1 分光測色計
図1の模式図は、分光測色計および1次校正用の校正装置を示す。図2の模式図は、分光測色計および2次校正用の校正装置を示す。図1および2の各々には、分光測色計に備えられる分光ユニットの断面が示される。
分光測色計1000は、図1および2の各々に示されるように、分光ユニット1010および信号処理機構1011を備える。
分光測色計1000が測定を行う場合は、分光ユニット1010が、被測定光1020を受光し、受光した被測定光1020に含まれる第1の波長成分、第2の波長成分、・・・、第40の波長成分のエネルギー量をそれぞれ示す第1の信号、第2の信号、・・・、第40の信号を出力する。信号処理機構1011は、第1の信号、第2の信号、・・・、第40の信号の信号を用いて分光反射率を求め、求めた分光反射率を出力する。
分光測色計1000においては、測定される物体に光が照射された場合に測定される物体により反射される光が被測定光1020になり、分光反射率が求められる。分光反射率以外の分光特性が求められてもよい。例えば、分光透過率、測色値等が求められてよい。分光透過率が求められる場合は、測定される物体を透過した光が被測定光1020になる。測色値は、マンセル表色系、L*a*b*表色系、L*C*h表色系、ハンターLab表色系、XYZ表色系等で表現される。分光測色計1000が他の種類の分光装置に置き換えられてもよい。例えば、分光測色計1000が分光輝度計に置き換えられてもよい。分光輝度計においては、測定される光源により放射された光が被測定光1020になり、分光放射輝度が求められる。分光反射率以外の分光特性が求められる場合も、後述の校正と同様の校正が可能である。
2 分光ユニット
図3の模式図は、分光ユニットを示す斜視図である。
分光ユニット1010は、図1,2および3の各々に示されるように、光学系1030およびリニアアレイセンサー1031を備える。光学系1030は、ポリクロメーターであり、スリット板1040および凹面回折格子1041を備える。
図4の模式図は、リニアアレイセンサーを示す平面図である。
リニアアレイセンサー1031は、図4に示されるように、センサー(受光センサー)1050−1,1050−2,・・・,1050−40を備える。
分光測色計1000が測定を行う場合は、被測定光1020がスリット板1040に形成された矩形のスリット1060に導かれる。スリット1060に導かれた被測定光1020は、スリット1060を通過する。スリット1060を通過した被測定光1020は、スリット1060から凹面回折格子1041の回折面1070まで進み、回折面1070に反射される。被測定光1020は、回折面1070に反射されることにより、スペクトルに変換される。スペクトルに変換された被測定光1020は、凹面回折格子1041の回折面1070からリニアアレイセンサー1031の受光面1080まで進み、受光面1080において結像し、リニアアレイセンサー1031に受光される。センサー1050−1,1050−2,・・・,1050−40は受光面1080において方向1100に直線状に配列される。スリット板1040、凹面回折格子1041およびリニアアレイセンサー1031は、受光面1080に結像する光の波長が方向1100の位置に応じて変化するように配置される。このため、リニアアレイセンサー1031がスペクトルに変換された被測定光1020を受光した場合は、センサー1050−1,1050−2,・・・,1050−40が、スペクトルに含まれる互いに異なる第1の波長成分、第2の波長成分、・・・、第40の波長成分のエネルギー量をそれぞれ示す第1の信号、第2の信号、・・・、第40の信号をそれぞれ出力する。出力された第1の信号、第2の信号、・・・、第40の信号は、信号処理機構1011に入力される。信号処理機構1011は、入力された第1の信号、第2の信号、・・・、第40の信号を用いて分光反射率を求める。
光学系1030は、スリット1060から回折面1070に至る光軸1110および回折面1070から受光面1080に至る光軸1111を有する。
光学系1030が他の種類の光学系に置き換えられてもよい。例えば、凹面回折格子1041が平面回折格子および凹面鏡に置き換えられてもよい。また、スリット板1040および凹面回折格子1041が、円形のスリットが形成されたスリット板、シリンドリカルレンズおよびリニアバリアブルフィルターに置き換えられてもよい。円形のスリットを通過した被測定光は、シリンドリカルレンズを通過する。被測定光がシリンドリカルレンズを通過することにより、被測定光の断面形状が円形状から線状に変換される。シリンドリカルレンズを通過した被測定光は、リニアバリアブルフィルターを通過する。被測定光は、リニアバリアブルフィルターを通過することにより、スペクトルに変換される。
リニアアレイセンサー1031が他の種類の受光センサーに置き換えられてもよい。例えば、リニアアレイセンサー1031が、39個以下または41個以上のセンサーを備えるリニアアレイセンサーに置き換えられてもよい。光学系によっては、リニアアレイセンサー1031がエリアセンサーに置き換えられてもよい。
3 信号処理機構
図5のブロック図は、信号処理機構を示す。
信号処理機構1011は、図5に示されるように、A/D変換機構1120および演算機構1121を備える。
第1の信号、第2の信号、・・・、第40の信号が信号処理機構1011に入力された場合は、第1の信号、第2の信号、・・・、第40の信号がA/D変換機構1120に入力される。A/D変換機構1120に入力された第1の信号、第2の信号、・・・、第40の信号は、第1の信号値、第2の信号値、・・・、第40の信号値にそれぞれアナログ/デジタル変換される。第1の信号値、第2の信号値、・・・、第40の信号値は、演算機構1121に入力される。演算機構1121は、入力された第1の信号値、第2の信号値、・・・、第40の信号値および演算機構1121に格納された分光感度1130−1,1130−2,・・・,1130−40を用いて分光反射率を求める。分光感度1130−1,1130−2,・・・,1130−40は、それぞれセンサー1050−1,105−2,・・・,1050−40の分光感度である。分光感度1130−1,1130−2,・・・,1130−40に代えて、分光感度1130−1,1130−2,・・・,1130−40から導かれる情報であって分光反射率を求めるために必要な情報が演算機構1121に格納されてもよい。
演算機構1121は、コンピューターであり、インストールされたプログラムにしたがって動作する。演算機構1121が行う処理の全部または一部がプログラムを伴わない電子回路により行われてもよい。演算機構1121が行う処理の全部または一部が手作業により行われてもよい。
4 センサーの分光感度の例
図6のグラフは、センサーの分光感度および1次校正用の被測定光の分光強度の例を示す。
