JPWO2016121962A1 - メラニン産生抑制剤 - Google Patents
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Abstract
下記一般式(I)で表される化合物又はその塩を含む、メラニン産生抑制剤。(式中、nは0〜2の整数を表し、mは1又は2を表し、Rはグリセロールから1つの水酸基が除かれた親水性基を表し、は一重結合又は二重結合を表す)
Description
本発明は、メラニン産生抑制剤に関する。
美白化粧品の市場は年々拡大を続けている。より高い効果を持つ美白成分の開発が求められており、新規美白成分の研究・開発が様々な化粧品メーカーや研究機関で行われている。メラニンは皮膚や毛の色を決定する高分子色素であり、紫外線から皮膚を保護する重要な役割を持つ。しかし、表皮中のメラニン量の増加・蓄積は色素沈着の原因となる。
メラニンの生成には様々な要因が関係しているが、その中でもチロシナーゼは主要な働きをすることが知られている。チロシナーゼは酸化還元酵素であり、動植物における様々な色素形成反応を触媒する。例えば、紫外線照射を受けた皮膚のメラノサイトでは、チロシンが出発物質となり、チロシナーゼの働きによってドーパ、そしてドーパキノンが生成され、これがさらに酸化反応を経て最終的にメラニン色素が生成される。このメラニン生成反応の初期段階で機能するチロシナーゼ活性を阻害することがメラニン生成の抑制につながる。メラニンの過剰蓄積がシミやそばかす等の皮膚褐変を引き起こすことから、様々なチロシナーゼ活性阻害剤がそのメラニン産生抑制作用に基づいて医薬品や化粧料に用いられている。例えば、チロシナーゼ活性阻害作用を有するリン酸アスコルビルマグネシウムやアスコルビン酸グルコシドなどのアスコルビン酸誘導体は、美白用途で多くの化粧料等に配合されている。
一方で近年では、抗炎症作用を起点とする美白剤を配合する化粧品も販売されており、消費者の認知度も高まってきている。例えば、チロシナーゼに加えて、表皮角化細胞(ケラチノサイト)において産生される多様なメラノサイト刺激因子もメラニン産生に関与していることが知られるようになってきており、メラノサイト刺激因子として、炎症に関与するサイトカインの1つであるMIF(マクロファージ遊走阻止因子)も報告されている(非特許文献1)。非特許文献1は、MIF活性の抑制による美白効果を報告している。MIFは通常、皮膚細胞内に存在しており、紫外線や菌感染などによってすぐに細胞から分泌されることで、皮膚炎症の初期段階に産生され、連鎖的な炎症を惹起する。この作用から、日焼けや菌感染症、アトピー性皮膚炎などへの関与が報告されていたが、MIFによる炎症惹起とメラニン産生の直接的なメカニズムも解明されつつある。また最近、MIFが表皮細胞に作用し、メラニン合成を刺激するSCF(幹細胞因子)の産生促進によりメラニン合成を増加させること、また、MIFがメラノソーム輸送に関与するPAR−2(プロテアーゼ受容体)の産生を促進することも報告されている(非特許文献2)。これらのことから、MIFはメラノサイトへの直接への刺激だけでなく、表皮細胞に作用した後にメラニン産生を促進するのではないかと推測される。このように、チロシナーゼ活性阻害以外の作用機序に基づく美白剤の開発も進められている。しかし新規な美白剤の開発はなおも求められている。
ところで、モノO−(5,9,13−トリメチルテトラデカ−4−エノイル)グリセロール(C17モノグリセリンエステル又はMGPAとも称される)は、低い粘度を有し、かつ水性媒体中でII型(油中水型)の非ラメラ液晶を形成できる化合物として報告されている(特許文献1)。C17モノグリセリンエステルと水から形成される液晶を含む皮膚外用剤は、ビタミンC誘導体など生理活性成分の経皮浸透促進性や保湿性に優れることも明らかになっている(特許文献2)。しかしC17モノグリセリンエステルの他の用途はまだ十分に知られていない。
中間満雄「新規メラニン産生制御因子マクロファージ遊走阻止因子(MIF)に対する白神酵母エキスの効果」、フレグナンスジャーナル、2011−5
「肌蛋白「MIF」抑制する美白メカニズムを解明」薬事日報、5面、2012年2月1日
本発明は、新規なメラニン産生抑制剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、C17モノグリセリンエステルをはじめとするある種の非ラメラ液晶化合物がメラニン産生抑制効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1]下記一般式(I)で表される化合物又はその塩を含む、メラニン産生抑制剤。
(式中、nは0〜2の整数を表し、mは1又は2を表し、Rはグリセロールから1つの水酸基が除かれた親水性基を表し、
は一重結合又は二重結合を表す)
[2]前記式中、nは2を表す、上記[1]に記載のメラニン産生抑制剤。
[3]上記化合物がモノO−(5,9,13−トリメチルテトラデカ−4−エノイル)グリセロール、モノO−(5,9,13−トリメチルテトラデカ−4,8,12−トリエノイル)グリセロール、モノO−(5,9,13−トリメチルテトラデカノイル)グリセロール、モノO−(5,9,13,17−テトラメチルオクタデカ−4−エノイル)グリセロール、又はモノO−(5,9,13,17−テトラメチルオクタデカ−4,8,12,16−テトラエノイル)グリセロールである、上記[1]又は[2]に記載のメラニン産生抑制剤。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかに記載のメラニン産生抑制剤を有効成分として含む、メラニン産生抑制用の皮膚外用剤。
