JPWO2016163462A1 - ポリアリレート樹脂のワニス - Google Patents

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Abstract

本発明は、高耐熱性のポリアリレート樹脂が非ハロゲン化溶媒に溶解したワニスを提供する。本発明は、二価フェノール成分と芳香族ジカルボン酸成分から構成され、下記式(1)で表されるポリアリレート樹脂が非ハロゲン化溶媒に溶解してなるワニスに関する。[式中、lおよびmは、l+m=100(モル%)、l/m=50/50〜65/35(モル比)の関係を満たす。]

Description

本発明は、ポリアリレート樹脂のワニスに関する。
ポリアリレート樹脂は、耐熱性、機械的強度、寸法安定性、透明性に優れていることから、電気電子分野等に広く用いられている。従来、ポリアリレート樹脂は、押出成形や射出成形の用途で主に採用されてきたが、近年は、ワニスとして被膜やフィルムの形成に用いられるようになってきている。
ポリアリレート樹脂は、一般に溶解性が低いため、そのワニスを得るためには、ハロゲン化系有機溶媒に溶解されている。しかしながら、ハロゲン系有機溶媒は、環境への影響が懸念されることから非ハロゲン系有機溶媒に代替することが望まれている。
このようなポリアリレート樹脂のワニスとしては、特許文献1に、ビスフェノールA、テレフタル酸、イソフタル酸およびオルトフタル酸からなるポリアリレート樹脂を非ハロゲン系有機溶媒に溶解させたワニスが開示されている。
特開2013−18943号公報
近年、電気電子分野においては、軽量化、薄型化が求められており、それにともない、用いる被膜およびフィルムに、より一層高い耐熱性が求められている。しかしながら、より高耐熱性のポリアリレート樹脂をワニスとしようとした場合、ポリアリレート樹脂が非ハロゲン化系有機溶媒に溶解せず、溶解力の高いハロゲン系有機溶媒を用いざるをえなかった。仮にポリアリレート樹脂が非ハロゲン化系有機溶媒に溶解したとしても、溶解量が比較的少ないため、被膜形成およびフィルム形成時において、ポリアリレート樹脂の取扱いが困難なことがあった。
本発明は、高耐熱性のポリアリレート樹脂が非ハロゲン化溶媒に溶解したワニスを提供することを目的とする。
本発明はまた、高耐熱性のポリアリレート樹脂が20質量%以上、特に30質量%以上の高濃度で非ハロゲン化溶媒に溶解したワニスを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の樹脂組成としたポリアリレート樹脂を用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明の要旨は下記のとおりである。
[1]二価フェノール成分および芳香族ジカルボン酸成分から構成され、下記式(1)で表されるポリアリレート樹脂が非ハロゲン化溶媒に溶解してなるワニス。
Figure 2016163462
[式中、lおよびmは、l+m=100(モル%)、l/m=50/50〜65/35(モル比)の関係を満たす。]
[2]前記l/mが55/45〜65/35であることを特徴とする[1]に記載のワニス。
[3]固形分濃度が20質量%以上80質量%以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載のワニス。
[4]固形分濃度が40質量%以上70質量%以下であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のワニス。
[5]前記非ハロゲン化溶媒が芳香族炭化水素、エーテル化合物、およびケトン化合物からなる群から選択される1種以上の溶媒であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のワニス。
[6]前記非ハロゲン化溶媒が芳香族炭化水素、環式エーテル化合物、非環式エーテル化合物、環式ケトン化合物、および非環式ケトン化合物からなる群から選択される1種以上の溶媒であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載のワニス。
[7]前記非ハロゲン化溶媒が芳香族炭化水素とケトン化合物との混合溶媒であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のワニス。
[8][1]〜[7]のいずれかに記載のワニスを用いて形成された被膜。
本発明によれば、高耐熱性のポリアリレート樹脂が高濃度で非ハロゲン化溶媒に溶解したワニスを提供することができる。
本発明のワニスは、溶液安定性にも優れている。
本発明のワニスから得られた被膜およびフィルムは、耐熱性に優れており、電気電子分野等に好適に用いることができる。
本発明のワニスに用いられるポリアリレート樹脂は、二価フェノール成分および芳香族ジカルボン酸成分から構成される。二価フェノール成分は、1分子中、少なくとも1つの芳香族環および2つのヒドロキシル基を含有する化合物であり、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA、BPA)と1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(BPTMC)から構成される。芳香族ジカルボン酸成分は、1分子中、少なくとも1つの芳香族環および2つのカルボキシル基を含有する化合物であり、テレフタル酸(TPA)とイソフタル酸(IPA)から構成される。
