以下、本発明の実施の形態について、自動二輪車1を例に挙げて説明する。自動二輪車1には、本発明に係る鞍乗型車両のホイール構造が採用されたホイール100が設けられている。なお、本発明に係る鞍乗型車両は自動二輪車1に限定される訳ではない。鞍乗型車両は、乗員が跨って乗車する任意の車両を意味する。鞍乗型車両はオフロード型、スクータ型、モペット型等の他の型式の自動二輪車であってもよい。また、本発明の鞍乗型車両には、三輪車、四輪バギー(ATV:All Terrain Vehicle(全地形型車両))等が含まれる。
なお、以下の説明において、前後方向とは、自動二輪車1の後述するライダーシート11に着座したライダーRから視た車両前後方向のことである。左右方向とは、ライダーシート11に着座したライダーRから視たときの車両左右方向(車幅方向)のことである。図中の矢印F方向と矢印B方向は、前方と後方を表している。図中の矢印L方向と矢印R方向は、右方と左方を表している。図2以降において、前後左右上下の各方向は、ホイール100が自動二輪車1に設けられた状態での方向に対応する。
図1に示すように、自動二輪車1は、前輪2と、後輪3と、車体フレーム4と、ライダーシート11とを備えている。車体フレーム4のライダーシート11より前方の部分には、ハンドルユニット9が設けられている。ハンドルユニット9の左端部にはグリップ9Rが、右端部にはグリップ9Lがそれぞれ設けられている。なお、図1にはグリップ9Lのみが図示されている。グリップ9Rは左右方向にグリップ9Lの反対側に配置されている。グリップ9Rは、アクセルグリップである。グリップ9Rの近くにはブレーキレバーが取り付けられている。グリップ9Lの近くにはクラッチレバー10が取り付けられている。ハンドルユニット9には、フロントフォーク7の上端部が固定されている。このフロントフォーク7の下端部には、左右方向に沿って延びる車軸17が固定されている。車軸17には前輪2が支持されている。前輪2は、ホイール100とホイール100の外周に取り付けられたタイヤ2aとを有している。
車体フレーム4の下部には、スイングアーム12の前端部が揺動可能に支持されている。このスイングアーム12の後端部は、後輪3を支持している。スイングアーム12の揺動中心と異なる箇所と車体フレーム4とは、上下方向の衝撃を吸収するリアサスペンションを介して接続されている。
車体フレーム4は、水冷式のエンジン13を支持している。なお、エンジン13は、空冷式であってもよい。車体フレーム4は、エンジン13を直接支持していてもよいし、他の部材を介して間接的に支持していてもよい。エンジン13の上方には、燃料タンク14が配置されている。
エンジン13の後方には、複数段の変速ギヤを有するトランスミッション(図示せず)が配置されている。エンジン13の駆動力は、トランスミッションおよびチェーン26を介して後輪3に伝達される。トランスミッションの左側には、トランスミッションのギヤを切り換えるためのシフトペダル24が設けられている。車体フレーム4の両側方であって後輪3のやや前方にはフットレスト23が設けられている。ライダーRは、乗車中、フットレスト23に両足を載せる。
前輪2の上方であってグリップ9R及び9Lの前方には、フロントカウル15が配置されている。前後方向にフロントカウル15とグリップ9R及び9Lとの間にはメーターユニット16が配置されている。メーターユニット16は、表示面が後方かつ上方を向くように、前後方向と上下方向に対して傾斜して配置されている。表示面には、車速やエンジン回転数、車両の状態、走行距離、時計、計測時間などが表示される。
以下、本発明のホイール構造が採用されたホイール100について、図2〜図6を参照しつつより詳細に説明する。ホイール100は、図2〜図4に示すように、車軸17が挿入される車軸挿入穴111aを形成するハブ部110と、車軸挿入穴111aの中心軸C(図4参照)を中心とした径方向にハブ部110から離隔し、中心軸Cを中心とした周方向に沿って環状に形成されたリム部140と、一端がハブ部110に、他端がリム部140にそれぞれ接続されたスポーク部150とを有している。中心軸Cは左右方向に沿っている。
図2〜図5に示すr1〜r5方向は、それぞれ、径方向を示す。図2、図3、図5及び図6に示すθ1〜θ5方向は、それぞれ、周方向を示す。図5(a)は、ハブ部110における、図2に示す二点鎖線C1より内側の部分の斜視図である。図5(b)は、図3に示す二点鎖線C2より内側の部分の斜視図である。図6は、図5(a)及び図5(b)に表れた端面を、図中の左右方向を周方向(θ5方向)として表した図である。
