JPWO2015155911A1 - 曲げ加工性と形状凍結性に優れた高強度アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents

曲げ加工性と形状凍結性に優れた高強度アルミニウム合金板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

自動車用ボディーシートに適用可能な高強度を有しており、曲げ加工性と形状凍結性に優れた3000系アルミニウム合金板を提供する。Mn:1.0〜1.6質量%、Fe:0.1〜0.8質量%、Si:0.5〜1.0質量%、Ti:0.005〜0.10質量%を含有し、不純物としてのMgを0.10質量%未満に規制し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、金属組織は、円相当径1μm以上の第二相粒子の面積率が1.5〜3.5%であり、平均結晶粒径が20〜50μm、板面に平行な{100}方位結晶の面積率と板面に平行な{123}<634>方位結晶の面積率との比であるAR{100}/AR{123}<634>比が4.8以上である再結晶集合組織を呈するとともに、引張強度155MPa以上、0.2%耐力100MPa以下、伸び26%以上である曲げ加工性と形状凍結性に優れた高強度アルミニウム合金板。さらに、Cu:0.8質量%未満を含有するものであってもよい。

Description

本発明は、自動車用ボディーパネル等に用いられる、曲げ加工性および形状凍結性に優れた3000系アルミニウム合金板に関するものである。
自動車用ボディーシートとして、アルミニウム合金板を適用するためには、プレス金型によって所望の形状に成形する必要があり、集合組織を制御した、いわゆるプレス成形性に優れた5000系アルミニウム合金板が開発されてきた。5000系アルミニウム合金板は、マトリックスにMgが固溶することで強度が高く、さらに集合組織を制御することでプレス成形性にも優れているため、従来から自動車用ボディーシート材料として使用されてきた。
例えば、特許文献1では、Al−Mg系合金板であって、2wt%≦Mg≦6wt%のMgを含有し、Fe、Mn、Cr、Zr、及びCuの内から選ばれる1種以上を総和で0.03wt%以上(Cuが選択される場合はCuとして0.2wt%以上)含有し、且つ個々の元素の含有率の上限がFe≦0.2wt%、Mn≦0.6wt%、Cr≦0.3wt%、Zr≦0.3wt%、Cu≦1.0%であり、残部がAlおよび不可避不純物である組成であり、CUBE方位の体積分率とS方位の体積分率の比(S/Cube)が1以上、GOSS方位が5%以下の集合組織を有し、且つ結晶粒径が20〜100μmの範囲にあることを特徴とする深絞り成形性に優れるAl−Mg系合金板が開発されている。特許文献1では、限界絞り比(LDR)と集合組織の関係について詳細に研究されており、上記のような集合組織を有するアルミニウム合金板は、深絞り成形性の指標とされる限界絞り比(LDR)の大きいことが示されている。
さらに自動車用ボディーシートは、プレス成形後に焼き付け塗装されるため、いわゆるべークハード性に優れたものが要求されている。このため、集合組織を制御した、いわゆるプレス成形性に優れた6000系アルミニウム合金板も開発されてきた。
例えば、特許文献2には、アルミニウム又はアルミニウム合金板(以下、アルミニウム合金板)の集合組織について、CR方位({001}<520>、以下同じ)の方位密度が、CR方位以外のいずれの方位の方位密度よりも高いことを特徴とするプレス成形用アルミニウム合金板であって、例えば、その成分組成が、Si:0.2%〜2.0%(質量%、以下同様)、Mg:0.2%〜1.5%を含有し、さらに、Cu:1.0%以下、Zn:0.5%以下、Fe:0.5%以下、Mn:0.3%以下、Cr:0.3%以下、V:0.2%以下、Zr:0.15%以下、Ti:0.1%以下、B:0.005%以下のうち1種又は2種以上を含有し、残部は不可避的不純物及びアルミニウムからなるものが記載されている。
これによると、熱間圧延の圧延方向に対する冷間圧延の圧延方向を90°となるように設定することで、等二軸変形、平面ひずみ変形、及び一軸変形での破断限界を高めて、プレス成形に適したプレス成形用アルミニウム合金板を提供することができるとのことである。
さらに、特許文献3には、Mg0.3〜2.0%(mass%、以下同じ)、Si0.3〜2.5%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる組成を有し溶体化処理されたAl−Mg−Si系合金板であって、すべての結晶方位の結晶粒総面積に対して{432}面が板面と平行から9.0°以内の範囲にある結晶粒の面積比が0.15以上であり、{111}<112>、{332}<113>、{221}<114>および{221}<122>からなる方位の方位分布関数のうち最も高いものをαとし、{001}<100>および{001}<110>の方位分布関数の高い方をβとした時にα/βが2.0以上であり、平均ランクフォード値が0.9以上である高成形性Al−Mg−Si系合金板が記載されている。
