JPWO2016027585A1 - 立軸ポンプ - Google Patents

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Abstract

立軸ポンプにおいて振動や摩擦を低減する。立軸ポンプであって、回転軸に接続して回転する物体と、外周面に第1の摺動部を有し該第1の摺動部を内周面で支持する第1のすべり軸受と、内周面に第2の摺動部を有し該第2の摺動部を外周面で支持する第2のすべり軸受とを備え、前記回転軸に接続して回転する物体の中で比較的重量の大きい物体に、前記第1の摺動部または第2の摺動部の少なくとも一方を接続する。

Description

本発明は、すべり軸受を有する立軸ポンプに関し、特に、先行待機運転ポンプやドライ条件で管理運転を行うポンプなどの、大気中運転と排水(通水)運転を行う立軸ポンプに関する。
近年、都市化の進展により、緑地の減少及び路面のコンクリート化、アスファルト化の拡大が進むことでヒートアイランド現象が発生し、いわゆるゲリラ豪雨と呼ばれる局所的な集中豪雨が都市部で頻発している。局所的な大量の降雨は、コンクリート化、アスファルト化した路面では、地中に吸収されることなくそのまま水路に導かれる。その結果、大量の雨水が、短時間のうちに排水機場に流入する。
頻発するこのような集中豪雨によってもたらされる大量の雨水の速やかな排水に備えるために排水機場に設置する排水ポンプでは、始動遅れによる浸水被害が生じないよう、雨水が排水機場に到達する前に予め始動させておく先行待機運転が行われている。
図1は、先行待機運転を行う立軸ポンプの部分概略図である。排水機場の水槽100には、縦方向に配置された軸の先端にインペラ22を備え、インペラ22に水と共に空気を吸い込ませることにより、水槽100の水位が最低運転水位LWL以下であっても運転(先行待機運転)を継続することが可能な立軸ポンプ3が配置されている。この立軸ポンプ3には、インペラ22入口側の吸い込みベル27の側面部に貫通孔5が設けられており、この貫通孔5には、外気に接する開口6aを備えた空気管6が取付けられている。これにより、この立軸ポンプ3では貫通孔5を介して立軸ポンプ3内に供給する空気の供給量を水位に応じて変化させ、最低運転水位LWL以下で立軸ポンプ3の排水量がコントロールされる。
図2は、先行待機運転の運転状態を説明する図である。例えば大都市の雨水排水用として、吸込水位に関係なく降雨情報等により予め立軸ポンプを始動しておく(A:気中運転)。低水位の状態から水位が上昇するに従って、インペラの位置まで水位が達し、立軸ポンプは空運転(気中運転)からインペラで水を撹拌する運転(B:気水撹拌運転)、さらに貫通孔を経て供給される空気を水と共に吸い込ませつつ水量を徐々に増やす運転(C:気水混合運転)を経て100%水の排出を行う全量運転(D:定常運転)へ移行する。また、高水位から水位が低下するときは、全量運転から貫通孔を経て供給する空気を水と共に吸い込ませつつ水量を徐々に減らす運転(C:気水混合運転)へ移行する。水位がLLWL近くに至ると、水を吸い込まず排水もしない運転(E:エアロック運転)へ移行する。これら5つの特徴ある運転を総称して先行待機運転という。なお、ポンプ始動は、ケーシング下端よりも低い水位LLLWLから開始する。
図3は、図1に示した先行待機運転を行う立軸ポンプ3の全体を示す断面図である。なお、図2に示した貫通孔5及び空気管6は図示省略されている。図3に示すように、立軸ポンプ3は、ポンプ設置床に設置固定される吐出エルボ30と、この吐出エルボ30の下端に接続されるケーシング29と、ケーシング29の下端に接続され、インペラ22を内部に格納する吐出ボウル28と、吐出ボウル28の下端に接続され、水を吸い込むための吸い込みベル27と、を備えている。
立軸ポンプ3のケーシング29、吐出ボウル28、及び吸い込みベル27の径方向略中心部には、軸継手26によって互いに接続された回転軸10、10´が配置されている。回転軸10、10´は、支持部材を介してケーシング29に固定されている上部軸受62と、支持部材を介して吐出ボウル28に固定されている下部軸受63によって支持されている。回転軸10、10´の一端側(吸い込みベル27側)には、水をポンプ内に吸い込むためのインペラ22が接続されている。回転軸10、10´の他端側は、吐出エルボ30に設けられた孔から立軸ポンプ3の外部へ通じ、インペラ22を回転させる図示しないエンジンやモータ等の駆動機へ接続される。
