JPWO2016136729A1 - 光電変換素子および太陽電池 - Google Patents

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Abstract

透明基板(11)上に、透明電極層(12)、正孔輸送層(13)、少なくとも1種のペロブスカイト化合物を光吸収剤として含む感光層(14)、電子輸送層(15)および対極(16)をこの順に有し、正孔輸送層(13)および電子輸送層(15)が、いずれも、無機半導体で形成された無機半導体層であり、かつ感光層(14)に隣接している光電変換素子(10)、ならびに、この光電変換素子(10)を用いた太陽電池。

Description

本発明は、光電変換素子および太陽電池に関する。
光電変換素子は、各種の光センサー、複写機、太陽電池等に用いられている。太陽電池は、非枯渇性の太陽エネルギーを利用するものとして、その本格的な実用化が期待されている。そのなかでも、近年、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物(以下、ペロブスカイト化合物ということがある)として金属ハロゲン化物を用いた太陽電池が、比較的高い光電変換効率を達成できるとの研究成果が報告され、注目を集めている。
このような太陽電池として、例えば、透明基板上に、透明電極層、電子輸送層、感光層、正孔輸送層および対極をこの順で有するものが提案されている。具体的には、特許文献1、非特許文献1および非特許文献2には、電子輸送層および正孔輸送層がともに無機材料で形成された太陽電池が記載されている。また、特許文献2および特許文献3には、電子輸送層が無機材料で形成され、正孔輸送層が有機材料で形成された太陽電池が記載されている。
また、感光層に対して電子輸送層と正孔輸送層とを逆の位置に形成した構造の太陽電池も提案されている。すなわち、この太陽電池は、透明基板上に、透明電極層、正孔輸送層、感光層、電子輸送層および対極をこの順で有している。
具体的には、非特許文献3には、正孔輸送層がNiOで形成され、電子輸送層がフェニルC61酪酸メチルエステル([6,6]−Phenyl−C61−Butyric Acid Methyl Ester(PC61BM))で形成された太陽電池が記載されている。
特許文献4には、正孔輸送層としてのp型領域が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)からなる有機半導体層を含み、電子輸送層としてのn型領域がPC61BMの有機半導体の層および酸化チタンの無機半導体の層を含む太陽電池が記載されている。その一方で、特許文献4には、正孔輸送層を、PEDOT:PSSに代えてNiOまたはVの無機半導体で形成すると、光電池特性に劣ることが記載されている(同文献の図14)。
特開2014−175473号公報 国際公開第2013/017520号 特開2013−055125号公報 国際公開第2014/045021号
Nature Commun. DOI:10.1038/ncomms4834 J.Am.Chem.Soc, 2014, 136, p.758−764 Angew. Chem. Int. Ed. 2014, 53, p.12571−12575
ペロブスカイト化合物は、安定性が十分ではなく、特に高湿環境下では、分解しやすいことが知られている。実際に、ペロブスカイト化合物を光吸収剤として用いた太陽電池は、大気中において経時により光電変換効率が低下してしまう。しかも、高湿環境下では、光電変換効率が急激に低下する。
しかし、特許文献1〜4および非特許文献1〜3の太陽電池は、いずれも、大気中での経時による光電変換効率の低下を十分に抑制できない。さらに、高湿環境下において光電変換効率の低下が顕著であり、耐湿性の点でも十分ではなかった。
太陽電池としての長期間の使用を想定すると、大気中での安定性(大気安定性)が求められ、さらに望ましくは耐久性項目の一つとして耐湿性も求められている。
本発明は、ペロブスカイト化合物を光吸収剤として用いた光電変換素子であって、大気安定性および耐湿性のいずれにも優れた光電変換素子、および、この光電変換素子を用いた太陽電池を提供することを課題とする。
本発明者らは、ペロブスカイト化合物を光吸収剤として含む感光層を備えた太陽電池において、透明基板側から順に、正孔輸送層、感光層および電子輸送層を互いに隣接させて設けた層構造とし、かつ、正孔輸送層および電子輸送層のいずれも無機半導体で形成すると、大気中での経時においても、また高湿環境下においても、光電変換効率が低下しにくいことを見出した。本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ね、完成されるに至ったものである。
本発明の上記の課題は以下の手段により解決された。
<1>透明基板上に、透明電極層、正孔輸送層、少なくとも1種のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を光吸収剤として含む感光層、電子輸送層および対極をこの順に有し、
正孔輸送層および電子輸送層が、いずれも、無機半導体で形成された無機半導体層であり、かつ感光層に隣接している光電変換素子。
<2>正孔輸送層の無機半導体層が、積層構造である<1>に記載の光電変換素子。
<3>正孔輸送層の無機半導体層が、2種以上の無機半導体で形成された半導体混合層を含む<1>または<2>に記載の光電変換素子。
<4>電子輸送層の無機半導体層が、積層構造である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<5>電子輸送層の無機半導体層が、2種以上の無機半導体で形成された半導体混合層を含む<1>〜<4>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<6>正孔輸送層の無機半導体層を形成する無機半導体および電子輸送層の無機半導体層を形成する無機半導体の少なくとも1種が、金属酸化物である<1>〜<5>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<7>正孔輸送層の無機半導体層を形成する無機半導体および電子輸送層の無機半導体層を形成する無機半導体が、いずれも、金属酸化物である<1>〜<6>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<8>ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が、周期表第一族元素もしくはカチオン性有機基A、周期表第一族元素以外の金属原子Mおよびアニオン性原子もしくは原子団Xを有する<1>〜<7>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<9><1>〜<8>のいずれか1つに記載の光電変換素子を用いた太陽電池。
本明細書において、各式の表記は、化合物の化学構造の理解のために、一部を示性式として表記することもある。これに伴い、各式において、部分構造を、(置換)基、イオンまたは原子等と称するが、本明細書において、これらは、(置換)基、イオンまたは原子等のほかに、上記式で表される(置換)基もしくはイオンを構成する元素団、または、元素を意味することがある。
本明細書において、化合物(錯体、色素を含む)の表示については、化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。さらに、置換または無置換を明記していない化合物については、目的とする効果を損なわない範囲で、任意の置換基を有する化合物を含む意味である。このことは、置換基および連結基等(以下、置換基等という)についても同様である。
本明細書において、特定の符号で表示された置換基等が複数あるとき、または複数の置換基等を同時に規定するときには、特段の断りがない限り、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。また、複数の置換基等が近接するとき(特に、隣接するとき)には、特段の断りがない限り、それらが互いに連結して環を形成してもよい。また、環、例えば脂環、芳香族環、ヘテロ環はさらに縮環して縮合環を形成していてもよい。
また、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本発明の光電変換素子および太陽電池は、ペロブスカイト化合物を光吸収剤として用いていながらも、大気安定性および耐湿性に優れる。
本発明の上記および他の特徴および利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
図1は、本発明の光電変換素子の好ましい形態について模式的に示した断面図である。 図2は、本発明の光電変換素子の別の好ましい形態について模式的に示した断面図である。 図3は、本発明の光電変換素子のまた別の好ましい形態について模式的に示した断面図である。 図4は、本発明の光電変換素子のさらに別の好ましい形態について模式的に示した断面図である。
<<光電変換素子>>
本発明の光電変換素子は、透明基板上に、透明電極層、正孔輸送層、少なくとも1種のペロブスカイト化合物を光吸収剤として含む感光層、電子輸送層および対極をこの順に有している。正孔輸送層および電子輸送層は感光層に隣接している。
本発明の光電変換素子において、正孔輸送層および電子輸送層は、いずれも、無機半導体で形成された無機半導体層として、形成されている。
感光層に隣接して、透明基板側に配置された正孔輸送層、および、対極側に配置された電子輸送層を無機半導体で形成した本発明の光電変換素子は、大気安定性および耐湿性に優れる。
その理由は詳細には定かではないが次のように推定される。すなわち、感光層に隣接した正孔輸送層および電子輸送層をともに無機半導体で形成すると、有機半導体で形成した層よりも水の影響を受けにくく、正孔輸送層または電子輸送層との界面から感光層中への水の浸入を防止できる。また、電子輸送層を対極側に配置すると、電子輸送層を形成する無機半導体が酸素の捕捉剤(スカベンジャー)として機能するため、対極を透過してきた大気による、感光層中の光吸収剤の劣化を防止できる。本発明において、透明電極層側からの大気の影響は透明電極層自身が防止していると推定される。さらに、感光層上に電子輸送層を形成すると、感光層と電子輸送層との界面状態の乱れを抑制でき、界面状態が安定する。これらが協同することにより、本発明の光電変換素子は、高い大気安定性と高い耐湿性を示すと考えられる。