これによると、鋳塊に150℃以上でしかも非再結晶温度域内の温度で、50%を越える圧下率で粗圧延を行ない、さらに150℃以上でしかも非再結晶温度域内の温度で、ロール周速比1.2〜4.0の異周速圧延を、50%を越える圧下率で行なって最終板厚とし、その後溶体化処理を行なうことにより、上記したような再結晶集合組織が得られるとのことである。
ところで、自動車用ボディーシートは、アウタパネルとインナーパネルとをカシメて一体化させるため、ヘム曲げ加工を施す必要がある。しかしながら、6000系アルミニウム合金板は5000系アルミニウム合金板に比べ、いわゆる曲げ加工性などが劣るため、曲げ加工後の微小割れや肌荒れを防止することが必要となっている。さらに薄肉高強度化が要求される中で、プレス成形時のスプリングバックを抑制する必要も生じている。特に曲げ加工では、高密度なせん断帯の形成が原因とみられる微小割れなどの不良が発生するケースも多く見られ、再結晶集合組織を適切に制御することも課題となっている。
例えば、非特許文献1では、Al−Mg−Si合金板材を供試材として単結晶を作製し、各結晶方位が曲げ加工性に及ぼす影響をせん断帯形成の観点から詳細に調査している。この調査によると、結晶方位と曲げ加工性との間には密接な関係があることが明らかとなっており、調査した中では〈001〉//ND方位を有する試験片の曲げ加工性が最も良好であり、また曲げ異方性も最も小さかったとのことである。
さらに、特許文献4には、Feを1.0〜2.0質量%、さらにMnを2.0質量%以下含有し、残部がアルミニウムおよび不可避不純物からなり、当該不可避不純物としてのTiが0.01質量%以下に制限された成分組成を有するとともに、平均結晶粒径が20μm以下、{110}方位結晶の面積率が25%以上に調整された組織を有することを特徴とする成形性に優れたアルミニウム合金板が記載されている。
これによると、電磁撹拌しながらDC鋳造することで、35%以上の伸び、0.85以上の平均r値、33mm以上の球頭張出高さ、および2.17以上の限界絞り比の全てを達成できるとのことである。
特許第4339869号公報 特開2009−019267号公報 特開2012−224929号公報 特開2010−121164号公報
軽金属 第60巻 第5号(2010),p231-236
確かに5000系、6000系のアルミニウム合金板は、成形性に優れており、自動車用ボディーシートとしての特性を備えている。しかしながら、Mgを必須元素として含むアルミニウム合金板では、表面に生成される酸化皮膜が比較的厚く、プレス成形前に酸洗い等の表面処理が必要とされる場合がある。さらに、プレス成形時にストレッチャ・ストレインマークや、リジングなどの表面模様が発生する場合がある。また、6000系のアルミニウム合金板は、最終板製造後の自然時効によって、その機械的特性が経時変化することが懸念される。
また、特許文献4には、必須元素としてMgを含有しない3000系、8000系のアルミニウム合金板が記載されているが、得られた鋳塊の両面を面削した後、均質化熱処理、圧延加工、最終焼鈍する必要があり、工程数が多くコスト高となっていた。
以上のことから、工程数の少ない製造方法でMg含有量を規制した3000系アルミニウム合金板を製造する必要がある。また、自動車用ボディーシートとして使用する場合には、優れた成形性、特に曲げ加工性を備えることは当然のこととして、さらなる薄肉化が要求されることもあり、プレス成形後のスプリングバックを抑制する必要もある。したがって、成形性、特に曲げ加工性および形状凍結性に優れた高強度の3000系アルミニウム合金板の開発が望まれている。
本発明は、このような課題を解決するために案出されたものであり、自動車用ボディーシートに適用可能な高強度を有しており、圧延集合組織を焼鈍して得られた再結晶集合組織を調整し、成形性、特に曲げ加工性および形状凍結性に優れた3000系アルミニウム合金板を提供することを目的とするものである。
本発明の成形性に優れた高強度アルミニウム合金板は、その目的を達成するために、Mn:1.0〜1.6質量%、Fe:0.1〜0.8質量%、Si:0.5〜1.0質量%、Ti:0.005〜0.10質量%を含有し、不純物としてのMgを0.10質量%未満に規制し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、金属組織は、円相当径1μm以上の第二相粒子の面積率が1.5〜3.5%であり、平均結晶粒径が20〜50μm、板面に平行な{100}方位結晶の面積率と板面に平行な{123}<634>方位結晶の面積率との比であるAR{100}/AR{123}<634>比が4.8以上である再結晶集合組織を呈するとともに、引張強度155MPa以上、0.2%耐力100MPa以下、伸び26%以上であることを特徴とする。
