JPWO2016056436A1 - 透明フィルム、及び、透明フィルムの製造方法 - Google Patents

透明フィルム、及び、透明フィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、防曇性に優れた透明フィルムを提供する。本発明の透明フィルムは、複数の凸部が可視光の波長以下のピッチで、表面に設けられた基材フィルムと、上記複数の凸部の上記ピッチの15%以上、50%以下の粒径を有する親水性微粒子とを備え、上記親水性微粒子は、上記複数の凸部に接して上記複数の凸部の間隙に保持され、上記親水性微粒子と上記複数の凸部の間隙の底部との間に空間が形成され、上記空間が、流路を形成して表面に配置されたものである。

Description

本発明は、透明フィルム、及び、透明フィルムの製造方法に関する。より詳しくは、親水性を有する透明フィルム、及び、上記透明フィルムの製造方法に関するものである。
ナノメートルサイズの凹凸構造(ナノ構造)を有する透明フィルムは、例えば、自動車の窓や、冷凍用ショーケースの窓等の様々な用途での適用が検討されている。このような透明フィルムとしては、例えば、反射防止フィルムとして利用された構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、このような透明フィルムとしては、疎水性又は親水性を有するものが知られており、親水性を有する場合は、凸部の間隙(凹部)に入り込んだ水の表面張力によって親水性を発揮し、毛細管現象を利用して水を広げることが知られている。親水性を有する透明フィルムとしては、例えば、凹凸構造に親水性ポリマーが充填された構成(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
また、親水性を有する部材は、その表面に付着した水滴を広げる効果を利用して、例えば、自動車業界や建設業界へ適用することが検討されている。このような親水性を有する部材としては、例えば、自動車の窓やドアミラーに利用された構成(例えば、特許文献3及び4参照)が提案されている。
特開2007−322767号公報 特許第4420726号明細書 特開平8−292301号公報 特開平8−227006号公報
しかしながら、親水性を有する従来の透明フィルム(部材)では、水を広げる速度が不充分であり、防曇性を高める点において改善の余地があった。
上記特許文献1は、凹凸構造を構成する凹部に、所定の屈折率を有するナノ粒子が充填された構成を開示している。しかしながら、上記特許文献1に記載の発明では、ナノ粒子が凹部に充填されているため、毛細管現象を充分に利用することができず、水を広げる速度が不充分である。また、ナノ粒子の表面の少なくとも一部がバインダーで覆われているため、親水性の機能がバインダーによって阻害されてしまう。このため、防曇性を高める点において改善の余地があった。
上記特許文献2は、凹凸構造を構成する凹部に親水性ポリマー(澱粉化合物)が充填された構成を開示している。しかしながら、上記特許文献2に記載の発明では、澱粉化合物が凹部を隙間なく埋めているため、毛細管現象を利用することができず、水を広げる速度が不充分である。このため、防曇性を高める点において改善の余地があった。
上記特許文献3は、ガラス基板の表面に形成された金属酸化物中に、親水性の有機化合物が含有された構成を開示している。しかしながら、上記特許文献3に記載の発明では、親水性の有機化合物が固定されにくく、水等の溶剤で拭き取られやすいため、親水性が低下しやすいと考えられる。このため、防曇性を高める点において改善の余地があった。
上記特許文献4は、ガラス基板の表面に形成された金属酸化物からなる凹凸構造に、親水性の低分子有機化合物が充填された構成を開示している。しかしながら、上記特許文献4に記載の発明では、親水性の低分子有機化合物が固定されにくく、水等の溶剤で拭き取られやすいため、親水性が低下しやすいと考えられる。また、凸部の間隙(凹部)が連続せずに(流路を形成せずに)分離した形状(点状)で配置されているため、水を広げる速度が充分ではない。このため、防曇性を高める点において改善の余地があった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、防曇性に優れた透明フィルム、及び、上記透明フィルムの製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、防曇性に優れた透明フィルムについて種々検討したところ、ナノ構造を有する基材フィルムにおける毛細管現象を利用することに着目した。そして、親水性微粒子を、ナノ構造を構成する凸部の間隙の底部との間に空間が形成されるように配置し、その空間が流路を形成するように配置された構成とすることにより、毛細管現象の効果を顕著なものにできることを見出した。すなわち、親水性微粒子と凸部の間隙の底部との間に形成される空間による毛細管現象を利用することで、水を広げる速度を大幅に高めることができることを見出した。更に、親水性微粒子を凸部に接するように凸部の間隙に保持すれば、親水性微粒子と凸部との間の分子間力(ファンデルワールス力)を利用することで、親水性の機能を阻害することなく、親水性微粒子を凸部の間隙に固定することができることを見出した。以上により、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち、本発明の一態様は、複数の凸部が可視光の波長以下のピッチで、表面に設けられた基材フィルムと、上記複数の凸部の上記ピッチの15%以上、50%以下の粒径を有する親水性微粒子とを備え、上記親水性微粒子は、上記複数の凸部に接して上記複数の凸部の間隙に保持され、上記親水性微粒子と上記複数の凸部の間隙の底部との間に空間が形成され、上記空間が、流路を形成して表面に配置された透明フィルム(以下、本発明の第1の透明フィルムとも言う。)であってもよい。
本発明の別の一態様は、本発明の第1の透明フィルムの製造方法であって、溶媒中に上記親水性微粒子が分散された分散液を、上記基材フィルム上に塗布する工程、及び、塗布された上記分散液に対して上記溶媒を蒸発させる乾燥を行う工程を含む本発明の第1の透明フィルムの製造方法であってもよい。
また、本発明者らは、防曇性に優れた透明フィルムについて種々検討したところ、ナノ構造を有する基材フィルムと、親水性を有するイオン性液体とを組み合わせた構成とすることに着目した。そして、ナノ構造を構成する凸部の間隙が流路を形成するように配置され、イオン性液体をその凸部の間隙に配置した構成とすることにより、イオン性液体が拭き取られにくくなり、親水性の機能を顕著なものにできることを見出した。すなわち、流路を形成するように設けられた凸部の間隙に配置されたイオン性液体の親水性の機能を利用することで、水を広げる速度を大幅に高めることができることを見出した。以上により、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち、本発明の一態様は、表面に複数の凸部が、可視光の波長以下のピッチで、かつ、上記複数の凸部の間隙が流路を形成して配置された基材フィルムと、上記複数の凸部の間隙に配置された親水性を有するイオン性液体とを備える透明フィルム(以下、本発明の第2の透明フィルムとも言う。)であってもよい。
本発明の別の一態様は、本発明の第2の透明フィルムの製造方法であって、上記イオン性液体と溶媒とが混合された溶液を、上記基材フィルム上に塗布する工程、及び、塗布された上記溶液に対して上記溶媒を蒸発させる乾燥を行う工程を含む本発明の第2の透明フィルムの製造方法であってもよい。
本発明によれば、防曇性に優れた透明フィルム、及び、上記透明フィルムの製造方法を提供することができる。
実施形態1の透明フィルムを示す平面模式図である。 図1中の線分A−A’に対応する部分の断面を示す断面模式図である。 実施形態1の透明フィルムの製造プロセスを説明する断面模式図である(工程a〜d)。 実施形態2の透明フィルムを示す平面模式図である。 図4中の線分B−B’に対応する部分の断面を示す断面模式図である。 実施形態2の透明フィルムの製造プロセスを説明する断面模式図である(工程a〜d)。 実施形態4の透明フィルムを示す平面模式図である。 図7中の線分C−C’に対応する部分の断面を示す断面模式図である。 実施形態4の透明フィルムの製造プロセスを説明する断面模式図である(工程a〜c)。 実施形態5の透明フィルムを示す平面模式図である。 図10中の線分D−D’に対応する部分の断面を示す断面模式図である。 実施形態5の透明フィルムの製造プロセスを説明する断面模式図である(工程a〜e)。 比較例6の透明フィルムを示す平面模式図である。 図13中の線分a−a’に対応する部分の断面を示す断面模式図である。 比較例6の透明フィルムの製造プロセスを説明する断面模式図である(工程a〜c)。
<本発明の第1の透明フィルム>
以下に実施形態1〜3(実施例1〜5)を掲げ、本発明の第1の透明フィルムについて図面を参照して更に詳細に説明するが、本発明の第1の透明フィルムはこれらの実施形態(実施例)のみに限定されるものではない。また、各実施形態(各実施例)の構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。
[実施形態1]
実施形態1の透明フィルムは、基材フィルムと、親水性微粒子とを備える。
(1)透明フィルムの構造
実施形態1の透明フィルムの構造について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、実施形態1の透明フィルムを示す平面模式図である。図2は、図1中の線分A−A’に対応する部分の断面を示す断面模式図である。図1及び図2に示すように、透明フィルム1aは、基材フィルム2a、及び、親水性微粒子3を備えている。基材フィルム2aは、複数の凸部(突起)4aが可視光の波長以下のピッチ(隣接する凸部4aの頂点間の距離)P1で、表面に設けられた反射防止フィルム、すなわち、モスアイ構造(蛾の目状の構造)を有する反射防止フィルムに相当する。これにより、透明フィルム1aは、モスアイ構造による低反射性を示すことができる。親水性微粒子3は、モスアイ構造を構成する凸部4aのピッチP1の15%以上、50%以下の粒径を有し、親水性微粒子3と凸部4aの間隙5aの底部との間に空間7aが形成されるように、隣り合う凸部4aに2点で接して凸部4aの間隙5aに保持されている。すなわち、親水性微粒子3は、隣り合う凸部4aの両方と接しており、その接点の総数が2点である。空間7aは、透明フィルム1aの表面で流路を形成するように網目状に配置されている。本明細書中、空間7aが流路を形成するとは、毛細管現象を利用して水を広げることができるように、空間7aが流路を形成していることを意味し、水の液面の高さを透明フィルム1aの表面上で均一にすることができるように、空間7aが配置されていることが好ましい。空間7aの配置としては、透明フィルム1aの一端から他端まで連続していることが好ましく、また、網目状であることが好ましい。なお、図1中の白丸の実線部は、凸部4aの底部の輪郭を示している。また、図1及び図2では、モスアイ構造や親水性微粒子3を拡大して明示している。実際の透明フィルム1aでは、透明フィルム1aの面積に対して、凸部4a、及び、親水性微粒子3の大きさが極めて小さい(可視光の波長に比べて小さい)ため、図1及び図2に示したように、モスアイ構造や親水性微粒子3を肉眼や光学顕微鏡等の光学的手段で識別することはできない。
凸部4aの形状は先端に向かって細くなる形状(テーパー形状)であれば特に限定されず、例えば、柱状の下部と半球状の上部とによって構成される形状(以下、「釣鐘状」とも言う。)や、錐体状(コーン状、円錐状)等が挙げられる。また、凸部4aは、枝突起を有する形状であってもよい。枝突起とは、モスアイ構造を形成するための陽極酸化及びエッチングを行う過程で、他の部分よりも特に不規則な間隔で形成されてしまった、図1に示すような凸部(枝突起6)を示す。親水性微粒子3を効率的に配置する観点からは、凸部4aの形状として、図2に示すような、凸部4aが下方に向かって太くなり、凸部4aの間隙5aの底部が狭い釣鐘状が好ましい。図2中、凸部4aの間隙5aの底辺は傾斜した形状となっているが、傾斜せずに水平な形状であってもよい。
