JPWO2017038220A1 - 通液型キャパシタを用いた脱塩処理方法 - Google Patents

通液型キャパシタを用いた脱塩処理方法 Download PDF

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Abstract

集電体、活性炭電極およびスペーサーを含み、吸着時と脱着時で活性炭電極の極性を反転する通液型キャパシタを用いて被処理液を脱塩処理する方法であって、1)吸着時の上限電圧は1.5V以上4.0V以下であり、2)吸着時の上限電圧よりも脱着時の上限電圧の方が低い、方法。

Description

本発明は、通液型キャパシタを用いて被処理液を脱塩処理する方法に関する。
通液型キャパシタは、静電力を利用して液中のイオンを除去するものであり、これを用いて被処理液の脱塩処理を行うことができる。通液型キャパシタを用いた脱塩方法は、イオンの吸着時に供給した電気エネルギーをキャパシタに蓄電し、イオンの脱着時に電気エネルギーを回収できるため、エネルギー効率に優れる方法である。また、通液型キャパシタは、低い電圧でも脱塩処理が可能である。これらの点から、通液型キャパシタを用いた脱塩方法は設備メリットの高い、工業的に有利な方法である。
このような通液型キャパシタを用いた脱塩方法は、例えば特許文献1に記載されており、ここでは、電極間にチャージバリアを備えた通液型キャパシタを用いて被処理液を脱塩処理することによって、エネルギー効率の向上が試みられている。また、特許文献2では、被処理液を流す際および廃水を流す際の流量ならびにその際の電圧を特定の範囲に規定することによって、スケール発生の抑制および長期間の脱塩処理を図っている。特許文献3では、通液型キャパシタを用いた脱塩方法において、高流量時のイオンの除去率低下が抑制されている。
米国特許第6709560号明細書 米国特許第8470152号明細書 国際公開第2013/108597号
しかしながら、特許文献1および2に記載の方法においては、被処理液の流量が多い場合には十分な脱塩処理を行うことができず、さらに耐久性にも問題があり、長期間の処理が難しい。また、特許文献3に記載の方法においては、被処理液の流量が多い場合においても十分な脱塩処理が可能であるものの、さらなる改善が求められ、また耐久性についても向上の余地がある。
そこで本発明は、被処理液の流量が多い場合であっても被処理液の十分な脱塩処理が可能であり、かつ耐久性の高い、通液型キャパシタを用いて被処理液を脱塩処理する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために、通液型キャパシタを用いた被処理液の脱塩方法について詳細に検討を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕集電体、活性炭電極およびスペーサーを含み、吸着時と脱着時で活性炭電極の極性を反転する通液型キャパシタを用いて被処理液を脱塩処理する方法であって、
1)吸着時の上限電圧は1.5V以上4.0V以下であり、
2)吸着時の上限電圧よりも脱着時の上限電圧の方が低い、方法。
〔2〕活性炭電極への給電方式は定電流である、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕脱着時の上限電圧は0.5V以上2.0V以下である、前記〔1〕または〔2〕に記載の方法。
〔4〕通液型キャパシタはアニオン交換膜およびカチオン交換膜をさらに含む、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕被処理液は溶解固形物を含む水であり、単位面積当たりの活性炭電極に流入する被処理液に含まれる全溶解固形物の量は、1200mg/分/m以下である、前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕被処理液の硬度は60mg/L以上である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の方法。
本発明は、被処理液の流量が多い場合であっても被処理液の十分な脱塩処理が可能であり、かつ耐久性の高い、通液型キャパシタを用いて被処理液を脱塩処理する方法を提供することができる。
通液型キャパシタを説明するための模式分解図である。 図1におけるX−X’断面付近の模式図である。 通液型キャパシタを備えた脱イオン液製造装置の構成を説明するための模式説明図である。 アニオン交換膜およびカチオン交換膜を含む通液型キャパシタの構成の要部を説明するための部分分解斜視模式図である。 アニオン交換膜およびカチオン交換膜を含む通液型キャパシタの上面模式図である。 アニオン交換膜およびカチオン交換膜を含む通液型キャパシタの正面模式図である。 実施例1における処理序盤の通液型キャパシタのサイクル数(処理経過時間)に対する電気伝導度(μS/cm)の変化をプロットしたグラフである。なお、1サイクルは、吸着時60秒と脱着時60秒との合計である。 実施例1における処理序盤の通液型キャパシタのサイクル数(処理経過時間)に対する電流および電圧の変化をプロットしたグラフである。 実施例1における処理終盤の通液型キャパシタのサイクル数(処理経過時間)に対する電気伝導度の変化をプロットしたグラフである。 実施例1における処理終盤の通液型キャパシタのサイクル数(処理経過時間)に対する電流および電圧の変化をプロットしたグラフである。 実施例1における積算精製水量(L)に対するイオン除去率の変化をプロットしたグラフである。 実施例1における積算精製水量(L)に対する効率減少率の変化をプロットしたグラフである。 実施例1における積算精製水量(L)に対する電圧および電流の変化をプロットしたグラフである。 比較例3における積算精製水量(L)に対するイオン除去率の変化をプロットしたグラフである。 比較例3における積算精製水量(L)に対する効率減少率の変化をプロットしたグラフである。 比較例6における積算精製水量(L)に対するイオン除去率の変化をプロットしたグラフである。 比較例6における積算精製水量(L)に対する電圧および電流の変化をプロットしたグラフである。
