JP2012086189A - 電気二重層キャパシタとこれを用いた脱イオン装置並びにその装置の運転方法 - Google Patents

電気二重層キャパシタとこれを用いた脱イオン装置並びにその装置の運転方法 Download PDF

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Abstract

【課題】脱塩時間を極力長くするとともに、再生時間は極力少なくすることにより、稼働率及びエネルギー効率を向上させた通液型電気二重層キャパシタとこれを用いた脱塩装置並びにその運転方法を提供する。
【解決手段】一対の電極17、17間にセパレータ16を介在し、電極17の外側を導電性部材による一対の集電極18、18により接続させてユニットを構成し、このユニットをガスケット20やシール材などの封止手段を介して筐体14に内蔵した電気二重層キャパシタ10において、集電極18に電極17の構成部材が流出しない範囲で再生時の高濃度イオンを排出するための貫通手段を配設した電気二重層キャパシタ10及びこれを用いた脱塩装置30、並びに運転方法である。
【選択図】図1

Description

本発明は、電気二重層キャパシタとこれを用いた脱イオン装置並びにその装置の運転方法に関し、特に、積層状の電気二重層キャパシタにより塩化ナトリウム等のイオン物質を含む液体を処理する電気二重層キャパシタに関する。
従来、この種の装置としては、例えば、特許文献1に、電気絶縁性多孔質通液性シートからなるセパレータを挟んで、高比表面積活性炭を主材とする活性炭層を配置し、その活性炭層の外側に集電極を配置し、さらにその集電極の外側に押え板を配置した構成を有する平板形状の電気二重層キャパシタが示されている。また、特許文献1には、この平板形状の電気二重層キャパシタにイオン性物質を含む液体を通液しながら、集電極への直流低電圧の印加と、両集電極間の短絡又は逆接続とを交互に繰り返すことによる液体の処理方法も示されている。
また、その他の構造の電気二重層キャパシタとして図7及び図8に示すものが知られている。図7及び図8に示した電気二重層キャパシタ1は、スペーサ2と、その両側に絶縁性及び通液性を有する薄いフィルム部材のセパレータ3、3と、導電性多孔体よりなる一対の電極4、4と、導電性の板状体よりなる一対の集電極5、5と側板6、6とを有しており、スペーサ2がセパレータ3、3により両側を挟まれ、さらにその外側を電極4、4と、集電極5、5と、側板6、6に挟まれて一つのユニット部位が構成されている。このユニットの内部に、前記側板部6、6に形成された流入口7、流出口8を通じて、電極4、4の間にイオンを含有する液体を通液させ、脱イオン処理を行うものである。
特許文献2には、特許文献1に示された電気二重層キャパシタと同一構造の電気二重層キャパシタを3基以上用い、充電によるイオン性物質の吸着と、短絡又は逆接続による吸着したイオン性物質の離脱とを、各キャパシタ間の連結及び各キャパシタに対する液の導入と導出との切り替えと連動させながら所定のパターンで行うことにより、原液が所定の流速で連続的に処理されると共に、所定の品質の精製液及び高濃度液が所定の流速で連続的に取り出されるようにしたことを特徴とする液体の精製処理方法が示されている。
特開平6−325983号公報 特開平2001−300535号公報
特許文献1の電気二重層キャパシタにより浄水を行う場合には、当該キャパシタに原水を通水し、導線を介して直流電圧を集電極に印加すると、原水に含まれるナトリウム、カリウム、カルシウム等の陽イオンは陰極に、塩素イオン、硫酸イオン、炭酸イオン等の陰イオンは陽極に各々静電吸着され、イオン物質が除去された浄水が得られる。しかしながら、各電極にイオンが吸着されて電気二重層を形成すると電流が流れ難くなり、電極のイオン物質の吸着能力が低下して浄水されなくなる。このため脱塩処理を中止し、直流電源を導線に逆接続するか、導線を短絡させることにより、各電極に吸着されていたイオンを離脱、放出させ、電極を再生させることが必要となる。
従って、特許文献1の電気二重層キャパシタによる水の脱塩処理においては、被処理水中のイオンを電極に吸着させる脱塩工程と、電極に吸着したイオンを離脱させる再生工程を交互に繰り返す必要があるが、脱塩工程に要する時間と再生工程に要する時間は略同じであるため、長時間に亘り脱塩可能なキャパシタを開発したとしても、再生工程にもほぼ同じ時間が必要となり、水処理装置の稼動効率の面で問題がある。
