JPWO2014148649A1 - カーボン板及び複合カーボン板 - Google Patents

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Abstract

柔軟性があり、且つ、圧縮強度にも優れ、導電性をも有した薄板状の柔軟性を有するカーボン板を提供する。カーボン板1は、(a)膨張黒鉛粉末95〜30wt%及び黒鉛粉末5〜70wt%からなる炭素粉末97〜80wt%と、(b)アンモニアを含まないフェノール樹脂3〜20wt%と、の混合物を圧縮成型して、厚さ0.05〜2.0mmとされるカーボン板であって、圧縮強度が3MPa以上であり、曲げ歪が0.6%以上で割れが無く、接触抵抗が6mΩ・cm2以下である。

Description

本発明は、例えば固体高分子型燃料電池に用いられる燃料電池用セパレータとして、或いは、種々の装置に用いられるパッキングとして使用可能な、柔軟性があり、且つ、圧縮強度にも優れ、導電性をも有した黒鉛製の薄板(以下、「カーボン板」という。)に関するものであり、更には、ガス不透過性及び機械的強度が増大した、カーボン板と金属板とが一体に接合された複合カーボン板に関するものである。
近年、例えば電気自動車の発電装置として固体高分子型燃料電池が注目されている。斯かる燃料電池及び燃料電池用セパレータの一例を図7及び図8(a)、(b)に示す。
図7は、燃料電池10を構成する単位セルの構成を示す分解図であり、図8は、図7に示す燃料電池用セパレータ1の構成を示す図である。図8(a)は、平面図であり、図8(b)は、図8(a)の線X−Yにとった断面図である。
固体高分子型燃料電池10は、2枚の燃料電池用セパレータ1によって、固体高分子電解質膜6とアノード(燃料電極)7とカソード(酸化剤電極)8とをガスケット9を介して接合したMEA(membrane electrode assembly:膜/電極接合体)を単位セルとして数十個〜数百個並設し、アノード7に流体である燃料ガス(水素ガス)を、カソード8に流体である酸化ガス(酸素ガス)を供給することにより、外部回路から電流を取り出す構成となっている。
燃料電池用セパレータ1は、図8(a)、(b)に示すように、薄肉の板状体の片面又は両面に複数個のガス供給排出用溝11と、ガス供給排出用溝11に燃料ガス又は酸化ガスを供給する開口部12と、MEAを並設するための固定穴13とを有する形状であり、燃料電池内を流れる燃料ガスと酸化ガスとが混合しないように分離する働きを有すると共に、MEAで発電した電気エネルギーを外部へ伝達したり、MEAで生じた熱を外部へ放熱するという重要な役割を担っている。
従って、燃料電池用セパレータ1に求められる特性としては、組立時におけるボルト締め付けや、自動車などの振動に対して十分な強度があること、発電ロスを少なくするために電気抵抗を小さくすること、燃料ガスと酸化ガスをその両面で完全に分離して電極に供給するためのガス不透過性が挙げられる。
このような燃料電池用セパレータ1として、生産性やコストの面から有利な熱硬化性樹脂をバインダーとして用いた炭素複合材料が提案されている(例えば、特許文献1、2、3など参照)。
特開昭59−26907号公報 特開2000−173630号公報 特許第3715642号公報
特に、上記特許文献1、2、3には、炭素粉末と熱硬化性樹脂とからなる混合物をプレス装置により加熱圧縮成型するか、或いは、冷間圧縮成型することにより、燃料電池用セパレータを製造することが記載されている。また、炭素粉末として黒鉛粉末又は膨張黒鉛粉末を使用することが開示されている。また、特許文献3には、熱硬化性樹脂としては、成型性が良好であるなどの理由からフェノール樹脂が好適に使用されることを記載している。
しかしながら、本発明者らが上記特許文献に記載される燃料電池用セパレータについて更に研究実験を行った結果、次のような問題があることが分かった。
燃料電池用セパレータに使用する熱硬化性樹脂としてのフェノール樹脂は、化学的に安定し、難燃性であり、また、黒鉛粉末又は膨張黒鉛粉末などの炭素粉末との馴染み性も良く、更には、エポキシ樹脂等に比較すると耐酸性も良好であって、多くの利点を有している。
しかし、炭素粉末として黒鉛粉末を使用し、この黒鉛粉末とフェノール樹脂とを一体に結合して作製した0.05〜2mm程度の薄板状のカーボン板は、導電性、耐食性においては優れているものの、硬過ぎて脆く、曲げ歪が0.6%を超えると割れが生じ、柔軟性に問題がある。そのため、例えば燃料電池用セパレータとして使用する場合には、安定した水路(溝)形成、耐久性に関して更なる改良が必要であることが分かった。一方、膨張黒鉛粉末とフェノール樹脂とを一体に結合して作製した膨張黒鉛製の薄板状カーボン板は、放熱性、耐食性はあるが、柔らか過ぎて圧縮強度が3MPa未満とされ、永久変形し易いものであった。従って、燃料電池用セパレータ、パッキングなどとして使用するのは困難である。
このように、従来の黒鉛製の薄板状カーボン板は、燃料電池用セパレータとして、また、パッキングとして使用するには、柔軟性及び圧縮強度の点で更なる改良が必要であることが分かった。
本発明者らは、多くの研究実験の結果、炭素粉末として、膨張黒鉛粉末と黒鉛粉末とを特定の割合で混合し、この炭素粉末を特定量のフェノール樹脂、特に、アンモニアを含まないフェノール樹脂と共に圧縮成型して作製した黒鉛製薄板状のカーボン板は、柔軟性、圧縮強度、更には導電性が、燃料電池用セパレータ、パッキングなどに要求される値を十分に満足し得るものとなることを見出した。
つまり、上述の良好な特性を有するカーボン板を作製するに際して、アンモニアを含まないフェノール樹脂を使用することが重要である。フェノール樹脂は、従来、アンモニアが重合触媒として広く用いられており、アンモニアが樹脂中に残留している。しかし、後述するように、アンモニアを含むフェノール樹脂の場合、温水中に保持されると曲げ歪の性能が劣化して、膨張黒鉛を使用した場合のカーボン板の柔軟性と曲げ歪の特性が得られないことが分かった。
更に、上記良好な特性を有したカーボン板と金属板とを一体に接合した複合カーボン板は、ガス不透過性にも優れ、又、引張強度等の機械的強度が増大することが分かった。
つまり、本発明の目的は、柔軟性があり、且つ、圧縮強度にも優れ、導電性をも有した薄板状のカーボン板を提供することである。
本発明の他の目的は、上記カーボン板と金属板とを一体に接合して構成され、ガス不透過性に優れ、又、引張強度等の機械的強度が増大した複合カーボン板を提供することである。
上記目的は本発明に係るカーボン板及び複合カーボン板にて達成される。要約すれば、第1の本発明は、
(a)膨張黒鉛粉末95〜30wt%及び黒鉛粉末5〜70wt%からなる炭素粉末97〜80wt%と、
(b)アンモニアを含まないフェノール樹脂3〜20wt%と、
の混合物を圧縮成型して、厚さ0.05〜2.0mmとされるカーボン板であって、
圧縮強度が3MPa以上であり、曲げ歪が0.6%以上で割れが無く、接触抵抗が6mΩ・cm以下であることを特徴とするカーボン板を提供することである。
第1の本発明の一実施態様によると、10点接触抵抗の最大値が6mΩ・cm以下である。
第1の本発明の他の実施態様によると、前記黒鉛粉末は、前記フェノール樹脂にて被覆されている。
第2の本発明によれば、厚さが10〜150μmとされる金属板の少なくとも一側の面にカーボン板を一体に接合した複合カーボン板であって、
前記カーボン板は、上記構成のカーボン板であることを特徴とする複合カーボン板が提供される。
第2の本発明の一実施態様によれば、前記金属板は、ステンレススチール、鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル、又は、ニッケル合金等である。
本発明による薄板状のカーボン板は、柔軟性があり、且つ、圧縮強度にも優れ、導電性をも有しており、燃料電池用セパレータとして、或いは、種々の機器のパッキングとして有効に使用することができる。また、本発明の複合カーボン板は、上記カーボン板としての特長を有すると共に、カーボン板に比較して、ガス不透過性に優れ、又、引張強度等の機械的強度が増大される。
図1は、本発明に係るカーボン板の一実施例の構成を説明する概略図である。
図2(a)は、加熱圧縮成型工程或いは冷間圧縮成型工程に用いられるプレス装置の構成を示す概略図であり、図2(b)は、樹脂硬化工程に用いられる加熱装置の構成を示す概略図である。
図3(a)は、接触抵抗を測定する方法を説明するための図であり、図3(b)は、10点接触抵抗の最大値を測定するための成形サンプルにおける測定場所を説明するための図である。
図4(a)、(b)は、それぞれ、本発明に係る複合カーボン板の第一、第二の実施例の構成を説明する概略図である。
図5(a)、(b)は、本発明に係る複合カーボン板の製造法の実施例を説明する概略図である。
図6は、本発明に係る複合カーボン板を製造するための、図2(a)と同様の加熱圧縮成型工程或いは冷間圧縮成型工程に用いられるプレス装置の構成を示す概略図である。
図7は、燃料電池を構成する単位セルの構成を示す分解図である。
図8(a)は、燃料電池用セパレータの一実施例を示す平面図であり、図8(b)は、図8(a)の線X−Yに取った断面図である。
以下、本発明に係るカーボン板を図面に則して更に詳しく説明する。
