JP2019204601A - 燃料電池用セパレータ - Google Patents

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昭紘 小泉
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勤 鈴木
勝 米山
Masaru Yoneyama
勝 米山
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Akira Okada
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Abstract

【課題】高い機械的強度や導電性を確保しつつ、優れた熱的寸法安定性により、例え高温域で使用されても、熱膨張率を抑制できる燃料電池用セパレータを提供する。【解決手段】樹脂と黒鉛の混合組成物からなる燃料電池用セパレータ1であり、樹脂がポリフェニレンスルフィド系樹脂であるとともに、黒鉛が球状黒鉛であり、ポリフェニレンスルフィド系樹脂100質量部に対して球状黒鉛が800質量部以上3200質量部以下含有される。燃料電池用セパレータ1が低熱膨張性なので、例え燃料電池が180℃付近で運転される高温タイプでも、燃料電池の作動温度環境下での燃料電池用セパレータ1の膨張による寸法変化により、締め付け荷重の増大で燃料電池や燃料電池用セパレータ1に破損が生じるのを防止できる。【選択図】図1

Description

本発明は、室温から180℃付近までの温度域で使用される燃料電池用セパレータに関し、特に180℃付近の高温域で使用される燃料電池用セパレータに関するものである。
従来における燃料電池は、図示しないが、多数の単位セルが数十枚〜数百枚積層されることによりスタック構造に構成され、所定の温度域で運転される。各単位セルは、電解質膜を備え、この電解質膜が複数の電極板に挟持され、各電極板の外側に燃料電池用セパレータが配置されており、枚数の増加により燃料電池が高出力を実現する(特許文献1参照)。
特許第4660082号公報
ところで、燃料電池には、80℃付近の作動温度下で使用されるものが存在する一方で、180℃付近までの比較的高温の作動温度下で使用されるもの(以下、高温タイプと記載することがある)がある。燃料電池が高温タイプの場合、燃料電池用セパレータには、高い機械的強度や導電性の他、180℃付近の高温域においても、優れた熱的寸法安定性(低熱膨張性)が強く求められる。
この熱的寸法安定性(低熱膨張性)について詳しく説明すると、燃料電池が高温タイプの場合、燃料電池用セパレータの熱膨張率が大きいと、運転時の高温度環境により、個々の燃料電池用セパレータの寸法が大きくなり、締め付け荷重が増大して燃料電池や燃料電池用セパレータに破損が生じやすくなる。また、燃料電池の作動温度の環境下で燃料電池用セパレータの熱膨張率が大きいと、スタック構造に組み付けた後における単位セル間の密着性に悪影響が生じ、接触電気抵抗にバラツキが生じ、その結果、燃料電池の発電効率の低下を招くこととなる。
本発明は上記に鑑みなされたもので、高い機械的強度や導電性を確保しつつ、優れた熱的寸法安定性により、例え高温域で使用されても、熱膨張率を抑制することのできる燃料電池用セパレータを提供することを目的としている。
本発明においては上記課題を解決するため、樹脂と黒鉛の混合組成物からなるセパレータであって、
樹脂がポリフェニレンスルフィド系樹脂であるとともに、黒鉛が球状黒鉛であり、ポリフェニレンスルフィド系樹脂100質量部に対して球状黒鉛が800質量部以上3200質量部以下含有されることを特徴としている。
なお、熱機械分析法により測定された23℃以上180℃以下の厚み方向の熱膨張率が40×10−6−1未満で、かつ面方向の熱膨張率が10×10−6−1未満であることが好ましい。
