JP4286931B2 - 通液型コンデンサおよびそれを用いた液体の処理方法 - Google Patents

通液型コンデンサおよびそれを用いた液体の処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層型の通液型コンデンサ(stacked, flow through capacitor) 、より正確には、積層型の通液型電気二重層コンデンサ(stacked, flow through, electric, double-layer capacitor) に関するものである。またその積層型の通液型コンデンサを用いて、イオン性物質を含む液体を処理する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通液型コンデンサ(通液型電気二重層コンデンサ)は、高表面積の作動電極を用いて、静電気的な吸着、電気化学的な反応、触媒的な分解により、ガス中、液(水溶液や非水溶液)中に含まれる物質を除去したり、組成を変更したりするものである。通液型コンデンサについて、そしてその通液型コンデンサを用いて静電力を利用してイオン性物質を含む水中からそのイオン性物質を除去することについては、たとえば、次にあげるような文献に開示がある。
【0003】
(1)米国特許第5192432号、米国特許第5196115号には、液体の精製を目的とする定電荷クロマトグラフ用カラムに用いる通液型コンデンサであって、第1の導電性支持層、第1の高表面積導電性層、第1の非導電性多孔質のスペーサ層、第2の導電性支持層、第2の高表面積導電性層、第2の非導電性多孔質のスペーサ層などを含む複数の隣接層群をスパイラル状に捲回した通液型コンデンサが示されている。また同明細書には、このコンデンサはたとえば塩化ナトリウム等のイオン性物質を含む水の精製に用いうることも示されている。
【0004】
(2)特開平5−258992号公報(米国特許第5415768号、米国特許第5620597号および米国特許第5748437号に対応)には、捲回型の通液型コンデンサのほかに、ワッシャ型の電極を積層した通液型コンデンサが示されている。
【0005】
(3)特開平6−325983号公報(米国特許第5538611号に対応)には、電気絶縁性多孔質通液性シートからなるセパレータを挟んで、高比表面積活性炭を主材とする活性炭層を配置し、それらの活性炭層の外側に集電極を配置し、さらにそれらの集電極の外側に押え板を配置した構成を有する平板形状の通液型電気二重層コンデンサが示されている。集電極と押え板との間には、枠状のガスケットを介在させるのが通常である。この通液型コンデンサを用いて液体を処理するにあたっては、該コンデンサにイオン性物質を含む液体を通液しながら、集電極への直流定電圧の印加と、両集電極間のショートまたは逆接続とを交互に繰り返す。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記(1)の捲回型の通液型コンデンサは、その組み立て時に困難を伴なう。たとえば、通液時のチャネリング(偏流)を防止したり、巻き取り時に必要な締め付けを行うことが難しい。チャネリングは中央部分の支持棒に沿って生じたり、周辺縁部分または前後の封止部分で発生する(水の流れ方向が軸に垂直か平行かによって異なる)。そこで、シリコーンや糊などを用いてこれらの問題に対処しなければならず、この文献では、エポキシ樹脂で両端をシールしている。このように、捲回型の通液型コンデンサは隣接層群をスパイラル状に捲回した構造を有するため、通液時にチャネリングを生じやすく、この通液型コンデンサをイオン性物質を含む液体の精製に適用した場合、精製操作中にイオン性物質の除去率が変動して安定しない上、その除去率が平均的にはかなり低くなる傾向がある。またこのような捲回形状では、集電極からのリード線の位置決めが容易でない。そのため、この種の捲回型の通液型コンデンサを工業的規模で液体の精製に用いるにはかなりの困難を伴なう。
【0007】
