JP4977289B2 - キャパシタ誘電体膜及びスパッタリングターゲット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、DRAM若しくはシステムLSI等の半導体メモリ素子、又は薄膜コンデンサに用いられるキャパシタ誘電体膜、並びにその誘電体膜を形成するためのスパッタリングターゲットに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年における半導体メモリ素子の微細化に伴い、高い誘電率を有するBST[(Ba,Sr)TiO3]膜をそのキャパシタ絶縁膜として導入すること、及びコンデンサ用薄膜等において高い容量を確保するためにBST膜を導入することが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のBST膜をキャパシタ絶縁膜として導入することは、該絶縁膜の薄膜化により、すなわち膜厚が薄くなるにつれて、いわゆるサイズ効果と呼ばれる誘電率の低下や、リーク電流及び誘電損失の増加が観測されるので、半導体メモリ素子等にこの絶縁膜を直接導入し、利用することには問題があった。
【0004】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するものであり、誘電率の低下を抑制し、リーク電流や誘電損失の増加を抑制することによって、キャパシタ絶縁膜の誘電特性を向上させ、半導体メモリ素子等の高速化、微細化に寄与するBST膜及びこのBST膜を用いたキャパシタ誘電体膜を提供すること、並びにこのBST膜を形成する際に用いるスパッタリングターゲットを提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
従来のBST膜の場合、前述のように、キャパシタ絶縁膜として適用できる範囲内の誘電率、リーク電流、誘電損失に関する誘電特性を満たすことは困難であった。本発明者等はこの点に関し鋭意研究を進め、各種実験をした結果、BiをBST材料に添加することにより、キャパシタ絶縁膜の誘電特性が大幅に改善されること、すなわち誘電率の向上、リーク電流の低減、誘電損失の減少が達成されることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の誘電体膜は、BSTにBiを添加したものからなり、上記Biを2.0atm.%以下の範囲で添加する。
【0007】
また、本発明のキャパシタ絶縁膜は、半導体メモリ素子又は薄膜コンデンサに用いられるキャパシタ絶縁膜において、誘電体膜がBSTにBiを添加したものからなる。この誘電体膜は、DRAM若しくはシステムLSIその他の半導体メモリ素子又は薄膜コンデンサに用いられる。
【0008】
好ましくは、上記Bi以外に更にAlを添加し、各々、好ましくは0.01atm.%〜1.0atm.%の範囲で添加される。Al、Biは少しでも添加すれば、無添加の場合と比べて所望の効果が生じるので、下限の添加量は添加する量を制御できる下限の量であり、0.01atm.%である。Al、Biの添加量が1.0atm.%を超えると、BST系の結晶はアモルファス化し、所望の誘電特性が得られないという問題がある。
【0009】
上記キャパシタ絶縁膜の上部電極及び下部電極はPt、Ir、Ru、SrRuO3、又はこれらの合金からなる薄膜であり、該キャパシタ絶縁膜は100Å〜5000Åの膜厚を有することが好ましい。絶縁膜の厚さが100Å未満であると、リーク電流が大きくなり半導体メモリ素子等に使用できず、また、5000Åを超えるとキャパシタンスが取れなくなり、BSTを使用するメリットがないという問題がある。この上下電極の膜厚は、通常、200Å〜5000Åとして用いられる。
【0010】
本発明によれば、BSTにAlやBiを添加することにより、無添加のBST膜に比べて、誘電特性の向上したキャパシタ絶縁膜とすることができ、これを半導体メモリ素子や薄膜コンデンサに導入して、利用することに成功したのである。
【0011】
AlやBiの添加により、ペロブスカイト構造を有するBST膜の結晶粒内でBサイトにAlやBiが置換されるか、又は結晶粒界に析出することがEPMA(Electron Probe Microscopic Analysis)法によって確認された。
【0012】
