以下に、本発明にかかる分波装置、合波装置および中継装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
本実施の形態では、回路規模の増加を抑えつつ、高い帯域外減衰量と高い帯域内平坦度を同時に実現する分波装置、合波装置、および、分波装置と合波装置を備えた中継装置について説明する。
図1は、本実施の形態の分波装置、合波装置、およびこれらを備えた中継装置の構成例を示す図である。図1に示す中継装置は、例えば、中継衛星10に搭載され、地上から送信されたマルチキャリア信号を中継する。このとき、受信した信号を分波し、必要に応じて並べ替えてから合波して送信する。
中継衛星10は、受信アンテナ11−0〜11−2と、ダウンコンバータ(D/C)12−0〜12−2と、受信アナログフィルタ(RXF)13−0〜13−2と、A/D変換器(A/D)14−0〜14−2と、分波部15−0〜15−2と、受信側補償(RX補償)部16−0〜16−2と、スイッチマトリックス17と、送信側補償(TX補償)部18−0〜18−2と、合波部19−0〜19−2と、D/A変換器(D/A)20−0〜20−2と、送信アナログフィルタ(TXF)21−0〜21−2と、アップコンバータ(U/C)22−0〜22−2と、送信アンテナ23−0〜23−2と、を備える。
ここでは、一例として、受信アンテナ11−n(n=0,1または2)から受信側補償(RX補償)部16−nで1つの分波装置を構成し、合波部19−nから送信アンテナ23−nで1つの合波装置を構成する。なお、さらに、合波部19−nを加えて分波装置とし、分波部15−nを加えて合波装置としてもよい。また、中継衛星10は、入力ポート(入力側のビームエリア)と同数以上の分波装置を備え、出力ポート(出力側のビームエリア)と同数以上の合波装置を備える。
中継衛星10は、ビームエリア100−0、100−1および100−2からアップリンク信号を受信し、後述する各種処理(分波処理、合波処理等)を行った後、ビームエリア300−0、300−1および300−2へダウンリンク信号として送信する。なお、中継衛星10は制御局200と接続されており、制御局200は、中継衛星10の内部設定の変更指示、動作指示等を行う。
受信アンテナ11−nは、ビームエリア100−nからのアップリンク信号を受信する。
ダウンコンバータ12−nは、受信アンテナ11−nにより受信されたアップリンク信号に衛星内部で生成したローカル信号を乗算する。
受信アナログフィルタ(RXF)13−nは、ダウンコンバータ12−nで乗算後の信号のうち、ベースバンド信号を抽出する。
A/D変換器14−nは、受信アナログフィルタ(RXF)13−nで抽出したベースバンド信号をサンプリングする。
分波部15−nは、A/D変換器14−nから入力したデジタル信号をm(0〜m−1)個の信号に分波する。
受信側補償(RX補償)部16−nは、分波部15−nから出力されるm個の分波データに対して、前段の受信アナログフィルタ(RXF)13−nの振幅・位相誤差を打ち消すためのデジタル振幅・位相補償を行う。詳細な動作は後述する。
スイッチマトリックス17は、前段の複数の処理部(受信側補償(RX補償)部16−0,16−1,16−2)から入力した信号をスイッチングして後段の複数の処理部(後述する送信側補償(TX補償)部18−0,18−1,18−2)へ出力する。具体的には、前段の複数の処理部から入力した信号に対して、周波数方向の並び替えおよび所望のビームエリア向けの出力ポートに振り分けを行い、所望のビームエリア向けの出力ポートと接続する後段の処理部へ信号を出力する。
送信側補償(TX補償)部18−nは、後段の合波部19−nに与えるm個の合波データに対して、さらに、後段に位置する送信アナログフィルタ(TXF)21−nの振幅・位相誤差を打ち消すためのデジタル逆振幅・位相補償を行う。詳細な動作は後述する。
合波部19−nは、送信側補償(TX補償)部18−nで逆振幅・位相補償されたm個の分波データを1つの波(信号)に合波する。
D/A変換器20−nは、合波部19−nから出力されるデジタル信号をアナログ信号に変換する。
送信アナログフィルタ(TXF)21−nは、D/A変換器20−nから出力される信号のベースバンド成分のみ通過させ高調波等の不要波を除去する。送信アナログフィルタ(TXF)21−n通過後の信号は、前述の送信側補償(TX補償)部18−nによる逆振幅・位相補償により、振幅・位相特性が平坦化される。
アップコンバータ22−nは、送信アナログフィルタ(TXF)21−nから出力されたアナログベースバンド信号を無線周波数帯の信号に変換する。
送信アンテナ23−nは、アップコンバータ22−nから出力された信号をダウンリンク信号としてビームエリア300−nへ送信する。
なお、アップリンクのビームエリア100−0,100−1,100−2とダウンリンクのビームエリア300−0,300−1,300−2は地理的に同じエリア(場所)であってもよい。また、図1において、中継衛星10の各構成要素(受信アンテナ、ダウンコンバータ、A/D変換器、…、送信アンテナ等)の数を3つ(入力ポート数=3、出力ポート数=3)にしているが、一例であり、図1に示したもの(3つ)に限定するものではない。
つづいて、本実施の形態の中継装置を備えた中継衛星10の中継処理の動作について説明する。図2は、本実施の形態の中継衛星の中継処理による中継信号の流れを示す図である。中継装置である中継衛星10は、図2(a)に示すビームエリア100−0,100−1,100−2からの各アップリンク信号を、図2(b)に示すビームエリア300−0,300−1,300−2への各ダウンリンク信号として中継する。すなわち、中継衛星10は、各ビームエリアからのアップリンク信号を、所望のビームエリア向けに振り分け、かつ所望の周波数に変換しながら、ダウンリンク信号として出力する。
具体的に、中継衛星10は、図2に示すように周波数を再配置して、ビームエリア100−0からのアップリンク信号Aをビームエリア300−0へ、ビームエリア100−0からのアップリンク信号Bをビームエリア300−1へ、ビームエリア100−1からのアップリンク信号Cをビームエリア300−2へ、ビームエリア100−2からのアップリンク信号Dをビームエリア300−2へ、ビームエリア100−2からのアップリンク信号Eをビームエリア300−1へ、それぞれ中継する。なお、分波されたデータ数および合波前のデータ数はm=8とし、分波された信号の各帯域幅はFcとする。
中継衛星10では、図2(a)に示すビームエリア100−0からの信号A,Bを、受信アンテナ11−0で受信後、ダウンコンバータ12−0、RXF13−0を経由して無線周波数帯からベースバンド帯に変換する。A/D変換器14−0は、ベースバンド帯に変換された信号A,Bをサンプリングし、分波部15−0は、サンプリング後の信号A,Bを図2(a)に示す8つの帯域((1−1)〜(1−8))のうち、信号Aを帯域(1−1)〜(1−3)に、信号Bを帯域(1−4)〜(1−8)にデジタル分波する。なお、デジタル分波および後述するデジタル合波の方式については特に限定せず、従来からの方式、例えば、下記2つのいずれかの文献に記載の方式を用いることができる。
山下 他,“衛星搭載用帯域可変FFTフィルタバンクの提案と基本動作特性” 電子情報通信学会技術研究報告.SAT,衛星通信 100(484), 37−42, 2000−12−01。
藤村 他,“衛星搭載用再生/非再生中継器に適した分波/合波方式の検討” 2011年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会 B−3−10。
中継衛星10では、分波部15−0は、上記いずれかの分波処理により、信号Aを3つに、信号Bを5つに分波する。
中継衛星10は、3つに分波された信号Aについて、RX補償部16−0でデジタル振幅・位相制御を行った後、スイッチマトリックス17を経由してTX補償部18−0へ入力する。その際、スイッチマトリックス17は、3つに分波された信号Aを帯域(4−5)〜(4−7)に接続する。すなわち、中継衛星10は、信号Aを、TX補償部18−0、合波部19−0、D/A変換器20−0、TXF21−0、アップコンバータ22−0を経由して、受信アンテナ23−0から、図2(b)に示す周波数位置(帯域(4−5)〜(4−7))へ出力する。
また、中継衛星10は、5つに分波された信号Bについて、RX補償部16−0でデジタル振幅・位相制御を行った後、スイッチマトリックス17を経由してTX補償部18−1へ入力する。その際、スイッチマトリックス17は、5つに分波された信号Bを帯域(5−1)〜(5−5)に接続する。すなわち、中継衛星10は、信号Bを、TX補償部18−1、合波部19−1、D/A変換器20−1、TXF21−1、アップコンバータ22−1を経由して、受信アンテナ23−1から、図2(b)に示す周波数位置(帯域(5−1)〜(5−5))へ出力する。
同様に、中継衛星10では、図2(a)に示すビームエリア100−1からの信号Cを、受信アンテナ11−1で受信後、ダウンコンバータ12−1、RXF13−1を経由して無線周波数帯からベースバンド帯に変換する。A/D変換器14−1は、ベースバンド帯に変換された信号Cをサンプリングし、分波部15−1は、サンプリング後の信号Cを図2(a)に示す8つの帯域((2−1)〜(2−8))のうち、帯域(2−1)〜(2−7)にデジタル分波する。
そして、中継衛星10は、7つに分波された信号Cについて、RX補償部16−1でデジタル振幅・位相制御を行った後、スイッチマトリックス17を経由してTX補償部18−2へ入力する。その際、スイッチマトリックス17は、7つに分波された信号Cを帯域(6−2)〜(6−8)に接続する。すなわち、中継衛星10は、信号Cを、TX補償部18−2、合波部19−2、D/A変換器20−2、TXF21−2、アップコンバータ22−2を経由して、受信アンテナ23−2から、図2(b)に示す周波数位置(帯域(6−2)〜(6−8))へ出力する。
