JP6737982B2 - 燃料電池用セパレータおよびその製造方法 - Google Patents

燃料電池用セパレータおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は燃料電池用セパレータおよびその製造法に関し、特に金属−炭素複合材を備える燃料電池用セパレータおよびその製造方法に関する。
近年、例えば電気自動車の発電装置として、固体高分子型燃料電池(PEFC)が注目されている。PEFCは、起電力を発生する単セルが数十個〜数百個積層され、アノード側に例えば水素ガス等の燃料ガス、カソード側に例えば酸素ガス等の酸化ガスを供給することにより、発電機能を発揮する。
単セルは、例えば、固体高分子電解質膜を、それぞれ供給ガスを分散させるガス拡散層(GDL)を含むアノードおよびカソードで挟持した膜−電極接合体(MEA)を備える。各単セルのMEAは、ガスケットを介して2枚の燃料電池用セパレータによって接合される。かように、燃料電池用セパレータは、各単セルを電気的に接続する機能を有する。セパレータは、通常、ガス流路用の溝を有し、燃料ガスと酸化ガスとが混合しないように分離する機能も有する。その他、セパレータは、MEAで発電した電気エネルギーを外部へ伝達したり、MEAで生じた熱を外部へ放熱したりするなど、複数の重要な役割を担っている。
従って、セパレータは、以下の4つの特性が要求される。
(1)発電ロスを少なくするために、GDLとの接触抵抗が低いこと(導電性)
(2)燃料ガスと酸化ガスとをその両面で完全に分離して電極に供給するための気密性(ガスバリア性)
(3)pH=3程度の燃料電池動作環境下で劣化しないこと(耐食性)
さらに自動車用のPEFCに用いられるセパレータは、
(4)自動車などの振動に対して十分な強度があること(フレキシブル性、耐衝撃性)
が要求される。
従来、燃料電池用セパレータとして、カーボンセパレータや金属セパレータが知られている。しかしながら、従来のカーボンセパレータはガスバリア性およびフレキシブル性が課題であり、金属セパレータは耐食性が課題であった。そこで、両者の欠点を補うべく、金属層にカーボン層を接合した金属−炭素複合材が開発されている。
従来の金属−炭素複合材のセパレータのカーボン層には、膨張黒鉛および黒鉛の混合粉末と、樹脂の複合体が使用されている(例えば、特許文献1および2参照)。これは黒鉛と膨張黒鉛を使用することにより、セパレータが曲げられた際に、内部空隙で滑りが発生し、セパレータのフレキシブル性が向上するからである。しかしながら、単純にカーボン層内の空隙を多くしてフレキシブル性を向上しようとすると、カーボン層の表面から金属層へ連通する連通孔が増加し、燃料電池動作環境下で発生するpH=3程度の腐食液が連通孔を介して金属層に浸透し、金属層が腐食してしまうといった問題がある。一方で、ただ単純に連通孔を減少させようとすると構造的に余裕がなくなり、曲げ強度などのフレキシブル性に影響を与えるといった問題があった。
特開2000−173630号公報 特開2014−22086号公報
上述のように、PEFCに用いられるセパレータは、フレキシブル性および耐食性の両立が課題であるが、フレキシブル性はカーボン層、特に膨張黒鉛内の空孔の体積の割合に依存し、耐食性と関係するカーボン層の透気度は粒子間の連通孔の多さに依存する。
上記特許文献1および2などの従来のセパレータでは、膨張黒鉛の内部空隙が多いことで滑り変形に強いセパレータを提供できることのみが着目されていた。すなわち、従来のセパレータでは、膨張黒鉛を使用することでフレキシブル性を向上させることのみで、耐食性も同時に向上するために、カーボン層内に存在する空隙の構造を制御することについては全く着目されていなかった。
この点に着目すると、カーボン層内に存在する空隙の構造を制御するために、例えば単純に連通孔をなくそうとすると、カーボン層の嵩密度が増加して、カーボン層の構造に余裕がなくなり、曲げ強度の向上を図ることができない。一方、透気度が大きくなることを許容して連通孔を多くすると、腐食液が金属箔へ到達してしまう問題が生じてしまう。
そこで、本発明者らは、カーボン層内に存在する空隙として、次の3つの空隙に着目した。
一つ目は、カーボン層の黒鉛、特に膨張黒鉛の内部空隙(空孔)である。膨張黒鉛および黒鉛の内部空隙は、滑りによって変形に強いセパレータを提供することができる。上記特許文献1および2など従来のセパレータのカーボン層では、膨張黒鉛内の空孔の体積の割合に関連する膨張化度は規定されることがなく、耐食性の観点から膨張化度を低く設定して使用するのが通例である。従来のカーボンセパレータの嵩密度から類推すると、膨張化度はせいぜい60程度である。
二つ目は、カーボン層内の粒子間の空隙(空孔)である。連通孔以外の該空隙は、黒鉛、膨張黒鉛および樹脂が曲げなどの衝撃を受けた際に動くスペースを作り、構造的に余裕を持たせる役割を有する。
三つ目は、カーボン層内の粒子間の連通孔である。連通孔は、カーボン層の一方の表面から他方の表面まで連続した空隙であり、ガーレー試験で測定される透気度の値で定義される。連通孔は、耐食性に大きく影響するため、できるだけ少ない方が好ましい。
また、本発明者らは、これらの空隙の構造を制御するために、製造方法にも目を向けた。すなわち、上記特許文献1および2などの従来のセパレータは、通常1回のプレスで成形を行っている。従来は、プレス圧力を変化させることでカーボン層内の空隙を埋め、耐食性の向上を図っていた。しかしながら、耐食性を向上するために、5.0〜10.MPa程度の強い圧力でプレスすると、連通孔が減少して耐食性は上がるが、カーボン層内の空孔の体積の割合が小さくなり、フレキシブル性が低下してしまう。一方、1回のプレスでカーボン層内の空孔の体積の割合を大きくしようとすると、0.5〜2.0MPa程度の弱い圧力でプレスする必要がある。しかしながら、このようなプレスでは、粒子間の空隙が埋まらずに連通孔が増加し、連通孔に腐食液が流れ込んで金属層まで達し、耐食性が低下してしまう。
従って、本発明は、カーボン層内の粒子間の空隙を埋めて透気度を低く抑え、連通孔の発生を抑えつつ、カーボン層内の空孔の体積の割合を従来よりも高くすることで、優れたフレキシブル性および耐食性を両立した燃料電池用セパレータおよびその製造方法を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するため、本発明者は鋭意研究を行った結果、カーボン層内に存在する空隙の構造を下記方法により制御することで、変形に強くフレキシブル性が良好であり、耐食性にも優れたセパレータを提供できることを見出し、本発明を完成した。
