JPWO2014097997A1 - 電子デバイス - Google Patents

電子デバイス Download PDF

Info

Publication number
JPWO2014097997A1
JPWO2014097997A1 JP2014553115A JP2014553115A JPWO2014097997A1 JP WO2014097997 A1 JPWO2014097997 A1 JP WO2014097997A1 JP 2014553115 A JP2014553115 A JP 2014553115A JP 2014553115 A JP2014553115 A JP 2014553115A JP WO2014097997 A1 JPWO2014097997 A1 JP WO2014097997A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
barrier layer
oxygen
gas
carbon
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2014553115A
Other languages
English (en)
Inventor
本田 誠
本田  誠
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Konica Minolta Inc
Original Assignee
Konica Minolta Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Konica Minolta Inc filed Critical Konica Minolta Inc
Publication of JPWO2014097997A1 publication Critical patent/JPWO2014097997A1/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01LSEMICONDUCTOR DEVICES NOT COVERED BY CLASS H10
    • H01L31/00Semiconductor devices sensitive to infrared radiation, light, electromagnetic radiation of shorter wavelength or corpuscular radiation and specially adapted either for the conversion of the energy of such radiation into electrical energy or for the control of electrical energy by such radiation; Processes or apparatus specially adapted for the manufacture or treatment thereof or of parts thereof; Details thereof
    • H01L31/04Semiconductor devices sensitive to infrared radiation, light, electromagnetic radiation of shorter wavelength or corpuscular radiation and specially adapted either for the conversion of the energy of such radiation into electrical energy or for the control of electrical energy by such radiation; Processes or apparatus specially adapted for the manufacture or treatment thereof or of parts thereof; Details thereof adapted as photovoltaic [PV] conversion devices
    • H01L31/042PV modules or arrays of single PV cells
    • H01L31/048Encapsulation of modules
    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10KORGANIC ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES
    • H10K50/00Organic light-emitting devices
    • H10K50/80Constructional details
    • H10K50/84Passivation; Containers; Encapsulations
    • H10K50/844Encapsulations
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E10/00Energy generation through renewable energy sources
    • Y02E10/50Photovoltaic [PV] energy

Landscapes

  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Condensed Matter Physics & Semiconductors (AREA)
  • Electromagnetism (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Computer Hardware Design (AREA)
  • Microelectronics & Electronic Packaging (AREA)
  • Power Engineering (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)
  • Electroluminescent Light Sources (AREA)
  • Photovoltaic Devices (AREA)

Abstract

【課題】長期信頼性に優れる電子デバイスを提供する。【解決手段】基材、該基材の一方の面に形成された、ケイ素、酸素、および炭素を含有するバリア層、ならびに該基材の他方の面に形成され、硬化性樹脂を含有し、膜厚が5μm以上であり、かつ鉛筆硬度がHB以上であるハードコート層を有するガスバリア性フィルムと、該ガスバリア性フィルムの該バリア層側に配置される電子素子本体と、を有する電子デバイスであって、該バリア層が、条件(i)〜(iv)を満たす、電子デバイス。【選択図】なし

