JPWO2016140103A1 - 積層フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、積層フィルムとして様々な機能を備えつつも、高い機械強度を備え、各種加工工程において高収率かつ高精度で加工することが可能な積層フィルムを提供する。本発明の積層フィルムは、結晶性ポリエステルからなるA層と前記の結晶性ポリエステルとは異なる熱可塑性樹脂からなるB層が交互に、合計11層以上積層されてなる積層フィルムであって、前記の積層フィルムの配向軸方向(ヤング率が最大となる方向におけるヤング率が6GPa以上であることを特徴とする積層フィルムである。【選択図】 なし

Description

本発明は、積層フィルムとその製造方法に関するものである。
熱可塑性樹脂フィルム、中でも二軸延伸ポリエステルフィルムは、機械的性質、電気的性質、寸法安定性、透明性および耐薬品性などに優れた性質を有することから、磁気記録材料や包装材料などの多くの用途において基材フィルムとして広く使用されている。
一方、ポリエステルフィルムの中には、異なる樹脂が交互に積層された積層フィルムが用いられている。このような積層フィルムでは、単層のフィルムでは得られない特異な機能を備えたフィルムとすることが可能となり、例えば、引裂強度を高めた耐引裂性フィルム(特許文献1参照。)、赤外線を反射する赤外線反射フィルム(特許文献2参照。)、および偏光反射特性を備えた偏光反射フィルム(特許文献3参照。)などが挙げられる。
しかしながら、これらのような積層フィルムにおいては、異なる樹脂が交互に積層された構造をとるため、単層のフィルムと比較して、その積層厚みの影響で機械強度や寸法安定性が低下するという傾向がある。積層フィルムの機械強度や寸法安定性が低下すると、例えば、他の各種フィルムや部材と組みあわせて機能性フィルムへと打ち抜き、断裁、コーティングおよびラミネートなどの加工を施す際に、フィルムにかかる力によって変形や破断などが生じ、加工時の加工精度や収率の低下、および得られたフィルムの光学特性や品質低下などが生じるという課題が発生したり、実際に製品などに実装した際に寸法変化に伴う不具合が発生するという課題がある。
日本特許第3960194号公報 日本特許第4310312号公報 日本特開2014−124845号公報
そこで、本発明の目的は、上記の課題を解消し、積層フィルムとして様々な機能を備えつつも、高い機械強度や寸法安定性を備え、各種加工工程において高収率・高精度で加工することが可能でかつ実使用時に不具合の生じない積層フィルムを提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決せんとするものであって、本発明の積層フィルムは、結晶性ポリエステルからなるA層と前記の結晶性ポリエステルとは異なる熱可塑性樹脂からなるB層が交互に、合計11層以上積層されてなる積層フィルムであって、前記の積層フィルムの配向軸方向(ヤング率が最大となる方向)におけるヤング率が6GPa以上であることを特徴とする積層フィルムである。
本発明の積層フィルムの好ましい態様によれば、前記の積層フィルムにおいて、ビーム径が1μmで、波長が1390cm−1での偏光ラマンスペクトルにおいて、反射率が最大となる方向のピーク強度 I max とそれに直交する方向のピーク強度 I min との比 I max/I min は5以上である。
本発明の積層フィルムの好ましい態様によれば、前記の結晶性ポリエステルを構成するカルボン酸成分のうち、ナフタレンジカルボン酸を90mol%以上含むことである。
本発明の積層フィルムの好ましい態様によれば、前記の積層フィルムの配向軸方向および前記の配向軸方向に直交する方向のいずれかにおいて、40℃以上50℃以下の温度における線膨張係数の絶対値は10ppm/℃以下である。
本発明の積層フィルムの好ましい態様によれば、前記の積層フィルムの配向軸方向を含む入射面に対して平行な偏光成分について入射角度10°での反射率をR1とし、それと前記の配向軸方向を含む入射面に対して垂直な偏光成分について入射角度10°での反射率をR2とした場合、波長550nmにおける反射率は、下記式(2)および式(3)を満足することである。
・R2(550)≦40% ・・・(2)
・R1(550)≧70% ・・・(3)
本発明の積層フィルムの好ましい態様によれば、前記の積層フィルムの示差熱量測定(以下、DSC)における第一の昇温カーブにおいて、積層フィルムが融解ピークを有し、かつその融解ピークトップ温度をTmとして、Tm―110℃以上Tm−60℃以下の範囲で放熱ピークを有することである。
本発明の積層フィルムの好ましい態様によれば、前記の積層フィルムの配向軸方向とそれと同一の面内で直交する方向のヤング率の比は2以上である。
本発明の積層フィルムの好ましい態様によれば、前記の積層フィルムの配向軸方向における100℃の温度での熱収縮応力は、1MPa以下である。
本発明の積層フィルムの好ましい態様によれば、前記の積層フィルムの配向軸方向における100℃の温度におけるTMAの絶対値は、0.5%以下である。
本発明の積層フィルムの好ましい態様によれば、前記の積層フィルムの示差走査熱量測定(DSC)による前記の熱可塑性樹脂B由来の融解ピークは、5J/g以下である。
本発明の積層フィルムの好ましい態様によれば、前記のA層および前記のB層が、次の条件を満たすことである。
・A層:ジカルボン酸成分とジオール成分を主たる構成成分とする芳香族ポリエステルからなり、前記のジカルボン酸成分100mol%中80〜100mol%が2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、前記のジオール成分100mol%中80〜100mol%がエチレングリコールであること。
・B層:ジカルボン酸成分とジオール成分を主たる構成成分とする芳香族ポリエステルからなり、前記のジカルボン酸成分100mol%中40〜75mol%が2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、25〜60mol%がイソフタル酸、1,8―ナフタレンジカルボン酸および2,3―ナフタレンジカルボン酸からなる群から選ばれた少なくとも一つの成分であり、前記のジオール成分100mol%中80〜100mol%がエチレングリコールであること。
本発明の積層フィルムの好ましい態様によれば、前記の積層フィルムが、前記積層フィルムの配向軸に沿って巻きとられ、フィルムロールとすることができる。
本発明のフィルムロールの好ましい態様によれば、前記の積層フィルムの幅は1000mm以上である。
本発明の積層フィルムの製造方法は、結晶性ポリエステルからなるA層と前記結晶性ポリエステルとは異なる熱可塑性樹脂からなるB層が、交互に合計11層以上積層した未延伸フィルムを、フィルム長手方向に倍率2〜5倍で延伸した後、フィルム幅方向に2〜5倍で延伸し、さらに再度フィルム長手方向に1.3〜4倍で延伸することを特徴とする積層フィルムの製造方法である。
本発明によれば、高い機械強度や寸法安定性を備えており、各種機能性フィルムとして打ち抜き、断裁、コーティングおよびラミネートなどの加工や使用する際にも好適に使用でき、かつ実装時に不具合を生じることなく使用可能なとなる効果を奏する積層フィルムが得られる。
本発明の積層フィルムは、高いヤング率を備えた積層フィルムであるため、各種光学フィルムや工程フィルムなどに適当なフィルムとなる。
次に、本発明の積層フィルムとその製造方法について詳細に説明する。
本発明の積層フィルムは、結晶性ポリエステル(以下、結晶性ポリエステルAと称することがある。)からなる層(A層)と前記の結晶性ポリエステルとは異なる熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂Bと称することがある。)からなる層(B層)が交互に、合計11層以上積層されてなる積層フィルムである。
ここで、結晶性ポリエステルAとは、具体的には、JIS K7122(1999)に準じて示差走査熱量測定(以下、DSCと称することがある。)を行い、昇温速度20℃/分で樹脂を25℃から300℃の温度まで20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)し、その状態で5分間保持後、次いで25℃以下の温度となるように急冷し、再度25℃から20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温を行って得られた2ndRUNの示差走査熱量測定チャートにおいて、融解ピークのピーク面積から求められる結晶融解熱量ΔHmが、15J/g以上であるポリエステルのことを指す。より好ましくは、結晶融解熱量は20J/g以上であり、さらに好ましくは25J/g以上である。
また、熱可塑性樹脂Bは、A層に用いられる結晶性ポリエステルAとは異なる光学特性または熱特性を示すものである。具体的には、積層フィルムの面内で任意に選択される直交する2方向および該面に垂直な方向のいずれかにおいて、屈折率が0.01以上異なるものや、DSCにおいて、結晶性ポリエステルAと異なる融点やガラス転移点温度を示すものをさす。
また、ここでいう交互に積層されてなるとは、A層とB層が厚み方向に規則的な配列で積層されていることをいう。例えば、A(BA)n(nは自然数)で表される規則的な配列で積層されたものである。このように光学的性質の異なる樹脂が交互に積層されることにより、各層の屈折率の差と層厚みとの関係より設計した波長の光を反射させることができる干渉反射を発現させることが可能となる。
また、熱特性の異なる樹脂が交互に積層されることにより、二軸延伸フィルムを製造する際に各々の層の配向状態を高度に制御することが可能となり、光学特性や機械特性や熱収縮特性を制御することが可能となる。