ホイール100は、ダイカスト鋳造法により一体的に鋳造されている。ダイカスト鋳造法は、アルミニウム合金やマグネシウム合金などの金属の溶湯を型の内部に形成された空孔に、数十MPa(メガパスカル)の高い圧力を掛けつつ流入させた後、溶湯を凝固させることにより部材を鋳造する方法である。ダイカスト鋳造は、重力鋳造と異なり、圧力をかけて金属を流入させるので、型内に形成された流路の幅が狭くても溶湯を流入させることができる。このため、ダイカスト鋳造は重力鋳造と比べて、鋳造可能な部材厚さの限界値が小さい。したがって、部材を比較的薄くすることができる。
図2(又は図3)において、ハブ部110の中央には、車軸挿入穴111aを形成するボス部111(車軸挿入部)が設けられている。ボス部111は、左右方向に延びる円筒形の部分である。径方向に関してハブ部110の外周部は、中心軸Cに直交する面に沿って中心軸Cの周囲を取り囲むように延びる周壁部115(中間周壁部)を構成している。周壁部115は、ハブ部110において図2(又は図3)の二点鎖線Dに沿った部分である。周壁部115は、径方向に関してボス部111とリム部140の間の位置であって、ボス部111とリム部140の両方から離隔した位置に配置されている。周壁部115は、図2、図3のみならず、図4にもその一部が表れている。
径方向にボス部111と周壁部115の間には、周方向に関して薄い厚さに形成された10個の壁部121及び10個の壁部122が形成されている。壁部121及び122については、以下、図3、図5及び図6を参照しつつ説明する。なお、壁部121の数や壁部122の数が10個未満であっても11個以上であってもよい。壁部121及び122は、ボス部111から周壁部115に向かって径方向に放射状に延びており、周方向に互いに離隔しつつ配列されている。壁部121及び122は、それぞれ、一端がボス部111に接続され、他端が周壁部115に接続されている。
壁部121は、図6(又は図5)に示すように、若干傾斜しつつ左右方向に延びている。周方向に隣り合う壁部121同士は、傾斜方向が互いに反対方向になるように配置されている。壁部121は、一対ずつ、径方向及び周方向に延びる壁部123を介して左端部同士が互いに接続されている。壁部123は5つ設けられている。各壁部123は、図3に示すように、ボス部111から径方向に沿って周壁部115まで延びている。壁部123同士の周方向の間隔はいずれも等しい。
上記一対の壁部121における壁部同士の間には間隙131が形成されている。つまり、一対の壁部121は、互いの間に間隙131を形成している。間隙131の範囲は、一対の壁部121における互いに周方向に対向した平らな2壁面(例えば、図6の壁面121a及び121b)によって規定されている。2壁面の傾斜方向は互いに反対方向であるため、間隙131は、右方に向かって周方向に沿った両方向に広がっている。そして、間隙131は、右方に向かって広がりつつ開口している。間隙131の左端部は、壁部123によって閉鎖されている。間隙131は、右方から見ると、図2に示すように、径方向に長尺な角の丸い長方形の形状を有している。間隙131はボス部111から周壁部115より若干内側の位置まで延びている。間隙131は5つ設けられており、周方向に等間隔で配列されている。
壁部122は、図6(又は図5)に示すように、周方向に延びる壁部124を介して壁部121の右端部と接続されている。壁部122は、壁部124との接続部から左方に向かって若干傾斜しつつ延びている。各壁部122は、その隣に配置された壁部121に対して傾斜方向が反対方向になるように配置されている。また、壁部122は、周方向に隣り合う2つの壁部122の傾斜方向が互いに反対方向になるように配置されている。壁部122の左右方向の長さは壁部121の長さの半分未満である。
壁部124は、図2(又は図5(a))に示すように、5つ設けられている。壁部124の数は、5つ未満であっても5つより多くてもよい。壁部124はボス部111から周壁部115に向かって径方向に突出すると共に2つに分岐している。各壁部124の一対の分岐部は、周壁部115に向かいつつ周方向に広がった後、周壁部115の近くで周方向に狭まるように折れ曲がり、周壁部115に接続している。