ポリアリレート樹脂は、具体的には、下記式(1)で表される。
Figure 2016163462
式中、lおよびmの和は100モル%である。
l/m、すなわちBPAとBPTMCのモル比率(BPA/BPTMC)は、50/50〜65/35、特に50/50超65/35以下であることが必要である。BPAとBPTMCのモル比率は、より高濃度での非ハロゲン化溶媒(特に芳香族炭化水素と非環式ケトン化合物との混合溶媒)への溶解性および溶液安定性のさらなる向上の観点から、55/45〜65/35であることが好ましい。BPAのモル比率が、BPAとBPTMCの合計100モル%に対して50モル%未満である場合、また、65モル%を超える場合、いずれも、非ハロゲン化溶媒(例えば、トルエン、またはトルエンおよび2−ブタノンの混合溶媒)への溶解性および溶液安定性が低下するので好ましくない。
TPAとIPAのモル比率(TPA/IPA)は、10/90〜90/10であることが好ましく、30/70〜70/30であることがより好ましい。TPAとIPAのモル比率は、より高濃度での非ハロゲン化溶媒(特に芳香族炭化水素、環式エーテル化合物、環式ケトン化合物、非環式ケトン化合物、またはそれらの混合溶媒(以下、単に「芳香族炭化水素等」という)への溶解性および溶液安定性のさらなる向上の観点から、35/65〜65/35、特に40/60〜60/40であることがより好ましい。TPAのモル比率が、TPAとIPAの合計100モル%に対して10モル%未満である場合、また、90モル%を超える場合、いずれも、非ハロゲン化溶媒(例えば、トルエン、またはトルエンおよび2−ブタノンの混合溶媒)への溶解性や溶液安定性が低下する場合がある。
本発明のワニスに用いられるポリアリレート樹脂には、本発明の効果を損なわない限りで、BPAとBPTMC以外のジオール成分が含まれていてもよい。そのようなジオール成分として、BPAとBPTMC以外の二価フェノール、脂環式グリコール、および脂肪族グリコールが挙げられる。前記二価フェノールとしては、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールS、ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールZ、ビスフェノールZのエチレンオキサイド付加物、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール等が挙げられる。前記脂環族グリコールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。前記脂肪族グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ノナンジオール、デカンジオールが挙げられる。
また、本発明のワニスに用いられるポリアリレート樹脂には、本発明の効果を損なわない限りで、TPAおよびIPA以外のジカルボン酸成分が含まれていてもよい。そのようなジカルボン酸成分として、TPAおよびIPA以外の芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、および脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。前記脂環式ジカルボン酸としては、例えば、ジカルボキシメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、ドデカン二酸が挙げられる。
ポリアリレート樹脂を製造する方法としては、界面重合法、溶液重合法等が挙げられる。界面重合法は溶液重合法と比較すると、反応が速いため、酸ハライドの加水分解を抑えることができ、結果として高分子量のポリマーを得ることができる。
界面重合法としては、ジカルボン酸成分のハライドを水と相溶しない有機溶媒に溶解させた溶液(有機相)を、ジオール成分、末端封止剤、酸化防止剤および重合触媒を含むアルカリ水溶液(水相)に混合し、50℃以下の温度で1〜8時間撹拌しながら重合反応をおこなう方法が挙げられる。
有機相に用いる溶媒としては、水と相溶せずポリアリレート樹脂を溶解する溶媒が好ましい。前記溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム等が挙げられ、製造上使用しやすいことから、塩化メチレンが好ましい。
ポリアリレート樹脂のガラス転移温度は、200〜250℃であることが好ましく、210〜240℃であることがより好ましい。
ポリアリレート樹脂を、1,1,2,2−テトラクロロエタンに、濃度1g/dLとなるように溶解した樹脂溶液の、温度25℃におけるインヘレント粘度は、0.40〜1.20dL/gであることが好ましく、0.45〜1.00dL/gであることがより好ましい。インヘレント粘度は分子量の指標である。前記インヘレント粘度が0.40dL/g未満である場合、得られる被膜およびフィルムの機械的強度が劣ったものとなる場合がある。前記インヘレント粘度が1.20dL/gを超える場合、ワニスの粘度が高まり、作業性が悪くなる場合がある。
