JPWO2014136868A1 - 光学活性アルデヒドの製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、一般式(2)で表される特定のアリルアルコールを、ルテニウム錯体と塩基の存在下で、不斉異性化することにより、一般式(1)で表される特定の光学活性アルデヒドを、簡単かつ少ない工程で製造する方法に関する。【化1】

Description

本発明は、光学活性アルデヒドの製造方法に関するものである。より詳細には、医薬品、農薬、機能性材料、香粧品、各種化学品或いはその原料や合成中間体として有用な光学活性アルデヒドを高い光学純度で、高収率にしかも効率よく製造できる新規な製造方法に関するものである。
従来より、アリルアルコールを不斉異性化して光学活性アルデヒドとする方法としては、非特許文献1〜4に記載された遷移金属錯体を用いた方法が知られている。しかしながら、これらの方法は、触媒活性が低く、得られた光学活性アルデヒドの光学純度も十分に満足できるものではなかった。
また、非特許文献5〜16に記載されたロジウム、ルテニウム等の遷移金属錯体を用いた方法が知られている。しかしながら、これらの方法は、基質特異性が高く、汎用的な方法であるとはいえなかった。
このため、従来より、光学活性アルデヒドを製造するための一般性の高い、しかも高選択的、高収率で製造できる、新しい合成方法の実現が望まれていた。
J.Organomet.Chem.,2002,650,1〜24 Chem.Rev.,2003,103,27〜51 Modern Rhodium−Catalyzed Organic Reactions(Ed.:P.A.Evans),Wiley−VCH,Weinheim,2005,79〜91 Chem.Lett.,2011,40,341〜344 J.Am.Chem.Soc.,2000,122,9870〜9871 J.Org.Chem.,2001,66,8177〜8186 Gazz.Chim.Ital.,1976,106,1131〜1134 Pure Appl.Chem.,1985,57,1845〜1854 Helv.Chim.Acta,2001,84,230〜242 Tetrahedron Lett.,2006,47,5021〜5024 Angew.Chem.Int.Ed.,2009,48,5143〜5147 Chem.Commun.,2010,46,445〜447 Chem.Eur.J.,2010,16,12736〜12745 Angew.Chem.Int.Ed.,2011,50,2354〜2358 Synthesis,2008,2547〜2550 Chem.Eur.J.,2011,17,11143〜11145
本発明の目的は、上記の課題を解決するものとして、アリルアルコールを、ルテニウム錯体と塩基の存在下に不斉異性化することを特徴とする光学活性アルデヒドの製造方法を提供する。
すなわち、本発明は、簡単で工程数が少なく、高い光学純度で、より安価、高収率で光学活性アルデヒドを製造することを可能とするものである。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[3]に関するものである。
[1] 式(1)
Figure 2014136868
(式(1)中、R及びRは、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい3〜8員環の脂環式基、置換基を有していてもよい炭素数6〜15のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基からなる群から選択され、ただし、R及びRは、互いに異なる基である。*は、不斉炭素原子である。)
で表される光学活性アルデヒドの製造方法であって、
式(2)
Figure 2014136868
(式(2)中、R及びRは、前記と同義である。)
で表されるアリルアルコールを、ルテニウム錯体と塩基の存在下に不斉異性化することを特徴とする、製造方法。
[2]前記不斉異性化を、下記一般式(3)
[Ru (3)
(式(3)中、Lは、光学活性ホスフィン配位子であり;Wは、水素原子、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アリール基、ジエン又はアニオンであり;Uは、水素原子、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アリール基、ジエン、アニオン又はL以外の配位子であり;Zは、アニオン、アミン又は光学活性含窒素化合物であり;m、n及びrは各々独立に1〜5の整数であり、p、q及びsは各々独立に0〜5の整数であり、p+q+sは1以上である。)
で表されるルテニウム錯体を用いて行なうことを特徴とする、上記[1]に記載の製造方法。
[3]前記塩基が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩若しくは四級アンモニウム塩であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の製造方法。
本発明は、医薬品、農薬、機能性材料、香粧品、各種化学品或いはその原料や合成中間体として有用な光学活性アルデヒドを、簡単で工程数が少なく、高い光学純度で、より安価、高収率で光学活性アルデヒドを製造する方法であって、工業的に有利なものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の光学活性アルヒデドを製造する方法は、以下に示される反応にしたがって、行われる。
Figure 2014136868
(式(1)及び式(2)中、R及びRは、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい3〜8員環の脂環式基、置換基を有していてもよい炭素数6〜15のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基からなる群から選択される。ただし、R及びRは、互いに異なる基である。*は、不斉炭素原子である。)
すなわち、アリルアルコール(2)を、ルテニウム錯体と塩基の存在下で、不斉異性化することによって光学活性アルデヒド(1)が得られる。
本発明の光学活性アルデヒド(1)を製造するための原料である下記一般式(2)で表されるアリルアルコール(2)について説明する。
Figure 2014136868
一般式(2)中、R及びRは、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい3〜8員環の脂環式基、置換基を有していてもよい炭素数6〜15のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基からなる群から選択される。ただし、R及びRは、互いに異なる基である。
一般式(2)中のR及びRで表される炭素数1〜20のアルキル基としては、炭素数1〜15のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イイソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等を例示することができる。
一般式(2)中のR及びRで表される炭素数2〜20のアルケニル基としては、炭素数2〜15のアルケニル基が好ましい。具体的には、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブチニル基、2−メチルアリル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、エイコセニル基、4−メチル−3−ペンテニル基、4,8−ジメチル−3,7−ノナジエニル基等を例示することができる。
一般式(2)中のR及びRで表される3〜8員環の脂環式基としては、5〜7員環の脂環式基が好ましい。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等を例示することができる。
一般式(2)中のR及びRで表されるアリール基としては、炭素数6〜15の、芳香族単環式基、芳香族多環式基又は芳香族縮合環式基が好ましい。具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントニル基、フェナントリル基、インデニル基、ビフェニル基等を例示することができる。さらに、フェロセニル基等のメタロセニル基も例示することができる。
一般式(2)中のR及びRで表されるアラルキル基としては、炭素数7〜20のアラルキル基が好ましい。具体的には、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等を例示することができる。
ここで、前記一般式(2)のR及びRで表される炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、3〜8員環の脂環式基、炭素数6〜15のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アラアルキル基、脂環式基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、トリ置換オルガノシリル基、オキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、置換アミノ基、複素環基、ニトロ基等が挙げられる。