上記(2)に開示の通液型コンデンサのうちワッシャ型の電極を積層した通液型コンデンサは、電極が円盤形状をしていているので、一定面積の材料のうち使用できる部分の有効利用率が小さいこと、部品数が多いこと、中央の支持棒が必須となることなどの制約があるため、経済的に不利となり、実用化の支障となる。
【0008】
上記(3)の平板形状の通液型コンデンサにあっては、枠状のガスケットを介在させるのが通常であるため、各層間の接触が不均一になって、通液時にチャネンリングを生ずる傾向があり、また1機の通液型コンデンサによる液の処理量に限界があり、工業的に実施する装置としてはなお改良の余地がある。
【0009】
本発明は、このような背景下において、部材の有効利用が図られ、組み立てが容易であり、電極周辺をシールしたりすることは必須ではなく、また液のチャンネリングが防止され、しかもイオン性物質の除去率を高く保ちながらも単位時間当りの処理量を格段に多くすることができ、従って実用化に極めて適している通液型コンデンサを提供すること、およびその通液型コンデンサを用いた液体の処理方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の通液型コンデンサは、セパレータ(1) を挟んで電極(2) が配置され、その電極(2) の外側に集電極(3) が配置された基本構造を有するコンデンサであって、
・それぞれのセパレータ(1) 、電極(2) および集電極(3) は、いずれも、独立のまたは折り畳まれたフラットなシートで構成され、かつそれぞれのシートは、多角形状を有していること、
・これらのセパレータ(1) 、電極(2) および集電極(3) は、
[(3)/(2)/(1)/(2)]n/(3)
の順序で多層に積層されており、nは20以上であること、
・それぞれのセパレータ(1) 、電極(2) および集電極(3) は、いずれも、その多角形状のシートに通液のための1ないし複数個の貫通孔(h) を設けてあり、これらのシートの積層状態においては各貫通孔(h) は同じ位置にあって内部流路が形成されていること、および、
・それらのセパレータ(1) 、電極(2) および集電極(3) が多層に積層された積層体は、その積層体の両面側から 0.2kg/cm2G 以上の圧力で圧縮された状態に保たれていること、
を特徴とするものである。
【0011】
本発明の液体の処理方法は、上記の条件を全て満たす通液型コンデンサを用いて、該コンデンサにイオン性物質を含む液体を通液しながら、
集電極(3) への直流定電圧または直流定電流の印加Aと、集電極(3) 間のショートまたは定電流放電Bとを組み合わせて、あるいは、
これらの印加Aおよびショートまたは放電Bと、逆接続Cとを適宜組み合わせて、
液体の処理を行うことを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
【0013】
〈基本構造〉
本発明の通液型コンデンサは、セパレータ(1) を挟んで電極(2) が配置され、その電極(2) の外側に集電極(3) が配置された基本構造、つまり、
(3)/(2)/(1)/(2)/(3)
の基本構造を有する。
【0014】
セパレータ(1) としては、ろ紙、多孔質高分子膜、織布、不織布など、液体の通過が容易でかつ電気絶縁性を有する有機質または無機質のシートからなるものが用いられる。セパレータ(1) の厚さは、1層当り、0.01〜0.5mm 程度、殊に0.02〜0.3mm 程度が適当である。
【0015】
電極(2) としては、活性炭層、殊に高比表面積活性炭を主材とする層が用いられる。高比表面積活性炭とは、BET比表面積1000m2/g以上、好ましくは1500m2/g以上、さらに好ましくは2000〜2500m2/gの活性炭を言う。BET比表面積が余りに小さいときは、イオン性物質を含む液体を通したときのイオン性物質の除去率が低下する。なおBET比表面積が余りに大きくなるとイオン性物質の除去率がかえって低下する傾向があるので、BET比表面積を必要以上に大きくするには及ばない。
【0016】
使用する活性炭の形状は、粉粒状、繊維状など任意である。粉粒状の場合には平板状またはシート状に成形して用い、繊維状の場合には布状あるいはフェルト状に加工したものを用いる。粉粒状活性炭をシート状に成形して用いることは、布状あるいはフェルト状に加工した活性炭を用いる場合に比し、コストの点からは格段に有利である。