ポリアリレート樹脂のインヘレント粘度は以下の方法により調整することができる。(1)重合時間を調節することにより反応率を制御する;(2)芳香族ジカルボン酸または二価フェノールいずれかのモノマーの配合比率をわずかに過剰に配合して重合する;(3)モノアルコール、モノフェノールおよび/またはモノカルボン酸等を末端封鎖剤として用いる。中でも、上記方法(3)を用いることがより好ましい。
前記末端封鎖剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等のモノアルコール;フェノール、クレゾール、2,6−キシレノール、2,4−キシレノール、p−tert−ブチルフェノール、クミルフェノール等のモノフェノール;安息香酸、メチル安息香酸、ナフトエ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オレイン酸、ステアリン酸等のモノカルボン酸;およびそれらの誘導体が挙げられる。
本発明のワニスは、ポリアリレート樹脂および有機溶媒から構成される。
本発明のワニスに用いる有機溶媒は非ハロゲン化溶媒であり、製膜容易性の観点から好ましくは沸点が160℃以下、特に120℃以下の非ハロゲン化溶媒である。非ハロゲン化溶媒は、例えば、芳香族炭化水素、エーテル化合物、およびケトン化合物を含み、これらの群から選択される1種以上の溶媒であってもよい。
芳香族炭化水素として、例えば、トルエン(沸点110℃)、キシレン(144℃)等が挙げられる。
エーテル化合物は環式エーテル化合物および非環式エーテル化合物を含む。
環式エーテル化合物として、例えば、テトラヒドロフラン(沸点66℃)、1,3−ジオキサン(沸点105℃)、1,4−ジオキサン(沸点101℃)、1,3−ジオキソラン(沸点75℃)等が挙げられる。好ましい環式エーテル化合物は、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソランである。
非環式エーテル化合物として、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点121℃)等が挙げられる。
ケトン化合物は環式ケトン化合物および非環式ケトン化合物を含む。
環式ケトン化合物として、例えば、シクロヘキサノン(沸点156℃)等が挙げられる。好ましい環式ケトンはシクロヘキサノンである。
非環式ケトン化合物として、例えば、2−ブタノン(沸点80℃)等が挙げられる。好ましい非環式ケトン化合物は2−ブタノンである。
非ハロゲン化溶媒は、溶解性および溶液安定性の観点から、芳香族炭化水素(特にトルエン)を用いることが好ましい。
非ハロゲン化溶媒は、人体および環境への安全性の向上ならびに溶解性および溶液安定性のさらなる向上の観点から、芳香族炭化水素(特にトルエン)と、エーテル化合物およびケトン化合物からなる群から選択される1種以上の非芳香族炭化水素(特にケトン化合物、好ましくは非環式ケトン化合物、より好ましくは2−ブタノン)との混合溶媒を用いることが好ましい。前記混合溶媒において、芳香族炭化水素と非芳香族炭化水素との混合比率(例えば、トルエン/2−ブタノン)は、人体および環境への安全性の向上ならびに溶解性および溶液安定性のさらなる向上の観点から、10/90〜90/10(質量比)とすることが好ましく、20/80〜80/20(質量比)とすることがより好ましく、80/20〜50/50(質量比)とすることがさらに好ましく、65/35〜50/50(質量比)とすることが最も好ましい。
本発明においては、ワニスの固形分濃度(特にポリアリレート樹脂濃度)を比較的高く設定しても、ポリアリレート樹脂を非ハロゲン化溶媒に溶解できる。ワニスの固形分濃度は、例えば、20質量%以上、特に25質量%以上とすることができ、被膜形成およびフィルム形成時におけるポリアリレート樹脂の取扱いの観点から、好ましくは30質量%以上または35質量%以上、より好ましくは40質量%以上または45質量%以上とすることができ、さらに好ましくは50質量%以上とすることができ、最も好ましくは60質量%以上とすることができる。ワニスの固形分濃度の上限値は通常、80質量%、特に70質量%である。
具体的には、ワニスの固形分濃度は、例えば非ハロゲン化溶媒として芳香族炭化水素、環式エーテル化合物、環式ケトン化合物またはそれらの混合溶媒を用いる場合、通常は、20〜80質量%であり、好ましくは30〜80質量%であり、より好ましくは40〜70質量%であり、さらに好ましくは45〜70質量%である。
また例えば、非ハロゲン化溶媒として芳香族炭化水素と非環式ケトン化合物との混合溶媒を用いる場合、ワニスの固形分濃度は通常、15〜70質量%であり、好ましくは15〜50質量%であり、より好ましくは15〜40質量%であり、さらに好ましくは15〜25質量%である。
本発明のワニスの溶媒として用いる非ハロゲン化溶媒(例えば芳香族炭化水素および非環式ケトン化合物、特にトルエンおよび2−ブタノン)は、電気電子分野で、幅広く使用されており、入手しやすく、かつ、安価であることから、特に利便性が高い有機溶媒である。従来、ポリアリレート樹脂は、芳香環の濃度が高いため、前記非ハロゲン化溶媒(特に芳香族炭化水素と非環式ケトン化合物との混合溶媒)には溶解しにくいと考えられていた。しかしながら、ポリアリレート樹脂を特定の樹脂組成とすることにより、前記非ハロゲン化溶媒に高濃度で溶解することがわかった。本発明のワニスは高固形分濃度でかつ溶液安定性が高いため、被膜形成およびフィルム形成において、非常に取扱い性が高く、その工業的意義は非常に高い。