[5]上記化合物又はその塩を0.001〜10重量%の濃度で含む、上記[4]に記載の皮膚外用剤。
[6]化粧料である、上記[4]又は[5]に記載の皮膚外用剤。
[7]医薬である、上記[4]又は[5]に記載の皮膚外用剤。
[8]上記[4]に記載の皮膚外用剤を皮膚に適用することを含む、皮膚におけるメラニン産生を抑制する方法。
[1]下記一般式(I)で表される化合物又はその塩を含む、メラニン産生抑制剤。
は一重結合又は二重結合を表す)
[2]前記式中、nは2を表す、上記[1]に記載のメラニン産生抑制剤。
[3]上記化合物がモノO−(5,9,13−トリメチルテトラデカ−4−エノイル)グリセロール、モノO−(5,9,13−トリメチルテトラデカ−4,8,12−トリエノイル)グリセロール、モノO−(5,9,13−トリメチルテトラデカノイル)グリセロール、モノO−(5,9,13,17−テトラメチルオクタデカ−4−エノイル)グリセロール、又はモノO−(5,9,13,17−テトラメチルオクタデカ−4,8,12,16−テトラエノイル)グリセロールである、上記[1]又は[2]に記載のメラニン産生抑制剤。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかに記載のメラニン産生抑制剤を有効成分として含む、メラニン産生抑制用の皮膚外用剤。
[5]上記化合物又はその塩を0.001〜10重量%の濃度で含む、上記[4]に記載の皮膚外用剤。
[6]化粧料である、上記[4]又は[5]に記載の皮膚外用剤。
[7]医薬である、上記[4]又は[5]に記載の皮膚外用剤。
[8]上記[4]に記載の皮膚外用剤を皮膚に適用することを含む、皮膚におけるメラニン産生を抑制する方法。
本発明によれば、皮膚細胞におけるメラニン産生を効果的に抑制することができる。
本明細書は本願の優先権主張の基礎となる日本国特許出願 特願2015-017197号の内容を包含する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、非ラメラ液晶化合物を有効成分として含む、メラニン産生抑制剤に関する。本発明において非ラメラ液晶化合物とは、水性媒体(水、緩衝液など)中で非ラメラ液晶を形成可能な化合物を意味する。
本発明は、非ラメラ液晶化合物を有効成分として含む、メラニン産生抑制剤に関する。本発明において非ラメラ液晶化合物とは、水性媒体(水、緩衝液など)中で非ラメラ液晶を形成可能な化合物を意味する。
本発明で用いる非ラメラ液晶化合物としては、下記一般式(I):
は一重結合又は二重結合を表す)
で表される化合物又はその塩が挙げられる。より好ましい実施形態では、前記式中、nは2を表す。
一般式(I)で表される化合物の例として、下記一般式(II)で表される化合物が挙げられる。
一般式(II)中、nは0〜2の整数を表し、mは1又は2を表し、Rはグリセロールから1つの水酸基が除かれた親水性基を表す。より好ましい実施形態では、前記式中、nは2を表す。
一般式(I)で表される化合物の別の例として、下記一般式(III)で表される化合物が挙げられる。
一般式(III)中、nは0〜2の整数(好ましくは、1又は2)を表し、mは1又は2を表し、Rはグリセロールから1つの水酸基が除かれた親水性基を表す。より好ましい実施形態では、前記式中、nは2を表す。
一般式(I)で表される化合物のさらに別の例として、下記一般式(IV)で表される化合物が挙げられる。
一般式(IV)中、nは0〜2の整数(好ましくは、1又は2)を表し、mは1又は2を表し、Rはグリセロールから1つの水酸基が除かれた親水性基を表す。より好ましい実施形態では、前記式中、nは2を表す。
なお本発明において、上記一般式中の表記:
は当該化合物が幾何異性体のE体(シス体)若しくはZ体(トランス体)又はそれらの混合物であることを意味する。また本明細書において化合物の名称が「モノ」を含み、上記一般式中のRについて2以上の位置異性体が存在する場合には、その名称によって表される化合物は、それぞれの位置異性体及びその混合物を包含するものとする。例えば上記一般式で表される化合物は、グリセロールの1位又は2位エステル体、及びそれらの混合物を包含する。
は当該化合物が幾何異性体のE体(シス体)若しくはZ体(トランス体)又はそれらの混合物であることを意味する。また本明細書において化合物の名称が「モノ」を含み、上記一般式中のRについて2以上の位置異性体が存在する場合には、その名称によって表される化合物は、それぞれの位置異性体及びその混合物を包含するものとする。例えば上記一般式で表される化合物は、グリセロールの1位又は2位エステル体、及びそれらの混合物を包含する。
以上の非ラメラ液晶化合物によって形成される非ラメラ液晶は、キュービック液晶又は逆ヘキサゴナル液晶でありうる。非ラメラ液晶形成能は、常法により液晶構造を解析することによって確認することができる。偏光顕微鏡を用いたペネトレイション法では、I型キュービック液晶とII型キュービック液晶を容易に判別できる。またエックス線小角散乱(SAXS)測定により散乱ピークの比から、Ia3dキュービック液晶、Im3mキュービック液晶、逆ヘキサゴナル液晶を容易に判別することができ、またSAXSデータから算出したピークの値の逆数の比を求めることにより、容易に空間群と格子定数を決定することができる。
