JP2017056592A - 液滴保持シート - Google Patents

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Abstract

【課題】表面に付着した液滴が濡れ広がりにくく、且つ、液滴の落下を抑制することが可能な液滴保持シートの提供。【解決手段】凹凸構造部20が表面に形成された構造層1と、構造層1の凹凸構造部20が形成された側の面上に形成された撥液層2とを有し、凹凸構造部20は、開口部から底部に向かって水平断面の断面積が小さくなるテーパー形状を有する多数の凹状の孔部11と、隣接する孔部間に位置する壁部12と、の集合体で構成され、孔部11の平均深さが100〜350nmの範囲内であり、平均隣接孔部11間距離が50〜500nmの範囲内であり、壁部12の頂部Lの平均幅が10nm以下であり、撥液層2は、平均厚さが2〜30nmの範囲内であり、撥液層2を平坦層としたときの純水の静的接触角、又は、撥液層2が形成された凹凸構造部20での純水の静的接触角が、θ/2法で90〜120°である液滴保持シート。【選択図】図1

Description

本発明は、表面に付着した液滴が濡れ広がらず、且つ、液滴の落下を抑制することが可能な液滴保持シートに関する。
浴室や洗面所等、湿度の高い部屋または空間においては、壁、天井、鏡、窓等の部材表面には結露が生じやすい。結露により生じた水滴は、窓や鏡の曇りの原因となり、また、放置すればカビの発生等の衛生的問題が生じる。このため、結露の発生を抑制可能とする高撥液性シートの開発が進められてきた(特許文献1)。
しかし、このような高撥水性シートを傾斜面等に配置して用いる場合、表面の撥水性の効果により、付着した水滴がシート表面に保持されずに下方に滑落してしまう。そして、滑落した水滴が溜まった箇所や水滴により濡れた箇所において、上述の衛生的問題が同様に生じていた。
そこで、撥水機能に加え、表面で水滴を保持する機能(水滴保持機能)を付したシートの開発が検討されている。
特許文献2〜3では、撥水機能および水滴保持機能を備えるシートとして、微小突起群を備えた微小突起構造体の表面に、フッ素系材料やケイ素系材料を含む撥水膜が形成された水滴保持シートが開示されている。上記水滴保持シートによれば、シートの微小突起群側表面が低表面張力を示す撥水膜で覆われていることから、上記表面の高撥水性により水滴の濡れ広がりを抑制することが可能である。また、微小突起群は、多数の微小突起が所定の周期で配列されたモスアイ(moth eye(蛾の目))構造を有するところ、微小突起の高さに所望のばらつきをもたせることで、シートを傾斜面に配置して用いる場合であっても、高さの低い微小突起から高さの高い微小突起への水滴の移動を阻害することができ、水滴を保持することが可能であるとされる。
特開2012−127695号公報 特開2001−159618号公報 特開2012−58168号公報
特許文献2〜3で開示される水滴保持シートは、微小突起の形状が、頂部が曲率を有し底部から頂部に向かって水平断面の断面積が徐々に小さくなる形状、いわゆるテーパー形状を有するものである。そして、このような微小突起の群からなるモスアイ構造は、通常その構造から水滴の濡れ広がりが速いとされる。このため、上記水滴保持シートは、その表面に撥水膜が設けられているものの、モスアイ構造による水滴の濡れ広がり性が影響して所望の大きさの水滴が形成されず、水滴の大きさによっては傾斜面等に配置して用いた際に滑落しやすくなる場合がある。
また、水滴保持機能は、微小突起と水滴との接触により発揮されるところ、微小突起の表面に形成された撥水膜の撥水性により、微小突起と水滴との接触が阻害されることが予想される。このため、微小突起群を有する面を鉛直下向きとなるように配置して用いる場合に、水滴保持効果が得られにくいという課題がある。このような現象は、水滴に限らず、他の液滴についても生じ得る。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、表面に付着した液滴が濡れ広がらず、且つ、液滴の落下を抑制することが可能な液滴保持シートを提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者等が鋭意検討を行った結果、モスアイ構造にかえて、モスアイ構造の反転形状、すなわち逆モスアイ構造をシート表面に賦形し、さらにその表面に撥液層を設けることにより、より高い撥液機能および液滴保持機能を発揮することが可能であることを見出した。本発明は、このような知見に基づくものである。
すなわち本発明は、凹凸構造部が表面に形成された構造層と、上記構造層の上記凹凸構造部が形成された側の面上に形成された撥液層と、を有し、上記凹凸構造部は、開口部から底部に向かって水平断面の断面積が小さくなるテーパー形状を有する多数の凹状の孔部と、隣接する上記孔部間に位置する壁部と、の集合体で構成され、上記孔部の平均深さが100nm〜350nmの範囲内であり、隣接する上記孔部間の平均距離が50nm〜500nmの範囲内であり、上記撥液層は、平均厚さが2nm〜30nmの範囲内であり、上記撥液層を構成する材料を用いて平坦層を形成したとしたときの、上記平坦層の表面での純水の静的接触角が、θ/2法で90°以上120°以下であることを特徴とする液滴保持シートを提供する。
上記発明によれば、構造層の凹凸構造部が形成された側の面(以下、凹凸構造部側表面とする場合がある。)上に形成された撥液層により、孔部内への液体の入り込み等を防ぎつつ、液滴の濡れ広がりを防止することができる。また、上記凹凸構造部は、多数の孔部が、所定の深さを有して所定の周期で形成されており、隣接する孔部間に位置する壁部は、孔部の底部から壁部の頂部に向かって水平断面の断面積が小さくなるテーパー形状を成す逆モスアイ構造を有する。そして、上記凹凸構造部の孔部および壁部の表面上に、上記撥液層が所定の平均厚さで形成されることで、壁部の頂部では、撥液層が形成されてないか、もしくは撥液層の形成領域が小さいことから、上記撥液層による撥液性が発揮されにくく、壁部と液滴との接触に際し上記壁部の頂部が液滴内に入り込むことで、支持ピンとして液滴を保持することができる。これにより、本発明の液滴保持シートは、表面に付着した液滴の濡れ広がりを抑え、且つ、液滴の落下を抑制することができ、特に、構造層の凹凸構造部側表面が鉛直下向きとなるように配置して用いる場合に、液滴を良好に保持して落下を抑制することができる。
また、本発明は、凹凸構造部が表面に形成された構造層と、上記構造層の上記凹凸構造部が形成された側の面上に形成された撥液層と、を有し、上記凹凸構造部は、開口部から底部に向かって水平断面の断面積が小さくなるテーパー形状を有する多数の凹状の孔部と、隣接する上記孔部間に位置する壁部と、の集合体で構成され、上記孔部の平均深さが100nm〜350nmの範囲内であり、隣接する上記孔部間の平均距離が50nm〜500nmの範囲内であり、上記撥液層は、平均厚さが2nm〜30nmの範囲内であり、上記撥液層が形成された上記凹凸構造部での純水の静的接触角が、θ/2法で90°以上160°以下であることを特徴とする液滴保持シートを提供する。
上記発明によれば、構造層の凹凸構造部側表面上に形成された撥液層により、孔部内への液体の入り込み等を防ぎつつ、液滴の濡れ広がりを防止することができる。また、上記凹凸構造部は、多数の孔部が、所定の深さを有して所定の周期で形成されており、隣接する孔部間に位置する壁部は、孔部の底部から壁部の頂部に向かって水平断面の断面積が小さくなるテーパー形状を成す逆モスアイ構造を有する。そして、上記凹凸構造部の孔部および壁部の表面上に、上記撥液層が所定の平均厚さで形成されることで、壁部の頂部では、撥液層が形成されてないか、もしくは撥液層の形成領域が小さいことから、上記撥液層による撥液性が発揮されにくく、壁部と液滴との接触に際し上記壁部の頂部が液滴内に入り込むことで、支持ピンとして液滴を保持することができる。これにより、本発明の液滴保持シートは、表面に付着した液滴の濡れ広がりを抑え、且つ、液滴の落下を抑制することができ、特に、構造層の凹凸構造部側表面が鉛直下向きとなるように配置して用いる場合に、液滴を良好に保持して落下を抑制することができる。