先ず、図1を参照して、本発明に係るカーボン板1の一実施例の全体構成について説明する。本実施例にて、本発明に係る黒鉛製薄板状のカーボン板1は、例えば、上述したように、燃料電池用セパレータとして有効に使用し得るものであり、厚さ(t)が0.05mm〜2.0mmとされる薄板状平板とされる。カーボン板1の表面には、例えば、カーボン板を燃料電池用のセパレータとして使用する場合には、図8(a)、(b)に示すように水路形成のための溝11が成形加工される。
本発明によれば、炭素複合材であるカーボン板1は、膨張黒鉛粉末2及び黒鉛粉末3からなる炭素粉末4と、バインダーとしての、アンモニアを含まないフェノール樹脂5とを混合した混合物を圧縮成型して形成され、詳しくは実験例を参照して後述するが、圧縮強度が3MPa以上であり、曲げ歪が0.6%以上で割れが無く、接触抵抗が6mΩ・cm以下とされるカーボン板である。
次に、本発明のカーボン板1の構成について更に詳しく説明する。
(炭素粉末)
本発明のカーボン板1を作製するための必須成分としての炭素粉末4は、膨張黒鉛粉末2と黒鉛粉末3からなり、膨張黒鉛粉末2と黒鉛粉末3との混合割合は、膨張黒鉛粉末2が95〜30wt%に対して黒鉛粉末3は5〜70wt%とされる。この範囲外では、即ち、黒鉛粉末3が70wt%を超えると、得られたカーボン板1が硬くなり過ぎ、柔軟性が損なわれ、曲げ歪が0.6%を超えると割れが生じる。従って、燃料電池用セパレータとして使用する場合には、水路(溝)形成、耐久性等に問題が生じる。また、膨張黒鉛粉末2が95wt%を超えると、得られたカーボン板1が柔らかくなり過ぎ、カーボン板1の圧縮強度が3MPa未満となり、永久変形を生じやすくなる。従って、燃料電池用セパレータ、パッキングとしての耐久性に問題が生じる。好ましくは、膨張黒鉛粉末2が30〜60wt%、黒鉛粉末3が70〜40wt%とされる。
膨張黒鉛粉末2は、酸処理した鱗片状天然黒鉛粉末に熱を加え、黒鉛結晶の層間を数百倍に膨張させたものであり、平均粒径が10〜2000μmのものを用いることが好ましい。また、黒鉛粉末3は、天然黒鉛又は人造黒鉛のいずれであっても良く、平均粒径が10μm〜400μm、アスペクト比が2以下のものを用いることが好ましい。
(フェノール樹脂)
上述したように、フェノール樹脂は、従来、アンモニアが重合触媒として広く用いられており、アンモニアが樹脂中に残留している。このようなアンモニアを含むフェノール樹脂の場合、詳しくは後で説明するが、温水中に保持されると曲げ歪の性能が劣化して、膨張黒鉛を使用した場合のカーボン板の柔軟性と曲げ歪の特性が得られない。
従って、上述のように、本発明では、炭素粉末4のバインダーとしてはフェノール樹脂が使用され、特に、アンモニアを含まないフェノール樹脂が使用される。アンモニアを含まないフェノール樹脂は、重合触媒にアンモニアを用いず、代わりに例えばアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、又は、アンモニアを発生しない第3級アミンなどを用いたものであれば良い。フェノール樹脂としてレゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などを用いると成型性が良好である。つまり、フェノール樹脂は、上述したように、成型性が良好であり、化学的にも安定し、難燃性であり、また、膨張黒鉛粉末2及び黒鉛粉末3などの炭素粉末4との馴染み性も良く、更には、エポキシ樹脂等の他の熱硬化性樹脂に比較すると耐酸性も良好であって、多くの利点を有している。また、本発明では、フェノール樹脂がアンモニアを含まないことにより、得られたカーボン板1の圧縮強度が向上する。以下の本発明に関連した説明にて記載を簡単とするために単に「フェノール樹脂」と記載することもあるが、特段の記載がない限り「アンモニアを含まないフェノール樹脂」を意味するものとする。
フェノール樹脂は、粉体状のフェノール樹脂が好適に使用される。液状のフェノール樹脂は、炭素粉末との混合作業が、特に、膨張黒鉛粉末2との混合作業が極めて困難であり、均一な混合物を得ることが困難となる。粉体状のフェノール樹脂を使用すると、炭素粉末に対して所定の重量割合で混合され、十分に攪拌して均質な粉体状の原料混合物、即ち、原料粉を得ることができる。
なお、原料混合物の混合割合は、上記割合にて混合された膨張黒鉛粉末2及び黒鉛粉末3からなる炭素粉末4が97〜80wt%とされ、フェノール樹脂5は3〜20wt%とされる。この範囲外では、即ち、フェノール樹脂5が20wt%を超えると、得られたカーボン板1の柔軟性が損なわれ、曲げ歪が0.6%を超えると割れが生じる。更に、接触抵抗が増大し、6mΩ・cmを大幅に超えてしまい、従って、燃料電池用セパレータとして使用する場合には問題が生じる。また、フェノール樹脂5が3wt%未満では、得られたカーボン板1の圧縮強度が低下し、また、曲げ歪が0.6%を超えると割れが生じる。従って、燃料電池用セパレータ、パッキングなどとして使用する場合に問題が生じる。好ましくは、炭素粉末4を95〜85wt%とし、フェノール樹脂5は、5〜15wt%とされる。
なお、上記原料混合物には、炭素粉末4及びフェノール樹脂5以外に、必要に応じて繊維基材、充填材、離型剤、耐加水分解剤等を添加しても良い。
また、本発明によれば、フェノール樹脂5は、膨張黒鉛粉末2及び黒鉛粉末3からなる炭素粉末4に対して所定割合にて配合されるが、上記所定の割合とされるフェノール樹脂5を予め黒鉛粉末3に被覆(コーティング)しておくことも可能である。このようにフェノール樹脂を黒鉛粉末に被覆することにより、原料混合物におけるフェノール樹脂の均一分散性を向上させ、従って、得られたカーボン板1におけるフェノール樹脂の偏析を防止し、接触抵抗、及び、10点接触抵抗の最大値を6mΩ・cm以下に抑えることができる。被覆方法としては、特に限定されるものではないが、一般に用いられる溶液被覆、スプレー被覆、反応被覆、溶融被覆などを用いることができる。
(カーボン板の製造方法)
次に、本発明のカーボン板1の製造方法について説明する。本発明のカーボン板1は、種々の成型法にて製造することができるが、以下に、代表的な成型法につき説明する。
具体例1−1
本発明のカーボン板1は、原料混合物を加熱圧縮成型することにより製造することができる。図2に、本発明のカーボン板1を製造するための加熱圧縮成型のためのプレス装置100の一例を示す。
本具体例1−1にて、プレス装置100は一軸加熱圧縮成型装置とされ、一組の雄型101と雌型102とから成る金型103を有しており、雄型101は機枠104に固定されている。雌型102は、雄型101の下方に対向配置され、油圧シリンダ105で昇降動可能とされる。なお、本具体例1−1のプレス装置100は、金型103にはヒータ(図示せず)が内嵌されている。
上記のような配合割合にて調製された原料混合物Rを、金型103に入れて成形後0.05〜2.0mm厚となるようにプレス装置100にて加熱圧縮成型し、樹脂硬化させてカーボン板1を得ることができる。この時、雄型101と雌型102との加圧面に所定の形状、例えば、セパレータの溝形状11(図8(a)、(b)参照)を施しておくことにより、成型板Mにガス供給排出用溝11が反転されて形成される。
なお、加熱温度は、フェノール樹脂5の硬化温度以上である130〜200℃とされ、また、成型圧力は、3〜30MPa、成型時間は3〜30分とされる。真空プレスを用いても良い。
具体例1−2
本発明のカーボン板1は、原料混合物Rを先ず冷間圧縮成型し、その後、成型された成型板Mを加熱硬化することにより製造することができる。従って、本具体例1−2では、原料混合物Rを圧縮成型するプレス装置100は、上記具体例1−1で使用した一軸加熱圧縮成型装置に装着されていたヒータが装備されていない一軸圧縮成型装置とされる。その他の構成は同様とされる。つまり、プレス装置100は、一組の雄型101と雌型102とから成る金型103を有しており、雄型101は機枠104に固定されている。雌型102は、雄型101の下方に対向配置され、油圧シリンダ105で昇降動可能とされる。本具体例1−2では、プレス装置100がヒータを備えていないために、図2(b)に示すように、別個に、ヒータ201を具備した加熱装置200が配置されている。
このように、本具体例1−2では、金型103に入れた原料混合物Rをプレス装置100によって加圧して所定形状とされる、未だ樹脂が硬化していない成型板Mを冷間圧縮成型し、この圧縮成型によって作製された成型板Mを炉(オーブン)等の加熱装置200で加熱して成型板Mの樹脂を硬化させ、カーボン板1を製造する。
更に説明すると、本具体例1−2では、プレス装置100による冷間圧縮成型工程では、雌型102の中に原料混合物Rを均一に張り込み、油圧シリンダ105によって雌型102を雄型101に押圧することで、雌型102と雄型101とにより原料混合物Rに30MPa以上の圧力を作用させ、セパレータ形状の成型板Mを圧縮成型する。この時、雌型102と雄型101との加圧面に所定の溝形状11を施しておくことにより、成型板Mにガス供給排出用溝11が反転されて形成される。
また、本具体例1−2は、圧縮成型工程では加熱することなく室温で行う冷間圧縮成型であり、原料混合物Rを加熱する必要がないことから成型時間が短縮でき、5〜10秒の時間で1枚の成型板Mを圧縮成型することができる。また、樹脂が硬化しないことから金型と製品の接着が起こらず、離型性に優れる。この冷間圧縮成型のみによって、所望の形状への加工を終えることができるため、生産性に優れている。
プレス装置100によって冷間圧縮成型する時に、30MPa以上の圧力を原料混合物Rに作用させることにより、高密度なセパレータ形状の成型板Mを得ることができ、量産性と高性能を合わせ持った燃料電池用セパレータ1を製造することができる。