本発明では、上記一般式(I)で表される化合物又はその塩である、メラニン産生抑制作用を有する非ラメラ液晶化合物を用いる。上記一般式(I)で表され、メラニン産生抑制作用を有する非ラメラ液晶化合物の特に好ましい例として、モノO−(5,9,13−トリメチルテトラデカ−4−エノイル)グリセロール(以下、C17モノグリセリンエステルとも称する)が挙げられる。なおC17モノグリセリンエステルは上記一般式(III)で表される化合物の1つ(n=2、m=1)である。C17モノグリセリンエステルは後述の実施例1に記載のようにして合成することができる。好ましい化合物の別の例としては、モノO−(5,9,13−トリメチルテトラデカノイル)グリセロール、モノO−(5,9,13,17−テトラメチルオクタデカノイル)グリセロール、モノO−(5,9,13,17−テトラメチルオクタデカ−4−エノイル)グリセロール、モノO−(5,9,13−トリメチルテトラデカ−4,8,12−トリエノイル)グリセロール、及びモノO−(5,9,13,17−テトラメチルオクタデカ−4,8,12,16−テトラエノイル)グリセロールが挙げられる。
本発明のメラニン産生抑制剤は、皮膚に適用することにより、当該メラニン産生抑制剤を適用しない場合と比較して、皮膚細胞、特にメラノサイトにおけるメラニン産生を有意に抑制することができる。そこで本発明は、上記のような非ラメラ液晶化合物又はその塩を1つ(1種)又は2つ(2種)以上含むメラニン産生抑制剤を提供する。上記非ラメラ液晶化合物の塩は、任意の塩であってよく、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属などの塩が挙げられる。本発明の上記非ラメラ液晶化合物の塩は、用途に応じて、化粧料又は医薬の製造上許容される塩、例えば、薬学上許容される塩であってよい。本発明のメラニン産生抑制剤は組成物であり得る。
本発明の非ラメラ液晶化合物は、後述の実施例の記載を参考にして合成することができる。あるいは、一般式(II)で表される化合物は、例えば、国際公開WO 2014/178256に記載された合成法に従って合成することができる。一般式(III)で表される両親媒性化合物は、例えば、国際公開WO 2011/078383に記載された合成法に従って合成することができる。さらに、一般式(IV)で表される両親媒性化合物は、例えば、国際公開WO 2006/043705に記載された合成法に従って合成することができる。合成された化合物については、NMR測定等の常法により、目的の化合物が得られたことを確認しておくことが好ましい。
本発明は、本発明のメラニン産生抑制剤又は上記非ラメラ液晶化合物を有効成分として含む、メラニン産生抑制用の皮膚外用剤も提供する。本発明の皮膚外用剤は、メラニン産生抑制を目的として皮膚に外部から適用する任意の製剤である。本発明の皮膚外用剤は、化粧料であってもよいし、医薬であってもよい。本発明において医薬は、医薬品と医薬部外品を包含する。本発明の皮膚外用剤は、好ましくは美白用化粧料又は美白用医薬である。「美白用」とは、通常はメラニン産生による皮膚の黒化の予防(黒化防止若しくは軽減)を意味するが、黒化の改善(白色化)も含みうる。本発明のメラニン産生抑制剤は、美白剤でもありうる。本発明の皮膚外用剤及び美白剤は組成物であり得る。
本発明の皮膚外用剤は、本発明のメラニン産生抑制剤又はその有効成分である上記非ラメラ液晶化合物に加えて、水性媒体を含んでもよい。水性媒体としては、特に限定するものではないが、滅菌水、精製水、蒸留水、イオン交換水、超純水などの水;生理的食塩水、塩化ナトリウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液、硫酸ナトリウム水溶液、硫酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、酢酸ナトリウム水溶液等の電解質水溶液;リン酸緩衝溶液やトリス塩酸緩衝溶液などの緩衝溶液;グリセリン、ブチレングリコール(例えば1,3ブチレングリコール)、エチレングリコール、エタノール等のアルコールをはじめとする水溶性有機化合物を含有する水溶液等が挙げられる。本発明の皮膚外用剤は、例えば、アルコールと水を含んでもよい。本発明の皮膚外用剤は、1種又は2種以上のアルコールを含んでもよい。
本発明の皮膚外用剤は、油分(例えば、揮発性油分)を含んでもよいし、含まなくてもよい。油分としては医薬品又は化粧料において使用可能な油性成分、例えば、植物油、動物油、鉱物油、エステル油(例えば、パルミチン酸エチルヘキシル)、シリコーン油、フッ素油等が挙げられる。
一実施形態では、本発明の皮膚外用剤は、上記非ラメラ液晶化合物を0.001〜0.5重量%、例えば0.001〜0.1重量%、0.001〜0.05重量%又は0.001〜0.01重量%の濃度で含んでもよい。別の実施形態では、本発明の皮膚外用剤は、上記非ラメラ液晶化合物を0.0001〜15重量%で含んでもよいし、0.001〜10重量%、例えば0.005〜1.0重量%、0.01〜0.5重量%、0.05〜0.1重量%又は0.05〜10重量%の濃度で含んでもよい。なお本発明において「重量%」は、w/w(weight/weight)%である。
本発明のメラニン産生抑制剤又は皮膚外用剤は、上記非ラメラ液晶化合物又はその塩に加えて、製剤の適用性(溶解補助、pH調節、等張化、吸収促進、安定化、成形など)を高めるための薬学上許容される任意の添加剤を含有してもよい。このような添加剤の例として、溶媒(水、生理食塩水等)、乳化剤、希釈剤、保湿剤、増粘剤、酸化防止剤、防腐剤、中和剤、緩衝剤、分散剤、ゲル化剤、滑沢剤、コーティング剤、pH調整剤、キレート剤、香料、色素等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の皮膚外用剤はまた、メラノサイトに対するメラニン産生抑制効果を阻害しない限り、他の生理活性成分を含んでもよい。例えば、本発明の皮膚外用剤は、より高い美肌効果を得るため、コラーゲンペプチド、ヒアルロン酸、セラミド、プラセンタエキス、ビタミン類、乳酸菌エキス等の美肌作用を有する成分をさらに含んでもよい。