本発明において用いられる通液型キャパシタは、集電体、活性炭電極およびスペーサーを含む。具体的には、本発明における通液型キャパシタは、第1集電体および第1活性炭電極を含む第1電極ならびに第2集電体および第2活性炭電極を含む第2電極がスペーサーを介して配置されたセルが複数重ねられて構成されている。ここで、第1電極および第2電極における第1および第2活性炭電極は、スペーサーを介して向き合うように配置されている。以下、図1および図2を参照して、通液型キャパシタの構造をより詳細に説明する。なお、図1において、説明の便宜上、層の一部分について、積層構造を展開するように分解したときの様子を模式的に図示している。
図1は、通液型キャパシタ100の構造を説明するための部分分解模式図である。図2は、通液型キャパシタ100の各セルを組み立てたときの図1のX−X’断面の模式図である。図1および図2に示すように、通液型キャパシタ100は、液中のイオンを吸着するための第1電極1および第2電極2が、スペーサー3を介して配置されたセル10を複数重ねるようにして構成されている。各第1電極1はそれぞれ、第1集電体1a(1a’)と、第1集電体1a(1a’)に積層された第1活性炭電極1b(1b’)とを備える。各第2電極2はそれぞれ、第2集電体2aと、第2集電体2aに積層された第2活性炭電極2bとを備える。各第1電極1および第2電極2は、互いに対極である。そして、セル10が複数重ねられて形成された積層体は、例えば、金属製の締結ボルト5a、5bで締結されている。締結ボルト5aは、各セル10において、第1活性炭電極1b(1b’)と対向しないように第1集電体1aにそれぞれ設けられたタブ部1dを電気的に接続する。同様に、締結ボルト5bは各セル10において、第2活性炭電極2bと対向しないように第2集電体2aに設けられたタブ部2dを電気的に接続する。そして、締結ボルト5aまたは締結ボルト5bで締結された、タブ部1dまたはタブ部2dにより、複数の第1集電体1a同士または複数の第2集電体2a同士はそれぞれ電気的に接続される。そして、複数の第1集電体1a同士または複数の第2集電体2a同士を等電位にする。
なお、1つのセルはスペーサーを挟んだ2つの電極から構成される。セルの数はスペーサーの数に一致する。本発明における通液型キャパシタのセルの数は特に限定されないが、具体的には、例えば3〜100個、さらには5〜50個であることが好ましい。
通液型キャパシタ100を用いてイオン性物質を含む被処理液を脱塩処理する場合、被処理液を図1の白抜矢印で示されるような方向に通液する。図略の外部電源により第1電極1と第2電極2との間に電流を流しながら第1電極1と第2電極2とにより形成されるキャパシタ間に通液した場合、通液した被処理液中のイオンが第1活性炭電極1b(1b’)および第2活性炭電極2bに吸着される。そして、キャパシタによりイオンが吸着された後の処理液は各セルの略中央部に設けられた通液孔8に達し、通液孔8を通じて外部に排出される。これによって、イオンが除去された処理液を得ることができる。なお、図1において、第1集電体1a’および第1活性炭電極1b’は、通液方向を規制するために通液孔8を有さず、最上層のセルを形成する。
脱塩処理が進行し、活性炭電極に多量のイオンが吸着された場合には、活性炭電極の極性を反転させることによって、活性炭電極に吸着されたイオンを脱着することができる。つまり、本発明における通液型キャパシタにおいては、活性炭電極におけるイオンの吸着時と脱着時で活性炭電極の極性が反転され、これにより活性炭電極の吸着能力を再生させることができる。
図3を用いて、通液型キャパシタを用いて被処理液を脱塩処理する方法について詳細に説明する。図3には、通液型キャパシタ100と、直流電源20と、通液型キャパシタ100を収容する容器30とを備えた脱イオン液製造装置200が示されている。直流電源20は、正極側および負極側を互いに交換可能に、通液型キャパシタ100の第1電極1または第2電極2を締結する締結ボルト5a、5bに配線20a、20bで接続されている。容器30は、通液型キャパシタ100に被処理液を供給するための給液口31、および通液型キャパシタ100により処理された処理液を排出するための排液口32を備える。また、容器30は締結ボルト5a、5bに通電するための端子15a、15bを備えている。
通液型キャパシタを含む脱イオン液製造装置200を用いて、イオン性物質を含有する被処理液を処理するためには、はじめに、給液口31から容器30内にイオン性物質を含有する水等の被処理液W1を給液する。被処理液W1は、容器30内で、図3中に矢印で示された流路に沿って通液される。そして、被処理液W1は、通液型キャパシタ100の略中央部に設けられた通液孔8を経て、排液口32から排出される。被処理液W1を給液しながら直流電源20から締結ボルト5a、5bにそれぞれ接続された端子15a、15bを介して通液型キャパシタ100に電流を流す。そして、電流を流しながら、容器30の排液口32から脱塩処理された液が排出される。
