JPWO2015019600A1 - 生体硬組織修復用硬化性リン酸カルシウム組成物並びに骨修復材料及び各種歯科材料 - Google Patents
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Abstract
本発明は、体内、口腔内などの湿潤環境下における耐久性に優れる硬化物を与える生体硬組織修復用硬化性リン酸カルシウム組成物を提供する。本発明は、リン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)、炭酸カルシウム粒子(C)、及び水(D)を含む生体硬組織修復用硬化性リン酸カルシウム組成物であって、前記リン酸四カルシウム粒子(A)、前記リン酸水素カルシウム粒子(B)及び前記炭酸カルシウム粒子(C)の合計100重量部に対して、前記リン酸四カルシウム粒子(A)を5〜75重量部、前記リン酸水素カルシウム粒子(B)を10〜70重量部、及び前記炭酸カルシウム粒子(C)を2〜50重量部含む生体硬組織修復用硬化性リン酸カルシウム組成物に関する。
Description
本発明は、生体硬組織修復用の硬化性リン酸カルシウム組成物に関する。本発明はまた、当該硬化性リン酸カルシウム組成物を用いた骨修復材料及び各種歯科材料に関する。
リン酸カルシウム粉体を焼結して得られるヒドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)は、骨や歯などの生体硬組織の主成分であり、生体親和性を有していることから、生体硬組織の欠損部や空隙部の修復用材料としての利用が報告されている。しかし、このようなヒドロキシアパタイトを用いた材料は、生体親和性は優れているが、成形性が不十分であるため、複雑な形状を有する修復部位に適用するには困難な場合があった。
一方、リン酸カルシウム組成物の中でもセメントタイプ、即ち硬化性を有するリン酸カルシウム組成物は、生体内や口腔内において生体吸収性のヒドロキシアパタイトへ徐々に転化し、さらに形状を保ったままで生体硬組織と一体化し得ることが知られている。このような硬化性リン酸カルシウム組成物は、生体親和性が優れているだけではなく、成形性を有することから複雑な形状を有する部位への適用が容易であるとされている。
これまでに種々の硬化性リン酸カルシウム組成物が開発されており、例えば、特許文献1には、比表面積が1〜50m2/gのリン酸水素カルシウム無水物粉末及びリン酸水素カルシウム2水和物粉末のうち少なくとも一方を含む速硬性リン酸カルシウムセメントが記載されている。このセメントは液材に酸を添加することなく、水のみ添加して混練しても速やかに硬化し、且つ、圧縮強度が大きいリン酸カルシウム硬化物が得られる。しかしながら、特許文献1に記載の速硬性リン酸カルシウムセメントには、湿潤環境下において硬化物の強度が経時的に低下するという問題があった。
特許文献2には、リン酸四カルシウム粒子及びリン酸水素カルシウム粒子からなるリン酸カルシウム粉体組成物であって、リン酸四カルシウム粒子及びリン酸水素カルシウム粒子の合計100重量部に対し、0.001〜1重量部の水分を含むリン酸カルシウム粉体組成物が記載されている。この組成物によれば、硬化時間が適切な範囲内にあって作業性が良好であり、しかも機械的強度が高いリン酸カルシウム硬化物が得られる。しかしながら、特許文献2に記載のリン酸カルシウム粉体組成物には、湿潤環境下において硬化物の強度が経時的に低下するという点に改善の余地があった。
特許文献3には、追加添加されたカルシウム源と、リンに対するカルシウムのモル比が5/3以下であるリン酸四カルシウム以外のリン酸カルシウム塩を含み、周囲の温度でヒドロキシアパタイトに自己硬化するリン酸カルシウムセメントが記載されている。しかしながら、特許文献3に記載のリン酸カルシウムセメントには、湿潤環境下において硬化物の強度が経時的に低下するという問題があった。
特許文献4には、難溶性リン酸カルシウム粒子、リンを含まないカルシウム化合物、及び、水を含有する象牙細管封鎖剤が記載されている。これによれば、得られたペーストをマイクロブラシを用いて象牙質に対して30秒間擦り込むことで象牙細管が当該封鎖剤によって封鎖され、高い象牙質透過抑制率が得られることが確認されている。しかしながら、特許文献4に記載の象牙細管封鎖剤には、封鎖物の耐久性に改善の余地があった。
特許文献5には、リン酸四カルシウム粒子と、リン酸のアルカリ金属塩と、酸性リン酸カルシウム粒子とを含む粉材と、水を主成分とする液材とを混和し、得られた水系ペーストを象牙質表面に塗布する方法が提案されている。該方法は、高い割合で象牙細管を封鎖することから、疼痛を効果的に抑制することが期待出来る。しかしながら、特許文献5に記載の方法には、封鎖物の耐久性に改善の余地があった。
本発明は、体内、口腔内などの湿潤環境下における耐久性に優れる硬化物を与える生体硬組織修復用硬化性リン酸カルシウム組成物を提供することを目的とするものである。
本発明は、リン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)、炭酸カルシウム粒子(C)、及び水(D)を含む生体硬組織修復用硬化性リン酸カルシウム組成物であって、
前記リン酸四カルシウム粒子(A)、前記リン酸水素カルシウム粒子(B)及び前記炭酸カルシウム粒子(C)の合計100重量部に対して、前記リン酸四カルシウム粒子(A)を5〜75重量部、前記リン酸水素カルシウム粒子(B)を10〜70重量部、及び前記炭酸カルシウム粒子(C)を2〜50重量部含む生体硬組織修復用硬化性リン酸カルシウム組成物である。
前記リン酸四カルシウム粒子(A)、前記リン酸水素カルシウム粒子(B)及び前記炭酸カルシウム粒子(C)の合計100重量部に対して、前記リン酸四カルシウム粒子(A)を5〜75重量部、前記リン酸水素カルシウム粒子(B)を10〜70重量部、及び前記炭酸カルシウム粒子(C)を2〜50重量部含む生体硬組織修復用硬化性リン酸カルシウム組成物である。
本発明の生体硬組織修復用硬化性リン酸カルシウム組成物は、前記リン酸四カルシウム粒子(A)、前記リン酸水素カルシウム粒子(B)及び前記炭酸カルシウム粒子(C)の合計100重量部に対して、さらにリン酸のアルカリ金属塩(E)を0.5〜15重量部含むことが好ましい。前記リン酸のアルカリ金属塩(E)は、リン酸一水素二ナトリウム及びリン酸二水素一ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の生体硬組織修復用硬化性リン酸カルシウム組成物においては、前記リン酸四カルシウム粒子(A)の平均粒径が0.5〜30μmであり、前記リン酸水素カルシウム粒子(B)の平均粒径が0.1〜7.5μmであり、且つ前記炭酸カルシウム粒子(C)の平均粒径が0.1〜30μmであることが好ましい。
本発明の好ましい一実施形態としては、前記リン酸四カルシウム粒子(A)、前記リン酸水素カルシウム粒子(B)及び前記炭酸カルシウム粒子(C)と、前記水(D)の重量比((A+B+C)/D)が、1.8〜5.0である硬化性リン酸カルシウム組成物が挙げられる。前記硬化性リン酸カルシウム組成物を含む当該実施形態は、骨修復材料、歯科用充填修復材、歯科用裏層材、歯科用合着材、歯科用仮封材、歯科用シーラント材、歯科用仮着材、歯科用根管充填材、及び歯科用コーティング材に好適である。
本発明の好ましい別の実施形態としては、前記リン酸四カルシウム粒子(A)、前記リン酸水素カルシウム粒子(B)及び前記炭酸カルシウム粒子(C)と、前記水(D)の重量比((A+B+C)/D)が、0.5〜1.8である硬化性リン酸カルシウム組成物が挙げられる。前記硬化性リン酸カルシウム組成物を含む当該実施形態は、歯科用象牙細管封鎖材に好適である。
本発明によれば、体内、口腔内などの湿潤環境下における耐久性に優れる硬化物を与える生体硬組織修復用硬化性リン酸カルシウム組成物が提供される。よって、体内、口腔内などの湿潤環境下における耐久性に優れる硬化物を与えることができる生体硬組織修復材料(例、骨修復材料、歯科材料)が提供される。