互いに隣り合う壁部121と壁部122の間には間隙132が形成されている。つまり、隣り合う壁部121と壁部122は、互いの間に間隙132を形成している。間隙132の範囲は、周方向に互いに隣り合う壁部121及び122における互いに対向した平らな2壁面(例えば、図6の壁面121c及び122a)によって規定されている。2壁面の傾斜方向は互いに反対方向であるため、間隙132は、左方に向かって周方向に沿った両方向に広がっている。なおかつ、間隙132は、左方に向かって広がりつつ開口している。間隙132は、左方から見ると、図3に示すように、壁部123の延びる方向に細長く延びている。間隙132の右端部は、壁部124の各分岐部によって閉鎖されている。
周方向に互いに隣り合う壁部122同士の間には、図6(又は図5)に示すように、間隙133が形成されている。つまり、周方向に隣り合う2つの壁部122は、図6(又は図5)に示すように、互いの間に間隙133を形成している。間隙133の範囲は、周方向に互いに隣り合う壁部122における互いに対向した平らな2壁面(例えば、図6の壁面122b及び122c)によって規定されている。2壁面の傾斜方向は互いに反対方向であるため、間隙133は、右方に向かって周方向に沿った両方向に広がっている。なおかつ、間隙133は、右方に向かって広がりつつ開口している。また、間隙133は、左右方向のいずれにも開口している。間隙133は、右方から見ると、図2に示すように、ボス部111に向かって尖った五角形の形状を有している。間隙133は5つ設けられており、周方向に等間隔で配列されている。
以上より、壁部121〜124及び間隙131〜133は、全体として、ハブ部110内に以下の通りに形成されている。図6に示すように、壁部121及び122は、壁部121→壁部121→壁部122→壁部122→壁部121→…の順序で周方向に配列されている。壁部121及び122は、全体として、傾斜方向が交互に反対方向になるように周方向に並んでいる。
間隙131〜133は、間隙131→間隙132→間隙133→間隙132→間隙131→…の順序で周方向に配列されている。間隙131及び間隙133は右方に向かって広がりつつ開口している。間隙132は左方に向かって広がりつつ開口している。したがって、右方に向かって広がりつつ開口した間隙(本発明における第1及び第2の間隙の一方)と、左方に向かって広がりつつ開口した間隙(本発明における第1及び第2の間隙の他方)とが、周方向に交互に並んでいる。
また、間隙131の左端部には、間隙131を規定する一対の壁部121を周方向に接続する壁部123が形成されている。間隙132の右端部には、間隙131を規定する壁部121及び122を周方向に接続する壁部123が形成されている。つまり、間隙131及び132は、左右方向(本発明における2方向)の一方にのみ、開口している。これに対し、間隙133は左右方向の両方に開口している。したがって、左右両方向に開口した間隙が、左右一方向にのみ開口した間隙を3つ挟んで周方向に配列されている。なお、左右両方向に開口した間隙によって挟まれる左右一方向にのみ開口した間隙の数が、3つ未満であっても4つ以上であってもよい。
周壁部115には、図3に示すように、5つのボス部116(ねじ穴部)が形成されている。ボス部116の数は5つ未満であっても6つ以上であってもよい。ボス部116は、ブレーキディスク160をボルトで固定するためのねじ穴116aを形成している。ボス部116は、周壁部115における壁部123との接続部に配置されている。また、ボス部116は、周壁部115におけるスポーク部150との接続部とは周方向に異なる位置に配置されている。具体的には、ボス部116は、周方向に関して、周壁部115におけるスポーク部150との接続部同士の間に配置されている。
リム部140には、径方向に中心軸Cから遠い表面にタイヤ2aが取り付けられる。このタイヤ2aの取り付け面は、図4に示すように、平坦部141と、平坦部141から径方向にハブ部110の周壁部115に向かって凹んだ凹部142とを含んでいる。凹部142はリム部140の全周に亘って形成されている。リム部140においてタイヤ2aの取り付け面とは反対側の面には、タイヤ2aの取り付け面に向かって凹んだ凹部143が形成されている。凹部142及び143が形成されていることにより、リム部140の肉厚が抑えられている。