通液量が増加するにつれて、徐々に、第1電極および第2電極のイオン吸着量が増加して、イオン吸着能が徐々に低下していく。この場合、第1電極に直流電源の正極側、第2電極に直流電源の負極側を接続して両電極間に吸着時とは逆の電流を流し、活性炭電極の極性を反転させる。これにより、第1電極に吸着されたカチオンおよび第2電極に吸着されたアニオンが脱着して、通液される液中に放出され、吸着されたイオンを回収することができる。このようにして、第1活性炭電極および第2活性炭電極の吸着能力を再生させることができる。
被処理液W1に含まれているイオンが第1電極1と第2電極2との間を通過するときに、第1活性炭電極1bおよび第2活性炭電極2bに静電的に吸着されて捕捉される。そして、第1活性炭電極1bまたは第2活性炭電極2bの表面に多量のイオンが吸着された場合には、バルブV1を開け、バルブV2を閉じることによりイオン濃縮液回収経路に切り替える。そして、活性炭電極の極性を反転させることにより、濃縮されたイオンを回収することができる。
本発明の通液型キャパシタを用いた脱塩方法においては、通液型キャパシタに印加される脱着時の上限電圧よりも吸着時の上限電圧の方が低い。通液型キャパシタに印加される脱着時の上限電圧よりも吸着時の上限電圧の方が低いと、吸着時に多くの電流を流すことが可能となり、また、通液型キャパシタ内部へのスケール発生を抑制できるため、通液型キャパシタを用いた脱塩方法において、高流量における脱塩処理が可能となり、かつ耐久性が高くなる。ここで、上限電圧とは、これ以上昇圧しないように設定される電圧の上限値の絶対値である。
本発明の通液型キャパシタを用いた脱塩方法においては、通液型キャパシタに印加される吸着時の上限電圧は1.5V以上、好ましくは2.0V以上、より好ましくは2.5V以上であり、4.0V以下、好ましくは3.75V以下、より好ましくは3.5V以下である。また、通液型キャパシタに印加される吸着時の上限電圧は1.5V以上4.0V以下、好ましくは2.0V以上3.75V以下、より好ましくは2.5V以上3.5V以下である。吸着時の上限電圧が上記範囲内であると、通液型キャパシタを用いた脱塩方法において、高流量における脱塩処理が可能となり、またイオン除去率が一定値を下回るまでの通液可能量が高く、耐久性が高くなる。
本発明の通液型キャパシタを用いた脱塩方法においては、通液型キャパシタに印加される脱着時の上限電圧は好ましくは0.5V以上、より好ましくは1.0V以上、さらに好ましくは1.2V以上であり、好ましくは2.0V以下、より好ましくは1.8V以下、さらに好ましくは1.5V以下である。また、通液型キャパシタに印加される脱着時の上限電圧は好ましくは0.5V以上2.0V以下、より好ましくは1.0V以上1.8V以下、さらに好ましくは1.2V以上1.5V以下である。脱着時の上限電圧が上記範囲内であると、スケールの発生を抑制できるため好ましい。
本発明の通液型キャパシタを用いた脱塩方法においては、通液型キャパシタに印加される吸着時の上限電圧と脱着時の上限電圧との差は、スケール発生の抑制の観点から、好ましくは0.5〜3V、より好ましくは1.0〜2.5Vである。
活性炭電極への給電方式としては、定電流、定電圧および定電流定電圧方式が挙げられる。本発明においては、高耐久な処理が可能である点から、活性炭電極への給電方式は定電流方式が好ましい。なお、活性炭電極への給電方式が定電流方式である場合、一定の電流が活性炭電極に給電され、電圧が上限電圧に達した場合には、給電方式は該上限電圧において電圧が一定に維持され、該上限電圧に応じて電流の値が変化する。
活性炭電極の電極を反転するサイクルは、特に限定されないが、(吸着の時間)/(脱着の時間)が1〜5、さらには1.5〜4.5になるように活性炭電極の電極を繰り返し反転することが好ましい。
また、本発明の一実施態様において、通液型キャパシタはカチオン交換膜およびアニオン交換膜を含んでよい。この実施態様について図4〜6を参照して説明する。なお、図4において、説明の便宜上、層の一部分について、積層構造を展開するように分解したときの様子を模式的に図示している。図5は通液型キャパシタの上面模式図であり、図6はその正面模式図である。
第1電極1はそれぞれ、第1集電体1a(1a’)および第1活性炭電極1b(1b’)の他に、カチオン交換膜1c(1c’)を含み、第2電極2はそれぞれ、第2集電体2aおよび第2活性炭電極2bの他に、アニオン交換膜2cを含み、ここで、カチオン交換膜1cとアニオン交換膜2cとはスペーサーを介して対向するように配置されている。通液型キャパシタがカチオン交換膜およびアニオン交換膜を含む場合、以下の効果が得られる。
通液型キャパシタに電流を流す前には、各セルに被処理液を通液しても液中のアニオン(−)およびカチオン(+)は第1電極および第2電極に吸着されず、両電極間を素通りする。一方、通液型キャパシタがカチオン交換膜およびアニオン交換膜を含む場合、第1電極に直流電源の負極側、第2電極に直流電源の正極側を接続することにより両電極間に電流を流すと、カチオンは第1電極の表面に配されたカチオン交換膜を通過可能であるために第1電極の第1活性炭電極に吸着され、また、アニオンは第2電極の表面に配されたアニオン交換膜を通過可能であるために第2電極の第2活性炭電極に吸着される。
