。
このような動作フローによって、各波長についての反射率と反射率差との関係が容易に求められる。このため、相互に異なる第1および第2分光測色装置1m,1tの間における測定値の高精度な変換ルールが容易に設定され得る。
以上のように、各波長についての反射率と反射率差との関係と、測定で得られた分光スペクトルから算出される第1分光反射率Rm(λ)とに基づいて、該第1分光反射率Rm(λ)が、第2分光測色装置1tを用いた測定で取得され得る第2分光反射率Rt(λ)に変換される。これにより、装置間における直線性に係る第1のずれが補正され得る。そして、ここでは、分光感度に係る第2のずれとは別に、各波長についての反射率と反射率差との関係が設定される。このため、相互に異なる第1および第2分光測色装置1m,1tの間における測定値の高精度な変換ルールが容易に設定され得る。
<(1−4−2)装置間における分光感度に係るずれ(第2のずれ)の補正>
図4で示されるように、測色対象物100が、波長の変化に対して分光反射率が急激に変化するようなものである場合には、装置間において、分光感度に係る第2のずれに起因する分光反射率のずれが発生する。このため、装置間における分光感度に係る第2のずれが補正されれば、装置間における分光反射率のずれが十分低減され得る。
ここでは、装置間における直線性に係る第1のずれと、装置間における分光感度に係る第2のずれと、を併せて補正する方法について説明する。但し、装置間で光学系等が相違しておらず、直線性に係る第1のずれが殆ど生じない場合には、例えば、装置間における直線性に係る第1のずれを補正することなく、分光感度に係る第2のずれを補正するようにしても良い。
第1分光測色装置1mにおいて測色対象物100からスリット部131sを介して受光部13内に入射される入射光L0の波長λの光の強さ(分光スペクトルとも言う)をL(λ)とする。そして、第1分光測色装置1mのセンサー部133のk番目(kは、1〜K0の自然数)の受光素子における分光感度をsm(k,λ)とし、該k番目の受光素子で受光される光の重心波長をλG_m(k)とする。このとき、第1分光測色装置1mのセンサー部133のk−1番目の受光素子において受光される光の重心波長λG_m(k−1)と、k番目の受光素子で受光される光の重心波長をλG_m(k)との中間の波長(中間波長とも言う)λB_m(k)は、式(4)で表される。
そして、第1分光測色装置1mのセンサー部133のうちのk番目の受光素子で光の強度に応じて出力される信号(第1出力信号とも言う)Cm(k)は、式(5)で表される。
式(5)は、式(6)で示されるような行列式に書き換えられ得る。
ところで、第1分光測色装置1mのセンサー部133におけるk番目の受光素子では、分光スペクトルL(λ)を呈する入射光L0の入射に応じて第1出力信号Cm(k)が出力される。このとき、入射光L0の波長λG_m(k)における光の強さ(第1分光スペクトルとも言う)L(λG_m(k))は、式(7)に第1出力信号Cm(k)が代入されることで算出され得る。
ここで、第1分光測色装置1mにおける正確な分光感度sm(k,λ)が得られるのであれば、式(7)によって、入射光L0に係る第1分光スペクトルL(λG_m(k))が正確に得られる。例えば、第1分光測色装置1mが、あるメーカーの製品であれば、該あるメーカーでは、第1分光測色装置1mの受光部13における分光感度sm(k,λ)が正確に得られる。なお、例えば、第1分光測色装置1mにおいて各受光素子からの出力信号が直接得られる場合には、特定の波長の光に応じて第1分光測色装置1mの各受光素子から出力される出力信号を得て、分光感度sm(k,λ)を算出しても良い。ここで、特定波長の光としては、例えば、モノクロメーターから発せられる単色光、および輝線光源から発せられる複数の特定波長の光のうちの少なくとも一方の光が採用され得る。
また、ここで、第1分光測色装置1mの受光部13に入射されたものと同一の分光スペクトルL(λ)を有する入射光L0が、第2分光測色装置1tの受光部13にも入射されるものと仮定する。そして、第2分光測色装置1tのセンサー部133のk番目の受光素子における真の分光感度をst(k,λ)とし、該k番目の受光素子で受光される光の重心波長をλG_t(k)とする。
このとき、センサー部133のk−1番目の受光素子において受光される光の重心波長λG_t(k−1)と、k番目の受光素子で受光される光の重心波長をλG_t(k)との中間の波長(中間波長とも言う)λB_t(k)は、式(8)で表される。