具体的には、プレスを二段階に分け、一回目のプレスで樹脂がしっかり粒子を覆う過程を経た後に、二回目のプレスを行い、粒子間の連通孔の発生を抑えつつ、黒鉛および膨張黒鉛内の空孔の体積の割合を大きく維持するとともに、粒子間の空隙を生み出すことに成功した。また、膨張黒鉛の膨張化度を調節することで、さらに変形に強くフレキシブル性に優れたセパレータを提供できることを初めて見出した。
すなわち、本発明は、次の燃料電池用セパレータ及びその製造方法を提供するものである。
<1>金属箔の両面又は片面に、炭素粉末と樹脂を体積比で炭素粉末:樹脂粉末=6:4〜9:1にて配合した厚さ0.4〜2.0mmのカーボン層を有する燃料電池用セパレータであって、
該カーボン層に存在する空孔の体積の割合が21〜41%であり、
該カーボン層のガーレー試験機による透気度測定において求められるISO透気度の値が0〜0.1であることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
<2>金属箔の両面又は片面に、炭素粉末と熱硬化性樹脂を体積比で炭素粉末:樹脂粉末=6:4〜9:1にて配合した厚さ0.4〜2.0mmのカーボン層を設ける<1>記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、
該カーボン層の製造方法が、
前記熱硬化性樹脂の熱硬化温度より80〜100℃低い温度にて、0〜0.5MPaの圧力で、1〜3分、該カーボン層のプレスを行う第一工程と、
第一工程の後、前記熱硬化性樹脂の熱硬化温度±10℃の温度、1.0〜3.0MPaの圧力で、10〜30分、カーボン層のプレスを行う第二工程と
を有することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
<3>金属箔の両面又は片面に、炭素粉末と熱可塑性樹脂を体積比で炭素粉末:樹脂粉末=6:4〜9:1にて配合した厚さ0.4〜2.0mmのカーボン層を設ける<1>記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、
該カーボン層の製造方法が、
前記熱可塑性樹脂の融点〜融点+20℃の温度、0〜0.5MPaの圧力で、1〜3分、該カーボン層のプレスを行う第一工程と、
第一工程の後、前記熱可塑性樹脂の融点より10〜20℃低い温度にて、1.0〜3.0MPaの圧力で、10〜30分、カーボン層のプレスを行う第二工程と
を有することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
本発明の燃料電池用セパレータおよびその製造方法によれば、カーボン層内の粒子間の空隙を埋めて透気度を低く抑えつつ、カーボン層内の空孔の体積の割合を従来よりも高くできるので、例えば自動車向けなど厳しい条件下の使用にも耐えうる優れたフレキシブル性および耐食性を両立したセパレータを提供することができる。
本発明の実施の形態に係る燃料電池用セパレータを備える固体高分子型燃料電池(PEFC)の構成の一例を示す概略断面図である。 同上、金属−炭素複合構造のセパレータの構成を示す概略断面図である。 同上、金属−炭素複合構造のセパレータの構成を示す概略断面図である。 同上、炭素粉末と樹脂を配合した粉末混合物を示す概略図である。 同上、ガーレー試験機による透気度の測定方法を説明するための図である。 同上、接触抵抗の測定方法を説明するための図である。 同上、プレス工程に用いられるプレス装置の構成を示す概略図である。 同上、プレス工程前のカーボン層を示す概略図である。 従来の燃料電池用セパレータにおいて、1段階プレスにより形成したカーボン層を示す概略図である。 本発明の実施の形態に係る燃料電池用セパレータの製造方法において、第一工程後のカーボン層を示す概略図である。 同上、第二工程後のカーボン層を示す概略図である。
以下、本発明の実施の形態における、燃料電池用セパレータおよびその製造方法について、図面を参照ながら説明する。
図1は、本実施の形態に係る燃料電池用セパレータ5を備える固体高分子型燃料電池(PEFC)1の構成の一例を示す概略断面図である。
PEFC1は、膜−電極接合体(MEA)10を備える。MEA10は、固体高分子電解質膜2をアノード3aとカソード3cとで挟持し、さらに、これらをアノードガス拡散層(アノードGDL)4aとカソードガス拡散層(カソードGDL)4cとで挟持することにより構成される。
MEA10は、さらにアノードセパレータ5aとカソードセパレータ5cとで挟持される。アノードセパレータ5aおよびカソードセパレータ5cには、本発明セパレータ5を使用する。単セルを構成するMEA10は、図示しないガスケットを介して、セパレータ5によって隣接するMEA10と電気機械的に接続される。単セルは数十個〜数百個積層され、燃料電池スタックを構成する。
セパレータ5には溝が形成され、その断面は凹凸形状を有する。セパレータ5の第一の面8がMEA10に接触することにより、セパレータ5とMEA10とが電気的に接続される。セパレータ5の内側に面する凹部とMEA10との間の空間は、アノード側は水素ガス等の燃料ガスのガス流路6aとして、カソード側は酸素ガス等の酸化ガスのガス流路6cとして使用される。セパレータ5の外側に面する凹部7には、例えば水等の冷媒を流通させ、PEFC1を冷却する。
本発明のセパレータ5は、金属層11にカーボン層12を接合した金属−炭素複合材である。図2では金属層(金属箔)11の片面にカーボン層12が接合されており、図3では金属層(金属箔)11の両面にカーボン層12が接合されている。
金属層11は、ステンレススチール、チタン、チタン合金またはアルミニウム合金で形成されることが好ましい。素材によっては、前処理として、金属素材表面の酸化被膜を除去する目的で、酸溶液による表面処理が行われる。酸化被膜除去に使用する溶液は、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸、リン酸などの無機酸のうち一種以上を含む酸溶液、或いは、この酸溶液にさらに過酸化水素、塩化第二鉄、硫酸第二鉄を含んだものである。金属層11の厚さは、特に限定されないが、10〜150μmであることが好ましい。金属層11の厚さが10μm未満では機械的強度の増大が望めず、150μmを超えると柔軟性の点で問題が生じる。