本発明は、リン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)、炭酸カルシウム粒子(C)、及び水(D)を含む生体硬組織修復用硬化性リン酸カルシウム組成物であって、当該硬化性リン酸カルシウム組成物が、リン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)及び炭酸カルシウム粒子(C)の合計100重量部に対して、リン酸四カルシウム粒子(A)を5〜75重量部、リン酸水素カルシウム粒子(B)を10〜70重量部、及び炭酸カルシウム粒子(C)を2〜50重量部含むことを特徴とする。
リン酸四カルシウム粒子(A)及びリン酸水素カルシウム粒子(B)を含有するリン酸カルシウム組成物は、水の存在下で混練すると熱力学的に安定なヒドロキシアパタイトを生成して硬化することが知られている。また、リン酸水素カルシウム粒子(B)及びリンを含まないカルシウム化合物(例えば、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウムなど)を含有するリン酸カルシウム組成物も、水の存在下で混練すると熱力学的に安定なヒドロキシアパタイトを生成して硬化することが知られている。
それに対し本発明者らは、湿潤環境下における耐久性に優れる硬化物を与える硬化性リン酸カルシウム組成物を開発するにあたり、リン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)、炭酸カルシウム粒子(C)及び水(D)を含む組成物について、リン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)及び炭酸カルシウム粒子(C)の合計に対して、リン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)及び炭酸カルシウム粒子(C)を特定の量で配合した場合においてのみ、その硬化物が特異的に湿潤環境下における優れた耐久性を示すことを見出した。後述の実施例及び比較例が示すように、リン酸四カルシウム粒子(A)及びリン酸水素カルシウム粒子(B)のみを組み合わせたリン酸カルシウム組成物では、硬化物の湿潤環境下における耐久性が低い。リン酸水素カルシウム粒子(B)及び炭酸カルシウム粒子(C)又はリンを含まないカルシウム化合物の粒子のみを組み合わせたリン酸カルシウム組成物でも、硬化物の湿潤環境下における耐久性が低い。炭酸カルシウム粒子(C)の代わりに種々のリンを含まないカルシウム化合物の粒子を用いた場合には、十分な硬化性を示さず、また、リン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)及び炭酸カルシウム粒子(C)の配合量が特定の範囲を外れると、十分な硬化性を示さないか、硬化物の湿潤環境下における耐久性が低い。従って、本発明のように、硬化性リン酸カルシウム組成物に、リン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)、及び炭酸カルシウム粒子(C)という特定の成分の組み合わせを用いることがまず重要であり、さらにこれらの配合量が、リン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)及び炭酸カルシウム粒子(C)の合計100重量部に対して、リン酸四カルシウム粒子(A)が5〜75重量部、リン酸水素カルシウム粒子(B)が10〜70重量部、及び炭酸カルシウム粒子(C)が2〜50重量部であることが重要である。
なお、本発明において「湿潤環境下における耐久性」とは、体内、口腔内などの湿潤環境下において強度(特に圧縮強さ)の経時的な低下が小さく、且つ体内、口腔内(酸が発生しやすい)などの湿潤環境下において酸に対する耐性を長期にわたって示す性質のことをいう。
本発明に使用されるリン酸四カルシウム粒子(A)は、特に限定されないが、本発明の組成物が骨修復材料や、充填修復材、裏層材、合着材、仮封材、根管充填材、仮着材、コーティング材、シーラント材等の歯科材料に用いられる場合には、その平均粒径が、0.5〜30μmであることが好ましい。平均粒径が0.5μm未満の場合は、リン酸四カルシウム粒子(A)の溶解が過度となり、水溶液のpHが高くなる。このことにより、ヒドロキシアパタイトの析出が円滑でなくなり、硬化物の耐久性が低下するおそれがある。平均粒径は、好適には3.0μm以上であり、より好適には5.0μm以上である。一方、平均粒径が30μmを超える場合は、水(D)との混合により得られるペーストが十分な粘性を示さない、あるいはざらつき感が大きくなるなどペースト性状が悪くなるおそれがある。平均粒径は、好適には20.0μm以下であり、より好適には15.0μm以下である。ここで、本発明で使用するリン酸四カルシウム粒子(A)の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いた測定より、メディアン径として算出されるものである。
本発明の組成物が象牙細管封鎖材等に用いられる場合には、本発明に使用されるリン酸四カルシウム粒子(A)の平均粒径が、0.5〜10μmであることが好ましい。平均粒径が0.5μm未満の場合は、リン酸四カルシウム粒子(A)の溶解が過度となり、水溶液のpHが高くなる。このことにより、ヒドロキシアパタイトの析出が円滑でなくなり、封鎖物の耐久性が低下するおそれがある。平均粒径は、好適には1.0μm以上であり、より好適には2.0μm以上である。一方、平均粒径が10μmを超える場合は、象牙細管径に対して粒子径が大きくなり過ぎるため、初期の象牙細管封鎖性が低下するおそれがある。平均粒径は、好適には8.0μm以下であり、より好適には6.0μm以下である。
リン酸四カルシウム粒子(A)の製造方法は特に限定されない。市販されているリン酸四カルシウム粒子をそのまま用いてもよいし、適宜粉砕して粒径を整えて使用してもよい。粉砕する際には、ボールミル、ライカイ機、ジェットミルなどの粉砕装置を使用することができる。また、市販のリン酸四カルシウム粒子をアルコールなどの液体の媒体と共にライカイ機、ボールミル等を用いて粉砕してスラリーを調製し、得られたスラリーを乾燥させることによりリン酸四カルシウム粒子(A)を得ることもできる。このときの粉砕装置としては、ボールミルを用いることが好ましく、そのポット及びボールの材質としては、好適にはアルミナやジルコニアが採用される。上記のように粉砕して調製した場合の形状は、通常、不定形の粒子となる。
本発明の硬化性リン酸カルシウム組成物において、リン酸四カルシウム粒子(A)の含有量は、リン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)及び炭酸カルシウム粒子(C)の合計100重量部に対して、5〜75重量部である。5重量部未満の場合、硬化物の初期の性能が低いだけでなく、耐久性も低くなる。リン酸四カルシウム粒子(A)の含有量は、前記した合計100重量部に対して、好適には15重量部以上であり、より好適には25重量部以上である。一方、リン酸四カルシウム粒子(A)が75重量部を超える場合にも、硬化物の初期の性能が低いだけでなく、耐久性も低くなる。リン酸四カルシウム粒子(A)の含有量は、前記した合計100重量部に対して、好適には65重量部以下であり、より好適には55重量部以下である。
本発明に使用されるリン酸水素カルシウム粒子(B)としては特に限定されないが、無水リン酸一水素カルシウム(以下、DCPAと略記することがある)、無水リン酸二水素カルシウム、リン酸一水素カルシウム2水和物、及びリン酸二水素カルシウム1水和物からなる群から選択される少なくとも1種の粒子が好適に使用される。これらの中でも、無水リン酸一水素カルシウム粒子がより好適に使用される。