また、JIS K 7171の測定方法に基づく曲げ強度が30MPa以上、曲げ弾性率が15GPa以上であることが好ましい。
また、ポリフェニレンスルフィド系樹脂の分子構造が直鎖型であると良い。
ここで、特許請求の範囲における燃料電池用セパレータは、表裏両面に流体用の複数の流路を並べ備えた板、連続した断面略波形の屈曲板等とすることができる。この燃料電池用セパレータは、23℃(室温)から180℃付近、好ましくは100℃から180℃付近、より好ましくは150℃から180℃付近、さらに好ましくは170℃から180℃付近で使用可能である。
本発明によれば、燃料電池用セパレータの熱膨張率が従来よりも低く、燃料電池用セパレータが低熱膨張性なので、例え燃料電池が高温タイプでも、熱によりスタック構造全体が大きくなることが少ない。
本発明によれば、燃料電池用セパレータの熱膨張率が従来よりも低く、燃料電池用セパレータが低膨張性なので、例え燃料電池の高温作動時においても、熱によるスタックの寸法変化を小さく抑え、燃料電池や燃料電池用セパレータの破損を防ぐことができるという効果がある。
請求項2記載の発明によれば、燃料電池用セパレータに優れた熱的寸法安定性、換言すれば、低熱膨張性を付与することができるので、熱により燃料電池のスタックの寸法変化が大きくなるのを抑制し、締め付け荷重の増大等で燃料電池や燃料電池用セパレータに破損が生じるのを防ぐことができる。また、単位セル間の密着性を維持することができるので、接触電気抵抗にバラツキが生じて燃料電池の発電効率が低下するのを防ぐことができる。
請求項3記載の発明によれば、燃料電池用セパレータの機械的特性の向上が期待できる。
請求項4記載の発明によれば、ポリフェニレンスルフィド系樹脂の優れた結晶化度により、ポリフェニレンスルフィド系樹脂が燃料電池用セパレータの熱膨張率に及ぼす悪影響を抑制することが可能となる。
本発明に係る燃料電池用セパレータの実施形態を模式的に示す平面説明図である。 本発明に係る燃料電池用セパレータの実施形態を模式的に示す断面説明図である。
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における燃料電池用セパレータ1は、図1や図2に示すように、樹脂と黒鉛の混合組成物からなるセパレータであり、樹脂がポリフェニレンスルフィド(PPS)系樹脂であるとともに、黒鉛が球状黒鉛であり、ポリフェニレンスルフィド系樹脂100質量部に対して球状黒鉛が800質量部以上3200質量部以下含有される。
燃料電池用セパレータ1は、図1や図2に示すように、薄型化の観点から、矩形波が連続した断面略波形に成形され、厚さが6mm以下、好ましくは5mm以下とされており、周縁部に、燃料電池の他の構成部材との接続用の接続口2が複数穿孔される。この燃料電池用セパレータ1は、断面略波形に成形されることで、表裏両面に、所定の液体やガスを流通させる流路3がそれぞれ複数配設され、この複数の流路3が構造の複合化に資する観点から、周縁部を除く略中央部にサーペンタイン形に屈曲して配列されており、各流路3が連続した断面略U字形に凹み形成される。
ポリフェニレンスルフィド系樹脂は、少なくとも燃料電池用セパレータ1の機械的強度・成形性・耐久性・耐薬品性等に資する粉末のポリフェニレンスルフィド樹脂が使用される。このポリフェニレンスルフィド樹脂は、耐熱性にも優れ、180℃でも連続使用可能な結晶性の熱可塑性樹脂である。ポリフェニレンスルフィド樹脂は、剛直な分子構造を有するので、溶融状態から冷却して結晶化する際、曲がりにくく、整列して並びやすいため、非晶質部が減少する。非晶質部は、結晶質部に比べ、熱による変形が生じやすいため、多い場合には、熱膨張率が増大する。ポリフェニレンスルフィド樹脂は、非晶質部が少ないので、熱膨張率の低減が大いに期待できる。
