JPWO2014115801A1 - α,α−ジフルオロアセトアルデヒドの製造方法 - Google Patents

α,α−ジフルオロアセトアルデヒドの製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明で開示するα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの製造方法は、α,α−ジフルオロ酢酸エステル類をルテニウム触媒の存在下に水素ガス(H2)と反応させるものである。特定の反応条件(特に反応溶媒および反応温度)を採用することにより、水素化の部分還元体であるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドが選択的に得られ、工業的に実施困難なヒドリド還元の代替法に成り得る。

Description

本発明は、α,α−ジフルオロアセトアルデヒドの工業的な製造方法に関する。
α,α−ジフルオロアセトアルデヒドは、α,α−ジフルオロ酢酸エステル類の部分還元により製造することができる。しかしながら、この様な還元は、水素化リチウムアルミニウム等のヒドリド還元剤を量論的に用いる方法に限定されていた(非特許文献1)。尚、本出願人は、本願発明と技術的内容が類似する特許出願を行っている(特許文献1、特許文献2)。
国際公開2012/105431号 国際公開2013/018573号
J.Org.Chem.(米国),1993年,第58巻,p.2302-2312
背景技術に記載した、ヒドリド還元剤を量論的に用いる方法は、該還元剤が高価であり取り扱いに注意が必要であること、さらに後処理が煩雑で廃棄物が多いことから、大量規模での生産には不向きであった。また、過剰還元によるβ,β−ジフルオロエタノールの副生を抑制するには極低温条件(−78℃)を必要とし、工業的に実施困難な方法であった。
本発明が解決しようとする課題は、α,α−ジフルオロアセトアルデヒドの工業的な製造方法を提供することにある。具体的には、α,α−ジフルオロ酢酸エステル類の部分還元において、ヒドリド還元に代わる実用性の高い製造方法を見出すことにある。本発明者らの知る限りにおいては、本発明で開示する、ルテニウム触媒、特に該均一系触媒の存在下に水素ガス(H2)と反応させる、α,α−ジフルオロアセトアルデヒドの製造方法は一切報告されていない。本明細書における”均一系触媒”とは、化学大辞典(編集 大木道則、大沢利昭、田中元治、千原秀昭、東京化学同人)等で説明される通りである。
本発明者らは、上記の課題を踏まえて鋭意検討した結果、ルテニウム触媒、好ましくは均一系のルテニウム触媒、特に好ましくは下記一般式[2]で示されるルテニウム錯体、極めて好ましくは下記一般式[4]で示されるルテニウム錯体が、α,α−ジフルオロ酢酸エステル類の部分還元において有効な水素化触媒または該前駆体になることを見出した。
Figure 2014115801
[式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香環基または置換芳香環基を表し、Arはそれぞれ独立に芳香環基または置換芳香環基を表し、Xはそれぞれ独立に形式電荷が−1または0の配位子(但し、3つのXの形式電荷の合計は−2)を表し、nはそれぞれ独立に1または2の整数を表す。]
Figure 2014115801
[式中、Phはフェニル基を表す。]
一般式[2]および一般式[4]のルテニウム錯体は均一系のルテニウム触媒として作用する。
本出願人は、本願に先立ち、技術的内容が類似する特許出願を2件行っている(特許文献1、特許文献2)。
本願と特許文献1の明確な違いは、得られる目的生成物にある。本願の原料基質は、特許文献1の原料基質であるα−フルオロエステル類に含まれるが、本願の目的生成物はα,α−ジフルオロアセトアルデヒドであり、特許文献1の目的生成物はβ−フルオロアルコール類である。本願で開示する特定の反応条件(特に反応溶媒および反応温度)を採用することにより、同じルテニウム錯体を用いても、水素化の部分還元体であるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドが選択的に得られることを見出した。本願では副生成物としてβ,β−ジフルオロエタノール(β−フルオロアルコール類)も得られており、本願は特許文献1を何ら制限するものではない。また、本願の副生成物であるβ,β−ジフルオロエタノールは、目的生成物であるα,α−ジフルオロアセトアルデヒド(後述の等価体も含む)と物性が大きく異なるため、容易に精製除去することができる。よって、本願は、α,α−ジフルオロアセトアルデヒドの製造方法として、特許文献1から何ら制限を受けるものでもない。
一方、本願と特許文献2の明確な違いは、用いる原料基質にある。本願の原料基質は、特許文献2の原料基質であるα−フルオロエステル類のR1が水素原子である(vs.ハロゲン原子またはハロアルキル基)。
この様に、ヒドリド還元とは異なる水素化による、新規なα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの製造方法を見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、[発明1]〜[発明12]に記載の、α,α−ジフルオロアセトアルデヒドの製造方法を提供する。
[発明1]
一般式[1]で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類を、一般式[2]で示されるルテニウム錯体の存在下に水素ガス(H2)と反応させることにより、一般式[3]で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドを製造する方法。
Figure 2014115801
[式中、R1はアルキル基または置換アルキル基を表す。]
Figure 2014115801
[式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香環基または置換芳香環基を表し、Arはそれぞれ独立に芳香環基または置換芳香環基を表し、Xはそれぞれ独立に形式電荷が−1または0の配位子(但し、3つのXの形式電荷の合計は−2)を表し、nはそれぞれ独立に1または2の整数を表す。]
Figure 2014115801
[発明2]
さらに塩基の存在下に反応を行うことを特徴とする、発明1に記載の方法。