また、上記のとおり、通液型キャパシタへの通液量の増加に伴ってイオン吸着能が徐々に低下した場合、活性炭電極の極性を反転させて、第1電極に吸着されたカチオンおよび第2電極に吸着されたアニオンが脱着して、通液される液中に放出される。このとき、放出されたカチオンは第2電極の表面に配されたアニオン交換膜を通過することができないために、第2電極に吸着されない。同様に、放出されたアニオンは第1電極の表面に配されたカチオン交換膜を通過することができないために、第1電極に吸着されない。このように、第1電極および第2電極にイオンが再吸着されることが抑制されるために、このとき通液された液には高濃度のイオンが含有される。したがって、通液型キャパシタがアニオン交換膜およびカチオン交換膜を含む場合、通液型キャパシタの吸着容量が向上し、イオンの再吸着が防止されるため、該通液型キャパシタを用いた被処理液の脱塩処理を効率的に行うことができる。
次に、通液型キャパシタ100を構成する他の要素について、詳しく説明する。
集電体としては、黒鉛シートが用いられる。黒鉛シートの具体例としては、膨張黒鉛を成形した黒鉛シート等が挙げられる。黒鉛シートは、耐腐食性と高導電性と低コスト性とのバランスに優れている。黒鉛シートの厚みとしては100〜500μmであることが好ましい。
活性炭電極としては、例えば、活性炭粒子をバインダで結着させて得られる成形シートが挙げられる。
活性炭粒子の具体例としては、例えば、木材、鋸屑、木炭、ヤシ殻やクルミ殻等の果実殻、果実種子、パルプ製造副生物、リグニン、および廃糖蜜等の植物系活性炭粒子;泥炭、草炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、コークス、コールタール、石炭ピッチ、石油蒸留残査、および/または石油ピッチ等を炭化および賦活化して得られる鉱物系活性炭粒子;フェノール、サラン、アクリル系樹脂等を炭化および賦活化して得られる合成樹脂系活性炭粒子;再生繊維(レーヨン)等を炭化および賦活化して得られる天然繊維系活性炭粒子;等が挙げられる。これらの中では、吸着性能に優れている点から、植物系活性炭粒子が好ましく、ヤシ殻活性炭粒子が特に好ましい。
活性炭粒子の中心粒子径としては、好ましくは1〜100μm、より好ましくは2〜50μm、さらに好ましくは3〜30μmである。ここで中心粒子径とは、粒度分布において、全粒子の質量の積算値が50%になるときの粒子径である。このような中心粒子径は、例えば、日機装(株)製マイクロトラック粒度分布測定装置(MT3300)を用いて測定することができる。活性炭粒子の中心粒子径が上記下限値以上であると、使用するバインダ量が抑制され、活性炭の占める割合が低くなりすぎないため、イオン吸着能が良好である。また、活性炭粒子の中心粒子径が上記上限値以下であると、得られる活性炭電極の表面均一性に優れ、イオン吸着能に優れる。
また、活性炭粒子の比表面積は、好ましくは700〜2500m/g、より好ましくは1500〜2000m/gである。比表面積が上記下限値以上であると、脱塩能力が良好であり、さらに、活性炭電極の極性を反転して活性炭電極の表面に吸着したイオンを脱着させるときに、イオンが脱着しやすい。また、比表面積が上記上限値以下であると、体積あたりの性能に優れ、さらに、使用するバインダ量が抑制され、活性炭の占める割合が少なくなりすぎないため、イオン吸着能に優れる。比表面積は、例えば、次の方法で測定することができる。活性炭の77Kにおける窒素吸着等温線を日本ベル(株)製のBELSORP−mini等を使用して測定する。そして、得られた窒素吸着等温線からBETの式により多点法による解析を行い、得られた曲線の相対圧p/p=0.01〜0.1の領域での直線から比表面積を算出できる。
また、活性炭粒子の細孔容積は、好ましくは0.5〜1.2mL/g、より好ましくは0.7〜1.0mL/gである。細孔容積が上記下限値以上であると、活性炭電極の極性を反転して活性炭電極の表面に吸着したイオンを脱着させるときにイオンが脱着しやすい。また、細孔容積が上記上限値以下であると、体積あたりの性能に優れる。細孔容積は、例えば、次の方法で測定することができる。活性炭の77Kにおける窒素吸着等温線をBELSORP−mini等を使用して測定する。そして、相対圧p/p=0.99における標準状態での窒素吸着体積(mL/g)から以下の式により細孔容積を算出できる。
[細孔容積]=(p/p0=0.99における標準状態での窒素吸着体積)×28/22400/0.808
また、活性炭粒子の平均細孔径は、好ましくは1.5〜2.4nm、より好ましくは1.6〜2.2nmである。平均細孔径が上記下限値以上であると、活性炭電極の極性を反転して活性炭電極の表面に吸着したイオンを脱着させるときにイオンが脱着しやすい。また、平均細孔径が上記上限値以下であると、体積あたりの性能に優れる。平均細孔径は、上述のように求められた比表面積と細孔容積から以下の式により算出できる。
[平均細孔径]=[細孔容積]×4000/[比表面積]