本発明で使用されるリン酸水素カルシウム粒子(B)の平均粒径は0.1〜7.5μmであることが好ましい。平均粒径が0.1μm未満の場合、水(D)との混合により得られるペーストの粘度が高くなり過ぎるおそれがある。平均粒径としては、より好適には0.5μm以上である。一方、平均粒径が7.5μmを超える場合は、リン酸水素カルシウム粒子(B)が水(D)へ溶解しにくくなるため、リン酸四カルシウム粒子(A)の溶解が過度となり、水溶液のpHが高くなる。このことにより、ヒドロキシアパタイトの析出が円滑でなくなり、硬化物の耐久性が低下するおそれがある。平均粒径は、より好適には5.0μm以下であり、さらに好適には3.0μm以下である。リン酸水素カルシウム粒子(B)の平均粒径は、上記リン酸四カルシウム粒子(A)の平均粒径と同様にして算出される。
リン酸水素カルシウム粒子(B)の製造方法は特に限定されない。市販されているリン酸水素カルシウム粒子をそのまま用いてもよいし、上記したリン酸四カルシウム粒子(A)と同様に適宜粉砕して粒径を整えて使用してもよい。
本発明の硬化性リン酸カルシウム組成物において、リン酸水素カルシウム粒子(B)の含有量は、リン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)及び炭酸カルシウム粒子(C)の合計100重量部に対して、10〜70重量部である。10重量部未満の場合、硬化性が不足して硬化物が得られなくなる。リン酸水素カルシウム粒子(B)の含有量は、前記した合計100重量部に対して、好適には15重量部以上であり、より好適には30重量部以上である。一方、リン酸水素カルシウム粒子(B)が70重量部を超える場合には、硬化物の初期の性能が低いだけでなく、耐久性も低くなる。リン酸水素カルシウム粒子(B)の含有量は、前記した合計100重量部に対して、好適には60重量部以下であり、より好適には50重量部以下である。
炭酸カルシウム粒子(C)は、リン酸カルシウム組成物に、硬化性を維持しつつ耐久性を付与する上で重要な成分である。炭酸カルシウム粒子(C)の代わりに、酸化カルシウム、水酸化カルシウムなどの、リンを含まないカルシウム化合物の粒子を用いた場合には、硬化性が不足して硬化物が得られない。
炭酸カルシウム粒子(C)の平均粒径は、本発明の組成物が骨修復材料や、充填修復材、裏層材、合着材、仮封材、根管充填材、仮着材、コーティング材、シーラント材等の歯科材料に用いられる場合には、0.1〜30μmであることが好ましい。平均粒径が0.1μm未満の場合は、炭酸カルシウム粒子(C)の溶解が過度となり、水溶液のpHが高くなる。このことにより、ヒドロキシアパタイトの析出が円滑でなくなり、硬化物の耐久性が低下するおそれがある。平均粒径は、好適には0.5μm以上であり、より好適には1μm以上である。一方、平均粒径が30μmを超える場合は、水(D)との混合により得られるペーストが十分な粘性を示さない、あるいはざらつき感が大きくなるなどペースト性状が悪くなるおそれがある。平均粒径は、好適には20.0μm以下であり、より好適には15.0μm以下である。炭酸カルシウム粒子(C)の平均粒径は、上記リン酸四カルシウム粒子(A)の平均粒径と同様にして算出される。
炭酸カルシウム粒子(C)の平均粒径は、本発明の組成物が象牙細管封鎖材等に用いられる場合には、0.1〜12μmであることが好ましい。平均粒径が0.1μm未満の場合は、炭酸カルシウム粒子(C)の溶解が過度となり、水溶液のpHが高くなる。このことにより、ヒドロキシアパタイトの析出が円滑でなくなり、硬化物の耐久性が低下するおそれがある。平均粒径は、好適には0.5μm以上であり、より好適には1.0μm以上である。一方、平均粒径が12μmを超える場合は、象牙細管径に対して粒子径が大きくなり過ぎるため、象牙細管封鎖性が低下するおそれがある。平均粒径は、好適には8.0μm以下であり、より好適には5.0μm以下である。
炭酸カルシウム粒子(C)の製造方法は特に限定されない。市販されている炭酸カルシウム粒子をそのまま用いてもよいし、上記したリン酸四カルシウム粒子(A)と同様に適宜粉砕して粒径を整えて使用してもよい。
本発明の硬化性リン酸カルシウム組成物において、炭酸カルシウム粒子(C)の含有量は、リン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)及び炭酸カルシウム粒子(C)の合計100重量部に対して、2〜50重量部である。2重量部未満の場合、硬化物の初期の性能が低いだけでなく、耐久性も低くなる。炭酸カルシウム粒子(C)の含有量は、前記した合計100重量部に対して、好適には3.5重量部以上であり、より好適には5重量部以上である。一方、炭酸カルシウム粒子(C)が50重量部を超える場合には、硬化性が不足して硬化物が得られない。炭酸カルシウム粒子(C)の含有量は、前記した合計100重量部に対して、好適には40重量部以下であり、より好適には35重量部以下である。
本発明で使用される水(D)は、硬化性リン酸カルシウム組成物が硬化するために必要不可欠な成分である。硬化性リン酸カルシウム組成物の硬化の機序は、リン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)及び炭酸カルシウム粒子(C)と水(D)とが反応して、ヒドロキシアパタイトの析出を伴いながら硬化する。
本発明の組成物が骨修復材料や、充填修復材、裏層材、合着材、仮封材、根管充填材、仮着材、コーティング材、シーラント材等の歯科材料などに使用される場合、ペーストに含まれるリン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)及び炭酸カルシウム粒子(C)と、水(D)の重量比((A+B+C)/D)は、1.8〜5.0であることが好ましい。前記重量比((A+B+C)/D)が1.8未満の場合には、リン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)及び炭酸カルシウム粒子(C)がペースト中に少なすぎるため耐久性が低下する(特に強度が経時劣化する)おそれがある。前記重量比((A+B+C)/D)は、2.3以上がより好ましく、2.8以上がさらに好ましい。一方、重量比((A+B+C)/D)が5.0を超える場合には、リン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)及び炭酸カルシウム粒子(C)が多すぎて、ペーストが均一に混和できず操作性が低下するおそれがある。前記重量比((A+B+C)/D)は、4.5以下がより好ましく、4.0以下がさらに好ましい。
本発明の組成物が象牙細管封鎖材などに使用される場合、ペーストに含まれるリン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)及び炭酸カルシウム粒子(C)と、水(D)の重量比((A+B+C)/D)は、0.5〜1.8であることが好ましい。前記重量比((A+B+C)/D)が0.5未満の場合には、リン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)及び炭酸カルシウム粒子(C)がペースト中に少なすぎるため初期の象牙細管封鎖性が低下するおそれがある。前記重量比((A+B+C)/D)は、0.6以上がより好ましく、0.7以上がさらに好ましい。一方、前記重量比((A+B+C)/D)が1.8を超える場合には、リン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)及び炭酸カルシウム粒子(C)が多すぎて、ペーストを患部に上手く塗布できず操作性及び象牙細管封鎖材に要求される耐酸性が低下するおそれがある。重量比((A+B+C)/D)は1.7以下がより好ましく、1.6以下がさらに好ましい。