カーボン層12は、図4に示す炭素粉末(炭素粒子)31と樹脂34を体積比で炭素粉末:樹脂粉末=6:4〜9:1にて配合した粉末混合物30を、ホットプレスして形成されたものである。形成されたカーボン層12の厚さは0.4〜2.0mmであることが必要である。炭素粉末31と樹脂34の体積比が上記範囲を超えると、すなわち、樹脂粉末34が40%(体積)を超えると、粒子間隙に樹脂が存在する確率が高くなる、すなわちセパレータ5のカーボン層12の連通孔35が発生する確率は低下するが、同時に連通孔35ではない粒子間隙の閉空孔36も樹脂が埋めてしまい、柔軟性が損なわれフレキシブル性が低下する。さらに、接触抵抗が増大し、燃料電池用セパレータ5として使用する場合に問題が生じる。炭素粉末31が90%(体積)を超えると、導電性が改善され、柔軟性は向上するが、金属層11とカーボン層12との接着強度が著しく低下する。その結果、燃料電池用セパレータ5として使用する場合に、その耐久性に問題が生じる。また、カーボン層12の厚みが2.0mmより厚くなると曲げ変形した際に、表面の曲げ変位量が大きく、カーボン層12の縦方向に割れが生じる。また、厚みが0.4mmより薄いと金属層11とカーボン層12の界面で接着する樹脂の量が減少し,剥離が起きやすくなるため、その耐久性が著しく低下してしまう。
粉末混合物30の総容量、並びに、炭素粉末31および樹脂粉末34の所望の配合比(体積比)が決まると、配合比に応じて各粉末の使用容量を求め、密度を基に使用重量を計算にて求める。このようにして求めた使用重量の各粉末を、例えば2枚ブレードのプラネタリーミキサにて混合し、所望の組成の粉末混合物30を調製する。
炭素粉末31は、天然黒鉛粉末、人造黒鉛粉末、膨張黒鉛粉末等の黒鉛粉末である。炭素粉末31は、例えば第1の黒鉛粉末と、第2の黒鉛粉末とを含むことができる。第1の黒鉛粉末は膨張黒鉛粉末とし、以下、その粒子を膨張黒鉛32と呼ぶ。第2の黒鉛粉末は天然黒鉛粉末または人造黒鉛粉末とし、以下、その粒子を黒鉛粒子33と呼ぶ。
本発明のセパレータ5は、優れたフレキシブル性および耐食性を両立するものである。フレキシブル性はカーボン層12の粒子間の閉空孔36と膨張黒鉛32内の空孔37の体積の割合に依存し、耐食性と関係するカーボン層12の透気度は粒子間の連通孔35の数の多さや連通孔35の径の大きさに依存する。したがって、フレキシブル性および耐食性を両立するためには、粒子間隙の閉空孔36と膨張黒鉛32内の空孔37は割合として高く保ちつつ、連通孔35をなくす必要がある。
本発明は、膨張黒鉛32内の空孔37の体積の割合を高くするために、膨張化度を大きくすることに着目したものである。炭素粉末31に含まれる膨張黒鉛32の膨張化度は100〜400であることが好ましい。膨張黒鉛の膨張化度が100未満であると粒子内空隙37が少なくフレキシブル性に富まず、400を超えるとプレス前のカーボン層12全体の嵩密度が低下し、プレスしてもカーボン層12の密度が上がらず、成型性に劣るものとなる。
こうした高膨張化度の膨張黒鉛32の作成方法は次の通りである。
まず、鱗片状の黒鉛粒子を硫酸と硝酸の混合液中で、時間および温度を調整しながら撹拌する。次に、黒鉛粒子を蒸留水で洗浄し、続いて1000℃の電気炉中で15秒間熱処理する。こうして、使用する黒鉛粒子の粒度を変化させ、所望の膨張化度の膨張黒鉛32を得る。
炭素粉末31に含まれる膨張黒鉛32の粒径は、長軸の長さが0.1〜10μmであり、より好ましくは1〜10μmである。一方、膨張黒鉛32とともに炭素粉末31に含まれるその他の黒鉛粒子の粒径は、1〜25μmであり、より好ましくは5〜25μmである。膨張黒鉛粒子32と黒鉛粒子33の粒径が上記範囲にあれば、カーボン層12の粒子間の充填率が上がり、連通孔35が少ないカーボン層12を容易に実現できる。黒鉛粒子33の粒径が上記範囲にあり、膨張黒鉛32の粒径が0.1μmより小さい場合、膨張黒鉛32内の空隙37が少なく、その結果曲げなどの変形に対して膨張黒鉛32内の空隙37での変形量が少なく、カーボン層12自体が割れてしまう。黒鉛粒子33の粒径が上記範囲にあり、膨張黒鉛32の粒径が10μmより大きい場合、曲げなどの変形に対して膨張黒鉛32自体が割れてしまい、フレキシブル性が低下してしまう。膨張黒鉛粒子32の粒径が上記範囲にあり、黒鉛粒子33の粒径が1.0μmより小さい場合、プレス時に密度が上がらず、粒子間の空隙36が増加してしまい、連通孔35の存在確率も増えるため、耐食性に劣る。膨張黒鉛粒子32の粒径が上記範囲にあり、黒鉛粒子33の粒径が25μmよりも大きい場合、カーボン同士の接着面積が低下し、接触抵抗が増加し、導電性が低下する。
一方、完成品のカーボン層12に含まれる膨張黒鉛32の体積比率は炭素粒子全体に対して6〜55%であることが好ましく、その粒径は0.1〜10.0μmであることが好ましい。膨張黒鉛32の体積比率がこの範囲内であるとフレキシブル性が担保される。膨張黒鉛32の体積比率が6%より小さいと、曲げなどの変形に対して滑りが起こる膨張黒鉛32の量が少なく、フレキシブル性が低下してしまう。膨張黒鉛32の体積比率が55%よりも大きいと、プレス前のカーボン層12全体の嵩密度が低下し、プレスしてもカーボン層12の密度が上がらず、成型性に劣るものとなる。また、膨張黒鉛32の粒径が0.1μmより小さい場合、膨張黒鉛32内の空隙が少なく、その結果曲げなどの変形に対して膨張黒鉛32内の空隙37での変形量が少なく、カーボン層12自体が割れてしまう。膨張黒鉛32の粒径が10μmより大きい場合、曲げなどの変形に対して膨張黒鉛32自体が割れてしまい、フレキシブル性が低下してしまう。
粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(Malvern製、商品名:MasterSizer2000)を用いて測定した。この時、D50(累積50質量%粒径)の値を平均粒径とした。
粉末混合物30に含まれる樹脂粉末34は、エポキシ樹脂やフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリフォレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂の粉末を使用することができる。
尚、カーボン層12の形成に用いる粉末混合物30には、必要に応じて、繊維基材や充填材、離型剤、耐加水分解剤等を添加してもよい。
本発明はさらに、膨張黒鉛32内の空孔37の体積の割合を高くしたまま、連通孔35を生み出さないために1回プレスではなく、例えば複数回のプレスを行う多段プレスにより、透気度を低く抑えるものである。多段プレスについては後述する。