また、中継衛星10では、図2(a)に示すビームエリア100−2からの信号E,Dを、受信アンテナ11−2で受信後、ダウンコンバータ12−2、RXF13−2を経由して無線周波数帯からベースバンド帯に変換する。A/D変換器14−2は、ベースバンド帯に変換された信号E,Dをサンプリングし、分波部15−2は、サンプリング後の信号Eを図2(a)に示す8つの帯域((3−1)〜(3−8))のうち、信号Eを帯域(3−1)〜(3−3)にデジタル分波する。
中継衛星10は、3つに分波された信号Eについて、RX補償部16−2でデジタル振幅・位相制御を行った後、スイッチマトリックス17を経由してTX補償部18−1へ入力する。その際、スイッチマトリックス17は、3つに分波された信号Eを帯域(5−6)〜(5−8)に接続する。すなわち、中継衛星10は、信号Eを、TX補償部18−1、合波部19−1、D/A変換器20−1、TXF21−1、アップコンバータ22−1を経由して、受信アンテナ23−1から、図2(b)に示す周波数位置(帯域(5−6)〜(5−8))へ出力する。
なお、中継衛星10は、信号Dについては帯域幅Fc未満のため分波せずに抽出のみ行う。中継衛星10は、帯域(3−8)の信号Dについて、RX補償部16−2でデジタル振幅・位相制御を行った後、スイッチマトリックス17を経由してTX補償部18−2へ入力する。その際、スイッチマトリックス17は、信号Dを帯域(6−1)に接続する。すなわち、中継衛星10は、信号Dを、TX補償部18−2、合波部19−2、D/A変換器20−2、TXF21−2、アップコンバータ22−2を経由して、受信アンテナ23−2から、図2(b)に示す周波数位置(帯域(6−1))へ出力する。
なお、スイッチマトリックス17の接続制御は、図1に示す制御局200によって行われる。制御局200は、全ての衛星回線の接続、使用周波数帯を一括して管理しており、通信要求に応じて中継衛星10におけるスイッチマトリックス17の接続制御を別の無線周波数回線経由で行う。
つづいて、本実施の形態において特徴的な動作となるRX補償部16−n、TX補償部18−nでの補償の必要性について説明する。
まず、RXF13−n、TXF21−nの周波数対振幅・位相特性が理想の場合、すなわち、帯域内振幅偏差、群遅延偏差が無い場合について説明する。図3は、RXF13−n、TXF21−nの周波数対振幅・位相特性が理想の場合の、本実施の形態の中継衛星10におけるビームエリア100−0,100−2からビームエリア300−1への信号中継処理の流れを示す図である。なお、RXF13−n、TXF21−nの周波数対振幅・位相特性は理想(帯域内振幅偏差、群遅延偏差が無い)として、RX補償部16−n、TX補償部18−nは動作させず、入力信号をそのまま出力する場合を示す。
図3では、中継衛星10が、信号Bを分波部15−0で5つのサブチャネルに分波後、信号Eを分波部15−1で3つのサブチャネルに分波後、それぞれスイッチマトリックス17で合波部19−1に集めて合波するまでの一連の信号処理を示している。図3から明らかなように、中継衛星10では、RXF13−n、TXF21−nの周波数対振幅・位相特性が理想の場合、特に対策を施さなくてもアップリンクの信号B,Eに信号の歪は発生せず、ダウンリンクのビームエリア300−1へ中継することができる。
ところが、中継衛星10では、RXF13−n、TXF21−nの周波数対振幅・位相特性が理想ではなく、かつ、何も対策を講じない場合、すなわち、RX補償部16−n、TX補償部18−nは動作させずに入力信号をそのまま出力させる場合、アップリンクの信号B,Eには中継衛星10を介することで信号の歪が発生する。
図4は、RXF13−n、TXF21−nの周波数対振幅・位相特性が理想ではなく湾曲し、かつ何も対策を講じない場合の、本実施の形態の中継衛星10におけるビームエリア100−0,100−2からビームエリア300−1への信号中継処理の流れを示す図である。図4(a)に示す実線の特性がRXF13−0の周波数対振幅特性、点線の特性がRXF13−0の周波数対群遅延特性を示している。同様に、図4(b)に示す実線の特性がRXF13−2の周波数対振幅特性、点線の特性がRXF13−2の周波数対群遅延特性を示している。また、図4(d)に示す実線の特性がTXF21−1の周波数対振幅特性、破線の特性がTXF21−1の周波数対群遅延特性を示している。
図4から明らかなように、この場合、信号A,Bは、RXF13−0の周波数対振幅特性によって歪むことになり(図4(a))、また、信号E,Dも、RXF13−2の周波数対振幅特性によって歪むことになる(図4(b))。これにより、合波部19−1で合波されたデジタル合波後の信号B,Eの周波数対振幅特性(スペクトラム)は、図4(c)に示すように歪んでしまうことが判る。また、信号B,Eの帯域内群遅延特性も、図4(c)の各信号スペクトラムに点線で示されるように、一定とはならず、帯域内で傾斜が発生する。
さらに、中継衛星10では、信号送信時に図4(d)に示すTXF21−nの周波数対振幅特性(実線)が加わるため、中継衛星10からビームエリア300−1へ出力される信号B,Eの周波数対振幅特性(スペクトラム)は、図4(d)に示すように歪みが増加されてしまう。また、各信号の帯域内群遅延偏差も、新たに図4(d)に示す破線の特性として加わり、全体の帯域内群遅延偏差は増加する傾向となる。
このように、中継衛星10では、信号が各アナログフィルタを通過するごとに、各信号の周波数対振幅特性(スペクトラム)は歪みが増加し、また、各信号の帯域内群遅延偏差も増加することから、本実施の形態では、RX補償部16−nおよびTX補償部18−nにおいて、各アナログフィルタの特性を補償する動作を行う。
図5は、RX補償部16−nを動作させた場合の、本実施の形態の中継衛星10におけるビームエリア100−0,100−2からビームエリア300−1への信号中継処理の流れを示す図である。RXF13−nの周波数対振幅特性が理想ではなく、湾曲した場合で、かつ、RX補償部16−nを動作させた場合の動作を示している。
また、図6は、TX補償部18−nを動作させた場合の、本実施の形態の中継衛星10におけるビームエリア100−0,100−2からビームエリア300−1への信号中継処理の流れを示す図である。図5で補償した信号を送信する場合において、TXF21−nの周波数対振幅特性が理想ではなく、湾曲した場合で、かつ、TX補償部18−nを動作させた場合の動作を示している。
まず、RXF13−nの周波数対振幅特性が理想ではなく、湾曲した場合で、かつ、RX補償部16−nを動作させた場合の動作例について、図5を用いて説明する。中継衛星10では、RXF13−0のアナログ特性の影響を受けた信号A,B(図5(a))を、分波部15−0で図5(c)に示すように8つのサブチャネルに分波して、RX補償部16−0へ入力する。同様に、中継衛星10では、RXF13−2のアナログ特性の影響を受けた信号E,D(図5(b))を、分波部15−2で図5(d)に示すように4つのサブチャネルに分波して、RX補償部16−2へ入力する。
RX補償部16−nは、前段のRXF13−n(受信アナログフィルタ)と逆の周波数特性を有する複素係数WR(m,n)を有しおり、この係数を用いて前段のRXF13−nの周波数対振幅・群遅延特性の傾斜、リップルを打ち消す補償を各サブチャネルに対して行う。なお、mは分波・合波数を示し、nは各ポート番号であり、本実施の形態ではn=0,1,2のいずれかとなる。
図5(e)に、前段のRXF13−0の振幅特性の傾斜、リップルを打ち消すための振幅特性(=逆振幅特性)を実線で、前段のRXF13−0の群遅延偏差を示す打ち消すための群遅延特性(=逆群遅延特性)を点線で示す。同様に、図5(f)に、前段のRXF13−2の振幅特性の傾斜、リップルを打ち消すための振幅特性(=逆振幅特性)を実線で、前段のRXF13−2の群遅延偏差を示す打ち消すための群遅延特性(=逆群遅延特性)を点線で示す。
また、図5(e)に、RX補償部16−0で補償後の各分波信号を示し、図5(f)に、RX補償部16−2で補償後の各分波信号を示す。各図から判るように、図5(c)、図5(d)で示される各入力信号の振幅、群遅延特性のばらつきは、補償後に帯域幅Fcの単位で揃えられる。
ここで、仮に補償後の分波信号を再度デジタル合波した信号スペクトラムを示すと、図5(g)、図5(h)のようになる。図5(a)、図5(b)に示す補償を行わない場合のスペクトラムと比較すると、振幅傾斜や群遅延偏差が改善されることが判る。
以降、RX補償部16−nの具体的な演算内容について説明する。RX補償部16−nに入力されるベースバンド信号をS(m,n)、RX補償部16−nで補償されたベースバンド信号をS’(m,n)とすると、RX補償部16−nは、複素係数WR(m,n)を用いて次式(1)に示す複素乗算を行う。RX補償部16−nでは、複素乗算によって、各信号S(m,n)の振幅だけでなく、位相の補償まで行うことで群遅延偏差も補償する。
S’(m,n)=S(m,n)*WR(m,n) …(1)
複素乗算は、具体的には、次式(2),(3)で示すように、4つの乗算と2つの加算で実現することができる。なお、Re[*]は*の実数部分、Im[*]は*の虚数部分である。
Re[S’(m,n)]
=Re[S(m,n)]*Re[WR(m,n)]
−Im[S(m,n)]*Im[WR(m,n)] …(2)
Im[S’(m,n)]
=Re[S(m,n)]*Im[WR(m,n)]
+Im[S(m,n)]*Re[WR(m,n)] …(3)
ここで、分波後のデータのサンプリング速度は、分波前のサンプリング速度に対して1/m倍(↓m)で間引かれるため、これらの演算は、m=8で時分割処理してもよい。この場合、n番目のRX補償部16−nで必要となる乗算器の数は4個、加算器の数は2個でよく、乗算器および加算器の必要数を1/m倍に削減できる。
さらに回路規模を減らしたい場合は、群遅延偏差を補償できなくなるが、次式(4),(5)に示す実数型係数GR(m,n)で補償してもよい。