【0017】
シート状への成形は、たとえば、粉粒状活性炭をバインダー成分(ポリテトラフルオロエチレン、フェノール樹脂、カーボンブラック等)および/または分散媒(溶媒等)と混合して板状に成形してから、適宜熱処理することにより得られる。活性炭層(2), (2)としてシート状のものを用いる場合は、必要に応じこれに穿孔加工を施しておくこともできる。なお、シート状の活性炭を用いる技術については、特開昭63−107011号公報、特開平3−122008号公報、特開平3−228814号、特開昭63−110622号、特開昭63−226019号公報、特開昭64−1219号公報などにも開示があるので、それらの公報に開示のものを参考にすることもできる。
【0018】
電極(2) の厚さは、 0.1〜3mm程度、殊に 0.5〜2mm程度とすることが多いが、必ずしもこの範囲内に限られない。
【0019】
集電極(3) としては、銅板、アルミニウム板、カーボン板、フォイル状グラファイトなどの電気良導体であって、電極(2) との緊密な接触が可能なものが用いられる。集電極(3) の厚さには限定はないが、 0.1〜0.5mm 程度のものを用いることが多い。印加を容易にするため、集電極(3) にははみ出し部や端子(リード)を設けることができる。
【0020】
〈多角形状〉
本発明の通液型コンデンサにあっては、それぞれのセパレータ(1) 、電極(2) および集電極(3) は、いずれも、独立のまたは折り畳まれたフラットなシートで構成され、かつそれぞれのシートは(折り畳まれたフラットなシートの場合は)三角形、四角形または六角形、あるいはこれらを組み合わせた形状のような多角形状を有していることが必要である。図1の(イ)〜(ホ)はシートの多角形状の例を示した説明図であり、中央の孔は通液のための貫通孔(h) である。図1の(ロ)および(ハ)には、点線で拡張してあるように、集電極(3) を他のシートよりもはみ出すようにし、そのはみ出した部分に貫通孔(h')を設けた場合を示してある。
【0021】
それぞれのシートを三角形、四角形(正方形、長方形、台形、平行四辺形等)または六角形、あるいはこれらを組み合わせた形状とすることは、1枚の大きなシートから無駄なく単位シートを得ることができるので、コスト的、省資源的、作業的に有利である。これらの形状の中では、四角形が最も実用的である。
【0022】
上記各シートのうち、セパレータ(1) は電極(2) よりも若干大き目のサイズとしてあり、集電極(3) は、電極(2) よりもはみ出す部分を有するサイズとして、そのはみ出し部分を束ねるようにすることが望ましい。このようにすると、集電極(3) のためのリード線を省略することができる。
【0023】
〈積層構造〉
そして本発明の通液型コンデンサにあっては、これらのセパレータ(1) 、電極(2) および集電極(3) は、
[(3)/(2)/(1)/(2)]n/(3)
の順序で多層に積層されており、nは20以上であることが必要である。nは20未満の場合は、単位時間当りの処理可能量が不足する。nが大きいほど単位時間当りの処理量が増大するので、nは、30以上、40以上というように大きければ大きいほど好ましい。nの上限に限界はないが、500程度まで、殊に100程度までとすることが多い。なお、適当数のnの [(3)/(2)/(1)/(2)]n のブロックを予備的に製作しておき、コンデンサへの組み立てに際し複数個のブロックを積み上げて、最終的に [(3)/(2)/(1)/(2)]n/(3) の積層構造となるようにすることもできる。
【0024】
〈貫通孔(h) 、内部流路〉