ここで、重心波長λG_t(k)における入射光L0の強度L(λG_t(k))は、例えば、重心波長λG_t(k)を挟む両隣の波長λG_m(k)における入射光L0の強度L(λG_m(k))を用いた補間処理によって算出され得る。
また、ここでも、例えば、第2分光測色装置1tが、あるメーカーの製品であれば、該あるメーカーでは、第2分光測色装置1tの受光部13における真の分光感度st(k,λ)が正確に得られる。なお、例えば、第2分光測色装置1tにおいて各受光素子からの出力信号が直接得られる場合には、特定の波長の光に応じて第2分光測色装置1tの各受光素子から出力される出力信号を得ることで、分光感度st(k,λ)が求められても良い。ここで、特定波長の光としては、例えば、モノクロメーターから発せられる単色光、および輝線光源から発せられる複数の特定波長の光のうちの少なくとも一方の光が採用され得る。なお、分光感度st(k,λ)は、例えば、光学的なシミュレーションによって求められても良い。
また、ここで、第1分光測色装置1mの受光部13に入射されたものと同一の分光スペクトルL(λ)を有する入射光L0が、第2分光測色装置1tの受光部13に入射される場合を想定する。この場合、第2分光測色装置1tのセンサー部133のうちのk番目の受光素子で光の強度に応じて出力され得る出力信号の推定値(第2推定出力信号とも言う)Ct(k)が、式(9)によって算出され得る。
式(9)は、式(10)で示されるような行列式に書き換えられ得る。
ここで、第2分光測色装置1tのセンサー部133のk番目の受光素子について、第2分光測色装置1tにおける波長の校正によって求められる校正済みの分光感度(校正済み分光感度とも言う)をs* t(k,λ)とする。また、このときに該k番目の受光素子で受光される光の校正済みの重心波長(校正済み重心波長とも言う)をλ* G_t(k)とする。校正済み分光感度s* t(k,λ)は、第2分光測色装置1tにおける波長の校正法の精度に依って、真の分光感度st(k,λ)からずれた分光感度となり得る。
また、第2分光測色装置1tのセンサー部133のk−1番目の受光素子において受光される光の校正済み重心波長λ* G_t(k−1)と、k番目の受光素子で受光される光の校正済み重心波長をλ* G_t(k)との中間の波長(校正済み中間波長とも言う)λ* B_t(k)は、式(11)で表される。
そして、式(12)に、式(10)で得られた第2推定出力信号Ct(k)が代入されることで、入射光L0の校正済みの強さの推定値(第2推定分光スペクトルとも言う)L*(λ* G_t(k))が算出され得る。
つまり、次の工程1〜3が順に行われることで、入射光L0に係る第2推定分光スペクトルL*(λ* G_t(k))が取得され得る。
[工程1]式(7)で示されるように、分光感度sm(k,λ)に係る逆行列と、第1分光測色装置1mを用いた実測によって取得された入射光L0に応じた出力信号Cm(k)の列ベクトルとの積によって、入射光L0の分光スペクトルL(λ)が算出される。
[工程2]式(10)で示されるように、第2分光測色装置1tの真の分光感度st(k,λ)に係る行列と、工程1で算出された入射光L0の分光スペクトルL(λ)の列ベクトルとの積によって、第2分光測色装置1tで取得され得る第2推定出力信号Ct(k)の列ベクトルが算出される。ここで、第2推定出力信号Ct(k)は、入射光L0が第2分光測色装置1tの受光部13に入射される際に、該第2分光測色装置1tを用いた測定によって取得され得るものと推定される出力信号の推定値である。但し、第2分光測色装置1tの受光部13に入射される入射光L0の分光スペクトルL(λ)は、第1分光測色装置1mの受光部13に入射された入射光L0の分光スペクトルL(λ)と同一であるものとする。
[工程3]式(12)で示されるように、第2分光測色装置1tの校正済み分光感度s* t(k,λ)の逆行列と、工程2で取得された第2推定出力信号Ct(k)の列ベクトルとの積によって、第2推定分光スペクトルL*(λ* G_t(k))が算出される。第2推定分光スペクトルL*(λ* G_t(k))は、第2分光測色装置1tを用いた測定によって取得され得る入射光L0の分光スペクトルの推定値である。
