JPWO2016136842A6 - ガスバリア性フィルム - Google Patents

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Abstract

高温高湿環境での耐久性に優れるガスバリア性フィルムを提供する。
樹脂基材上に、気相成膜法により形成される遷移金属化合物を含む層(A)と、層(A)に接しており、ケイ素含有化合物を含有する塗布液を塗布および乾燥することを有して得られるケイ素含有層(B)と、を有するガスバリア性フィルムであって、ガスバリア性フィルムの厚さ方向にXPS組成分析を行った際に得られる原子組成分布プロファイルにおいて、原子組成をSiMxNyで示した際に、式(1)および式(2)を満足する領域(a)を有する、ガスバリア性フィルム。
[数1]
SiMxNy
0.2≦x≦3.0 (1)
0≦y≦0.6 (2)

Description

本発明は、ガスバリア性フィルムに関する。
フレキシブル電子デバイス、特にフレキシブル有機ELデバイスには、基板フィルムや封止フィルムとしてガスバリア性フィルムが用いられている。これらに用いられるガスバリア性フィルムには高いバリア性が求められている。
一般に、ガスバリア性フィルムは、基材フィルム上に蒸着法、スパッタ法、CVD法等の気相成膜法によって無機バリア層を形成することにより製造されている。近年、基材上に溶液を塗布して形成された前駆体層にエネルギーを印加して、ガスバリア層を形成する製造方法も検討されてきている。特に、前駆体としてポリシラザン化合物を用いた検討が広く行われており、塗布による高生産性とバリア性とを両立する技術として検討が進められている。特に波長172nmのエキシマ光を用いたポリシラザン層の改質が注目されている。
ここで、国際公開第2011/122547号(米国特許出願公開第2014/374665号明細書に相当)には、ポリシラザン化合物を含む層に炭化水素系化合物のイオンが注入されて得られる層を有する成形体が開示されている。また、特表2009−503157号公報(米国特許出願公開第2010/166977号明細書に相当)には、ポリシラザンおよび触媒を含む溶液を基材上に塗布し、次いで溶剤を除去しポリシラザン層を形成した後、水蒸気を含む雰囲気中において、上記のポリシラザン層を、230nm未満の波長成分を含むVUV放射線および230〜300nmの波長成分を含むUV放射線で照射することによって、基材上にガスバリア層を形成する方法が開示されている。さらに、特開2009−255040号公報には、樹脂基材上に、ポリシラザンを塗工して膜厚250nm以下のポリマー膜を形成する第一ステップと、形成されたポリマー膜に真空紫外光を照射する第二ステップと、上記第二ステップで形成された膜上に上記第一ステップおよび上記第二ステップを繰り返して膜を重ねて形成する第三ステップと、を含む、フレキシブルガスバリアフィルムの製造方法が開示されている。
しかしながら、国際公開第2011/122547号(米国特許出願公開第2014/374665号明細書に相当)、特表2009−503157号公報(米国特許出願公開第2010/166977号明細書に相当)、および特開2009−255040号公報に記載されているような、ポリシラザンをエキシマ光で改質して形成したガスバリア層は、40℃程度までの低温におけるガスバリア性は良好であるものの、80℃85%RHといった高温高湿の非常に過酷な環境下では、経時でガスバリア性が低下することがわかった。
このように、ポリシラザンを改質することにより得られるガスバリア層の高温高湿条件下での性能劣化を抑制し、電子デバイス用として使用できるガスバリア性フィルムが求められていた。
そこで本発明は、高温高湿環境での耐久性に優れるガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、樹脂基材上に、気相成膜法により形成される遷移金属化合物を含む層(A)と、前記層(A)に接しており、ケイ素含有化合物を含有する塗布液を塗布および乾燥することを有して得られるケイ素含有層(B)と、を有し、厚さ方向にXPS組成分析を行った際に得られる原子組成分布プロファイルにおいて、特定の組成を有する領域を有するガスバリア性フィルムにより、上記課題が解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。
ずなわち、本発明は、樹脂基材上に、気相成膜法により形成される遷移金属化合物を含む層(A)と、前記層(A)に接しており、ケイ素含有化合物を含有する塗布液を塗布および乾燥することを有して得られるケイ素含有層(B)と、を有するガスバリア性フィルムであって、前記ガスバリア性フィルムの厚さ方向にXPS組成分析を行った際に得られる原子組成分布プロファイルにおいて、組成をSiMで示した際に、下記式(1)および式(2)を満足する領域(a)を有する、ガスバリア性フィルムである。
図1は本発明の一実施形態に係るガスバリア性フィルムを示す断面模式図であり、10はガスバリア性フィルムであり、11は基材であり、12は層(B)であり、13は層(A)である。 図2は本発明の他の実施形態に係るガスバリア性フィルムを示す断面模式図であり、10はガスバリア性フィルムであり、11は基材であり、12は層(B)であり、13は層(A)である。 図3は実施例で用いた真空紫外線照射装置の断面模式図であり、1は装置チャンバー、2は172nmの真空紫外線を照射する二重管構造を有するXeエキシマランプ、3は外部電極を兼ねるエキシマランプのホルダーであり、4は試料ステージであり、5はポリシラザン化合物塗布層が形成された試料であり、6は遮光板である。
本発明は、樹脂基材上に、気相成膜法により形成される遷移金属化合物を含む層(A)(以下、単に層(A)とも称する)と、前記層(A)に接しており、前記層(A)に接しており、ケイ素含有化合物を含有する塗布液を塗布および乾燥することを有して得られるケイ素含有層(B)(以下、単に層(B)とも称する)と、を有し、前記ガスバリア性フィルムの厚さ方向にXPS組成分析を行った際に得られる原子組成分布プロファイルにおいて、組成をSiMで示した際に、下記式(1)および式(2)を満足する領域(a)(以下、単に領域(a)とも称する)を有する、ガスバリア性フィルムである。このような構成を有する本発明のガスバリア性フィルムは、高温高湿環境での耐久性に優れる。
なぜ、本発明のガスバリア性フィルムにより上記効果が得られるのか、詳細は不明であるが、下記のようなメカニズムが考えられる。なお、下記のメカニズムは推測によるものであり、本発明は下記メカニズムに何ら拘泥されるものではない。
ケイ素含有化合物を含有する塗布液を塗布および乾燥することを有して得られるケイ素含有層(B)は、特定の組成を有することでガスバリア性を発現する。また、気相成膜法で形成される場合とは異なり、層(B)は、成膜時にパーティクル等の異物混入がほとんどなくなり、欠陥が非常に少ないガスバリア層を形成することが可能となる。しかしながら、この層(B)は、酸化に対して完全に安定ではなく、高温高湿環境では徐々に酸化されてガスバリア性が低下することがある。
これに対し、本発明のガスバリア性フィルムは、層(B)に隣接する層(A)が、遷移金属化合物を含み、ガスバリア性フィルムの厚さ方向にXPS組成分析を行った際に得られる原子組成分布プロファイルにおいて、組成をSiMで示した際に、上記式(1)および式(2)を満足する領域(a)を有する。層(A)は、層(B)よりも酸化されやすいため、層(A)が先に酸化されることにより、層(B)の酸化が抑制され、高温高湿環境での耐久性に優れると考えられる。さらに、領域(a)を有することにより、高温高湿環境下での耐久性がさらに向上すると考えられる。
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。また、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で測定する。
図1は、本発明の一実施形態に係るガスバリア性フィルムを示す断面模式図である。図1のガスバリア性フィルム10は、基材11、層(B)12、および層(A)13がこの順に配置される。また、図2は本発明の他の実施形態に係るガスバリア性フィルムを示す断面模式図である。図2のガスバリア性フィルム10は、基材11、層(A)13および層(B)12がこの順に配置される。すなわち、層(A)および層(B)は隣接して配置される限り、基材側から層(A)、層(B)の順であっても、層(B)、層(A)の順であってもよい。また、基材の一方の面に層(A)、層(B)が形成される形態だけではなく、基材の両面に層(A)および層(B)が形成されていてもよい。さらに、基材と各層との間、または、各層上には他の層が配置されていてもよい。
層(A)が基材と相対する面の層(B)に配置されることで、層(A)がより酸化されやすく、層(A)による層(B)の保護がより顕著に発揮されることからは、基材、層(B)、層(A)の順に配置されることが好ましい。
[(A)遷移金属化合物を含む層]
本発明のガスバリア性フィルムは、気相成膜法により形成される遷移金属化合物を含む層(A)を有する。層(A)は、電気化学的に層(B)よりも酸化されやすく、層(B)の酸化を抑制する。
層(A)に含まれる遷移金属化合物としては、特に限定されないが、例えば、遷移金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、または酸炭化物が挙げられる。中でも層(B)の酸化をより効果的に抑制するという観点からは、遷移金属化合物が遷移金属酸化物であることが好ましい。遷移金属化合物は1種単独であっても2種以上併用してもよい。
遷移金属原子とは、第3族元素から第12族元素までを指し、遷移金属としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、およびAuなどが挙げられる。