さらに本発明の通液型コンデンサにあっては、それぞれのセパレータ(1) 、電極(2) および集電極(3) は、いずれも、その多角形状のシートに通液のための1ないし複数個の貫通孔(h) を設けると共に、これらのシートの積層状態においては各貫通孔(h) が同じ位置にあって内部流路が形成されるようすることが必要である。貫通孔(h) の設置は、個々のシートの段階で行ってもよく、(1), (2), (3) のシートの種類ごとに適当枚数を重ねて行ってもよい。また貫通孔(h) の設置は、[(3)/(2)/(1)/(2)]n/(3)の積層体への組み立てに際し、上述のように個々のブロックまたは複数個のブロックとした段階であるいは最終的な積層体とした段階で行ってもよく、そのようにすると位置決めしながら(1), (2), (3) のシートを所定の順序で積層する場合に比し、著しく労力が少なくなり、積層作業が簡単化される。
【0025】
貫通孔(h) の数は、1枚のシート当り、1個ないし2,3個とすることが多い。ただし、貫通孔(h) の数をもっと多くして圧損を下げることも可能である。なお集電極(3) には、セパレータ(1) および電極(2) よりもはみ出した部分にさらに貫通孔(h')を設け、その貫通孔(h')を、積層時の位置決めと、束ねた際の陽極または陰極として利用することができる。
【0026】
貫通孔(h) の形状は、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形、八角形、溝形などとすることができる。
【0027】
〈積層圧〉
また本発明の通液型コンデンサにあっては、それらのセパレータ(1) 、電極(2) および集電極(3) が多層に積層された積層体が、その積層体の両面側から 0.2kg/cm2G 以上の圧力で圧縮された状態に保たれるようすることが必要である。
【0028】
このときの圧力が 0.2kg/cm2G 未満では、各シート間の接触が不良になったり、通液時にチャネリングを生じたりするおそれがある。このときの圧力は高いほど好ましいが、極端に高くなると、通液性が損なわれたり、集電極(3) が破損したりするおそれがあるので、おのずから限界がある。そこで、通常は 0.2〜10kg/cm2G 、好ましくは 0.3〜5kg/cm2G 、さらに好ましくは 0.5〜3kg/cm2G とするのが適当である。
【0029】
〈コンデンサの組み立て〉
上述の [(3)/(2)/(1)/(2)]n/(3) の積層構造の通液型コンデンサを組み立てるにあたっては、その積層体に押え板(4) を配置し、コンデンサに 0.2kg/cm2G 以上の圧力を加えた状態で、適当な箱や枠内に収容すればよい。押え板(4) としては、プラスチックス板などの電気絶縁性材料からできた変形しにくい平板が用いられ、この押え板(4) や箱には、液入口、液出口、固定用ボルト孔などを適宜設けることができる。
【0030】
このときには、積層体の両端(上下端)部分(電極(2) あるいは集電極(3) )と押え板(4) との間をシールしたり、電極(2) の周辺を糊付けしたりするには及ばないが、そのようなシールや糊付けを行っても特に支障とはならない。
【0031】
本発明においては各層の積層方向に対して垂直方向に流路を確保できるので、中央の支持管なしに組み立てることもできるが、各シートの貫通孔(h) を通して支持管を設けて位置決めの確実化を図ってもよい。
【0032】
〈液体の処理〉
上記の条件を全て満たす通液型コンデンサを用いて、液体の処理、殊にイオン性物質を含む液体の処理がなされる。液体の処理とは、水の浄化、海水の淡水化、廃液の脱窒素の如き精製処理だけでなく、貴金属の回収、無機塩の精製、溶存するイオン性物質の定量などイオン性物質の捕捉・回収のための処理も含む。液体としては、水やその他の無機系溶媒、有機系溶媒あるいはこれらの混合溶媒を媒体とするものがあげられ、血液などであってもよい。イオン性物質としては、金属塩、アミン塩、アンモニウム塩、無機酸、有機酸など液中で解離可能な電解質や帯電性物質があげられる。
【0033】
このときには、このコンデンサにイオン性物質を含む液体を通液しながら、
集電極(3) への直流定電圧または直流定電流の印加Aと、集電極(3) 間のショートまたは定電流放電Bとを組み合わせて、あるいは、
これらの印加Aおよびショートまたは放電Bと、逆接続Cとを適宜組み合わせて、
液体の処理を行う。たとえば、ABABAB・・、ABCBABCBABCB・・、ABABABCBCBCBABAB・・などとする。
【0034】