センサー1050−1の分光感度1140−1の中心波長、センサー1050−2の分光感度1140−2の中心波長、・・・、センサー1050−40の分光感度1140−40の中心波長は、図6に示されるように、互いに異なり、それぞれ約352nm、約363nm、・・・、約740nmである。これにより、センサー1050−1,1050−2,・・・,1050−40は、互いに異なる第1の波長成分、第2の波長成分、・・・、第40の波長成分のエネルギー量をそれぞれ示す第1の信号、第2の信号、・・・、第40の信号をそれぞれ出力する。
5 分光測色計の校正の必要性
分光感度1140−1,1140−2,・・・,1140−40の各々は、スリット板1040、凹面回折格子1041およびリニアアレイセンサー1031の配置、形状、大きさ等により変化する。このため、分光反射率が精度よく求められるためには、演算機構1121に格納された分光感度1130−1,1130−2,・・・,1130−40を、スリット板1040、凹面回折格子1041およびリニアアレイセンサー1031の配置、形状、大きさ等に応じて変更し、真の分光感度1140−1,1140−2,・・・,1140−40にそれぞれ近づけなければならない。以下では、演算機構1121に格納された分光感度1130−1,1130−2,・・・,1130−40を真の分光感度1140−1,1140−2,・・・,1140−40にそれぞれ近づけることを分光測色計1000の校正という。分光測色計1000の校正は、1次校正および2次校正からなる。
6 1次校正用の校正装置
1次校正用の校正装置1150は、図1に示されるように、HgCdランプ1160および制御演算機構1161を備える。
1次校正用の校正装置1150を用いて分光測色計1000の1次校正が行われる場合は、制御演算機構1161がHgCdランプ1160に1次校正用の被測定光1170を放射させる。放射された1次校正用の被測定光1170は、分光測色計1000により測定される。1次校正用の被測定光1170が分光測色計1000により測定された場合は、1次校正用の被測定光1170の分光強度に応じた第1の信号値、第2の信号値、・・・、第40の信号値が演算機構1121に入力される。入力された第1の信号値、第2の信号値、・・・、第40の信号値は、演算機構1121から制御演算機構1161へ転送される。制御演算機構1161は、転送されてきた第1の信号値、第2の信号値、・・・、第40の信号値を用いてセンサー1050−1の分光感度、センサー1050−2の分光感度、・・・、センサー1050−40の分光感度を求める。求められたセンサー1050−1の分光感度、センサー1050−2の分光感度、・・・、センサー1050−40の分光感度は、制御演算機構1161から演算機構1121へ転送され、それぞれ演算機構1121に新たに格納される分光感度1130−1,1130−2,・・・,1130−40になる。これにより、分光測色計1000の1次校正が行われた後は、演算機構1121が第1の信号、第2の信号、・・・、第40の信号および新たに求められたセンサー1050−1の分光感度、センサー1050−2の分光感度、・・・、センサー1050−40の分光感度を用いて分光反射率を求めることができる。
制御演算機構1161は、コンピューターであり、インストールされたプログラムにしたがって動作する。制御演算機構1161が行う処理の全部または一部がプログラムを伴わない電子回路により行われてもよい。制御演算機構1161が行う処理の全部または一部が手作業により行われてもよい。制御演算機構1161が分光測色計1000に内蔵されてもよい。
7 輝線成分の波長
1次校正用の被測定光1170は、図6に示されるように、輝線成分1180−1,1180−2,1180−3,1180−4,1180−5および1180−6を含む。輝線成分1180−1,1180−2,1180−3,1180−4,1180−5および1180−6の波長は、それぞれ404.55nm,435.84nm,508.58nm,546.07nm,578nmおよび647.85nmである。輝線成分1180−1,1180−2,1180−3,1180−4,1180−5および1180−6は、分光測色計1000の1次校正に用いられる。
輝線成分1180−1,1180−2,1180−3,1180−4,1180−5および1180−6以外の輝線成分が分光測色計1000の1次校正に用いられてもよい。5個以下または7個以上の輝線成分が分光測色計1000の1次校正に用いられてもよい。HgCdランプ1160以外の輝線光源から放射される光が1次校正用の被測定光1170であってもよい。
8 2次校正用の校正装置
2次校正用の校正装置1190は、図2に示されるように、照射機構1200、タイル1201、温度センサー1202および制御演算機構1203を備える。
2次校正用の校正装置1190を用いて分光測色計1000の2次校正が行われる場合は、制御演算機構1203が照射機構1200に光をタイル1201に照射させる。タイル1201により反射される光は、2次校正用の被測定光1210になり、分光測色計1000に測定される。2次校正用の被測定光1210が分光測色計1000により測定された場合は、演算機構1121により分光反射率が出力される。出力された分光反射率は、演算機構1121から制御演算機構1203へ転送される。制御演算機構1203は、温度センサー1202により測定されたタイル1201の温度を用いて転送されてきた分光反射率を補正し、温度補正された分光反射率を用いてセンサー1050−1の分光感度、センサー1050−2の分光感度、・・・、センサー1050−40の分光感度を求める。求められたセンサー1050−1の分光感度、センサー1050−2の分光感度、・・・、センサー1050−40の分光感度は、制御演算機構1203から演算機構1121へ転送され、それぞれ演算機構1121に新たに格納される分光感度1130−1,1130−2,・・・,1130−40になる。これにより、分光測色計1000の2次校正が行われた後は、演算機構1121が第1の信号、第2の信号、・・・、第40の信号および新たに求められたセンサー1050−1の分光感度、センサー1050−2の分光感度、・・・、センサー1050−40の分光感度を用いて分光反射率を求めることができる。
タイル1201が他の種類の物体に置き換えられてもよい。分光測色計1000が分光輝度計に置き換えられる場合は、タイル1201が光源に置き換えられる。
9 分光測色計の校正の手順
図7の模式図は、分光測色計の校正の手順を示す。
分光測色計1000の校正においては、図7に示されるように、個体1220−1,・・・,1220−Sが校正サイト1240および1241を順次に通過する。個体1220−1,・・・,1220−Sの各々は、分光測色計1000の個体である。個体1220−1,・・・,1220−Sの各々は、校正サイト1240を通過した後に校正サイト1241を通過する。校正サイト1240にある個体1220−jは、1次校正用の校正装置1150を用いた1次校正の対象にされる。校正サイト1241にある個体1220−iは、2次校正用の校正装置1190を用いた2次校正の対象にされる。これにより、個体1220−1,・・・,1220−Sの各々は、1次校正の対象にされた後に2次校正の対象にされる。2次校正の対象にされる個体1220−1,・・・,1220−Sは、1次校正の対象にされる個体1220−1,・・・,1220−Sと同じである。個体1220−1,・・・,1220−Sの各々は、1次校正および2次校正が行われた後に製品として出荷される。
