JP2017077668A - ガスバリア積層体、及び、有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

ガスバリア積層体、及び、有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

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Abstract

【課題】ガスバリア性の向上と気泡発生の抑制が可能なガスバリア積層体を提供する。【解決手段】エポキシ系樹脂、及び、アクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む粘着剤層と、粘着剤層を介して積層された第1ガスバリア層と第2ガスバリア層とを備え、昇温速度5℃/分で温度領域30℃から140℃まで加熱したときの粘着剤層の質量変化率が0.50%以下であるガスバリア積層体を構成する。【選択図】図1

Description

有機材料のエレクトロルミネッセンス(electroluminescence:以下、単にELともいう)を利用した有機エレクトロルミネッセンス素子は、数V〜数十V程度の低電圧で発光が可能な薄膜型の完全固体素子であり、高輝度、高発光効率、薄型、及び軽量といった多くの優れた特徴を有する。このため、各種ディスプレイのバックライト、看板や非常灯等の表示板、照明光源等の面発光体として、特に近年では薄型・軽量な樹脂基材にガスバリア層を有するガスバリア性フィルムを用いた有機EL素子が注目されている。
このような有機EL素子に用いるガスバリア性フィルムとして、ポリシラザン化合物を塗布して形成された前駆体層に、波長172nmのエキシマ光を照射して、ポリシラザン層を改質したガスバリア層(ポリシラザン改質層)を形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、より高いバリア性能の要求に応じるために、ポリシラザン改質層を2層以上積層したガスバリア積層体の構成が検討されている。例えば、粘着剤層を介してポリシラザン改質層を有するガスバリア性フィルムを、複数枚貼りあわせることにより、複数のポリシラザン改質層が積層されたガスバリア積層体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2014−94572号公報 国際公開第2013/133256号 国際公開第2008/059925号
高いバリア性を実現するために複数のガスバリア性フィルムを積層したガスバリア積層体では、積層されたガスバリア性フィルム間での気泡の発生が問題となっている。上述の特許文献3に記載の技術では、ガスバリア性フィルム間の気泡の数及び直径を規定することにより、気泡の低減を目指している。
しかしながら、上述のガスバリア性フィルム間の気泡の数及び直径を規定したガスバリア積層体を有機EL素子に適用すると、製造工程中の加熱や真空引き等の負荷により、粘着剤層中に気泡が発生してしまう。基板中に気泡が発生すると、基板の透過率が低下し、有機EL素子の発光効率の低下につながる。
上述した問題の解決のため、本発明においては、ガスバリア性の向上と気泡発生の抑制が可能なガスバリア積層体、及び、信頼性の向上と発光効率の低下を抑制することが可能な有機EL素子を提供するものである。
本発明のガスバリア積層体は、エポキシ系樹脂、及び、アクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む粘着剤層と、粘着剤層を介して積層された第1ガスバリア層と第2ガスバリア層とを備える。そして、昇温速度5℃/分で温度領域30℃から140℃まで加熱したときの粘着剤層の質量変化率が、0.50%以下である。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、上記ガスバリア積層体上に形成されている。
本発明によれば、ガスバリア性の向上と気泡発生の抑制が可能なガスバリア積層体、及び、信頼性の向上と発光効率の低下を抑制することが可能な有機EL素子を提供することができる。
ガスバリア積層体の構成を示す図である。 有機EL素子の構成を示す図である。 実施例で用いた粘着剤の体積変化率の測定グラフである。 実施例で用いた粘着剤の体積変化率の測定グラフである。 実施例で用いた粘着剤の体積変化率の測定グラフである。 実施例で用いた粘着剤の体積変化率の測定グラフである。 実施例で用いた粘着剤の体積変化率の測定グラフである。 実施例で用いた粘着剤の体積変化率の測定グラフである。 実施例で用いた粘着剤の体積変化率の測定グラフである。
以下、本発明を実施するための形態の例を説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.ガスバリア積層体の実施の形態
2.有機エレクトロルミネッセンス素子の実施の形態
〈1.ガスバリア積層体の実施の形態〉
以下、ガスバリア積層体の実施の形態について説明する。
ガスバリア積層体は、第1ガスバリア層と第2ガスバリア層とのガスバリア層が、粘着剤層を介して積層された構成を有する。そして、粘着剤層は、エポキシ系樹脂、及び、アクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む。さらに、粘着剤層は、温度領域30℃から140℃まで、昇温速度5℃/分で加熱したときの質量変化率が0.50%以下である。
ガスバリア積層体は、第1ガスバリア層と第2ガスバリア層とを粘着剤層によって貼り合せることにより、ガスバリア層が積層された構成である。このように、積層された複数のガスバリア層を有することにより、ガスバリア層が単層で形成されている構成に比べて、ガスバリア積層体のガスバリア性を高めることができる。
ガスバリア積層体を形成するための粘着剤が上記条件を満たすことにより、ガスバリア積層体を、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子の作製に適用した場合にも、製造工程中の気泡の発生を有機EL素子の発光効率を低下させない範囲まで充分に抑制することができる。
また、ガスバリア積層体を構成する第1ガスバリア層と第2ガスバリア層の少なくとも1層以上は、ポリシラザン改質層からなることが好ましい。ポリシラザン改質層とは、ポリシラザン化合物を含む塗布液から形成した塗布膜に、エキシマ光等のエネルギー線を照射して改質されたポリシラザン(ポリシラザン改質部)を、少なくとも一部に有する層である。一般的には、エネルギー線を照射した表面にポリシラザンの改質部が形成される。
ガスバリア積層体は、ポリシラザン改質層からなるガスバリア層を有することにより、高いバリア性を確保することができる。また、ポリシラザン改質層は高い平滑性を有するため、ポリシラザン改質層上に有機EL素子を形成する場合にも、凹凸に起因する不良発生を抑制することができる。
また、第1ガスバリア層が基材フィルムの一方の面(第1主面)に形成され、さらに、この基材フィルムの他方の面(第2主面)に粘着剤層が形成されていることが好ましい。さらに、ガスバリア積層体において、粘着剤層の基材フィルムと反対側の主面側に第2ガスバリア層を有することが好ましい。
さらに、ガスバリア積層体は、第1主面側に第1ガスバリア層が形成された第1基材フィルムと、第1主面側に第2ガスバリア層が形成された第2基材フィルムとが、粘着剤層で貼り合わされている構成が好ましい。このとき、第1基材フィルムでは、第2主面側に粘着剤層が設けられ、第2基材フィルム側では、第2ガスバリア層側に粘着剤層が設けられていることが好ましい。具体的には、第2基材フィルム、第2ガスバリア層、粘着剤層、第1基材フィルム、及び、第1ガスバリア層の順に積層されていることが好ましい。
なお、ガスバリア積層体は、第1ガスバリア層と第2ガスバリア層との少なくとも2層のガスバリア層と、この2層のガスバリア層との間に配置された粘着剤層とを有していればよい。このため、ガスバリア積層体は、これら以外のガスバリア層がさらに積層されていてもよい。このとき、さらに積層されるガスバリア層も、上述の粘着剤層を介して積層されていることが好ましい。また、ガスバリア層や基材フィルム以外の層が、ガスバリア層と粘着剤層との間や、それ以外の層間に介在していてもよい。
ガスバリア積層体の全光線透過率は、70%以上であることが好ましい。全光線透過率は、JIS K7105:1981に記載の方法に準拠し、積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率及び散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出する方法を用いることができる。
[ガスバリア積層体の構成]
図1にガスバリア積層体の概略構成を示す。図1に示すガスバリア積層体10は、第1基材フィルム11と、第1基材フィルム11の第1主面に形成された第1ガスバリア層12とからなる第1ガスバリア性フィルム18を有する。さらに、ガスバリア積層体10は、第2基材フィルム14と、第2基材フィルム14の第1主面に形成された第2ガスバリア層15とからなる第2ガスバリア性フィルム19を有する。そして、第1ガスバリア性フィルム18と第2ガスバリア性フィルム19とが、粘着剤層13によって貼り合わされている。
このように、第1ガスバリア性フィルム18と第2ガスバリア性フィルム19とを積層することにより、ガスバリア積層体10のガスバリア性が向上する。
粘着剤層13は、第1ガスバリア性フィルム18の第1基材フィルム11の第2主面側と、第2ガスバリア層15の表面(第2基材フィルム14と反対側の面)との間に設けられている。このため、ガスバリア積層体10では、第1基材フィルム11の第2主面と、第2基材フィルム14の第1主面とが対向するように貼り合わされている。
また、第2基材フィルム14の第2主面側に、帯電防止層16が設けられている。ガスバリア積層体10をロール状に巻回する際には、帯電防止層16が形成されている側をロールの内側にして巻回される。
なお、ガスバリア層を2層有するガスバリア積層体に対し、さらにガスバリア層を積層する場合には、第1ガスバリア性フィルム18における第1ガスバリア層12上に新たなガスバリア層を設ける。例えば、第1ガスバリア層12上に新たな粘着剤層(第2粘着剤層)を介して、ガスバリア層(第3ガスバリア層)が設けられた基材フィルム(第3基材フィルム)を貼り合せる。このとき、基材フィルム(第3基材フィルム)のガスバリア層(第3ガスバリア層)が形成されている面(第1主面)と逆側の面(第2主面)側に、粘着剤層を配置することが好ましい。
