JP3724798B2 - 二次電池ケース用アルミニウム合金板及びこれを用いた二次電池ケース - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、充放電を繰り返して何回も使用できる二次電池の電池ケース用に使用され、特に、溶接性に優れた二次電池ケース用アルミニウム合金板及びこれを用いた二次電池ケースに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、携帯電話やハンディパーソナルコンピュータ等の電源として搭載されている充放電が可能な二次電池、例えば、リチウムイオン二次電池には、通常、Niめっき鋼板またはステンレス鋼板等の金属材料に複数の絞り加工の工程と、しごき加工の工程とを適宜に組み合わせたプレス加工等の成形加工が施されて形成された電池ケースが使用されている。
【0003】
このようなリチウムイオン二次電池における近時の要求によれば、単位質量当たりのエネルギ出力密度の向上を図ることであり、これを実現するためにリチウムイオン二次電池の電池ケース(以下、単に「電池ケース」という。)に対して一層の小型化と軽量化を図ることが要求されている。そこで、この電池ケースのより一層の小型化と軽量化とを目的として、この電池ケースにJISA3003合金等の軽量性と強度とを備えたアルミニウム合金が一部採用されている。
【0004】
ところで、このような電池ケースでは、電池の充電や放電が行なわれる際に電池ケースの内部の圧力が上昇し、さらに高温環境下で使用される場合にはこの電池ケースの内部の圧力が大きく上昇する。そのため、電池ケースが膨れて変形し、場合によっては電池ケースの破損が生じる場合がある。その結果、電子機器の性能を損ねるおそれがある。
【0005】
そこで、このような電池ケースに要求される特性として、リチウムイオン二次電池の充電および放電時はもとより、高温環境下で使用される状況を想定して、これらの使用状況で電池ケースの内圧が上昇した場合にも、電池ケースが初期の形状を保持できることが挙げられる。その一方で、リチウムイオン二次電池の小型化や軽量化および低コスト化を図るべく、電池ケースの薄肉化を図ることが強く要求されている。
【0006】
また、リチウムイオン二次電池は、以下のような工程により製造されている。
(1)正極材料、負極材料、セパレーターを重ねて巻き、電池ケースに入れる。
(2)電極材料の正極と負極を、電池ケースの正極と負極にそれぞれ溶接する。
(3)電解液を、電池ケース内へ注液する。
(4)注液口を、溶接により封止する。
なお、電池ケースの注液口を封止する場合は、波形制御されたパルスレーザによる溶接が一般的に行われている。
【0007】
しかし、電池ケースに適用可能なアルミニウム合金板の素材として、前記したJISA3003合金等を使用した場合、溶接条件によっては封止部に溶接割れを生じる。この溶接割れは、溶接部分の黒色に変色した部位で生じており、同部位においては、Al−Fe−Mn系金属間化合物が検出されていた。
この場合、長期使用により電池の充電や放電で電池ケースの内部の圧力が上昇すると、このような溶接割れを起こした封止部の溶接部分から電解液が漏れるといった問題が発生する。
【0008】
ここで、二次電池ケース用アルミニウム合金板としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。しかし、そこで開示されたアルミニウム合金板では、二次電池ケースとして用いるのに必要な耐溶接割れ性や、成形性を高めるために最適な各元素の含有量範囲が、Siが0.4〜1.0質量%、Feが不純物として0.7質量%以下、Cuが0.2〜1.0質量%、Mnが0.5〜2.0質量%、さらに、不純物として、Mgが0.20質量%以下、Znが0.5質量%以下、Crが0.05質量%以下、Tiが0.05質量%以下、およびBを100ppm含むものとされ、その含有量範囲は、不十分な追求に留まっており、かかる開示された技術によっても、前記の問題を解決し得なかった。したがって、二次電池ケース用として更に好適な特性を有するアルミニウム合金板の実現が望まれていた。
【0009】
この発明に関連する先行技術文献情報としては次のようなものがある。
【特許文献1】
特開2000−129384号公報([0019]〜[0024])
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような問題点に鑑みて成されたものであり、パルスレーザ溶接により、成形加工性、耐圧性に優れ、溶接割れの発生しない、溶接性に優れた二次電池ケース用アルミニウム合金板及びこれを用いた二次電池ケースを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、JISA3003合金で溶接割れを生じる原因について鋭意研究を進めた結果、溶接部分の黒色に変色した部位においてAl−Fe−Mn系金属間化合物が検出されたことから、これが溶接割れの何らかの原因であると推定した。