Description

本発明は、電子デバイスに関する。
水蒸気や酸素の透過を遮断する性質、いわゆるガスバリア性を有するフィルムに関し、従来、さまざまな検討がなされている。このような検討の中では、フィルムのガスバリア性を高めるために、スパッタリングやプラズマCVD法等の方法によって無機層を製膜する技術が提案されている(特開平6−234186号公報参照)。
近年、軽量化、大型化という要求に加え、長期信頼性や形状の自由度が高いこと、曲面表示が可能であること等の要求が加わり、重くて割れやすく大面積化が困難なガラス基板に代わって透明プラスチック等のフィルム基材が採用され始めている。
しかしながら、透明プラスチック等のフィルム基材はガラスに対しガスバリア性が劣るという問題がある。ガスバリア性が劣る基材を用いると、水蒸気や空気が浸透し、例えば電子デバイス内の機能を劣化させてしまう。
包装材や液晶表示素子に使用されるガスバリア性フィルムとしてはプラスチックフィルム上に酸化ケイ素を蒸着したものや酸化アルミニウムを蒸着したものが知られている。しかしながら、それらの技術では、せいぜい1g/m/day程度の水蒸気バリア性しか得られていない。一方、近年では、液晶ディスプレイの大型化、高精細ディスプレイ等の開発によりフィルム基板へのガスバリア性能について水蒸気透過度で0.1g/m/day程度、さらに有機エレクトロルミネッセンスについては水蒸気透過度で10−5〜10−6g/m/dayのオーダーにまで要求が上がってきている。
上記課題に対して、特開2005−288851号公報では、ポリマー多層(Polymer Multilayer、PML)技法が記載されている。この技法は、ポリマーの層と酸化アルミニウムの層とからなるコーティングをフレキシブル基板に施してその基板をシールする。両方とも堆積工程は、ウェブ処理装置を使って極めて高速で操作することができる。水および酸素の浸透性に対する耐性は、未コートのPET膜に比して3ないし4桁まで改善されることが開示されている。
かかるポリマー多層技法では、ポリマー層が、隣接するセラミック層内のあらゆる欠陥を覆い隠して、バリア層内のこれらの欠陥によって作られるチャンネルを通る酸素や水蒸気の拡散速度を低下させるように働くことが示唆されている。しかしながら、ポリマー層と酸化アルミニウムの層との境界面は隣接する材料の不相溶性のために一般的に弱いため、剥離しやすく、長期保存では充分なバリア能が得られないという問題を有していた。
一方、上記課題に対して、特開2012−84306号公報では、特定の組成でケイ素、酸素および炭素を含むガスバリア層を有する有機EL装置が報告されている。上記ガスバリア層は、高いガスバリア性を備え、フィルムを屈曲させたときにもガスバリア性が低下しにくく、簡易な工程で、かつ短時間で形成することが可能であると開示されている。
しかしながら、特開2012−84306号公報に記載の技術では、高いガスバリア性を得るために、少なくとも900nmを超える膜厚になるようにバリア層を設けなければならない。また、このガスバリア性フィルムを電子デバイスに適用した場合、経時により電子デバイスの劣化が起こることが分かった。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、長期信頼性に優れる電子デバイスを提供することを目的とする。
本発明者は、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、特定の条件を満たすケイ素、酸素、および炭素を含有するバリア層と、ハードコート層とを有するガスバリア性フィルムを備えた電子デバイスが、長期信頼性に優れることを見出した。上記知見に基づいて、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、基材、該基材の一方の面に形成された、ケイ素、酸素、および炭素を含有するバリア層、ならびに該基材の他方の面に形成され、硬化性樹脂を含有し、膜厚が5μm以上であり、かつ鉛筆硬度がHB以上であるハードコート層を有するガスバリア性フィルムと、該ガスバリア性フィルムの該バリア層側に配置される電子素子本体と、を有する電子デバイスであって、該バリア層が、下記条件(i)〜(iv)を満たす、電子デバイスである。
(i)前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層表面からの距離(L)と、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対するケイ素原子の量の比率(ケイ素の原子比)との関係を示すケイ素分布曲線、前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する酸素原子の量の比率(酸素の原子比)との関係を示す酸素分布曲線、ならびに前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、
前記バリア層の膜厚の90%以上の領域で、(酸素の原子比)、(ケイ素の原子比)、(炭素の原子比)の順で多い、
(ii)前記炭素分布曲線が少なくとも2つの極値を有する、
(iii)前記炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値と最小値との差の絶対値が3at%以上である、
(iv)膜厚が900nmを超える。
本発明に係るバリア層を製造するために好適に利用することが可能な製造装置の一例を示す模式図であり、1はガスバリア性フィルムであり、2は基材であり、3はバリア層であり、31は製造装置であり、32は送り出しローラーであり、33、34、35、および36は搬送ローラーであり、39および40は成膜ローラーであり、41はガス供給管であり、42はプラズマ発生用電源であり、43および44は磁場発生装置であり、45は巻取りローラーである。 実施例1のバリア層の炭素分布曲線、酸素分布曲線、およびケイ素分布曲線のグラフである。
本発明は、基材、該基材の一方の面に形成された、ケイ素、酸素、および炭素を含有するバリア層、ならびに該基材の他方の面に形成され、硬化性樹脂を含有し、膜厚が5μm以上であり、かつ鉛筆硬度がHB以上であるハードコート層を有するガスバリア性フィルムと、該ガスバリア性フィルムの該バリア層側に配置される電子素子本体と、を有する電子デバイスである。そして、該バリア層は、下記条件(i)〜(iv)を満たす。
(i)前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層表面からの距離(L)と、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対するケイ素原子の量の比率(ケイ素の原子比)との関係を示すケイ素分布曲線、前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する酸素原子の量の比率(酸素の原子比)との関係を示す酸素分布曲線、ならびに前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、
前記バリア層の膜厚の90%以上の領域で、(酸素の原子比)、(ケイ素の原子比)、(炭素の原子比)の順で多い、
(ii)前記炭素分布曲線が少なくとも2つの極値を有する、
(iii)前記炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値と最小値との差の絶対値が3at%以上である、
(iv)膜厚が900nmを超える。
このような構成を有する電子デバイスは、長期信頼性に優れる。なぜ、本発明の電子デバイスが優れた長期信頼性を有するのか詳細な理由は不明であるが、バリア層の膜厚が厚くなるにつれて、バリア層内の不均一な欠陥に物理的な応力がかかりやすく、クラック等が発生しやすくなり、ガスバリア性能が経時劣化すると考えられる。本発明に係るガスバリア性フィルムにおいては、基材のバリア層とは反対側の面にハードコート層を設けることで、バリア層のクラック等を抑制し、電子デバイスの長期信頼性が向上すると考えられる。なお、上記メカニズムは推測によるものであり、本発明は上記メカニズムに何ら限定されるものではない。
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」および「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
[基材]
本発明に係るガスバリア性フィルムは、通常、基材として、プラスチックフィルムが用いられる。用いられるプラスチックフィルムは、バリア層、ハードコート層等を保持できるフィルムであれば材質、厚み等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。前記プラスチックフィルムとしては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
本発明に係るガスバリア性フィルムを有機EL素子等の電子デバイスの基板として使用する場合は、前記基材は耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、線膨張係数が15ppm/K以上100ppm/K以下で、かつガラス転移温度(Tg)が100℃以上300℃以下の樹脂基材が使用される。該基材は、電子部品用途、ディスプレイ用積層フィルムとしての必要条件を満たしている。即ち、これらの用途に本発明のガスバリア性フィルムを用いる場合、ガスバリア性フィルムは、150℃以上の工程に曝されることがある。この場合、ガスバリア性フィルムにおける基材の線膨張係数が100ppm/Kを超えると、ガスバリア性フィルムを前記のような温度の工程に流す際に基板寸法が安定せず、熱膨張および収縮に伴い、遮断性性能が劣化する不都合や、或いは、熱工程に耐えられないという不具合が生じやすくなる。15ppm/K未満では、フィルムがガラスのように割れてしまいフレキシビリティが劣化する場合がある。
基材のTgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。基材として用いることができる熱可塑性樹脂のより好ましい具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:70℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン株式会社製、ゼオノア(登録商標)1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報に記載の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学株式会社製、ネオプリム(登録商標):260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報に記載の化合物:300℃以上)等が挙げられる(括弧内はTgを示す)。
本発明に係るガスバリア性フィルムを偏光板と組み合わせて使用する場合、ガスバリア性フィルムのバリア層がセルの内側に向くようにし、最も内側に(素子に隣接して)配置することが好ましい。このとき、偏光板よりセルの内側にガスバリア性フィルムが配置されることになるため、ガスバリア性フィルムのレターデーション値が重要になる。このような態様でのガスバリア性フィルムの使用形態は、レターデーション値が10nm以下の基材フィルムを用いたガスバリア性フィルムと円偏光板(1/4波長板+(1/2波長板)+直線偏光板)を積層して使用するか、あるいは1/4波長板として使用可能な、レターデーション値が100nm〜180nmの基材フィルムを用いたガスバリア性フィルムに直線偏光板を組み合わせて用いるのが好ましい。
レターデーションが10nm以下の基材フィルムとしては、例えば、セルローストリアセテート(富士フイルム株式会社製:フジタック(登録商標))、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製:ピュアエース(登録商標)、株式会社カネカ製:エルメック(登録商標))、シクロオレフィンポリマー(JSR株式会社製:アートン(登録商標)、日本ゼオン株式会社製:ゼオノア(登録商標))、シクロオレフィンコポリマー(三井化学株式会社製:アペル(登録商標)(ペレット)、ポリプラスチック株式会社製:トパス(登録商標)(ペレット))、ポリアリレート(ユニチカ株式会社製:U100(ペレット))、透明ポリイミド(三菱ガス化学株式会社製:ネオプリム(登録商標))等を挙げることができる。
また1/4波長板としては、上記のフィルムを適宜延伸することで所望のレターデーション値に調整したフィルムを用いることができる。
本発明に係るガスバリア性フィルムは、有機EL素子等の電子デバイスとして利用されることから、プラスチックフィルムは透明であることが好ましい。すなわち、光線透過率が通常80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。光線透過率は、JIS K7105:1981に記載された方法、すなわち積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率および散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
ただし、本発明に係るガスバリア性フィルムをディスプレイ用途に用いる場合であっても、観察側に設置しない場合などは必ずしも透明性が要求されない。したがって、このような場合は、プラスチックフィルムとして不透明な材料を用いることもできる。不透明な材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、公知の液晶ポリマーなどが挙げられる。
本発明に係るガスバリア性フィルムに用いられるプラスチックフィルムの厚みは、用途によって適宜選択されるため特に制限がないが、典型的には1〜800μmであり、好ましくは10〜200μmである。これらのプラスチックフィルムは、透明導電層、プライマー層等の機能層を有していてもよい。機能層については、上述したもののほか、特開2006−289627号公報の段落番号「0036」〜「0038」に記載されているものを好ましく採用できる。
基材は、表面の平滑性が高いものが好ましい。表面の平滑性としては、平均表面粗さ(Ra)が2nm以下であるものが好ましい。下限は特にないが、実用上、0.01nm以上である。必要に応じて、基材の両面、少なくともバリア層を設ける側を研摩し、平滑性を向上させておいてもよい。
また、上記に挙げた樹脂等を用いた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
本発明で用いられる基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等の公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
基材の少なくとも本発明に係るバリア層を設ける側には、密着性向上のための公知の種々の処理、例えばコロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、またはプラズマ処理や、後述するプライマー層の積層等を行うことが好ましく、必要に応じて上記処理を組み合わせて行うことがより好ましい。
[バリア層]
本発明に係るバリア層は、基材の一方の面に形成される層であり、ケイ素、酸素、および炭素を含有する層である。そして、該バリア層は、上記条件(i)〜(iii)を満たす。
まず、バリア層は、(i)前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層表面からの距離(L)と、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対するケイ素原子の量の比率(ケイ素の原子比)との関係を示すケイ素分布曲線、前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する酸素原子の量の比率(酸素の原子比)との関係を示す酸素分布曲線、ならびに前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、前記バリア層の膜厚の90%以上(上限:100%)の領域で、(酸素の原子比)、(ケイ素の原子比)、(炭素の原子比)の順で多い(原子比がO>Si>C)。前記の条件(i)を満たさない場合、得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性や屈曲性が不十分となる。ここで、上記炭素分布曲線において、上記(酸素の原子比)、(ケイ素の原子比)および(炭素の原子比)の関係は、バリア層の膜厚の、少なくとも90%以上(上限:100%)の領域で満たされることがより好ましく、少なくとも93%以上(上限:100%)の領域で満たされることがより好ましい。ここで、バリア層の膜厚の少なくとも90%以上とは、バリア層中で連続していなくてもよく、単に90%以上の部分で上記した関係を満たしていればよい。