さらに、同様に粘着剤層を介して基材フィルムとガスバリア層とを積層することにより、より多層構造のガスバリア積層体を構成することができる。
[基材フィルム]
第1基材フィルム11及び第2基材フィルム14は、第1ガスバリア層12及び第2ガスバリア層15の支持体である。第1ガスバリア層12及び第2ガスバリア層15を支持体である第1基材フィルム11及び第2基材フィルム14上に設けることにより、ガスバリア積層体10の製造工程における作業性が向上する。例えば、第1ガスバリア層12及び第2ガスバリア層15の成膜性や、粘着剤層13で貼り合せる際の作業性が向上する。第1基材フィルム11と第2基材フィルム14とは、同じ材料から形成されていてもよく、異なる材料から形成されていてもよい。
第1基材フィルム11及び第2基材フィルム14としては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂を含む基材が挙げられる。第1基材フィルム11と第2基材フィルム14は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
第1基材フィルム11と第2基材フィルム14は耐熱性を有する材料からなることが好ましい。具体的には、線膨張係数が15ppm/K以上100ppm/K以下で、かつガラス転移温度(Tg)が100℃以上300℃以下の材料が使用される。第1基材フィルム11と第2基材フィルム14のTgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。
ガスバリア積層体10を用いて有機EL素子を作製する場合に、ガスバリア積層体10が150℃以上の工程に曝されることがある。この場合、ガスバリア積層体10における基材の線膨張係数が100ppm/Kを超えると、上述の熱工程で基板寸法が安定せず、熱膨張及び収縮に伴い、遮断性性能が劣化する。或いは、熱工程に耐えられないという不具合が生じやすい。第1基材フィルム11と第2基材フィルム14の線膨張係数が15ppm/K未満では、可撓性や柔軟性が低下し、ガスバリア積層体10ガラスのように割れてしまう場合がある。
第1基材フィルム11と第2基材フィルム14として用いることができる熱可塑性樹脂のより好ましい具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:70℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン株式会社製、ゼオノア(登録商標)1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報に記載の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学株式会社製、ネオプリム(登録商標):260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報に記載の化合物:300℃以上)等が挙げられる(括弧内はTgを示す)。
また、第1基材フィルム11と第2基材フィルム14は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。第1基材フィルム11と第2基材フィルム14は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。これらの基材の製造方法については、国際公開第2013/002026号の段落「0051」〜「0055」の記載された事項を適宜採用することができる。
第1基材フィルム11と第2基材フィルム14の表面には、密着性向上のための公知の種々の処理、例えばコロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、又は、プラズマ処理等を行っていてもよく、必要に応じて上記処理を組み合わせて行っていてもよい。
第1基材フィルム11と第2基材フィルム14は、単層でもよいし2層以上の積層構造であってもよい。第1基材フィルム11と第2基材フィルム14が2層以上の積層構造である場合、各第1基材フィルム11と第2基材フィルム14は同じ種類であってもよいし異なる種類であってもよい。第1基材フィルム11と第2基材フィルム14の厚さ(2層以上の積層構造である場合はその総厚)は、10〜200μmであることが好ましく、20〜150μmであることがより好ましい。
(ハードコート層)
第1基材フィルム11と第2基材フィルム14は、表面(片面又は両面)にハードコート層を有していてもよい。ハードコート層に含まれる材料の例としては、例えば、熱硬化性樹脂や活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられるが、成形が容易なことから、活性エネルギー線硬化性樹脂が好ましい。このような硬化性樹脂は、単独又は2種以上組み合わせても用いることができる。
活性エネルギー線硬化性樹脂とは、紫外線や電子線のような活性エネルギー線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む材料が好ましく用いられる。この材料を、紫外線や電子線のような活性エネルギー線を照射することによって硬化させて、活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物を含む層、すなわちハードコート層を形成する。活性エネルギー線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する紫外線硬化性樹脂が好ましい。また、予めハードコート層が形成されている市販の第1基材フィルム11と第2基材フィルム14を用いてもよい。
[ガスバリア層]
第1ガスバリア層12及び第2ガスバリア層15は、ガスバリア性を有する層であれば、特に限定されることなく、従来公知の構成を適用することができる。ガスバリア積層体10において要求されるガスバリア性としては、例えば、JIS−K−7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度90±2%RH)が0.01g/(m・24時間)以下、JIS−K−7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が10−3ml/(m・24時間・atm)以下である。ガスバリア積層体10において上記ガスバリア性が実現できるように、第1ガスバリア層12及び第2ガスバリア層15が構成されていればよい。
また、要求されるガスバリア性を有していれば、第1ガスバリア層12と第2ガスバリア層15とは、同じ構成であってもよく、異なる構成であってもよい。さらに、第1ガスバリア層12及び第2ガスバリア層15は、それぞれ単層で形成されていてもよく、複数の層からなる積層体であってもよい。
[ケイ素含有層]
第1ガスバリア層12及び第2ガスバリア層15としては、ケイ素含有化合物を含有する塗布液を、塗布及び乾燥することで得られるケイ素含有層を有することが好ましい。特に、ケイ素含有層として、ポリシラザンを含む塗膜の改質により形成された、ポリシラザン改質層を有することが好ましい。
ケイ素含有化合物を含有する塗布液を、塗布及び乾燥することで得られるケイ素含有層は、特定の組成を有することでガスバリア性を発現する。また、気相成膜法で形成される場合とは異なり、ケイ素含有層は、成膜時にパーティクル等の異物混入がほとんどなくなり、欠陥が非常に少ないガスバリア層を形成することが可能となる。
第1ガスバリア層12及び第2ガスバリア層15を構成するケイ素含有層の1層あたりの膜厚(2層以上の積層構造である場合はその総厚)は、ガスバリア性能の観点から、10〜1000nmであることが好ましく、50〜600nmであることがより好ましく、50〜300nmであることがさらに好ましい。この範囲であれば、ガスバリア性と耐久性とのバランスが良好となる。
ケイ素含有層を形成するためのケイ素含有化合物としては、例えば、ポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、ポリシラザン、ポリシロキサザン、ポリシラン、ポリカルボシラン等を挙げることができる。これらの中でも、ケイ素−窒素結合、ケイ素−水素結合、及び、ケイ素−ケイ素結合からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することが好ましい。
ケイ素含有化合物としてより好ましくは、ケイ素−窒素結合とケイ素−水素結合とを有するポリシラザン、ケイ素−窒素結合を有するポリシロキサザン、ケイ素−水素結合を有するポリシロキサン、ケイ素−水素結合を有するポリシルセスキオキサン、ケイ素−ケイ素結合を有するポリシランを用いることができる。ケイ素−窒素結合、ケイ素−水素結合、及び、ケイ素−ケイ素結合のいずれかを有するケイ素含有化合物を用いることが好ましい。
ポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、及び、ポリシロキサザンの具体例としては、特開2012−116101号公報の段落「0093」〜「0121」に記載の化合物が挙げられる。ポリシロキサンとしては、特に水素化(ハイドロジェン)ポリシロキサンが好ましい。
ポリシランの形態は特に制限されず、非環状ポリシラン(直鎖状ポリシラン、分岐鎖状ポリシラン、網目状ポリシラン等)や、環状ポリシラン等の単独重合体であってもよく、また、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、くし型共重合体等の共重合体であってもよい。
ポリシランが非環状ポリシランである場合は、ポリシランの末端基(末端置換基)は、水素原子であっても、ハロゲン原子(塩素原子等)、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シリル基等であってもよい。
ポリシランの具体例としては、ポリジメチルシラン、ポリ(メチルプロピルシラン)、ポリ(メチルブチルシラン)、ポリ(メチルペンチルシラン)、ポリ(ジブチルシラン)、ポリ(ジヘキシルシラン)等のポリジアルキルシラン、ポリ(ジフェニルシラン)等のポリジアリールシラン、ポリ(メチルフェニルシラン)、ポリ(アルキルアリールシラン)等のホモポリマー、ジメチルシラン−メチルヘキシルシラン共重合体等のジアルキルシランと他のジアルキルシランとの共重合体、フェニルシラン−メチルフェニルシラン共重合体等のアリールシラン−アルキルアリールシラン共重合体、ジメチルシラン−メチルフェニルシラン共重合体、ジメチルシラン−フェニルヘキシルシラン共重合体、ジメチルシラン−メチルナフチルシラン共重合体、メチルプロピルシラン−メチルフェニルシラン共重合体のジアルキルシラン−アルキルアリールシラン共重合体等のコポリマー、等が挙げられる。