樹脂硬化工程では、図2(b)に示すような加熱装置200に金型103から取り出した成型板Mを搬入し、電気ヒータ等の加熱手段201によって無加圧の状態でフェノール樹脂5の樹脂硬化温度以上である130〜200℃に加熱を行い、フェノール樹脂5を硬化させて燃料電池用セパレータ1を製造することができる。なお、樹脂硬化工程においては、バッチ式の炉に沢山の成型板Mを搬入して加熱しても良く、連続炉によりベルトコンベアー上に成型板Mを乗せて加熱しても良い。どちらの方式にせよ、加熱には時間がかかるが、この方式ならば沢山の数量を処理することが可能であり、トータルの製造時間は少なくなる。
実験例及び比較例
次に、本発明のカーボン板1の性能を実証するために、本発明の実験例及び比較例について説明する。
尚、本発明の実験例1〜7及び比較例1〜7では、カーボン板として厚さ0.2mm(又は1.8mm)、縦・横300mm×200mmの成形サンプルSを作製した。また、実験例1〜7及び比較例1〜7の成形サンプルSは、上記具体例1−1で説明したプレス装置100を用いた加熱圧縮成型方法に基づいて作製した。
各実験例及び各比較例について、圧縮強度、曲げ強度(曲げ歪)、電気抵抗(接触抵抗)を測定して比較したが、圧縮強度、曲げ歪、接触抵抗の測定方法は、以下の通りである。
・圧縮強度
厚さ10mm以上の鉄板の上に、成形サンプルSを加工して100mm角とした試験材を置き、この試験材を直径10mmの鉄芯を用いて大きさの異なる応力(3MPa、5MPa、10Ma)で押圧し、目視で圧痕の有無を確認した。
○:圧痕が残らない場合
×:圧痕が残る場合
・曲げ強度(1)
成形サンプルSを加工して幅100mm、長さ100mmとした試験材を直径30mmの鉄棒に巻き付け、0.67%の曲げ歪(0.67%歪)での表面の割れを観察した。
○:0.67%歪で割れ無しの場合
×:0.67%歪で割れの場合
・曲げ強度(2)
アンモニアを含むフェノール樹脂の場合、温水中に保持されると0.6%の曲げ歪(0.6%歪)で割れが発生する場合がある。そこで、成形サンプルSを加工して幅100mm、長さ100mmとした試験材を90℃熱水中に100時間浸漬後に直径30mmの鉄棒に巻き付け、0.67%歪での表面の割れを観察した。
○:0.67%歪で割れ無しの場合
×:0.67%歪で割れの場合
・接触抵抗
図3(a)に接触抵抗の測定方法を示す。成形サンプルSを、長さ17〜20mm、幅3〜5mmに加工して試験材とした。該試験材Sをカーボンペーパ(東レ株式会社:商品名「TGP−H−120」)301で挟み、更に、銅電極302で挟み込んだ状態で、万能試験機(株式会社島津製作所:商品名「EZ−L」)を用いて圧縮応力1MPaを付加した状態での接触抵抗を測定した。測定装置303には、低抵抗計(鶴賀電機株式会社:商品名「Model 3569」)を用い、4端子法を用いて測定した。
更に、本発明では、粉体状の炭素粉末4(膨張黒鉛粉末2及び黒鉛粉末3)と、粉体状のフェノール樹脂5を配合することにより原料混合物を調製することができ、この場合、原料混合物中におけるフェノール樹脂の分散性に起因して、得られたカーボン板1にてフェノール樹脂が偏析し、カーボン板1の接触抵抗が部分的に高くなることが考えられる。そこで、成形サンプルSに対して10点接触抵抗の最大値を、上記図3(a)を参照して説明した接触抵抗測定方法と同じ方法で測定した。但し、この場合、成形サンプルSは長さ300mm、幅100mmとし、図3(b)に示すように、長さ方向に2列にて、間隔50mmにて設定された10点の測定場所SPを測定し、その際の最大値を10点接触抵抗の最大値とした。
表1に、本発明の実験例及び比較例にて使用した原料粉の配合割合、測定結果、適否判定結果を示す。
(1)上記実験例1〜7及び比較例1〜4、6、7では、炭素粉末4として、膨張黒鉛粉末2と黒鉛粉末3とを用いた。比較例5は、炭素粉末4として、膨張黒鉛粉末2は使用せず、黒鉛粉末3のみを使用した。黒鉛粉末3としては、平均粒径が20μm、粒子のアスペクト比1.5の黒鉛粉末を用いた。
フェノール樹脂5としては、比較例7を除いてアンモニアを含まないフェノール樹脂を使用した。また、実験例7を除いて、フェノール樹脂5は、黒鉛粉末3に被覆して使用し、実験例7では、粉体状のフェノール樹脂5を炭素粉末4に混合して使用した。
炭素粉末4、即ち、膨張黒鉛粉末2及び黒鉛粉末3と、フェノール樹脂5との混合割合(wt%)を表1のように種々に変えて十分に混合して原料混合物(混合粉)とした。当該混合粉20g(実験例3を除く他の実験例及び比較例)、又は、180g(実験例3)を、プレス装置100の300×200×20mmの容積を持つ雌型102に均等になるように投入した。加熱温度は150℃、成型圧力は5MPa、成型時間は10分とした。
尚、従来、燃料電池用セパレータに要求される物性値は、次の通りである。
・圧縮強度:3MPa以上
・曲げ強度:0.6%歪で割れが無い
・接触抵抗:5mΩ・cm以下
実験例及び比較例の評価
実験例1〜7を見ると、本発明に従って構成されたカーボン板1は、即ち、
(a)膨張黒鉛粉末95〜30wt%及び黒鉛粉末5〜70wt%からなる炭素粉末97〜80wt%と、
(b)アンモニアを含まないフェノール樹脂3〜20wt%と、
の混合物を圧縮成型して、厚さ0.05〜2.0mmとされるカーボン板は、圧縮強度が3MPa以上であり、曲げ歪が0.6%以上で割れが無く、接触抵抗が6mΩ・cm以下とされるカーボン板であることが分かる。
つまり、本発明に係るカーボン板1は、比較例5に示す黒鉛粉末を、アンモニアを含まないフェノール樹脂にて一体に結合して形成されるカーボン板に比較して、柔軟性に優れており、燃料電池用セパレータとして、或いは、パッキングとして極めて有効な物性値を有していることが分かる。
また、本発明のカーボン板1では、膨張黒鉛粉末2と黒鉛粉末3との混合割合は、膨張黒鉛粉末2が95〜30wt%に対して黒鉛粉末3は5〜70wt%とされ、この範囲外では、即ち、黒鉛粉末3が70wt%を超えると、得られたカーボン板1が硬くなり過ぎ、柔軟性が損なわれ、曲げ歪が0.6%を超えると割れが生じることが分かる(比較例2)。また、膨張黒鉛粉末2が95wt%を超えると、得られたカーボン板1が柔らかくなり過ぎ、カーボン板1の圧縮強度が3MPa未満となり、永久変形を生じやすくなることが分かる(比較例1)。従って、燃料電池用セパレータ、パッキングとしての耐久性に問題が生じる。好ましくは、膨張黒鉛粉末2が30〜60wt%、黒鉛粉末3が70〜40wt%とされる(実験例1〜3、5〜7)。
また、本発明のカーボン板1では、アンモニアを含まないフェノール樹脂5の混合割合は、膨張黒鉛粉末2と黒鉛粉末3からなる炭素粉末97〜80wt%に対して3〜20wt%とされるが、この範囲外では、即ち、フェノール樹脂5が20wt%を超えると、得られたカーボン板1の導電性が低下し(比較例4、6)、また、フェノール樹脂5が3wt%未満では、得られたカーボン板1の圧縮強度が著しく低下し(比較例3)、燃料電池用セパレータとして問題が生じることが分かる。
(2)実験例7は、実験例1と同様の配合とされた原料混合物を使用しているが、上述したように、粉体状のフェノール樹脂5を炭素粉末4と混合して使用したカーボン板である。本例では、粉体状のフェノール樹脂を使用したために、原料粉体混合物におけるフェノール樹脂の分散性が低下し、その結果、得られたカーボン板におけるフェノール樹脂が偏析し、10点接触抵抗の最大値が6mΩ・cmを超えており、部分的に接触抵抗が高くなっていることが分かる。
比較例7は、実験例1と同様に、フェノール樹脂5は黒鉛粉末3に被覆して使用し、また、実験例1と同様に配合とされた原料混合物を使用しているが、アンモニアを含むフェノール樹脂を使用している。そのために、実験例1に比較して、曲げ強度(2)において劣っていることが分かる。
次に、本発明に係る複合カーボン板について説明する。図4(a)、(b)に、本発明に係る複合カーボン板20の第一及び第二の実施例の全体構成を示す。
図4(a)に示す第一の実施例では、本発明に係る複合カーボン板20は、上述の実施例1で説明した黒鉛製薄板状のカーボン板1と、該カーボン板1が片側面に一体に接合された金属板21とにて構成される。図4(b)に示す第二の実施例では、本発明に係る複合カーボン板20は、上述の実施例1で説明した黒鉛製薄板状のカーボン板1(1a、1b)にて金属板21を挟持して、即ち、金属板21の両側面にカーボン板1(1a、1b)が一体に接合された構成とされる。
つまり、本発明に係る複合カーボン板20は、金属板21の少なくとも一側の面に実施例1で説明したカーボン板1が一体に接合された構成とされる。
金属板21は、ステンレススチール、鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル、又は、ニッケル合金等にて作製されるのが好ましい。また、金属板21の厚さ(t21)は10〜150μmとされる。金属板21の板厚が10μm未満では、機械的強度の増大が望めず、また、150μmを超えると、柔軟性の点で問題が生じる。また、図4(b)に示すように金属板21の両側面にカーボン板1(1a、1b)が配置された構成の複合カーボン板20の場合には、各カーボン板、即ち、上カーボン板1aと下カーボン板1bの厚みta、tbは0.05〜2.0mmの範囲とされるが、上カーボン板1aと下カーボン板1bのそれぞれの板厚ta、tbは、同じ厚さであっても良く、また、異なる厚さとすることもできる。