本発明の硬化性リン酸カルシウム組成物は、初期性能と硬化物の耐久性の観点から、さらにリン酸のアルカリ金属塩(E)を含むことが好ましい。本発明で用いられるリン酸のアルカリ金属塩(E)としては特に限定されず、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸一水素二カリウム、リン酸二水素一リチウム、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸二水素一カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、及びこれらの水和物等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上が用いられる。中でも、安全性や純度の高い原料が容易に入手できる観点から、リン酸のアルカリ金属塩(E)がリン酸一水素二ナトリウム及びリン酸二水素一ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
リン酸のアルカリ金属塩(E)の平均粒径は、1.0〜20μmであることが好ましい。リン酸のアルカリ金属塩(E)の平均粒径が1.0μm未満の場合、組成物中での溶解が速過ぎてリン酸イオン濃度が高くなるため、カルシウムイオンとリン酸イオンの供給バランスが崩れ、ヒドロキシアパタイトの析出速度が低下するおそれがある。さらには、リン酸のアルカリ金属塩(E)粒子同士の二次凝集が発生し、同時に混合する他の粒子との分散性が低下するおそれがある。リン酸のアルカリ金属塩(E)の平均粒径は、より好適には3.0μm以上である。一方、リン酸のアルカリ金属塩(E)の平均粒径が20μmを超える場合、リン酸のアルカリ金属塩(E)が組成物中で溶解しにくくなり、ヒドロキシアパタイトの析出速度が低下するおそれがある。リン酸のアルカリ金属塩(E)の平均粒径は、より好適には15.0μm以下である。リン酸のアルカリ金属塩(E)の平均粒径は、上記リン酸四カルシウム粒子(A)の平均粒径と同様にして算出される。
本発明の硬化性リン酸カルシウム組成物において、リン酸のアルカリ金属塩(E)の含有量は、リン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)及び炭酸カルシウム粒子(C)の合計100重量部に対して、0.5〜15重量部である。0.5重量部未満の場合、リン酸のアルカリ金属塩(E)を配合しても硬化物の性能は向上せず、配合の効果が認められない。リン酸のアルカリ金属塩(E)の含有量は、前記した合計100重量部に対して、好適には1重量部以上であり、より好適には2重量部以上である。一方、リン酸のアルカリ金属塩(E)の含有量が15重量部を超える場合に、硬化物の初期の性能が低くなる。リン酸のアルカリ金属塩(E)は、前記した合計100重量部に対して、好適には10重量部以下であり、より好適には7重量部以下である。
リン酸のアルカリ金属塩(E)の製造方法は特に限定されない。市販されているリン酸のアルカリ金属塩をそのまま用いてもよいし、上記したリン酸四カルシウム粒子(A)と同様に適宜粉砕して粒径を整えて使用してもよい。
本発明の硬化性リン酸カルシウム組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、リン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)、炭酸カルシウム粒子(C)、水(D)及びリン酸のアルカリ金属塩(E)以外の成分を含有しても構わない。例えば、フッ素化合物、シリカ粒子、増粘剤、X線造影剤等を配合することができる。
上記フッ素化合物としては特に限定されず、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化銅、フッ化ジルコニウム、フッ化アルミニウム、フッ化スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム、フッ化水素酸、フッ化チタンナトリウム、フッ化チタンカリウム、ヘキシルアミンハイドロフルオライド、ラウリルアミンハイドロフルオライド、グリシンハイドロフルオライド、アラニンハイドロフルオライド、フルオロシラン類、フッ化ジアミン銀等が挙げられる。中でも安全性の観点からフッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズが好適に用いられる。
上記シリカ粒子は、粉体同士の凝集を防ぎ、組成物の取り扱い性を良好に保つことができる。シリカ粒子は特に限定されないが、平均粒径は、0.002〜2.0μmであることが好ましい。シリカ粒子の平均粒径が0.002μm未満の場合、ペーストの粘度が高くなり取り扱い性が悪化するおそれがある。平均粒径としては、好適には0.003μm以上であり、より好適には0.005μm以上である。一方、シリカ粒子の平均粒径が2.0μmを超える場合、粉体同士の凝集抑制効果が低下するおそれがある。平均粒径としては、好適には0.5μm以下であり、より好適には0.2μm以下である。シリカ粒子の平均粒径は、エポキシ樹脂中に分散させた一次粒子の写真を透過型電子顕微鏡を用いて撮影し、任意に選択した100個以上の一次粒子の粒径を測定し、その算術平均として算出される。
上記増粘剤としては特に限定されず、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリグルタミン酸、ポリグルタミン酸塩、ポリアスパラギン酸、ポリアスパラギン酸塩、ポリLリジン、ポリLリジン塩、セルロース以外のデンプン、アルギン酸、アルギン酸塩、カラギーナン、グアーガム、キタンサンガム、セルロースガム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、ペクチン、ペクチン塩、キチン、キトサン等の多糖類、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の酸性多糖類エステル、またコラーゲン、ゼラチン及びこれらの誘導体などのタンパク質類等の高分子などから選択される1つ又は2つ以上が挙げられるが、水への溶解性及び粘性の面からはカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸、アルギン酸塩、キトサン、ポリグルタミン酸、及びポリグルタミン酸塩から選択される少なくとも1つが好ましい。
上記X線造影剤としては特に限定されず、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、フッ化イッテルビウム、ヨードホルム、バリウムアパタイト、チタン酸バリウム、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス等から選択される1つ又は2つ以上が挙げられる。
また、必要に応じて、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジグリセリン等の多価アルコール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等の糖アルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテル、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、カンゾウ抽出液、サッカリン、サッカリンナトリウム等の人工甘味料などを加えてもよい。さらに、薬理学的に許容できるあらゆる薬剤等を配合することができる。セチルピリジニウムクロリド等に代表される抗菌剤、消毒剤、抗癌剤、抗生物質、アクトシン、PEG1などの血行改善薬、bFGF、PDGF、BMPなどの増殖因子、骨芽細胞、象牙芽細胞、さらに未分化な骨髄由来幹細胞、胚性幹(ES)細胞、線維芽細胞等の分化細胞を遺伝子導入により脱分化・作製した人工多能性幹(iPS:induced Pluripotent Stem)細胞並びにこれらを分化させた細胞など硬組織形成を促進させる細胞などを配合させることができる。