イオン性物質を含む液体の処理は、典型的には、次の手順によってなされる。
1.通液型コンデンサを組み立て、送液ポンプ等で液入口からイオン性物質を含む液体を通液する。
2.直流定電圧供給源より 0.5〜5ボルト(水溶液の場合には水が電気分解しないように2ボルト程度までにとどめる)またはその前後の電圧をそれぞれの集電極(3) の端子より印加する。この場合、電圧上限値を2ボルト程度に設定しておき、3〜10アンペアの直流定電流を供給してもよい。
【0035】
なお水溶液の場合には、液出口部分の液を導電率計などを用いてモニターし、適当なタイミングで、ショートまたは定電流放電、印加または逆接続を繰り返す。タイマーによる時間的な制御も可能である。ショートまたは定電流放電時には、それぞれの電極(2) に電気的に吸着されていたイオン性物質が脱離し、濃縮液となって液出口から排出される。
【0036】
逆接続、つまり接続の極性の切り替えを行うことは、次の利点がある。すなわち、放電操作を終了し、かなりの時間を経過しても、電極の内部抵抗などのために若干の電位が残存していることがあり、そのときには次のサイクルに移った際にイオン除去率が低下することがありうるが、接続時の極性を数サイクルごとに切り替えると、残存電位により、吸着しているイオンは逆接続時に電気的な反発力により脱離しやすくなるのである。
【0037】
液体の処理に際し、通液方向を、所定のプログラムに従って逆方向に切り替えるようにすれば、装置の閉塞の原因となる物質を洗い出すことができるので、有利である。
【0038】
不使用時または使用前の準備段階においては、通液を行うことなく電圧のみをかけた状態にしておくことが好ましい。このようにすると、極めて清浄な液が電極内で形成され、電極表面に析出した各種の塩を再溶解させ、従ってこれらの固形物による装置の閉塞を防いだり遅らせたりする効果が期待できるからである。
【0039】
本発明の通液型コンデンサは、並列に接続したり直列に接続して用いることができる。また予め充電したコンデンサの放電電流を別のコンデンサの充電に使用することもでき、特に初期の大電流を供給するのに有効である。本発明の通液型コンデンサは、燃料電池のセルにも適用できる。
【0040】
〈作用〉
本発明の通液型コンデンサを用いてイオン性物質を含む液体の処理を行うときの原理を、イオン性物質を含む液体が食塩水である場合を例にとって図2に示す。
【0041】
図2(イ)のように、電圧印加時には、通水した水中のナトリウンムイオンはアノード側の集電極(3) に接する電極(2) に電気的に吸着され、塩素イオンはカソード側の集電極(3) に接する電極(2) に電気的に吸着され、その結果出口水中の食塩濃度は著減する。通水を続けると電極(2), (2)に対する両イオンの吸着は飽和に達するので、出口における食塩濃度は原液のそれに近くなる。適当なタイミングを見てカソード側とアノード側とをショートさせるか定電流放電させれば、図2(ロ)のように、それぞれ電極(2) に吸着されていたナトリムイオンおよび塩素イオンが脱離し、原液中の食塩濃度よりはるかに高濃度の食塩水が出口より排出される。この際、通液時の流速を落とすなどの工夫を凝らせば、出口水中の食塩濃度はさらに上昇する。
【0042】
そして本発明においては、セパレータ(1) 、電極(2) および集電極(3) がいずれも多角形のフラットなシートで構成され、これら各部材が [(3)/(2)/(1)/(2)]n/(3) の順序で多層に積層されており、また各部材には貫通孔(h) が同じ位置に設けられて内部流路が形成されており、さらには積層体の両面側から 0.2kg/cm2G 以上の圧力で圧縮された状態に保たれているので、1枚の大きなシートから無駄なく単位シートを得ることができるので有利であること、積層体の圧縮を均等に行うことができること、通液時の液のチャネリング(偏流)を効果的に防止することができること、単位面積当りの処理量を非常に多くすることができること、イオン性物質の除去率の安定化が図られる上、その除去率を極限にまで高めることができることなどのすぐれた作用効果が奏される。
【0043】
【実施例】