上記発明においては、上記凹凸構造部は、上記壁部の頂部の平均幅が10nm以下であり、上記壁部の側面の平均傾斜角度が50°以上90°以下であることが好ましい。壁部の頂部が尖った形状となることから、上記壁部の頂部が液滴内に入り込むことによる液滴保持機能がより発揮されやすくなるからである。
本発明の液滴保持シートは、表面に付着した液滴が濡れ広がりにくく、且つ、液滴の落下を抑制することが可能であるという効果を奏する。
本発明の液滴保持シートの一例を示す概略断面図である。 本発明の液滴保持シートの他の例を示す概略拡大平面図および断面図である。 本発明の液滴保持シートによる液滴保持機能を説明する説明図である。 凹凸構造部における壁部の頂部の形状の例を示す模式図である。 本発明における撥液層の形状を説明する模式図である。
以下、本発明の液滴保持シートおよびその製造方法について詳細に説明する。
A.液滴保持シート
本発明の液滴保持シートは、凹凸構造部が表面に形成された構造層と、上記構造層の上記凹凸構造部が形成された側の面上に形成された撥液層と、を有し、上記凹凸構造部は、開口部から底部に向かって水平断面の断面積が小さくなるテーパー形状を有する多数の凹状の孔部と、隣接する上記孔部間に位置する壁部と、の集合体で構成され、上記孔部の平均深さが100nm〜350nmの範囲内であり、隣接する上記孔部間の平均距離(以下、平均隣接孔部間距離とする場合がある。)が50nm〜500nmの範囲内であり、上記撥液層は、平均厚さが2nm〜30nmの範囲内であり、上記撥液層を平坦層としたときの純水の静的接触角、若しくは、上記撥液層が形成された上記凹凸構造部での純水の静的接触角が、所定の範囲内であることを特徴とする。
すなわち、本発明の液滴保持シートは、上記撥液層を構成する材料を用いて平坦層を形成したとしたときの、上記平坦層の表面での純水の静的接触角が、θ/2法で90°以上120°以下であること、若しくは、上記撥液層が形成された上記凹凸構造部での純水の静的接触角が、θ/2法で90°以上160°以下であることを特徴とするものである。
なお、本発明において、「シート」とは、JIS K6900に定義されるシートおよびフィルムを含む概念とする。
また、本発明の液滴保持シートの表面のうち、構造層の凹凸構造部が形成された側の面を、液滴保持シートの凹凸形成面と称し、上記凹凸形成面において撥液層が形成された上記凹凸構造部が位置する領域を、凹凸領域と称する場合がある。
本発明の液滴保持シートについて、図を参照して説明する。図1は本発明の液滴保持シートの一例を示す概略断面図である。また、図2(a)は本発明の液滴保持シートの他の例を示す概略拡大平面図であり、図2(b)は図2(a)のX−X線断面図である。
図1〜図2で例示するように、本発明の液滴保持シート10は、表面に凹凸構造部20を有する構造層1と、構造層1の凹凸構造部20が形成された側の面上に形成された撥液層2と、を有する。
構造層1の凹凸構造部20は、多数の凹状の孔部11と、隣接する孔部11間に位置する壁部12と、の集合体で構成されている。孔部11は、構造層1の表面に開口部11Aを有し、開口部11Aから底部11Bに向かって水平断面の断面積が小さくなるテーパー形状を有する。孔部11は、その平均深さが100nm〜350nmの範囲内であり、平均隣接孔部間距離が50nm〜500nmの範囲内である。孔部11が上述の形状および所定の平均深さを有し、且つ、多数の孔部11が、所定の平均隣接孔部間距離をもって配列される凹凸構造部20の構造を、逆モスアイ構造と称する。
なお、構造層1の凹凸構造部20が形成された面と同一面内において、凹凸構造部20が形成されていない平坦面21がある場合、平坦面21を基準面Lとする。撥液層2は、平均厚さが2nm〜30nmの範囲内であり、少なくとも凹凸構造部20の孔部11の側面および底部を被覆している。構造層1が平坦面21を有する場合は、通常、平坦面21上にも撥液層2が形成される。
本発明の液滴保持シート10の一方の表面は、構造層1の凹凸構造部20および撥液層2により構成される凹凸領域を有する凹凸形成面である。また、構造層1が平坦面21を有する場合は、本発明の液滴保持シート10の凹凸形成面は、凹凸領域の他に、構造層1の平坦面21およびその上に形成された撥液層により構成される平坦領域を含む。
ここで、本発明の液滴保持シート10は、撥液層2の純水の静的接触角、若しくは、撥液層2が形成された凹凸構造部20での純水の静的接触角が、所定の範囲内であることを特徴とする。すなわち、本発明の液滴保持シート10においては、撥液層2は、撥液層2を構成する材料を用いて平坦層を形成したとしたときの、上記平坦層の表面での純水の静的接触角が、θ/2法で90°以上120°以下を示す。また、本発明の液滴保持シート10においては、撥液層2が形成された凹凸構造部20での純水の静的接触角が、θ/2法で90°以上160°以下である。
本発明によれば、構造層の凹凸構造部側表面上に形成された撥液層により、孔部内への液体の入り込み等を防ぎつつ、液滴の濡れ広がりを防止することができる。また、上記凹凸構造部は、構造層の表面に形成された多数の孔部が、所定の深さを有して所定の間隔で形成されており、隣接する孔部間に位置する壁部は、孔部の底部から壁部の頂部に向かって水平断面の断面積が小さくなるテーパー形状を成す逆モスアイ構造を有する。そして、上記凹凸構造部の孔部および壁部の表面上に、上記撥液層が所定の平均厚さで形成されることで、壁部の頂部では、撥液層が形成されてないか、もしくは撥液層の形成領域が小さいことから、上記撥液層による撥液性が発揮されにくく、壁部と液滴との接触に際し上記壁部の頂部が液滴内に入り込むことで、支持ピンとして液滴を保持することができる。これにより、本発明の液滴保持シートは、表面に付着した液滴の濡れ広がりを抑え、且つ、液滴の落下を抑制することができ、特に、構造層の凹凸構造部側表面が鉛直下向きとなるように配置して用いる場合に、液滴を良好に保持して落下を抑制することができる。
本発明の液滴保持シートは、純水を含む種々の液体に対して高撥液性および高液滴保持性を発揮することができる。ここで、対象となる液体については特に限定されないが、表面張力の高い液体が好ましい。表面張力の高い液体とは、撥液層が後述する所定の静的接触角を示す液体であればよく、例えば、表面張力が50mN/m〜100mN/mの範囲内である液体が好ましい。なお、表面張力は、市販の動的表面張力計を用いて測定することができる。このような液体として具体的には、純水の他、水溶液、水を含む懸濁液、コロイド等が挙げられる。
本発明の液滴保持シートは、高い液滴保持機能を有するが、中でも、構造層の凹凸構造部側表面が鉛直下向きとなるように配置する場合の液滴保持機能に優れる。鉛直下向きに対する液滴保持機能に優れる理由については明らかではないが、壁部の頂部において撥液層による撥液性が発揮されないことによるものと推量される。以下、その理由について、従来の高撥液性シートやモスアイ構造が賦形されたシートと比較しながら説明する。
高い撥液性を有するシートの表面に付着した液体は、濡れ広がらずに球形に近い液滴形状を保つことができるが、シートを傾けるとその表面が撥液性であるが故に、液滴はシート表面上を容易に転がってしまう。
また、微小突起からなるモスアイ構造が表面に賦形されたシート(以下、モスアイシートと称する場合がある。)では、微小突起の高低差を利用してモスアイシートを傾けた際の水滴の移動を阻害することで、液滴の濡れ広がりを防ぎつつモスアイシート上に液滴を保持することができるとされる。しかし、上記モスアイシートのモスアイ構造が形成された面を鉛直下向きにして配置する場合、微小突起の表面の撥液性により、上記表面と接する水滴を十分に保持できないことが推量される。