スポーク部150は、図2(又は図3)に示すように、周方向に間隙155を空けて互いに並んだ板部材151及び152を有している。板部材151及び152は、周方向から見て互いにちょうど重なる形状を有する周方向に薄い平板状の部材である。板部材151及び152は、それぞれ、ハブ部110の周壁部115からリム部140まで延びている。より具体的には、板部材151及び152は、周壁部115において壁部124の一対の分岐部から連続しつつリム部140に向かって延びている。周方向に関する板部材151及び152間の距離は、径方向に関してリム部140に近いほど小さい。
板部材151及び152の間にはリブ153及び154が形成されている。リブ153は、図4に示すように、左右方向に関して板部材151及び152の中央に配置され、径方向に関してリム部140からハブ部110の周壁部115に向かって突出している。リブ154は、左右方向に関して板部材151及び152の中央に配置され、径方向に関して周壁部115からリム部140に向かって突出している。リブ153はリブ154より径方向に長い。間隙155は、左右方向にスポーク部150を貫通している。この貫通している範囲は、径方向に関し、リブ153におけるリム部140より遠い方の一端から、リブ154におけるリム部140に近い方の一端までの範囲である。
板部材151のリム部140近傍の部分において、周方向に板部材152とは反対側の表面には、リブ156が形成されている。リブ156は、リム部140に向かって周方向の幅が徐々に広がるように形成されている。板部材152のリム部140近傍の部分において、周方向に板部材151とは反対側の表面には、リブ157が形成されている。リブ157は、リム部140に向かって周方向の幅が徐々に広がるように形成されている。
以上説明した本実施形態によると、ハブ部110は、複数の壁部121及び122が、径方向に周壁部115とボス部111の間に、周方向に間隙131〜133を挟んで配列された構成を有する。壁部121及び122は、図6に示すように、周方向に薄く形成されている。ホイール100はダイカスト鋳造法によって鋳造されているため、上記の通り、壁部121及び122を比較的薄く形成することが可能である。したがって、薄い壁部121及び122が間隙131〜133を挟んで周方向に並ぶようにハブ部110が構成される。よって、ハブ部110は、重量の増加が抑制されつつ剛性が確保される。
一方、ハブ部110は、壁部121及び122を上記のように配置させるために大きさが確保される。そして、スポーク部150は、大きさが確保されたハブ部110とリム部140とに径方向に挟まれる。したがって、リム部140の大きさが一定であるとすると、このような壁部121及び122がハブ部に設けられていないホイールに対し、ホイール100のスポーク部150は径方向に短くなる。したがって、強度を確保する目的でスポーク部150の形状を調整する必要性が低下する。つまり、スポーク部150の形状が強度確保のための制約を受けにくい。以上により、ホイール100は、強度を確保しながらも、重量増を抑えつつスポーク部150の形状の自由度を確保することが可能である。
また、間隙131及び133は右方に向かって広がりつつ開口しており、間隙132は左方に向かって広がりつつ開口している。したがって、鋳造工程において型からホイールを抜く際に、一方の型を右方に向かって移動させ、他方の型を左方に向かって移動させる場合、間隙131及び133には一方の型に対応した抜き勾配が設けられることになり、間隙132には他方の型に対応した抜き勾配が設けられることになる。よって、一方の型を用いて間隙131及び133を、他方の型を用いて間隙132をそれぞれ形成できる。
また、間隙131又は133と間隙132とは、周方向に交互に並んでいる。仮に、間隙131又は133が周方向に連続したり、間隙132が周方向に連続したりすると、同じ方向に向かって広がる間隙が連続することになる。この場合、間隙同士の間を埋めるために壁部が厚くなりやすい。これに対し、本実施形態は、右方に向かって広がる間隙131又は133と左方に向かって広がる間隙132とが周方向に交互に並んでいる。このため、図6に示すように、間隙131〜133を規定する壁部121及び122を薄く構成しやすい。