凸部4aのピッチP1は、可視光の波長(780nm)以下であれば特に限定されないが、モアレや虹ムラ等の光学現象を充分に防止する観点からは、100nm以上、400nm以下であることが好ましく、100nm以上、200nm以下であることがより好ましい。本明細書中、凸部4aのピッチP1は、測定機として日立製作所社製の走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope、商品名:S−4700)を用い、SEM写真(平面写真)から読み取った、1μm□(角)の領域内における、枝突起を除くすべての隣接する凸部間の距離の平均値を示す。
凸部4aの高さは、親水性微粒子3が凸部4aの間隙5aの外に出ないように設定されれば特に限定されず、50nm以上であることが好ましい。更に、凸部4aの高さとしては、後述する凸部4aの好適なアスペクト比と両立させる観点から、50nm以上、600nm以下であることが好ましく、100nm以上、300nm以下であることがより好ましい。本明細書中、凸部4aの高さは、測定機として日立製作所社製のSEM(商品名:S−4700)を用い、SEM写真(断面写真)から読み取った、枝突起を除く連続して並んだ10個の凸部の高さの平均値を示す。ただし、10個の凸部を選択する際は、欠損や変形した部分(SEM写真用の試料を準備する際に変形させてしまった部分等)がある凸部を除くものとする。SEM写真用の試料としては、反射防止フィルムの特異的な欠陥がない領域でサンプリングされたものが用いられ、例えば、連続的に製造されるロール状の反射防止フィルムでは、その中央付近でサンプリングされたものを用いる。
凸部4aのアスペクト比は特に限定されないが、モスアイ構造の加工性の観点からは、1.5以下であることが好ましい。凸部4aのアスペクト比が大き過ぎる(凸部4aが細長い)と、スティッキングが発生したり、モスアイ構造を形成する際の転写具合が悪化したりする(モスアイ構造の雌型が詰まったり、巻き付いてしまう、等)懸念がある。更に、凸部4aのアスペクト比としては、モアレや虹ムラ等の光学現象を充分に防止し、良好な反射率特性を実現する観点からは、0.8以上、1.5以下であることが好ましい。本明細書中、凸部4aのアスペクト比は、測定機として日立製作所社製のSEM(商品名:S−4700)を用い、上述したような方法で測定された凸部4aのピッチP1と高さとの比(高さ/ピッチP1)で示す。
凸部4aの配置は特に限定されず、ランダムに配置されていても、規則的に配置されていてもよいが、モアレの発生を充分に防止する観点からは、図1に示すように、ランダムに配置されていることが好ましい。
以上のような凸部4aを形成する観点から、凸部4aの材料としては、樹脂が好ましい。更に、透明フィルムの親水性を充分に高める観点からは、凸部4aは、親水性の表面を有することが好ましい。凸部4aが疎水性の表面を有する場合、結露によって発生する水滴が拡散されにくく、充分な防曇性を発揮することができない懸念がある。また、実施形態1の透明フィルムを製造する際に基材フィルム2a上に塗布する、親水性微粒子3が分散された分散液の溶媒としては、一般的に、水、エタノール、アルコール系、エステル系等の極性溶媒が用いられる。このため、分散液を基材フィルム2aの全面に効率よく広げる観点からも、凸部4aは、親水性の表面を有することが好ましい。凸部4aが疎水性の表面を有する場合、モスアイ構造によるロータス効果も合わさって、凸部4aの間隙5aに分散液を上手く塗布することができない懸念がある。凸部4aの表面を親水性にする方法としては、例えば、凸部4aを構成する樹脂材料に親水性の官能基をモノマーの段階で導入したり、樹脂材料を硬化させた後に、電子線、プラズマ等を照射することによって表面を改質して、−OH基や−COOH基を表面に形成したり、凸部4aの表面にイオン交換基(例えば、−COOH基)を導入したりする方法が挙げられる。凸部4aの表面にイオン交換基が導入されると、凸部4aの表面にイオンが固定されるため、凸部4aの耐久性を高めることができる。更に、結露によって凸部4aの表面に水滴が発生する場合であっても、凸部4aの表面のイオン性の官能基が乖離してイオンを供給することによって、凝固点降下が発生し、その結果、霜が発生する温度を低下させることができる。すなわち、冷却される過程で凸部4aの表面には一旦霜が付着するが、その後、温度が上昇する過程で霜が消滅する温度を低下させることができる。このような透明フィルムを、例えば、冷凍用ショーケースの窓に適用する場合、使用温度範囲をより低温まで広げることができる。本明細書中、親水性とは、水の接触角が30°以下である状態を示す。接触角は、測定機として協和界面科学社製のポータブル接触角計(商品名:PCA−1)を用い、θ/2法(θ/2=arctan(h/r)で計算する。θは接触角を示し、rは液滴の半径を示し、hは液滴の高さを示す。)で測定された、3箇所の接触角の平均値を示す。ここで、1箇所目の測定点としては、試料の中央部分を選択し、2及び3箇所目の測定点としては、1箇所目の測定点から20mm以上離れ、かつ、1箇所目の測定点に対して互いに点対称な位置にある2点を選択するものとする。
親水性微粒子3としては、例えば、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)等を親水化処理したものや、シリカ微粒子等を用いることができ、親水性を充分に高める観点からは、シリカ微粒子を用いることが好ましい。
親水性微粒子3の形状は特に限定されず、例えば、球状、柱状(ファイバー状)、楕円球体状等が挙げられる。親水性微粒子3を効率的に配置する観点からは、親水性微粒子3の形状として、図2に示すような球状であることが好ましい。
親水性微粒子3の粒径は、凸部4aのピッチP1の15%以上、50%以下であれば特に限定されないが、空間7aによる毛細管現象を効率的に利用し、防曇性を充分に高める観点からは、凸部4aのピッチP1の15%以上、25%以下であることが好ましい。親水性微粒子3の粒径が凸部4aのピッチP1の15%より小さい場合は、空間7aが小さくなってしまい、空間7aによる毛細管現象を充分に利用することができず、水を広げる速度が不充分である。特に、親水性微粒子3の粒径が5nm以下である場合は、空間7aによる流路が極端に狭くなってしまい、水の広がりが非常に遅くなる。親水性微粒子3の粒径が凸部4aのピッチP1の50%より大きい場合は、親水性微粒子3が凸部4aの間隙5aからはみ出してしまい、親水性微粒子3が拭き取られやすくなる。本明細書中、親水性微粒子3の粒径は、測定機として日立製作所社製のSEM(商品名:S−4700)を用い、SEM写真(平面写真及び断面写真)から読み取った、20個の親水性微粒子の粒径の平均値を示す。ただし、20個の親水性微粒子を選択する際は、欠損や変形した部分がある親水性微粒子を除くものとする。本明細書中、親水性微粒子3の粒径とは、親水性微粒子3の全方向の長さの中で最大の長さを示す。例えば、親水性微粒子3の形状が球状である場合は、その直径に相当する長さを示し、親水性微粒子3の形状が楕円球体状である場合は、主軸、及び、主軸に垂直な方向の直径のうちでより長い方の長さを示す。
親水性微粒子3の表面張力は、水で測定したとき、凸部4aの表面張力以上であることが好ましい。表面張力が高くなれば、接触角が小さくなり、親水性微粒子3の親水性をより高めることができる。表面張力は、浸透速度法(カラム中に対象物を一定の圧力で押し固めて充填し、関係式:l/t=(r・γcosθ)/2ηから、水で測定したときの対象物の表面張力を決定する。lは水の浸透高さを示し、tは時間を示し、rは充填された対象物の毛管半径を示し、γは表面張力を示し、ηは水の粘度を示し、θは接触角を示す。)で測定される。
毛細管現象を効率的に利用し、防曇性を充分に高める観点からは、空間7aは、凸部4aの間隙5aの深さの20%以下の範囲まで形成されていることが好ましく、凸部4aの間隙5aの深さの0.5%以上、10%以下の範囲まで形成されていることがより好ましい。本明細書中、空間7aが形成されている範囲は、測定機として日立製作所社製のSEM(商品名:S−4700)を用い、最下層に存在する親水性微粒子3の底部と凸部4aの間隙5aの底部との距離(凸部4aの高さ方向の距離)L1、及び、凸部4aの間隙5aの深さL2を測定することで、L1のL2に対する割合:100×L1/L2(%)で決定された、5箇所の平均値を示す。なお、測定の際には、欠損、汚れ、変形した部分がない箇所を選択するものとする。
実施形態1の透明フィルムにおいては、図2に示すように、凸部4aの間隙5aの各々に親水性微粒子3が1個ずつ配置された構成を採用したが、凸部4aの間隙5aの各々に複数個の親水性微粒子3が配置された構成を採用してもよい。この場合、各々の親水性微粒子3が凸部4aに接していればよく、隣り合う凸部4aの両方と接し、その接点の総数が、各々の親水性微粒子3に対して2点以上であることが好ましい。親水性微粒子3を凸部4aの間隙5aに充分強固に固定する観点からは、隣り合う凸部4aに2点以上で接する親水性微粒子3の個数の割合が、すべての親水性微粒子3に対して、30%以上、100%以下であることが好ましく、60%以上、100%以下であることがより好ましい。また、図2には、親水性微粒子3と隣り合う凸部4aとの接点の総数が2点である構成を示したが、接点の総数が1点である構成であってもよく、接点の総数が3点以上である構成であってもよい。接点の総数が3点以上である構成としては、例えば、図2において、親水性微粒子3の表面形状に凹凸がある場合や、凸部4aの間隙5aの底辺が水平な形状で、球状の親水性微粒子3を配置した場合が挙げられる。本明細書中、親水性微粒子3と凸部4aとの接点の数については、測定機として日立製作所社製のSEM(商品名:S−4700)を用い、SEM写真(平面写真)を見たときに、親水性微粒子3が凸部4aの間隙5aに沿って(隣り合う凸部4aの両方に沿って)1個ずつ整列している場合を接点が2点以上であると判断し、親水性微粒子3が重なって隣り合う凸部4aの一方に沿って整列している場合を接点が1点であると判断する。また、すべての親水性微粒子3に対する、隣り合う凸部4aに2点以上で接する親水性微粒子3の個数の割合は、2μm□(角)の領域内において、当該領域内に存在するすべての親水性微粒子3の個数に対する、上述したような方法で確認された接点が2点以上である親水性微粒子3の個数の割合で決定される。ただし、このような2μm□(角)の領域を選択する際は、欠損、汚れ、変形した部分がある領域を除くものとする。
実施形態1の透明フィルムによれば、空間7aによる毛細管現象を利用することで、水を広げる速度を高めることができるため、優れた防曇性を示すことができる。更に、下記(i)〜(iv)のような効果も奏することができる。
(i)親水性微粒子3が、隣り合う凸部4aに2点で接して凸部4aの間隙5aに配置されているため、その接点で親水性微粒子3と凸部4aとの間に分子間力が作用する。また、親水性微粒子3の重量が小さいため、親水性微粒子3に作用する重力が、上記分子間力よりも小さくなる。よって、バインダー等を用いることなく、親水性微粒子3を凸部4aの間隙5aに充分強固に固定することができる。
(ii)上記(i)の効果によって、バインダー等を用いることなく、親水性微粒子3を凸部4aの間隙5aに固定することができるため、親水性微粒子3の親水性の機能を阻害することなく、効果的に活用することができる。
(iii)親水性微粒子3が凸部4aの間隙5aに保持されることで、大きな凝集体を形成することがないため、白濁感のない透明フィルムを実現することができる。
(iv)透明フィルム1aに汚れが付着した場合であっても、溶剤(例えば、有機溶剤)で拭き取ることができる。この際、親水性微粒子3と凸部4aとの間に分子間力が作用するため、親水性微粒子3は拭き取られない。また、例えば、凸部4aの材料が樹脂(高分子)である場合、親水性微粒子3の表面に存在する親水性の官能基が、上記樹脂(高分子)と化学結合することによって、親水性微粒子3は拭き取られない。更に、例えば、透明フィルム1aをクロスで拭くことを想定すると、凸部4aのピッチP1が200nmで、高さが200nmである場合、クロスの繊維径の最小値が400nmであるため、クロスの繊維が凸部4aの間隙5aに入り込まず、親水性微粒子3は拭き取られない。
(2)透明フィルムの製造プロセス
実施形態1の透明フィルムの製造プロセスについて、図3を参照して例示する。図3は、実施形態1の透明フィルムの製造プロセスを説明する断面模式図である(工程a〜d)。
(a)基材フィルムの作製
まず、アルミニウム製の基材上に、絶縁層としての二酸化ケイ素(SiO)、及び、純アルミニウムを順に成膜した基板を作製する。この際、例えば、アルミニウム製の基材をロール状にすることで、絶縁層、及び、純アルミニウムの層を連続的に形成することができる。次に、この基板の表面に形成された純アルミニウムの層に対して、陽極酸化及びエッチングを交互に繰り返し、モスアイ構造の雌型を作製する。そして、光ナノインプリント法を用いて、この雌型を光硬化性樹脂に転写することによって、図3の(a)に示すような基材フィルム2a、すなわち、モスアイ構造を有する反射防止フィルムを作製する。