ここで置換基としてのアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基などの炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。
置換基としてのアリール基としては、例えば、フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基又はビフェニル基などの炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。
置換基としてのアラルキル基としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、α−ナフチルメチル基又はβ−ナフチルメチル基などの炭素数7〜12のアラルキル基が挙げられる。
置換基としての脂環式基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基又はシクロオクチル基などの炭素数5〜8の脂環式基が挙げられる。
置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子などが挙げられる。
置換基としてのアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基又はtert−ブトキシ基などの炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。
置換基としてのトリ置換オルガノシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、ジメチル(2,3−ジメチル−2−ブチル)シリル基、tert−ブチルジメチルシリル基又はジメチルヘキシルシリル基などの、トリアルキルシリル基が好ましく、アルキル基部分の炭素数は1〜6であることが好ましい。
置換基としてのオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、などの炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基や、フェノキシカルボニル基などの炭素数6〜11のアリールオキシカルボニル基が挙げられる。
置換基としてのアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピロニル基、n−ブロイル基、イソブチロイル基、ベンゾイル基などの炭素数1〜8のアシル基が挙げられる。
置換基としてのアシルオキシ基としては、ホルミルオキシ基、アシルオキシ基、プロピオニルオキシ基、n−ブチロイルオキシ基、イソブチロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などの炭素数1〜8のアシルオキシ基が挙げられる。
置換基としての置換アミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ピペリジル基などの炭素数1〜12のアルキル基が置換したジアルキルアミノ基が挙げられる。
置換基としての複素環基としては、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基が挙げられ、脂肪族複素環基としては、例えば、炭素数2〜14で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個含んでいる3〜8員環、好ましくは5又は6員の単環、多環又は縮合環式等の脂肪族複素環基が挙げられる。異種原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子が挙げられる。
脂肪族複素環基の具体例としては、例えば、オキシラニル基、アジリジニル基、2−オキソピロリジル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基等が挙げられる。
一方、芳香族複素環基としては、例えば、ヘテロ原子を少なくとも1個、好ましくは1〜3個含んでいる、炭素数2〜15の5〜8員環、好ましくは5又は6員の単環、多環又は縮合環式等の芳香族複素環(ヘテロアリール)基等が挙げられる。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子等が挙げられる。
芳香族複素環基の具体例としては、テトラジニル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリニジル基、ピラジニル基、ピラダジニル基、イミダゾイル基、オキサゾイル基、チアゾイル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、ナフチリジニル基、シンノリニル基、ベンゾイミダゾリン基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基等を例示することができる。
本発明の一般式(2)で表されるアリルアルコール(以下、「アリルアルコール(2)」と称する場合もある。)としては、具体的には次の化合物を例示することができる。
3−メチル−2−ペンテノール、3−メチル−2−ヘキセノール、3−メチル−2−ヘプテノール、3−メチル−2−オクテノール、3−メチル−2−ノネノール、3−メチル−2−デセノール、3−エチル−2−ヘプテノール、3−エチル−2−オクテノール、3−エチル−2−ノネノール、3−エチル−2−デセノール、3−フェニル−4−メチル−2−ペンテノール、3−(4−メチルフェニル)−4−メチル−2−ペンテノール、3−(4−メトキシフェニル)−4−メチル−2−ペンテノール、3−(4−クロロフェニル)−4−メチル−2−ペンテノール、3−(2−ナフチル)−4−メチル−2−ペンテノール、3−フェニル−3−シクロヘキシル−2−プロペノール、3−フェニル−2−ペンテノール、3−フェニル−2−ブテノール、3−トリフロロメチル−3−フェニル−2−プロペノール、3−シクロヘキシル−2−ブテノール、ゲラニオール((E)−3,7−ジメチル−2,6−オキタジエン−1−オール)、ネロール((Z)−3,7−ジメチル−2,6−オキタジエン−1−オール)、ファルネソール(3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエン−1−オール)等を挙げられる。
これらはいずれも、その分子内に二重結合が存在するため、(E)−体および(Z)−体の幾何異性体が存在するが、本発明で行われる不斉異性化反応に用いる場合は、(E)−体および(Z)−体を単独で用いられる。
本発明の方法は、一般式(2)で表されるアリルアルコールを、ルテニウム錯体と塩基の存在下にて、不斉異性化することにより、一般式(1)で表される光学活性アルデヒドを製造する。
本発明で行われる不斉異性化反応に用いるルテニウム錯体としては、ルテニウムと配位子からなる錯体が好ましく用いられ、配位子が不斉配位子であることが好ましいが、配位子以外の他の構成成分が光学活性体であってもよい。
本発明で用いられる不斉配位子は、光学活性部位を有し、光学活性な化合物であって、不斉配位子として使用可能なものであれば何れも挙げられる。前記不斉配位子としては、例えば、Catalytic Asymmetric Synthesis(Wiley−VCH,2000)、Handbook of Enantioselective Catalysis with Transition Metal Complex(VCH,1993)、ASYMMETRIC CATALYSIS IN ORGANIC SYNTHESIS(John Wiley & Sons Inc.(1994))、国際公開第2005/070875号等に記載されている不斉配位子が挙げられる。
より具体的に説明すると、本発明で用いられる不斉配位子は、例えば、単座配位子、二座配位子、三座配位子、四座配位子等が挙げられる。例えば、光学活性ホスフィン化合物、光学活性アミン化合物、光学活性アルコール化合物、光学活性硫黄化合物、光学活性カルベン化合物等が挙げられる。好ましくは、光学活性ホスフィン化合物が挙げられる。
光学活性ホスフィン化合物としては、次の一般式(5);
Figure 2014136868
[式(5)中、R〜Rは各々独立に置換基を有していてもよい芳香族基又は炭素数3〜10のシクロアルキル基を示すか、あるいはRとR、RとRは各々互いに隣接するリン原子と一緒になって複素環を形成していてもよく;R10及びR11は各々独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ジ(炭素数1〜5アルキル)アミノ基、5〜8員の環状アミノ基又はハロゲン原子を示し;R12は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ジ(炭素数1〜5アルキル)アミノ基、5〜8員の環状アミノ基又はハロゲン原子を示し;また、R10とR11、R11とR12は各々互いに一緒になって、縮合ベンゼン環、縮合置換ベンゼン環、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基又はトリメチレンジオキシ基を形成してもよい)]
で表される光学活性二座ホスフィン配位子が挙げられる。