(複合カーボン板の製造方法)
次に、本発明の複合カーボン板20の製造方法について説明する。
具体例2−1
本発明の複合カーボン板20は、一実施例によれば、例えば上述の実施例1の具体例1−1、1−2に説明する加熱圧縮成型或いは冷間圧縮成型にて作製された樹脂硬化済みのカーボン板1を使用して製造することができる。
つまり、図5(a)に示すように、具体例1−1、1−2にて説明したと同様にして作製された樹脂硬化済みのカーボン板1と、金属板21とを接着剤22を介して互いに押圧して、加熱加圧され、一体とされる。接着剤22は、図5(a)に示す実施例では、金属板21の片側面に塗布した態様を示すが、勿論、金属板21に塗布する代わりにカーボン板1の側面に塗布することもでき、又、カーボン板1及び金属板21の両部材に塗布することもできる。
接着剤22としては、熱硬化性樹脂、例えば、カーボン板1に使用したフェノール樹脂、その他には、フラン樹脂、エポキシ樹脂のいずれか又はこれらの混合系とすることができる。接着剤22の層厚は、1〜5μm程度とされる。また、カーボン板1と金属板21との加熱加圧時の温度Tは130〜200℃、加圧力Pは1〜10MPa(通常、3MPa程度)とされる。
上記製造法によれば、金属板21の片側面にカーボン板1を配置した図4(a)に示す構成の複合カーボン板20が作製されるが、金属板21の両側面にカーボン板1(1a、1b)を配置して一体に接合することにより、図4(b)に示す構成の、即ち、金属板21をカーボン板1(1a、1b)で挟持した構成の複合カーボン板20が作製される。
具体例2−2
本発明の複合カーボン板20は、例えば上記実施例1の具体例1−2にて冷間圧縮成型にて得られた、未だ樹脂硬化されていない成形板Mを使用して製造することができる。
この場合は、図5(b)に示すように、樹脂未硬化のカーボン板、即ち、成型板Mと金属板21とを、接着剤を使用することなく、所定の温度T及び加圧力Pにて加熱加圧することにより一体とされる。この加熱加圧作業により、成型板Mは硬化されてカーボン板1となると共に、金属板21がカーボン板1に一体に接合され、複合カーボン板20が作製される。なお、カーボン板1と金属板21との加熱加圧時の温度Tは130〜200℃、加圧力Pは1〜10MPa(通常、3MPa程度)とされる。
上記製造法にて、カーボン板1の片側面に金属板21を配置した図4(a)に示す構成の複合カーボン板20が作製されるが、金属板21の両側面に成型板Mを配置することにより、図4(b)に示す構成の複合カーボン板20が作製される。
具体例2−3
更に、図6に示すように、上述の実施例1の具体例1−1にて説明した加熱圧縮成型法を利用して本発明に従った複合カーボン板20を一工程にて作製することができる。
つまり、プレス装置100として上記実施例1の具体例1−1で説明したと同じ構成の一軸加熱圧縮成型装置を使用し、このプレス装置100の雌型102内に、先ず、金属板21を設置する。次いで、実施例1で説明したような配合割合にて調製された原料混合物Rを、雌型102に入れてプレス装置100にて加熱圧縮成型し、樹脂硬化させる。これにより、成形後の厚さが0.05〜2.0mm厚とされるカーボン板1の片側側面に金属板21が一体に接合された複合カーボン板20を得ることができる。
なお、加熱加圧成形条件は、具体例1−1にて説明したと同様とすることができる。即ち、加熱温度は、フェノール樹脂5の硬化温度以上である130〜200℃とされ、また、成型圧力は、3〜30MPa、成形時間は3〜30分とされる。真空プレスを用いても良い。
上記製造法にて、金属板21の片側面にカーボン板1を配置した図4(a)に示す構成の複合カーボン板20が作製される。
具体例2−4
上記実施例1の具体例2−2にて説明した冷間圧縮成型法を利用して金属板21が一体に接合された成型物Mを作製することができる。その後該成型物Mを硬化して、本発明に従った複合カーボン板20を作製することができる。
つまり、プレス装置100として、図6に示すと同様の構成の、ただし、ヒータが装備されていない一軸圧縮成型装置が使用される。斯かる構成のプレス装置100にて、雌型102内に、先ず、金属板21を設置する。次いで、実施例1で説明したような配合割合にて調製された原料混合物Rを、雌型102に入れて冷間圧縮成型する。これにより、片側側面に金属板21が一体に接合された樹脂未硬化の成型板Mが得られる。
次いで、金属板21が一体に接合された成型板Mを、図2(b)に示す炉(オーブン)等の加熱装置200で加熱して成型板Mの樹脂を硬化させて金属板21が一体とされた複合カーボン板20を製造する。
上記製造法にて、金属板21の片側面にカーボン板1を配置した図4(a)に示す構成の複合カーボン板20が作製される。
実験例
次に、本発明の複合カーボン板20の性能を実証するために、本発明の実験例について説明する。
尚、本発明の実験例8〜12は、上記実施例1で説明した本発明に従って構成されるカーボン板1として厚さ0.05mm、0.30mmとされ、縦・横300mm×200mmの種々のカーボン板を作製し、このカーボン板1を金属板21の片面或いは両面に一体に接合して成形サンプルSを作製した。実験例8は、カーボン板1が金属板21の片面に接合された複合カーボン板20であり、実験例9〜12は、金属板21の両面にカーボン板1(上カーボン板1a、下カーボン板1b)が一体に接合された複合カーボン板20である。又、実験例13、14は、金属板21が接合されていない上記実施例1で説明した本発明に従った構成のカーボン板1である。
なお、実験例8〜12の成形サンプルSは、上記具体例2−2で説明したと同様に冷間圧縮成型方法に基づいて作製した成型物Mに金属板21を一体に接合し、その後、硬化して作製した。実験例13、14は、実験例8〜12の成形サンプルと同様に、上記具体例2−2で説明したと同様にして冷間圧縮成型方法に基づいて成型物Mを作製したが、金属板21を接合せずに硬化して作製した。
各実験例について、圧縮強度、曲げ強度(曲げ歪)(1)、(2)、電気抵抗(接触抵抗、10点接触抵抗の最大値)、並びに、ガス不透過性及び引張強度を測定して比較した。圧縮強度、曲げ歪、接触抵抗(10点接触抵抗の最大値)の測定方法は、実施例1の実験例、比較例で説明したと同じ測定方法を採用した。
ガス不透過性は、水素透過率(mol/msPa)にて判断した。水素透過率は、JIS K7126のA法(差圧法)にて準じて行い、試料調湿:23℃、50%RH*48Hr以上、測定温度:23℃、使用ガス種:水素ガス、の条件下で行った。
引張強度の測定方法は、JIS Z 2241に基づく引張り試験方法にて実施した。引張試験片は、JIS Z 2201のJIS13号B試験片を用いた。
表2(a)、(b)に、各実験例にて使用した原料粉の配合割合、測定結果、適否判定結果等を示す。
なお、原料粉、フェノール樹脂は、上記実施例1の実験例及び比較例にて説明したと同じものを使用した。つまり、
実験例8〜12及び実験例13、14では、炭素粉末4としては、膨張黒鉛粉末2と黒鉛粉末3とを用いた。黒鉛粉末3としては、平均粒径が20μm、粒子のアスペクト比1.5の黒鉛粉末を用いた。フェノール樹脂5としては、アンモニアを含まないフェノール樹脂を黒鉛粉末3に被覆して使用した。炭素粉末4とフェノール樹脂5との混合割合(wt%)を表2(a)に示すように変えて十分に混合して原料混合物(混合粉)とした。当該混合粉を所定量(カーボン板厚0.05mm:4.5g、0.30mm:27.0g)を、プレス装置100の300×200×20mmの容積を持つ雌型102に均等になるように投入し、冷間圧縮成型により、成型物Mを得た。実験例8〜12ではその後、該成型物Mと金属板21とを重ねて押圧し、加熱温度は150℃、圧力は5MPa、成型時間は10分にて、複合カーボン板20を作製した。実験例13、14の成形サンプルSは、冷間圧縮成型により得た成型物Mを、加熱温度は150℃、時間10分にて、カーボン板1を作製した。
表2(a)中、金属板21にて、使用したステンレススチールはSUS304であり、ステンレス(1)は引張強度600MPaのなまし材であり、ステンレス(2)は引張強度1200MPaのハード材である。また、銅はタフピッチ銅(C1100)の1/2H材であり、鋼はSPCCである。
上記成型サンプルSの圧縮強度、曲げ強度(曲げ歪)(1)、(2)、電気抵抗(接触抵抗、10点接触抵抗の最大値)、並びに、ガス不透過性及び引張強度は表2(b)に示す通りであった。
表2(a)、(b)から、実験例8〜12に示す本発明に係る複合カーボン板20は、圧縮強度、曲げ強度(曲げ歪)、電気抵抗(接触抵抗、10点接触抵抗の最大値)は、実験例13、14に示す上記実施例1で説明した本発明に従って構成されるカーボン板1と同等の性能を有しており、更に、本発明に係る複合カーボン板20は、ガス不透過性及び引張強度の点で、実験例13、14に示す上記実施例1で説明した本発明に従って構成されるカーボン板1より著しく優れた性能を有していることが分かる。
1 燃料電池用セパレータ(カーボン板)
2 膨張黒鉛粉末
3 黒鉛粉末
4 炭素粉末
5 フェノール樹脂
20 複合カーボン板
21 金属板
22 接着剤
本発明は、例えば固体高分子型燃料電池に用いられる燃料電池用セパレータとして、或いは、種々の装置に用いられるパッキングとして使用可能な、柔軟性があり、且つ、圧縮強度にも優れ、導電性をも有した黒鉛製の薄板(以下、「カーボン板」という。)に関するものであり、更には、ガス不透過性及び機械的強度が増大した、カーボン板と金属板とが一体に接合された複合カーボン板に関するものである。