Re[S’(m,n)]=Re[S(m,n)]*GR(m,n) …(4)
Im[S’(m,n)]=Im[S(m,n)]*GR(m,n) …(5)
この場合、RXF13−nの周波数対振幅特性の補償だけ行われることになるが、前記時分割処理を施した上で、n番目のRX補償部16−nで必要となる乗算器の数は2個、加算器は0個でよい。
つぎに、TXF21−nの周波数対振幅特性が理想ではなく、湾曲した場合で、かつ、TX補償部18−nを動作させた場合の動作例について、図6を用いて説明する。図6は、中継衛星10が、図5のRX補償部16−0で補償された信号B(実際は信号b1’,b2’,b3’,b4’,b5’の5つのサブチャネルに分波)とRX補償部16−2で補償された信号E(実際は信号e1’,e2’,e3’の3つのサブチャネルに分波)をビームエリア300−1に送信する際のTX補償部18−1の処理を示している。
図6(a)に、TX補償部18−1に入力される信号B(信号b1’,b2’,b3’,b4’,b5’)と信号E(信号e1’,e2’,e3’)を示す。
TX補償部18−nは、後段のTXF21−n(送信アナログフィルタ)と逆の周波数特性を有する複素係数WT(m,n)を有しており、この係数を用いて後段のRXF13−nの周波数対振幅・群遅延特性の傾斜、リップルを打ち消す補償を各サブチャネルに対して行う。前述のように、mは分波・合波数を示し、nは各ポート番号であり、n=0,1,2のいずれかとなる。
図6(b)に、後段のTXF21−1の振幅特性の傾斜、リップルを打ち消すための振幅特性(=逆振幅特性)を実線で、後段のTXF21−1の群遅延偏差を示す打ち消すための群遅延特性(=逆群遅延特性)を点線で示す。
また、図6(b)に、TX補償部18−1で補償後の各分波信号を示す。図6(b)から明らかなように、TX補償部18−1は、予め後段のTXF21−1の周波数特性を打ち消すように外側の分波信号の振幅を増幅し、群遅延も打ち消すように位相を制御する。
以降、TX補償部18−nの具体的な演算内容について説明する。TX補償部18−nに入力されるベースバンド信号をS’(m,n)、TX補償部18−nで補償されたベースバンド信号をS”(m,n)とすると、TX補償部18−nは、複素係数WT(m,n)を用いて次式(6)に示す複素乗算を行う。
S”(m,n)=S’(m,n)*WT(m,n) …(6)
複素乗算は、具体的には、次式(7),(8)で示すように、4つの乗算と2つの加算で実現することができる。前述のように、Re[*]は*の実数部分、Im[*]は*の虚数部分である。
Re[S”(m,n)]
=Re[S’(m,n)]*Re[WT(m,n)]
−Im[S’(m,n)]*Im[WT(m,n)] …(7)
Im[S”(m,n)]
=Re[S’(m,n)]*Im[WT(m,n)]
+Im[S’(m,n)]*Re[WT(m,n)] …(8)
ここで、分波後のデータのサンプリング速度は、分波前のサンプリング速度に対して1/m倍(↓m)で間引かれるため、RX補償部16−nと同様、これらの演算は、m=8で時分割処理してもよい。この場合、n番目のTX補償部18−nで必要となる乗算器の数は4個、加算器の数は2個でよく、乗算器および加算器の必要数を1/m倍に削減できる。
さらに回路規模を減らしたい場合は、群遅延偏差を補償できなくなるが、次式(9),(10)に示す実数型係数GT(m,n)で補償してもよい。
Re[S’(m,n)]=Re[S(m,n)]*GT(m,n) …(9)
Im[S’(m,n)]=Im[S(m,n)]*GT(m,n) …(10)
この場合、TXF21−nの周波数対振幅特性の補償だけ行われることになるが、前記時分割処理を施した上で、n番目のTX補償部18−nで必要となる乗算器の数は2個、加算器は0個でよい。
なお、これらのRX補償側、TX補償側の各係数(WR(m,n),WT(m,n)、またはGR(m,n),GT(m,n))は、中継衛星10内部で記憶してもよいし、一般にアナログフィルタの特性は経年や温度によって変化するため、書換え可能としてもよい。
例えば、中継衛星10の打ち上げ前に、温度ごとに最適な係数系列を求め、中継衛星10において図示しないROMテーブル等のメモリ(記憶手段)に記憶させ、打上げ後、温度情報を元にメモリから最適な係数系列を選択して読み出し、各係数(WR(m,n),WT(m,n)、またはGR(m,n),GT(m,n))を更新してもよい。
あるいは、これら各係数(WR(m,n),WT(m,n)、またはGR(m,n),GT(m,n))を、地上の制御局200から中継衛星10に別の無線周波数回線経由で送信することで、中継衛星10打ち上げ後も地上から係数W(m,n)またはG(m,n)を書き換えられる構成としてもよい。
中継衛星10では、TX補償部18−1の補償後、合波部19−1が、TX補償部18−1から出力された各分波信号を合波し、図6(c)に示す信号B”と信号E”を出力する。図6(c)に示すように、後段のTXF21−nで打ち消されるように、意図的に振幅傾斜、群遅延偏差が付加された信号となっている。中継衛星10では、合波部19−1による合波後の信号を、D/A変換器20−1を介して、TXF21−1へ入力する。図6(d)において、実線はTXF21−1の周波数対振幅特性を示し、点線はTXF21−1の周波数対群遅延特性を示している。
このように、TXF21−1から出力される信号B”および信号E”は、前段のTX補償部18−1で意図的に付加された振幅傾斜、群遅延偏差が、TXF21−1の周波数対振幅・群遅延偏差特性で打ち消されることになる。中継衛星10は、図6(d)に示すように、振幅特性および群遅延偏差特性が帯域幅Fcステップで平坦化した上で、信号B”および信号E”をアンテナ23−1から出力する。
RX補償およびTX補償を行わない場合の出力信号スペクトラム(図4(d))と比較して明らかなように、RX補償およびTX補償を行うことによって、中継衛星10内部で発生する信号B、信号Eの信号歪を大幅に改善できることが判る。
なお、各アナログフィルタの周波数特性が湾曲した場合について説明したが、これに限定するものではない。例えば、振幅特性、群遅延特性がリップル(凸凹)した場合についても、同様に補償することができる。
また、本実施の形態では、ビームエリア100−0とビームエリア100−2からの各アップリンク信号A,B,E,Dの内、ビームエリア300−1に中継する信号B,Eに対する一連の処理について説明したが、一例であり、これに限定するものではない。中継衛星10では、同様に、ビームエリア100−1から受信した信号CをRX補償部16−1で補償し、ビームエリア300−0へ送信する信号CをTX補償部18−0で逆補償、また、ビームエリア300−2へ送信する信号D,CをTX補償部18−2で逆補償して中継する。
これにより、中継衛星10では、例えRXF13−n、TXF21−nの周波数対振幅・群遅延特性が平坦ではなく、傾斜していた、またはリップル(凸凹)していた場合でも、信号歪が少ない信号を中継することができる。
なお、本実施の形態では、分波・合波数m=8として説明したが、m=8に限らず、2以上であれば幾つであってもよい。特に、分波・合波数mを上げていくと、分波部15−n、合波部19−nの回路規模は増加するが、反面、周波数分解能を決定する分波後の信号帯域Fcが小さくなるため、信号歪を周波数方向にきめ細かく補償することができる。
また、ポート数を3個(n=0,1,2)の場合について説明したが、これに限定するものではなく、1個以上であれば何個でもよい。
また、中継衛星10の構成として、アナログフィルタが受信側と送信側それぞれ1個(RXF13−n、TXF21−n)の場合について説明したが、アナログフィルタは送受信側でそれぞれ1個である必要はなく、複数で構成されてもよい。この場合、複数のアナログフィルタを総合した周波数特性等を補償するように、RX補償およびTX補償の各係数を設定すればよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、中継装置は、受信側(分波装置)および送信側(合波装置)において、アナログフィルタの特性をデジタル補償することとした。これにより、回路規模を大きく増加させることなく、僅かな回路追加によって、受信側アナログフィルタの振幅傾斜、リップル、群遅延偏差、および、送信側アナログフィルタの振幅傾斜、リップル、群遅延偏差を、その傾斜が一部強くても平坦に補償することができる。
また、本デジタル補償機能を実装することで、受信アナログフィルタ、送信アナログフィルタの要求仕様を緩和することができるため、受信アナログフィルタ、送信アナログフィルタの回路規模・調整箇所の削減を実現することができる。これは、中継装置の受信アナログフィルタ、送信アナログフィルタの開発コスト、調整工数削減に結びつくため、中継装置の低コスト化につながるといえる。
なお、本実施の形態では、中継装置のアナログフィルタの誤差を補償する内容で説明したが、必ずしも中継装置だけでなく、地上の受信局、送信局にも同様に適用することができる。例えば、地上の受信局に適用する場合、受信局では、RX補償部16−nで上記と同様にして補償されたサブチャネル信号の中から、復調に必要なサブチャネルだけスイッチマトリックス17で選択して集め、合波部19−nで合波することで、RXF13−nで生じた誤差が補償された受信信号を得ることができる。これにより、地上の受信局は、この補償された信号を復調することで良好な受信特性(ビット誤り率特性)を得ることができる。
同様に、地上の送信局に適用する場合、送信局では、変調対象の信号を一旦、分波部15−nでサブチャネル単位に分波後、上記と同様、TX補償18−nで後段のTXF21−nで生じるアナログ誤差を打ち消す補償を与えてから、合波部19−nで合波することで、TXF21−nで生じた誤差が補償された送信信号を出力することができる。これにより、送信相手側の受信局は、この補償された信号を復調することで良好な受信特性(ビット誤り率特性)を得ることができる。
実施の形態2.