この一般式(5)において、R〜Rは各々独立に置換基を有していてもよい芳香族基又は炭素数3〜10のシクロアルキル基を示すか、あるいはRとR、RとRは互いに隣接するリン原子と一緒になって複素環を形成していてもよい。
置換基を有していてもよい芳香族基において、芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、フェナンスリル基等の炭化水素系芳香族基;ピロリル基、ピリジル基、ピラジル基、キノリル基、イソキノリル基、イミダゾリル基等の複素系芳香族基等が挙げられる。
ここで置換基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数1〜12のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素数1〜4の低級アルコキシ基;フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、ファナンスリル基等のアリール基;ベンジル基、α−フェニルエチル基、β−フェニルエチル基、α−フェニルプロピル基、β−フェニルプロピル基、γ−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等の炭素数7乃至13のアラルキル基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、ジメチル(2,3−ジメチル−2−ブチル)シリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、ジメチルヘキシルシリル基等のトリ−炭素数1〜6アルキルシリル基、ジメチルクミルシリル基等のジ−炭素数1〜6アルキル−炭素数6〜18アリールシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基等のジ−炭素数6〜18アリール−炭素数1〜6アルキルシリル基、トリフェニルシリル基等のトリ−炭素数6〜18アリールシリル基、トリベンジルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基等のトリ−炭素数7〜19アラルキルシリル基等のトリ置換オルガノシリル基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;ニトロ基等が挙げられる。
置換基を有していてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル基において、シクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、オクタヒドロナフチル基等が挙げられる。
ここで、置換基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数1〜12のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素数1〜4の低級アルコキシ基;フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、ファナンスリル基等のアリール基;ベンジル基、α−フェニルエチル基、β−フェニルエチル基、α−フェニルプロピル基、β−フェニルプロピル基、γ−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等の炭素数7乃至13のアラアルキル基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、ジメチル(2,3−ジメチル−2−ブチル)シリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、ジメチルヘキシルシリル基等のトリ−炭素数1〜6アルキルシリル基、ジメチルクミルシリル基等のジ−炭素数1〜6アルキル−炭素数6〜18アリールシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基等のジ−炭素数6〜18アリール−炭素数1〜6アルキルシリル基、トリフェニルシリル基等のトリ−炭素数6〜18アリールシリル基、トリベンジルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基等のトリ−炭素数7〜19アラルキルシリル基等のトリ置換オルガノシリル基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;ニトロ基等が挙げられる。
とR、RとRが各々互いに隣接するリン原子と一緒になって複素環を形成した場合の複素環の具体例としては、ホスホール、テトラヒドロホスホール、ホスホリナン等が挙げられる。当該複素環には、本発明の反応に不活性な官能基を置換基として1〜4個有していてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
一般式(5)において、R10及びR11は各々独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ジ(炭素数1〜5アルキル)アミノ基、5〜8員の環状アミノ基又はハロゲン原子である。
10及びR11で表される炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。
10及びR11で表される炭素数1〜5のアルコキシ基の具体例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基等が挙げられる。
10及びR11で表されるジ(炭素数1〜5アルキル)アミノ基の具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジn−プロピルアミノ基、ジイソプロルアミノ基、ジn−ブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジsec−ブチルアミノ基、ジtert−ブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基等が挙げられる。
10及びR11で表される5〜8員の環状アミノ基の具体例としては、ピロリジノ基、ピペリジノ基等が挙げられる。
10及びR11で表されるハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
これらの中で、好ましいR10及びR11としては、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基のジアルキルアミノ基;ピロリジノ基、ピペリジノ基等の5〜8員の環状アミノ基等が挙げられる。
特に好ましいR10及びR11としては、水素原子、メトキシ基が挙げられる。
一般式(5)において、R12は各々独立に炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ジ(炭素数1〜5アルキル)アミノ基、5〜8員の環状アミノ基又はハロゲン原子である。
12で表される炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。
12で表される炭素数1〜5のアルコキシ基の具体例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基等が挙げられる。
12で表されるジ(炭素数1〜5アルキル)アミノ基の具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジn−プロピルアミノ基、ジイソプロルアミノ基、ジn−ブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジsec−ブチルアミノ基、ジtert−ブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基等が挙げられる。
12で表される5〜8員の環状アミノ基の具体例としては、ピロリジノ基、ピペリジノ基等が挙げられる。
12で表されるハロゲン原子の具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
これらの中で、好ましいR12としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ピロリジノ基、ピペリジノ基等の5〜8員の環状アミノ基等が挙げられる。
特に好ましいR12としては、メチル基、メトキシ基が挙げられる。
一般式(5) において、R10とR11、R11とR12は各々互いに一緒になって縮合ベンゼン環、縮合置換ベンゼン環、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基又はトリメチレンジオキシ基を形成してもよい。これらの中で、R11とR12が一緒になって縮合ベンゼン環、縮合置換ベンゼン環、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基又はトリメチレンジオキシ基を形成したものが好ましい。特に、R11とR12が、一緒になって、縮合ベンゼン環、縮合置換ベンゼン環、テトラメチレン基、メチレンジオキシ基、メチレンジオキシ基又はエチレンジオキシ基を形成したものが好ましい。