近年、例えば電気自動車の発電装置として固体高分子型燃料電池が注目されている。斯かる燃料電池及び燃料電池用セパレータの一例を図7及び図8(a)、(b)に示す。
図7は、燃料電池10を構成する単位セルの構成を示す分解図であり、図8は、図7に示す燃料電池用セパレータ1の構成を示す図である。図8(a)は、平面図であり、図8(b)は、図8(a)の線X−Yにとった断面図である。
固体高分子型燃料電池10は、2枚の燃料電池用セパレータ1によって、固体高分子電解質膜6とアノード(燃料電極)7とカソード(酸化剤電極)8とをガスケット9を介して接合したMEA(membrane electrode assembly:膜/電極接合体)を単位セルとして数十個〜数百個並設し、アノード7に流体である燃料ガス(水素ガス)を、カソード8に流体である酸化ガス(酸素ガス)を供給することにより、外部回路から電流を取り出す構成となっている。
燃料電池用セパレータ1は、図8(a)、(b)に示すように、薄肉の板状体の片面又は両面に複数個のガス供給排出用溝11と、ガス供給排出用溝11に燃料ガス又は酸化ガスを供給する開口部12と、MEAを並設するための固定穴13とを有する形状であり、燃料電池内を流れる燃料ガスと酸化ガスとが混合しないように分離する働きを有すると共に、MEAで発電した電気エネルギーを外部へ伝達したり、MEAで生じた熱を外部へ放熱するという重要な役割を担っている。
従って、燃料電池用セパレータ1に求められる特性としては、組立時におけるボルト締め付けや、自動車などの振動に対して十分な強度があること、発電ロスを少なくするために電気抵抗を小さくすること、燃料ガスと酸化ガスをその両面で完全に分離して電極に供給するためのガス不透過性が挙げられる。
このような燃料電池用セパレータ1として、生産性やコストの面から有利な熱硬化性樹脂をバインダーとして用いた炭素複合材料が提案されている(例えば、特許文献1、2、3など参照)。
特開昭59−26907号公報 特開2000−173630号公報 特許第3715642号公報
特に、上記特許文献1、2、3には、炭素粉末と熱硬化性樹脂とからなる混合物をプレス装置により加熱圧縮成型するか、或いは、冷間圧縮成型することにより、燃料電池用セパレータを製造することが記載されている。また、炭素粉末として黒鉛粉末又は膨張黒鉛粉末を使用することが開示されている。また、特許文献3には、熱硬化性樹脂としては、成型性が良好であるなどの理由からフェノール樹脂が好適に使用されることを記載している。
しかしながら、本発明者らが上記特許文献に記載される燃料電池用セパレータについて更に研究実験を行った結果、次のような問題があることが分かった。
燃料電池用セパレータに使用する熱硬化性樹脂としてのフェノール樹脂は、化学的に安定し、難燃性であり、また、黒鉛粉末又は膨張黒鉛粉末などの炭素粉末との馴染み性も良く、更には、エポキシ樹脂等に比較すると耐酸性も良好であって、多くの利点を有している。
しかし、炭素粉末として黒鉛粉末を使用し、この黒鉛粉末とフェノール樹脂とを一体に結合して作製した0.05〜2mm程度の薄板状のカーボン板は、導電性、耐食性においては優れているものの、硬過ぎて脆く、曲げ歪が0.6%を超えると割れが生じ、柔軟性に問題がある。そのため、例えば燃料電池用セパレータとして使用する場合には、安定した水路(溝)形成、耐久性に関して更なる改良が必要であることが分かった。一方、膨張黒鉛粉末とフェノール樹脂とを一体に結合して作製した膨張黒鉛製の薄板状カーボン板は、放熱性、耐食性はあるが、柔らか過ぎて圧縮強度が3MPa未満とされ、永久変形し易いものであった。従って、燃料電池用セパレータ、パッキングなどとして使用するのは困難である。
このように、従来の黒鉛製の薄板状カーボン板は、燃料電池用セパレータとして、また、パッキングとして使用するには、柔軟性及び圧縮強度の点で更なる改良が必要であることが分かった。
本発明者らは、多くの研究実験の結果、炭素粉末として、膨張黒鉛粉末と黒鉛粉末とを特定の割合で混合し、この炭素粉末を特定量のフェノール樹脂、特に、アンモニアを含まないフェノール樹脂と共に圧縮成型して作製した黒鉛製薄板状のカーボン板は、柔軟性、圧縮強度、更には導電性が、燃料電池用セパレータ、パッキングなどに要求される値を十分に満足し得るものとなることを見出した。
つまり、上述の良好な特性を有するカーボン板を作製するに際して、アンモニアを含まないフェノール樹脂を使用することが重要である。フェノール樹脂は、従来、アンモニアが重合触媒として広く用いられており、アンモニアが樹脂中に残留している。しかし、後述するように、アンモニアを含むフェノール樹脂の場合、温水中に保持されると曲げ歪の性能が劣化して、膨張黒鉛を使用した場合のカーボン板の柔軟性と曲げ歪の特性が得られないことが分かった。
更に、上記良好な特性を有したカーボン板と金属板とを一体に接合した複合カーボン板は、ガス不透過性にも優れ、又、引張強度等の機械的強度が増大することが分かった。
つまり、本発明の目的は、柔軟性があり、且つ、圧縮強度にも優れ、導電性をも有した薄板状のカーボン板を提供することである。
本発明の他の目的は、上記カーボン板と金属板とを一体に接合して構成され、ガス不透過性に優れ、又、引張強度等の機械的強度が増大した複合カーボン板を提供することである。
上記目的は本発明に係るカーボン板及び複合カーボン板にて達成される。要約すれば、第1の本発明は、
(a)膨張黒鉛粉末95〜30wt%及び黒鉛粉末5〜70wt%からなる炭素粉末97〜80wt%と、
(b)アンモニアを含まないフェノール樹脂3〜20wt%と、
の混合物を圧縮成型して、厚さ0.05〜2.0mmとされるカーボン板であって、
圧縮強度が3MPa以上であり、曲げ歪が0.67%で割れが無く、接触抵抗が6mΩ・cm2以下であることを特徴とするカーボン板を提供することである。
第1の本発明の一実施態様によると、10点接触抵抗の最大値が6mΩ・cm2以下である。
第1の本発明の他の実施態様によると、前記黒鉛粉末は、前記フェノール樹脂にて被覆されている。
第2の本発明によれば、厚さが10〜150μmとされる金属板の少なくとも一側の面にカーボン板を一体に接合した複合カーボン板であって、
前記カーボン板は、上記構成のカーボン板であることを特徴とする複合カーボン板が提供される。
第2の本発明の一実施態様によれば、前記金属板は、ステンレススチール、鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル、又は、ニッケル合金等である。
本発明による薄板状のカーボン板は、柔軟性があり、且つ、圧縮強度にも優れ、導電性をも有しており、燃料電池用セパレータとして、或いは、種々の機器のパッキングとして有効に使用することができる。また、本発明の複合カーボン板は、上記カーボン板としての特長を有すると共に、カーボン板に比較して、ガス不透過性に優れ、又、引張強度等の機械的強度が増大される。
図1は、本発明に係るカーボン板の一実施例の構成を説明する概略図である。 図2(a)は、加熱圧縮成型工程或いは冷間圧縮成型工程に用いられるプレス装置の構成を示す概略図であり、図2(b)は、樹脂硬化工程に用いられる加熱装置の構成を示す概略図である。 図3(a)は、接触抵抗を測定する方法を説明するための図であり、図3(b)は、10点接触抵抗の最大値を測定するための成形サンプルにおける測定場所を説明するための図である。 図4(a)、(b)は、それぞれ、本発明に係る複合カーボン板の第一、第二の実施例の構成を説明する概略図である。 図5(a)、(b)は、本発明に係る複合カーボン板の製造法の実施例を説明する概略図である。 図6は、本発明に係る複合カーボン板を製造するための、図2(a)と同様の加熱圧縮成型工程或いは冷間圧縮成型工程に用いられるプレス装置の構成を示す概略図である。 図7は、燃料電池を構成する単位セルの構成を示す分解図である。 図8(a)は、燃料電池用セパレータの一実施例を示す平面図であり、図8(b)は、図8(a)の線X−Yに取った断面図である。
以下、本発明に係るカーボン板を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
先ず、図1を参照して、本発明に係るカーボン板1の一実施例の全体構成について説明する。本実施例にて、本発明に係る黒鉛製薄板状のカーボン板1は、例えば、上述したように、燃料電池用セパレータとして有効に使用し得るものであり、厚さ(t)が0.05mm〜2.0mmとされる薄板状平板とされる。カーボン板1の表面には、例えば、カーボン板を燃料電池用のセパレータとして使用する場合には、図8(a)、(b)に示すように水路形成のための溝11が成形加工される。
本発明によれば、炭素複合材であるカーボン板1は、膨張黒鉛粉末2及び黒鉛粉末3からなる炭素粉末4と、バインダーとしての、アンモニアを含まないフェノール樹脂5とを混合した混合物を圧縮成型して形成され、詳しくは実験例を参照して後述するが、圧縮強度が3MPa以上であり、曲げ歪が0.67%で割れが無く、接触抵抗が6mΩ・cm2以下とされるカーボン板である。
次に、本発明のカーボン板1の構成について更に詳しく説明する。
(炭素粉末)