また、間隙133は左右両方向に開口しているため、重量増が抑制される。一方、周方向に間隙133同士の間には、左端部及び右端部のいずれかに壁部123又は124が形成された間隙131及び132が設けられている。壁部123及び124は、間隙の両側の壁部121同士を、あるいは、壁部121と壁部122同士を周方向に接続している。このため、間隙131及び132が形成された部分は剛性が確保されている。つまり、両方向に開口することで重量増が抑制された間隙131の部分と、一方の端部に壁部123又は124が形成されることで剛性が確保された間隙132及び133の部分とが、周方向に交互に配置される。このため、重量増の抑制と強度の確保とを周方向に均一に実現できる。
また、本実施形態は、図3に示すように、ブレーキディスク160を固定するためのボス部116が、周方向に間隙131同士の間に配置されている。具体的には、周方向に壁部123の位置に配置されている。このように、ボス部116の配置箇所は、壁部121同士を周方向に接続する壁部123があるため、剛性が確保されやすい。したがって、ボス部116にブレーキディスク160が固定された際に、ブレーキディスク160からの荷重をハブ部110が支持しやすい。さらに、本実施形態では、ボス部116は、周壁部115におけるスポーク部150との接続部同士の間の部分に配置されている。このため、ブレーキディスク160からの荷重がスポーク部150に直接及びにくい。したがって、強度を確保する目的でスポーク部150の形状を調整する必要性がさらに低下する。よって、スポーク部150の形状に関する設計の自由度を確保しやすい。
また、本実施形態のスポーク部150は、間隙155が形成されていることにより軽量化がなされている一方で、リブ153及び154が形成されていることにより剛性が確保されている。リブ153は、スポーク部150においてリム部140に近い方の端部に形成されている。この位置は板部材151及び152の間の距離が狭まっているので、この部分に形成されたリブ153は、リブ154に比べて小さい体積(つまり、小さい重量)で板部材151及び152を繋ぐことができる。さらに、リブ153がリブ154より径方向に長く形成されているので、重量の増加が抑制されつつ効率良くスポーク部150の剛性が高められている。また、このようにスポーク部150の剛性が高められることにより、ブレーキディスク160においてブレーキが作動された際にスポーク部150に発生するいわゆるブレーキ鳴きが抑制されている。
以上のように本実施形態のホイール100は、主にハブ部110において強度が確保されている。一方、従来技術には、ホイールの強度を確保するため、主にスポーク部の剛性が向上されたものがある。例えば、特開2008−30648号公報においては、スポーク部にリブが設けられることでその剛性が高められている。しかしながら、スポーク部のように細長い部分の剛性を確保することは非常に困難である。したがって、リム部を設けたりすることでスポーク部の剛性を向上させる場合、スポーク部の重量が大きくなりやすい。これに対し、本実施形態は、ハブ部110の大きさを確保し、その剛性を向上させることで、ホイール100の強度を確保している。したがって、従来技術と比べて軽量化を図りつつ強度を確保することが可能である。
[変形例]
以上、本発明の好適な実施の形態及び各種の変形例について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。また、本明細書における変形例は適宜組み合わせて実施することができる。なお、本明細書において「好ましい」という用語は非排他的なものであって、「好ましいがこれに限定されるものではない」ということを意味するものである。
例えば、上述の実施形態では、ハブ部110の構成として、図6の切断部端面図に示すような壁部121〜124及び間隙131〜133が形成された構成が採用されている。しかし、この構成に代えて、又は加えて、図7〜図9の各切断部端面図に示す第1変形例〜第9変形例の構成が採用されてもよい。なお、図7〜図9のいずれにおいても、図中の上下方向がホイールの左右方向に対応し、図中の左右方向がホイールの周方向に対応する。