これに対し、本発明の液滴保持シートは、図3で例示するように、構造層1はその表面に逆モスアイ構造を有する凹凸構造部を有しており、構造層1の凹凸構造部側表面には、撥液層2が所定の平均厚さで形成されている。ここで、凹凸構造部の孔部11は、開口部11Aから底部11Bに向かって水平断面の断面積が小さくなるテーパー形状であることから、孔部11の側面上に形成される撥液層2の厚さは底部11Bから開口部11Aに向かって小さくなると考えられる。そして、壁部12の頂部では、撥液層2が形成されてないか、もしくは撥液層2が形成されていても、撥液層2の形成領域が小さいことから撥液性が発揮されにくいと推量される。
このため、凹凸構造部上に付着した液体は、孔部11内に入っても孔部11内に形成された撥液層2により濡れ広がらず、球形に近い液滴Bとして凹凸構造部の表面に存在する。また、壁部の頂部12は、撥液層による撥液性が発揮されにくいことから液滴B内に入り込むことができ、液滴Bの一部が上記頂部に濡れ広がる。これにより、壁部12が支持ピンとして機能し、液滴Bを保持することができると推量される。
このように、本発明の液滴保持シートは、凹凸構造部における特徴的な薄い壁部によるピン止効果により、従来の撥液性シートやモスアイ構造が賦形されたシートよりも、液滴保持機能、特に、鉛直下向きで配置する際の液滴保持機能に優れる。
以下、本発明の液滴保持シートにおける各構成について、詳細に説明する。
1.構造層
本発明における構造層は、凹凸構造部が表面に形成された層である。
上記構造層は、凹凸構造部が形成された面と同一面内において、上記凹凸構造部が形成されていない平坦面を有していてもよい。上記平坦面は、上記構造層の基準面となる。
(1)凹凸構造部
上記凹凸構造部は、多数の凹状の孔部と、隣接する上記孔部間に位置する壁部と、の集合体で構成される。
孔部は、開口部から底部に向かって水平断面の断面積が小さくなるテーパー形状を有する有底孔である。
また、壁部は、複数の孔部の側面により囲まれ、孔部の底部から壁部の頂部に向かって水平断面の断面積が小さくなるテーパー形状(逆テーパー形状)を有する。
図2(b)で示すように、孔部11は、構造層1の表面に形成された開口部11Aと、底部11Bと、側面11Cとを備える。孔部11の側面11Cが、隣接する孔部11間に位置する壁部12の側面となり、壁部12の頂部で囲まれた開口が孔部11の開口部11Aとなる。壁部12の頂部は、構造層1の凹凸構造部側表面内の平坦面と同一面内、若しくは、上記平坦面よりも構造層内側に位置する。なお、後述するように、壁部12の頂部が平面である場合、上記壁部の頂部の平面は、構造層1の凹凸構造部側表面内の平坦面には含まないものとする。
構造層が、凹凸構造部が表面に形成された層であるとは、言い換えると、構造層の表面に多数の凹状の孔部が形成されており、隣接する上記孔部間が壁部である層である。
ここで、孔部が、開口部から底部に向かって水平断面の断面積が小さくなるとは、構造層の厚さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの、水平断面内における孔部の断面積占有率が、孔部の開口部から底部に近づくに従い連続的に漸次減少すること、すなわち孔部が底部側で先細りとなることをいう。
また、壁部が、孔部の底部から壁部の頂部に向かって水平断面の断面積が小さくなるとは、構造層の厚さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における壁部の断面積占有率が、壁部の根元部、つまり、孔部の底部から壁部の頂部に近づくに従い連続的に漸次減少し、壁部が頂部で先細りとなることをいう。
本発明における凹凸構造部は、孔部が上述の形状および所定の平均深さを有し、且つ、多数の孔部が、所定の平均隣接孔部間距離で配列されていることで、逆モスアイ構造を有する。
孔部の深さとは、孔部の開口部の開口表面から底部までの垂線方向の長さをいい、図2(b)においてhで示す部分である。孔部が複数の底部を有する場合は、孔部の深さとは、孔部の開口部の開口表面から最深部に位置する底部までの垂線方向の長さとする。また、多数の孔部は、深さが均一であってもよく、孔部ごとに深さが異なってもよい。
本発明においては、上記孔部の平均深さが100nm〜350nmの範囲内であればよく、中でも100nm〜200nmの範囲内であること好ましく、特に120nm〜150nmの範囲内であること好ましい。上記孔部の平均深さが上記範囲に満たないと、凹凸構造部による液滴保持機能が低下する場合があり、一方、上記孔部の平均深さが上記範囲を超えると、本発明の液滴保持シートに透明性が要求される場合に、透明性が低下するおそれがある。
また、隣接する孔部間の距離(隣接孔部間距離)とは、隣接する2つの孔部の、一方の孔部の底部と他方の孔部の底部との間隔をいい、図2(b)においてrで示す部分である。多数の孔部間における隣接孔部間距離は、均一であってもよく、ばらつきを有していてもよい。開口部の開口幅が均一な孔部が一定間隔で規則的に配置されている場合には、隣接孔部間距離は孔部の周期と一致する。
本発明においては、平均隣接孔部間距離が50nm〜500nmの範囲内であればよく、中でも70nm〜300nmの範囲内であること好ましく、特に70nm〜180nmの範囲内であること好ましい。平均隣接孔部間距離が上記範囲に満たないと、凹凸構造部の構造が脆くなる場合があり、一方、平均隣接孔部間距離が上記範囲を超えると、凹凸構造部による液滴保持機能が発揮されず、液滴を十分に保持できない場合がある。
孔部の深さおよび隣接孔部間距離は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscop:SEM)を用いて孔部の構造層の厚さ方向に平行な断面(以下、孔部の縦断面とする。)および構造層の凹凸構造部側表面を観察することで求めることができる。
また、孔部の平均深さ、および平均隣接孔部間距離は、それぞれSEMによる観察画像内において孔部を50点以上任意で抽出して測定した値の平均値である。
孔部の縦断面とは、構造層の凹凸構造部側表面またはその対向面の法線のうち、孔部の底部を通る法線を含む面で切断した断面をいう。孔部が複数の底部を有する場合は、孔部の開口部から最深部に位置する底部を通る法線を含む面で切断した断面とする。
孔部のアスペクト比(孔部の平均深さ/孔部の開口部の開口幅)は、特に限定されないが、例えば0.4〜2.5の範囲内であることが好ましく、中でも0.8〜2.1の範囲内であることが好ましい。壁部が頂部に向かって鋭利になり、凹凸構造部による液滴保持効果を著しく高く奏することができるからである。
孔部は、開口部から底部に向かって次第に水平断面の断面積が小さくなる形状であればよく、孔部の縦断面形状としては、例えば、円弧状、半楕円状、三角形状、台形状、多角形径状、放物状、逆釣鐘状等が挙げられる。また、孔部の側面は、直線状であってもよく、放物線状やカテナリー曲線状等の、壁部側に凸となる凹曲面状としてもよく、多角形状や曲線等を適宜組み合わせた形状としてもよい。
中でも、孔部の縦断面形状は、図1および図2(b)で示すように側面が上記凹曲面状であることが好ましい。孔部の側面および底面上に形成される撥液層の形成範囲を広く有することができるからである。
凹凸構造部において、多数の孔部は、縦断面形状が同一の形状を有していてもよく、異なる形状を有していてもよい。
孔部の開口部は、構造層の表面に形成される。孔部の開口部の形状は、例えば、楕円形状、多角形形状等が挙げられる。孔部の開口部の形状とは、構造層の凹凸構造部側表面を平面視したときの孔部の形状をいう。凹凸構造部において、多数の孔部は、開口部が同一の形状を有していてもよく、異なる形状を有していてもよい。
上記孔部の開口部の開口幅、すなわち孔径は、孔部内に形成された撥液層により所望の撥液機能を発揮することが可能な大きさであればよく、例えば100nm〜350nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜200nmの範囲内であることがより好ましく、120nm〜150nmの範囲内であることが特に好ましい。上記孔部の開口部の孔径が上記範囲を超える場合や満たない場合、凹凸構造部による液滴保持機能が発揮されず、液滴を十分に保持できない場合がある。