(b)分散液の塗布
図3の(b)に示すように、溶媒8中に親水性微粒子3が分散された分散液9を、基材フィルム2a上に塗布する。溶媒8としては、例えば、水、エタノール、メチルアルコール等のアルコール系の溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系の溶媒等を用いることができる。分散液9中の親水性微粒子3の濃度は特に限定されないが、親水性微粒子3が単分散化されていることが好ましい。親水性微粒子3を単分散化するためには、溶媒和した際の安定性が重要であり、溶媒8として水を用いることが好ましい。例えば、溶媒8として水を用い、親水性微粒子3としてシリカ微粒子を用いる場合は、水との融和を図るため、シリカ微粒子の表面の−OH基を、−COOH基、NR1R2R3R4基等のイオン解離基で置換してもよい。NR1R2R3R4基は、第四級アンモニウムカチオンを示す(R1、R2、R3、及び、R4は、同一又は異なる官能基である。官能基としては、親水性の観点から、炭素数が0〜2個の短い構造であるアルキル基が好ましい。また、親水性を阻害する懸念があるフッ素原子を含まないことが好ましく、官能基内に、−OH基、−COOH基、エステル結合、エーテル結合等の極性基が導入されていることが好ましい。また、イミダゾール基等の環状化合物の中に窒素原子が組み込まれた構造であってもよい。)。親水性微粒子3の形状は特に限定されず、例えば、球状、柱状(ファイバー状)、楕円球体状等が挙げられる。親水性微粒子3を効率的に配置する観点からは、親水性微粒子3の形状として、球状であることが好ましい。親水性微粒子3の粒径は、凸部4aのピッチP1の15%以上、50%以下であれば特に限定されないが、空間7aによる毛細管現象を効率的に利用し、防曇性を充分に高める観点からは、凸部4aのピッチP1の15%以上、25%以下であることが好ましい。分散液9の塗布方法は特に限定されず、例えば、基材フィルム2aの所定の領域上に、所定量を滴下する方法等が挙げられる。分散液9の塗布領域や塗布量は、基材フィルム2aの仕様(凸部4aの形状、凸部4aの間隙5aの深さ等)に合わせて適宜調整すればよい。
(c)乾燥
図3の(c)に示すように、塗布された分散液9に対して、溶媒8を蒸発させる乾燥を行う。分散液9の乾燥方法は特に限定されず、例えば、クリーンベンチ内で放置する方法等が挙げられる。図3の(c)は、溶媒8が蒸発する過程において、凸部4aの間隙5aの各々に親水性微粒子3が1個ずつ入り込んで整列する様子を示している。
(d)透明フィルムの完成
上記(c)のプロセスの後、図3の(d)に示すように、溶媒8が完全に蒸発し、親水性微粒子3が凸部4aの間隙5aに固着して、透明フィルム1aが完成する。透明フィルム1aでは、親水性微粒子3は、親水性微粒子3と凸部4aの間隙5aの底部との間に空間7aが形成されるように、隣り合う凸部4aに2点で接して凸部4aの間隙5aに保持されている。
以下に、実施形態1の透明フィルムを実際に作製した実施例を示す。
(実施例1)
実施例1は、親水性微粒子3としてシリカ微粒子を用いた場合である。実施例1の透明フィルムの製造プロセスは、以下のようにした。
(a)基材フィルムの作製
まず、アルミニウム製の基材上に、絶縁層としての二酸化ケイ素(SiO)、及び、純アルミニウムを順に成膜した基板を作製した。次に、この基板の表面に形成された純アルミニウムの層に対して、陽極酸化及びエッチングを交互に繰り返し、モスアイ構造の雌型を作製した。そして、光ナノインプリント法を用いて、この雌型を光硬化性樹脂に転写することによって、基材フィルム2a(モスアイ構造を有する反射防止フィルム)を作製した。基材フィルム2aの仕様は、以下の通りであった。
凸部4aの形状:釣鐘状
凸部4aのピッチP1:200nm
凸部4aの高さ(凸部4aの間隙5aの深さ):180nm
凸部4aのアスペクト比:0.9
凸部4aに対する水の接触角:10°
基材フィルム2aの総厚(凸部4aの高さを含む):90μm
(b)分散液の塗布
分散液9を基材フィルム2a上に塗布した。分散液9中、親水性微粒子3として、コアフロント社製のシリカ微粒子(商品名:sicastar(登録商標)、型番:43−00−102)を用い、溶媒8として水を用いた。親水性微粒子3の濃度は50mg/ml、粒径は100nm(平均値)、形状は球状であった。分散液9の塗布は、基材フィルム2aの30mm□(角)の領域上に、0.5g滴下する方法で行った。
(c)乾燥
分散液9に対して乾燥を行った。分散液9の乾燥は、クリーンベンチ内で放置する方法で行った。
(d)透明フィルムの完成
上記(c)のプロセスの後、実施例1の透明フィルムが完成した。親水性微粒子3は、凸部4aの間隙5aの各々に1個ずつ保持されており、空間7aは、凸部4aの間隙5aの深さの3%以下の範囲まで形成された。
(実施例2)
実施例2は、実施例1に対して親水性微粒子3の粒径を小さくした場合である。実施例2の透明フィルム及びその製造プロセスは、この点以外、実施例1の透明フィルム及びその製造プロセスと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
分散液9中、親水性微粒子3として、コアフロント社製のシリカ微粒子(商品名:sicastar、型番:43−00−501)を用い、溶媒8として水を用いた。親水性微粒子3の濃度は25mg/ml、粒径は50nm(平均値)、形状は球状であった。親水性微粒子3は、凸部4aの間隙5aの各々に1個ずつ保持されており、空間7aは、凸部4aの間隙5aの深さの2%以下の範囲まで形成された。
(実施例3)
実施例3は、実施例1に対して親水性微粒子3の粒径を小さくした場合である。実施例3の透明フィルム及びその製造プロセスは、この点以外、実施例1の透明フィルム及びその製造プロセスと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
分散液9中、親水性微粒子3として、コアフロント社製のシリカ微粒子(商品名:sicastar、型番:43−00−301)を用い、溶媒8として水を用いた。親水性微粒子3の濃度は25mg/ml、粒径は30nm(平均値)、形状は球状であった。親水性微粒子3は、凸部4aの間隙5aの各々に1個ずつ保持されており、空間7aは、凸部4aの間隙5aの深さの1%以下の範囲まで形成された。
[実施形態2]
実施形態2は、実施形態1に対して、基材フィルムの構造を変更する場合である。実施形態2の透明フィルムは、この点以外、実施形態1の透明フィルムと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
(1)透明フィルムの構造
実施形態2の透明フィルムの構造について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、実施形態2の透明フィルムを示す平面模式図である。図5は、図4中の線分B−B’に対応する部分の断面を示す断面模式図である。図4及び図5に示すように、透明フィルム1bは、基材フィルム2b、及び、親水性微粒子3を備えている。基材フィルム2bは、複数の凸部(突起)4bが可視光の波長以下のピッチ(隣接する凸部4bの頂点間の距離)P2で、表面に設けられたフィルムであり、凸部4bの間隙5bが一方向に並列している。親水性微粒子3は、凸部4bのピッチP2の15%以上、50%以下の粒径を有し、親水性微粒子3と凸部4bの間隙5bの底部との間に空間7bが形成されるように、隣り合う凸部4bに2点で接して凸部4bの間隙5bに保持されている。すなわち、親水性微粒子3は、隣り合う凸部4bの両方と接しており、その接点の総数が2点である。空間7bは、透明フィルム1bの表面で流路を形成するように一方向に並列して配置されている。なお、図4中の縦方向の実線部は、凸部4bの頂点を示し、縦方向の破線部は、凸部4bの底部の輪郭を示している。また、図4及び図5では、凹凸構造や親水性微粒子3を拡大して明示している。実際の透明フィルム1bでは、透明フィルム1bの面積に対して、凸部4b、及び、親水性微粒子3の大きさが極めて小さい(可視光の波長に比べて小さい)ため、図4及び図5に示したように、凹凸構造や親水性微粒子3を肉眼や光学顕微鏡等の光学的手段で識別することはできない。
凸部4bの形状は特に限定されないが、親水性微粒子3を効率的に配置する観点からは、先端に向かって細くなる形状(テーパー形状)であることが好ましい。この場合、凸部4bの間隙5bの形状としては、例えば、図5に示すような逆三角形状や、逆台形状等が挙げられる。
凸部4bのピッチP2は、可視光の波長(780nm)以下であれば特に限定されないが、モアレや虹ムラ等の光学現象を充分に防止する観点からは、100nm以上、400nm以下であることが好ましく、100nm以上、200nm以下であることがより好ましい。本明細書中、凸部4bのピッチP2は、測定機として日立製作所社製のSEM(商品名:S−4700)を用い、SEM写真(平面写真)から読み取った、1μm□(角)の領域内における、すべての隣接する凸部間の距離の平均値を示す。
凸部4bの高さは、親水性微粒子3が凸部4bの間隙5bの外に出ないように設定されれば特に限定されず、50nm以上であることが好ましい。更に、凸部4bの高さとしては、後述する凸部4bの好適なアスペクト比と両立させる観点から、50nm以上、600nm以下であることが好ましく、100nm以上、300nm以下であることがより好ましい。本明細書中、凸部4bの高さは、測定機として日立製作所社製のSEM(商品名:S−4700)を用い、SEM写真(断面写真)から読み取った、連続して並んだ10個の凸部の高さの平均値を示す。ただし、10個の凸部を選択する際は、欠損や変形した部分(SEM写真用の試料を準備する際に変形させてしまった部分等)がある凸部を除くものとする。SEM写真用の試料としては、基材フィルムの特異的な欠陥がない領域でサンプリングされたものが用いられ、例えば、連続的に製造されるロール状の基材フィルムでは、その中央付近でサンプリングされたものを用いる。
凸部4bのアスペクト比は特に限定されないが、凹凸構造の加工性の観点からは、1.5以下であることが好ましい。凸部4bのアスペクト比が大き過ぎる(凸部4bが細長い)と、スティッキングが発生したり、凹凸構造を形成する際の転写具合が悪化したりする(凹凸構造の金型が詰まったり、巻き付いてしまう、等)懸念がある。更に、凸部4bのアスペクト比としては、モアレや虹ムラ等の光学現象を充分に防止する観点からは、0.8以上、1.5以下であることが好ましい。本明細書中、凸部4bのアスペクト比は、測定機として日立製作所社製のSEM(商品名:S−4700)を用い、上述したような方法で測定された凸部4bのピッチP2と高さとの比(高さ/ピッチP2)で示す。
以上のような凸部4bを形成する観点から、凸部4bの材料としては、樹脂が好ましい。更に、透明フィルムの親水性を充分に高める観点からは、凸部4bは、親水性の表面を有することが好ましい。凸部4bが疎水性の表面を有する場合、結露によって発生する水滴が拡散されにくく、充分な防曇性を発揮することができない懸念がある。また、実施形態2の透明フィルムを製造する際に基材フィルム2b上に塗布する、親水性微粒子3が分散された分散液の溶媒としては、一般的に、水、エタノール、アルコール系、エステル系等の極性溶媒が用いられる。このため、分散液を基材フィルム2bの全面に効率よく広げる観点からも、凸部4bは、親水性の表面を有することが好ましい。凸部4bが疎水性の表面を有する場合、凸部4bの間隙5bに分散液を上手く塗布することができない懸念がある。凸部4bの表面を親水性にする方法としては、例えば、凸部4bを構成する樹脂材料に親水性の官能基をモノマーの段階で導入したり、樹脂材料を硬化させた後に、電子線、プラズマ等を照射することによって表面を改質して、−OH基や−COOH基を表面に形成したり、凸部4bの表面にイオン交換基(例えば、−COOH基)を導入したりする方法が挙げられる。凸部4bの表面にイオン交換基が導入されると、凸部4bの表面にイオンが固定されるため、凸部4bの耐久性を高めることができる。更に、結露によって凸部4bの表面に水滴が発生する場合であっても、凸部4bの表面のイオン性の官能基が乖離してイオンを供給することによって、凝固点降下が発生し、その結果、霜が発生する温度を低下させることができる。これにより、実施形態2の透明フィルムを、例えば、冷凍用ショーケースの窓に適用する場合、使用温度範囲をより低温まで広げることができる。