中でも、遷移金属化合物中の遷移金属は、ケイ素よりも酸化還元電位が低い金属であることが好ましい。ケイ素よりも酸化還元電位の低い遷移金属の化合物を含む層とすることで、より良好なバリア性が得られる。ケイ素よりも酸化還元電位が低い金属の具体例としては、例えば、ニオブ、タンタル、バナジウム、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、イットリウム、ランタン、セリウム等が挙げられる。これら金属は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。これらの中でも、特に第5族元素であるニオブ、タンタル、バナジウムが層(B)の酸化を抑制する効果が高いため、好ましく用いることができる。すなわち、本発明の好適な一実施形態は、遷移金属がバナジウム、ニオブ、およびタンタルからなる群より選択される少なくとも1種の金属である、ガスバリア性フィルムである。さらに、光学特性の観点から、遷移金属化合物中の遷移金属は、透明性が良好な化合物が得られるニオブ、タンタルが特に好ましい。
主要な金属の標準酸化還元電位を下記表に示す。
層(A)中における遷移金属化合物の含有量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、遷移金属化合物の含有量が、層(A)の全質量に対して50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、98質量%以上であることが特に好ましく、100質量%である(すなわち、層(A)は遷移金属化合物からなる)ことが最も好ましい。
層(A)の形成方法は、金属元素と酸素との組成比の調整しやすさの観点から、気相成膜法である。気相成膜法としては、特に制限されず、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(PVD)法、プラズマCVD(chemical vapordeposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)などの化学気相成長法が挙げられる。中でも、下層へのダメージを与えることなく成膜が可能となり、高い生産性を有することから、スパッタ法により形成することが好ましい。
スパッタ法による成膜は、2極スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、中間的な周波数領域を用いたデュアルマグネトロン(DMS)スパッタリング、イオンビームスパッタリング、ECRスパッタリングなどを単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。また、ターゲットの印加方式はターゲット種に応じて適宜選択され、DC(直流)スパッタリング、およびRF(高周波)スパッタリングのいずれを用いてもよい。また、金属モードと、酸化物モードの中間である遷移モードを利用した反応性スパッタ法も用いることができる。遷移領域となるようにスパッタ現象を制御することにより、高い成膜スピードで金属酸化物を成膜することが可能となるため好ましい。DCスパッタリングやDMSスパッタリングを行なう際には、そのターゲットに遷移金属を用い、さらに、プロセスガス中に酸素を導入することで、遷移金属酸化物の薄膜を形成することができる。また、RF(高周波)スパッタリングで成膜する場合は、遷移金属の酸化物のターゲットを用いることができる。プロセスガスに用いられる不活性ガスとしては、He、Ne、Ar、Kr、Xe等を用いることができ、Arを用いることが好ましい。さらに、プロセスガス中に酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素を導入することで、遷移金属の酸化物、窒化物、窒酸化物、炭酸化物等の遷移金属化合物薄膜を作ることができる。スパッタ法における成膜条件としては、印加電力、放電電流、放電電圧、時間等が挙げられるが、これらは、スパッタ装置や、膜の材料、膜厚等に応じて適宜選択することができる。
中でも、成膜レートがより高く、より高い生産性を有することから、遷移金属の酸化物をターゲットとして用いるスパッタ法が好ましい。
層(A)は、単層でもよいし2層以上の積層構造であってもよい。層(A)が2層以上の積層構造である場合、層(A)に含まれる遷移金属化合物は同じものであってもよいし異なるものであってもよい。
層(A)は、層(B)の酸化を抑制しガスバリア性を維持する機能を有する層であると考えられるため、必ずしもガスバリア性は必要ではない。したがって、層(A)は比較的薄い層でも効果を発揮し得る。具体的には、基材−層(B)−層(A)の層構成の場合には、層(A)の厚さ(2層以上の積層構造である場合はその総厚)は、ガスバリア性の面内均一性の観点から、1〜200nmであることが好ましく、2〜100nmであることがより好ましく、3〜50nmであることがさらに好ましい。特に50nm以下であれば、層(A)の成膜の生産性がより向上する。また、基材−層(A)−層(B)の層構成の場合には、層(A)の厚さ(2層以上の積層構造である場合はその総厚)は、ガスバリア性の面内均一性の観点から、1〜200nmであることが好ましく、2〜150nmであることがより好ましく、10〜150nmであることがさらに好ましい。
[(B)ケイ素含有層]
層(B)は、ケイ素含有化合物を含有する塗布液を塗布および乾燥することを有して得られるケイ素含有層である。
本発明で用いることができる上記のケイ素含有化合物としては、例えば、ポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、ポリシラザン、ポリシロキサザン、ポリシラン、ポリカルボシラン等を挙げることができる。
これらの中でも、ケイ素−窒素結合、ケイ素−水素結合、およびケイ素−ケイ素結合からなる群より選択される少なくとも1種を有することが好ましい。
ケイ素含有化合物のより好ましい具体例としては、ケイ素−窒素結合とケイ素−水素結合とを有するポリシラザン、ケイ素−窒素結合を有するポリシロキサザン、ケイ素−水素結合を有するポリシロキサン、ケイ素−水素結合を有するポリシルセスキオキサン、ケイ素−ケイ素結合を有するポリシランを好ましく用いることができる。
ケイ素−窒素結合、ケイ素−水素結合、およびケイ素−ケイ素結合からなる群より選択される少なくとも1種を有するケイ素含有化合物由来のケイ素含有層(B)を用いることで、領域(a)の原子組成をSiMで示した際に、(4+ax)−(3y+2z)>0となる領域(b)を形成し易くなる。ここで、Mは遷移金属、aは遷移金属Mの化学量論的な価数(最大価数)である。
本発明に係るケイ素含有層(B)は、ケイ素含有化合物を含有する塗布液を塗布および乾燥することを有して得られる。層(B)はガスバリア性を発現し、また、気相成膜法で形成される場合とは異なり、成膜時にパーティクル等の異物混入がないため、欠陥の少ないガスバリア層となる。層(B)は、単層でもよいし2層以上の積層構造であってもよい。
ポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、およびポリシロキサザンの具体例については、特開2012−116101号公報の段落「0093」〜「0121」に記載の化合物が挙げられる。ポリシロキサンとしては、水素化(ハイドロジェン)ポリシロキサンが好ましい。
ポリシランの形態は特に制限されず、非環状ポリシラン(直鎖状ポリシラン、分岐鎖状ポリシラン、網目状ポリシラン等)や、環状ポリシラン等の単独重合体であっても、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、くし型共重合体等の共重合体であってもよい。
ポリシランが非環状ポリシランである場合は、ポリシランの末端基(末端置換基)は、水素原子であっても、ハロゲン原子(塩素原子等)、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シリル基等であってもよい。
ポリシランの具体例としては、ポリジメチルシラン、ポリ(メチルプロピルシラン)、ポリ(メチルブチルシラン)、ポリ(メチルペンチルシラン)、ポリ(ジブチルシラン)、ポリ(ジヘキシルシラン)等のポリジアルキルシラン、ポリ(ジフェニルシラン)等のポリジアリールシラン、ポリ(メチルフェニルシラン)等のポリ(アルキルアリールシラン)等のホモポリマー;ジメチルシラン−メチルヘキシルシラン共重合体等のジアルキルシランと他のジアルキルシランとの共重合体、フェニルシラン−メチルフェニルシラン共重合体等のアリールシラン−アルキルアリールシラン共重合体、ジメチルシラン−メチルフェニルシラン共重合体、ジメチルシラン−フェニルヘキシルシラン共重合体、ジメチルシラン−メチルナフチルシラン共重合体、メチルプロピルシラン−メチルフェニルシラン共重合体等のジアルキルシラン−アルキルアリールシラン共重合体等のコポリマー;等が挙げられる。
ポリカルボシランは、分子内の主鎖に(−Si−C−)結合を有する高分子化合物である。なかでも、本発明に用いるポリカルボシランとしては、下記式(d)で表される繰り返し単位を含むものが好ましい。
式中、Rw、Rvは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、または1価の複素環基を表す。複数のRw、Rvは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
1価の複素環基の複素環としては、炭素原子の他に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む3〜10員の環状化合物であれば特に制約はない。
1価の複素環基の具体例としては、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−フリル基、3−フリル基、3−ピラゾリル基、4−ピラゾリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、1,2,4−トリアジン−3−イル基、1,2,4−トリアジン−5−イル基、2−ピリミジル基、4−ピリミジル基、5−ピリミジル基、3−ピリダジル基、4−ピリダジル基、2−ピラジル基、2−(1,3,5−トリアジル)基、3−(1,2,4−トリアジル)基、6−(1,2,4−トリアジル)基、2−チアゾリル基、5−チアゾリル基、3−イソチアゾリル基、5−イソチアゾリル基、2−(1,3,4−チアジアゾリル)基、3−(1,2,4−チアジアゾリル)基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、3−イソオキサゾリル基、5−イソオキサゾリル基、2−(1,3,4−オキサジアゾリル)基、3−(1,2,4−オキサジアゾリル)基、5−(1,2,3−オキサジアゾリル)基等が挙げられる。