上記開口部の孔径は、図2(b)においてqで示す部分であり、SEMによる構造層の凹凸構造部側表面の観察画像内において、開口部を50点以上任意で抽出して測定した値の平均値とする。
孔部の底部は、先が尖った尖端形状であってもよいし、凸曲面状や球形状であってもよい。また、上記孔部は複数の底部を有する多峰形状であってもよい。
壁部は、上述したように、その頂部が液滴内に入り込むことで液滴を保持することから、壁部の頂部の幅は、壁部の頂部において撥液層が形成されないか、もしくは撥液層が形成されていても撥液性が発揮できない程度の大きさとすることが好ましく、小さいほどより好ましい。
ここで、壁部の頂部の幅は、壁部の縦断面形状において、壁部の頂部から孔部の平均深さの10%の長さに相当する分、孔部内側となる位置で、構造層の厚さ方向と直交する水平面で切断した切断面の幅とし、図2(b)においてwで示す部分である。
本発明においては、壁部の頂部の平均幅が、10nm以下であることが好ましく、中でも1nm〜8nmの範囲内であることが好ましく、特に3nm〜5nmの範囲内であることが好ましい。また、上記壁部の頂部の幅および平均幅は、0nmよりも大きければよい。壁部の頂部の平均幅が上記範囲よりも大きいと、凹凸構造部による液滴保持機能が発揮されず、液滴を十分に保持できない場合がある。
壁部の頂部の幅は、SEMによる壁部の縦断面観察により測定することができ、壁部の頂部の平均幅は、壁部を50点以上任意で抽出して上述の方法で壁部の頂部の幅を測定した値の平均値とする。
壁部の縦断面形状とは、構造層の凹凸構造部側表面、または、その対向面の法線のうち、対象の壁部を形成する隣接する2つの孔部の、開口部の中心同士を通る法線を含む面で切断した断面形状をいう。
壁部の縦断面形状において、壁部の頂部は、頂部の幅が上述の範囲内となる形状であることが好ましく、図4(a)で示すように先が尖った尖端形状であってもよく、図4(b)で示すように頂部が平面であってもよく、図4(c)で示すように凸曲面状であってもよい。また、壁部の頂部は、図4(d)で示すような多峰形状であってもよい。
壁部の縦断面形状は、上記壁部を構成する孔部の縦断面形状に応じて適宜決定される。中でも、壁部の縦断面形状は、図1および図2(b)で示すように側面が壁部内側に凸となる凹曲面状であることが好ましい。壁部が頂部に向かって鋭利な形状となり、上記頂部が液滴内に入り込みやすくなるからである。また、孔部内に撥液層を形成しやすくなるからである。
壁部は、孔部の底部から壁部の頂部に向かって水平断面の断面積が小さくなるテーパー形状を有する。上記壁部の側面の平均傾斜角度は、壁部の頂部が所望の幅を有することが可能な角度であることが好ましく、例えば、50°以上90°以下であることが好ましく、中でも60°以上85°以下であることが好ましく、特に70°以上80°以下であることが好ましい。壁部の側面の平均傾斜角度が上記範囲よりも大きいと、凹凸構造部による液滴保持機能が発揮されず、液滴を十分に保持できない場合があり、一方、上記範囲よりも小さいと、凹凸構造部の壁部の形状が脆くなる場合がある。
上記壁部の側面の傾斜角度とは、図2(b)で示すように、壁部12の縦断面形状において、壁部12の側面11Cが、壁部12を含み構造層1の平面と水平な面(水平面)Sに対してなす角度θをいう。壁部12の側面11Cが緩やかな凹曲面状である場合は、孔部11の開口部11Aの外周上の点Pと孔部11の底部11Bとを結ぶ線が、最短距離となるように選択して直線を結び、上記直線が、壁部12を含む水平面Sに対してなす角度θを、壁部の側面の傾斜角度とする。
孔部11の開口部11Aの外周上の点Pとは、壁部の頂部が図4(a)で示すような尖端形状であれば尖端部、図4(b)で示すような平面を有する形状であれば上記平面の外周上の一点、図4(c)で示すような凸曲面状であれば凸曲面の極大点とする。
上記壁部の側面の平均傾斜角度は、SEMにより壁部の縦断面形状を観察し、壁部を50点以上、任意で抽出して各壁部の傾斜角度θを測定した値の平均値とする。
上記凹凸構造部は、中でも、上記壁部の頂部の平均幅が10nm以下であり、上記壁部の側面の平均傾斜角度が50°以上90°以下であることが好ましい。壁部の頂部の平均幅および側面の平均傾斜角度を上記の範囲に設定することで、壁部の頂部が尖った形状となることから、壁部の頂部に撥液層が形成されにくく、上記壁部の頂部が液滴内に入り込むことによる液滴保持機能がより発揮されやすくなるからである。
上記凹凸構造部は、孔部および壁部が密集していることが好ましく、また、液滴との接触点を増やすことで液滴保持機能がより高まることから、壁部の数が多い程好ましい。
壁部の数は、孔部の数に因ることから、凹凸構造部の単位面積当たりの孔部の数が25個/μm以上であることが好ましく、中でも100個/μm以上であることが好ましい。
凹凸構造部の単位面積当たりの孔部の数が上記範囲よりも小さいと、撥水性および壁部による液滴保持機能が十分に発揮されない場合がある。
(2)構造層の組成
上記構造層は、その表面の所望の形状の凹凸構造部を有することが可能なものであればよく、樹脂層であってもよく、金属を用いて形成された金属層であってもよい。
構造層が樹脂層である場合、上記樹脂層は樹脂組成物を用いて形成される。上記樹脂組成物は、少なくとも樹脂を含有し、必要に応じて重合開始剤等その他の成分を含有する。ここで、樹脂とは、モノマーやオリゴマーの他、ポリマーを含む概念である。
上記樹脂は、所望の凹凸構造部を形成可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系等の電離放射線硬化性樹脂、アクリレート系、ウレタン系、エポキシ系、ポリシロキサン系等の熱硬化性樹脂、アクリレート系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等の熱可塑性樹脂等の、各種材料および各種硬化形態の賦形用樹脂を使用することができる。また、非反応性重合体を含有してもよい。なお、電離放射線とは、分子を重合させて硬化させ得るエネルギーを有する電磁波または荷電粒子を意味し、例えば、すべての紫外線(UV−A、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線等が挙げられる。
中でも成形性および機械的強度に優れる点から、上記樹脂が電離放射線硬化性樹脂であることが好ましい。電離放射線硬化性樹脂とは、分子中にラジカル重合性結合およびカチオン重合性結合の少なくとも一方を有する単量体または重合体を適宜混合したものであり、適宜重合開始剤を用いて電離放射線により硬化されるものである。また、成形性に優れるとは、所望の形状に精度良く成形できることをいう。特に、樹脂は紫外線硬化性樹脂であることが好ましい。
なお、電離放射線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂を含む樹脂組成物で形成される樹脂層は、上記硬化性樹脂が光照射や加熱等を受けて化学反応を経て硬化した硬化樹脂を含む。
上記樹脂組成物は、さらに必要に応じて、重合開始剤、離型剤、光増感剤、酸化防止剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、粘度調整剤、密着性向上剤等を含有することもできる。
構造層が樹脂層である場合、上記樹脂層は親液性であってもよい。上述したように、凹凸構造部の壁部により液滴の保持が可能である理由として、壁部の頂部において撥液性が発揮されにくく、上記壁部の頂部が液滴内に入り込み、上記液滴が頂部で濡れ広がることで、良好に接触し保持することができるためと考えられる。このため、構造層を、親液性を示す樹脂層とすることで、壁部の頂部に撥液層が形成されない場合に、上記頂部の親液性により液滴と更に良好に接触することができ、より高い液滴保持機能を発揮することが可能となるからである。
上記樹脂層が親液性であるとは、上述の樹脂組成物を用いて平坦な樹脂層を形成したときの、樹脂層の表面における純水の静的接触角がθ/2法で50°以上75°以下であることが好ましく、より好ましくは50°以上70°以下である。樹脂層である構造層が、凹凸構造部側表面に平坦面を含む場合は、上記純水の静的接触角は、上記平坦面にて測定することができる。