個体1220−iの2次校正に用いられる平均分光反射率1250は、個体1220−iにより出力された分光反射率、・・・、個体1220−kにより出力された分光反射率の平均である。
10 分光測色計の1次校正の詳細
10.1 分光測色計の1次校正において用いられるモデル
分光測色計1000の1次校正においては、第1のモデル、第2のモデルまたは第3のモデルが用いられる。
10.2 センサーの分光感度を示す指標
第1のモデル、第2のモデルおよび第3のモデルの各々においては、センサー1050−1,1050−2,・・・,1050−40が位置iにより識別される。位置iは、互いに異なる40個の値i1,i2,・・・,i40のいずれかをとる。センサー1050−1,1050−2,・・・,1050−40が位置以外の指標により識別されてもよい。例えば、センサー1050−1,1050−2,・・・,1050−40が後述する基準分光感度の中心波長、センサー番号等により識別されてもよい。
第1のモデル、第2のモデルおよび第3のモデルの各々においては、位置iにあるセンサーの分光感度が、位置iにあるセンサーの分光感度の中心波長λG(i)および半値幅FWHM(i)により示される。中心波長λG(i)および半値幅FWHM(i)の各々は、位置iの関数である。
位置iにあるセンサーの分光感度は、独立変数が波長であり従属変数が感度であるガウス関数により良好に近似される。当該ガウス関数の形状は、中心波長および半値幅により決定される。このため、中心波長λG(i)および半値幅FWHM(i)は、位置iにあるセンサーの分光感度を示す指標として好適である。ただし、位置iにあるセンサーの分光感度を示す指標が変更されてもよい。位置iにあるセンサーの分光感度を示す指標が1個の変数または3個以上の変数からなることも許される。
10.3 第1のモデル
第1のモデルを用いて分光測色計1000の1次校正が行われる場合は、中心波長λG(i)が位置iのn次関数で表される式(1)が作成される。
また、半値幅FWHM(i)が位置iのm次関数により表される式(2)が作成される。
第1のモデルは、式(1)および(2)からなる。係数an,・・・,a0およびbn,・・・,b0は、位置i1にあるセンサーの分光感度、位置i2にあるセンサーの分光感度、・・・、位置i40にあるセンサーの分光感度を決める校正パラメーターになる。
第1のモデルを用いて分光測色計1000の1次校正が行われる場合は、中心波長λG(i)および半値幅FWHM(i)により示されるセンサーの分光感度がセンサーにより出力される信号に適合するように、校正パラメーター係数an,・・・,a0およびbn,・・・,b0が調整される。詳細は、第3のモデルを用いて分光測色計1000の1次校正が行われる場合についての説明において述べる。
続いて、作成された式(1)および調整された校正パラメーター係数an,・・・,a0を用いて中心波長λG(i)が求められ、作成された式(2)および調整された校正パラメーターbn,・・・,b0を用いて半値幅FWHM(i)が求められる。
続いて、求められた中心波長λG(i)および半値幅FWHM(i)を用いて位置iにあるセンサーの分光感度が求められる。求められる位置iにあるセンサーの分光感度は、求められた中心波長λG(i)および半値幅FWHM(i)により示される分光感度である。
10.4 第2のモデル
第2のモデルを用いて分光測色計1000の1次校正が行われる場合は、スリット板1040、凹面回折格子1041およびリニアアレイセンサー1031の配置、形状、大きさ等が設計狙いに一致する理想的な分光測色計1000が想定され、想定された分光測色計1000に備えられる位置iにあるセンサーの基準分光感度が光学シミュレーションにより求められる。位置iにあるセンサーの基準分光感度は、位置iの関数である。
続いて、位置iにあるセンサーの基準分光感度の中心波長λG0(i)および半値幅FWHM0(i)が求められる。
中心波長λG0(i)および半値幅FWHM0(i)は、位置iにあるセンサーの基準分光感度を示す指標として好適である。
続いて、中心波長λG0(i)からの中心波長λG(i)のずれΔλG(i)が位置iの1次関数で表される式(3)が作成される。
また、半値幅FWHM0(i)に対する半値幅FWHM(i)の比ratio(i)が位置iの1次関数で表される式(4)が作成される。
第2のモデルは、式(3)および(4)からなる。係数a1,a0,b1およびb0は、位置i1にあるセンサーの分光感度、位置i2にあるセンサーの分光感度、・・・、位置i40にあるセンサーの分光感度を決める校正パラメーターになる。
中心波長λG(i)は、式(3)から導かれる式(5)を用いて求められる。
第2のモデルを用いて分光測色計1000の1次校正が行われる場合は、中心波長λG(i)および半値幅FWHM(i)により示されるセンサーの分光感度がセンサーにより出力される信号に適合するように、校正パラメーターa1,a0,b1およびb0が調整される。詳細は、第3のモデルを用いて分光測色計1000の1次校正が行われる場合についての説明において述べる。
続いて、作成された式(3)ならびに調整された校正パラメーター係数a1およびa0を用いてずれΔλG(i)が求められ、作成された式(4)ならびに調整された校正パラメーターb1およびb0を用いて比ratio(i)が求められる。
続いて、求められたずれΔλG(i)および比ratio(i)を用いて位置iにあるセンサーの分光感度が求められる。
図8の模式図は、位置iにあるセンサーの基準分光感度と位置iにあるセンサーの分光感度との関係を示す。
位置iにあるセンサーの分光感度は、図8に示されるように、位置iにあるセンサーの基準分光感度を中心波長λG0(i)を中心として波長軸方向にratio(i)倍に拡大し、拡大された基準分光感度を波長軸方向にΔλG(i)だけ移動させたものである。
10.5 第3のモデル
第3のモデルを用いて分光測色計1000の1次校正が行われる場合は、スリット板1040、凹面回折格子1041およびリニアアレイセンサー1031の配置、形状、大きさ等が設計狙いに一致する理想的な分光測色計1000が想定され、想定された分光測色計1000が備える位置iにあるセンサーの基準分光感度が光学シミュレーションにより求められる。位置iにあるセンサーの基準分光感度は、位置iの関数である。
続いて、位置iにあるセンサーの基準分光感度の中心波長λG0(i)および半値幅FWHM0(i)が求められる。中心波長λG0(i)および半値幅FWHM0(i)の各々は、位置iの関数である。
中心波長λG0(i)および半値幅FWHM0(i)は、位置iにあるセンサーの基準分光感度を示す指標として好適である。