本発明の硬化性リン酸カルシウム組成物はペースト状態で使用される。本発明の硬化性リン酸カルシウム組成物は、製品形態として、分包されていてもよい。例えば、硬化性リン酸カルシウム組成物は、粉材と液材、ペーストとペースト、粉材とペースト、液材とペースト等の組み合わせとして分包されたキットの製品形態であってよい。
粉材の混合方法は特に限定されない。例えば、ライカイ機、ボールミルなどの容器駆動型ミル、もしくは回転羽を底部に有する高速回転ミルなどを用いて混合することにより得ることができる。好適には高速回転ミルが使用される。
ペーストの調製方法は特に限定されない。例えば、二軸型混練機、三軸型混練機、もしくは遊星型混練機などを用いて混合することにより得ることができる。
液材の調製方法は特に限定されない。例えば、分散機、攪拌機などを用いて混合することにより得ることができる。
本発明の生体硬組織修復用硬化性リン酸カルシウム組成物によれば、体内、口腔内などの湿潤環境下において、強度の経時的な低下が小さく、酸に対する耐性を長期にわたって示す、すなわち耐久性に優れる硬化物を与えることができる。よって生体硬組織の修復治療の効果を長期にわたって持続させることができる。また、本発明の硬化性リン酸カルシウム組成物は、良好なペースト性状と適切な硬化性を有し、良好な操作性を有する。また、本発明の硬化性リン酸カルシウム組成物は短期間のうちにヒドロキシアパタイトに転化し、適用された部位で生体硬組織との一体化が起こることから生体親和性に優れている。
したがって、本発明の硬化性リン酸カルシウム組成物は、骨修復材料、歯科材料などの生体硬組織修復材料として好適に使用することができる。骨修復材料としては、骨補填材、骨セメントなどが挙げられる。歯科材料としては、(歯質の窩洞や欠損部に充填して使用される)充填修復材、裏層材、合着材、仮封材、根管充填材、仮着材、コーティング材、シーラント材、象牙細管封鎖材などが挙げられる。
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた態様を含む。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
[平均粒径の測定方法]
本実施例においてリン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)、4炭酸カルシウム粒子(C)及びリン酸のアルカリ金属塩(E)の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製「SALD−2100型」)を用いて粒度分布を測定し、測定の結果から算出されるメディアン径として求めた。
本実施例においてリン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)、4炭酸カルシウム粒子(C)及びリン酸のアルカリ金属塩(E)の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製「SALD−2100型」)を用いて粒度分布を測定し、測定の結果から算出されるメディアン径として求めた。
[各成分の調製]
(1)リン酸四カルシウム粒子(A)の調製
リン酸四カルシウム粒子(A)として本実施例で使用するリン酸四カルシウム粒子(平均粒径:3.2μm、5.2μm、8.8μm)は、太平化学産業社製品をそのまま使用した。
(1)リン酸四カルシウム粒子(A)の調製
リン酸四カルシウム粒子(A)として本実施例で使用するリン酸四カルシウム粒子(平均粒径:3.2μm、5.2μm、8.8μm)は、太平化学産業社製品をそのまま使用した。
リン酸四カルシウム粒子(平均粒径25.8μm)は、以下の通りに調製した。市販の無水リン酸一水素カルシウム粒子(Product No.1430,J.T.Baker Chemical Co.社製)及び炭酸カルシウム(Product No.1288,J.T.Baker Chemical Co.社製)を等モルとなるように水中に加え、1時間撹拝した後、ろ過して乾燥を行った。得られたケーキ状の等モル混合物を、電気炉(FUS732PB,アドバンテック東洋社製)中で1500℃、24時間加熱し、その後デシケータ中で室温まで冷却することでリン酸四カルシウム塊を調製した。得られたリン酸四カルシウム塊を、さらに乳鉢中で荒く砕き、その後箭がけを行うことで微粉及びリン酸四カルシウム塊を除き、0.5〜3mmの範囲に粒度を整え、粗リン酸四カルシウムを得た。この粗リン酸四カルシウム100g、及び直径が20mmのジルコニアボール300gを400mlのアルミナ製粉砕ポット(ニッカトー社製「TypeA−3HDポットミル」)中に加え、200rpmの回転速度で2.5時間粉砕することで得た。
リン酸四カルシウム粒子(平均粒径1.1μm)は、以下の通りに調製した。市販のリン酸四カルシウム粒子(太平化学産業株式会社製、平均粒径5.2μm)50g、95%エタノール(和光純薬工業株式会社製「Ethanol(95)」)120g、及び直径が10mmのジルコニアボール240gを400mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type A−3 HDポットミル」)中に加え、120rpmの回転速度で24時間湿式粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロータリーエバポレータでエタノールを留去した後60℃で6時間乾燥させ、さらに60℃で24時間真空乾燥することで得た。
(2)リン酸水素カルシウム粒子(B)の調製
リン酸水素カルシウム粒子(B)の一例として本実施例で使用する無水リン酸水素カルシウム粒子(平均粒径:1.1μm)は、市販の無水リン酸水素カルシウム粒子(太平化学産業株式会社製、平均粒径10.1μm)50g、95%エタノール(和光純薬工業株式会社製「Ethanol(95)」)120g、及び直径が10mmのジルコニアボール240gを400mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type A−3 HDポットミル」)中に加え、120rpmの回転速度で24時間湿式粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロータリーエバポレータでエタノールを留去した後60℃で6時間乾燥させ、さらに60℃で24時間真空乾燥することで得た。
リン酸水素カルシウム粒子(B)の一例として本実施例で使用する無水リン酸水素カルシウム粒子(平均粒径:1.1μm)は、市販の無水リン酸水素カルシウム粒子(太平化学産業株式会社製、平均粒径10.1μm)50g、95%エタノール(和光純薬工業株式会社製「Ethanol(95)」)120g、及び直径が10mmのジルコニアボール240gを400mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type A−3 HDポットミル」)中に加え、120rpmの回転速度で24時間湿式粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロータリーエバポレータでエタノールを留去した後60℃で6時間乾燥させ、さらに60℃で24時間真空乾燥することで得た。
無水リン酸水素カルシウム粒子(平均粒径:5.0μm)は、市販の無水リン酸水素カルシウム粒子(和光純薬工業社製、平均粒径10.2μm)50g、95%エタノール240g、及び直径が10mmのジルコニアボール480gを1000mlのアルミナ製粉砕ポット(ニッカトー社製「HD−B−104 ポットミル」)中に加え、1500rpmの回転速度で7時間湿式振動粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロータリーエバポレータでエタノールを留去した後60℃で6時間乾燥させ、さらに60℃で24時間真空乾燥することで得た。