本発明の皮膚外用剤は外用可能な任意の剤形であってよく、例えば、クリーム、乳液、ローション、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏、ハップ剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション等の形態であってよい。
上記非ラメラ液晶化合物、本発明のメラニン産生抑制剤又は本発明の皮膚外用剤のメラニン産生抑制効果は、皮膚モデルに適用して一定期間(例えば2週間)培養した後、皮膚モデル細胞に含まれるメラニン量を測定し、それらを適用していない無処理の皮膚モデルと比較して、メラニン量が有意に低減したことを確認することにより判定することができる。メラニン量の測定は、アルカリ可溶化法を利用してメラニンを定量することにより行ってもよい。メラニン量の測定はまた、皮膚モデルに適用して一定期間(例えば2週間)培養後の皮膚モデルの顕微鏡下観察画像について目視判定又は画像処理判定を行い、皮膚の黒化レベルの相対値を算出することにより行ってもよい。上記非ラメラ液晶化合物、本発明のメラニン産生抑制剤又は本発明の皮膚外用剤はまた、細胞毒性が低いため、より安全性が高い。
上記非ラメラ液晶化合物、本発明のメラニン産生抑制剤又は本発明の皮膚外用剤のメラニン産生抑制効果はまた、マウス由来のB16メラノーマ細胞を用いて評価することもできる。B16メラノーマ細胞は、メラニン産生能を有し、メラニン生成に対する作用を試験するために一般的に使用されている。例えば、その非ラメラ液晶化合物、メラニン産生抑制剤又は皮膚外用剤を、最終濃度50μMとなるようにB16メラノーマ細胞に添加し、72時間培養した後、細胞を回収し、10% FBS(ウシ胎仔血清)を添加したDMEM培地に懸濁する。この懸濁液を1,500 rpm、10分間遠心分離し、上清を分取して波長405 nmの吸光度を測定し、別途作成したメラニン検量線に基づいて細胞中のメラニン量を算出し、それをメラニン生成量とし、並行して試験した試料無添加群(対照)のメラニン生成量に対する比率(メラニン量比率)を決定すればよい。メラニン量比率が100%よりも低いこと(好ましくは、統計学的に有意に低いこと)は、試験した非ラメラ液晶化合物、メラニン産生抑制剤又は皮膚外用剤がメラニン産生抑制効果を有することを示す。それらが示すメラニン量比率は、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは70%以下、特に好ましくは60%以下である。
なお上記非ラメラ液晶化合物、本発明のメラニン産生抑制剤又は本発明の皮膚外用剤のメラニン産生抑制効果は、チロシナーゼ活性阻害作用に基づくものではない。
本発明はまた、上記非ラメラ液晶化合物、本発明のメラニン産生抑制剤又は本発明の皮膚外用剤を用いたメラニン産生抑制方法も提供する。本発明のメラニン産生抑制方法は皮膚細胞、特にメラノサイトに対してin vitro、in vivo又はex vivoで実施することができる。例えば、上記非ラメラ液晶化合物、本発明のメラニン産生抑制剤又は本発明の皮膚外用剤を皮膚に適用することにより、皮膚における、より具体的には皮膚細胞、特にメラノサイトにおけるメラニン産生を抑制することができる。本発明のメラニン産生抑制方法は、異常なメラニン産生亢進やメラニン沈着増加が見られる疾患に対する治療又は予防方法に用いることができる。そのような疾患としては、例えば肝斑や皮膚色素沈着過剰症が挙げられる。皮膚色素沈着過剰症とは、家族性素因、ホルモン、太陽光への曝露、及び皮膚老化等を原因とする、メラニンの蓄積が皮膚に褐色又は有色の斑の外観となって現れる皮膚障害である。本発明のメラニン産生抑制方法はまた、美容のための肌に対する美白方法に用いてもよい。美白方法は、例えば、肌のしみ、そばかす、くすみ等の改善や予防を目的として行うことができる。本発明のメラニン産生抑制方法を適用する対象は哺乳動物であり、好ましくはヒトである。メラニン産生抑制方法を適用する対象は、異常なメラニン産生亢進やメラニン沈着増加が見られる疾患を有するか又はその疾患を発症するリスク(遺伝的素因、又は生活習慣上若しくは環境上のリスクなど)が高い患者が挙げられる。メラニン産生抑制方法を適用する対象はまた、美容のための肌に対する美白を望むヒトが対象であってよい。さらに本発明は、上記非ラメラ液晶化合物、本発明のメラニン産生抑制剤又は本発明の皮膚外用剤を皮膚に適用することにより、メラニン産生亢進やメラニン沈着増加のリスクを低下させる方法も提供する。例えば、メラニン産生抑制のための本発明の皮膚外用剤の一日当たりの好ましい使用量は、使用する対象、剤形、使用間隔等の要因に依存して変動するが、典型的には、ヒト成人一人の一日当たりの使用量で、全顔であれば約0.1〜3g/日、顔を除く全身であれば約1〜10g/日であってよい。この一日量は、一度に使用してもよく、2〜4回に分割して使用してもよい。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、下記実施例1、3、及び6に記載した各化合物の粘度は粘度・粘弾性測定装置(Gemini II、マルバーン社)を使用し、温度25℃にて測定した。
グリセロール0.65g(7.1mmol)及び炭酸カリウム0.59g(4.3mmol)の乾燥N,N−ジメチルホルムアミド(3.5mL)溶液に、80℃で5,9,13−トリメチルテトラデカ−4−エン酸メチル1.0g(3.5mmol)をゆっくり滴下した。100℃で18時間撹拌した後、反応液に1M塩酸を添加し、エーテルで抽出した。抽出液を飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン混液)で精製することにより、MGPAを無色透明液体として得た。