カーボン層12に存在する粒子間の閉空孔36と空孔37の体積の割合(空孔度)は、21〜41%であることが好ましい。閉空孔36と空孔37の体積の割合がこの範囲内であるとフレキシブル性と耐食性が担保される。空孔度が21%より低いと曲げや衝撃が加えられた際の曲げや衝撃に対する変動層(吸収層)となるカーボン層12内の空隙36,37が十分ではなく、フレキシブル性が担保されない。41%より高いと、連通孔35の発生確率が増加し、その連通孔35を伝って、腐食液が金属層11に到達し、金属を腐食し、腐食した箇所に被膜が形成され、セパレータ5全体の電気抵抗が増加する。すなわち、セパレータの導電性が低下してしまう。また、空隙36,37が増加しすぎると、樹脂34による粒子間の接合がうまくいかず、衝撃が加えられた際に金属層11からカーボン層12が剥離しやすくなり、金属−炭素複合セパレータ5の形態をなさなくなってしまう。本発明の燃料電池用セパレータ5に用いられるカーボン層12は、この高い空孔度を維持したまま、後述するガーレー試験機20による透気度測定において求められるISO透気度の値を0〜0.1μm/(Pa・s)とすることに成功したものである。ISO透気度が0.1より大きいと、カーボン層12における金属層11まで到達する連通孔35の数が多いか、または連通孔の径が大きい状況であり、腐食液に浸漬すると、連通孔35を伝って腐食液が金属層11に到達し、金属を腐食し、腐食した箇所に腐食被膜が形成され、セパレータ5全体の電気抵抗が増加する。すなわち、セパレータ5の導電性が低下する。ISO透気度が0.1μm/(Pa・s)以下であれば、連通孔35の発生が著しく抑制された状況にあり、その数または孔径が小さい状況にあるため、腐食液に浸漬した際にも腐食液が金属層11に到達する確率が小さくなり、電気抵抗の増加を抑制することができる。
ISO透気度と連通孔35の数または径との相関について説明する。例えば、ISO透気度が0.1μm/(Pa・s)より大きい0.11μm/(Pa・s)であると、耐食性試験後の抵抗値の値が10.0mΩ・cm2より大きくなり、ISO透気度が0.12μm/(Pa・s)であると、耐食性試験後の抵抗値の値が20.0mΩ・cm2より大きくなる。従って、ISO透気度が0.1μm/(Pa・s)以下であれば、抵抗値の値が10.0mΩ・cm2以下となり、セパレータ5として良好であると判断することができるので、連通孔35の孔径が小さく、かつその数も著しく抑制された状況にあるとした。
なお、従来のセパレータ5では、カーボン層12の透気度を0〜0.1μm/(Pa・s)とした場合、カーボン層12に存在する粒子間の閉空孔36と空孔37の体積の割合は10〜20%と、本発明のものよりも低い値となる。
粒子間の閉空孔36と空孔37の体積の割合(空孔度)は、空孔度は使用する黒鉛、樹脂の真比重とサンプルの密度から計算によって求めることが出来る。
次に、ガーレー試験機20によるISO透気度の測定方法について説明する。ISO透気度はガーレー試験(JIS P 8117)によって求める。ガーレー試験は、一定圧力差のもとで一定体積の空気が一定面積の紙を通過する秒数をガーレー秒数と呼び、次式で透気度を求める。
ISO透気度のこの式は、平均圧力差1.22kPaで、試験面積6.42cm2に加工したカーボン層12を使用し、試験片を透過する空気の体積が常温常圧で106mlに相当する量であることに基づいている。後述する本発明の実施例では、JISに準拠するため、試験片の厚さは0.7〜1mmとする。本発明のセパレータ5では、カーボン層12の厚さを0.4〜2.0mmとしているが、試験片の厚さの場合と相関関係がとれていることを確認している。また、路となる溝が形成されていないカーボン層(平板)12を使用した。また、金属層11を含む金属−炭素複合セパレータのカーボン層12の透気度を測定する場合は、金属層11だけを酸で溶解するなど、カーボン層12だけを抽出して同様に透気度を測定することが出来る。
図5を用いてガーレー試験の原理について説明する。ガーレー試験機20において、液体(油)22に浮かぶ内筒23の垂直方向の重さによって空気を圧縮すると、この空気Aが空気穴24を通って試験片21を透過し、内筒23が徐々に下降する。一定体積V,V’の空気が透過するのに要した時間を測定し、その値から計算によってISO透気度を求める。同図は試験片21が上にあるタイプであり、25は目盛、26は外筒である。
図6に接触抵抗の測定方法を示す。成形サンプルSを、長さ17〜20mm、幅3〜5mmに加工して試験材とする。試験材Sとカーボンペーパ(東レ株式会社:商品名「TG-P-H-120」)301と重ね、これを2つの金メッキ銅製金具302を用いて所定の圧力(1MPa)で挟み込む。2つの金メッキ銅製金具302の間に、試験材S/カーボンペーパ301の接触面積値(単位:cm2)と同じ値の直流電流(単位:A)を電源303により流して、金メッキ銅製金具302/カーボンペーパ301/試験材Sの接続部に生じる電圧降下(単位:mΩ・cm2)を測定し、これを接触抵抗とする。
次に、本発明の燃料電池用セパレータ5に用いられるカーボン層12の製造方法について説明する。
本発明のカーボン層12は、原料となる粉末混合物30を、複数回に分けて多段プレスを行うことにより、製造することができる。図7に、本発明のカーボン層12を製造するためのプレス装置100の一例を示す。
プレス装置100は、一軸加熱圧縮成型装置であり、一組の雄型101および雌型102からなる金型103を有する。雄型101は、機枠104に固定されている。雌型102は、雄型101の下方に対向して配置され、油圧シリンダ105で昇降可能に構成される。金型103には図示しないヒータが内嵌されている。
図8はプレス前の粉末混合物30の状態を模式的に示す概略図である。膨張黒鉛32、黒鉛粒子33および樹脂粒子34が混合されている様子が示されている。従来のように、1段階のプレスで成形する場合、圧力によりカーボン層の空孔を調整していたため、フレキシブル性を担保しようと低い圧力でプレスすると、図9に示すカーボン層39のように、粒子間の空隙36が埋まらずに連通孔35が増加し、連通孔35に腐食液が流れ込んで金属層11まで達し、耐食性が低下してしまう。また、耐食性を向上させようと高い圧力でプレスした場合、膨張黒鉛32内の空孔37も小さくなってしまい、フレキシブル性が低下する。
これに対し、本発明のカーボン層12の製造方法では、1段階目の処理で、所定の温度で加熱しながら、ごく弱い圧力(押圧する際の圧力)で短時間のプレスを行うことで、図10に示すように、樹脂34が膨張黒鉛32および黒鉛粒子33をしっかりと被覆するようにして、さらに樹脂34が粒子外の空隙に流れ込むようにする。この1段階目の前処理により、膨張黒鉛32内の空孔度を高いままに維持することができる。続いて2段階目の処理で、1段目のプレスよりは強いが、従来よりも弱い圧力で、長い時間の2段目のプレスを行う。この2段階目の処理により、図11に示すように、膨張黒鉛32および黒鉛粒子33を被覆した樹脂34と、粒子外の空隙に流れた樹脂とが、粒子間の空隙36を埋めやすくなる。その結果、粒子間の連通孔35の発生を抑えることができる。
以下、プレス条件について、原料の粉末混合物30に含まれる樹脂粉末34として、熱硬化性樹脂を使用する場合と、熱可塑性樹脂を使用する場合とに分けて説明する。
(熱硬化性樹脂を使用する場合)