強度を高めるために、さらに、Cu:0.8質量%未満を含有するものであってもよい。
本発明の成形性および形状凍結性に優れた高強度アルミニウム合金板は、前記成分組成を有するアルミニウム合金溶湯を薄スラブ連続鋳造機を用いて、厚み2〜15mmのスラブを連続的に鋳造し、前記スラブに熱間圧延を施すことなく直接ロールに巻き取った後、冷間圧延を施し、最終冷延率70〜95%の冷間圧延を施した後、最終焼鈍を施すことにより製造される。
前記最終焼鈍として、保持温度450〜560℃で10〜60秒保持する連続焼鈍を施すことが望ましい。
本発明のアルミニウム合金板は、高い強度を有するとともに伸び値も高く、しかも耐力が比較的低いので、プレス成形時のスプリングバックが抑制され、その結果、形状凍結性に優れている。また、その再結晶集合組織が、板面に平行な{100}方位結晶の面積率と板面に平行な{123}<634>方位結晶の面積率との比であるAR{100}/AR{123}<634>が4.8以上であるので、特に曲げ加工性に優れている。また、再結晶集合組織の平均結晶粒径を20〜50μmの範囲内に規制することにより、プレス成形後や曲げ加工後の肌荒れを防止し、優れた表面外観を呈する成型加工品を得ることができる。
したがって、本発明により、自動車用ボディーパネル等に適用可能な成形性および形状凍結性に優れた高強度アルミニウム合金板が廉価で提供される。
従来の3000系アルミニウム合金板は、高強度であっても、特に曲げ加工では、微小割れや外観肌荒れなどの不良が発生するケースも多く見られる。このため、再結晶集合組織を適切に制御して、再結晶粒径および結晶方位についても適切に調整しておく必要がある。しかも、3000系アルミニウム合金板は、その成分組成あるいは製造工程にもよるが耐力が高い場合もあり、プレス成形後にスプリングバックが発生しやすく、所定の設計形状に収まらないという、いわゆる形状凍結性の問題もある。また、3000系アルミニウム合金板は、プレス成形後や曲げ加工後の表面外観に肌荒れが生じる場合もある。
したがって、用いる材料として、高強度で、伸びが高く、耐力が低く、且つ再結晶集合組織を適切に制御したものが求められる。
前述のように、アルミニウム合金板の圧延集合組織を制御するために、例えば、上下のロール周速を異なるものとする異周速圧延を利用する等、圧延工程に工夫を凝らす方法もある。いずれにしても、自動車用ボディーシートに使用する3000系アルミニウム合金板において、曲げ加工性を向上させるためには、最終板(焼鈍板)における再結晶集合組織を制御しておくことが必要である。
また一方、曲げ加工性の評価方法として、従来は曲げ試験において試験片の曲げ部の外観を評価見本と照合し、例えば、5段階で評価することが一般的に普及している。しかしながら、この場合の評価は、見本と照合するという手法を採用しているものの、曲げ部の外観については目視に頼らざるを得ない。したがって、曲げ加工における微小割れや外観肌荒れなどの不良発生率を低減するためには、曲げ試験による曲げ加工性評価とともに、再結晶集合組織における結晶方位、結晶粒径等を測定して、金属組織を定量的に評価しておくことが重要になる。
本発明者等は、再結晶集合組織の調査を通じて、成形性、特に曲げ加工性と形状凍結性に優れたアルミニウム合金板を得るべく鋭意検討を重ね、本発明に到達した。
以下にその内容を説明する。
まず、本発明の3000系アルミニウム合金板に含まれる各元素の作用、適切な含有量等について説明する。
Mn:1.0〜1.6質量%
Mnは、アルミニウム合金板の強度を増加させる元素であり、一部はマトリックス中に固溶して固溶体強化を促進するため、必須元素である。また、Mnは、本発明の合金組成の範囲内では、鋳造時にAl-(Fe・Mn)−Si等の微細な金属間化合物を構成する元素でもあり、さらに最終焼鈍時には、マトリックスに固溶していたMnも、一部微細な金属間化合物として析出し、強度を高くする。
Mn含有量が1.6質量%を超えると、アルミニウム合金板の耐力が高くなりすぎて、プレス成形時の形状凍結性が低下するため、好ましくない。さらに、最終焼鈍時に再結晶させるために必要な温度が高くなり過ぎ、生産性が低下するため好ましくない。また、Mn含有量が1.0質量%未満であると、アルミニウム合金板の強度が低くなりすぎて、好ましくない。
したがって、好ましいMn含有量は、1.0〜1.6質量%の範囲とする。より好ましいMn含有量は、1.05〜1.6質量%の範囲である。さらに好ましいMn含有量は、1.1〜1.6質量%の範囲である。
Fe:0.1〜0.8質量%
Feは、鋳塊鋳造時の冷却速度にもよるが、Al−(Fe・Mn)−Si等の微細な金属間化合物を晶出させ、アルミニウム合金板の強度を増加させる。また、最終焼鈍時には、マトリックスに固溶するMnの一部がこれら金属間化合物に拡散吸収されるので、最終焼鈍板の耐力を低下させるとともに伸びを高める。これら微細な金属間化合物が最終焼鈍時において再結晶粒の核として作用して、再結晶の結晶粒径を所定の範囲に調整することにより、プレス成形後の肌荒れを防止することができるので、必須の元素である。