積層フィルムの好ましい積層の形態として、結晶性ポリエステルAからなるA層、結晶性ポリエステルAとは異なる熱可塑性樹脂BからなるB層、および結晶性ポリエステルAならびに熱可塑性樹脂Bとは異なる熱可塑性樹脂CからなるC層を有する場合も挙げられる。このような場合には、CA(BA)n、CA(BA)nC、およびA(BA)nCA(BA)mなど、層Cが最外層もしくは中間層に積層される構成とすることができる。
また、積層する層数が11層未満の場合には、異なる熱可塑性樹脂が積層されていることの製膜性や機械物性などの諸物性への影響によって、例えば、二軸延伸フィルムの製造が困難になることがあり、他の構成要素と組み合わせて製品とする際に不具合が生じる可能性がある。
一方、本発明の積層フィルムのように合計11層以上の層が交互に積層された積層フィルムの場合、層数が11層未満の積層フィルムと対比して、均質に各々の熱可塑性樹脂が配されるため、製膜性や機械物性を安定化させることが可能である。また、層数が増加するに従い、各々の層での配向の成長を抑制できる傾向がみられ、例えば、界面張力による耐引裂強度向上というように機械特性や熱収縮特性を制御しやすくなることに加えて、干渉反射機能を発現させるという特異な光学特性の付与が可能となる。積層する層数は、好ましくは100層以上であり、さらに好ましくは200層以上である。フィルムを100層以上積層した場合には、幅広い帯域の光を高反射率で反射することも可能となり、さらに200層以上積層した場合には、例えば、波長400〜700nmの可視光全体の光をほぼ反射できるようになる。また、積層する層数に上限はないものの、層数が増えるに従い、製造装置の大型化および複雑化に伴う製造コストの増加の原因ともなりうるために、現実的には10000層以内が実用範囲となる。
本発明の積層フィルムにおいては、積層フィルムの配向軸方向におけるヤング率が、6GPa以上であることが必要である。ここでいう積層フィルムの配向軸方向とは、フィルムのヤング率をフィルム面内に10°毎に方向を変えて測定し、そのヤング率が最大になる方向のことである。ヤング率は、フィルムの初期変形時に必要な力を示す指標であり、ヤング率が高くなることにより、打ち抜き、断裁、コーティングおよびラミネートなどの加工工程や機能性フィルムとして使用時に積層フィルムに力がかかった際にも変形を抑制することができ、フィルムの変形に伴う加工不良や使用時の性能変化を抑制することが容易となる。
好ましくは、積層フィルムの配向軸方向におけるヤング率は8GPa以上であり、より好ましくは10GPa以上である。ヤング率が増加するに従い積層フィルムは変形しがたいものとなり、例えば、打ち抜き、断裁、コーティングおよびラミネートなどの加工時の加工条件の制御範囲が広がるため、単に加工不良を抑制できるのみでなく、得られる製品の性能を高めるためにも有用である。ヤング率を高めるためには、後述のとおり、樹脂の選択に加えてフィルムの製造方法によって達成されるものである。
また、単層や数層程度の層数の場合、積層フィルムの配向軸方向におけるヤング率が6GPa以上であると、その樹脂の配向の強さゆえに積層フィルムが脆くなる傾向があり、ハンドリング性が低下する場合もあった。
一方、本発明のとおり、結晶性ポリエステルAからなるA層と結晶性ポリエステルAとは異なる熱可塑性樹脂BからなるB層が交互に、合計11層以上積層されてなる積層フィルムの場合、ヤング率が6GPa以上であってもその積層界面での界面張力や熱可塑性樹脂BからなるB層の緩衝効果によって、ハンドリング性を損なわずにヤング率を高めること、ひいては打ち抜き、断裁、コーティングおよびラミネートなどの加工工程や機能性フィルムとして使用時に積層フィルムに力がかかった際にも、変形を抑制する効果を得ることができる。
また、本発明の積層フィルムにおいては、積層フィルムの配向軸方向とそれと同一の面内で直交する方向のヤング率の比が2以上であることも好ましい態様である。単純に樹脂の選択やフィルムの製造方法によってヤング率の比を高めようとした場合にも、積層フィルムの面内方向に均等なヤング率を備えた積層フィルムでは、ヤング率に限界がある。これは、ヤング率は積層フィルムを構成する樹脂の配向の強さに依存するためで、ヤング率を高めたい方向に如何に強く配向しているかがヤング率の大きさに影響する。
一方で、打ち抜き、断裁、コーティングおよびラミネートなどの加工工程、特にロール状のフィルムを用いて連続的に加工する工程においては、積層フィルム長手方向におけるヤング率を高めることが加工工程の安定化に有効である。したがって、積層フィルムの配向軸方向とそれと同一の面内で直交する方向のヤング率の比を2以上とすることによって、配向軸側のヤング率をさらに高めることができ、ヤング率が最大となる方向(積層フィルムの配向軸方向)におけるヤング率が6GPa以上とすることが容易になる。より好ましくは積層フィルムの配向軸方向とそれと同一の面内で直交する方向のヤング率の比は3以上であり、この場合、積層フィルムの配向軸方向におけるヤング率が10GPa以上とすることも容易となる。
本発明の積層フィルムにおいては、ビーム径が1μmで、波長が1390cm−1での偏光ラマンスペクトルにおいて、反射率が最大となる方向のピーク強度I maxとそれに直交する方向のピーク強度I minとの比I max/I minが5以上であることが好ましい。ここで、反射率が最大になる方向とは、積層フィルムの入射面に対して偏光成分を0°とし、入射角度を0°として、積層フィルム面内に10°毎に方向を変えて反射率を測定した場合に、反射率が最大値を示す方向である。
また、偏光ラマンスペクトルで観測される波長1390cm−1のピークは、ナフタレン環のCNC伸縮バンドに帰属し、反射率が最大となる方向のピーク強度I maxとそれに直交する方向のピーク強度I minとの比I max/I minにより、ナフタレン環の配向状態を測定することができる。波長1390cm−1でのI max/I minは好ましくは5.5以上であり、より好ましくは6以上である。
波長1390cm−1でのI max/I minが5以上であることは、ナフタレン環が均一に配向していることを示し、その結果として高配向化によりヤング率を向上させることができる。波長1390cm−1でのI max/I minの上限は、ナフタレンジカルボン酸を含む結晶性ポリエステルAからなるA層と結晶性ポリエステルAとは異なる熱可塑性樹脂BからなるB層との配向状態や結晶性の差が大きくなることによる層間密着性の悪化を防ぐ点からは、上限値は好ましくは20であり、より好ましくは10であり、特に好ましくは7以下である。波長1390cm−1でのI max/I minは、A層とB層の樹脂の組合せの選択および製膜条件で調整することができる。
また、本発明の積層フィルムにおいては、ビーム径が1μmで、波長が1615cm−1での偏光ラマンスペクトルにおいて、反射率が最大となる方向のピーク強度I maxとそれに直交する方向のピーク強度I minとの比I max/I minが4以上であることが好ましい態様である。
偏光ラマンスペクトルで観測される波長1615cm−1のピークは、ベンゼン環のC=C伸縮バンドに帰属し、反射率が最大となる方向のピーク強度I maxとそれに直交する方向のピーク強度I minとの比I max/I minにより、ベンゼン環の配向状態を測定することができる。波長1615cm−1でのI max/I minは、好ましくは4.5以上であり、より好ましくは5以上である。波長1615cm−1でのI max/I minが4以上であることは、ベンゼン環が均一に配向していることを示し、その結果として高配向化によりヤング率を向上させることができる。
波長1615cm−1でのI max/I minの上限は、ナフタレンジカルボン酸を含む結晶性ポリエステルAからなるA層と結晶性ポリエステルAとは異なる熱可塑性樹脂BからなるB層との配向状態や結晶性の差が大きくなることによる層間密着性の悪化を防ぐ点からは、上限は好ましくは20以下であり、より好ましくは10以下であり、特に好ましくは6以下である。波長1615cm−1でのI max/I minは、A層とB層の樹脂の組合せの選択および製膜条件で調整することができる。その最適な組み合わせの例は、前述のとおりである。
また、本発明の積層フィルムにおいては、ビーム径が1μmで、波長が1390cm−1での偏光ラマンスペクトルにおいて、反射率が最大となる方向のピーク強度I maxとそれに直交する方向のピーク強度I minとの比I max/I minは、5以上であることが好ましい。
本発明の積層フィルムにおいては、積層フィルムの配向軸方向および積層フィルムの配向軸方向に直交する方向のいずれかにおいて、40℃から50℃の温度における線膨張係数の絶対値は、10ppm/℃以下であることが必要である。線膨張係数とは、温度を変化させたときのフィルムの大きさの変わりやすさを示す指標であり、熱膨張係数の絶対値が小さくなることにより、打ち抜き、断裁、コーティングおよびラミネートなどの加工工程時や機能性フィルムとして使用時に積層フィルムの温度が変化した際にも、フィルムの変形を抑制することができ、フィルムの変形に伴う加工不良や使用時の性能変化を抑制することが容易になる。
好ましくは、積層フィルムの配向軸方向および積層フィルムの配向軸方向に直交する方向のいずれかにおいて、線膨張係数の絶対値は5ppm/℃以下である。熱膨張係数の絶対値が低下するに従い、温度変化に対する積層フィルムの変形は小さいものとなり、例えば、加工時の加工条件の制御範囲が広がるため、単に加工不良を抑制できるのみでなく、得られる製品の性能を高めたり、実使用時の寸法変形を抑制するためにも有用である。熱膨張係数の絶対値を低下させるためには、後述のとおり、樹脂の選択に加えて積層フィルムの製造方法によって達成されるものである。