本発明において静的接触角は、別段の規定が無い限り、測定対象物の表面に対象となる液体(例えば、純水の静的接触角を測定する場合であれば、純水)の1.0μLの水滴を滴下し、着滴10秒後に、滴下した液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の、固体表面に対する角度から接触角を算出するθ/2法に従って測定した接触角とする。測定装置として、例えば、協和界面科学社製 接触角計DM 500を用いることができる。
また、静的接触角は、樹脂組成物の成分、凹凸構造部の形状等を変更することにより、調整することができる。
一方、構造層が金属層である場合、金属層を形成する金属は、後述する無電解めっきおよび電鋳による層形成が可能な金属であればよく、例えば、ニッケル、ニッケルりん合金、銅、真ちゅう等が挙げられる。
上記構造層は、表面に所望の形状の凹凸構造部を備えることが可能な厚さであればよく、具体的には、1μm〜300μmの範囲内、中でも5μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
上記構造層の厚さとは、構造層の基準面から上記基準面と対向する面までの長さをいい、図1においてTで示す部分である。
(3)その他
構造層は、一方の面の全域に凹凸構造部が形成されていてもよく、凹凸構造部が形成された面と同一面上に凹凸構造部が形成されない平坦面を有していてもよい。
構造層の形成方法については、後述する「B.液滴保持シートの製造方法」の項で説明するためここでの説明は省略する。
2.撥液層
本発明における撥液層は、上記構造層の上記凹凸構造部側表面上に形成され、平均厚さが2nm〜30nmの範囲内である。
(1)構造および物性
撥液層は、構造層の上記凹凸構造部側表面上に形成されるが、凹凸構造部において上記撥液層は、少なくとも孔部の底部および側面に形成されていればよく、壁部の頂部上には形成されていてもよく形成されていなくてもよい。また、構造層が凹凸構造部側表面と同一面上に平坦面を有する場合は、上記平坦面上にも撥液層が形成されていることが好ましく、通常は、上記平坦面上に撥液層が形成されている。
孔部内に形成される撥液層は、均一な膜厚であってもよいが、通常は、図5で示すように、孔部11の開口部11Aから孔部11の底部11Bに向かうに従い、撥液層2の厚さが大きくなる。図5において、D1は、壁部12の頂部における撥液層2の厚さ、D2は孔部11の側面における撥液層2の厚さ、D3は孔部11の底部11Bにおける撥液層2の厚さを示す。D1およびD3は、構造層1の厚さ方向での長さで規定され、一方、D2は孔部の側面の法線方向での長さで規定される。
撥液層は、平均厚さが2nm〜30nmの範囲内であればよく、好ましくは5nm〜15nmの範囲内であり、更に好ましくは6nm〜10nmの範囲内である。撥液層の平均厚さが上記範囲よりも大きいと、壁部の頂部にも十分な厚さの撥液層が形成されることとなり、壁部の頂部で撥液性が発揮されて液滴を保持できなくなる場合があり、一方、撥液層の平均厚さが上記範囲よりも小さいと、孔部内に十分な厚さの撥液層が形成されず、撥液性を付与することができない場合がある。
撥液層の厚さは、SEMによる撥液層の縦断面観察により測定することができる。また、撥液層の平均厚さは、図5中のD1〜D3から50点以上任意で抽出して厚さを比較測定し、その平均値とすることができる。
構造層の凹凸構造部側表面が平坦面を含む場合、上記撥液層の厚さは、上記構造層の上記平坦面上に形成された撥液層の縦断面観察により測定することも可能である。また、上記撥液層の平均厚さは、上記構造層の上記平坦面上に形成された撥液層の縦断面観察により、50点以上任意で抽出して上記厚さを測定し、その平均値から特定することも可能である。
上記撥液層は、純水の静的接触角がθ/2法で90°以上120°以下であればよく、中でも100°以上120°以下、特に110°以上120°以下であることが好ましい。ここで、撥液層の純水の静的接触角とは、上記撥液層を構成する材料を用いて平坦層を形成したときの、上記平坦層の表面における純水の静的接触角をいい、上述の「1.構造層」の項で説明した方法と同様の方法で測定される。構造層の凹凸構造部側表面が平坦面を含む場合、上記平坦面に形成される撥液層は平坦層となることから、上記構造層の上記平坦面上に形成された撥液層の純水の静的接触角を測定することで、撥液層の平坦層の表面における純水の静的接触角を特定することができる。
撥液層を構成する材料については、後述する。
(2)撥液層の組成
撥液層を構成する材料は、所望の撥液性を示すことが可能なものであれば特に制限されず、例えば、フッ素含有化合物、有機ケイ素化合物等が挙げられる。撥液層は、上記材料を1種類含むものであってもよく、2種以上を含んでいてもよい。
フッ素含有化合物は、撥液層の形成方法により適宜選択することができるが、例えば、テトラフルオロメタン、トリフルオロメタン、ヘキサフルオロエタン等のフッ化アルキル化合物が挙げられる。中でも撥水性の点から、テトラフルオロメタンを用いることが好ましい。また、特許第5626441号公報に開示されるフッ素化合物を用いてもよい。
また、有機ケイ素化合物は、撥液層の形成方法により適宜選択することができるが、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
撥液層の形成方法については、後述する「B.液滴保持シートの製造方法」の項で説明するためここでの説明は省略する。
3.任意の部材
本発明の液滴保持シートは、上述の構造層および撥液層の他に、任意の部材を有することができる。
(1)基材
本発明の液滴保持シートは、構造層の凹凸構造部形成面と対向する面に基材を有していてもよい。
基材は、本発明の液滴保持シートの用途に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂基材、ガラス基材、セラミックス基材、石英、蛍石等の無機基材、金属基材、紙基材等が挙げられる。
樹脂基材に用いられる樹脂、およびガラス基材に用いられるガラス材料は、例えば、特開2014−188852号公報、特開2015−04418号公報、特開2015−71249号公報等に開示される基材に用いられる樹脂およびガラス材料を用いることができる。
上記基材は、本発明の液滴保持シートの用途に応じて、透明性や可とう性等を有していてもよい。
上記基材は、単一組成を有する単一層であってもよく、同一のまたは異なる組成を有する層を複数積層させた多層構造を有してもよい。
(2)接着剤層および離型フィルム
本発明の液滴保持シートは、構造層の凹凸構造部形成面と対向する面に接着剤層を有していてもよい。さらに、上記粘着剤層の表面に離型フィルムを有していてもよい。本発明の液滴保持シートを接着加工品とすることができるからである。
上記接着剤層を形成する接着剤として、粘着剤(感圧接着剤)、2液硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、熱溶融型接着剤等の公知の接着形態のものが各種使用できる。
4.その他
本発明の液滴保持シートは、上記撥液層が形成された上記凹凸構造部での純水の静的接触角、すなわち、本発明の液滴保持シートの凹凸形成面の凹凸領域での純水の静的接触角が、θ/2法で90°以上160°以下であればよく、100°以上150°以下であることがより好ましい。撥液層が形成された凹凸構造部での純水の静的接触角を上記範囲内とすることで、本発明の液滴保持シートの表面で液滴が濡れ広がるのを抑制することができる。また、上記静的接触角が上記上限値以上になると、撥液性が高すぎて、凹凸構造部に液滴が接触できない場合や、壁部が液滴内に入り込めない場合があり、液滴が保持できないおそれがある。
撥液層が形成された凹凸構造部での純水の静的接触角は、本発明の液滴保持シートの、撥液層が形成された凹凸構造部を有する凹凸領域を対象面として、上述の「1.構造層」の項で説明した方法と同様の方法で測定され、撥液層の組成や凹凸構造部の形状等を調整することで、静的接触角を調整することができる。