本発明の光電変換素子は、本発明で規定する構成以外の構成は特に限定されず、光電変換素子および太陽電池に関する公知の構成を採用できる。本発明の光電変換素子を構成する各層は、目的に応じて設計され、例えば、単層に形成されても、複層(積層構造)に形成されてもよい。
以下、本発明の光電変換素子の好ましい形態について説明する。
図1〜図4において、同じ符号は同じ構成要素(部材)を意味する。
本明細書において、単に光電変換素子10という場合は、特に断らない限り、光電変換素子10A〜10Dを意味する。このことはシステム100についても同様である。また、単に正孔輸送層13という場合は、特に断らない限り、正孔輸送層13Aおよび13Bを意味する。このことは電子輸送層についても同様である。
本発明の光電変換素子の好ましい形態として、例えば、図1に示す光電変換素子10Aが挙げられる。図1に示されるシステム100Aは、光電変換素子10Aを外部回路6で動作手段M(例えば電動モーター)に仕事をさせる電池用途に応用したシステムである。
この光電変換素子10Aは、透明基板11上に、透明電極層12、正孔輸送層13A、感光層14、電子輸送層15Aおよび対極16をこの順に有している。正孔輸送層13A、感光層14および電子輸送層15Aは互いに接して設けられている。正孔輸送層13Aおよび電子輸送層15Aは、それぞれ、1層構造の無機半導体層として、形成されている。
図2に示す光電変換素子10Bは、本発明の光電変換素子の別の好ましい形態を模式的に示したものである。この光電変換素子10Bは、図1に示す光電変換素子10Aに対して正孔輸送層13Bの点で異なるが、この点以外は光電変換素子10Aと同様に構成されている。正孔輸送層13Bは、透明基板11側に配置された第1正孔輸送層(後述する他層)13B1と、第1正孔輸送層13B1上に配置され、かつ感光層14に隣接して配置された第2正孔輸送層(後述する隣接層)13B2とを有する、2層の積層構造になっている。
図3に示す光電変換素子10Cは、本発明の光電変換素子のまた別の好ましい形態を模式的に示したものである。この光電変換素子10Cは、図1に示す光電変換素子10Aに対して電子輸送層15Bの点で異なるが、この点以外は光電変換素子10Aと同様に構成されている。電子輸送層15Bは、感光層14に隣接して配置された第1電子輸送層(後述する隣接層)15B1と、第1電子輸送層15B1上(対極16側)に配置された第2電子輸送層(後述する他層)15B2とを有する、2層の積層構造になっている。
図4に示す光電変換素子10Dは、本発明の光電変換素子のさらに別の好ましい形態を模式的に示したものである。この光電変換素子10Dは、図1に示す光電変換素子10Aに対して正孔輸送層13Bおよび電子輸送層15Bの点で異なるが、これらの点以外は光電変換素子10Aと同様に構成されている。正孔輸送層13Bは、光電変換素子10Bの正孔輸送層13Bと同様に構成されている。また、電子輸送層15Bは、光電変換素子10Cの電子輸送層15Bと同様に構成されている。
本発明において、光電変換素子10を応用したシステム100は、以下のようにして、太陽電池として、機能する。
すなわち、光電変換素子10において、透明基板11を透過して感光層14に入射した光は光吸収剤を励起する。励起された光吸収剤はエネルギーの高い電子を有しており、この電子を放出できる。エネルギーの高い電子を放出した光吸収剤は酸化体となる。
光電変換素子10においては、光吸収剤から放出された電子は、光吸収剤間および電子輸送層15(無機半導体間)を移動して対極16に到達する。対極16に到達した電子は外部回路6で仕事をした後、透明電極層12および正孔輸送層13を経て、感光層14に戻る。感光層14に戻った電子により光吸収剤が還元される。
光電変換素子10において、このような、上記光吸収剤の励起および電子移動のサイクルを繰り返すことにより、システム100が太陽電池として機能する。
本発明の光電変換素子および太陽電池は、上記の好ましい形態に限定されず、各形態の構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各形態間で適宜組み合わせることができる。
本発明において、光電変換素子または太陽電池に用いられる材料および各部材は、常法により調製することができる。ペロブスカイト化合物を用いた光電変換素子または太陽電池について、例えば、特許文献1〜4および非特許文献1〜3を参照することができる。
また、色素増感太陽電池に用いられる材料および各部材についても参考にすることができる。色素増感太陽電池ついて、例えば、特開2001−291534号公報、米国特許第4,927,721号明細書、米国特許第4,684,537号明細書、米国特許第5,084,365号明細書、米国特許第5,350,644号明細書、米国特許第5,463,057号明細書、米国特許第5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2004−220974号公報、特開2008−135197号公報を参照することができる。
以下、本発明の光電変換素子および太陽電池に用いるのに好適な部材および化合物について、説明する。
<透明基板11>
透明基板11は、感光層14等を支持できるものであれば特に限定されない。透明基板11は、ガラスまたはプラスチックの基板が挙げられる。プラスチックで形成された透明基板11としては、例えば、特開2001−291534号公報の段落番号0153に記載の透明ポリマーフィルムが挙げられる。透明基板11を形成する材料としては、ガラスおよびプラスチックの他にも、セラミック(特開2005−135902号公報)、導電性樹脂(特開2001−160425号公報)を用いることができる。
光電変換素子10において、光は透明基板11側から入射させる。したがって、透明基板11は、実質的に透明であることが好ましい。本発明において、「実質的に透明である」とは、光(波長300〜1200nm)の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上が好ましく、80%以上が特に好ましい。
透明基板11の厚みは、特に限定されず、適宜の厚みに設定される。例えば、0.01μm〜10mmであることが好ましく、0.1μm〜5mmであることがさらに好ましく、0.3μm〜4mmであることが特に好ましい。
本発明において、各層の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて光電変換素子10の断面を観察することにより、測定できる。
<透明電極層12>
透明電極層12は、透明基板11の表面に導電膜として形成される。透明電極層12は、導電性の金属酸化物を塗設して成膜したものが好ましい。金属酸化物としては、スズ酸化物(TO)が好ましく、インジウム−スズ酸化物(スズドープ酸化インジウム;ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)等のフッ素ドープスズ酸化物が特に好ましい。この透明電極層12は、実質的に透明であることが好ましい。
透明電極層12の膜厚は、特に限定されず、例えば、0.01〜30μmであることが好ましく、0.03〜25μmであることがさらに好ましく、0.05〜20μmであることが特に好ましい。このときの金属酸化物の塗布量は、上記膜厚に設定できれば、特に限定されないが、例えば、透明基板11の表面積1m当たり0.1〜100gが好ましい。
透明基板11または透明電極層12は、表面に光マネージメント機能を有してもよい。例えば、透明基板11または透明電極層12の表面に、特開2003−123859号公報に記載の、高屈折膜および低屈折率の酸化物膜を交互に積層した反射防止膜を有してもよく、特開2002−260746号公報に記載のライトガイド機能を有してもよい。
透明基板11および透明電極層12は、ガラスもしくはプラスチックの透明基板11と透明基板11の表面に形成された透明電極層12とを有する構成(導電性支持体ともいう)が好ましい。より好ましくは、ガラスまたはプラスチックの透明基板11の表面に上記金属酸化物を塗設して透明電極層12を成膜した導電性支持体である。
<正孔輸送層13>
正孔輸送層13は、透明電極層12と感光層14との間であって感光層14に隣接して、形成される。
正孔輸送層13は、励起した光吸収剤が電荷分離して発生する正孔を透明電極層12に輸送する正孔輸送機能(光吸収剤の酸化体に電子を補充する機能)を少なくとも有する層であれば、特に限定されない。正孔輸送層13は、この正孔輸送機能に加えて、電子ブロッキング機能、正孔抽出機能等を有していてもよい。これらの機能を有する場合、正孔輸送層13は、例えば、電子ブロッキング層または正孔抽出層ともいう。
正孔輸送層13は、後述する無機半導体で形成された無機半導体層である。
本発明において、無機半導体で形成された無機半導体層とは、全体の90質量%以上を無機半導体が占める層をいう。無機半導体層は、10質量%未満であれば、有機半導体を含有していてもよい。また、半導体の他に、電荷を輸送しない有機絶縁体、無機絶縁体を含有していてもよい。無機半導体層における無機半導体の占める量(含有量)は90質量%以上であれば機能するが、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上である。
正孔輸送層13となる無機半導体層は単層構造(例えば正孔輸送層13A参照)でも、積層構造(例えば無機半導体層13B参照)でもよい。大気安定性および耐湿性の点で、正孔輸送層13は積層構造が好ましい。
正孔輸送層13が積層構造である場合、感光層14に隣接する層(隣接層ともいう)が上記無機半導体で形成された層であれば、積層構造を構成する、隣接層以外の層(他層ともいう)は特に限定されない。他層としては、電荷(正孔)の移送を担う半導体で形成された半導体層、透明電極層12からの電子注入を防ぐ電子ブロッキング層、正孔を抽出する正孔抽出層等を有していてもよい。半導体層としては、無機半導体で形成された層でも、有機半導体で形成された層でも、また無機半導体と有機半導体とで形成された層でもよい。
正孔輸送層13の積層構造としては、例えば、有機半導体の層と無機半導体の層とが積層された2層構造、無機半導体の層を2層積層した2層構造が挙げられる。この積層構造は、2層以上の積層構造が好ましく、2層構造がより好ましく、無機半導体の層を2層積層した2層構造(無機半導体層13B)がさらに好ましい。
