JPWO2014171383A1 - 系に保持されている水性液体のイオン濃度を低減する装置および方法、ならびにその装置を備える装置 - Google Patents

系に保持されている水性液体のイオン濃度を低減する装置および方法、ならびにその装置を備える装置 Download PDF

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Abstract

開示される装置は、系(200)に保持されている水性液体(201)のイオン濃度を低減する装置である。この装置は、少なくとも1つのイオン吸着部(100)を含む。イオン吸着部(100)は、液体経路と、液体経路内に配置された複数の電極対とを含む。液体経路は、液体経路と系(200)とを含む循環路が形成されるように系(200)に接続される流入口(110a)と流出口(110b)とを含む。電極対は、第1の電極と第2の電極とを含む。第1の電極は、活性炭を含有する第1の導電性物質を含む。第2の電極は、活性炭を含有する第2の導電性物質を含む。第1および第2の電極はそれぞれ、水性液体(201)が流れる空隙に面している。

Description

本発明は、系に保持されている水性液体のイオン濃度を低減する装置および方法、ならびにその装置を備える装置に関する。
クーリングタワーの水など、冷却に用いられている水は工業用水の8割近くを占める。この冷却水は、蒸発熱を奪うことによって冷却されている。そのため、蒸発した水を補給することが必要になる。そのとき、補給水に含まれる各種のイオンが冷却水に加わる。一方、蒸発する水にはイオンはほとんど含まれない。そのため、冷却水が蒸発するにつれて、冷却水中のイオン濃度が高くなってスケールが発生する。また、冷却水中の塩素イオン濃度が高くなると、系が腐食しやすくなる。そのため、従来の冷却水系では、定期的に冷却水を排水して補給水と入れ替えている。この場合、大量の廃液が発生することになる。また、この場合、大量の補給水が必要になる。大量の廃液および補給水は、系の維持コストを増大させる。
廃液量を少なくするために、スケールの析出を抑制する薬剤を冷却水に添加することも行われている(たとえば特開2011−224455号公報)。しかし、薬剤を用いても、廃液および補給水の量を充分に減らすことはできなかった。また、薬剤を用いた場合、環境汚染が生じたり、廃液の処理が必要になったりすることがあった。
また、スケーリングを抑制するために、通液型キャパシタを用いる方法も提案されている(たとえば特開2012−232233号公報)。特開2012−232233号公報は、通液型キャパシタの電極間距離を狭くするための構造を提案している。しかし、このような通液型キャパシタは、後述するように問題があった。
特開2011−224455号公報 特開2012−232233号公報
上記の課題は、水資源の少ない国では非常に重要な問題であるにもかかわらず、良い方法が提案されないまま現在に至っている。
このような状況において、本発明は、系に保持されている水性液体のイオン濃度を低減するための新規な装置および方法を提供することを目的の1つとする。
上記目的を達成するため、本発明は、系に保持されている水性液体のイオン濃度を低減する装置を提供する。そのイオン濃度低減装置は、少なくとも1つのイオン吸着部を含み、前記イオン吸着部は、液体経路と、前記液体経路内に配置された複数の電極対とを含み、前記液体経路は、前記液体経路と前記系とを含む循環路が形成されるように前記系に接続される流入口と流出口とを含み、前記電極対は第1の電極と第2の電極とを含み、前記第1の電極は、活性炭を含有する第1の導電性物質を含み、前記第2の電極は、活性炭を含有する第2の導電性物質を含み、前記第1および第2の電極はそれぞれ、前記水性液体が流れる空隙に面している。
また、本発明は、さらに別の装置を提供する。その装置は、水性液体を保持する系と、前記水性液体のイオン濃度を低減する本発明のイオン濃度低減装置とを備える。
また、本発明は、系に保持されている水性液体のイオン濃度を、本発明のイオン濃度低減装置を用いて低減する方法を提供する。この方法は、
(i)前記イオン吸着部と前記系との間を前記水性液体が循環している状態で、前記第1の電極がアノードとなるように前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加することによって前記水性液体中のイオンを前記第1および第2の導電性物質に吸着させる工程と、
(ii)前記イオン吸着部から前記系への前記水性液体の流れを遮断した状態で、前記第1および第2の導電性物質に吸着された前記イオンを前記イオン吸着部内の液体に放出させ、前記イオンが放出された前記液体を前記循環路の外部に排出する工程と、をこの順に繰り返す工程を含む。
本発明によれば、系に保持されている水性液体のイオン濃度を容易に低減できる。
活性炭電極の電位と、水の電気分解の反応電位と、イオンの吸着との関係を模式的に示す図である。 アノードの容量とカソードの容量とが同じ場合のイオンの吸着・放出の状態を模式的に示す図である。 イオン吸着電極の模式的な等価回路を示す図である。 アノードの容量をカソードの容量より大きくしたときのイオン吸着の状態を模式的に示す図である。 電圧印加時間とイオン吸着率との関係を示すイメージ図である。 本発明の装置に含まれるイオン吸着部の一例を模式的に示す図である。 イオン吸着部に含まれる電極ブロックの一例を模式的に示す断面図である。 配線の配置の一例を模式的に示す図である。 本発明で用いられるスペーサの一例を模式的に示す正面図である。 図9に示したスペーサの断面図である。 図9に示したスペーサの他の断面図である。 本発明の装置の一例を模式的に示す図である。 本発明の装置の他の一例を模式的に示す図である。 本発明の装置のその他の一例の一部を模式的に示す図である。 本発明の装置のその他の一例を模式的に示す図である。 本発明の実施形態の一例の1つの状態を模式的に示す図である。 図16Aに示した一例の他の状態を模式的に示す図である。 本発明の電極対の一例を模式的に示す図である。 本発明の電極対の他の一例を模式的に示す図である。 本発明で用いられる電極対のその他の一例を模式的に示す断面図である。 本発明で用いられる電極対のその他の一例を模式的に示す断面図である。 本発明で用いることができる水質調整装置の一例を模式的に示す図である。 本発明で用いることができる遊離塩素濃度調整装置の一例を模式的に示す図である。 イオン吸着部を流れる水性液体の流速と水性液体の電気伝導率の変化との関係を調べた結果の一例を示すグラフである。 イオン吸着部を流れる水性液体の流速と水性液体の電気伝導率の変化との関係を調べた結果の他の一例を示すグラフである。 100Lの水性液体を処理した実施例の結果の一部を示すグラフである。 100Lの水性液体を処理した実施例の結果の一部を示すグラフである。 本発明による、系のイオン濃度の変化を示すイメージ図である。 実施例2の結果を示すグラフである。 実施例3の結果を示すグラフである。 従来のバッチ法によるイオン除去の一例を模式的に示す図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、本発明の実施形態について例を挙げて説明するが、本発明は以下で説明する実施形態に限定されない。以下の説明において特定の数値や特定の材料を例示する場合があるが、本発明の効果が得られる限り、他の数値や他の材料を適用してもよい。
(イオン濃度低減装置)
系に保持されている水性液体のイオン濃度を低減するための本発明の装置について、以下に説明する。当該装置を以下では、「装置(A)」と記載する場合がある。また、水性液体が保持される系を以下では、「系(S)」と記載する場合がある。別の観点では、本発明の装置(A)は、系(S)にある水性液体中のイオンを除去する装置、系(S)にある水性液体中のイオンを濃縮して系(S)から排出する装置、系(S)の劣化を防止する装置、排水側の水性液体を循環・濃縮してイオン濃度を高める装置、または、水の硬度を低下させる装置、として用いることも可能である。
本発明の装置(A)は、少なくとも1つのイオン吸着部を含む。1つのイオン吸着部は、液体経路と、液体経路内に配置された複数の電極対とを含む。以下では、当該液体経路を「液体経路(P)」と記載する場合がある。液体経路(P)は、液体経路(P)と系(S)とを含む循環路が形成されるように系(S)に接続される流入口と流出口とを含む。1つの観点では、液体経路(P)の両端が系(S)に接続されることによって、液体経路(P)と系(S)とを含む循環路が形成される。1つの電極対は、第1の電極と第2の電極とを含む。第1および第2の電極はそれぞれ、典型的には平板状の電極である。第1の電極は、活性炭を含有する第1の導電性物質を含む。第2の電極は、活性炭を含有する第2の導電性物質を含む。第1および第2の導電性物質はそれぞれ、典型的には平板状の形状を有する。第1および第2の電極はそれぞれ、水性液体が流れる空隙に面している。別の観点では、第1および第2の導電性物質はそれぞれ、水性液体が流れる空隙に面している。複数の電極対は、並列に接続されてもよいし、直列に接続されてもよい。複数の電極対を並列に接続する場合、複数の電極対に含まれる第1の電極同士が接続され、複数の電極対に含まれる第2の電極同士が接続される。
電極対は、第1の電極と第2の電極との間に配置されたスペーサをさらに含んでもよい。そして、そのスペーサによって、水性液体が流れる空隙が形成されていてもよい。
スペーサは、第1の電極と第2の電極との短絡を防止するとともに水性液体の流路を確保するために、第1の電極との第2の電極との間に配置される。スペーサを配置することによって、電極間の距離を等間隔に保つことができる。スペーサには、液体が流れる空間を有する絶縁性のスペーサを用いることができる。そのようなスペーサの例には、樹脂製のネット(たとえばネトロン(登録商標、NETLON))が含まれる。好ましいスペーサの一例は、クロスしている部分の厚さが他の部分よりも厚い樹脂製のネットである。スペーサは、表面が親水性であることが好ましい。表面が親水性であるスペーサの例には、親水性のアクリル系樹脂製のスペーサが含まれる。
イオン吸着部の一例では、複数の電極対が直列に接続されることによって1つの電極群が構成されており、その電極群の両端に存在する2つの電極のみが電源に接続される。この場合、電極群の両端に存在する2つの電極は、電源の正極および負極に接続される。この場合でも、1つの電極対における第1の電極と第2の電極との間には、通常、スペーサが配置される。
本発明の装置の一例は、上記の電極群を複数含んでもよい。そして、それらの複数の電極群が並列に接続されていてもよい。多数の電極対を直列に接続する場合、印加すべき電圧が高くなりすぎる場合がある。そのような場合には、それらの電極対を複数の電極群に分けて1つの電極群内で直列に接続し、複数の電極群を並列に接続してもよい。
後述する工程(i)において電極間に電圧を印加した場合、水が電気分解されてガスが発生する場合がある。発生したガスがスペーサや電極の表面に残留すると、イオン吸着の速度が減少する。発生したガスを速やかに外部に放出するために、スペーサの表面が親水性であることが好ましい。また、イオン吸着部を流れる水性液体の流速を高めて、ガスを排出しやすくしてもよい。また、イオン吸着部において、水性液体が下方から上方に向かって流れるようにすることによって、ガスを排出しやすくしてもよい。
第1の電極と第2の電極との間隔は、スペーサの厚さによって変えることができる。通常、電極ブロック内にある複数の電極対のそれぞれの電極間距離は実質的に等しい。1つの電極対において、第1の電極と第2の電極との間の間隔(スペーサの厚さと実質的に等しい)は、0.2〜10mmの範囲にあってもよく、たとえば、0.3〜10mmの範囲や、0.3〜5mmの範囲や、0.5〜2mmの範囲や、0.5〜1.5mmの範囲にあってもよい。電極間隔を狭く(たとえば10mm以下や2mm以下)することによって、イオンの移動距離を短くすることができ、また、電圧印加時の電位勾配を急にすることができる。その結果、イオンの吸着速度を高めることができる。また、電極間隔を0.2mm以上(好ましくは0.3mm以上や0.5mm以上)とすることによって、水性液体が電極間を流れやすくでき、その結果、水性液体の流れが一部に集中する現象(チャネリング)を抑制できる。チャネリングの抑制によって、導電性物質(活性炭電極)の面内のイオン吸着量のばらつきを緩和でき、イオン吸着の速度を高めることができ、さらに、電極のイオン吸着量を多くできる。また、電極間の空間を保つことによって水性液体の速い流れを可能にしているため、水性液体の導入側の活性炭におけるイオン吸着量と、水性液体の排出側の活性炭におけるイオン吸着量とのばらつきを小さくできる。
従来の通液型キャパシタでは、2つの電極(アノードおよびカソード)が、セパレータを挟んで交互に積層されるように配置される。通液型キャパシタにおいて、単位体積あたりの容量を増やすためには、および、電極間の抵抗を低減するためには、アノードとカソードとの距離をできるだけ短くする必要がある。そのため、従来の通液型キャパシタ(たとえば上述した特開2012−232233号公報に記載のキャパシタ)では、極めて薄いセパレータを用いて電極間距離を短くしていた。その場合、キャパシタを流れる液体は、電極とセパレータとの界面に存在するチャネルと呼ばれるわずかな経路を主に流れることになる。その結果、イオンの吸着はチャネルの近傍で多くなり、それ以外の部分では少なくなる。できるだけ多くのイオンを吸着しようとすると、チャネルから離れた部分でもイオン吸着を行う必要がある。しかし、そのような部分にイオンを吸着させるには、長時間の電圧印加が必要になる。
また、従来の通液型キャパシタは、キャパシタを液体が1回通過する間にできるだけ多くのイオンが吸着されるように設計されていたため、液体の放出口近傍のイオン吸着量が飽和する前に、液体の導入口近傍のイオン吸着量が飽和してしまう。すなわち、従来の通液型キャパシタでは、電極内におけるイオン吸着の偏りが大きかった。そのため、従来の通液型キャパシタでは、活性炭の大部分がイオン吸着に貢献していなかった。たとえば、水性液体中に2枚の電極を離して配置した平行平板型のキャパシタの活性炭利用率に比べて、従来の通液型キャパシタの活性炭利用率は、100分の1程度しかなかった(棚橋正治および棚橋正和、「活性炭を利用した電気二重層形成による水溶液のイオン除去法」、化学工学論文集、第35巻、第4号、364〜369ページ、2009年。)
さらに、電極間に印加する電圧が高い場合、イオンの吸着が飽和した部分において水の電気分解が生じ、それによって発生したガスによって電極が劣化する場合がある。また、水の電気分解が生じると、電気の利用効率が低下してしまう。
従来から、液体の流れがチャネル近傍に偏ることを抑制するための様々な提案がなされてきた。しかし、従来の通液型キャパシタでは、電極間隔が狭く、また、セパレータの部分に高速に液体を流そうという発想がなかったため、セパレータの部分に液体を流すための工夫が充分になされていなかった。