回転軸10、10´と吐出エルボ30に設けられた孔との間にはフローティングシール、グランドパッキンまたはメカニカルシール等の軸シール34が設けられており、これにより立軸ポンプ3が扱う水が立軸ポンプ3の外部に流出することを防止する。
駆動機は、保守点検を容易に行うことができるように陸上に設けられる。駆動機の回転は回転軸10、10´に伝達され、インペラ22を回転させることができる。インペラ22の回転によって水は吸込みベル27から吸い込まれ、吐出ボウル28、ケーシング29を通過して吐出エルボ30から吐出される。
図3に示した立軸ポンプ3は、ポンプ起動時には大気中で運転される。すなわち、軸受62、63は液体の潤滑のないドライ条件で運転される。ここでドライ条件とは、ポンプ運転中の軸受62、63の雰囲気が、液体の潤滑がない大気中である条件をいい、ドライ運転とはその条件で運転することをいう。また、軸受62、63は軸受に通水した排水条件でも運転される。ここで、排水条件とは、ポンプ運転中の軸受62、63の雰囲気が、土砂等の異物(スラリー)が混入した水中である条件をいい、排水運転とはその条件で運転すること、例えば気水混合運転、全量運転等、エアロック運転等をいう。このような条件で軸受62、63が使用されるので、軸受62、63には次のような課題があった。
軸受62、63には、すべり軸受が用いられる。このすべり軸受には様々な材料が使用されるが、ドライ運転を行う立軸ポンプ3の場合には、ドライ摺動性及び排水運転時の信頼性の観点から樹脂又はセラミックス製の軸受が用いられることが多い。この場合、すべり軸受には、ドライ運転時の摩擦発熱に耐えることとともに、排水運転時の水中のスラリーによる摩耗に強いことが要求される。しかしながら、この二つの特性は相反することが多く、一般に耐摩耗性の高い軸受材料は摩擦係数が高い傾向がある。このため排水運転時の耐摩耗性を優先して軸受材料を選定すると、ドライ条件での摩擦発熱が大きくなり、ドライ条件での摩擦発熱を抑えるために摩擦係数の低い軸受材料を選定すると、排水運転時のスラリーによる軸受材料の摩耗量が増加する。
また、すべり軸受やすべり軸受と共に用いる緩衝材に、樹脂やゴム等の高分子材料を用いる場合は、材料ごとに決定される使用可能温度の上限があるので、摩擦による発熱限度は、これらの材料の性質により決定される。
以上で説明した特性を有するすべり軸受において、すべり軸受の維持管理性を向上させるために、すべり軸受の耐摩耗性を向上させると、軸受すべり面の摩擦係数が大きくなり、この軸受すべり面の摩擦が原因となって、以下で説明する振動が発生する可能性がある。
一般に、立軸ポンプ3のような回転機械を運転すると、回転体自体が有する重量の不釣合いや流体荷重によって回転体に強制的に生じる加振力によって回転機械が振動することがある。しかしながら、この他に回転機械の振動の原因として、回転体の振れ回りによる変位方向(回転体の径方向)と直交する方向(回転体の周方向)に発生する力がある。この力は不安定化力と呼ばれ、回転体の減衰作用を打ち消す働きがある。結果、不安定化力によって回転体全体の減衰作用が負になると、発散的な振動(徐々に振れ回りが大きくなるような振動)を引き起こす場合がある。
ここで、立軸ポンプ3の起動時などの気中運転では水中運転と比べて軸受部に潤滑流体がないので、軸受すべり面は摩擦係数が大きい。この摩擦力が上記不安定化力となるので、摩擦係数が高い軸受材料を用いた場合には不安定化力が大きくなり、回転軸10、10´に回転方向と逆向きに振れ回る発散的な振動を引き起こすこととなる。
また、ドライ運転時にこのような発散的な振動が発生した場合、振動により軸受面圧が増大し、軸受すべり面で発生する摩擦力が極めて大きくなる。そのため、急激な軸受温度上昇による熱膨張や焼付きによって、軸受が機能不全に陥る可能性がある。
一方で立軸ポンプ3の排水運転時には、すべり軸受のすべり面に液膜が形成される。この液膜によって不安定化力が発生し、これによって大きな振動が発生する場合がある。この現象は、油で潤滑させるすべり軸受においては、オイルホイップ又はオイルホワールと呼ばれる現象と同様のメカニズムで発生する。この現象が発生すると、回転軸10、10´は激しく振動し、正常な運転が不可能となる。