また、前記縮合ベンゼン環、縮合置換ベンゼン環、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基又はトリメチレンジオキシ基には、不斉合成反応に不活性な官能基を置換基として、好ましくは0〜4個の範囲で有していてもよい。ここで、置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;水酸基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子等が挙げられる。
この一般式(5)において、好ましく用いられる光学活性二座ホスフィン配位子としては、例えば、日本国特開昭61−63690号公報、日本国特開昭62−265293号公報に記載されている第3級ホスフィンで、具体例としては、次のものを挙げることができる。すなわち、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)、2,2’−ビス(ジ(p−トリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル〔p−Tol−BINAP〕、2,2’−ビス(ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(DM−BINAP)2,2’−ビスジ(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(T−Bu−2−BINAP)、2,2’−ビス[ジ(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル(DMM−BINAP 2,2’−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(Cy−BINAP)、2,2’−ビス(ジシクロペンチルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(Cp−BINAP)。
更に、この一般式(5)において、好ましく用いられる光学活性二座ホスフィン配位子としては、例えば、日本国特開平4−139140公報に記載されている第3級ホスフィンで、具体例としては、次のものを挙げることができる。すなわち、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロビナフチル(H−BINAP)、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロビナフチル(p−Tol−H−BINAP)、2,2’−ビス(ジ−(3,5−キシリル)ホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロビナフチル(DM−H−BINAP)、2,2’−ビス(ジ−(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロビナフチル(DMM−H−BINAP)。
更にまた、この一般式(5)において、好ましく用いられる光学活性二座ホスフィン配位子としては、例えば、日本国特開平11−269185号公報に記載されている第3級ホスフィンで、具体例としては、次のものを挙げることができる。すなわち、((5,6),(5’,6’)−ビス(メチレンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)(SEGPHOS)、((5,6),(5’,6’)−ビス(メチレンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジp−トリルホスフィン)(p−Tol−SEGPHOS)、((5,6),(5’,6’)−ビス(メチレンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジ3,5−キシリルホスフィン)(DM−SEGPHOS)、((5,6),(5’,6’)−ビス(メチレンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジ4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルホスフィン)(DMM−SEGPHOS)、((5,6),(5’,6’)−ビス(メチレンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジ4−メトキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニルホスフィン)(DTBM−SEGPHOS)、((5,6),(5’,6’)−ビス(メチレンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジイル)ビス(ジシクロヘキシルホスフィン)(Cy−SEGPHOS)。
以上の光学活性二座ホスフィン配位子以外に、一般式(5)に該当するものとして、次の光学活性二座ホスフィン配位子を挙げることができる。すなわち、2,2’−ジメチル−6,6’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル(BIPHEMP)、2,2’−ジメチル−6,6’−ビス(ジp−トリルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル(p−Tol−BIPHEMP)、2,2’−ジメチル−6,6’−ビス(ジ3,5−キシリルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル(DM−BIPHEMP)、2,2’−ジメチル−6,6’−ビス(ジ4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル(DMM−BIPHEMP)、2,2’−ジメチル−6,6’−ビス(ジ4−t−ブトキシ−3,5−ジメチルフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル(DTBM−BIPHEMP)2,2’−ジメチル−6,6’−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル(Cy−BIPHEMP)、2,2’−ジメトキシ−6,6’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル(MeO−BIPHEMP)、2,2’−ジメトキシ−6,6’−ビス(ジp−トリルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル(p−Tol−MeO−BIPHEMP)、2,2’−ジメトキシ−6,6’−ビス(ジ3,5−キシリルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル(DM−MeOBIPHEMP)、2,2’−ジメトキシ−6,6’−ビス(ジ4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル(DMM−MeO−BIPHEMP)、2,2’−ジメトキシ−6,6’−ビス(ジ4−t−ブトキシ−3,5−ジメチルフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル(DTBM−MeO−BIPHEMP)、2,2’−ジメトキシ−6,6’−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル(Cy−MeO−BIPHEMP)、2,2’−ジメチル−3,3’−ジクロロ−4,4’−ジメチル−6,6’−ビス(ジp−トリルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル(p−Tol−CM−BIPHEMP)、2,2’−ジメチル−3,3’−ジクロロ−4,4’−ジメチル−6,6’−ビス(ジ3,5−キシリルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル(DM−CM−BIPHEMP)、2,2’−ジメチル−3,3’−ジクロロ−4,4’−ジメチル−6,6’−ビス(ジ4−メトキ−3,5−ジメチルフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル(DMM−CM−BIPHEMP)。
本発明では、上記した光学活性二座ホスフィン配位子とルテニウムとを含むルテニウム錯体で不斉異性化反応を行うが、この不斉異性化反応における光学活性ルテニウム錯体としては、例えば、下記一般式(3)で表される化合物が好ましいのものとして挙げられる。
一般式(3)
[Ru (3)
(式中、Lは、光学活性ホスフィン配位子であり;Wは、水素原子、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アリール基、ジエン又はアニオンであり;Uは、水素原子、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アリール基、ジエン、アニオン又はL以外の配位子であり;Zは、アニオン、アミン又は光学活性含窒素化合物であり;m、n及びrは各々独立に1〜5の整数をであり、p、q及びsは各々独立に0〜5の整数であり、p+q+sは1以上である。)
一般式(3)において、Lで表される配位子としては、上述した光学活性二座ホスフィン配位子が挙げられる。