ポリフェニレンスルフィド系樹脂は、ポリフェニレンスルフィド骨格を有していれば良く、ポリフェニレンスルフィドと同族ポリマー(例えば、ポリフェニレンスルフィドケトンPPSK,ポリフェニレンスルフィドスルホンPPSS,ポリビフェニレンスルフィドPBPS等)も含まれる。
ポリフェニレンスルフィド樹脂の分子構造には、直鎖型と架橋型とがあるが、優れた結晶化度により、熱膨張率に対する影響が小さい直鎖型(リニア型)が好ましい。ポリフェニレンスルフィド系樹脂は、部分的な架橋構造を有していても良く、逆に架橋構造を有していなくても良い。さらに、ポリフェニレンスルフィド系樹脂は、ベンゼン環に置換基を有していても良い。
なお、ポリフェニレンスルフィド系樹脂は、溶出イオン防止の観点から、酸や水等により洗浄して使用されることが好ましい。これは、ポリフェニレンスルフィド系樹脂を洗浄して使用すれば、燃料電池の作動中に熱水中に溶出するイオンを低減し、燃料電池の劣化を防止することができるからである。
球状黒鉛は、例えば平均粒子径が10μm以上120μm以下、好ましくは12μm以上100μm以下、より好ましくは15μm以上90μm以下の球状の黒鉛が使用される。一般的な膨張黒鉛や鱗片状黒鉛ではなく、球状黒鉛が用いられるのは、熱膨張率の抑制、特に厚み方向の熱膨張率の抑制等が期待できるからである。この点について詳しく説明すると、膨張黒鉛、膨張化黒鉛、鱗片状黒鉛のような黒鉛類は、その種類や形状により、XYZ方向で熱的、電気的、物理的な特性に異方性が生じる。熱膨張性も方向性に差が生じるので、一方向への膨張率が高くなる傾向がある。
これに対し、球状黒鉛は、異方性が低減され、熱膨張性が低い黒鉛なので、燃料電池用セパレータ1の熱膨張率、特に厚み方向の熱膨張率が膨張黒鉛や鱗片状黒鉛を使用する場合に比べ、小さくなる。また、球状黒鉛は、球状であるので、最密構造が期待でき、燃料電池用セパレータ1の内部密度が高くなる。燃料電池用セパレータ1の内部密度が高くなれば、燃料電池用セパレータ1の機械的強度や導電性が増大する。さらに、燃料電池の燃料である水素や酸素のようなガスが燃料電池用セパレータ1から漏れない、つまりガス透過量の低減にも寄与する。2種類以上の異なる粒径の球状黒鉛を組み合わせることにより、最密構造を高くし、機械的強度や導電性の向上、ガス透過量の低減化を図ることもできる。
球状黒鉛は、優れた機械的強度や低熱膨張性を得るため、ポリフェニレンスルフィド系樹脂100質量部に対して800質量部以上3200質量部以下含有される。但し、機械的強度、導電性、低熱膨張性を共に得る観点からすると、好ましくは800質量部以上2000質量部、より好ましくは800質量部以上1600質量部以下含有される。
球状黒鉛がポリフェニレンスルフィド系樹脂100質量部に対して2000質量部以上含有される場合、ポリフェニレンスルフィド系樹脂の膨張率が大きな問題になることはないので、分子構造が架橋型のポリフェニレンスルフィド系樹脂を使用することができる。また、分子構造が直鎖型と架橋型のポリフェニレンスルフィド系樹脂を組み合わせて使用することも可能である。
燃料電池用セパレータ1は、優れた低熱膨張性を得る観点から、熱機械分析法(TMA法)により測定された23℃以上180℃以下の厚み方向の熱膨張率が40×10−6−1未満で、かつ面方向の熱膨張率が10×10−6−1未満であることが好ましい。
熱機械分析法により測定された23℃以上180℃以下の厚み方向の熱膨張率は、40×10−6−1未満、好ましくは20×10−6−1〜38×10−6−1、より好ましくは25×10−6−1〜37×10−6−1が良い。また、熱機械分析法により測定された23℃以上180℃以下の面方向の熱膨張率は、10×10−6−1未満、好ましくは4×10−6−1〜9.5×10−6−1、より好ましくは5×10−6−1〜9.0×10−6−1が良い。熱膨張率の面・厚み比は、3.50〜6.00、好ましくは3.85〜5.50、より好ましくは3.90〜5.00が最適である。