これらの基は、任意の位置に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等の置換基を有していてもよい。
式中、Rは、アルキレン基、アリーレン基または2価の複素環基を表す。
Rのアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等の炭素数1〜10のアルキレン基が挙げられる。
アリーレン基としては、p−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、2,5−ナフチレン基等の炭素数6〜20のアリーレン基が挙げられる。
2価の複素環基としては、炭素原子の他に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む3〜10員の複素環化合物から導かれる2価の基であれば特に制約はない。
2価の複素環基の具体例としては、2,5−チオフェンジイル基等のチオフェンジイル基;2,5−フランジイル基等のフランジイル基;2,5−セレノフェンジイル基等のセレノフェンジイル基;2,5−ピロールジイル基等のピロールジイル基;2,5−ピリジンジイル基、2,6−ピリジンジイル基等のピリジンジイル基;2,5−チエノ[3,2−b]チオフェンジイル基、2,5−チエノ[2,3−b]チオフェンジイル基等のチエノチオフェンジイル基;2,6−キノリンジイル基等のキノリンジイル基;1,4−イソキノリンジイル基、1,5−イソキノリンジイル基等のイソキノリンジイル基;5,8−キノキサリンジイル基等のキノキサリンジイル基;4,7−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基等のベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基;4,7−ベンゾチアゾールジイル基等のベンゾチアゾールジイル基;2,7−カルバゾールジイル基、3,6−カルバゾールジイル基等のカルバゾールジイル基;3,7−フェノキサジンジイル基等のフェノキサジンジイル基;3,7−フェノチアジンジイル基等のフェノチアジンジイル基;2,7−ジベンゾシロールジイル基等のジベンゾシロールジイル基;2,6−ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンジイル基、2,6−ベンゾ[1,2−b:5,4−b’]ジチオフェンジイル基、2,6−ベンゾ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンジイル基、2,6−ベンゾ[1,2−b:3,4−b’]ジチオフェンジイル基等のベンゾジチオフェンジイル基等が挙げられる。
なお、Rのアルキレン基、アリーレン基、2価の複素環基は、任意の位置に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
これらの中でも、式(d)において、Rw、Rvがそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアリール基であり、Rがアルキレン基またはアリーレン基である繰り返し単位を含むものがより好ましく、Rw、Rvがそれぞれ独立して、水素原子またはアルキル基であり、Rがアルキレン基である繰り返し単位を含むものがさらに好ましい。
式(d)で表される繰り返し単位を有するポリカルボシランの重量平均分子量は、通常400〜12,000である。
層(B)の形成材料として、ポリシラザンがより好ましい。
ポリシラザンとは、ケイ素−窒素結合を有するポリマーであり、Si−N、Si−H、N−H等の結合を有するSiO、Si、および両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
具体的には、ポリシラザンは、好ましくは下記の構造を有する。
上記一般式(I)において、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R、RおよびRは、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
また、上記一般式(I)において、nは、整数であり、上記一般式(I)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。
上記一般式(I)で表される構造を有する化合物において、好ましい態様の一つは、R 、RおよびRのすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザンである。
または、ポリシラザンとしては、下記一般式(II)で表される構造を有する。
上記一般式(II)において、R1’、R2’、R3’、R4’、R5’およびR6’は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R1’、R2’、R 、R4’、R5’およびR6’は、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。また、上記一般式(II)において、n’およびpは、整数であり、一般式(II)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。なお、n’およびpは、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
上記一般式(II)のポリシラザンのうち、R1’、R3’およびR6’が各々水素原子を表し、R2’、R4’およびR5’が各々メチル基を表す化合物;R1’、R3’およびR6’が各々水素原子を表し、R2’、R4’が各々メチル基を表し、R5’がビニル基を表す化合物;R1’、R3’、R4’およびR6’が各々水素原子を表し、R2’およびR5’が各々メチル基を表す化合物が好ましい。
または、ポリシラザンとしては、下記一般式(III)で表される構造を有する。
上記一般式(III)において、R1”、R2”、R3”、R4”、R5”、R6”、R7”、R8”およびR9”は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R1”、R2”、R3”、R4”、R5”、R6”、R7”、R8”およびR9”は、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
また、上記一般式(III)において、n”、p”およびqは、整数であり、一般式(III)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。なお、n”、p”およびqは、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
上記一般式(III)のポリシラザンのうち、R1”、R3”およびR6”が各々水素原子を表し、R2”、R4”、R5”およびR8”が各々メチル基を表し、R9”が(トリエトキシシリル)プロピル基を表し、R7”がアルキル基または水素原子を表す化合物が好ましい。
一方、そのSiと結合する水素原子部分の一部がアルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより下地である基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より(平均)膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。このため、用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンとを選択してよく、混合して使用することもできる。
パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6および8員環を中心とする環構造とが存在する構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)で、液体または固体の物質があり、その状態は分子量により異なる。
ポリシラザンは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのまま層(B)形成用塗布液として使用することができる。ポリシラザン溶液の市販品としては、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製のNN120−10、NN120−20、NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL120−20、NL150A、NP110、NP140、SP140等が挙げられる。これらポリシラザン溶液は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
本発明で使用できるポリシラザンの別の例としては、以下に制限されないが、例えば、上記ポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等の、低温でセラミック化するポリシラザンが挙げられる。
ポリシラザンを用いる場合、真空紫外線照射前の層(B)中におけるポリシラザンの含有率としては、層(B)の全質量を100質量%としたとき、100質量%でありうる。また、真空紫外線照射前の層(B)がポリシラザン以外のものを含む場合には、層中におけるポリシラザンの含有率は、10質量%以上99質量%以下であることが好ましく、40質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、特に好ましくは70質量%以上95質量%以下である。
(層(B)形成用塗布液)
層(B)形成用塗布液を調製するための溶剤としては、ケイ素含有化合物を溶解できるものであれば特に制限されないが、ケイ素含有化合物と容易に反応してしまう水および反応性基(例えば、ヒドロキシル基、あるいはアミン基等)を含まず、ケイ素含有化合物に対して不活性の有機溶剤が好ましく、非プロトン性の有機溶剤がより好ましい。具体的には、溶剤としては、非プロトン性溶剤;例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターペン等の、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒;塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類:例えば、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、モノ−およびポリアルキレングリコールジアルキルエーテル(ジグライム類)などを挙げることができる。上記溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度等の目的にあわせて選択され、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