続いて、中心波長λG0(i)からの中心波長λG(i)のずれがリニアアレイセンサー1031の配置誤差a1,a2およびa3、スリット1060の幅の製作誤差a4ならびに凹面回折格子1041の配置誤差a5の1次関数により表される式(6)が作成される。また、半値幅FWHM0(i)からの半値幅FWHM(i)のずれがリニアアレイセンサー1031の配置誤差a1,a2およびa3、スリット1060の幅の製作誤差a4ならびに凹面回折格子1041の配置誤差a5の1次関数により表される式(7)が作成される。中心波長λG0(i)および半値幅FWHM0(i)の各々は、位置iの関数である。誤差a1,a2,a3,a4およびa5は、分光測色計1000の機械的誤差を示す指標である。
リニアアレイセンサー1031の配置誤差a1は、センサー1050−1,1050−2,・・・,1050−40が配列される方向1100についてのリニアアレイセンサー1031の配置誤差である。リニアアレイセンサー1031の配置誤差a2は、光軸1111が伸びる方向1101についてのリニアアレイセンサー1031の配置誤差である。リニアアレイセンサー1031の配置誤差a3は、方向1100および1101の各々と垂直をなす方向に伸びるリニアアレイセンサー1031の中心軸1116の周りを周る回転方向1102についてのリニアアレイセンサー1031の配置誤差である。スリット1060の幅の製作誤差a4は、凹面回折格子1041の主断面1260と平行をなし光軸1110と垂直をなす方向1103についてのスリット1060の幅の製作誤差である。配置誤差a5は、凹面回折格子1041の主断面1260と垂直をなす凹面回折格子1041の中心軸1115の周りを周る回転方向1104についての凹面回折格子1041の配置誤差である。凹面回折格子1041の主断面1260は、回折面1070に形成される刻線と垂直をなす面である。
第3のモデルは、式(6)および(7)からなる。誤差a1,a2,a3,a4およびa5は、位置i1にあるセンサーの分光感度、位置i2にあるセンサーの分光感度、・・・、位置i40にあるセンサーの分光感度を決める校正パラメーターになる。
校正パラメーターa1,a2,a3,a4およびa5は小さいことが期待されるため、中心波長λG0(i)からの中心波長λG(i)のずれを校正パラメーターa1,a2,a3,a4およびa5の1次関数により表すことは良好な近似であり、半値幅FWHM0(i)からの半値幅FWHM(i)のずれを校正パラメーターa1,a2,a3,a4およびa5の1次関数により表すことも良好な近似である。このため、第3のモデルを用いて分光測色計1000の1次校正が行われた場合は、分光感度が精度よく求められる。
校正パラメーターa1,a2,a3,a4およびa5は、中心波長λG(i)または半値幅FWHM(i)への影響が大きく、位置iにあるセンサーの分光感度への影響が大きい。このため、校正パラメーターa1,a2,a3,a4およびa5は、分光測色計1000の機械的誤差を示す指標として好適である。ただし、分光測色計1000の機械的誤差を示す指標が変更されてもよい。分光測色計1000の機械的誤差を示す指標に含まれる校正パラメーターの数は、1次校正用の被測定光1170に含まれる輝線成分の数以下に制限されるが、4個以下または6個以上であってもよい。
式(6)に含まれる校正パラメーターa1,a2,a3,a4およびa5の1次関数においては、校正パラメーターa1,a2,a3,a4およびa5に、係数δλG1(i),δλG2(i),δλG3(i),δλG4(i)およびδλG5(i)がそれぞれ乗じられる。係数δλG1(i),δλG2(i),δλG3(i),δλG4(i)およびδλG5(i)は、それぞれ校正パラメーターa1,a2,a3,a4およびa5が単位量だけずれた場合の中心波長λG(i)のずれ量であり、光学シミュレーションにより求められる。係数δλG1(i),δλG2(i),δλG3(i),δλG4(i)およびδλG5(i)の各々は、位置iの関数である。
式(7)に含まれる校正パラメーターa1,a2,a3,a4およびa5の1次関数においては、校正パラメーターa1,a2,a3,a4およびa5に、係数δFWHM1(i),δFWHM2(i),δFWHM3(i),δFWHM4(i)およびδFWHM5(i)がそれぞれ乗じられる。係数δFWHM1(i),δFWHM2(i),δFWHM3(i),δFWHM4(i)およびδFWHM5(i)は、それぞれ校正パラメーターa1,a2,a3,a4およびa5が単位量だけずれた場合の半値幅FWHM(i)のずれ量であり、光学シミュレーションにより求められる。係数δFWHM1(i),δFWHM2(i),δFWHM3(i),δFWHM4(i)およびδFWHM5(i)の各々は、位置iの関数である。
図9から18までの各々におけるチャンネルChは、センサー1050−1,1050−2,・・・,1050−40を識別するセンサー番号である。
図9に示されるずれ量1270は、配置誤差a1が0から+1単位ずれた場合の各チャンネルChのセンサーの分光感度の中心波長のずれ量δλGを示し、図9に示されるずれ量1271は、配置誤差a1が0から−1単位ずれた場合の各チャンネルChのセンサーの分光感度の中心波長のずれ量δλGを示す。ずれ量1270および1271は、光学シミュレーションにより求められる。係数δλG1(i)は、例えば、ずれ量1270および1271を用いて求められる。
図10に示されるずれ量1280は、配置誤差a1が0から+1単位ずれた場合の各チャンネルChのセンサーの分光感度の半値幅のずれ量δFWHMを示し、図10に示されるずれ量1281は、配置誤差a1が0から−1単位ずれた場合の各チャンネルChのセンサーの分光感度の半値幅のずれ量δFWHMを示す。ずれ量1280および1281は、光学シミュレーションにより求められる。係数δFWHM1(i)は、例えば、ずれ量1280および1281を用いて求められる。
図11に示されるずれ量1290は、配置誤差a2が0から+1単位ずれた場合の各チャンネルChのセンサーの分光感度の中心波長のずれ量δλGを示し、図11に示されるずれ量1291は、配置誤差a2が0から−1単位ずれた場合の各チャンネルChのセンサーの分光感度の中心波長のずれ量δλGを示す。ずれ量1290および1291は、光学シミュレーションにより求められる。係数δλG2(i)は、例えば、ずれ量1290および1291を用いて求められる。
図12に示されるずれ量1300は、配置誤差a2が0から+1単位ずれた場合の各チャンネルChのセンサーの分光感度の半値幅のずれ量δFWHMを示し、図12に示されるずれ量1301は、配置誤差a2が0から−1単位ずれた場合の各チャンネルChのセンサーの分光感度の半値幅のずれ量δFWHMを示す。ずれ量1300および1301は、光学シミュレーションにより求められる。係数δFWHM2(i)は、例えば、ずれ量1300および1301を用いて求められる。
図13に示されるずれ量1310は、配置誤差a3が0から+1単位ずれた場合の各チャンネルChのセンサーの分光感度の中心波長のずれ量δλGを示し、図13に示されるずれ量1311は、配置誤差a3が0から−1単位ずれた場合の各チャンネルChのセンサーの分光感度の中心波長のずれ量δλGを示す。ずれ量1310および1311は、光学シミュレーションにより求められる。係数δλG3(i)は、例えば、ずれ量1310および1311を用いて求められる。