また、バリア層は、(ii)前記炭素分布曲線が少なくとも2つの極値を有する。該バリア層は、前記炭素分布曲線が少なくとも3つの極値を有することが好ましく、少なくとも4つの極値を有することがより好ましいが、5つ以上有していてもよい。前記炭素分布曲線の極値が1つ以下である場合、得られるガスバリア性フィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性が不十分となる。なお、炭素分布曲線の極値の上限は、特に制限されないが、例えば、好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。極値の数は、バリア層の膜厚にも起因するため、一概に規定することはできない。
ここで、少なくとも3つの極値を有する場合においては、前記炭素分布曲線の有する1つの極値および該極値に隣接する極値における前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離(L)の差の絶対値(以下、単に「極値間の距離」とも称する)が、いずれも200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、75nm以下であることが特に好ましい。このような極値間の距離であれば、バリア層中に炭素原子比が多い部位(極大値)が適度な周期で存在するため、バリア層に適度な屈曲性を付与し、ガスバリア性フィルムの屈曲時のクラックの発生をより有効に抑制・防止できる。なお、本明細書において「極値」とは、前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離(L)に対する元素の原子比の極大値または極小値のことをいう。また、本明細書において「極大値」とは、バリア層の表面からの距離を変化させた場合に元素(酸素、ケイ素または炭素)の原子比の値が増加から減少に変わる点であって、かつその点の元素の原子比の値よりも、該点からバリア層の膜厚方向におけるバリア層の表面からの距離をさらに4〜20nmの範囲で変化させた位置の元素の原子比の値が3at%以上減少する点のことをいう。すなわち、4〜20nmの範囲で変化させた際に、いずれかの範囲で元素の原子比の値が3at%以上減少していればよい。同様にして、本明細書において「極小値」とは、バリア層の表面からの距離を変化させた場合に元素(酸素、ケイ素または炭素)の原子比の値が減少から増加に変わる点であり、かつその点の元素の原子比の値よりも、該点からバリア層の膜厚方向におけるバリア層の表面からの距離をさらに4〜20nm変化させた位置の元素の原子比の値が3at%以上増加する点のことをいう。すなわち、4〜20nmの範囲で変化させた際に、いずれかの範囲で元素の原子比の値が3at%以上増加していればよい。ここで、少なくとも3つの極値を有する場合の、極値間の距離の下限は、極値間の距離が小さいほどガスバリア性フィルムの屈曲時のクラック発生抑制/防止の向上効果が高いため、特に制限されないが、バリア層の屈曲性、クラックの抑制/防止効果、熱膨張性などを考慮すると、10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましい。
さらに、バリア層は、(iii)前記炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値(以下、単に「Cmax−Cmin差」とも称する)が3at%以上である。前記絶対値が3at%未満では、得られるガスバリア性フィルムを屈曲させた場合に、ガスバリア性が不十分となる。Cmax−Cmin差は5at%以上であることが好ましく、7at%以上であることがより好ましく、10at%以上であることが特に好ましい。上記Cmax−Cmin差とすることによって、ガスバリア性をより向上することができる。なお、本明細書において、「最大値」とは、各元素の分布曲線において最大となる各元素の原子比であり、極大値の中で最も高い値である。同様にして、本明細書において、「最小値」とは、各元素の分布曲線において最小となる各元素の原子比であり、極小値の中で最も低い値である。ここで、Cmax−Cmin差の上限は、特に制限されないが、ガスバリア性フィルムの屈曲時のクラック発生抑制/防止の向上効果などを考慮すると、50at%以下であることが好ましく、40at%以下であることがより好ましい。
加えて、(iv)該バリア層の厚みは、900nmを超えるものである。900nm以下の場合、ガスバリア性が不十分となる。該バリア層の厚みは950〜2000nmであることが好ましく、1000〜1500nmであることがより好ましい。
本発明において、前記バリア層の前記酸素分布曲線が少なくとも1つの極値を有することが好ましく、少なくとも2つの極値を有することがより好ましく、少なくとも3つの極値を有することがさらに好ましい。前記酸素分布曲線が極値を少なくとも1つを有する場合、得られるガスバリア性フィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性がより向上する。なお、酸素分布曲線の極値の上限は、特に制限されないが、例えば、好ましくは20以下、より好ましくは10以下である。酸素分布曲線の極値の数においても、バリア層の膜厚に起因する部分があり一概に規定できない。また、少なくとも3つの極値を有する場合においては、前記酸素分布曲線の有する1つの極値および該極値に隣接する極値における前記バリア層の膜厚方向におけるバリア層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。このような極値間の距離であれば、ガスバリア性フィルムの屈曲時のクラックの発生をより有効に抑制・防止できる。ここで、少なくとも3つの極値を有する場合の、極値間の距離の下限は、特に制限されないが、ガスバリア性フィルムの屈曲時のクラック発生抑制/防止の向上効果、熱膨張性などを考慮すると、10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましい。
加えて、本発明において、前記バリア層の前記酸素分布曲線における酸素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値(以下、単に「Omax−Omin差」とも称する)が3at%以上であることが好ましく、5at%以上であることがより好ましく、6at%以上であることがさらにより好ましく、7at%以上であることが特に好ましい。前記絶対値が3at%以上であれば、得られるガスバリア性フィルムのフィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性がより向上する。ここで、Omax−Omin差の上限は、特に制限されないが、ガスバリア性フィルムの屈曲時のクラック発生抑制/防止の向上効果などを考慮すると、50at%以下であることが好ましく、40at%以下であることがより好ましい。
本発明において、前記バリア層の前記ケイ素分布曲線におけるケイ素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値(以下、単に「Simax−Simin差」とも称する)が10at%以下であることが好ましく、7at%以下であることがより好ましく、3at%以下であることがさらに好ましい。前記絶対値が10at%以下である場合、得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性がより向上する。ここで、Simax−Simin差の下限は、Simax−Simin差が小さいほどガスバリア性フィルムの屈曲時のクラック発生抑制/防止の向上効果が高いため、特に制限されないが、ガスバリア性などを考慮すると、1at%以上であることが好ましく、2at%以上であることがより好ましい。
また、本発明において、バリア層の膜厚方向に対する炭素および酸素原子の合計量はほぼ一定であることが好ましい。これにより、バリア層は適度な屈曲性を発揮し、ガスバリア性フィルムの屈曲時のクラック発生をより有効に抑制・防止されうる。より具体的には、バリア層の膜厚方向における該バリア層の表面からの距離(L)とケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する、酸素原子および炭素原子の合計量の比率(酸素および炭素の原子比)との関係を示す酸素炭素分布曲線において、前記酸素炭素分布曲線における酸素および炭素の原子比の合計の最大値および最小値の差の絶対値(以下、単に「OCmax−OCmin差」とも称する)が5at%未満であることが好ましく、4at%未満であることがより好ましく、3at%未満であることがさらに好ましい。前記絶対値が5at%未満であれば、得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性がより向上する。なお、OCmax−OCmin差の下限は、OCmax−OCmin差が小さいほど好ましいため、0at%であるが、0.1at%以上であれば十分である。
前記ケイ素分布曲線、前記酸素分布曲線、前記炭素分布曲線、および前記酸素炭素分布曲線は、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間は膜厚方向における前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離(L)に概ね相関することから、「バリア層の膜厚方向におけるバリア層の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出されるバリア層の表面からの距離を採用することができる。なお、本発明では、ケイ素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線および酸素炭素分布曲線は、下記測定条件にて作成した。
(測定条件)
エッチングイオン種:アルゴン(Ar);
エッチング速度(SiO熱酸化膜換算値):0.05nm/sec;
エッチング間隔(SiO換算値):10nm;
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名"VG Theta Probe";
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポットおよびそのサイズ:800×400μmの楕円形。
なお、バリア層が2層以上から構成される場合には、各バリア層が上記したような厚みを有することが好ましい。また、バリア層が2層以上から構成される場合のバリア層全体の厚みは特に制限されないが、バリア層全体の厚み(乾燥膜厚)が1000〜2000nm程度であることが好ましい。このような厚みであれば、ガスバリア性フィルムは、優れたガスバリア性および屈曲時のクラック発生抑制/防止効果を発揮できる。
本発明において、膜面全体において均一でかつ優れたガスバリア性を有するバリア層を形成するという観点から、前記バリア層が膜面方向(バリア層の表面に平行な方向)において実質的に一様であることが好ましい。ここで、バリア層が膜面方向において実質的に一様とは、XPSデプスプロファイル測定によりバリア層の膜面の任意の2箇所の測定箇所について前記酸素分布曲線、前記炭素分布曲線および前記酸素炭素分布曲線を作成した場合に、その任意の2箇所の測定箇所において得られる炭素分布曲線が持つ極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値が、互いに同じであるかもしくは5at%以内の差であることをいう。
さらに、本発明においては、前記炭素分布曲線は実質的に連続であることが好ましい。ここで、炭素分布曲線が実質的に連続とは、炭素分布曲線における炭素の原子比が不連続に変化する部分を含まないことを意味し、具体的には、エッチング速度とエッチング時間とから算出される前記バリア層のうちの少なくとも1層の膜厚方向における該バリア層の表面からの距離(x、単位:nm)と、炭素の原子比(C、単位:at%)との関係において、下記数式(1)で表される条件を満たすことをいう。
本発明に係るガスバリア性フィルムにおいて、上記条件(i)〜(iii)を全て満たすバリア層は、1層のみを備えていてもよいし2層以上を備えていてもよい。さらに、このようなバリア層を2層以上備える場合には、複数のバリア層の材質は、同一であってもよいし異なっていてもよい。
前記ケイ素分布曲線、前記酸素分布曲線、および前記炭素分布曲線において、ケイ素の原子比、酸素の原子比、および炭素の原子比が、該バリア層の膜厚の90%以上の領域において前記(i)で表される条件を満たす場合には、前記バリア層中におけるケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対するケイ素原子の含有量の原子比率は、20〜45at%であることが好ましく、25〜40at%であることがより好ましい。また、前記バリア層中におけるケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する酸素原子の含有量の原子比率は、45〜75at%であることが好ましく、50〜70at%であることがより好ましい。さらに、前記バリア層中におけるケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する炭素原子の含有量の原子比率は、1〜25at%であることが好ましく、2〜20at%であることがより好ましい。
本発明では、バリア層の形成方法は特に制限されず、従来と方法を同様にしてあるいは適宜修飾して適用できる。バリア層は、好ましくは化学気相成長(CVD)法、特に、プラズマ化学気相成長法(プラズマCVD、PECVD(plasma-enhanced chemical vapor deposition)、以下、単に「プラズマCVD法」とも称する)により形成され、基材を一対の成膜ローラー上に配置し、前記一対の成膜ローラー間に放電してプラズマを発生させるプラズマCVD法により形成されることがより好ましい。
また、該バリア層の配置は、特に制限されないが、基材上に配置されればよい。
以下では、本発明で好ましく使用されるプラズマCVD法を利用してバリア層を形成する方法を以下に説明する。
[バリア層の形成方法]
次に、本発明に係るバリア層を形成する好ましい方法について説明する。本発明に係るガスバリア性フィルムは、前記基材の一方の表面上に前記バリア層を形成させ、前記基材の他方の表面上に後述のハードコート層を形成することにより製造することができる。このような本発明に係るバリア層を前記基材の表面上に形成させる方法としては、ガスバリア性の観点から、プラズマCVD法を採用することが好ましい。なお、前記プラズマCVD法はペニング放電プラズマ方式のプラズマCVD法であっても良い。
また、プラズマCVD法においてプラズマを発生させる際には、複数の成膜ローラーの間の空間にプラズマ放電を発生させることが好ましく、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラーのそれぞれに前記基材を配置して、一対の成膜ローラー間に放電してプラズマを発生させることがより好ましい。このようにして、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラー上に基材を配置して、かかる一対の成膜ローラー間に放電することにより、成膜時に一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分を成膜しつつ、もう一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分も同時に成膜することが可能となって効率よく薄膜を製造できるばかりか、通常のローラーを使用しないプラズマCVD法と比較して成膜レートを倍にでき、なおかつ、略同一の構造の膜を成膜できるので前記炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることが可能となり、効率よく上記条件(i)〜(iii)を全て満たす層を形成することが可能となる。