層(B)形成用塗布液におけるケイ素含有化合物の濃度は、特に制限されず、層の膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは10〜40質量%である。
層(B)の改質を行う場合には、層(B)形成用塗布液は、改質を促進するために、触媒を含有することが好ましい。本発明に適用可能な触媒としては、塩基性触媒が好ましく、特に、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、3−モルホリノプロピルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン等のアミン触媒、Ptアセチルアセトナート等のPt化合物、プロピオン酸Pd等のPd化合物、Rhアセチルアセトナート等のRh化合物等の金属触媒、N−複素環式化合物が挙げられる。これらのうち、アミン触媒を用いることが好ましい。この際添加する触媒の濃度としては、ケイ素化合物を基準としたとき、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜7質量%の範囲である。触媒添加量をこの範囲とすることで、反応の急激な進行による過剰なシラノール形成、および膜密度の低下、膜欠陥の増大などを避けることができる。
層(B)形成用塗布液には、必要に応じて下記に挙げる添加剤を用いることができる。例えば、セルロースエーテル類、セルロースエステル類;例えば、エチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセトブチレート等、天然樹脂;例えば、ゴム、ロジン樹脂等、合成樹脂;例えば、重合樹脂等、縮合樹脂;例えば、アミノプラスト、特に尿素樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂もしくは変性ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソシアネートもしくはブロック化ポリイソシアネート、ポリシロキサン等である。
(層(B)形成用塗布液を塗布する方法)
層(B)形成用塗布液を塗布する方法としては、従来公知の適切な湿式塗布方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
塗布厚さは、好ましい厚さや目的に応じて適切に設定され得る。
塗布液を塗布した後は、塗膜を乾燥させる。塗膜を乾燥することによって、塗膜中に含有される有機溶媒を除去することができる。この際、塗膜に含有される有機溶媒は、すべてを乾燥させてもよいが、一部残存させていてもよい。一部の有機溶媒を残存させる場合であっても、好適な層(B)が得られうる。なお、残存する溶媒は後に除去されうる。
塗膜の乾燥温度は、適用する基材によっても異なるが、50〜200℃であることが好ましい。例えば、ガラス転移温度(Tg)が70℃のポリエチレンテレフタレート基材を基材として用いる場合には、乾燥温度は、熱による基材の変形等を考慮して150℃以下に設定することが好ましい。上記温度は、ホットプレート、オーブン、ファーネスなどを使用することによって設定されうる。乾燥時間は短時間に設定することが好ましく、例えば、乾燥温度が150℃である場合には30分以内に設定することが好ましい。また、乾燥雰囲気は、大気雰囲気下、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下、真空雰囲気下、酸素濃度をコントロールした減圧雰囲気下等のいずれの条件であってもよい。
層(B)形成用塗布液を塗布して得られた塗膜は、真空紫外線の照射前または真空紫外線の照射中に水分を除去する工程を含んでいてもよい。水分を除去する方法としては、低湿度環境を維持して除湿する形態が好ましい。低湿度環境における湿度は温度により変化するので、温度と湿度との関係は露点温度の規定により好ましい形態が示される。好ましい露点温度は4℃以下(温度25℃/湿度25%)で、より好ましい露点温度は−5℃以下(温度25℃/湿度10%)であり、維持される時間は層(B)の膜厚によって適宜設定することが好ましい。具体的には、露点温度は−5℃以下で、維持される時間は1分以上であることが好ましい。なお、露点温度の下限は特に制限されないが、通常、−50℃以上であり、−40℃以上であることが好ましい。改質処理前、あるいは改質処理中に水分を除去することによって、シラノールに転化した層(B)の脱水反応を促進する観点から好ましい形態である。
<真空紫外線照射>
上記のようにして形成されたケイ素含有化合物を含む塗膜をそのまま層(B)とすることができるが、得られた塗膜に対して真空紫外線を照射し、酸窒化ケイ素等への転化反応を行うことにより層(B)を形成してもよい。基材側から順に層(B)と層(A)とを有する態様においては、真空紫外線照射を行うことにより、層(B)を形成してから層(A)を形成するまでの、経時保存環境の影響によるガスバリア性の劣化を受けにくいというメリットを有する。基材側から順に層(A)と層(B)とを有する態様においては、真空紫外線照射を行うことにより、ガスバリア性が向上するため、真空紫外線照射を行うことが好ましい。
真空紫外線照射は、バッチ処理にも連続処理にも適合可能であり、使用する樹脂基材の形状によって適宜選定することができる。例えば、バッチ処理の場合には、紫外線発生源を具備した紫外線焼成炉で処理することができる。紫外線焼成炉自体は一般に知られており、例えば、アイグラフィクス株式会社製の紫外線焼成炉を使用することができる。また、対象が長尺フィルム状である場合には、これを搬送させながら上記のような紫外線発生源を具備した乾燥ゾーンで連続的に紫外線を照射することによりセラミックス化することができる。紫外線照射に要する時間は、使用する基材や層(B)の組成、濃度にもよるが、一般に0.1秒〜10分であり、好ましくは0.5秒〜3分である。
真空紫外線照射による改質は、ケイ素含有化合物(特にはポリシラザン化合物)内の原子間結合力より大きい100〜200nmの光エネルギーを用い、好ましくは100〜180nmの波長の光エネルギーを用い、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみの作用により、直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることで、比較的低温(約200℃以下)で、酸窒化ケイ素を含む膜の形成を行う方法である。なお、エキシマ照射処理を行う際は、熱処理を併用することが好ましい。
本発明においての真空紫外線源は、100〜180nmの波長の光を発生させるものであればよいが、好適には約172nmに最大放射を有するエキシマラジエータ(例えば、Xeエキシマランプ)、約185nmに輝線を有する低圧水銀蒸気ランプ、並びに230nm以下の波長成分を有する中圧および高圧水銀蒸気ランプ、および約222nmに最大放射を有するエキシマランプである。
このうち、Xeエキシマランプは、波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから、発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。
また、波長の短い172nmの光のエネルギーは、有機物の結合を解離させる能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間で塗膜の改質を実現できる。
エキシマランプは光の発生効率が高いため、低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域で、すなわち短い波長でエネルギーを照射するため、解射対象物の表面温度の上昇が抑えられる特徴を持っている。このため、熱の影響を受けやすいとされるPETなどのフレシキブルフィルム材料に適している。
真空紫外線照射時の反応には、酸素が必要であるが、真空紫外線は、酸素による吸収があるため紫外線照射工程での効率が低下しやすいことから、真空紫外線の照射は、可能な限り酸素濃度および水蒸気濃度の低い状態で行うことが好ましい。すなわち、真空紫外線照射時の酸素濃度は、10〜20,000体積ppm(0.001〜2体積%)とすることが好ましく、50〜10,000体積ppm(0.005〜1体積%)とすることがより好ましい。また、転化プロセスの間の水蒸気濃度は、好ましくは1,000〜4,000体積ppm(0.1〜0.4体積%)の範囲である。
真空紫外線照射時に用いられる、照射雰囲気を満たすガスとしては乾燥不活性ガスとすることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。
真空紫外線照射工程において、塗膜が受ける塗膜面での該真空紫外線の照度は1mW/cm〜10W/cmであると好ましく、30mW/cm〜200mW/cmであることがより好ましく、50mW/cm〜160mW/cmであるとさらに好ましい。1mW/cm以上であれば、改質効率が向上し、10W/cm以下であれば、塗膜に生じ得るアブレーションや、基材へのダメージを低減することができる。
改質する場合の塗膜の表面における真空紫外線の照射エネルギー量(照射量)は、基材側から順に層(B)と層(A)とを有する態様においては、0.1〜10J/cmであることが好ましく、0.1〜7J/cmであることがより好ましく、0.1〜3J/cmであることがさらに好ましい。基材側から順に層(A)と層(B)とを有する態様においては、1〜10J/cmであることが好ましく、3〜7J/cmであることがより好ましい。この範囲であれば、過剰改質によるクラックの発生や、樹脂基材の熱変形を抑制することができ、また生産性が向上する。
用いられる真空紫外線は、CO、COおよびCHの少なくとも一種を含むガスで形成されたプラズマにより発生させてもよい。さらに、CO、COおよびCHの少なくとも一種を含むガス(以下、炭素含有ガスとも称する)は、炭素含有ガスを単独で使用してもよいが、希ガスまたはHを主ガスとして、炭素含有ガスを少量添加することが好ましい。プラズマの生成方式としては容量結合プラズマなどが挙げられる。