【0012】
つまり、溶接部分では、パルスレーザによりアルミニウム合金が高温に加熱され、溶融状態となり、正常な溶接が施されるが、アルミニウム合金母材に比べて融点の高いAl−Fe−Mn系金属間化合物は完全には溶融せず、ミクロ偏析した状態となる。そのため、Al−Fe−Mn系金属間化合物がミクロ偏析した部位では、溶接割れが発生している可能性が高いと推定した。
【0013】
このような推定から、本発明者らは、二次電池ケースとしての諸特性を満足し、また、Al−Fe−Mn系金属間化合物に比べて融点の低い金属間化合物が生成されるアルミニウム合金について、引き続き鋭意実験研究を進め、前記目的を達成することができる二次電池ケース用アルミニウム合金板及びこれを用いた二次電池ケースを成したものである。
【0014】
前記課題を解決し得た本発明は、以下のような構成より成る。
すなわち、本発明に係る二次電池ケース用アルミニウム合金板は、Siを0.3乃至0.7質量%、Feを0.2質量%以下であり、且つ、Si/Fe比が3以上とし、更に、Cuを0.4乃至0.9質量%、Mnを0.8乃至1.5質量%を含み、残部がAlと不純物とからなる二次電池ケース用アルミニウム合金板であって、前記不純物において、Mgを0.01質量%以下、Znを0.01質量%以下、Crを0.01質量%以下、及びTiを0.03質量%以下となるよう構成した(請求項1)。
【0015】
このように、アルミニウム合金中、成形性の向上に寄与するSi、Fe両方の含有量及びSi/Feの比について所定の範囲内に規制することにより適正化し、さらに、強度を高めるために寄与するCu、Mnの含有量を所定の範囲内に規制することにより適正化し、さらに、溶接時に飛散しやすいMg、Znの混入量を規制するとともに、金属間化合物を形成させるCr、Tiの混入量を規制することにより、薄肉化しても、強度と成形性に優れた二次電池ケース用アルミニウム合金板を具現することができる。
【0016】
また、本発明に係る二次電池ケース用アルミニウム合金板は、最大長が5μm以上の金属間化合物のうち、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物が50%以上の個数を占める構成とした(請求項2)。
【0017】
このように、溶接時に溶融しやすいAl−Fe−Mn−Si系金属間化合物の大きさと個数を規制することにより、溶接性に優れた二次電池ケース用アルミニウム合金板を具現することができる。
【0018】
さらに、本発明に係る二次電池ケースは、請求項1または2に記載の二次電池ケース用アルミニウム合金板から形成される構成とした(請求項3)。
【0019】
このように構成されることにより、二次電池ケースは、強度と成形性に優れた二次電池ケースとして具現される。また、正極材料、負極材料、セパレーター、電解液が収納されて注液口が溶接される際に、溶融し易いAl−Fe−Mn−Si系金属間化合物を多く含んでいるので、溶接性が向上する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る二次電池ケース用アルミニウム合金板および二次電池ケースの実施の形態について説明する。
本発明における二次電池ケース用アルミニウム合金板において、アルミニウム合金として各元素を数値限定した理由は、以下の如くである。
【0021】
[Si:0.3乃至0.7質量%、Fe:0.2質量%以下、且つ、Si/Fe比:3以上とする理由]
二次電池ケース用アルミニウム合金板においてSiは、Fe、Mn及びAlと共に、Al−Fe−Mn系金属間化合物に比べて融点の低いAl−Fe−Mn−Si系金属間化合物を生成し、溶接割れを抑止する効果を有する。また、Siは成形性を向上させる効果をも有する。しかし、Si添加量が0.3質量%未満であるとその効果が小さく、一方、0.7質量%を超えると金属間化合物が粗大化し、成形時の割れの起点となり易く成形性が低下する。そのため、Siの添加量は、0.3乃至0.7質量%、更に好ましくは、0.4乃至0.65質量%とする。
【0022】
二次電池ケース用アルミニウム合金板においてFeは、Siと同様に金属間化合物を生成するため、成形性を向上させる効果を有する。しかし、Fe添加量が0.2質量%を超えると金属間化合物が粗大化し、成形時の割れの起点となり易いため成形性が低下する。そのため、Feの添加量は、0.2質量%以下とする。
【0023】