Fe含有量が0.1質量%未満であると、Al−(Fe・Mn)−Si等の金属間化合物のサイズと数が減少することにより、第二相粒子の面積率が減少し、再結晶粒の微細化効果が弱まり、さらにマトリックスに固溶するMnの再結晶阻止作用によって、所定の再結晶組織が得られず、好ましくない。Fe含有量が0.8質量%を超えると、Al−(Fe・Mn)−Si等の金属間化合物のサイズと数が増加することにより、第二相粒子の面積率が増加し、最終焼鈍時にマトリックスにおけるMn固溶量が減少して、伸びは高く、耐力は低くなるものの、強度は低下するため、好ましくない。
したがって、Fe含有量は、0.1〜0.8質量%の範囲とする。より好ましいFe含有量は、0.1〜0.7質量%の範囲である。さらに好ましいFe含有量は、0.15〜0.6質量%の範囲である。
Si:0.5〜1.0質量%
Siは、鋳塊鋳造時の冷却速度にもよるが、Al−(Fe・Mn)−Si等の微細な金属間化合物を晶出させ、アルミニウム合金板の強度を増加させる。また、一部はマトリックス内に固溶し、強度を高める。最終焼鈍時には、マトリックスに固溶するMnの一部がこれら金属間化合物に拡散吸収されるので、最終焼鈍板の耐力を低下させるとともに伸びを高める。これら微細な金属間化合物が最終焼鈍時において再結晶粒の核として作用して、再結晶の結晶粒径を所定の範囲に調整することにより、プレス成形後の肌荒れを防止することができるので、必須の元素である。
Si含有量が0.5質量%未満であると、Al−(Fe・Mn)−Si等の金属間化合物のサイズと数が減少することにより、第二相粒子の面積率が減少し、さらにマトリックスのSi固溶量も減少するため、所定の強度が得られず、好ましくない。Si含有量が1.0質量%を超えると、アルミニウム合金板の強度は高くなるものの、伸びは低下して成形性が低下するため、好ましくない。
したがって、Si含有量は、0.5〜1.0質量%の範囲とする。より好ましいSi含有量は、0.55〜1.0質量%の範囲である。さらに好ましいSi含有量は、0.6〜1.0質量%の範囲である。
Ti:0.005〜0.10質量%
Tiは鋳塊鋳造時に結晶粒微細化剤として作用し、鋳造割れを防止することができるので、必須の元素である。勿論、Tiは単独で添加してもよいが、Bと共存することによりさらに強力な結晶粒の微細化効果を期待できるので、Al−5%Ti−1%Bなどのロッドハードナーでの添加であってもよい。
Ti含有量が、0.005質量%未満であると、鋳塊鋳造時の微細化効果が不十分なため、鋳造割れを招くおそれがあり、好ましくない。Ti含有量が、0.10質量%を超えると、鋳塊鋳造時にTiAl等の粗大な金属間化合物が晶出して、最終板におけるプレス成形性や曲げ加工性を低下させるおそれがあるため、好ましくない。
したがって、Ti含有量は、0.005〜0.10質量%の範囲とする。より好ましいTi含有量は、0.005〜0.07質量%の範囲である。さらに好ましいTi含有量は、0.01〜0.05質量%の範囲である。
Mg:0.10質量%未満
Mgは、最終板(焼鈍板)の表面に比較的厚い酸化皮膜を生成させる原因となり、その結果、最終板を十分に酸洗いする必要が生じコストアップの要因となる。さらに本発明の合金組成の範囲内では、Si含有量が比較的高いため、Mgを含有すると、MgSiが晶析出するため、伸びが低くなり成形性を低下させる。したがって、好ましいMgの含有量は、0.10質量%未満の範囲とする。より好ましいMg含有量は、0.05質量%未満の範囲である。さらに好ましいMg含有量は、0.03質量%未満の範囲である。
Cu:0.8質量%未満
Cuは、アルミニウム合金板の強度を増加させる元素であり、任意の元素である。本発明において、Cu含有量は、0.8質量%未満の範囲であれば、曲げ加工性および形状凍結性等の特性について低下することはない。しかしながら、Cu含有量が0.8質量%以上であると、耐食性が著しく低下する。したがって、好ましいCuの含有量は、0.8質量%未満の範囲とする。より好ましいCu含有量は、0.5質量%未満の範囲である。さらに好ましいCu含有量は、0.2質量%未満の範囲である。
その他の不可避的不純物
不可避的不純物は原料地金、返り材等から不可避的に混入するもので、それらの許容できる含有量は、例えば、Crの0.20質量%未満、Znの0.20質量%未満、Niの0.10質量%未満、Ga及びVの0.05質量%未満、Pb、Bi、Sn、Na、Ca、Srについては、それぞれ0.02質量%未満、その他各0.05質量%未満であって、この範囲で管理外元素を含有しても本発明の効果を妨げるものではない。
引張強度が155MPa以上、0.2%耐力が100MPa以下、伸び26%以上
ところで、3000系アルミニウム合金板を自動車用ボディーシート等に適用するに当たっては、高強度と優れた成形性を有するだけでなく、プレス成形時の形状凍結性にも優れることが必要である。