毛細管現象を効率的に利用し、防曇性を充分に高める観点からは、空間7bは、凸部4bの間隙5bの深さの20%以下の範囲まで形成されていることが好ましく、凸部4bの間隙5bの深さの0.5%以上、10%以下の範囲まで形成されていることがより好ましい。
実施形態2の透明フィルムにおいては、基材フィルム2bとして、図4及び図5に示すような、凸部4bの間隙5bが一方向に並列した構造を採用したが、毛細管現象を利用して水を広げることができるように、凸部4bの間隙5bが流路を形成していればよく、凸部4bの間隙5bが少なくとも一方向に設けられた構造、例えば、凸部4bの間隙5bが格子状に設けられた構造や、ハニカム状に設けられた構造等を採用してもよい。
実施形態2の透明フィルムによれば、実施形態1の透明フィルムと同様の効果を奏することができることは明らかである。
(2)透明フィルムの製造プロセス
実施形態2の透明フィルムの製造プロセスについて、図6を参照して例示する。図6は、実施形態2の透明フィルムの製造プロセスを説明する断面模式図である(工程a〜d)。
(a)基材フィルムの作製
まず、凹凸部が一方向に並列し、凹部の断面形状が逆三角形状である金型を準備する。そして、光ナノインプリント法を用いて、この金型を光硬化性樹脂に転写することによって、図6の(a)に示すような基材フィルム2bを作製する。
(b)分散液の塗布
図6の(b)に示すように、溶媒8中に親水性微粒子3が分散された分散液9を、基材フィルム2b上に塗布する。
(c)乾燥
図6の(c)に示すように、塗布された分散液9に対して、溶媒8を蒸発させる乾燥を行う。図6の(c)は、溶媒8が蒸発する過程において、凸部4bの間隙5bの各々に親水性微粒子3が入り込んで整列する様子を示している。
(d)透明フィルムの完成
上記(c)のプロセスの後、図6の(d)に示すように、溶媒8が完全に蒸発し、親水性微粒子3が凸部4bの間隙5bに固着して、透明フィルム1bが完成する。透明フィルム1bでは、親水性微粒子3は、親水性微粒子3と凸部4bの間隙5bの底部との間に空間7bが形成されるように、隣り合う凸部4bに2点で接して凸部4bの間隙5bに保持されている。
以下に、実施形態2の透明フィルムを実際に作製した実施例を示す。
(実施例4)
実施例4は、実施例2に対して基材フィルムの構造を変更した場合である。実施例4の透明フィルム及びその製造プロセスは、この点以外、実施例2の透明フィルム及びその製造プロセスと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
基材フィルム2bを作製するための金型として、NTTアドバンステクノロジ社製の金型(V溝型)を用いた。金型の仕様は、以下の通りであった。
凹部の断面形状:逆三角形状
凸部のピッチ:200nm
凸部の高さ(凹部の深さ):100nm
基材フィルム2bの仕様は、以下の通りであった。
凸部4bの間隙5bの断面形状:逆三角形状
凸部4bのピッチP2:200nm
凸部4bの高さ(凸部4bの間隙5bの深さ):200nm
凸部4bのアスペクト比:1
凸部4bに対する水の接触角:10°
基材フィルム2bの総厚(凸部4bの高さを含む):90μm
親水性微粒子3は、凸部4bの間隙5bの各々に保持されており、空間7bは、凸部4bの間隙5bの深さの5%以下の範囲まで形成された。
[実施形態3]
実施形態3は、実施形態1に対して、親水性微粒子をイオン交換基で表面修飾する場合である。実施形態3の透明フィルムは、この点以外、実施形態1の透明フィルムと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
(1)透明フィルムの構造
実施形態3の透明フィルムの構造は、図1及び図2中の親水性微粒子3がイオン交換基で表面修飾されていること以外、実施形態1の透明フィルムの構造と同様である。イオン交換基としては、例えば、−COOH基、−(NH基、−SO 基等が用いられる。
実施形態3の透明フィルムによれば、実施形態1の透明フィルムと同様の効果を奏することができることは明らかである。また、実施形態3の透明フィルムによれば、親水性微粒子3がイオン交換基で表面修飾されており、水で測定したときの親水性微粒子3の表面張力が高まるため、親水性微粒子3の表面で結露する場合には、空間7aによる毛細管現象を利用して、水を水滴に変わる前に効率的に広げることができる。更に、結露によって親水性微粒子3の表面に水滴が発生する場合であっても、親水性微粒子3の表面のイオン性の官能基が乖離してイオンを供給することによって、凝固点降下が発生し、その結果、霜が発生する温度を低下させることができる。これにより、実施形態3の透明フィルムを、例えば、冷凍用ショーケースの窓に適用する場合、使用温度範囲をより低温まで広げることができる。
(2)透明フィルムの製造プロセス
実施形態3の透明フィルムの製造プロセスは、図3中の親水性微粒子3として、イオン交換基で表面修飾されたものを用いること以外、実施形態1の透明フィルムの製造プロセスと同様である。
以下に、実施形態3の透明フィルムを実際に作製した実施例を示す。
(実施例5)
実施例5は、実施例1に対して親水性微粒子3をイオン交換基で表面修飾した場合である。実施例5の透明フィルム及びその製造プロセスは、この点以外、実施例1の透明フィルム及びその製造プロセスと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
分散液9中、親水性微粒子3として、コアフロント社製のポリマーラテックス微粒子(商品名:micromer(登録商標)、型番:01−02−501)を用い、溶媒8として水を用いた。このポリマーラテックス微粒子は、シリカ微粒子が−COOH基(イオン交換基)で表面修飾されたものである。親水性微粒子3の濃度は10mg/ml、粒径は50nm(平均値)、形状は球状であった。親水性微粒子3は、凸部4aの間隙5aの各々に1個ずつ保持されており、空間7aは、凸部4aの間隙5aの深さの4%以下の範囲まで形成された。
[評価結果1]
実施例1〜5の透明フィルムについて、防曇性、結露性、及び、溶剤拭き取り性の評価結果を表1に示す。なお、比較例1として、実施例1で用いた基材フィルム2a(モスアイ構造を有する反射防止フィルム)についても評価を行った。また、比較例2として、実施例1に対して親水性微粒子3の粒径を大きくした構成についても評価を行った。比較例2の透明フィルムを作製する際に用いた分散液中、親水性微粒子として、コアフロント社製のシリカ微粒子(商品名:sicastar、型番:43−00−202)を用い、溶媒として水を用いた。親水性微粒子の濃度は50mg/ml、粒径は200nm(平均値)、形状は球状であった。また、比較例2の透明フィルムを日立製作所社製のSEM(商品名:S−4700)を用いて観察したところ、親水性微粒子は、その一部が凸部の間隙に入り込んでいるものの、自身の体積の半分以上が凸部の間隙からはみ出している状態であった。更に、比較例3として、実施例1に対して親水性微粒子3の粒径を小さくした構成についても評価を行った。比較例3の透明フィルムを作製する際に用いた分散液中、親水性微粒子として、コアフロント社製のシリカ微粒子(商品名:sicastar、型番:43−00−101)を用い、溶媒として水を用いた。親水性微粒子の濃度は25mg/ml、粒径は10nm(平均値)、形状は球状であった。
防曇性の評価方法としては、各例のサンプル上に滴下した水滴が広がる速度を評価した。具体的には、伊藤製作所社製のマイクロシリンジ(商品名:イトーマイクロシリンジ MS−250)で80μlの純水の水滴を作り、各例のサンプルに接触させた後、その水滴が各例のサンプルの表面上を10mm進む時間(秒単位)を記録し、この時間を防曇性の評価指標とした。
結露性の評価方法としては、各例のサンプルを冷凍庫内から取り出した後に、各例のサンプルの表面に付着した霜が水滴に変わる温度(融解温度)を評価した。具体的には、まず、各例のサンプルを、厚みが0.8mmのガラス基板に貼り付けた状態で、−20℃に設定された冷凍庫内に30分間放置した。その後、温度25℃、湿度50%の環境下に取り出し、各例のサンプルの表面温度を測定しながら、融解現象が始まる温度を記録した。冷凍庫としては、ナガノサイエンス社製の恒温槽(商品名:エコナスシリーズ CH43−12)を用いた。表面温度の測定は、佐藤商事社の放射温度計(商品名:DT−8855)を用いて行った。
溶剤拭き取り性の評価方法としては、各例のサンプルに付着した汚れが溶剤で拭き取れるかどうかを評価した。具体的には、旭化成せんい社製の不織布(商品名:ベンコット(登録商標))を4つ折りにして水を浸み込ませたもので各例のサンプルを3回拭き、汚れが拭き取れるかどうかを観察した。
Figure 2016056436
表1に示すように、実施例1〜5はいずれも、比較例1〜3よりも防曇性が優れていた。特に、実施例2、5は、実施例1、3、4よりも水滴が速く広がり、防曇性がより優れていた。一方、比較例2、3は、実施例1と同様の基材フィルムと親水性微粒子とを組み合わせた構成であるにもかかわらず、実施例1よりも防曇性が劣っていた。比較例2においては、親水性微粒子の粒径(200nm)が基材フィルムの凸部のピッチ(200nm)と同じであるため、親水性微粒子と凸部の間隙の底部との間に形成される空間の大きさが、凸部の間隙の大きさと同程度に大きくなってしまい、比較例1と同様に、毛細管現象を充分に利用することができない。比較例3においては、親水性微粒子の粒径が小さ過ぎるため、親水性微粒子と凸部の間隙の底部との間に形成される空間の大きさが小さくなることで流路が極端に狭くなってしまい、毛細管現象を充分に利用することができない。
表1に示すように、実施例1〜5はいずれも、結露性が比較例1〜3と同等以上であった。特に、実施例5は、実施例1〜4よりも融解温度が低く、結露性がより優れていた。これは、実施例5の透明フィルムにおいて、親水性微粒子がイオン交換基で表面修飾されているためである。
表1に示すように、実施例1〜5はいずれも、溶剤による汚れの拭き取りが可能であった。この際、実施例1〜5において、親水性微粒子は拭き取られなかった。一方、比較例2において、大部分の親水性微粒子は拭き取られてしまった。また、比較例3において、拭き回数を増加させると(具体的には、3回拭く作業を1サイクルとしたときの、4サイクル目以降)、親水性微粒子の一部が拭き取られてしまった。これは、比較例3の透明フィルムにおいて、親水性微粒子の粒径が小さいために凸部と接していない親水性微粒子が存在し、このような凸部の間隙に充分に固定されていない親水性微粒子が拭き取られてしまうためである。
[評価結果2]
実施例1の透明フィルムと市販の防曇フィルムとの比較評価を行った。市販の防曇フィルムとしては、村山商事社の防曇フィルム(商品名:プロスパー)を用い、これを比較例4とした。
(防曇性の評価)
実施例1及び比較例4について、防曇性の拭き回数依存性の評価結果を表2に示す。具体的な評価方法としては、まず、旭化成せんい社製の不織布(商品名:ベンコット)を4つ折りにして水を浸み込ませたもので各例のサンプルを1回拭き、この作業を3回繰り返すことで1サイクルとした。なお、汚れの再付着を防止するため、拭き作業毎(1回毎)に新品のベンコットを用いた。次に、1サイクル後の各例のサンプルを、温度25℃、湿度50%の環境下で10分間放置した。その後、伊藤製作所社製のマイクロシリンジ(商品名:イトーマイクロシリンジ MS−250)で80μlの純水の水滴を作り、各例のサンプルに接触させた後、その水滴が各例のサンプルの表面上を10mm進む時間(秒単位)を記録し、この時間を防曇性の評価指標とした。以降、2〜5サイクル後のサンプル毎に、水滴が10mm進む時間を記録した。なお、表2中、拭き回数が0サイクルの場合は、拭き作業が行われていない初期状態を示す。
Figure 2016056436
表2に示すように、0〜1サイクル目(拭き回数)において、実施例1は、比較例4よりも防曇性が優れていたが、両者に大きな差はなかった。しかしながら、2サイクル目以降においては、両者の差が非常に大きくなり、実施例1は、比較例4よりも防曇性が非常に優れていた。
実施例1においては、防曇性が拭き回数に依らずほぼ一定であった。これは、親水性微粒子と凸部との間の分子間力によって、親水性微粒子が拭き取られず、防曇性を維持することができるためである。また、親水性微粒子の表面に存在する親水性の官能基が、凸部を構成する樹脂(高分子)と化学結合することによって、親水性微粒子が拭き取られず、防曇性を維持することができるためでもある。