また、このようにして一対の成膜ローラー間に放電する際には、前記一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが好ましい。さらに、このようなプラズマCVD法に用いる成膜ガスとしては、有機ケイ素化合物と酸素とを含むものが好ましく、その成膜ガス中の酸素の含有量は、前記成膜ガス中の前記有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量未満であることが好ましい。また、本発明のガスバリア性フィルムにおいては、前記バリア層が連続的な成膜プロセスにより形成された層であることが好ましい。
また、本発明に係るガスバリア性フィルムは、生産性の観点から、ロールツーロール方式で前記基材の表面上に前記バリア層を形成させることが好ましい。また、このようなプラズマCVD法によりバリア層を製造する際に用いることが可能な装置としては、特に制限されないが、少なくとも一対の成膜ローラーと、プラズマ電源とを備え、かつ前記一対の成膜ローラー間において放電することが可能な構成となっている装置であることが好ましく、例えば、図1に示す製造装置を用いた場合には、プラズマCVD法を利用しながらロールツーロール方式で製造することも可能となる。
以下、図1を参照しながら、本発明に係るバリア層の形成方法について、より詳細に説明する。なお、図1は、本発明に係るバリア層を製造するために好適に利用することが可能な製造装置の一例を示す模式図である。また、以下の説明および図面中、同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図1に示す製造装置31は、送り出しローラー32と、搬送ローラー33、34、35、36と、成膜ローラー39、40と、ガス供給管41と、プラズマ発生用電源42と、成膜ローラー39および40の内部に設置された磁場発生装置43、44と、巻取りローラー45とを備えている。また、このような製造装置においては、少なくとも成膜ローラー39、40と、ガス供給管41と、プラズマ発生用電源42と、磁場発生装置43、44とが図示を省略した真空チャンバ内に配置されている。さらに、このような製造装置31において前記真空チャンバは図示を省略した真空ポンプに接続されており、かかる真空ポンプにより真空チャンバ内の圧力を適宜調整することが可能となっている。
このような製造装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39と成膜ローラー40)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ローラーがそれぞれプラズマ発生用電源42に接続されている。そのため、このような製造装置31においては、プラズマ発生用電源42により電力を供給することにより、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の空間に放電することが可能であり、これにより成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の空間にプラズマを発生させることができる。なお、このように、成膜ローラー39と成膜ローラー40とを電極としても利用する場合には、電極としても利用可能なようにその材質や設計を適宜変更すればよい。また、このような製造装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39および40)は、その中心軸が同一平面上において略平行となるようにして配置することが好ましい。このようにして、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39および40)を配置することにより、成膜レートを倍にでき、なおかつ、同じ構造の膜を成膜できるので前記炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることが可能となる。そして、このような製造装置によれば、CVD法により基材2の表面上にバリア層3を形成することが可能であり、成膜ローラー39上において基材2の表面上にバリア層成分を堆積させつつ、さらに成膜ローラー40上においても基材2の表面上にバリア層成分を堆積させることもできるため、基材2の表面上にバリア層を効率よく形成することができる。
成膜ローラー39および成膜ローラー40の内部には、成膜ローラーが回転しても回転しないようにして固定された磁場発生装置43および44がそれぞれ設けられている。
成膜ローラー39および成膜ローラー40にそれぞれ設けられた磁場発生装置43および44は、一方の成膜ローラー39に設けられた磁場発生装置43と他方の成膜ローラー40に設けられた磁場発生装置44との間で磁力線がまたがらず、それぞれの磁場発生装置43、44がほぼ閉じた磁気回路を形成するように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置43、44を設けることにより、各成膜ローラー39、40の対向側表面付近に磁力線が膨らんだ磁場の形成を促進することができ、その膨出部にプラズマが収束され易くなるため、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
また、成膜ローラー39および成膜ローラー40にそれぞれ設けられた磁場発生装置43および44は、それぞれローラー軸方向に長いレーストラック状の磁極を備え、一方の磁場発生装置43と他方の磁場発生装置44とは向かい合う磁極が同一極性となるように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置43、44を設けることにより、それぞれの磁場発生装置43、44について、磁力線が対向するローラー側の磁場発生装置にまたがることなく、ローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場を容易に形成することができ、その磁場にプラズマを収束させることができため、ローラー幅方向に沿って巻き掛けられた幅広の基材2を用いて効率的に蒸着膜であるバリア層3を形成することができる点で優れている。
成膜ローラー39および成膜ローラー40としては適宜公知のローラーを用いることができる。このような成膜ローラー39および40としては、より効率よく薄膜を形成せしめるという観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、このような成膜ローラー39および40の直径としては、放電条件、チャンバのスペース等の観点から、直径が300〜1000mmφの範囲、特に300〜700mmφの範囲が好ましい。成膜ローラーの直径が300mmφ以上であれば、プラズマ放電空間が小さくなることがないため生産性の劣化もなく、短時間でプラズマ放電の全熱量が基材2にかかることを回避できることから、基材2へのダメージを軽減でき好ましい。一方、成膜ローラーの直径が1000mmφ以下であれば、プラズマ放電空間の均一性等も含めて装置設計上、実用性を保持することができるため好ましい。
このような製造装置31においては、基材2の表面がそれぞれ対向するように、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39と成膜ローラー40)上に、基材2が配置されている。このようにして基材2を配置することにより、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の対向空間に放電を行ってプラズマを発生させる際に、一対の成膜ローラー間に存在する基材2のそれぞれの表面を同時に成膜することが可能となる。すなわち、このような製造装置によれば、プラズマCVD法により、成膜ローラー39上にて基材2の表面上にバリア層成分を堆積させ、さらに成膜ローラー40上にてバリア層成分を堆積させることができるため、基材2の表面上にバリア層を効率よく形成することが可能となる。
このような製造装置に用いる送り出しローラー32および搬送ローラー33、34、35、36としては適宜公知のローラーを用いることができる。また、巻取りローラー45としても、基材2上にバリア層3を形成したガスバリア性フィルム1を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のローラーを用いることができる。
また、ガス供給管41および真空ポンプとしては、原料ガス等を所定の速度で供給または排出することが可能なものを適宜用いることができる。
また、ガス供給手段であるガス供給管41は、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の対向空間(放電領域;成膜ゾーン)の一方に設けることが好ましく、真空排気手段である真空ポンプ(図示せず)は、前記対向空間の他方に設けることが好ましい。このようにガス供給手段であるガス供給管41と、真空排気手段である真空ポンプを配置することにより、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の対向空間に効率良く成膜ガスを供給することができ、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
さらに、プラズマ発生用電源42としては、適宜公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源42は、これに接続された成膜ローラー39と成膜ローラー40とに電力を供給して、これらを放電のための対向電極として利用することを可能とする。このようなプラズマ発生用電源42としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、前記一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい。また、このようなプラズマ発生用電源42としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、印加電力を100W〜10kWとすることができ、かつ交流の周波数を50Hz〜500kHzとすることが可能なものであることがより好ましい。また、磁場発生装置43、44としては適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。さらに、基材2としては、本発明で用いられる基材の他に、バリア層3を予め形成させたものを用いることができる。このように、基材2としてバリア層3を予め形成させたものを用いることにより、バリア層3の厚みを厚くすることも可能である。
このような図1に示す製造装置31を用いて、例えば、原料ガスの種類、プラズマ発生装置の電極ドラムの電力、真空チャンバ内の圧力、成膜ローラーの直径、ならびにフィルム(基材)の搬送速度を適宜調整することにより、本発明に係るバリア層を製造することができる。すなわち、図1に示す製造装置31を用いて、成膜ガス(原料ガス等)を真空チャンバ内に供給しつつ、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39および40)間に放電を発生させることにより、前記成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、成膜ローラー39上の基材2の表面上および成膜ローラー40上の基材2の表面上に、バリア層3がプラズマCVD法により形成される。この際、成膜ローラー39、40のローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場が形成して、磁場にプラズマを収束させる。このため、基材2が、図1中の成膜ローラー39のAおよび成膜ローラー40のB地点を通過する際に、バリア層で炭素分布曲線の極大値が形成される。これに対して、基材2が、図1中の成膜ローラーのC1およびC2地点、ならびに成膜ローラー40のC3およびC4地点を通過する際に、バリア層で炭素分布曲線の極小値が形成される。このため、2つの成膜ローラーに対して、通常、5つの極値が生成する。また、バリア層の極値間の距離(炭素分布曲線の有する1つの極値および該極値に隣接する極値におけるバリア層の膜厚方向におけるバリア層の表面からの距離(L)の差の絶対値)は、成膜ローラー39、40の回転速度(基材の搬送速度)によって調節できる。なお、このような成膜に際しては、基材2が送り出しローラー32や成膜ローラー39等により、それぞれ搬送されることにより、ロールツーロール方式の連続的な成膜プロセスにより基材2の表面上にバリア層3が形成される。
前記ガス供給管41から対向空間に供給される成膜ガス(原料ガス等)としては、原料ガス、反応ガス、キャリアガス、放電ガスが単独または2種以上を混合して用いることができる。バリア層3の形成に用いる前記成膜ガス中の原料ガスとしては、形成するバリア層3の材質に応じて適宜選択して使用することができる。このような原料ガスとしては、例えば、ケイ素を含有する有機ケイ素化合物や炭素を含有する有機化合物ガスを用いることができる。このような有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ヘキサメチルジシラン(HMDS)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。これらの有機ケイ素化合物の中でも、化合物の取り扱い性および得られるバリア層のガスバリア性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。これらの有機ケイ素化合物は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができる。また、炭素を含有する有機化合物ガスとしては、例えば、メタン、エタン、エチレン、アセチレンを例示することができる。これら有機ケイ素化合物ガスや有機化合物ガスは、バリア層3の種類に応じて適切な原料ガスが選択される。
また、前記成膜ガスとしては、前記原料ガスの他に反応ガスを用いてもよい。このような反応ガスとしては、前記原料ガスと反応して酸化物、窒化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができる。また、窒化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができ、例えば酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
前記成膜ガスとしては、前記原料ガスを真空チャンバ内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、前記成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを用いてもよい。このようなキャリアガスおよび放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス;水素を用いることができる。
このような成膜ガスが原料ガスと反応ガスを含有する場合には、原料ガスと反応ガスの比率としては、原料ガスと反応ガスとを完全に反応させるために理論上必要となる反応ガスの量の比率よりも、反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことが好ましい。反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことで、形成されるバリア層3によって、優れたバリア性や耐屈曲性を得ることができる点で優れている。また、前記成膜ガスが前記有機ケイ素化合物と酸素とを含有するものである場合には、前記成膜ガス中の前記有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。
以下、前記成膜ガスとして、原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(有機ケイ素化合物、HMDSO、(CHSiO)と、反応ガスとしての酸素(O)を含有するものとを用い、ケイ素−酸素系の薄膜を製造する場合を例に挙げて、成膜ガス中の原料ガスと反応ガスとの好適な比率等について、より詳細に説明する。