ところで、第1分光測色装置1mの受光部13に入射された入射光L0と同一の分光スペクトルを有する入射光L0が第2分光測色装置1tの受光部13に入射される場合を想定する。このため、第2分光測色装置1tを用いた測定によって取得され得る測色対象物100の第2分光反射率の推定値(第2推定分光反射率とも言う)R*(λ* G_t(k))が、式(13)によって算出され得る。
式(13)では、第2推定分光反射率R* t(λ* G_t(k))が、分光感度に係る第2のずれに応じた右辺第1項から、直線性に係る第1のずれに応じた右辺第2項が減じられた値として表される。ここで、右辺第1項は、第2分光測色装置1tにおける波長の校正法の精度に起因する分光感度に係る第2のずれに応じて変動する。また、右辺第2項は、分光反射率における直線性に係る第1のずれとしての反射率差ΔR(λ* G_t(k))を示す。
ここで、式(13)の右辺第1項については、L* White(λ* G_t(k))は、白色校正板に係る第2推定分光スペクトル(第2白色推定分光スペクトルとも言う)である。L* Black(λ* G_t(k))は、黒色校正板に係る第2推定分光スペクトル(第2黒色推定分光スペクトルとも言う)である。L* Sample(λ* G_t(k))は、測色対象物100に係る第2推定分光スペクトル(第2対象推定分光スペクトルとも言う)である。また、RWhite(λ* G_t(k))は、白色校正板に係る第2分光反射率(第2白色分光反射率とも言う)である。
第2白色推定分光スペクトルL* White(λ* G_t(k))、第2黒色推定分光スペクトルL* Black(λ* G_t(k))および第2対象推定分光スペクトルL* Sample(λ* G_t(k))は、例えば、白色校正板、黒色校正板および測色対象物100について、上記工程1〜3に沿った測定および演算が行われることで、算出され得る。具体的には、白色校正板について第1分光測色装置1mを用いた実測によって得られた第1出力信号Cm(k)と、式(7),(10),(12)とによって、第2白色推定分光スペクトルL* White(λ* G_t(k))が算出される。黒色校正板について第1分光測色装置1mを用いた実測によって得られた第1出力信号Cm(k)と式(7),(10),(12)とによって、第2黒色推定分光スペクトルL* Black(λ* G_t(k))が算出される。測色対象物100について第1分光測色装置1mを用いた実測によって得られた第1出力信号Cm(k)と式(7),(10),(12)とによって、第2対象推定分光スペクトルL* Sample(λ* G_t(k))が算出される。
第2白色分光反射率RWhite(λ* G_t(k))は、例えば、白色校正板に対して予め設定されていれば良い。
また、ここで、式(13)の右辺第2項の反射率差ΔR(λ* G_t(k))については、例えば、上記(1−4−1)項で述べられた方法に従って、測色対象物100について第1分光測色装置1mを用いた測定で得られる第1分光反射率Rm(λ* G_t(k))と、関係情報A1とに基づいて取得され得る。なお、関係情報A1も、例えば、上記(1−4−1)項で述べられた方法で設定され得る。
第1分光反射率Rm(λ* G_t(k))は、式(14)によって算出され得る。
式(14)のうち、LWhite(λ* G_t(k))は、白色校正板について第2分光測色装置1tを用いた測定で取得され得る分光スペクトル(第2白色分光スペクトルとも言う)である。LBlack(λ* G_t(k))は、黒色校正板について第2分光測色装置1tを用いた測定で取得され得る分光スペクトル(第2黒色分光スペクトルとも言う)である。LSample(λ* G_t(k))は、測色対象物100について第2分光測色装置1tを用いた測定で取得され得る分光スペクトル(第2対象分光スペクトルとも言う)である。また、RWhite(λ* G_t(k))は、白色校正板に係る第2分光反射率(第2白色分光反射率)である。なお、ここでは、黒色校正板の分光反射率を0%として扱っている。
ここでは、例えば、白色校正板について第1分光測色装置1mを用いた測定で取得される第1出力信号Cm(k)が式(7)に適用されることで、白色校正板に係る分光スペクトル(第1白色分光スペクトルとも言う)LWhite(λG_m(k))が得られる。そして、該第1白色分光スペクトルLWhite(λG_m(k))の補間演算によって第2白色分光スペクトルLWhite(λ* G_t(k))が取得され得る。