これらの振動を防止するには、不安定化力の低減、又は減衰の付加による回転軸10、10´の安定性向上を図る必要があるが、ドライ運転時における不安定化力の原因である摩擦係数を大きく下げることは上述したように困難であり、また立軸ポンプ3の構造上、回転軸10、10´に十分な減衰作用を与えることが難しい。
このように、先行待機運転を行う立軸ポンプ用のすべり軸受では、耐摩耗性、耐発熱性(低摩擦性)、耐振動性といった性能が要求される。そしてこれらの要求を高いレベルで同時に満たす軸受として、発明者らは、外周面に第1の摺動部を有し且つ内周面に第2の摺動部を有し、水中及び大気中で回転可能な回転部材と、前記第1の摺動部を内周面で支持する第1のすべり軸受と、前記第2の摺動部を外周面で支持する第2のすべり軸受とを有する軸受を研究開発し、立軸ポンプに用いることを提案している。
前記開発した軸受によれば、外周面の第1の摺動部で第1のすべり軸受との摺動により回転部材に働く摩擦力と、内周面の第2の摺動部で第2のすべり軸受との摺動によって回転部材に働く摩擦力が互いに相殺し合うようになるので、耐摩耗性を犠牲にすることなく、ドライ運転時やスラリーを含む排水運転時等においても摩擦力や液膜などによる不安定化力による振動を低減することができ、また、軸受すべり面に加わる摩擦力を低減することができるので、すべり軸受の発熱量を低減できるようになる。
ところで、前記開発した軸受の配置は、支持部材を介してケーシング29に固定されている上部軸受62や、支持部材を介して吐出ボウル28に固定されている下部軸受63として配置されたり、図4に示すようにインペラ22より下方(吸い込み側)のボトム軸受66として配置されたりしてメインテナンス性を確保することが、本発明者らにより、これまで考えられてきている。しかしながら、どのような位置に配置することが、振動や摩擦をより最適に低減することができるのかについては検討がされていなかった。
また、ポンプは、要求された性能に応じて形状が異なるが、振動や摩擦の程度も異なっており、どのような位置に前記開発した軸受を配置するのが良いかの検討の必要性が高まってきた。
本発明は、従来見過ごしていた、前記開発した軸受の配置に着目し、どのようなポンプであっても、前記開発した軸受の最適な配置をすることにより、振動や摩擦を最適に低減することを目的とする。
回転体の不釣り合い力は、(回転体の重量[kg])×(重心と回転中心のずれ[m])×(回転角速度[rad/s]の2乗)により算出される半径方向荷重として表される。発明者らは、摩擦による振動の要因である軸受摺動部の摩擦力は、インペラなどに生じる不釣り合い力が大きい部位(以下、荷重点と表記)に設けられる軸受で特に大きくなるという点を
(摩擦力)=(摩擦係数)×(半径方向荷重)
の関係に基づいて捉えた。そのように捉えると、半径方向荷重はインペラなどの重量物近傍で大きくなるので、重量物近傍の摩擦力が最も大きくなる。立軸ポンプ3においては、駆動機とインペラが長い回転軸10、10´で接続されているので、回転体全体の半径方向荷重のほとんどがインペラ部分に集中して発生する。従って、摩擦力が一番大きくなる部分に摩擦力を相殺する軸受を配置することが一番効果的であると結論した。発明者らは、以上の様に鋭意検討した結果次のような手段を見出した。
上記目的を達成するため、本発明の一形態に関する立軸ポンプは、回転軸に接続して回転する物体と、外周面に第1の摺動部を有し該第1の摺動部を内周面で支持する第1のすべり軸受と、内周面に第2の摺動部を有し該第2の摺動部を外周面で支持する第2のすべり軸受とを備え、前記回転軸に接続して回転する物体の中で比較的重量の大きい物体に、前記第1の摺動部及び第2の摺動部の少なくとも一方を近接して配置する。
本発明の別の形態に係る立軸ポンプによれば、前記比較的重量の大きい物体がインペラである。
本発明の別の形態に係る立軸ポンプは、回転軸と、前記回転軸に接続され、回転軸と共に回転するインペラと、回転軸とともに回転する第1の摺動部と、該第1の摺動部をその内周面で支持する第1の支持部と、を有する第1のすべり軸受と、回転軸とともに回転する第2の摺動部と、該第2の摺動部をその外周面で支持する第2の支持部と、を有する第2のすべり軸受とを備え、前記第1の摺動部及び第2の摺動部の少なくとも一方が、前記インペラの内部に設けられる。