また、単層や数層程度の層数の場合、積層フィルムの配向軸方向において、40℃から50℃の温度における線膨張係数の絶対値が10ppm/℃以下では、その樹脂の配向の強さゆえにフィルムが脆くなる傾向があり、ハンドリング性が低下する場合もあった。一方、本発明のとおり、結晶性ポリエステルAからなるA層と前記結晶性ポリエステルAとは異なる熱可塑性樹脂BからなるB層が交互に合計11層以上積層されてなる積層フィルムの場合、40℃から50℃の温度における線膨張係数の絶対値が10ppm/℃以下であっても、その積層界面での界面張力や熱可塑性樹脂BからなるB層の緩衝効果によって、ハンドリング性を損なわずに線膨張係数を低くすること、ひいては打ち抜き、断裁、コーティングおよびラミネートなどの加工工程や機能性フィルムとして使用時に積層フィルムに力がかかった際にも、変形を抑制する効果が得られる。
また、本発明の積層フィルムにおいては、積層フィルムの配向軸方向における100℃の温度での熱収縮応力が1MPa以下であることも好ましい態様である。熱収縮応力は、温度を変化させたときに積層フィルムが縮む方向に働く力の大きさを表す指標であり、熱収縮応力を小さくすることにより、使用時に積層フィルムに熱が加わった際に変形を抑制することができ、加工不良や積層フィルムの性能変化を抑制できる。より好ましくは、100℃の温度での熱収縮応力は0.5MPa以下であることであり、その場合には、加工工程や実使用時においても積層フィルムの熱変形を抑制することができる。
また、本発明の積層フィルムにおいては、積層フィルムの配向軸方向における、下記式(1)で表されるTMAの絶対値が、100℃の温度において0.5%以下であることも好ましい。下記式(1)中において、LとΔLはそれぞれ、25℃の温度における積層フィルムの配向軸方向の長さ、および25℃の温度から温度を変化させたときの積層フィルムの長さの変位を表している。TMAは、温度を変化させた際の積層フィルムの縮む、または伸びる比率を表す指標であり、TMAの絶対値を小さくすることにより、使用時に積層フィルムに熱が加わった際に変形を抑制することができ、加工不良やフィルムの性能変化を抑制することができる。好ましくは、100の温度でのTMAの絶対値も0.5%以下であることであり、その場合には、加工工程や実使用時においてもフィルムの熱変形を抑制することができる。
・TMA=|ΔL/L|×100% ・・・(1)
本発明においては、積層フィルが、積層フィルムの配向軸に沿って巻かれたフィルムロールとすることができる。上述のとおり打ち抜き、断裁、コーティングおよびラミネートなどの加工工程、特にロール状のフィルムを用いて連続的に加工する工程においては、積層フィルム長手方向におけるヤング率を高めることが加工工程の安定化に有効であり、積層フィルムの配向軸に沿って巻かれたフィルムロールを得ることにより、本発明の積層フィルムを用いて、製品を得る際にも容易に高品位な製品を得られるようになる。
このようなフィルムロールを得るために、積層フィルムの配向軸方向とフィルムの製造工程における流れ方向とのなす角が10°以下であることが好ましい態様である。積層フィルムの配向軸方向とフィルムの製造工程における流れ方向とのなす角が10°以下であれば、得られた積層フィルムを連続してロール状に巻き取ることにより、打ち抜き、断裁、コーティングおよびラミネートなどの加工工程、特にロール状のフィルムを用いて連続的に加工する工程において、配向軸方向と加工工程の流れ方向が同一となるため、加工工程の安定化が容易となる。
実際には、フィルムロールの巻取方向をフィルム製造工程における流れ方向とみなすことができ、実際の製品では、積層フィルムの配向軸方向とフィルムロールの巻取方向とのなす角が10°以下となる。
本発明の積層フィルムにおいては、結晶性ポリエステAからなるA層が最外層であることが好ましい。この場合、結晶性ポリエステルAが最外層となるため、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルムのような結晶性ポリエステルフィルムと同様にして、二軸延伸フィルムを製造することが可能となる。結晶性ポリエステルではなく、例えば、非結晶性の樹脂からなる熱可塑性樹脂Bが最外層となる場合、結晶性ポリエステルフィルムと同様にして二軸延伸フィルムを得る場合、ロールやクリップなどの製造設備への粘着による製膜不良や、表面性の悪化などの問題が生じる場合がある。
本発明で用いられる結晶性ポリエステルAとしては、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールとを主たる構成成分とする単量体からの重合により得られるポリエステルが好ましく用いられる。
ここで、芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルホンジカルボン酸などを挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、およびシクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用することもできる。
特に、本発明の積層フィルムに用いられる結晶性ポリエステルAを構成するカルボン酸成分としては、高屈折率を発現し、ヤング率を高めるという観点から、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく用いられる。テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸は、高い対称性を備えた芳香族環を含むことから、配向および結晶化させることにより、高い屈折率と高ヤング率を両立することが容易となる。特に、結晶性ポリエステルAを構成するカルボン酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸を含む場合、芳香族環の体積比率が増えることにより、高ヤング率を達成することができ、かつ工業的に汎用に得られるため低コストの製品とすることが可能である。
さらに好ましくは、結晶性ポリエステルを構成するカルボン酸成分のうち、2,6−ナフタレンジカルボン酸を80mol%以上含むことである。ナフタレンジカルボン酸を80mol%以上含むことにより、積層フィルムの製造時に、延伸と熱処理を行うことで、容易に配向結晶化させることが可能となり、高ヤング率化させることが容易となる。
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、およびスピログリコールなどを挙げることができる。中でも、重合が容易であるという観点から、エチレングリコールが主たる成分であることが好ましい態様である。
ここで主たる成分とは、ジオール成分のうち80mol%以上であることを指す。より好ましくは、90mol%以上である。これらのジオール成分は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用することもできる。ヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸などを、一部共重合することもできる。
本発明で用いられる熱可塑性樹脂Bとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)などの鎖状ポリオレフィン;ノルボルネン類の開環メタセシス重合、付加重合、他のオレフィン類との付加共重合体である脂環族ポリオレフィン;ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66などのポリアミド、アラミド、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリアセタール、ポリグルコール酸、ポリスチレン、スチレン共重合ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボーネート;ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチルサクシネートなどのポリエステル;ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、およびポリフッ化ビニリデンなどを用いることができる。
これらの中でも、強度、耐熱性、透明性および汎用性の観点に加え、A層に用いられる結晶性ポリエステルAとの密着性および積層性という観点から、ポリエステルが好ましく用いられる。これらは、共重合体であっても混合物であっても用いられる。
本発明の積層フィルムにおいて、熱可塑性樹脂Bがポリエステルの場合は、芳香族ジカルボン酸成分および/または脂肪族ジカルボン酸成分とジオール成分とを主たる構成成分とする単量体からの重合により得られるポリエステルが好ましく用いられる。ここで、芳香族ジカルボン酸成分、脂肪族ジカルボン酸成分およびジオール成分としては、結晶性ポリエステルAで挙げられた成分が好適に用いられる。
本発明の積層フィルムにおいて、熱可塑性樹脂Bは、芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分を主たる構成成分とする芳香族ポリエステルであることが好ましい。特に、ジカルボン酸成分100mol%のうち40〜75mol%が2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、25〜60mol%がイソフタル酸であり、1,8―ナフタレンジカルボン酸であり、2,3―ナフタレンジカルボン酸からなる群から選ばれる成分であり、ジオール成分100mol%のうち、80〜100mol%がエチレングリコールとすることがより好ましい態様である。
イソフタル酸、1,8―ナフタレンジカルボン酸および2,3―ナフタレンジカルボン酸は、その分子骨格により、分子鎖を屈曲させる効果を有し、その結果、熱可塑性樹Bの結晶性や延伸時の配向性を低下させることが可能となる。その結果、延伸フィルムを製造時にB層の配向結晶化に伴う屈折率の増加を抑制することができ、結晶性ポリエステルAからなるA層との屈折率差(偏光反射性能の場合は、A層の配向軸との屈折率差)を容易に発生させることが可能となる。その結果、特に偏光反射特性を発現させる場合により高い光学特性を発現させることが可能となる。
