以下、本発明による流動床燃焼炉及び流動床燃焼炉の運転方法の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、同一又は相当要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る流動床燃焼炉の要部を示す概略断面構成図であり、この流動床燃焼炉は、ここでは、流動床ボイラであって、発電所に用いられるものである。
図1に示すように、流動床ボイラ100は、上下端を閉じた筒状の炉1を備え、炉1を構成する炉壁5内が燃焼室6とされる。この流動床ボイラ100は、燃焼室6に例えば珪砂等の流動材7を予め収容し、燃焼室6の底部に設けた複数の開口9から当該燃焼室6に燃焼空気を導入し、さらに、外部から燃焼室6に燃焼対象の原料を導入し、これらを燃焼空気により流動させながら流動床8を形成して原料を燃焼するものであり、燃焼の際に、炉壁5に配設された水管により熱交換を行うと共に炉1の上部から燃焼ガス(排ガス)を後段に排出する。
なお、ここでは、燃焼対象の原料を、特に好ましいとして、例えばバイオマスや石炭等の燃料としているが、例えば廃タイヤやごみ等の焼却目的の廃棄物とすることもできる。
ここで、特に本実施形態においては、上記流動材7を加熱し炉1内の燃焼室6に供給するための流動材供給装置2が、炉1に対して付設されている。
流動材供給装置2は、流動材7の流路となる流動材供給路3を備える。この流動材供給路3は、上方から下方に向かって鉛直に延びる第1供給路10と、この第1供給路10の下端から傾いて下方に延び炉壁5を貫通して燃焼室6に進入する第2供給路11と、を有する。そして、流動材供給路3内の流動材7は、第1供給路10内を下方に向かって移動し、第2供給路11内を傾斜に従い移動し、燃焼室6に供される。
第1供給路10の途中は、流動材7を加熱するための加熱路12とされている。この加熱路12は、流動材7を加熱するためのものであり、電気式バーナーの一種であるプラズマトーチ4を備える。
プラズマトーチ4は、電気を用いて約4000〜20000°Cの高温のプラズマジェット(高温ガス体)を出力するものである。このプラズマトーチ4は、その先端のノズルが、加熱路12内に進入するように路壁を略水平方向に貫通して設置され、そのノズルから略水平方向に出力されるプラズマジェットによるプラズマフレームPFが、下方に移動する流動材7の傍(側)を横切る配置とされている(交わらない配置とされている)。そして、プラズマトーチ4は、プラズマフレームPFにより、加熱路12内を移動する流動材7を、燃焼室6において上記原料の継続した燃焼を可能とする原料継続燃焼可能温度まで加熱する。この原料継続燃焼可能温度は、ここでは、500°C〜700°Cとされている。プラズマトーチ4の出力方向は流動材7の流動方向と交差する方向である。すなわち、プラズマトーチ4は、落下する流動材7に対して横方向からプラズマジェットを出力することができる。
プラズマトーチ4としては、移行型(TR)トーチ又は非移行型(NTR)トーチの何れも採用することができるが、ここでは、プラズマフレームPFを長くすることができる移行型トーチが採用されている。
次に、このような構成を有する流動床ボイラ100の運転方法について説明する。
先ず、炉1の起動時、具体的には、原料を燃焼室6に投入する前の炉1の起動時に、流動材7を流動材供給路3内に流し、移動する流動材7を、プラズマトーチ4により前述した原料継続燃焼可能温度まで加熱し、必要量の加熱済みの流動材7を燃焼室6に供給する。このとき、燃焼空気を開口9を通して燃焼室6に供給し流動材7を満遍なく流動させる。次いで、原料を燃焼室6に投入し、原料及び流動材7を流動させながら流動床8を形成し、原料を燃焼させる手順となる。
このように、本実施形態においては、原料を燃焼室6に投入する前の炉1の起動時に、プラズマトーチ4により、流動材7を原料継続燃焼可能温度まで加熱するようにしており、このプラズマトーチ4は、化石燃料を用いずに電気を用いて熱を発するため、CO2を削減することができる。加えて、このプラズマトーチ4では、化石燃料の運搬等が必要なく電気を使用するため、取り扱い及び維持管理が容易となる。また、プラズマトーチ4の出力方向は流動材7の流動方向と交差する方向であるため、流動材7によるバーナー閉鎖や摩耗損耗を抑制できる。また、燃焼バーナーを用いた場合は、高温の燃料燃焼ガスと流動材との間で伝熱による熱交換によって流動材の温度を上げる。これに対して、電気式バーナー(プラズマトーチ4)を用いた場合、プラズマフレームPFと流動材7との間で輻射による熱交換を行うことができるため、流動材7の温度を上げやすい。