5.製造方法
本発明の液滴保持シートの製造方法は、表面に所望の凹凸構造部を有する構造層を形成し、上記構造層の凹凸構造部側表面上の、少なくとも孔部内の表面に撥液層を形成することが可能な方法であれば特に限定されない。本発明の液滴保持シートの製造方法については、後述する「B.液滴保持シートの製造方法」の項で詳細に説明する。
6.用途
本発明の液滴保持シートは、撥水性と液滴保持性が必要なあらゆる用途に用いることができ、中でも、構造層の凹凸構造部側表面が鉛直下向きとなるように配置して用いる用途に好適である。具体的な用途としては、結露しやすい室内内装用の壁紙、天井材、床材、鏡、窓、窓のサッシ等の他、店内の保冷ショーケース、温蔵庫、スチームショーケース等に用いることができる。結露しやすい室内としては、例えば、特許第5626395号公報に記載の部屋や空間等が挙げられる。
また、本発明の液滴保持シートは、集水シート、ビニールハウス用シート等として用いることができる。さらに、本発明の液滴保持シートは、培養器、血液試験プレート、試験管代替等、液滴アレイ用基材等に用いることができる。
B.液滴保持シートの製造方法
本発明の液滴保持シートの製造方法は、多数の突起部と隣接する上記突起部間に位置する溝部との集合体で構成され、上記突起部の平均高さが100nm〜350nmの範囲内であり、隣接する上記突起部間の平均距離(以下、平均隣接突起部間距離と称する場合がある。)が50nm〜500nmの範囲内であるモスアイ構造部を有する構造層形成用原版を用いて、凹凸構造部が表面に形成された構造層を形成する構造層形成工程と、上記構造層の上記凹凸構造部が形成された側の面上に、平均厚さが2nm〜30nmの範囲内である撥液層を形成する撥液層形成工程と、を有することを特徴とする製造方法である。
本発明の液滴保持シートの製造方法においては、撥液層形成工程にて形成される上記撥液層の純水の静的接触角、若しくは、上記撥液層が形成された上記凹凸構造部での純水の静的接触角が、所定の範囲内であることを特徴とする。すなわち、本発明の液滴保持シートの製造方法は、撥液層形成工程にて形成される上記撥液層は、上記撥液層を構成する材料を用いて平坦層を形成したとしたときの、上記平坦層の表面での純水の静的接触角が、θ/2法で90°以上120°以下であること、若しくは、上記撥液層が形成された上記凹凸構造部での純水の静的接触角が、θ/2法で90°以上160°以下であることを特徴とするものである。
本発明によれば、上述の「A.液滴保持シート」の項で説明した、表面に付着した液滴が濡れ広がりにくく、且つ、液滴の落下を抑制することが可能な液滴保持シートを容易に製造することができる。
以下、各工程について説明する
(1)構造層形成工程
本工程は、多数の突起部と隣接する上記突起部間に位置する溝部との集合体で構成され、上記突起部の平均高さが100nm〜350nmの範囲内であり、平均隣接突起部間距離が50nm〜500nmの範囲内であるモスアイ構造部を有する構造層形成用原版を用いて、凹凸構造部が表面に形成された構造層を形成する工程である。
(a)構造層形成用原版
本工程で用いられる構造層形成用原版は、多数の突起部が所定の平均高さを有し、所定の間隔で配置されたモスアイ構造部を有する。このため、上記構造層形成用原版を用いて形成される構造層の凹凸構造部は、上記モスアイ構造部の反転形状となり、凹凸構造部の孔部の形状がモスアイ構造部の突起部の形状に対応する。
上記モスアイ構造部において、上記突起部の平均高さは、100nm〜350nmの範囲内であればよく、中でも100nm〜200nmの範囲内であること好ましく、特に120nm〜150nmの範囲内であること好ましい。また、平均隣接突起部間距離は、50nm〜500nmの範囲内であればよく、中でも70nm〜300nmの範囲内であること好ましく、特に70nm〜180nmの範囲内であること好ましい。なお、平均隣接突起部間距離とは、隣接する突起部の頂部間の平均距離をいう。
突起部の平均高さおよび平均隣接突起部間距離を上記範囲内とすることで、構造層形成用原版のモスアイ構造部により賦型される凹凸構造部の孔部を、所望の形状とすることができるからである。より詳細な理由については、上述の「A.液滴保持シート 1.構造層」の項で説明した孔部の頂部の平均深さおよび隣接孔部間距離の規定理由と同様であるため、ここでの説明は省略する。測定方法についても、上記項で説明した方法と同様とすることができる。
上記モスアイ構造部は、上記突起部の平均周期が10nm以下であることが好ましい。構造層形成用原版のモスアイ構造部により賦型される凹凸構造部の壁部の頂部を所望の幅とすることができ、上記壁部の頂部にて、撥液性が発揮されにくくすることができるからである。突起部の周期は、隣接する突起部の根元から、突起部の平均高さの10%の長さに相当する分、突起部の頂部側となる位置で、突起部の高さ方向と直交する水平面で切断した溝部の切断面の幅で規定する。上記幅は、上述の「A.液滴保持シート 1.構造層」の項で説明した方法を用いて測定することができる。
また、上記突起部の側面の平均傾斜角度は、50°以上90°以下であることが好ましい。構造層形成用原版のモスアイ構造部により賦型される凹凸構造部の壁部を、所望の形状とすることができるからである。より詳細な理由については、上述の「A.液滴保持シート 1.構造層」の項で説明した壁部の側面の平均傾斜角度の規定理由と同様であるため、ここでの説明は省略する。上記平均傾斜角度は、突起部の根元と頂部とを結ぶ線が版の平面に対して成す角であり、上記項で説明した方法と同様の方法で測定することができる。
その他、上記モスアイ構造部における突起部および上記突起部間に位置する溝部の詳細については、上述の「A.液滴保持シート 1.構造層」の項で説明した凹凸構造部の孔部、および壁部の詳細と同様とすることができる。
上記構造層形成用原版は、表面に、多数の突起部が所望の形状で所望の間隔で形成されてなるモスアイ構造部を有するものであればよく、例えば、従来公知のモスアイフィルムを上記構造層形成用原版として用いることができる。
上記構造層形成用原版の製造方法は、例えば、上記モスアイ構造部の反転形状が表面に賦型された金型(以下、モスアイ原版と称する場合がある。)に、構造層形成用原版用の樹脂組成物を塗布して硬化させ、上記モスアイ原版を剥離する方法を用いることができる。上記モスアイ原版は、従来公知のモスアイフィルムの製造に使用される金型と同様のものを用いることができ、その製造方法は、例えば、特許第5626441号公報に記載の陽極酸化法を用いることができる。
また、上記構造層形成用原版の製造方法の他の例として、透明基材上にレジスト層を形成し、2光束干渉露光法を用いて、上記レジスト層に対してスプリッタで分割したUVレーザー等の電離放射線を拡大露光し、角度を変えて二重露光して干渉縞を形成し、上記レジスト層にパターンを記録後、現像する方法を用いることができる。上記方法では、モスアイ原版を用いずに、レジスト層上に直接、モスアイ構造部の賦形が可能である。
(b)構造層の形成方法
構造層の形成方法については、構造層が上述の構造層形成用原版を用いて形成可能な方法であればよく、構造層の組成に応じてさらに2種類の方法に大別することができる。以下、構造層が樹脂層である場合と、金属層である場合とに分けて説明する。
(i)構造層が樹脂層である場合
構造層が樹脂層である場合、構造層の形成方法は、使用する構造層用樹脂組成物に含まれる樹脂の種類により適宜選択される。
例えば、硬化性樹脂を含む構造層用樹脂組成物を用いる場合であれば、本工程は、上記構造層形成用原版の上記モスアイ構造部を有する面に、硬化性樹脂を含む構造層用樹脂組成物を塗布する塗布工程、上記構造層用樹脂組成物を硬化する硬化工程、および上記構造層形成用原版を剥離する剥離工程を有する。
また、熱可塑性樹を含む構造層用樹脂組成物を用いる場合であれば、本工程は、熱可塑性樹を含む構造層用樹脂組成物を用いて樹脂層を形成する樹脂層形成工程、上記樹脂層を加熱して軟化させ、上記樹脂層の表面に上記構造層形成用原版の上記モスアイ構造部を有する面を押し付ける賦形工程、および上記樹脂層を冷却して上記構造層形成用原版を剥離する剥離工程を有する。