干渉反射機能を備えた積層フィルムを得るためには、熱可塑性樹脂Bとしては、非晶性樹脂であることも好ましい態様である。結晶性樹脂と比較して非晶性樹脂は二軸延伸フィルムを製造する際に配向が生じにくいため、熱可塑性樹脂BからなるB層の配向結晶化に伴う屈折率の増加を抑制でき、結晶性ポリエステルAからなるA層との屈折率差を容易に発生させることが可能となる。特に、延伸フィルムを製造する際に熱処理工程を設けた場合にこの効果は顕著となる。
延伸工程で生じた配向のうち、B層に生じた配向は熱処理工程で完全に緩和させることができ、結晶性ポリエステルからなるA層との屈折率差を最大化できる。
ここでいう非晶性樹脂とは、JIS K7122(1999)に準じて、昇温速度20℃/分で樹脂を25℃から300℃の温度まで20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)、その状態で5分間保持後、次いで25℃の温度以下となるように急冷し、再度室温から20℃/分の昇温速度で300℃の温度まで昇温を行って、得られた2ndRUNの示差走査熱量測定チャートにおいて、融解ピークのピーク面積から求められる結晶融解熱量ΔHmが、5J/g以下の樹脂であり、より好ましくは結晶融解に相当するピークを示さない樹脂である。
また、干渉反射機能を備えた積層フィルムを得るためには、熱可塑性樹脂Bとしては、結晶性ポリエステルAの融点より20℃以上低い融点をもつ結晶性樹脂も好ましく用いられる。この場合、熱処理工程において、熱可塑性樹脂Bの融点と結晶性ポリエステルAの融点との間の温度で熱処理を実施することにより、熱処理工程で完全に緩和させることができ、結晶性ポリエステルAからなるA層との屈折率差を最大化できる。好ましくは、結晶性ポリエステルAと熱可塑性樹脂Bの融点の差は、40℃以上である。この場合、熱処理工程での温度の選択幅が広くなるために、熱可塑性樹脂Bの配向緩和の促進や結晶性ポリエステルの配向の制御がさらに容易にできるようになる。
結晶性ポリエステルAと熱可塑性樹脂Bの好ましい組み合わせとしては、両者のSP値の差の絶対値は、1.0以下であることが好ましい。SP値の差の絶対値が1.0以下になると、A層とB層の層間剥離が生じにくくなる。より好ましくは、結晶性ポリエステルAと熱可塑性樹脂Bは、同一の基本骨格を供えた組み合わせからなることである。
ここでいう基本骨格とは、樹脂を構成する繰り返し単位のことである。例えば、結晶性ポリエステルAとしてカルボン酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸のみからなるポリエチレンナフタレートまたは2,6−ナフタレンジカルボン酸をカルボン酸成分の80%以上含む主成分とするポリエチレンナフタレート共重合体を用いる場合は、熱可塑性樹脂Bとして非晶性のポリエチレンナフタレート共重合体または結晶性ポリエステルAより融点の低い結晶性ポリエチレンナフタレート共重合体を用いることが好ましい。
また、干渉反射機能を備えた積層フィルムを得るためには、熱可塑性樹脂Bのガラス転移温度が結晶性ポリエステルAのガラス転移温度より10℃以上低いことが好ましい。この場合、延伸工程においても結晶性ポリエステルを延伸するために最適な延伸温度をとった場合に、熱可塑性樹脂Bでの配向が進まないため、結晶性ポリエステルからなるA層との屈折率差を大きくとることができる。より好ましくは、熱可塑性樹脂Bのガラス転移温度が結晶性ポリエステルAのガラス転移温度より20℃以上低いことである。
後述する本発明の積層フィルムを得るために好適な製造方法においては、熱可塑性樹脂Bの配向結晶化が進みやすく所望の干渉反射機能が得られない場合もあるが、熱可塑性樹脂Bのガラス転移温度が結晶性ポリエステルAのガラス転移温度より20℃以上低くすることにより、配向結晶化を抑制できるものである。
また、熱可塑性樹脂中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機系易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、および核剤などを、その特性を悪化させない程度に添加させることができる。
本発明の積層フィルムにおいては、積層フィルムの配向軸方向を含む入射面に対して平行な偏光成分について入射角度10°での反射率をR1とし、それと積層フィルムの配向軸方向を含む入射面に対して垂直な偏光成分について入射角度10°での反射率をR2とした場合、波長550nmにおける反射率が下記式(2)および式(3)を満足することが好ましい。下記の式(2)および式(3)を満足することにより、いずれかの偏光を反射し、他方の偏光を透過するという偏光反射特性を付与することが可能となる。
下記の式(2)を満足するフィルムを得るためには、積層フィルムの配向軸方向におけるA層とB層の屈折率差を0.02以下、より好ましくは、0.01以下、さらに好ましくは、0.005以下となる樹脂の組合せで調整することができる。また、下記の式(3)を満足するフィルムを得るためには、積層フィルムの配向軸方向と直交する方向におけるA層とB層の屈折率差を0.08以上、より好ましくは、0.1以上、さらに好ましくは、0.15以上となる樹脂の組合せの選択および製膜条件で調整できる。その最適な組み合わせの例は前述のとおりである。
・R2(550)≦40% ・・・(2)
・R1(550)≧70% ・・・(3)。
本発明の積層フィルムにおいては、DSCにおける第一の昇温カーブにおいて、積層フィルムが融解ピークTmを有し、かつその融解ピークトップ温度Tm―110℃以上Tm−60℃以下の範囲で放熱ピークを有することが好ましい。上述の偏光特性を発現させる上で、各層の屈折率制御が重要となるが、それは配向と結晶性の制御が重要になる。その制御において、結晶性ポリエステルAからなるA層は高度に一方向に配向することで、配向方向とそれとは垂直方向の屈折率差を大きくさせる。これに対し、B層はA層の屈折率のどちらか一方(主に屈折率が低い方向)と一致させ、もう一方(主に屈折率が高い方向)とは屈折率差を大きくする必要があるが、B層の配向性や結晶性を制御することが重要となる。
本発明者らは鋭意検討した結果、B層制御の指標として、DSCにおける第一の昇温カーブにおいて、積層フィルムが融解ピークTmを有し、かつその融解ピークトップ温度Tm―110℃以上Tm−60℃以下の範囲で放熱ピークを有することによって、高い光学特性を得ることができる事を見出したものである。
この放熱ピークは、B層が結晶化による放熱を示すピークであり、これによりB層の配向性、結晶性の指標となるものである。この放熱ピークが存在しない場合は、B層が製膜工程において、配向結晶化が進行したり、結晶性が極端に低いなどで、A層との屈折率との関係が所望の範囲とならず光学特性が低下する。
また、放熱ピークが存在したとしても、Tm―110℃以上Tm−60℃以下から外れるとB層が過度に配向し異方性を発現したり、結晶性が極端に低くなるなどで、A層との屈折率との関係が所望の範囲とならず光学特性が低下する。そのため、本発明の積層フィルムにおいて、Tm―110℃以上Tm−60℃以下の範囲で放熱ピークを有することが、高い光学特性を得る上では必須のものとなる。
Tm−110℃以上Tm−60℃以下に放熱ピークを有する積層フィルムとする方法としては、A層とB層を前述した好ましいものとすること、後述する製造方法の中で、延伸工程における温度、倍率およびむ延伸速度を好ましい範囲とすることが挙げられる。これら方法は、複数を組み合わせることも好ましく行われる。
本発明の積層フィルムは、放熱ピークにおける放熱量が0.1J/g以上10J/g以下であることが好ましい。放熱量は、より好ましくは0.5J/g以上5J/g以下であり、更に好ましくは1.5J/g以上4J/g以下である。放熱量が、Tm―110℃以上Tm−60℃以下から外れると、B層が過度に配向し異方性が発現したり、結晶性が極端に低くなるなど、A層との屈折率との関係が所望の範囲とならず、光学特性が低下する。本発明の積層フィルムにおいて、放熱ピークにおける放熱量を0.1J/g以上10J/g以下とすることによって、高い光学特性を得ることができる。
本発明の積層フィルムは、融解ピーク温度Tmが255℃以上であるのことが好ましい。融解ピーク温度は、より好ましくは258℃以上である。本この融解ピーク温度の範囲を満たすためには、前述の樹脂の中でもより好ましい範囲の樹脂を選択することが挙げられ、それにより、光学特性を高める事ができ、かつ耐熱性の高いフィルムとすることができる。
次に、本発明の積層フィルムの好ましい製造方法を以下について説明する。
また、本発明で用いられる積層フィルムの積層構造は、特開2007−307893号公報の[0053]〜[0063]段に記載の内容と同様の方法により簡便に実現することができる。
まず、結晶性ポリエステルAおよび熱可塑性樹脂Bを、ペレットなどの形態で用意する。ペレットは、必要に応じて、熱風中あるいは真空下で乾燥された後、別々の押出機に供給される。押出機内において、加熱溶融された樹脂は、ギアポンプ等で樹脂の押出量を均一化され、フィルター等を介して異物や変性した樹脂などを取り除かれる。これらの樹脂は、多層積層装置に送り込まれる。
多層積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を用いることができるが、本発明の構成を効率よく得るためには、11個以上の微細スリットを有するフィードブロックを用いることが好ましい。このようなフィードブロックを用いることにより、装置が極端に大型化することがないため、熱劣化による異物が少なく、積層数が極端に多い場合でも、高精度な積層が可能となる。また、幅方向の積層精度も従来技術に比較して格段に向上する。また、この装置では、各層の厚みをスリットの形状(長さ、幅)で調整できるため、任意の層厚みを達成することが可能となる。