また、活性炭粒子の表面官能基量は、好ましくは0.1〜0.8meq/g、より好ましくは0.2〜0.5meq/gである。表面官能基量が上記下限値以上であると、シート成形において活性炭粒子の表面電荷の影響を受け難く、シート成形を容易に行うことができる。また、表面官能基量が上記上限値以下であると、脱塩処理の耐久性に優れる。表面官能基量は、例えば、次の方法で測定することができる。120℃に調節した恒温乾燥器で活性炭を8〜10時間真空乾燥した後、乾燥剤としてシリカゲルを入れたデシケータ中で放冷する。そして、100mLの共栓三角フラスコに放冷された活性炭1gを0.1mgの単位まで正確に量り取る。そして、活性炭が量り取られた共栓三角フラスコに、N/10ナトリウムエトキシドエタノール溶液を50mL加え、160rpm、25℃で24時間振盪する。そして、振盪後、遠心分離により上澄みと沈殿を分離し、上澄み液20mLを100mL三角フラスコに正確に量り採り、pH4.0となる点を滴定終点としてN/10塩酸で滴定して、試料滴定量を求める。一方、試料を含まない溶液で空試験を行い、空試験滴定量も求める。そして、次式により表面官能基量を算出する。
[表面官能基量]=([空試験滴定量]−[試料滴定量])×0.1×f(塩酸ファクタ)×50/20
活性炭電極は、活性炭粒子とバインダとを含む混合物をシート状に成形することにより得ることができる。なお、バインダとしては、浄水用に使用される場合には、生体為害性のないバインダを用いることが好ましい。活性炭電極中に含まれる活性炭粒子の割合は、好ましくは50〜99質量%、より好ましくは80〜95質量%である。活性炭電極中に含まれる活性炭粒子の割合が上記範囲内であると、脱塩性能に優れる。
バインダとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、およびポリアミド、ならびにこれらの混合物等が挙げられる。これらの中で、結着性や安定性等の観点から、ポリテトラフルオロエチレンが好ましい。
活性炭電極はさらに導電材を含有してもよい。導電材を配合することにより、活性炭電極に優れた導電性を付与することができる。このような導電材の具体例としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、および黒鉛等の炭素系材料;金、白金、および銀等の貴金属;窒化チタン、チタンシリコンカーバイド、炭化チタン、硼化チタン、および硼化ジルコニウム等の高導電性セラミックス;等が挙げられる。これらの中で、炭素系材料がコストや加工性に優れている点から好ましい。
活性炭電極の厚みは特に限定されないが、200〜500μmであることが、電気抵抗が高くなり過ぎない点から好ましい。
スペーサーとしては、例えば、合成繊維の樹脂ネット、織物、紙状の集合体、合成繊維または再生繊維を集積させた不織布等が挙げられる。これらの中では、通液性および経済性に優れる観点から、樹脂ネットおよび不織布が好ましく、樹脂ネットがより好ましい。
スペーサーの材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、およびポリエーテルエーテルケトン、ならびにこれらの混合物等が挙げられる。これらの中では、低コスト性や加工性に優れる観点から、ポリエチレンテレフタレートおよびポリプロピレンが好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
スペーサーの厚みは、好ましくは50〜250μm、より好ましくは70〜150μmである。スペーサーの厚みが上記上限値以下であると、通電時にセル間の電気抵抗が高くなりすぎないため、イオン吸着能に優れる。また、スペーサーの厚みが上記下限値以上であると、通液抵抗が比較的低く抑えられる。
また、スペーサーの開口率は、好ましくは20〜80%、より好ましくは30〜70%である。スペーサーの開口率が上記下限値以上であると、通液抵抗が低く抑えられる。また、スペーサーの開口率が上記上限値以下であると、開口部での内部短絡が抑えられる。
締結ボルトとしては、金属ボルト等の導電性ボルトおよびナットを用いたボルト・ナット構造の締結手段を用いるものが好ましい。なお、被処理液はイオン性物質を含むため、チタンまたはチタン合金からなるボルトのような耐腐食性の高い金属ボルトを用いることが特に好ましい。また、締結手段としては、ボルト構造に限られず、クリップ状の構造体で挟み込む等の手段を用いてもよい。
締結ボルトで締結するとき、その締結圧により集電体が破損されることがある。このような破損を防ぐために、締結ボルトのボルトヘッドと集電体との間には、チタン板等の耐腐食性および導電性に優れた金属板を介在させて締結圧を分散させてもよい。このような金属板の厚みは、特に限定されないが、0.5〜5mmであることが好ましい。
アニオン交換膜は、特に限定はされないが、例えば、4級アミノ基等のアニオン交換基を有する、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、またはフッ素系樹脂等のイオン交換樹脂を含む膜が挙げられる。また、カチオン交換膜は、特に限定されないが、例えば、スルホン基、またはカルボキシル基等のカチオン交換基を有するスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、またはフッ素系樹脂等のイオン交換樹脂を含む膜が挙げられる。
また、本発明の一実施態様において、第1集電体および第2集電体の少なくとも一方は、各活性炭電極と対向しないタブ部を有し、少なくとも2つ以上のタブ部同士は、該タブ部の表面に接触するように配された導電性シートで電気的に接続されていてもよい。この場合、複数のタブ部同士が導電性シートを介して接続されることにより、複数の第1集電体同士は、シート面に対して平行方向に電気的に接続される。このようなシート面に対する平行方向の接続によれば、例えば、集電体として、黒鉛(グラファイト)シートのように電気伝導度がシートの面方向には高く、垂直方向には低いような、電気伝導度の異方性の高いシート材料を用いた場合でも、充分な導電性を得ることができる。それにより、被処理液中に高濃度のイオン性物質が含まれていたり、被処理液を高流量で脱塩処理したりする場合にも、高いイオン除去率を長期間にわたって維持することができる。