第1変形例は、図7(a)に示すように、複数の壁部201及び202を有している。壁部201は傾斜しつつ左右方向に延びている。そして、傾斜方向が互いに反対方向の壁部201が周方向に交互に並んでいる。壁部201の右端部は、一対ずつ互いに接続されている。壁部201の左端部には、周方向に延びる壁部202が接続されている。隣り合う2つの壁部201は、互いの間に間隙211及び212を形成している。間隙211(第1間隙及び第2間隙の一方)は右方に向かって広がりつつ開口している。間隙211は、左右方向に壁部202を貫通する貫通孔211aを介して左方にも開口している。間隙212(第1間隙及び第2間隙の他方)は、左方に向かって広がりつつ開口している。したがって、この変形例では、左右両方向に開口した間隙211と左方のみに開口した間隙212とが周方向に交互に配列されている。
第2変形例は、図7(b)に示すように、複数の壁部203〜205を有している。壁部203は傾斜しつつ左右方向に延びている。そして、傾斜方向が互いに反対方向の壁部203が周方向に交互に並んでいる。壁部203の右端部には、周方向に延びる壁部204が接続されている。壁部203の左端部には、周方向に延びる壁部205が接続されている。隣り合う2つの壁部203は、互いの間に間隙213及び214を形成している。間隙213(第1間隙及び第2間隙の一方)は右方に向かって広がりつつ開口している。間隙213は、左右方向に壁部205を貫通する貫通孔213aを介して左方にも開口している。間隙214(第1間隙及び第2間隙の他方)は、左方に向かって広がりつつ開口している。間隙214は、左右方向に壁部204を貫通する貫通孔214aを介して左方にも開口している。したがって、この変形例では、左右両方向のいずれにも開口した間隙213及び214が周方向に交互に配列されている。
第3変形例は、図7(c)に示すように、複数の壁部206を有している。壁部206は傾斜しつつ左右方向に延びている。そして、傾斜方向が互いに反対方向の壁部206が周方向に交互に並んでいる。隣り合う2つの壁部206は、互いの間に間隙215及び216を形成している。間隙215(第1間隙及び第2間隙の一方)は右方に向かって広がりつつ開口していると共に、左方に向かっても開口している。間隙216(第1間隙及び第2間隙の他方)は左方に向かって広がりつつ開口していると共に、右方に向かっても開口している。したがって、この変形例では、左右両方向のいずれにも開口した間隙215及び216が周方向に交互に配列されている。
第4変形例は、図8(a)に示すように、複数の壁部207〜209を有している。壁部207は傾斜しつつ左右方向に延びている。そして、傾斜方向が互いに反対方向の壁部207が周方向に交互に並んでいる。壁部207同士は、右端部においては壁部208によって、左端部においては壁部209によって、それぞれ周方向に接続されている。壁部208及び209は周方向に延びている。隣り合う2つの壁部207は、互いの間に間隙217及び218を形成している。間隙217(第1間隙及び第2間隙の一方)は右方のみに向かって広がりつつ開口している。間隙218(第1間隙及び第2間隙の他方)は左方のみに向かって広がりつつ開口している。したがって、この変形例では、左右方向の一方のみに開口した間隙217及び218が周方向に交互に配列されている。
第5変形例は、図8(b)に示すように、複数の壁部221を有している。壁部221は傾斜しつつ左右方向に延びている。そして、傾斜方向が互いに反対方向の壁部221が周方向に交互に並んでいる。壁部221同士は、左右両端部のそれぞれにおいて互いに接続されている。隣り合う2つの壁部221は、互いの間に間隙231及び232を形成している。間隙231(第1間隙及び第2間隙の一方)は右方のみに向かって広がりつつ開口している。間隙232(第1間隙及び第2間隙の他方)は左方のみに向かって広がりつつ開口している。したがって、この変形例では、左右方向の一方のみに開口した間隙231及び232が周方向に交互に配列されている。
第6変形例は、図8(c)に示すように、複数の壁部222及び223を有している。壁部222は傾斜しつつ左右方向に延びている。そして、傾斜方向が互いに反対方向の壁部222が周方向に交互に並んでいる。壁部222同士は、右端部において接続されている。隣り合う2つの壁部222は、互いの間に間隙233及び234を形成している。間隙233(第1間隙及び第2間隙の一方)は右方のみに向かって広がりつつ開口している。間隙233の左端部には、壁部222同士を周方向に接続する壁部223が形成されている。間隙234(第1間隙及び第2間隙の他方)は左方のみに向かって広がりつつ開口している。したがって、この変形例では、左右方向の一方のみに開口した間隙233及び234が周方向に交互に配列されている。