実施の形態1では、一連の処理により分波後の信号帯域Fcを十分小さくすれば(mを十分大きくすれば)、アナログフィルタ特性の良好な補償を実現できる。しかしながら、分波・合波数mを増加させると回路規模も増加し、消費電力、コストの増加につながる。
図5(g)、図5(h)に示すRX補償された信号、図6(d)に示すTX補償された信号は、m=8と小さいため回路規模は小さく抑えられるが、mを小さくすると周波数分解能が粗くなるため、各図に示されるように信号帯域が完全に平滑化されているとは言えず、若干振幅特性、群遅延特性にバラつき(凸凹)が残留する。
特に、通過帯域の端で発生する傾きの大きい振幅偏差、群遅延偏差は、mが小さい(周波数分解能が粗い)と、信号帯域内で残留する振幅特性、群遅延特性もバラつき(凸凹)も大きくなり、中継性能の劣化につながる。
そこで、本実施の形態では、例えば、分波・合波数mは8のままとし、実施の形態1と同様にRX補償まで実施後、さらに細かい周波数分解能で補償すべきサブチャネルのみ、新たに追加した分波部でk分波後に補償する。実施の形態1と異なる部分について説明する。
まず、受信側(分波装置)の構成について説明する。図7は、本実施の形態の中継衛星の受信側補償(RX補償)部の構成例を示す図である。分波部15−0からスイッチマトリックス17の間の構成を示している。中継衛星10は、RX補償部16−0に替えて、受信側補償(RX補償)部31−0と、分波部32−0,32−1と、受信側補償(RX補償)部33−0,33−1と、合波部34−0,34−1と、遅延部35と、を備える。分波部・合波部を多段構成した場合の受信側アナログ補償部の構成を示す。なお、分波部15−1,15−2とスイッチマトリックス17の間も同様の構成とする。
RX補償部31−0は、実施の形態1と同様のRX補償を行い、周波数分解能Fcが粗いためアナログ補償が十分ではないサブチャネルの信号を後段の分波部32−0,32−1へ出力する。分波部32−0,32−1は、入力したサブチャネルの信号をk分波する。RX補償部33−0,33−1は、それぞれ、分波部32−0,32−1から入力したサブチャネルの信号について、実施の形態1と同様のRX補償を行う。合波部34−0,34−1は、それぞれ、RX補償部33−0,33−1でRX補償後のサブチャネルの信号を合波する。遅延部35は、分波部32−0,32−1、RX補償部33−0,33−1、合波部34−0,34−1を経由しないサブチャネルの信号を遅延させる。
図7から明らかなように、初段の分波部15−0の分波数はm=8、次の段の分波部32−0,32−1の分波数はk=4であり、さらに細かい周波数分解能で補償すべきサブチャネル数が2の場合の構成を示している。
中継衛星10では、例えば、RX補償部31−0から出力される8つのサブチャネルのうち、2つのサブチャネルのアナログ補償が、周波数分解能Fcが粗いことで十分ではない場合、これらの2つのサブチャネルの信号を、さらに分波部32−0,32−1へ出力する。分波部32−0,32−1は、入力したサブチャネルの信号をそれぞれ4分波し、RX補償部33−0,33−1は、分波されたそれぞれの波(信号)に対して振幅・群遅延の補償を行い、合波部34−0,34−1は、これら振幅・群遅延補償後の信号を合波する。なお、遅延部35は、さらに細かい周波数分解能で補償する必要がない6つのサブキャリアについて、さらに細かい周波数分解能で補償された2つのサブキャリアとの間で時間差が発生しないように遅延させる。
中継衛星10では、この一連の処理により、周波数分解能Fcより細かい周波数分解能で補償すべき2つのサブチャネルについて、Fc/4の周波数分解能で補償することができる。
すなわち、中継衛星10では、周波数分解能に相当する信号帯域幅Fcでは分解能が不十分となる一部の帯域のみ、さらに信号帯域幅Fc/kの分解能で補償することにより、単に分波・合波数mを上げて周波数分解能を向上させる場合と比較して、分波部・合波部の回路規模、スイッチ部の回路規模の増加を抑えることができる。
例えば、図7と同様の分解能(Fc/4)を、分波・合波数mを上げて対処すると、mは8から32に増やす必要がある。この場合、分波部15−0〜15−2、合波部19−0〜19−2、スイッチマトリックス17の各回路規模は、m=8の場合と比較して4倍以上に増加する。
一方、図7に示す構成のように、分波部・合波部を多段構成する場合、追加される回路規模は、2式の4分波(分波部32−0,32−1)、RX補償(RX補償部33−0,33−1)、4合波(合波部34−0,34−1)程度である。スイッチマトリックス17とのインタフェース信号数は増えないため、スイッチマトリックス17の回路規模は増えない。このように、図7に示す構成とすることで、回路増加量は図1に示す基本構成の2倍以下と見積もることができ、単に分波・合波数mを上げて対処する場合と比較して、回路規模の増加を1/2倍以下に抑えることができる。
なお、図7では、RX補償部31−0の出力である2つのサブチャネルが、分波部32−0,32−1に固定的に接続される構成となっているが、RX補償部31−0と分波部32−0,32−1の間にスイッチを追加で設け、RX補償部31−0から出力される8つのサブチャネルから任意に2つのサブチャネルを選択し、分波部32−0,32−1に供給してもよい。周波数分解能Fc/4で補償された2つのサブチャネルは、他のサブチャネルと合わせて、後段のスイッチマトリックス17でスイッチングされる。この場合、周波数分解能Fc/4でアナログ補償する帯域を自由に選べることができるので、中継衛星10では、信号受信時における様々なケースに対応することができる。
なお、図7では、m=8、k=4、さらに細かい周波数分解能で補償すべきサブチャネル数が2の場合について説明したが、一例であり、それぞれ、これらの数に限定するものではない。
また、実施の形態1のRX補償部16−0から構成を置き換える場合について説明したが、例えば、本実施の形態の受信側補償(RX補償)部31−0と実施の形態1のRX補償部16−0は同じ性能のものでも異なる性能のものでもよい。同じ性能の場合には、実施の形態1の構成に、分波部32−0,32−1、受信側補償(RX補償)部33−0,33−1、合波部34−0,34−1、遅延部35、を追加する構成としてもよい。
つぎに、送信側(合波装置)の構成について説明する。中継衛星10では、受信側と同様、分波・合波数mは8のままとし、TX補償前に、予め一部のサブチャネルだけさらに細かい周波数分解能で逆補償することができる。
図8は、本実施の形態の中継衛星の送信側補償(TX補償)部の構成例を示す図である。スイッチマトリックス17から合波部19−0の間の構成を示している。中継衛星10は、TX補償部18−0に替えて、分波部41−0,41−1と、送信側補償(TX補償)部42−0,42−1と、合波部43−0,43−1と、遅延部44と、送信側補償(TX補償)部45−0と、を備える。分波部・合波部を多段構成した場合の送信側アナログ補償部の構成を示す。なお、スイッチマトリックス17と合波部19−1,19−2の間も同様の構成とする。
分波部41−0,41−1は、入力したサブチャネルの信号をk分波する。TX補償部42−0,42−1は、それぞれ、分波部41−0,41−1から入力したサブチャネルの信号について、実施の形態1と同様のTX補償を行う。合波部43−0,43−1は、それぞれ、TX補償部42−0,42−1でTX補償後のサブチャネルの信号を合波する。遅延部44は、分波部41−0,41−1、TX補償部42−0,42−1、合波部43−0,43−1を経由しないサブチャネルの信号を遅延させる。TX補償部45−0は、実施の形態1と同様のTX補償を行う。
図8から明らかなように、後段の合波部19−0の合波数はm=8、前段の分波部41−0,41−1の分波数はk=4であり、さらに細かい周波数分解能で逆補償すべきサブチャネル数が2の場合の構成を示している。
中継衛星10では、例えば、TX補償部45−0で逆補償される8つのサブチャネルのうち、2つのサブチャネルのアナログ補償が、周波数分解能Fcが粗いことで十分ではない場合、これらの2つのサブチャネル信号を、事前に分波部41−0,41−1へ出力する。分波部41−0,41−1は、入力したサブチャネルの信号をそれぞれ4分波し、TX補償部42−0,42−1は、分波されたそれぞれの波(信号)に対して振幅・群遅延の逆補償を行い、合波部43−0,43−1は、これら振幅・群遅延逆補償後の信号を合波する。なお、遅延部44は、さらに細かい周波数分解能で逆補償する必要がない6つのサブキャリアについて、さらに細かい周波数分解能で逆補償された2つのサブキャリアとの間で時間差が発生しないように遅延させる。
中継衛星10では、この一連の処理により、周波数分解能Fcより細かい周波数分解能で補償すべき2つのサブチャネルについて、Fc/4の周波数分解能で逆補償することができる。
この場合、図7に示した受信側と同様、単に分波・合波数mを上げて対処する場合と比較して、回路規模の増加を1/2倍以下に抑えることができる。
なお、図8では、TX補償部45−0に入力する2つのサブチャネルが、合波部43−0,43−1に固定的に接続される構成となっているが、スイッチマトリックス17で、Fc/4の分解能で逆補償したいサブチャネルを分波部41−0,41−1に入力し、合波部43−0,43−1とTX補償部45−0の間にスイッチを追加で設け、TX補償部45−0に入力される前の8つのサブチャネルを任意に並び換えてから、TX補償部45−0で逆補償してもよい。周波数分解能Fc/4でアナログ逆補償する帯域を自由に選べることができるので、中継衛星10では、信号送信時における様々なケースに対応することができる。
なお、図8では、m=8、k=4、さらに細かい周波数分解能で補償すべきサブチャネル数が2の場合について説明したが、一例であり、それぞれ、これらの数に限定するものではない。
また、実施の形態1のTX補償部18−0から構成を置き換える場合について説明したが、例えば、本実施の形態の送信側補償(TX補償)部45−0と実施の形態1のTX補償部18−0は同じ性能のものでも異なる性能のものでもよい。同じ性能の場合には、実施の形態1の構成に、分波部41−0,41−1、送信側補償(TX補償)部42−0,42−1、合波部43−0,43−1、遅延部44、を追加する構成としてもよい。
また、受信側(分波装置)と送信側(合波装置)について、細かく周波数分解する対象のサブチャネルの数(2つ)およびそのサブチャネルをさらに細かく周波数分解する数(4つ)が同数として説明したが、一例であり、受信側(分波装置)と送信側(合波装置)で異なっていてもよい。なお、受信側(分波装置)において、実施の形態1のRX補償部16−0をRX補償部31−0〜遅延部35の構成に置き換えていたが、RX補償部31−0〜遅延部35の動作を1つのRX補償部として行うようにしてもよい。同様に、送信側(合波装置)において、実施の形態1のTX補償部18−0を分波部41−0,41−1〜TX補償部45−0の構成に置き換えていたが、分波部41−0,41−1〜TX補償部45−0の動作を1つのTX補償部として行うようにしてもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、m個に分波されたサブチャネルの信号のうち、さらに細かい周波数分解能で補償すべきサブチャネルのみ、新たに追加した分波部でk分波後に補償することとした。これにより、回路規模の増加を抑えつつ、全体として、さらに細かい周波数分解能で補償することができる。
実施の形態3.