そして、ダイから吐出された積層シートは、キャスティングドラム等の冷却体上に押し出され、冷却固化されることにより、キャスティングフィルムが得られる。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力により、吐出されたシートを冷却体に密着させ、急冷固化させることが好ましい。また、吐出されたシートを冷却体に密着させる方法としては、スリット状、スポット状および面状の装置からエアーを吹き出すこと、およびニップロールを用いる方法も好ましい態様である。
このようにして得られたキャスティングフィルムは、二軸延伸することが好ましい。ここで、二軸延伸とは、フィルムを長手方向および幅方向に延伸することをいう。
さらに、本発明の積層フィルムを得るために好適な二軸延伸の方法として、フィルム長手方向に倍率2〜5倍で延伸した後、フィルム幅方向に2〜5倍で延伸し、さらに再度フィルム長手方向に1.3〜4倍で延伸することが必要である。その詳細を、次に記す。
得られたキャストフィルムを、まず長手方向に延伸する。長手方向への延伸は、通常はロールの周速差により施される。この延伸は、1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階に行うこともできる。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、2〜5倍であることが好ましい。この1回目の長手方向への延伸の目的は、次に続くフィルム幅方向への延伸時の均一延伸性を向上させるために必要最低限の配向を設けることにある。そのため、延伸倍率を5倍より大きい倍率とする場合、後述のフィルム幅方向延伸、および、その工程後に実施される長手方向への再延伸時に十分な延伸倍率のフィルムが得られなくなる場合がある。また、延伸倍率が2倍未満である場合には、延伸時に必要最低限の配向も付与できず、かつフィルム長手方向に厚みムラが生じ品位が低下する場合もある。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する結晶性ポリエステルAのガラス転移温度〜ガラス転移温度+30℃の温度であることが好ましい。
このようにして得られた一軸延伸フィルムに、必要に応じてコロナ処理、フレーム処理およびプラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、および帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与することができる。
続いて、一軸延伸フィルムを幅方向に延伸する。幅方向の延伸は、通常は、テンターを用いて、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、幅方向に延伸する。延伸の倍率としては、樹脂の種類により異なるが、通常、2〜5倍であることが好ましい。この幅方向への延伸の目的は、次に続くフィルム長手方向への延伸時の高い延伸性を付与するために必要最低限の配向を設けることにある。そのため、延伸倍率を5倍より大きい倍率とする場合、この工程に続いて実施されるフィルム長手方向への再延伸時に十分な延伸倍率のフィルムが得られなくなる場合がある。また、延伸倍率が2倍未満である場合には、延伸時にフィルム幅方向に厚みムラが生じ品位が低下する場合もある。また、延伸温度は、積層フィルムを構成する結晶性ポリエステルAのガラス転移温度〜ガラス転移温度+30℃、もしくはガラス転移温度〜結晶性ポリエステルの結晶化温度の間であることが好ましい。
続いて、得られた2軸延伸フィルムを再度長手方向に延伸する。この長手方向への延伸は、通常は、ロールの周速差により施される。この延伸は1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階に行うこともできる。延伸の倍率は樹脂の種類により異なるが、1.3〜4倍であることが好ましい。この2回目の長手方向への延伸の目的は、フィルム長手方向へ可能な限り強く配向させることにあり、このように再度長手方向へ延伸することにより樹脂が強く配向され、結果として積層フィルムの配向軸方向におけるヤング率を6GPa以上とすることや、ヤング率が最大となる方向(積層フィルムの配向軸方向)における線膨張係数を10ppm/℃以下とすることが可能となる。特に、手方向への延伸倍率が高いほどヤング率を高めたり、線膨張係数を抑制したりすることができ、ヤング率を10GPa以上とし、40℃以上50℃以下における線膨張係数の絶対値を5ppm/℃以下とすることも容易なものとなる。また、延伸温度は、積層フィルムを構成する結晶性ポリエステルAのガラス転移温度〜ガラス転移温度+80℃であることが好ましい。
このようにして、二軸延伸されたフィルムは、平面性および寸法安定性を付与するために、テンター内で延伸温度以上融点以下の温度で熱処理を行うことが好ましい。熱処理を行うことにより、配向結晶化が促進されてヤング率が増大する効果が得られるとともに、配向結晶化の促進に伴い寸法安定性も向上し、結果として、ヤング率が最大となる方向(積層フィルムの配向軸方向)および積層フィルムの配向軸方向に直交する方向のいずれかにおいて、40℃から50℃の温度における線膨張係数の絶対値を5ppm/℃以下にすることが可能となる。また、配向軸方向における100℃の温度における熱収縮応力を1MPa以下に、配向軸方向における100℃の温度におけるTMAの絶対値を0.5%以下にすることも可能となる。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、常温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理後、徐冷する際に弛緩処理などを行うこともできる。
上述のとおりの製造方法で得られる積層フィルムは、単にヤング率が高いのみでなく、前述の式(2)および(3)を満足する偏光反射特性を備えた積層フィルムとすることもできる。これは、2回目のフィルム長手方向の延伸の際に、結晶性ポリエステルAからなるA層の配向をフィルム長手方向により強くすることができるためであり、結果として、フィルム長手方向の屈折率とフィルム長手方向に直交するフィルム幅方向の屈折率に差が生じるためである。さらには、熱可塑性樹脂Bとして、非晶性樹脂や延伸工程と熱処理工程において、配向を緩和できるガラス転移温度・融点の差のある結晶性ポリエステルAと熱可塑性樹脂Bの組み合わせを選択することにより、熱可塑性樹脂Bの配向を抑制することができ、偏光反射特性が付与されるものである。
(特性の測定方法および効果の評価方法)
本発明における特性の測定方法、および効果の評価方法は、次のとおりである。
(1)積層数:
積層フィルムの層構成は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡H−7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVの条件でフィルムの断面写真を撮影し、層構成および各層厚みを測定した。場合によっては、コントラストを高くするために、RuOやOsOなどを使用した染色技術を用いた。また、1枚の画像に取り込められるすべての層の中で最も厚みの薄い層(薄膜層)の厚みにあわせて、薄膜層厚みが50nm未満の場合は10万倍、薄膜層厚みが50nm以上500nm未満である場合は4万倍、500nm以上である場合は1万倍の拡大倍率によって観察を実施した。
(2)層厚みと層数の算出方法:
上記の(1)項で得られたTEM写真画像を、スキャナ(キャノン(株)製CanoScan D1230U)を用いて、画像サイズ720dpiで取り込んだ。画像をビットマップファイル(BMP)もしくは、圧縮画像ファイル(JPEG)でパーソナルコンピューターに保存し、次に、画像処理ソフト Image-Pro Plus ver.4(販売元:プラネトロン(株))を用いて、このファイルを開き、画像解析を行った。画像解析処理は、垂直シックプロファイルモードで、厚み方向位置と幅方向の2本のライン間で挟まれた領域の平均明るさとの関係を、数値データとして読み取った。
表計算ソフト(Excel 2000)を用いて、位置(nm)と明るさのデータに対してサンプリングステップ2(間引き2)でデータ採用した後に、5点移動平均の数値処理を施した。さらに、この得られた周期的に明るさが変化するデータを微分し、VBA(Visual Basic for Applications)プログラムにより、その微分曲線の極大値と極小値を読み込み、隣り合う明るさが極大の領域と極小の領域の間隔を1層の層厚みとして層厚みを算出した。この操作を写真毎に行い、全ての層の層厚みおよび層数を算出した。
(3)ヤング率:
積層フィルムを、長さ150mm×幅10mmの短冊形に切り出し、サンプルとした。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)を用いて、初期引張チャック間距離50mmとし、引張速度を300mm/分として引張試験を行った。測定は室温23℃、相対湿度65%の雰囲気で実施し、得られた荷重−歪曲線からヤング率を求めた。測定は、各サンプルについて5回ずつ行い、それらの平均値で評価を行った。
(4)積層フィルムの配向軸方向:
積層フィルムのヤング率を、フィルム面内に10°毎に方向を変えて測定し、そのヤング率が最大になる方向を積層フィルムの配向軸方向とした。
(5)線膨張係数:
積層フィルムを、その配向軸方向に長さ25mm×幅4mmの短冊形に切り出し、サンプルとした。TMA試験機(セイコーインスツルメンツ製TMA/SS6000)を用いて、初期引張チャック間距離15mmとし、引張張力を29.4mNで一定にしたまま、試験機内温度を25℃から150℃の温度まで5℃/分で上昇させ、積層フィルムの配向軸方向についてTMA測定を行った。得られたTMA−温度曲線から、40℃から50℃の温度における線膨張係数を求めた。線膨張係数は、TMAおよび温度ともに、測定したい温度の±5℃の値の差分から求めた。
(6)熱収縮応力:
積層フィルムを、その配向軸方向に長さ25mm×幅4mmの短冊形に切り出し、サンプルとした。TMA試験機(セイコーインスツルメンツ製TMA/SS6000)を用いて、引張チャック間距離を15mmで一定にしたまま、試験機内温度を25℃から150℃の温度まで5℃/分で上昇させ、積層フィルムの配向軸方向について熱収縮応力を測定した。得られた応力−温度曲線から、熱収縮応力を求めた。
(7)TMA:
積層フィルムを、その配向軸方向に長さ25mm×幅4mmの短冊形に切り出し、サンプルとした。TMA試験機(セイコーインスツルメンツ製TMA/SS6000)を用いて、初期引張チャック間距離15mmとし、引張張力を29.4mNで一定にしたまま、試験機内温度を25℃から150℃の温度まで5℃/分で上昇させ、積層フィルムの配向軸方向についてTMA測定を行った。得られたTMA−温度曲線から、TMAを求めた。
(8)偏光成分をもつ入射光に対する反射率と透過率の測定:
サンプルを配向軸方向の長さが最大となる線分上の配向軸方向中心から5cm×5cmで切り出した。日立製作所製 分光光度計(U−4100 Spectrophotomater)に付属の積分球を用いた基本構成で、装置付属の酸化アルミニウムの副白板を基準として測定した。サンプルは、積層フィルムの配向軸方向を垂直方向にして積分球の後ろに設置した。また、付属のグランテーラ社製偏光子を設置して、偏光成分を0および90°に偏光させた直線偏光を入射して、波長250〜1500nmの反射率を測定した。
測定条件は、次のとおりである。スリットは、2nm(可視)/自動制御(赤外)とし、ゲインは2と設定し、走査速度を600nm/分で測定し、方位角0〜180度における反射率を得た。サンプルの反射測定時は、裏面からの反射による干渉をなくすために、マジックインキ(登録商標)で黒塗りした。
また、同様に切り出したサンプルを黒塗りすることなく同様に透過率を測定し、得られた透過率のデータから、次の式によって波長550nmでの消光比を求めた。
・消光比=T2/T1
(ここで、T1は、積層フィルムの配向軸方向を含む入射面に対して平行な偏光成分について入射角度0°における透過率を表し、T2は、積層フィルムの配向軸方向を含む入射面に対して垂直な偏光成分について入射角度0°における透過率を表す。)
(9)偏光ラマンスペクトルのピーク強度比I max/I min:
偏光ラマンスペクトルは、レーザーラマン分光装置Jovin Yvon社製T−64000を使用して測定した。積層フィルムは、上記の(4)項で決定した反射率が最大となる方向をI max、それと直交する方向をI minとし、それぞれの方向の切断面が測定面となるように、ミクロトームにより断面を切り出した。偏光ラマンスペクトルは、試料断面からレーザーの偏光軸がフィルムの透過軸と一致する場合を平行条件と、積層フィルムの厚み方向と一致する場合を垂直条件として測定した。測定は、各層の中央部について、場所を変えて3点の測定を行い、平均値を測定値とした。詳細な測定条件は、下記のとおりである。
・測定モード:顕微ラマン
・対物レンズ:×100
・ビーム径:1μm
・クロススリット:100μm
・光源:Ar+レーザー/514.5nm
・レーザーパワー:15mW
・回折格子:Spectrograph 600gr/mm
・分散:Single 21オングストローム/mm
・スリット:100μm
・検出器:CCD/Jobin Yvon 1024×256。
波長1390cm−1および波長1615cm−1における偏光ラマンスペクトルのピーク強度比I max/I minは、偏光ラマンスペクトルの測定で得られた、ナフタレン環のCNC伸縮バンドに由来する1390cm−1のピーク強度、および、ベンゼン環のC=C伸縮バンドに由来する1615cm−1のピーク強度について、測定面をI max方向の断面としたサンプルと測定面をI min方向の断面としたサンプルとのピーク強度から比率を算出した。
(10)融解エンタルピーおよびガラス転移温度:
測定する積層フィルムからサンプリングを行い、示差熱量分析(DSC)を用いてJIS−K−7122(1987年)に従って、測定サンプルのDSC曲線を測定した。試験は、25℃から290℃の温度まで20℃/分で昇温し、その際の融解エンタルピーならびにガラス転移温度を計測した。用いた装置等は、次のとおりである。
・装置:セイコー電子工業(株)製“ロボットDSC−RDC220”
・データ解析”ディスクセッションSSC/5200”
・サンプル質量:5mg。
(11)加工性:
ロール状のフィルムを打ち抜き機に導入し、長さを500mmとし、フィルム幅に対して95%の幅長さの矩形状の金型を用いて、打ち抜きを実施した。また、長手方向の打ち抜き間隔は40mmとした。次のA、BおよびC評価を行った。AとBを合格とした。
A:フィルムが破断なく連続的に搬送し、加工することができた。
B:フィルムが部分的な破断は起こったものの、長手方向の連続搬送は可能であり、連続的に加工することができた。
C:フィルムが完全に破断し、長手方向の連続加工連続加工ができなくなった。
(12)実装テスト:
サンプルとなる積層フィルムを、フィルム幅方向中央部の位置から長手方向1450mm×幅方向820mmサイズで切り出した。次いで、ハイセンスジャパン株式会社製32型液晶TV LHD32K15JPバックライトの上に、50%拡散板、マイクロレンズシート、偏光反射体、および偏光板の順に設置し、50℃および85℃の温度のもとで、12時間耐熱試験を行った後の偏光反射体の平面性を目視によって評価した。
平面性の評価は、下記のA、BおよびCで判定した。Aを合格とした。
A:50℃及び85℃の温度で外観問題なし
B:50℃の温度で外観問題あり。
(13)ナフタレンジカルボン酸の含有率:
積層フィルムの、結晶性ポリエステルからなるA層を重水素化ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)もしくはHFIPと重水素化クロロホルムの混合溶媒に溶解し、1H−NMRおよび13C−NMRを用いて組成分析した。
(実施例1)
結晶性ポリエステルAとして、融点が266℃で、ガラス転移温度122℃の2,6−ポリエチレンナフタレート(PEN)を用いた。また、熱可塑性樹脂Bとして融点を持たない非晶性樹脂でありガラス転移温度が103℃の2,6−ナフタレンジカルボン酸スピログリコール25mol%と、テレフタル酸25mol%と、エチレングリコール50mol%とを共重合した共重合PEN(共重合PEN1)を用いた。
準備した結晶性ポリエステルAと熱可塑性樹脂Bを、2台の単軸押出機にそれぞれ投入し、290℃の温度で溶融させて混練した。次いで、結晶性ポリエステルAと熱可塑性樹脂Bを、それぞれFSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて計量しながら、スリット数11個の積層装置にて合流させて、厚み方向に交互に11層積層された積層体を得た。積層体とする方法は、日本特開2007−307893号公報〔0053〕〜〔0056〕段の記載の方法に従って行った。
ここでは、スリットの長さおよび間隔は、全て一定とした。得られた積層体は、結晶性ポリエステルAが6層、熱可塑性樹脂Bが5層であり、厚み方向に交互に積層された積層構造を有していた。また、口金内部での拡幅比である口金リップのフィルム幅方向長さを口金の流入口部でのフィルム幅方向の長さで割った値が2.5となるようにした。得られたキャストフィルムの幅は、600mmであった。
得られたキャストフィルムを、120℃の温度に設定したロール群で加熱した後、フィルム長手方向に135℃の温度に設定されたロールで3.0倍に延伸し、その後一旦冷却した。このようにして得られた一軸延伸フィルムをテンターに導き、115℃の温度の熱風で予熱後、135℃の温度でフィルム幅方向に3.0倍延伸し、二軸延伸フィルムをフィルムロールとして得た。ここで得られた二軸延伸フィルムの幅は、1500mmであった。
さらに、二軸延伸フィルムを120℃の温度に設定したロール群で加熱した後、フィルム長手方向に160℃の温度に設定されたロールで3.0倍に延伸し、フィルムの両端をトリミングすること、目的とする積層フィルムをフィルム幅が1000mmで長さが200mのフィルムロールを得た。
得られた積層フィルムは、表1に示すとおりの物性を示すものであり、MD方向に高いヤング率と低い線膨張係数(40〜50℃)を示すものであった。また、結晶性ポリエステルAと熱可塑性樹脂Bの屈折率の違いに由来する干渉反射特性を示すものであった。本発明の積層フィルムは、製品への加工時や実使用時においても、良好に使用できるものであった。
(実施例2)
用いられる積層装置を、スリット数が101個である装置を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムは、表1に示すとおりの物性を示すものであり、実施例1と同様にフィルム長手方向に高いヤング率と低い線膨張係数(40〜50℃)を示すものであった。また、結晶性ポリエステルAと熱可塑性樹脂Bの屈折率の違いに由来する干渉反射特性を示すものであり、実施例1と比較しても高い偏光反射特性を示した。この積層フィルムは、製品への加工時にも高精度に安定して連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。
(実施例3)
用いられる積層装置をスリット数が201個である装置を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムは、表1に示すとおりの物性を示すものであり、実施例1と同様にMD方向に高いヤング率と低い線膨張係数(40〜50℃)を示すものであった。また、結晶性ポリエステルAと熱可塑性樹脂Bの屈折率の違いに由来する干渉反射特性を示すものであり、実施例2と比較しても高い偏光反射特性を示し、偏光反射部材として用いることが可能なレベルのものであった。この積層フィルムは、製品への加工時にも高精度に安定して連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。
(実施例4)