一般式(3)において、Wは、水素原子、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アリール基、ジエン又はアニオンである。
一般式(3)のWで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
一般式(3)のWで表されるアシルオキシ基としては、例えば、フォルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
一般式(3)のWで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントリル基、インデニル基、メシチル基、ジベンジル基等の芳香族単環、多環式基等が挙げられる。
一般式(3)のWで表されるジエンとしては、例えば、ブタジエン、シクロオクタジエン(cod)、ノルボルナジエン(nod)等が挙げられる。
一般式(3)のWで表されるアニオンとしては、例えば、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、スルホン酸イオン(メタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、カンフルスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンなど)、スルファミン酸イオン、炭酸イオン、水酸化物イオン、カルボン酸イオン(ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、グルコン酸イオン、オレイン酸イオン、シュウ酸イオン、安息香酸イオン、フタル酸イオン、トリフルオロ酢酸イオンなど)、硫化物イオン、チオシアン酸イオン、リン酸イオン、ピロリン酸イオン、酸化物イオン、リン化物イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、ヨウ素酸イオン、ヘキサフルオロケイ酸イオン、シアン化物イオン、ホウ酸イオン、メタホウ酸イオン、ホウフッ化物イオン等が挙げられる。
一般式(3)において、Uは、水素原子、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アリール基、ジエン、アニオン又はL以外の配位子である。
一般式(3)のUで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
一般式(3)のUで表されるアシルオキシ基としては、例えば、フォルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
一般式(3)のUで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントリル基、インデニル基、メシチル基、ジベンジル基等の芳香族単環、多環式基等が挙げられる。
一般式(3)のUで表されるジエンとしては、例えば、ブタジエン、シクロオクタジエン(cod)、ノルボルナジエン(nod)等が挙げられる。
一般式(3)のUで表されるアニオンとしては、例えば、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、スルホン酸イオン(メタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、カンフルスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンなど)、スルファミン酸イオン、炭酸イオン、水酸化物イオン、カルボン酸イオン(ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、グルコン酸イオン、オレイン酸イオン、シュウ酸イオン、安息香酸イオン、フタル酸イオン、トリフルオロ酢酸イオンなど)、硫化物イオン、チオシアン酸イオン、リン酸イオン、ピロリン酸イオン、酸化物イオン、リン化物イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、ヨウ素酸イオン、ヘキサフルオロケイ酸イオン、シアン化物イオン、ホウ酸イオン、メタホウ酸イオン、ホウフッ化物イオン等が挙げられる。
一般式(3)のUで表されるL以外の配位子としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、クロロホルム、ニトリル類(アセトニトリル、ベンゾニトリル等)、シアニド類(メチルイソシアニド、フェニルイソシアニド等)、芳香族化合物(ベンゼン、p−シメン、1,3,5−トリメチルベンゼン(メシチレン)、ヘキサメチルベンゼン等)、オレフィン類(エチレン、プロピレン、シクロオクレン等)、リン化合物(トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィノメタン(dppm)、ジフェニルホスフィノエタン(dppe)、ジフェニルホスフィノプロパン(dppp)、ジフェニルホスフィノブタン(dppb)、ジフェニルホスフィノフェロセン(dppf)等のホスファン化合物、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト等のホスファイト化合物等)、アミン化合物(アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、s−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂肪族アミン類;アニリン、ジメチルアニリン等の芳香族アミン類;ピリジン(py)、ジメチルアミノピリジン等の含窒素芳香族複素環類、ピロリジン、ピペラジン等の含窒素脂肪族複素環類;エチレンジアミン(en)、プロピレンジアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、ビピリジン(bpy)、フェナントロリン(phen)等のジアミン類)、硫黄化合物(ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィド、ジブチルスルフィド等)等が挙げられる。
一般式(3)において、Zは、アニオン、アミン又は光学活性含窒素化合物である。
一般式(3)のZで表されるアニオンとしては、例えば、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、スルホン酸イオン(メタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、カンフルスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンなど)、スルファミン酸イオン、炭酸イオン、水酸化物イオン、カルボン酸イオン(ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、グルコン酸イオン、オレイン酸イオン、シュウ酸イオン、安息香酸イオン、フタル酸イオン、トリフルオロ酢酸イオンなど)、硫化物イオン、チオシアン酸イオン、リン酸イオン、ピロリン酸イオン、酸化物イオン、リン化物イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、ヨウ素酸イオン、ヘキサフルオロケイ酸イオン、シアン化物イオン、ホウ酸イオン、メタホウ酸イオン、ホウフッ化物イオン等が挙げられる。
一般式(3)のZで表されるアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、s−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂肪族アミン類;アニリン、ジメチルアニリン等の芳香族アミン類;ピリジン(py)、ジメチルアミノピリジン等の含窒素芳香族複素環類、ピロリジン、ピペラジン等の含窒素脂肪族複素環類;エチレンジアミン(en)、プロピレンジアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、ビピリジン(bpy)、フェナントロリン(phen)等のジアミン類)、硫黄化合物(ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィド、ジブチルスルフィド等)等を挙げることができる。
一般式(3)のZで表される光学活性含窒素化合物としては、次の一般式(6);
Figure 2014136868
(R13、R14、R19、R20は各々独立に水素原子、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、アリール基、アラアリール基、ウレタン基、またはスルフォニル基等であり、R15、R16、R17、R18はこれら置換基が結合している炭素が不斉中心となるように同じかもしくは異なる基であり、各々独立に、水素原子、アルキル基、芳香族単環基、芳香族多環式基、飽和もしくは不飽和炭化水素基、または環式炭化水素基等を示す。)で表わされる光学活性ジアミン化合物である。