本発明において、組成が同じ層を隣接して積層した場合は、これらを合わせて1つの層とする。一方、層の組成が同じ層であっても隣接して積層していない場合、すなわち他の層を介して積層した場合は、それぞれの層を1つの層とする。また、組成が異なる層を積層した場合は、隣接しているか否かに関わらず、それぞれの層を1つの層とする。
また、正孔輸送層13は、大気安定性および耐湿性の点で、後述する無機半導体の2種以上で形成された半導体混合層を含むことが好ましい。ここで、正孔輸送層13が半導体混合層を含むとは、正孔輸送層13が半導体混合層である場合と、正孔輸送層13が積層構造である場合、積層構造を形成する層の1つが半導体混合層である場合とを包含する。正孔輸送層13が単層構造の無機半導体層である場合、無機半導体層を半導体混合層にすることができる。また、正孔輸送層13が積層構造の無機半導体層である場合、積層構造を構成する層の少なくとも1層、例えば隣接層を半導体混合層にすることができる。半導体混合層を用いる場合、正孔輸送層13は単層構造であることが、製造ばらつき低減および生産性の点で、好ましい。
半導体混合層を形成する無機半導体は、2種以上であれば特に限定されないが、製造ばらつき低減の点で、2または3種が好ましく、2種がより好ましい。この場合、無機半導体の好ましい組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば、酸化ニッケル(NiO)と酸化モリブデン(MoO)、酸化ニッケル(NiO)と酸化バナジウム(V)、酸化ニッケル(NiO)と酸化タングステン(WO)等が挙げられる。
半導体混合層の、無機半導体の含有比(混合比)は、特に限定されず、適宜に設定できる。例えば、2種の無機半導体を含む半導体混合層の場合、含有比は、質量比で、1:0.05 〜1:20が好ましく、1:0.1〜1:5がより好ましい。
正孔輸送層13を形成する無機半導体は、正孔輸送層13に少なくとも正孔輸送機能を付与できる無機半導体であればよく、電荷(正孔)を輸送できるp型半導体が挙げられる。p型半導体は、透明電極層12および感光層14との関係において、価電子帯の準位(EVB)が透明電極層12の仕事関数と感光層14の価電子帯の準位(EVB)の間に来るという特性を有するものが好ましい。このようなp型半導体としては、特に限定されず、例えば、金属酸化物、金属硫化物、CuI、CuNCS、グラフェンオキシド等が挙げられる。なかでも、金属酸化物が好ましい。
金属酸化物としては、好ましくは下記式(MP)で表される化合物が挙げられる。
式(MP): M pxpy
式中、Mは金属元素を表し、Oは酸素元素を表す。pxおよびpyは各々独立に1以上の整数を表す。
としては、遷移金属元素、Al、Zn、Cd、Hg、Ga、Ge、Sn、Sb、Tl、Pb、Biの各金属元素が挙げられる。
なかでも、Ni、Mo、V、W、Cr、Cu、Fe、Snの各金属元素が好ましく、Ni、Mo、V、W、Cr、Cuの各金属元素がより好ましい。
pxとpyとの比(px:py)は、特に限定されず、例えば、2:1〜1:4が好ましく、2:1〜1:3がより好ましい。pxおよびpyは、それぞれ、1以上の整数であればよく、上記比(px:py)を満たす1以上の整数が好ましく、特に限定されないが、例えば、1〜4である。
このような金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、NiO、MoO、WO、V、CrOpy(pyは1、1.5、2または3)、CuO、SnO等が挙げられる。なかでも、NiO、MoO、WO、Vが好ましい。
有機半導体の層または半導体混合層を形成する有機半導体としては、太陽電池に用いられるものを特に制限なく用いることができる。このような有機半導体としては、例えば、導電性高分子、2個の環がC、Siなど四面体構造をとる中心原子を共有するスピロ化合物、トリアリールアミン等の芳香族アミン化合物、トリフェニレン化合物、含窒素複素環化合物または液晶性シアノ化合物が挙げられる。導電性高分子としては、例えば、2,2’,7,7’−テトラキス−(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミン)−9,9−スピロビフルオレン(Spiro−OMeTAD)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)、4−(ジエチルアミノ)ベンゾアルデヒド ジフェニルヒドラゾン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)等が挙げられる。
上記電子ブロッキング層を形成する材料としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルジアミン(TPD)等が挙げられる。
正孔輸送層13の膜厚(正孔輸送層13が積層構造である場合、合計の膜厚)は、特に限定されないが、50μm以下が好ましく、1nm〜10μmがより好ましく、5nm〜5μmがさらに好ましく、10nm〜1μmが特に好ましい。
正孔輸送層13が積層構造である場合、積層構造を構成する各層の膜厚は、合計の膜厚が上記範囲内になれば特に限定されない。各層の膜厚は、例えば、1〜400nmが好ましく、10〜200nmがより好ましい。
また、積層構造を構成する各層の膜厚の比は、特に限定されないが、2層構造である場合、隣接層の膜厚と他層の膜厚との比(隣接層:他層)は、1:0.01〜1:100が好ましく、1:0.05〜1:20がより好ましい。
<感光層(光吸収層)14>
感光層14は、好ましくは、後述するペロブスカイト化合物を光吸収剤として、正孔輸送層13の表面に、設けられる。
本発明において、光吸収剤は、後述する特定のペロブスカイト化合物を少なくとも1種含有していればよく、2種以上のペロブスカイト化合物を含有してもよい。
感光層14は、単層であっても2層以上の積層であってもよい。感光層14が2層以上の積層構造である場合、互いに異なった光吸収剤からなる層を積層してもよく、また感光層と感光層の間に正孔輸送材料を含む中間層を積層してもよい。
感光層14は、好ましくは、励起した電子が対極16に流れるように、設けられる。このとき、感光層14は、正孔輸送層13または電子輸送15それぞれの表面全体に接して設けられてもよく、表面の一部に接して設けられていてもよい。
感光層14の膜厚は、0.1〜100μmが好ましく、0.1〜50μmがさらに好ましく、0.3〜30μmが特に好ましい。
〔感光層の光吸収剤〕
感光層14は、光吸収剤として、「周期表第一族元素またはカチオン性有機基A」と、「周期表第一族元素以外の金属原子M」と、「アニオン性原子または原子団X」と、を有するペロブスカイト化合物を含有する。
ペロブスカイト化合物の周期表第一族元素またはカチオン性有機基A、金属原子Mおよびアニオン性原子または原子団Xは、それぞれ、ペロブスカイト型結晶構造において、カチオン(便宜上、カチオンAということがある)、金属カチオン(便宜上、カチオンMということがある)およびアニオン(便宜上、アニオンXということがある)の各構成イオンとして存在する。
本発明において、カチオン性有機基とは、ペロブスカイト型結晶構造においてカチオンになる性質を有する有機基をいい、アニオン性原子または原子団とはペロブスカイト型結晶構造においてアニオンになる性質を有する原子または原子団をいう。
本発明に用いるペロブスカイト化合物において、カチオンAは、周期表第一族元素のカチオンまたはカチオン性有機基Aからなる有機カチオンである。カチオンAは有機カチオンが好ましい。
周期表第一族元素のカチオンは、特に限定されず、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)またはセシウム(Cs)の各元素のカチオン(Li、Na、K、Cs)が挙げられ、特にセシウムのカチオン(Cs)が好ましい。
有機カチオンは、上記性質を有する有機基のカチオンであれば特に限定されないが、下記式(1)で表されるカチオン性有機基の有機カチオンであることがさらに好ましい。
式(1):R1a−NH
式中、R1aは置換基を表す。R1aは、有機基であれば特に限定されるものではないが、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基または下記式(2)で表すことができる基が好ましい。なかでも、アルキル基、下記式(2)で表すことができる基がより好ましい。
Figure 2016136729
式中、XはNR1c、酸素原子または硫黄原子を表す。R1bおよびR1cは各々独立に水素原子または置換基を表す。***は式(1)のN原子との結合位置を表す。
本発明において、カチオン性有機基Aの有機カチオンは、上記式(1)中のR1aとNHとが結合してなるアンモニウムカチオン性有機基Aからなる有機アンモニウムカチオン(R1a−NH )が好ましい。この有機アンモニウムカチオンが共鳴構造をとり得る場合、有機カチオンは有機アンモニウムカチオンに加えて共鳴構造のカチオンを含む。例えば、上記式(2)で表すことができる基においてXがNH(R1cが水素原子)である場合、有機カチオンは、上記式(2)で表すことができる基とNHとが結合してなるアンモニウムカチオン性有機基の有機アンモニウムカチオンに加えて、この有機アンモニウムカチオンの共鳴構造の1つである有機アミジニウムカチオンをも包含する。アミジニウムカチオン性有機基からなる有機アミジニウムカチオンとしては、下記式(Aam)で表されるカチオンが挙げられる。本明細書において、下記式(Aam)で表されるカチオンを便宜上、「R1bC(=NH)−NH」と表記することがある。
Figure 2016136729
アルキル基は、炭素数が1〜18のアルキル基が好ましく、1〜6のアルキル基がより好ましく、1〜3のアルキル基がさらに好ましい。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチルまたはヘキシル等が挙げられる。
シクロアルキル基は、炭素数が3〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル等が挙げられる。
アルケニル基は、炭素数が2〜18のアルケニル基が好ましく、2〜6のアルケニル基がより好ましい。例えば、ビニル、アリル、ブテニルまたはヘキセニル等が挙げられる。
アルキニル基は、炭素数が2〜18のアルキニル基が好ましく、2〜4のアルキニル基がより好ましい。例えば、エチニル、ブチニルまたはヘキシニル等が挙げられる。
アリール基は、炭素数6〜14のアリール基が好ましく、例えば、炭素数6〜12のアリール基がより好ましく、フェニルが挙げられる。