通液型キャパシタを用いて液中のイオン除去を行うための通液方式としては、被処理液の原液を全量濾過する全濾過方式を採用しても、循環濾過方式を採用してもよい。通液条件は特に限定されないが、5〜100hr−1の空間速度(SV)で行うことが、圧力損失が高くなり過ぎない点から好ましい。
なお、排出された処理液の電気伝導度と、通液開始から流した通液量との関係を2次元的にプロットすることにより、イオン除去能力の状態をモニターすることができる。また、処理液中のイオン濃度は水の電気伝導度と相関があるために、脱塩処理前の被処理液および脱塩処理後の処理液の電気伝導度を測定することにより、イオン除去率を計算することができる。また、液中のイオン濃度は、例えばイオンクロマトグラフィ等の方法により測定することもできる。
通液型キャパシタに電力を供給する直流電源20の種類は、特に限定されない。100Vの家庭用電源から電圧を調整し、直流化して使用してもよいし、電池、蓄電池を使用して電力を供給してもよい。また、屋外で用いる場合には、太陽電池、風力発電機、燃料電池、またはコジェネレータ等の独立電源を用いてもよい。また、通液型キャパシタ自身が蓄電能力を有するために、複数の通液型キャパシタを接続し、互いに蓄電された電力を交互に電源として用いてもよい。
上記で説明した本発明の通液型キャパシタを用いた脱塩方法によれば、イオン性物質を含有する水等を被処理液として脱塩処理を行うことができる。本発明の通液型キャパシタを用いた脱塩方法は、被処理液の流量が多い場合であっても被処理液の十分な脱塩処理が可能であり、かつ耐久性が高い。そのため、本発明によれば、被処理液が高濃度の溶解固形物を含む水であっても、被処理液の十分、かつ耐久性の高い脱塩処理が可能である。例えば、単位面積当たりの活性炭電極に流入する被処理液に含まれる全溶解固形物の量が、1200mg/分/m以下、特に900mg/分/m以下である場合でも、十分かつ耐久性の高い脱塩処理が可能である。なお、単位面積当たりの活性炭電極に流入する被処理液に含まれる全溶解固形物の量は、通常50mg/分/m以上である。ここで、溶解固形物とは、被処理液中に含まれる固形物の溶解物であり、例えばカルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、およびカリウム塩等が挙げられる。
なお、単位面積当たりの活性炭電極に流入する被処理液に含まれる全溶解固形物の量は、以下の式に従って算出される。ここで、1つのセルにおいて活性炭電極は2枚含まれる。
[単位面積当たりの活性炭電極に流入する被処理液に含まれる全溶解固形物の量]=[全溶解固形物の濃度(mg/L)]×[流量(L/分)/{[活性炭電極の縦幅(m)]×[活性炭電極の横幅(m)]×[セルの数]×2}
本発明の通液型キャパシタを用いた脱塩方法によれば、高硬度の被処理液を脱塩処理することもできる。例えば、被処理液が世界保健機関(WHO)の定義する中程度の硬水(60〜120mg/L)、硬水(120〜180mg/L)または非常な硬水(180mg/L〜)であっても脱塩処理を行うことができる。具体的には、被処理液の硬度が60mg/L以上、特に120mg/L以上、とりわけ180mg/L以上であっても、耐久性の高い被処理液の脱塩処理が可能である。なお、被処理液の硬度は、以下の式に従って算出することができる。
[硬度(mg/L)]=[カルシウム濃度(mg/L)]×2.5+[マグネシウム濃度(mg/L)]×4.1
上記で説明した本発明の通液型キャパシタを用いた脱塩方法によれば、イオン性物質を含有する水等の脱塩処理(脱イオン処理)を行うことができる。また、その他の公知の浄水手段等を用いた水処理手段と組み合わせてもよい。公知の水処理手段の具体例としては、例えば、不織布フィルター、セラミックフィルター、活性炭等の各種吸着材、ミネラル添加材、セラミック濾過材、中空糸膜濾過材、またはイオン吸着材等を含む水処理手段が挙げられる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は以下の実施例の内容に限定されるものではない。
各実施例および比較例における連続通液試験は、以下に示すように行った。
[連続通液試験]
脱イオン液製造装置に模擬硬度水を所定の流量で通液し、所定の電流を流すことで、初期のイオン除去率を83%とし、脱塩処理を開始した。活性炭電極を再生させるために、端子に接続した直流電源の極性を定期的に反転した。具体的には吸着時60秒−脱着時60秒のサイクルを1サイクルとして極性を反転させ、このサイクルを複数サイクル繰り返し、イオン除去率が75%に減少するまで、または、脱イオン液製造装置の内部圧力が100kPaに到達するまで脱塩処理を継続した。
なお、イオン除去率は次のように測定した。
[イオン除去率]
所定の通液量ごとに、脱イオン液製造装置から排出された処理液の電気伝導度を測定し、被処理液である模擬硬度水の電気伝導度と処理液の電気伝導度とからイオン除去率を算出した。具体的には、脱イオン液製造装置に供給される被処理液の電気伝導度(μS/cm)および脱イオン液製造装置から排出される処理液の電気伝導度(μS/cm)を測定し、下記式によりイオン除去率を算出した。
[イオン除去率(%)]=([被処理液(供給水)の電気伝導度]−[処理液(排出水)の電気伝導度])/[被処理液(供給水)の電気伝導度]×100