得られた化合物について、1H−NMR測定及び粘度測定を行った結果は以下の通りである。
1H−NMRスペクトル(300MHz,CDCl3,TMS)δ:0.80−0.90(m,9H),1.00−1.70(m,15H),1.97(td,J=7.8,17.0Hz,2H),2.13(t,J=6.1Hz,1H,OH),2.25−2.45(m,4H),2.55(d,J=5.2Hz,1H,OH),3.50−4.00(m,3H),4.10−4.25(m,2H),5.08(t,J=6.7Hz,1H)
粘度:0.48Pa・s(せん断速度92 1/s)
1H−NMRスペクトル(300MHz,CDCl3,TMS)δ:0.80−0.90(m,9H),1.00−1.70(m,15H),1.97(td,J=7.8,17.0Hz,2H),2.13(t,J=6.1Hz,1H,OH),2.25−2.45(m,4H),2.55(d,J=5.2Hz,1H,OH),3.50−4.00(m,3H),4.10−4.25(m,2H),5.08(t,J=6.7Hz,1H)
粘度:0.48Pa・s(せん断速度92 1/s)
[実施例2] 三次元皮膚モデルを用いたメラニン産生抑制効果評価試験
MEL−300皮膚モデル(アジア人ドナー;MatTek)、及び専用のEPI−100−LLMM維持培地を用いて、以下のとおり被験試料のメラニン産生抑制効果の評価を実施した。MEL−300皮膚モデルをはじめとするメラノサイト含有ヒト皮膚三次元モデルは、専用培地中のメラニン産生促進因子の作用により長期培養において黒化が進行するため、ヒト皮膚の擬似モデルとして美白成分のメラニン産生抑制効果評価用に汎用されている。
MEL−300皮膚モデル(アジア人ドナー;MatTek)、及び専用のEPI−100−LLMM維持培地を用いて、以下のとおり被験試料のメラニン産生抑制効果の評価を実施した。MEL−300皮膚モデルをはじめとするメラノサイト含有ヒト皮膚三次元モデルは、専用培地中のメラニン産生促進因子の作用により長期培養において黒化が進行するため、ヒト皮膚の擬似モデルとして美白成分のメラニン産生抑制効果評価用に汎用されている。
被験試料としては、実施例1に記載のようにして合成したC17モノグリセリンエステルを用いた。比較例ではオレイン酸モノグリセリド(リケマールOL−100E;理研ビタミン)を用いた。C17モノグリセリンエステル、及びオレイン酸モノグリセリドはそれぞれ、パルミチン酸エチルヘキシル(IOP)中に溶解し、これらを試料溶液として用いた。
6ウェルプレートの各ウェルにEPI−100−LLMM培地を添加した後、各ウェルに培養カップ中のMEL−300皮膚モデルを配置し、37℃、5%CO2のインキュベーター内で培養し、馴化した。新しい6ウェルプレートにEPI−100−LLMM培地を添加し、馴化後のMEL300皮膚モデルを配置した。培養カップ中のMEL300皮膚モデルに、上記で調製した試料溶液を角層側から100μL添加し(試料最終濃度:0.001%、0.01%、又は0.1%;いずれもw/v(%))、37℃、5%CO2のインキュベーター内で2週間培養した。培養期間中2日毎に試料及び培地を新鮮なものに交換した。2週間培養後、分光測色計Color Reader CR−13 (MINOLTA CO., LTD, Japan)を用いて皮膚モデルのL*値(明度指標値)の測色を行うとともに、皮膚の黒化レベルについて目視判定及び観察画像の撮影を行った。目視判定では、最も高い黒化レベルを5として5段階(5(黒)〜1(白))でスコア化した。
また2週間培養後の皮膚モデルについて、アラマーブルー法により細胞生存率を決定し、試料の細胞毒性を評価した。具体的には、アラマーブルー試薬をEPI−100−LLMM培地にて10倍希釈し、24ウェルプレートに300μLずつ分注した。皮膚モデルをこのアラマーブルー含有培地にて2時間培養し、培地中に放出された蛍光(Ex./Em.=544nm/590nm)を測定することにより細胞生存率を決定した。測定値は陰性コントロールの皮膚モデルを100とした相対値として表した。
さらに、アルカリ可溶化法により、2週間培養後の皮膚モデルに含まれるメラニンの定量を行った。培養完了後の培養カップから回収した皮膚モデルの全量を、生理的リン酸緩衝液(Ca2+、Mg2+フリー)、5%トリクロロ酢酸、及びエタノール/ジエチルエーテル(3:1)混液でそれぞれ3回ずつ順次洗浄後、ジエチルエーテルにて1回洗浄した。皮膚モデルを乾燥後、1M水酸化ナトリウム水溶液を用いて加熱溶解した。得られたアルカリ溶解液について、405nmにおける吸光度を測定した。一方、合成メラニン試料を用いて検量線を作成し、それを用いて吸光度測定値から皮膚モデル中のメラニン量を算出した。
なお陽性コントロールとして、0.5%コウジ酸を用いて、被験試料と同様に皮膚モデルを処理し、評価を行った。また陰性コントロール(被験試料未処理コントロール)として、IOPのみで同様に皮膚モデルを処理し、評価を行った。
得られたL*値、細胞生存率及びメラニン量について、陰性コントロールとの間でStudent−t検定による有意差検定を行った。
図1に、被験試料処理後の黒化レベルの目視判定結果及び観察画像を示した。図1に示されるように、C17モノグリセリンエステル及びオレイン酸モノグリセリドはいずれも、黒化スコアの減少、すなわち皮膚モデルの白色化をもたらした。