材料の強度は引張り試験を行った時の引張強度で、成形性は引張り試験時の伸びの値で、また形状凍結性は引張り試験時の耐力によって知ることができる。
詳細は後記の実施例の記載に譲るとして、自動車用ボディーシート等に適用する本発明の3000系アルミニウム合金板としては、最終焼鈍板として、引張強度が155MPa以上、0.2%耐力が100MPa以下、伸び26%以上なる特性を有するものが好適である。
円相当径1μm以上の第二相粒子の面積率:1.5〜3.5%
平均結晶粒径:20〜50μm
AR {100} /AR {123}<634> 比:4.8以上
上記のような特性は、前記特定の成分組成を有する3000系アルミニウム合金板の金属組織を細かく調整することにより発現される。
具体的には、金属組織は、円相当径1μm以上の第二相粒子の面積率が1.5〜3.5%であり、平均結晶粒径を20〜50μm、板面に平行な{100}方位結晶の面積率と板面に平行な{123}<634>方位結晶の面積率との比であるAR{100}/AR{123}<634>比を4.8以上である再結晶集合組織にすればよい。特に、再結晶集合組織における平均結晶粒径を20〜50μmにすることにより、プレス成形後や曲げ加工後の肌荒れを防止することができ、表面外観の優れたプレス成型品を得ることができる。また、曲げ加工における微小割れなどの不良発生率を低減するためには、再結晶集合組織における板面に平行な{100}方位結晶の面積率と板面に平行な{123}<634>方位結晶の面積率との比であるAR{100}/AR{123}<634>比を4.8以上とする必要がある。
詳細は後記の実施例の記載に譲るとして、自動車用ボディーシート等に適用する本発明の3000系アルミニウム合金板としては、最終焼鈍板として、円相当径1μm以上の第二相粒子の面積率が1.5〜3.5%、平均結晶粒径が20〜50μm、AR{100}/AR{123}<634>が4.8以上なる再結晶集合組織を有するものが好適である。
また詳細は後記の実施例の記載に譲るとして、いずれにしても、前記特定の成分組成を有し、且つ上記のような再結晶集合組織を有していれば、最終焼鈍板として、引張強度が155MPa以上、0.2%耐力が100MPa以下、伸び26%以上なる値を呈する。
次に、上記のようなプレス成形用アルミニウム合金板を製造する方法の一例について簡単に紹介する。
溶解・溶製
溶解炉に原料を投入し、所定の溶解温度に到達したら、フラックスを適宜投入して攪拌を行い、さらに必要に応じてランス等を使用して炉内脱ガスを行った後、鎮静保持して溶湯の表面から滓を分離する。
この溶解・溶製では、所定の合金成分とするため、母合金等再度の原料投入も重要ではあるが、前記フラックス及び滓がアルミニウム合金溶湯中から湯面に浮上分離するまで、鎮静時間を十分に取ることが極めて重要である。鎮静時間は、通常30分以上取ることが望ましい。
溶解炉で溶製されたアルミニウム合金溶湯は、場合によって保持炉に一端移湯後、鋳造を行なうこともあるが、直接溶解炉から出湯し、鋳造する場合もある。より望ましい鎮静時間は45分以上である。
必要に応じて、インライン脱ガス、フィルターを通してもよい。
インライン脱ガスは、回転ローターからアルミニウム溶湯中に不活性ガス等を吹き込み、溶湯中の水素ガスを不活性ガスの泡中に拡散させ除去するタイプのものが主流である。不活性ガスとして窒素ガスを使用する場合には、露点を例えば−60℃以下に管理することが重要である。鋳塊の水素ガス量は、0.20cc/100g以下に低減することが好ましい。
鋳塊の水素ガス量が多い場合には、鋳塊の最終凝固部にポロシティが発生するおそれがあるため、冷間圧延工程における1パス当たりの圧下率を例えば20%以上に規制してポロシティを潰しておくことが好ましい。また、鋳塊に過飽和に固溶している水素ガスは、冷間ロールの焼鈍等熱処理条件にもよるが、最終板のプレス成形後であっても、例えばスポット溶接時に析出して、スポットビードに多数のブローホールを発生させる場合もある。このため、より好ましい鋳塊の水素ガス量は、0.15cc/100g以下である。
薄スラブ連続鋳造
薄スラブ連続鋳造機は、双ベルト鋳造機、双ロール鋳造機の双方を含むものとする。
双ベルト鋳造機は、エンドレスベルトを備え上下に対峙する一対の回転ベルト部と、当該一対の回転ベルト部の間に形成されるキャビティーと、前記回転ベルト部の内部に設けられた冷却手段とを備え、耐火物からなるノズルを通して前記キャビティー内に金属溶湯が供給されて連続的に薄スラブを鋳造するものである。
双ロール鋳造機は、エンドレスロールを備え上下に対峙する一対の回転ロール部と、当該一対の回転ロール部の間に形成されるキャビティーと、前記回転ロール部の内部に設けられた冷却手段とを備え、耐火物からなるノズルを通して前記キャビティー内に金属溶湯が供給されて連続的に薄スラブを鋳造するものである。
スラブの厚み2〜15mm