また、例えば、黒色校正板について第1分光測色装置1mを用いた測定で取得される第1出力信号Cm(k)が式(7)に適用されることで、黒色校正板に係る分光スペクトル(第1黒色分光スペクトルとも言う)LBlack(λG_m(k))が得られる。そして、該第1黒色分光スペクトルLBlack(λG_m(k))の補間演算によって第2黒色分光スペクトルLBlack(λ* G_t(k))が取得され得る。
また、例えば、測色対象物100について第1分光測色装置1mを用いた測定で取得される第1出力信号Cm(k)が式(7)に適用されることで、測色対象物100に係る分光スペクトル(第1対象分光スペクトルとも言う)LSample(λG_m(k))が得られる。そして、該第1対象分光スペクトルLSample(λG_m(k))の補間演算によって第2対象分光スペクトルLSample(λ* G_t(k))が取得され得る。
ところで、式(13)で示される第2推定分光反射率R*(λ* G_t(k))は、第2分光測色装置1tを用いた実測で得られる分光スペクトルL(λ* G_t(k))から算出される第2分光反射率の実測値(第2実測分光反射率とも言う)R(λ* G_t(k))からずれる場合がある。このような第2推定分光反射率R*(λ* G_t(k))と第2実測分光反射率R(λ* G_t(k))との間の差は、第2分光測色装置1tにおける波長の校正の精度に起因するものと推測される。
そこで、第2実測分光反射率R(λ* G_t(k))と、第2推定分光反射率R*(λ* G_t(k))との差が極力小さくなるように、第2分光測色装置1tにおける校正済み分光感度s* t(k,λ)が調整される。
具体的には、式(15)で示される目的関数Fが極小領域に含まれるときに仮に設定されている校正済み分光感度s* t(k,λ)が、第2分光測色装置1tに係る校正済み分光感度s* t(k,λ)であるものと推定される。
ここで、式(15)の目的関数Fは、N0個(N0は、自然数)の試料について得られる、第2実測分光反射率R(λ* G_t(k))と第2推定分光反射率R*(λ* G_t(k))との差の2乗の総和を示す。そして、目的関数Fが極小領域に含まれると、第2推定分光反射率R*(λ* G_t(k))が第2実測分光反射率R(λ* G_t(k))に合わせ込まれたことになる。なお、目的関数Fが極小領域に含まれる状態には、例えば、目的関数Fが最小値となっている状態、あるいは目的関数Fが最小値の近傍にある状態等が含まれる。このような目的関数Fが最小値の近傍にある状態には、例えば、目的関数Fの変化が粗く把握された後に、最小の値の付近で目的関数Fが予め設定された所定値以下の傾きでしか変化しなくなった状態等が含まれる。また、例えば、第2推定分光反射率R*(λ* G_t(k))と第2実測分光反射率R(λ* G_t(k))との差が、色差が0.1以下程度となるような予め設定された所定の許容範囲に収まるような状態が、目的関数Fが極小領域に含まれている状態とされても良い。
また、N0個の各試料が、測定対象となる波長範囲において、波長の所定量の変化に対する反射率の変化量が予め設定された閾値を超える分光反射率を呈するのであれば、第2推定分光反射率R*(λ* G_t(k))が第2実測分光反射率R(λ* G_t(k))に合わせ込まれ得る。つまり、校正済み分光感度s* t(k,λ)が容易かつ精度良く設定され得る。
図37は、合わせ込みで用いられるN0個の校正用の試料についての分光反射率を例示する図である。測定対象となる波長範囲の全域が、N0個の校正用の試料のうちの何れかの校正用の試料において分光反射率が大きく変化する領域によってカバーされていれば、測定対象となる波長範囲の全域において、第2推定分光反射率R*(λ* G_t(k))が第2実測分光反射率R(λ* G_t(k))に精度良く合わせ込まれたことになる。
図37で示されるように、例えば、5個(N0=5)程度の複数の校正用の試料が用いられれば、可視光線の波長範囲の全域において、第2推定分光反射率R*(λ* G_t(k))が第2実測分光反射率R(λ* G_t(k))に精度良く合わせ込まれ得る。なお、測色対象物100が特定色の物体であれば、例えば、その特定色に対応する波長範囲において分光反射率が大きく変化する1以上の校正用の試料が用いられても良い。
ところで、目的関数Fを極小領域に含ませるために、例えば、校正済み分光感度s* t(k,λ)を変化させつつ、仮の校正済み分光感度s* t(k,λ)毎の目的関数Fを求める必要がある。