一方、比較例4においては、拭き回数の増加に伴って防曇性が低下し、4サイクル目以降では水滴が広がらなかった。比較例4で用いた防曇フィルムは、基材を構成する樹脂に防曇材料が練り込まれたものであり、その防曇材料の一部が表面に現れることで防曇性を発揮する。このような防曇フィルムは、表面に存在する防曇材料が減少すると、防曇性が低下してしまう。このため、比較例4の防曇フィルムにおいては、水による拭き作業によって、表面に存在する防曇材料が拭き取られてしまい、その結果、防曇性が低下してしまったと考えられる。
(有機溶剤による拭き取り性の評価)
実施例1及び比較例4について、有機溶剤による拭き取り性の評価を行った。具体的な評価方法としては、旭化成せんい社製の不織布(商品名:ベンコット)を4つ折りにして水を浸み込ませたもので各例のサンプルを3回拭き、汚れが拭き取れるかどうかを観察した。
各例のサンプルを観察したところ、実施例1は、有機溶剤による汚れの拭き取りが可能であった。一方、比較例4においては、防曇材料が拭き取られてしまい、防曇フィルムの機能(防曇性)が損なわれた。実施例1においては、親水性微粒子の表面に存在する親水性の官能基が、凸部を構成する樹脂(高分子)と化学結合しているため、有機溶剤によって親水性微粒子が拭き取られず、防曇性を維持することができる。
[付記]
以下に、本発明の第1の透明フィルムの好ましい特徴の例を挙げる。各例は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよい。
上記親水性微粒子は、隣り合う上記複数の凸部に2点以上で接するものであってもよい。これにより、上記親水性微粒子と、隣り合う上記複数の凸部との間の分子間力を利用することで、上記親水性微粒子を上記複数の凸部の間隙に充分強固に固定することができる。また、バインダー等を用いることがないため、上記親水性微粒子の親水性の機能を阻害することなく、効果的に活用することができる。
隣り合う上記複数の凸部に2点以上で接する上記親水性微粒子の個数の割合は、すべての上記親水性微粒子に対して、30%以上、100%以下であってもよい。これにより、上記親水性微粒子が拭き取られることを充分に防止することができ、防曇性を充分に維持することができる。
上記親水性微粒子は、シリカ微粒子であってもよい。これにより、本発明の第1の透明フィルムの親水性が充分に高まり、その結果、防曇性を充分に高めることができる。
上記親水性微粒子は、イオン交換基で表面修飾されているものであってもよい。これにより、水で測定したときの上記親水性微粒子の表面張力が高まるため、上記親水性微粒子の表面で結露する場合には、上記空間による毛細管現象を利用して、水を水滴に変わる前に効率的に広げることができる。更に、結露によって上記親水性微粒子の表面に水滴が発生する場合であっても、上記親水性微粒子の表面のイオン性の官能基が乖離してイオンを供給することによって、凝固点降下が発生し、その結果、霜が発生する温度を低下させることができる。これにより、本発明の第1の透明フィルムを、例えば、冷凍用ショーケースの窓に適用する場合、使用温度範囲をより低温まで広げることができる。
上記複数の凸部は、親水性の表面を有するものであってもよい。これにより、上記親水性微粒子と組み合わせることで、本発明の第1の透明フィルムの親水性が充分に高まり、その結果、防曇性を充分に高めることができる。
上記親水性微粒子の表面張力は、水で測定したとき、上記複数の凸部の表面張力以上であってもよい。これにより、上記親水性微粒子に対する水の接触角が小さくなり、上記親水性微粒子の親水性をより高めることができる。その結果、本発明の第1の透明フィルムの防曇性を充分に高めることができる。
上記複数の凸部の上記ピッチは、100nm以上、400nm以下であってもよい。これにより、モアレや虹ムラ等の光学現象を充分に防止することができる。
上記複数の凸部のアスペクト比は、0.8以上、1.5以下であってもよい。これにより、モアレや虹ムラ等の光学現象を充分に防止し、良好な反射率特性を実現することができる。
<本発明の第2の透明フィルム>
以下に実施形態4、5(実施例6〜8)を掲げ、本発明の第2の透明フィルムについて図面を参照して更に詳細に説明するが、本発明の第2の透明フィルムはこれらの実施形態(実施例)のみに限定されるものではない。また、各実施形態(各実施例)の構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。
[実施形態4]
実施形態4の透明フィルムは、基材フィルムと、イオン性液体とを備える。
(1)透明フィルムの構造
実施形態4の透明フィルムの構造について、図7及び図8を参照して説明する。図7は、実施形態4の透明フィルムを示す平面模式図である。図8は、図7中の線分C−C’に対応する部分の断面を示す断面模式図である。図7及び図8に示すように、透明フィルム21aは、基材フィルム22、及び、イオン性液体10を備えている。基材フィルム22は、複数の凸部(突起)24が可視光の波長以下のピッチ(隣接する凸部24の頂点間の距離)P3で、表面に設けられた反射防止フィルム、すなわち、モスアイ構造(蛾の目状の構造)を有する反射防止フィルムに相当する。これにより、透明フィルム21aは、モスアイ構造による低反射性を示すことができる。基材フィルム22は、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム13上に樹脂層12が形成された(貼り付けられた)構成を有しており、樹脂層12の表面に凸部24が設けられている。凸部24の間隙25は、基材フィルム22の表面で流路を形成するように網目状に配置されている。本明細書中、凸部24の間隙25が流路を形成するとは、毛細管現象を利用してイオン性液体10を広げることができるように、凸部24の間隙25が流路を形成していることを意味し、イオン性液体10の液面の高さを基材フィルム22の表面上で均一にすることができるように、凸部24の間隙25が配置されていることが好ましい。凸部24の間隙25の配置としては、基材フィルム22の一端から他端まで連続していることが好ましく、また、網目状であることが好ましい。イオン性液体10は、親水性を有するものであり、凸部24の間隙25に配置されている。なお、図7中の破線部は、凸部24の底部の輪郭を示している。また、図7及び図8では、モスアイ構造や網目状に配置されたイオン性液体10を拡大して明示している。実際の透明フィルム21aでは、透明フィルム21aの面積に対して、凸部24、及び、凸部24の間隙25の大きさが極めて小さい(可視光の波長に比べて小さい)ため、図7及び図8に示したように、モスアイ構造や網目状に配置されたイオン性液体10を肉眼や光学顕微鏡等の光学的手段で識別することはできない。
凸部24の形状は、先端に向かって細くなる形状(テーパー形状)であれば特に限定されず、例えば、柱状の下部と半球状の上部とによって構成される形状(釣鐘状)や、錐体状(コーン状、円錐状)等が挙げられる。また、凸部24は、枝突起を有する形状であってもよい。枝突起とは、モスアイ構造を形成するための陽極酸化及びエッチングを行う過程で、他の部分よりも特に不規則な間隔で形成されてしまった、図7に示すような凸部(枝突起26)を示す。図8に示すように、凸部24の先端がイオン性液体10の表面から突出している場合は、汚れを拭き取る際の経路を効率的に確保する(凸部24の先端が極力障害にならないようにする)観点から、凸部24の形状として、図8に示すような、凸部24の先端の傾斜が緩い釣鐘状が好ましい。図8中、凸部24の間隙25の底辺は傾斜した形状となっているが、傾斜せずに水平な形状であってもよい。
凸部24のピッチP3は、可視光の波長(780nm)以下であれば特に限定されないが、モアレや虹ムラ等の光学現象を充分に防止する観点からは、100nm以上、400nm以下であることが好ましく、100nm以上、200nm以下であることがより好ましい。本明細書中、凸部24のピッチP3は、測定機として日立製作所社製のSEM(商品名:S−4700)を用い、SEM写真(平面写真)から読み取った、1μm□(角)の領域内における、枝突起を除くすべての隣接する凸部間の距離の平均値を示す。
凸部24の高さは特に限定されないが、イオン性液体10を効率的に配置する観点からは、50nm以上であることが好ましい。更に、凸部24の高さとしては、後述する凸部24の好適なアスペクト比と両立させる観点から、50nm以上、600nm以下であることが好ましく、100nm以上、300nm以下であることがより好ましい。本明細書中、凸部24の高さは、測定機として日立製作所社製のSEM(商品名:S−4700)を用い、SEM写真(断面写真)から読み取った、枝突起を除く連続して並んだ10個の凸部の高さの平均値を示す。ただし、10個の凸部を選択する際は、欠損や変形した部分(SEM写真用の試料を準備する際に変形させてしまった部分等)がある凸部を除くものとする。SEM写真用の試料としては、反射防止フィルムの特異的な欠陥がない領域でサンプリングされたものが用いられ、例えば、連続的に製造されるロール状の反射防止フィルムでは、その中央付近でサンプリングされたものを用いる。
凸部24のアスペクト比は特に限定されないが、モスアイ構造の加工性の観点からは、1.5以下であることが好ましい。凸部24のアスペクト比が大き過ぎる(凸部24が細長い)と、スティッキングが発生したり、モスアイ構造を形成する際の転写具合が悪化したりする(モスアイ構造の雌型が詰まったり、巻き付いてしまう、等)懸念がある。更に、図8に示すように、凸部24の先端がイオン性液体10の表面から突出している場合は、凸部24の突出した部分による良好な反射率特性を実現する観点から、凸部24のアスペクト比は、0.8以上、1.5以下であることが好ましい。これにより、モアレや虹ムラ等の光学現象を充分に防止することができる。本明細書中、凸部24のアスペクト比は、測定機として日立製作所社製のSEM(商品名:S−4700)を用い、上述したような方法で測定された凸部24のピッチP3と高さとの比(高さ/ピッチP3)で示す。
凸部24の配置は特に限定されず、ランダムに配置されていても、規則的に配置されていてもよいが、モアレの発生を充分に防止する観点からは、図7に示すように、ランダムに配置されていることが好ましい。
以上のような凸部24を形成する観点から、凸部24の材料としては、樹脂が好ましい。更に、透明フィルムの親水性を充分に高める観点からは、凸部24は、親水性の表面を有することが好ましい。凸部24が疎水性の表面を有する場合、結露によって発生する水滴が拡散されにくく、充分な防曇性を発揮することができない懸念がある。また、実施形態4の透明フィルムを製造する際に基材フィルム22上に塗布する、イオン性液体10が混入された溶液の溶媒としては、一般的に、水(純水)が用いられる。このため、溶液を基材フィルム22の全面に効率よく広げる観点からも、凸部24は、親水性の表面を有することが好ましい。凸部24が疎水性の表面を有する場合、モスアイ構造によるロータス効果も合わさって、凸部24の間隙25に分散液を上手く塗布することができない懸念がある。凸部24の表面を親水性にする方法としては、例えば、凸部24を構成する樹脂材料に親水性の官能基をモノマーの段階で導入したり、樹脂材料を硬化させた後に、電子線、プラズマ等を照射することによって表面を改質して、−OH基や−COOH基を表面に形成したり、凸部24の表面にイオン交換基(例えば、−COOH基)を導入したりする方法が挙げられる。凸部24の表面にイオン交換基が導入されると、凸部24の表面にイオンが固定されるため、凸部24の耐久性を高めることができる。更に、結露によって凸部24の表面に水滴が発生する場合であっても、凸部24の表面のイオン性の官能基が乖離してイオンを供給することによって、凝固点降下が発生し、その結果、霜が発生する温度を低下させることができる。すなわち、冷却される過程で凸部24の表面には一旦霜が付着するが、その後、温度が上昇する過程で霜が消滅する温度を低下させることができる。このような透明フィルムを、例えば、冷凍用ショーケースの窓に適用する場合、使用温度範囲をより低温まで広げることができる。