表1に被験試料処理による皮膚の明度変化を示すL*値を示した。L*値が大きいほど明度が高く、皮膚がより白いことを意味する。C17モノグリセリンエステル処理について、陰性コントロールと比較して、0.001%から明度の増加が認められ、さらに0.100%まで濃度を高めた場合には顕著な明度の増加が認められたことから、全体として濃度依存的な明度の増加傾向が示された。一方、オレイン酸モノグリセリドにも、陰性コントロールと比較して、0.001%から明度の増加は認められたものの、0.100%まで濃度を高めても明度の増加度は変わらず、濃度依存性は認められなかった。
表2には、被験試料処理の皮膚細胞毒性の有無を示す細胞生存率を示した。C17モノグリセリンエステルとオレイン酸モノグリセリドはいずれを用いた場合にも、0.001%と0.010%で細胞生存率に有意な低下は認められなかったが、オレイン酸モノグリセリドについては0.1%濃度で細胞生存率の低下が認められた。C17モノグリセリンエステルについて、オレイン酸モノグリセリドに比べて細胞毒性が低いこと、少なくとも0.100%で細胞毒性がないことが示された。
表3に被験試料処理によるメラニン量変化の結果を示した。C17モノグリセリンエステルを用いた場合、濃度依存的なメラニン量の減少が認められ、陰性コントロールとの間で有意差が認められた。0.1%濃度のC17モノグリセリンエステルを用いた処理では、高い美白効果が知られているコウジ酸による処理と近いレベルのメラニン量低減が認められた。一方、オレイン酸モノグリセリドを用いた場合にもメラニン産生量の減少は認められたものの、濃度依存性は得られず、高濃度処理域にてばらつきが大きくなった。表2に示したようにオレイン酸モノグリセリドは高濃度域において細胞生存率が減少傾向を示すことから、オレイン酸モノグリセリドが皮膚モデルに何らかの影響を与え、それがばらつきの原因となったものと考えられる。
以上より、C17モノグリセリンエステルがメラニン産生抑制作用を有し、それにより美白作用を有することが示された。
200〜250mmHgの減圧下、グリセロール9.2g(0.10mol)及び炭酸カリウム0.28g(2.0mmol)の乾燥N,N−ジメチルホルムアミド(20mL)溶液に、85℃で5,9,13−トリメチルテトラデカ−4,8,12−トリエン酸メチル(ファルネシル酢酸メチルとも称する)13.9g(50.0mmol)を徐々に滴下し、同一温度で3時間撹拌した。この間、反応で生じたメタノールは留去した。得られた反応溶液を酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒(1:1,150mL)で希釈し、水、飽和重曹水、及び飽和食塩水(2回)で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後濃縮することによって得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=100:0〜0:100)で精製することにより、表題の化合物8.22g(収率49%)を無色透明液体として得た。
得られた化合物について、1H−NMR測定及び粘度測定を行った結果は以下の通りである。
1H−NMRスペクトル(270MHz,CDCl3,TMS)δ:1.5−1.8(m,12H),1.9−2.1(m,8H),2.1(brs,1H,OH),2.25−2.45(m,4H),2.56(brs,1H,OH),3.59(dd,J=5.6,11.2Hz,1H),3.68(dd,J=3.6,11.2Hz,1H),3.92(m,1H),4.14(dd,J=6.0,11.6Hz,1H),4.21(dd,J=4.8,11.6Hz,1H),5.02−5.16(m,3H)
粘度:0.26Pa・s(せん断速度92 1/s)
1H−NMRスペクトル(270MHz,CDCl3,TMS)δ:1.5−1.8(m,12H),1.9−2.1(m,8H),2.1(brs,1H,OH),2.25−2.45(m,4H),2.56(brs,1H,OH),3.59(dd,J=5.6,11.2Hz,1H),3.68(dd,J=3.6,11.2Hz,1H),3.92(m,1H),4.14(dd,J=6.0,11.6Hz,1H),4.21(dd,J=4.8,11.6Hz,1H),5.02−5.16(m,3H)
粘度:0.26Pa・s(せん断速度92 1/s)
5,9,13−トリメチルテトラデカン酸メチル50.3g(177mmol)に2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール70g(0.53mol)と炭酸カリウム36.7g(266mmol)を添加し、200〜250mmHgの減圧下、85℃で3時間撹拌した。この間、反応で生じたメタノールは留去した。得られた反応溶液を減圧濃縮(50℃から210℃へ上昇、1.4kPaから0.38kPaへ減圧)した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、5,9,13−トリメチルテトラデカン酸(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル43.0g(収率63%)を得た。
5,9,13−トリメチルテトラデカン酸(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル32.7g(85.0mmol)のテトラヒドロフラン(340mL)溶液に、室温で3M塩酸85mLを添加し、同一温度で5時間撹拌した。この反応溶液を酢酸エチル(300mL)、飽和重曹水(400mL)に加えて分液した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後濃縮することによって得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、表題の化合物28.7g(収率98%)を無色透明液体として得た。