ここで、センサー部133のk番目の受光素子について、第2分光測色装置1tにおける波長校正で得られる校正済み分光感度s* t(k,λ)は、式(16)のL次関数で示される重心波長λ* G_t(k)と式(17)で示されるL次関数で示される半値幅Δλ* FWHM(k)とで規定される正規分布の関数であるものとする。なお、次数Lは、例えば、2以上の自然数であれば良い。
図38は、k番目の受光素子における分光感度の一例を示す図である。
この場合、式(15)で規定される目的関数Fを極小領域に含ませるには、例えば、該目的関数Fを極小領域に含ませるような、式(16)の係数aL,・・・,a0および式(17)の係数bL,・・・,b0が求められれば良い。具体的には、例えば、L=2であれば、6つの係数a2,a1,a0,b2,b1,b0が求められれば良い。そして、1つの校正用の試料について、360〜740nmの10nm毎の受光素子からの出力に基づくデータが得られれば、5つの校正用の試料について、195点のデータが得られる。このうち、校正用の試料の反射率が大きく変化している部分についての相当数のデータが存在していれば、式(16),(17)についての6つの係数a2,a1,a0,b2,b1,b0の値が容易に得られる。
上記のことから、下記工程i〜工程vによって、第1分光測色装置1mで取得される第1出力信号Cm(k)から第2推定分光反射率R*(λ* G_t(k))が推定される。そして、下記工程i〜工程vが繰り返されて、第2推定分光反射率R*(λ* G_t(k))と、第2分光測色装置1tを用いた実測で取得される第2実測分光反射率R(λ* G_t(k))とが、その差が極小領域に含まれて非常に近くなるような、第2分光測色装置1tの校正済み分光感度s* t(k,λ)が求められる。ここで、第2推定分光反射率R*(λ* G_t(k))は、1以上の対象物としての校正用の試料について第1分光測色装置1mの受光部13で測定される分光スペクトルと仮の校正済み分光感度s* t(k,λ)とを用いて算出される。また、第2実測分光反射率R(λ* G_t(k))は、1以上の対象物としての校正用の試料について第2分光測色装置1tで測定される分光反射率の実測値である。そして、ここで求められる校正済み分光感度s* t(k,λ)を示す情報が、校正済み分光感度情報S1として、記憶部15に記憶される。
[工程i]第2分光測色装置1tのk番目の受光素子の校正済み分光感度s* t(k,λ)を規定する重心波長λ* G_t(k)と半値幅Δλ* FWHM(k)とが仮に決められる。このとき、式(16)の係数aL,・・・,a0および式(17)の係数bL,・・・,b0が仮に決められる。これにより、式(12)の校正済み分光感度s* t(k,λ)の逆行列が仮に決められる。
[工程ii]第1分光測色装置1mで取得される第1出力信号Cm(k)と、式(7)とに基づいて、校正用の試料の輝度(第1分光スペクトル)L(λG_m(k))が求められる。
[工程iii]工程iiで求められた第1分光スペクトルL(λG_m(k))に基づいて、波長の補間が行われつつ、式(10)によって、第2分光測色装置1tで取得され得る第2推定出力信号Ct(k)が算出される。
[工程iv]工程iiiで算出された第2推定出力信号Ct(k)と、工程iで仮決めされた校正済み分光感度s* t(k,λ)が用いられた式(12)とに基づいて、第2推定分光スペクトルL*(λ* G_t(k))が算出される。
[工程v]工程ivで算出された第2推定分光スペクトルL*(λ* G_t(k))と、式(13)とに基づいて、第2推定分光反射率R* t(λ* G_t(k))が算出される。
このようにして、第1分光反射率Rm(λ)を第2分光反射率Rt(λ)に変換するために分光感度に係る第2のずれを補正するための第2変換ルールを規定する校正済み分光感度情報S1が設定される。すなわち、このような構成が採用される場合、第1分光反射率と第2分光反射率との間におけるずれが、直線性に係る第1のずれと、分光感度に係る第2のずれと、に分けて扱われて、式(7),(10),(12),(13)等の限定的な計算等が用いられて、第2変換ルールが設定される。これにより、比較的少数の校正用の試料が用いられて、第2変換ルールが設定され得る。すなわち、異なる第1および第2分光測色装置1m,1tとの間における測定値の高精度な変換ルールが容易に設定され得る。