イオン性液体10は、親水性を有するものであれば特に限定されず、その材料としては、例えば、N、N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート(融点:9℃)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート([EMIM][CFSO])(融点:−9℃)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート([BMIM][CFSO])(融点:13℃)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド([BMIM][Cl])(融点:41℃)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムエチルスルフェート(融点:−65℃未満)等が挙げられる。これらの化合物は、和光純薬工業社、関東化学社、シグマアルドリッチ社等のメーカーで幅広く製造されている。本明細書中、イオン性液体10が親水性を有するとは、水に可溶であることを示す。イオン性液体10は、蒸気圧がほぼ0であるため、放置しても無くなることはない。
防曇性を充分に高める観点からは、イオン性液体10は、凸部24の間隙25の深さの20%以上、100%以下の範囲まで充填されていることが好ましく、凸部24の間隙25の深さの50%以上、100%以下の範囲まで充填されていることがより好ましい。イオン性液体10は透明な物質であるため、その充填量を増加させても、透明フィルムの透明性(透過率)の低下を最小限に抑制することができる。本明細書中、イオン性液体10が充填されている範囲は、測定機として日立製作所社製のSEM(商品名:S−4700)を用い、SEM写真(断面写真)から、イオン性液体10の液面から出ている凸部24の高さL3、及び、凸部24の間隙25の深さL4を測定することで、イオン性液体10の高さL4−L3の凸部24の間隙25の深さL4に対する割合:100×(1−L3/L4)(%)で決定された、10箇所の平均値を示す。なお、10箇所の測定点は、試料の中央付近の2μm□(角)の領域内から選択され、欠損、汚れ、変形した部分がない箇所とする。
イオン性液体10の融点は、0℃以下であることが好ましく、−30℃以下であることがより好ましい。温度が低い環境下では、イオン性液体10の表面で結露が発生し、更に温度が低下(例えば、0℃)すると、霜が発生することがある。これに対して、イオン性液体10の融点が0℃以下であれば、結露によってイオン性液体10の表面に水滴が発生する場合であっても、イオン性液体10が液体のままの状態であるため、結露による水滴と混ざり合い、イオン性液体10の表面のイオン性の官能基が乖離してイオンを供給することによって、凝固点降下が発生する。その結果、霜が発生する温度を低下させることができる。よって、このような透明フィルムを、例えば、冷凍用ショーケースの窓に適用する場合、使用温度範囲をより低温まで広げることができる。
実施形態4の透明フィルムにおいては、基材フィルム22として、図7に示すような、凸部24の間隙25が網目状に配置された構造を採用したが、例えば、凸部24の間隙25が一方向に並列した構造、格子状に設けられた構造、ハニカム状に設けられた構造等を採用してもよい。この場合、凸部24の間隙25の形状としては、例えば、逆三角形状や、逆台形状等であってもよい。また、基材フィルム22として、図7に示すような、TACフィルム13上に樹脂層12が形成された(貼り付けられた)構成を採用したが、他の構成であってもよい。例えば、TACフィルム13と樹脂層12(モスアイ構造を成形するための樹脂層)との間にハードコート層が配置された構成であってもよい。TACフィルム13の代わりに別のフィルムを用いてもよい。
実施形態4の透明フィルムによれば、流路を形成するように設けられた凸部24の間隙25に配置されたイオン性液体10の親水性の機能を利用することで、水を広げる速度を高めることができるため、優れた防曇性を示すことができる。また、凸部24の間隙25による毛細管現象を利用することで、拭き取り後に、イオン性液体10が凸部24の間隙25を移動して、その分布が均一な状態に戻る(自己修復性を有する)ため、拭きムラが解消し、優れた拭き取り性を示すことができる。更に、下記(i)及び(ii)のような効果も奏することができる。
(i)イオン性液体10は、凸部24の間隙25に配置されているため、拭き取られにくい。この際、例えば、凸部24の材料が樹脂(高分子)である場合、イオン性液体10中のイオン対の少なくとも一方を、上記樹脂(高分子)と化学結合させることによって、イオン性液体10が拭き取られるのを充分に防止することができる。よって、イオン性液体10の親水性の機能を持続させることができる。
(ii)イオン性液体10が親水性を有するため、疎水性の汚れに対する防汚性に優れた透明フィルムを実現することができる。
(2)透明フィルムの製造プロセス
実施形態4の透明フィルムの製造プロセスについて、図9を参照して例示する。図9は、実施形態4の透明フィルムの製造プロセスを説明する断面模式図である(工程a〜c)。
(a)基材フィルムの作製
まず、アルミニウム製の基材上に、絶縁層としての二酸化ケイ素(SiO)、及び、純アルミニウムを順に成膜した基板を作製する。この際、例えば、アルミニウム製の基材をロール状にすることで、絶縁層、及び、純アルミニウムの層を連続的に形成することができる。次に、この基板の表面に形成された純アルミニウムの層に対して、陽極酸化及びエッチングを交互に繰り返し、モスアイ構造の雌型を作製する。一方、TACフィルム13上に樹脂層12を貼り付けたフィルムを準備する。そして、光ナノインプリント法を用いて、モスアイ構造の雌型を光硬化性樹脂(樹脂層12)に転写することによって、図9の(a)に示すような基材フィルム22、すなわち、モスアイ構造を有する反射防止フィルムを作製する。
(b)溶液の塗布
図9の(b)に示すように、イオン性液体10と溶媒とが混合された溶液11を、基材フィルム22上に塗布する。溶液11中の溶媒としては、例えば、水(純水)を用いることができる。溶液11中のイオン性液体10の濃度は特に限定されず、凸部24の間隙25への充填量を考慮した上で適宜設定することができる。溶液11の塗布方法は特に限定されず、例えば、一般的な塗工機で基材フィルム22上に所定量を塗布する方法等が挙げられる。溶液11の塗布領域や塗布量は、基材フィルム22の仕様(凸部24の形状、凸部24の間隙25の深さ等)に合わせて適宜調整すればよい。
(c)溶液の乾燥
塗布された溶液11に対して、溶媒を蒸発させる乾燥を行う。その結果、図9の(c)に示すように、溶媒が完全に蒸発し、イオン性液体10が凸部24の間隙25に配置され、透明フィルム21aが完成する。溶液11の乾燥方法は特に限定されず、例えば、一般的な乾燥炉内で行う方法等が挙げられる。
以下に、実施形態4の透明フィルムを実際に作製した実施例を示す。
(実施例6)
実施例6の透明フィルムの製造プロセスは、以下のようにした。
(a)基材フィルムの作製
まず、アルミニウム製の基材上に、絶縁層としての二酸化ケイ素(SiO)、及び、純アルミニウムを順に成膜した基板を作製した。次に、この基板の表面に形成された純アルミニウムの層に対して、陽極酸化及びエッチングを交互に繰り返し、モスアイ構造の雌型を作製した。一方、TACフィルム13上に樹脂層12を貼り付けたフィルムを準備した。TACフィルムとしては、富士フイルム社製のTACフィルム(商品名:フジタック(登録商標))を用いた。そして、光ナノインプリント法を用いて、モスアイ構造の雌型を光硬化性樹脂(樹脂層12)に転写することによって、基材フィルム22(モスアイ構造を有する反射防止フィルム)を作製した。基材フィルム22の仕様は、以下の通りであった。
凸部24の形状:釣鐘状
凸部24のピッチP3:200nm
凸部24の高さ(凸部24の間隙25の深さ):180nm
凸部24のアスペクト比:0.9
凸部24に対する水の接触角:10°
樹脂層12の厚み(凸部24の高さを含む):6μm
TACフィルム13の厚み:80μm
(b)溶液の塗布
溶液11を基材フィルム22上に塗布した。溶液11中、イオン性液体10として、関東化学社製のイオン性液体(製品名:N、N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート、融点:9℃)を用い、溶媒として水(純水)を用いた。イオン性液体10の濃度は、溶液11の全量に対して2.5%であった。溶液11の塗布は、コーテック社製の高性能全自動アプリケーターを用いて行い、塗布された溶液11の厚みが2μmとなるように調節した。
(c)溶液の乾燥
溶液11に対して、120℃で60分間乾燥を行った。溶液11の乾燥は、ナガノサイエンス社製の循環式クリーンオーブンを用いて行った。その結果、実施例6の透明フィルムが完成した。イオン性液体10は、凸部24の間隙25の深さの60%以下の範囲まで充填された。
(実施例7)
実施例7は、イオン性液体10として、実施例6よりも融点の低い材料を用いた場合である。実施例7の透明フィルム及びその製造プロセスは、この点以外、実施例6の透明フィルム及びその製造プロセスと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
溶液11中、イオン性液体10として、シグマアルドリッチ社製のイオン性液体(製品名:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムエチルスルフェート、融点:−65℃未満)を用い、溶媒として水(純水)を用いた。イオン性液体10の濃度は、溶液11の全量に対して2.5%であった。イオン性液体10は、凸部24の間隙25の深さの60%以下の範囲まで充填された。
[実施形態5]
実施形態5は、実施形態4に対して、親水性微粒子を凸部の間隙に配置する場合である。実施形態5の透明フィルムは、この点以外、実施形態4の透明フィルムと同様であるため、重複する点については説明を省略する。
(1)透明フィルムの構造
実施形態5の透明フィルムの構造について、図10及び図11を参照して説明する。図10は、実施形態5の透明フィルムを示す平面模式図である。図11は、図10中の線分D−D’に対応する部分の断面を示す断面模式図である。図10及び図11に示すように、透明フィルム21bは、基材フィルム22、イオン性液体10、及び、親水性微粒子23を備えている。親水性微粒子23は、凸部24の間隙25に配置されており、隣り合う凸部24に2点で接している。すなわち、親水性微粒子23は、隣り合う凸部24の両方と接しており、その接点の総数が2点である。
親水性微粒子23としては、例えば、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)等を親水化処理したものや、シリカ微粒子等を用いることができ、親水性を充分に高める観点からは、シリカ微粒子を用いることが好ましい。
親水性微粒子23は、イオン交換基で表面修飾されていてもよい。これにより、水で測定したときの親水性微粒子23の表面張力が高まり、接触角が小さくなるため、親水性微粒子23の親水性をより高めることができる。また、イオン性液体10中のイオン対の少なくとも一方を、親水性微粒子23の表面のイオン性の官能基と化学結合させることによって、イオン性液体10が拭き取られるのを充分に防止することができる。更に、結露によって親水性微粒子23の表面に水滴が発生する場合であっても、親水性微粒子23の表面のイオン性の官能基が乖離してイオンを供給することによって、凝固点降下が発生し、その結果、霜が発生する温度を低下させることができる。よって、このような透明フィルムを、例えば、冷凍用ショーケースの窓に適用する場合、使用温度範囲をより低温まで広げることができる。イオン交換基としては、例えば、−COOH基、−N(−R1)基(R1は、H原子や、アルキル基、エステル結合、又は、エーテル結合を分子中に有する官能基等を示す。また、N原子に結合する3つのR1は、各々同一又は異なっていてもよく、1つだけ異なっていても、3つとも異なっていてもよい。)、−SO 基等が用いられる。
親水性微粒子23の形状は特に限定されず、例えば、球状、柱状(ファイバー状)、楕円球体状等が挙げられる。親水性微粒子23を効率的に配置する観点からは、親水性微粒子23の形状として、図11に示すような球状であることが好ましい。
親水性微粒子23の粒径は、親水性微粒子23が凸部24の間隙25の外に出ないように設定されれば特に限定されないが、親水性微粒子23を効率的に配置する観点からは、凸部24のピッチP3の10%以上、50%以下であることが好ましく、20%以上、30%以下であることがより好ましい。本明細書中、親水性微粒子23の粒径は、測定機として日立製作所社製のSEM(商品名:S−4700)を用い、SEM写真(平面写真及び断面写真)から読み取った、20個の親水性微粒子の粒径の平均値を示す。ただし、20個の親水性微粒子を選択する際は、欠損や変形した部分がある親水性微粒子を除くものとする。本明細書中、親水性微粒子23の粒径とは、親水性微粒子23の全方向の長さの中で最大の長さを示す。例えば、親水性微粒子23の形状が球状である場合は、その直径に相当する長さを示し、親水性微粒子23の形状が楕円球体状である場合は、主軸、及び、主軸に垂直な方向の直径のうちでより長い方の長さを示す。