[樹脂基材]
本発明に係る樹脂基材としては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂を含む基材が挙げられる。該樹脂基材は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
樹脂基材は耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、線膨張係数が15ppm/K以上100ppm/K以下で、かつガラス転移温度(Tg)が100℃以上300℃以下の樹脂基材が使用される。該基材は、電子部品用途、ディスプレイ用積層フィルムとしての必要条件を満たしている。即ち、これらの用途に本発明に係るガスバリア性フィルムを用いる場合、ガスバリア性フィルムは、150℃以上の工程に曝されることがある。この場合、ガスバリア性フィルムにおける基材の線膨張係数が100ppm/Kを超えると、ガスバリア性フィルムを前記のような温度の工程に流す際に基板寸法が安定せず、熱膨張および収縮に伴い、遮断性性能が劣化する不都合や、あるいは、熱工程に耐えられないという不具合が生じやすくなる。15ppm/K未満では、フィルムがガラスのように割れてしまいフレキシビリティが劣化する場合がある。
基材のTgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。基材として用いることができる熱可塑性樹脂のより好ましい具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:70℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン株式会社製、ゼオノア(登録商標)1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報に記載の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学株式会社製、ネオプリム(登録商標):260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報に記載の化合物:300℃以上)等が挙げられる(括弧内はTgを示す)。
本発明に係るガスバリア性フィルムは、有機EL素子等の電子デバイスとして利用されることから、樹脂基材は透明であることが好ましい。すなわち、光線透過率が通常80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。光線透過率は、JIS K7105:1981に記載された方法、すなわち積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率および散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
ただし、本発明に係るガスバリア性フィルムをディスプレイ用途に用いる場合であっても、観察側に設置しない場合などは必ずしも透明性が要求されない。したがって、このような場合は、プラスチックフィルムとして不透明な材料を用いることもできる。不透明な材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、公知の液晶ポリマーなどが挙げられる。
また、上記に挙げた樹脂基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。当該樹脂基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。これらの基材の製造方法については、国際公開第2013/002026号の段落「0051」〜「0055」に記載された事項を適宜採用することができる。
樹脂基材の表面は、密着性向上のための公知の種々の処理、例えばコロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、またはプラズマ処理等を行っていてもよく、必要に応じて上記処理を組み合わせて行っていてもよい。
該樹脂基材は、単層でもよいし2層以上の積層構造であってもよい。該樹脂基材が2層以上の積層構造である場合、各樹脂基材は同じ種類であってもよいし異なる種類であってもよい。
本発明に係る樹脂基材の厚さ(2層以上の積層構造である場合はその総厚)は、10〜200μmであることが好ましく、20〜150μmであることがより好ましい。
[層(A)、層(B)の層順]
層(A)、層(B)の層順は、樹脂基材/層(B)/層(A)の順であってもよいし、樹脂基材/層(A)/層(B)の順であってもよい。
<樹脂基材/層(B)/層(A)の態様>
樹脂基材/層(B)/層(A)の順の態様の場合、層(B)を形成し、次いで、層(A)を形成することが好ましい。すなわち、本態様のガスバリア性フィルムの好ましい製造方法は、樹脂基材上にケイ素含有化合物を含有する塗布液を塗布し乾燥することを含むケイ素含有層(B)を形成する工程と、前記ケイ素含有層(B)上に気相成膜法により遷移金属化合物を含む層(A)を形成する工程と、を含む。領域(a)が形成されるのであれば、層(B)の真空紫外線照射による改質を行ってもよいし行わなくてもよい。領域(a)が形成されれば、良好なガスバリア性が得られ、高速成膜が可能となり高い生産性が得られるからである。しかしながら、領域(a)をより効率的に形成させるという観点から、層(B)の真空紫外線照射による改質は、照射エネルギー量を3J/cm未満とすることが好ましく、1J/cm未満とすることがより好ましく、0J/cm、すなわち真空紫外線照射による改質を行わない態様も好ましく選択することができる。
層(B)を形成する際に、真空紫外線照射を行わない場合には、ケイ素含有化合物を含有する塗布液を塗布および乾燥して得られる塗膜を、5〜40℃で、相対湿度0〜60%RHの条件下で1〜1000時間で保管し、その後、層(A)を形成することが好ましい。すなわち、本発明の好適な一実施形態は、層(B)がケイ素含有化合物を含有する塗布液を塗布および乾燥して得られる塗膜を、5〜40℃で、相対湿度0〜60%RHの条件下で1〜1000時間で保管して得られる。かような保管工程により、層(B)の塗布乾燥後から層(A)を形成するまでの間に、層(B)の表面組成に望ましくない変化が生じることを抑制できるため、高温高湿条件下でのガスバリア性能が向上するものと考えられる。望ましくない変化とは、ケイ素含有化合物としてポリシラザンを用いた場合を例に挙げると、大気中の水分とポリシラザンとが反応して、層(B)の表面の窒素含有量が低下し、酸素含有量が増加するといった変化である。
樹脂基材/層(B)/層(A)の順の態様における層(B)の1層あたりの膜厚(2層以上の積層構造である場合はその総厚)は、ガスバリア性能の観点から、10〜1000nmであることが好ましく、50〜600nmであることがより好ましく、50〜300nmであることがさらに好ましい。この範囲であれば、ガスバリア性と耐久性とのバランスが良好となり好ましい。
<樹脂基材/層(A)/層(B)の態様>
樹脂基材/層(A)/層(B)の順の態様の場合、ガスバリア性の観点から、層(A)を形成した後、ケイ素含有化合物を含有する塗布液を塗布および乾燥し塗膜を形成することが好ましく、さらに真空紫外線処理によって改質することにより層(B)を形成することがより好ましい。すなわち、本態様のガスバリア性フィルムの好ましい製造方法は、樹脂基材上に気相成膜法により遷移金属化合物を含む層(A)を形成する工程と、前記遷移金属化合物を含む層(A)上にケイ素含有化合物を含有する塗布液を塗布し乾燥することを含むケイ素含有層(B)を形成する工程と、を含む。
この樹脂基材/層(A)/層(B)の順の態様の場合、層(A)による層(B)の酸化抑制効果は、層(A)に近接する層(B)の領域が改質されているほうが向上するため、層(B)において層(A)側の下面まで改質されていることが好ましい。したがって、上面より172nmの真空紫外線を照射して層(B)を改質する場合、層(B)の下面にまで172nm光を到達させるために、層(B)の厚さは、比較的薄いことが好ましい。具体的には、層(B)の1層あたりの膜厚(2層以上の積層構造である場合はその総厚)は、300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、150nm以下であることがさらに好ましく、100nm以下であることが特に好ましい。一方で、層(B)が薄すぎてもガスバリア性は劣化するため、ガスバリア性を考慮すると、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましく、40nm以上であることが特に好ましい。すなわち、本発明の好適な一実施形態は、層(B)の厚さが5nm以上、300nm以下である。
本態様における領域(a)を形成する方法としては、例えば、層(A)を形成した後、5〜40℃で、相対湿度0〜60%RHの条件下で1〜1000時間で保管し、その後層(B)を形成するという方法が挙げられる。
[原子組成プロファイル]
本発明のガスバリア性フィルムは、厚さ方向にXPS組成分析を行った際に得られる原子組成分布プロファイルにおいて、組成をSiMで示した際に、下記式(1)および式(2)を満足する領域(a)(以下、単に領域(a)とも称する)を有する。このような構成を有する本発明のガスバリア性フィルムは、高温高湿環境での耐久性に優れる。
好ましくは、前記ケイ素含有化合物がポリシラザンを含有し、かつ前記yが下記式(3)を満足する態様である。
xは、ケイ素原子に対する遷移金属の存在原子比であり、yは、ケイ素原子に対する窒素の存在原子比であるが、領域(a)は式(1)および式(2)を同時に満足することが必要である。つまり、少なくとも、ケイ素原子と遷移金属原子とが同時に存在する領域であって、遷移金属原子/ケイ素原子の比率が0.2以上3.0以下であることが高いガスバリア性を発現する条件であることを見出したものである。ガスバリア性発現のメカニズムは明確ではないが、ケイ素原子と遷移金属原子とが同時に存在し、ケイ素原子と遷移金属原子とが直接結合した高密度領域を形成することでガスバリア性を発現していると推定している。遷移金属原子/ケイ素原子の比率が0.2未満であっても、また、3.0を超えても、ケイ素原子と遷移金属原子との結合が減少するため、ガスバリア性が低下すると考えられる。