実施の形態1では、RXF13−nが、乗算後の信号からベースバンド信号を抽出し、A/D変換器14−nが、RXF13−nで抽出したベースバンド信号をサンプリングする場合について説明した。
本実施の形態では、RXF13−nが、乗算後の信号のから中間周波数(IF)信号を抽出し、A/D変換器14−nが、RXF13−nで抽出した中間周波数(IF)信号をサンプリングする場合について説明する。この場合、分波部15−nが、サンプリングしたIF信号をデジタル直交検波してベースバンド信号に変換後、分波処理を行えばよい。
図9は、本実施の形態の中継衛星の分波部15−nの構成例を示す図である。分波部15−nは、デジタル直交検波部51と、ローパスフィルタ52と、ダウンサンプラ53と、デジタル分波部54と、を備える。
デジタル直交検波部51は、受信IF信号に対して同じ周波数のデジタル複素ローカル信号を乗算する。ローパスフィルタ52は、ベースバンド成分を抽出し、高調波成分を除去する。ダウンサンプラ53は、ローパスフィルタ52から出力されたベースバンド信号のサンプリング速度を1/2に間引いた上で、メイン機能であるデジタル分波部54へ出力する。デジタル分波部54は、ダウンサンプラ53から入力したデジタル信号をm個の信号に分波する。
同様に、実施の形態1では、合波部19−nから出力された合波信号は、D/A変換器20−nでアナログベースバンド信号に変換後、TXF21−0を介して,アップコンバータ22−nでベースバンド帯から無線周波数帯に変換する場合について説明した。
本実施の形態では、合波部19−nが、合波した信号を中間周波数(IF)データにデジタル直交変調し、D/A変換器20−nが、アナログIF信号に変換後、TXF21−0を介して、アップコンバータ22−0が、アナログIF信号から無線周波数帯に変換する場合について説明する。
図10は、本実施の形態の合波部19−nの構成例を示す図である。合波部19−nは、デジタル合波部61と、アップサンプラ62と、ローパスフィルタ63と、直交変調部64と、を備える。
デジタル合波部61は、各入力ベースバンド信号を1つの波(信号)に合波する。アップサンプラ62は、合波後のベースバンドデータ系列にゼロを挿入することで、サンプリング速度を2倍に上げる。ローパスフィルタ63は、ゼロ挿入でサンプリング速度が2倍に上げられたことで発生する高調波を除去し、ベースバンド成分を抽出する。直交変調部64は、ローパスフィルタ63から入力したベースバンドデータを、IFデータに変換する。
以上説明したように、本実施の形態によれば、中継衛星内で中継処理の対象とする信号をIF信号にすることとした。このように、デジタル部とアナログ部のインタフェースをIF信号とすることで、A/D変換器14−n、D/A変換器20−nの所要サンプリング速度は上がるが、直交検波、直交変調をデジタルで行うため、アナログ直交検波、アナログ直交変調で発生するI,Q振幅誤差、直交誤差を無くすことができる。また、所要のA/D変換器、D/A変換器、RXF、TXFの数を、それぞれ2個から1個に削減することができる。
実施の形態4.
本実施の形態では、中継衛星10のアナログフィルタ特性(RXF,TXF)の補償の他、地上局の送信フィルタ、受信フィルタの特性を補償する。
図11は、本実施の形態の中継装置を備えた衛星通信システムの構成例を示す図である。中継衛星10の構成は、実施の形態1と同様である。受信側において、ビームエリア100−0内に送信局400、ビームエリア100−0内に送信局400があり、送信側において、ビームエリア300−1内に受信局500、ビームエリア300−2内に受信局501がある。
ここでは、一例として、ビームエリア100−0内の送信局400が図2(a)に示す信号Bを送信し、中継衛星10が信号Bを中継して、ビームエリア300−1内に位置する受信局500が図2(b)に示す信号Bを受信する過程において、中継衛星10が、自身が備えるアナログフィルタ特性(RXF,TXF)の補償とともに、送信局400の送信側アナログフィルタの特性の補償、および受信局500の受信側アナログフィルタの特性の補償を行う処理について説明する。
まず、中継衛星10を介した通信を開始する前に、予め送信局400の送信側アナログフィルタの特性と受信局500の受信側アナログフィルタの特性を求めておく。
この内、送信局400の送信側アナログフィルタ特性については、中継衛星10のRX補償部16−nが、実施の形態1で示したRXF13−nのフィルタを補償する原理・要領で、同様に補償することができる。また、受信局500の受信側アナログフィルタ特性については、中継衛星10のTX補償部18−nが、実施の形態1で示したTXF21−nのフィルタを補償する原理・要領で、同様に補償することができる。
そのため、送信局400は、送信局400の送信側アナログフィルタ特性をRX補償部16−nで補償するための係数WA(i)を求めておく。同様に、受信局500は、受信局500の受信側アナログフィルタ特性をTX補償部21−nで補償するための係数WB(i)を求めておく。
ここで、係数データ数iは、通信信号の帯域幅で決定される。例えば、信号Bの場合、図2(a)に示すように帯域幅は5Fcとなるため、係数データの数はi=5となる。
つぎに、制御局200は、信号Bの通信を開始する前に、送信局400から係数WA(i)を別の無線回線または有線回線で受信する。同様に、制御局200は、信号Bの通信を開始する前に、受信局500から係数WB(i)を別の無線回線または有線回線で受信する。
そして、制御局200は、信号Bの通信要求に応じて、中継衛星10のスイッチマトリックス17の接続制御を行うとともに、係数WA(i)を中継衛星10のRX補償部16−0に、係数WB(i)を中継衛星10のTX補償部18−1に設定する。制御局200から中継衛星10への設定は、いずれも別の無線回線を用いて行う。
具体的に、制御局200は、サブチャネル番号をj(∈{1,2,3,…,8})とすると、RXF13−0のフィルタ補償用の係数WR(j,0)と、同じサブチャネル番号に相当する係数WA(j)を複素乗算した結果を、中継衛星10のRX補償部16−0に設定する。これにより、RX補償部16−0は、RXF13−0のフィルタ特性とともに、送信局400の送信側アナログフィルタ特性の両方を同時に補償することができる。
同様に、制御局200は、サブチャネル番号をj(∈{1,2,3,…,8})とすると、TXF21−1のフィルタ補償用の係数WT(j,1)と、同じサブチャネル番号に相当する係数WB(j)を複素乗算した結果を、中継衛星10のTX補償部18−1に設定する。これにより、TX補償部18−1は、TXF21−1のフィルタ特性とともに、受信局500の受信側アナログフィルタ特性の両方を同時に補償することができる。
以上の設定が完了すると、送信局400は信号Bを送信し、中継衛星10は信号Bを中継し、受信局500は信号Bを受信する。この過程で、送信局400のアナログフィルタと中継衛星10のRXF13−0の補償はRX補償部16−0で行われ、受信局500のアナログフィルタの補償と中継衛星10のTXF21−1の補償はTX補償部18−1で行われる。
なお、送信局400と受信局500の間の通信が終了し、別の地上局間の通信(例えば、図11に示す送信局401と受信局501との間の通信)に切り替わる場合も同様に対応することができる。送信局401および受信局501は、自局の係数を求めておき、制御局200は、中継衛星10の送信局401および受信局501の係数を、それぞれ中継衛星10のRX補償部16−0、TX補償部18−1に設定する。
このように、あらかじめ地上局のフィルタ特性を求めておき、中継衛星10に設定することで、中継衛星10を用いた衛星通信システムでは中継衛星10のアナログフィルタ特性だけでなく、全ての地上局の送受信アナログフィルタ特性も、特別な回路を追加することなく補償することができる。
このように中継衛星10で地上局のフィルタ特性を補償することにより、中継衛星10を介して通信を行う地上の送信局および受信局の各アナログフィルタの要求仕様を緩和することができる。また、中継衛星10だけでなく、地上の送信局および受信局のアナログフィルタの回路規模、調整箇所の削減を実現することができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、中継衛星において、地上の受信局、送信局の各アナログフィルタについても補償することとした。これにより、中継衛星だけではなく、地上の受信局、送信局の開発コスト、調整工数削減を実現することができる。
なお、制御局200は、衛星通信システムに接続する地上局の全て(または一部)の送信フィルタ補償用の係数および受信フィルタ補償用の係数を、予めテーブル表で保持しておいてもよい。この場合、制御局200は、各地上局を接続する毎に、各地上局からの係数情報を受信する手間が省けるため、回線接続時間を短縮することができる。
実施の形態5.