得られた化合物について、1H−NMRを測定した結果は以下の通りである。
1H−NMRスペクトル(270MHz,CDCl3,TMS)δ:0.7−0.9(m,12H),0.95−1.45(m,16H),1.45−1.75(m,3H),2.34(t,J=7.4Hz,2H),3.60(dd,J=5.8,11.5Hz,1H),3.70(dd,J=4.0,11.5Hz,1H),3.94(m,1H),4.15(dd,J=5.9,11.7Hz,1H),4.21(dd,J=4.7,11.7Hz,1H)
1H−NMRスペクトル(270MHz,CDCl3,TMS)δ:0.7−0.9(m,12H),0.95−1.45(m,16H),1.45−1.75(m,3H),2.34(t,J=7.4Hz,2H),3.60(dd,J=5.8,11.5Hz,1H),3.70(dd,J=4.0,11.5Hz,1H),3.94(m,1H),4.15(dd,J=5.9,11.7Hz,1H),4.21(dd,J=4.7,11.7Hz,1H)
60〜70mmHgの減圧かつ窒素気流下、グリセロール144g(1.56mol)及び炭酸カリウム1.58g(1.15mmol)の乾燥N,N−ジメチルホルムアミド(700mL)溶液に、78〜83℃で5,9,13,17−テトラメチルオクタデカ−4−エン酸メチル199g(0.564mol)を徐々に滴下した。同一温度で10時間撹拌した後、75℃でギ酸を添加しpHを4に調整した。得られた溶液を減圧濃縮した後、t−ブチルメチルエーテル(1.5L)で希釈し、生じた不溶物を濾別した。得られた濾液を10%重曹水で2回洗浄した後、活性炭(8g)で処理し脱色した。濾過後濃縮して得られた残渣をエタノールで溶解し、セルロースパウダーで濾過した。濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル混液)で精製することにより、表題の化合物を得た。
得られた化合物について、1H−NMR測定を行った結果は以下の通りである。
1H−NMRスペクトル(300MHz,CDCl3,TMS)δ:0.80−0.95(m,12H),1.00−1.70(m,22H),1.85−2.15(m,2H),2.15−2.55(m,4H),3.53−3.78(m,3H),3.80−4.00(m,1H),4.10−4.25(m,2H),5.08(t,J=6.9Hz,1H)
1H−NMRスペクトル(300MHz,CDCl3,TMS)δ:0.80−0.95(m,12H),1.00−1.70(m,22H),1.85−2.15(m,2H),2.15−2.55(m,4H),3.53−3.78(m,3H),3.80−4.00(m,1H),4.10−4.25(m,2H),5.08(t,J=6.9Hz,1H)
200〜250mmHgの減圧下、グリセロール7.4g(80mmol)及び炭酸カリウム5.5g(40mmol)の乾燥N,N−ジメチルホルムアミド(16mL)溶液に、85℃で5,9,13,17−テトラメチルオクタデカ−4,8,12,16−テトラエン酸メチル(ゲラニルゲラニル酢酸メチルとも称する)13.9g(40.0mmol)を徐々に滴下し、同一温度で6時間撹拌した。この間、反応で生じたメタノールは留去した。得られた反応溶液を酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒(1:1,200mL)で希釈し、水、飽和重曹水、飽和食塩水(2回)で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後濃縮することによって得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=100:0〜0:100)で精製することにより、表題の化合物5.44g(収率33%)を透明液体として得た。
得られた化合物について、1H−NMR測定及び粘度測定を行った結果は以下の通りである。
1H−NMRスペクトル(270MHz,CDCl3,TMS)δ:1.55−1.72(m,15H),1.9−2.2(m,13H),2.27−2.45(m,4H),2.53(brs,1H,OH),3.59(dd,J=5.4,11.4Hz,1H),3.68(dd,J=3,11.4Hz,1H),3.92(m,1H),4.15(dd,J=6.0,11.6Hz,1H),4.21(dd,J=4.8,11.6Hz,1H),5.05−5.15(m,4H)
粘度:0.37Pa・s(せん断速度92 1/s)
1H−NMRスペクトル(270MHz,CDCl3,TMS)δ:1.55−1.72(m,15H),1.9−2.2(m,13H),2.27−2.45(m,4H),2.53(brs,1H,OH),3.59(dd,J=5.4,11.4Hz,1H),3.68(dd,J=3,11.4Hz,1H),3.92(m,1H),4.15(dd,J=6.0,11.6Hz,1H),4.21(dd,J=4.8,11.6Hz,1H),5.05−5.15(m,4H)
粘度:0.37Pa・s(せん断速度92 1/s)
[実施例7]マウスB16メラノーマ細胞を用いたメラニン産生抑制効果評価試験
実施例1及び3〜6で合成した化合物、並びにアルブチン(比較化合物)について、メラニン産生抑制作用の評価を行った。
実施例1及び3〜6で合成した化合物、並びにアルブチン(比較化合物)について、メラニン産生抑制作用の評価を行った。
各化合物の試験溶液は、1,3−ブチレングリコールを溶媒として用いて、実施例1及び3〜6の化合物の最終濃度は50μM、アルブチンの最終濃度が500μMとなるように調製した。