次に実施例をあげて本発明をさらに説明する。
【0044】
実施例1
〈通液型コンデンサの作製〉
図3は本発明の通液型コンデンサの要部の一例を示した分解図である(作図の都合上n=3の場合を示してあるが、後述のように実施例1ではn=40としてある)。図4は通液型コンデンサの一例を示した斜視図である。
【0045】
(1) はセパレータであって、130mm×130mmの大きさで、厚さ約 0.2mmの四角形のろ紙を用いている。セパレータ(1) の中央付近には径25mmの貫通孔(h) を設けてある。
【0046】
(2) は電極の一例としての120mm×120mmの大きさの比重 0.4の四角形の形状の活性炭層であり、石油コークスを水酸化カリウムで賦活することにより製造されたBET比表面積2200m2/gの粉粒状の高比表面積活性炭をポリテトラフルオロエチレン、カーボンブラックおよび適当な分散媒と混合して厚さ 1.0mmの板状に圧縮成形したものからなる。成形時の活性炭の配合割合は80重量%であり、1枚の活性炭層に含まれる活性炭の合計量は5gである。電極(2) の中央付近には径25mmの貫通孔(h) を設けてある。
【0047】
(3) は集電極であり、120mm×170mmの大きさの厚さ125μm の四角形のフォイル状のグラファイトからなる。集電極(3) は、セパレータ(1) および電極(2) より大きい面積を有するので、そのはみ出し部分を端子として用いる。集電極(3) の中央付近には径25mmの貫通孔(h) を設けてあり、またそのはみ出し部分には、結束して陽極あるいは陰極とするための貫通孔(h')を設けてある。
【0048】
上記のセパレータ(1) 、電極(2) および集電極(3) は、
[(3)/(2)/(1)/(2)]n/(3)
の順序で多層に積層されており、この実施例1ではnは40に設定してある。
【0049】
そして積層体の積層状態において、各貫通孔(h) が同じ位置にあり、内部流路が形成されている。
【0050】
この積層体は、図4のように箱内に収容され、蓋兼用の押え板(4) を締め付けることにより、 0.5kg/cm2G の圧力で圧縮された状態に保つようにしてある。図4中、(5) は通液のための出入口、(6), (7)はそれぞれ締め付けのためのボルトとナットである。(8) は箱本体である。矢印は通液方向である。
【0051】
〈イオン性物質を含む液体の処理例1〉
上記図4の通液型コンデンサを用い、各集電極(3) の端子を2ボルトの直流電源とつなぎ、液入口から濃度0.01モル/リットルの食塩水を通液し、流し放し状態で液出口より流出させた。
【0052】
食塩水通液時の流速を100ml/minとしたときの積算通液量と出口液食塩濃度との関係を図5に示す。図5から、2ボルト定電圧の印加により出口食塩濃度が急激に低下して、流速100ml/minの場合には最大で93%の食塩が除去されることがわかる。
【0053】
図6は、図4の通液型コンデンサに食塩水を通液し、定電圧印加とショートとを交互に繰り返したときの積算通液量と出口液食塩濃度との関係を示したグラフである。
【0054】
上記で得た通液型コンデンサを用い、集電極(3) の端子を2ボルトの直流電源とつなぎ、液入口から濃度0.01モル/リットルの食塩水を100ml/minの流速で通液し、流し放し状態で液出口より流出させた。図6中に付記のタイミングで2ボルト定電圧の印加とショートとを繰り返し、液出口から流出する液中の食塩濃度を測定した。結果を図6に示す。
【0055】
図6から、2ボルト定電圧の印加により出口食塩濃度が急激に低下して最大で93%の食塩が除去され、ショートさせると最大で約4倍にまで食塩濃度が高まった液が導出されること、出口食塩濃度が原液のそれ近くになった時点で再度印加を開始すると出口食塩濃度急激に低下して同様に最大で93%まで食塩が除去され、ショートさせると最大で約4倍にまで食塩濃度の高まった液が導出されること、以下同様のパターンを10回以上繰り返しても同様の結果が得られること、また通液量が多いこと、従って脱イオン率の安定性がすぐれかつ処理量が多いことがわかる。
【0056】
〈処理例2〉