また、再生工程においても電気二重層キャパシタに接続した送液ポンプは稼動状態にしておく必要があるため、水処理装置全体としてのエネルギーロスが大きい。その上、再生時に電気二重層キャパシタの原水流路に高イオン濃度の排液が逆流するため、装置が大きくなるほど、離脱イオンの再混合によるロスや、電極汚染による劣化の要因が生じる。
通常、電気二重層キャパシタのイオン吸着能力は、電極の比表面積が大きくなるほど高くなるが、イオン吸着容量を高めるために電極層の厚さを増したとしても、電極層の奥(集電極側)には被処理水の流れが無いため、再生工程を経ても電極内に離脱イオンが残留し、その結果、再生効率が低下する可能性もある。
一方、特許文献2の精製処理方法により、通液型電気二重層キャパシタを3基以上用い、所定のパターンに従ってこれらの通液型電気二重層キャパシタを順次稼動させれば、水処理装置全体としては被処理水を所定の流速で連続的に処理できるようになり作業効率は向上する。しかしながら、この精製処理方法では、全ての通液型電気二重層キャパシタが同時に稼動状態にはないので、設備的なロスを生じ、経済性の面で問題がある。
本発明は、上記の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、電極の再生時に電極層の深部に捕捉されたイオンの洗い出しを容易にし、もって、脱イオン工程の時間は極力長く、再生工程の時間は極力短くして稼働率及びエネルギー効率の向上を図ることにある。
上記目的を達成するため、本発明は、一対の電極間にセパレータを介在し、前記電極の外側を導電性部材による一対の集電極により接続させてユニットを構成し、このユニットをガスケットやシール材などの封止手段を介して筐体に内蔵した電気二重層キャパシタにおいて、前記集電極に、電極の構成部材が流出しない範囲で再生時の高濃度イオンを排出するための貫通手段を配設したことを特徴とする電気二重層キャパシタである。
また、本発明は、貫通手段は、貫通口を少なくとも1個以上設けるか、または多孔性の導電性板である電気二重層キャパシタである。
また、本発明は、流路確保と電極間の間隔を一定に保持するために電極間に高分子製の織布、不織布、網、焼結体などの多孔体からなるスペーサを介在させた電気二重層キャパシタである。
また、本発明は、筐体には、電極間にイオンを含む液体を流入させるための流入口と処理済みの液体を排出するための流出口を設けるとともに、高濃度イオンを前記集電極の裏側へ導き排出するための排出口を設けた電気二重層キャパシタである。
また、本発明は、セパレータが直流5V以下で十分な絶縁性があり、電極構成部材の流失を防止できる範囲で通液性を有する多孔体であることを特徴とする電気二重層キャパシタである。
また、本発明は、電極が、粉末活性炭、粒状活性炭、繊維活性炭あるいはカーボンナノチューブなどの良導電性で高表面積素材からなる電気二層キャパシタである。
また、本発明は、集電極が、アルミニウム、銅及び銅合金、ステンレス鋼、チタン合金、銀、金、白金などを含む金属又はグラファイトなどの電気良導体であって、焼結体、網、織物、パンチングメタル、ウェッジワイヤなどの通液性を有する板状の多孔性部材から構成される電気二重層キャパシタである。
また、本発明は、集電極が繊維径10〜500μmの炭素繊維加工体であることを特徴とする電気二重層キャパシタである。
他の発明は、電気二重層キャパシタを用いた脱イオン装置であって、集電極に電圧を印加する電源と、原水を供給する原水槽と、脱イオン処理した処理液を貯留する処理液槽と、脱イオン処理で発生した排液を排出する排液槽と、原水槽と流入口を接続する管路と、流出口と処理液槽を接続する管路と、排液口と排液槽を接続する管路とを有する脱イオン装置である。
更に他の発明は、脱塩工程では、電気二重層キャパシタの流出口を開放するとともに、流出口と処理液槽を接続する管路を開放することにより、処理液を処理液槽に貯留し、再生工程では、電気二重層キャパシタの排液口を開放するとともに、流出口を閉止して、排液を排液口から排出し、排液口と排液槽を接続する配管を開放することにより、排液を排液槽に排出することを特徴とする脱イオン装置の運転方法である。