試験化合物添加群では、まず、6ウェルプレートにマウスB16メラノーマ細胞を0.4×105細胞/ウェルで播種し、10% FBS添加DMEM培地中、37℃、5% CO2の条件下で24時間培養した。培地を除去し、調製した試験溶液をウェルに添加し、72時間培養した。各ウェルの培地をマイクロチューブに分取し、PBSで洗浄後、0.025%トリプシン/PBSを用いて細胞を回収した。500 rpm、10分間の遠心分離後、上清を除去し、細胞ペレットを10% FBS添加DMEM培地に再懸濁した。
この懸濁液を1,500 rpmで10分間遠心分離し、その上清を96ウェルプレートに分取し、マイクロプレートリーダーで波長405 nmの吸光度を測定した。また、合成メラニン試料を用いて検量線を作成した。得られた吸光度測定値に基づき、作成したメラニンの検量線から細胞中のメラニン量を算出して、メラニン生成量とした。
対照として、試験溶液を添加しないこと以外は同様に試験し、メラニン生成量を算出した(無添加群)。
各化合物について、試験化合物添加群で得られたメラニン生成量の、無添加群(対照)のメラニン生成量に対する相対比率を算出することにより、メラニン量比率(%)を決定した。メラニン量比率が低いほど、メラニン産生が抑制されていることを示す。算出結果を以下の表4に示す。
美白剤として知られるアルブチンは、500μMの濃度で、42.6±2.4%のメラニン量比率を示した。一方、実施例1及び3〜6の化合物はいずれも、その1/10の濃度で、メラニン量比率の低下を示した。とりわけ、実施例1と実施例4の化合物は特に顕著なメラニン産生抑制効果を示した。なお上記の結果から、アルブチンは、上記の1/10の濃度となる50μMではメラニン産生抑制効果を示さないと推測された。
[実施例8]チロシナーゼ活性阻害作用の評価
試験化合物として、実施例1で合成した化合物、及びアルブチン(比較化合物)について、チロシナーゼ活性阻害作用の評価を行った。
実施例1の化合物は最終濃度200μM、500μM、又は1000μM、アルブチン(比較化合物)は最終濃度500μMとなるように、0.1 Mリン酸緩衝液(pH6.8)で各化合物を希釈した溶液(0.1% DMSOを含む)を調製した(試験溶液)。
試験化合物として、実施例1で合成した化合物、及びアルブチン(比較化合物)について、チロシナーゼ活性阻害作用の評価を行った。
実施例1の化合物は最終濃度200μM、500μM、又は1000μM、アルブチン(比較化合物)は最終濃度500μMとなるように、0.1 Mリン酸緩衝液(pH6.8)で各化合物を希釈した溶液(0.1% DMSOを含む)を調製した(試験溶液)。
試験化合物添加群では、96ウェルプレートに、調製した試験溶液と100 units/mL マッシュルームチロシナーゼ溶液を50μLずつ加え、37℃で1分間インキュベートした。さらに、2mM L−チロシン溶液50μLを加え、波長475 nmでの吸光度を、37℃で0〜15分まで1分間隔でマイクロプレートリーダーを使用して測定した。対照として、試験溶液を添加しないこと以外は同様に試験し、メラニン生成量を決定した(無添加群)。
下記計算式に従って、試験化合物添加群で得られたメラニン生成量の、無添加群(対照)メラニン生成量に対する相対比率を算出することにより、チロシナーゼ活性率(%)を算出した。
チロシナーゼ活性率(%)=[(被験試料の吸光度(15分)−被験試料の吸光度(0分)]/[(対照試料の吸光度(15分)−対照試料の吸光度(0分)] × 100
チロシナーゼ活性率(%)=[(被験試料の吸光度(15分)−被験試料の吸光度(0分)]/[(対照試料の吸光度(15分)−対照試料の吸光度(0分)] × 100
チロシナーゼ活性阻害剤である比較化合物のアルブチンは非常に高いチロシナーゼ活性阻害作用を示したのに対し、実施例1の化合物はチロシナーゼ活性阻害作用を全く示さなかった。この結果から、本発明に係る化合物はチロシナーゼ活性阻害とは異なる機構により美白作用を発揮することが示された。
本発明は、美白用製品に用いることができる。本発明に係るメラニン産生抑制剤及びそれを含む皮膚外用剤等は、皮膚におけるメラニン産生を効果的に抑制し、それによりしみやくすみの抑制効果、肌を明るくする効果等をもたらすために利用することができる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願は、その全体が参照により、本明細書に組み入れられるものとする。
Claims (8)
- 前記式中、nは2を表す、請求項1に記載のメラニン産生抑制剤。
- 上記化合物がモノO−(5,9,13−トリメチルテトラデカ−4−エノイル)グリセロール、モノO−(5,9,13−トリメチルテトラデカ−4,8,12−トリエノイル)グリセロール、モノO−(5,9,13−トリメチルテトラデカノイル)グリセロール、モノO−(5,9,13,17−テトラメチルオクタデカ−4−エノイル)グリセロール、又はモノO−(5,9,13,17−テトラメチルオクタデカ−4,8,12,16−テトラエノイル)グリセロールである、請求項1又は2に記載のメラニン産生抑制剤。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のメラニン産生抑制剤を有効成分として含む、メラニン産生抑制用の皮膚外用剤。
- 上記化合物又はその塩を0.001〜10重量%の濃度で含む、請求項4に記載の皮膚外用剤。
- 化粧料である、請求項4又は5に記載の皮膚外用剤。
- 医薬である、請求項4又は5に記載の皮膚外用剤。
- 請求項4に記載の皮膚外用剤を皮膚に適用することを含む、皮膚におけるメラニン産生を抑制する方法。
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