上記処理例1においては2ボルト定電圧の印加とショートとを繰り返したが、2ボルト定電圧の印加とショートの後、逆接続を加えて、操作を繰り返した。結果を図7に示す。
【0057】
〈処理例3〉
上記処理例2において、不使用時または使用前の準備段階においては、通液を行うことなく電圧のみをかけた状態にした。このようにすると、極めて清浄な液が電極内で形成され、電極表面に析出した各種の塩が再溶解するので、これらの固形物による装置の閉塞を防いだり遅らせたりすることができた。
【0058】
〈処理例4〉
実施例1の通液型コンデンサにおいて、下記の条件にて、積層圧とイオン除去率との関係を求め、0.1kg/cm2G, 20%; 0.2kg/cm2G, 50%; 0.5kg/cm2G, 93%; 1.5kg/cm2G, 93%; のデータを得た。このときの結果を図8に示す。この結果から、最大イオン除去率は93%であることがわかる。
・電極(2): 100mm×100mm の大きさの繊維状活性炭、30枚積層(60g)
・通液条件: 0.01 mol/L NaCl 、180ml/min
【0059】
〈処理例5〉
表1は、実施例1の通液型コンデンサを用いて、枯草菌(Bacillus subtilis) 培養液を通過させた際の出口液中の菌数を調べたもので、本装置に殺菌効果が認められることを示している。条件は次の通りである。
・電極(2): 100mm×100mm の大きさの繊維状活性炭、30枚積層(60g)
・積層圧: 0.5kg/cm2G
・通液条件: 0.01 mol/L NaCl 、60ml/min
【0060】
【表1】
Figure 0004286931
【0061】
実施例2
図9は、セパレータ(1) 、電極(2) および集電極(3) を折り畳みシートで構成したときの状態を示した説明図である。
【0062】
実施例3、4
図10、図11は、電極(2) に複数の貫通孔(h) を設けたときのチャネルデザインの例を示したものである。液体は矢印の方向に流れる。なお、セパレータ(1) および集電極(3) にも、同じ位置に貫通孔(h) を設けてある。このように複数の貫通孔(h) を設けることにより、液が均一に流れるための流路を確保することができ、電極(2) そのものを大型化できるという利点がある。
【0063】
【発明の効果】
作用の項でも述べたように、本発明においては、セパレータ(1) 、電極(2) および集電極(3) がいずれも多角形のフラットなシートで構成され、これら各部材が [(3)/(2)/(1)/(2)]n/(3) の順序で多層に積層されており、また各部材には貫通孔(h) が同じ位置に設けられて内部流路が形成されており、さらには積層体の両面側から 0.2kg/cm2G 以上の圧力で圧縮された状態に保たれているので、1枚の大きなシートから無駄なく単位シートを得ることができるので有利であること、積層体の圧縮を均等に行うことができること、通液時の液のチャネリング(偏流)を効果的に防止することができること、単位面積当りの処理量を非常に多くすることができること、イオン性物質の除去率の安定化が図られる上、その除去率を極限にまで高めることができることなどのすぐれた効果が奏される。
【0064】
本発明の通液型コンデンサは、スケールアップが容易にできるという点でも有利である。というのは、従来に比してシール面で単純化されているので積層枚数を容易に増やすことができ、また積層体を圧縮するので電極(2) を大型にしてもチャネリング(偏流)なく流路を確保できるからである。
【図面の簡単な説明】
【図1】シートの多角形状の例を示した説明図である。
【図2】本発明の通液型コンデンサを用いてイオン性物質を含む液体の処理を行うときの原理を示した説明図である。
【図3】本発明の通液型コンデンサの要部の一例を示した分解図である。
【図4】通液型コンデンサの一例を示した斜視図である。
【図5】食塩水通液時の積算通液量と出口液食塩濃度との関係を示したグラフである。
【図6】通液型コンデンサに食塩水を通液し、定電圧印加とショートとを交互に繰り返したときの積算通液量と出口液食塩濃度との関係を示したグラフである。