本実施の形態では、補償用の係数WR(m,n)およびWT(m,n)を中継衛星自ら求めて自動的に補償することで、アナログ補償および係数の更新を容易に実現する。
アナログフィルタの補償を行う際、運用システムの管理者等が手動で実施してもよいが補償に時間がかかる。また、一旦補償をしても、経年変化、温度変動により、時間、月、年単位で緩やかに振幅・位相ずれが再度生じる場合も考えられる。そのため、本実施の形態では、中継衛星10内で補償用の係数WR(m,n)およびWT(m,n)を自動的に求め、求めた値を用いて振幅・位相ずれを自動補償する。
なお、本実施の形態で実施する補償は、中継衛星10内部で補正用の無変調(CW)波を生成して行うため、該当のポートへの中継信号入出力を停止し、スタンバイ状態にした上で実施する。
一般に、中継衛星10は、実際の運用に必要なポート数だけを確保することはなく、故障に備えて予備のポートも複数備えている。したがって、中継衛星10では、各ポートを順次スタンバイ状態にして補償する際は、以下の手順(1)〜(6)で実施することで、一旦信号中継が中断されてしまう事態を回避することができる。
手順(1) 中継衛星10は、予備系のポートを立ち上げ、予備系のポートにも補償対象のポートと同じ中継信号を流す。
手順(2) 中継衛星10は、予備系のポートと補償対象のポートの両方に同じ信号が流れ始めたら、デジタル内部(例えば、スイッチマトリクス17)で、あるタイミングで予備系のポートのデータを中継し、同時に補償対象のポートのデータ中継を停止する。このデジタル的な切り替えにより、信号断線が発生することなく、補償対象のポートから予備系のポートに移って信号が中継されることになる。
手順(3) 中継衛星10は、後述する方法に基づいて、補償対象ポートの送信アナログフィルタ(TXF21−n)の自動補償を実施する。
手順(4) 中継衛星10は、同様に、後述する方法に基づいて、補償対象ポートの受信アナログフィルタ(RXF13−n)の自動補償を実施する。
手順(5) 中継衛星10は、送受のアナログフィルタの補償後、予備系のポートだけでなく、補償済みのポートにも同じ中継信号を流す。ただし、デジタル内部(例えば、スイッチマトリクス17)で補償済みポートのデータを未出力とすることで、2つの信号が合成されないように制御する。
手順(6) 中継衛星10は、補償対象のポートと予備系のポートの両方に同じ信号が流れ始めたら、デジタル内部(例えば、スイッチマトリクス17)で、あるタイミングで補償済みポートのデータを出力し、予備系のポートのデータを停止する。このデジタル的な切り替えにより、信号断線が発生することなく、予備系のポートから補償済みのポートに移って信号が中継されることになる。
中継衛星10では、上記手順に則って各ポートの送受アナログフィルタの補償を順次自動で実施していくことで、中継する信号が途切れることを回避することができる。なお、上記の例では、一旦補償対象のポートから予備系ポートに中継信号を移して補償後に戻すという手順としたが、予備系ポートの補償については、既に信号が中継されていないため、上記手順は関係なくいつでも補償を行うことができる。
また、運用システム側で、中継する信号を別の周波数帯に割り当てる、または停止させ、補償対象のポートが扱う信号帯域に信号を無くしてから予備系のポートに切り替え、再度信号を中継させていく方法もある。この場合、中継する信号を一旦止めるため運用制約は生じるが、中継の切り替え手順は簡単化できる。なお、主系のポートの一部が故障し、常に予備系のポートも動作させる必要がある場合には、中継する信号を一旦止めてから自動補償を実施していくこととする。
以降、上記手順(3),(4)で実施するアナログフィルタ補償の詳細について説明する。まず、送信アナログフィルタ(TXF21−n)の特性を自動補償する方法について説明する。
図12は、本実施の形態のTXF21−0の特性を自動補償する中継衛星10の構成例を示す図である。実施の形態1の構成に加えて、補正用データ生成部71−0と、アナログスイッチ72−0,73−0と、振幅・位相差検出部74−0と、を備える。図12中に示す信号スペクトラム75は、補正用データ生成部71−0から出力された無変調データが、合波部19−0で合波、D/A変換器20−0でD/A変換された後の信号スペクトラムの一例を示している。
補正用データ生成部71−0は、補正用ベースバンド無変調信号を生成する。アナログスイッチ72−0は、TXF21−0からの信号の出力先を切り替える。アナログスイッチ73−0は、A/D変換器14−0への信号の入力元を切り替える。振幅・位相差検出部74−0は、TXF補償用の係数を求める。
中継衛星10では、自動補償時、アナログスイッチ72−0は、TXF21−0の出力をアップコンバータ22−0ではなく、アナログスイッチ73−0の入力に接続する。アナログスイッチ73−0は、RXF13−0ではなく、TXF21−0の出力を選択する。このように各アナログスイッチ72−0,73−0の設定を行った上で、補正用データ生成部71−0は、m個の補正用ベースバンド無変調信号Cbを生成する。
ベースバンド無変調信号Cbを式(11)に示す。ここで、mは分波・合波数、Fcはサブチャネル帯域幅、bは周波数番号(∈{1,2,…,m})、Aは振幅、θbは初期位相を示す。初期位相θbは、マルチキャリア信号のピーク電力を下げるようにランダマイズさせてもよい。
Cb=Aexp(jθb) …(11)
合波部19−0は、これらm個のベースバンド無変調信号を合波後、場合によってはベースバンド帯から中間周波数fmに変換し、例えば、図13に示すマルチキャリア信号に変換する。図13は,中間周波数fm、m=8におけるマルチキャリア信号に変換された各補正用無変調信号の周波数配置例を示す図である。周波数fm−3.5Fcから周波数fm+3.5Fcの間で、帯域幅Fcで8つの補正用無変調信号が配置されている状態を示すものである。中継衛星10では、このマルチキャリア信号を、アナログスイッチ72−0,73−0の設定により、D/A変換器20−0でアナログ信号に変換後、TXF21−0を介して、A/D変換器14−0に入力する。
A/D変換器14−0が、入力したマルチキャリア信号をサンプリングし、分波部15−0が、サンプリング後の信号をm個の受信ベースバンド無変調信号に分波する。なお、中間周波数fmで分波部15−0に入力される場合、分波部15−0は、ベースバンド帯に周波数変換してから分波を行う。
b番目の受信ベースバンド無変調信号Rbを式(12)に示す。ここで、bは周波数番号(∈{1,2,…,m})、ΔAbはb番目の受信ベースバンド無変調信号の振幅、Δθbはb番目の受信ベースバンド無変調信号の位相である。
Rb=ΔAbexp(jΔθb) …(12)
振幅・位相差検出部74−0は、ベースバンド無変調信号Cbを記憶しており、次式(13)で示すとおり、ベースバンド無変調信号Cbを受信ベースバンド無変調信号Rbで除算することでTXF補償用の係数WT(m,0)を求める。
WT(m,0)
=Cb/Rb
=(Re[Cb]+jIm[Cb])/(Re[Rb]+jIm[Rb])
=(Re[Cb]*Re[Rb]+Im[Cb]*Im[Rb])
/(Re[Rb]2+Im[Rb]2)
+j(Im[Cb]*Re[Rb]−Re[Cb]*Im[Rb])
/(Re[Rb]2+Im[Rb]2) …(13)
振幅・位相差検出部74−0は、式(13)で求めたTXF補償用の係数WT(m,0)をTX補償部18−0に設定する。TX補償部18−0は、すでに係数WT(m,0)が設定されていた場合には、係数WT(m,0)を更新(補正)する。上記一連の処理により、本実施の形態では、中継衛星10は、TXF21−0の振幅・位相誤差を補償する係数WT(m,0)を自動的にTX補償部18−0に設定することができる。
なお、ここでは、0ポート目(n=0)のTXF21−0に関する補償について説明したが、1ポート目のTXF21−1、2ポート目のTXF21−2を補償するための係数WT(m,1),WT(m,2)についても同様に求めることができる。
また、図8に示す構成で、さらにTX補償部42−0,42−1の自動補償を実現したい場合も、同様の方法で実現することができる。例えば、分波部41−0,41−1の分波数、合波部43−0,43−1の合波数がk=4の場合、補正用CW信号の間隔を、図13に示す間隔の1/4倍に狭め、図13に示す8本のCW信号を32本のCW信号に増やした上で、補正用データ生成部71−0から送信してもよい。この場合、振幅・位相差検出部74−0は、分波部41−0,41−1の出力を、予め記憶しているベースバンド無変調信号で除算することで、TX補償部42−0,42−1用の補償用の係数を求め、TX補償部45−0に設定する。
つぎに、受信アナログフィルタ(RXF13−n)の特性を自動補償する方法について説明する。
図14は、本実施の形態のRXF13−0の特性を自動補償する中継衛星10の構成例を示す図である。実施の形態1の構成に加えて、補正用データ生成部71−0と、アナログスイッチ76−0,77−0と、振幅・位相差検出部78−0と、を備える。
アナログスイッチ76−0は、D/A変換器20−0からの信号の出力先を切り替える。アナログスイッチ77−0は、RXF13−0への信号の入力元を切り替える。振幅・位相差検出部78−0は、RXF補償用の係数を求める。
中継衛星10では、自動補償時、アナログスイッチ76−0は、D/A変換器20−0の出力をTXF21−0ではなく、アナログスイッチ77−0の入力に接続する。アナログスイッチ77−0は、ダウンコンバータ12−0ではなく、D/A変換器20−0の出力を選択する。このように各アナログスイッチ76−0,77−0の設定を行った上で、補正用データ生成部71−0は、m個の補正用ベースバンド無変調信号Cbを前記の式(11)に則って生成する。
中継衛星10では、合波部19−0が、これらm個のベースバンド無変調信号を合波してマルチキャリア信号に変換後、D/A変換器20−0、RXF13−0を介して、マルチキャリア信号をA/D変換器14−0に入力する。A/D変換器14−0が、入力したマルチキャリア信号をサンプリングし、分波部15−0が、サンプリング後の信号をm個の受信ベースバンド無変調信号に分波する。
ここで、分波後のb番目の受信ベースバンド無変調信号Rbを前記の式(12)で表記すると、振幅・位相差検出部78−0は、式(13)と同様、RXF補償用の係数WR(m,0)を式(14)で求める。RX補償部16−0に設定する。
WR(m,0)
=Cb/Rb
=(Re[Cb]*Re[Rb]+Im[Cb]*Im[Rb])
/(Re[Rb]2+Im[Rb]2)
+j(Im[Cb]*Re[Rb]−Re[Cb]*Im[Rb])
/(Re[Rb]2+Im[Rb]2) …(14)
振幅・位相差検出部78−0は、式(14)で求めたRXF補償用の係数WR(m,0)をRX補償部16−0に設定する。RX補償部16−0は、すでに係数WR(m,0)が設定されていた場合には、係数WR(m,0)を更新(補正)する。上記一連の処理により、本実施の形態では、中継衛星10は、RXF13−0の振幅・位相誤差を補償する係数WR(m,0)を自動的にRX補償部16−0に設定することができる。
なお、ここでは、0ポート目(n=0)のRXF13−0に関する補償について説明したが、1ポート目のRXF13−1、2ポート目のRXF13−2を補償するための係数WR(m,1),WR(m,2)についても同様に求めることができる。
また、図7に示すRX補償部16−0の構成で、さらにRX補償部33−0,33−1の自動補償を実現したい場合も、同様の方法で実現することができる。例えば、分波部32−0,32−1の分波数、合波部34−0,34−1の合波数がk=4の場合、補正用CW信号の間隔を、図13に示す間隔の1/4倍に狭め、図13に示す8本のCW信号を32本のCW信号に増やした上で、補正用データ生成部71−0から送信してもよい。この場合、振幅・位相差検出部78−0は、分波部32−0,32−1の出力を、予め記憶しているベースバンド無変調信号で除算することで、RX補償部33−0,33−1用の補償用の係数を求め、RX補償部16−0に設定する。
以上説明したように、本実施の形態によれば、中継衛星10は、補償用の係数WR(m,n),WT(m,n)を自ら求めて自動的に設定することとした。これにより、手動補償と比較して、調整時間を短縮することができ、また、調整工数の削減を実現することができる。
さらに、周期的に自動補償、すなわち周期的に係数WR(m,n),WT(m,n)の更新を行うことで、経年変化や温度変動により、時間、月、年単位で緩やかに中継衛星10のアナログフィルタの振幅・位相ずれが生じた場合においても、中継衛星10では、中継する信号の通信品質を確保することができる。
実施の形態6.