本発明によれば、どのようなポンプであっても、不釣り合い力によって摺動面の摩擦力が大きくなりやすいインペラなどの回転体重量物に摩擦力を相殺する軸受を配置するので、回転体にかかる摩擦力を効果的に減ずることができる。したがって、振動や摩擦を最適に低減することができる。
先行待機運転を行う立軸ポンプの部分外略図である。 先行待機運転の運転状態を説明する図である。 先行待機運転を行う立軸ポンプの全体を示す断面図である。 先行待機運転を行う立軸ポンプの従来の軸受の配置図である。 図3に示す部分aの詳細図である。 図5で説明した実施例の変形例である。 第1のすべり軸受と第2のすべり軸受とによる摩擦力を相殺する原理を説明する縦断面模式図である。 図7に示すXX´断面における断面図である。 ドライ運転時における第1のすべり軸受及び第2のすべり軸受の動作を示す図である。 排水運転時における第1のすべり軸受及び第2のすべり軸受の動作を示す図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1から図10において同一または相当する構成要素には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図5は、図3の部分aの詳細図であり、回転軸10´の上下方向に第1のすべり軸受1と第2のすべり軸受2が配置された状態に関する部分を示す図である。なお、本実施形態に係る立軸ポンプは、図3に示した立軸ポンプと類似の形状を有しているので、全体の説明は省略する。
図3に示したように、立軸ポンプ3における吐出ボウル28の内部には、ガイドベーン41を介して内筒42が回転軸10´を囲んで配置される。図5に示すように、回転軸10´は、第1のすべり軸受1と、第2のすべり軸受2とにより支持されている。第1のすべり軸受1は、図3に示された内筒42の内部で内筒42に接続する支持部材43により支持される。
図5に示すように、第1のすべり軸受1は、第1スリーブ31(第1の摺動部)と、第1軸受44(第1の支持部)とを有する。第1のすべり軸受1では、回転体の外周側の摺動部として、回転軸10´(回転体)の外周側に第1スリーブ31が固定され、第1スリーブ31は、回転軸10´の回転に伴い回転する。第1スリーブ31の外周と摺動する第1軸受44が、固定側の内周側の摺動部として、第1バックメタル51及び第1緩衝材52を介して第1軸受ホルダ53により支持部材43に固定される。
第2のすべり軸受2は、第2スリーブ37(第2の支持部)と、第2軸受39(第2の摺動部)とを有する。第2のすべり軸受2では、回転体の内周側の摺動部として、第2軸受39が、第2バックメタル54及び第2緩衝材55を介して第2軸受ホルダ59(回転体)によりインペラ22あるいはインペラ22に近接する位置で回転体(回転軸10´、インペラ22、第2軸受ホルダ59等)に固定される。言い換えれば、第2軸受39は、インペラ22の内部(回転軸10´が通過するインペラ22の内部)に位置する第2軸受ホルダ59等の回転体に固定される。第2軸受39は、図示の例のようにインペラ22の内部に位置する第2軸受ホルダ59に固定されていてもよいし、インペラ22又は回転軸10´に直接固定されていてもよい。第2軸受39は、インペラ22等の回転に伴い回転する。第2軸受39の内周と摺動する固定側の外周側の摺動部として、第2スリーブ37が支持部材43と接続する固定スリーブホルダ56の外周に固定される。
固定スリーブホルダ56は、支持部材43に接続する接続部分56aと、第2スリーブ37を支持する円筒状のスリーブ支持部56bとからなる。スリーブ支持部56bの長手方向の長さをインペラ22の重心位置にまで伸ばして加工することは可能であるので、第2のすべり軸受2は、インペラ22の重心位置に最も近い位置に配置することができる。
固定スリーブホルダ56及びインペラ22の第2軸受ホルダ59近傍には、各々第1通水孔57、第2通水孔58が設けられ、第1スリーブ31と第1軸受44との間及び第2スリーブ37と第2軸受39との間の通水がなされるので、円滑な摺動が行われる。それとともに、堆積物の蓄積を防止することができ、また大気運転や水中運転の切替において、摺動部周辺の大気と水の切替を速やかに行えるので、両者の過渡的状況による振動が速やかに低減するようになっている。