ポリカルボシランは、分子内の主鎖に(−Si−C−)結合を有する高分子化合物である。ポリカルボシランとしては、下記式(a)で表される繰り返し単位を含むものが好ましい。
Figure 2017077668
式中、Rw、Rvは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、又は、1価の複素環基を表す。複数のRw、Rvは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Rは、アルキレン基、アリーレン基又は2価の複素環基を表す。
式(a)で表される繰り返し単位を有するポリカルボシランの重量平均分子量は、通常400〜12000である。
Rw、Rvの1価の複素環基の複素環としては、炭素原子の他に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む3〜10員の環状化合物であれば特に制約はない。1価の複素環基の具体例としては、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−フリル基、3−フリル基、3−ピラゾリル基、4−ピラゾリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、1,2,4−トリアジン−3−イル基、1,2,4−トリアジン−5−イル基、2−ピリミジル基、4−ピリミジル基、5−ピリミジル基、3−ピリダジル基、4−ピリダジル基、2−ピラジル基、2−(13,5−トリアジル)基、3−(1,2,4−トリアジル)基、6−(1,2,4−トリアジル)基、2−チアゾリル基、5−チアゾリル基、3−イソチアゾリル基、5−イソチアゾリル基、2−(13,4−チアジアゾリル)基、3−(1,2,4−チアジアゾリル)基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、3−イソオキサゾリル基、5−イソオキサゾリル基、2−(13,4−オキサジアゾリル)基、3−(1,2,4−オキサジアゾリル)基、5−(1,2,3−オキサジアゾリル)基等が挙げられる。これらの基は、任意の位置に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等の置換基を有していてもよい。
Rのアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等の炭素数1〜10のアルキレン基が挙げられる。アリーレン基としては、p−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、2,5−ナフチレン基等の炭素数6〜20のアリーレン基が挙げられる。Rのアルキレン基、アリーレン基は、任意の位置に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
Rの2価の複素環基としては、炭素原子の他に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む3〜10員の複素環化合物から導かれる2価の基であれば特に制約はない。2価の複素環基の具体例としては、2,5−チオフェンジイル基等のチオフェンジイル基、2,5−フランジイル基等のフランジイル基、2,5−セレノフェンジイル基等のセレノフェンジイル基、2,5−ピロールジイル基等のピロールジイル基、2,5−ピリジンジイル基、2,6−ピリジンジイル基等のピリジンジイル基、2,5−チエノ[3,2−b]チオフェンジイル基、2,5−チエノ[2,3−b]チオフェンジイル基等のチエノチオフェンジイル基、2,6−キノリンジイル基等のキノリンジイル基、1,4−イソキノリンジイル基、1,5−イソキノリンジイル基等のイソキノリンジイル基、5,8−キノキサリンジイル基等のキノキサリンジイル基、4,7−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基等のベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基、4,7−ベンゾチアゾールジイル基等のベンゾチアゾールジイル基、2,7−カルバゾールジイル基、3,6−カルバゾールジイル基等のカルバゾールジイル基、3,7−フェノキサジンジイル基等のフェノキサジンジイル基、3,7−フェノチアジンジイル基等のフェノチアジンジイル基、2,7−ジベンゾシロールジイル基等のジベンゾシロールジイル基、2,6−ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンジイル基、2,6−ベンゾ[1,2−b:5,4−b’]ジチオフェンジイル基、2,6−ベンゾ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンジイル基、2,6−ベンゾ[1,2−b:3,4−b’]ジチオフェンジイル基等のベンゾジチオフェンジイル基等が挙げられる。Rの2価の複素環基は、任意の位置に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
これらの中でも、式(a)において、Rw、Rvがそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基であり、Rがアルキレン基又はアリーレン基である繰り返し単位を含むポリカルボシランがより好ましい。さらに、Rw、Rvがそれぞれ独立して、水素原子又はアルキル基であり、Rがアルキレン基である繰り返し単位を含むポリカルボシランが好ましい。
ケイ素含有層の形成材料として、ポリシラザンがより好ましい。
ポリシラザンとは、ケイ素−窒素結合を有するポリマーであり、Si−N、Si−H、N−H等の結合を有するSiO、Si、及び両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体無機ポリマーである。具体的には、ポリシラザンは、好ましくは下記一般式(I)に示す構造を有する。
Figure 2017077668
上記一般式(I)において、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、置換又は非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基又は(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R、R及びRは、それぞれ、同じであっても、異なっていてもよい。また、上記一般式(I)において、nは整数であり、上記一般式(I)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。
上記一般式(I)で表される構造を有する化合物において、好ましい態様の一つは、R、R及びRのすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザンである。
また、ポリシラザンとしては、下記一般式(II)で表される構造を有するものが好ましい。
Figure 2017077668
上記一般式(II)において、R1’、R2’、R3’、R4’、R5’及びR6’は、それぞれ独立して、水素原子、置換又は非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基又は(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R1’、R2’、R3’、R4’、R5’及びR6’は、それぞれ、同じであっても、異なっていてもよい。また、上記一般式(II)において、n’及びpは、整数であり、一般式(II)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。なお、n’及びpは、同じであっても、異なっていてもよい。
上記一般式(II)のポリシラザンのうち、R1’、R3’及びR6’が各々水素原子を表し、R2’、R4’及びR5’が各々メチル基を表す化合物、R1’、R3’及びR6’が各々水素原子を表し、R2’、R4’が各々メチル基を表し、R5’がビニル基を表す化合物、又は、R1’、R3’、R4’及びR6’が各々水素原子を表し、R2’及びR5’が各々メチル基を表す化合物が好ましい。
また、ポリシラザンとしては、下記一般式(III)で表される構造を有するものが好ましい。
Figure 2017077668
上記一般式(III)において、R1”、R2”、R3”、R4”、R5”、R6”、R7”、R8”及びR9”は、それぞれ独立して、水素原子、置換又は非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基又は(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R1”、R2”、R3”、R4”、R5”、R6”、R7”、R8”及びR9”は、それぞれ、同じであっても、異なっていてもよい。
また、上記一般式(III)において、n”、p”及びqは、整数であり、一般式(III)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。なお、n”、p及びqは、同じであっても、異なっていてもよい。
上記一般式(III)のポリシラザンのうち、R1”、R3”及びR6”が各々水素原子を表し、R2”、R4”、R5”及びR8”が各々メチル基を表し、R9”が(トリエトキシシリル)プロピル基を表し、R7”がアルキル基又は水素原子を表す化合物が好ましい。
一方、そのSiと結合する水素原子部分の一部がアルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより下地である基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができる。このため、ケイ素含有層の膜厚(平均)を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。このため、用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンとを選択してよく、混合して使用することもできる。
パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6及び8員環を中心とする環構造とが存在する構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)で、液体又は固体の物質があり、その状態は分子量により異なる。