親水性微粒子23の表面張力は、水で測定したとき、凸部24の表面張力以上であることが好ましい。表面張力が高くなれば、接触角が小さくなり、親水性微粒子23の親水性をより高めることができる。
図11には、親水性微粒子23の一部がイオン性液体10の表面から出ている構成を示したが、親水性微粒子23がイオン性液体10の表面よりも下方に配置されている構成であってもよい。親水性微粒子23の親水性の機能を効果的に利用する観点からは、図11に示すような、親水性微粒子23の一部がイオン性液体10の表面から出ている構成が好ましい。
図11には、凸部24の間隙25の各々に親水性微粒子23が1個ずつ配置された構成を示したが、凸部24の間隙25の各々に複数個の親水性微粒子23が配置された構成であってもよい。この場合、各々の親水性微粒子23が凸部24に接していることが好ましく、隣り合う凸部24の両方と接し、その接点の総数が、各々の親水性微粒子23に対して2点以上であることがより好ましい。また、図11には、親水性微粒子23と隣り合う凸部24との接点の総数が2点である構成を示したが、接点の総数が1点である構成であっても、接点の総数が3点以上である構成であってもよい。接点の総数が3点以上である構成としては、例えば、図11において、親水性微粒子23の表面形状に凹凸がある場合や、凸部24の間隙25の底辺が水平な形状で、球状の親水性微粒子23を配置した場合が挙げられる。本明細書中、親水性微粒子23と凸部24との接点の数については、測定機として日立製作所社製のSEM(商品名:S−4700)を用い、SEM写真(平面写真)を見たときに、親水性微粒子23が凸部24の間隙25に沿って(隣り合う凸部24の両方に沿って)1個ずつ整列している場合を接点が2点以上であると判断し、親水性微粒子23が重なって隣り合う凸部24の一方に沿って整列している場合を接点が1点であると判断する。
実施形態5の透明フィルムによれば、実施形態4の透明フィルムと同様の効果を奏することができることは明らかである。更に、イオン性液体10に加えて親水性微粒子23の親水性の機能を利用することで、水を広げる速度をより高めることができるため、より優れた防曇性を示すことができる。更に、下記(i)〜(iii)のような効果も奏することができる。
(i)親水性微粒子23が、隣り合う凸部24に2点で接して凸部24の間隙25に配置されているため、その接点で親水性微粒子23と凸部24との間に分子間力(ファンデルワールス力)が作用する。また、親水性微粒子23の重量が小さいため、親水性微粒子23に作用する重力が、上記分子間力よりも小さくなる。よって、バインダー等を用いることなく、親水性微粒子23を凸部24の間隙25に充分強固に固定することができる。
(ii)上記(i)の効果によって、バインダー等を用いることなく、親水性微粒子23を凸部24の間隙25に固定することができるため、親水性微粒子23の親水性の機能を阻害することなく、効果的に活用することができる。
(iii)親水性微粒子23と凸部24との間に分子間力が作用するため、親水性微粒子23は拭き取られない。また、例えば、凸部24の材料が樹脂(高分子)である場合、親水性微粒子23の表面に存在する親水性の官能基が、上記樹脂(高分子)と化学結合することによって、親水性微粒子23は拭き取られない。更に、例えば、透明フィルム21bをクロスで拭くことを想定すると、凸部24のピッチP3が200nmで、高さが200nmである場合、クロスの繊維径の最小値が400nmであるため、クロスの繊維が凸部24の間隙25に入り込まず、親水性微粒子23は拭き取られない。
(2)透明フィルムの製造プロセス
実施形態5の透明フィルムの製造プロセスについて、図12を参照して例示する。図12は、実施形態5の透明フィルムの製造プロセスを説明する断面模式図である(工程a〜e)。
(a)基材フィルムの作製
まず、アルミニウム製の基材上に、絶縁層としての二酸化ケイ素(SiO)、及び、純アルミニウムを順に成膜した基板を作製する。この際、例えば、アルミニウム製の基材をロール状にすることで、絶縁層、及び、純アルミニウムの層を連続的に形成することができる。次に、この基板の表面に形成された純アルミニウムの層に対して、陽極酸化及びエッチングを交互に繰り返し、モスアイ構造の雌型を作製する。一方、TACフィルム13上に樹脂層12を貼り付けたフィルムを準備する。そして、光ナノインプリント法を用いて、モスアイ構造の雌型を光硬化性樹脂(樹脂層12)に転写することによって、図12の(a)に示すような基材フィルム22、すなわち、モスアイ構造を有する反射防止フィルムを作製する。
(b)分散液の塗布
図12の(b)に示すように、溶媒中に親水性微粒子23が分散された分散液29を、基材フィルム22上に塗布する。分散液29中の溶媒としては、例えば、水、エタノール、メチルアルコール等のアルコール系の溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系の溶媒等を用いることができる。分散液29中の親水性微粒子23の濃度は特に限定されないが、親水性微粒子23が単分散化されていることが好ましい。親水性微粒子23を単分散化するためには、溶媒和した際の安定性が重要であり、溶媒として水を用いることが好ましい。例えば、溶媒として水を用い、親水性微粒子23としてシリカ微粒子を用いる場合は、水との融和を図るため、シリカ微粒子の表面の−OH基を、−COOH基、NR2R3R4R5基等のイオン解離基で置換してもよい。NR2R3R4R5基は、第四級アンモニウムカチオンを示す(R2、R3、R4、及び、R5は、同一又は異なる官能基である。官能基としては、親水性の観点から、炭素数が0〜2個の短い構造であるアルキル基が好ましい。また、親水性を阻害する懸念があるフッ素原子を含まないことが好ましく、官能基内に、−OH基、−COOH基、エステル結合、エーテル結合等の極性基が導入されていることが好ましい。また、イミダゾール基等の環状化合物の中に窒素原子が組み込まれた構造であってもよい。)。親水性微粒子23の形状は特に限定されず、例えば、球状、柱状(ファイバー状)、楕円球体状等が挙げられる。親水性微粒子23を効率的に配置する観点からは、親水性微粒子23の形状として、球状であることが好ましい。親水性微粒子23の粒径は、親水性微粒子23が凸部24の間隙25の外に出ないように設定されれば特に限定されないが、親水性微粒子23を効率的に配置する観点からは、凸部24のピッチP3の10%以上、50%以下であることが好ましく、20%以上、30%以下であることがより好ましい。分散液29の塗布方法は特に限定されず、例えば、基材フィルム22の所定の領域上に、所定量を滴下する方法等が挙げられる。分散液29の塗布領域や塗布量は、基材フィルム22の仕様(凸部24の形状、凸部24の間隙25の深さ等)に合わせて適宜調整すればよい。
(c)分散液の乾燥
塗布された分散液29に対して、溶媒を蒸発させる乾燥を行う。その結果、図12の(c)に示すように、溶媒が完全に蒸発し、親水性微粒子23が凸部24の間隙25に固着する。分散液29の乾燥方法は特に限定されず、例えば、一般的な乾燥炉内で行う方法や、クリーンベンチ内で放置する方法等が挙げられる。
(d)溶液の塗布
上記(c)のプロセスの後、図12の(d)に示すように、イオン性液体10と溶媒とが混合された溶液11を、基材フィルム22上に塗布する。溶液11中の溶媒としては、例えば、水(純水)を用いることができる。溶液11中のイオン性液体10の濃度は特に限定されず、凸部24の間隙25への充填量を考慮した上で適宜設定することができる。溶液11の塗布方法は特に限定されず、例えば、一般的な塗工機で基材フィルム22上に所定量を塗布する方法等が挙げられる。溶液11の塗布領域や塗布量は、基材フィルム22の仕様(凸部24の形状、凸部24の間隙25の深さ等)に合わせて適宜調整すればよい。
(e)溶液の乾燥
塗布された溶液11に対して、溶媒を蒸発させる乾燥を行う。その結果、図12の(e)に示すように、溶媒が完全に蒸発し、イオン性液体10が凸部24の間隙25に配置され、透明フィルム21bが完成する。溶液11の乾燥方法は特に限定されず、例えば、一般的な乾燥炉内で行う方法等が挙げられる。
以下に、実施形態5の透明フィルムを実際に作製した実施例を示す。
(実施例8)
実施例8は、実施例6に対して、イオン交換基で表面修飾された親水性微粒子を凸部の間隙に配置した場合である。実施例8の透明フィルムの製造プロセスは、以下のようにした。
(a)基材フィルムの作製
実施例6と同様な方法で、基材フィルム22を作製した。基材フィルム22の仕様は、実施例6と同様であった。
(b)分散液の塗布
分散液29を基材フィルム22上に塗布した。分散液29中、親水性微粒子23として、コアフロント社製のポリマーラテックス微粒子(商品名:micromer、型番:01−02−501)を用い、溶媒として水を用いた。このポリマーラテックス微粒子は、シリカ微粒子が−COOH基(イオン交換基)で表面修飾されたものである。親水性微粒子23の濃度は10mg/ml、粒径は50nm(平均値)、形状は球状であった。分散液29の塗布は、コーテック社製の高性能全自動アプリケーターを用いて行った。
(c)分散液の乾燥
分散液29に対して、120℃で30分間乾燥を行った。分散液29の乾燥は、島川製作所社製の防爆乾燥機(商品名:SKE−202)を用いて行った。
(d)溶液の塗布
上記(c)のプロセスの後、実施例6と同様な方法で、溶液11を基材フィルム22上に塗布した。溶液11の仕様(イオン性液体10、及び、溶媒)は、実施例6と同様であった。
(e)溶液の乾燥
溶液11に対して、実施例6と同様な方法で乾燥を行った。その結果、実施例8の透明フィルムが完成した。イオン性液体10は、凸部24の間隙25の深さの60%以下の範囲まで充填された。
(比較例5)
比較例5は、実施例6に対して、疎水性を有するイオン性液体を用いた場合である。比較例5の透明フィルム及びその製造プロセスは、この点以外、実施例6の透明フィルム及びその製造プロセスと同様であるため、重複する点については説明を省略する。本明細書中、イオン性液体が疎水性を有するとは、水に不溶であることを示す。
比較例5の透明フィルムを作製する際に用いた溶液中、イオン性液体として、関東化学社製のイオン性液体(製品名:N、N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)を用い、溶媒としてエタノールを用いた。イオン性液体の濃度は、溶液の全量に対して2.5%であった。
比較例5の透明フィルムによれば、イオン性液体が疎水性を有しているため、水を広げることができず、防曇性が劣る。
(比較例6)
比較例6は、実施例6に対して、基材フィルムの構造を変更した場合である。
(1)透明フィルムの構造
比較例6の透明フィルムの構造について、図13及び図14を参照して説明する。図13は、比較例6の透明フィルムを示す平面模式図である。図14は、図13中の線分a−a’に対応する部分の断面を示す断面模式図である。図13及び図14に示すように、透明フィルム101は、基材フィルム102、及び、イオン性液体110を備えている。基材フィルム102は、複数の凹部(凸部104の間隙105)が連続せずに(流路を形成せずに)分離した形状で配置されている。イオン性液体110は、凸部104の間隙105に配置されている。
(2)透明フィルムの製造プロセス
比較例6の透明フィルムの製造プロセスについて、図15を参照して例示する。図15は、比較例6の透明フィルムの製造プロセスを説明する断面模式図である(工程a〜c)。
(a)基材フィルムの作製
まず、基材フィルム102を作製するための金型として、綜研化学社製の金型(型式:PIP80−140/240)を準備した。金型の仕様は、以下の通りであった。
形状:格子状のピラーパターン
パターンのピッチ:250nm
凸部の高さ(凹部の深さ):250nm
そして、光ナノインプリント法を用いて、上記金型を4枚継いだものを光硬化性樹脂に転写することによって、図15の(a)に示すような基材フィルム102を作製した。基材フィルム102の仕様は、以下の通りであった。
凸部104の間隙105の断面形状:逆台形状
凸部104のピッチP4:250nm
凸部104の高さ(凸部104の間隙105の深さ):250nm
基材フィルム102の総厚(凸部104の高さを含む):6μm
(b)溶液の塗布