そして、第1分光測色装置1mの受光部13で測定された第1分光スペクトルと、第2変換ルールとしての校正済み分光感度とが用いられて、第2分光測色装置1tで取得され得るものと推定される第2推定分光反射率R* t(λ* G_t(k))が算出され得る。
図39は、分光感度に係る第2のずれを補正する動作フローを示すフローチャートである。
まず、ステップST11では、第1分光測色装置1mの受光部13によって、光源11から発せられる照明光の測色対象物100に対する照射に応じて測色対象物100の表面で生じる反射光を分光することで、該反射光の第1分光スペクトルL(λG_m(k))が測定される。ここでは、例えば、算出部14maにおいて、測色対象物100について第1分光測色装置1mで取得される第1出力信号Cm(k)に基づいて、測色対象物100の第1分光スペクトルL(λG_m(k))が算出される。
次に、ステップST12では、第1分光測色装置1mの変換部14mcによって、第2分光測色装置1tで取得され得る第2推定分光反射率R* t(λ* G_t(k))が算出される。ここでは、例えば、記憶部15に記憶されている校正済み分光感度情報S1と、ステップST11で測定された第1分光スペクトルL(λG_m(k))とが用いられて、第1分光スペクトルL(λG_m(k))から第2推定分光反射率R* t(λ* G_t(k))が算出される。
このような構成が採用されていることで、反射率に係る第1のずれとは別に、分光感度に係る第2のずれについての校正済み分光感度が設定されるため、異なる第1および第2分光測色装置1m,1tとの間における測定値の高精度な変換ルールが容易に設定され得る。
<(2)変形例>
なお、本発明は上述の一実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
例えば、上記一実施形態では、装置間における直線性に係る第1のずれを補正するための関係情報A1を設定するために、光の波長に拘わらず反射率が略一定となる分光反射率を有する測色対象物100として、無彩色の校正用の試料が用いられたが、これに限られない。例えば、相互に分光反射率が異なる複数の無彩色の校正用の試料のうちの少なくとも一部の校正用の試料が、第1分光測色装置1mの測定対象となる波長範囲のうちの一部の波長範囲において反射率が所定の値域の幅内に含まれている有彩色の校正用の試料に置換されても良い。つまり、例えば、装置間における直線性に係る第1のずれを補正するための関係情報A1を設定するために用いられる複数の校正用の試料の全てが、測定対象となる波長範囲のうちの一部の波長範囲において反射率が所定の値域の幅内に含まれている校正用の試料である態様が採用され得る。このとき、例えば、該複数の校正用の試料のうち、全ての校正用の試料が無彩色であっても良いし、一部の校正用の試料が無彩色であっても良いし、全ての校正用の試料が無彩色でなくても良い。
このような態様が採用される場合には、各波長についての反射率と反射率差との関係を求めるための複数の校正用の試料が容易に準備され得る。したがって、各波長についての反射率と反射率差との関係が容易に求められ得る。
さらに、関係情報A1を設定するために採用される複数の校正用の試料が、例えば、測定対象の波長範囲における少なくとも一部の波長範囲において反射率が予め設定された所定の値域の幅内に含まれ且つ相互に異なる校正用の試料であっても良い。但し、このような構成が採用される場合、測定対象の波長範囲のうちの一部の波長範囲のみにおいて反射率が予め設定された所定の値域の幅内に含まれる校正用の試料については、該一部の波長範囲についての第1分光反射率Rm(λ)と反射率差ΔR(λ)との関係を求める際に採用され得る。例えば、図4に示される赤色の校正用の試料については、測定対象の波長範囲のうち、550nm以下の範囲において、分光反射率が所定の値域の幅内で略一定となり得る。このため、該赤色の校正用の試料は、550nm以下の範囲についての第1分光反射率Rm(λ)と反射率差ΔR(λ)との関係を求める際に校正用の試料として採用され得る。このような構成が採用される場合でも、各波長についての第1分光反射率Rm(λ)と該第1分光反射率Rm(λ)に係るずれ成分としての反射率差ΔR(λ)との関係が容易に求められる。すなわち、異なる第1および第2分光測色装置1m,1tの間における測定値の高精度な変換ルールの設定がさらに容易になり得る。