これに対し、本発明の好ましい一例では、電極間の距離を一定に保つスペーサを電極間に配置し、スペーサ内を水性液体がスムーズに流れるようにしている。これによって、電極内におけるイオン吸着の偏りを低減できる。この偏りをより低減するために、本発明の好ましい一例では、イオンを吸着する工程(後述する工程(i))において、イオン吸着部に導入される前の水性液体のイオン濃度と、イオン吸着部に導入された後の水性液体のイオン濃度との差を小さくする。これについては詳細を後述する。
スペーサの開口率は、0.3〜0.9の範囲(たとえば0.5〜0.7の範囲)にあってもよい。開口率を0.3以上とすることによって、スペーサ内の空隙を水性液体が流れやすくなり、また、電極間の抵抗を低減できる。開口率を0.9以下とすることによって、電極間の短絡を抑制できる。なお、開口率とは、(開口部の面積)/(スペーサの面積)の値を意味し、より具体的には、(開口部の投影面積)/(スペーサの投影面積)の値を意味する。スペーサの一例は、開口率が0.3〜0.9の範囲にあるネット状のスペーサである。スペーサの空隙率は、50%〜95%の範囲(たとえば60%〜85%の範囲)にあってもよい。スペーサの空隙率は、スペーサの占有体積、スペーサの質量、およびスペーサを構成する物質の密度から求めることができる。なお、スペーサの占有体積を求める際には、2枚の板でスペーサを挟んだときの2枚の板の間隔をスペーサの厚さとして用いる。
スペーサは、凹凸が形成されているものであってもよい。その場合、凹凸のギャップ(厚さ方向における凸部と凹部のとの間の距離)は、0.2mm〜5mmの範囲(たとえば0.5mm〜3mm)の範囲にあってもよい。凹凸を形成することによって、スペーサと電極表面との間に、水性液体が流れる空間を確保できる。
電極対において、第1および第2の電極の表面(第1および第2の導電性物質の表面)のそれぞれに、ストライプ状に配置された複数の流路がスペーサの空隙によって形成されていてもよい。この構成によれば、スペーサ内の空隙を水性液体が流れやすくなる。
好ましい一例では、第1および第2の導電性物質がシート状の形状を有し、それらが水性液体の流れと平行に配置されることが好ましい、そのような一例は、図19および図20に示される。
第1の電極の容量(飽和イオン吸着量)は、第2の電極の容量(飽和イオン吸着量)の1.5〜3倍の範囲(たとえば1.7〜2.2倍の範囲)にあることが好ましい。すなわち、(第1の電極の容量)/(第2の電極の容量)の値は、1.5〜3の範囲(たとえば1.7〜2.2の範囲)にあることが好ましい。後述するように、イオンを吸着する工程(i)において、第1の電極がアノードとなり第2の電極がカソードとなるように電圧を印加する。なお、この明細書において、電極の容量Cは、単位電圧ΔVあたりに電極に蓄積される電気量Qであり、容量C=Q/ΔVで表される。電極の容量比は、レストポテンシャル近傍における単位微小電圧の印加によって電極に吸着されるイオンの総電荷量比に等しいと見なすことが可能である。
また、以下の説明において、「飽和イオン吸着量」とは、レストポテンシャルからガス発生電位に到達するまでに電極(実質的には活性炭を含む導電性物質)が吸着するイオンの総電荷量を意味する。たとえば、アノードの飽和イオン吸着量とは、レストポテンシャルから酸素ガス発生電位までにアノードに吸着される陰イオンの総電荷量を意味する。また、カソードの飽和イオン吸着量とは、レストポテンシャルから水素ガス発生電位までにカソードに吸着される陽イオンの総電荷量を意味する。
水の電気分解の反応電位とイオンの吸着との関係を図1に示す。図1の(a)は、電極上での水の反応電位を示し、図1の(b)はそれに対応するイオン吸着の状態を示す。アノードへの充電(すなわち陰イオンの吸着)が進むと、アノードの電位が酸素発生電位(銀−塩化銀電極を基準として約0.6ボルト)に到達し、アノードで酸素ガスが発生する。一方、カソードへの充電が進むと、カソードの電位が水素発生電位(銀−塩化銀電極を基準として約−0.6ボルト)に到達し、カソードで水素ガスが発生する。
アノードの容量とカソードの容量とが同じ場合のイオンの吸着・放出の状態について、図2に模式的に示す。図1の(a)に示すように、電圧印加開始前のレストポテンシャルは、銀−塩化銀電極を基準として0.1ボルト程度の位置にある。そして、その状態で電圧を印加すると、図2の(a)に示すように、アノードの方が先に酸素ガス発生電位に到達し、酸素ガスの生成が開始される。酸素ガスの生成に消費された電気量は、図2の(b)に示すようにカソードの充電(陽イオンの吸着)に用いられる(図2の(b)の矢印B)。その後、電極を短絡させてイオンを放出させると、図2の(c)の状態を経て、最終的には図2の(d)に示すようにいずれの電極も負電荷を帯びて陽イオンを吸着することになる。この状態から図2の(e)に示す電圧V1まで電圧を印加すると、アノードでは陽イオンが放出される一方、カソードでは陽イオンが吸着される。このとき、水性液体中のイオン濃度は減少しない。そして、さらに電圧を印加すると、図2の(f)に示すように、アノードで陰イオンが吸着されカソードで陽イオンが吸着されることになり、ここで液中のイオン濃度が減少する。すなわち、0ボルトからV1ボルトまではイオン濃度が減少しない。このように、アノードの容量とカソードの容量とを同じにすると、活性炭の利用効率および電気の利用効率が低下する。
なお、上記の議論は、電極の容量のうちの一部しか使用しない場合でもあてはまる。イオン吸着電極(第1および第2の電極)の模式的な等価回路を図3に示す。図3に示すように、イオン吸着電極は、抵抗成分(抵抗値Rn)が異なるコンデンサ(容量Cn)が複数並列に接続された回路として考えることが可能である。抵抗成分は、たとえば、活性炭の細孔の深い部分で大きくなり、浅い部分で小さくなる。このようなイオン吸着電極に充電すると、抵抗成分が小さい部分の方が、速く充電されて早期にガス発生電圧に到達する。すなわち、電極の容量の一部しか使用しなかったとしても、抵抗成分が小さい部分でガス発生が生じる。そのため、ガス発生の抑制を目的としてアノードの電極の容量とカソードの電極の容量とを調整する場合、電極全体の容量を比較するのではなく、抵抗成分が低い容量同士を比較する必要がある。抵抗成分が低い容量を増やすには、活性炭の量を増やすことが必要である。従って、電極の容量のうちの一部しか使用しない場合であっても、アノードの容量をカソードの容量よりも大きくすることが好ましい。
以上のように、アノードの容量をカソードの容量よりも大きくすることが好ましい。具体的には、図4に示すように、アノードの容量を増やし、アノードが酸素ガス発生電位に到達するまでの電気量(飽和イオン吸着量)と、カソードが水素ガス発生電位に到達するまでの電気量(飽和イオン吸着量)とがほぼ等しくなるように調整することが好ましい。そのためには、アノード(第1の電極)の容量を、カソード(第2の電極)の容量の1.5〜3倍の範囲(たとえば1.7〜2.2倍の範囲)とすることが好ましい。
実験的には、アノードの容量はカソードの容量の2倍程度であることが好ましい。しかし、吸着されるイオン種の違いや活性炭の違いによって、最適な容量比は変化する。たとえば、図1および図2では電位によらず微分容量を一定としているが、実際には電位依存性が少しある。また、図3の抵抗成分Rnと容量Cnとの関係は活性炭によって変化する。そのため、活性炭の種類やイオン種によって抵抗値が変わり、最適な容量比は少し変化する。しかし、(アノードの容量):(カソードの容量)の比を1.5〜3:1とすることによって、容量比が1:1である通液型キャパシタに比べて、効率よくイオンを吸着できる。なお、イオン放出時に、電極間の電圧が図2の(e)の電圧V1となった時点でイオン放出を停止すれば電流効率の低下を避けることができるが、その場合には活性炭の一部(特にイオン吸着速度が速い部分)を利用できなくなる。そのため、アノードおよびカソードに吸着されたイオンがすべて放出されたときの電位が、レストポテンシャル近傍となるように容量比を調節することが好ましい。
電極の容量Cは、上述したようにC=Q/ΔVの式で表される。電極の容量比は、レストポテンシャル近傍の微分容量を測定することによって求めることができる。電極の微分容量(その電極中の活性炭を含む導電性物質の微分容量と実質的に等しい)は、たとえば以下の方法によって決定できる。測定器としてはポテンショスタットを用いる。まず、測定対象の電極をワーキング側に接続し、対極(活性炭を含む対極でもよい)をカウンタ側に接続し、参照電極をリファレンス側に接続する。次に、それらの電極を、塩が溶解している水溶液に浸漬する。次に、イオンが吸着されていない状態の電位(レストポテンシャル)から一定の微小電圧ΔV(例えば0.1ボルト)を印加し、その状態で流れた電流値を積算して積算電気量Qを求める。このときの微分容量C’は、C’=Q/ΔVの式で求められる。第1の電極の微分容量と第2の電極の微分容量との比を、それらの電極の容量比と見なすことができる。
また、アノードの飽和イオン吸着量は、アノードがレストポテンシャルから酸素ガス発生電位に達するまでにアノードに流れる総電気量を測定することによって求めることができる。また、カソードの飽和イオン吸着量は、カソードがレストポテンシャルから酸素ガス発生電位に達するまでにカソードに流れる総電気量を測定することによって求めることができる。飽和イオン吸着量は、電極の電位が最初からガス発生電位となるように電圧を印加して、それによって流れた積分電気量から求めてもよい。飽和イオン吸着量を測定することによって、アノードが酸素ガス発生電位に達するのに必要な電気量と、カソードが水素ガス発生電位に達するのに必要な電気量とがほぼ同じとなるように、アノードとカソードとを設計することができる。
微分容量を測定する場合、イオン種によって測定値が変化するため、イオン種を固定して測定する必要がある。微分容量の測定方法の一例を以下に示す。なお、測定対象の電極、および対極のいずれにも、イオンを吸着していない状態のものを用いる。
(1)活性炭の質量が測定対象の電極に対して5倍以上である対極を用意する。
(2)濃度が1mol/Lの塩化ナトリウム水溶液を用意する。
(3)(2)の水溶液に電極を浸漬した状態で、測定対象の電極の電位がレストポテンシャルから0.1ボルト変化するように電圧を10時間印加する。このとき、測定対象となる電極をカソードとしてナトリウムイオンを吸着させる。そして、電極間に流れた電流値を積算して電気量を求め、算出された電気量を測定対象の電極の微分容量とする。
電極の容量(イオン吸着容量)は、導電性物質の容量と実質的に同じであり、導電性物質の容量は、活性炭の量によって制御できる。そのため、別の観点では、(第1の電極の容量)/(第2の電極の容量)の比は、(第1の電極に含まれる活性炭の質量)/(第2の電極に含まれる活性炭の質量)の比に置き換えることができる。すなわち、本発明において、第1の電極に含まれる活性炭の質量は、第2の電極に含まれる活性炭の質量の1.5〜3倍の範囲(たとえば1.7〜2.2倍の範囲)にあってもよい。この置き換えは、第1の導電性物質と第2の導電性物質とに同じ導電性物質(活性炭)を用いる場合に特に妥当な置き換えとなる。
複数の電極対は、通常、電極対の厚さ方向に重ねられて1つの電極ブロックを構成する。電極ブロックを交換することによって、複数の電極対を同時に交換できる。そのため、電極ブロックの形態を採用することによってメンテナンスが容易になる。1つのイオン吸着部に含まれる電極対の数は、5〜300の範囲(たとえば10〜150の範囲)としてもよいし、これらの範囲にない数としてもよい。
装置(A)は、通常、第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加するための少なくとも1つの電源(直流電源)をさらに備える。電源に特に限定はなく、コンセントなどから得られる交流電圧を直流電圧に変換するAC−DCコンバータであってもよい。
この明細書において、「水性液体」とは、水を含む液体の意味であり、典型的には水溶液(水道水などを含む)である。水性液体は、水以外の有機溶媒(たとえばアルコール)を含んでもよいが、通常、水性液体の溶媒は水のみである。水性液体の溶媒に占める水の量は、50質量%以上(たとえば80質量%以上や90質量%以上や95質量%以上)であり、且つ100質量%以下である。
水性液体が保持される系(S)に限定はない。系(S)は、クーリングタワーを含む冷却水や洗浄水などの開放循環系であってもよい。また、系(S)は、槽やタンクに水性液体が保持されている系であってもよい。
液体経路(P)の両端(流入口および流出口)は、系(S)に接続される。水性液体は、系(S)から流入口を通って液体経路(P)を流れ、流出口を通って系(S)に戻る。すなわち、系(S)の一部と液体経路(P)とは、循環路を構成している。系(S)中の水性液体は、液体経路(P)で処理された後に系(S)に戻る。これによって、系(S)および液体経路(P)中に存在する水性液体の水質が調整される。その結果、系(S)中の水性液体のイオン濃度を低減できる。本発明によれば、系(S)におけるスケールの発生を抑制することが可能である。
液体経路(P)は、水性液体が流れることができる経路であって、その中に電極を配置できる経路である。液体経路(P)の例には、流入口と流出口とが設けられた槽が含まれる。
第1および第2の導電性物質は活性炭を含む。そのため、第1および第2の導電性物質は、イオンを可逆的に吸着可能である。すなわち、第1および第2の導電性物質は、イオンを繰り返し吸着・放出できる。イオンは、導電性物質(活性炭)の表面電荷によって吸着される。すなわち、イオンは、電気二重層を形成する形で導電性物質(活性炭)の表面に吸着される。
第1および第2の導電性物質は、粒状活性炭とバインダーとを用いて形成されたシートであってもよい。また、第1および第2の導電性物質は、粒状活性炭と導電性カーボンとバインダーとを用いて形成されたシートであってもよい。また、導電性物質は、活性炭粒子を固めて形成された活性炭ブロックであってもよい。また、導電性物質は、活性炭繊維クロス、すなわち、活性炭繊維を用いて形成されたクロス(cloth)であってもよい。これらのシートは導電性を有する。活性炭繊維クロスとしては、たとえば、群栄化学工業株式会社製の活性炭繊維クロスを用いてもよい。好ましい一例では、導電性物質は平板状(シート状)である。なお、第1および第2の導電性物質は、複数の平板状(シート状の)導電性物質が積層されたものであってもよい。
導電性物質の比表面積は、たとえば300m/g以上であり、好ましくは900m/g以上である。比表面積の上限に特に限定はないが、たとえば3000m/g以下や2500m/g以下であってもよい。導電性物質の比表面積は、たとえばBET法で測定できる。
第1および第2の導電性物質における活性炭の含有率は、50質量%以上であってもよい。この構成によれば、電極の容量および飽和イオン吸着量を高めることができる。第1および第2の導電性物質における活性炭の含有率は、50〜100質量%の範囲(たとえば70質量%〜100質量%の範囲)にあってもよい。
第1および第2の電極は、それぞれ、第1および第2の導電性物質のみからなるものであってもよい。また、第1および第2の電極は、集電体(たとえば配線)を含んでもよい。集電体は、第1および第2の導電性物質の表面に接触するように配置されてもよいし、第1および第2の導電性物質の内部に配置されてもよい。集電体には、電圧印加時に腐食や溶解が実質的に生じない集電体を用いることが好ましい。そのような集電体の例には、白金でコートされた金属(たとえばチタン)や、導電性のカーボンシート(たとえばグラファイトシート)が含まれる。