本発明によると、再生工程において、原水が電極層及び集電極を通過できる構造であるので、電極層の奥(集電極側)に捕捉されたイオンを容易に洗い出すことができるため、従来に比べ、電極層の奥に残る残留イオンの量を著しく減少させることができ、その結果、電極の再生に要する時間を従来よりも短くすることができるとともに、イオン吸着容量を高めるために電極層の厚みを増しても、電極の再生効率の低下を防ぐことができる。
また、本発明によると、貫通口を少なくとも1個以上設けるか、または多孔性である導電性板により集電極を作成するので、別途貫通手段を設けることなく、原水が電極層及び集電極を通過できる構造にすることができる。
また、本発明によると、電気二重層キャパシタ内部での電極間隔を一定に保ち、偏流による性能低下を防止することができる。
また、本発明によると、電気二重層キャパシタの筐体には、原水を流入させるための流入口と脱イオン処理された処理液を流出させるための流出口を設けるとともに、電極の再生時に高濃度イオンを含有する排液を集電極の裏側へ導き、外部に排出するための排出口を設けるので、高濃度イオンを含有する排液が原水通路に戻ることがなく、離脱イオンの再混合によるロスや、電極汚染を防止することができる。
また、本発明によると、電極間を電気的に絶縁することができるとともに、電極の充放電に伴って起きる電解液中のイオンの移動を円滑化することができる。
また、本発明によると、電極の厚みを増して電極の比表面積を増加させることが可能となり、その結果、電極のイオン吸着量を増加させるとともに、脱塩工程の時間を長くすることができる。
また、本発明によると、外部電源から供給される電気を集電極を通じて電極層に供給することができるとともに、高濃度イオンを含有する排液を電極層及び集電極を通過させることができる。
また、本発明によると、繊維径10〜500μmのグラファイトファイバー(炭素繊維)の織物を集電極に使用するので、電極の構成部材が流出せず、かつ再生時に高濃度イオンを含有する排液を排出することができる。
他の発明によると、脱塩工程で脱イオン処理された処理水と、再生工程で排出される高濃度イオンを含有する排液とが異なる管路により処理液槽と排液槽に移送され、混合することがないので、高水質の処理水を効率的に得ることができる。
更に他の発明によると、脱塩工程では、脱イオン処理された処理液を、排液が通過することがない流出口と管路を使用して処理液槽に送液するので、高水質の処理液を得ることができる。また、再生工程では、原水は電極層内部及び集電極を通過し、電極層の奥に捕捉されたイオンを洗い出して集電極の裏側にある排液口から電気二重層キャパシタの外部に排出されるので、電極層の奥に残る残留イオンの量を従来よりも大幅に減少させることにより、再生工程に要する時間を従来に比べて大幅に短縮することができる。さらに、電極から離脱した高濃度イオンを含む排液を原水通路に戻すことがないので、離脱イオンの再混合によるロスを防止して効率的に脱イオン処理を行うことができる。
本発明における電気二重層キャパシタの一実施形態を示す模式断面図である。 図1の分解断面図である。 図1の模式分解斜視図である。 (a)は電極層に静電吸着したイオンの状況を示す概念図であり、(b)は通液性のない集電極に形成された電極に原水を流した場合の概念図であり、(c)は通液性を有する集電極に形成された電極に原水を流した場合の概念図である。 脱イオン装置の一実施形態を示した模式図である。 脱塩−再生曲線を示すグラフである。 従来の電気二重層キャパシタの一例を示す模式断面図である。 図7の模式分解斜視図である。 比較品における電気二重層キャパシタを用いた脱イオン装置を示した模式図である。 比較品における電気二重層キャパシタを用いた脱イオン装置の脱塩−再生曲線を示すグラフである。
以下、本発明における電気二重層キャパシタとこれを用いた脱イオン装置、及びその運転方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1においては本発明に係る電気二重層キャパシタの一実施形態の模式断面図を示し、図2においては図1の分解断面図を示し、図3においては図1の摸式分解斜視図を示す。
図において、電気二重層キャパシタ(以下、キャパシタという。)10は、イオンを含む液体から脱イオン処理をする少なくとも一つのユニットであり、このキャパシタ10は、流入口11、流出口12、排液口13を構成する筐体14を備え、この筐体14内に、スペーサ15、セパレータ16、電極17、集電極18が設けられている。