原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO、(CHSiO)と、反応ガスとしての酸素(O)と、を含有する成膜ガスをプラズマCVDにより反応させてケイ素−酸素系の薄膜を作製する場合、その成膜ガスにより下記反応式(1)で表されるような反応が起こり、二酸化ケイ素が生成する。
このような反応においては、ヘキサメチルジシロキサン1モルを完全酸化するのに必要な酸素量は12モルである。そのため、成膜ガス中に、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素を12モル以上含有させて完全に反応させた場合には、均一な二酸化ケイ素膜が形成されてしまう(炭素分布曲線が存在しない)ため、上記条件(i)〜(iii)を全て満たすバリア層を形成することができなくなってしまう。そのため、本発明において、バリア層を形成する際には、上記反応式(1)の反応が完全に進行してしまわないように、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素量を化学量論比の12モルより少なくすることが好ましい。なお、実際のプラズマCVDチャンバ内の反応では、原料のヘキサメチルジシロキサンと反応ガスの酸素とは、ガス供給部から成膜領域へ供給されて成膜されるので、反応ガスの酸素のモル量(流量)が原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の12倍のモル量(流量)であったとしても、現実には完全に反応を進行させることはできず、酸素の含有量を化学量論比に比して大過剰に供給して初めて反応が完結すると考えられる(例えば、CVDにより完全酸化させて酸化ケイ素を得るために、酸素のモル量(流量)を原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の20倍以上程度とする場合もある)。そのため、原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)は、化学量論比である12倍量以下(より好ましくは、10倍以下)の量であることが好ましい。このような比でヘキサメチルジシロキサンおよび酸素を含有させることにより、完全に酸化されなかったヘキサメチルジシロキサン中の炭素原子や水素原子がバリア層中に取り込まれ、上記条件(i)〜(iv)を全て満たすバリア層を形成することが可能となって、得られるガスバリア性フィルムにおいて優れたガスバリア性および耐屈曲性を発揮させることが可能となる。なお、有機EL素子や太陽電池などのような透明性を必要とするデバイス用のフレキシブル基板への利用の観点から、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)の下限は、ヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の0.1倍より多い量とすることが好ましく、0.5倍より多い量とすることがより好ましい。
また、真空チャンバ内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、0.5Pa〜50Paの範囲とすることが好ましい。
また、このようなプラズマCVD法において、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間に放電するために、プラズマ発生用電源42に接続された電極ドラム(本実施形態においては、成膜ローラー39および40に設置されている)に印加する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバ内の圧力等に応じて適宜調整することができるものであり一概に言えるものでないが、0.1〜10kWの範囲とすることが好ましい。このような印加電力が100W以上であれば、パーティクルが発生を十分に抑制することができ、他方、10kW以下であれば、成膜時に発生する熱量を抑えることができ、成膜時の基材表面の温度が上昇するのを抑制できる。そのため基材が熱負けすることなく、成膜時に皺が発生するのを防止できる点で優れている。
基材2の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバ内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.25〜100m/minの範囲とすることが好ましく、0.5〜20m/minの範囲とすることがより好ましい。ライン速度が0.25m/min以上であれば、基材に熱に起因する皺の発生を効果的に抑制することができる。他方、100m/min以下であれば、生産性を損なうことなく、バリア層として十分な厚みを確保することができる点で優れている。
上記したように、本実施形態のより好ましい態様としては、本発明に係るバリア層を、図1に示す対向ロール電極を有するプラズマCVD装置(ロールツーロール方式)を用いたプラズマCVD法によって成膜することを特徴とするものである。これは、対向ロール電極を有するプラズマCVD装置(ロールツーロール方式)を用いて量産する場合に、可撓性(屈曲性)に優れ、機械的強度、特にロールツーロールでの搬送時の耐久性と、バリア性能とが両立するバリア層を効率よく製造することができるためである。このような製造装置は、太陽電池や電子部品などに使用される温度変化に対する耐久性が求められるガスバリア性フィルムを、安価でかつ容易に量産することができる点でも優れている。
[ハードコート層]
本発明に係るガスバリア性フィルムは、基材のバリア層を有する面とは反対側の面に設けられるハードコート層を有する。該ハードコート層を有することにより、本発明の電子デバイスは、長期信頼性が高いデバイスとなる。また、該ハードコート層は、電子デバイスの表面の傷付き防止機能を有しうる。
該ハードコート層は硬化性樹脂を含む。前記硬化性樹脂としては特に制限されず、活性エネルギー線硬化性材料等に対して紫外線等の活性エネルギー線を照射し硬化させて得られる活性エネルギー線硬化性樹脂や、熱硬化性材料を加熱することにより硬化して得られる熱硬化性樹脂等が挙げられる。該硬化性樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
ハードコート層の形成に用いられる活性エネルギー線硬化性材料としては、例えば、アクリレート化合物を含有する組成物、アクリレート化合物とチオール基を含有するメルカプト化合物とを含有する組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを含有する組成物等が挙げられる。具体的には、JSR株式会社製のUV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR(登録商標)シリーズ(シリカ微粒子に重合性不飽和基を有する有機化合物を結合させてなる化合物)を用いることができる。また、上記のような組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している活性エネルギー線硬化性材料であれば特に制限はない。
光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性モノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−デシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトリキエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4−ブタンジオールトリアクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールジアクリレート、ジアリルフマレート、1,10−デカンジオールジメチルアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、および、上記のアクリレートをメタクリレートに換えたもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。上記の反応性モノマーは、1種または2種以上の混合物として、あるいはその他の化合物との混合物として使用することができる。
活性エネルギー線硬化性材料としては、(メタ)アクリレート化合物であり、3官能〜8官能の(メタ)アクリレート化合物であり、さらに好ましくは、炭素原子、酸素原子および水素原子のみからなる、3官能〜8官能の(メタ)アクリレート化合物である。これらの(メタ)アクリレート化合物は直鎖または分岐であることが好ましい。官能基の数は、4官能〜8官能が特に好ましい。
さらに、活性エネルギー線硬化性材料は、リン酸(メタ)アクリレートを含んでいることが好ましい。リン酸(メタ)アクリレートを添加することにより、基材との密着性がより向上する傾向にある。リン酸(メタ)アクリレートは、ハードコート層を形成する化合物に含まれる重合性化合物の全量に対して1〜15重量%の割合で添加されることが好ましく、2〜10重量%の割合で添加されることがより好ましい。
特に、本発明に係るハードコート層は、活性エネルギー線硬化性材料を含む重合性組成物を硬化させてなり、前記重合性化合物の85重量%〜99重量%が炭素原子、酸素原子および水素原子のみからなる、4官能〜8官能の(メタ)アクリレートであり、1重量%〜15重量%がリン酸(メタ)アクリレートであり、かつ、ハードコート層の鉛筆硬度をH以上とすることが好ましい。これにより、本発明の効果がより顕著に向上する傾向にある。
活性エネルギー線硬化性材料を含む組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノ−1−プロパン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モノフォリノフェニル)−ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミン等の還元剤の組み合わせ等が挙げられ、これらの光重合開始剤を1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。
熱硬化性材料としては、具体的には、クラリアント社製のトゥットプロムシリーズ(有機ポリシラザン)、セラミックコート株式会社製のSP COAT耐熱クリアー塗料、アデカ社製のナノハイブリッドシリコーン、DIC株式会社製のユニディック(登録商標)V−8000シリーズ、EPICLON(登録商標) EXA−4710(超高耐熱性エポキシ樹脂)、信越化学工業株式会社製のシリコン樹脂 X−12−2400(商品名)、日東紡績株式会社製の無機・有機ナノコンポジット材料SSGコート、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、ポリアミドアミン−エピクロルヒドリン樹脂等が挙げられる。
ハードコート層の形成方法は、特に制限はないが、硬化性材料を含む塗布液をスピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法、グラビア印刷法等のウエットコーティング法、または蒸着法等のドライコーティング法により塗布し塗膜を形成した後、可視光線、赤外線、紫外線、X線、α線、β線、γ線、電子線等の活性エネルギー線の照射および/または加熱により、前記塗膜を硬化させて形成する方法が好ましい。活性エネルギー線を照射する方法としては、例えば超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等を用い好ましくは100〜400nm、より好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、または、走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射する方法が挙げられる。
硬化性材料を溶媒に溶解または分散させた塗布液を用いてハードコート層を形成する際に使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等の酢酸エステル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、安息香酸メチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
ハードコート層は、上述の材料に加えて、必要に応じて、熱可塑性樹脂や酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を含有することができる。また、成膜性向上および膜のピンホール発生防止等のために適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニルおよびその共重合体、塩化ビニルおよびその共重合体、塩化ビニリデンおよびその共重合体等のビニル樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、アクリル樹脂およびその共重合体、メタクリル樹脂およびその共重合体等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、線状ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
本発明に係るハードコート層の厚さは、5μm以上である。厚さが5μm未満である場合、電子デバイスの長期信頼性が低下する。該ハードコート層の厚さは、好ましくは5〜20μmであり、より好ましくは5〜10μmである。5μm以上とすることにより、フィルムとしての耐熱性を十分なものにし易くなり、10μm以下にすることにより、基材の光学特性のバランスをさらに調整し易くすると共に、ガスバリア性フィルムのカールをさらに抑え易くすることができるようになる。
上記で説明したバリア層とハードコート層との膜厚比は(バリア層の膜厚(nm):ハードコート層の膜厚(nm))は、1:3〜1:50であることが好ましく、1:5〜1:20であることがより好ましい。膜厚比がこの範囲であれば、本発明の電子デバイスの長期信頼性がより向上する。
本発明に係るハードコート層の鉛筆硬度は、HB以上である。鉛筆硬度は、軟らかいものから順に、6B、5B、4B、3B、2B、B、HB、F、H、2H、3H、4H、5H、6Hとなる。鉛筆硬度がHB未満であると、電子デバイスの表面の傷付き防止が不十分となる。該鉛筆硬度は、好ましくはF以上、より好ましくはH以上である。また、ハードコート層の上限は特に制限されないが、10H以下であることが好ましく、8H以下であることがより好ましい。なお、鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4:1999に記載の方法により測定することができる。また、鉛筆硬度が10H、7B、8B、9B、10Bのものを測定する場合は、三菱鉛筆株式会社製、ハイユニ アートセットの10H、7B、8B、9B、10Bの鉛筆をそれぞれ用いて、同様に測定を行う。
ハードコート層の平滑性は、JIS B0601:2001で規定される表面粗さで表現される値で、最大断面高さRt(p)が、10nm以上、30nm以下であることが好ましい。なお、最大断面高さRt(p)の下限は、特に制限されず、0nmであるが、通常、0.5nm以上であればよい。
なお、本明細書において、表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が数十μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する平均の粗さから求められる。
また、該ハードコート層は、電子デバイスの表面で外光が反射することによる透過光の視認性低下の防止等を目的として、アンチグレア性能が付与されていてもよい。アンチグレア性能の付与は、形成されるハードコート層表面に微細な凹凸構造を付与することにより行うことができる。そのような微細な凹凸構造を付与する材料としては、代表的には、透明樹脂が挙げられる。具体例としては、イソシアヌル酸トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのようなアクリル樹脂、イソホロンジイソシアネートポリウレタンのようなウレタン樹脂を含有する紫外線硬化型樹脂が挙げられる。また、微細な凹凸構造の付与は、粗面化(例えば、サンドブラスト、エンボス加工)、微粒子の配合などによっても行われる。微粒子を用いる場合、該微粒子としては、目的に応じて任意の適切な微粒子が採用され得る。好ましくは、透明微粒子である。具体的には、該微粒子は、無機微粒子(例えば、導電性であり得るシリカ、アルミナ、タルク、クレイ、チタニア、ジルコニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、または酸化アンチモン微粒子)や、有機微粒子(例えば、架橋または未架橋のポリマー微粒子)が挙げられる。