複数の電極対は、第1および第2の導電性シートを支持する導電性シートを含んでもよい。たとえば、第1および第2の電極はそれぞれ、第1および第2の導電性物質を支持する第1および第2の導電性シートを含んでもよい。導電性シートの例には、導電性のカーボンシート(たとえばグラファイトシート)や、導電性のゴムシートや、導電性の樹脂シートが含まれる。導電性シートは、第1および第2の導電性物質よりも大きくてもよい。たとえば、導電性シートはそれぞれ、第1および第2の導電性物質よりも水性液体の流れの上流側(一例では上流側および下流側)に飛び出していてもよい。
導電性シートの端部には絶縁性シートが接続されていてもよい。絶縁性シートは、第1および第2の導電性物質よりも大きくてもよい。たとえば、絶縁性シートは、第1および第2の導電性物質よりも水性液体の流れの上流側(一例では上流側および下流側)に飛び出していてもよい。絶縁性シートに特に限定はなく、絶縁性の材料(たとえば絶縁性の樹脂やゴム)からなるシートを用いることができる。
本発明の装置で行われる工程の一部または全部は、手動で行ってもよい。また、本発明の装置は、コントローラを含んでもよく、そのコントローラが、本発明の装置で行われる工程の一部または全部を実行してもよい。コントローラは、演算処理装置と記憶手段とを含む。なお、記憶手段は、演算処理装置と一体化されていてもよい。記憶手段の例には、演算処理装置の内部メモリ、外部メモリ、磁気ディスク(たとえばハードディスクドライブ)などが含まれる。記憶手段には、各工程を実行するためのプログラムが記録される。コントローラの一例には大規模集積回路(LSI)が含まれる。本発明の装置は、各種機器(電源、ポンプ、バルブなど)に加えて、各種の計測器(電流計、電圧計、pH計、イオン濃度計、伝導度計、酸化還元電位計、溶存酸素計、および残留塩素計など)を含んでもよい。そして、コントローラは、これらの機器および計測器に接続されていてもよい。コントローラは、各処理部における処理(たとえば電圧印加)を、計測器の出力に基づいて制御してもよい。
本発明の装置では、以下の工程(i)および(ii)がこの順に繰り返し実行される。たとえば、コントローラが、以下の工程(i)および(ii)をこの順に繰り返し実行してもよい。工程(i)では、第1の電極がアノードとなるように(第2の電極がカソードとなるように)、第1の電極と第2の電極との間に電圧(直流電圧)を印加する。この電圧印加は、水性液体がイオン吸着部と系(S)との間を循環している状態で行われる。この電圧印加によって、水性液体中のイオンを第1および第2の導電性物質に吸着させる。具体的には、水性液体中の陰イオンを第1の電極(アノード)に吸着させ、陽イオンを第2の電極(カソード)に吸着させる。
工程(i)において印加される電圧は、処理される水性液体の電気伝導率に応じて調整することが好ましい。印加電圧は、水性液体による電圧降下を考慮し、通常2ボルト以上である。印加電圧が低すぎると、イオンの吸着速度が遅くなる。一方、印加電圧が高すぎると、第1および第2の電極における水の電気分解が増加する。印加電圧は、2〜20ボルトの範囲(たとえば3〜10ボルトの範囲)にあってもよく、好ましく一例では3〜7ボルトの範囲にある。
工程(i)において印加される電圧は一定であってもよいし、可変であってもよい。たとえば、電極間に一定の電流が流れるように電圧を印加してもよい。一般的に、一定の電圧を印加する場合には安価な電源を用いることができる。定電圧を印加する場合、水性液体のイオン濃度が高いとイオンの吸着速度が速くなり、水性液体のイオン濃度が低いとイオンの吸着速度が遅くなる。そのため、定電圧を印加する方法は、水性液体のイオン濃度を一定の低濃度に保つ場合には、簡単で便利な方法である。また、クーリングタワーなどの開放循環系では、水温が高い場合には揮散量が多くなって水性液体のイオン濃度が上昇しやすくなるが、イオン吸着速度も速くなるため、定電圧である程度の制御が可能である。
次に、工程(ii)では、イオン吸着部から系(S)への水性液体の流れを遮断した状態で、第1および第2の導電性物質に吸着されたイオンをイオン吸着部内の液体に放出させ、イオンが放出された液体を循環路の外部に排出する。すなわち、工程(i)および(ii)によって、系(S)内のイオンが系(S)の外部に排出される。その結果、系(S)内の腐食や、系(S)内におけるスケールの発生が抑制される。
工程(ii)においてイオンが放出される液体には、通常、系(S)の水性液体が用いられる。しかし、系(S)とは別の水性液体にイオンを放出させてもよい。
イオンの放出は、第1の電極と第2の電極とを短絡させることによって行ってもよい。それらの電極を短絡させることによって、導電性物質の表面電荷が消失し、表面電荷によって吸着されていたイオンが放出される。また、イオンの放出は、工程(i)とは逆方向に電圧を印加することによって行ってもよい。すなわち、第1の電極がカソードとなるように(第2の電極がアノードとなるように)、第1の電極と第2の電極との間に電圧(直流電圧)を印加することによって、イオンを放出してもよい。この場合、放出されたイオンが再び導電性物質に吸着されることを防止するため、工程(i)で印加される電圧よりも低い電圧(たとえば1〜2ボルトの範囲)を印加することが好ましい。なお、工程(i)とは逆方向に電圧を印加してイオンを放出させた後に、第1の電極と第2の電極とを短絡してもよい。また、イオン吸着時の印加電圧と同じ大きさの電圧をイオン吸着時とは逆方向に短時間(たとえばイオン吸着時の時間の1/2〜1/20の時間)印加してもよい。この場合、導電性物質の表面は逆充電されて、導電性物質の奥の方(深い部分)と表面との間に電位差が生じる。その結果、高抵抗の部分からのイオン放出が加速される。この場合、逆方向に短時間電圧を印加したのちに電圧印加を停止してそのままオープン状態で放置し、電極端子の電圧が0ボルトになった時点で電極を短絡させてもよい。これによって、イオンの速い放出が可能となる。
また、第1の電極(アノード)に陽イオンが吸着されたり、第2の電極(カソード)に陰イオンが吸着されたりすると、図2の(d)に示したように、イオン放出時にすべてのイオンを放出することができなくなる。その結果、図2の(e)に示したように、電圧V1までは電圧を印加してもイオン濃度が減少しなくなる。そのため、イオンが吸着されていない状態(図2の(c)の状態)の電位(図2の(e)の電圧V1のときの電位)に一方の電極の電位が到達した時点で、イオンの放出工程を停止してもよい。具体的には、電極間の電圧の絶対値が0.2ボルト以下(電極間の電圧が−0.2ボルト〜0.2ボルトの範囲)となる前にイオン放出工程を停止してもよい。
工程(ii)において、イオンの放出と、イオンが放出された水性液体の排出とは同時に行われてもよい。また、イオンの放出を行った後に、イオンが放出された液体の排出を行ってもよい。その場合、コントローラは、工程(ii)において、イオン吸着部から系(S)への水性液体の流れを遮断した状態で、工程(ii−a)および工程(ii−b)をこの順に実行する。工程(ii−a)では、第1および第2の導電性物質に吸着されたイオンをイオン吸着部内の液体に放出させる。工程(ii−b)では、イオンが放出された液体を循環路の外部に排出する。この構成によれば、排出される廃液の量を少なくすることが可能である。
工程(ii−a)は、イオン吸着部における水性液体の流れを停止した状態で行われてもよい。すなわち、イオン吸着部から系(S)への水性液体の流れだけでなく、イオン吸着部から排液路への水性液体の流れも遮断した状態で工程(ii−a)が行われてもよい。このようにすることによって、廃液の量を少なくすることが可能である。
本発明の装置では、工程(i)において以下の条件の少なくとも1つが満たされる前に、工程(i)を停止して工程(ii)を開始してもよい。なお、この処理は、コントローラによって行われてもよい。
(a)実行中の工程(i)において第1の電極に吸着されたイオンの総電荷量が、第1の電極の飽和イオン吸着量の60%に到達した。
(b)実行中の工程(i)において第2の電極に吸着されたイオンの総電荷量が、第2の電極の飽和イオン吸着量の60%に到達した。
なお、上記(a)および(b)における割合(60%)は、より低い値であってもよく、たとえば50%であってもよい。
活性炭は、多数の細孔を有しており、その細孔内部にイオンを吸着できる。イオンを吸着する際の抵抗(図3の等価回路における抵抗)は細孔の表面からの深さによって変化し、一般的には、細孔の表面から遠いほどイオン吸着の抵抗は高くなる。そして、イオン吸着の抵抗が高い部分を使用すると、イオンの吸着・放出に時間がかかるため、処理が遅くなる。一方、イオン吸着の抵抗が低い部分のみを使用すると、イオンの吸着・放出に要する時間を短縮でき、処理を速めることができる。
電圧印加時間(イオン吸着の時間)とイオン吸着率との関係を示すイメージを図5に示す。縦軸のイオン吸着率は、飽和イオン吸着量に対する、吸着されたイオンの総電荷量の割合を示す。すなわち、イオン吸着率は、イオン吸着率=(吸着されたイオンの総電荷量)×100/(飽和イオン吸着量)の式で表される。以下においても、飽和イオン吸着量に対する、吸着されたイオンの総電荷量を、「イオン吸着率」という場合がある。なお、図5はイメージであって、実際に測定した値ではない。図5に示すように、電圧印加時間とイオン吸着率とは、比例関係にない。これは、初期のイオン吸着が低抵抗の部分で生じるのに対し、その後のイオン吸着が高抵抗の部分で生じるためである。図5では、電圧印加時間とイオン吸着率との関係を、10分で25%、30分で50%、60分で75%と仮定している。
ここで、吸着したイオンを放出するのに、イオン吸着(電圧印加)に要した時間と同じ時間が必要であると仮定する。その場合、10分の電圧印加(イオン吸着)と10分のイオン放出とを4回繰り返すことによって(すなわち80分の処理によって)、飽和イオン吸着量の100%分のイオンを吸着・放出することができる。一方、30分の電圧印加(イオン吸着)と30分のイオン放出とを繰り返す場合、吸着・放出を2回繰り返すことによって(すなわち、120分の処理によって)、飽和イオン吸着量の100%分のイオンを吸着・放出することができる。また、60分の電圧印加(イオン吸着)と60分のイオン放出とを繰り返す場合、吸着・放出を1回行っても(すなわち、120分の処理を行っても)、飽和イオン吸着量の75%分のイオンしか吸着・放出できない。
以上のことは、イオンを吸着する導電性物質のうち低抵抗の部分を主に用いることによって、系(S)のイオン濃度の低減処理に要する時間を短くできることを示している。従来の処理では、水性液体が電極間を1回通過する間にできるだけ多くのイオンを吸着することを目的としてイオンの吸着・放出が行われてきた。本発明の好ましい一例では、そのような処理とは全く異なる視点で処理が行われ、そのための構成が採用される。なお、イオン濃度の低減処理に要する時間を短くする代わりに、イオンを吸着する導電性物質(活性炭)の量を減らすことも可能である。
上記の理由から、第1および第2の導電性物質(活性炭)に吸着されるイオンの総電荷量を、それらの飽和イオン吸着量の60%未満(たとえば50%未満)とすることが好ましい。すなわち、導電性物質のうち、低抵抗の部分を主に用いてイオンを吸着することが好ましい。この割合(イオン吸着率)は、2%以上、5%以上、10%以上、または20%以上であってもよく、また、60%未満、50%未満、40%未満、または30%未満であってもよい。たとえば、この割合は、2%以上50%未満や、5%以上30%未満や、5%以上20%未満であってもよい。
すなわち、本発明の装置では、工程(i)において以下の条件の少なくとも1つが満たされたときに、工程(i)を停止して工程(ii)を開始してもよい。なお、この処理は、コントローラによって行われてもよい。
(a’)第1の電極の飽和イオン吸着量に対する、実行中の工程(i)において第1の電極(第1の導電性物質)に吸着されたイオンの総電荷量の割合が、上記の範囲となった。
(b’)第2の電極の飽和イオン吸着量に対する、実行中の工程(i)において第2の電極(第2の導電性物質)に吸着されたイオンの総電荷量の割合が、上記の範囲となった。
ただし、本発明では、低抵抗の部分だけではなく高抵抗の部分も用いてイオン吸着を行ってもよい。たとえば、1つの工程(i)において第1および第2の導電性物質(活性炭)に吸着されるイオンの総電荷量を、それらの飽和イオン吸着量の5〜85%の範囲としてもよく、50%以上(たとえば50〜85%)としてもよい。このような処理は、系(S)のイオン濃度が高い場合に好ましく用いられる。また、このような処理は、後述するイオン除去率が小さい場合(たとえばイオン除去率が後述する範囲にある場合)に特に有効である。イオン除去率を小さくすることによってイオン吸着のばらつきを小さくできる。イオン除去率が小さい場合には、イオン吸着率を50%以上としても水の電気分解が生じることを抑制できる。
導電性物質のうち低抵抗の部分を主に用いてイオンを吸着する場合には、電極(導電性物質)を薄くすることが好ましい。この場合、電極対(または、電極対によって構成された電極ブロック)において第1および第2の電極が占有する体積は、スペーサが占有する体積(スペーサ内の空隙を含む)の、0.4〜10倍の範囲(たとえば0.7〜6倍の範囲)にあってもよい。電極(または第1および第2の導電性物質)の平面形状とスペーサの平面形状とは通常同じである。そのため、上記倍率は、スペーサの厚さに対する電極の厚さの比を小さくすることによって低くできる。この場合、1つの電極対に含まれる第2の電極の厚さは、0.2〜4.0mmの範囲(たとえば0.5〜2.0mmの範囲)としてもよい。また、1つの電極対に含まれる第1の電極の厚さは、電極の容量比を考慮し、第2の電極の厚さの1.5〜3倍の範囲(たとえば1.7〜2.2倍の範囲)程度としてもよい。
また、スペーサを使用せずに隣接する電極対を離して配置する場合、1つの電極群において、第1および第2の電極が占有する体積は、隣接する電極対間の体積の0.4〜10倍の範囲(たとえば0.7〜6倍の範囲)にあってもよい。
一方、上記倍率は、スペーサの厚さに対する電極の厚さの比や、電極対の間の距離に対する電極の厚さの比を大きくすることによって高くできる。上記倍率を高くすることによって、単位体積あたりの飽和イオン吸着量を高めることができる。低抵抗の部分だけでなく高抵抗の部分も用いてイオン吸着を行う場合、上記倍率は、3〜50倍の範囲(たとえば5〜20倍の範囲)にあってもよい。この場合、1つの電極対に含まれる第2の電極の厚さは、1.0〜10mmの範囲(たとえば1.5〜5mmの範囲)としてもよい。また、1つの電極対に含まれる第1の電極の厚さは、電極の容量比を考慮し、第2の電極の厚さの1.5〜3倍の範囲(たとえば1.7〜2.2倍の範囲)程度としてもよい。