本発明において、ケイ素含有化合物としてポリシラザンを用いた態様の場合に、特に著しく高いガスバリア性が得られる。この態様においては、ケイ素原子と遷移金属原子と窒素原子とが同時に存在する領域が形成され、遷移金属原子/ケイ素原子の比率が0.2以上3.0以下であり、かつ、窒素原子/ケイ素原子の比率が0.05以上0.6以下であることが著しく高いガスバリア性を発現する条件であることを見出したものである。ポリシラザンのケイ素−窒素結合(Si−N結合)は、気相成膜法等の方法で形成される遷移金属原子と接した場合や、遷移金属原子と接した状態で真空紫外線等のエネルギーを印加することで、ケイ素−遷移金属の結合へとし易いものと考えられ、他のケイ素−窒素結合を有さないケイ素含有化合物を用いた場合よりも、著しく高いガスバリア性が得られると推定している。窒素原子/ケイ素原子の比率が0.05未満の場合は、層(B)に含有されるポリシラザンの含有比率が低い場合や、ポリシラザンが変性してケイ素−窒素結合が減少した場合等に相当し、ガスバリア性が低下すると考えられる。また、窒素原子/ケイ素原子の比率が0.6を超える場合は、窒素原子が増加した分、相対的にケイ素原子と遷移金属原子とが減少し、ケイ素−遷移金属の結合も減少するため、同様にガスバリア性が低下すると考えられる。
なお、領域(a)の厚さは、下記に示すXPS分析において、SiO換算で深さ方向2.5nmごとのデプスプロファイルを得ているため、2.5nmの整数倍の厚さとなる。
また、領域(a)が複数種のMを有する場合は、各金属の含有量の重み付けをした総和からxを算出する。
このような領域(a)の組成や厚さの制御は、上述したような、層(A)(または層(B))を形成した後、層(B)(または層(A))を形成するまでの間に、比較的低い温度および湿度の条件でフィルムを保管する、乾燥窒素雰囲気下で保管する、などの方法により行うことができる。
より高いガスバリア性が得られるという観点から、領域(a)の原子組成をSiM で示した際に、下記式(4)で表される領域(b)を前記領域(a)の中にさらに有することが好ましい。
上記式(4)は、SiとMとを合計した結合手数に対して、OとNとを合計した結合手数が少ないことを意味する。推定ではあるが、上記式(4)の(4+ax)−(3y+2z)が0を超える場合には、SiとMとの直接の結合が形成されていると考えられ、(4+ax)−(3y+2z)の値が大きくなるほどSiとMとの直接結合の割合が多くなり、領域(a)の組成の密度が増加し、ガスバリア性がさらに向上すると考えられる。
領域(b)中の(4+ax)−(3y+2z)の最大値は、より好ましくは1以上、さらに好ましくは2以上、特に好ましくは3以上である。
(4+ax)−(3y+2z)の値の制御は、例えば、遷移金属Mを含有する層の形成をスパッタで行う場合を例に挙げると、ターゲットとして金属、または化学量論的に酸素が欠損した金属酸化物を用い、スパッタの際に導入する酸素の量を適宜調整することで行うことができる。
領域(b)が形成される位置は特に制限されないが、層(A)と層(B)の界面近傍であることが好ましい。界面近傍に領域(b)が形成されていれば、層(A)と層(B)との界面において、SiとMとの共酸化窒化物層が形成されていることを意味し、このSiとMとの共酸化窒化物層が、高い湿熱耐性を発現すると考えられるためである。
なお、領域(b)が複数種のMを有する場合は、各金属の含有量の重み付けをした総和からxを算出する。
領域(a)および領域(b)の組成は、以下の方法により測定することができる。
領域(a)の組成の測定
XPS分析により、層(A)と層(B)との界面近傍について、厚さ方向の組成分布プロファイルを測定し、組成をSiMで示す。この際、xとyとの関係から、領域(a)を有するかどうか判定した。また、領域(a)を有する場合には、(4+ax)−(3y+2z)の値を求めて、さらに領域(b)を有するかどうか判定する。
《XPS分析条件》
・装置:アルバックファイ製QUANTERASXM
・X線源:単色化Al−Kα
・スパッタイオン:Ar(2keV)
・デプスプロファイル:SiO換算で2.5nm相当のスパッタ後、測定を繰り返し、SiO換算深さ方向2.5nmごとのデプスプロファイルを得る
・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて定量する。データ処理は、アルバックファイ社製のMultiPakを用いる。
[種々の機能を有する層]
本発明のガスバリア性フィルムにおいては、種々の機能を有する層を設けることができる。
(アンカーコート層)
本発明に係る層(A)および層(B)を形成する側の樹脂基材の表面には、樹脂基材と層(A)または層(B)との密着性の向上を目的として、アンカーコート層を形成してもよい。
アンカーコート層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、およびアルキルチタネート等を単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記のアンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により支持体上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりアンカーコーティングすることができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5.0g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
また、アンカーコート層は、物理蒸着法または化学蒸着法といった気相法により形成することもできる。例えば、特開2008−142941号公報に記載のように、接着性等を改善する目的で酸化珪素を主体とした無機膜を形成することもできる。あるいは、特開2004−314626号公報に記載されているようなアンカーコート層を形成することで、その上に気相法により無機薄膜を形成する際に、基材側から発生するガスをある程度遮断して、無機薄膜の組成を制御するといった目的でアンカーコート層を形成することもできる。
また、アンカーコート層の厚さは、特に制限されないが、0.5〜10μm程度が好ましい。
(ハードコート層)
樹脂基材の表面(片面または両面)には、ハードコート層を有していてもよい。ハードコート層に含まれる材料の例としては、例えば、熱硬化性樹脂や活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられるが、成形が容易なことから、活性エネルギー線硬化性樹脂が好ましい。このような硬化性樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
活性エネルギー線硬化性樹脂とは、紫外線や電子線のような活性エネルギー線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性エネルギー線を照射することによって硬化させて、活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物を含む層、すなわちハードコート層が形成される。活性エネルギー線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する紫外線硬化性樹脂が好ましい。予めハードコート層が形成されている市販の樹脂基材を用いてもよい。
(平滑層)
本発明のガスバリア性フィルムにおいては、樹脂基材と層(A)または層(B)との間に、平滑層を有してもよい。本発明に用いられる平滑層は、突起等が存在する樹脂基材の粗面を平坦化し、あるいは、樹脂基材に存在する突起により透明無機化合物層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために設けられる。このような平滑層は、基本的には感光性材料、または、熱硬化性材料を硬化させて作製される。
平滑層の感光性材料としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物とを含有する樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。具体的には、JSR株式会社製のUV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR(登録商標)シリーズを用いることができる。また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
熱硬化性材料として具体的には、クラリアント社製のトゥットプロムシリーズ(有機ポリシラザン)、セラミックコート株式会社製のSP COAT耐熱クリアー塗料、株式会社アデカ製のナノハイブリッドシリコーン、DIC株式会社製のユニディック(登録商標)V−8000シリーズ、EPICLON(登録商標)EXA−4710(超高耐熱性エポキシ樹脂)、信越化学工業株式会社製の各種シリコン樹脂、日東紡株式会社製の無機・有機ナノコンポジット材料SSGコート、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。この中でも特に耐熱性を有するエポキシ樹脂ベースの材料であることが好ましい。
平滑層の形成方法は、特に制限はないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等のウェットコーティング法、あるいは、蒸着法等のドライコーティング法により形成することが好ましい。
平滑層の形成では、上述の感光性樹脂に、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。また、平滑層の積層位置に関係なく、いずれの平滑層においても、成膜性向上および膜のピンホール発生防止等のために適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。
平滑層の厚さとしては、フィルムの耐熱性を向上させ、フィルムの光学特性のバランス調整を容易にする観点から、1〜10μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは、2μm〜7μmの範囲にすることが好ましい。