なお、模擬硬度水は以下のように調製した。
炭酸水素ナトリウム170mg、塩化カルシウム二水和物460mg、硝酸カルシウム四水和物400mg、硫酸マグネシウム七水和物370mg(何れも和光純薬工業(株)製、試薬特級)を水道水に溶解し、総量を1Lとしたものを模擬硬度水とした。模擬硬度水は、電気伝導度1600μS/cm、pH7.8、カルシウム硬度500mg/L、硬度664mg/L、全溶解固形物の濃度1030mg/Lであり、連続通液試験には20±5℃の温度範囲のものを使用した。
上記連続通液試験において、イオン除去率測定、通液可能量測定、および効率減少率測定を、以下に示すように行った。
[通液可能量]
上記連続通液試験において、イオン除去率が75%に減少するまで、または、脱イオン液製造装置の内部圧力が100kPaに到達するまでに得られた処理液(精製水)の量を通液可能量(L)とした。
[効率減少率]
上記連続通液試験において、処理初期(経過時間:0〜60秒、1番目のサイクルの吸着時)の電流効率(イオン除去量/電流量)と通液可能量到達時点の電流効率とを用いて、下記式により効率減少率を算出した。
[効率減少率(%)]=([処理初期の電流効率]−[通液可能量到達時点の電流効率]/[処理初期の電流効率]×100
[実施例1]
活性炭電極として、中心粒子径6μm、比表面積1700m/g、細孔容積0.73mL/g、平均細孔径1.7nm、表面官能基量0.33meq/gの活性炭粒子(ヤシ殻を原料とする活性炭粒子、クラレケミカル(株)製YP−50F)100質量部およびポリテトラフルオロエチレンバインダ10質量部を含有する活性炭電極A1を用いた。活性炭電極A1は、厚み250μmであり、縦100mm×横100mmのサイズに裁断したものを用いた。
集電体として、膨張黒鉛を圧縮成形して形成された厚み250μmの黒鉛シート(SGLカーボンジャパン(株)製のSIGRAFLEX S GRAFHITE FOIL)を用いた。この黒鉛シートは、縦100mm×横100mmの正方形状を有し、さらに一つの辺の中央に対して均等に、縦50mm×横30mmの長方形状のタブ部を2つ有した。さらに、タブ部には中央部に、積層体を締結するための締結ボルトを通過させる直径6.5mmの孔を設けた。
スペーサーとして、厚み93μm、線径55μm、目開き368μm、開口率76%のポリエステル製樹脂ネット(日本特殊織物(株)製のLX60SS)を用いた。スペーサーは、縦108mm×横108mmのサイズを有した。
アニオン交換膜として、厚み130μmの旭硝子(株)製のセレミオンAMV(縦104mm×横104mmのサイズ)を用い、カチオン交換膜として、厚み130μmの旭硝子(株)製のセレミオンCMV(縦104mm×横104mmのサイズ)を用いた。
上述した活性炭電極、集電体、スペーサー、アニオン交換膜、およびカチオン交換膜を積層して積層体を形成した。具体的には、図4〜6に示されるように、集電体、活性炭電極、カチオン交換膜、スペーサー、アニオン交換膜、活性炭電極、集電体、活性炭電極、アニオン交換膜、スペーサー、カチオン交換膜、活性炭電極、集電体の順で繰り返し積層し、11セルのキャパシタ構造を有する積層体を形成した。なお、積層体は各構成要素の縦100mm×横100mmの領域が重なり、各集電体のタブ部はスペーサーを挟んだ最近層のタブ部同士が互いに逆方向を向くように配置した。また、最上層を除いた各層を形成する、集電体、スペーサー、アニオン交換膜、およびカチオン交換膜のそれぞれの中央部には、脱塩処理された被処理液を通液するための直径15mmの通液孔を形成していた。
図4〜6に示されるように、積層体の各方向で重なっている複数のタブ部同士をそれぞれ2本のチタン製のボルトおよびナットで締結することにより積層体を固定した。
得られた通液型キャパシタを樹脂製の容器に収容した。なお、容器は、内寸が、縦210mm、横110mm、高さ50mmの直方体の形状であり、直径15mmの給液口および直径15mmの排液口を備えていた。また、容器の頂面には容器に収容された通液型キャパシタのチタン製ボルトと電気的に接続された2つの電極の端子が配されていた。容器内に通液型キャパシタを密閉収容することにより、脱イオン液製造装置を製造した。そして、外部に露出した各端子に直流電源の負極側と正極側をそれぞれ接続した。
得られた脱イオン液製造装置に模擬硬度水を250ml/分の流量で通液し、吸着時は上限電圧3.0V、設定電流6.0Aの定電流制御にて、脱着時は上限電圧1.5V、設定電流8.0Aの定電流定電圧制御にて連続通液試験を行った。その結果を表1に示す。
なお、処理序盤のサイクル数(処理経過時間)に対してプロットした電気伝導度の変化を図7、電圧および電流の変化を図8、また、処理終盤のサイクル数(処理経過時間)に対してプロットした電気伝導度の変化を図9、電圧および電流の変化を図10に、それぞれ示す。
積算精製水量(L)に対してプロットしたイオン除去率の変化を図11、効率減少率の変化を図12、電圧および電流の変化を図13にそれぞれ示す。
[実施例2]
吸着時の上限電圧を4.0Vに変更した以外は、実施例1と同様にして脱イオン液製造装置の連続通液試験を実施した。その結果を表1に示す。
[実施例3]
吸着時の上限電圧を2.5Vに変更した以外は、実施例1と同様にして脱イオン液製造装置の連続通液試験を実施した。その結果を表1に示す。
[比較例1]