スペーサ15は、高分子製の織布、不織布、網、焼結体などの多孔体から形成され、セパレータ16、16の間に配設されて、キャパシタ10の内部を流れる原水の流路を確保するとともに、電極17、17間の間隔を一定に保つものである。
セパレータ16は、直流5V以下の電圧において電極17、17間を電気的に絶縁するとともに、キャパシタ10への充放電に伴って起きる電解液中のイオンの移動を円滑化するためのもので、絶縁性を有しかつ電極構成部材の流失を防止できる範囲で通液性を有する多孔体のシートにより形成される。このセパレータとしては、例えば、一般的な電池セパレータとして使用される微細多孔性フィルムや不織布が適している。
電極17は、直流電圧を印加された時に原水に含まれるイオンを吸着し、原水から脱イオンするものであり、良導電性の材料で形成されるが、吸着するイオン量を増加させるため、高表面積素材を用いることが望ましく、例えば、粉末活性炭、粒状活性炭、繊維活性炭あるいはカーボンナノチューブなどが適している。
集電極18は、外部電源からの直流電圧を電極17に印加するためのものであり、アルミニウム、銅及び銅合金、ステンレス鋼、チタン合金、銀、金、白金などを含む金属またはグラファイトなどの電気良導体であって、かつ板状であることが好ましい。この条件に加え、本発明に係るキャパシタ10の集電極18は、原水を通過させる通液性を有する必要があるため、導電性を損なわずかつ、電極17の構成材が流出しない範囲で、少なくとも一個以上、好ましくは複数の貫通孔を設けた部材であるか、或いは焼結体、網、織物、パンチングメタル、ウェッジワイヤなどの通液性を有する多孔性部材により形成される必要がある。
本発明に係るキャパシタ10の集電極18を繊維径10〜500μmの炭素繊維加工体で形成すると、他の材料を使用した場合より集電極18の開口率を大きくすることができ、集電極18の液体透過性が向上して電極17内部に残留するイオンを洗い出す能力が増加するとともに、コスト面でも有利になるため、特に好ましい。
また、間隔1〜100μmのウェッジワイヤスクリーンを用いて集電極18を形成した場合にも、大きな開口率を有し、本発明に係るキャパシタ10に適した集電極18を得ることができる。
図1に示した筐体14は、側板19とガスケット20とを備えている。図3において、これらを組み合わせる際には内部に電極室21が形成され、この電極室21内にスペーサ15、セパレータ16、電極17、集電極18を収納することが可能になっている。図2に示すように、側板19には凹状の収納部22が形成され、この収納部22に集電極18を収納可能になっている。ガスケット20は内側に電極17を収納可能になっている。
図2、3において、筐体14を組み合わせる際には、2枚のセパレータ16、16の間にスペーサ15を介在させて流路を確保した状態で、その両側に内側に電極17を収納したガスケット20、20が配置され、この電極17の外側に集電極18を収納した外板19が取付けられる。これらの側板19、ガスケット20、スペーサ15は、筐体14の外周縁側においてセパレータ16によりシールされて液密状態で一体化され、キャパシタ10内に電極室21が形成される。
筐体14の組み合わせ後には、前述した流入口11、流出口12、排液口13が構成される。このうち、流入口11、流出口12は、側板19の外部から内側のスペーサ15まで連通するように形成されているので、この流入口11からキャパシタ本体10内に流入した液体は、キャパシタ10内部を通過した後、流出口12からキャパシタ10外へ流出する。
排液口13は、側板19の外部からこの側板19に設けられた収納部22の内側まで連通するように形成され、原水の脱イオン処理で生じる高濃度イオン含有排液をキャパシタ10外へ排出する流路となる。
上記の構成により、キャパシタ10内に流入口11より原水を流入させ、集電極18を介して電極17に外部直流電源より電圧を印加すると、原水中の陽イオンは電極17の陰極に、陰イオンは電極17の陽極に各々静電吸着され、原水の脱イオン処理が行われる。原水を脱イオン処理した処理液は、流出口12からキャパシタ10の外部に流出させることができる。