ポリシラザンは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままケイ素含有層を形成するためのケイ素含有塗布液として使用することができる。ポリシラザン溶液の市販品としては、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製のNN120、NN120−20、NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL120−20、NL150A、NP110、NP140、SP140等が挙げられる。これらポリシラザン溶液は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることもできる。
ケイ素含有層の形成に用いるポリシラザンの別の例として、以下のポリシラザンを挙げることができる。例えば、上記ポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等の、低温でセラミック化するポリシラザンが挙げられる。
ケイ素含有層の形成にポリシラザンを用いる場合、真空紫外線照射前のケイ素含有層中におけるポリシラザンの含有率は、ケイ素含有層の全質量を100質量%としたとき、100質量%とすることができる。また、真空紫外線照射前のケイ素含有層がポリシラザン以外のものを含む場合には、層中におけるポリシラザンの含有率は、10質量%以上99質量%以下であることが好ましく、40質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、特に好ましくは70質量%以上95質量%以下である。
(ケイ素含有塗布液)
ケイ素含有層を形成するための塗布液(ケイ素含有塗布液)を調製する溶剤としては、ケイ素含有化合物を溶解できるものであれば特に制限されない。溶剤としては、ケイ素含有化合物と容易に反応してしまう水及び反応性基(例えば、ヒドロキシル基、又は、アミン基等)を含まず、ケイ素含有化合物に対して不活性の有機溶剤が好ましく、非プロトン性の有機溶剤がより好ましい。具体的には、溶剤としては、非プロトン性溶剤、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターペン等の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類、例えば、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、モノ−及びポリアルキレングリコールジアルキルエーテル(ジグライム類)等を挙げることができる。上記溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度等の目的にあわせて選択され、単独で使用されても又は2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
ケイ素含有塗布液におけるケイ素含有化合物の濃度は、特に制限されない。ケイ素含有塗布液におけるケイ素含有化合物の濃度は、層の厚さや塗布液のポットライフによっても異なるが、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは10〜40質量%である。
ケイ素含有層の改質を行う場合には、ケイ素含有塗布液に改質を促進するための触媒が含有されていることが好ましい。改質を促進するための触媒としては、塩基性触媒が好ましく、特に、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、3−モルホリノプロピルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−13−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン等のアミン触媒、Ptアセチルアセトナート等のPt化合物、プロピオン酸Pd等のPd化合物、Rhアセチルアセトナート等のRh化合物等の金属触媒、N−複素環式化合物が挙げられる。これらのうち、アミン触媒を用いることが好ましい。この際添加する触媒の濃度としては、ケイ素化合物を基準としたとき、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜7質量%の範囲である。触媒添加量をこの範囲とすることで、反応の急激な進行による過剰なシラノール形成、及び膜密度の低下、膜欠陥の増大などを避けることができる。
ケイ素含有塗布液には、必要に応じて下記に挙げる添加剤を用いることができる。例えば、セルロースエーテル類、セルロースエステル類、例えば、エチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセトブチレート等、天然樹脂、例えば、ゴム、ロジン樹脂等、合成樹脂、例えば、重合樹脂等、縮合樹脂、例えば、アミノプラスト、特に尿素樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂もしくは変性ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート又はブロック化ポリイソシアネート、ポリシロキサン等である。
(塗布方法)
ケイ素含有塗布液を塗布する方法としては、従来公知の適切な湿式塗布方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
塗布厚さは、好ましい厚さや目的に応じて適切に設定される。
塗布液を塗布した後は、塗膜を乾燥させる。塗膜を乾燥することによって、塗膜中に含有される有機溶媒を除去する。この際、塗膜に含有される有機溶媒は、すべてを乾燥させてもよいが、一部残存させていてもよい。一部の有機溶媒を残存させる場合であっても、好適なケイ素含有層が得られる。なお、残存する溶媒は後に除去される。
塗膜の乾燥温度は、適用する基材によっても異なるが、50〜200℃であることが好ましい。例えば、ガラス転移温度(Tg)が70℃のポリエチレンテレフタレートフィルムを第1基材フィルム11と第2基材フィルム14として用いる場合には、乾燥温度は、熱による第1基材フィルム11と第2基材フィルム14の変形等を考慮して150℃以下に設定することが好ましい。上記温度は、ホットプレート、オーブン、ファーネスなどを使用することによって設定される。乾燥時間は短時間に設定することが好ましく、例えば、乾燥温度が150℃である場合には30分以内に設定することが好ましい。また、乾燥雰囲気は、大気雰囲気下、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下、真空雰囲気下、酸素濃度をコントロールした減圧雰囲気下等のいずれの条件であってもよい。
ケイ素含有塗布液を塗布して得られた塗膜に対し、真空紫外線の照射前又は真空紫外線の照射中に、水分を除去する処理を行なってもよい。水分を除去する方法としては、低湿度環境に、塗膜を保持して除湿する形態が好ましい。低湿度環境における湿度は温度により変化するため、温度と湿度の関係は露点温度の規定により好ましい形態が示される。好ましい露点温度は4℃以下(温度25℃/湿度25%)で、より好ましい露点温度は−5℃以下(温度25℃/湿度10%)である。塗膜を保持維持する時間は適宜設定することが好ましい。具体的には、露点温度は−5℃以下で、維持される時間は1分以上であることが好ましい。なお、露点温度の下限は特に制限されないが、通常、−50℃以上であり、−40℃以上であることが好ましい。改質処理前、又は、改質処理中に水分を除去することによって、シラノールに転化したケイ素含有層の脱水反応を促進する観点から好ましい形態である。
(真空紫外線照射)
上記のようにして形成されたケイ素含有化合物を含む塗膜は、そのままの状態でケイ素含有層としてガスバリア層に適用することができるが、真空紫外線を照射してケイ素含有層の転化反応(改質)を行うことが好ましい。特に、ポリシラザンを含むケイ素含有層に対して、真空紫外線を照射し、ポリシラザン改質層を形成することが好ましい。
真空紫外線照射は、バッチ処理にも連続処理にも適合可能であり、使用する第1基材フィルム11と第2基材フィルム14の形状によって適宜選定することができる。例えば、バッチ処理の場合には、紫外線発生源を具備した紫外線焼成炉で処理することができる。紫外線焼成炉自体は一般に知られており、例えば、アイグラフィクス株式会社製の紫外線焼成炉を使用することができる。また、対象が長尺フィルム状である場合には、これを搬送させながら紫外線発生源を具備した乾燥ゾーンで連続的に紫外線を照射することができる。紫外線照射に要する時間は、使用する基材やケイ素含有化合物の組成、濃度にもよるが、一般に0.1秒〜10分であり、好ましくは0.5秒〜3分である。
真空紫外線照射による改質は、ケイ素含有化合物(特にポリシラザン化合物)内の原子間結合力より大きい100〜200nmの光エネルギーを用いる。好ましくは100〜180nmの波長の光エネルギーを用いる。この真空紫外線照射により、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみの作用で、直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させる。これにより、比較的低温(約200℃以下)で、酸窒化ケイ素を含む膜の形成を行うことができる。なお、下記のエキシマ照射処理を行う際は、エキシマ照射処理に熱処理を併用することが好ましい。
真空紫外線源は、100〜180nmの波長の光を発生させるものであればよい。好適には、約172nmに最大放射を有するエキシマラジエータ(例えば、Xeエキシマランプ)、約185nmに輝線を有する低圧水銀蒸気ランプ、230nm以下の波長成分を有する中圧及び高圧水銀蒸気ランプ、及び、約222nmに最大放射を有するエキシマランプである。
このうち、Xeエキシマランプは、波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから、発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。また、波長の短い172nmの光のエネルギーは、有機物の結合を解離させる能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間で塗膜の改質を実現できる。