上記のような配合割合にて調製された原料の粉末混合物30を、金型103に入れて、以下の第一および第二工程を経ることにより、0.4〜2.0mmの厚さのカーボン層12を得る。
・第一工程:熱硬化性樹脂34の熱硬化温度より80〜100℃低い温度、0〜0.5MPaの圧力で、1〜3分、カーボン層12のプレスを行う。
この温度であれば、熱硬化性樹脂34の熱硬化温度よりも低く設定しているので、熱硬化は発生せず、樹脂34の流動性が確保されており、粒子32,33をしっかり被覆することが出来る。また、この温度の流動性であれば、粒子間への流れ込みも期待される。
上記温度より低い温度の場合、流動性が担保されずに、粒子32,33への被覆、粒子間隙への流れ込みが十分でなくなる。このため、二度目のプレス時に連通孔35が出来る可能性が高まり、連通孔35から耐食液が金属層11に流れ込み、導電性が低下する。
また、上記温度よりも高い場合、樹脂34の硬化が進み、二段階目のプレスが出来なくなる。このため、この場合、1段階のプレスのみで終了するため、連通孔35の存在確率が高くなり、連通孔35に腐食液が流れこみ金属層11を腐食し、セパレータ5の導電性が悪化してしまう。また、フレキシブル性に対しても、少しの衝撃で粒子同士の接着がなくなり、カーボン層12の形態をなさなくなってしまう。
プレスの圧力が0〜0.5MPaの範囲内であれば、膨張黒鉛32の粒子内間隙37を維持しながら、粒子間の空隙36を埋めることが出来る。これは樹脂34が粒子32,33をしっかりと被覆、または粒子間の空隙36に流れることにより粒子間の空隙36を少なくすることが出来るためである。0.5MPaより大きいと膨張黒鉛32の粒子内空隙37を維持することが難しくなる。ここで、第一工程の0Paとは、プレス圧を掛けない場合のことを意味する。
保持時間は1〜3分であると粒子32,33に樹脂34が被覆される時間として適当である。3分より長いと、炭素に比べて比重が低い樹脂37が流れだし、カーボン層12の上部に集まることで、結果的にカーボン層12の下部の樹脂比率が低下し、金属層11との接着性が低下、導電性が低下することにより、接触抵抗が悪化する。1分より短いと樹脂34が粒子間に流れ出さず、連通孔35が発生しやすくなる。
・第二工程:第一工程の後、熱硬化性樹脂34の熱硬化温度±10℃の温度、1.0〜3.0MPaの圧力で、10〜30分、カーボン層12のプレスを行う。熱硬化温度でプレスすることで、樹脂34の硬化を進めることができる。上記温度範囲より温度が低いと硬化が進まず、流動性を保ったままプレスするために粒子間の閉空孔36も埋めてしまいセパレータ5のフレキシブル性が低下する。また、熱硬化温度よりも高い温度でプレスすると、硬化が進みすぎてカーボン層12のフレキシブル性が低下する。
また、プレス圧力は上記範囲であると、膨張黒鉛32の粒子内空隙37を高めたまま、プレスすることができるため、フレキシブル性に富むセパレータ5を提供できる。プレス圧力が低いと粒子間の接着がうまくいかず、セパレータ5の導電性が欠如する。また、プレス圧が高いと粒子内空隙37及び粒子間の閉空孔36が潰れてフレキシブル性が低下する。
保持時間は10分未満であると樹脂の硬化が十分でなく、粒子間が接着せずに機械的強度が低下し、衝撃を加えられた際に、カーボン層12の形態をなさなくなる。また、30分を超えると樹脂34の硬化が進みすぎて、カーボン層12のフレキシブル性が損なわれる。
(熱可塑性樹脂を使用する場合)
上記のような配合割合にて調製された原料の粉末混合物30を、金型103に入れて、以下の第一および第二工程を経ることにより、0.4〜2.0mmの厚さのカーボン層12を得る。
・第一工程:熱可塑性樹脂34の融点〜融点+20℃の温度、0〜0.5MPaの圧力で、1〜3分、カーボン層12のプレスを行う。
この温度範囲であれば熱可塑性樹脂34が溶融し、粒子32,33の被覆、および、粒子間隙への流れ込みが容易となる。この温度範囲より低いと溶融が十分でないため、粒子32,33の被覆、および、粒子間への流れ出しが起こらず、連通孔35の発生が起きてしまい、耐食性が低下する。また、この温度範囲よりも高い温度であると、溶融物の粘度が下がり、粒子間隙への流れ込みが激しくなり、粒子間の閉空孔36も埋めてしまい、フレキシブル性が低下する。
また、プレスの圧力が0〜0.5MPaの範囲内であれば、膨張黒鉛32の粒子内間隙37を維持しながら、粒子間の空隙36を埋めることが出来る。0.5MPaより大きいと膨張黒鉛32の粒子内間隙37を維持することが難しくなる。ここで、第一工程の0Paとは、プレス圧を掛けない場合のことを意味する。
保持時間は1〜3分であると粒子32,33に樹脂34が被覆される時間として適当である。3分より長いと粒子間への流れ込みが起きすぎて粒子間の閉空孔36も埋めてしまう。1分より短いと樹脂34が粒子間に流れ出さず、連通孔35が発生しやすくなる。
・第二工程:第一工程の後、融点より20〜30℃低い温度、1.0〜3.0MPaの圧力で、10〜30分、カーボン層12のプレスを行う。
この温度範囲でプレスすることで熱可塑性樹脂34の結晶化度をある程度高めることができ、強度が高いセパレータ5を提供できる。当該温度範囲より高いと融点に近づくため、1段目プレスで作った粒子間の閉空孔36も樹脂34で埋めてしまいフレキシブル性が低下する。また、この温度範囲より低いと樹脂34の結晶化が進まず、強度が低下する。
また、プレス圧力は上記範囲であると、膨張黒鉛32の粒子内空隙37を高めたまま、プレスすることができるため、フレキシブル性に富むセパレータ5を提供できる。プレス圧力が低いと粒子間の接着がうまくいかず、導電性が欠如する。また、プレス圧が高いと粒子内空隙37および粒子間の閉空孔36が潰れてフレキシブル性が低下する。
保持時間は10分未満であると粒子間が接着せずに機械的強度が低下し、衝撃を加えられた際に、カーボン層12の形態をなさなくなる。また、30分を超えると樹脂34の結晶性が進みすぎて脆化し、カーボン層12のフレキシブル性が低下する。また、粒子間の閉空孔36も樹脂が埋めてしまい、フレキシブル性が低下する。
また、樹脂粉末34として熱可塑性樹脂を使用する場合、以下のプロセスも適用できる。
・第一工程:融点+20℃〜+30℃の温度に加熱しながら膨張黒鉛32、黒鉛粒子33および樹脂粉末34を混練し、膨張黒鉛32および黒鉛粒子33の表面に樹脂コーティング層34を形成する。
・第二工程:樹脂コーティングした膨張黒鉛32および黒鉛粒子33を、樹脂34とともに融点より10〜20℃低い温度に加熱し、1.0〜3.0MPaの圧力で、10〜30分プレスし、連通孔35の発生を防ぐ。
上記の方法で製造可能なカーボン層12を含む、金属−炭素複合構造の燃料電池用セパレータ5を製造する方法について説明する。