[プライマー層(平滑層)]
本発明のガスバリア性フィルムは、基材のバリア層を有する面、好ましくは基材とバリア層との間にプライマー層(平滑層)を有していてもよい。プライマー層は突起等が存在する基材の粗面を平坦化するために設けられる。このようなプライマー層は、基本的には、活性エネルギー線硬化性材料または熱硬化性材料等を硬化させて形成される。プライマー層は、上記のような機能を有していれば、基本的に上記のハードコート層と同じ構成をとっても構わない。
前記活性エネルギー線硬化性材料および前記熱硬化性材料の例、およびプライマー層の形成方法は、上記のハードコート層の欄で説明したものと同様であるので、ここでは説明を省略する。
プライマー層の平滑性は、JIS B0601:2001で規定される表面粗さで表現される値で、最大断面高さRt(p)が、10nm以上、30nm以下であることが好ましい。なお、最大断面高さRt(p)の下限は、特に制限されず、0nmであるが、通常、0.5nm以上であればよい。
プライマー層の厚さとしては、特に制限されないが、0.1〜10μmの範囲が好ましい。
[アンカーコート層]
本発明に係る基材の表面には、接着性(密着性)の向上を目的として、アンカーコート層を易接着層として形成してもよい。このアンカーコート層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、およびアルキルチタネート等を、1種または2種以上併せて使用することができる。上記アンカーコート剤は、市販品を使用してもよい。具体的には、シロキサン系UV硬化型ポリマー溶液(信越化学工業株式会社製、「X−12−2400」の3%イソプロピルアルコール溶液)を用いることができる。
これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記のアンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により基材上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりコーティングすることができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m(乾燥状態)程度が好ましい。なお、市販の易接着層付き基材を用いてもよい。
または、アンカーコート層は、物理蒸着法または化学蒸着法といった気相法により形成することもできる。例えば、特開2008−142941号公報に記載のように、接着性等を改善する目的で酸化ケイ素を主体とした無機膜を形成することもできる。
また、アンカーコート層の厚さは、特に制限されないが、0.5〜10.0μm程度が好ましい。
[電子素子本体]
電子素子本体は本発明の電子デバイスの本体であり、本発明に係るガスバリア性フィルムのバリア層側に配置される。前記電子素子本体としては、空気中の化学成分(酸素、水、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等)によって性能が劣化する電子デバイスの本体が好ましく用いられる。有機EL素子、太陽電池(PV)、液晶表示素子(LCD)、電子ペーパー、薄膜トランジスタ、タッチパネル等が挙げられる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、該電子素子本体は、有機EL素子または太陽電池であることが好ましい。
本発明に係るガスバリア性フィルムは、また、デバイスの膜封止に用いることができる。すなわち、デバイス自体を支持体として、その表面に本発明のガスバリア性フィルムを設ける方法である。ガスバリア性フィルムを設ける前にデバイスを保護層で覆ってもよい。
本発明に係るガスバリア性フィルムは、デバイスの基板や固体封止法による封止のためのフィルムとしても用いることができる。固体封止法とはデバイスの上に保護層を形成した後、接着剤層、ガスバリア性フィルムを重ねて硬化する方法である。接着剤は特に制限はないが、熱硬化性エポキシ樹脂、光硬化性アクリレート樹脂等が例示される。
(有機EL素子)
ガスバリア性フィルムを用いた有機EL素子の例は、特開2007−30387号公報に詳しく記載されている。
(液晶表示素子)
反射型液晶表示装置は、下から順に、下基板、反射電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、透明電極、上基板、λ/4板、そして偏光膜からなる構成を有する。本発明におけるガスバリア性フィルムは、前記透明電極基板および上基板として使用することができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を反射電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。透過型液晶表示装置は、下から順に、バックライト、偏光板、λ/4板、下透明電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、上透明電極、上基板、λ/4板および偏光膜からなる構成を有する。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を下透明電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。液晶セルの種類は特に限定されないが、より好ましくはTN型(Twisted Nematic)、STN型(Super Twisted Nematic)またはHAN型(Hybrid Aligned Nematic)、VA型(Vertically Alignment)、ECB型(Electrically Controlled Birefringence)、OCB型(Optically Compensated Bend)、IPS型(In−Plane Switching)、CPA型(Continuous Pinwheel Alignment)であることが好ましい。
(太陽電池)
本発明のガスバリア性フィルムは、太陽電池素子の封止フィルムとしても用いることができる。ここで、本発明のガスバリア性フィルムは、バリア層が太陽電池素子に近い側となるように封止することが好ましい。本発明のガスバリア性フィルムが好ましく用いられる太陽電池素子としては、特に制限はないが、例えば、単結晶シリコン系太陽電池素子、多結晶シリコン系太陽電池素子、シングル接合型、またはタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池素子、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池素子、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子、色素増感型太陽電池素子、有機太陽電池素子等が挙げられる。中でも、本発明においては、上記太陽電池素子が、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子であることが好ましい。
(その他)
その他の適用例としては、特表平10−512104号公報に記載の薄膜トランジスタ、特開平5−127822号公報、特開2002−48913号公報等に記載のタッチパネル、特開2000−98326号公報に記載の電子ペーパー等が挙げられる。
<光学部材>
本発明のガスバリア性フィルムは、光学部材としても用いることができる。光学部材の例としては円偏光板等が挙げられる。
(円偏光板)
本発明におけるガスバリア性フィルムを基板としλ/4板と偏光板とを積層し、円偏光板を作製することができる。この場合、λ/4板の遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角が45°になるように積層する。このような偏光板は、長手方向(MD)に対し45°の方向に延伸されているものを用いることが好ましく、例えば、特開2002−86554号公報に記載のものを好適に用いることができる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。また、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「重量部」あるいは「重量%」を表す。
ガスバリア性フィルムの各特性値は、下記の方法に従って測定した。
《ガスバリア性フィルムの特性値の測定方法》
〔水蒸気バリア性(WVTR)の評価〕
以下の測定方法に従って、各ガスバリア性フィルムの透過水分量を測定し、下記の基準に従って、水蒸気バリア性を評価した。
(装置)
蒸着装置:日本電子株式会社製、真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
(水蒸気バリア性評価用セルの作製)
試料のバリア層面に、真空蒸着装置(日本電子株式会社製、真空蒸着装置 JEE−400)を用い、ガスバリア性フィルム試料の蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。得られた両面を封止した試料を60℃、90%RHの高温高湿下で保存し、特開2005−283561号公報に記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐食量からセル内に透過した水分量を計算した。
なお、ガスバリア性フィルム面以外からの水蒸気の透過がないことを確認するために、比較試料としてガスバリア性フィルム試料の代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板を用いて金属カルシウムを蒸着した試料を、同様な60℃、90%RHの高温高湿下保存を行い、1000時間経過後でも金属カルシウム腐食が発生しないことを確認した。
以上により測定された各ガスバリア性フィルムの透過水分量(g/m・day;表中の「WVTR」)を、Ca法によって評価した。
〔カールの評価〕
カールの発生度合いの評価は、以下のようにして行った。すなわち、作製したガスバリア性フィルムを15cm×15cmのシート状に切り出して、その切り出したシートサンプルをステンレス鋼製の基板上に置き、シートサンプルの頂点とステンレス鋼製の基板との直交距離Lを測定した。
〔鉛筆硬度〕
JIS K5600−5−4:1999に従い、ハードコート層の鉛筆硬度を測定した。
(実施例1〜13、比較例1〜10)
〔ガスバリア性フィルムの作製〕
(ハードコート層の形成)
基材として100μm厚のPENフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、Q65FA、Tg:155℃、熱膨張係数:8ppm)を用い、基材の易接着面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 オプスター(登録商標)Z7501を、乾燥後の厚みが表1に示した厚み(3、5、7、10、15μm)となるようにワイヤーバーで塗布した。その後、80℃で3分乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプを使用し、照射量1.0J/cmで硬化を行い、ハードコート層を形成した。鉛筆硬度は、照射量を適宜変化させることにより、所望の硬度とした。
(プライマー層(平滑層)の形成)
上記基材のハードコート層を形成した面とは反対側の面に、JSR株式会社製 UV硬化型の有機/無機ハイブリッドコート材であるオプスター(登録商標)Z7501を、乾燥後の膜厚が4μmになる様にワイヤーバーで塗布した。塗布後、80℃で3分間乾燥し塗膜を形成した。その後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプで1.0J/cmの紫外線を上記塗膜に照射して硬化し、プライマー層(平滑層)を形成した。
(バリア層の形成)
上記のハードコート層およびプライマー層を形成した基材を、株式会社神戸製鋼所製 プラズマCVDロールコータ W35シリーズ装置に装着して、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を用いて、下記製膜条件(プラズマCVD条件)にて、基材上にバリア層を300nmの厚さで形成した。これを繰り返して、バリア層の膜厚が900nm、1000nm、1200nm、1500nmとそれぞれなるように成膜し、ガスバリア性フィルムを得た。
〈製膜条件〉
原料ガス(HMDSO)の供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
酸素ガス(O)の供給量:500sccm
真空チャンバ内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度;0.5m/min。
〔有機EL素子の作製〕
基板としてITO膜(陽極)を有する導電性のガラス基板(表面抵抗値10Ω/□、0.6mm厚)を2−プロパノールで洗浄した後、UV−オゾン処理を10分間行った。この基板上に真空蒸着法にて以下の有機化合物を含む層を順次蒸着した。
(第1正孔輸送層)
銅フタロシアニン:膜厚10nm
(第2正孔輸送層)
N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチルベンジジン:膜厚40nm
(発光層兼電子輸送層)
トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム:膜厚60nm
最後にフッ化リチウムを膜厚1nm、金属アルミニウムを膜厚100nmで順次蒸着して陰極とし、その上に膜厚5μmの窒化ケイ素膜を平行平板CVD法によって形成し、有機EL素子を作製した。
〔ガスバリア性フィルムの設置〕
封止フィルムとして、上記で作製したガスバリア性フィルムを用い、熱硬化型接着剤を封止剤として用いて、有機EL素子を封止した。具体的には、上記有機EL素子の素子面上に熱硬化型接着剤を塗布し、ガスバリア性フィルムのバリア層側が有機EL素子側に接するように重ね、窒素パージグローブボックス中に設置したバキュームラミネータでラミネートし、100℃で1時間加熱して、有機EL素子を封止した。
作製直後の各有機EL素子を、ソースメジャーユニット(SMU2400型、Keithley社製)を用いて7Vの電圧を印加して発光させた。顕微鏡を用いて発光面状を観察して、以下の基準にしたがって評価した。◎が実用レベルである。
◎:ダークスポットの無い均一な発光を与える
○:ダークスポットがごくわずかに認められるが均一な発光を与える
△:ダークスポットがごくわずかに認められ、発光が不均一である
×:ダークスポットが多数認められ、発光が不均一である。
次に、各有機EL素子を25℃、相対湿度90%RHの条件下に10日間静置した後、発光の劣化を、顕微鏡を用いて発光面状を観察して以下の基準にしたがって評価した。○以上が実用レベルである。
◎:製造直後と比べて発光の劣化がまったく認められない
○:製造直後と比べて発光の劣化が認められるが許容範囲内である
△:製造直後と比べて発光の劣化が認められ、許容範囲外である
×:発光しない。
評価結果を下記表1に示す。
上記表1から明らかなように、本発明の有機EL素子、すなわち、バリア層の膜厚が900nmを超え、かつハードコート層の膜厚が5μm以上であるガスバリア性フィルムを用いた有機EL素子は、25℃、相対湿度90%RHの条件下に10日間静置した後であっても、発光が劣化せず、ガスバリア性能の長期信頼性が高いことが分かる。ただし、ハードコート層の膜厚が10μmを超える場合、カールがやや大きくなり、有機EL素子の作製効率がやや劣る。したがって、より好ましいハードコート層の膜厚は5〜10μmである。
なお、本出願は、2012年12月19日に出願された日本特許出願第2012−276929号、および2013年2月14日に出願された日本特許出願第2013−26873号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。