一方、電極17にイオンが電気二重層を形成して吸着され、電流が流れ難くなって脱イオン能力が低下した場合には、電極17への外部電源の正負の接続を逆にする逆接続と、電極17、17間の短絡とを交互に行うことにより、電極17の表面に吸着されていたイオンを電極17から離脱させ、電極17を再生させることができる。電極17から離脱したイオンを高濃度に含有する排液は、流出口12を閉じ、排液口13を開放することにより、原水流路に逆流させることなく、キャパシタ10の外部へ排出することができる。
ここで、図4により、本発明における集電極に通液性を持たせたことによる効果を説明する。一般に、電気二重層キャパシタの電極は高比表面積活性炭等を主材とし、集電極に塗付して層状に形成される。このため、電極層23は通液性を有しており、被処理液24は集電極25に近い電極層23の深部にまで達することができ、イオン26、27は、図4の(a)に示すように電極層23の深部にまで吸着される。
一方、図4の(b)に示すように、再生工程において、電気二重層キャパシタ内部に原水24を流し、電極層23から静電的に離脱したイオン26、27を洗い出そうとしても、集電極25に通液性がないと、原水24は電極層23の内部を流れ難く、電極層23の深部に達することは困難である。従って、電極層23の内部に捕捉されたイオン26、27の洗い出しに時間がかかるだけでなく、電極層23の深部に捕捉されたイオン26、27を洗い出すことができず、電極層23の深部には多量の離脱したイオン26、27が残留することになる。このため、従来の電気二重層キャパシタでは、再生工程に要する時間が長いだけでなく、電極の再生効率も低い。
これに対し、本発明における電気二重層キャパシタの集電極18は通液性を有するため、再生工程において、流出口12を閉じて、キャパシタ10内部に原水24を流入口11から流入させると、原水24は電極17の層内を流れてその深部に到達し、最短距離で電極17の層及び集電極18を通過して、集電極18の裏側へ導かれる。このとき、電極17の層内を通過する原水24は、電極17の層の内部に捕捉されている離脱したイオン26、27を容易に洗い出すことができる。このため、再生工程に要する時間が従来よりも大幅に短縮されるとともに、電極17の再生効率の低下を防止することができる。また、イオン吸着容量を高めるために電極層の厚みを増しても、電極層の内部に捕捉されたイオンを容易に洗い出すことができるので、電極17の再生効率の低下を防ぐことができる。
また、電極17の再生工程において、流出口12を閉じ、排液口13を開くことにより、電極17の層内部に捕捉されていたイオン26、27を洗い出して高濃度イオンを含有する排液を、原水通路に戻すことなく、集電極18を通過させてその裏側へ導き、排液口13を通じてキャパシタ10の外部に排出することができるので、離脱したイオン26、27の再混合によるロスや、電極汚染を防止することができる。
なお、本実施形態のキャパシタ10では、セパレータ16を2枚とし、このセパレータ16、16の間に1枚のスペーサ15を介在させているが、セパレータ16は少なくとも1枚以上あればよく、このセパレータ16の数に応じて必要枚数のスペーサ15を組み合わせるようにすればよい。
次に、本発明の電気二重層キャパシタを用いた脱イオン装置を説明する。図5は、脱イオン装置の一例を示しており、この脱イオン装置(以下、装置本体という。)30は、少なくとも、電源31、原水槽32、処理液槽33、排液槽34を備えている。
電源31は直流電源であり、導線35により集電極18に接続され、この集電極18を介して電極17に電圧を印加可能になっている。原水槽32には被処理液が貯蔵され、この原水槽32は、キャパシタ10の流入口11と管路により接続され、キャパシタ10に原水を供給可能になっている。処理液槽33はキャパシタ10の流出口12と管路により接続され、キャパシタ10で脱イオン処理された処理液を貯留可能になっている。排液槽34は、キャパシタ10の排液口13と管路により接続され、キャパシタ10で原水を脱イオン処理した際に排出される排液を排出可能になっている。
キャパシタ10と各槽を接続する管路にはストップ弁36が設けられている。ストップ弁36のうち、ストップ弁36aは原水槽32と流入口11との間に、ストップ弁36bは流出口12と処理液槽33との間に、ストップ弁36cは排液口13と排液槽34との間に設けられている。これらのストップ弁36を適宜開閉することにより、装置本体30の運転時に、原水、処理液及び排液のキャパシタ10内における流れを制御することができる。