ヘテロアリール基は、芳香族ヘテロ環のみからなる基と、芳香族ヘテロ環に他の環、例えば、芳香環、脂肪族環やヘテロ環が縮合した縮合ヘテロ環からなる基とを包含する。
芳香族ヘテロ環を構成する環構成ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましい。また、芳香族ヘテロ環の環員数としては、3〜8員環が好ましく、5員環または6員環がより好ましい。
5員環の芳香族ヘテロ環および5員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環としては、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、フラン環、チオフェン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、インドリン環、インダゾール環の各環基が挙げられる。また、6員環の芳香族ヘテロ環および6員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キナゾリン環の各環基が挙げられる。
式(2)で表すことができる基において、XはNR1c、酸素原子または硫黄原子を表し、NR1cが好ましい。ここで、R1cは、水素原子または置換基を表し、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロアリール基が好ましく、水素原子がさらに好ましい。
1bは、水素原子または置換基を表し、水素原子が好ましい。R1bとして取りうる置換基は、アミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロアリール基が挙げられる。
1bおよびR1cがそれぞれとり得る、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基およびヘテロアリール基は、上記R1aの各基と同義であり、好ましいものも同じである。
式(2)で表すことができる基としては、(チオ)アシル基、(チオ)カルバモイル基、イミドイル基またはアミジノ基が挙げられる。
(チオ)アシル基は、アシル基およびチオアシル基を包含する。アシル基は、総炭素数が1〜7のアシル基が好ましく、例えば、ホルミル、アセチル(CHC(=O)−)、プロピオニル、ヘキサノイル等が挙げられる。チオアシル基は、総炭素数が1〜7のチオアシル基が好ましく、例えば、チオホルミル、チオアセチル(CHC(=S)−)、チオプロピオニル等が挙げられる。
(チオ)カルバモイル基は、カルバモイル基(HNC(=O)−)およびチオカルバモイル基(HNC(=S)−)を包含する。
イミドイル基は、R1b−C(=NR1c)−で表される基であり、R1bおよびR はそれぞれ水素原子またはアルキル基が好ましく、アルキル基は上記R1aのアルキル基と同義であるのがより好ましい。例えば、ホルムイミドイル(HC(=NH)−)、アセトイミドイル(CHC(=NH)−)、プロピオンイミドイル(CHCHC(=NH)−)等が挙げられる。なかでも、ホルムイミドイルが好ましい。
式(2)で表すことができる基としてのアミジノ基は、上記イミドイル基のR1bがアミノ基でR1cが水素原子である構造(−C(=NH)NH)を有する。
1aとしてとり得る、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基および上記式(2)で表すことができる基は、いずれも、置換基を有していてもよい。R1aが有していてもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基またはカルボキシ基が挙げられる。R1aが有していてもよい各置換基は、さらに置換基で置換されていてもよい。
本発明に用いるペロブスカイト化合物において、金属カチオンMは、周期表第一族元素以外の金属原子Mのカチオンであって、ペロブスカイト型結晶構造を取りうる金属原子のカチオンであれば、特に限定されない。このような金属原子としては、例えば、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、カドミウム(Cd)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、イッテルビウム(Yb)、ユウロピウム(Eu)、インジウム(In)、チタン(Ti)、ビスマス(Bi)等の金属原子が挙げられる。なかでも、金属原子Mは、2価のカチオンであることが好ましく、2価の鉛カチオン(Pb2+)、2価の銅カチオン(Cu2+)、2価のゲルマニウムカチオン(Ge )および2価のスズカチオン(Sn2+)からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、Pb2+またはSn2+であることがさらに好ましく、Pb であることが特に好ましい。Mは1種の金属原子であってもよく、2種以上の金属原子であってもよい。2種以上の金属原子である場合には、Pb原子およびSn原子の2種が好ましい。なお、このときの金属原子の割合は特に限定されない。
本発明に用いるペロブスカイト化合物において、アニオンXは、アニオン性原子または原子団Xのアニオンを表す。このアニオンは、好ましくはハロゲン原子のアニオン、または、NCS、NCO、HO-、NO 、CHCOOもしくはHCOOの、各原子団のアニオンが挙げられる。なかでも、ハロゲン原子のアニオンであることがさらに好ましい。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子等が挙げられる。
アニオンXは、1種のアニオン性原子または原子団のアニオンであってもよく、2種以上のアニオン性原子または原子団のアニオンであってもよい。1種のアニオン性原子または原子団のアニオンである場合には、ヨウ素原子のアニオンが好ましい。一方、2種以上のアニオン性原子または原子団のアニオンである場合には、2種のハロゲン原子のアニオン、特に臭素原子または塩素原子のアニオンおよびヨウ素原子のアニオンが好ましい。なお、2種以上のアニオンの割合は特に限定されない。
本発明に用いるペロブスカイト化合物は、上記の各構成イオンを有するペロブスカイト型結晶構造を有し、下記式(I)で表されるペロブスカイト化合物が好ましい。
式(I):A
式中、Aは周期表第一族元素またはカチオン性有機基を表す。Mは周期表第一族元素以外の金属原子を表す。Xはアニオン性原子または原子団を表す。
aは1または2を表し、mは1を表し、a、mおよびxはa+2m=xを満たす。
式(I)において、周期表第一族元素またはカチオン性有機基Aは、ペロブスカイト型結晶構造の上記カチオンAを形成する。したがって、周期表第一族元素およびカチオン性有機基Aは、上記カチオンAとなってペロブスカイト型結晶構造を構成できる元素または基であれば、特に限定されない。周期表第一族元素またはカチオン性有機基Aは、上記カチオンAで説明した上記周期表第一族元素またはカチオン性有機基と同義であり、好ましいものも同じである。
金属原子Mは、ペロブスカイト型結晶構造の上記金属カチオンMを形成する金属原子である。したがって、金属原子Mは、周期表第一族元素以外の原子であって、上記金属カチオンMとなってペロブスカイト型結晶構造を構成できる原子であれば、特に限定されない。金属原子Mは、上記金属カチオンMで説明した上記金属原子と同義であり、好ましいものも同じである。
アニオン性原子または原子団Xは、ペロブスカイト型結晶構造の上記アニオンXを形成する。したがって、アニオン性原子または原子団Xは、上記アニオンXとなってペロブスカイト型結晶構造を構成できる原子または原子団であれば、特に限定されない。アニオン性原子または原子団Xは、上記アニオンXで説明したアニオン性原子または原子団と同義であり、好ましいものも同じである。
式(I)で表されるペロブスカイト化合物は、aが1である場合、下記式(I−1)で表されるペロブスカイト化合物であり、aが2である場合、下記式(I−2)で表されるペロブスカイト化合物である。
式(I−1):AMX
式(I−2):AMX
式(I−1)および式(I−2)において、Aは周期表第一族元素またはカチオン性有機基を表し、上記式(I)のAと同義であり、好ましいものも同じである。
Mは、周期表第一族元素以外の金属原子を表し、上記式(I)のMと同義であり、好ましいものも同じである。
Xは、アニオン性原子または原子団を表し、上記式(I)のXと同義であり、好ましいものも同じである。
本発明に用いるペロブスカイト化合物は、式(I−1)で表される化合物および式(I−2)で表される化合物のいずれでもよく、これらの混合物でもよい。したがって、本発明において、ペロブスカイト化合物は、光吸収剤として少なくとも1種が存在していればよく、組成式、分子式および結晶構造等により、厳密にいかなる化合物であるかを明確に区別する必要はない。
以下に、本発明に用いうるペロブスカイト化合物の具体例を例示するが、これによって本発明が制限されるものではない。下記においては、式(I−1)で表される化合物と、式(I−2)で表される化合物とを分けて記載する。ただし、式(I−1)で表される化合物として例示した化合物であっても、合成条件等によっては、式(I−2)で表される化合物となる場合もあり、また、式(I−1)で表される化合物と式(I−2)で表される化合物との混合物となる場合もある。同様に、式(I−2)で表される化合物として例示した化合物であっても、式(I−1)で表される化合物となる場合もあり、また、式(I−1)で表される化合物と式(I−2)で表される化合物との混合物となる場合もある。
式(I−1)で表される化合物の具体例として、例えば、CHNHPbCl、CHNHPbBr、CHNHPbI、CHNHPbBrI、CHNH PbBrI、CHNHSnBr、CHNHSnI、CHNHGeCl、CH(=NH)NHPbI、CsSnICsGeI等が挙げられる。
式(I−2)で表される化合物の具体例として、例えば、(CNHPbI 、(C1021NHPbI、(CH=CHNHPbI、(CH≡CNHPbI、(n−CNHPbI、(n−CNHPbI、(CNHPbI、(CCHCHNHPbI、(CNHPbI、(CNHPbI、(CSNHPbI、(CHNHCuCl、(CNHGeI、(CNHFeBr等が挙げられる。ここで、(CSNHPbI におけるCSNHはアミノチオフェンである。
ペロブスカイト化合物は、下記式(II)で表される化合物と下記式(III)で表される化合物とから合成することができる。
式(II):AX
式(III):MX