構造層形成用原版へ構造層用樹脂組成物の塗布方法や、構造層用樹脂組成物を用いた樹脂層の形成方法については、従来公知の方法を用いることができる。また、硬化条件や押圧条件等の賦型条件については、適宜設定することができる。
構造層形成用原版に硬化性樹脂を含む構造層用樹脂組成物を塗布する場合、塗布層上に基材を配置してもよい。また、熱可塑性樹を含む構造層用樹脂組成物を用いて樹脂層を形成する場合、基材上に樹脂層が形成されてもよい。
(ii)構造層が金属層である場合
構造層が金属層である場合、構造層は、上記構造層形成用原版の上記モスアイ構造部を有する面に無電解めっきおよび電鋳を行い、前上記凹凸構造部形成用原版を剥離することで形成することができる。無電解めっきおよび電鋳の条件等については、所望の凹凸構造部を有する構造層を形成可能となる条件に適宜設定することができる。
(c)構造層
本工程において形成される構造層については、上述の「A.液滴保持シート 1.構造層」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
(2)撥液層形成工程
本工程は、上記構造層の上記凹凸構造部が形成された側の面上に、平均厚さが2nm〜30nmの範囲内である撥液層を形成する工程である。
上記撥液層の形成方法は、所望の膜厚で形成可能な方法であれば特に限定されず、撥液層の形成に用いる材料(以下、撥液層用組成物とする。)に応じて適宜選択することができる。例えば、化学気相成長(CVD)法、反応性イオンエッチング法が好適である。
CVD法としては、例えば、熱CVD法、光CVD法、プラズマCVD法、エピタキシャルCVD法、アトミックレイヤーCVD法、有機金属気相成長法等が挙げられ、低温で製膜可能な点から、プラズマCVD法を用いることが好ましい。
CVD法を用いた撥液層の形成方法は、例えば、撥液層用組成物として、少なくとも1種の有機ケイ素化合物からなる堆積用化合物を用い、上記堆積用化合物を加熱により気化し、上記有機ケイ素化合物のガスと、キャリアガスとしてアルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスと、を混合し、当該ガスをプラズマ化して、構造層の凹凸構造部側表面上に上記堆積用化合物を堆積する方法が用いられる。
上記有機ケイ素化合物のガスと、不活性ガスとの混合比は、特に限定されないが、例えば、体積比で1:99〜30:70の範囲内とすることが好ましい。
反応性イオンエッチング法は、通常、上記堆積用化合物の堆積とエッチングによる凹凸形状の賦形とを同時に行うものであるが、本発明においては、上記堆積用化合物の堆積を目的として行われる。このため、凹凸構造部の表面がエッチングされないか、エッチングされたとしても凹凸構造部の形状による液滴保持機能を阻害しない程度に、堆積条件を設定することが好ましい。
反応性イオンエッチング法は、撥液層用組成物として、ガス状のフッ素化合物やケイ素化合物からなる堆積用化合物を用い、プラズマにより構造層の凹凸構造部側表面に堆積する。反応性イオンエッチング法においては、上記堆積用化合物に更に酸素を混合してもよい。堆積用化合物と酸素との混合比は、体積比で100:0〜80:20(体積比)であることが好ましい。酸素の割合を増やすと、凹凸構造部がエッチングされる場合がある。
本工程で形成される撥液層は、平均厚さが2nm〜30nmの範囲内であればよく、中でも、上述の「A.液滴保持シート 2.撥液層」の項で規定した範囲内であることが好ましい。
また、本工程で形成される撥液層は、撥液層を構成する材料を用いて平坦層を形成し、上記平坦層の表面での純水の静的接触角がθ/2法で90°以上120°以下であればよく、中でも、上述の「A.液滴保持シート 2.撥液層」の項で規定した範囲内であることが好ましい。上記平坦層の形成方法は、上述の方法と同様とすることができる。
撥液層の平均厚さおよび平坦層とした表面での純水の静的接触角を上記範囲内とする理由および測定方法、ならびに撥液層のその他詳細については、上述の「A.液滴保持シート 2.撥液層」の項で説明した理由および測定方法、ならびにその他詳細と同様であるため、ここでの説明は省略する。
(3)その他
本発明の製造方法により得られる液滴保持シートは、上記撥液層が形成された上記凹凸構造部での純水の静的接触角が、θ/2法で90°以上160°以下であればよく、100°以上150°以下であることがより好ましい。その理由および測定方法については、上述の「A.液滴保持シート」の項で説明した理由および測定方法と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。
[実施例1]
以下の方法により、液滴保持シートを得た。
(1)金型(モスアイ原版)の作製
純度99.50%の圧延されたアルミニウム板を、研磨後、0.02Mシュウ酸水溶液の電解液中で、印加電圧40V、20℃の条件にて100秒間、陽極酸化を実施した。次に、第一エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で50秒間エッチング処理を行った。続いて、第二エッチング処理として、1.0Mリン酸水溶液で120秒間孔径処理を行った。さらに、上記処理を繰り返し、これらを合計5回追加実施した。これにより、アルミニウム基板上に、複数の微細孔を備えた凹凸形状を有する陽極酸化アルミニウム層が形成された。最後に、フッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、モスアイ原版を得た。なお、アルミニウム層に形成された微細な凹凸形状は、平均隣接微細孔間距離100nm、平均深さ160nmで、深さ方向に徐々に断面積が小さくなり、先端部が曲面を有する多数の微細孔が密に形成された微細凹凸形状であった。
(2)構造層形成用原版(モスアイフィルム)の作製
PETフィルムを基材として、上記基材上にUV硬化樹脂を塗布し、溶媒を揮発させて、いわゆるノンソル状態の塗布層とした。上記塗布層上に、モスアイ原版を圧力を掛けて押し付けながらUV光を照射して、表面に多数の突起部が形成されてなるモスアイ構造部が賦形されたモスアイフィルムを作製した。
モスアイフィルムのモスアイ構造部の断面をSEMにより観察したところ、突起部の平均高さが150nm、平均隣接突起部間距離が110nm、突起部の頂部の平均幅が30nm、突起部の側面の平均傾斜角度は78°であった。突起部の頂部の幅は、モスアイ構造部の縦断面形状において、突起部の頂部から、平均高さの10%の長さに相当する長さ分、内側となる位置で、モスアイフィルムの厚さ方向と直交する水平面で切断した切断面の幅とした。また、平均隣接突起部間距離は、隣接する2つの突起部の、一方の突起部の頂部と他方の突起部の頂部との間隔を測定し、その平均値とした。SEM観察画像上での突起部の抽出点数は50点とした。
(3)構造層形成工程
モスアイフィルムのモスアイ構造部が賦形された賦型面上に、熱可塑性樹脂(アクリル樹脂)を溶融して押し出し、冷却した。これにより、上記モスアイ構造部の形状が転写されて成る凹凸構造部と、上記凹凸構造部が形成された面と同一面内の平坦面と、を有する、図1に例示する構造層を形成した。得られた構造層の凹凸構造部側表面の断面をSEMにより観察したところ、孔部の平均深さが150nm、平均隣接孔部間距離が110nm、壁部の頂部の平均幅が8nm、壁部の側面の平均傾斜角度が78°であった。SEM観察画像上での孔部および壁部の抽出点数は50点とした。
(4)撥液層形成工程
撥液層の形成のため、平行平板型の電極構造を有するプラズマCVD装置(アネルバ製、型番:PED−401)を使用した。上記装置は、直径325mmの下部電極に40kHzの高周波電力が投入されるように改造したものであり、下部電極はチラーにより温度設定が可能であり、上部電極はガスを導入するためシャワーヘッドになっている。また、上記装置には、フッ素化合物を導入するためのバブラーを設置し、ウォーターバスにより温度を設定できるようにした。バブラーからニードルバルブを介して、プラズマCVD装置内にガスが導入され、ニードルバルブの調整によりバブラーの圧力を変更できる。