イオン吸着部は、電極対が配置される槽を備えてもよい。この槽は、液体経路(P)の一部を構成する。槽の内容積に占める電極対の体積(電極および電極間が占める体積)の割合は、50%〜98%の範囲(たとえば70〜95%の範囲)にあってもよい。この割合を高くすることによって、廃液の量を少なくすることができる。特に、イオン放出の際にイオン吸着部内の水性液体の流れを停止し、できるだけ少量の液体(水性液体)にイオンを放出することによって、廃液の量を少なくすることができる。たとえば、本発明において、工程(ii)で排出される液体(水性液体)中のイオン濃度を、系に存在する水性液体のイオン濃度の5〜100倍の範囲とすることによって、廃液の量を従来の廃液量のほぼ5分の1〜100分の1とすることが可能である。また、少量の液体にイオンを放出する場合、その液体中のイオン濃度を高めることによってイオン伝導性を高めることができ、その結果、イオン放出速度を高めることができる。工程(ii)で排出される液体(水性液体)中のイオン濃度は、系に存在する水性液体のイオン濃度の3〜200倍の範囲(好ましくは5〜50倍の範囲)としてもよい。
廃液のイオン濃度をより高めるために、廃液を槽にため、その廃液を本発明の方法・装置で処理してもよい。これによって、廃液のイオン濃度をより高めることができ、また、廃液の量を減らすことができる。この方法・装置は、水性液体中のイオンを濃縮して取り出す方法・装置として利用することも可能である。
工程(i)の電圧印加によって電極(導電性物質)に吸着されたイオンの総電荷量は、工程(i)の電圧印加において電極間を流れた電流値から算出してもよい。たとえば、工程(i)の電圧印加において電極間を流れた電流値の積算値を、工程(i)の電圧印加によって電極(導電性物質)に吸着されたイオンの総電荷量とみなしてもよい。
なお、系(S)の水性液体が廃液として放出されたり蒸発によって減少したりする場合には、系(S)に水性液体が補給されることがある。このとき系(S)に補給される水性液体中のイオンを、上述したイオン吸着部を用いて除去することも可能である。これによって、系(S)内のイオン濃度が増加することを抑制できる。
本発明の装置は、複数のイオン吸着部を備えてもよい。その場合、複数のイオン吸着部を第1のグループと第2のグループとに分け、第1のグループと第2のグループとで放電(イオン放出)と充電(イオン吸着)とを交互に繰り返してもよい。具体的には、第1のグループが放電するときにその電力を第2のグループの充電に用い、第2のグループが放電するときにその電力を第1のグループの充電に用いてもよい。
(イオン濃度低減装置を備える装置)
本発明のイオン濃度低減装置を備える本発明の装置について説明する。この装置は、水性液体を保持する系と、本発明のイオン濃度低減装置とを含む。この装置では、本発明のイオン濃度低減装置によって系のイオン濃度が低減される。系は、クーリングタワーを含む系であってもよい。また、イオン濃度低減装置を用いて水性液体の硬度を低下させてもよい。
本発明のイオン濃度低減装置を備える本発明の装置の一例について以下に説明する。この一例では、系(S)は貯水槽を含む。イオン濃度低減装置は、貯水槽に接続されている。貯水槽には、水性液体の流入口および流出口が形成されている。流入口および流出口を介して貯水槽を水性液体が流れる間に、イオン濃度低減装置によって水性液体のイオン濃度が低減される。この装置では、水性液体が貯水槽を1回流れる間に、水性液体のイオン濃度を低減できる。
(水質調整装置)
本発明の装置(イオン濃度低減装置、または、それを備える装置)は、循環路の一部に設置された水質調整装置をさらに備えてもよい。水質調整装置は、水性液体のpHおよび遊離塩素濃度から選ばれる少なくとも1つの水質を調整するための装置である。水質調整装置は、水性液体が流れる槽と、槽内に配置された2つの電極(電極対)とを含む。当該2つの電極(電極対)は、電気分解を行うための電極と、イオンを吸着するためのイオン吸着電極とを含む。水質調整装置の槽は、循環路の一部に接続されてもよい。また、水質調整装置の槽は、循環路(系(S)、液体経路(P)、イオン吸着部の槽が含まれる)の一部を構成してもよい。また、水質調整装置の槽に2つの流路が接続されており、その2つの流路が循環路に接続されることによって、水質調整装置を含む別の循環路が形成されていてもよい。この水質調整装置は、さらに、電極対に電圧を印加するための直流電源を備えてもよいし、イオン濃度低減装置の電源を用いてもよい。イオン吸着電極には、上述した第1および第2の電極と同様の電極を用いることができる。電気分解を行うための電極には、電気分解が生じやすい電極を用いることができ、たとえば金属電極を用いることができる。電気分解を行うための電極の好ましい一例は、表面に白金が存在する電極(たとえば、白金でコートされた金属電極)である。
後述するように、この水質調整装置は、水性液体のpHを変化させるためのpH調整装置として用いることができる。また、後述するように、この水質調整装置は、遊離塩素を生成して殺菌を行うための殺菌装置として用いることができる。水質調整装置は、バッチ方式で水性液体を処理してもよい。すなわち、水質調整装置の槽内の水性液体の流れを止めて水性液体を処理してもよい。また、水質調整装置は、通液方式で水性液体を処理してもよい。すなわち、水質調整装置の槽内を水性液体が流れている状態で水性液体を処理してもよい。
系内の水性液体のpHを調整するための装置の一例は、金属電極およびイオン吸着電極を含む電極対と、それらに直流電圧を印加するための電源とを含む。イオン吸着電極には、本発明の第1および第2の電極で説明した電極を用いることができる。金属電極には、たとえば、表面に白金が存在する金属電極を用いることができる。金属電極で水が電気分解され、イオン吸着電極でイオンが吸着または放出されるように両者の間に電圧を印加することによって、水性液体のpHを変えることができる。系内の水性液体のpHを調整することによって、系の腐食の防止や、水性液体の殺菌をすることが可能になる。また、後述するように、循環路内の不要な析出物(たとえばスケール)などを除去することが可能になる。
なお、水溶液中のケイ素成分(たとえばケイ酸(HSiO))もスケーリングの一因となる場合がある。ケイ酸は、水性液体をアルカリ性(たとえばpHが10〜11程度)にするとイオン化できると考えられるため、水性液体のpHをアルカリ性にし、イオン化したケイ酸を導電性物質で吸着して除去することも可能である。その場合、イオン吸着部に導入される水性液体のpHを上昇させてアルカリ性にし、イオン吸着部で処理された後に水性液体のpHを元のpHのレベルに戻してもよい。
(遊離塩素濃度調整装置)
本発明の装置(イオン濃度低減装置、または、それを備える装置)は、上記水質調整装置に代えて、または、上記水質調整装置に加えて、流路を流れる水性液体の遊離塩素濃度を調整する装置をさらに備えてもよい。遊離塩素濃度調整装置は、水性液体が配置される容器(槽)と、当該容器を第1の槽と第2の槽とに仕切るセパレータと、第1の槽に配置された第3の電極と、第2の槽に配置された第4の電極とを備える。遊離塩素濃度調整装置は、さらに、電極間に電圧を印加するための直流電源を備えてもよいし、イオン濃度低減装置の電源を用いてもよい。第2の槽には、第2の槽が上記流路の一部を構成するように上記流路に接続される流入口と流出口とが形成されている。第1の槽内の空間は、セパレータを介して上記流路と接続される。この流路は、本発明の装置の循環路の一部に接続される。
遊離塩素濃度調整装置の第3および第4の電極には、電気分解を生じさせるための電極が用いられ、たとえば上述した金属電極を用いることができる。遊離塩素濃度調整装置では、第2の槽を水性液体が流れている状態で第3の電極と第4の電極との間に直流電圧を印加して電気分解を生じさせる。具体的には、第3の電極の電極がカソードとなり第4の電極がアノードとなるように電圧を印加し、第4の電極(アノード)で塩素イオンを酸化して塩素分子とする。これによって、遊離塩素が生成される。
(イオン濃度低減方法)
系(系(S))に保持されている水性液体のイオン濃度を低減するための本発明の方法について以下に説明する。この方法は、本発明のイオン濃度低減装置を用いる。そのため、本発明の装置について説明した事項は、本発明の方法に適用できる。また、本発明の方法について説明した事項は本発明の装置に適用できる。
本発明の方法は、上述した工程(i)および(ii)をこの順に繰り返す工程を含む。本発明の方法では、工程(i)において、上述した条件(a)および(b)の少なくとも1つが満たされる前に工程(i)を停止して工程(ii)を開始してもよい。
本発明の装置および方法では、系(S)に存在する水性液体の電気伝導率をモニタし、系の電気伝導率が所定の値以下となった場合に工程(i)および(ii)のサイクルを停止してもよい。
本発明の装置および方法において、系(S)内の水性液体に温度分布がある場合、高温側の水性液体をイオン除去部に取り込んで処理してもよい。温度が高い方がイオンの移動速度が高いため、処理速度を高めることができる。
工程(i)において、イオン吸着部に導入される水性液体の電気伝導率σx(S/m)と、イオン吸着部で処理された後の水性液体の電気伝導率σy(S/m)とが、0.0002<(σx−σy)/σx≦0.2を満たすように工程(i)が行われてもよい。以下では、(σx−σy)/σxの値を「イオン除去率」という場合がある。イオン除去率は、電極間に印加する電圧等によって制御できる。たとえば、印加電圧を大きくするとσyが小さくなり、イオン除去率が高くなる。また、電極間を流れる水性液体の流速を速くするとσyが大きくなり、イオン除去率が小さくなる。工程(i)は、0.01≦(σx−σy)/σx≦0.1を満たすように行われてもよい。σxおよびσyが上記関係のいずれかを満たすように、イオン吸着部における水性液体の流速および電圧から選ばれる少なくとも1つが制御されてもよい。本発明の装置がコントローラを含む場合、コントローラは、σxおよびσyが上記関係のいずれかを満たすように、イオン吸着部における水性液体の流速および電圧から選ばれる少なくとも1つを制御してもよい。
ここで、1分間あたり0.1モルの一価イオン(0.1モルで9650クーロン)を吸着できるイオン吸着部(イオン吸着部内に配置される液体の量はたとえば1L)に、イオン濃度が0.1モル/Lの水性液体を流すことを仮定する。また、この水性液体に含まれるイオンは一価のイオンのみと仮定する。このとき、10L/分の処理速度でイオン吸着部に1分間水性液体を流すと、イオン吸着部を流れた10Lの水性液体(10Lで1モルのイオンを含む水性液体)から除去されるイオンの量は、理論的には0.1モルである。一方、100L/分の処理速度でイオン吸着部に1分間水性液体を流すと、イオン吸着部を流れた100Lの水性液体(100Lで10モルのイオンを含む水性液体)から除去されるイオンの量は、理論的には同じく0.1モルである。この場合、100L/分の処理速度で水性液体を流す方が、上記の(σx−σy)/σxの値が小さくなる。このように、電極間を流れる水性液体の流速を速くすることによって、イオン除去率を小さくすることができる。
なお、イオンの吸着速度にもよるが、電極間を流れる水性液体の流速が遅い場合、電極内におけるイオンの吸着量のばらつきが大きくなり、導入口近傍でガス発生が生じやすくなる。その結果、電気の利用効率やイオンの吸着効率が低下する場合がある。
電極間を流れる水性液体の流速は、ポンプや流量調節バルブなどによって制御できる。従来の通液型キャパシタとは異なり、本発明の好ましい一例では、水性液体が電極間を速い流速で流れる。電極間を流れる水性液体の流速は、電極間を流れる電流値にもよるが、1〜100mm/秒の範囲(たとえば、5〜50mm/秒の範囲)にあってもよい。電極間を流れる水性液体の流速を速くすることによって、(σx−σy)/σxの値(イオン除去率)を上記範囲とすることが可能である。また、電極に吸着されるイオンの偏りを小さくできる。
0.0002<(σx−σy)/σx≦0.2が満たされることによって、導電性物質にほぼ均等にイオンを吸着させることができる。これにより、電極の導電性物質のうちの一部(たとえば水性液体の流入口近傍の導電性物質)のイオン吸着が先に飽和することを抑制できる。導電性物質の一部のイオン吸着が先に飽和すると、その部分でガス発生が生じる場合があるため、好ましくない。
なお、一般的な工業用水や水道水では、電気伝導率はイオン濃度と相関関係があり、典型的な一例では、両者はほぼ比例関係にある。そのため、σxおよびσyについての上記関係は、イオン濃度の関係に置き換えることができる。具体的には、工程(i)において、イオン吸着部に導入される水性液体のイオン濃度Cs(mol/L)と、イオン吸着部で処理された後の水性液体のイオン濃度Ct(mol/L)とが、0.0002<(Cs−Ct)/Cs≦0.2を満たすように工程(i)が行われてもよい。また、工程(i)は、0.01≦(Cs−Ct)/Cs≦0.1を満たすように行われてもよい。
イオン吸着部で処理された水性液体のイオン濃度が、目標とする系のイオン濃度に比べて充分に低くなるようにイオンを吸着し、それを系の水性液体と混ぜることによって系の水性液体のイオン濃度を下げることも可能である。しかし、多くのイオンを吸着してイオン吸着部内の水性液体の電気伝導率が低下すると、イオンの吸着速度が低下することになる。そのため、イオン吸着部で処理された水性液体のイオン濃度が、目標とする系のイオン濃度よりも高いか、それと同程度とすることが好ましい。たとえば、イオン吸着部で処理された水性液体の電気伝導率σy(またはイオン濃度Ct)が、処理開始初期の段階では目標とする系のイオン濃度よりも高くなるように工程(i)を行い、処理が進むにつれて(工程(i)および(ii)を繰り返すにつれて)、電気伝導率σy(またはイオン濃度Ct)が低くなるように工程(i)を行ってもよい。
槽内の水性液体から均質にイオンを除去する方法として、電気二重層吸着を用いたバッチ処理もある。しかし、その場合には、通常、槽全体に均質に電極を入れてイオンを吸着することになる。この場合、多量の水を処理するために電極間距離を大きくすると、イオンの吸着速度が遅くなり、また、廃液の量が多くなる。一方、電極間距離を短くするには多数の電極が必要であり、電極のコストが高くなる。
本発明をクーリングタワーなどの装置に適用すると、水の使用量を大幅に低減でき、装置の維持費を低減できる。また、スケールの防止に用いる薬剤の量をゼロまたは少量とすることができるため、廃液による環境汚染も低減できる。また、本発明を用いて水の硬度を低下させる場合には、廃液の量を低減できるとともに、イオン吸着部(電極対)を小型化できる。
水道水や工業用水などの水性液体を保持する系(S)の腐食を防止するには、系(S)内の水性液体の電気伝導率を100μS/cm以下に保つことが好ましい。また、系(S)に保持されている水性液体のイオン濃度の上昇を抑制するために、系(S)に補給される水性液体に含まれるイオンの量と同等以上の量のイオンを吸着して排出することが好ましい。これらの条件は、イオン吸着部(電極対)のサイズや数などを調整することによって達成することが可能である。
本発明によれば、系(S)に存在する水性液体のイオン濃度を低減できる。そのため、処理を行わなければイオン濃度が上昇してしまうような系(S)に本発明を適用することによって、イオン濃度が上昇することを防止することが可能である。本発明が適用される系(S)の例には、クーリングタワーを含み冷却水が流れる冷却系、金型などの物品を洗浄する洗浄水が流れる洗浄系、金型などの物品の温度を調整するための水が流れる系が含まれる。また、系(S)は、水性液体を保持する槽を含む系であってもよい。そのような系(S)の例には、飲料水が保持されるタンクを備える給水器、洗浄水が保持されるタンクを備える洗浄便座、洗浄水が保持される槽を備える洗濯機や食洗機などが含まれる。本発明を用いて水性液体中のマグネシウムイオンやカルシウムイオンを除去することによって、水性液体の硬度を低下させることが可能である。そのため、本発明によれば、飲料や洗浄に適さない硬水を軟水にすることや、系内におけるスケールの発生を防止することが可能である。また、水性液体の塩素濃度を低減することによって、系の腐食を防止できる。また、カルシウム、マグネシウムや塩素濃度を低減することによって、洗髪の際の髪へのダメージが少ない水が得られる。