式(II)中、Aは周期表第一族元素またはカチオン性有機基を表し、式(I)のAと同義であり、好ましいものも同じである。式(II)中、Xはアニオン性原子または原子団を表し、式(I)のXと同義であり、好ましいものも同じである。
式(III)中、Mは周期表第一族元素以外の金属原子を表し、式(I)のMと同義であり、好ましいものも同じである。式(III)中、Xはアニオン性原子または原子団を表し、式(I)のXと同義であり、好ましいものも同じである。
ペロブスカイト化合物は、MXとAXとから合成することができる。ペロブスカイト化合物の合成方法については、例えば、特許文献1〜4および非特許文献1〜3に記載の方法を参考にできる。また、Akihiro Kojima, Kenjiro Teshima, Yasuo Shirai, and Tsutomu Miyasaka, “Organometal Halide Perovskites as Visible−Light Sensitizers for Photovoltaic Cells”, J.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),p.6050−6051に記載の方法も参考にできる。
光吸収剤の使用量は、正孔輸送層13の表面のうち光が入射する表面の少なくとも一部を覆う量であればよく、表面全体を覆う量が好ましい。
感光層13中、ペロブスカイト化合物の含有量は、通常、1〜100質量%である。
<電子輸送層15>
電子輸送層15は、感光層14と対極16との間であって感光層14に隣接して、形成される。
電子輸送層15は、励起した光吸収剤が電荷分離して発生する電子を対極16に輸送する電子輸送機能を少なくとも有する層であれば、特に限定されない。電子輸送層15は、この電子輸送機能に加えて、正孔ブロッキング機能、電子抽出機能を有していてもよい。これらの機能を有する場合、電子輸送層15は、例えば、正孔ブロッキング層、電子抽出層ともいう。
電子輸送層15は、後述する無機半導体で形成された無機半導体層である。
電子輸送層15となる無機半導体層は単層構造(例えば電子輸送層15A参照)でも、積層構造(例えば無機半導体層15B参照)でもよい。大気安定性および耐湿性の点で、電子輸送層15は積層構造が好ましい。
電子輸送層15が積層構造である場合、感光層14に隣接する隣接層が上記無機半導体で形成された層であれば、積層構造を構成する、隣接層以外の他層は特に限定されない。他層としては、電荷(電子)の移送を担う半導体で形成された半導体層、対極16からの正孔注入を防ぐ正孔ブロッキング層、電子を抽出する電子抽出層等を有していてもよい。半導体層としては、無機半導体で形成された層でも、有機半導体で形成された層でも、また無機半導体と有機半導体とで形成された層でもよい。
電子輸送層15の積層構造としては、例えば、有機半導体の層と無機半導体の層とが積層された2層構造、無機半導体の層を2層積層した2層構造等が挙げられる。この積層構造は、2層以上の積層構造が好ましく、2層構造がより好ましく、無機半導体の層を2層積層した2層構造(無機半導体層15B)がさらに好ましい。
また、電子輸送層15は、大気安定性および耐湿性の点で、後述する無機半導体の2種以上で形成された半導体混合層を含むことが好ましい。ここで、電子輸送層15が半導体混合層を含むとは、電子輸送層15が半導体混合層である場合と、電子輸送層15が積層構造である場合、積層構造を形成する層の1つが半導体混合層である場合とを包含する。電子輸送層15が単層構造の無機半導体層である場合、無機半導体層を半導体混合層にすることができる。また、電子輸送層15が積層構造の無機半導体層である場合、積層構造を構成する層の少なくとも1層、例えば隣接層を半導体混合層にすることができる。半導体混合層を用いる場合、電子輸送層15は単層構造であることが、製造ばらつき低減および生産性の点で、好ましい。
半導体混合層を形成する無機半導体は、2種以上であれば特に限定されないが、製造ばらつき低減の点で、2または3種が好ましく、2種がより好ましい。この場合、無機半導体の好ましい組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば、酸化亜鉛(ZnO)と酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)と炭酸セシウム(CsCO)、酸化亜鉛(ZnO)とフッ化リチウム(LiF)、酸化チタン(TiO)とフッ化リチウム(LiF)、酸化亜鉛(ZnO)と酸化クロム(CrO)酸化亜鉛(ZnO)とアルミニウム(Al)等が挙げられる。
半導体混合層の、無機半導体の含有比(混合比)は、特に限定されず、適宜に設定できる。例えば、2種の無機半導体を含む半導体混合層の場合、含有比は、質量比で、1:0.01〜1:100が好ましく、1:0.05〜1:20がより好ましい。
電子輸送層15を形成する無機半導体は、電子輸送層15に少なくとも電子輸送機能を付与できる無機半導体であればよく、電荷(電子)を輸送できるn型半導体が挙げられる。n型半導体は、感光層14および対極16との関係において、伝道帯の準位(ECB)が対極16の仕事関数と感光層14の伝道帯の準位(ECB)の間に来るという特性を有するものが好ましい。このようなn型半導体としては、特に限定されず、例えば、金属酸化物、LiF、炭酸セシウム等が挙げられる。なかでも、金属酸化物が好ましい。
金属酸化物としては、好ましくは下記式(MN)で表される化合物が挙げられる。
式(MN): M nxny
式中、Mは金属元素を表し、Oは酸素元素を表す。nxおよびnyは各々独立に1以上の整数を表す。
としては、遷移金属元素、Al、Zn、Cd、Hg、Ga、Ge、Sn、Sb、Tl、Pb、Biの各金属元素が挙げられる。
なかでも、Ti、Zn、Cu、Crの各金属元素が好ましく、Ti、Znの各金属元素がより好ましい。
nxとnyとの比(px:py)は、特に限定されず、例えば、2:1〜1:4が好ましく、1:1〜1:3がより好ましい。nxおよびnyは、それぞれ、1以上の整数であればよく、上記比(nx:ny)を満たす1以上の整数が好ましく、特に限定されないが、例えば、1〜4である。
このような金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、TiO、ZnO、CrO、CuO等が挙げられる。なかでも、TiO、ZnOが好ましい。
正孔輸送層13を形成する無機半導体および電子輸送層15を形成する無機半導体の少なくとも1種は、金属酸化物(p型半導体の金属酸化物またはn型半導体の金属酸化物)であることが、光電変換効率の点で、好ましい。さらに好ましくは、正孔輸送層13を形成する無機半導体および電子輸送層15を形成する無機半導体が、いずれも、金属酸化物である。すなわち、正孔輸送層13を形成する無機半導体がp型半導体の金属酸化物であり、電子輸送層15を形成する無機半導体がn型半導体の金属酸化物であることがさらに好ましい。
電子輸送層15を構成する有機半導体の層を形成する有機半導体、または、半導体混合層を形成する有機半導体としては、太陽電池に用いられるものを特に制限なく用いることができる。このような有機半導体としては、例えば、PC61BM等のフラーレン化合物、ペリレンテトラカルボキシジイミド(PTCDI)等のペリレン化合物、その他、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)等の低分子化合物、または、高分子化合物等が挙げられる。
上記正孔ブロッキング層を形成する材料としては、特に限定されないが、例えば、ペリレン化合物等が挙げられる。
電子輸送層15の膜厚(電子輸送層15が積層構造である場合、合計の膜厚)は、特に限定されないが、0.001〜10μmが好ましく、0.01〜1μmがより好ましい。
電子輸送層15が積層構造である場合、積層構造を構成する各層の膜厚は、合計の膜厚が上記範囲内になれば特に限定されない。各層の膜厚は、例えば、1〜400nmが好ましく、10〜200nmがより好ましい。
また、積層構造を構成する各層の膜厚の比は、特に限定されないが、2層構造である場合、隣接層の膜厚と他層の膜厚との比(隣接層:他層)は、1:0.01〜1:100が好ましく、1:0.05〜1:20がより好ましい。
<対極16>
対極16は、太陽電池において負極として機能する。対極16は、導電性を有していれば特に限定されず、通常、透明基板11と同じ構成とすることができる。強度が十分に保たれる場合は、透明基板11は必ずしも必要ではない。
本発明の太陽電池においては、太陽光を透明基板11側から入射させるのが好ましい。この場合、対極16は光を反射する性質を有することがさらに好ましい。
対極16を形成する材料としては、例えば、白金(Pt)、金(Au)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、インジウム(In)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスニウム(Os)、アルミニウム(Al)等の金属、透明電極層12で説明した導電性の金属酸化物、炭素材料および伝導性高分子等が挙げられる。炭素材料としては、炭素原子同士が結合してなる、導電性を有する材料であればよく、例えば、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン等が挙げられる。
対極16としては、金属の薄膜(蒸着してなる薄膜を含む。金属電極ともいう)もしくは導電性の金属酸化物の薄膜(蒸着してなる薄膜を含む)、または、これらの薄膜を有するガラス基板もしくはプラスチック基板が好ましい。ガラス基板もしくはプラスチック基板としては、金もしくは白金の薄膜を有するガラス、または、白金を蒸着したガラスが好ましい。
対極16の膜厚は、特に限定されず、0.01〜100μmが好ましく、0.01〜10μmがさらに好ましく、0.01〜1μmが特に好ましい。
<その他の構成>
本発明においては、透明電極層12上に、絶縁体または導電性材料からなる多孔質層を設けることもできる。また、透明電極層12と対極16との接触を防ぐために、ブロッキング層、スペーサーやセパレータを用いることもできる。
<<太陽電池>>
本発明の太陽電池は、本発明の光電変換素子を用いて構成される。例えば図1〜図4に示されるように、外部回路6を設けて構成した光電変換素子10を太陽電池として用いることができる。透明電極層12および対極16に接続される外部回路6は、公知のものを特に制限されることなく、用いることができる。