本発明のセパレータ5は、上記カーボン層12を製造する際に、金属層11も一緒に加熱加圧(ホットプレス)して製造する。例えば、膨張黒鉛32、黒鉛粒子33および樹脂粉末34を金型103に入れ、接着剤を塗布した金属層11を入れた後に、両面にカーボン層12を設ける場合には、さらに膨張黒鉛32、黒鉛粒子33および樹脂粉末34を入れて、上記の1段目のプレスを行う。その後、2段目のプレスを行い、セパレータ5の成型体を形成する。接着剤は、金属層11の表面に塗布したり、金属層11に塗布する代わりにカーボン層12の表面に塗布したり、金属層11およびカーボン層12の両部材に塗布したりしてもよい。図1のように金属層が矩形となっており、その形状に合わせてカーボン層が矩形の形状になる場合もあるが、セパレータには様々な形状があり、平板の金属層の上に凹凸形状が付与されたカーボン層が形成されたセパレータも存在する。
ホットプレスの際、雄型101および/または雌型102の加圧面に所定の形状、例えばセパレータ5の溝形状に対応した形状を施しておくことで、セパレータ5のカーボン層12にガス供給排出用溝6a,6c等として機能する凹凸を、反転して形成することができる。すなわち、金属層11およびカーボン層12の積層体の成形と、積層体のカーボン層12に対する溝成形とを同時に行うことができる。
フレキシブル性の評価として、カーボン層12の曲げ歪みが1.0%以上で割れが無く、曲げ歪みが1.0%以上でカーボン層が金属層から剥がれないと実用材として良好であると判断した。割れが発生すると、割れた箇所から腐食液が金属層11に浸漬して、金属層11が劣化する。その結果、耐食性試験後の接触抵抗が著しく悪化してしまう。また、カーボン層12と金属層11が接着しなかった場合、セパレータ5の接触抵抗が耐食性試験前であっても大きくなってしまう。金属層11とカーボン層12の金属−炭素複合材とした場合には、曲げ歪みの値が大きくなり、強度が約1.5〜2.0倍大きくなる。
実施例および比較例において、膨張黒鉛32は以下のようにして製造した。まず、鱗片状の黒鉛粒子を硫酸と硝酸の混合液中で、16時間撹拌した。鱗片状黒鉛粒子には伊藤黒鉛工業製Z-5F(粒径5μm)、伊藤黒鉛工業製Z-25(粒径25μm)、伊藤黒鉛工業製Z-100(粒径60μm)、伊藤黒鉛工業製XD-100(粒径250μm)を使用した。粒度を変更させることで膨張黒鉛32の膨張化度を変化させた。次に、得られた黒鉛粒子を蒸留水で洗浄し、続いて1000℃の電気炉中で15秒間熱処理した。レーザー回折式粒度分布測定装置(Malvern製、商品名:MasterSizer2000)を用いて粒度を測定し、所定の粒度でない場合は風力分級装置(日鉄鉱業株式会社製、EJ-LABO)にかけ所望の粒度のものだけを抽出した。
こうして、使用する鱗片状黒鉛粒子の粒度を変化させ、所望の膨張化度の膨張黒鉛32を得た。
黒鉛粒子33としては、伊藤黒鉛工業社製 球状黒鉛SGBH(粒径20μm)、伊藤黒鉛工業社製 球状黒鉛SG-BL40(粒径40μm)を使用した。粒度はフリッチュ社製の遊星ボールミル(プレミアムラインP-7)で300rpm×15分で粉砕後、風力分級装置(日鉄鉱業株式会社製、EJ-LABO)にかけ所望の粒度のものだけを抽出した。
樹脂粉末34として、熱硬化性樹脂はリグナイト株式会社製 フェノール樹脂(商品名:LPS-50S、硬化温度180℃)を使用し、熱可塑性樹脂は株式会社セイシン企業製ポリプロピレン樹脂(PP)、(商品名:PPW-5、融点160℃)を使用した。
上記の膨張黒鉛32、黒鉛粒子33および樹脂粉末34を所定の割合となるように混合し、プレス装置100の金型内に充填後、接着剤を塗布した金属板11を上記混合粉末の上に積層した後、さらに混合粉末を金属層11の上にのせて以下の条件でプレスしてセパレータ5を製造した。この時、1.0cmピッチで深さ0.1mm×幅0.5mmの溝が形成されるように、金型を選定した。
金属箔(金属層)11の金属種は、Tiとした。
炭素粉末31と樹脂粉末34の体積比、膨張黒鉛32の膨張化度、カーボン層12に含まれる膨張黒鉛32と膨張黒鉛32以外の黒鉛33を含む炭素粒子全体に対する膨張黒鉛32の体積比率、カーボン層に含まれる膨張黒鉛32の平均粒径、および、カーボン層12に含まれる膨張黒鉛32以外の黒鉛33の平均粒径を変化させた。粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(Malvern製、商品名:MasterSizer2000)を用いて測定した。この時、D50(累積50質量%粒径)の値を平均粒径とした。
カーボン層12のISO透気度の値は、ガーレー試験機20によるガーレー試験(JIS P 8117)によって求めた。また、透気度を求める際、使用する樹脂、プレス条件はカーボン−金属複合体を形成する際のものと同様にしてカーボン層12のみ作製した。試験片には5cm×5cmのガス流路となる溝が形成されていないカーボン層(平板)12を使用した。
JISに準拠するため、試験片の厚さは0.7〜1mmとした。本発明のセパレータ5では、カーボン層12の厚さを0.4〜2.0mmとしているが、試験片の厚さの場合と相関関係がとれていることを確認した。
カーボン層12に存在する粒子間の閉空孔36と空孔37の体積の割合(空孔度)は、使用する黒鉛31および樹脂34の真比重とサンプルの密度から計算によって求めた。
曲げ強度の測定は、カーボン層12から幅5.0mm×長さ50.0mm(厚み約1mm程度)の大きさの試験片を切り出し、JIS K7171に準拠して応力−歪み曲線を測定し、歪みが1.0%の時に試験片が破壊するかしないかを調べ、1.0%歪みで破壊しない場合は良好であるとして「○」、1.0%歪みで破壊した場合は実用できないとして「×」とした。
耐食性試験は、サンプルに対して、2ppmのFイオンを含んだ80℃のpH3の硫酸溶液中にて4日間浸漬して行う。
耐食性試験後の接触抵抗を測定した。まず、カーボン層12から長さ17〜20mm、幅3〜5mmの試験片を切り出し、試験材Sとした。試験材Sとカーボンペーパ(東レ株式会社:商品名「TG-P-H-120」)301と重ね、これを2つの金メッキ銅製金具302を用いて所定の圧力(1MPa)で挟み込む。2つの金メッキ銅製金具302の間に、試験材S/カーボンペーパ301の接触面積値(単位:cm2)と同じ値の直流電流(単位:A)を電源303により流して、金メッキ銅製金具302/カーボンペーパ301/試験材Sの接続部に生じる電圧降下(単位:mΩ・cm2)を測定し、これを接触抵抗とした。接触抵抗が10mΩ・cm2未満である場合は良好であるとして「○」、10mΩ・cm2以上20mΩ・cm2未満である場合は改良が必要であるとして「△」、20mΩ・cm2以上である場合は実用できないとして「×」とした。