無水リン酸水素カルシウム粒子(平均粒径:0.3μm)は、市販の無水リン酸水素カルシウム粒子(和光純薬工業社製、平均粒径10.2μm)50g、95%エタノール240g、及び直径が10mmのジルコニアボール480gを1000mlのアルミナ製粉砕ポット(ニッカトー社製「HD−B−104 ポットミル」)中に加え、1500rpmの回転速度で40時間湿式振動粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロータリーエバポレータでエタノールを留去した後60℃で6時間乾燥させ、さらに60℃で24時間真空乾燥することで得た。
(3)炭酸カルシウム粒子(C)の調製
本実施例で使用する炭酸カルシウム(平均粒径:2.6μm)は、矢橋工業社製品をそのまま使用した。
本実施例で使用する炭酸カルシウム(平均粒径:2.6μm)は、矢橋工業社製品をそのまま使用した。
本実施例で使用する炭酸カルシウム(平均粒径:25.4μm)は、神島化学工業社製品をそのまま使用した。
炭酸カルシウム(平均粒径:10.2μm)は、市販の炭酸カルシウム粒子(神島化学工業社製、平均粒径25.4μm)50g、95%エタノール240g、及び直径が10mmのジルコニアボール480gを1000mlのアルミナ製粉砕ポット(ニッカトー社製「HD−B−104 ポットミル」)中に加え、1500rpmの回転速度で5時間湿式振動粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロータリーエバポレータでエタノールを留去した後60℃で6時間乾燥させ、さらに60℃で24時間真空乾燥することで得た。
本実施例で使用する炭酸カルシウム(平均粒径:0.5μm)は、市販の炭酸カルシウム粒子(神島化学工業社製、平均粒径25.4μm)50g、95%エタノール240g、及び直径が10mmのジルコニアボール480gを1000mlのアルミナ製粉砕ポット(ニッカトー社製「HD−B−104 ポットミル」)中に加え、1500rpmの回転速度で35時間湿式振動粉砕を行うことで得られたスラリーを、ロータリーエバポレータでエタノールを留去した後60℃で6時間乾燥させ、さらに60℃で24時間真空乾燥することで得た。
(4)リン酸のアルカリ金属塩(E)の調製
リン酸のアルカリ金属塩(E)の一例として本実施例で使用するリン酸一水素二ナトリウム粒子(平均粒径:5.2μm)は、市販のリン酸一水素二ナトリウム(和光純薬工業社製)をナノジェットマイザー(NJ−100型、アイシンナノテクノロジー社製)で、粉砕圧力条件を原料供給圧:0.7MPa/粉砕圧:0.7MPa、処理量条件を8kg/hrとし、1回処理することにより得た。
リン酸のアルカリ金属塩(E)の一例として本実施例で使用するリン酸一水素二ナトリウム粒子(平均粒径:5.2μm)は、市販のリン酸一水素二ナトリウム(和光純薬工業社製)をナノジェットマイザー(NJ−100型、アイシンナノテクノロジー社製)で、粉砕圧力条件を原料供給圧:0.7MPa/粉砕圧:0.7MPa、処理量条件を8kg/hrとし、1回処理することにより得た。
比較例で用いた水酸化カルシウム、酸化カルシウム、珪酸カルシウム、硝酸カルシウム、シュウ酸カルシウムは、和光純薬社製品をそのまま使用した。
[粉材(X)の調製]
表1〜3及び5〜7に示す組成で秤量したリン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)、炭酸カルシウム粒子(C)及び任意のリン酸のアルカリ金属塩(E)を高速回転ミル(アズワン社製「SM−1」)中に加え、1000rpmの回転速度で3分間混合することで、粉材(X)を得た。
表1〜3及び5〜7に示す組成で秤量したリン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)、炭酸カルシウム粒子(C)及び任意のリン酸のアルカリ金属塩(E)を高速回転ミル(アズワン社製「SM−1」)中に加え、1000rpmの回転速度で3分間混合することで、粉材(X)を得た。
[液材(Y)の調製]
リン酸のアルカリ金属塩(E)を使用する液材(Y)については、表3及び7に示す組成で秤量したリン酸のアルカリ金属塩(E)と水(D)をビーカー中に加え、マグネティックスターラーで1時間攪拌することで、液材(Y)を得た。
リン酸のアルカリ金属塩(E)を使用する液材(Y)については、表3及び7に示す組成で秤量したリン酸のアルカリ金属塩(E)と水(D)をビーカー中に加え、マグネティックスターラーで1時間攪拌することで、液材(Y)を得た。
[ペースト(V)の調製]
表4に示す組成で秤量したリン酸四カルシウム粒子(A)、炭酸カルシウム粒子(C)、任意のリン酸のアルカリ金属塩(E)及び水(D)を万能混合攪拌機(ダルトン社製「STM−08」)中に加え、自転130rpm、公転37rpmの回転速度で60分間混合することで、ペースト(V)を得た。
表4に示す組成で秤量したリン酸四カルシウム粒子(A)、炭酸カルシウム粒子(C)、任意のリン酸のアルカリ金属塩(E)及び水(D)を万能混合攪拌機(ダルトン社製「STM−08」)中に加え、自転130rpm、公転37rpmの回転速度で60分間混合することで、ペースト(V)を得た。
[ペースト(W)の調製]
表4に示す組成で秤量したリン酸水素カルシウム粒子(B)、任意のリン酸のアルカリ金属塩(E)及び水(D)を万能混合攪拌機(ダルトン社製「STM−08」)中に加え、自転130rpm、公転37rpmの回転速度で60分間混合することで、ペースト(W)を得た。
表4に示す組成で秤量したリン酸水素カルシウム粒子(B)、任意のリン酸のアルカリ金属塩(E)及び水(D)を万能混合攪拌機(ダルトン社製「STM−08」)中に加え、自転130rpm、公転37rpmの回転速度で60分間混合することで、ペースト(W)を得た。
[圧縮強さ試験]
(1)圧縮強さ測定用サンプルの調製
直径が6mm、深さが3mmの分割可能なステンレス製のモールドを平滑なガラス板上に載せ、気体を含ませないように注意しながらペースト状の歯科用硬化性リン酸カルシウム組成物を充填し、上部より平滑なガラス板で圧縮することで組成物ペーストを円柱状に成型した(n=5)。その後、37℃、相対湿度100%の環境で24時間インキュベートした後、上記モールドより硬化物を取り出し、同じく37℃の蒸留水150ml中に浸漬し、さらに24時間保持した(初期サンプル)。経時的な劣化を評価するために、初期サンプルを70℃の蒸留水150ml中に浸漬し7日間保持した(70℃7日後サンプル)。
(1)圧縮強さ測定用サンプルの調製
直径が6mm、深さが3mmの分割可能なステンレス製のモールドを平滑なガラス板上に載せ、気体を含ませないように注意しながらペースト状の歯科用硬化性リン酸カルシウム組成物を充填し、上部より平滑なガラス板で圧縮することで組成物ペーストを円柱状に成型した(n=5)。その後、37℃、相対湿度100%の環境で24時間インキュベートした後、上記モールドより硬化物を取り出し、同じく37℃の蒸留水150ml中に浸漬し、さらに24時間保持した(初期サンプル)。経時的な劣化を評価するために、初期サンプルを70℃の蒸留水150ml中に浸漬し7日間保持した(70℃7日後サンプル)。
(2)圧縮強さの測定
上記(1)の初期サンプル及び70℃7日後サンプルの圧縮強さ(MPa)を、JIS T 6609−1に記載された方法に準じて、力学的強度測定装置(株式会社島津製作所製「AG−1 100kN」)を使用し、円柱状の硬化物の軸方向に0.75mm/minの速度で荷重をかけて測定した(n=5)。
下記表中、初期圧縮強さは初期サンプルの圧縮強さを表し、70℃1週間後圧縮強さは70℃7日後サンプルの圧縮強さを表す。圧縮強さ減少率は、以下の式で算出した。