本発明の太陽電池は、構成物の劣化および蒸散等を防止するために、側面をポリマーや接着剤等で密封することが好ましい。
<<光電変換素子の製造方法>>
本発明の光電変換素子および太陽電池は、各層を形成する順序および条件等以外は、公知の製造方法、例えば特許文献1〜4および非特許文献1〜3等に記載の方法に準拠して、製造できる。
以下に、本発明の光電変換素子および太陽電池の製造方法を簡単に説明する。
透明基板11の表面に透明電極層12を、透明電極層12で説明した方法または公知の上記方法に準じて、形成する。また、所望により、透明電極層12の表面に多孔質層等を設けることもできる。
次いで、感光層14を形成する前に正孔輸送層13を形成する。正孔輸送層13は、正孔輸送層13を形成する正孔輸送材料を含有する正孔輸送材料溶液(ペースト)を塗布し、乾燥して、形成することができる。
正孔輸送材料は、通常、p型無機半導体を用いるが、形成する層によっては他の材料、例えば有機半導体を用いることもできる。正孔輸送層13を積層構造とする場合、例えば、異なる正孔輸送材料を含有する2種以上の正孔輸送材料溶液を用いることが好ましい。また、半導体混合層を形成する場合、例えば、2種以上の正孔輸送材料を含有する正孔輸送材料混合溶液を用いることが好ましい。用いる正孔輸送材料は、半導体そのものでもよく、半導体の前駆体(例えば、上記金属のアルコキシド、酢酸塩、アセチルアセトナト錯体等)でもよい。
正孔輸送材料溶液および正孔輸送材料混合溶液は、塗布性に優れる点で、正孔輸送材料の濃度が0.1〜1.0M(モル/L)であるのが好ましい。
正孔輸送材料溶液の乾燥条件は、光電変換効率の観点と製造ばらつきの観点から60〜500℃であることが好ましく、80〜450℃であることがより好ましい。
次いで、感光層14を設ける。
感光層14を設ける方法は、湿式法および乾式法が挙げられ、特に限定されない。本発明においては、湿式法が好ましく、例えば、吸収剤を含有する光吸収剤溶液に接触させる方法が好ましい。この方法においては、まず、感光層14を形成するための光吸収剤溶液を調製する。光吸収剤溶液は、ペロブスカイト化合物の原料である、上記式(II)で表されるAXおよび上記式(III)で表されるMXを含有する。この光吸収剤溶液において、MXとAXとのモル比は目的に応じて適宜に調整される。光吸収剤としてペロブスカイト化合物を形成する場合、AXとMXとのモル比は、1:1〜10:1であることが好ましい。この光吸収剤溶液は、AXとMXとを所定のモル比で混合した後に好ましくは加熱することにより、調製できる。この形成液は通常溶液であるが、懸濁液でもよい。加熱する条件は、特に限定されないが、加熱温度は30〜200℃が好ましく、60〜150℃がさらに好ましい。加熱時間は0.5〜100時間が好ましく、1〜3時間がさらに好ましい。溶媒または分散媒は後述するものを用いることができる。
次いで、調製した光吸収剤溶液を、正孔輸送層13の表面に接触させる。具体的には、光吸収剤溶液を塗布または浸漬することが好ましい。これにより、ペロブスカイト化合物が正孔輸送層13の表面に堆積または吸着等される。接触させる温度は5〜100℃であることが好ましく、浸漬時間は5秒〜24時間であるのが好ましく、20秒〜1時間がより好ましい。塗布した光吸収剤溶液を乾燥させる場合、光吸収剤溶液の乾燥は熱による乾燥が好ましく、通常は、20〜300℃、好ましくは50〜170℃に加熱することで乾燥させる。
また、上記ペロブスカイト化合物の合成方法に準じて感光層を形成することもできる。
さらに、上記AXを含有するAX溶液と、上記MXを含有するMX溶液とを、別々に塗布(浸漬法を含む)し、必要により乾燥する方法も挙げられる。この方法では、いずれの溶液を先に塗布してもよいが、好ましくはMX溶液を先に塗布する。この方法におけAXとMXとのモル比、塗布条件および乾燥条件は、上記方法と同じである。この方法では、上記AX溶液および上記MX溶液の塗布に代えて、AXまたはMXを、蒸着させることもできる。
さらに他の方法として、上記光吸収剤溶液の溶剤を除去した化合物または混合物を用いた、真空蒸着等の乾式法が挙げられる。例えば、上記AXおよび上記MXを、同時または順次、蒸着させる方法も挙げられる。
これにより、光吸収剤が形成され、感光層14となる。
このようにして設けた感光層14上に電子輸送層15を形成する。電子輸送層15は、電子輸送層15を形成する電子輸送材料を含有する電子輸送材料溶液塗布し、乾燥して、形成することができる。
電子輸送材料は、通常、n型無機半導体を用いるが、形成する層によっては他の材料、例えば有機半導体を用いることもできる。電子輸送層15を積層構造とする場合、例えば、異なる電子輸送材料を含有する2種以上の電子輸送材料溶液を用いることが好ましい。また、半導体混合層を形成する場合、例えば、2種以上の電子輸送材料を含有する電子輸送材料混合溶液を用いることが好ましい。用いる電子輸送材料は、半導体そのものでもよく、その前駆体(例えば、上記金属のアルコキシド、酢酸塩、アセチルアセトナト錯体等)でもよい。
電子輸送材料溶液および電子輸送材料混合溶液は、塗布性に優れる点で、電子輸送材料の濃度が0.1〜1.0M(モル/L)であるのが好ましい。
電子輸送材料溶液の乾燥条件は、光電変換効率の観点と製造ばらつきの観点から60〜150℃であることが好ましく、80〜130℃であることがより好ましい。
このように、予め形成した感光層14上に電子輸送材料溶液等を塗布して電子輸送層15を形成すると、電子輸送層15上に感光層14を形成する場合に比して、電子輸送層15と感光層14との界面状態の乱れを抑制できる。したがって、上記のように、高い大気安定性と高い耐湿性を示す光電変換素子等を、安定的に製造することができる。
電子輸送層15を形成した後に、対極16を形成して、光電変換素子を製造できる。
各層の膜厚は、各分散液または形成溶液の濃度、塗布回数を適宜に変更して、設定できる。
各分散液および形成溶液は、それぞれ、必要に応じて、分散助剤、界面活性剤等の添加剤を含有していてもよい。
光電変換素子および太陽電池の製造方法に使用する溶媒または分散媒としては、特開2001−291534号公報に記載の溶媒が挙げられるが、特にこれに限定されない。本発明においては、有機溶媒が好ましく、さらに、アルコール溶媒、アミド溶媒、ニトリル溶媒、炭化水素溶媒、ラクトン溶媒、ハロゲン溶媒、スルフィド溶媒、および、これらの2種以上の混合溶媒が好ましい。混合溶媒としては、アルコール溶媒と、アミド溶媒、ニトリル溶媒または炭化水素溶媒から選ばれる溶媒との混合溶媒が好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、γ−ブチロラクトン、n−プロピルスルフィド、クロロベンゼン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)もしくはジメチルアセトアミド、または、これらの混合溶媒が好ましい。
各層を形成する溶液または分散剤の塗布方法は、特に限定されず、スピンコート、エクストルージョンダイコート、ブレードコート、バーコート、スクリーン印刷、ステンシル印刷、ロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ディップコート、インクジェット印刷、浸漬など公知の各塗布方法を用いることができる。なかでも、スピンコート法、スクリーン印刷法、浸漬法等が好ましい。
上記のようにして作製した光電変換素子は、透明電極層12および対極16に外部回路6を接続して、太陽電池として用いることができる。
以下に実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
実施例1および比較例1
[光電変換素子(試料No.101)の製造]
以下に示す手順により、図1に示される光電変換素子10Aを製造した。
<導電性支持体の作製>
ガラス基板(透明基板11、厚さ2.2mm)上にフッ素ドープされたSnO導電膜(透明電極層12、膜厚300nm)を形成し、導電性支持体を作製した。
<正孔輸送層13Aの形成>
NiO粉末(1g)をエタノール(30mL)に分散させ、そこに10質量%エチルセルロースエタノール溶液(6g)およびテルピネオール(3g)を添加し、撹拌した後に減圧してエタノールを留去することで、正孔輸送材料溶液としてNiOペースト(濃度約3質量%)を調製した。得られたNiOペーストをスピンコート法(3000rpmで90秒)により導電性支持体上に塗布し、常圧下、窒素雰囲気中、400℃で1時間乾燥して、正孔輸送層13AとしてNiO層(膜厚50nm、NiO含有量>98質量%)を形成した。
<感光層14の形成>
1.アンモニウム化合物の調製
メチルアミンの40%メタノール溶液(27.86mL)と57質量%のヨウ化水素酸(30mL)とを、フラスコ中、0℃で2時間攪拌した後、濃縮して、CHNHIの粗体を得た。得られたCHNHIの粗体をエタノールに溶解し、ジエチルエーテルで再結晶した。析出した結晶をろ取し、60℃で24時間減圧乾燥して、精製CHNHIを得た。
2.感光層の成膜
精製CHNHIとPbIを、モル比で2:1とし、N、N−ジメチルホルムアミド中、60℃で12時間攪拌して混合した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルターでろ過して、光吸収剤溶液を調製した。
調製した光吸収剤溶液をスピンコート法(2000rpmで60秒、続けて3000rpmで60秒)により正孔輸送層13Aの表面に塗布し、塗布した光吸収剤溶液をホットプレートにより、常圧下、窒素雰囲気中、100℃で40分間乾燥して、ペロブスカイト化合物を有する感光層14としてのペロブスカイト膜(膜厚600nm)を形成した。得られたペロブスカイト化合物はCHNHPbIであった。
<電子輸送層15Aの形成>
テトラブトキシチタン(IV)をイソプロピルアルコールで希釈して電子輸送材料溶液を調製した。この電子輸送材料溶液をスピンコート法(2000rpmで60秒)により感光層14上に塗布し、常圧下、窒素雰囲気中、100℃で10分間加熱して、電子輸送層15AとしてTiO層(膜厚100nm、TiO含有量>98質量%)を形成した。
<対極16の作製>
蒸着法により金を電子輸送層15A上に蒸着して、対極16(膜厚0.3μm)を作製した。
このようにして、図1に示される光電変換素子10Aを製造した。
各膜厚は、上記方法に従って、SEMにより観察して、測定した。
[光電変換素子(試料No.102〜105)の製造]