平滑層の平滑性は、JIS B 0601:2001で規定される表面粗さで表現される値で、十点平均粗さRzが、10nm以上、30nm以下であることが好ましい。この範囲であれば、ガスバリア層を塗布形式で塗布した場合であっても、ワイヤーバー、ワイヤレスバー等の塗布方式で、平滑層表面に塗工手段が接触する場合であっても塗布性が損なわれることが少なく、また、塗布後の凹凸を平滑化することも容易である。
[電子デバイス]
本発明のガスバリア性フィルムは、空気中の化学成分(酸素、水、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等)によって性能が劣化するデバイスに好ましく適用できる。すなわち、本発明は、本発明のガスバリア性フィルムと、電子デバイス本体と、を含む電子デバイスを提供する。
本発明の電子デバイスに用いられる電子デバイス本体の例としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)、液晶表示素子(LCD)、薄膜トランジスタ、タッチパネル、電子ペーパー、太陽電池(PV)等を挙げることができる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、該電子デバイス本体は有機EL素子または太陽電池が好ましく、有機EL素子がより好ましい。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
(比較例1:ガスバリア性フィルム1の作製)
〔樹脂基材〕
両面に易接着処理した厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラー(登録商標)(U48))の層(B)を形成する面とは反対の面に、厚さ0.5μmのアンチブロック機能を有するクリアハードコート層を形成した。すなわち、UV硬化型樹脂(アイカ工業株式会社製、品番:Z731L)を乾燥膜厚が0.5μmになるように塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行った。
次に、樹脂基材の層(B)を形成する側の面に厚さ2μmのクリアハードコート層を以下のようにして形成した。JSR株式会社製、UV硬化型樹脂オプスター(登録商標)Z7527を、乾燥膜厚が2μmになるように塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行った。このようにして、ハードコート層付樹脂基材を得た。以降、実施例および比較例においては、便宜上、このハードコート層付樹脂基材を単に樹脂基材とする。
〔層(B)の形成〕
ケイ素含有化合物として、水素シルセスキオキサンポリマーであるFox−14(東レ・ダウコーニング株式会社製、14質量%MIBK溶液)を用いた。触媒として、白金アセチルアセトナートを固形分に対して0.5質量%添加し、さらにメチルイソブチルケトン(MIBK)で希釈して固形分8質量%の塗布液を作製した。
上記樹脂基材上に、スピンコート法により塗布液を乾燥膜厚が100nmになるよう塗布し、80℃で2分間乾燥した。これをガスバリア性フィルム1とした。
(実施例1:ガスバリア性フィルム2の作製)
上記ガスバリア性フィルム1を20℃、相対湿度50%RHの環境下で24時間保管した。その後、層(A)を、マグネトロンスパッタ装置を用い、下記に示すターゲットおよび成膜条件を用い、層(B)上に形成した。
〔層(A)の形成〕
ターゲットとして酸素欠損型Nbターゲットを用い、プロセスガスにはArとO とを用いたDCスパッタにより成膜した。事前にガラス基板を用いた成膜により、酸素分圧を調整することにより組成の条件出しを行い、表層から深さ10nm近傍の組成がNbとなる条件を見出した。この条件を適用し、厚さ15nmで成膜を行った。これをガスバリア性フィルム2とした。この成膜条件を、「成膜条件ア」とする。以下の製膜条件も、同様の事前検討を行うことで条件を見出した。
(比較例2:ガスバリア性フィルム3の作製)
上記樹脂基材上に、実施例1と同様にして、直接層(A)を形成した。これをガスバリア性フィルム3とした。
領域(a)の組成の測定
ガスバリア性フィルム2について、後述の条件でXPS測定を行った。結果を下記表1に示す。下記表1のように、領域(a)が形成されていることを確認した。
<ガスバリア性フィルムのCa法評価>
以下の測定方法に従って、ガスバリア性フィルム1〜3の水蒸気透過性を評価した。
下記のようにして作製したCa法評価試料(透過濃度により評価するタイプ)を40℃90%RH環境に保存して、5時間ごとに100時間まで、Caの腐食率を観察・透過濃度測定(任意4点の平均)を行った。比較例のガスバリア性フィルム1および3は、5時間の時点で測定した透過濃度が透過濃度初期値の50%未満となったのに対し、本発明のガスバリア性フィルム2は、100時間の時点でも測定した透過濃度が透過濃度初期値の50%以上であり、高いガスバリア性を有していた。
(実施例2:ガスバリア性フィルム4の作製)
〔層(B)の形成〕
層(B)は、下記に示すようなポリシラザンを含む塗布液を、上記樹脂基材上に塗布および乾燥して塗膜を形成し、必要に応じて真空紫外線照射による改質を行って形成した。
パーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NN120−20)と、アミン触媒(N,N,N',N'−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン(TMDAH))を含むパーヒドロポリシラザン20質量%のジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NAX120−20)とを、4:1(質量比)の割合で混合し、さらに乾燥膜厚調整のためジブチルエーテルで適宜希釈し、塗布液を調製した。
上記樹脂基材上に、スピンコート法により塗布液を乾燥膜厚が150nmになるよう塗布し、80℃で2分間乾燥した。次いで、乾燥した塗膜に対して、波長172nmのXeエキシマランプを有する図3の真空紫外線照射装置を用い、下記表2−1に示した照射エネルギー条件で真空紫外線照射処理を行った。この際、照射雰囲気は窒素で置換し、酸素濃度は0.1体積%とした。また、試料を設置するステージ温度を80℃とした。
図3において、1は装置チャンバーであり、図示しないガス供給口から内部に窒素と酸素とを適量供給し、図示しないガス排出口から排気することで、チャンバー内部から実質的に水蒸気を除去し、酸素濃度を所定の濃度に維持することができる。2は172nmの真空紫外線を照射する二重管構造を有するXeエキシマランプ(エキシマランプ光強度:130mW/cm)、3は外部電極を兼ねるエキシマランプのホルダーである。4は試料ステージである。試料ステージ4は、図示しない移動手段により装置チャンバー1内を水平に所定の速度で往復移動することができる。また、試料ステージ4は図示しない加熱手段により、所定の温度に維持することができる。5はポリシラザン化合物塗布層が形成された試料である。試料ステージが水平移動する際、試料の塗布層表面と、エキシマランプ管面との最短距離が3mmとなるように試料ステージの高さが調整されている。6は遮光板であり、Xeエキシマランプ2のエージング中に試料の塗布層に真空紫外線が照射されないようにしている。
真空紫外線照射工程で試料塗布層表面に照射されるエネルギーは、浜松ホトニクス社製の紫外線積算光量計:C8026/H8025 UV POWER METERを用い、172nmのセンサヘッドを用いて測定した。測定に際しては、Xeエキシマランプ管面とセンサヘッドの測定面との最短距離が、3mmとなるようにセンサヘッドを試料ステージ4中央に設置し、かつ、装置チャンバー1内の雰囲気が、真空紫外線照射工程と同一の酸素濃度となるように窒素と酸素とを供給し、試料ステージ4を0.5m/minの速度で移動させて測定を行った。測定に先立ち、Xeエキシマランプ2の照度を安定させるため、Xeエキシマランプ点灯後に10分間のエージング時間を設け、その後試料ステージを移動させて測定を開始した。
この測定で得られた照射エネルギーを元に、試料ステージの移動速度を調整することで表2−1に示した照射エネルギーとなるように調整した。尚、真空紫外線照射に際しては、10分間のエージング後に行った。
〔層(A)の形成〕
層(A)を形成する前に、層(B)形成済のフィルムを20℃、相対湿度50%RHの環境下で24時間保管した。その後、層(A)を、マグネトロンスパッタ装置を用い、下記に示すターゲットおよび成膜条件を用い、層(B)上に形成した。
ターゲットとして酸素欠損型Nbターゲットを用い、プロセスガスにはArとO とを用いたDCスパッタにより成膜し、膜厚は15nmとした。酸素分圧を調整し、膜組成はNbとなるようにした(成膜条件ア)。このようにして、ガスバリア性フィルム4を作製した。
(実施例3:ガスバリア性フィルム5の作製)
層(B)を形成する際の真空紫外線の照射エネルギー量を、0.2J/cmに変更したこと以外は、実施例2と同様にして、ガスバリア性フィルム5を作製した。
(実施例4:ガスバリア性フィルム6の作製)
層(B)を形成する際に、真空紫外線の照射を行わなかったこと以外は、実施例2と同様にして、ガスバリア性フィルム6を作製した。
(実施例5:ガスバリア性フィルム7の作製)
下記に示すターゲットおよび成膜条件を用い、層(B)上に層(A)を形成したこと以外は、実施例4と同様にして、ガスバリア性フィルム7を作製した。
ターゲットとして酸素欠損型Nbターゲットを用い、プロセスガスにはArとO とを用いたDCスパッタにより成膜し、膜厚は30nmとした。酸素分圧を調整し、膜組成はNbとなるようにした。この成膜条件を、「成膜条件イ」とする。
(実施例6:ガスバリア性フィルム8の作製)
下記に示すターゲットおよび成膜条件を用い、層(B)上に層(A)を形成したこと以外は、実施例2と同様にして、ガスバリア性フィルム8を作製した。
ターゲットとして酸素欠損型Nbターゲットを用い、プロセスガスにはArとO とを用いたDCスパッタにより成膜し、膜厚は15nmとした。酸素分圧を調整し、膜組成はNbとなるようにした。この成膜条件を、「成膜条件ウ」とする。
(実施例7:ガスバリア性フィルム9の作製)
下記に示すターゲットおよび成膜条件を用い、層(B)上に層(A)を形成したこと以外は、実施例2と同様にして、ガスバリア性フィルム9を作製した。