また、この装置本体30には、原水槽32とストップ弁36aとの間に、装置本体30の運転中に、原水槽32からキャパシタ10へ原水を供給するための送液ポンプ37が設けられている。
この装置本体30は、キャパシタ10の内部で脱イオン処理された処理液を専用の流出口12から流出させ、専用の管路を経て処理液槽33に貯留し、電極17から洗い出されたイオンを高濃度に含む排液を専用の排液口13から排出させ、専用の管路を経て排液槽34に排出するように構成されている。このため、脱塩工程において、原水を脱イオン処理した処理液に電極17から離脱したイオンが再混合することがないので、高水質の処理液を得ることができる。
また、この装置本体30は、再生工程において、電極17の層内から洗い出されたイオンを高濃度に含む排液を、排液口13からキャパシタ10の外部に排出し、キャパシタ10内部の原水流路に逆流させることがないので、再生工程に要する時間を従来よりも大幅に短縮することができる。
続いて、この装置本体30の運転方法を説明する。運転に際しては、先ずストップ弁36bを閉じ、ストップ弁36a、36cを開とした後、送液ポンプ37を始動させて原水槽32に貯蔵している原水を、流入口11よりキャパシタ10の内部に送り込む。キャパシタ10内部が原水で満たされた後には、原水は排液口13よりキャパシタ10の外部に排出され、ストップ弁36cを経由して排液槽34に排出される。
次いで、原水の排液槽34への排出を確認したら、ストップ弁36bを開にするとともに、ストップ弁36cを閉とし、直流電源31から導線35を介して集電極18に、水が電気分解しない電圧にて直流を印加する。この電流の印加により、キャパシタ本体10の内部では原水を脱イオン処理する脱塩工程が開始され、イオンが電極17に静電吸着されて脱イオン化された処理液は、流出口12からキャパシタ10の外部に流出し、ストップ弁36bを経由して処理液槽33に貯留される。
脱塩工程の間、流出口12での処理液のイオン濃度または電気伝導度、及び電極17、17間の電流値を図示しない測定装置でモニターし、電極17の脱イオン能力が低下したと判断する時点で脱塩工程を終了し、再生工程に移行する。
再生工程では、ストップ弁36cを開き、ストップ弁36bを閉じた後、直流電源31の陽極と陰極を集電極18に逆接続または/及び短絡を行うことにより、電極17に静電吸着されたイオンを離脱させ、電極17を再生させる。このとき、原水槽32から送液ポンプ37によりキャパシタ10に供給される原水は、最短距離で電極17の層及び集電極18を通過して、集電極18の裏側へ導かれるが、電極17の層を通過する際に、電極17の層の内部に捕捉されている離脱したイオンを洗い出す。電極17を離脱したイオンを洗い出して高濃度イオンを含有する排液は、排液口13からキャパシタ10の外部に排出され、ストップ弁36cを経由して排液槽34に排出される。
再生工程の間、集電極18の短絡時に生じる電流値を図示しない電流計によりモニターし、電極17が再生されたと判断する時点で再生工程を終了し、ストップ弁36cを閉じ、ストップ弁36bを開いて、脱塩工程を再開する。
以上に説明した脱塩工程と再生工程を交互に繰り返す運転方法により、原水を脱イオン処理した処理液に、電極17から離脱したイオンを再混合させることなく、高水質の処理液を連続的に生成することがでる。また、従来よりも、電極17を再生させる再生工程に要する時間を大幅に短縮することができ、それにより、脱イオン装置30の稼働率及びエネルギー効率を向上させることができる。
以下に本発明における図1に示した構造の電気二重層キャパシタの試供品と、図7に示した構造の電気二重層キャパシタの比較品との脱イオン(脱塩)性能をそれぞれ測定し、その結果を比較した。
比較品としては、図7において、スペーサとしてナイロンメッシュ(NBC工業株式会社製のNMG52)を配し、このスペーサ材の両面を一対のセパレータとしてポリエステル製不織布(日本バリリーン株式会社製のMF90)で挟んだ。一対の電極として不織布状繊維活性炭(クラレケミカル株式会社製のFT300−20)を10cm角(重量1.2g)に切断して使用し、一対の集電極としてグラファイト板(大塚電機株式会社より提供を受けた米国グラフテック社製のSS400−1.19)を使用した。これらのスペーサ、セパレータ、電極、集電極を、アクリル製側板とシリコーンゴム製ガスケットを適宜加工し、原水の流入口と流出口を設けて挟み、これをボルト、ナットで締め付けて一体にし、電気二重層キャパシタとした。