本発明のカーボン板1を作製するための必須成分としての炭素粉末4は、膨張黒鉛粉末2と黒鉛粉末3からなり、膨張黒鉛粉末2と黒鉛粉末3との混合割合は、膨張黒鉛粉末2が95〜30wt%に対して黒鉛粉末3は5〜70wt%とされる。この範囲外では、即ち、黒鉛粉末3が70wt%を超えると、得られたカーボン板1が硬くなり過ぎ、柔軟性が損なわれ、曲げ歪が0.6%を超えると割れが生じる。従って、燃料電池用セパレータとして使用する場合には、水路(溝)形成、耐久性等に問題が生じる。また、膨張黒鉛粉末2が95wt%を超えると、得られたカーボン板1が柔らかくなり過ぎ、カーボン板1の圧縮強度が3MPa未満となり、永久変形を生じやすくなる。従って、燃料電池用セパレータ、パッキングとしての耐久性に問題が生じる。好ましくは、膨張黒鉛粉末2が30〜60wt%、黒鉛粉末3が70〜40wt%とされる。
膨張黒鉛粉末2は、酸処理した鱗片状天然黒鉛粉末に熱を加え、黒鉛結晶の層間を数百倍に膨張させたものであり、平均粒径が10〜2000μmのものを用いることが好ましい。また、黒鉛粉末3は、天然黒鉛又は人造黒鉛のいずれであっても良く、平均粒径が10μm〜400μm、アスペクト比が2以下のものを用いることが好ましい。
(フェノール樹脂)
上述したように、フェノール樹脂は、従来、アンモニアが重合触媒として広く用いられており、アンモニアが樹脂中に残留している。このようなアンモニアを含むフェノール樹脂の場合、詳しくは後で説明するが、温水中に保持されると曲げ歪の性能が劣化して、膨張黒鉛を使用した場合のカーボン板の柔軟性と曲げ歪の特性が得られない。
従って、上述のように、本発明では、炭素粉末4のバインダーとしてはフェノール樹脂が使用され、特に、アンモニアを含まないフェノール樹脂が使用される。アンモニアを含まないフェノール樹脂は、重合触媒にアンモニアを用いず、代わりに例えばアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、又は、アンモニアを発生しない第3級アミンなどを用いたものであれば良い。フェノール樹脂としてレゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などを用いると成型性が良好である。つまり、フェノール樹脂は、上述したように、成型性が良好であり、化学的にも安定し、難燃性であり、また、膨張黒鉛粉末2及び黒鉛粉末3などの炭素粉末4との馴染み性も良く、更には、エポキシ樹脂等の他の熱硬化性樹脂に比較すると耐酸性も良好であって、多くの利点を有している。また、本発明では、フェノール樹脂がアンモニアを含まないことにより、得られたカーボン板1の圧縮強度が向上する。以下の本発明に関連した説明にて記載を簡単とするために単に「フェノール樹脂」と記載することもあるが、特段の記載がない限り「アンモニアを含まないフェノール樹脂」を意味するものとする。
フェノール樹脂は、粉体状のフェノール樹脂が好適に使用される。液状のフェノール樹脂は、炭素粉末との混合作業が、特に、膨張黒鉛粉末2との混合作業が極めて困難であり、均一な混合物を得ることが困難となる。粉体状のフェノール樹脂を使用すると、炭素粉末に対して所定の重量割合で混合され、十分に攪拌して均質な粉体状の原料混合物、即ち、原料粉を得ることができる。
なお、原料混合物の混合割合は、上記割合にて混合された膨張黒鉛粉末2及び黒鉛粉末3からなる炭素粉末4が97〜80wt%とされ、フェノール樹脂5は3〜20wt%とされる。この範囲外では、即ち、フェノール樹脂5が20wt%を超えると、得られたカーボン板1の柔軟性が損なわれ、曲げ歪が0.6%を超えると割れが生じる。更に、接触抵抗が増大し、6mΩ・cm2を大幅に超えてしまい、従って、燃料電池用セパレータとして使用する場合には問題が生じる。また、フェノール樹脂5が3wt%未満では、得られたカーボン板1の圧縮強度が低下し、また、曲げ歪が0.6%を超えると割れが生じる。従って、燃料電池用セパレータ、パッキングなどとして使用する場合に問題が生じる。好ましくは、炭素粉末4を95〜85wt%とし、フェノール樹脂5は、5〜15wt%とされる。
なお、上記原料混合物には、炭素粉末4及びフェノール樹脂5以外に、必要に応じて繊維基材、充填材、離型剤、耐加水分解剤等を添加しても良い。
また、本発明によれば、フェノール樹脂5は、膨張黒鉛粉末2及び黒鉛粉末3からなる炭素粉末4に対して所定割合にて配合されるが、上記所定の割合とされるフェノール樹脂5を予め黒鉛粉末3に被覆(コーティング)しておくことも可能である。このようにフェノール樹脂を黒鉛粉末に被覆することにより、原料混合物におけるフェノール樹脂の均一分散性を向上させ、従って、得られたカーボン板1におけるフェノール樹脂の偏析を防止し、接触抵抗、及び、10点接触抵抗の最大値を6mΩ・cm2以下に抑えることができる。被覆方法としては、特に限定されるものではないが、一般に用いられる溶液被覆、スプレー被覆、反応被覆、溶融被覆などを用いることができる。
(カーボン板の製造方法)
次に、本発明のカーボン板1の製造方法について説明する。本発明のカーボン板1は、種々の成型法にて製造することができるが、以下に、代表的な成型法につき説明する。
具体例1−1
本発明のカーボン板1は、原料混合物を加熱圧縮成型することにより製造することができる。図2に、本発明のカーボン板1を製造するための加熱圧縮成型のためのプレス装置100の一例を示す。
本具体例1−1にて、プレス装置100は一軸加熱圧縮成型装置とされ、一組の雄型101と雌型102とから成る金型103を有しており、雄型101は機枠104に固定されている。雌型102は、雄型101の下方に対向配置され、油圧シリンダ105で昇降動可能とされる。なお、本具体例1−1のプレス装置100は、金型103にはヒータ(図示せず)が内嵌されている。
上記のような配合割合にて調製された原料混合物Rを、金型103に入れて成形後0.05〜2.0mm厚となるようにプレス装置100にて加熱圧縮成型し、樹脂硬化させてカーボン板1を得ることができる。この時、雄型101と雌型102との加圧面に所定の形状、例えば、セパレータの溝形状11(図8(a)、(b)参照)を施しておくことにより、成型板Mにガス供給排出用溝11が反転されて形成される。
なお、加熱温度は、フェノール樹脂5の硬化温度以上である130〜200℃とされ、また、成型圧力は、3〜30MPa、成型時間は3〜30分とされる。真空プレスを用いても良い。
具体例1−2
本発明のカーボン板1は、原料混合物Rを先ず冷間圧縮成型し、その後、成型された成型板Mを加熱硬化することにより製造することができる。従って、本具体例1−2では、原料混合物Rを圧縮成型するプレス装置100は、上記具体例1−1で使用した一軸加熱圧縮成型装置に装着されていたヒータが装備されていない一軸圧縮成型装置とされる。その他の構成は同様とされる。つまり、プレス装置100は、一組の雄型101と雌型102とから成る金型103を有しており、雄型101は機枠104に固定されている。雌型102は、雄型101の下方に対向配置され、油圧シリンダ105で昇降動可能とされる。本具体例1−2では、プレス装置100がヒータを備えていないために、図2(b)に示すように、別個に、ヒータ201を具備した加熱装置200が配置されている。
このように、本具体例1−2では、金型103に入れた原料混合物Rをプレス装置100によって加圧して所定形状とされる、未だ樹脂が硬化していない成型板Mを冷間圧縮成型し、この圧縮成型によって作製された成型板Mを炉(オーブン)等の加熱装置200で加熱して成型板Mの樹脂を硬化させ、カーボン板1を製造する。
更に説明すると、本具体例1−2では、プレス装置100による冷間圧縮成型工程では、雌型102の中に原料混合物Rを均一に張り込み、油圧シリンダ105によって雌型102を雄型101に押圧することで、雌型102と雄型101とにより原料混合物Rに30MPa以上の圧力を作用させ、セパレータ形状の成型板Mを圧縮成型する。この時、雌型102と雄型101との加圧面に所定の溝形状11を施しておくことにより、成型板Mにガス供給排出用溝11が反転されて形成される。
また、本具体例1−2は、圧縮成型工程では加熱することなく室温で行う冷間圧縮成型であり、原料混合物Rを加熱する必要がないことから成型時間が短縮でき、5〜10秒の時間で1枚の成型板Mを圧縮成型することができる。また、樹脂が硬化しないことから金型と製品の接着が起こらず、離型性に優れる。この冷間圧縮成型のみによって、所望の形状への加工を終えることができるため、生産性に優れている。
プレス装置100によって冷間圧縮成型する時に、30MPa以上の圧力を原料混合物Rに作用させることにより、高密度なセパレータ形状の成型板Mを得ることができ、量産性と高性能を合わせ持った燃料電池用セパレータ1を製造することができる。
樹脂硬化工程では、図2(b)に示すような加熱装置200に金型103から取り出した成型板Mを搬入し、電気ヒータ等の加熱手段201によって無加圧の状態でフェノール樹脂5の樹脂硬化温度以上である130〜200℃に加熱を行い、フェノール樹脂5を硬化させて燃料電池用セパレータ1を製造することができる。なお、樹脂硬化工程においては、バッチ式の炉に沢山の成型板Mを搬入して加熱しても良く、連続炉によりベルトコンベアー上に成型板Mを乗せて加熱しても良い。どちらの方式にせよ、加熱には時間がかかるが、この方式ならば沢山の数量を処理することが可能であり、トータルの製造時間は少なくなる。
実験例及び比較例
次に、本発明のカーボン板1の性能を実証するために、本発明の実験例及び比較例について説明する。