【図7】定電圧の印加とショートの後、逆接続を加えて操作を繰り返したときの結果を示したグラフである。
【図8】通液型コンデンサを用いて、積層圧とイオン除去率との関係を求めたときの結果を示したグラフである。
【図9】セパレータ(1) 、電極(2) および集電極(3) を折り畳みシートで構成したときの状態を示した説明図である。
【図10】電極(2) に複数の貫通孔(h) を設けたときのチャネルデザインの例を示したものである。
【図11】電極(2) に複数の貫通孔(h) を設けたときのチャネルデザインの例を示したものである。
【符号の説明】
(1) …セパレータ、
(2) …電極、
(3) …集電極、
(4) …押え板、
(5) …出入口、
(6) …ボルト、
(7) …ナット、
(8) …箱本体、
(h) …貫通孔、
(h')…貫通孔

Claims (4)

  1. セパレータ(1) を挟んで電極(2) が配置され、その電極(2) の外側に集電極(3) が配置された基本構造を有するコンデンサであって、
    ・それぞれのセパレータ(1) 、電極(2) および集電極(3) は、いずれも、独立のまたは折り畳まれたフラットなシートで構成され、かつそれぞれのシートは多角形状を有していること、
    ・これらのセパレータ(1) 、電極(2) および集電極(3) は、[(3)/(2)/(1)/(2)]n/(3)の順序で多層に積層されており、nは20以上であること、
    ・それぞれのセパレータ(1) 、電極(2) および集電極(3) は、いずれも、その多角形状のシートに通液のための1ないし複数個の貫通孔(h) を設けてあり、これらのシートの積層状態においては各貫通孔(h) は同じ位置にあって内部流路が形成されていること、
    ・それらのセパレータ(1) 、電極(2) および集電極(3) が多層に積層された積層体は、その積層体の両面側から 0.2〜10kg/cm 2 G の圧力で圧縮された状態に保たれていること、および、
    ・セパレータ(1) は電極(2) よりも若干大き目のサイズとしてあり、集電極(3)は、電極(2) よりもはみ出す部分を有するサイズとして、そのはみ出し部分を束ねるようにしてあること、を特徴とする通液型コンデンサ。
  2. セパレータ(1) を挟んで電極(2) が配置され、その電極(2) の外側に集電極(3) が配置された基本構造を有するコンデンサであって、
    ・それぞれのセパレータ(1) 、電極(2) および集電極(3) は、いずれも、独立のまたは折り畳まれたフラットなシートで構成され、かつそれぞれのシートは多角形状を有していること、
    ・これらのセパレータ(1) 、電極(2) および集電極(3) は、[(3)/(2)/(1)/(2)]n/(3)の順序で多層に積層されており、nは20以上であること、
    ・それぞれのセパレータ(1) 、電極(2) および集電極(3) は、いずれも、その多角形状のシートに通液のための1ないし複数個の貫通孔(h) を設けてあり、これらのシートの積層状態においては各貫通孔(h) は同じ位置にあって内部流路が形成されていること、および、
    ・それらのセパレータ(1) 、電極(2) および集電極(3) が多層に積層された積層体は、その積層体の両面側から 0.2〜10kg/cm 2 G の圧力で圧縮された状態に保たれていること、の条件を全て満たす通液型コンデンサを用いて、該コンデンサにイオン性物質を含む液体を通液しながら、集電極(3) への直流定電圧または直流定電流の印加Aと、集電極(3) 間のショートまたは定電流放電Bとを組み合わせて、あるいは、これらの印加Aおよびショートまたは放電Bと、逆接続Cとを適宜組み合わせて、液体の処理を行うことを特徴とする液体の処理方法。
  3. 通液方向を、所定のプログラムに従って逆方向に切り替えることを特徴とする請求項記載の液体の処理方法。
  4. 不使用時または使用前の準備段階においては、通液を行うことなく電圧のみをかけた状態にしておくことを特徴とする請求項記載の液体の処理方法。
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