用いられる積層装置をスリット数が801個である装置を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、表1に示すとおりの物性を示すものであり、実施例1と同様にMD方向に高いヤング率と低い線膨張係数(40〜50℃)を示すものであった。また、結晶性ポリエステルAと熱可塑性樹脂Bの屈折率の違いに由来する干渉反射特性を示すものであり、実施例3と比較しても高い偏光反射特性を示し、偏光反射部材として非常に高い性能であった。この積層フィルムは製品への加工時にも高精度に安定して連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。
(実施例5)
二軸延伸フィルムを再びフィルム長手方向に延伸する際の倍率を2.5倍としたこと以外は、実施例4と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、表1に示すとおりの物性を示すものであり、高いヤング率と低い線膨張係数(40〜50℃)を示すものであった。また、実施例4と同様に高い偏光反射特性を示し、偏光反射部材として非常に高い性能であった。この積層フィルムは、製品への加工時にも高精度に安定して連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。
(実施例6)
二軸延伸フィルムを再びフィルム長手方向に延伸する際の倍率を2.2倍としたこと外は、実施例4と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、表1に示すとおりの物性を示すものであり、高いヤング率と低い線膨張係数(40〜50℃)を示すものであった。この積層フィルムは、特定の条件での製品への加工時にも連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。
(実施例7)
二軸延伸フィルムを再びフィルム長手方向に延伸する際の倍率を2.0倍とした以外には、実施例4と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、表1に示すとおりの物性を示すものであり、高いヤング率と低い線膨張係数(40〜50℃)を示すものであった。この積層フィルムは特定の条件での製品への加工時にも連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。
(実施例8)
二軸延伸フィルムを再び長手方向に延伸した後に、180℃の温度に加熱されたオーブン内を搬送することによって熱処理を施したこと以外は、実施例4と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、表1に示すとおりの物性を示すものであり、高いヤング率と低い線膨張係数(40〜50℃)を示すものであった。また、実施例4と同様に高い偏光反射特性を示し、偏光反射部材として非常に高い性能であった。さらに、得られたフィルムは、実施例4と比較しても、フィルム長手方向について100℃における熱収縮応力及びTMAの絶対値を低く抑えることができており、この積層フィルムは特定の条件での製品への加工時にも高精度に安定して連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても、実施例4よりも過酷な条件で問題なく使用できるものであった。
(実施例9)
二軸延伸フィルムを再び長手方向に延伸した後に、220℃の温度に加熱されたオーブン内を搬送することによって熱処理を施したこと以外は、実施例4と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、表2に示すとおりの物性を示すものであり、高いヤング率と低い線膨張係数(40〜50℃)を示すものであった。また、実施例4と同様に高い偏光反射特性を示し、偏光反射部材として非常に高い性能であった。さらに、得られた積層フィルムは、実施例4と比較しても、フィルム長手方向について100℃における熱収縮応力及びTMAの絶対値を低く抑えることができており、この積層フィルムは特定の条件での製品への加工時にも高精度に安定して連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても、実施例4よりも過酷な条件で問題なく使用できるものであった。
(実施例10)
結晶性ポリエステルとして、融点が240℃で、ガラス転移温度が118℃の2,6−ナフタレンジカルボン酸50mol%、スピログリコール5mol%、およびエチレングリコール45mol%を共重合した共重合PEN(共重合PEN2)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、表2に示すとおりの物性を示すものであり、高いヤング率を示すものであった。この積層フィルムは、特定の条件での製品への加工時にも連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。
(実施例11)
熱可塑性樹脂Bとして共重合PEN2を用いたこと以外は、実施例4と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、表2に示すとおりの物性を示すものであり、実施例4と同様に高いヤング率を示すものであった。一方、結晶性ポリエステルと熱可塑性樹脂Bのガラス転移温度の差の小ささに由来して、反射性能は実施例1と同程度であった。この積層フィルムは、製品への加工時にも高精度に安定して連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても、問題なく使用できるものであった。
(実施例12)
結晶性ポリエステルとして、融点が256℃で、ガラス転移温度が81℃のポリエチレンテレフタレート(PET)を用い、熱可塑性樹脂Bとして非晶性樹脂であり、ガラス転移温度が78℃であるシクロヘキサンジメタノール共重合PET(共重合PET)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、表2に示すとおりの物性を示すものであり、比較例1〜5と比較して高いヤング率を示すものであった。この積層フィルムは、特定の条件での製品への加工時にも連続生産可能なものであり、かつ実使用時において問題なく使用できるものであった。一方、結晶性ポリエステルがPETであることに由来して、反射性能は実施例4と比較して低いものとなっていた。
(実施例13)
熱可塑性樹脂Bとして、ガラス転移温度が96℃のジカルボン酸成分として、2,6−ナフタレンジカルボン酸70mol%とイソフタル酸30mol%を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを用いて共重合した共重合PEN(共重合PEN3)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、表3に示すとおりの物性を示すものであり、高いヤング率を示すものであった。この積層フィルムは製品への加工時にも連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。
(実施例14)
二軸延伸後フィルムを長手方向に延伸する速度を400%/秒としたこと以外は、実施例13と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、表3に示すとおりの物性を示すものであり、高いヤング率を示すものであった。この積層フィルムは、製品への加工時にも連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。また、偏光特性を示す消光比は実施例4よりも高く、偏光反射性能に優れるものであった。
(実施例15)
熱可塑性樹脂Bとして、ガラス転移温度が90℃であり、ジカルボン酸成分として、2,6−ナフタレンジカルボン酸50mol%とイソフタル酸50mol%を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを共重合した共重合PEN(共重合PEN4)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、表3に示すとおりの物性を示すものであり、高いヤング率を示すものであった。この積層フィルムは、製品への加工時にも連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。また、偏光特性を示す消光比は実施例4よりも高く、偏光反射性能に優れるものであった。
(実施例16)
熱可塑性樹脂として、ガラス転移温度が98℃であり、ジカルボン酸成分として、2,6−ナフタレンジカルボン酸75mol%とイソフタル酸25mol%を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを共重合した共重合PEN(共重合PEN5)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、表3に示すとおりの物性を示すものであり、高いヤング率を示すものであった。この積層フィルムは、製品への加工時にも連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。また、偏光特性を示す消光比は実施例4よりも高く、偏光反射性能に優れるものであった。
(実施例17)
熱可塑性樹脂Bとして、ガラス転移温度が103℃であり、ジカルボン酸成分として、2,6−ナフタレンジカルボン酸80mol%とイソフタル酸20mol%を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを共重合した共重合PEN(共重合PEN6)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、表3に示すとおりの物性を示すものであり、高いヤング率を示すものであった。この積層フィルムは、製品への加工時にも連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。また、偏光特性を示す消光比は実施例4よりも高く、偏光反射性能に優れるものであった。