以下に、本発明について例を挙げて説明するが、本発明は以下の例に限定されない。
(実施形態1)
実施形態1では、本発明の装置および方法の一例について説明する。実施形態1のイオン濃度低減装置に含まれるイオン吸着部100の構成を図6に模式的に示す。イオン吸着部100は、槽110と、槽110内に配置された電極ブロック120とを含む。槽110は、水性液体の流入口110aおよび流出口110bを備える。流入口110aの部分には、イオン吸着部100に導入される直前の水性液体の電気伝導率σxを測定するためのセンサ(図示せず)が配置される。また、流出口110bの部分には、イオン吸着部100で処理された直後の水性液体の電気伝導率σyを測定するためのセンサ(図示せず)が配置される。
電極ブロック120の一例の構成を図7に模式的に示す。電極ブロック120は、複数の第1の電極121、複数の第2の電極122、およびそれらの間に配置されたスペーサ123を含む。一例の電極121および122は、活性炭を含有する複数のシート(以下、「活性炭シート」という場合がある)の積層体と、当該シートと接触するように配置された配線とを含む。配線には、たとえば、白金コートされたチタン配線などを用いることができる。活性炭シート124に対する配線125の配置の一例を、図8に模式的に示す。
第1の電極121に含まれる活性炭の質量は、第2の電極122に含まれる活性炭の質量の1.5〜3倍の範囲にある。同じ活性炭シート124を用いる場合、第1の電極121に含まれる活性炭シートの枚数を、第2の電極122に含まれる活性炭シートの枚数の1.5〜3倍の範囲とすればよい。図7には、両端の第1の電極121が3枚の活性炭シート124(第1の導電性物質)を含み、その他の第1の電極121が6枚の活性炭シート124を含み、第2の電極122が3枚の活性炭シート124(第2の導電性物質)を含む例を示している。この例では、1枚のスペーサ123、および、それを挟むように対向する第1の電極121(3枚の活性炭シート124)と第2の電極122(1.5枚の活性炭シート124)とが、1つの電極対126を構成する。好ましい一例では、第1の電極121の第1の導電性物質、第2の電極122の第2の導電性物質、およびスペーサ123は、同じ平面形状(たとえば矩形)を有し、それらが重ね合わされることによって1つの電極ブロックが形成される。複数の電極対126は並列に接続される。具体的には、第1の電極121同士が接続されるとともに、第2の電極122同士が接続される。
スペーサ123の一例の形状を、図9〜図11に示す。図9は、スペーサ123の正面図である。図10および11は、それぞれ、図9の線X−XおよびXI−XIにおける断面図である。なお、図10および11には、電極121および122の配置も模式的に示す。
図9に示されるスペーサ123は、ストライプ状に配置された複数の樹脂細線123aと、樹脂細線123aとクロスするようにストライプ状に配置された複数の樹脂細線123bとを含む。樹脂細線123aと樹脂細線123bとは、それらの交点で接合されている。樹脂細線123a同士の間には、直線状に伸びる複数の流路123cが形成され、樹脂細線123b同士の間には、直線状に伸びる複数の流路123dが形成される。すなわち、第1の電極121の表面(第1の導電性物質の表面)および第2の電極122の表面(第2の導電性物質の表面)のそれぞれに、ストライプ状に配置された複数の流路がスペーサ123の空隙によって形成されている。この流路を通して水性液体を速やかに流すことができる。その結果、従来の通液型キャパシタとは異なり、電極の導電性物質へのイオン吸着のばらつきを低減できる。
電極の膨張等による短絡を防止するために、隣接する2つの樹脂細線の間隔(図9のL)は、電極間距離の10倍以下とすることが好ましい。
イオン吸着部100を用いた本発明のイオン濃度低減装置の一例を図12に模式的に示す。図12のイオン濃度低減装置10は、イオン吸着部100、電源140、ポンプ141、流量調節バルブ150、バルブ151〜153、およびフィルタ161〜162を含む。電源140は、積算電流計を備える。なお、本発明の装置は、図示していない、各種センサ(電気伝導率計やpH計)、他のポンプ、他のバルブ、他の配管、他の電源などをさらに備えてもよい。また、本発明の装置は、各種センサからの出力をモニタし、各種機器を制御するためのコントローラを備えてもよい。
イオン吸着部100の槽110の流入口110aは、流路171によって系200に接続されている。槽110の流出口110bは、流路172によって系200に接続されている。系200に特に限定はなく、貯水槽であってもよいし、系(S)の一部であってもよい。イオン吸着部100の槽110は、液体経路(P)として機能する。槽110の両端(流入口110aおよび流出口110b)が系200に接続されることによって、イオン吸着部100と系200とを含む循環路が形成される。流出口110bに接続されている流路172には、排液路173が接続されている。なお、排液路173は、槽110や、槽110に接続されている他の配管に接続されていてもよい。
装置10を用いたイオン濃度低減方法の一例について、以下に説明する。まず、工程(i)によって、系200内の水性液体201中のイオンを吸着する。具体的には、バルブ153を閉じ、バルブ150〜152を開いた状態でポンプ161を駆動し、イオン吸着部100と系200との間で水性液体201を循環させる。その状態で、第1の電極121がアノードとなり第2の電極122がカソードとなるように電極間に直流電圧を印加する。この電圧印加によって、水性液体201中の陰イオンを第1の電極121中の活性炭シートに吸着させ、水性液体201中の陽イオンを第2の電極122中の活性炭シートに吸着させる。その結果、水性液体201中のイオン濃度が減少する。
工程(i)の一例における電圧印加は、以下の条件の少なくとも1つが満たされたときに停止される。
(x)第1の電極の飽和イオン吸着量に対する、実行中の工程(i)において第1の電極に吸着されたイオンの総電荷量の割合が所定値に到達した。
(y)第2の電極の飽和イオン吸着量に対する、実行中の工程(i)において第2の電極に吸着されたイオンの総電荷量の割合が所定値に到達した。
上記(x)および(y)における所定値は、たとえば、イオン吸着率について例示した範囲にある値とすることができる。第1および第2の電極の飽和イオン吸着量は、上述した方法によって予め算出しておく。また、第1および第2の電極に吸着されたイオンの総電荷量は、たとえば、電極間に流れた電流値がすべてイオンの吸着に使用されたものと仮定して算出できる。すなわち、吸着されたイオンの総電荷量は積算電流計を用いて算出できる。そのため、上記(x)および(y)の所定値(たとえば上記(a)および(b)の割合よりも少ない値)を決定すれば、その割合に到達するときの積算電流計の値が求められる。従って、工程(i)を停止して工程(ii)を開始するか否かは、積算電流計の値が所定値に到達したかどうかで決定できる。
上記(x)および(y)のうちの少なくとも1つが満たされたら、工程(i)における電圧印加を停止し、工程(ii)を開始する。具体的には、バルブ151〜153を閉じ、イオン吸着部100内の水性液体201の流れを停止する。すなわち、イオン吸着部100と系200との間の水性液体201の流れを遮断する。その状態で、第1および第2の電極121および122に吸着されたイオンを、槽110内の水性液体201中に放出させる。たとえば、第1の電極121と第2の電極122とを短絡させることによって、イオンを水性液体201中に放出させることができる。このようにして、工程(ii−a)が行われる。
次に、工程(ii−b)が行われる。まず、バルブ152を閉じ、バルブ150、151および153を開いた状態で、ポンプ141を駆動することによって、イオン吸着部100内の水性液体201(イオンが放出された水性液体201)を排液路173から外部に放出する。このようにして、工程(ii−b)が行われる。
工程(i)および(ii)を実行することによって、系200中の水性液体201中のイオンを、系200の外部に排出できる。本発明では、工程(i)および(ii)を1サイクルとして、このサイクルを複数回繰り返す。本発明の好ましい一例では、工程(i)において、イオンの吸着速度が速い部分を用いてイオンの吸着を行うことによって、処理を速くすることができる。また、バルブ151とバルブ152との間に存在する水性液体201の量を少なくすることによって、廃液の量を少なくすることができる。
(実施形態2)
本発明のイオン濃度低減装置は、複数のイオン吸着部を備えてもよい。そのような装置の一例を図13に示す。図13の装置10bは、複数のイオン吸着部100、イオン吸着部100ごとに設けられたポンプおよびバルブを備えることを除いて、装置10と基本的に同じであるため、重複する説明を省略する。なお、図13では、図示を簡略化し、また、電源の図示を省略している。
図13の装置10bによれば、イオン吸着部100の数を調整することによって、イオン濃度の除去速度を調整できる。なお、装置10bでは、イオン吸着部100ごとに排液路173を設けてもよい。そのような構成によれば、各イオン吸着部100における工程(i)および(ii)をずらすことができる。すなわち、いずれかのイオン吸着部100によって工程(i)が常に実施されている状態とすることができ、系200内のイオン濃度を安定させることができる。
(実施形態3)
本発明の装置は、排液路173に接続された廃液槽を備えてもよい。そして、その廃液槽にさらに本発明の装置(たとえば装置10や装置10b)が接続されていてもよい。そのような一例を図14に示す。ただし、図14には、排液路173よりも下流側の部分のみを示す。
図14に示すように、排液路173は、廃液槽210に接続されている。廃液槽210には、装置10が接続されている。装置10によって、廃液槽210内の廃液211が処理される。その結果、図14の装置10の排液路173aからは、廃液211よりもイオン濃度が高い廃液が排出される。この構成によれば、廃液の量を特に減少させることができる。
(実施形態4)
実施形態4では、貯水槽に接続されたイオン濃度低減装置を備える装置の一例について説明する。実施形態4の装置の構成を、図15に模式的に示す。図15の装置250は、貯水槽251と、貯水槽251に接続されたイオン濃度低減装置10とを含む。貯水槽251には、流入口251aと流出口251bとが形成されており、それらは流路252につながっている。水性液体201は、流入口251aから貯水槽251に導入され流出口251bから排出される。なお、イオン濃度低減装置10については実施形態1で説明したため、重複する説明を省略する。
装置250では、貯水槽251内の水性液体201のイオンが、本発明のイオン濃度低減装置10によって除去される。そのため、水性液体201のイオンを効率よく除去することが可能である。貯水槽251、流路171、槽110、および流路172は循環路を構成している。本発明の好ましい一例では、電極におけるイオン吸着を均一に生じさせるために、循環路を流れる水性液体201の流速を速くする。一方、流路252を流れる水性液体201の流速は、循環路を流れる水性液体201の流速とは別に設定することが可能である。そのため、装置250では、流路252を流れる水性液体201を流速を遅くした状態で、流路252を水性液体201が1回流れる間にそのイオン濃度を大きく低減することが可能である。
流路252を流れる水性液体のイオンを従来の通液型キャパシタで除去する場合、貯水槽251の代わりに通液型キャパシタを配置してイオンを除去する。しかし、水性液体が流路252を1回流れる間に従来の通液型キャパシタを用いて多量のイオンを除去する場合、別途述べるように様々な問題が生じる。しかし、図15の装置250では、流路252を1回流れる間に効率よくイオンを除去することができ、通液型キャパシタで生じる問題を回避することが可能である。
(実施形態5)
実施形態5では、複数のイオン吸着部を用いて消費電力を低減する形態の一例について説明する。実施形態5の装置は、2つのイオン吸着部100aおよび100bを備える。イオン吸着部100aおよび100bと電源140との関係を、図16Aを参照して説明する。なお、図16Aでは、説明に必要な部分のみを図示し、その他の部分の図示は省略する。また、図16Aでは、配線を切り替えるためのスイッチの図示を省略している。
まず、イオン吸着部100aでイオンの吸着を行う。これによって、イオン吸着部100aの電極(第1の電極121aおよび第2の電極122a)にイオンが吸着される。ここでは、一例として、第1の電極121aに陽イオンが吸着され第2の電極122aに陰イオンが吸着された場合について説明する。電極に吸着されたイオンは、イオン放出工程(工程(ii)、工程(ii−a))で放出されるが、電極にイオンが吸着された状態は、コンデンサに電気が充電された状態と同じであり、この電気をもう1つのイオン吸着部100bのイオン吸着工程(工程(i))に利用することが可能である。そのためには、イオン吸着部100aの電極(第1の電極121aおよび第2の電極122a)、イオン吸着部100bの電極(第1の電極121bおよび第2の電極122b)、および電源140を、たとえば図16Aに示すように接続する。そして、イオン吸着部100aに吸着されたイオンが放出されるように直流電圧を印加する。図16A中では、イオンの価数に関わらず、陽イオンおよび陰イオンをそれぞれ、模式的に「L」および「L」で示す。なお、イオン放出工程において、イオン吸着部100aの第2の電極122aを電源140の負極に接続し、イオン吸着部100bの第1の電極121bを電源140の正極に接続し、イオン吸着部100aの第1の電極121aとイオン吸着部100bの第2の電極122bとを接続してもよい。
イオンを吸着したイオン吸着部100aでは、電極間の電圧が、ある電圧(たとえば1ボルト程度)になるまで充電されている。そのため、図16Aに示すように配線を行うことによって、電源140から供給される電圧よりも高い電圧をイオン吸着部100bに印加できる。また、図16Aのように配線を行い、充電時の電圧が定電圧になるように制御してもよい。また、図16Aの配線において、電極間に定電流が流れるように制御してもよい。
イオン吸着部100bにおけるイオンの吸着とイオン吸着部100aにおけるイオンの放出とが進行するにつれて、イオン吸着部100aにおける充電電圧がゼロボルトに到達する。配線の状態を変えずに電圧印加を継続すると、イオン吸着部100aにおいて放出されたイオンが再度イオン吸着部100aで吸着されてしまう。そのため、イオン吸着部100aにおける充電電圧がゼロボルト前後に到達したときに、図16Bのようにイオン吸着部100aを電源から切り離して2つの電極を短絡させることが好ましい。これによって、イオン放出工程にあるイオン吸着部100aにおいてイオンが吸着されることを防止できる。なお、イオン放出工程の時間を短縮するには、イオン吸着部100aにおける充電電圧がゼロボルトを超えてマイナスとなるまで図16Aの配線で電圧印加を行い、その後に図16Bのように配線を切り替えてもよい。