エキシマランプは光の発生効率が高いため、低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域の短い波長でエネルギーを照射するため、照射対象物の表面温度の上昇が抑えられる。このため、熱の影響を受けやすいとされるPETなどのフレシキブルフィルム材料に適している。
真空紫外線照射による反応では酸素が必要となるが、真空紫外線は酸素による吸収があるため、紫外線照射工程の効率が酸素によって低下しやすい。このため、真空紫外線の照射は、可能な限り酸素濃度及び水蒸気濃度が低い状態で行うことが好ましい。即ち、真空紫外線照射の際の酸素濃度は、10〜20000体積ppm(0.001〜2体積%)とすることが好ましく、50〜10000体積ppm(0.005〜1体積%)とすることがより好ましい。また、真空紫外線照射の際の水蒸気濃度は、好ましくは1000〜4000体積ppmの範囲である。
真空紫外線照射に用いる照射雰囲気を満たすガスは、乾燥不活性ガスであることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスであることが好ましい。酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス及び不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整できる。
真空紫外線照射工程において、塗膜が受ける塗膜面での該真空紫外線の照度は1mW/cm〜10W/cmであると好ましく、30mW/cm〜200mW/cmであることがより好ましく、50mW/cm〜160mW/cmであるとさらに好ましい。1mW/cm以上であれば、改質効率が向上する。10W/cm以下であれば、塗膜に生じ得るアブレーションや、第1基材フィルム11と第2基材フィルム14へのダメージを低減することができる。
塗膜の表面への真空紫外線の照射エネルギー量(照射量)は、1〜10J/cmであることが好ましく、3〜7J/cmであることがより好ましい。この範囲であれば、過剰改質によるクラックの発生や、第1基材フィルム11と第2基材フィルム14の熱変形を抑制することができ、また生産性が向上する。
塗膜の表面への照射に用いられる真空紫外線は、CO、CO及びCHの少なくとも一種を含むガスによって形成されるプラズマから発生させてもよい。さらに、CO、CO及びCHの少なくとも一種を含むガス(以下、炭素含有ガスとも称する)は、炭素含有ガスを単独で使用してもよいが、希ガス又はHを主ガスとして、炭素含有ガスを少量添加することが好ましい。プラズマの生成方式としては容量結合プラズマなどが挙げられる。
なお、ケイ素含有層を形成する際、真空紫外線照射を行わない場合には、ケイ素含有層は、ケイ素含有化合物を含有する塗布液を塗布及び乾燥して得られる塗膜を、5〜40℃で、相対湿度0〜60%RHの条件下で1〜1000時間で保管して形成する。
[粘着剤層]
粘着剤層13は、第1基材フィルム11と第2基材フィルム14とを貼り合せるために設けられている。粘着剤層13は規定の温度上昇時の質量変化率を満たし、ガスバリア積層体10に要求される粘着力を得ることができれば特に限定されず、従来公知の材料を用いることができる。
(粘着剤層の概要)
従来の粘着剤層を用いたガスバリア積層体では、有機EL素子等の電子機器を作製する工程において、真空下や高温下での粘着剤層における気泡の発生(発泡)が問題となっている。この粘着剤層における発泡は、粘着剤からのガスの発生が一因とかんがえられている。特に、ガスバリア性フィルムで挟持される構成のガスバリア積層体では、粘着剤から発生するガスが、積層されたガスバリア層によって粘着剤層内に封じ込められる。このため、発生したガスがガスバリア積層体の外部に放出されず、ガスバリア積層体に気泡が残存する。ガスバリア積層体内に気泡が残存すると、粘着剤層におけるガスバリア性フィルムの接着強度が低下し、剥離の原因となる。また、有機EL素子にガスバリア積層体を適用した際には、気泡によりガスバリア積層体の白色化や、光取出し効率の低下が問題となる。
このような問題に対し、粘着剤層の温度上昇時の質量変化率と、粘着剤層での発泡とに関連があることがわかった。すなわち、粘着剤層の温度上昇時の質量変化率を規定することにより、有機EL素子等の電子機器を作製する工程での発泡が抑制されることが見いだされた。具体的には、昇温速度5℃/分で温度領域30℃から140℃まで加熱したときの粘着剤層の質量変化率が、0.50%以下であると、有機EL素子等の電子機器を作製する工程での発泡を、電視機器の特性に影響ない範囲に抑制できることが見いだされた。
粘着剤層の温度上昇において、昇温速度が昇温速度5℃/分よりも速いと、急激な温度変化により不均一な変質が発生してしまう。そして、この不均一な変質は質量変化率の測定において誤差として影響を与えるため、測定精度が低下してしまう。また、昇温速度が昇温速度5℃/分よりも遅いと、粘着剤層において発生した気泡が、粘着剤層中で吸収又は変質等により緩和されるため、測定精度が低下してしまう。
具体的には、粘着剤層の質量変化率は、下記の条件で求めることができる。
(粘着剤層の質量変化率;熱重量測定(TG)分析)
測定器:TG/DTA6200 日立ハイテクサイエンス製
試料:約6mgを掻きとってアルミ製オープン容器の中に入れて測定する。リファレンスとして同じアルミ容器の空容器を使用する。
昇温条件:30℃から150℃まで、5℃/minにて昇温
雰囲気ガス:窒素200mL/minを流しながら測定
(粘着剤)
粘着剤層13に使用する粘着剤としては、感圧粘着剤を用いることが好ましい。感圧粘着剤は、凝集力と弾性を有し、長時間にわたり安定した粘着性を維持できる。また、粘着剤層を形成する際に、熱や有機溶媒等の要件を必要とせず、圧力を加えるだけで第1ガスバリア性フィルム18と第2ガスバリア性フィルム19とを貼り合せることができる。
粘着剤層13を形成するための材料としては、透明性に優れる材料が好ましい。粘着剤層13を形成するための粘着剤としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、及び、シリコン系樹脂等を含む粘着剤を挙げることができる。粘着剤の形態としては、例えば、溶剤型、エマルション型、及び、ホットメルト型等を用いることができる。
また、粘着剤に含まれる上記樹脂類の他に、粘着剤層の物性向上の観点から、各種添加剤を用いることができる。例えば、ロジン等の天然樹脂、変性ロジン、ロジンおよび変性ロジンの誘導体、ポリテルペン系樹脂、テルペン変性体、脂肪族系炭化水素樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、芳香族系石油樹脂、フェノール系樹脂、アルキル−フェノール−アセチレン系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、ビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体をはじめとする粘着付与剤、老化防止剤、安定剤、及び軟化剤等を必要に応じて用いることができる。これらは必要に応じて2種以上用いることもできる。また、耐光性を上げるために、粘着剤にベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系等の有機系紫外線吸収剤を添加することもできる。
[帯電防止層]
ガスバリア積層体10が帯電防止層16を有することにより、帯電防止性能を付与することができる。このため、ロールtoロール方式で、ガスバリア積層体10をロール状に巻き取る際、及び、ロールから巻き出して搬送する際に、ガスバリア積層体10の帯電を抑制することができる。
帯電防止層16を有する基材フィルムを用いることにより、透過率、抵抗、信頼性、コストに優れたガスバリア積層体10を構成することができる。さらに、このガスバリア積層体10を用いることにより、効率、電圧、信頼性、コストに優れた電子デバイスを構成することができる。
また、第2基材フィルム14と帯電防止層16との間に、上述の他の構成が設けられていてもよい。この場合においても、帯電防止層16は、ガスバリア積層体10の最外層に設けられていることが好ましい。
ガスバリア積層体10においては、第2基材フィルム14の第2主面側に帯電防止層16を有する。帯電防止層16は、帯電防止剤と、帯電防止剤を保持するためのバインダ樹脂から構成される。
帯電防止層16は、帯電防止剤として有機帯電防止剤を含有することが好ましい。帯電防止層16が含有する有機帯電防止剤としては、共役系ポリマー、及び、イオン性ポリマーから選ばれる一種以上を含むことが好ましい。また、帯電防止層16は、その他の導電性ポリマーや帯電防止剤を含んで構成されていてもよい。
帯電防止層16においては、積層時に脱着しやすい金属酸化物粒子を帯電防止剤として含有しないことが好ましい。このため、帯電防止層16の全質量に対する金属酸化物粒子の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下がより好ましく、金属酸化物粒子を含有しない構成が特に好ましい。帯電防止層16に含有されないことが好ましい金属酸化物粒子としては、例えば、ZnO、TiO、SnO、Al、In、MgO、BaO、MoO、V等、又は、これらの複合酸化物を挙げることができる。ただし、SiOは帯電防止層16に含有されないことが好ましい金属酸化物粒子の規定からは除外する。
(有機帯電防止剤)
有機帯電防止剤とは、基本的には帯電防止能を有する有機材料から構成されている。有機帯電防止剤は、帯電防止層16を形成する際に、帯電防止層16の裏面側のシート抵抗値を1×1011Ω/sq.以下、好ましくは1×1010Ω/sq.以下、さらに好ましくは1×10Ω/sq.以下とすることができる材料である。
有機帯電防止剤としては、従来公知の界面活性剤型帯電防止剤、シリコーン系帯電防止剤、有機ホウ酸系帯電防止剤、高分子系帯電防止剤、帯電防止ポリマー材料等を挙げることができる。特に、有機帯電防止剤として、イオン導電性物質等を用いることが、帯電防止層16の帯電防止の観点から好ましい。イオン導電性物質は、電気伝導性を示すイオンを含有する物質である。イオン導電性物質としては、例えば、共役系ポリマーやイオン性ポリマーを挙げることができる。
(共役系ポリマー)
共役系ポリマーとしては、下記(1)〜(8)を、接続基を介して側鎖に持つポリマーのπ電子導電性ポリマー複合体等を挙げることができる。
(1)脂肪族共役系:ポリアセチレンのような炭素−炭素の共役系で交互に長く連なっているポリマーで、例えば、ポリアセチレン、ポリ(1,6−ヘプタジエン)等