BST薄膜の電気伝導機構としては、第一に、結晶粒内の酸素欠陥を経由した電気伝導、第二に、結晶粒界層において導電物が析出し、その結果電子移動が誘発される電気伝導機構が存在する。このような電気伝導機構においては、BST結晶内にAlやBiを添加することによって、これらの添加物がBサイトのTiイオンに対し、アクセプタとして置換される。それにより、結晶粒内の酸素空孔が電気的に補償され、誘電率の増加、リーク電流の低減、誘電損失の低下が観測される。
【0013】
また、AlやBiは、結晶粒界においては多価をとらず、Al2O3、Bi2O3として安定な絶縁物を構成することから、結晶粒界層においてもその絶縁性が確保される。
【0014】
以上詳述したように、二つの電気伝導機構においてAl、Biが果たす役割は非常に需要であり、所定量のAl、Biの添加により、誘電率の向上、リーク電流の低減、誘電損失の低下が達成されている。
【0015】
本発明のスパッタリングターゲットは、BSTにBiが添加されたものからなり、上記誘電体膜を形成するためのスパッタリングターゲットである。このターゲットを用いることにより、所望の誘電特性を有するキャパシタ絶縁膜を作製することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の詳細を、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明のBSTキャパシタ絶縁膜の一例の概略構造を示す断面図である。なお、以下例示するキャパシタ絶縁膜は、シリコン熱酸化膜基板上に全て公知のスパッタ装置を用いて成膜した薄膜からなっている。
【0018】
図1に例示する本発明のBSTキャパシタ絶縁膜は、シリコン(Si)基板1上にシリコン熱酸化(SiO2)膜2を設け、その上に、順次、極めて良好なバリア特性を示すTiAlN膜3、下部Pt電極膜4(膜厚:1000Å)、Al及びBiの少なくとも一種を添加したBST膜5(膜厚:300Å)、並びに上部Pt電極膜6(膜厚:1000Å)を、公知の条件下でスパッタリング法により成膜してなるものである。
【0019】
バリア膜3は、後述のBSTの電気特性に影響を与えるものでなければ、TiAlN膜に限らず、TiSiN膜、TaN膜、又はTiO2などの酸素バリア性を有するバリア膜を用いることができる。下部Pt電極膜4及び上部Pt電極膜6の厚さはそれぞれ、上記例では1000Åとしたが、表面ラフネスが大きくなり、後述のBSTの電気特性に影響を与えることのない厚さであれば、特に制限されるものではない。上部及び下部電極4、6の材料としては、Pt膜以外に、Ru、Ir、SrRuO3等の金属やこれらの合金からなる膜及びこれらの酸化膜導電体でも、所期の目的を達成するために適用可能である。また、BST膜5は、AlやBiを各々0.01atm.%〜2.0atm.%(0.01,0.1、0.3、0.5、1.0及び2.0atm.%)添加して得た膜である。このBST膜5としては厚さ300Åのものを用いたが、その膜厚は、半導体素子や薄膜コンデンサの構造上要求される容量値を満足する厚さであれば、特に制限されるものではない。
【0020】
また、BSTを成膜する際には、組成(Ba0.5,Sr0.5)TiOxからなるターゲットをスパッタ成膜時に使用した。AlはAl2O3のような酸化物として、BiはBi2O3のような酸化物としてターゲットに添加されている。また、図1に示す上部電極6は、0.5mmφのドットであり、上部電極、下部電極間で測定を行なっている。
【0021】
上記のようにして作製したキャパシタ絶縁膜について、誘電率K、リーク電流JL(A/cm2)、及び誘電損失(誘電正接tanδ)を公知の方法に従って測定した。その結果を、横軸にAl、Biの添加量をとり、縦軸に各測定値をプロットして図2〜7に示す。
【0022】
図2は誘電率Kに対するAl添加量依存性を示すものであり、この図から、Al添加ターゲットを用いた場合、Al0.5atm.%添加時に誘電率の最大値として約270をとることが明らかである。図3は誘電率Kに対するBi添加量依存性を示すものであり、この図からBi添加ターゲットを用いた場合、Bi0.3atm.%添加時に誘電率の最大値として約310をとることが明らかである。
【0023】
図4は1V印加時のリーク電流に対するAl添加量依存性を示すものであり、この図からAl0.3atm.%添加時にリーク電流として最小値2×10-9(A/cm2)が得られていることが明らかである。図5は1V印加時のリーク電流に対するBi添加量依存性を示すものであり、この図からBi0.1atm.%添加時にリーク電流として最小値1×10-9(A/cm2)が得られていることが明らかである。