薄スラブ連続鋳造機は、厚み2〜15mmの薄スラブを連続的に鋳造することが可能である。スラブ厚み2mm未満の場合には、鋳造が可能な場合であっても、最終板の板厚にもよるが、後述する最終圧延率70〜95%を実現することが困難となる。スラブ厚み15mmを超えると、スラブを直接ロールに巻き取ることが困難となる。このスラブ厚みの範囲であると、スラブの冷却速度は、スラブ厚さ1/4の付近で、40〜1000℃/sec程度となり、Al−(Fe・Mn)−Si等の金属間化合物が微細に晶出する。このため、最終焼鈍板において円相当径1μm以上の金属間化合物(第二相粒子)の面積率が1.5〜3.5%である金属組織を発現することが可能となる。これらの微細な金属間化合物は、後述する冷延板の最終焼鈍時に再結晶粒の核となり、最終板における再結晶粒の平均結晶粒径を20〜50μmに調整することが可能となる。
冷間圧延
薄スラブ連続鋳造機を用いて、スラブを連続的に鋳造し、前記スラブに熱間圧延を施すことなく直接ロールに巻き取った後、冷間圧延を施す。このため、従来の半連続鋳造DCスラブに必要となる面削工程、均質化処理工程、熱間圧延工程を省略することができる。薄スラブを直接巻き取ったロールは、冷延機に通され、通常何パスかの冷間圧延が施される。この際、冷間圧延によって導入される塑性歪により加工硬化が起こるため、必要に応じて、バッチ炉内で保持温度300〜400℃で1〜8時間保持する中間焼鈍処理を行なってもよい。
最終冷延率70〜95%
最終冷延率70〜95%の冷間圧延を施した後、最終焼鈍を施す。最終冷延率がこの範囲であれば、焼鈍後の最終板における平均結晶粒径を20〜50μmにして、伸びの値を26%以上にすることができ、プレス成形後の外観肌を綺麗に仕上げることができる。したがって、加工コストを低く抑えるとともに、遷移金属元素の固溶量を確保しながら加工を加えることで転位が蓄積されて、最終焼鈍工程で20〜50μmに調整された再結晶粒を得ることが可能となる。最終冷延率が70%未満であると、冷間圧延時に蓄積される加工歪量が少なすぎて、最終焼鈍によって20〜50μmの再結晶粒を得ることができない。最終冷延率が95%を超えると、冷間圧延時に蓄積される加工歪量が多すぎて、加工硬化が激しく、エッジに耳割れを生じて圧延が困難となる。したがって、好ましい最終冷延率は、70〜95%の範囲である。より好ましい最終冷延率は、75〜95%の範囲である。さらに好ましい最終冷延率は、75〜90%の範囲である。
最終焼鈍
連続焼鈍炉により、保持温度450〜560℃で10〜60秒保持
最終焼鈍は、連続焼鈍炉によって450℃〜560℃の保持温度で10〜60秒間保持する連続焼鈍処理が好ましい。その後急速に冷却すれば、溶体化処理を兼ねることもできる。金型成形工程におけるプレス成形性や曲げ加工性を高めるためには、溶体化処理材としておくことが必要である。最終焼鈍によって、マトリックスに固溶していたMnは、微細に晶出していた金属間化合物に吸収されることにより、再結晶が促進されるとともに、最終焼鈍板の耐力を低下させ、伸びを高める。同時に、金属組織における板面に平行な{123}<634>方位結晶の存在密度が減少し、板面に平行な{100}方位結晶の存在密度が増加する。
保持温度が450℃未満であると、再結晶組織を得ることが困難となる。保持温度が560℃を超えると、熱歪が激しくなるとともに、合金組成にもよるがバーニングを起こすおそれがある。保持時間が10秒未満であると、コイルの実体温度が所定の温度に到達せず焼鈍処理が不十分となるおそれがある。保持時間が60秒を超えると、処理に時間がかかりすぎ、生産性が低下する。
本発明の製造方法において最終焼鈍は必須の工程であり、この最終焼鈍によって最終板を再結晶温度以上の温度で保持することで、平均結晶粒径20〜50μmであり、さらに板面に平行な{100}方位結晶の面積率と板面に平行な{123}<634>方位結晶の面積率との比であるAR{100}/AR{123}<634>比が4.8以上である再結晶集合組織を発現させることができる。このような再結晶集合組織を有する最終焼鈍板は、曲げ加工におけるTaylor因子が板面内の全方向において統計的に小さくなるので、比較的小さな応力で結晶粒内の{111}面内におけるすべり変形が容易となり、曲げ加工性に優れていると考えられる。しかも、平均結晶粒径が20〜50μmに調整されているので、曲げ加工のような局部的な塑性加工に対しては、結晶粒内の可動転位の平均自由行程(mean free path)も、十分に大きくなっていると考えられる。
以上のような通常の連続鋳造工程を経ることにより、曲げ加工性および形状凍結性に優れたアルミニウム合金板を得ることができる。
薄スラブ連続鋳造シミュレート材の作製