1.0%歪み曲げ強度および耐食性試験後の接触抵抗の両方が「○」である場合は実用できるとして総合評価を「○」、曲げ強度は「○」であるが接触抵抗が「△」である場合は比較的良好であるとして総合評価を「△」、曲げ強度と接触抵抗のいずれか1つでも「×」である場合は実用できないとして総合評価を「×」とした。
<実施例1〜15および比較例1〜17>
表1に、本発明に係る燃料電池用セパレータの評価結果と比較例を示す。
実施例1〜15における2段階プレスの場合、樹脂としてフェノール樹脂(熱硬化性樹脂、熱硬化温度180℃)を用い、温度100℃、圧力0.3MPa、時間2分でプレス後、温度100℃、圧力2.0MPa、時間20分でプレスした。
1段目プレスを行わず、2段目プレス圧力が大きい比較例1は、カーボン層の空孔度が21%未満であり、総合評価が「×」であった。同じく1段目プレスを行わず、2段目プレス圧力を抑えた比較例2は、ISO透気度が0.1μm/(Pa・s)よりも大きく、総合評価が「×」であった。
炭素粉末(炭素粒子)31と樹脂34の体積比が炭素粉末:樹脂粉末=6:4〜9:1である実施例1〜3は、カーボン層12に存在する粒子間の閉空孔36と空孔37の体積の割合(カーボン層12の空孔度)が21〜41%であり、ISO透気度が0〜0.1μm/(Pa・s)であり、1.0%歪み曲げ強度と耐食性試験後の接触抵抗の両方の評価結果が良好であり、総合評価が「○」であった。炭素粉末の割合を大きくした比較例3〜4は、カーボン層12の空孔度が41%よりも大きく、ISO透気度が0.1μm/(Pa・s)よりも大きくなり、総合評価が「△」または「×」であった。炭素粉末の割合を小さくした比較例6は、カーボン層12の空孔度が21%よりも小さく、総合評価が「×」であった。
カーボン層12の厚みが0.4〜2.0mmの範囲内である実施例4および5は総合評価が「○」であり、該範囲外である比較例7および8は、1.0%歪み曲げ強度が「×」であり、総合評価が「×」であった。
炭素粉末31に含まれる膨張黒鉛32の容積の膨張化度が100〜400である実施例6〜8は、総合評価が「○」であった。膨張化度が100よりも小さい比較例9は、カーボン層12の空孔度が21%よりも小さく、総合評価が「×」であった。膨張化度が400よりも大きい比較例10は、カーボン層12の空孔度が41%よりも大きく、ISO透気度が0.1μm/(Pa・s)よりも大きくなり、総合評価が「△」であった。
カーボン層12に含まれる膨張黒鉛32の体積比率が炭素粒子全体に対して6〜55%である実施例9および10は、ISO透気度を低く抑えつつ、空孔度が大きくなり、優れたフレキシブル性と耐食性を両立し、総合評価が「○」であった。該体積比率が6%よりも小さい比較例11は、カーボン層12の空孔度が21%よりも小さく、総合評価が「×」であった。該体積比率が55%よりも大きい比較例12は、カーボン層12の空孔度が41%よりも大きく、ISO透気度が0.1μm/(Pa・s)よりも大きくなり、総合評価が「×」であった。
カーボン層12に含まれる膨張黒鉛32の粒径が0.1〜10μmであり、カーボン層12に含まれる膨張黒鉛32以外の黒鉛33の粒径が1〜25μmである実施例11〜15は、カーボン層12内に粒子が充填しやすく、粒子間の閉空孔36と連通孔35を制御しやすくすることで、優れたフレキシブル性と耐食性を両立し、総合評価が「○」であった。黒鉛33の粒径が1μmよりも小さい比較例13は、カーボン層12の空孔度が41%よりも大きく、ISO透気度が0.1μm/(Pa・s)よりも大きくなり、総合評価が「×」であった。黒鉛33の粒径が25μmよりも大きい比較例14はISO透気度が0.1μm/(Pa・s)よりも大きくなり、同じく比較例15は、カーボン層12の空孔度が41%よりも大きく、ISO透気度が0.1μm/(Pa・s)よりも大きくなり、それぞれ総合評価が「×」であった。膨張黒鉛32の粒径が0.1μmよりも小さい比較例16は、カーボン層12の空孔度が21%よりも小さく、該粒径が10μmよりも大きい比較例17は、カーボン層12の空孔度が41%よりも大きくなり、それぞれ総合評価が「×」であった。
<実施例16〜27および比較例18〜28>
実施例16〜27および比較例18〜28では、樹脂としてフェノール樹脂(熱硬化性樹脂)を用い、1段目プレスおよび2段目プレスのそれぞれの圧力、温度、時間を変化させてセパレータ5を作製した。
表2に、本発明に係る燃料電池用セパレータの評価結果と比較例を示す。
熱硬化性樹脂の熱硬化温度(180℃)より80〜100℃低い温度、0〜0.5MPaの圧力で、1〜3分、カーボン層12の1段目プレスを行い、熱硬化性樹脂の熱硬化温度±10℃の温度、1.0〜3.0MPaの圧力で、10〜30分、カーボン層12の2段目プレスを行った実施例1および16〜27は、カーボン層12の厚みが0.40〜2.0mmであり、カーボン層12の空孔度が21〜41%であり、ISO透気度が0〜0.1μm/(Pa・s)であり、1.0%歪み曲げ強度と耐食性試験後の接触抵抗の両方の評価結果が良好となり、総合評価が「○」であった。
1段目プレス圧力が0.5MPaよりも大きい比較例18は、カーボン層12の厚みが0.4mmよりも小さく、カーボン層12の空孔度が21%よりも小さくなり、総合評価が「×」であった。
1段目プレス温度が熱硬化性樹脂の熱硬化温度(180℃)より80〜100℃低い温度の範囲外である比較例19および20は、カーボン層12の空孔度が41%よりも大きく、ISO透気度が0.1μm/(Pa・s)よりも大きくなり、総合評価が「×」であった。
1段目プレスの保持時間が1〜3分の範囲外である比較例21および22は、カーボン層12の空孔度が41%よりも大きく、ISO透気度が0.1μm/(Pa・s)よりも大きくなり、総合評価が「×」であった。
2段目プレス圧力が1.0MPaよりも小さい比較例23は、カーボン層12の空孔度が41%よりも大きくなり、総合評価が「×」であった。2段目プレス圧力が3.0MPaよりも大きい比較例24は、カーボン層12の厚みが0.4mmよりも小さく、カーボン層12の空孔度が21%よりも小さくなり、ISO透気度が0.1μm/(Pa・s)よりも大きくなって、総合評価が「×」であった。
2段目プレス温度が熱硬化性樹脂の熱硬化温度±10℃の温度よりも低い比較例25は、カーボン層12の空孔度が21%よりも小さく、総合評価が「×」であった。2段目プレス温度が熱硬化性樹脂の熱硬化温度±10℃の温度よりも高い比較例26は、カーボン層12の厚みが0.4mmよりも小さく、カーボン層12の空孔度が21%よりも小さくなり、総合評価が「×」であった。
2段目プレスの保持時間が10分よりも短い比較例27は、カーボン層12の空孔度が21%よりも小さく、総合評価が「×」であった。2段目プレスの保持時間が30分よりも長い比較例28は、カーボン層12の厚みが0.4mmよりも小さく、カーボン層12の空孔度が21%よりも小さくなり、総合評価が「×」であった。