燃料電池用セパレータ1は、機械的強度を確保するため、JIS K 7171の測定方法に基づく曲げ強度が30MPa以上、好ましくは30MPa以上60MPa以下、より好ましくは32MPa以上57MPa以下が最適である。また、優れた機械的特性を得る観点から、JIS K 7171の測定方法に基づく曲げ弾性率が15GPa以上、好ましくは15GPa以上25GPa以下、より好ましくは16GPa以上24GPa以下が好適である。
燃料電池用セパレータ1の体積抵抗値は、電力損失抑制の観点から、四端子四探針法により測定した場合、0.5mΩ・cm〜4mΩ・cm、好ましくは0.8mΩ・cm〜4mΩ・cm、より好ましくは1mΩ・cm〜4mΩ・cmが好適である。
上記において、燃料電池用セパレータ1を製造する場合には、粉末のポリフェニレンスルフィド系樹脂と、粉末の球状黒鉛とを所定の重量配合比でタンブラーボトルやヘンシェルミキサ等に多数のジルコニアボールと共に加え、配合機により所定の時間、攪拌・混合して混合組成物を調製し、燃料電池用セパレータ1の成形材料を調製する。この際、粉末のポリフェニレンスルフィド系樹脂が溶融しないよう、加熱することなく配合することが好ましい。
こうして成形材料を調製したら、離型剤が予め塗布された燃料電池用セパレータ1の専用金型の下型に成形材料を充填し、この成形材料をスクレーバで平らにならし、下型をプッシャで軽く押圧してエアを外部に抜いた後、下型に専用金型の上型を嵌合してプレス機で本加熱加圧することにより、燃料電池用セパレータ1を圧縮成形する。成形材料の充填に際しては、専用金型の成形温度をポリフェニレンスルフィド系樹脂の融点よりも低くしておくのが良い。
成形材料を充填する場合には、燃料電池用セパレータ1の板と複数の流路3とで成形材料の成形量が相違し、しかも、粉末の黒鉛粒子の流動性が低いので、これらを考慮して充填する。具体的な充填方法としては、(1)専用金型の下型に計量した成形材料を充填してスクレーバ等により均一に広げてならし、複数の流路3を成形する専用金型の成形部の成形材料をスクレーバ等によりかき取り、成形材料をバランス良く充填する方法、(2)燃料電池用セパレータ1の形状を考慮し、専用金型の下型に成形材料をディスペンサーにより増減させながら充填する方法のいずれかが選択して採用される。
エアを外部に抜いた場合には、プレス機で直ちに本加熱加圧しても良いが、本加熱加圧の前段階で予備加熱加圧すれば、燃料電池用セパレータ1の低温割れの防止、硬化組織の生成防止、延性・じん性等の機械的性質の向上、変形・残留応力の低減を図ることができる。専用金型の加熱加圧に際しては、成形材料の充填された専用金型を成形機の所定温度まで加熱した一対の熱板間にセットして加熱加圧する。また、専用金型の加熱温度はポリフェニレンスルフィド系樹脂の融点+100℃〜+150℃程度が好ましく、専用金型の加圧圧力は300kg/cm以上が必要である。
専用金型が加熱加圧されると、成形材料の加圧に伴い、球状黒鉛が密接してその間にポリフェニレンスルフィド系樹脂の流入する空隙が形成され、ポリフェニレンスルフィド系樹脂の融点を越えた温度域でポリフェニレンスルフィド系樹脂が流動し始め、球状黒鉛の粒子の周囲やその間にポリフェニレンスルフィド系樹脂が流動・流入することとなる。専用金型の加熱加圧時間としては、球状黒鉛の間にポリフェニレンスルフィド系樹脂が流入するのに要する時間であれば良い。