更に、上記組成範囲において、Si/Fe比が3未満である場合、融点の高いAl−Fe−Mn系金属間化合物が増加し、溶接割れを生じ易くなる。それに加え、金属間化合物が粗大化し、成形性は低下する。そのため、Si/Fe比を3以上とする。
【0024】
[Cu:0.4乃至0.9質量%の範囲である理由]
二次電池ケース用アルミニウム合金板においてCuは、アルミニウム合金の強度を高め、電池ケースの耐圧強度を向上させる作用を有する。Cu添加量が0.4質量%未満ではこの効果が小さく、一方、0.9質量%を超えるとアルミニウム合金板での成形性を低下させる。また、電池ケースのケース本体部と注液口とをパルスレーザ溶接等により固着させる際に、溶接部に割れが生じ易くなる。そのため、Cuの添加量は、0.4乃至0.9質量%、更に好ましくは、0.5乃至0.8質量%とする。
【0025】
[Mn:0.8乃至1.5質量%の範囲である理由]
二次電池ケース用アルミニウム合金板においてMnは、母相内に固溶してアルミニウム合金の強度を高める作用を有する。Mn添加量が0.8質量%未満であると、この効果は小さく、一方、1.5質量%を超えると粗大な金属間化合物が生成し、アルミニウム合金板を用いてケースに成形する時の割れの起点となり易いため成形性が低下する。このため、Mnの添加量は、0.8乃至1.5質量%、更に好ましくは、0.9乃至1.2質量%とする。
【0026】
つぎに、不純物であるMg、Zn、Cr、Tiについて所定量以下に制限した理由について説明する。
[Mg:0.01質量%以下に制限する理由]
二次電池ケース用アルミニウム合金板においてMgは、アルミニウム合金の強度を高め、電池ケースの耐圧強度を向上させる作用を有する。しかし、0.01質量%を越えると、Mgは、蒸気圧が低いため溶接時に飛散し易く、周囲を汚染し、また、更に添加量が多くなるとパルスレーザ溶接において溶接割れが生じ易くなる。そのため、Mgの添加量は、0.01質量%以下とする。
【0027】
[Zn:0.01質量%以下に制限する理由]
二次電池ケース用アルミニウム合金板においてZnは、Mgと同じく、アルミニウム合金の強度を高める作用を有する。しかし、Znは蒸気圧が低いため溶接時に飛散し、周囲を汚染する。そのため、Znの添加量は、0.01質量%以下とする。
【0028】
[Cr:0.01質量%以下に制限する理由]
二次電池ケース用アルミニウム合金板においてCrも同様に、アルミニウム合金の強度を高める作用を有する。しかし、Cr添加量が0.01質量%を越えると、融点の高いAl−Fe−Crのような金属間化合物を多数生成し、溶接割れを引き起こす。そのため、Crの添加量は、0.01質量%以下とする。
【0029】
[Ti:0.03質量%以下に制限する理由]
二次電池ケース用アルミニウム合金板においてTiは、鋳塊製作時に凝固組織を微細化する作用を有する。しかし、Ti添加量が0.03質量%を越えると、Al−Ti金属間化合物が生成し、溶接割れを引き起こす。そのため、Tiの添加量は、0.03質量%以下とする。
【0030】
[最大長が5μm以上の金属間化合物のうち、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物が50%以上の個数を有することとした理由]
つぎに、金属間化合物の好ましい状態について説明する。なお、前記各成分において、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍、矯正を必要に応じて行い、二次電池ケース用アルミニウム合金板を形成した。
【0031】
ここでは、形成された二次電池ケース用アルミニウム合金板において最大長が5μm以上の金属間化合物のうち、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物が50%以上の個数を占めることが好ましい。
【0032】
Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物は、Al−Fe−Mn系金属間化合物に比べて、融点が低い。そのため、パルスレーザ溶接において、アルミニウム合金母材と共に溶融し易く、均一な溶接部を形成する。
【0033】
しかし、最大長が5μm以上の金属間化合物のうち、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物が50%未満の個数しかない場合、結果として、より融点の高いAl−Fe−Mn系金属間化合物が多数生成され、パルスレーザ溶接によりこれらがミクロ偏析することで、溶接割れを誘発する。そのため、最大長5μm以上の金属間化合物のうちAl−Fe−Mn−Si系金属間化合物が50%以上の個数を有することが好ましい。