圧縮強さ減少率(%)=100−{〔70℃1週間後圧縮強さ/初期圧縮強さ〕×100}
上記(1)の初期サンプル及び70℃7日後サンプルの圧縮強さ(MPa)を、JIS T 6609−1に記載された方法に準じて、力学的強度測定装置(株式会社島津製作所製「AG−1 100kN」)を使用し、円柱状の硬化物の軸方向に0.75mm/minの速度で荷重をかけて測定した(n=5)。
下記表中、初期圧縮強さは初期サンプルの圧縮強さを表し、70℃1週間後圧縮強さは70℃7日後サンプルの圧縮強さを表す。圧縮強さ減少率は、以下の式で算出した。
圧縮強さ減少率(%)=100−{〔70℃1週間後圧縮強さ/初期圧縮強さ〕×100}
[操作性(I)試験]
(1)操作性
表1〜3に示す組成からなる粉材0.1gを精秤し、この上に表1〜3に示す組成からなる液材を表1〜3に示す粉液重量比になるよう加え練和紙(85×115mm)上で練和することでペーストを調製した。その練和時間とペースト性状について、以下の評価基準に従い操作性を評価した。
(1)操作性
表1〜3に示す組成からなる粉材0.1gを精秤し、この上に表1〜3に示す組成からなる液材を表1〜3に示す粉液重量比になるよう加え練和紙(85×115mm)上で練和することでペーストを調製した。その練和時間とペースト性状について、以下の評価基準に従い操作性を評価した。
(2)操作性の評価基準
A:粉材と液材の練和時のなじみが良く、歯科用練和棒による30秒間の練和によりペーストを得ることができる。得られたペーストの伸びは良い。
B:粉材と液材の練和時のなじみが少し悪いが、歯科用練和棒による30秒間の練和によりペーストを得ることはできる。Aよりも、ペーストの伸びが若干劣る。
C:粉材と液材の練和時のなじみが悪く、ペーストを得るのに歯科用練和棒での練和に60秒を要する。また、ペーストのざらつきがやや大きくなる。
D:粉材と液材の練和時のなじみが悪く、ペーストを得るのに歯科用練和棒での練和に60秒を超える時間を要する、又は練和することができない。練和できた場合、ペーストの伸びも悪く2分以内に練和紙上で硬化し操作時間を確保できない。
なお、A〜Cが実使用レベルである。
A:粉材と液材の練和時のなじみが良く、歯科用練和棒による30秒間の練和によりペーストを得ることができる。得られたペーストの伸びは良い。
B:粉材と液材の練和時のなじみが少し悪いが、歯科用練和棒による30秒間の練和によりペーストを得ることはできる。Aよりも、ペーストの伸びが若干劣る。
C:粉材と液材の練和時のなじみが悪く、ペーストを得るのに歯科用練和棒での練和に60秒を要する。また、ペーストのざらつきがやや大きくなる。
D:粉材と液材の練和時のなじみが悪く、ペーストを得るのに歯科用練和棒での練和に60秒を超える時間を要する、又は練和することができない。練和できた場合、ペーストの伸びも悪く2分以内に練和紙上で硬化し操作時間を確保できない。
なお、A〜Cが実使用レベルである。
[象牙細管封鎖率試験]
(1)牛歯ディスクの作製
健全牛歯切歯の頬側中央を耐水研磨紙で80番、1000番の順に研磨して象牙質を露出し、直径約7mm、厚さ2mmのディスク状にした。この牛歯研磨面をさらにラッピングフィルム(住友スリーエム社製)で1200番、3000番、8000番の順に研磨した。次いで、0.5M EDTA溶液(和光純薬工業株社製)の5倍希釈溶液に30秒間浸漬後、60秒間水洗し、10%次亜塩素酸ナトリウム溶液(ネオクリーナー「セキネ」、ネオ製薬工業社製)を60秒間作用させた後、60秒間水洗した。
(1)牛歯ディスクの作製
健全牛歯切歯の頬側中央を耐水研磨紙で80番、1000番の順に研磨して象牙質を露出し、直径約7mm、厚さ2mmのディスク状にした。この牛歯研磨面をさらにラッピングフィルム(住友スリーエム社製)で1200番、3000番、8000番の順に研磨した。次いで、0.5M EDTA溶液(和光純薬工業株社製)の5倍希釈溶液に30秒間浸漬後、60秒間水洗し、10%次亜塩素酸ナトリウム溶液(ネオクリーナー「セキネ」、ネオ製薬工業社製)を60秒間作用させた後、60秒間水洗した。
(2)人工唾液の調製
塩化ナトリウム(8.77g、150mmol)、リン酸二水素一カリウム(122mg、0.9mmol)、塩化カルシウム(166mg、1.5mmol)、Hepes(4.77g、20mmol)をそれぞれ秤量皿に量り取り、約800mlの蒸留水を入れた2000mlビーカーに攪拌下に順次加えた。溶質が完全に溶解したことを確認した後、この溶液の酸性度をpHメーター(F55、堀場製作所)で測定しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液を適下し、pH7.0とした。
塩化ナトリウム(8.77g、150mmol)、リン酸二水素一カリウム(122mg、0.9mmol)、塩化カルシウム(166mg、1.5mmol)、Hepes(4.77g、20mmol)をそれぞれ秤量皿に量り取り、約800mlの蒸留水を入れた2000mlビーカーに攪拌下に順次加えた。溶質が完全に溶解したことを確認した後、この溶液の酸性度をpHメーター(F55、堀場製作所)で測定しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液を適下し、pH7.0とした。
(3)象牙細管の封鎖と酸浸漬
上記(1)で得られた牛歯ディスクの頬側象牙質表面上に、ペースト状の象牙細管封鎖材を0.1g採取し、マイクロブラシレギュラー(マイクロブラシ社製)を用いて、象牙質処理面中央部の直径5mmの範囲に30秒間すり込んだ。その後、牛歯ディスク表面の象牙細管封鎖材のペーストを蒸留水で除去し、上記(2)で得られた人工唾液に37℃、24時間浸漬してSEM観察用の試験片(A)を得た。酸浸漬後の象牙細管封鎖率を評価する際には、上記の象牙細管封鎖材で処理し、人工唾液に37℃、24時間浸漬した牛歯ディスクを、0.1M乳酸緩衝液(pH=4.75)が30mL入った個別の容器に象牙細管封鎖材処理面を上向きにして37℃、10分間水平に浸漬した。その後、蒸留水で牛歯ディスクを水洗後、人工唾液に37℃にて浸漬した。酸浸漬のサイクルは1日1回として、上記作業を14日間繰り返してSEM観察用の試験片(B)を得た。
上記(1)で得られた牛歯ディスクの頬側象牙質表面上に、ペースト状の象牙細管封鎖材を0.1g採取し、マイクロブラシレギュラー(マイクロブラシ社製)を用いて、象牙質処理面中央部の直径5mmの範囲に30秒間すり込んだ。その後、牛歯ディスク表面の象牙細管封鎖材のペーストを蒸留水で除去し、上記(2)で得られた人工唾液に37℃、24時間浸漬してSEM観察用の試験片(A)を得た。酸浸漬後の象牙細管封鎖率を評価する際には、上記の象牙細管封鎖材で処理し、人工唾液に37℃、24時間浸漬した牛歯ディスクを、0.1M乳酸緩衝液(pH=4.75)が30mL入った個別の容器に象牙細管封鎖材処理面を上向きにして37℃、10分間水平に浸漬した。その後、蒸留水で牛歯ディスクを水洗後、人工唾液に37℃にて浸漬した。酸浸漬のサイクルは1日1回として、上記作業を14日間繰り返してSEM観察用の試験片(B)を得た。
(4)SEM観察
上記(3)で得られた試験片(A)及び(B)を、室温、減圧下で1時間乾燥し、金属蒸着処理した後、象牙細管封鎖材処理面上の任意の3点を、走査型電子顕微鏡(S−3500N、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて倍率3000倍で観察した。各観察視野内の象牙細管封鎖率を下記式に従って計算し、3点の値を平均した。試験はn=5で行い、各試験で得られた値を平均して、象牙細管封鎖率とした。試験片(A)の象牙細管封鎖率を下記表で、象牙細管封鎖率(初期)として示す。試験片(B)の象牙細管封鎖率を下記表で、象牙細管封鎖率(酸浸漬後)として示す。
象牙細管封鎖率(%)={(封鎖された象牙細管の数)/(象牙細管の数)}×100
下記表において、象牙細管封鎖率の減少率は、以下の式で算出した。