本実施の形態5では、ベースバンド帯または中間周波数帯の送信アナログフィルタ(TXF)、受信アナログフィルタ(RXF)の周波数特性に関する自動補償について説明した。本実施の形態では、同様の要領で、アップコンバータ22−0内の送信アナログフィルタ、ダウンコンバータ12−0内の受信アナログフィルタの周波数特性も自動補償する方法について説明する。
前提として、アップコンバータとダウンコンバータの各アナログフィルタの自動補償を行う前に、中間周波数帯の送信アナログフィルタ(TXF)、受信アナログフィルタ(RXF)の周波数特性に関する自動補償が、実施の形態5に示す要領で完了しているものとする。
図15は、本実施の形態のアップコンバータ22−0とダウンコンバータ12−0の特性を自動補償する中継衛星10の構成例を示す図である。ダウンコンバータ12−0は、周波数変換部81−0と、スイッチ85−0と、受信バンドパスフィルタ(BPF)86−0と、スイッチ87−0と、ミキサ88−0と、を備える。また、周波数変換部81−0は、バンドパスフィルタ(BPF)82−0と、ローカル信号発振器83と、ミキサ84−0と、を備える。
周波数変換部81−0は、上り周波数を下り周波数に変換する。BPF82−0は、隣接するシステムの信号帯域を一部含んで信号を通過させるアナログバンドパスフィルタである。ローカル信号発振器83は、上り周波数を下り周波数に変換するための信号を発生する。ミキサ84−0は、BPF82−0から出力された上り信号およびローカル信号発振器83から出力されたローカル信号より、上り信号を下り周波数に変換する。スイッチ85−0は、受信BPF86−0への信号の入力元を切り替える。受信BPF86−0は、下り周波数に変換された信号を抽出する。スイッチ87−0は、ミキサ88−0への信号の入力元を切り替える。ミキサ88−0は、補正用マルチキャリア信号をダウンコンバートする。
また、アップコンバータ22−0は、ローカル信号発振器89と、ミキサ90−0と、送信バンドパスフィルタ(BPF)91−0と、を備える。
ローカル信号発振器89は、ダウンリンク周波数(Fd)と中間周波数fmの間を変換するための信号を発生する。ミキサ90−0は、補正用マルチキャリア信号をアップコンバートする。送信BPF91−0は、周波数特性を付加した補正用マルチキャリア信号を出力する。
一般に、衛星通信システムでは、上り周波数と下り周波数は異なるため、図15に示すように上り周波数(Fu)を下り周波数(Fd)に変換する周波数変換部81−0を設けたが、上り周波数と下り周波数が同じ無線システムでは、周波数変換部81−0は不要である。
図15に示すように、補償対象の受信BPF86−0と送信BPF91−0の周波数帯を下り周波数(Fd)に共通化したことで、前述の送信アナログフィルタ(TXF)、受信アナログフィルタ(RXF)の自動補償と同じ方法で受信BPF86−0、送信BPF91−0を補償することができる。
まず、周波数変換部81−0の動作について説明する。ダウンコンバータ12−0では、周波数変換部81−0が、受信アンテナ11−0で受信した上り周波数Fuの信号を下り周波数に変換する。周波数変換部81−0では、はじめにBPF82−0が、自システムの信号帯域を、隣接するシステムの信号帯域を一部含んで通過させる。
ここで、BPF82−0は、他システムの信号を多く取り込まないように設けているため、BPF82−0に要求される帯域外減衰特性の傾斜は緩やかであってよい。したがって、BPF82−0は比較的容易に実現でき、帯域内の振幅誤差、群遅延偏差は十分小さく抑えた設計ができるため、本実施の形態での補償の対象外とする。隣接する周波数に他システムの信号が存在しない場合、または存在しても十分小さな受信レベルである場合には、BPF82−0は削除してもよい。
ミキサ84−0は、BPF82−0から出力された上り信号と、ローカル信号発振器83から出力されたローカル信号を乗算し、上り信号を下り周波数(Fd)に変換する。
自動補償を行わない通常の信号中継動作時では、受信BPF86−0は、スイッチ85−0経由で入力する信号から、下り周波数(Fd)に変換された信号を抽出し、他の不要波を除去して出力する。
つぎに、受信BPF86−0の補償方法について説明する。なお、受信BPF86−0を補償する前に、中間周波数帯の送信アナログフィルタ(TXF)、受信アナログフィルタ(RXF)の周波数特性に関する自動補償を完了させておく。
まず、スイッチ85−0を、ミキサ84−0ではなく、ミキサ90−0の出力を選択するように切り替える。また、図14において、補正用データ生成部71−0は、補正用マルチキャリア信号を生成して出力する。D/A変換器20−0は、D/A変換した補正用マルチキャリア信号を、スイッチ76−0、TXF21−0を介して、アップコンバータ22−0のミキサ90−0へ出力する。
図15において、ミキサ90−0は、補正用マルチキャリア信号に、ローカル信号発振器89で生成されたローカル信号を乗算し、補正用マルチキャリア信号をダウンリンク周波数(Fd)にアップコンバートする。ミキサ90−0は、アップコンバートされた補正用マルチキャリア信号を、スイッチ85−0を介して受信BPF86−0へ出力し、受信BPF86−0は、周波数特性を付加して出力する。受信BPF86−0は、周波数特性を付加した補正用マルチキャリア信号を、スイッチ87−0を介してミキサ88−0へ出力する。ミキサ88−0は、補正用マルチキャリア信号に、ローカル信号発振器89で生成されたローカル信号を乗算し、補正用マルチキャリア信号を中間周波数(fm)またはベースバンド帯にダウンコンバートする。
このように、上り周波数(Fu)の信号を周波数変換部81−0で下り周波数に変換する構成としたため、アップコンバータ22−0、ダウンコンバータ12−0は、ローカル信号発振器89を共通して用いることができる。
以降、中継衛星10では、中間周波数(fm)またはベースバンド帯にダウンコンバートした補正用マルチキャリア信号を、図14に示すように、スイッチ77−0、RXF13−0、A/D変換器14−0、分波部15−0を経由して、振幅・位相差検出部78−0へ出力する。
振幅・位相差検出部78−0は、RXF補償用の係数を求める処理と同様にして受信BPF86−0の補償用の係数WB(m,0)を求め、RX補償部16−0へ出力する。
RX補償部16−0は、既に設定済みのRXFの補償用の係数WR(m,0)に、新たに入力した補償用の係数WB(m,0)を複素乗算し、その乗算結果を新たな補償用の係数として設定し直す。この一連の処理により、RX補償部16−0は、RXF13−0と受信BPF86−0の両方のフィルタの誤差を補償することができる。
つぎに、送信BPF61−0の補償方法について説明する。なお、送信BPF61−0を補償する前に、中間周波数帯の送信アナログフィルタ(TXF)、受信アナログフィルタ(RXF)の周波数特性に関する自動補償を完了させておく。
まず、スイッチ87−0を、BPF86−0ではなく、送信BPF91−0の出力を選択するように切り替える。また、図12において、補正用データ生成部71−0は、補正用マルチキャリア信号を生成して出力する。D/A変換器20−0は、D/A変換した補正用マルチキャリア信号を、TXF21−0、スイッチ72−0を介して、アップコンバータ22−0のミキサ90−0へ出力する。
図15において、ミキサ90−0は、補正用マルチキャリア信号に、ローカル信号発振器89−0で生成されたローカル信号を乗算し、補正用マルチキャリア信号をダウンリンク周波数(Fd)にアップコンバートする。ミキサ90−0は、アップコンバートされた補正用マルチキャリア信号を、送信BPF91−0へ出力し、送信BPF91−0は、周波数特性を付加した補正用マルチキャリア信号を、スイッチ87−0を介してミキサ88−0へ出力する。ミキサ88−0は、補正用マルチキャリア信号に、ローカル信号発振器89で生成されたローカル信号を乗算し、補正用マルチキャリア信号を中間周波数(fm)またはベースバンド帯にダウンコンバートする。
以降、中継衛星10では、中間周波数(fm)またはベースバンド帯にダウンコンバートした補正用マルチキャリア信号を、図12に示すように、RXF13−0、スイッチ73−0、A/D変換器14−0、分波部15−0を経由して、振幅・位相差検出部74−0へ出力する。
振幅・位相差検出部74−0は、TXF補償用の係数を求める処理と同様にして送信BPF61−0の補償用の係数WC(m,0)を求め、TX補償部18−0へ出力する。
TX補償部18−0は、既に設定済みのTXFの補償用の係数WT(m,0)に、新たに入力した補償用の係数WC(m,0)を複素乗算し、その乗算結果を新たな補償用の係数として設定し直す。この一連の処理により、TX補償部18−0は、TXF21−0と送信BPF91−0の両方のフィルタの誤差を補償することができる。
なお、図15において、ローカル信号発振器83,89は、各ポート(n=0,1,2)で共有する構成とすることで、部品点数を減らすことができる。
また、図13では、周波数変換部81−0を、受信アンテナ11−0とスイッチ85−0の間に設けたが、周波数変換部81−0を送信BPF91−0と送信アンテナ23−0の間に移動し、送信BPF91−0から出力される周波数を、上り周波数(Fu)になるように発振器89の周波数を変更し、送信BPF91−0、受信BPF86−0の周波数特性を上り周波数Fuを中心周波数とするように変更してもよい。この場合、周波数変換部81−0は、送信BPF91−0から出力される信号の周波数をFuからFdに変換して、送信アンテナ23−0から出力する。
一般に、下り信号は、アンプで増幅されて出力されるため、このように周波数変換部81−0を送信BPF61−0と送信アンテナ23−0の間に移動させ、受信BPF86−0、送信BPF91−0が上り周波数(Fu)の信号を扱う構成に変更すると、強電力で増幅された下り周波数Fdの信号が、受信BPF86−0、送信BPF91−0等に回り込み、同一周波数干渉として悪影響を与える可能性を排除することができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、中継衛星10は、さらに、アップコンバータ内の送信アナログフィルタおよびダウンコンバータ内の受信アナログフィルタの周波数特性についても自動補償することとした。これにより、実施の形態5と比較して、さらに、調整時間を短縮することができ、また、調整工数の削減を実現することができる。
実施の形態7.