また、上記一実施形態では、第1分光測色装置1mと第2分光測色装置1tとの間で、透明部材17tによる再帰反射等といった光学系の相違に起因して、第1分光反射率Rm(λ)と第2分光反射率Rt(λ)との間に反射率差が生じ得る例を挙げて説明したが、これに限られない。例えば、上記一実施形態に係る直線性に係る第1のずれの補正法は、第1分光測色装置1mと第2分光測色装置1tとの間で、受光部13の受光素子および増幅回路等における特性の違いに起因して入射光量と出力との関係がずれることで生じる直線性に係る第1のずれの補正にも適用可能である。
図40は、第1および第2分光測色装置1m,1tにおけるそれぞれの入射光量と出力される信号強度との関係を例示する図である。図40では、第1分光測色装置1mにおける入射光量と出力される信号強度との関係が実線で描かれており、第2分光測色装置1tにおける入射光量と出力される信号強度との関係が破線で描かれている。
また、上記一実施形態では、第1分光測色装置1mと第2分光測色装置1tとが相互に異なる機種の装置であったが、これに限られない。例えば、第1分光測色装置1mと第2分光測色装置1tとが同一機種の異なる装置であっても良い。つまり、上記一実施形態における直線性に係る第1のずれの補正法は、同一機種の異なる装置である第1分光測色装置1mと第2分光測色装置1tとの間で生じる直線性に係る第1のずれの補正にも適用可能である。
例えば、図41で示されるように、第1分光測色装置1mにも、第2分光測色装置1tにおける透明部材17tと同様な構成および機能を有する透明部材17mが設けられており、第1分光測色装置1mと第2分光測色装置1tとが同一機種の異なる装置である場合を想定する。この場合、透明部材17mと透明部材17tとの間で、図42で示されるように分光反射率が異なり得る。図42では、例えば、透明部材17mにおける分光反射率が実線で示され、透明部材17tにおける分光反射率が破線で示されている。つまり、透明部材17m,17t等における分光反射率は、透明部材17m,17tの個体毎にばらつき得る。これにより、第1分光測色装置1mと第2分光測色装置1tとの間で再帰反射の態様が異なり得る。その結果、同一の測色対象物100について、第1分光測色装置1mを用いた測定で得られる第1分光反射率Rm(λ)と第2分光測色装置1tを用いた測定で得られる第2分光反射率Rt(λ)との間にずれが生じ得る。
また、上記一実施形態では、例えば、分光感度に係る第2のずれの補正について、式(4)〜(17)の14個の式を挙げて説明したが、これに限られない。例えば、14個の式である式(4)〜(17)の少なくとも一部を、適宜統合または分解して1以上の式としても良い。また、第1分光測色装置1mと第2分光測色装置1tとが同一のメーカー製のものであり、そのメーカーは各装置の波長校正に係る情報を有していれば、第1分光測色装置1mで得られたデータと第2分光測色装置1tの波長校正に係る情報とに基づいて、第2推定分光反射率を算出し、該第2推定分光反射率と、第2分光測色装置1tを用いた実測で得られた第2実測分光反射率との差の2乗和が最小となるような校正済み分光感度s* t(k,λ)が求められるような構成が採用されても良い。
また、上記一実施形態では、校正済み分光感度s* t(k,λ)が、式(16)のL次関数で示される重心波長λ* G_t(k)と式(17)で示されるL次関数で示される半値幅Δλ* FWHM(k)とで規定される正規分布の関数であったが、これに限られない。例えば、基準の式を適宜シフトさせて校正済み分光感度を表す式等、別形態の式によって校正済み分光感度s* t(k,λ)が表されるようにしても良い。
また、上記一実施形態では、第1分光測色装置1mにおける真の分光感度sm(k,λ)および第2分光測色装置1tにおける真の分光感度st(k,λ)が正確に取得されているものとして説明したが、これに限られない。例えば、輝線光源を用いた測定等によって得られた分光感度と、真の分光感度sm(k,λ),st(k,λ)との間に多少の誤差が生じても、式(15)で規定される目的関数Fを極小領域に含ませて、校正済み分光感度s* t(k,λ)が算出される課程で、該多少の誤差による影響が低減され得る。このため、第1分光測色装置1mがあるメーカーの製品であり、第2分光測色装置1tがその他のメーカーの製品である場合であっても、第2変換ルールを規定する校正済み分光感度情報S1が精度良く設定され得る。