図16Bの工程によって、イオン吸着部100bは充電された状態となる。イオン吸着部100bのイオン放出工程において、上記と同様に、イオン吸着部100bに蓄積された電力をイオン吸着部100aのイオン吸着に用いることができる。すなわち、イオン吸着部100aが放電(イオン放出)するときにその電力をイオン吸着部100bの充電に用い、イオン吸着部100bが放電するときにその電力をイオン吸着部100aの充電に用いることができる。このように、複数のイオン吸着部を用い、1つのイオン吸着部の工程(ii)の際に生じる電力を、他のイオン吸着部の工程(i)に要する電力に利用してもよい。
なお、本発明の装置のイオン吸着部において、複数の電極対は並列に接続されていなくてもよい。そのようなイオン吸着部における電極対の構成の一例を、図17に模式的に示す。図17の構成では、複数の電極対126aが平行に配置され、且つ、隣接する電極対126aが導電性シート128によって直列に接続されている。このようにして、複数の電極対126aが1つの電極群(電極ブロック)129を構成している。
各電極対126aは、第1の電極121および第2の電極122を含む。第1の電極121(活性炭シート124)と第2の電極122(活性炭シート124)との間には、通常、図7の電極対126と同様にスペーサ123が配置されるが、図17では図示を省略している。隣接する2つの電極対126aの第1の電極121と第2の電極122との間には、導電性シート128が配置されている。すなわち、図17の電極群129(複数の電極対)は、第1および第2の導電性物質(活性炭シート124)を支持する導電性シート128を含む。電極121および122には、実施形態1で説明した電極121および122を用いることができる。導電性シート128には、導電性ゴムシートやグラファイトシートを用いることができる。電極群129の両端に位置する2つの電極には、集電体127aおよび127bが接続されている。集電体127aおよび127bは、電源の正極および負極に接続される。集電体127aが直流電源の正極に接続され集電体127bが電源の負極に接続される場合、各電極対126aの第1の電極121がアノードとなり第2の電極122がカソードとなる。
好ましい一例では、導電性シート128は、通液性を有さないシートであり、電極121および122の導電性物質よりもサイズが大きい。このような構成によれば、隣接する電極対126a間をイオン伝導によって流れるリーク電流を低減できる場合がある。
導電性シート128は、絶縁性シート(図示せず)によって槽に固定されてもよい。なお、槽に形成される水性液体の流入口および流出口が1つずつである場合、水性液体が各電極対126aに流れるようにする必要がある。その場合には、液が流れることが可能な絶縁性シート(たとえばネット状の絶縁性シート)を用いてもよい。なお、アノードとカソードとの間に配置されているスペーサによって、導電性シート間の電気伝導を抑制してもよい。
電極群129の各電極対126aにおいて、第1の電極121と第2の電極122との間の空隙を水性液体が流れる。そのため、図7の構成と同様の効果が得られる。さらに、図17の電極群129を用いる構成は、集電体の数を少なくすることが可能であるという利点、および、イオンを除去するために要する電流を小さくすることができるという利点を有する。
また、複数の電極群129を用い、それらを並列に接続してもよい。そのような一例を、図18に模式的に示す。図18の構成は、3つの電極群129a〜129cを含む。電極群129a〜129cのそれぞれは、直列に接続された4つの電極対126aを含む。電極群129aの一端にある第1の電極121は集電体127aに接続されている。電極群129aの他端にある第2の電極122は、電極群129bの一端にある第2の電極122と、集電体127bによって接続されている。また、電極群129bの他端にある第1の電極121は、電極群129cの一端にある第1の電極121と、集電体127cによって接続されている。また、電極群129cの他端にある第2の電極122は、集電体127dに接続されている。集電体127aと集電体127cとが電源140の一方の端子に接続され、集電体127bと集電体127dとが電源140の他方の端子に接続される。このように接続することによって、3つの電極群129が並列に接続される。図18に示すように、隣接する電極群で電極の配置を逆にし、隣接する電極対の隣接する電極間を集電体で接続することによって、少ない集電体で電極群を並列に接続できる。
電極ブロックの他の一例の断面図を図19に模式的に示す。図19には、水性液体の流れを矢印で示す。図19に示す電極ブロックの電極対は、活性炭シート124(第1および第2の導電性物質)を支持する導電性シート128を含む。導電性シート128は、活性炭シート124よりも、水性液体の流れの上流側および下流側に飛び出している。
電極ブロックの他の一例の断面図を図20に模式的に示す。図20には、水性液体の流れを矢印で示す。図20に示す電極ブロックの電極対は、活性炭シート124(第1および第2の導電性物質)を支持する導電性シート128を含む。導電性シート128の端部には絶縁性シート131が接続されている。絶縁性シート131は、活性炭シート124よりも、水性液体の流れの上流側および下流側に飛び出している。なお、図19および20に示した導電性シート128は、通液性を有さないシートである。
本発明では、第1の電極121の活性炭シート124と第2の電極122の活性炭シート124との間に電圧が印加される。このとき、活性炭シート124の端部において水が電気分解されることがある。このような電気分解が生じると、それによって生じたガスが水性液体の流れを阻害したり、電気の利用効率が低下したりすることになる。そのため、そのような電気分解を抑制することが好ましい。
抵抗率が比較的高く且つ通液性がない導電性シート128を用いる場合、図19に示すように、導電性シート128を活性炭シート124よりも大きくすることによって、活性炭シート124の端部における水の電気分解を抑制できる。図19に示した一例では、導電性シート128は、水性液体の流れの上流側に長さL1だけ、活性炭シート124から飛び出している。また、導電性シート128は、水性液体の流れの下流側に長さL2だけ、活性炭シート124から飛び出している。このとき、長さL1(および長さL2)における導電性シート128の電気抵抗が、隣接する2つの導電性シート128の間に存在する水性液体の電気抵抗よりも高くなるようにすることが好ましい。図19の構成で用いることができる導電性シート128の例には、通液性を有さない導電性ゴムシートや、通液性を有さない導電性樹脂シートが含まれる。それらの体積抵抗率は、たとえば10〜10Ω・cmの範囲にあってもよい。
抵抗率が比較的低い導電性シートや通液性を有する導電性シートを用いる場合には、図20に示すように、通液性を有さない絶縁性シート131を導電性シート128に接続してもよい。絶縁性シート131は、活性炭シート124の外側に配置される。図20に示した一例では、絶縁性シート131は、水性液体の流れの上流側に長さL1だけ、活性炭シート124から飛び出している。また、絶縁性シート131は、水性液体の流れの下流側に長さL2だけ、活性炭シート124から飛び出している。導電性シート128は、活性炭シート124とほぼ同じサイズである。絶縁性シート131を用いることによって、活性炭シート124の端部における水の電気分解を抑制できる。図20の構成で用いることができる導電性シートの例には、通液性を有さないグラファイトシートが含まれる。
導電性シート128よりも上流側で水が電気分解されてガスが発生した場合、電極群の中に気泡が留まって水性液体の流れを阻害する場合がある。従って、導電性シート128の上流側における水の電気分解を特に抑制する必要がある。また、長さL1およびL2を大きくすると、電極ブロック内のデッドスペースが大きくなるという問題がある。これらの点を考慮すると、図19および図20において、長さL1を長さL2よりも長くすることが好ましい。なお、図20の構成では、スペーサ123と接するように絶縁性シート131を厚くすることによって、流れ方向における水性液体の電気抵抗を高くしてもよい。そのような構成によれば、長さL1およびL2を短くすることが可能である。
また、活性炭シート124から飛び出している部分のスペーサを、第1の電極121の活性炭シート124と第2の電極122の活性炭シート124との間の存在するスペーサよりも空隙率が小さいものにしてもよい。たとえば、2つの活性炭シート124の間に存在するスペーサの空隙率を50%〜95%の範囲とし、活性炭シート124から飛び出している部分のスペーサの空隙率を5%以上50%未満としてもよい。この構成によれば、デッドスペースを減らすことができるとともに、デッドスペースにおける水性液体の電気抵抗を高くすることができる。
図19および図20の構成において、イオンの吸着に用いられずにリーク電流として電極間を流れる電気量は、イオンの吸着に用いられる電気量の100分の1以下(たとえば1000分の1以下)となるようにすることが好ましい。
(水質調整装置)
本発明で用いることができる水質調整装置の一例を、図21に示す。図21の装置300は、槽310、白金電極311、およびイオン吸着電極312を含む。白金電極311は、たとえば、白金コートされた金属配線がストライプ状に配置された電極である。イオン吸着電極312は、たとえば、活性炭(活性炭粉末や活性炭繊維クロス)を含む平板状の電極である。白金電極311およびイオン吸着電極312は、対向するように槽310内に配置されている。白金電極311およびイオン吸着電極312は、直流電源(図示せず)に接続される。この直流電源には、水質調整装置専用の電源を用いてもよいし、イオン濃度低減装置の電源を利用してもよい。装置300を用いて、水性液体のpHを変化させること、および、遊離塩素を生成することが可能である。
なお、電極の短絡を防止するために、電極間に絶縁性のセパレータ(スペーサ)を配置してもよい。セパレータには、イオンを自由に透過させるセパレータを用いることができる。セパレータの例には、樹脂で形成された、ネット、不織布および織布が含まれる。
槽310内の水性液体のpHを低下させる場合、白金電極311がアノードとなりイオン吸着電極312がカソードとなるように、且つ、白金電極311において水の電気分解が生じるように、両電極に電圧を印加する。この電圧印加によって、白金電極311において酸素ガスおよび水素イオンが生成する。また、この電圧印加によって、イオン吸着電極312に陽イオンが吸着される(なお、電圧印加前にイオン吸着電極312に陰イオンが吸着されていた場合、その陰イオンは放出される)。その結果、水性液体中の水素イオンが増加してpHが低下する。一方、槽310内の水性液体のpHを上昇させる場合、白金電極311がカソードとなりイオン吸着電極312がアノードとなるように、且つ、白金電極311において水の電気分解が生じるように、両電極間に直流電圧を印加する。この電圧印加によって、白金電極311において水素ガスおよび水酸化物イオンが生成する。また、この電圧印加によって、イオン吸着電極312に陰イオンが吸着される(なお、電圧印加前にイオン吸着電極312に陽イオンが吸着されていた場合、その陽イオンは放出される)。その結果、水性液体中の水素イオンが減少してpHが上昇する。pHを変化させる一例では、両電極間に、3ボルト〜20ボルトの範囲の電圧を印加する。
以上のように、水質調整装置を用いることによって、水性液体のpHを調整することが可能である。すなわち、水性液体を酸性またはアルカリ性とすることが可能である。水質調整装置を設置する場所に特に限定はない。水質調整装置は、循環路に設置してもよく、たとえば、流路171、流路172、系200、および槽110のいずれかの場所に設置してもよい。また、塩濃度が高い廃液が流れる排液路に水質調整装置を設置してもよい。そして、塩濃度が高い廃液を利用して酸性および/またはアルカリ性の水性液体を調整し、その水性液体を、系を含む循環路に戻してもよい。
水性液体を酸性とすることによって、系や槽や流路や電極表面に生じたスケール(水酸化カルシウムや水酸化マグネシウムなど)、および腐食物などを除去することが可能である。一方、水性液体をアルカリ性とすることによって、イオンとして吸着されにくいケイ素イオンを、イオンとして吸着させることもできる。また、析出したケイ素成分を除去することが可能である。また、水性液体のpHを調整することによって、イオン吸着電極に吸着された有機物などを分解または溶解して除去することが可能である。これらの除去によって、電極の能力の低下や、配管抵抗の増大を防止できる。ただし、酸性の状態やアルカリ性の状態を長時間維持すると系の腐食が生じる場合があるので、それを考慮してpHを調整することが好ましい。pHの調整は、循環路に設置したpH計の出力を参照しながら行ってもよい。
水性液体のpHを酸性にする場合の一例では、pHが4〜6の範囲となるまで水性液体のpHを変化させる。その状態でpHを低下させるための処理を停止すると、スケール(金属水酸化物)が溶解した分だけpHが上昇し、水性液体をほぼ中性とすることができる。そのため、pHを上記範囲とすることによって、系の腐食を抑制できると共にスケールを除去することが可能である。ただし、この場合でも、pHが中性域に戻らない状態でpHを酸性にする処理を続けると、腐食が起こる可能性がある。また、上記の範囲よりもpHを下げると、酸による腐食が発生しやすくなる。
水性液体のpHを変化させることによって循環路の一部または全部を洗浄(および殺菌)する場合、以下の(m)および(n)の工程を、順番に行ってもよいし、交互に繰り返し行ってもよい。また、いずれかの工程を複数回繰り返して行った後に、他方の工程を複数回繰り返して行ってもよい。なお、以下の(m)および(n)の工程は、いずれを先に行ってもよい。
(m)水性液体を酸性にし、その水性液体を用いて洗浄を行う。
(n)水性液体をアルカリ性にし、その水性液体を用いて洗浄を行う。
なお、水性液体を酸性にするとカルシウムイオンやマグネシウムイオンが水性液体に溶け出すため、本発明のイオン濃度低減装置を用いてできるだけイオンを除去した後に(n)の工程を行うことが好ましい。また、それらの工程の後にも、本発明のイオン濃度低減装置を用いてイオンを除去することが好ましい。また、水性液体のpHを変化させて洗浄を行った後に、水性液体のpHを中性に戻す処理を行ってもよい。
上記の工程は、イオン吸着部の洗浄に特に有効である。そのため、好ましい一例では、イオン吸着部の槽にpH調整装置を接続する。その場合の一例では、水性液体の流れおよび電圧印加を停止した状態のイオン吸着部の槽に、pH調整装置で作製した洗浄水(酸性/アルカリ性の洗浄水)を入れることによって、上記の洗浄工程を行う。洗浄後は、系に存在する水性液体でイオン吸着部の槽内を洗浄した後、洗浄に用いた水性液体を廃棄してもよい。