通液速度を150mL/分に変更したこと、吸着時は上限電圧1.5V、設定電流3.6Aの定電流制御に変更したこと、および脱着時は上限電圧1.5V、設定電流4.8Aに変更した以外は、実施例1と同様にして脱イオン液製造装置の連続通液試験を実施した。その結果を表1に示す。
[比較例2]
吸着時は上限電圧を1.5Vに変更した以外は、実施例1と同様にして脱イオン液製造装置の連続通液試験を実施した。その結果を表1に示す。
[比較例3]
脱着時の上限電圧を3.0Vに変更した以外は、実施例1と同様にして脱イオン液製造装置の連続通液試験を実施した。その結果を表1に示す。
積算精製水量に対してプロットしたイオン除去率の変化を図14、効率減少率の変化を図15にそれぞれ示す。
[比較例4]
脱着操作を電気極性の反転ではなく、短絡により実施した以外は、実施例1と同様にして脱イオン液製造装置の連続通液試験を実施した。その結果を表1に示す。
[比較例5]
吸着時は上限電圧を1.5Vに変更したこと、および脱着時は上限電圧を3.0Vに変更した以外は、実施例1と同様にして脱イオン液製造装置の連続通液試験を実施した。その結果を表1に示す。
[比較例6]
吸着時は上限電圧を5.0Vに変更した以外は、実施例1と同様にして脱イオン液製造装置の連続通液試験を実施した。その結果を表1に示す。
積算精製水量に対してプロットしたイオン除去率の変化を図16、電圧および電流の変化を図17にそれぞれ示す。
[比較例7]
吸着時および脱着時共に、上限電圧3.0V、設定電流30.0Aの定電圧制御を行った以外は、実施例1と同様にして脱イオン液製造装置の連続通液試験を実施した。処理初期のイオン除去率は95%であり、通液可能量270L(イオン除去率84%)、効率減少率は20.1%であった。
Figure 2017038220
実施例1〜3においては、通液可能量が大きく、かつ効率減少率は低い結果となった。これより、本発明の脱塩方法においては、高流量においてもイオン除去率の高い処理液が安定的に得られていることが分かる。一方、比較例1では、流量は少ないものの、通液可能量が高いものの、効率減少率が高く、耐久性が低い結果となった。比較例2〜7においては、大きい通液可能量および低い効率減少率の両立が困難であり、本発明の目的を達成することはできなかった。
さらに、本発明の処理方法においては、長期間の処理によってもイオン除去率の低下が少なく抑えられ、例えば、イオン除去率が70%に達するまでの通液可能量は、実施例1で698L、実施例3で544Lである。一方、比較例においては、イオン除去率が70%に達するまでの通液可能量は、比較例4で64L、比較例5で122L、比較例6で466Lであり、比較例においては、本発明に係る実施例と比較して、イオン除去率の低下が著しく、イオン除去率が75%に達する間での通液可能量と大きく異ならない結果となった。これより、本発明は耐久性の高い処理方法が提供できることが分かる。
また、図11と図13の比較により、実施例1では積算精製水量400Lまでは除去率低下はなく、400L以降から緩やかに除去率が低下するのに対し、比較例2では処理初期から直線的に除去率が減少していることがわかる。図12と図14の比較より、実施例1に対し、比較例2は効率減少率が大きいことがわかる。
本発明の通液型キャパシタを用いた脱塩方法は、脱塩処理が求められる各種用途に使用することができる。例えば、水道水や工業用水の脱塩処理や、海水淡水化装置、地下水からの飲料適用水製造装置、家庭用浄水器や軟水器、トイレの便座等に備えられる局部洗浄装置等に備えられる洗浄水の脱塩装置において適用することができる。本発明の脱塩方法は、被処理液の流量が多い場合であっても十分な脱塩処理が可能であり、かつ耐久性が高いため、長期間の使用に有効である。
1 第1電極
1a、1a’ 第1集電体
1b、1b’ 第1活性炭電極
1c、1c’ カチオン交換膜
1d、2d タブ部
2 第2電極
2a 第2集電体
2b 第2活性炭電極
2c アニオン交換膜
3 スペーサー
5a、5b 締結ボルト
8 通液孔
10 セル
15a、15b 端子
20 直流電源
20a、20b 配線
30 容器
31 給液口
32 排液口
100 通液型キャパシタ
200 脱イオン液製造装置
W1 被処理液
V1、V2 バルブ

Claims (6)

  1. 集電体、活性炭電極およびスペーサーを含み、吸着時と脱着時で活性炭電極の極性を反転する通液型キャパシタを用いて被処理液を脱塩処理する方法であって、
    1)吸着時の上限電圧は1.5V以上4.0V以下であり、
    2)吸着時の上限電圧よりも脱着時の上限電圧の方が低い、方法。
  2. 活性炭電極への給電方式は定電流である、請求項1に記載の方法。
  3. 脱着時の上限電圧は0.5V以上2.0V以下である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 通液型キャパシタはアニオン交換膜およびカチオン交換膜をさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 被処理液は溶解固形物を含む水であり、単位面積当たりの活性炭電極に流入する被処理液に含まれる全溶解固形物の量は、1200mg/分/m以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 被処理液の硬度は60mg/L以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
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