図6は、図5で説明した実施例の変形例である。図6は、回転軸10´の同一回転平面に第1のすべり軸受1と第2のすべり軸受2が配置されながら、両すべり軸受1,2をインペラ22に近接して配置した状態を示す図である。
第1のすべり軸受1では、回転体の外周側の摺動部として、インペラ22あるいはインペラ22に近接する位置における回転体(回転軸10´等)に接続される第2軸受兼スリーブホルダ64の外周側に第1スリーブ31が固定される。第1スリーブ31は、回転軸10´の回転に伴い回転する。言い換えれば、第1スリーブ31は、インペラ22の内部に位置する第2軸受兼スリーブホルダ64等の回転体に固定される。第1スリーブ31は、図示の例のようにインペラ22の内部に位置する第2軸受兼スリーブホルダ64の外周側に固定されていてもよいし、インペラ22又は回転軸10´に直接固定されていてもよい。
第1スリーブ31の外周と摺動する固定側の内周側の摺動部として、第1軸受44が、第1バックメタル51や第1緩衝材52とともに、支持部材43と接続する第1軸受兼固定スリーブホルダ65の内周に固定される。
第2のすべり軸受2では、回転体の内周側の摺動部として、第2軸受39が、第2バックメタル54や第2緩衝材55とともに第2軸受兼スリーブホルダ64によりインペラ22あるいはインペラ22に近接する位置における回転体(回転軸10´等)に固定される。第2軸受39は、インペラ22等の回転に伴い回転する。言い換えれば、第2軸受39は、インペラ22の内部に位置する第2軸受兼スリーブホルダ64等の回転体に固定される。第2軸受39は、図示の例のようにインペラ22の内部に位置する第2軸受兼スリーブホルダ64の内周側に固定されていてもよいし、インペラ22又は回転軸10´に直接固定されていてもよい。
第2軸受39の内周と摺動する固定側の外周側の摺動部として、第2スリーブ37が支持部材43と接続する第1軸受兼固定スリーブホルダ65の外周に固定される。
このように、第2軸受兼スリーブホルダ64の外周面が、第1のすべり軸受1として、第2軸受兼スリーブホルダ64の内周面が、第2のすべり軸受2として、各々摺動部を形成する。
第1軸受兼固定スリーブホルダ65は、支持部材43に接続する接続部分65aと、その内周面で第1軸受44を支持する円筒状の第1軸受ホルダ53と、その外周面で第2スリーブ37を支持する円筒状の固定スリーブホルダ56とからなる。これらの円筒状の部材の長手方向の長さをインペラ22の重心位置にまで伸ばして加工することは可能であるので、第2のすべり軸受2は、インペラ22の重心位置に最も近い位置に配置することができる。
第1軸受兼固定スリーブホルダ65並びに第2軸受兼スリーブホルダ64の近傍には、各々第1通水孔57、第2通水孔58が設けられ、各スリーブ、軸受間の通水がなされるので、円滑な摺動が行われる。それとともに、堆積物の蓄積を防止や、大気運転や水中運転の切替において、摺動部周辺の大気と水の切替を速やかに行えるので、両者の過渡的状況による振動が速やかに低減するようになっている。
次に、第1のすべり軸受と第2のすべり軸受について説明する。図7は、第1のすべり軸受と第2のすべり軸受とによる摩擦力を相殺する原理を説明する縦断面模式図である。図示の例では、回転軸10(10´)(回転体)の外周に第1スリーブ31(第1の摺動部)が設けられる。第1スリーブ31の材料は実用的には超硬合金やステンレス鋼等からなる。第1スリーブ31の外周側には、中空円筒の第1軸受44(第1の支持部)が設けられている。すなわち、第1軸受44の内側に第1スリーブ31が接触し摺動する。第1軸受44の材料は実用的には樹脂材料、セラミックス、焼結金属又は表面改質された金属からなる。第1スリーブ31の外周面(第1の摺動部46)は、第1軸受44の内周面(すべり面)と非常に狭い第1のクリアランス47を介して対面し、第1軸受44のすべり面に対して摺動するように構成されている。第1軸受44の外周部は、略円筒状の軸受ケース32の内周面に固定されている。軸受ケース32の材料は実用的には金属又は樹脂からなる。
また、軸受ケース32の外周面には、中空円筒の第2軸受39(第2の支持部)が設けられている。第2軸受39の材料は、実用的には樹脂材料、セラミックス、焼結金属又は表面改質された金属からなる。尚、第1軸受44と第2軸受39の材料は、材料の線膨張係数によるクリアランス変化の観点から、同種材料がより好ましい。