(2)芳香族共役系:ポリ(パラフェニレン)のような芳香族炭化水素が長く結合する共役が発達したポリマーで、例えば、ポリパラフェニレン、ポリナフタレン、ポリアントラセン等
(3)複素環式共役系:ポリピロール、ポリチオフェンのような複素環式化合物が結合して共役系が発達したポリマーで、例えば、ポリピロールとその誘導体、ポリフランとその誘導体、ポリチオフェンとその誘導体、ポリイソチオナフテンとその誘導体、ポリセレノフェンとその誘導体等
(4)含ヘテロ原子共役系:ポリアニリンのような脂肪族又は芳香族の共役系をヘテロ原子で結合したポリマーで、ポリアニリンとその誘導体等、ポリ(パラフェニレンスルフィド)とその誘導体、ポリ(パラフェニレンオキシド)とその誘導体、ポリ(パラフェニレンセレニド)とその誘導体、また脂肪族系ではポリ(ビニレンスルフィド)、ポリ(ビニレンオキシド)、ポリ(ビニレンセレニド)等
(5)混合型共役系:ポリ(フェニレンビニレン)のような上記共役系の構成単位が交互に結合した構造を持つ共役系ポリマーで、例えば、ポリ(パラフェニレンビニレン)とその誘導体、ポリ(ピロールビニレン)とその誘導体、ポリ(チオフェンビニレン)とその誘導体、ポリ(フランビニレン)とその誘導体、ポリ(2,2′−チエニルピロール)とその誘導体等
(6)複鎖型共役系:分子中に複数の共役鎖を持つ共役系で、芳香族共役系に近い構造を有しているポリマーで、例えば、ポリペリナフタレン等、
(7)金属フタロシアニン系:金属フタロシアニン類又はこれらの分子間をヘテロ原子や共役系で結合したポリマーで、例えば、金属フタロシアニン等
(8)導電性複合体:上記共役系ポリマー鎖を飽和ポリマーにグラフト共重合したポリマー及び飽和ポリマー中で上記共役系ポリマーを重合することで得られる複合体で、例えば、3)のポリチオフェン(誘導体を含む)、ポリピロール(誘導体を含む)、4)のポリアニリン(誘導体を含む)等を、また、5)のポリ(パラフェニレンビニレン)(その誘導体を含む)、ポリ(チオフェンビニレン)(その誘導体を含む)等
(イオン性ポリマー)
イオン性ポリマーとしては、下記(1)〜(3)等を挙げることができる。
(1)特公昭49−23828号、特公昭49−23827号、特公昭47−28937号等の各公報に見られるようなアニオン性高分子化合物
(2)特公昭55−734号、特開昭50−54672号、特公昭59−14735号、特公昭57−18175号、特公昭57−18176号、特公昭57−56059号等の各公報などに見られるような、主鎖中に解離基を持つアイオネン型ポリマー
(3)特公昭53−13223号、特公昭57−15376号、特公昭53−45231号、特公昭55−145783号、特公昭55−65950号、特公昭55−67746号、特公昭57−11342号、特公昭57−19735号、特公昭58−56858号、特開昭61−27853号、特公昭62−9346号等の各公報に見られるような、側鎖中にカチオン性解離基を持つカチオン性ペンダント型ポリマー
(導電性ポリマー)
帯電防止層16を構成する導電性ポリマーとしては、特開平9−203810号公報に記載されている、アイオネン導電性ポリマー、又は、分子間架橋を有する第4級アンモニウムカチオン導電性ポリマー等を挙げることができる。
(その他の帯電防止剤)
帯電防止層16を構成するその他の帯電防止剤としては、例えば、特開2006−265271号公報、特開2007−70456号公報、特開2009−62406号公報等に記載されている帯電防止ハードコート剤を用いることができる。また、市販品としても入手可能な、例えば、アイカ工業社の帯電防止剤等も適宜選択して用いることができる。
(バインダ樹脂)
帯電防止層16において帯電防止剤を保持するためのバインダ樹脂としては、例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、又はセルロースナイトレート等のセルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、又はコポリブチレン/テレ/イソフタレート等のポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルベンザール等のポリビニルアルコール誘導体、ノルボルネン化合物を含有するノルボルネン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂、アクリル樹脂と他の樹脂との共重合体を用いることができる。特に、セルロース誘導体、及び、アクリル樹脂が好ましく、さらにアクリル樹脂が最も好ましく用いられる。
帯電防止層16に用いられるバインダ樹脂としては、重量平均分子量が40万以上、ガラス転移温度が80〜110℃の範囲内にある熱可塑性樹脂が好ましい。ガラス転移温度は、JIS K 7121に記載の方法にて求めることができる。ここで使用するバインダ樹脂は、帯電防止層16を構成する全樹脂質量の60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、必要に応じて活性線硬化性樹脂、又は熱硬化樹脂を適用することもできる。
[ガスバリア積層体の製造方法]
次に、上述のガスバリア積層体10の製造方法を説明する。
まず、第1基材フィルム11と、第2基材フィルム14とを準備する。そして、第1基材フィルム11の第1主面に第1ガスバリア層12を形成し、第1ガスバリア性フィルム18を作製する。また、第2基材フィルム14の第1主面に第2ガスバリア層15を形成し、第2ガスバリア性フィルム19を作製する。第1ガスバリア層12及び第2ガスバリア層15は、上述の方法でケイ素含有層を形成し、エキシマ照射処理によりポリシラザン改質層を形成することが好ましい。また、第1ガスバリア性フィルム18及び第2ガスバリア性フィルム19として、市販のガスバリアフィルムを用いることもできる。
次に、粘着剤層13を第1ガスバリア性フィルム18と第2ガスバリア性フィルム19とで挟持する。このとき、第1ガスバリア性フィルム18と第2ガスバリア性フィルム19とは、第1基材フィルム11の第2主面側と、第2ガスバリア層15とを対向させて配置する。また、粘着剤層13を形成するための粘着剤は、第1基材フィルム11の第2主面側、及び、第2ガスバリア層15上のいずれか一方又は両方に塗布する。
次に、積層した第1ガスバリア性フィルム18、粘着剤層13、及び、第2ガスバリア性フィルム19を、1000Pa以下の真空雰囲気下で加熱して粘着剤を硬化する、或いは、粘着剤を硬化するためのエネルギー線を照射する。これにより、粘着剤層13で第1ガスバリア性フィルム18と第2ガスバリア性フィルム19とを貼り合せ、ガスバリア積層体10を作製する。
〈2.有機エレクトロルミネッセンス素子の実施の形態〉
次に、上述のガスバリア積層体を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)について説明する。本実施形態の有機EL素子は、ガスバリア性を有する基材として上述のガスバリア積層体を用いる。そして、このガスバリア積層体上に、透明電極と、有機発光材料を含む発光層を1層以上有する発光ユニットと、対向電極とが設けられる。このため、以下の有機EL素子の説明では、上述のガスバリア積層体と同じ構成については、詳細な説明を省略する。
[有機EL素子の構成]
本実施形態の構成を図2に示す。図2に示す有機EL素子20は、ガスバリア積層体10の帯電防止層16が形成されていない面(第1主面)上に、透明電極21と、対向電極25とを備え、この電極間に発光ユニット26が設けられている。ガスバリア積層体10は、上述の図1と同様の構成である。
有機EL素子20の層構成は、特に限定されることはなく、一般的な層構造であってよい。例えば、透明電極21がアノード(陽極)として機能し、対向電極25がカソード(陰極)として機能する場合、発光ユニット26を透明電極21側から順に正孔注入層26a/正孔輸送層26b/発光層26c/電子輸送層26d/電子注入層26eを積層した構成とすることができる。有機EL素子20は、所望の発光色に応じて、当該発光ユニットを複数備えていてもよい。
有機EL素子20には、公知の有機EL材料を適宜選択して使用することができる。
[封止部材]
有機EL素子20は、有機材料等を用いて構成された発光ユニット26の劣化を防止することを目的として、図示しない封止部材で封止されていてもよい。封止部材は、有機EL素子20の上面を覆う板状(フィルム状)の部材であって、接着部によってガスバリア積層体10側に固定される。また、封止部材は、封止膜であってもよい。このような封止部材は、有機EL素子20の電極端子部分を露出させ、少なくとも発光ユニット26を覆う状態で設けられている。また、封止部材に電極を設け、有機EL素子20の電極端子部分と、封止部材の電極とを導通させる構成でもよい。
また、有機EL素子20を機械的に保護するために、保護膜又は保護板等の保護部材(図示省略)を設けてもよい。保護部材は、有機EL素子20及び封止部材を、ガスバリア積層体10とで挟む位置に配置される。特に封止部材が封止膜である場合には、有機EL素子20に対する機械的な保護が十分ではないため、このような保護部材を設けることが好ましい。
[光取り出し構造]
有機EL素子20は図示しない光取り出し層を有していてもよい。光取り出し層は、従来公知のナノ凹凸構造や、屈折率の異なる素材を混合した構成(光学散乱層)であってもよい。また、光取り出し層を有する有機EL素子は、光取り出し層の表面の凹凸を平坦化するために、光取り出し層上に平滑化層が設けられていてもよい。
光取り出し層が屈折率の異なる素材を混合した構成(光学散乱層)の場合は、後述するように、光取り出し層が、層媒体であるバインダと、層媒体に含有される光散乱粒子とから構成されることが好ましい。この構成では、層媒体と、層媒体よりも高い屈折率を有する光散乱粒子との屈折率差を利用して、混合物による光散乱を発生させることができる。
また、ナノ凹凸構造は、特開2006−269163号公報に記載の構造等を好ましく適応できる。
[有機EL素子の製造方法]
次に、図2に示す有機EL素子20の製造方法の一例を説明する。
まず、上述の製造方法によりガスバリア積層体10を作製する。そして、ガスバリア積層体10の第1主面上に、透明電極21を、蒸着法やスパッタ法等の適宜の成膜法によって形成する。そして、透明電極21上に、正孔注入層26a、正孔輸送層26b、発光層26c、電子輸送層26d、電子注入層26eの順に成膜し、発光ユニット26を形成する。これらの各層の成膜方法としては、従来公知の各条件を適宜選択することができる。