また、上記一実施形態では、式(15)の目的関数Fが極小領域に含まれるように、式(16)の係数aL,・・・,a0および式(17)の係数bL,・・・,b0が調整されたが、これに限られない。例えば、第1および第2分光測色装置1m,1tが同一のメーカーの製品であり、そのメーカーにおいて、第1分光測色装置1mにおける真の分光感度sm(k,λ)および第2分光測色装置1tにおける真の分光感度st(k,λ)が既知であれば、第2分光測色装置1tの工場における校正で決められた校正済み分光感度s* t(k,λ)が、そのまま第2変換ルールに採用されても良い。
ここで言う工場における校正は、例えば、校正済み分光感度s* t(k,λ)を規定する式(16)の係数aL,・・・,a0および式(17)の係数bL,・・・,b0を求めるものであれば良い。ここで、工場における校正は、種々の方法で実行され得る。具体的には、例えば、輝線光源等から発せられる波長の半値幅が非常に狭い単色光について、第2分光測色装置1tを用いた測定で得られた分光スペクトルの測定値と、実際の単色光の分光スペクトルとが一致するように、係数aL,・・・,a0,bL,・・・,b0が設定される。つまり、校正済み分光感度s* t(k,λ)が校正結果として設定される。
このような構成が採用される場合、まず、測色対象物100について第1分光測色装置1mで取得される第1出力信号Cm(k)から式(7)によって第1分光スペクトルL(λG_m(k))が算出される。次に、該第1分光スペクトルL(λG_m(k))と分光感度st(k,λ)とが式(10)に適用されることで、第2分光測色装置1tで取得され得る第2推定出力信号Ct(k)が算出される。その次に、該第2推定出力信号Ct(k)と校正結果としての校正済み分光感度s* t(k,λ)の逆行列が式(12)に適用されることで、第2推定分光スペクトルL*(λ* G_t(k))が算出される。そして、該第2推定分光スペクトルL*(λ* G_t(k))が式(13)に適用されることで、第2推定分光反射率R*(λ* G_t(k))が算出され得る。そして、目的関数Fを極小領域に含ませるような演算が不要となる。
また、上記一実施形態では、光源11から発せられる照射光の分光スペクトルが一定であるとしていたが、これに限られない。例えば、照射光の分光スペクトルが時間の経過とともに変動する場合を想定する。この場合、第1分光測色装置1mにおいて、照射光を直接受光して参照用の出力信号を取得し、該参照用の出力信号によって、測色対象物100、白色校正板、黒色校正板についてそれぞれ得られる出力信号を除した上で、式(13),(14)等で分光反射率が算出されるようにしても良い。
また、上記一実施形態では、メーカー側で、関係情報A1および校正済み分光感度情報S1が設定される場合を想定して説明したが、これに限られない。例えば、ユーザー側で、関係情報A1および校正済み分光感度情報S1が設定されても良い。このとき、ユーザー側で、第1および第2分光測色装置1m,1t、直線性に係る第1のずれを補正するための複数の無彩色の校正用の試料、および分光感度に係る第2のずれを補正するための1以上の有彩色の校正用の試料が用いられる。具体的には、例えば、ユーザー側で、複数の無彩色の校正用の試料および1以上の有彩色の校正用の試料について第1および第2分光測色装置1m,1tを用いた測定が行われ、その結果得られる情報が、関係情報A1および校正済み分光感度情報S1として記憶部15に記述されても良い。これにより、ユーザーが所有している第2分光測色装置1tが用いられて、関係情報A1および校正済み分光感度情報S1が設定されるため、異なる第1および第2分光測色装置1m,1tの間における測定値の高精度な変換ルールが設定され得る。
また、上記一実施形態では、図1、図2および図41では、国際照明委員会(CIE)が推奨する45/0(45°照明、垂直受光)の構成あるいはCIEが推奨する0/45(垂直照明、45°受光)の構成が採用されたが、これに限られない。例えば、第1分光測色装置1mおよび第2分光測色装置1tにおいて、例えば、光源11と開口部2oと受光部13との間に積分球が設けられた構成等といったその他の構成が採用されても良い。
なお、上記一実施形態および各種変形例をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。