回転軸10(10´)には、固定ピン又はボルト等の固定手段33aによって略円筒状のスリーブケース38が固定されており、スリーブケース38(回転体)は、回転軸10(10´)が回転することで回転軸10(10´)とともに回転するように構成されている。スリーブケース38の内周面には第2スリーブ37(第2の摺動部)が設けられ、第2スリーブ37の内周面(第2の摺動部36)は第2軸受39の外周面(すべり面)と非常に狭い第2のクリアランス48を介して対面し、第2軸受39のすべり面に対して摺動するように構成されている。すなわち、第2軸受39の外側で第2スリーブ37が外接し摺動する。尚、スリーブ31,37は、一般的に軸材等の外周に設置されるものであるが、本願においては、軸受ユニットの構成を分かりやすくするため、便宜上、主となる軸受材を担うものを第1、第2のすべり軸受とし、相対する被摺動部材をスリーブと称するものとする。また、図7に示される例では、図5及び図6に示される第1バックメタル51、第1緩衝材52、第2バックメタル54、及び第2緩衝材55が設けられていないが、これらが設けられていてもよい。
第1軸受44及び第2軸受39は、軸受ケース32のつば部32aを介してポンプなどのケーシングとつながる支持部材35等に、ボルト等の固定手段33bにより固定されている。尚、以上の例では、回転体(回転軸10(10´))の外周に第1スリーブ31が保持され、第1スリーブ31の外周側に対応する非回転の軸受を第1軸受44としている。一方、回転体(スリーブケース38)の内周に第2スリーブ37を有し、第2スリーブ37の内周側に対応する非回転の軸受を第2軸受39としている。しかし、回転体(回転軸10(10´))の外周に第1軸受44を保持し、対応する非回転体に第1スリーブ31を備える場合もあり得る。また、第1のすべり軸受1において回転体の外周に第1スリーブ31を保持し、それに対応する第1軸受44が非回転側にある状態で、第2のすべり軸受2において回転体の内周に第2軸受39を保持し、それに対応する第2スリーブ37が非回転側にある状態、およびその逆もあり得る。即ち、第1軸受44と第1スリーブ31との位置関係及び第2軸受39と第2スリーブ37との位置関係がどのような関係であったとしても、第1のすべり軸受1と第2のすべり軸受2とによる摩擦力を相殺する基本的な原理は変わらない。
この第1のすべり軸受1及び第2のすべり軸受2が、例えば立軸ポンプなどの排水ポンプで用いられ、水中の環境で使用される場合を考慮して、スリーブケース38には、スラリー等を含む水を第1のクリアランス47及び第2のクリアランス48に通水する給水口40が設けられている。給水口40に流入した水は、流路としての第1のクリアランス47及び第2のクリアランス48を通過する。このように、第1のクリアランス47及び第2のクリアランス48へ水を通過させる流路が形成され、第1のクリアランス47及び第2のクリアランス48も流路として機能するので、排水運転時に空気が滞留することなく速やかに第1のクリアランス47及び第2のクリアランス48に水が流れ、第1のすべり軸受1及び第2のすべり軸受2の機能を速やかに発揮することができる。
また、第1軸受44及び第2軸受39は、始動時はドライ条件下で第1スリーブ31及び第2スリーブ37を支持し、排水条件においては極めて薄い液膜を介して第1スリーブ31及び第2スリーブ37を支持する。ここで、ドライ条件とは、運転中の第1軸受44及び第2軸受39の雰囲気が、液体の潤滑がない大気中である条件をいい、ドライ運転とはその条件で運転することをいう。
回転軸10(10´)の定常的な振れ回りを抑制し、また振れ回りによって第1軸受44及び第2軸受39に加わる荷重を抑制するために、第1のクリアランス47の直径隙間寸法(第1軸受44の内径−第1スリーブ31の外径)及び第2のクリアランス48の直径隙間寸法(第2スリーブ37の内径−第2軸受39の外径)は、それぞれ第1軸受44の内径の1/1000以上1/100以下、第2軸受39の外径の1/1000以上1/100以下であることが好ましい。第1のクリアランス47及び第2のクリアランス48の寸法がこれらの範囲より大きい場合は、回転軸10(10´)の定常的な振れ回りが大きくなり、この振れ回りによって第1軸受44及び第2軸受39に加わる荷重も大きくなり、安定的な運転が困難になる場合がある。また、第1のクリアランス47及び第2のクリアランス48の寸法がこれらの範囲より小さい場合は、第1のクリアランス47及び第2のクリアランス48が異物により閉塞したり、第1軸受44及び第2軸受39が異物との摩擦により焼きついたりする場合がある。