光電変換素子(試料No.101)の製造において、テトラブトキシチタン(IV)に代えて酢酸亜鉛(II)を用いて調製した電子輸送材料溶液により電子輸送層15Aを形成したこと以外は光電変換素子(試料No.101)の製造と同様にして、試料No.102の光電変換素子10Aを製造した。
また、光電変換素子(試料No.101)の製造において、NiOペーストに代えて、CuIをn−プロピルスルフィドとクロロベンゼンとの混合溶媒(質量比1:1)に溶解させた正孔輸送材料溶液を用いて正孔輸送層13Aを形成したこと以外は光電変換素子(試料No.101)の製造と同様にして、試料No.103の光電変換素子10Aを製造した。
さらに、光電変換素子(試料No.101)の製造において、正孔輸送材料溶液としてのNiOペーストに代えて、このNiOペーストに、NiOに対して5質量%のMoOを添加して調製した正孔輸送材料混合溶液を用いて正孔輸送層13A(NiOとMoOとの含有質量比1:0.05)を形成したこと以外は光電変換素子(試料No.101)の製造と同様にして、試料No.104の光電変換素子10Aを製造した。
また、光電変換素子(試料No.101)の製造において、上記電子輸送材料溶液に代えてテトラブトキシチタン(IV)と酢酸亜鉛(II)とを質量比1:1で含有する電子輸送材料混合溶液を用いて電子輸送層15A(TiOとZnOとの含有質量比1:1)を形成したこと以外は光電変換素子(試料No.101)の製造と同様にして、試料No.105の光電変換素子10Aを製造した。
[光電変換素子(試料No.201)の製造]
以下のようにして、図2に示される光電変換素子10Bを製造した。
すなわち、光電変換素子(試料No.101)の製造と同様にして作製した導電性支持体上に、上記NiOペースト(第1正孔輸送材料溶液)を塗布し、常圧下、窒素雰囲気中、400℃で1時間乾燥して、第1正孔輸送層13B1としてNiO層(膜厚50nm)を形成した。次いで、NiO層上にMoOのエタノール分散液(第2正孔輸送材料溶液)をスピンコート法(3000rpmで90秒)で塗布し、常圧下、窒素雰囲気中、150℃で1時間乾燥して、第2正孔輸送層13B2としてMoO層(膜厚50nm)を形成した。
このようにして、NiO層とMoO層との2層構造の正孔輸送層13B(膜厚100nm)を形成した(第1正孔輸送層13B1の層厚:第2正孔輸送層13B2の層厚=1:1)。
次いで、光電変換素子(試料No.101)の製造と同様にして、正孔輸送層13B上に、感光層14、電子輸送層15Aおよび対極16をそれぞれ形成して、試料No.201の光電変換素子10Bを製造した。
[光電変換素子(試料No.202)の製造]
光電変換素子(試料No.201)の製造において、MoOのエタノール分散液に代えてVのエタノール分散液(第2正孔輸送材料溶液)を用いて第2正孔輸送層13B2としてV層(膜厚20nm、第1正孔輸送層13B1の層厚:第2正孔輸送層13B2の層厚=1:0.4)を形成したこと以外は光電変換素子(試料No.201)の製造と同様にして、試料No.202の光電変換素子10Bを製造した。
[光電変換素子(試料No.203)の製造]
光電変換素子(試料No.201)の製造において、メチルアミンの代わりにホルムアミジン酢酸塩(ホルムアミジン酢酸塩に対してヨウ化水素を2当量とした)を用いたこと以外は光電変換素子(試料No.201)の製造と同様にして、試料No.203の光電変換素子10Bを製造した。得られたペロブスカイト化合物はCH(=NH)NHPbIであった。
[光電変換素子(試料No.301)の製造]
以下のようにして、図3に示される光電変換素子10Cを製造した。
すなわち、光電変換素子(試料No.101)の製造と同様にして、透明基板11上に、透明電極層12、正孔輸送層13Aおよび感光層14を形成した。
テトラブトキシチタン(IV)をイソプロピルアルコールで希釈して調製した第1電子輸送材料溶液をスピンコート法(2000rpmで30秒)により感光層14上に塗布し、常圧下、窒素雰囲気中、100℃で10分間加熱して、第1電子輸送層15B1としてTiO層(膜厚100nm)を形成した。
次いで、TiO層上に酢酸亜鉛(II)のエタノール溶液(第2電子輸送材料溶液)をスピンコート法(3000rpmで30秒)により塗布し、常圧下、窒素雰囲気中、100℃で1時間乾燥して、第2電子輸送層15B2としてZnO層(膜厚40nm、第1電子輸送層15B1の層厚:第2電子輸送層15B2の層厚=1:0.4)を形成した。
このようにして、TiO層とZnO層との2層構造の電子輸送層15B(膜厚140nm)を形成した。
次いで、光電変換素子(試料No.101)の製造と同様にして、電子輸送層15B上に対極16を形成して、試料No.301の光電変換素子10Cを製造した。
[光電変換素子(試料No.302)の製造]
光電変換素子(試料No.301)の製造において、第1電子輸送層15B1(TiO 層)上に、酢酸亜鉛の代わりにフッ化リチウムのエタノール溶液(第2電子輸送材料溶液)をスピンコート法(4000rpmで30秒)により塗布し、常圧下、窒素雰囲気中、100℃で1時間乾燥して、第2電子輸送層15B2を形成したこと以外は光電変換素子(試料No.301)の製造と同様にして、試料No.302の光電変換素子10Bを製造した。
電子輸送層15B(膜厚115nm)において、第1電子輸送層15B1は電子輸送層15Aと同じ(膜厚100nm)であり、第2電子輸送層15B2は、LiF層からなる、膜厚15nmの層とした。電子輸送層15Bにおいて、第1電子輸送層15B1の層厚:第2電子輸送層15B2の層厚は1:0.15であった。
[光電変換素子(試料No.401)の製造]
以下のようにして、図4に示される光電変換素子10Dを製造した。
光電変換素子(試料No.201)の製造において、第1電子輸送層15B1に対応する電子輸送層(TiO層)15A上に酢酸亜鉛(II)のエタノール溶液(第2電子輸送材料溶液)をスピンコート法(3000rpmで30秒)により塗布し、常圧下、窒素雰囲気中、100℃で1時間乾燥して、第2電子輸送層15B2を形成したこと以外は光電変換素子(試料No.201)の製造と同様にして、試料No.401の光電変換素子10Dを製造した。
電子輸送層15B(膜厚140nm)において、第1電子輸送層15B1は電子輸送層15Aと同じ(膜厚100nm)であり、第2電子輸送層15B2はZnO層からなる、膜厚40nmの層とした。電子輸送層15Bにおいて、第1電子輸送層15B1の層厚:第2電子輸送層15B2の層厚は1:0.4であった。
上記のようにして製造した各試料No.の光電変換素子において、正孔輸送層13および電子輸送層15(ともに、積層構造を形成する各層13B1、13B2、15B1および15B2を含む)は、いずれも無機半導体層であり、各層中の無機半導体の含有量は98質量%を超えていた。
[光電変換素子(試料No.c11〜c15)の製造]
光電変換素子(試料No.101)の製造において、テトラブトキシチタン(IV)を含有する電子輸送材料溶液に代えてPC61BMを含有する電子輸送材料溶液(濃度1質量%)により電子輸送層(層厚150nm)を形成したこと以外は光電変換素子(試料No.101)の製造と同様にして、試料No.c11の光電変換素子を製造した。この試料No.c11の光電変換素子は、特許文献4の太陽電池を形成する光電変換素子を想定したものである。
また、光電変換素子(試料No.101)の製造において、NiOペーストに代えてPEDOT:PSSを含有する正孔輸送材料溶液(濃度2質量%)を用いて正孔輸送層(層厚120nm)を形成したこと以外は、光電変換素子(試料No.101)の製造と同様にして、試料No.c12の光電変換素子を製造した。
光電変換素子(試料No.101)の製造において、NiOペーストに代えてPEDOT:PSSを含有する正孔輸送材料溶液(濃度2質量%)を用いて正孔輸送層(層厚120nm)を形成し、かつ、テトラブトキシチタン(IV)を含有する上記電子輸送材料溶液に代えてPC61BMを含有する電子輸送材料溶液(濃度1質量%)により電子輸送層(層厚150nm)を形成したこと以外は、光電変換素子(試料No.101)の製造と同様にして、試料No.c13の光電変換素子を製造した。
光電変換素子(試料No.101)の製造において、透明電極層上に正孔輸送層(NiO層)に代えて電子輸送材層(TiO層)を形成し、かつ、感光層上に電子輸送材層(TiO層)に代えて正孔輸送層(NiO層)を形成したこと以外は、光電変換素子(試料No.101)の製造と同様にして、試料No.c14の光電変換素子を製造した。
光電変換素子(試料No.101)の製造において、透明電極層上に正孔輸送層(NiO層)に代えて電子輸送材層(TiO層)を形成し、かつ、感光層上に電子輸送材層(TiO層)に代えて正孔輸送層(CuSCN層)を形成したこと以外は、光電変換素子(試料No.101)の製造と同様にして、試料No.c15の光電変換素子を製造した。
これらの試料No.c14およびc15の光電変換素子は、特許文献1、非特許文献1および非特許文献2の太陽電池を形成する光電変換素子を想定したものである。
[大気安定性の評価]
各試料No.の光電変換素子について、電池特性試験を行って、初期の光電変換効率(η/%)を測定した。電池特性試験は、ソーラーシミュレーター「WXS−85H」(WACOM社製)を用いて、AM1.5フィルタを通したキセノンランプから1000W/mの擬似太陽光を照射することにより行った。I−Vテスターを用いて電流−電圧特性を測定し、初期の光電変換効率(η/%)を求めた。
その後、各光電変換素子を、相対湿度5〜10%の大気下に室温(20℃)で30日間放置した(大気安定性試験)後に、初期の光電変換効率と同様にして、放置(大気安定性試験)後の光電変換効率(η/%)を測定した。
測定した初期の光電変換効率を1.0(基準)とした場合に、この基準に対する、放置後の光電変換効率の相対値を下記式で算出し、各光電変換素子の大気安定性(保存安定性)を下記評価基準に沿って評価した。結果を下記表1に示す。評価「B」が本発明の大気安定性試験の合格レベルである。

相対値=(大気安定性試験後の光電変換効率)/(初期の光電変換効率)

− 大気安定性試験の評価基準 −
A: 相対値が1.0以下0.9以上
B: 相対値が0.9未満0.8以上
C: 相対値が0.8未満0.6以上
D: 相対値が0.6未満
[耐湿性の評価]
上記のようにして、初期の光電変換効率(η/%)を測定した後に、各光電変換素子を相対湿度80%の大気下に室温(25℃)で12時間放置した(耐湿性試験)。その後、初期の光電変換効率と同様にして、耐湿性試験後の光電変換効率(η/%)を測定した。