燃料電池用セパレータ1を圧縮成形したら、専用金型を所定の時間冷却し、専用金型から燃料電池用セパレータ1を脱型すれば、表裏両面にサーペイン型の流路3を複数備えた薄い燃料電池用セパレータ1を製造することができる。専用金型を冷却する方法としては、(1)専用金型を取り外して冷却された別の成形機の一対の熱板間にセットし、加圧冷却する方法、(2)専用金型を成形機の一対の熱板間にセットしたままで加圧冷却する方法等があげられる。
専用金型は、ポリフェニレンスルフィド系樹脂の融点以下、好ましくはポリフェニレンスルフィド系樹脂の融点−100℃以下、より好ましくはポリフェニレンスルフィド樹脂のガラス転移点以下まで冷却する。これは、係る温度まで専用金型を冷却すれば、燃料電池用セパレータ1の導電性が向上し、燃料電池用セパレータ1の反りや曲がりの低減に資するという理由に基づく。
但し、冷却温度の低下に伴い生産性が悪化するので、導電性を満足する範囲の高温で燃料電池用セパレータ1を脱型し、ガラス転移点以上の温度でアニーリングして燃料電池用セパレータ1の反りや曲がりを矯正しても良い。アニーリングは、燃料電池用セパレータ1を積層して0.05kg/cmの錘を載せることにより、実施することが好ましい。
上記によれば、燃料電池用セパレータ1が低熱膨張性なので、例え燃料電池が180℃付近で運転される高温タイプでも、運転時の高温度環境により、個々の燃料電池用セパレータ1の寸法が大きくなり、締め付け荷重の増大で燃料電池や燃料電池用セパレータ1に破損が生じるのを有効に防止することができる。また、燃料電池の作動温度の環境下でも燃料電池用セパレータ1の熱膨張率が小さいので、スタック構造に組み付けた後における単位セル間の密着性に悪影響が生じることがなく、接触電気抵抗にバラツキが生じて燃料電池の発電効率の低下を招くおそれを有効に排除することができる。
なお、上記実施形態においては樹脂として、ポリフェニレンスルフィド系樹脂を示したが、必要に応じ、他の樹脂を添加して配合しても良い。また、球状黒鉛は、天然黒鉛でも良いし、人造黒鉛でも良いが、製造の容易化を図る点からすると、天然黒鉛が好ましい。
以下、本発明に係る燃料電池用セパレータの実施例を比較例と共に説明する。
〔実施例1〕
燃料電池用セパレータを製造するため、先ず、粉末のポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂と、粉末の球状黒鉛粒子とを用意した。ポリフェニレンスルフィド樹脂としては、分子構造が直鎖型のE2180(東レ株式会社製:製品名)を用いた。このポリフェニレンスルフィド樹脂のメルトフローレート(MFR)は、温度316℃、荷重5kgの条件下で120g/10minである。また、球状黒鉛粒子として、平均粒径15μmのWF‐15C(富士黒鉛工業株式会社製:製品名)を用いた。これらの重量配合比は、100:800に調整した。
次いで、ポリフェニレンスルフィド樹脂と、球状黒鉛粒子とを60Lタンブラーボトル(株式会社セイワ技研製)に多数のジルコニアボール(株式会社ニッカトー製)と共に加え、配合機(株式会社セイワ技研製:製品名TM‐60P)により回転数30rpm(40Hz)、60分の条件で攪拌・混合し、燃料電池用セパレータの成形材料を調製した。
こうして成形材料を調製したら、離型剤(ダイキン工業株式会社製:製品名GA‐7500)が予め噴霧・塗布された燃料電池用セパレータの専用金型の下型に成形材料を充填し、この成形材料をスクレーバで平らに広げてならし、下型をプッシャで軽く押圧してエアを外部に抜いた後、下型に専用金型の上型を嵌合して300tのプレス機で本加熱加圧することにより、平板の燃料電池用セパレータを圧縮成形した。
専用金型は、S45C材により構成した。また、プレス機は、その上熱板を380℃、下熱板を440℃に設定した。本加熱加圧は、面圧481kg/cm、7分間の条件で実施した。