図14に示されるずれ量1320は、配置誤差a3が0から+1単位ずれた場合の各チャンネルChのセンサーの分光感度の半値幅のずれ量δFWHMを示し、図14に示されるずれ量1321は、配置誤差a3が0から−1単位ずれた場合の各チャンネルChのセンサーの分光感度の半値幅のずれ量δFWHMを示す。ずれ量1320および1321は、光学シミュレーションにより求められる。係数δFWHM3(i)は、例えば、ずれ量1320および1321を用いて求められる。
図15に示されるずれ量1330は、製作誤差a4が0から+1単位ずれた場合の各チャンネルChのセンサーの分光感度の中心波長のずれ量δλGを示し、図15に示されるずれ量1331は、製作誤差a4が0から−1単位ずれた場合の各チャンネルChのセンサーの分光感度の中心波長のずれ量δλGを示す。ずれ量1330および1331は、光学シミュレーションにより求められる。係数δλG4(i)は、例えば、ずれ量1330および1331を用いて求められる。
図16に示されるずれ量1340は、製作誤差a4が0から+1単位ずれた場合の各チャンネルChのセンサーの分光感度の半値幅のずれ量δFWHMを示し、図16に示されるずれ量1341は、製作誤差a4が0から−1単位ずれた場合の各チャンネルChのセンサーの分光感度の半値幅のずれ量δFWHMを示す。ずれ量1340および1341は、光学シミュレーションにより求められる。係数δFWHM4(i)は、例えば、ずれ量1340および1341を用いて求められる。
図17に示されるずれ量1350は、配置誤差a5が0から+1単位ずれた場合の各チャンネルChのセンサーの分光感度の中心波長のずれ量δλGを示し、図17に示されるずれ量1351は、配置誤差a5が0から−1単位ずれた場合の各チャンネルChのセンサーの分光感度の中心波長のずれ量δλGを示す。ずれ量1350および1351は、光学シミュレーションにより求められる。係数δλG5(i)は、例えば、ずれ量1350および1351を用いて求められる。
図18に示されるずれ量1360は、配置誤差a5が0から+1単位ずれた場合の各チャンネルChのセンサーの分光感度の半値幅のずれ量δFWHMを示し、図18に示されるずれ量1361は、配置誤差a5が0から−1単位ずれた場合の各チャンネルChのセンサーの分光感度の半値幅のずれ量δFWHMを示す。ずれ量1360および1361は、光学シミュレーションにより求められる。係数δFWHM5(i)は、例えば、ずれ量1360および1361を用いて求められる。
第3のモデルを用いて分光測色計1000の1次校正が行われる場合は、中心波長λG(i)および半値幅FWHM(i)により示されるセンサーの分光感度がセンサーにより出力される信号に適合するように、校正パラメーターa1,a2,a3,a4およびa5が調整される。分光感度を信号に適合させることは、位置iにあるセンサーの真の分光感度が中心波長λG(i)および半値幅FWHM(i)により示されるセンサーの分光感度である場合にセンサーにより出力されると想定される信号をセンサーにより実際に出力される信号に近づけることを意味する。適合性の評価には、目的変数が用いられる。
1次校正には、センサー1050−1,1050−2,・・・,1050−40のうちの輝線成分の波長λHgCd(1),λHgCd(2),・・・,λHgCd(K0)において感度を有するセンサーにより出力される信号が用いられる。
続いて、作成された式(6)および調整された校正パラメーターa1,a2,a3,a4およびa5を用いて、中心波長λG0(i)からの中心波長λG(i)のずれが求められる。また、作成された式(7)および調整された校正パラメーターa1,a2,a3,a4およびa5を用いて、半値幅FWHM0(i)からの半値幅FWHM(i)のずれが求められる。
続いて、求められた位置iにあるセンサーの基準分光感度、中心波長λG0(i)からの中心波長λG(i)のずれおよび半値幅FWHM0(i)からの半値幅FWHM(i)のずれを用いて、位置iにあるセンサーの分光感度が求められる。
求められる位置iにあるセンサーの分光感度は、図8に示されるように、基準分光感度を中心波長λG0(i)を中心として波長軸方向にratio(i)倍に拡大し、拡大された基準分光感度を波長軸方向にΔλG(i)だけ移動させたものである。
比ratio(i)は、式(8)により表される。
第3のモデルを用いて分光測色計1000の1次校正が行われた場合は、中心波長λG0(i)および半値幅FWHM0(i)の各々が校正パラメーターa1,a2,a3,a4およびa5の1次関数により表されるため、校正パラメーターa1,a2,a3,a4およびa5を変化させた場合に分光感度の信号への適合性が大きく変化しない。このため、校正パラメーターa1,a2,a3,a4およびa5が適切に求められ、センサーの校正後の分光感度が適切に求められる。
また、第3のモデルを用いて分光測色計1000の校正が行われた場合は、中心波長λG(i)および半値幅FWHM(i)の各々が共通の校正パラメーターa1,a2,a3,a4およびa5で表されるため、中心波長λG(i)を表す校正パラメーターが半値幅FWHM(i)を表す校正パラメーターと異なる場合と比較して、校正パラメーターの数が減少し、分光測色計1000の1次校正に必要な輝線成分の数が減少する。
さらに、第3のモデルを用いて分光測色計1000の1次校正が行われた場合は、中心波長λG(i)および半値幅FWHM(i)が共通の校正パラメーターa1,a2,a3,a4およびa5で表されるため、中心波長λG(i)および半値幅FWHM(i)の関係が不適切なものにならず、中心波長λG(i)および半値幅FWHM(i)が適切に求められる。
以下では、波長がλHgCd(k)である輝線成分が位置Ikにあるセンサーおよび位置Ik+1にあるセンサーにまたがって入射するとする。位置Ik+1にあるセンサーの基準分光感度の中心波長は、位置Ikにあるセンサーの基準分光感度の中心波長に隣接する。輝線成分の識別番号kは、1,2,・・・,K0のいずれかの値をとるとする。
図19のグラフは、センサーの分光感度および1次校正用の被測定光の分光強度の例を示す。図19のグラフは、図6のグラフの波長が390nmから420nmまでである範囲を拡大したものである。
波長が404.54nmである輝線成分1180−1は、中心波長が約396nmである分光感度1140−5を有するセンサーおよび中心波長が約407nmである分光感度1140−6を有するセンサーにまたがって入射する。このため、分光感度1140−5を有するセンサーおよび分光感度1140−6を有するセンサーの各々は、図19に示されるように、輝線成分1180−1に対して感度を有する。
図20のグラフは、センサーのチャンネルとセンサーにより出力される信号との関係を示す。