上記の電気二重層キャパシタを図9に示す脱イオン装置に組み込み、0.5%の食塩水を送液ポンプにより1ml/分の流量で送液し、直流電源から集電極に1.1Vの電流を印加した。この状態で、流出口から流出する処理水のイオン濃度、及び電源から印加される電流値のモニターを継続し、電極の脱イオン能力が低下したと判断した時点で脱塩工程から再生工程に移行した。
再生工程では、最初の2分間は、直流電源から集電極への接続を逆接続にするとともに送液ポンプの運転は停止した。2分経過後は、集電極を短絡させ、送液ポンプを再駆動させ、電極の再生状況を流出口でのイオン濃度測定及び電気伝導度、並びに放電される電流により確認し、電極の再生に要する時間を計測した。
一方、試供品においては、スペーサ、セパレータ、電極は比較品に使用した物と同一であるが、一対の集電極の部材を比較品に使用した通液性の無いグラファイト板から、通液性を有するグラファイト製織物(日本グラファイトファイバー株式会社製のPT−CN60−300:糸密度たて8.53本/インチ、よこ8.60本/インチ、質量約300g/m、厚み約300μm)で構成したものに変更した。これらのスペーサ、セパレータ、電極、集電極を、アクリル製側板とシリコーンゴム製ガスケットを適宜加工し、原水の流入口と流出口、ならびに排液口を設けて挟み、これをボルト、ナットで締め付けて一体にし、電気二重層キャパシタとした。なお、比較品に使用したグラファイト板による集電極と、試供品に使用したグラファイト織物による集電極との間には、導電性において大きな差異がないことを確認した。
上記の試供品の電気二重層キャパシタを図5に示す脱イオン装置に組込み、比較品の場合と同一の条件で、送液と電圧の印加、並びに計測を行った。しかしながら、電極の再生時には比較品とは異なる供試品の構造上の特徴に基づき、流出口に設けたストップ弁を閉じ、両集電極の外側の排液口に設けたスットプ弁を開放し、排液口から高濃度にイオンを含む排液を排出させた。また、電極の再生状況を判断する目安である排液口よりの排液のイオン濃度は、繊維製集電極及び排液流路内部に残留するデッドボリュームにより時間差が生じたため、再生状況は放電による電流値の測定によって見極め、更に再度脱イオンを行うことによって、再生状態を確認した。
電極の再生は異なる再生条件で実施することとし、1回目は、送液ポンプを停止した状態で2分間電源を集電極に逆接続した後、集電極の間を短絡させた状態で送液ポンプを駆動させ、原水を1ml/分の流量で10分間流した。
2回目は、送液ポンプを停止した状態で2分間電源を集電極に逆接続した後、集電極の間を短絡させた状態で送液ポンプを駆動させ、原水を脱塩工程の3倍の3ml/分の流量で10分間流した。
3回目は、送液ポンプを停止した状態で2分間電源を集電極に逆接続した後、集電極の間を短絡させた状態で送液ポンプを駆動させ、原水を1ml/分の流量で10分間流したが、排液を排液口の双方から同時に排出させず、陽極側と陰極側から交互に1分ずつ排出させた。
4回目験は、1回目乃至3回目とは異なり、排液を排液口からではなく、比較品の場合と同様に、原水流路に逆流させて流出口から流出させ、再生条件は比較品の場合と同じとし、再生するまでの時間を計測した。
比較品の測定結果のグラフを図10に示す。比較品の場合、脱塩工程に費やすことができた時間は約30分であるのに対し、再生工程に要した時間も約30分であり、略等しかった。
これに対し、供試品の測定結果のグラフを図6に示す。供試品の場合、集電極を通過した高濃度イオンを含有する排液を原水流路に逆流させることなく、排液口から外部に排出させた1回目乃至3回目の試験結果は、それぞれ異なる再生条件であったにもかかわらず、脱塩工程に費やすことができた時間は約30分であるのに対し、再生工程において電極をほぼ再生させるために要した時間は、電極の逆接続2分と短絡10分であり、比較品の場合の半分以下の時間であった。
一方、4回目の試験では、比較品の場合と同様に、高濃度イオンを含有する排液を原水流路に逆流させ、流出口から流出させたが、脱塩工程に費やすことができた時間は、1回目乃至3回目の試験の場合と同様に約30分であるのに対し、再生工程に要した時間も約30分と略同等しく、比較品の場合と同様であった。