例えば光学活性な1,2−ジフェニルエチレンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,2−シクロヘプタンジアミン、2,3−ジメチルブタンジアミン、1−メチル−2,2−ジフェニルエチレンジアミン、1−イソブチル−2,2−ジフェニルエチレンジアミン、1−イソブロピル−2,2−ジフェニルエチレンジアミン、1−メチル−2,2−ジ(p−メトキシフェニル)エチレンジアミン、1−イソブチル−2,2−ジ(p−メトキシフェニル)エチレンジアミン、1−イソプロピル−2,2−ジ(p−メトキシフェニル)エチレンジアミン、1−ベンジル−2,2−ジ(p−メトキシフェニル)エチレンジアミン、1−メチル−2,2−ジナフチルエチレンジアミン、1−イソブチル−2,2−ジナフチルエチレンジアミン、1−イソプロピル−2,2−ジナフチルエチレンジアミン、2−メチルアミノ−1−フェニルエチルアミン、2−エチルアミノ−1−フェニルエチルアミン、2−n−プロピルアミノ−1−フェニルエチルアミン、2−i−プロピルアミノ−1−フェニルエチルアミン、2−n−ブチルアミノ−1−フェニルエチルアミン、2−tert−ブチルアミノ−1−フェニルエチルアミン、2−シクロヘキシルアミノ−1−フェニルエチルアミン、2−ベンジルアミノ−1−フェニルエチルアミン、2−ジメチルアミノ−1−フェニルエチルアミン、2−ジエチルアミノ−1−フェニルエチルアミン、2−ジn−プロピルアミノ−1−フェニルエチルアミン、2−ジi−プロピルアミノ−1−フェニルエチルアミン、2−ジn−ブチルアミノ−1−フェニルエチルアミン、2−ジtert−ブチルアミノ−1−フェニルエチルアミン、2−ピロリジニル−1−フェニルエチルアミン、2−ピペリジオ−1−フェニルエチルアミンなどの光学活性ジアミン化合物を例示することができる。
更に、本発明で用いられる光学活性ジアミン化合物としては、例えば、日本国特開平8−225466号公報、日本国特開平11−189600号公報、日本国特開2001−58999号公報、日本国特開2002−284790号公報、日本国特開2005−68113号公報、国際特許公開第2002/055477号、国際特許公開第2004/007506号などに記載されている光学活性ジアミン化合物を例示することができる
一般式(3)で表されるルテニウム錯体の好ましいものとして、次のものが挙げられる。すなわち、
(i)Wは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、Zはトリアルキルアミンであり、m=p=s=1、n=r=2、q=0を示し、(ii)Wは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、Zはピリジル基又は環置換ピリジル基であり、m=n=r=s=1、p=2、q=0を示し、(iii)Wはアシルオキシ基であり、m=n=r=1、p=2、q=s=0を示し、(iv)Wは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、Zはジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミドであり、m=n=r=1、p=2、q=0、sは0〜4の整数を示し、(v)Wは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、Uは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、Zはジアルキルアンモニウムイオンであり、m=n=p=2、q=3、r=s=1を示し、(vi)Wは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、Uは中性配位子である芳香族化合物又はオレフィンであり、Zは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、I、BF、ClO、OTf、PF、SbF又はBPhであり、m=n=p=q=r=s=1を示し、(vii)ZはBF、ClO、OTf、PF、SbF又はBPhであり、m=n=r=1、p=q=0、s=2を示し、(viii)W及びUは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシル基又は他のアニオン基であり、Zはジアミン化合物であり、m=n=p=q=r=s=1を示し、(ix)Wは水素原子であり、Uは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、m=p=q=r=1、n=2、s=0を示し、(x)Wは水素原子であり、ZはBF、ClO、OTf、PF、SbF又はBPhであり、m=n=p=r=s=1、q=0を示し、(xi)Wは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、Uは一価ホスフィン配位子であり、Zは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、m=n=p=q=1、r=z=2を示し、(xii)W及びUは同一又は異なって、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、m=n=p=q=r=1、s=0を示す。)
で表される化合物が挙げられる。
ルテニウムホスフィン錯体の錯体(3)の製造方法としては特に制限されないが、例えば次に示す方法あるいはこれに準ずる方法を用いて製造することができる。なお、以下に示す遷移金属ホスフィン錯体の式中において、codは1,5−シクロオクタジエンを、nbdはノルボルナジエンを、Phはフェニル基を、Acはアセチル基を、acacはアセチルアセトナート、dmfはジメチルホルムアミド、enはエチレンジアミン、DPENは1,2−ジフェニルエチレンジアミン、DAIPEN は1,1−ジ(p−メトキシフェニル)−2−イソプロピルエチレンジアミン、MAEは、メチルアミノエチルアミン、EAEは、エチルアミノエチルアミン、MAPEは、2−メチルアミノ−1−フェニルエチルアミン、EAPEは、2−エチルアミノ−1−フェニルエチルアミン、DMAPEは、2−ジメチルアミノ−1−フェニルエチルアミン、DEAPEは、2−ジエチルアミノ−1−フェニルエチルアミン、DBAEは、ジn−ブチルアミノエチルアミン、DBAPEは、2−ジn−ブチルアミノ−1−フェニルエチルアミンをそれぞれ示す。
ルテニウム錯体:ルテニウム錯体を製造する方法としては、例えば、文献(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.、922頁、1985年)に記載に準じて、[(1,5−シクロオクタジエン)ジクロルルテニウム]([Ru(cod)Cl)と光学活性二座ホスフィン配位子をトリアルキルアミンの存在下に有機溶媒中で加熱還流することで調製できる。また、日本国特開平11−269185号公報に記載の方法に準じて、ビス[ジクロル(ベンゼン)ルテニウム]([Ru(benzene)Cl)と光学活性二座ホスフィン配位子をジアルキルアミン存在下に有機溶媒中で加熱還流することにより、調製できる。
また、文献(J.Chem.Soc.、Chem.Commun.、1208頁、1989年)に記載の方法に準じて、ビス[ジヨード(パラ−シメン)ルテニウム]([Ru(p−cymene)I)と光学活性二座ホスフィン配位子とを有機溶媒中で加熱撹拌することにより調製することができる。更に、日本国特開平11−189600号公報に記載の方法に準じて、文献(J.Chem.Soc.、Chem.Commun.、992頁、1985年)の方法に従い得られるRuCl(L)NEtとジアミン化合物とを有機溶媒中で反応せしめて合成することができる。
ルテニウム錯体の具体例として、例えば、以下のものを挙げることができる。
Ru(OAc)(L)、Ru(OCOCF(L)、RuCl(L)NEt、[RuCl(L)(dmf)]、RuHCl(L)、RuHBr(L)、RuHI(L)、[{RuCl(L)}(μ−Cl)][MeNH]、[{RuBr(L)}(μ−Br)][MeNH]、[{RuI(L)}(μ−I)][MeNH]、[{RuCl(L)}(μ−Cl)][MeNH]、[{RuBr(L)}(μ−Br)][MeNH]、[{RuBr(L)}(μ−I)][MeNH]、[RuCl[PPh](L)](μ−Cl)、[RuBr[PPh](L)](μ−Br)、[RuI[PPh](L)](μ−I)、RuCl(L)、RuBr(L)、RuI(L)、[RuCl(L)](dmf)、RuCl(L)(pyridine)、RuBr(L)(pyridine)、RuI(L)(pyridine)、RuCl(L)(2,2’−dipyridine)、RuBr(L)(2,2’−dipyridine)、RuI(L)(2,2’−dipyridine)、[RuCl(benzene)(L)]Cl、[RuBr(benzene)(L)]Br、[RuI(benzene)(L)]I、[RuCl(p−cymene)(L)]Cl、[RuBr(p−cymene)(L)]Br、[RuI(p−cymene)(L)]I、[RuI(p−cymene)(L)]I、[Ru(L)](OTf)、[Ru(L)](BF、[Ru(L)](ClO、[Ru(L)](SbF、[Ru(L)](PF、[Ru(L)](BPh、[RuCl(L)](en)、[RuBr(L)](en)、[RuI(L)](en)、[RuH(L)](en)、[RuCl(L)](DPEN)、[RuBr(L)](DPEN)、[RuI(L)](DPEN)、[RuH(L)](DPEN)、[RuCl(L)](DAIPEN)、[RuBr(L)](DAIPEN)、[RuI(L)](DAIPEN)、[RuH(L)](DAIPEN)、[RuCl(L)](MAE)、[RuBr(L)](MAE)、[RuI(L)](MAE)、[RuH(L)](MAE)、[RuCl(L)](EAE)、[RuBr(L)](EAE)、[RuI(L)](EAE)、[RuH(L)](EAE)、[RuCl(L)](MAPE)、[RuBr(L)](MAPE)、[RuI(L)](MAPE)、[RuH(L)](MAPE)、[RuCl(L)](DMAPE)、[RuBr(L)](DMAPE)、[RuI(L)](DMAPE)、[RuH(L)](DMAPE)、[RuCl(L)](DBAE)、[RuBr(L)](DBAE)、[RuI(L)](DBAE)、[RuH(L)](DBAE)、[RuCl(L)](DBAPE)、[RuBr(L)](DBAPE)、[RuI(L)](DBAPE)、[RuH(L)](DBAPE)等を挙げることができる。