ターゲットとしてTaターゲットを用い、プロセスガスにはArとOとを用いたRFスパッタにより成膜し、膜厚は15nmとした。酸素分圧を調整し、膜組成はTa となるようにした。この成膜条件を、「成膜条件エ」とする。
(実施例8:ガスバリア性フィルム10の作製)
下記に示すターゲットおよび成膜条件を用い、層(B)上に層(A)を形成したこと以外は、実施例2と同様にして、ガスバリア性フィルム10を作製した。
ターゲットとしてCeターゲットを用い、プロセスガスにはArとOとを用いたRFスパッタにより成膜し、膜厚は15nmとした。酸素分圧を調整し、膜組成はCeO1. となるようにした。この成膜条件を、「成膜条件オ」とする。
(比較例3:ガスバリア性フィルム11の作製)
層(A)を形成しなかったこと以外は、実施例2と同様にして、ガスバリア性フィルム11を作製した。
(比較例4:ガスバリア性フィルム12の作製)
下記に示すターゲットおよび成膜条件を用い、層(B)上にSiを含む層を形成したこと以外は、実施例2と同様にして、ガスバリア性フィルム12を作製した。
ターゲットとして多結晶Siターゲットを用い、プロセスガスにはArとOとを用いたDCスパッタにより成膜し、膜厚は15nmとした。酸素分圧を調整し、膜組成はSiOとなるようにした。この成膜条件を、「成膜条件カ」とする。
(比較例5:ガスバリア性フィルム13の作製)
下記に示すターゲットおよび成膜条件を用い、層(B)上にAlを含む層を形成したこと以外は、実施例2と同様にして、ガスバリア性フィルム13を作製した。
ターゲットとしてAlターゲットを用い、プロセスガスにはArとOとを用いたDCスパッタにより成膜し、膜厚は15nmとした。酸素分圧を調整し、膜組成はAlとなるようにした。この成膜条件を、「成膜条件キ」とする。
(実施例9:ガスバリア性フィルム14の作製)
樹脂基材上に、層(A)−層(B)の順で層を形成したこと以外は、実施例2と同様にして、ガスバリア性フィルム14を作製した。なお、層(A)を形成した後、層(B)を形成する前に、層(A)形成済のフィルムを20℃、相対湿度50%RHの環境下で24時間保管した。
(実施例10:ガスバリア性フィルム15の作製)
層(A)の乾燥膜厚を40nmとしたこと以外は、実施例9と同様にして、ガスバリア性15を作製した。
(実施例11:ガスバリア性フィルム16の作製)
層(A)の乾燥膜厚を100nmとしたこと以外は、実施例9と同様にして、ガスバリア性16を作製した。
(実施例12:ガスバリア性フィルム17の作製)
層(A)の乾燥膜厚を250nmとしたこと以外は、実施例9と同様にして、ガスバリア性17を作製した。
(実施例13:ガスバリア性フィルム18の作製)
樹脂基材上に、層(A)−層(B)の順で層を形成したこと以外は、実施例6と同様にして、ガスバリア性フィルム18を作製した。
(比較例6:ガスバリア性フィルム19の作製)
層(A)を形成しなかったこと以外は、実施例12と同様にして、ガスバリア性フィルム19を作製した。
(比較例7:ガスバリア性フィルム20の作製)
樹脂基材上に、層(A)−層(B)の順で層を形成したこと以外は、比較例4と同様にして、ガスバリア性フィルム20を作製した。
(比較例8:ガスバリア性フィルム21の作製)
樹脂基材上に、層(A)−層(B)の順で層を形成したこと以外は、比較例5と同様にして、ガスバリア性フィルム21を作製した。
(評価方法)
領域(a)の組成の測定
XPS分析により、層(A)と層(B)との界面近傍について、厚さ方向の組成分布プロファイルを測定し、組成をSiMで示した。この際、xとyとの関係から、領域(a)を有するかどうか判定した。また、領域(a)を有する場合には、(4+ax)−(3y+2z)の値を求めて、さらに領域(b)を有するかどうか判定した。
《XPS分析条件》
・装置:アルバックファイ製QUANTERASXM
・X線源:単色化Al−Kα
・スパッタイオン:Ar(2keV)
・デプスプロファイル:SiO換算で2.5nm相当のスパッタ後、測定を繰り返し、SiO換算深さ方向2.5nmごとのデプスプロファイルを得た
・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて定量した。データ処理は、アルバックファイ社製のMultiPakを用いた。
<ガスバリア性フィルムのCa法評価>
以下の測定方法に従って、各ガスバリア性フィルムの水蒸気透過性(ガスバリア性)を評価した。
下記のようにして作製したCa法評価試料(透過濃度により評価するタイプ)を85℃85%RH環境に保存して一定時間ごとに、Caの腐食率を観察した。1時間、5時間、10時間、20時間、それ以降は20時間ごとに観察・透過濃度測定(任意4点の平均)し、測定した透過濃度が透過濃度初期値の50%未満となった時点の観察時間をガスバリア性の指標とした。500時間の保存で測定した透過濃度が透過濃度初期値の50%以上であった場合は500時間以上とした。
ガスバリア性フィルムのガスバリア層表面をUV洗浄した後、ガスバリア層面に封止樹脂層として熱硬化型のシート状接着剤(エポキシ系樹脂)を厚さ20μmで貼合した。これを50mm×50mmのサイズに打ち抜いた後、グローブボックス内に入れて、24時間乾燥処理を行った。
50mm×50mmサイズの無アルカリガラス板(厚さ0.7mm)の片面をUV洗浄した。株式会社エイエルエステクノロジー製の真空蒸着装置を用い、ガラス板の中央に、マスクを介して20mm×20mmのサイズでCaを蒸着した。Caの厚さは80nmとした。Ca蒸着済のガラス板をグローブボックス内に取出し、封止樹脂層を貼合したガスバリア性フィルムの封止樹脂層面とガラス板のCa蒸着面とを接するように配置し、真空ラミネートにより接着した。この際、110℃の加熱を行った。さらに、接着した試料を110℃に設定したホットプレート上にガラス板を下にして置き、30分間硬化させて、評価用セルを作製した。
各実施例および比較例のガスバリア性フィルムの製造条件および原子組成を表2および表3に、評価結果を表4および表5にそれぞれ示す。
上記結果より、ガスバリア性フィルム4〜10、および14〜18は、高温高湿環境での耐久性に優れることがわかる。かような効果は、領域(a)を有していないガスバリア性フィルム11〜13、および19〜21との比較により、領域(a)が存在することによって達成されていることがわかる。
さらに、(4+ax)−(3y+2z)の最大値が3以上であるガスバリア性フィルム5〜7、および16〜17は、高温高湿環境での耐久性がさらに優れることがわかる。
なお、本出願は、2015年2月25日に出願された日本特許出願第2015−35040号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。

Claims (10)

  1. 樹脂基材上に、
    気相成膜法により形成される遷移金属化合物を含む層(A)と、
    前記層(A)に接しており、ケイ素含有化合物を含有する塗布液を塗布および乾燥することを有して得られるケイ素含有層(B)と、
    を有するガスバリア性フィルムであって、
    前記ガスバリア性フィルムの厚さ方向にXPS組成分析を行った際に得られる原子組成分布プロファイルにおいて、組成をSiMで示した際に、下記式(1)および式(2)を満足する領域(a)を有する、ガスバリア性フィルム。
  2. 前記ケイ素含有化合物が、ケイ素−窒素結合、ケイ素−水素結合、およびケイ素−ケイ素結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する、請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
  3. 前記ケイ素含有化合物がポリシラザンを含有し、かつ前記yが下記式(3)を満足する、請求項1または2に記載のガスバリア性フィルム。
  4. 前記遷移金属化合物中の遷移金属がケイ素よりも酸化還元電位が低い金属である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
  5. 前記遷移金属がバナジウム、ニオブおよびタンタルからなる群より選択される少なくとも1種の金属である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
  6. 前記ガスバリア性フィルムの厚さ方向にXPS組成分析を行った際に得られる原子組成分布プロファイルにおいて、前記領域(a)の原子組成をSiMで示した際に、下記式(4)で表される領域(b)を前記領域(a)の中にさらに有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
  7. 前記領域(b)中の前記(4+ax)−(3y+2z)の最大値が3以上である、請求項6に記載のガスバリア性フィルム。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムと、
    電子デバイス本体と、
    を含む電子デバイス。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの製造方法であって、
    樹脂基材上に気相成膜法により遷移金属化合物を含む層(A)を形成する工程と、
    前記遷移金属を含む層(A)上にケイ素含有化合物を含有する塗布液を塗布し乾燥することを含むケイ素含有層(B)を形成する工程と、
    を含み、
    ガスバリア性フィルムの厚さ方向にXPS組成分析を行った際に得られる原子組成分布プロファイルにおいて、組成をSiMで示した際に、下記式(1)および式(2)を満足する領域(a)を有する、ガスバリア性フィルムの製造方法。
  10. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの製造方法であって、
    樹脂基材上にケイ素含有化合物を含有する塗布液を塗布し乾燥することを含むケイ素含有層(B)を形成する工程と
    前記ケイ素含有層(B)上に気相成膜法により遷移金属化合物を含む層(A)を形成する工程と、を含み、
    ガスバリア性フィルムの厚さ方向にXPS組成分析を行った際に得られる原子組成分布プロファイルにおいて、組成をSiMで示した際に、下記式(1)および式(2)を満足する領域(a)を有する、ガスバリア性フィルムの製造方法。
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