尚、本発明の実験例1〜7及び比較例1〜7では、カーボン板として厚さ0.2mm(又は1.8mm)、縦・横300mm×200mmの成形サンプルSを作製した。また、実験例1〜7及び比較例1〜7の成形サンプルSは、上記具体例1−1で説明したプレス装置100を用いた加熱圧縮成型方法に基づいて作製した。
各実験例及び各比較例について、圧縮強度、曲げ強度(曲げ歪)、電気抵抗(接触抵抗)を測定して比較したが、圧縮強度、曲げ歪、接触抵抗の測定方法は、以下の通りである。
・圧縮強度
厚さ10mm以上の鉄板の上に、成形サンプルSを加工して100mm角とした試験材を置き、この試験材を直径10mmの鉄芯を用いて大きさの異なる応力(3MPa、5MPa、10Ma)で押圧し、目視で圧痕の有無を確認した。
○:圧痕が残らない場合
×:圧痕が残る場合
・曲げ強度(1)
成形サンプルSを加工して幅100mm、長さ100mmとした試験材を直径30mmの鉄棒に巻き付け、0.67%の曲げ歪(0.67%歪)での表面の割れを観察した。
○:0.67%歪で割れ無しの場合
×:0.67%歪で割れの場合
・曲げ強度(2)
アンモニアを含むフェノール樹脂の場合、温水中に保持されると0.6%の曲げ歪(0.6%歪)で割れが発生する場合がある。そこで、成形サンプルSを加工して幅100mm、長さ100mmとした試験材を90℃熱水中に100時間浸漬後に直径30mmの鉄棒に巻き付け、0.67%歪での表面の割れを観察した。
○:0.67%歪で割れ無しの場合
×:0.67%歪で割れの場合
・接触抵抗
図3(a)に接触抵抗の測定方法を示す。成形サンプルSを、長さ17〜20mm、幅3〜5mmに加工して試験材とした。該試験材Sをカーボンペーパ(東レ株式会社:商品名「TGP−H−120」)301で挟み、更に、銅電極302で挟み込んだ状態で、万能試験機(株式会社島津製作所:商品名「EZ−L」)を用いて圧縮応力1MPaを付加した状態での接触抵抗を測定した。測定装置303には、低抵抗計(鶴賀電機株式会社:商品名「Model 3569」)を用い、4端子法を用いて測定した。
更に、本発明では、粉体状の炭素粉末4(膨張黒鉛粉末2及び黒鉛粉末3)と、粉体状のフェノール樹脂5を配合することにより原料混合物を調製することができ、この場合、原料混合物中におけるフェノール樹脂の分散性に起因して、得られたカーボン板1にてフェノール樹脂が偏析し、カーボン板1の接触抵抗が部分的に高くなることが考えられる。そこで、成形サンプルSに対して10点接触抵抗の最大値を、上記図3(a)を参照して説明した接触抵抗測定方法と同じ方法で測定した。但し、この場合、成形サンプルSは長さ300mm、幅100mmとし、図3(b)に示すように、長さ方向に2列にて、間隔50mmにて設定された10点の測定場所SPを測定し、その際の最大値を10点接触抵抗の最大値とした。
表1に、本発明の実験例及び比較例にて使用した原料粉の配合割合、測定結果、適否判定結果を示す。
(1)上記実験例1〜7及び比較例1〜4、6、7では、炭素粉末4として、膨張黒鉛粉末2と黒鉛粉末3とを用いた。比較例5は、炭素粉末4として、膨張黒鉛粉末2は使用せず、黒鉛粉末3のみを使用した。黒鉛粉末3としては、平均粒径が20μm、粒子のアスペクト比1.5の黒鉛粉末を用いた。
フェノール樹脂5としては、比較例7を除いてアンモニアを含まないフェノール樹脂を使用した。また、実験例7を除いて、フェノール樹脂5は、黒鉛粉末3に被覆して使用し、実験例7では、粉体状のフェノール樹脂5を炭素粉末4に混合して使用した。
炭素粉末4、即ち、膨張黒鉛粉末2及び黒鉛粉末3と、フェノール樹脂5との混合割合(wt%)を表1のように種々に変えて十分に混合して原料混合物(混合粉)とした。当該混合粉20g(実験例3を除く他の実験例及び比較例)、又は、180g(実験例3)を、プレス装置100の300×200×20mmの容積を持つ雌型102に均等になるように投入した。加熱温度は150℃、成型圧力は5MPa、成型時間は10分とした。
尚、従来、燃料電池用セパレータに要求される物性値は、次の通りである。
・圧縮強度:3MPa以上
・曲げ強度:0.6%歪で割れが無い
・接触抵抗:5mΩ・cm2以下
実験例及び比較例の評価
実験例1〜7を見ると、本発明に従って構成されたカーボン板1は、即ち、
(a)膨張黒鉛粉末95〜30wt%及び黒鉛粉末5〜70wt%からなる炭素粉末97〜80wt%と、
(b)アンモニアを含まないフェノール樹脂3〜20wt%と、
の混合物を圧縮成型して、厚さ0.05〜2.0mmとされるカーボン板は、圧縮強度が3MPa以上であり、曲げ歪が0.67%で割れが無く、接触抵抗が6mΩ・cm2以下とされるカーボン板であることが分かる。
つまり、本発明に係るカーボン板1は、比較例5に示す黒鉛粉末を、アンモニアを含まないフェノール樹脂にて一体に結合して形成されるカーボン板に比較して、柔軟性に優れており、燃料電池用セパレータとして、或いは、パッキングとして極めて有効な物性値を有していることが分かる。
また、本発明のカーボン板1では、膨張黒鉛粉末2と黒鉛粉末3との混合割合は、膨張黒鉛粉末2が95〜30wt%に対して黒鉛粉末3は5〜70wt%とされ、この範囲外では、即ち、黒鉛粉末3が70wt%を超えると、得られたカーボン板1が硬くなり過ぎ、柔軟性が損なわれ、曲げ歪が0.6%を超えると割れが生じることが分かる(比較例2)。また、膨張黒鉛粉末2が95wt%を超えると、得られたカーボン板1が柔らかくなり過ぎ、カーボン板1の圧縮強度が3MPa未満となり、永久変形を生じやすくなることが分かる(比較例1)。従って、燃料電池用セパレータ、パッキングとしての耐久性に問題が生じる。好ましくは、膨張黒鉛粉末2が30〜60wt%、黒鉛粉末3が70〜40wt%とされる(実験例1〜3、5〜7)。
また、本発明のカーボン板1では、アンモニアを含まないフェノール樹脂5の混合割合は、膨張黒鉛粉末2と黒鉛粉末3からなる炭素粉末97〜80wt%に対して3〜20wt%とされるが、この範囲外では、即ち、フェノール樹脂5が20wt%を超えると、得られたカーボン板1の導電性が低下し(比較例4、6)、また、フェノール樹脂5が3wt%未満では、得られたカーボン板1の圧縮強度が著しく低下し(比較例3)、燃料電池用セパレータとして問題が生じることが分かる。
(2)実験例7は、実験例1と同様の配合とされた原料混合物を使用しているが、上述したように、粉体状のフェノール樹脂5を炭素粉末4と混合して使用したカーボン板である。本例では、粉体状のフェノール樹脂を使用したために、原料粉体混合物におけるフェノール樹脂の分散性が低下し、その結果、得られたカーボン板におけるフェノール樹脂が偏析し、10点接触抵抗の最大値が6mΩ・cm2を超えており、部分的に接触抵抗が高くなっていることが分かる。
比較例7は、実験例1と同様に、フェノール樹脂5は黒鉛粉末3に被覆して使用し、また、実験例1と同様に配合とされた原料混合物を使用しているが、アンモニアを含むフェノール樹脂を使用している。そのために、実験例1に比較して、曲げ強度(2)において劣っていることが分かる。
実施例2
次に、本発明に係る複合カーボン板について説明する。図4(a)、(b)に、本発明に係る複合カーボン板20の第一及び第二の実施例の全体構成を示す。
図4(a)に示す第一の実施例では、本発明に係る複合カーボン板20は、上述の実施例1で説明した黒鉛製薄板状のカーボン板1と、該カーボン板1が片側面に一体に接合された金属板21とにて構成される。図4(b)に示す第二の実施例では、本発明に係る複合カーボン板20は、上述の実施例1で説明した黒鉛製薄板状のカーボン板1(1a、1b)にて金属板21を挟持して、即ち、金属板21の両側面にカーボン板1(1a、1b)が一体に接合された構成とされる。
つまり、本発明に係る複合カーボン板20は、金属板21の少なくとも一側の面に実施例1で説明したカーボン板1が一体に接合された構成とされる。
金属板21は、ステンレススチール、鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル、又は、ニッケル合金等にて作製されるのが好ましい。また、金属板21の厚さ(t21)は10〜150μmとされる。金属板21の板厚が10μm未満では、機械的強度の増大が望めず、また、150μmを超えると、柔軟性の点で問題が生じる。また、図4(b)に示すように金属板21の両側面にカーボン板1(1a、1b)が配置された構成の複合カーボン板20の場合には、各カーボン板、即ち、上カーボン板1aと下カーボン板1bの厚みta、tbは0.05〜2.0mmの範囲とされるが、上カーボン板1aと下カーボン板1bのそれぞれの板厚ta、tbは、同じ厚さであっても良く、また、異なる厚さとすることもできる。
(複合カーボン板の製造方法)
次に、本発明の複合カーボン板20の製造方法について説明する。
具体例2−1
本発明の複合カーボン板20は、一実施例によれば、例えば上述の実施例1の具体例1−1、1−2に説明する加熱圧縮成型或いは冷間圧縮成型にて作製された樹脂硬化済みのカーボン板1を使用して製造することができる。
つまり、図5(a)に示すように、具体例1−1、1−2にて説明したと同様にして作製された樹脂硬化済みのカーボン板1と、金属板21とを接着剤22を介して互いに押圧して、加熱加圧され、一体とされる。接着剤22は、図5(a)に示す実施例では、金属板21の片側面に塗布した態様を示すが、勿論、金属板21に塗布する代わりにカーボン板1の側面に塗布することもでき、又、カーボン板1及び金属板21の両部材に塗布することもできる。