表1に示した11水準の組成(合金No.1〜11)に配合された各種インゴット各5kgを#20坩堝内に挿入し、この坩堝を小型電気炉で加熱しインゴットを溶解した。次いで、溶湯中にランスを挿入して、Nガスを流量1.0L/minで5分間吹き込んで脱ガス処理を行なった。その後30分間の鎮静を行なって溶湯表面に浮上した滓を攪拌棒にて除去した。次に坩堝を小型電気炉から取り出して、溶湯を内寸法200×200×16mmの水冷金型に流し込み、薄スラブを作製した。坩堝中の溶湯から採取した各供試材(実施例1〜5、比較例1〜6)のディスクサンプルは、発光分光分析によって組成分析を行なった。その結果を表1に示す。この薄スラブの両面を3mmずつ面削加工して、厚さ10mmとした後、均質化処理、熱間圧延を施すことなく、冷間圧延を施して板厚1.0mmの冷延材とした。なお、冷間圧延工程の間に中間焼鈍処理は行っていない。この場合の最終冷延率は90%であった。
次にこの冷延材を所定の大きさに切断後、この冷延材をソルトバスに挿入して、550℃×15sec保持し、ソルトバスから素早く供試材を取り出して水冷し溶体化処理を施した。このようにして得られた最終板(供試材)を薄スラブ連続鋳造シミュレート材として、表1にその成分組成を示す。
Figure 2015155911
次に、このようにして得られた最終板(各供試材)について、金属組織の評価を行い、さらに諸特性の測定、評価を行った。
結晶方位および結晶粒径の測定
得られた最終焼鈍板(各供試材)について、EBSDによる結晶方位測定を行った。得られた各供試材から圧延方向に平行な縦断面を切出して鏡面研磨を施し、さらに研磨によるひずみを除去するために電解研磨を施した。この試験片について、EBSDによる結晶方位の測定を行った。走査電子顕微鏡は日本電子製JSM6490Aを用い、加速電圧15kV、WD3mm、65°の傾斜の条件に設定した。EBSD測定は(株)TSLソリューションズ製OIM型により、0.16から0.32平方ミリメートルの領域を2μmステップで測定した。得られた結果を、解析ソフト(OIM analysis) によって解析し、板面に平行な{100}方位結晶の面積率と板面に平行な{123}<634>方位結晶の面積率を求めた。ここで、{100}方位は{100}から10°の範囲にある方位とした。{123}<634>方位(S方位)は{123}<634>から15°の範囲にある方位とした。同様に、解析ソフトによって平均結晶粒径(円相当径)を算出した。測定結果を、表2に示す。
金属組織における第2相粒子の面積率の測定
得られた最終板の圧延方向に平行な縦断面(LT方向に垂直な断面)を切り出して、熱可塑性樹脂に埋め込んで鏡面研磨し、フッ化水素酸水溶液にてエッチングを施して、金属組織観察を行った。ミクロ金属組織を光学顕微鏡にて写真撮影し(1視野当たりの面積;0.017mm、各試料20視野撮影)、写真の画像解析を行い、円相当径1μm以上の第2相粒子の面積率を求めた。測定結果を、表2に示す。
Figure 2015155911
引張試験による諸特性の測定
得られた最終板(各供試材)の特性評価は、引張り試験の引張強度、0.2%耐力、伸び(%)によって行った。
具体的には、得られた供試材より、引張り方向が圧延方向に対して平行方向になるようにJIS5号試験片を採取し、JISZ2241に準じて引張り試験を行って、引張強度、0.2%耐力、伸び(破断伸び)を求めた。なお、これら引張り試験は、各供試材につき3回(n=3)行い、その平均値で算出した。
最終板において、引張強度が155MPa以上であった供試材を強度良好とし、155MPa未満であった供試材を強度不足とした。また0.2%耐力が100MPa以下であった供試材を形状凍結性良好とし、100MPaを超えた供試材を形状凍結性不良とした。さらに伸びの値が26%以上であった供試材を成形性良好とし、26%未満であった供試材を成形性不良とした。評価結果を表3に示す。
曲げ試験による曲げ加工性の評価
曲げ試験用の試験片として、各供試材について圧延方向に対して90°方向を長手方向として25mm×50mm寸法の試験片を採取した。曲げ試験は、試験片の長手方向に対して90°方向をポンチ径1mmのポンチに押し当てた状態で、40°から60°に曲げたあと、試験片同士が密着するまで圧縮加工した。曲げ加工性の評価は、密着曲げ後の曲げ部の表面状態によって、割れ・シワなし〜破断までを0〜5点の点数でランク付けすることにより行った。0〜1点であった供試材を曲げ加工性評価良好とし、2〜5点であった供試材を曲げ加工性評価不良とした。
Figure 2015155911
各供試材の金属組織評価結果
各供試材の金属組織評価結果を示す表2における実施例1〜5は、本発明の組成範囲内であり、AR{100}/AR{123}<634>比、平均結晶粒径、第二相粒子の面積率とも、基準値を満たしていた。すなわち、具体的には、AR{100}/AR{123}<634>比:4.8以上、平均結晶粒径:20〜50μm、円相当径1μm以上の第二相粒子の面積率:1.5〜3.5%の要件を満たしていた。
比較例1は、本発明の組成範囲外であり、平均結晶粒径が14μmであり、基準値を満たしておらず、AR{100}/AR{123}<634>比が4.6であり、基準値を満たしていなかった。