Claims (3)

  1. 基材、該基材の一方の面に形成された、ケイ素、酸素、および炭素を含有するバリア層、ならびに該基材の他方の面に形成され、硬化性樹脂を含有し、膜厚が5μm以上であり、かつ鉛筆硬度がHB以上であるハードコート層を有するガスバリア性フィルムと、
    該ガスバリア性フィルムの該バリア層側に配置される電子素子本体と、
    を有する電子デバイスであって、
    該バリア層が、下記条件(i)〜(iv)を満たす、電子デバイス:
    (i)前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層表面からの距離(L)と、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対するケイ素原子の量の比率(ケイ素の原子比)との関係を示すケイ素分布曲線、前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する酸素原子の量の比率(酸素の原子比)との関係を示す酸素分布曲線、ならびに前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、
    前記バリア層の膜厚の90%以上の領域で、(酸素の原子比)、(ケイ素の原子比)、(炭素の原子比)の順で多い、
    (ii)前記炭素分布曲線が少なくとも2つの極値を有する、
    (iii)前記炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値と最小値との差の絶対値が3at%以上である、
    (iv)膜厚が900nmを超える。
  2. 該バリア層と該ハードコート層との膜厚比(バリア層の膜厚(nm):ハードコート層の膜厚(nm))が、1:5〜1:20である、請求項1に記載の電子デバイス。
  3. 該電子素子本体が有機EL素子または太陽電池である、請求項1または2に記載の電子デバイス。
JP2014553115A 2012-12-19 2013-12-13 電子デバイス Pending JPWO2014097997A1 (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012276929 2012-12-19
JP2012276929 2012-12-19
JP2013026873 2013-02-14
JP2013026873 2013-02-14
PCT/JP2013/083513 WO2014097997A1 (ja) 2012-12-19 2013-12-13 電子デバイス