燃料電池用セパレータを圧縮成形したら、専用金型を所定の時間冷却し、専用金型から燃料電池用セパレータを脱型して燃料電池用セパレータを製造した。専用金型の冷却は、面圧481kg/cm、22分間の条件で実施した。脱型した燃料電池用セパレータは、測定したところ、210×297×5tmmの大きさであった。
燃料電池用セパレータを製造したら、この燃料電池用セパレータの曲げ強度、曲げ弾性率、曲げ歪み、23℃〜180℃までの熱膨張率、体積抵抗値をそれぞれ測定し、表1にまとめて評価した。燃料電池用セパレータの曲げ強度と曲げ弾性率は、JIS K 7171に基づき、燃料電池用セパレータから試験片を形成し、この試験片で曲げ試験を5回実施してその平均値を記載した。
燃料電池用セパレータの23℃〜180℃までの熱膨張率は、熱機械分析法(TMA法)により測定した。具体的には、成形した燃料電池用セパレータから5×5×5mmの試験片を切り出し、荷重50mN、プローブ径φ3.5mm、10℃〜210℃までの温度範囲を昇温速度5℃/minの条件で測定し、23℃〜180℃の区間で熱膨張率を測定機により測定した。測定機には、TMA/SS7100(日立ハイテクサイエンス株式会社製:製品名)を用いた。また、測定に際しては、平板面の面方向、平板の厚み方向を各々別の試験片で3回測定し、測定値の平均値を用いた。
燃料電池用セパレータの体積抵抗値は、四端子四探針法により測定した。具体的には、成形した燃料電池用セパレータを25分割して25枚の試験片を加工し、この25枚の試験片の体積抵抗値を測定機である低抵抗率計(三菱化学株式会社製:製品名ロレスタGP MCP‐T610)によりそれぞれ測定し、測定値の平均値を体積抵抗値として記載した。
〔実施例2〕
粉末のポリフェニレンスルフィド樹脂と、粉末の球状黒鉛粒子とを用意した。ポリフェニレンスルフィド樹脂としては、分子構造が直鎖型のM2888(東レ株式会社製:製品名)を用いた。このポリフェニレンスルフィド樹脂のメルトフローレート(MFR)は、温度316℃、荷重5kgの条件下で600g/10minである。また、球状黒鉛粒子として、平均粒径15μmのWF‐15C(富士黒鉛工業株式会社製:製品名)を用いた。
これらの重量配合比は、100:800に調整した。その他の部分については、実施例1と同様にして燃料電池用セパレータを製造し、この燃料電池用セパレータの曲げ強度、曲げ弾性率、曲げ歪み、23℃〜180℃までの熱膨張率、体積抵抗値をそれぞれ測定し、表1にまとめて評価した。
〔実施例3〕
粉末のポリフェニレンスルフィド樹脂と、粉末の球状黒鉛粒子とを用意した。ポリフェニレンスルフィド樹脂としては、分子構造が直鎖型のM2888(東レ株式会社製:製品名)を使用した。このポリフェニレンスルフィド樹脂のメルトフローレート(MFR)は、温度316℃、荷重5kgの条件下で600g/10minである。また、球状黒鉛粒子として、平均粒径15μmのWF‐15C(富士黒鉛工業株式会社製:製品名)を使用した。
これらの重量配合比は、100:1000に調整した。その他の部分については、実施例1と同様にして燃料電池用セパレータを製造し、この燃料電池用セパレータの曲げ強度、曲げ弾性率、曲げ歪み、23℃〜180℃までの熱膨張率、体積抵抗値をそれぞれ測定し、表1にまとめて評価した。
〔実施例4〕
粉末のポリフェニレンスルフィド樹脂と球状黒鉛粒子とを用意した。ポリフェニレンスルフィド樹脂として、分子構造が直鎖型のM2888(東レ株式会社製:製品名)を使用した。また、球状黒鉛粒子として、平均粒径15μmのWF‐15C(富士黒鉛工業株式会社製:製品名)を使用した。
これらの重量配合比は、100:1600に変更した。その他の部分については、実施例1と同様にして燃料電池用セパレータを製造し、この燃料電池用セパレータの曲げ強度、曲げ弾性率、曲げ歪み、23℃〜180℃までの熱膨張率、体積抵抗値をそれぞれ測定し、表1に記載して評価した。