第1のクリアランス47の直径隙間寸法と第2のクリアランス48の直径隙間寸法は同一であることが好ましいが、第1軸受44、第2軸受39、第1スリーブ31、又は第2スリーブ37が樹脂で形成されている等、これらの部材が弾性を有していれば、その寸法に差があっても本発明の機能を発揮する。この場合は、第1のクリアランス47の直径隙間寸法に対する第2のクリアランス48の直径隙間寸法の比率は、好ましくは0.5以上2.0以下であり、より好ましくは0.7以上1.3以下である。ただし、後述するように、第1軸受44、第2軸受39、第1スリーブ31、又は第2スリーブ37を、さらにゴムなどの緩衝材を介して固定する場合は(図6等参照)、緩衝材の変形によって上記寸法の範囲でなくとも第1軸受44と第2軸受39が同時に夫々第1スリーブ31及び第2スリーブ37と接触可能であり、本発明の機能を発揮する。
図8は、図7に示すXX´断面における断面図である。図示のように、第1スリーブ31の外周面、第1軸受44の内周面、第2軸受39の外周面、及び第2スリーブ37の内周面のそれぞれの中心が中心軸Oと略一致するように構成されている。なお、図8においては、第1のクリアランス47及び第2のクリアランス48の寸法は、便宜上拡大されて示されている。
図9は、ドライ運転時における第1のすべり軸受1及び第2のすべり軸受2の動作を示す図である。回転軸10(10´)が回転すると、回転軸10(10´)に固定された第1スリーブ31、及びスリーブケース38に固定された第2スリーブ37も回転する。ドライ条件においては、第1スリーブ31の外周面が第1軸受44に点Aにて接触したときに、回転軸10(10´)には軸受反力FANが発生する。この軸受反力FANによって、回転軸10(10´)の回転方向とは逆方向に摩擦力FAFが発生し、この摩擦力FAFが回転軸10(10´)に回転方向とは逆方向の振れ回り振動を引き起こす不安定化力となる。
一方で、第2スリーブ37が第2軸受39に点Bにて接触することで、軸受反力FBNが発生し、この軸受反力FBNによって、摩擦力FAFと逆方向の力である摩擦力FBFが発生する。回転軸10(10´)の系において、摩擦力FAFと摩擦力FBFは相殺されるので、回転軸10(10´)は安定して回転することができる。また、回転軸10(10´)に係る荷重(軸受反力)が点Aと点Bに分散されることで、すべり軸受に加わる摩擦力も分散される。その結果摩擦による発熱が低減され、ドライ運転時における軸受の温度上昇が抑制される。
図10は、排水運転時における第1のすべり軸受1及び第2のすべり軸受2の動作を示す図である。第1のクリアランス47及び第2のクリアランス48は水で満たされており、この水は夫々液膜49、液膜50を構成し、これにより第1のすべり軸受1及び第2のすべり軸受2は流体潤滑軸受ユニットとして機能する。このとき液膜49には、回転軸10(10´)の回転による周方向の圧力不均一が生じ、その結果、回転軸10(10´)に半径方向流体力FARと周方向流体力FATが発生する。この周方向流体力FATは排水運転時に振動を発生させる不安定化力となる。なお、この周方向流体力FATは上記ドライ運転で発生する摩擦力FAFとは逆方向の力である。
従来は、立型の回転軸においてこの液膜による不安定振動を防止するために、軸受の内面形状を真円形状ではなく多円弧形状に形成することが行われていた。しかしながら、スラリーを多く含有する水中において、樹脂からなる軸受を用いた場合、摩耗によって軸受の内面形状が真円形状に近づき、振動抑制効果を失うことがあった。
ここで、本軸受ユニットによれば、第2のクリアランス48における液膜50において、第2スリーブ37の回転による周方向の圧力不均一が生じ、その結果、回転軸10(10´)に半径方向流体力FBRと周方向流体力FBTが発生する。このとき、周方向流体力FATと周方向流体力FBTとは互いに逆方向であるので、液膜49、液膜50による不安定化力は相殺され、回転軸10(10´)は不安定化力による振動を発生することなく安定して回転することができる。