図15の(b)のように、イオン性液体110と溶媒とが混合された溶液111を、基材フィルム102上に塗布した。溶液111中、イオン性液体110として、関東化学社製のイオン性液体(製品名:N、N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート、融点:9℃)を用い、溶媒として水(純水)を用いた。イオン性液体110の濃度は、溶液111の全量に対して2.5%であった。溶液111の塗布は、コーテック社製の高性能全自動アプリケーターを用いて行い、塗布された溶液111の厚みが2μmとなるように調節した。
(c)溶液の乾燥
塗布された溶液111に対して、120℃で30分間乾燥を行った。溶液111の乾燥は、島川製作所社製の防爆乾燥機(商品名:SKE−202)を用いて行った。その結果、図15の(c)に示すように、溶媒が完全に蒸発し、イオン性液体110が凸部104の間隙105に配置され、透明フィルム101が完成した。
比較例6の透明フィルムによれば、基材フィルム102の凸部104の間隙105が連続せずに(流路を形成せずに)分離した形状で配置されているため、水を広げる速度が遅く、防曇性が劣る。また、拭き取り後に、イオン性液体110の分布が均一な状態に戻らないため、拭きムラが解消せず、拭き取り性が劣る。
[評価結果3]
実施例6〜8、及び、比較例5、6の透明フィルムについて、防曇性、結露性、霜付き性、及び、拭き取り性の評価結果を表3に示す。
防曇性の評価方法としては、各例のサンプル上に滴下した水滴が広がる速度を評価した。具体的には、伊藤製作所社製のマイクロシリンジ(商品名:イトーマイクロシリンジ MS−250)で80μlの純水の水滴を作り、各例のサンプルに接触させた後、その水滴が各例のサンプルの表面上を10mm進む時間(秒単位)を記録し、この時間を防曇性の評価指標とした。
結露性の評価方法としては、各例のサンプルを冷蔵庫内から取り出した後に、各例のサンプルの表面に結露による水滴が見えるかどうかを評価した。具体的には、まず、各例のサンプルを、厚みが3mmの黒アクリル板に貼り付けた状態で、5℃に設定された冷蔵庫内に20分間放置した。その後、温度25℃、湿度60%、照度200lxの環境下に取り出し、各例のサンプルの表面に結露による水滴が見えるかどうかを観察した。評価指標としては、○:水滴が見えない、△:水滴が見えたが、数分後に消える、×:水滴が見え、消えない、を用いた。冷蔵庫としては、ナガノサイエンス社製の恒温槽(商品名:エコナスシリーズ CH43−12)を用いた。
霜付き性の評価方法としては、各例のサンプルを冷凍庫内から取り出した後に、各例のサンプルの表面に付着した霜が水滴に変わる温度(融解温度)を評価した。具体的には、まず、各例のサンプルを、厚みが3mmの黒アクリル板に貼り付けた状態で、−20℃に設定された冷凍庫内に20分間放置した。その後、温度25℃、湿度60%、照度200lxの環境下に取り出し、各例のサンプルの表面温度を測定しながら、融解現象が始まる温度を記録した。冷凍庫としては、ナガノサイエンス社製の恒温槽(商品名:エコナスシリーズ CH43−12)を用いた。表面温度の測定は、佐藤商事社の放射温度計(商品名:DT−8855)を用いて行った。
拭き取り性の評価方法としては、各例のサンプルを拭いた際に発生した拭きムラが、時間が経過した後に解消するかどうかを評価した。具体的には、まず、各例のサンプルを、厚みが3mmの黒アクリル板に貼り付けた。そして、旭化成せんい社製の不織布(商品名:ベンコット)で各例のサンプルを一方向に3回拭き、温度25℃、湿度60%の環境下で1日放置した後に、拭きムラが解消したかどうかを200lxの環境下で観察した。評価指標としては、○:拭きムラが解消する、×:拭きムラが解消しない、を用いた。
Figure 2016056436
表3に示すように、実施例6〜8はいずれも、比較例5、6よりも防曇性が優れていた。特に、実施例8は、実施例6、7よりも水滴が速く広がり、防曇性がより優れていた。一方、比較例5は、水滴が広がらず、実施例6〜8よりも防曇性が非常に劣っていた。比較例6は、実施例6〜8よりも水滴が広がる速度が遅く、防曇性が劣っていた。
表3に示すように、実施例6〜8はいずれも、比較例5、6よりも結露性が優れていた。一方、比較例5は、結露による水滴が消えず、実施例6〜8よりも結露性が非常に劣っていた。比較例6は、数分後には消えたものの結露による水滴が発生し、実施例6〜8よりも結露性が劣っていた。
表3に示すように、実施例7、8は、実施例6よりも融解温度が低く、霜付き性がより優れていた。これは、実施例7の透明フィルムにおいて、イオン性液体の融点が低いためであり、実施例8の透明フィルムにおいて、親水性微粒子がイオン交換基で表面修飾されているためである。
表3に示すように、実施例6〜8はいずれも、拭き取り性が比較例5、6と同等以上であった。
[付記]
以下に、本発明の第2の透明フィルムの好ましい特徴の例を挙げる。各例は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよい。
上記イオン性液体の融点は、0℃以下であってもよい。これにより、結露によって上記イオン性液体の表面に水滴が発生する場合であっても、上記イオン性液体が液体のままの状態であるため、結露による水滴と混ざり合い、上記イオン性液体の表面のイオン性の官能基が乖離してイオンを供給することによって、凝固点降下が発生する。その結果、霜が発生する温度を低下させることができる。これにより、本発明の第2の透明フィルムを、例えば、冷凍用ショーケースの窓に適用する場合、使用温度範囲をより低温まで広げることができる。
本発明の第2の透明フィルムは、上記複数の凸部の間隙に親水性微粒子を有するものであってもよい。これにより、上記イオン性液体に加えて上記親水性微粒子の親水性の機能を利用することで、水を広げる速度がより高まり、防曇性を充分に高めることができる。
上記親水性微粒子の粒径は、上記複数の凸部の上記ピッチの10%以上、50%以下であってもよい。これにより、上記親水性微粒子を上記複数の凸部の間隙に効率的に配置することができる。
上記親水性微粒子は、シリカ微粒子であってもよい。これにより、本発明の第2の透明フィルムの親水性が充分に高まり、その結果、防曇性を充分に高めることができる。
上記親水性微粒子は、イオン交換基で表面修飾されているものであってもよい。これにより、水で測定したときの上記親水性微粒子の表面張力が高まり、接触角が小さくなるため、上記親水性微粒子の親水性をより高めることができる。また、上記イオン性液体中のイオン対の少なくとも一方を、上記親水性微粒子の表面のイオン性の官能基と化学結合させることによって、上記イオン性液体が拭き取られるのを充分に防止することができる。更に、結露によって上記親水性微粒子の表面に水滴が発生する場合であっても、上記親水性微粒子の表面のイオン性の官能基が乖離してイオンを供給することによって、凝固点降下が発生し、その結果、霜が発生する温度を低下させることができる。これにより、本発明の第2の透明フィルムを、例えば、冷凍用ショーケースの窓に適用する場合、使用温度範囲をより低温まで広げることができる。
上記複数の凸部は、親水性の表面を有するものであってもよい。これにより、本発明の第2の透明フィルムの親水性が充分に高まり、その結果、防曇性を充分に高めることができる。
上記複数の凸部の上記ピッチは、100nm以上、400nm以下であってもよい。これにより、モアレや虹ムラ等の光学現象を充分に防止することができる。
上記複数の凸部のアスペクト比は、0.8以上、1.5以下であってもよい。これにより、上記複数の凸部の先端が上記イオン性液体の表面から突出している場合は、上記複数の凸部の突出した部分による良好な反射率特性を実現することができる。更に、モアレや虹ムラ等の光学現象を充分に防止することができる。
1a、1b、21a、21b、101:透明フィルム
2a、2b、22、102:基材フィルム
3、23:親水性微粒子
4a、4b、24、104:凸部
5a、5b、25、105:凸部の間隙
6、26:枝突起
7a、7b:空間
8:溶媒
9、29:分散液
10、110:イオン性液体
11、111:溶液
12:樹脂層
13:TACフィルム
P1、P2、P3、P4:ピッチ

Claims (20)

  1. 複数の凸部が可視光の波長以下のピッチで、表面に設けられた基材フィルムと、
    前記複数の凸部の前記ピッチの15%以上、50%以下の粒径を有する親水性微粒子とを備え、
    前記親水性微粒子は、前記複数の凸部に接して前記複数の凸部の間隙に保持され、
    前記親水性微粒子と前記複数の凸部の間隙の底部との間に空間が形成され、
    前記空間が、流路を形成して表面に配置されたことを特徴とする透明フィルム。
  2. 前記親水性微粒子は、隣り合う前記複数の凸部に2点以上で接することを特徴とする請求項1に記載の透明フィルム。
  3. 隣り合う前記複数の凸部に2点以上で接する前記親水性微粒子の個数の割合は、すべての前記親水性微粒子に対して、30%以上、100%以下であることを特徴とする請求項2に記載の透明フィルム。
  4. 前記親水性微粒子は、シリカ微粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明フィルム。
  5. 前記親水性微粒子は、イオン交換基で表面修飾されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明フィルム。
  6. 前記複数の凸部は、親水性の表面を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透明フィルム。
  7. 前記親水性微粒子の表面張力は、水で測定したとき、前記複数の凸部の表面張力以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の透明フィルム。
  8. 前記複数の凸部の前記ピッチは、100nm以上、400nm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の透明フィルム。
  9. 前記複数の凸部のアスペクト比は、0.8以上、1.5以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の透明フィルム。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の透明フィルムの製造方法であって、
    溶媒中に前記親水性微粒子が分散された分散液を、前記基材フィルム上に塗布する工程、及び、
    塗布された前記分散液に対して前記溶媒を蒸発させる乾燥を行う工程
    を含むことを特徴とする透明フィルムの製造方法。
  11. 表面に複数の凸部が、可視光の波長以下のピッチで、かつ、前記複数の凸部の間隙が流路を形成して配置された基材フィルムと、
    前記複数の凸部の間隙に配置された親水性を有するイオン性液体とを備えることを特徴とする透明フィルム。
  12. 前記イオン性液体の融点は、0℃以下であることを特徴とする請求項11に記載の透明フィルム。
  13. 前記透明フィルムは、前記複数の凸部の間隙に親水性微粒子を有することを特徴とする請求項11又は12に記載の透明フィルム。
  14. 前記親水性微粒子の粒径は、前記複数の凸部の前記ピッチの10%以上、50%以下であることを特徴とする請求項13に記載の透明フィルム。
  15. 前記親水性微粒子は、シリカ微粒子であることを特徴とする請求項13又は14に記載の透明フィルム。
  16. 前記親水性微粒子は、イオン交換基で表面修飾されていることを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載の透明フィルム。
  17. 前記複数の凸部は、親水性の表面を有することを特徴とする請求項11〜16のいずれかに記載の透明フィルム。
  18. 前記複数の凸部の前記ピッチは、100nm以上、400nm以下であることを特徴とする請求項11〜17のいずれかに記載の透明フィルム。
  19. 前記複数の凸部のアスペクト比は、0.8以上、1.5以下であることを特徴とする請求項11〜18のいずれかに記載の透明フィルム。
  20. 請求項11〜19のいずれかに記載の透明フィルムの製造方法であって、
    前記イオン性液体と溶媒とが混合された溶液を、前記基材フィルム上に塗布する工程、及び、
    塗布された前記溶液に対して前記溶媒を蒸発させる乾燥を行う工程
    を含むことを特徴とする透明フィルムの製造方法。
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