<実施例28〜40および比較例29〜39>
実施例28〜40および比較例29〜39では、樹脂としてポリプロピレン(熱可塑性樹脂、融点160℃)を用い、1段目プレスおよび2段目プレスのそれぞれの圧力、温度、時間を変化させてセパレータ5を作製した。
表3に、本発明に係る燃料電池用セパレータの評価結果と比較例を示す。
熱可塑性樹脂の融点(160℃)〜融点+20℃の温度、0〜0.5MPaの圧力で、1〜3分、カーボン層の12の1段目プレスを行い、熱可塑性樹脂の融点より10〜20℃低い温度、1.0〜3.0MPaの圧力で、10〜30分、カーボン層12の2段目プレスを行った実施例28〜40は、カーボン層12の厚みが0.40〜2.0mmであり、カーボン層12の空孔度が21〜41%であり、ISO透気度が0〜0.1μm/(Pa・s)であり、1.0%歪み曲げ強度と耐食性試験後の接触抵抗の両方の評価結果が良好となり、総合評価が「○」であった。
1段目プレス圧力が0.5MPaよりも大きい比較例29は、カーボン層12の厚みが0.4mmよりも小さく、カーボン層12の空孔度が21%よりも小さくなり、総合評価が「×」であった。
1段目プレス温度が熱可塑性樹脂の融点(160℃)〜融点+20℃の温度の範囲よりも低い温度である比較例30は、カーボン層12の空孔度が41%よりも大きく、ISO透気度が0.1μm/(Pa・s)よりも大きくなり、総合評価が「×」であった。1段目プレス温度が該温度の範囲よりも高い温度である比較例31は、カーボン層12の空孔度が21%よりも小さくなり、総合評価が「×」であった。
1段目プレスの保持時間が1分よりも短い比較例32は、カーボン層12の空孔度が41%よりも大きく、ISO透気度が0.1μm/(Pa・s)よりも大きくなり、総合評価が「×」であった。1段目プレスの保持時間が3分よりも長い比較例33は、カーボン層12の空孔度が21%よりも小さくなり、総合評価が「×」であった。
2段目プレス圧力が1.0MPaよりも小さい比較例34は、カーボン層12の空孔度が41%よりも大きくなり、総合評価が「×」であった。2段目プレス圧力が3.0MPaよりも大きい比較例35は、カーボン層12の厚みが0.4mmよりも小さく、カーボン層12の空孔度が21%よりも小さくなり、ISO透気度が0.1μm/(Pa・s)よりも大きくなって、総合評価が「×」であった。
2段目プレス温度が熱可塑性樹脂の融点より10〜20℃低い温度よりも低い比較例36は、ISO透気度が0.1μm/(Pa・s)よりも大きくなって、総合評価が「×」であった。2段目プレス温度が熱可塑性樹脂の融点より10〜20℃低い温度よりも高い比較例37は、カーボン層12の厚みが0.4mmよりも小さく、カーボン層12の空孔度が21%よりも小さくなり、総合評価が「×」であった。
2段目プレスの保持時間が10分よりも短い比較例38は、カーボン層12の空孔度が41%よりも大きく、総合評価が「×」であった。2段目プレスの保持時間が30分よりも長い比較例39は、カーボン層12の空孔度が21%よりも小さくなり、総合評価が「×」であった。
5 燃料電池用セパレータ
11 金属層(金属箔)
12 カーボン層
20 ガーレー試験機
31 炭素粉末(炭素粒子)
32 膨張黒鉛
33 黒鉛粒子(黒鉛)
34 樹脂(樹脂粒子,樹脂粉末,熱硬化性樹脂,熱可塑性樹脂)
36 粒子間の閉空孔(カーボン層に存在する空孔)
37 膨張黒鉛内の空孔(カーボン層に存在する空孔)

Claims (5)

  1. 金属箔の両面又は片面に、炭素粉末と樹脂を体積比で炭素粉末:樹脂粉末=6:4〜9:1にて配合した厚さ0.4〜2.0mmのカーボン層を有する燃料電池用セパレータであって、
    該カーボン層に存在する空孔の体積の割合が21〜41%であり、
    該カーボン層のガーレー試験機による透気度測定において求められるISO透気度の値が0〜0.1μm/(Pa・s)であることを特徴とする燃料電池用セパレータであって、
    前記炭素粉末には容積の膨張化度が100〜400である膨張黒鉛が配合され、
    前記カーボン層に含まれる前記膨張黒鉛の体積比率が炭素粒子全体に対して6〜55%である燃料電池用セパレータ。
  2. 前記カーボン層に含まれる膨張黒鉛の粒径が0.1〜10μmであり、
    前記カーボン層に含まれる膨張黒鉛以外の黒鉛の粒径が1〜25μmである請求項記載の燃料電池用セパレータ。
  3. 金属箔の両面又は片面に、炭素粉末と熱硬化性樹脂を体積比で炭素粉末:樹脂粉末=6:4〜9:1にて配合した厚さ0.4〜2.0mmのカーボン層を設ける請求項1記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、前記炭素粉末が、容積の膨張化度が100〜400である膨張黒鉛を6〜55体積%含むものであり、
    該カーボン層の製造方法が、
    前記熱硬化性樹脂の熱硬化温度より80〜100℃低い温度、0〜0.5MPaの圧力で、1〜3分、該カーボン層のプレスを行う第一工程と、
    第一工程の後、前記熱硬化性樹脂の熱硬化温度±10℃の温度、1.0〜3.0MPaの圧力で、10〜30分、カーボン層のプレスを行う第二工程と
    を有することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
  4. 金属箔の両面又は片面に、炭素粉末と熱可塑性樹脂を体積比で炭素粉末:樹脂粉末=6:4〜9:1にて配合した厚さ0.4〜2.0mmのカーボン層を設ける請求項1記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、前記炭素粉末が、容積の膨張化度が100〜400である膨張黒鉛を6〜55体積%含むものであり、
    該カーボン層の製造方法が、
    前記熱可塑性樹脂の融点〜融点+20℃の温度、0〜0.5MPaの圧力で、1〜3分、該カーボン層のプレスを行う第一工程と、
    第一工程の後、前記熱可塑性樹脂の融点より10〜20℃低い温度、1.0〜3.0MPaの圧力で、10〜30分、カーボン層のプレスを行う第二工程と
    を有することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
  5. 原料の前記炭素粉末が、粒径が0.1〜10μmの膨張黒鉛と粒径が1〜25μmの黒鉛からなるものである請求項3又は4記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
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