本発明の不斉異性化反応におけるより好ましい触媒は、ルテニウムと光学活性二座ホスフィン配位子を含有する錯体である。最も好ましくは、
RuCl(L)NEt、[RuCl(L)(dmf)]、[{RuCl(L)}(μ−Cl)][MeNH]、[{RuBr(L)}(μ−Br)][MeNH]、[{RuI(L)}(μ−I)][MeNH]、[{RuCl(L)}(μ−Cl)][MeNH]、[{RuBr(L)}(μ−Br)][MeNH]、[{RuBr(L)}(μ−I)][MeNH]、[RuCl(benzene)(L)]Cl、[RuBr(benzene)(L)]Br、[RuI(benzene)(L)]I、[RuCl(p−cymene)(L)]Cl、[RuBr(p−cymene)(L)]Br、[RuI(p−cymene)(L)]I、[RuI(p−cymene)(L)]I、[RuCl(L)](MAE)、[RuBr(L)](MAE)、[RuI(L)](MAE)、[RuH(L)](MAE)、[RuCl(L)](EAE)、[RuBr(L)](EAE)、[RuI(L)](EAE)、[RuH(L)](EAE)、[RuCl(L)](MAPE)、[RuBr(L)](MAPE)、[RuI(L)](MAPE)、[RuH(L)](MAPE)、[RuCl(L)](DMAPE)、[RuBr(L)](DMAPE)、[RuI(L)](DMAPE)、[RuH(L)](DMAPE)、[RuCl(L)](DBAE)、[RuBr(L)](DBAE)、[RuI(L)](DBAE)、[RuH(L)](DBAE)、[RuCl(L)](DBAPE)、[RuBr(L)](DBAPE)、[RuI(L)](DBAPE)、[RuH(L)](DBAPE)等を挙げることができる。
また、本発明で用いられる塩基は、例えば、一般式(8)で表される塩を使用するものが好ましい。
M’Z’ (8)
(式中、M’は、Li、Na又はKの金属を示し、Z’は、Cl、Br又はIのハロゲン原子を示す)
一般式(8)で表される塩として、具体的には、例えば、LiCl、LiBr、LiI、NaCl、NaBr、NaI、KCl、KBr、KI等の金属塩を使用するものが好ましい。更には、(Bn)EtNCl、(Bn)EtNBr、(Bn)EtNI等のアンモニウム塩が選択でき、BuPhPCl、BuPhPBr、BuPhPI、(C13)PhPBr、BrPPh(CHPPhBr等のホスホニウム塩等が選択でき高い選択性が得られる(Bn:ベンジル基、Et:エチル基、Ph:フェニル基、Bu:ブチル基を示す)。
本発明で使用される光学活性二座ホスフィン配位子は、(S)−体及び(R)−体が存在するので、目的とする光学活性アルデヒド(1)の絶対配置に応じていずれかを選択すればよい。すなわち、基質として、例えば、(E)−3−フェニル−4−メチル−2−ペンテノールを用いた場合、例えば、配位子としてTol−BINAPを用いたとき、(R)−体の光学活性3−フェニル−4−メチルペンタノールを得るには(S)−体のTol−BINAPを用い、(S)−体の光学活性3−フェニル−4−メチルペンタノールを得るには(R)−体のTol−BINAPを用いればよい。一方、基質として(Z)−体を用いた場合、(S)−体の光学活性3−フェニル−4−メチルペンタノールを得るには(R)−体のTol−BINAPを用い、(R)−体の光学活性3−フェニル−4−メチルペンタノールを得るには(S)−体のTol−BINAPを用いればよい。
さらに、本発明では光学活性二座ホスフィン配位子と合わせて光学活性窒素化合物とを使用する。光学活性窒素化合物は、(S)−体及び(R)−体が存在するので、目的とする光学活性アルデヒド(1)の絶対配置に応じていずれかを選択すればよい。
すなわち、基質として、例えば、(E)−3−フェニル−4−メチル−2−ペンテノールを用いた場合、例えば、配位子としてTol−BINAPとDBAPEを用いたとき、(R)−体の光学活性3−フェニル−4−メチルペンタノールを得るには(S)−体のTol−BINAPと(R)−体のDBAPEを用い、(S)−体の光学活性3−フェニル−4−メチルペンタノールを得るには(R)−体のTol−BINAPと(S)−体のDBAPEを用いればよい。一方、基質として(Z)−体を用いた場合、(S)−体の光学活性3−フェニル−4−メチルペンタノールを得るには(R)−体のTol−BINAPと(S)−体のDBAPEを用い、(R)−体の光学活性3−フェニル−4−メチルペンタノールを得るには(S)−体のTol−BINAPと(R)−体のDBAPEを用いればよい。
なお、遷移金属−光学活性ホスフィン錯体の使用量は、アリルアルコール(2)に対して約100〜50000分の1モルであることが好ましい。
また、添加する塩基の量は、遷移金属−光学活性ホスフィン錯体に対し、0.5〜100当量、好ましくは、2〜40当量であることが好ましい。
反応溶媒としては、不斉水素化原料及び触媒系を可溶化するものであれば適宜なものを用いることができる。例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;塩化メチレン等のハロゲン含有炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒;アセトニトリル、DMFやDMSO等ヘテロ原子を含む有機溶媒を用いることができる。好ましくはアルコール系溶媒が用いられる。溶媒の量は、反応基質の溶解度及び経済性により判断される。例えば、基質によっては1%以下の低濃度から無溶媒に近い状態で行うことができるが、0.1〜5.0容量で用いるのが好ましい。
反応温度については、0〜150℃で行うことができるが、10〜70℃の範囲がより好ましい。また、反応時間は、反応基質濃度、温度等の反応条件によって異なるが、数分〜30時間で反応は完結する。反応終了後は、通常の後処理を行うことにより、目的とする光学活性アルデヒド(1)を単離することができる。
反応終了後は通常の後処理を行うことにより、必要に応じて蒸留やカラムクロマトグラフィー等の方法を用いて、目的物を単離することができる。また、本発明における反応形式は、バッチ式においても連続的においても実施することができる。
以下に実施例を挙げ、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
[実施例1]
(E)−3−フェニル−4−メチル−2−ペンテノールの不斉異性化
Figure 2014136868
アルゴン置換した50mLのシュレンク管にRuCl[(S)−tolbinap][(R)−dbape](3.2mg,2.9μmol,S/C=1000)と(E)−3−フェニル−4−メチル−2−ペンテノール(513.6mg,2.914mmol)を仕込み,凍結脱気を3回施したエタノール(13.6mL)をμシュレンク管よりテフロン(登録商標)製キャヌラを用いて移送して加え,さらに水酸化カリウムのエタノール溶液(15mM,0.98mL,15μmol)加え,25℃で1時間攪拌した。シリカゲルのショートカラムを通して触媒と塩基を除去した後,減圧下溶媒を留去して得た混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ(column,SPELCOSLBTM−5ms(0.25mmx30m,DF=0.25);carrier gas:helium(100kPa);column temp:80℃ for 2min,heating to 180℃ at a rate of 3℃ min−1;injection temp:250℃),(3R)−3−フェニル−4−メチルペンタノールが90%収率で生成していた。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより,(3R)−3−フェニル−4−メチルペンタノールを単離した(411.4mg,80%収率)。このものの光学純度をガスクロマトグラフィーで測定したところ(GC analysis:column,Varian CHIRASIL−DEX CB(0.32mmx25m,DF=0.25);carrier gas:helium (60kPa);column temp:50℃ for 12min,heating to 145℃ at a rate of 1℃min−1;injection temp:200℃),>99%eeであった。
H NMR δ=0.77(d,J=6.7Hz,3H),0.95(d,J=6.7Hz,3H),1.26(br s,1H),1.87(m,1H),2.70−2.84(m,2H),2.88−3.00(m,1H),7.13−7.23(m,3H),7.25−7.32(m,2H).