チャンネル5のセンサーおよびチャンネル6のセンサーの各々は輝線成分1180−1に対して感度を有し、チャンネル8のセンサーおよびチャンネル9のセンサーの各々は輝線成分1180−2に対して感度を有し、チャンネル15のセンサーおよびチャンネル16のセンサーの各々は輝線成分1180−3に対して感度を有し、チャンネル19のセンサーおよびチャンネル20のセンサーの各々は輝線成分1180−4に対して感度を有し、チャンネル22のセンサーおよびチャンネル23のセンサーは輝線成分1180−5に対して感度を有し、チャンネル29のセンサーおよびチャンネル30のセンサーの各々は輝線成分1180−6に対して感度を有する。その結果、図20に示されるような信号が得られる。
波長がλHgCd(1)である輝線成分、波長がλHgCd(2)である輝線成分、・・・、波長がλHgCd(K0)である輝線成分を用いて分光測色計1000の1次校正が完全に行われた場合は、位置iにあるセンサーの分光感度Response(i,λ)および位置iにあるセンサーにより出力される信号をアナログ/デジタル変換することにより得られる信号値Count(i)は、k=1,2,・・・,K0の各々について、式(9)および(10)に示される関係を満たす。
式(9)および(10)は、k=1,2,・・・,K0の各々について、波長λHgCd(k)において感度を有する位置Ikにあるセンサーおよび位置Ik+1にあるセンサーを選択した場合に、位置Ikにあるセンサーの分光感度の波長λHgCd(k)における感度Response(Ik,λHgCd(k))が位置Ikにあるセンサーにより出力される信号を示す信号値Count(Ik)に一致し、位置Ik+1にあるセンサーの分光感度の波長λHgCd(k)における感度Response(Ik+1,λHgCd(k))が位置Ik+1にあるセンサーにより出力される信号を示す信号値Count(Ik+1)に一致することを示す。
分光感度を信号に適合させることは、感度Response(Ik,λHgCd(k))および信号値Count(Ik)の関係を式(9)に示される関係に近づけ、感度Response(Ik+1,λHgCd(k))および信号値Count(Ik+1)の関係を式(10)に示される関係に近づけることを意味する。
このため、分光感度を信号に適合させる第1の方法は、式(11)に示される目的変数Fを最小にする校正パラメーターa1,a2,a3,a4およびa5を求めることである。
式(11)に示される目的変数Fは、信号値Count(Ik)からの感度Response(Ik,λHgCd(k))のずれの2乗と信号値Count(Ik+1)からの感度Response(Ik+1,λHgCd(k))のずれの2乗との和の、k=1,2,・・・,K0についての合計である。
ずれの2乗が、ずれの絶対値が大きくなるほど絶対値が大きくなる他の因子に置き換えられてもよい。例えば、ずれの2乗がずれの絶対値に置き換えられてもよい。
あるkについて位置Ik−1にあるセンサー、位置Ikにあるセンサーおよび位置Ik+1にあるセンサーが波長λHgCd(k)において感度を有する場合は、信号値Count(Ik−1)からの感度Response(Ik−1,λHgCd(k))のずれの2乗が目的関数Fに加えられてもよい。
また、式(9)および(10)からは式(12)が導かれる。
分光感度を信号に適合させることは、感度Response(Ik,λHgCd(k))およびResponse(Ik+1,λHgCd(k))ならびに信号値Count(Ik)およびCount(Ik+1)の関係を式(12)に示される関係に近づけることを意味する。
このため、分光感度を信号に適合させる第2の方法は、式(13)に示される目的変数Fを最小にする校正パラメーターa1,a2,a3,a4およびa5を求めることである。
式(13)に示される目的関数Fは、信号値Count(Ik)に対する信号値Count(Ik+1)の比からの感度Response(Ik,λHgCd(k))に対する感度Response(Ik+1,λHgCd(k))の比のずれの、k=1,2,・・・,K0についての合計である。
式(13)に示される目的関数Fによれば、感度Response(Ik,λHgCd(k))およびResponse(Ik+1,λHgCd(k))を信号値Count(Ik)およびCount(Ik+1)とそれぞれ対比できるようにするために分光感度Response(i,λ)を規格化する必要がない。
あるkについて位置Ik−1にあるセンサー、位置Ikにあるセンサーおよび位置Ik+1にあるセンサーが波長λHgCd(k)において感度を有する場合は、信号値Count(Ik−1)に対する信号値Count(Ik)の比からの感度Response(Ik−1,λHgCd(k))に対する感度Response(Ik,λHgCd(k))の比のずれが目的関数Fに加えられてもよい。
11 分光測色計の2次校正の詳細
11.1 分光測色計の2次校正の必要性
図21のグラフは、赤タイルの分光反射率rRED(λ,1),rRED(λ,2),・・・,rRED(λ,N)の例を示す。図22のグラフは、緑タイルの分光反射率rGREEN(λ,1),rGREEN(λ,2),・・・,rGREEN(λ,N)の例を示す。図23のグラフは、青タイルの分光反射率rBLUE(λ,1),rBLUE(λ,2),・・・,rBLUE(λ,N)の例を示す。分光反射率rRED(λ,1),rRED(λ,2),・・・,rRED(λ,N)は、分光測色計1000の個体番号1,2,・・・,Nの個体によりそれぞれ出力されたものである。分光反射率rGREEN(λ,1),rGREEN(λ,2),・・・,rGREEN(λ,N)は、分光測色計1000の個体番号1,2,・・・,Nの個体によりそれぞれ出力されたものである。分光反射率rBLUE(λ,1),rBLUE(λ,2),・・・,rBLUE(λ,N)は、分光測色計1000の個体番号1,2,・・・,Nの個体によりそれぞれ出力されたものである。
図24のグラフは、赤タイルについて、平均分光反射率からの分光反射率rRED(λ,1)のずれΔrRED(λ,1)、平均分光反射率からの分光反射率rRED(λ,2)のずれΔrRED(λ,2)、・・・、平均分光反射率分からの分光反射率rRED(λ,N)のずれΔrRED(λ,N)を示す。図25のグラフは、緑タイルについて、平均分光反射率からの分光反射率rGREEN(λ,1)のずれΔrGREEN(λ,1)、平均分光反射率からの分光反射率rGREEN(λ,2)のずれΔrGREEN(λ,2)、・・・、平均分光反射率分からの分光反射率rGREEN(λ,N)のずれΔrGREEN(λ,N)を示す。図26のグラフは、青タイルについて、平均分光反射率からの分光反射率rBLUE(λ,1)のずれΔrBLUE(λ,1)、平均分光反射率からの分光反射率rBLUE(λ,2)のずれΔrBLUE(λ,2)、・・・、平均分光反射率分からの分光反射率rBLUE(λ,N)のずれΔrBLUE(λ,N)を示す。