得られた構造層をプラズマCVD装置の真空チャンバーに入れ、下部電極上に設置した。また、膜厚を測定するため、表面が鏡面加工されたシリコンウエハを一部マスキングした状態で下部電極上に設置した。下部電極の温度は18℃とした。チャンバーを閉めて5mTorrまで減圧した後、Arガスをキャリアガスとし、バブリングして、フッ素化合物(モノマー材料)として(パーフルオロヘキシル)エチレン(ダイキン工業(株)製、品番:F−1620)をプラズマCVD装置の真空チャンバー内に供給した。このとき、Arガスの流量を50sccm、バブラーの温度を25℃、バブラーの圧力を150Torrとした。排気量を調整して真空チャンバー内の圧力を400mTorrに調整したのち、放電電力を52Wとし、構造層の凹凸構造部側表面に対して製膜を行った。製膜時間は2分間とした。
製膜時間経過後放電を止めて、大気圧に戻してから、蒸着膜が製膜された構造層をCVD装置のチャンバーから取り出すことにより、構造部の凹凸構造部側表面にフッ素化合物を蒸着源とした蒸着膜である撥液層が形成された液滴保持シートを得た。
得られた液滴保持シートは、撥液層の膜厚が10nmであり、撥液層側の表面に凹凸形成面を有するものであった。なお、撥液層の膜厚は、構造層の平坦面上に形成された撥液層の厚さを、小阪研究所製サーフコーダET4000Lにて測定することで確認した。以下の各実施例及び比較例においても同様である。
[実施例2]
構造層形成工程を以下の方法で行ったこと以外は、実施例1と同様にして液滴保持シートを得た。得られた構造層の凹凸構造部側表面の断面をSEMにより観察したところ、孔部の平均深さ、平均隣接孔部間距離、壁部の頂部の平均幅、および壁部の側面の平均傾斜角度は、実施例1と同値であった。SEM観察画像上での孔部および壁部の抽出点数は50点とした。
(構造層形成工程)
下記組成の構造層用樹脂組成物を、モスアイフィルムのモスアイ構造部が賦形された賦型面上に、硬化後厚さが20μmとなるように塗布し、充填させた。塗布層上にPET基材(厚さ:25μm、商品名:ルミラー、東レ社製)を貼り合わせた後、ゴムローラーで10N/cmの加重で圧着した。モスアイフィルム全体に均一な組成物が塗布されたことを確認後、PET基材側から2000mJ/cmのエネルギーでUV照射して塗布層を硬化し、その後、モスアイフィルムを剥離して凹凸構造部が賦型された構造層を得た。得られた構造層の凹凸構造部の孔部および壁部の寸法形状については、実施例1と同様であった。
<構造層用樹脂組成物>
・EO変性ビスフェノールAジアクリレート … 70重量部
・ポリエチレングリコールジアクリレート … 30重量部
・ジフェニル(2,4.6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド(ルシリンTPO) … 1重量部
[比較例1]
撥液層形成工程において、製膜時間を10分としたこと以外は、実施例1と同様にして液滴保持シートを得た。得られた液滴保持シートの撥液層の膜厚は、50nmであった。
[比較例2]
撥液層形成工程を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様にして液滴保持シートを得た。
[比較例3]
構造層形成工程において、モスアイフィルムによるモスアイ構造部の転写を行わず、基材上に熱可塑性樹脂(アクリル樹脂)を溶融して押し出し後、冷却して、全面が平坦面である構造層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして液滴保持シートを得た。
[比較例4]
撥液層形成工程において、製膜時間を10分としたこと以外は、比較例3と同様にして液滴保持シートを得た。得られた液滴保持シートの撥液層の膜厚は、50nmであった。
[評価]
実施例1〜2および比較例1〜4にて得られた液滴保持シートについて、以下の評価を行った。
(1)接触角の評価
得られた液滴保持シートの平坦領域および凹凸領域(撥液層が形成された凹凸構造部)での純粋の静的接触角を測定した。測定は、測定対象領域の表面に1.0μLの純水の水滴を滴下し、着滴10秒後に、滴下した液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の、固体表面に対する角度から接触角を算出するθ/2法に従って測定した。測定装置は協和界面科学社製 接触角計DM500を用いた。結果を表1および表2に示す。
(2)液敵保持効果の評価
得られた液滴保持シートの凹凸形成面の凹凸領域(撥液層が形成された凹凸構造部)に対し水滴(直径約2mm)を滴下し、液滴保持シートの構造層の凹凸構造部側表面を鉛直下向きおよび鉛直方向と平行に配置して、水滴の落下の様子を確認した。比較例3および4については、液滴保持シート表面の所望の位置に水滴(直径約2mm)を滴下して、同様の方法で水滴の落下の様子を確認した。
実施例1〜2の液滴保持シートは、何れも水滴の落下が抑制され、表面にて水滴が保持されることを確認した。
一方、比較例1の液滴保持シートは、表面に水滴が形成されるものの、どれも保持されずに落下した。これは、壁部の頂部においても撥液性を発揮するのに十分な膜厚の撥液層が形成されたことで、壁部の頂部が液滴内に入りことによるピン留め効果が消失したと考えられる。また、比較例2の液滴保持シートは、明確な水滴が形成されず、液滴保持機能は無かった。これは、撥液層が形成されないことから、液滴保持シート表面において、水滴を形成するための十分な撥液性が発揮されないためと解される。比較例3〜4の液滴保持シートは、水滴は不完全な球形で形成されたが、どれも保持されずに落下した。これは、比較例3〜4の水滴保持シートは、表面に構造層の凹凸構造部由来の凹凸領域を有さないため、壁部の頂部が液滴内に入り込むことによるピン留め効果が無いためと考えられる。
1 … 構造層
2 … 撥液層
10 … 液滴保持シート
11 … 孔部
12 … 壁部
20 … 凹凸構造部

Claims (3)

  1. 凹凸構造部が表面に形成された構造層と、
    前記構造層の前記凹凸構造部が形成された側の面上に形成された撥液層と、
    を有し、
    前記凹凸構造部は、開口部から底部に向かって水平断面の断面積が小さくなるテーパー形状を有する多数の凹状の孔部と、隣接する前記孔部間に位置する壁部と、の集合体で構成され、
    前記孔部の平均深さが100nm〜350nmの範囲内であり、
    隣接する前記孔部間の平均距離が50nm〜500nmの範囲内であり、
    前記撥液層は、平均厚さが2nm〜30nmの範囲内であり、前記撥液層を構成する材料を用いて平坦層を形成したときの、前記平坦層の表面での純水の静的接触角が、θ/2法で90°以上120°以下であることを特徴とする液滴保持シート。
  2. 凹凸構造部が表面に形成された構造層と、
    前記構造層の前記凹凸構造部が形成された側の面上に形成された撥液層と、
    を有し、
    前記凹凸構造部は、開口部から底部に向かって水平断面の断面積が小さくなるテーパー形状を有する多数の凹状の孔部と、隣接する前記孔部間に位置する壁部と、の集合体で構成され、
    前記孔部の平均深さが100nm〜350nmの範囲内であり、
    隣接する前記孔部間の平均距離が50nm〜500nmの範囲内であり、
    前記撥液層は、平均厚さが2nm〜30nmの範囲内であり、
    前記撥液層が形成された前記凹凸構造部での純水の静的接触角が、θ/2法で90°以上160°以下であることを特徴とする液滴保持シート。
  3. 前記凹凸構造部は、前記壁部の頂部の平均幅が10nm以下であり、
    前記壁部の側面の平均傾斜角度が50°以上90°以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液滴保持シート。
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