[実施例2〜10]
実施例1において使用した触媒、基質と触媒のモル比、反応溶媒を表1に示したように変更した以外は、原料として(E)−3−フェニル−4−メチル−2−ペンテノールを用いて実施例1と同様の方法で反応を実施した。(3R)−3−フェニル−4−メチルペンタノールの収率は、実施例1と同様に、反応終了後、溶媒を減圧下濃縮し、残渣をガスクロマトグラフィー(カラム:SPELCO SLBTM−5ms)にて測定した。光学純度も実施例1と同様に、ガスクロマトグラフィー(カラム:Varian CHIRASIL−DEX CB)を用いて測定した。実施例1〜10の反応結果を表1に示す。
Figure 2014136868
触媒[A]:Ar=4−CH,R=n−C,R’=C
RuCl[(R)−DBAPE][(S)−TolBINAP]
触媒[B]:Ar=4−CH,R=n−C,R’=H
RuCl[DBAE][(S)−TolBINAP]
触媒[C]:[RuCl{(S)−TolBINAP}(dmf)
触媒[D]:[RuCl{(S)−TolBINAP}(p−cymene)]Cl
触媒[E]:[(CNH][RuCl{(S)−TolBINAP}(μ−Cl)
Figure 2014136868
表1から明らかなように実施例1〜10のいずれもが光学純度99%ee以上ときわめて高い結果で得ることができた。
[実施例11〜22]
実施例1における基質と触媒のモル比、反応時間を表2に示したように変更し、表2に示した原料を用いた以外は、実施例1と同様の方法で反応を実施した。反応収率は、実施例1と同様に、反応終了後、溶媒を減圧下濃縮し、残渣をガスクロマトグラフィー(カラム:SPELCO SLBTM−5ms)にて測定した。光学純度も実施例1と同様に、ガスクロマトグラフィー(カラム:Varian CHIRASIL−DEX CB,化合物(k),化合物(l)についてのみSPELCO−DEXTM225)を用いて測定した。化合物cについてのみ、生成物のアルデヒドを常法(NaBH,次にAcCl,ピリジン)によりアルコールまで還元、アセチル化したのち、同様な手法で光学純度を決定した。反応結果を表2に示す。
Figure 2014136868
化合物(a):R=C,R=i−C
[(E)−3−フェニル−4−メチル−2−ペンテノール]
化合物(b):R=4−CH,R=i−C
[(E)−3−(4−メチルフェニル)−4−メチル−2−ペンテノール]
化合物(c):R=4−CHOC,R=i−C
[(E)−3−(4−メトキシフェニル)−4−メチル−2−ペンテノール]
化合物(d):R=4−ClC,R=i−C
[(E)−3−(4−クロロフェニル)−4−メチル−2−ペンテノール]
化合物(e):R=C,R=cyclo−C11
[(E)−3−フェニル−3−シクロヘキシル−2−プロペノール]
化合物(f):R=C,R=C
[(E)−3−フェニル−2−ペンテノール]
化合物(g):R=C,R=CH
[(E)−3−フェニル−2−ブテノール]
化合物(h):R=i−C,R=C
[(Z)−3−フェニル−4−メチル−2−ペンテノール]
化合物(i):R=CF,R=C
[(E)−3−トリフルオロメチル−3−フェニル−2−プロペノール]
化合物(j):R=cyclo−C11,R=CH
[(E)−3−シクロヘキシル−2−ブテノール
化合物(k):R=(CHC=CH(CH,R=CH
[ゲラニオール((E)−3,7−ジメチル−2,6−オキタジエン−1−オール)]
化合物(l):R=CH,R=(CHC=CH(CH
[ネロール((Z)−3,7−ジメチル−2,6−オキタジエン−1−オール)]
化合物(m):R=n−C,R=CH
[(E)−3−メチル−2−ヘプテノール]
Figure 2014136868
表2から明らかなように実施例1、11〜22のいずれもが光学純度99%ee以上ときわめて高い結果で得ることができた。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2013年3月6日出願の日本特許出願(特願2013−044065)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。

Claims (3)

  1. 式(1)
    Figure 2014136868
    (式(1)中、R及びRは、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい3〜8員環の脂環式基、置換基を有していてもよい炭素数6〜15のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数7〜12のアラルキル基からなる群から選択され、ただし、R及びRは、互いに異なる基である。*は、不斉炭素原子である。)
    で表される光学活性アルデヒドの製造方法であって、
    式(2)
    Figure 2014136868
    (式(2)中、R及びRは、前記と同義である。)
    で表されるアリルアルコールを、ルテニウム錯体と塩基の存在下に不斉異性化することを特徴とする、製造方法。
  2. 前記不斉異性化を、下記一般式(3)
    [Ru (3)
    (式(3)中、Lは、光学活性ホスフィン配位子であり;Wは、水素原子、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アリール基、ジエン又はアニオンであり;Uは、水素原子、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アリール基、ジエン、アニオン又はL以外の配位子であり;Zは、アニオン、アミン又は光学活性含窒素化合物であり;m、n及びrは各々独立に1〜5の整数であり、p、q及びsは各々独立に0〜5の整数であり、p+q+sは1以上である。)
    で表されるルテニウム錯体を用いて行なうことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記塩基が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩若しくは四級アンモニウム塩であることを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。
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