水性液体が塩素イオンを含む場合、上記の水質調整装置は、水性液体中の塩素イオンから遊離塩素(溶存塩素、次亜塩素酸、および次亜塩素酸イオン)を生成するための殺菌装置として用いることも可能である。殺菌装置は、pH調整装置と同様に、循環路の任意の場所に配置することができる。たとえば、図12および図13において、流路171、流路172、系200、および槽110のいずれかの場所に殺菌装置を設置してもよい。また、塩濃度が高い廃液が流れる排液路に殺菌装置を設置してもよい。本発明のイオン濃度低減装置は、pH調整装置および殺菌装置をそれぞれ1つ以上備えてもよい。また、1つの水質調整装置を、pH調整装置および殺菌装置として用いてもよい。
図21に示した装置300を殺菌装置として用いる一例について説明する。この場合、白金電極311がアノードとなりイオン吸着電極312がカソードとなるように両電極間に直流電圧を印加する。このとき、アノードで塩素イオンが酸化されて塩素分子となるように電圧を印加する。一例では、両電極間に2ボルト〜40ボルトの範囲の電圧を印加する。この電圧印加によって、白金電極311(アノード)で塩素イオンが酸化されて塩素分子が生成する。一方、イオン吸着電極312(カソード)には陽イオンが吸着される。
アノードで生成した塩素分子は、水と反応して次亜塩素酸や次亜塩素酸イオンを生じる。すなわち、上記電圧印加によって、水性液体中の遊離塩素の濃度が上昇する。遊離塩素は、殺菌能力が高いため、系に存在する水性液体の殺菌に利用できる。また、白金電極311において、塩素イオンの酸化と共に水の電気分解(酸素ガスおよび水素イオンの発生)を生じさせることによって、水性液体のpHを下げることができる。すなわち、水性液体を酸性にすることによるスケール等の除去と、水性液体の殺菌とを同時に行うことができる。なお、pHを弱酸性〜中性(たとえばpHが3〜6の範囲)とすることによって、殺菌力を高めることができる。装置300を用いることによって、水性液体中の菌(レジオネラ菌など)を殺菌することが可能である。
白金電極311がカソードとなりイオン吸着電極312がアノードとなるように両電極間に直流電圧を印加した後に、白金電極311がアノードとなりイオン吸着電極312がカソードとなるように両電極間に直流電圧を印加してもよい。この場合、前者の電圧印加によってイオン吸着電極312に陰イオンが吸着される。そして、後者の電圧印加では、イオン吸着電極312において、陰イオンの放出と陽イオンの吸着とが生じる。また、後者の電圧印加では、白金電極311において塩素イオンが酸化され、遊離塩素が生じる。このように電圧を印加することによって、pHを大きく変化させることなく遊離塩素を生成することが可能である。
(遊離塩素濃度調整装置)
本発明で用いることができる遊離塩素濃度調整装置の一例を、図22に示す。図22の装置400は、容器(槽)410、セパレータ413、第3の電極421、第4の電極422、および電源423を含む。装置400は、コントローラを備えてもよい。
容器410は、セパレータ413によって、第1の槽411と第2の槽412とに仕切られている。第2の槽412には、流路414aと流路414bとが接続されている。流路414a、流路414b、および第2の槽412は、1つの流路414を形成している。第1の槽411内の空間は、セパレータ413を介して流路414と接続されている。流路414aおよび流路414bは、本発明の水質調整装置の循環路の一部に接続することができる。第2の槽412は、流入口412cおよび流出口412dを有する。流入口412cおよび流出口412dは、接続部品412eによって、接続の解除が可能な状態で流路414aおよび414bに接続されている。なお、本発明の装置では、流入口412cおよび流出口412dが、接続部品を用いることなく、流路に直接接続されていてもよい。
一例では、流路414aを第2の槽412の下方に接続し流路414bを第2の槽の上方に接続し、流路414aから水性液体を導入し、第2の槽412内で処理された水性液体を流路414bから排出する。この場合には、流入口412cを通って水性液体が第2の槽412に流入し、流出口412dを通って水性液体が流路414bに流出する。流路414aおよび/または流路414bには、必要に応じてポンプおよび/またはバルブが設置される。また、第2の槽412および/または流路414(通常は、第2の槽12の下流側の流路)には、計測器(ORP計、pH計、イオン濃度計、導電率計、溶存酸素計、溶存水素計など)が設置されていてもよい。第1の槽411は開口部411aによって大気に開放されている。一方、第2の槽412は大気から遮断されている。槽411および412には、水性液体が配置される。水性液体が開口部411aから外部に漏れることを防止するための手段が、開口部411aに設けられていてもよい。たとえば、開口部411aに気液分離膜が配置されていてもよい。気液分離膜には、公知のものを用いることができる。
図22に示すように、槽411および槽412のそれぞれに、排液路415および416が接続されていてもよい。排液路415および416のそれぞれには、バルブ415aおよびバルブ416aが設けられている。バルブ415aを開けることによって槽411内の水性液体を排出できる。バルブ416aを開けることによって槽412内の水性液体を排出できる。槽411内の水性液体または槽12内の水性液体を排出することによって、水性液体のpHを調整することが可能である。
水性液体が塩素イオンを含む場合、装置400によって水性液体中の遊離塩素濃度を調整できる。装置400の動作を以下に説明する。電極421および422は、水性液体に浸漬される。電気分解工程は、流路414aから連続的に水性液体が供給され、且つ、流路414bから連続的に水性液体が排出される状態で行われる。すなわち、電気分解工程において、第2の槽412の水性液体は通液状態にあり、一方、第1の槽411の水性液体は通液状態にはない。ただし、槽411および412の水性液体、およびそれに含まれるイオン(陽イオンおよび陰イオン)は、セパレータ413を通過できる。
第2の槽412における処理によって水性液体中の遊離塩素濃度を上昇させるには、第3の電極421と第4の電極422との間に、第3の電極421がカソードとなるように直流電圧を印加する。この電圧印加によって、第3の電極421(カソード)の表面で水素ガスおよび水酸化物イオンが発生する。一方、第4の電極422(アノード)の表面では、塩素イオンが酸化されて塩素分子が生成する。生成した塩素分子の一部は、水と反応して次亜塩素酸や次亜塩素酸イオンを生じる。すなわち、上記電圧印加によって、遊離塩素(溶存塩素、次亜塩素酸、および次亜塩素酸イオン)の濃度が上昇する。このようにして、装置400によれば、水性液体中の遊離塩素濃度を上昇させることができる。
上記電圧印加によって、槽411内の水はアルカリ性となるが、槽411および槽412内の水性液体中のイオンはセパレータ413を介して他方の槽に拡散するため、pHの大幅な変化は抑制される。また、槽411内の水性液体を排出することによって、pHの変化を調整することができる。
以上のように、遊離塩素濃度調整装置を用いることによって、遊離塩素濃度を上昇させることができる。また、上記の装置によれば、pHを大きく変化させることなく遊離塩素濃度を上昇させることができる。遊離塩素濃度を上昇させることによって、系に存在する水性液体の殺菌を行うことが可能である。
本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。
(流速とイオン吸着速度との関係)
ここでは、イオン吸着部を流れる水性液体の流速と、イオンの吸着速度との関係について実験した一例について説明する。この実験では、槽に配置された大阪市の水道水0.8L中のイオンを、図12に示した装置と同様の装置で除去した。イオン吸着部には、積層された6対の電極対からなる電極ブロックを配置した。各電極対は、第1の電極、スペーサ、および第2の電極を積層することによって形成した。
第1の電極(アノード)には、2枚の活性炭繊維クロスと集電体とからなる電極を用いた。第2の電極(カソード)には、1枚の活性炭繊維クロスと集電体とからなる電極を用いた。活性炭繊維クロスにはカイノールACC−5092−10(日本カイノール株式会社製)を用いた。活性炭繊維クロスのサイズは9cm×7cmとした。また、集電体には、白金コートされたチタンワイヤを用いた。
電極間に流す電流値を0.1Aとし、イオン吸着部を流れる水性液体の流速を変えて水性液体の電気伝導率を測定した。測定結果を図23に示す。図23に示すように、流速が4.0L/分の場合にはイオンの吸着速度が速く、流速が遅くなるほどイオンの吸着速度が遅くなった。
電極間に流す電流値を0.04Aとしたことを除いて上記と同じ条件で、イオン吸着部を流れる水性液体の流速を変えて水性液体の電気伝導率を測定した。測定結果を図24に示す。図24に示すように、流速が4.0L/分の場合および流速が1.14L/分の場合には、イオン吸着速度が速かった。
現在のところ明確ではないが、上記の結果は以下のように解釈することが可能であると考えられる。すなわち、電流値が0.1Aの場合には、流速が1.14L/分では、電流値に対する流速が不充分でイオン吸着の偏りが大きくなり、イオンの吸着速度が低下したものと考えられる。一方、電流値が0.04Aの場合には、流速が1.14L/分でもイオン吸着の偏りが少なく、イオンの吸着速度が速かったものと考えられる。すなわち、水性液体の流速が遅い場合には、電極間に流れる電流値を下げることによって、イオンの吸着速度が低下することを抑制できる。また、電極間に流れる電流値を高めた場合にイオン吸着の効率を低下させないためには、水性液体の流速を高めることが好ましい。
(実施例1)
実施例1では、槽に配置された100Lの水道水(電気伝導率180〜190μS/cm)に含まれるイオンを、図12に示した装置と同様の装置で除去した。イオン吸着部には、積層された24対の電極対からなる電極ブロックを配置した。各電極対は、第1の電極、スペーサ、および第2の電極を積層することによって形成した。
電極のサイズ(第1および第2の導電性物質のサイズ)は23.5cm×23.5cmとした。第1の電極(アノード)に含まれる活性炭の面密度を340g/mとし、第2の電極(カソード)に含まれる活性炭の面密度を170g/mとした。スペーサには、厚さが1.6mmのスペーサを用いた。そのため、1つの電極対において、第1の電極と第2の電極との間隔は約1.6mmであった。イオン吸着部には、6L/分の流速で上記水道水を流して処理を行った。このとき、電極間を流れる水道水の流速は、15mm/秒であった。イオン吸着部内において電極ブロックが占有していない部分(デッドスペース)の体積は3.1Lであり、電極ブロック内に配置される液体は1.7Lであった。
イオン吸着は、電極間に定電圧(4.6ボルト)を30分間印加することによって行った。このときに流れた最大電流は20Aであり、安定時の電流は約7Aであった。イオン放出は、30分間電極を短絡させることによって行った。イオンが放出された廃液は、系の外部に放出した。1回のイオン吸着を行い、水道水の電気伝導率の変化を測定した。また、イオン吸着後にイオン放出を行い、廃液の電気伝導率の変化を測定した。次に、同様の水道水を用いて同様の実験を行った。この実験を合計で5回行った。実験結果を図25に示す。
図25のグラフは、イオン吸着時における水道水の電気伝導率の変化を示す。図に示すように、100Lの水道水の電気伝導率を30分間で大きく低減できた。図26は、廃液の電気伝導率を示す。図に示すように、廃液の電気伝導率を水道水の5倍程度とすることができた。このことから、廃液のイオン濃度を、元の水道水の5倍程度にできたと考えられる。この実験結果は、本発明によれば、系の水性液体を廃液としてそのまま排出する場合に比べて、廃液の量を5分の1にできることを示している。なお、この実験ではデッドスペースが3.1Lと大きかったが、デッドスペースを減らすことによって、廃液のイオン濃度を元の水道水の10倍程度にすることが可能であると考えられる。
なお、図25において、電気伝導率は、処理開始から5分経過までの間は変化が小さく、その後は一定の速度で低下している。これは、初期の段階ではアノードのイオン吸着量とカソードのイオン吸着量とのバランスが悪く、そのため、図2で説明した現象が少し現れたものと考えられる。この現象は、アノードとカソードの容量比を調整することによって、より少なくすることができる。また、この現象が起きない程度に、電極を短絡する際に電圧を印加してもよい。
本発明の装置および方法によって系のイオンが除去される過程のイメージを、図27に示す。なお、図27に示されるイオン濃度の変化はイメージであり、実際のイオン濃度の変化とは異なる。図27では、イオンの吸着と放出とを複数回繰り返している。系のイオン濃度は、イオン吸着のたびに徐々に低下する。一方、廃液のイオン濃度は、系のイオン濃度よりも大幅に高くなっており、廃液の量を減らすことができる。
(遊離塩素の生成についての実験)
以下では、水質調整装置を用いた遊離塩素の生成について実験した結果について説明する。この実験では、0.01質量%のKCl水溶液100mL(pHが7.4)を電解槽に入れ、白金電極とイオン吸着電極との間に電圧を印加した。白金電極は、白金コートされたチタンワイヤをストライプ状に配置することによって構成した。イオン吸着電極は、活性炭繊維クロス(サイズ:7cm×9cm)を3枚重ねることによって構成した。これらの電極を、電解槽に配置して電圧印加を行った。
まず、白金電極がカソードとなりイオン吸着電極がアノードとなるように両電極間に直流電圧を印加した。このとき、両電極間に0.2Aの定電流が流れるように電圧を1分間印加した。この電圧印加によって、イオン吸着電極に陰イオンを吸着させた。次に、白金電極がアノードとなりイオン吸着電極がカソードとなるように両電極間に直流電圧を印加した。このとき、両電極間に0.2Aの定電流が流れるように電圧を2.5分間印加した。この電圧印加後の水溶液中の遊離塩素濃度は110mg/LでありpHは6.3であった。このように、水質調整装置を用いて遊離塩素を生成できた。また、上記のように電圧を印加することによって、pHを大きく変えることなく遊離塩素を生成できた。
(実施例2)
実施例2では、図12と同様の装置を用い、工程(i)と工程(ii)とからなるサイクルを繰り返し行った。具体的には、まず、電気伝導率が225μS/cmの水性液体を、容量が200Lの貯水槽(系200)に配置した。そして、イオン吸着部100の電極対に4.5ボルトの電圧を30分間印加することによって工程(i)を行い、水性液体のイオンを吸着した。次に、電極対を30分間ショートさせることによって、工程(ii)を行い、イオン吸着部100内の水性液体にイオンを放出させた。ただし、実施例2では、工程(ii)においてイオンが放出された水性液体(廃液)を、次のサイクルの工程(i)の前に貯水槽に戻した。具体的には、廃液を貯水槽に戻す前に小さな槽に入れて電気伝導率を測定し、その後に廃液を貯水槽に戻した。また、貯水槽内の水性液体の電気伝導率をモニタした。
貯水槽内の水性液体の電気伝導率の変化、および、廃液の電気伝導率を図28に示す。図28のグラフにおいて、貯水槽内の水性液体の電気伝導率の減少は、イオン吸着によってイオンが除去されたことによるものである。また、その電気伝導率の増加は、イオンが放出された水性液体を貯水槽に戻したことによるものである。