【0034】
最大長が5μm以上の金属間化合物のうちAl−Fe−Mn−Si系金属間化合物が50%以上であるという状態を実現するには、本発明で規定する組成を有するアルミニウム合金を用いて、通常の条件により製造すれば、問題なく実現できる。代表的な製造方法としては、本発明の組成を有する鋳塊を均質化処理した後、熱間圧延を行い、最終冷間圧延の加工率を25〜70%として冷間圧延を行うことが挙げられるが、かかる製造方法としてはこれに限られるものではなく、例えば、冷間圧延の途中で焼鈍を行ってもよい。
【0035】
以上を満足することにより、溶接割れの発生しない、パルスレーザ溶接性に優れた二次電池ケース用アルミニウム合金板が得られ、また、これを用いて耐圧性に優れた二次電池ケースを得ることが可能である。
【0036】
二次電池ケースは、前記構成の二次電池ケース用アルミニウム合金板から、所定面積のブランク板が打ち抜かれ、絞りしごき加工が施されることで、所定側壁高さが形成され、トリミングなどの各加工が必要に応じて施されて容器状の二次電池ケースが形成される。
【0037】
そして、前記形成された二次電池ケースの容器状の本体部分の内部に正極材料、負極材料、セパレーターを重ねて巻き収納し、さらに、電極材料の正極と負極を、容器状の本体部分の正極と負極にそれぞれ溶接した状態で電解液を注液した後、注液口に蓋をし、波形制御されたパルスレーザによる溶接により封止されることでリチウムイオン二次電池となる。
【0038】
【実施例】
以下に、本発明によるところの実施例について説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
表1に示すような組成を有し、残部がアルミニウム及び不純物から成るアルミニウム合金の鋳塊に均質化処理を施した。その後、熱間圧延し、圧延率を50%として冷間圧延を施し、板厚が0.3mmのアルミニウム合金板を作製した。
【0039】
次に、このようにして作製したアルミニウム合金板に対して、以下の条件により引張試験、電池ケース形状への成形加工試験、溶接試験及び電池ケース封止後の耐圧試験を行った。また、金属間化合物の種類及び数を求めた。
<引張試験>
上記アルミニウム合金板について、引張方向が圧延方向と平行になるようにJIS5号による引張試験片を作製した。その後、JIS Z2241にて引張試験を実施し、引張強さ、耐力及び伸びを求めた。
【0040】
<金属間化合物の種類、大きさ及び数>
前記アルミニウム合金板に所定の表面処理を施した後、EDS(Energy Dispersive Spectrometer;エネルギー分散型分光計)を備えたSEM(倍率=1000倍)により、金属間化合物の種類と大きさ及び数の関係を調査した。これを各アルミニウム合金板について、各々50視野行い、最大長が5μm以上の金属間化合物に関して、その種類及び数を求めた。
【0041】
<成形加工試験>
リチウムイオン二次電池ケースを想定し、側壁のしごき加工率を50%として、縦5mm、横30mm、高さ50mmの角形ケースを成形した。この際、成形可能であったものは成形性が良好であり問題なしとして「○」、割れ又は肌荒れが発生したものは成形性が不良であるとして「×」と評価した。
【0042】
<溶接試験>
上記角形ケースの上部に、同一アルミニウム合金板より成る蓋をパルスレーザで溶接した。溶接部に割れなどの欠陥が見られず健全で、パルス毎のビード形状が一定であるものを「◎」、溶接部に欠陥が見られず健全であるがビード形状が若干乱れているものを「○」、溶接部に割れが発生したもの、あるいは溶質元素の蒸発により周囲を汚染したものを「×」として評価した。
【0043】
<耐圧試験>
角形ケースを封止した後、294KPa(3kg/cm2)の内圧を作用させた状態で、100℃の温度に加熱して2時間保持した後、室温に戻し、その後、ケース側面の膨れの変位量を測定した。この膨れ変位量が0.8mm以下であったものは耐圧性が極めて良好であるとして「◎」、0.8mmを超えて1.0mm以下であったものは耐圧性が良好であるとして「○」、1.0mmを超えたものは不良であるとして「×」とした。
【0044】
以上の評価結果を表2に示す。表2から明らかなように、実施例1〜7の如く組成の範囲を特定することにより、成形加工試験、溶接試験および耐圧試験の各試験結果は、いずれも優れた結果を得ることができ、本発明の目的とするところの、成形加工性、溶接性および耐圧性に優れた二次電池ケース用アルミニウム合金板および二次電池ケース(特に、リチウムイオン二次電池ケース)を得ることができる。また、これら実施例1〜9においては、最大長が5μm以上の金属間化合物のうち、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物の個数が50%以上となっていることがわかる。なお、表1および2中の「−」は未測定或いは検出不能であったことを表す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