象牙細管封鎖率の減少率(%)=100−{〔象牙細管封鎖率(酸浸漬後)/象牙細管封鎖率(初期)〕×100}
上記(3)で得られた試験片(A)及び(B)を、室温、減圧下で1時間乾燥し、金属蒸着処理した後、象牙細管封鎖材処理面上の任意の3点を、走査型電子顕微鏡(S−3500N、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて倍率3000倍で観察した。各観察視野内の象牙細管封鎖率を下記式に従って計算し、3点の値を平均した。試験はn=5で行い、各試験で得られた値を平均して、象牙細管封鎖率とした。試験片(A)の象牙細管封鎖率を下記表で、象牙細管封鎖率(初期)として示す。試験片(B)の象牙細管封鎖率を下記表で、象牙細管封鎖率(酸浸漬後)として示す。
象牙細管封鎖率(%)={(封鎖された象牙細管の数)/(象牙細管の数)}×100
下記表において、象牙細管封鎖率の減少率は、以下の式で算出した。
象牙細管封鎖率の減少率(%)=100−{〔象牙細管封鎖率(酸浸漬後)/象牙細管封鎖率(初期)〕×100}
[操作性(II)試験]
(1)操作性
表5〜7に示す組成からなるペースト0.1gを精秤し、マイクロブラシレギュラー(マイクロブラシ社)を用いて歯顎模型上の人工歯に塗布した。その塗布性について、以下の評価基準に従い評価した。
(1)操作性
表5〜7に示す組成からなるペースト0.1gを精秤し、マイクロブラシレギュラー(マイクロブラシ社)を用いて歯顎模型上の人工歯に塗布した。その塗布性について、以下の評価基準に従い評価した。
(2)操作性の評価基準
A:マイクロブラシレギュラーによって1歯あたり30秒以内に容易に塗布できる。さらに塗布時にペーストが垂れることなく歯面に良好に保持されている。
B:マイクロブラシレギュラーによって1歯あたり30秒以内に塗布できるが、ペーストの伸びが悪くやや塗布しづらい。或いは、ペーストがやや柔らかく塗布時にペーストが若干垂れやすい。
C:ペーストが硬いためマイクロブラシレギュラーによって1歯あたり30秒超〜60秒で塗布できる。或いは、ペーストが柔らかく塗布時にペーストが垂れやすい。
D:ペーストが硬すぎてマイクロブラシレギュラーによって1歯あたり60秒を超える塗布時間を要する。或いは、ペーストが柔らかすぎてペーストが直ぐに垂れて塗布できない。
なお、A〜Cが実使用レベルである。
A:マイクロブラシレギュラーによって1歯あたり30秒以内に容易に塗布できる。さらに塗布時にペーストが垂れることなく歯面に良好に保持されている。
B:マイクロブラシレギュラーによって1歯あたり30秒以内に塗布できるが、ペーストの伸びが悪くやや塗布しづらい。或いは、ペーストがやや柔らかく塗布時にペーストが若干垂れやすい。
C:ペーストが硬いためマイクロブラシレギュラーによって1歯あたり30秒超〜60秒で塗布できる。或いは、ペーストが柔らかく塗布時にペーストが垂れやすい。
D:ペーストが硬すぎてマイクロブラシレギュラーによって1歯あたり60秒を超える塗布時間を要する。或いは、ペーストが柔らかすぎてペーストが直ぐに垂れて塗布できない。
なお、A〜Cが実使用レベルである。
実施例1〜29
上記に示す手順により表1〜4に示す組成を有する硬化性リン酸カルシウム組成物を調製し、初期の圧縮強さ、70℃7日後の圧縮強さ、操作性(I)を評価した。得られた評価結果を表1〜4にまとめて示す。
上記に示す手順により表1〜4に示す組成を有する硬化性リン酸カルシウム組成物を調製し、初期の圧縮強さ、70℃7日後の圧縮強さ、操作性(I)を評価した。得られた評価結果を表1〜4にまとめて示す。
実施例30〜56
上記に示す手順により表5〜7に示す組成を有する硬化性リン酸カルシウム組成物(ペースト状の象牙細管封鎖材)を調製し、初期の象牙細管封鎖率、酸浸漬後の象牙細管封鎖率、操作性(II)を評価した。得られた評価結果を表5〜7にまとめて示す。
上記に示す手順により表5〜7に示す組成を有する硬化性リン酸カルシウム組成物(ペースト状の象牙細管封鎖材)を調製し、初期の象牙細管封鎖率、酸浸漬後の象牙細管封鎖率、操作性(II)を評価した。得られた評価結果を表5〜7にまとめて示す。
比較例1〜26
上記実施例と同様の手順により表8〜10に示す組成を有する硬化性リン酸カルシウム組成物を調製し、初期の圧縮強さ、70℃7日後の圧縮強さ、操作性(I)、初期の象牙細管封鎖率、酸浸漬後の象牙細管封鎖率、操作性(II)を評価した。得られた評価結果を表8〜10にまとめて示す。
上記実施例と同様の手順により表8〜10に示す組成を有する硬化性リン酸カルシウム組成物を調製し、初期の圧縮強さ、70℃7日後の圧縮強さ、操作性(I)、初期の象牙細管封鎖率、酸浸漬後の象牙細管封鎖率、操作性(II)を評価した。得られた評価結果を表8〜10にまとめて示す。
本発明の生体硬組織修復用硬化性リン酸カルシウム組成物は、骨補填材、骨セメントなどの骨修復材料、充填修復材、裏層材、合着材、仮封材、根管充填材、仮着材、コーティング材、シーラント材、象牙細管封鎖材などの歯科材料に好適である。
Claims (16)
- リン酸四カルシウム粒子(A)、リン酸水素カルシウム粒子(B)、炭酸カルシウム粒子(C)、及び水(D)を含む生体硬組織修復用硬化性リン酸カルシウム組成物であって、
前記リン酸四カルシウム粒子(A)、前記リン酸水素カルシウム粒子(B)及び前記炭酸カルシウム粒子(C)の合計100重量部に対して、前記リン酸四カルシウム粒子(A)を5〜75重量部、前記リン酸水素カルシウム粒子(B)を10〜70重量部、及び前記炭酸カルシウム粒子(C)を2〜50重量部含む生体硬組織修復用硬化性リン酸カルシウム組成物。 - 前記リン酸四カルシウム粒子(A)、前記リン酸水素カルシウム粒子(B)及び前記炭酸カルシウム粒子(C)の合計100重量部に対して、さらにリン酸のアルカリ金属塩(E)を0.5〜15重量部含む請求項1に記載の硬化性リン酸カルシウム組成物。
- 前記リン酸のアルカリ金属塩(E)が、リン酸一水素二ナトリウム及びリン酸二水素一ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種である請求項2に記載の硬化性リン酸カルシウム組成物。
- 前記リン酸四カルシウム粒子(A)の平均粒径が0.5〜30μmであり、前記リン酸水素カルシウム粒子(B)の平均粒径が0.1〜7.5μmであり、且つ前記炭酸カルシウム粒子(C)の平均粒径が0.1〜30μmである請求項1に記載の硬化性リン酸カルシウム組成物。
- 前記リン酸四カルシウム粒子(A)、前記リン酸水素カルシウム粒子(B)及び前記炭酸カルシウム粒子(C)と、前記水(D)の重量比((A+B+C)/D)が、1.8〜5.0である請求項1に記載の硬化性リン酸カルシウム組成物。
- 請求項5に記載の硬化性リン酸カルシウム組成物を含む骨修復材料。
- 請求項5に記載の硬化性リン酸カルシウム組成物を含む歯科用充填修復材。
- 請求項5に記載の硬化性リン酸カルシウム組成物を含む歯科用裏層材。
- 請求項5に記載の硬化性リン酸カルシウム組成物を含む歯科用合着材。
- 請求項5に記載の硬化性リン酸カルシウム組成物を含む歯科用仮封材。
- 請求項5に記載の硬化性リン酸カルシウム組成物を含む歯科用シーラント材。
- 請求項5に記載の硬化性リン酸カルシウム組成物を含む歯科用仮着材。
- 請求項5に記載の硬化性リン酸カルシウム組成物を含む歯科用根管充填材。
- 請求項5に記載の硬化性リン酸カルシウム組成物を含む歯科用コーティング材。
- 前記リン酸四カルシウム粒子(A)、前記リン酸水素カルシウム粒子(B)及び前記炭酸カルシウム粒子(C)と、前記水(D)の重量比((A+B+C)/D)が、0.5〜1.8である請求項1に記載の硬化性リン酸カルシウム組成物。
- 請求項15に記載の硬化性リン酸カルシウム組成物を含む歯科用象牙細管封鎖材。
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