本実施の形態は、実施の形態1で示した方法と別の手法で、同様にデジタル回路規模の増加量を少なく抑えながら、良好なアナログ補償特性を実現する方法について説明する。
本実施の形態における中継装置を備えた中継衛星10の全体構成は図1と同様であるが、RX補償部16−0〜16−2、TX補償部19−0〜19−2、分波部15−0〜15−2、合波部19−0〜19−2の構成と機能が異なる。
本実施の形態では、RX補償部16−0〜16−nは、実施の形態1が図7に示す構成に対して、RX補償部31−0を残し、残りは削除した構成となる。
同様に、TX補償部19−0〜19−2は、実施の形態1が図8に示す構成に対して、RX補償部45−0を残し、残りは削除した構成となる。このように、m分波した信号をさらに細かい周波数分解能で分波する機能、あるいは合波する機能を削除し、RX補償部、TX補償部の回路規模を削減する。
つぎに、本実施の形態における分波部15−0〜15−2、合波部19−0〜19−2の構成を説明する。図16は、本実施の形態の分波部15−nの構成例を示す図である。図9に示すローパスフィルタ52に替えて複素乗算型のローパスフィルタ(複素乗算型ローパスフィルタ52a)を備える。また、図17は、本実施の形態の合波部19−nの構成例を示す図である。図10に示すローパスフィルタ63に替えて複素乗算型のローパスフィルタ(複素乗算型ローパスフィルタ63a)を備える。
本実施の形態では、これら複素乗算型ローパスフィルタを用いてアナログフィルタの振幅誤差、群遅延偏差を粗補償し、補償仕切れなかった残留誤差成分を、RX補償部16−n、TX補償部18−nで精密補償するものである。
特に、複素乗算型ローパスフィルタは、アナログフィルタの振幅誤差、群遅延偏差の傾きを緩やかにするまで補償することを第一目的とする。当然、複素乗算型ローパスフィルタ52a,63aのフィルタタップ数を増やせば、RX補償部16−n、TX補償部18−nでさらに補償することなく、複素乗算型ローパスフィルタ52a,63a単独で、完全にアナログフィルタ特性を補償することができるが、回路規模が増加してしまう。
そのため、本実施の形態では、複素乗算型ローパスフィルタ52a,63aを、ローパスフィルタ52,63と同様、本来の目的である高調波除去に必要なフィルタタップ数の範囲で補償を行う。
複素乗算型ローパスフィルタ52a,63aは、ローパスフィルタ52,63と同様、高調波除去を除去しながら、同時に周波数対振幅特性と周波数対群遅延特性を補償する。これらの補償を実現するため、複素乗算型ローパスフィルタ52a,63aは、ローパスフィルタ52,63と異なり、そのタップ係数は複素数となり、FIRフィルタ内で行われる乗算も複素乗算になる。そのため、ローパスフィルタ52,63と、複素乗算型ローパスフィルタ52a,63aが同じタップ数であっても、複素乗算型ローパスフィルタ52a,63aの方が乗算器の所要数は倍に増えるが、その増加量は装置全体の回路規模と比較すると僅かといえる。
つづいて、本実施の形態における信号の補償処理について説明する。図18は、本実施の形態の受信側の補償処理の例を示す図である。図18(a)は、RXF13−0の誤差が加わった場合のビームエリア100−0からのアップリンク信号A,B、図18(b)はRXF13−2の誤差が加わった場合のビームエリア100−2からのアップリンク信号E,Dを示している。
まず、図18(c)に示す分波部15−0内の複素乗算型ローパスフィルタ(LPF)52aの振幅特性、群遅延特性によって、図18(a)に示す信号A,Bは、図18(c)に示す信号A,Bに粗く補償される。図18(c)に示すように、若干の緩やかな振幅誤差と、群遅延偏差が残留する。
同様に、図18(d)に示す分波部15−2内の複素乗算型ローパスフィルタ(LPF)52aの振幅特性、群遅延特性によって、図18(b)に示す信号E,Dは、図18(d)に示す信号E,Dに粗く補償される。図18(d)に示すように、若干の緩やかな振幅誤差と、群遅延偏差が残留する。
このように、複素乗算型ローパスフィルタは、完全な補償を実現するものではなく、限られた回路規模で、残留する振幅誤差や群遅延偏差を緩やかに抑える程度に補償する。
中継衛星10では、複素乗算型ローパスフィルタで補償されたこれらの信号について、後段のRX補償部でさらに実施の形態1で示した同様の手法で補償する。図18(e)にRX補償部16−0で補償後、合波した場合の信号スペクトラムを、図18(f)にRX補償部16−2で補償後、合波した場合の信号スペクトラムを示す。
図18(e),(f)に示すように、複素乗算型ローパスフィルタで補償しきれなかった緩やかな誤差を、後段の各RX補償部で補償する2段階の補償処理により、全体の振幅特性、群遅延特性を平坦化することができる。
つぎに、図19は、本実施の形態の送信側の補償処理の例を示す図である。図19(a)は、TX補償部18−1に入力される各分波データを示している。これに対して、図19(b)に示すように、TX補償部18−1は各分波データに対して、帯域幅Fc単位の逆振幅補償と、逆群遅延偏差補償を行う。この時点では、補償の周波数分解能がFcと粗いため、振幅誤差や群遅延偏差が残留する。
そこで、合波部19−1は、これら8つのデータを合波後、合波部19−1内の複素乗算型ローパスフィルタで残留する振幅誤差や群遅延偏差を補償し、図19(c)に示すように、後段のTXF21−1の振幅特性、群遅延特性を打ち消すような信号を出力する。このような2段階の補償処理によって、ビームエリア300−1へのダウンリンク信号は、図19(d)に示すように振幅特性と群遅延特性を平坦化することができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、受信側では、分波部が備える複素乗算型のローパスフィルタで補償を行い、その後、後段のRX補償部でさらに補償を行い、送信側では、RX補償部で補償を行い、その後、後段の合波部が備える複素乗算型のローパスフィルタで補償を行う。
なお、複素乗算型ローパスフィルタ52a,63aに設定するフィルタのタップ係数は、書き換え可能な構成にしてもよい。この場合、複素乗算型ローパスフィルタの周波数対振幅特性、周波数対群遅延特性を自由に変更できるため、RX補償部、TX補償部に与える係数WR,WTと合わせて、送受信アナログフィルタ特性の個体差を吸収するよう、きめ細かい振幅調整、群遅延調整を実現することができる。また、衛星打ち上げ後も、地上局からこれらのタップ係数を送信し、設定する構成により、きめ細かい振幅調整、群遅延調整を実現することができる。これにより、アナログフィルタへの要求性能を緩和できるため、アナログフィルタのコストや容量、重さの低減を実現することができる。また、実施の形態5,6と同様にして、本複素乗算型ローパスフィルタ52a,63aを組み込んだ自動補償を実現する構成としてもよい。
中継衛星10は、3つに分波された信号Aについて、RX補償部16−0でデジタル振幅・位相制御を行った後、スイッチマトリックス17を経由してTX補償部18−0へ入力する。その際、スイッチマトリックス17は、3つに分波された信号Aを帯域(4−5)〜(4−7)に接続する。すなわち、中継衛星10は、信号Aを、TX補償部18−0、合波部19−0、D/A変換器20−0、TXF21−0、アップコンバータ22−0を経由して、送信アンテナ23−0から、図2(b)に示す周波数位置(帯域(4−5)〜(4−7))へ出力する。
また、中継衛星10は、5つに分波された信号Bについて、RX補償部16−0でデジタル振幅・位相制御を行った後、スイッチマトリックス17を経由してTX補償部18−1へ入力する。その際、スイッチマトリックス17は、5つに分波された信号Bを帯域(5−1)〜(5−5)に接続する。すなわち、中継衛星10は、信号Bを、TX補償部18−1、合波部19−1、D/A変換器20−1、TXF21−1、アップコンバータ22−1を経由して、送信アンテナ23−1から、図2(b)に示す周波数位置(帯域(5−1)〜(5−5))へ出力する。
そして、中継衛星10は、7つに分波された信号Cについて、RX補償部16−1でデジタル振幅・位相制御を行った後、スイッチマトリックス17を経由してTX補償部18−2へ入力する。その際、スイッチマトリックス17は、7つに分波された信号Cを帯域(6−2)〜(6−8)に接続する。すなわち、中継衛星10は、信号Cを、TX補償部18−2、合波部19−2、D/A変換器20−2、TXF21−2、アップコンバータ22−2を経由して、送信アンテナ23−2から、図2(b)に示す周波数位置(帯域(6−2)〜(6−8))へ出力する。
中継衛星10は、3つに分波された信号Eについて、RX補償部16−2でデジタル振幅・位相制御を行った後、スイッチマトリックス17を経由してTX補償部18−1へ入力する。その際、スイッチマトリックス17は、3つに分波された信号Eを帯域(5−6)〜(5−8)に接続する。すなわち、中継衛星10は、信号Eを、TX補償部18−1、合波部19−1、D/A変換器20−1、TXF21−1、アップコンバータ22−1を経由して、送信アンテナ23−1から、図2(b)に示す周波数位置(帯域(5−6)〜(5−8))へ出力する。
なお、中継衛星10は、信号Dについては帯域幅Fc未満のため分波せずに抽出のみ行う。中継衛星10は、帯域(3−8)の信号Dについて、RX補償部16−2でデジタル振幅・位相制御を行った後、スイッチマトリックス17を経由してTX補償部18−2へ入力する。その際、スイッチマトリックス17は、信号Dを帯域(6−1)に接続する。すなわち、中継衛星10は、信号Dを、TX補償部18−2、合波部19−2、D/A変換器20−2、TXF21−2、アップコンバータ22−2を経由して、送信アンテナ23−2から、図2(b)に示す周波数位置(帯域(6−1))へ出力する。
図11は、本実施の形態の中継装置を備えた衛星通信システムの構成例を示す図である。中継衛星10の構成は、実施の形態1と同様である。受信側において、ビームエリア100−0内に送信局400、ビームエリア100−1内に送信局401があり、送信側において、ビームエリア300−1内に受信局500、ビームエリア300−2内に受信局501がある。
まず、スイッチ85−0を、ミキサ84−0ではなく、ミキサ90−0の出力を選択するように切り替える。また、図14において、補正用データ生成部71−0は、補正用マルチキャリア信号を生成して出力する。D/A変換器20−0は、D/A変換した補正用マルチキャリア信号を、アナログスイッチ76−0、TXF21−0を介して、アップコンバータ22−0のミキサ90−0へ出力する。