(実施例18)
熱可塑性樹脂Bとして、ガラス転移温度が103℃であり、ジカルボン酸成分として、2,6−ナフタレンジカルボン酸70mol%と1,8―ナフタレンジカルボン酸30mol%を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを共重合した共重合PEN(共重合PEN7)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、表3に示すとおりの物性を示すものであり、高いヤング率を示すものであった。この積層フィルムは、製品への加工時にも連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。また、偏光特性を示す消光比は実施例4よりも高く、偏光反射性能に優れるものであった。
(実施例19)
熱可塑性樹脂Bとして、ガラス転移温度が103℃であり、2,6−ナフタレンジカルボン酸70mol%と2,3―ナフタレンジカルボン酸30mol%を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを共重合した共重合PEN(共重合PEN8)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、表3に示すとおりの物性を示すものであり、高いヤング率を示すものであった。この積層フィルムは、製品への加工時にも連続生産可能なものであり、かつ実使用時においても問題なく使用できるものであった。また、偏光特性を示す消光比は実施例4よりも高く、偏光反射性能に優れるものであった。
(比較例1)
キャストフィルムとして、PENの単層のフィルムを用いたこと以外は、実施例4と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムは、表2に示すとおりの物性を示すものであり、実施例4と同様に高いヤング率を示すものであった。一方、積層構造を有さないため、特異な反射性能は示さず、さらに実施例1のフィルムと比較するとフィルムが脆くなっているため、ハンドリング性が低下していた。このフィルムは、製品への加工時にフィルム破断が発生し、連続生産性に劣るものであった。
(比較例2)
用いられる積層装置をスリット数が3個である装置を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、表2に示すとおりの物性を示すものであり、実施例1と同様にフィルム長手方向に高いヤング率を示すものであった。一方、層数が3層と少ないことを反映して、積層構造特有の反射性能は示さず、さらに実施例1のフィルムと比較するとフィルムが脆くなっているため、ハンドリング性がやや低下していた。この積層フィルムは、製品への加工時にフィルム破断が発生し、連続生産性に劣るものであった。
(比較例3)
実施例4と同様にして得られたキャストフィルムを、120℃の温度に設定したロール群で加熱した後、フィルム長手方向に135℃の温度に設定されたロールで4.5倍に延伸し、その後一旦冷却した。
このようにして得られた一軸延伸フィルムをテンターに導き、135℃の温度の熱風で予熱後、150℃の温度でフィルム幅方向に4.5倍延伸し、さらに連続して220℃に加熱されたオーブン内を搬送することによって、熱処理を実施した。得られた二軸延伸フィルムの両端をトリミングすることにより、目的とする積層フィルムを、フィルム幅が1500mmで長さが200mのフィルムロールとして得た。
得られた積層フィルムは、表2に示すとおりの物性を示すものであり、実施例4と比較してヤング率は低下していた。この積層フィルムは、製品への加工時にフィルム破断が発生し、連続生産性に劣るものであった。
(比較例4)
実施例4と同様に得られたキャストフィルムを、テンターに導き、135℃の温度の熱風で予熱後、150℃の温度でフィルム幅方向に5.0倍延伸し、フィルムの両端をトリミングすることにより、目的とする積層フィルムをフィルム幅2000mmのロール状で200m得られた。
得られた積層フィルムは、表2に示すとおりの物性を示すものであり、実施例4と比較してヤング率は低下しており、また、そのフィルムロールの幅方向に配向軸を備えたフィルムであったため、フィルムロールの巻取軸方向の強度は極めて弱いものであった。この積層フィルムは、製品への加工時にフィルム破断が発生し、連続生産性に劣るものであった。
(比較例5)
実施例4と同様にして得られたキャストフィルムを、120℃の温度に設定したロール群で加熱した後、フィルム長手方向に135℃の温度に設定されたロールにより4.0倍に延伸し、トリミングすることにより、目的とするフィルム幅が500mmで長さが200m積層フィルムのからなるフィルムロールを得た。
得られた積層フィルムは、表2に示すとおりの物性を示すものであり、実施例4と比較してヤング率は低下していた。さらに、延伸時に生じる熱可塑性樹脂Bの配向に伴い、反射性能も実施例対比で大幅に低下しているものであった。この積層フィルムは、製品への加工時にフィルム破断が発生し、連続生産性に劣るものであった。
Figure 2016140103
Figure 2016140103
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Claims (14)

  1. 結晶性ポリエステルからなるA層と前記結晶性ポリエステルとは異なる熱可塑性樹脂からなるB層が交互に、合計11層以上積層されてなる積層フィルムであって、前記積層フィルムの配向軸方向におけるヤング率が6GPa以上であることを特徴とする積層フィルム。
  2. ビーム径が1μmで、波長が1390cm−1での偏光ラマンスペクトルにおいて、反射率が最大となる方向のピーク強度 I max とそれに直交する方向のピーク強度 I min との比 I max/I min が5以上であることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
  3. 結晶性ポリエステルを構成するカルボン酸成分のうち、ナフタレンジカルボン酸を90mol%以上含むことを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
  4. 配向軸方向および前記配向軸方向に直交する方向のいずれかにおいて、40℃以上50℃以下の温度における線膨張係数の絶対値が10ppm/℃以下であることを特徴とする請求項1または2記載の積層フィルム。
  5. 配向軸方向を含む入射面に対して平行な偏光成分について入射角度10°での反射率をR1とし、それと前記配向軸方向を含む入射面に対して垂直な偏光成分について入射角度10°での反射率をR2とした場合、波長550nmにおける反射率が、下記式(2)および式(3)を満足すること特徴とする請求項1または2記載の積層フィルム。
    ・R2(550)≦40% ・・・(2)
    ・R1(550)≧70% ・・・(3)
  6. 示差熱量測定(以下、DSC)における第一の昇温カーブにおいて、積層フィルムが融解ピークを有し、かつその融解ピークトップ温度をTmとして、Tm―110℃以上Tm−60℃以下の範囲で放熱ピークを有する請求項1または2記載の積層フィルム。
  7. 配向軸方向とそれと同一の面内で直交する方向のヤング率の比が2以上であることを特徴とする請求項1または2記載の積層フィルム。
  8. 配向軸方向における100℃の温度での熱収縮応力が、1MPa以下であることを特徴とする請求項1または2記載の積層フィルム。
  9. 配向軸方向における100℃の温度におけるTMAの絶対値が0.5%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層フィルム。
  10. 示差走査熱量測定(DSC)による熱可塑性樹脂B由来の融解ピークが、5J/g以下であることを特徴とする請求項1または2記載の積層フィルム。
  11. A層およびB層が、次の条件を満たすことを特徴とする請求項1または2記載の積層フィルム。
    ・A層:ジカルボン酸成分とジオール成分を主たる構成成分とする芳香族ポリエステルからなり、前記ジカルボン酸成分100mol%中80〜100mol%が2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、前記ジオール成分100mol%中80〜100mol%がエチレングリコールであること。
    ・B層:ジカルボン酸成分とジオール成分を主たる構成成分とする芳香族ポリエステルからなり、前記ジカルボン酸成分100mol%中40〜75mol%が2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、25〜60mol%がイソフタル酸、1,8―ナフタレンジカルボン酸および2,3―ナフタレンジカルボン酸からなる群から選ばれた少なくとも一つの成分であり、前記ジオール成分100mol%中80〜100mol%がエチレングリコールであること。
  12. 請求項1または2のいずれかに記載の積層フィルムが、前記積層フィルムの配向軸に沿って巻きとられてなることを特徴とするフィルムロール。
  13. 積層フィルムの幅が1000mm以上であることを特徴とする請求項12記載のフィルムロール。
  14. 結晶性ポリエステルからなるA層と前記結晶性ポリエステルとは異なる熱可塑性樹脂からなるB層が、交互に合計11層以上積層した未延伸フィルムを、フィルム長手方向に倍率2〜5倍で延伸した後、フィルム幅方向に2〜5倍で延伸し、さらに再度フィルム長手方向に1.3〜4倍で延伸することを特徴とする積層フィルムの製造方法。
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