図24,25および26の各々に示されるように、1次校正における校正誤差に起因して、赤タイルの分光反射率rRED(λ,1),rRED(λ,2),・・・,rRED(λ,N)は、赤タイルの平均分光反射率を中心としてばらつき、緑タイルの分光反射率rGREEN(λ,1),rGREEN(λ,2),・・・,rGREEN(λ,N)は、緑タイルの平均分光反射率を中心としてばらつき、青タイルの分光反射率rBLUE(λ,1),rBLUE(λ,2),・・・,rBLUE(λ,N)は、青タイルの平均分光反射率を中心としてばらつく。また、図24に示されるずれ1365のように分光反射率にアウトライヤー(外れ値)が発生する場合もある。
輝線成分1180−1,1180−2,1180−3,1180−4,1180−5および1180−6を用いて1次校正が行われた場合は、輝線成分1180−1,1180−2,1180−3,1180−4,1180−5または1180−6の波長に近い波長帯においては分光感度が精度よく求められるが、それ以外の波長帯においては分光感度が精度よく求められない可能性がある。これが、上記のばらつきの主な原因となる。また、1次校正が行われた場合は、目的関数が最小値をとるように校正パラメーターが調整されるが、目的関数が最小値でない極小値をとるように校正パラメーターが誤って調整されてしまう場合がある。これが、上記のアウトライヤーの発生の原因となる。
2次校正は、このような1次校正における校正誤差を緩和するために行われる。
11.2 分光測色計の2次校正の手順
以下では、第3のモデルを用いて分光測色計1000の1次校正が行われたものとする。第1のモデルまたは第2のモデルを用いて分光測色計1000の1次校正が行われてもよい。
図27のフローチャートは、2次校正の手順を示す。
分光測色計1000の2次校正が行われる場合は、ステップS1において、n=1,・・・,Nの各々について、2次校正用の被測定光1210を分光測色計1000の個体番号nの個体に測定させた場合に個体番号nの個体から出力される分光反射率が得られる。得られる分光反射率は、個体の1次校正が行われた後に出力される分光反射率であるから、既にある程度の精度を有する。これにより、個体番号1の個体、個体番号2の個体、・・・、個体番号Nの個体からそれぞれ出力される分光反射率r(λ,1),r(λ,2),・・・,r(λ,N)が得られる。
平均分光反射率からの分光反射率r(λ,n0)のずれΔr(λ,n0)は、式(14)により求められる。式(14)の右辺の第2項は、平均分光反射率を示す。
続いて、ステップS2において、タイル1201の温度が温度センサー1202により測定される。
続いて、ステップS3において、得られた分光反射率r(λ,1),r(λ,2),・・・,r(λ,N)が測定された温度を用いて補正される。これにより、タイル1201の分光反射率が温度により変化する場合でも、分光測色計1000の2次校正が精度よく行われる。タイル1201の分光反射率の温度変化が小さい場合は、温度の測定および分光反射率の補正が省略されてもよい。
続いて、ステップS4において、補正された分光反射率r(λ,1),r(λ,2),・・・,r(λ,N)が平均され、平均分光反射率が求められる。平均される分光反射率の数は、制限されないが、例えば30個である。
平均分光反射率は、分光反射率r(λ,1),r(λ,2),・・・,r(λ,N)の全部を平均することにより求められてもよいが、分光反射率r(λ,1),r(λ,2),・・・,r(λ,N)の一部を平均することにより求められてもよい。
平均分光反射率が分光反射率r(λ,1),r(λ,2),・・・,r(λ,N)の一部を平均することにより求められる場合は、分光反射率r(λ,1),r(λ,2)・・・,r(λ,N)の全部が平均され仮の平均分光反射率が求められ、アウトライヤーとなる分光反射率を分光反射率r(λ,1),r(λ,2)・・・,r(λ,N)から除外した2個以上の分光反射率が平均され平均分光反射率にされる。除外される分光反射率は、仮の平均分光反射率からのずれが基準より大きい分光反射率である。
続いて、ステップS5において、n=1,・・・,Nの各々について、個体番号nの個体により出力される分光反射率r(λ,n)が平均分光反射率に近づくように個体番号nの個体に格納される分光感度1130−1,・・・,1130−40を決定する校正パラメーターa1,a2,a3,a4およびa5である校正パラメーターa1(n),a2(n),a3(n),a4(n)およびa5(n)が調整される。
校正パラメーターa1(n),a2(n),a3(n),a4(n)およびa5(n)が調整される場合は、例えば、校正パラメーターa1(n),a2(n),a3(n),a4(n)およびa5(n)を校正パラメーターa1(n)+δa1,a2(n)+δa2,a3(n)+δa3,a4(n)+δa4およびa5(n)+δa5にそれぞれ置き換える校正パラメーターの修正が行われる。続いて、修正後の校正パラメーターa1(n)+δa1,a2(n)+δa2,a3(n)+δa3,a4(n)+δa4およびa5(n)+δa5により決定される分光感度を用いて分光反射率が演算され、演算された分光反射率と得られた平均分光反射率との差の二乗和からなる目的関数が求められる。そして、目的関数が最小値をとるように校正パラメーターa1(n),a2(n),a3(n),a4(n)およびa5(n)が調整される。例えば、目的関数が最小値をとるまで校正パラメーターの修正および分光反射率の演算が繰り返される。用いられる分光反射率は、測定された温度を用いて温度補正される。演算された分光反射率と得られた平均分光反射率との差の二乗和以外からなる目的関数以外の目的関数が求められてもよい。目的変数によっては、目的関数が最小値以外の目標値をとるように校正パラメーターa1(n),a2(n),a3(n),a4(n)およびa5(n)が調整される場合がある。例えば、演算された分光反射率と得られた平均分光反射率との差の二乗和の符号を反転したものからなる目的関数が求められた場合は、目的関数が最大値をとるように校正パラメーターa1(n),a2(n),a3(n),a4(n)およびa5(n)が調整される。
2次校正用の被測定光1210を測定した場合にアウトライヤーとなる分光反射率を出力した個体が個体番号1の個体、・・・、個体番号Nの個体から選択され、選択された個体のみが2次校正の対象にされてよい。選択された個体のみが2次校正の対象にされる場合は、個体番号1の個体、・・・、個体番号Nの個体の各々は2次校正の候補として与えられ、アウトライヤーとなる分光反射率を分光反射率r(λ,1),r(λ,2)・・・,r(λ,N)から除外した2個以上の分光反射率を平均することにより平均分光反射率が求められる。
分光測色計1000に測定された場合に分光測色計1000により出力される分光反射率が互いに異なるよう複数のタイルが準備され、分光測色計1000に測定された場合に分光測色計1000により出力される分光反射率が互いに異なる光が2次校正用の被測定光にされ、複数のタイルの各々についての分光反射率と平均分光反射率との差の二乗和の当該複数のタイルについての合計が目的関数とされてもよい。これにより、広範囲の波長にわたって分光反射率が精度よく校正される。