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPWO2014097997A1 true JPWO2014097997A1 (ja) 2017-01-12

Family

ID=50978329

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014553115A Pending JPWO2014097997A1 (ja) 2012-12-19 2013-12-13 電子デバイス

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JPWO2014097997A1 (ja)
WO (1) WO2014097997A1 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2016136842A1 (ja) * 2015-02-25 2016-09-01 コニカミノルタ株式会社 ガスバリア性フィルム
JPWO2018110272A1 (ja) * 2016-12-15 2019-10-24 東レフィルム加工株式会社 ガスバリア性フィルムおよび有機elデバイス
JP2020129430A (ja) * 2017-05-30 2020-08-27 富士フイルム株式会社 有機エレクトロルミネッセンス積層体

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008249903A (ja) * 2007-03-29 2008-10-16 Fujifilm Corp 偏光板用保護フィルム、及びその製造方法、偏光板、並びに画像表示装置
JP5223540B2 (ja) * 2007-08-24 2013-06-26 大日本印刷株式会社 ガスバリア性シート、ガスバリア性シートの製造方法
JP5513959B2 (ja) * 2009-09-01 2014-06-04 住友化学株式会社 ガスバリア性積層フィルム
JP5418351B2 (ja) * 2010-03-24 2014-02-19 日本ゼオン株式会社 ガスバリア積層体及び面光源装置
JP5673927B2 (ja) * 2010-10-08 2015-02-18 住友化学株式会社 積層フィルム

Also Published As

Publication number Publication date
WO2014097997A1 (ja) 2014-06-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2013161809A1 (ja) ガスバリア性フィルム、およびこれを用いる電子デバイス
JP5847743B2 (ja) バリア性積層体およびガスバリアフィルム
WO2014123201A1 (ja) ガスバリア性フィルム、およびその製造方法
JP6398986B2 (ja) ガスバリア性フィルム
JP5983454B2 (ja) ガスバリア性フィルム
WO2016043141A1 (ja) ガスバリア性フィルム
WO2014097997A1 (ja) 電子デバイス
JP6617701B2 (ja) ガスバリアーフィルム及びその作製方法
WO2014103756A1 (ja) ガスバリア性フィルム
JP2014141055A (ja) ガスバリア性フィルム
JP7292651B2 (ja) 光拡散性バリアフィルム
WO2015190572A1 (ja) ガスバリアフィルム積層体とそれを用いた電子部品
JP6237473B2 (ja) ガスバリア性フィルムの製造方法
WO2014125877A1 (ja) ガスバリア性フィルム
JP5895855B2 (ja) ガスバリア性フィルムの製造方法
JP6354302B2 (ja) ガスバリア性フィルム
US20160079559A1 (en) Roll of gas-barrier film, and process for producing gas-barrier film
WO2015133620A1 (ja) ガスバリア性フィルム
JP2018065328A (ja) 水蒸気バリア積層体及び有機エレクトロルミネッセンス素子
JP2013000977A (ja) ガスバリア性フィルム及びその製造方法
WO2015053189A1 (ja) ガスバリアーフィルム及びその製造方法
WO2015137389A1 (ja) ガスバリアーフィルムの製造方法
WO2016159206A1 (ja) ガスバリアーフィルム及びその製造方法
WO2015029732A1 (ja) ガスバリアフィルムおよびガスバリアフィルムの製造方法
JP6888623B2 (ja) ガスバリア性フィルムの製造方法