接着剤22としては、熱硬化性樹脂、例えば、カーボン板1に使用したフェノール樹脂、その他には、フラン樹脂、エポキシ樹脂のいずれか又はこれらの混合系とすることができる。接着剤22の層厚は、1〜5μm程度とされる。また、カーボン板1と金属板21との加熱加圧時の温度Tは130〜200℃、加圧力Pは1〜10MPa(通常、3MPa程度)とされる。
上記製造法によれば、金属板21の片側面にカーボン板1を配置した図4(a)に示す構成の複合カーボン板20が作製されるが、金属板21の両側面にカーボン板1(1a、1b)を配置して一体に接合することにより、図4(b)に示す構成の、即ち、金属板21をカーボン板1(1a、1b)で挟持した構成の複合カーボン板20が作製される。
具体例2−2
本発明の複合カーボン板20は、例えば上記実施例1の具体例1−2にて冷間圧縮成型にて得られた、未だ樹脂硬化されていない成形板Mを使用して製造することができる。
この場合は、図5(b)に示すように、樹脂未硬化のカーボン板、即ち、成型板Mと金属板21とを、接着剤を使用することなく、所定の温度T及び加圧力Pにて加熱加圧することにより一体とされる。この加熱加圧作業により、成型板Mは硬化されてカーボン板1となると共に、金属板21がカーボン板1に一体に接合され、複合カーボン板20が作製される。なお、カーボン板1と金属板21との加熱加圧時の温度Tは130〜200℃、加圧力Pは1〜10MPa(通常、3MPa程度)とされる。
上記製造法にて、カーボン板1の片側面に金属板21を配置した図4(a)に示す構成の複合カーボン板20が作製されるが、金属板21の両側面に成型板Mを配置することにより、図4(b)に示す構成の複合カーボン板20が作製される。
具体例2−3
更に、図6に示すように、上述の実施例1の具体例1−1にて説明した加熱圧縮成型法を利用して本発明に従った複合カーボン板20を一工程にて作製することができる。
つまり、プレス装置100として上記実施例1の具体例1−1で説明したと同じ構成の一軸加熱圧縮成型装置を使用し、このプレス装置100の雌型102内に、先ず、金属板21を設置する。次いで、実施例1で説明したような配合割合にて調製された原料混合物Rを、雌型102に入れてプレス装置100にて加熱圧縮成型し、樹脂硬化させる。これにより、成形後の厚さが0.05〜2.0mm厚とされるカーボン板1の片側側面に金属板21が一体に接合された複合カーボン板20を得ることができる。
なお、加熱加圧成形条件は、具体例1−1にて説明したと同様とすることができる。即ち、加熱温度は、フェノール樹脂5の硬化温度以上である130〜200℃とされ、また、成型圧力は、3〜30MPa、成形時間は3〜30分とされる。真空プレスを用いても良い。
上記製造法にて、金属板21の片側面にカーボン板1を配置した図4(a)に示す構成の複合カーボン板20が作製される。
具体例2−4
上記実施例1の具体例2−2にて説明した冷間圧縮成型法を利用して金属板21が一体に接合された成型物Mを作製することができる。その後該成型物Mを硬化して、本発明に従った複合カーボン板20を作製することができる。
つまり、プレス装置100として、図6に示すと同様の構成の、ただし、ヒータが装備されていない一軸圧縮成型装置が使用される。斯かる構成のプレス装置100にて、雌型102内に、先ず、金属板21を設置する。次いで、実施例1で説明したような配合割合にて調製された原料混合物Rを、雌型102に入れて冷間圧縮成型する。これにより、片側側面に金属板21が一体に接合された樹脂未硬化の成型板Mが得られる。
次いで、金属板21が一体に接合された成型板Mを、図2(b)に示す炉(オーブン)等の加熱装置200で加熱して成型板Mの樹脂を硬化させて金属板21が一体とされた複合カーボン板20を製造する。
上記製造法にて、金属板21の片側面にカーボン板1を配置した図4(a)に示す構成の複合カーボン板20が作製される。
実験例
次に、本発明の複合カーボン板20の性能を実証するために、本発明の実験例について説明する。
尚、本発明の実験例8〜12は、上記実施例1で説明した本発明に従って構成されるカーボン板1として厚さ0.05mm、0.30mmとされ、縦・横300mm×200mmの種々のカーボン板を作製し、このカーボン板1を金属板21の片面或いは両面に一体に接合して成形サンプルSを作製した。実験例8は、カーボン板1が金属板21の片面に接合された複合カーボン板20であり、実験例9〜12は、金属板21の両面にカーボン板1(上カーボン板1a、下カーボン板1b)が一体に接合された複合カーボン板20である。又、実験例13、14は、金属板21が接合されていない上記実施例1で説明した本発明に従った構成のカーボン板1である。
なお、実験例8〜12の成形サンプルSは、上記具体例2−2で説明したと同様に冷間圧縮成型方法に基づいて作製した成型物Mに金属板21を一体に接合し、その後、硬化して作製した。実験例13、14は、実験例8〜12の成形サンプルと同様に、上記具体例2−2で説明したと同様にして冷間圧縮成型方法に基づいて成型物Mを作製したが、金属板21を接合せずに硬化して作製した。
各実験例について、圧縮強度、曲げ強度(曲げ歪)(1)、(2)、電気抵抗(接触抵抗、10点接触抵抗の最大値)、並びに、ガス不透過性及び引張強度を測定して比較した。圧縮強度、曲げ歪、接触抵抗(10点接触抵抗の最大値)の測定方法は、実施例1の実験例、比較例で説明したと同じ測定方法を採用した。
ガス不透過性は、水素透過率(mol/m2sPa)にて判断した。水素透過率は、JIS K7126のA法(差圧法)にて準じて行い、試料調湿:23℃、50%RH*48Hr以上、測定温度:23℃、使用ガス種:水素ガス、の条件下で行った。
引張強度の測定方法は、JIS Z 2241に基づく引張り試験方法にて実施した。引張試験片は、JIS Z 2201のJIS13号B試験片を用いた。
表2(a)、(b)に、各実験例にて使用した原料粉の配合割合、測定結果、適否判定結果等を示す。
なお、原料粉、フェノール樹脂は、上記実施例1の実験例及び比較例にて説明したと同じものを使用した。つまり、
実験例8〜12及び実験例13、14では、炭素粉末4としては、膨張黒鉛粉末2と黒鉛粉末3とを用いた。黒鉛粉末3としては、平均粒径が20μm、粒子のアスペクト比1.5の黒鉛粉末を用いた。フェノール樹脂5としては、アンモニアを含まないフェノール樹脂を黒鉛粉末3に被覆して使用した。炭素粉末4とフェノール樹脂5との混合割合(wt%)を表2(a)に示すように変えて十分に混合して原料混合物(混合粉)とした。当該混合粉を所定量(カーボン板厚0.05mm:4.5g、0.30mm:27.0g)を、プレス装置100の300×200×20mmの容積を持つ雌型102に均等になるように投入し、冷間圧縮成型により、成型物Mを得た。実験例8〜12ではその後、該成型物Mと金属板21とを重ねて押圧し、加熱温度は150℃、圧力は5MPa、成型時間は10分にて、複合カーボン板20を作製した。実験例13、14の成形サンプルSは、冷間圧縮成型により得た成型物Mを、加熱温度は150℃、時間10分にて、カーボン板1を作製した。
表2(a)中、金属板21にて、使用したステンレススチールはSUS304であり、ステンレス(1)は引張強度600MPaのなまし材であり、ステンレス(2)は引張強度1200MPaのハード材である。また、銅はタフピッチ銅(C1100)の1/2H材であり、鋼はSPCCである。
上記成型サンプルSの圧縮強度、曲げ強度(曲げ歪)(1)、(2)、電気抵抗(接触抵抗、10点接触抵抗の最大値)、並びに、ガス不透過性及び引張強度は表2(b)に示す通りであった。
表2(a)、(b)から、実験例8〜12に示す本発明に係る複合カーボン板20は、圧縮強度、曲げ強度(曲げ歪)、電気抵抗(接触抵抗、10点接触抵抗の最大値)は、実験例13、14に示す上記実施例1で説明した本発明に従って構成されるカーボン板1と同等の性能を有しており、更に、本発明に係る複合カーボン板20は、ガス不透過性及び引張強度の点で、実験例13、14に示す上記実施例1で説明した本発明に従って構成されるカーボン板1より著しく優れた性能を有していることが分かる。
1 燃料電池用セパレータ(カーボン板)
2 膨張黒鉛粉末
3 黒鉛粉末
4 炭素粉末
5 フェノール樹脂
20 複合カーボン板
21 金属板
22 接着剤

Claims (5)

  1. (a)膨張黒鉛粉末95〜30wt%及び黒鉛粉末5〜70wt%からなる炭素粉末97〜80wt%と、
    (b)アンモニアを含まないフェノール樹脂3〜20wt%と、
    の混合物を圧縮成型して、厚さ0.05〜2.0mmとされるカーボン板であって、
    圧縮強度が3MPa以上であり、曲げ歪が0.6%以上で割れが無く、接触抵抗が6mΩ・cm以下であることを特徴とするカーボン板。
  2. 10点接触抵抗の最大値が6mΩ・cm以下であることを特徴とする請求項1に記載のカーボン板。
  3. 前記黒鉛粉末は、前記フェノール樹脂にて被覆されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカーボン板。
  4. 厚さが10〜150μmとされる金属板の少なくとも一側の面にカーボン板を一体に接合した複合カーボン板であって、
    前記カーボン板は、請求項1〜3のいずれかの項に記載のカーボン板であることを特徴とする複合カーボン板。
  5. 前記金属板は、ステンレススチールであることを特徴とする請求項4に記載の複合カーボン板。
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