表1および2に示すように、比較例1および2では、Siの添加量と、Si/Fe比が本発明で規制する数値範囲の下限値から外れており、また、最大長が5μm以上のAl−Fe−Mn−Si系金属間化合物の個数が50%未満であるので、成形加工性や、特に溶接性が悪く、採用できない。
【0048】
比較例3および4では、Siの添加量が本発明で規制する数値範囲の上限値から外れているため、成形加工性が悪く採用できない。
【0049】
比較例5では、Feの添加量が本発明で規制する数値範囲の上限値から外れており、また、Si/Fe比が本発明で規制する数値範囲の下限値から外れているため、成形加工性が悪く採用できない。
【0050】
比較例6では、Si/Fe比が本発明で規制する数値範囲の下限値から外れており、また、最大長が5μm以上のAl−Fe−Mn−Si系金属間化合物の個数が50%未満であるため、成形加工性や、溶接性が悪く採用できない。
【0051】
比較例7では、Cuの添加量が本発明で規制する数値範囲の下限値から外れているため、耐圧性が悪く採用できない。一方、比較例8では、Cuの添加量が本発明で規制する数値範囲の上限値から外れているため、成形加工性が悪く採用できない。
【0052】
比較例9では、Mnの添加量が本発明で規制する数値範囲の下限値から外れているため、耐圧性が悪く採用できない。一方、比較例10では、Mnの添加量が本発明で規制する数値範囲の上限値から外れているため、成形加工性が悪く採用できない。
【0053】
さらに、比較例11〜14では、Mg、Zn、Cr、Tiの添加量がそれぞれ本発明で規制する数値範囲の上限値から外れているため、溶接性が悪く採用できない。
【0054】
上記から分かるように、Fe、Cu、MnおよびTiの含有量が一定であっても、Siの減少や、Feの増加によって、Si/Fe比が本発明で規制する数値範囲に適さないものとなった場合、得られるアルミニウム合金板の特性が大きく変化した。これらの結果から、Fe、Cu、MnおよびTiの含有量を適切に制御すると共に、Si/Fe比を最適な範囲に調整することが、二次電池ケースとして好適な特性を有するアルミニウム合金板を得るために重要な要件であることが分かった。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る二次電池ケース用アルミニウム合金板及び二次電池ケースは、以下に示す優れた効果を奏するものである。
【0056】
二次電池ケース用アルミニウム合金板は、アルミニウム合金中、成形性の向上に寄与するSiとFe両方の含有量及びSi/Feの比について所定の範囲内に規制することにより適正化し、さらに、強度を高めるために寄与するCu、Mnの含有量を所定の範囲内に規制することにより適正化し、さらに、溶接時に飛散しやすいMg、Znの混入量を規制するとともに、金属間化合物を形成させるCr、Tiの混入量を規制し、かつ、溶接時に溶融しやすいAl−Fe−Mn−Si系金属間化合物の個数を所定値以上とすることで、薄肉化しても、所定の強度と成形性、耐圧性、並びに溶接性に優れた二次電池ケース用アルミニウム合金板が具現化される。また、このような二次電池ケース用アルミニウム合金板を用いて成形された二次電池ケースは、薄肉化しても、所定の強度と成形性、並びに溶接性が良く、溶接割れを生じることがなく耐圧性、安全性、使用寿命において優れたものとなる。
Claims (3)
- Siを0.3乃至0.7質量%、Feを0.2質量%以下であり、且つ、Si/Fe比が3以上とし、更に、Cuを0.4乃至0.9質量%、Mnを0.8乃至1.5質量%を含み、残部がAlと不純物とからなる電池ケース用アルミニウム合金板であって、
前記不純物において、Mgを0.01質量%以下、Znを0.01質量%以下、Crを0.01質量%以下、及びTiを0.03質量%以下となるように制限したことを特徴とする二次電池ケース用アルミニウム合金板。 - 最大長が5μm以上の金属間化合物のうち、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物が50%以上の個数を占めることを特徴とする請求項1に記載の二次電池ケース用アルミニウム合金板。
- 請求項1または2に記載の二次電池ケース用アルミニウム合金板から形成されることを特徴とする二次電池ケース。
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