また、本実施形態によれば、プラズマトーチ4による電気エネルギーを用いた少量の高温ガス体によって、流動材7を効率良く容易に加熱することができる。また、このように、流動材7を効率良く容易に加熱することができるため、流動材7を原料継続燃焼可能温度まで一早く加熱できる。
また、本実施形態では、流動床ボイラ100が配された場所が発電所(発電設備がある設備)のため、発電設備で生じた電気をそのまま利用できる。
また、本実施形態に係る流動床ボイラ100は、流動材7を炉1内に供給するための流動材供給路3と、流動材供給路3に設けられたプラズマトーチ4と、を備えている。このような構成を採用した場合、流動材7が炉1内に供給される前段階で、プラズマトーチ4が流動材7を加熱することができる。
図2は、本発明の第2実施形態に係る流動床燃焼炉の要部を示す概略断面構成図である。
この第2実施形態の流動床ボイラ200が第1実施形態の流動床ボイラ100と違う点は、プラズマトーチ4を、その先端のノズルが、燃焼室6に進入するように炉壁5を貫通させて設置し、このプラズマトーチ4により、燃焼室6に予め収容されている流動材7を、上記原料継続燃焼可能温度まで加熱するようにした点である。
具体的な運転方法は、先ず、原料を燃焼室6に投入する前の炉1の起動時に、燃焼室6に常温の流動材7を外部から供給し、次いで、燃焼空気を開口9を通して燃焼室6に供給し流動材7を満遍なく流動させながら、プラズマトーチ4により、流動材7を前述した原料継続燃焼可能温度まで加熱し、流動材7が原料継続燃焼可能温度に達した後に原料を燃焼室6に投入し、原料が着火し燃焼し始めたらプラズマトーチ4の出力を徐々に下げ、その後、プラズマトーチ4の出力を停止する手順となる。プラズマトーチ4の出力方向は流動材7の流動方向と交差する方向である。すなわち、プラズマトーチ4は、開口9を通る燃焼空気によって流動する流動材7に対して横方向からプラズマジェットを出力することができる。なお、本実施形態において流動材の流動方向とは燃焼空気が供給される方向(鉛直方向)のことを言い、流動材が水平方向に移動するものは流動材の流動方向に含まない。
なお、プラズマトーチ4としては、移行型トーチ又は非移行型トーチの何れも採用することができるが、ここでは、バーナーと似たフレームを形成できる非移行型トーチとするのが好ましい。
このような第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、原料を燃焼室6に投入する前の炉1の起動時に、プラズマトーチ4により、流動材7を原料継続燃焼可能温度まで加熱するため、第1実施形態と同様な効果を得ることができるというのはいうまでもない。
また、本実施形態に係る流動床ボイラ200において、プラズマトーチ4は、燃焼室6に進入するように炉壁5を貫通して配置されている。このような構成を採用した場合、プラズマトーチ4は、燃焼室6内に貯められている流動材7を加熱することができる。
図3は、本発明の第3実施形態に係る流動床燃焼炉の要部を示す概略断面構成図である。
この第3実施形態の流動床ボイラ300が第1実施形態の流動床ボイラ100と違う点は、燃料として燃え難い高水分燃料を用いる場合、当該高水分燃料をプラズマトーチ4により加熱してから炉1内に供給するようにした点である。具体的には、流動材供給装置2に代えて、高水分燃料を供給する高水分燃料供給路23が、上記流動材供給路3のプラズマトーチ4より上流側に接続された流動材供給装置22を用いた点である。
ここでいう高水分燃料とは、含水率が50%を越える燃料であり、具体的には、例えば山林系の未利用バイオマス等が挙げられる。この場合の含水率は70%程度である。
このような第3実施形態にあっては、第1実施形態と同様に、原料を燃焼室6に投入する前の炉1の起動時において、流動材7が流動材供給路3内に流され、移動する流動材7がプラズマトーチ4により原料継続燃焼可能温度まで加熱されて炉1内に供給される。従って、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
これに加えて、炉1の起動時において、高水分燃料は、高水分燃料供給路23から流動材供給路3内に供給され、流動材7と共にプラズマトーチ4により加熱されて炉1内に供給される。このため、高水分燃料が加熱されずに炉1内に投入される場合に比して、高水分燃料の水分がある程度蒸発することから、発熱量の低下が抑止されて燃料の継続した燃焼が可能とされ、その結果、流動床ボイラ300を安定して運転できる。