発光ユニット26を形成した後、この上部に対向電極25を、蒸着法やスパッタ法等の適宜の成膜法によって形成する。この際、対向電極25は、発光ユニット26によって透明電極21に対して絶縁状態を保ちつつ、発光ユニット26の上方からガスバリア積層体10の周縁に端子部分を引き出した形状にパターン形成する。これにより、有機EL素子20を製造する。また、その後には、有機EL素子20における取り出し電極及び対向電極25の端子部分を露出させた状態で、少なくとも発光ユニット26を覆う封止部材を設ける。
以上により、ガスバリア積層体10上に有機EL素子20を作製することができる。このような有機EL素子20の作製においては、1回の真空引きで一貫して透明電極21から対向電極25まで作製するのが好ましいが、途中で真空雰囲気からガスバリア積層体10を取り出して異なる成膜法を施しても構わない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
〈試料101の有機EL素子の作製〉
[ガスバリア性フィルムの作製;基材]
両面に易接着処理した厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラー(登録商標)(U48))の第2主面側に、厚さ0.5μmのアンチブロック機能を有するクリアハードコート層(CHC)を形成した。CHCは、UV硬化型樹脂(アイカ工業株式会社製、品番:Z731L)を、乾燥膜厚が0.5μmになるように塗布した後、80℃で乾燥し、さらに、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件でエネルギー線を照射して硬化を行った。
次に、上記PETフィルムの第1主面側に厚さ2μmのクリアハードコート層(CHC)を形成した。CHCは、JSR株式会社製、UV硬化型樹脂オプスター(登録商標)Z7527を、乾燥膜厚が2μmになるように塗布した後、80℃で乾燥し、さらに、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件でエネルギー線を照射して硬化を行った。
以上の方法により、ハードコート層付基材フィルムを得た。以降、各試料の説明においては、便宜上、このハードコート層付基材フィルムを単に基材フィルムと称する。
[ガスバリア性フィルムの作製;ガスバリア層の形成]
次に、基材フィルム上に、下記の方法に従って、ガスバリア層を形成した。
ケイ素含有化合物として、パーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NN120−20)と、アミン触媒(N,N,N',N'−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン(TMDAH))を含むパーヒドロポリシラザン20質量%のジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NAX120−20)とを、4:1(質量比)の割合で混合し、さらに乾燥膜厚調整のためジブチルエーテルで適宜希釈し、塗布液を調製した。
次に、上記基材フィルム上に、スピンコート法により塗布液を乾燥膜厚が150nmになるよう塗布し、80℃で2分間乾燥した。次に、乾燥した塗膜に対して、波長172nmのXeエキシマランプ(エキシマランプ光強度:130mW/cm)を有する真空紫外線照射装置(試料の塗布層表面とエキシマランプ管面との最短距離が3mm)を用い、真空紫外線の照射エネルギー量(照射量)2.5J/cmで真空紫外線照射処理を行った。この際、照射雰囲気は窒素で置換し、酸素濃度は0.1体積%とした。また、試料を設置するステージ温度を80℃とした。
真空紫外線照射工程で試料塗布層表面に照射されるエネルギーは、浜松ホトニクス社製の紫外線積算光量計:C8026/H8025 UV POWER METERを用い、172nmのセンサヘッドを用いて測定した。測定に際しては、Xeエキシマランプ管面とセンサヘッドの測定面との最短距離が、3mmとなるようにセンサヘッドを真空紫外線照射装置の試料ステージ中央に設置し、かつ、装置チャンバー内の雰囲気が、真空紫外線照射工程と同一の酸素濃度となるように窒素と酸素とを供給し、試料ステージを0.5m/minの速度で移動させて測定を行った。測定に先立ち、Xeエキシマランプの照度を安定させるため、Xeエキシマランプ点灯後に10分間のエージング時間を設け、その後試料ステージを移動させて測定を開始した。この測定で得られた照射エネルギーを元に、試料ステージの移動速度を調整し、上述の照射エネルギーとなるように調整した。尚、真空紫外線照射に際しては、10分間のエージング後に行った。
以上の工程により、基材フィルム上にポリシラザン改質層からなるガスバリア層が形成されたガスバリア性フィルムを作製した。以下のガスバリア積層体の試料は、この同じ構成のガスバリア性フィルムを複数用いて作製した。
[ガスバリア積層体の作製;貼り合せ]
上記で作製したガスバリア性フィルム(第1ガスバリア性フィルム)の基材フィルム側に、綜研化学社製のSKダイン2147を厚さ25μmで塗布し、接着剤層を形成した。そして、別のガスバリア性フィルム(第2ガスバリア性フィルム)のガスバリア層形成面を、上記接着剤層に貼り合せた。この後、第1ガスバリア性フィルム、接着剤層、及び、第2ガスバリア性フィルムからなる積層体を、搬送速度3m/min、積層体の張力110N/m、ニップ圧25kPaの条件で貼り合せて、試料101のガスバリア積層体を作製した。
[有機EL素子の作製;第1電極の作製]
次に、ガスバリア積層体上に、厚さ150nmのITO(インジウムチンオキシド)をスパッタ法により成膜し、フォトリソグラフィー法によりパターニングを行い、第1電極を形成した。
[有機EL素子の作製;発光ユニットの作製]
次に、第1電極が形成されたガスバリア積層体を、中央部に幅30mm×30mmの開口部があるマスクと重ねて市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。また真空蒸着装置内の加熱ボートの各々に、発光ユニットを構成する各材料を、それぞれの層の形成に最適な量で充填した。なお、加熱ボートはタングステン製抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
次に、真空蒸着装置の蒸着室内を真空度4×10−4Paまで減圧し、各材料が入った加熱ボートを順次通電して加熱することにより、以下のように各層を形成した。
まず、正孔輸送注入材料として下記構造式に示すα−NPDが入った加熱ボートに通電して加熱し、α−NPDよりなる正孔注入層と正孔輸送層とを兼ねた正孔輸送注入層を、第1電極上に形成した。この際、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒、層厚140nmとした。
Figure 2017077668
次に、下記構造式に示すホスト材料H4の入った加熱ボートと、下記構造式に示すリン光発光性化合物Ir−4の入った加熱ボートとを、それぞれ独立に通電し、ホスト材料H4とリン光発光性化合物Ir−4とよりなる発光層を、正孔輸送注入層上に形成した。この際、蒸着速度がホスト材料H4:リン光発光性化合物Ir−4=100:6となるように、加熱ボートの通電を調節した。また層厚30nmとした。
次に、正孔阻止材料として下記構造式に示すBAlqが入った加熱ボートに通電して加熱し、BAlqよりなる正孔阻止層を、発光層上に形成した。この際、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒、層厚10nmとした。
Figure 2017077668
その後、下記化合物10の入った加熱ボートと、フッ化カリウムの入った加熱ボートとを、それぞれ独立に通電し、化合物10とフッ化カリウムとよりなる電子輸送層を、正孔阻止層上に形成した。この際、蒸着速度が化合物10:フッ化カリウム=75:25になるように、加熱ボートの通電を調節した。また層厚30nmとした。
次に、電子注入材料としてフッ化カリウムの入った加熱ボートに通電して加熱し、フッ化カリウムよりなる電子注入層を、電子輸送層上に形成した。この際、蒸着速度0.01〜0.02nm/秒、層厚1nmとした。
Figure 2017077668
[有機EL素子の作製;第2電極の作製〜封止]
発光ユニットまで形成したガスバリア積層体を、アルミニウム(Al)を入れたタングステン製の抵抗加熱ボートが取り付けられた第2真空槽へ、真空状態を保持したまま移送した。そして、第1電極と直行するように配置された幅20mm×20mmの開口部があるマスクと重ねて固定した。次に、処理室内において、成膜速度0.3〜0.5nm/秒で、膜厚100nmのAlからなる反射性の第2電極をカソードとして成膜した。
次に、ガスバリア性フィルムと同様の構成の封止部材の片面に、封止樹脂層として熱硬化型の液状接着剤(エポキシ系樹脂)を厚さ25μmで形成した。そして、この封止樹脂層を設けた封止部材を、第2電極までを形成した試料に重ね合わせた。このとき、第1電極及び第2電極の取出し部の端部が外に出るように、封止部材の封止樹脂層形成面を、有機EL素子のガスバリア性フィルム側に連続的に重ね合わせた。
次に、封止部材を貼り合せた試料を減圧装置内に配置し、90℃で0.1MPaの減圧条件下で押圧をかけて5分間保持した。続いて、試料を大気圧環境に戻し、さらに90℃で30分間加熱して接着剤を硬化させた。
上記封止工程は、大気圧下、含水率1ppm以下の窒素雰囲気下で、JIS B 9920に準拠し、測定した清浄度がクラス100で、露点温度が−80℃以下、酸素濃度0.8ppm以下の大気圧で行った。
以上の方法により、試料101の有機EL素子を作製した。なお、有機EL素子の作製工程において、第1電極及び第2電極からの取出し部等の形成に関する記載は省略した。
〈試料102の有機EL素子の作製〉
粘着剤層を、DIC社製のZB7011W2で形成した以外は、上述の試料101と同様の方法で試料102のガスバリア積層体、及び、有機EL素子を作製した。
〈試料103のガスバリア積層体の作製〉
粘着剤層を、日東電工社製のHJ−9150Wで形成した以外は、上述の試料101と同様の方法で試料103のガスバリア積層体、及び、有機EL素子を作製した。
〈試料104のガスバリア積層体の作製〉
粘着剤層を、パナック社製のPDS1で形成した以外は、上述の試料101と同様の方法で試料104のガスバリア積層体、及び、有機EL素子を作製した。
〈試料105のガスバリア積層体の作製〉
粘着剤層を、寺岡製作所社製のNo.7029で形成した以外は、上述の試料101と同様の方法で試料105のガスバリア積層体、及び、有機EL素子を作製した。