測定した初期の光電変換効率を1.0(基準)として、保持率を下記式により算出し、下記評価基準に沿って評価した。結果を下記表1に示す。評価「B」が本発明の耐湿性試験の合格レベルである。

保持率=(耐湿性試験後の光電変換効率)/(初期の光電変換効率)

− 耐湿性試験の評価基準 −
A: 保持率が1.0以下0.9以上
B: 保持率が0.9未満0.8以上
C: 保持率が0.8未満0.6以上
D: 保持率が0.6未満
Figure 2016136729
表1の結果から以下のことが分かる。
すなわち、透明基板側から順に、正孔輸送層、感光層および電子輸送層を互いに隣接させて設け、しかも正孔輸送層および電子輸送層のいずれも無機半導体で形成した光電変換素子は、大気中での経時(大気安定性試験)においても、また高湿環境下(耐湿性試験)においても、光電変換効率の低下が抑えられていた。
光電変換効率の低下は、各無機半導体層を形成する無機半導体が1種である場合、正孔輸送層または電子輸送層を単層構造とするよりも、積層構造とすると、効果的に抑えられていた(試料No.201〜203、試料Nо.301〜302、試料No.401)。また、光電変換効率の低下は、正孔輸送層または電子輸送層を、2種以上の無機半導体を含有する半導体混合層とすると、効果的に抑えられていた(試料No.104および105)。これらの優れた効果は、積層構造または半導体混合層とすることにより、層の均質性が高くなることにより、奏されたものと考えられる。
これに対して、感光層に隣接する正孔輸送層および電子輸送層の少なくとも一方が有機半導体で形成されていると、大気中での経時および高温環境下のいずれにおいても、光電変換効率が大幅に低下した(試料No.c11〜c13)。
また、正孔輸送層および電子輸送層のいずれも無機半導体で形成されていても、感光層に対して電子輸送層が透明基板側に、正孔輸送層が対極側に形成されていると、大気中での経時における光電変換効率が大きく低下し、少なくとも大気安定性に劣っていた(試料No.c14、c15)。
以上の結果から、本発明の光電変換素子ないし太陽電池が、大気安定性および耐湿性のいずれにも優れていることが分かった。
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
本願は、2015年2月27日に日本国で特許出願された特願2015−039389に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
11 透明基板
12 透明電極層
13A、13B 正孔輸送層
13B1 第1正孔輸送層
13B2 第2正孔輸送層
14 感光層
15A、15B 電子輸送層
15B1 第1電子輸送層
15B2 第2電子輸送層
16 対極
6 外部回路(リード)
10A〜10D 光電変換素子
100A〜100D 光電変換素子を電池用途に応用したシステム
M 電動モーター
【0004】
導体混合層を含む<1>〜<4>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<6>正孔輸送層の無機半導体層を形成する無機半導体および電子輸送層の無機半導体層を形成する無機半導体の少なくとも1種が、金属酸化物である<1>〜<5>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<7>正孔輸送層の無機半導体層を形成する無機半導体および電子輸送層の無機半導体層を形成する無機半導体が、いずれも、金属酸化物である<1>〜<6>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<8>ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が、周期表第一族元素もしくはカチオン性有機基A、周期表第一族元素以外の金属原子Mおよびアニオン性原子もしくは原子団Xを有する<1>〜<7>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<9><1>〜<8>のいずれか1つに記載の光電変換素子を用いた太陽電池。
<10>電子輸送層が、感光層に隣接して配置された隣接層と他層からなる2層の積層構造であり、隣接層と他層がともに無機半導体層であり、かつ隣接層の膜厚と他層の膜厚との比(隣接層:他層)が、1:0.05〜1:20である<1>〜<8>のいずれか1項に記載の光電変換素子。
[0011]
本明細書において、各式の表記は、化合物の化学構造の理解のために、一部を示性式として表記することもある。これに伴い、各式において、部分構造を、(置換)基、イオンまたは原子等と称するが、本明細書において、これらは、(置換)基、イオンまたは原子等のほかに、上記式で表される(置換)基もしくはイオンを構成する元素団、または、元素を意味することがある。
[0012]
本明細書において、化合物(錯体、色素を含む)の表示については、化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。さらに、置換または無置換を明記していない化合物については、目的とする効果を損なわない範囲で、任意の置換基を有する化合物を含む意味である。このことは、置換基および連結基等(以下、置換基等という)についても同様である。
[0013]
本明細書において、特定の符号で表示された置換基等が複数あるとき、または複数の置換基等を同時に規定するときには、特段の断りがない限り、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。また、複数の置換基等が近接すると
本発明の上記の課題は以下の手段により解決された。
<1>透明基板上に、透明電極層、正孔輸送層、少なくとも1種のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を光吸収剤として含む感光層、電子輸送層および対極をこの順に有し、
正孔輸送層および電子輸送層が、いずれも、無機半導体で形成された無機半導体層であり、かつ感光層に隣接している光電変換素子。
<2>正孔輸送層の無機半導体層が、積層構造である<1>に記載の光電変換素子。
<3>正孔輸送層の無機半導体層が、2種以上の無機半導体で形成された半導体混合層を含む<1>または<2>に記載の光電変換素子。
<4>電子輸送層の無機半導体層が、積層構造である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<5>電子輸送層の無機半導体層が、2種以上の無機半導体で形成された半導体混合層を含む<1>〜<4>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<6>正孔輸送層の無機半導体層を形成する無機半導体および電子輸送層の無機半導体層を形成する無機半導体の少なくとも1種が、金属酸化物である<1>〜<5>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<7>正孔輸送層の無機半導体層を形成する無機半導体および電子輸送層の無機半導体層を形成する無機半導体が、いずれも、金属酸化物である<1>〜<6>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<8>ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が、周期表第一族元素もしくはカチオン性有機基A、周期表第一族元素以外の金属原子Mおよびアニオン性原子もしくは原子団Xを有する<1>〜<7>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<9>電子輸送層が、感光層に隣接して配置された隣接層と他層からなる2層の積層構造であり、隣接層と他層がともに無機半導体層であり、かつ隣接層の膜厚と他層の膜厚との比(隣接層:他層)が、1:0.05〜1:20である<1>〜<8>のいずれか1項に記載の光電変換素子。
<10><1>〜<9>のいずれか1つに記載の光電変換素子を用いた太陽電池。

Claims (9)

  1. 透明基板上に、透明電極層、正孔輸送層、少なくとも1種のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を光吸収剤として含む感光層、電子輸送層および対極をこの順に有し、
    前記正孔輸送層および前記電子輸送層が、いずれも、無機半導体で形成された無機半導体層であり、かつ前記感光層に隣接している光電変換素子。
  2. 前記正孔輸送層の前記無機半導体層が、積層構造である請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記正孔輸送層の前記無機半導体層が、2種以上の前記無機半導体で形成された半導体混合層を含む請求項1または2に記載の光電変換素子。
  4. 前記電子輸送層の前記無機半導体層が、積層構造である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  5. 前記電子輸送層の前記無機半導体層が、2種以上の前記無機半導体で形成された半導体混合層を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  6. 前記正孔輸送層の前記無機半導体層を形成する無機半導体および前記電子輸送層の前記無機半導体層を形成する無機半導体の少なくとも1種が、金属酸化物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  7. 前記正孔輸送層の前記無機半導体層を形成する無機半導体および前記電子輸送層の前記無機半導体層を形成する無機半導体が、いずれも、金属酸化物である請求項1〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  8. 前記ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が、周期表第一族元素もしくはカチオン性有機基A、周期表第一族元素以外の金属原子Mおよびアニオン性原子または原子団Xを有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の光電変換素子を用いた太陽電池。
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