初期においては、貯水槽内の水性液体の電気伝導率の変化が大きい。この変化は、工程(i)と工程(ii)からなるサイクルを繰り返すに従って小さくなる。また、工程(i)を開始する前の貯水槽内の水性液体の電気伝導率は、当該サイクルを繰り返すに従って沙低下し、やがてほぼ一定となる。これらの結果は、抵抗(図3の等価回路における電気抵抗)が高い部分に吸着されたイオンが、上記の条件では放出されないことを示している。図28の結果の12時間以降の1つの工程(i)において第1および第2の電極に吸着されるイオンの総電荷量はそれぞれ、第1および第2の飽和イオン吸着量の50%以下であると見積もられる。そのため、速い処理を実現するためには、当該割合が60%に到達する前(たとえば50%に到達する前)に工程(i)を停止することが好ましい。
(実施例3)
実施例3では、イオン除去率((σx−σy)/σxの値)と水性液体の電気伝導率の変化との関係について実験を行った。実験装置には実施例1と同じものを用いた。実施例3でも、30分間の電圧印加によるイオンの吸着と、30分間の電極の短絡によるイオンの放出とを行った。ただし、実施例3では、イオン除去率を0.01および0.25とした。なお、イオン除去率は、電極対を流れる水性液体の流速を変えることによって変化させた。具体的には、イオン除去率が0.01のときの水性液体の流速を、イオン除去率が0.25のときの水性液体の流速よりも速くした。
結果を図29に示す。図29に示すように、電気伝導率の低下の速度は、イオン除去率が0.25のときよりもイオン除去率が0.01のときの方が速かった。この結果は、0.0002<(σx−σy)/σx≦0.2(たとえば、0.01≦(σx−σy)/σx≦0.1)が満たされることが好ましいことを支持している。
バッチ法による従来のイオン吸着では、図30に示すように、流れがない水性液体2に2つのイオン吸着電極1を浸漬し、それらの電極間に直流電圧を印加することによってイオンを吸着する。この場合、イオン吸着電極全体にほぼ均一にイオンが吸着される。そのため、イオン吸着が進んでも2つの電極間に印加される電圧は電極全体でほぼ等しく、活性炭を効率よく利用することができる。一方、従来の通液法によるイオン吸着、たとえば、従来の通液型キャパシタでは、イオン吸着部の流入前と流入後におけるイオンの濃度差を小さくするという考えがなく、水性液体の1回の通過でできるだけ多くのイオンを除去することがよいとされてきた。しかし、そのようにすると、イオンの吸着量のばらつきが大きくなる。具体的には、水性液体の流入側でイオンの吸着量が多くなり、水性液体の流出側でイオンの吸着量が少なくなる。このようなばらつきが生じると、水性液体の流出側において充分にイオンが吸着されていない段階で、水性液体の流入側の活性炭がガス発生電位に到達し、その結果、水性液体の流入側でガスが発生する。このようなガス発生は、水性液体の流れの阻害、活性炭の劣化、および、電流効率の低下をもたらす。一方、ガス発生が生じる前に電圧印加をやめると、水性液体の流出側における活性炭のイオン吸着量は少なくなる。このように、従来の通液型キャパシタの考え方では、イオン吸着電極の活性炭を効率よく利用することができなかった。
一方、バッチ法において多量の水性液体を処理するには、電極間隔を広げて電極間に存在する水性液体の量を増やす必要がある。しかし、電極間隔を広げると、印加すべき電圧が高くなるという問題がある。また、電極間隔を広げると、イオンが放出された廃液の量が多くなるという問題がある。
これらの問題を検討した結果、本発明者らは、バッチ法の利点を通液式で実現する方法を新たに見出した。その方法では、図30の電極を、電極間隔を狭くして小さな槽に入れ、バッチ法と同じ程度の電流を流してイオンを除去する。ただし、バッチ法と同様にイオン濃度をほぼ均一に減少させるために、早い速度で水性液体を循環させる。すなわち、この方法は、上述したように、循環式で且つ通液式の処理においてイオン除去率を小さくする方法である。この方法によれば、イオン吸着のばらつきを小さくできる。この方法では、水性液体がイオン吸着部を1回通過する間に除去されるイオンの量は少ない。そのため、この方法は、一見、イオンを効率よく除去するという目的と反するように見える。しかし、できるだけ均一にイオン吸着が起こる条件において水性液体を循環させて処理することによって、バッチ法と同様に活性炭を効率よく利用でき、結果として、高いイオン除去速度を実現することが可能となる。これらのことは、実施例3の結果によって裏付けられている。さらに、この方法は通液式であるため、電極間隔を狭くしても多量の水性液体を処理することができる。電極間隔を狭くすることによって、印加電圧を低くすること、および、廃液の量を少なくすること、が可能である。
本発明は、その意図および本質的な特徴から逸脱しない限り、他の実施形態に適用しうる。この明細書に開示されている実施形態は、あらゆる点で説明的なものであってこれに限定されない。本発明の範囲は、クレームによって示されており、クレームと均等な意味および範囲にあるすべての変更はそれに含まれる。
本発明は、系に保持されている水性液体のイオン濃度を低減する装置および方法に利用できる。
装置10を用いたイオン濃度低減方法の一例について、以下に説明する。まず、工程(i)によって、系200内の水性液体201中のイオンを吸着する。具体的には、バルブ153を閉じ、バルブ150〜152を開いた状態でポンプ141を駆動し、イオン吸着部100と系200との間で水性液体201を循環させる。その状態で、第1の電極121がアノードとなり第2の電極122がカソードとなるように電極間に直流電圧を印加する。この電圧印加によって、水性液体201中の陰イオンを第1の電極121中の活性炭シートに吸着させ、水性液体201中の陽イオンを第2の電極122中の活性炭シートに吸着させる。その結果、水性液体201中のイオン濃度が減少する。

Claims (25)

  1. 系に保持されている水性液体のイオン濃度を低減する装置であって、
    少なくとも1つのイオン吸着部を含み、
    前記イオン吸着部は、液体経路と、前記液体経路内に配置された複数の電極対とを含み、
    前記液体経路は、前記液体経路と前記系とを含む循環路が形成されるように前記系に接続される流入口と流出口とを含み、
    前記電極対は第1の電極と第2の電極とを含み、
    前記第1の電極は、活性炭を含有する第1の導電性物質を含み、
    前記第2の電極は、活性炭を含有する第2の導電性物質を含み、
    前記第1および第2の電極はそれぞれ、前記水性液体が流れる空隙に面している、イオン濃度低減装置。
  2. コントローラをさらに含み、前記コントローラは、
    (i)前記イオン吸着部と前記系との間を前記水性液体が循環している状態で、前記第1の電極がアノードとなるように前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加することによって前記水性液体中のイオンを前記第1および第2の導電性物質に吸着させる工程と、
    (ii)前記イオン吸着部から前記系への前記水性液体の流れを遮断した状態で、前記第1および第2の導電性物質に吸着された前記イオンを前記イオン吸着部内の液体に放出させ、前記イオンが放出された前記液体を前記循環路の外部に排出する工程と、をこの順に繰り返し実行する、請求項1に記載のイオン濃度低減装置。
  3. 前記コントローラは、
    前記(i)の工程において、前記イオン吸着部に導入される前記水性液体の電気伝導率σx(S/m)と、前記イオン吸着部で処理された後の前記水性液体の電気伝導率σy(S/m)とが、0.0002<(σx−σy)/σx≦0.2を満たすように、前記イオン吸着部における前記水性液体の流速および前記電圧から選ばれる少なくとも1つを制御する、請求項2に記載のイオン濃度低減装置。
  4. 前記コントローラは、前記(ii)の工程において、前記イオン吸着部から前記系への前記水性液体の流れを遮断した状態で、
    (ii−a)前記第1および第2の導電性物質に吸着された前記イオンを前記イオン吸着部内の前記液体に放出させる工程と、
    (ii−b)前記イオンが放出された前記液体を前記循環路の外部に排出する工程と、をこの順に実行する、請求項2または3に記載のイオン濃度低減装置。
  5. 前記コントローラは、前記イオン吸着部における前記水性液体の流れを停止した状態で前記(ii−a)の工程を実行する、請求項4に記載のイオン濃度低減装置。
  6. 前記コントローラは、
    前記(i)の工程において以下の条件、
    (a)実行中の前記(i)の工程において前記第1の電極に吸着されたイオンの総電荷量が、前記第1の電極の飽和イオン吸着量の60%に到達した、
    (b)実行中の前記(i)の工程において前記第2の電極に吸着されたイオンの総電荷量が、前記第2の電極の飽和イオン吸着量の60%に到達した、
    の少なくとも1つが満たされる前に、前記(i)の工程を停止して前記(ii)の工程を開始する、請求項2〜5のいずれか1項に記載のイオン濃度低減装置。
  7. 前記電極対は、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置されたスペーサをさらに含み、
    前記スペーサによって前記空隙が形成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のイオン濃度低減装置。
  8. 前記電極対において、前記第1の電極と前記第2の電極との間の間隔が0.3〜10mmの範囲にある、請求項7に記載のイオン濃度低減装置。
  9. 前記スペーサは、開口率が0.3〜0.9の範囲にあるネット状のスペーサである、請求項7または8に記載のイオン濃度低減装置。
  10. 前記電極対において、前記第1の電極の表面および前記第2の電極の表面のそれぞれに、ストライプ状に配置された複数の流路が前記スペーサの空隙によって形成されている、請求項7〜9のいずれか1項に記載のイオン濃度低減装置。
  11. 前記複数の電極対は、前記第1および第2の導電性物質を支持する導電性シートを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のイオン濃度低減装置。
  12. 前記導電性シートの端部に絶縁性シートが接続されており、
    前記絶縁性シートは、前記第1および第2の導電性物質よりも前記水性液体の流れの上流側に飛び出している、請求項11に記載のイオン濃度低減装置。
  13. 前記複数の電極対が直列に接続されることによって1つの電極群が構成されており、
    前記電極群の両端に存在する2つの電極のみが電源に接続される、請求項1〜12のいずれか1項に記載のイオン濃度低減装置。
  14. 前記第1の導電性物質に含まれる活性炭の質量が、前記第2の導電性物質に含まれる活性炭の質量の1.5〜3倍の範囲にある、請求項1〜13のいずれか1項に記載のイオン濃度低減装置。
  15. 水性液体を保持する系と、前記水性液体のイオン濃度を低減する請求項1〜14のいずれか1項に記載のイオン濃度低減装置とを備える装置。
  16. 前記系がクーリングタワーを含む、請求項15に記載の装置。
  17. 前記イオン濃度低減装置によって前記水性液体の硬度を低下させる、請求項15に記載の装置。
  18. 前記系が貯水槽を含み、
    前記イオン濃度低減装置が前記貯水槽に接続されており、
    前記水性液体の流入口および流出口が前記貯水槽に形成されており、
    前記流入口および前記流出口を介して前記貯水槽を前記水性液体が流れる間に、前記イオン濃度低減装置によって前記水性液体のイオン濃度が低減される、請求項15に記載の装置。
  19. 前記水性液体のpHおよび遊離塩素濃度から選ばれる少なくとも1つの水質を調整するための水質調整装置をさらに含み、
    前記水質調整装置は、前記水性液体が流れる槽と、前記槽内に配置された2つの電極とを含み、
    前記2つの電極は、電気分解を行うための電極と、イオンを吸着するためのイオン吸着電極とを含む、請求項15〜18のいずれか1項に記載の装置。
  20. 流路を流れる前記水性液体の遊離塩素濃度を調整するための遊離塩素濃度調整装置をさらに含み、
    前記遊離塩素濃度調整装置は、
    前記水性液体が配置される容器と、
    前記容器を第1の槽と第2の槽とに仕切るセパレータと、
    前記第1の槽に配置された第3の電極と、
    前記第2の槽に配置された第4の電極と、を備え、
    前記第2の槽には、前記第2の槽が前記流路の一部を構成するように前記流路に接続される流入口と流出口とが形成されており、
    前記第1の槽内の空間が前記セパレータを介して前記流路と接続されている、請求項15〜19のいずれか1項に記載の装置。
  21. 系に保持されている水性液体のイオン濃度を、請求項1に記載のイオン濃度低減装置を用いて低減する方法であって、
    (i)前記イオン吸着部と前記系との間を前記水性液体が循環している状態で、前記第1の電極がアノードとなるように前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加することによって前記水性液体中のイオンを前記第1および第2の導電性物質に吸着させる工程と、
    (ii)前記イオン吸着部から前記系への前記水性液体の流れを遮断した状態で、前記第1および第2の導電性物質に吸着された前記イオンを前記イオン吸着部内の液体に放出させ、前記イオンが放出された前記液体を前記循環路の外部に排出する工程と、をこの順に繰り返す工程を含む、イオン濃度低減方法。
  22. 前記(i)の工程において、前記イオン吸着部に導入される前記水性液体の電気伝導率σx(S/m)と、前記イオン吸着部で処理された後の前記水性液体の電気伝導率σy(S/m)とが、0.0002<(σx−σy)/σx≦0.2を満たすように、前記イオン吸着部における前記水性液体の流速および前記電圧から選ばれる少なくとも1つが制御される、請求項21に記載のイオン濃度低減方法。
  23. 前記(ii)の工程は、前記イオン吸着部から前記系への前記水性液体の流れを遮断した状態で、
    (ii−a)前記第1および第2の導電性物質に吸着された前記イオンを前記イオン吸着部内の前記液体に放出させる工程と、
    (ii−b)前記イオンが放出された前記液体を前記循環路の外部に排出する工程と、をこの順に含む、請求項21または22に記載のイオン濃度低減方法。
  24. 前記イオン吸着部における前記水性液体の流れを停止した状態で前記(ii−a)の工程を行う、請求項23に記載のイオン濃度低減方法。
  25. 前記(i)の工程において以下の条件、
    (a)実行中の前記(i)の工程において前記第1の電極に吸着されたイオンの総電荷量が、前記第1の電極の飽和イオン吸着量の60%に到達した、
    (b)実行中の前記(i)の工程において前記第2の電極に吸着されたイオンの総電荷量が、前記第2の電極の飽和イオン吸着量の60%に到達した、
    の少なくとも1つが満たされる前に、前記(i)の工程を停止して前記(ii)の工程を開始する、請求項21〜24のいずれか1項に記載のイオン濃度低減方法。
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