〈試料106のガスバリア積層体の作製〉
ガスバリア性フィルム(第1ガスバリア性フィルム)のガスバリア層上に、さらに、接着剤層を介してガスバリア性フィルム(第3ガスバリア性フィルム)を積層した以外は、上述の試料101と同様の方法で試料106のガスバリア積層体、及び、有機EL素子を作製した。
具体的には、ガスバリア性フィルム(第1ガスバリア性フィルム)の基材フィルム側とガスバリア層上とに、綜研化学社製のSKダイン2147を厚さ25μmで塗布し、接着剤層を2層形成した。そして、ガスバリア性フィルム(第1ガスバリア性フィルム)の基材フィルム側の接着剤層に、別のガスバリア性フィルム(第2ガスバリア性フィルム)のガスバリア層形成面を貼り合せた。さらに、ガスバリア性フィルム(第1ガスバリア性フィルム)のガスバリア層側の接着剤層に、別のガスバリア性フィルム(第3ガスバリア性フィルム)の基材フィルム側の面を貼り合せた。この後、第3ガスバリア性フィルム、接着剤層、第1ガスバリア性フィルム、接着剤層、及び、第2ガスバリア性フィルムからなる積層体を、搬送速度3m/min、積層体の張力110N/m、ニップ圧25kPaの条件で貼り合せて、試料106のガスバリア積層体を作製した。
〈試料107のガスバリア積層体の作製〉
ガスバリア性フィルム(第3ガスバリア性フィルム)のガスバリア層上に、さらに、接着剤層を介してガスバリア性フィルム(第4ガスバリア性フィルム)を積層した以外は、上述の試料106と同様の方法で試料107のガスバリア積層体、及び、有機EL素子を作製した。ガスバリア性フィルムの積層方法は、上述の試料106のガスバリア積層体の作製方法に準じた。
〈試料108のガスバリア積層体の作製〉
粘着剤層を、日東電工社製のNo.5911で形成した以外は、上述の試料101と同様の方法で試料108のガスバリア積層体、及び、有機EL素子を作製した。
〈試料109のガスバリア積層体の作製〉
粘着剤層を、日東電工社製のCS9862UAで形成した以外は、上述の試料101と同様の方法で試料109のガスバリア積層体、及び、有機EL素子を作製した。
〈評価方法〉
作製した試料101〜109のガスバリア積層体、及び、有機EL素子に対し、下記の評価を行なった。
[質量変化率]
試料101〜109のガスバリア積層体の作製に使用した粘着剤に対し、下記の測定条件で、加熱時の質量変化率を測定した。測定結果を図3〜9に示す。また、測定結果から求められた質量変化率を表1に示す。
(粘着剤層の質量変化率;熱重量測定(TG)分析)
測定器:TG/DTA6200 日立ハイテクサイエンス製
試料:約6mgを掻きとってアルミ製オープン容器の中に入れて測定する。リファレンスとして同じアルミ容器の空容器を使用する。
昇温条件:30℃から150℃まで、5℃/minにて昇温
雰囲気ガス:窒素200mL/minを流しながら測定
[保存性:ガスバリア積層体のCa法評価]
下記のようにして作製したCa法評価試料(透過濃度により評価するタイプ)を85℃85%RH環境に保存して一定時間ごとに、Caの腐食率を観察した。1時間、5時間、10時間、20時間、それ以降は20時間ごとに観察・透過濃度測定(任意4点の平均)し、測定した透過濃度が透過濃度初期値の50%未満となった時点の観察時間を有機EL素子の保存性の指標とした。
5:400時間以上
4:300時間以上400時間未満
3:200時間以上300時間未満
2:100時間以上200時間未満
1:100時間未満
(Ca法評価試料)
各試料101〜109において作製したガスバリア積層体に対し、ガスバリア積層体の一方の面に露出するガスバリア層の表面をUV洗浄した後、ガスバリア層面に封止樹脂層として熱硬化型のシート状接着剤(エポキシ系樹脂)を厚さ20μmで貼合した。これを50mm×50mmのサイズに打ち抜いた後、グローブボックス内に入れて、24時間乾燥処理を行った。
次に、50mm×50mmサイズの無アルカリガラス板(厚さ0.7mm)の片面をUV洗浄した。そして、株式会社エイエルエステクノロジー製の真空蒸着装置を用い、ガラス板の中央に、マスクを介して20mm×20mmのサイズでCaを蒸着した。Caの厚さは80nmとした。さらに、Ca蒸着済のガラス板をグローブボックス内に移し、ガスバリア性フィルムの封止樹脂層面と、ガラス板のCa蒸着面とを接するように配置し、真空ラミネートにより接着した。この際、110℃の加熱を行った。さらに、接着した試料を110℃に設定したホットプレート上にガラス板を下にして置き、30分間硬化させて、Ca法評価用セルを作製した。
[気泡評価]
各試料101〜109の有機EL素子の発光面を観察し、100cmあたりの0.5mm以上の気泡を数え、下記の基準により粘着剤層の気泡の発生を評価した。
5:2個未満
4:2個以上10個未満
3:11個以上20個未満
2:21個以上50個未満
1:50個以上
[折り曲げ保存性試験]
各試料101〜109の有機EL素子を、曲率が6mmφのプラスチック製ローラーに、有機EL素子形成面が外側になるように巻き付けた状態で、85℃、85%RHの環境下で、500時間保存した。その後、ローラーからはずした各有機EL素子に、1mA/cmの電流を印加して発光させた。次に、100倍の光学顕微鏡(株式会社モリテックス製 MS−804、レンズMP−ZE25−200)で、有機EL素子の発光部の一部分を拡大して撮影した。次に、撮影画像を2mm四方に切り抜き、それぞれの画像について、ダークスポット発生の有無を観察した。観察結果より、発光面積に対するダークスポットの発生面積比率を求め、下記の基準に従って、ダークスポット耐性を評価した。
5:ダークスポットの発生は全く認められない
4:ダークスポットの発生面積が、0.1%以上、1.0%未満である
3:ダークスポットの発生面積が、1.0%以上、3.0%未満である
2:ダークスポットの発生面積が、3.0%以上、6.0%未満である
1:ダークスポットの発生面積が、6.0%以上である
上記試料101〜109のガスバリア積層体の粘着剤層の構成、質量変化率、並びに、有機EL素子における保存性(Ca法)、気泡、及び、折り曲げ保存性の評価結果を表1に示す。
Figure 2017077668
表1に示すように、最も質量変化率が小さい粘着剤を用いた試料101、試料106、及び、試料107の有機EL素子は、保存性(Ca法)、気泡の発生数、及び、折り曲げ保存性において、他の試料に比べて良好な結果が得られた。このように、ガスバリア積層体の粘着剤の質量変化率が小さい程、気泡の発生が少なくなる傾向が得られた。そして、ガスバリア積層体において気泡の発生が少ない程、有機EL素子の保存性が向上する傾向が得られた。特に、粘着剤の質量変化率が0.50%未満の試料101〜107に比べ、粘着剤の質量変化率が0.50%を超える試料108や試料109は、気泡の発生数が大きいため、有機EL素子の信頼性が大きく低下している。
また、ガスバリア性フィルムの積層数を多くした試料106、及び、試料107は、試料101よりも保存性が向上している。これは、ガスバリア性フィルムの積層数が多い程ガスバリア性が向上し、有機EL素子の損傷を抑制することができたためと考えられる。但し、積層数が多くなりすぎると、折り曲げの際の応力によりガスバリア積層体に損傷が発生する可能性があるため、ガスバリア性フィルムを5層以上積層すると、保存性(Ca法)の向上に対して、折り曲げ保存性の向上が抑制される可能性がある。
なお、本発明は上述の実施形態例において説明した構成に限定されるものではなく、その他本発明構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。
10 ガスバリア積層体、11 第1基材フィルム、12 第1ガスバリア層、13 粘着剤層、14 第2基材フィルム、15 第2ガスバリア層、16 帯電防止層、18 第1ガスバリア性フィルム、19 第2ガスバリア性フィルム、20 有機EL素子、21 透明電極、25 対向電極、26 発光ユニット、26a 正孔注入層、26b 正孔輸送層、26c 発光層、26d 電子輸送層、26e 電子注入層

Claims (7)

  1. エポキシ系樹脂、及び、アクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む粘着剤層と、
    前記粘着剤層を介して積層された第1ガスバリア層と第2ガスバリア層と、を備え、
    昇温速度5℃/分で温度領域30℃から140℃まで加熱したときの前記粘着剤層の質量変化率が、0.50%以下である
    ガスバリア積層体。
  2. 前記第1ガスバリア層及び前記第2ガスバリア層の少なくともいずれか1層が、ポリシラザン改質層からなる請求項1に記載のガスバリア積層体。
  3. 前記第1ガスバリア層が、基材フィルム上に形成されている請求項1に記載のガスバリア積層体。
  4. 前記基材フィルムの一方の面に設けられた前記第1ガスバリア層と、前記基材フィルムの他方の面に形成された前記粘着剤層とを備える請求項3に記載のガスバリア積層体。
  5. 前記粘着剤層における前記基材フィルムと逆側の面に前記第2ガスバリア層を有する請求項4に記載のガスバリア積層体。
  6. 全光線透過率が70%以上である、請求項1に記載のガスバリア積層体。
  7. ガスバリア積層体上に形成された有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    前記ガスバリア積層体が、
    エポキシ系樹脂、及び、アクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む粘着剤層と、
    前記粘着剤層を介して積層された第1ガスバリア層と第2ガスバリア層と、を備え、
    昇温速度5℃/分で温度領域30℃から140℃まで加熱したときの前記粘着剤層の質量変化率が、0.50%以下である
    有機エレクトロルミネッセンス素子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2018221116A1 (ja) * 2017-05-30 2018-12-06 富士フイルム株式会社 有機エレクトロルミネッセンス発光装置
CN113439241A (zh) * 2019-02-19 2021-09-24 株式会社理光 光电转换元件、有机光电导体、图像形成方法、图像形成设备和有机el元件
JP7413500B2 (ja) 2019-04-03 2024-01-15 リンテック株式会社 表示体

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