【0024】
図6は誘電正接tanδに対するAl添加量依存性を示すものであり、この図からAl0.5atm.%添加時にtanδとして最小値約0.018が得られていることが明らかである。図7は誘電正接tanδに対するBi添加量依存性を示すものであり、この図からBi0.3atm.%添加時にtanδとして最小値約0.028が得られていることが明らかである。
【0025】
図2〜7から明らかなように、BSTに特定量のAl及びBiが添加されてなる誘電体膜を利用したキャパシタ絶縁膜は、Al及びBiの添加されていない場合に比べて、誘電率の低下が抑制され、リーク電流の増加が抑制され、また、誘電損失の増加が抑制されていることが分かる。かくして、良好なキャパシタ特性を有する半導体メモリ素子や薄膜コンデンサが実現可能である。
【0026】
上記のようにAl、Biを単独に添加した代わりに、AlとBiとを併用して添加した場合も、同様に、誘電率、印加時のリーク電流、及び誘電正接δに対するAl及びBiの添加量依存性が確認された。
【0027】
BSTを成膜する際に、組成(Ba0.5,Sr0.5)TiOxからなるターゲットをスパッタ成膜時に使用したが、Ba及びSrの比率を変更した場合にも、同様な添加量で所望の結果が得られた。
【0028】
さらに、上記ではスパッタ法に従ってBST薄膜を作製したが、従来公知のMOCVD法、PLD(Pulse Laser Deposition)法、ゾルゲル法等他の成膜方法で作製したBST薄膜についても適用可能である。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、BSTターゲットにBiを添加したものを用いて作製した誘電体膜を利用することにより、BSTキャパシタ絶縁膜の高誘電率化、低リーク電流化及び低誘電損失化が達成され、良好なキャパシタ特性を有する半導体メモリ素子や薄膜コンデンサを実現することができる。
【0030】
また、これらの添加物はBSTターゲットの組成においてはBa及びSrの比率を変更した場合又はAl及びBiを複合添加する場合にも適用可能である。
【0031】
さらに、従来公知のMOCVD法、PLD法、ゾルゲル法等の他の成膜方法で作製したBST薄膜についても適用可能であり、その有用性は絶大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のBSTキャパシタ絶縁膜の概略構造を示す断面図。
【図2】 誘電率Kに対するAl添加量依存性を示すグラフ。
【図3】 誘電体Kに対するBi添加量依存性を示すグラフ。
【図4】 印加時のリーク電流に対するAl添加量依存性を示すグラフ。
【図5】 印加時のリーク電流に対するBi添加量依存性を示すグラフ。
【図6】 誘電正接tanδに対するAl添加量依存性を示すグラフ。
【図7】 誘電正接tanδに対するBi添加量依存性を示すグラフ。
【符号の説明】
1 シリコン基板 2 シリコン熱酸化膜
3 TiAlN膜 4 下部Pt電極膜
5 BST膜 6 上部Pt電極膜
Claims (5)
- BSTにBiを2.0atm.%以下の範囲で添加したものからなることを特徴とするキャパシタ誘電体膜。
- 前記Bi以外に更にAlを添加し、前記Bi及び前記Alは0.01atm.%〜1.0atm.%の範囲で添加することを特徴とする請求項1記載のキャパシタ誘電体膜。
- 上記キャパシタ誘電体膜の上部電極及び下部電極がPt、Ir、Ru、SrRuO3、又はこれらの合金からなる薄膜であり、また、該キャパシタ誘電体膜が100Å〜5000Åの膜厚を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のキャパシタ誘電体膜。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のキャパシタ誘電体膜を形成するためのスパッタリングターゲットが、BSTにBiを添加したものからなることを特徴とするスパッタリングターゲット。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のキャパシタ誘電体膜を形成するためのスパッタリングターゲットが、BSTにBi及びAlを添加したものからなることを特徴とするスパッタリングターゲット。
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