〔実施例5〕
粉末のポリフェニレンスルフィド樹脂と球状黒鉛粒子とを用意した。ポリフェニレンスルフィド樹脂として、分子構造が直鎖型のM2888(東レ株式会社製:製品名)を使用した。また、球状黒鉛粒子を、平均粒径50μmのCGB50(日本黒鉛工業株式会社製:製品名)に変更した。
これらの重量配合比は、100:1600に調整した。その他の部分については、実施例1と同様にして燃料電池用セパレータを製造し、この燃料電池用セパレータの曲げ強度、曲げ弾性率、曲げ歪み、23℃〜180℃までの熱膨張率、体積抵抗値をそれぞれ測定し、表1に記載して評価した。
〔実施例6〕
粉末のポリフェニレンスルフィド樹脂と球状黒鉛粒子とをそれぞれ用意した。ポリフェニレンスルフィド樹脂を、分子構造が架橋型のL4031(東レ株式会社製:製品名)に変更した。このポリフェニレンスルフィド樹脂のメルトフローレート(MFR)は、温度316℃、荷重0.345kgの条件下で60g/10minである。また、球状黒鉛粒子として、平均粒径50μmのCGB50(日本黒鉛工業株式会社製:製品名)を用いた。
これらの重量配合比は、100:3200に調整した。その他の部分については、実施例1と同様にして燃料電池用セパレータを製造し、この燃料電池用セパレータの曲げ強度、曲げ弾性率、曲げ歪み、23℃〜180℃までの熱膨張率、体積抵抗値をそれぞれ測定し、表1に記載して評価した。
〔実施例7〕
粉末のポリフェニレンスルフィド樹脂と球状黒鉛粒子とをそれぞれ用意した。ポリフェニレンスルフィド樹脂としては、分子構造が架橋型のL4031(東レ株式会社製:製品名)を用いた。また、球状黒鉛粒子として、平均粒径86μmのCGB100(日本黒鉛工業株式会社製:製品名)を用いた。
これらの重量配合比は、100:3200に変更した。その他の部分については、実施例1と同様にして燃料電池用セパレータを製造し、この燃料電池用セパレータの曲げ強度、曲げ弾性率、曲げ歪み、23℃〜180℃までの熱膨張率、体積抵抗値をそれぞれ測定し、表1にまとめて評価した。
Figure 2019204601
〔比較例1〕
粉末のポリフェニレンスルフィド樹脂と、粉末の球状黒鉛粒子とを用意した。ポリフェニレンスルフィド樹脂としては、分子構造が直鎖型のM2888(東レ株式会社製:製品名)を用いた。また、球状黒鉛粒子として、平均粒径15μmのWF‐15C(富士黒鉛工業株式会社製:製品名)を用いた。
これらの重量配合比は、100:700に調整した。その他の部分については、実施例1と同様にして燃料電池用セパレータを製造し、この燃料電池用セパレータの曲げ強度、曲げ弾性率、曲げ歪み、23℃〜180℃までの熱膨張率、体積抵抗値をそれぞれ測定し、表2にまとめて評価した。
〔比較例2〕
粉末のポリフェニレンスルフィド樹脂と、粉末の球状黒鉛粒子とを用意した。ポリフェニレンスルフィド樹脂としては、分子構造が架橋型のL4031(東レ株式会社製:製品名)を用いた。また、球状黒鉛粒子として、平均粒径86μmのCGB100(日本黒鉛工業株式会社製:製品名)を用いた。
これらの重量配合比は、100:3400に変更した。その他の部分については、実施例1と同様にして燃料電池用セパレータを製造し、この燃料電池用セパレータの曲げ強度、曲げ弾性率、曲げ歪み、23℃〜180℃までの熱膨張率、体積抵抗値をそれぞれ測定し、表2にまとめて評価した。
〔比較例3〕
粉末のポリフェニレンスルフィド樹脂と、粉末の鱗片状黒鉛粒子とを用意した。ポリフェニレンスルフィド樹脂としては、分子構造が直鎖型のM2888(東レ株式会社製:製品名)を用いた。また、鱗片状黒鉛粒子として、平均粒径120μmの8020SJ(オリエンタル産業株式会社製:製品名)を用いた。