本発明のワニスは、公知の方法により製造することができるが、例えば、ポリアリレート樹脂の粒子を有機溶媒と混合し、必要に応じて撹拌し溶解させることにより製造することができる。ポリアリレート樹脂を有機溶媒に溶解させる方法としては、例えば、一定温度に保った状態で、所定量の有機溶媒およびポリアリレート樹脂を容器に入れ混合液とし、攪拌機により前記混合液を攪拌する方法、または容器を密閉して振とうする方法が挙げられる。溶解開始から全量が溶解するまでの所要時間は、ポリアリレート樹脂の溶解性だけなく溶解方法に影響される。溶解条件は、作業性の観点から、好ましくは24時間以内、より好ましくは5時間以内に全量が溶解できる条件とすることが好ましい。この時、ポリアリレート樹脂の粒子の大きさおよび微細構造によっては溶解に時間を要する場合がある。前記のような場合にはポリアリレート樹脂を平均粒径が100μm以下となるよう粉砕した後、前記溶解方法にて溶解することで、作業性をより向上させることができる。
本発明のワニスには、本発明の効果を損なわない限りで、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、流動性改質剤、微粒子無機フィラー、顔料、染料等の添加剤、および/またはポリアリレート樹脂以外の他の樹脂を用いてもよい。前記酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、燐系酸化防止剤等が挙げられる。前記他の樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミドが挙げられる。
本発明のワニスは、以下の方法により使用できる:
(1)ワニスを塗布乾燥することにより樹脂または金属等の基材上に被膜を形成する;
(2)当該被膜形成後剥離しフィルムを形成する;
(3)ワニスを塗布後溶媒を蒸発させる前に塗膜面に他の樹脂または金属等の基材を張り合わせ接着剤として用いる;または
(4)ワニスを繊維状強化材に含浸させたのち溶媒を蒸発させてプリプレグ等の複合材を形成する。
本発明のワニスの乾燥方法は特に限定されないが、効率よく溶媒を除去するためには加熱乾燥することが好ましい。乾燥温度および乾燥時間はポリアリレート樹脂の物性や塗布基板の組み合わせにより適宜選択される。経済性を考慮した場合、乾燥温度は40〜150℃とすることが好ましく、40〜100℃とすることがより好ましい。乾燥時間は1〜30分とすることが好ましく、3〜15分とすることがより好ましい。なお、必要に応じて、室温で自然乾燥してもよい。
本発明のワニスより得られる被膜およびフィルムは、高耐熱性であるため、電気電子分野において好適に用いることができる。具体的な用途としては、例えば、ディスプレイ用パネル、配線板用基板、絶縁層が挙げられる。
次に実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
1.評価方法
(1)インヘレント粘度(ηinh)
1,1,2,2−テトラクロロエタンを溶媒として、濃度1g/dL、温度25℃の条件で相対粘度(ηrel)を測定した。得られた相対粘度および下記式よりインヘレント粘度を算出した。下記式中、「c」は濃度のことである。
Figure 2016163462
(2)ガラス転移温度
示差走査熱分析装置(パーキンエルマー社製Diamond DSC)を使用し、昇温速度10℃/分で30℃から400℃まで昇温し、得られた昇温曲線中のガラス転移温度に由来する不連続変化の開始温度をガラス転移温度とした。
(3)溶解性
内容量50mLのガラス製ねじ口瓶に、所定濃度になるよう秤量した樹脂と有機溶媒の合計30gを密封し、ねじ口瓶を23℃の室温でミックスローターを用いて70rpmで24時間回転させた。その後、樹脂溶液(ワニス)を目視観察し、下記基準により評価した。
なお、有機溶媒としては、表2または表3に記載の有機溶媒を用いた。トルエン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、またはシクロヘキサノンについては10、20、30、40、50、60質量%の各濃度になるように樹脂溶液を作製した。トルエンと2−ブタノンの混合溶液については10、20、30質量%の各濃度になるようにワニスを作製した。
〇:透明であった。
△:不溶物はなかったが、白濁していた(実用上問題なし)。
×:不溶物があった。
(4)溶液安定性
(3)で溶解性の評価で「○」か「△」の評価であった樹脂溶液について、23℃の室温下48時間静置した後、ワニスを目視観察し、下記基準により評価した。
〇:透明性が維持され、増粘しなかった。
△:白濁するか、増粘したが、流動性を有していた(実用上問題なし)。
×:流動性がなかった。
実施例1