比較例2は、本発明の組成範囲外であり、平均結晶粒径が14μmであり、基準値を満たしておらず、AR{100}/AR{123}<634>比が4.6であり、基準値を満たしていなかった。
比較例3は、本発明の組成範囲外であり、平均結晶粒径が16μmであり、基準値を満たしていなかった。
比較例4は、本発明の組成範囲外であり、平均結晶粒径が18μmであり、基準値を満たしておらず、AR{100}/AR{123}<634>比が2.8であり、基準値を満たしていなかった。
比較例5は、本発明の組成範囲外であり、第二相粒子の面積率が4.4%であり、基準値を満たしておらず、平均結晶粒径は17μmであり、基準値を満たしておらず、AR{100}/AR{123}<634>比が2.7であり、基準値を満たしていなかった。
比較例6は、本発明の組成範囲外であり、第二相粒子の面積率が4.7%であり、基準値を満たしておらず、未再結晶組織であったため、結晶粒径、結晶方位の測定は行っていない。
各供試材の特性評価
供試材の特性評価結果を示す表3における実施例1〜5は、本発明の組成範囲内であり、引張強度、0.2%耐力、伸び、曲げ加工性とも全て、基準値を満たしていた。具体的には、引張強度:155MPa以上、0.2%耐力:100MPa以下、伸び:26%以上、曲げ加工性:0〜1点の基準値を満たしていた。なお、比較例1,5,6については、曲げ試験を行っていないため、曲げ加工性については不明である。
比較例1は、Mg含有量が0.35質量%と高く、合金組成が本発明の範囲外であり、成形性評価不良(×)であった。
比較例2は、Mg含有量が0.34質量%と高く、合金組成が本発明の範囲外であり、成形性評価不良(×)、曲げ加工性評価不良(×)であった。
比較例3は、Mg含有量が0.25質量%と高く、またFe含有量が0.61質量%と高く、合金組成が本発明の範囲外であり、成形性評価不良(×)、曲げ加工性評価不良(×)であった。
比較例4は、Mg含有量が0.26質量%と高く、合金組成が本発明の範囲外であり、形状凍結性評価不良(×)、成形性評価不良(×)、曲げ加工性評価不良(×)であった。
比較例5は、Si含有量が0.49質量%と低く、またFe含有量が1.00質量%と高く、合金組成が本発明の範囲外であり、強度不足(×)であった。
比較例6は、Si含有量が1.08質量%と高く、またMn含有量が1.98質量%と高く、Zn含有量が1.19質量%と高く、合金組成が本発明の範囲外であり、形状凍結性評価不良(×)、成形性評価不良(×)であった。
以上のことから、前記特定の成分組成を有し、且つ上記のような金属組織を有していれば、最終焼鈍板として、引張強度が155MPa以上、0.2%耐力が100MPa以下、伸び26%以上なる値を呈するとともに、曲げ加工性に優れることがわかる。
本発明の成形性および形状凍結性に優れた高強度アルミニウム合金板は、前記成分組成を有するアルミニウム合金溶湯を薄スラブ連続鋳造機を用いて、厚み2〜15mmのスラブを連続的に鋳造し、前記スラブに熱間圧延を施すことなく直接ロールに巻き取った後、冷間圧延を施し、最終冷延率75〜95%の冷間圧延を施した後、連続焼鈍炉により、保持温度450〜560℃で10〜60秒保持する最終焼鈍を施すことにより製造される。

Claims (4)

  1. Mn:1.0〜1.6質量%、Fe:0.1〜0.8質量%、Si:0.5〜1.0質量%、Ti:0.005〜0.10質量%を含有し、不純物としてのMgを0.10質量%未満に規制し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、金属組織は、円相当径1μm以上の第二相粒子の面積率が1.5〜3.5%であり、平均結晶粒径が20〜50μm、板面に平行な{100}方位結晶の面積率と板面に平行な{123}<634>方位結晶の面積率との比であるAR{100}/AR{123}<634>比が4.8以上である再結晶集合組織を呈するとともに、引張強度155MPa以上、0.2%耐力100MPa以下、伸び26%以上であることを特徴とする曲げ加工性と形状凍結性に優れた高強度アルミニウム合金板。
  2. さらに、Cu:0.8質量%未満含有することを特徴とする請求項1に記載の曲げ加工性と形状凍結性に優れた高強度アルミニウム合金板。
  3. 請求項1または請求項2に記載の組成のアルミニウム合金溶湯を薄スラブ連続鋳造機を用いて、厚み2〜15mmのスラブを連続的に鋳造し、前記スラブに熱間圧延を施すことなく直接ロールに巻き取った後、冷間圧延を施し、最終冷延率70〜95%の冷間圧延を施した後、最終焼鈍を施すことを特徴とする曲げ加工性と形状凍結性に優れた高強度アルミニウム合金板の製造方法。
  4. 連続焼鈍炉により、保持温度450〜560℃で10〜60秒保持する最終焼鈍を施す請求項3に記載の曲げ加工性と形状凍結性に優れた高強度アルミニウム合金板の製造方法。
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