以上、第1のすべり軸受1及び第2のすべり軸受2は、ドライ運転時、及び排水運転時のいずれの常用運転においても、摺動面で常時摺動して回転軸を支えるすべり軸受でありながら、第1軸受の接点と、第2軸受の接点に働く摩擦力が相殺するので、不安定化力による回転軸の振動を抑制し、回転軸の安定した回転を維持することができる。
以上で説明したように、図7に示した第1のすべり軸受1及び第2のすべり軸受2によれば、ドライ運転時において回転軸10(10´)の軸の振れ回りにより、第1軸受44及び第2軸受39に回転体(第1スリーブ31及び第2スリーブ37)が衝突しても、その衝突時に摩擦力の向きが互いに逆向きに作用して相殺するので、回転軸10(10´)の振れ回りの発散を抑制し、不安定化による振動を防止することができる。加えて、この振動に起因する摩擦を低減して、軸受温度の上昇を抑制することができる。
図7に示した第1のすべり軸受1及び第2のすべり軸受2は、第1軸受44と第2軸受39を有するので、ドライ運転時における軸受すべり面の摩擦力を分散して、軸受すべり面の摩擦による発熱を抑制することができる。これにより、従来構造よりも摩擦係数の高い軸受材料、即ち耐摩耗性の高い軸受材料を使用することができ、長期間にわたって安定した運転をすることができる。
また、図7に示した第1のすべり軸受1及び第2のすべり軸受2は、軸受ケース32の内周面に第1軸受44を保持し、その外周面に第2軸受39を保持するので、立軸ポンプの軸方向にコンパクトな構造とすることができる。
図5及び図6に示した第1のすべり軸受1及び第2のすべり軸受2は、図7に示した第1のすべり軸受1及び第2のすべり軸受2と同様の効果を有し得る。さらに、図5及び図6に示した第1のすべり軸受1及び第2のすべり軸受2は、不釣り合い力によって摺動面の摩擦力が大きくなりやすいインペラなどの比較的重量の大きい回転体重量物に近接して、摩擦力を相殺する軸受を配置するので、回転体にかかる摩擦力を効果的に減ずることができる。したがって、振動や摩擦を最適に低減することができる。
ところで、本実施形態に係る第1のすべり軸受1及び第2のすべり軸受2を備えた立軸ポンプは、回転軸10(10´)の水中に位置する部分(第1スリーブ31及び第2スリーブ37)の支持は第1軸受44及び第2軸受39等の軸受のみで行われる。即ち、排水運転を行う回転機械の水中軸受には、玉軸受やコロ軸受のような転がり軸受は適しておらず、すべり軸受によって本実施形態の効果を奏することができる。
以上で説明した本願発明に係るすべり軸受において、スリーブ、及び各すべり軸受の摺動面の反対側には、必ずしも緩衝材を設けなくてもよい。以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことはいうまでもない。
3…立軸ポンプ
10,10´…回転軸
22…インペラ
31…第1スリーブ
32…軸受ケース
37…第2スリーブ
39…第2軸受
44…第1軸受
53…第1軸受ホルダ
56…固定スリーブホルダ
59…第2軸受ホルダ

Claims (3)

  1. 立軸ポンプであって、
    回転軸に接続して回転する物体と、
    外周面に第1の摺動部を有し該第1の摺動部を内周面で支持する第1のすべり軸受と、内周面に第2の摺動部を有し該第2の摺動部を外周面で支持する第2のすべり軸受とを備え、前記回転軸に接続して回転する物体の中で比較的重量の大きい物体に、前記第1の摺動部及び第2の摺動部の少なくとも一方を近接して配置することを特徴とする立軸ポンプ。
  2. 前記比較的重量の大きい物体がインペラであることを特徴とする請求項1記載の立軸ポンプ。
  3. 回転軸と、
    前記回転軸に接続され、回転軸と共に回転するインペラと、
    回転軸とともに回転する第1の摺動部と、該第1の摺動部をその内周面で支持する第1の支持部と、を有する第1のすべり軸受と、
    回転軸とともに回転する第2の摺動部と、該第2の摺動部をその外周面で支持する第2の支持部と、を有する第2のすべり軸受とを備え、
    前記第1の摺動部及び第2の摺動部の少なくとも一方が、前記インペラの内部に設けられることを特徴とする立軸ポンプ。
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