水冷用ジャケットと攪拌装置を備えた内容積100Lの反応容器中に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)685g、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(BPTMC)930g、末端封止剤としてp−tert−ブチルフェノール(PTBP)45g、アルカリとして水酸化ナトリウム850gを仕込み、水30Lに溶解した(水相)。これとは別に、塩化メチレン18Lに、テレフタル酸クロライド(TPC)625gと、イソフタル酸クロライド(IPC)625gを溶解した(有機相)。(BPA:BPTMC:TPC:IPC:PTBP=50:50:50:50:0.3(モル比))。
それぞれの液を20℃になるよう調節した後、前記水相に、重合触媒としてベンジルトリメチルアンモニウムクロライドの50%水溶液を15g添加し、さらに前記塩化メチレン溶液を全量投入し、6時間攪拌を続けた後、攪拌機を停止した。
静置分離後、水相を抜き出し、残った有機相に酢酸20gを添加した。その後、イオン交換水30Lを投入し、20分間攪拌してから再度静置して水相を抜き出した。この水洗操作を水相が中性になるまで繰り返した。その後、有機相を、ホモミキサーを装着した容器に入った50℃の温水中に投入して塩化メチレンを蒸発させた。その後、脱水処理し、真空乾燥機を用いて130℃減圧下24時間乾燥した。次いで、篩機を用いて分級し、平均粒径100μm以下の粉末状のポリアリレート樹脂を得た。
実施例2〜6および比較例1〜4
用いる原料の割合を表1のように変更した以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、粉末状のポリアリレート樹脂を作製した。
実施例1〜6および比較例1〜4で得られたポリアリレート樹脂を用いて、溶解性および溶液安定性を評価した。その結果を表2および表3に示す。
Figure 2016163462
TPA:テレフタル酸
IPA;イソフタル酸
BPA:2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
BPTMC:1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン
BPZ:1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン
Figure 2016163462
Figure 2016163462
実施例1〜6は、本発明で規定する特定の樹脂組成のポリアリレート樹脂を用いたため、溶媒としてトルエン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、またはシクロヘキサノンを用いた場合、固形分濃度が30質量%以上、特に40質量%以上のワニスを得ることができた。また、ワニスは溶液安定性に優れていた。
実施例1〜6のそれぞれの溶媒について固形分濃度が最も高いワニスを用いて、ポリエステルフィルム(厚み75μm)上に被膜を形成させたところ、いずれも均一で透明な被膜(約10μm)を形成することができた。
比較例1、2は、BPAとBPTMCのモル比率が本発明で規定する範囲でないポリアリレート樹脂を用いたため、溶媒としてトルエンを用いた場合に、固形分濃度が30質量%以上のワニスを得ることができなかった。
比較例3は、樹脂組成が本発明で規定するものとは異なるポリアリレート樹脂を用いたため、溶媒としてトルエンを用いた場合に、ワニスを得ることができなかった。
本発明のワニスは、電気電子分野等において、耐熱性に優れた被膜およびフィルムの製造に有用である。

Claims (8)

  1. 二価フェノール成分および芳香族ジカルボン酸成分から構成され、下記式(1)で表されるポリアリレート樹脂が非ハロゲン化溶媒に溶解してなるワニス。
    Figure 2016163462
    [式中、lおよびmは、l+m=100(モル%)、l/m=50/50〜65/35(モル比)の関係を満たす。]
  2. 前記l/mが55/45〜65/35であることを特徴とする請求項1に記載のワニス。
  3. 固形分濃度が20質量%以上80質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のワニス。
  4. 固形分濃度が40質量%以上70質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のワニス。
  5. 前記非ハロゲン化溶媒が芳香族炭化水素、エーテル化合物、およびケトン化合物からなる群から選択される1種以上の溶媒であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のワニス。
  6. 前記非ハロゲン化溶媒が芳香族炭化水素、環式エーテル化合物、非環式エーテル化合物、環式ケトン化合物、および非環式ケトン化合物からなる群から選択される1種以上の溶媒であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のワニス。
  7. 前記非ハロゲン化溶媒が芳香族炭化水素とケトン化合物との混合溶媒であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のワニス。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のワニスを用いて形成された被膜。
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