例えば、赤タイル、緑タイルおよび青タイルが準備され、式(15)に示されるように、赤タイルについての分光反射率と平均分光反射率との差の二乗和、緑タイルについての分光反射率と平均分光反射率との差の二乗和および青タイルについての分光反射率と平均分光反射率との差の二乗和の合計が目的関数F(n0)とされてもよい。色タイルの数が増減されてもよい。赤タイル、緑タイルおよび青タイルの全部または一部が他の色タイルに置き換えられてもよい。
分光反射率rRED(λ(j),n0),rGREEN(λ(j),n0)およびrBLUE(λ(j),n0)は、それぞれ、2次校正パラメーターにより決定される分光感度が用いられた場合に個体番号n0の個体から出力される赤タイル、緑タイルおよび青タイルの分光反射率である。
分光反射率r0,RED(λ(j),n),r0,GREEN(λ(j),n)およびr0,BLUE(λ(j),n0)は、それぞれ、1次校正パラメーターにより決定される分光感度が用いられた場合に個体番号nの個体から出力される赤タイル、緑タイルおよび青タイルの分光反射率である。
式(15)により表される目的関数F(n0)に代えて、式(16)により表される目的関数F(n0)が用いられてもよい。
式(16)により表される目的関数F(n0)においては、赤タイル、緑タイルおよび青タイルについての分光反射率と平均分光反射率との差の二乗に重み係数wRED(j),wGREEN(j)およびwBLUE(j)がそれぞれ乗じられる。重み係数wRED(j),wGREEN(j)およびwBLUE(j)は、それぞれ赤タイル、緑タイルおよび青タイルについての分光反射率と平均分光反射率との差の目的関数F(n0)への寄与の大きさを波長ごとに異ならせる。重み係数wRED(j),wGREEN(j)およびwBLUE(j)は、それぞれ、赤タイル、緑タイルおよび青タイルの分光反射率の変化が大きくなる波長帯において大きくなり、2次校正用の被測定光1210の分光強度の変化が大きくなる波長帯において大きくなる。これにより、2次校正用の被測定光1210の分光強度の変化が大きくなる波長帯において分光反射率と平均分光反射率との差の目的関数F(n0)への寄与が大きくなる。
12 分光測色計の校正の手順
図28および29の模式図は、校正の手順の別例を示す。
分光測色計1000の校正は、図28および29に示される手順により行われてもよい。
個体1370−iの2次校正に用いられる平均分光反射率1400は、1次校正されたマスター個体1400−1により出力された分光反射率、・・・、マスター個体1400−Mにより出力される分光反射率の平均である。
平均分光反射率1400を求める手順においては、図29に示されるように、マスター個体1400−1,・・・,1400−Mが校正サイト1410および1411を順次に通過する。マスター個体1400−1,・・・,1400−Mの各々は、分光測色計1000の個体である。マスター個体1400−1,・・・,1400−Mの各々は、校正サイト1410を通過した後に校正サイト1411を通過する。校正サイト1410にあるマスター個体1400−jは、1次校正用の校正装置1150を用いた1次校正の対象にされる。校正サイト1411にあるマスター個体1400−iは、2次校正用の校正装置1190を用いた分光反射率の測定の対象にされる。校正サイト1411にあるマスター個体1400−iが2次校正の対象にされる必要はない。これにより、マスター個体1400−1,・・・,1400−Mの各々は、1次校正の対象にされた後に分光反射率の測定の対象の対象にされ、マスター個体1400−1により出力される分光反射率、・・・、マスター個体1400−Mにより出力される分光反射率を平均して平均分光反射率が求められる。マスター個体1400−1,・・・,1400−Mは、1次校正および分光反射率の測定が行われた後に製品として出荷されず、標準個体として保管される。
マスター個体1400−1,・・・,1400−Mの各々の1次校正は、1回だけ行われてもよいが、2回以上行われてもよい。マスター個体1400−1,・・・,1400−Mの各々の1次校正が2回以上行われる場合は、定期に又は不定期に到来する複数の校正時期にマスター個体1400−1,・・・,1400−Mの各々の1次校正が行われる。これにより、2次校正がマスター個体1400−1,・・・,1400−Mの経時変化の影響を受けにくくなる。
個体1370−1,・・・,1370−Sが図28に示されるように、校正サイト1380を順次に通過する。個体1370−1,・・・,1370−Sの各々は、分光測色計1000の個体である。校正サイト1380にある個体1370−iは、2次校正用の校正装置1190を用いた2次校正の対象にされる。これにより、個体1370−1,・・・,1370−Sの各々は、2次校正の対象にされる。2次校正の対象にされる個体1370−1,・・・,1370−Sの各々は、1次校正の対象にされるマスター個体1400−1,・・・,1400−Mのいずれとも異なる。個体1370−1,・・・,1370−Sの各々は、2次校正が行われた後に製品として出荷される。
なお、個体1370−1〜1370−Sは図29のサイトを通してもよい。1次校正で求まる校正パラメーターa1(n),a2(n),a3(n),a4(n)およびa5(n)を2次校正の校正パラメータの初期値として用いてもよい。
あるいは個体1370−1〜1370−Sは、図29のサイトを通して1次校正を行う。1次校正にて求まる校正パラメーターa1(n),a2(n),a3(n),a4(n)およびa5(n)を用いて、2次校正用の赤、緑、青タイルの分光反射率を測定する。マスターで測定した同じタイルの分光反射率の平均値からある閾値以上ずれている場合にのみ2次校正を行ってもよい。
これらの手順においては、式(15)に示される目的関数に代えて式(17)に示される目的関数が用いられる。
分光反射率r* RED(λ(j),m),r* GREEN(λ(j),m)およびr* BLUE(λ(j),m)は、それぞれ、1次校正後の個体番号mのマスター個体から出力される赤タイル、緑タイルおよび青タイルの分光感度である。
図30のグラフは、この手順により校正が行われた後のずれΔrRED(λ,1),ΔrRED(λ,2),・・・,ΔrRED(λ,N)を示す。
図31のグラフは、この手順により校正が行われた後のずれΔrGREEN(λ,1),ΔrGREEN(λ,2),・・・,ΔrGREEN(λ,N)を示す。
図32のグラフは、この手順により校正が行われた後のずれΔrBLUE(λ,1),ΔrBLUE(λ,2),・・・,ΔrBLUE(λ,N)を示す。
図30,31および32に示されるように、この手順により校正が行われた場合は、出力される分光反射率のばらつきが小さくなる。
13 校正された分光測色計を生産する手順
校正された分光測色計1000が生産される場合は、図33に示されるように、ステップS11において分光測色計1000が準備され、ステップS12において準備された分光測色計1000の校正が行われる。ステップS11においては、分光測色計1000の校正を行う事業者が分光測色計1000を製作することにより分光測色計1000が準備されてもよいし、分光測色計1000の校正を行う事業者が他の事業者から分光測色計1000を仕入れることにより分光測色計1000が準備されてもよい。