第7変形例は、図9(a)に示すように、左右方向の端部同士が接続された複数の壁部224及び225を有している。壁部224及び225は傾斜しつつ左右方向に延びている。壁部224及び225は、傾斜方向が互いに反対方向の2つの壁部224→傾斜方向が互いに反対方向の2つの壁部225→…の順で周方向に配列されている。壁部225の左右方向の長さは壁部224の長さの半分未満である。隣り合う壁部224と壁部225は、互いの間に間隙234(第1間隙及び第2間隙の一方)を形成している。間隙234は、左方のみに向かって広がりつつ開口している。隣り合う2つの壁部225は、互いの間に間隙235を形成している(第1間隙及び第2間隙の他方)。間隙235は、右方のみに向かって広がりつつ開口している。隣り合う2つの壁部224は、互いの間に間隙236を形成している(第1間隙及び第2間隙の他方)。間隙236は、右方のみに向かって広がりつつ開口している。間隙234〜236は、間隙234→間隙235→間隙234→間隙236→間隙234→…の順で周方向に配列されている。したがって、この変形例では、右方のみに開口した間隙235又は236と左方のみに開口した間隙234とが周方向に交互に配列されている。
第8変形例は、図9(b)に示すように、左右方向の端部同士が接続された複数の壁部226〜228を有している。壁部226〜228は傾斜しつつ左右方向に延びている。壁部226〜228は、壁部226→2つの壁部227→壁部226→2つの壁部228→壁部226→…の順で周方向に配列されている。互いに隣り合う2つの壁部同士は傾斜方向が反対方向である。壁部227の左右方向の長さは壁部226の長さの半分未満である。壁部228の左右方向の長さは壁部226の長さの半分程度である。隣り合う壁部226と壁部227は、互いの間に間隙237(第1間隙及び第2間隙の一方)を形成している。間隙237は、左方のみに向かって広がりつつ開口している。隣り合う2つの壁部227は、互いの間に間隙238を形成している(第1間隙及び第2間隙の他方)。間隙238は、右方のみに向かって広がりつつ開口している。隣り合う壁部226と壁部228は、互いの間に間隙239を形成している(第1間隙及び第2間隙の他方)。間隙239は、右方のみに向かって広がりつつ開口している。互いに隣り合う2つの壁部228は、互いの間に間隙240(第1間隙及び第2間隙の一方)を形成している。間隙240は、左方のみに向かって広がりつつ開口している。間隙237〜240は、間隙237→間隙238→間隙237→間隙239→間隙240→間隙239→間隙237→…の順で周方向に配列されている。したがって、この変形例では、右方のみに開口した間隙238又は239と左方のみに開口した間隙237又は240とが周方向に交互に配列されている。
第9変形例は、図9(c)に示すように、複数の壁部251〜257を有している。壁部251〜253は傾斜しつつ左右方向に延びている。壁部251〜253のうち、互いに隣り合う2つの壁部同士は傾斜方向が反対方向である。壁部252及び253は、いずれも、壁部251の左右方向の長さの半分未満である。壁部251の右端部と壁部252の右端部とは、周方向に延びる壁部254によって接続されている。壁部252の左端部同士は、周方向に延びる壁部255によって接続されている。壁部251の左端部と壁部253の左端部は、周方向に延びる壁部256によって接続されている。壁部253の右端部同士は、周方向に延びる壁部257によって接続されている。壁部251〜257は、壁部251→壁部254→壁部252→壁部255→壁部252→壁部254→壁部251→壁部256→壁部253→壁部257→壁部253→壁部256→壁部251→…の順に周方向に配列されている。
隣り合う壁部251と壁部252は、互いの間に間隙261(第1間隙及び第2間隙の一方)を形成している。間隙261は、左方のみに向かって広がりつつ開口している。隣り合う2つの壁部252は、互いの間に間隙262(第1間隙及び第2間隙の他方)を形成している。間隙262は、右方のみに向かって広がりつつ開口している。隣り合う壁部251と壁部253は、互いの間に間隙263(第1間隙及び第2間隙の他方)を形成している。間隙263は、右方のみに向かって広がりつつ開口している。隣り合う2つの壁部253は、互いの間に間隙264を形成している(第1間隙及び第2間隙の一方)。間隙264は、左方のみに向かって広がりつつ開口している。間隙261〜264は、間隙261→間隙262→間隙261→間隙263→間隙264→間隙263→間隙261→…の順で周方向に配列されている。したがって、この変形例では、右方のみに開口した間隙262又は263と左方のみに開口した間隙261又は264とが周方向に交互に配列されている。