なお、高水分燃料供給路23に供される高水分燃料は、高水分燃料の全部であっても一部であっても良く、燃料の継続した燃焼が可能となれば良い。
また、高水分燃料は、炉1の起動時以外の例えば通常運転時に、プラズマトーチ4により加熱されて炉1内に供給されても良い。
因みに、プラズマトーチ4により、高水分燃料の含水率が50%程度に下げられれば、発熱量の低下が抑止されて燃料の継続した燃焼が可能とされるため、好ましい。
図4は、本発明の第4実施形態に係る流動床燃焼炉の要部を示す概略断面構成図である。
この第4実施形態では、流動床ボイラが循環流動床ボイラ400とされている。循環流動床ボイラ400は、炉1内からの排ガスから流動材7(灰等を含む)を分離し炉1内に戻し循環させる流動材循環路25を備える。この流動材循環路25は、サイクロン30、ダウンカマー31、ループシール32、戻し管33をこの順に接続して成る。
サイクロン30は、炉1に接続され、炉1内から排出された排ガスから流動材7を固気分離するものである。
ダウンカマー31は、サイクロン30の底部に接続され、当該サイクロン30で分離した流動材7を下方に送るものである。
ループシール32は、ダウンカマー31の下端に接続され、当該ダウンカマー31から送られた流動材7を、炉1内のガス等がサイクロン30側に逆流するのを防止すべく、サイクロン30からの流動材7を一時的に貯留して炉1内の流動床8とサイクロン30との間を遮断しシールすると共に、ラインL2を通して適宜供給される流動用空気により、貯留した流動材7を流れやすく流動化させて順次下方に送るものである。なお、流動用空気をループシール32に供給するラインL2は、前述した燃焼用空気を炉1底部の複数の開口9に供給するためのラインL1から分岐されている。
戻し管33は、ループシール32と炉1下部とに接続され、ループシール32からの流動材7を炉1内の燃焼室6に戻すものである。
この第4実施形態では、前述した流動材供給装置22が炉1下部に接続される点は第3実施形態と同様である。この第4実施形態が第3実施形態と違う点は、第3実施形態の流動材供給装置22と同様な構成の流動材供給装置42を、ループシール32に接続した点である。
このように構成された循環流動床ボイラ400によれば、流動材供給装置22による第3実施形態と同様な作用・効果に加えて、流動材7や高水分燃料が、上記とは別ルートのループシール32、戻し管33を経由して炉1内に供給される。これによっても、高水分燃料が加熱されずに炉1内に供給される場合に比して、高水分燃料の水分がある程度蒸発することから発熱量の低下が抑止されて燃料の継続した燃焼が可能とされ、その結果、循環流動床ボイラ400を安定して運転できる。
なお、高水分燃料は、第3実施形態で述べたのと同様に、炉1の起動時以外の例えば通常運転時に、プラズマトーチ4により加熱されて炉1内に供給されても良い。
また、第4実施形態では、流動材供給装置42をループシール32に接続しているが、例えばダウンカマー31や戻し管33等の流動材循環路25に接続していれば良い。
因みに、第2実施形態も、上述した循環流動床ボイラに対して適用できる。
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、流動材7を収容するためのホッパを設け、ホッパ出口のダンパを閉にした状態でホッパ内に流動材7を供給して収容し、このホッパ内の流動材7を第2実施形態のようなプラズマトーチ4により原料継続燃焼可能温度まで加熱し、加熱後に出口ダンパを開にして加熱済みの流動材7を燃焼室6に供給するようにしても良い。なお、第3、第4実施形態に関しては、高水分燃料もホッパ内に供給することになる。
また、上記実施形態においては、高温ガス体を効率良く容易に出力できるとして、特にプラズマトーチ4を用いているが、化石燃料を用いずに電気を用いて熱を発し、流動材7を原料継続燃焼可能温度まで加熱できる電気式バーナーであれば他のものであっても良い。
また、上記実施形態においては、循環流動床を含む流動床ボイラに対する適用を述べているが、熱交換を行う水管を炉に備えていない流動床火炉に対しても適用可能であり、要は、原料及び流動材が流動する流動床を形成しながら原料を燃焼する燃焼室を備えた流動床燃焼炉全てに対して適用できる。