以上の試験結果から明らかなように、本発明における電気二重層キャパシタを用いて脱イオン装置を構成し、本発明の運転方法により運転すると、脱イオン装置の作動間において、脱塩工程に費やすことができる時間に比して、再生工程に要する時間を大幅に短縮することができ、脱イオン装置の稼働率及びエネルギー効率を向上させることができる。
10 キャパシタ本体
11 流入口
12 流出口
13 排液口
15 スペーサ
16 セパレータ
17 電極
18 集電極
19 側板
30 脱イオン装置
31 電源
32 原水槽
33 処理液槽
34 排液槽

Claims (10)

  1. 一対の電極間にセパレータを介在し、前記電極の外側を導電性部材による一対の集電極により接続させてユニットを構成し、このユニットをガスケットやシール材などの封止手段を介して筐体に内蔵した電気二重層キャパシタにおいて、
    前記集電極に、電極の構成部材が流出しない範囲で再生時の高濃度イオンを排出するための貫通手段を配設したことを特徴とする電気二重層キャパシタ。
  2. 前記貫通手段は、貫通口を少なくとも1個以上設けるか、または多孔性の導電性板である請求項1に記載の電気二重層キャパシタ。
  3. 流路確保と電極間の間隔を一定に保持するために電極間に高分子製の織布、不織布、網、焼結体などの多孔体からなるスペーサを介在させた請求項1又は請求項2に記載の電気二重層キャパシタ。
  4. 前記筐体には、電極間にイオンを含む液体を流入させるための流入口と処理済みの液体を排出するための流出口を設けるとともに、高濃度イオンを前記集電極の裏側へ導き排出するための排液口を設けた請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の電気二重層キャパシタ。
  5. 前記セパレータが直流5V以下で十分な絶縁性があり、電極構成部材の流失を防止できる範囲で通液性を有する多孔体であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の電気二重層キャパシタ。
  6. 前記電極が、粉末活性炭、粒状活性炭、繊維活性炭あるいはカーボンナノチューブなどの良導電性で高表面積素材からなる請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の電気二層キャパシタ。
  7. 前記集電極が、アルミニウム、銅及び銅合金、ステンレス鋼、チタン合金、銀、金、白金などを含む金属またはグラファイトなどの電気良導体であって、焼結体、網、織物、パンチングメタル、ウェッジワイヤなどの通液性を有する板状の多孔性部材から構成される請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の電気二重層キャパシタ。
  8. 集電極が繊維径10〜500μmの炭素繊維加工体であることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の電気二重層キャパシタ。
  9. 請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の電気二重層キャパシタを用いた脱イオン装置であって、
    集電極に電圧を印加する電源と、
    原を供給する原水槽と、
    脱イオン処理した処理液を貯留する処理液槽と、
    脱イオン処理で発生した排液を排出する排液槽と、
    前記原水槽と流入口を接続する管路と、
    流出口と前記処理液槽を接続する管路と、
    排液口と前記排液槽を接続する管路とを有する脱イオン装置。
  10. 脱塩工程では、前記電気二重層キャパシタの流出口を開放するとともに、前記流出口と前記処理液槽を接続する管路を開放することにより、処理液を前記処理液槽に貯留し、再生工程では、前記電気二重層キャパシタの排液口を開放するとともに、前記流出口を閉止して、排液を前記排液口から排出し、前記排液口と前記排液槽を接続する配管を開放することにより、排液を排液槽に排出することを特徴とする請求項9に記載の脱イオン装置の運転方法。
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