その他の変形例について説明する。上述の実施形態では、壁部の間に形成された間隙131などの間隙が、左右方向の少なくともいずれかの方向に向かって、周方向に沿った両方向に広がっている。しかし、左右方向の少なくともいずれかの方向に向かって、周方向に沿ったいずれか一方に広がっていてもよい。例えば、図6に示すように、間隙131は、図中上方(右方)に向かって図中左右(θ5方向)の両方向に広がっている。しかし、図6の間隙131の代わりに、図中上方に向かって図中左方のみに広がっており、図中右端が図中上下方向に直線状に形成された間隙がハブ部に形成されていてもよい。
また、上述の実施形態では、間隙131などの間隙を規定する壁部121等の壁面が平らに形成されている。しかし、間隙を規定する壁面が曲面に沿っていてもよい。この場合、その曲面によって規定される間隙が左右方向の少なくとも一方に向かって周方向に広がるように曲面が形成されていればよい。
本発明の鞍乗型車両のホイール構造は、軸が挿入される穴を形成する車軸挿入部を含むハブ部と、前記車軸挿入部の中心軸を中心とした径方向に関して前記ハブ部から離隔した位置に、前記中心軸を中心とした周方向に沿って環状に形成され、タイヤが取り付けられるリム部と、前記ハブ部に一端が、前記リム部に他端がそれぞれ接続された複数のスポーク部と、を備え、ダイカスト鋳造法によって鋳造されたホイール構造である。前記ハブ部は、前記径方向に関して前記車軸挿入部と前記リム部の間の位置であって前記車軸挿入部及び前記リム部の両方から離隔した位置に、前記周方向に沿って前記車軸挿入部を取り囲むように形成され、前記スポーク部の一端が接続された中間周壁部と、前記車軸挿入部に一端が、前記中間周壁部に他端が接続され、前記周方向に配列された複数の壁部と、前記周方向に隣り合う2つの前記壁部の互いに対向する壁面でそれぞれ構成される、前記中心軸に沿った第1方向に向かって前記周方向の間隔が広がりつつ開口した複数の第1間隙と、前記周方向に隣り合う2つの前記壁部の互いに対向する壁面でそれぞれ構成される、前記中心軸に沿っており、且つ、前記第1方向と反対方向の第2方向に向かって前記周方向の間隔が広がりつつ開口した複数の第2間隙と、を含み、前記第1間隙と前記第2間隙は、前記車軸挿入部と前記中間周壁部の間に前記周方向に関して交互に配置されており、前記第1間隙を前記第1方向から見た形状と、前記第2間隙を前記第2方向から見た形状とが異なる。
また、間隙133は左右両方向に開口しているため、重量増が抑制される。一方、周方向に間隙133同士の間には、左端部及び右端部のいずれかに壁部123又は124が形成された間隙131及び132が設けられている。壁部123及び124は、間隙の両側の壁部121同士を、あるいは、壁部121と壁部122同士を周方向に接続している。このため、間隙131及び132が形成された部分は剛性が確保されている。つまり、両方向に開口することで重量増が抑制された間隙133の部分と、一方の端部に壁部123又は124が形成されることで剛性が確保された間隙132及び131の部分とが、周方向に交互に配置される。このため、重量増の抑制と強度の確保とを周方向に均一に実現できる。
以上のように本実施形態のホイール100は、主にハブ部110において強度が確保されている。一方、従来技術には、ホイールの強度を確保するため、主にスポーク部の剛性が向上されたものがある。例えば、特開2008−30648号公報においては、スポーク部にリブが設けられることでその剛性が高められている。しかしながら、スポーク部のように細長い部分の剛性を確保することは非常に困難である。したがって、リブを設けたりすることでスポーク部の剛性を向上させる場合、スポーク部の重量が大きくなりやすい。これに対し、本実施形態は、ハブ部110の大きさを確保し、その剛性を向上させることで、ホイール100の強度を確保している。したがって、従来技術と比べて軽量化を図りつつ強度を確保することが可能である。