これらの重量配合比は、100:1000に調整した。その他の部分については、実施例1と同様にして燃料電池用セパレータを製造し、この燃料電池用セパレータの曲げ強度、曲げ弾性率、曲げ歪み、23℃〜180℃までの熱膨張率、体積抵抗値をそれぞれ測定し、表2に記載して評価した。
〔比較例4〕
粉末のポリフェニレンスルフィド樹脂と鱗片状黒鉛粒子とを用意した。ポリフェニレンスルフィド樹脂として、分子構造が直鎖型のM2888(東レ株式会社製:製品名)を用いた。また、鱗片状黒鉛粒子として、平均粒径120μmの8020SJ(オリエンタル産業株式会社製:製品名)を用いた。
これらの重量配合比は、100:1600に変更した。その他の部分については、実施例1と同様にして燃料電池用セパレータを製造し、この燃料電池用セパレータの曲げ強度、曲げ弾性率、曲げ歪み、23℃〜180℃までの熱膨張率、体積抵抗値をそれぞれ測定し、表2に記載して評価した。
〔比較例5〕
粉末のポリフェニレンスルフィド樹脂と鱗片状黒鉛粒子とをそれぞれ用意した。ポリフェニレンスルフィド樹脂として、分子構造が架橋型のL4031(東レ株式会社製:製品名)を用いた。また、鱗片状黒鉛粒子として、平均粒径120μmの8020SJ(オリエンタル産業株式会社製:製品名)を用いた。
これらの重量配合比は、100:3200に変更した。その他の部分については、実施例1と同様にして燃料電池用セパレータを製造し、この燃料電池用セパレータの曲げ強度、曲げ弾性率、曲げ歪み、23℃〜180℃までの熱膨張率、体積抵抗値をそれぞれ測定し、表2にまとめて評価した。
Figure 2019204601
〔評 価〕
各実施例の燃料電池用セパレータは、優れた曲げ強度、曲げ弾性率、曲げ歪みを得ることができた。また、23℃〜180℃までの熱膨張率も、低い値を示し、低熱膨張性を確認した。以上から、各実施例の燃料電池用セパレータは、例え燃料電池が高温タイプの場合にも、問題なく適切に使用できることが判明した。
これに対し、比較例1の燃料電池用セパレータは、23℃〜180℃までの熱膨張率が高い値を示し、充分な低熱膨張性を得られなかった。また、比較例2の燃料電池用セパレータは、曲げ強度に問題が生じ、充分な機械的特性を得られなかった。比較例3の燃料電池用セパレータは、曲げ弾性率と熱膨張率に問題が発生した。さらに、比較例4、5の燃料電池用セパレータは、曲げ強度、曲げ弾性率、熱膨張率にそれぞれ問題が発生し、燃料電池が高温タイプの場合、高温域の実用性に疑義が生じた。
本発明に係る燃料電池用セパレータは、燃料電池の製造分野で使用される。
1 燃料電池用セパレータ
2 接続口
3 流路

Claims (4)

  1. 樹脂と黒鉛の混合組成物からなる燃料電池用セパレータであって、樹脂がポリフェニレンスルフィド系樹脂であるとともに、黒鉛が球状黒鉛であり、ポリフェニレンスルフィド系樹脂100質量部に対して球状黒鉛が800質量部以上3200質量部以下含有されることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
  2. 熱機械分析法により測定された23℃以上180℃以下の厚み方向の熱膨張率が40×10−6−1未満で、かつ面方向の熱膨張率が10×10−6−1未満である請求項1記載の燃料電池用セパレータ。
  3. JIS K 7171の測定方法に基づく曲げ強度が30MPa以上、曲げ弾性率が15GPa以上である請求項1又は2記載の燃料電池用セパレータ。
  4. ポリフェニレンスルフィド系樹脂の分子構造が直鎖型である請求項1、2、又は3記載の燃料電池用セパレータ。
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