[発明3]
一般式[1]で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類を、一般式[4]で示されるルテニウム錯体および塩基の存在下に水素ガス(H2)と反応させることにより、一般式[3]で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドを製造する方法。
Figure 2014115801
[式中、R1はアルキル基または置換アルキル基を表す。]
Figure 2014115801
[式中、Phはフェニル基を表す。]
Figure 2014115801
[発明4]
前記一般式[1]で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類が、一般式[5]で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類であることを特徴とする、発明1乃至発明3の何れかに記載の方法。
Figure 2014115801
[式中、R2はアルキル基を表す。]
[発明5]
アルコール系の反応溶媒を用いて、30℃以下の反応温度で反応を行うことを特徴とする、発明1乃至発明4の何れかに記載の方法。
[発明6]
アルコール系の反応溶媒を用いて、20℃以下の反応温度で反応を行うことを特徴とする、発明1乃至発明4の何れかに記載の方法。
[発明7]
脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン系またはエーテル系の反応溶媒を用いて、50℃以下の反応温度で反応を行うことを特徴とする、発明1乃至発明4の何れかに記載の方法。
[発明8]
脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン系またはエーテル系の反応溶媒を用いて、40℃以下の反応温度で反応を行うことを特徴とする、発明1乃至発明4の何れかに記載の方法。
[発明9]
一般式[1]で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類を、ルテニウム触媒の存在下に水素ガス(H2)と反応させることにより、一般式[3]で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドを製造する方法。
Figure 2014115801
[式中、R1はアルキル基または置換アルキル基を表す。]
Figure 2014115801
[発明10]
ルテニウム触媒が均一系触媒であることを特徴とする、発明9に記載の方法。
[発明11]
一般式[3]で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドとβ,β−ジフルオロエタノールとの選択率が、該アルデヒド:該エタノール=90以上:10以下の状態で反応を止め、未反応のα,α−ジフルオロ酢酸エステル類を回収し再利用することを特徴とする、発明1乃至発明10の何れかに記載の方法。
[発明12]
後処理過程にて、一般式[6]もしくは一般式[7]で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体をメタノールまたはエタノールと接触させることにより、一般式[8]で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドのヘミアセタール体に収束させる精製操作を行うことを特徴とする、発明1乃至発明11の何れかに記載の方法。
Figure 2014115801
Figure 2014115801
[式中、R3はメチル基またはエチル基を表す。]
Figure 2014115801
[式中、R4はメチル基またはエチル基を表す。]
本発明の製造方法は、工業的に実施困難なヒドリド還元の代替法に成り得る。また、本発明の水素化は、高圧設備を必要とせず、基質/触媒比が高く、後処理も主に蒸留操作だけで簡便に目的生成物を得ることができ、極めて実用性の高い製造方法である。よって、背景技術の問題点を一挙に解決する、α,α−ジフルオロアセトアルデヒドの工業的な製造方法を提供することができる。
本発明のα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの製造方法について詳細に説明する。本発明の範囲は、これらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。また、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。尚、以下の説明中、一般式[1]〜[8]の具体的な構造については、先に示した通りである。
本発明では、一般式[1]で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類を、一般式[2]で示されるルテニウム錯体の存在下に水素ガスと反応させることにより、一般式[3]で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドを製造することができる。
一般式[1]で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類のR1は、アルキル基または置換アルキル基を表す。該アルキル基は、炭素数1〜18の、直鎖状もしくは分枝状の鎖式または環式(炭素数3以上の場合)のものである。該置換アルキル基は、前記のアルキル基の、任意の炭素原子上に、任意の数および任意の組み合わせで、置換基を有する。係る置換基は、フッ素、塩素および臭素等のハロゲン原子、メチル基、エチル基およびプロピル基等の低級アルキル基、フルオロメチル基、クロロメチル基およびブロモメチル基等の低級ハロアルキル基、メトキシ基、エトキシ基およびプロポキシ基等の低級アルコキシ基、フルオロメトキシ基、クロロメトキシ基およびブロモメトキシ基等の低級ハロアルコキシ基、シアノ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基およびプロポキシカルボニル基等の低級アルコキシカルボニル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピロリル基(窒素保護体も含む)、ピリジル基、フリル基、チエニル基、インドリル基(窒素保護体も含む)、キノリル基、ベンゾフリル基およびベンゾチエニル基等の芳香環基、カルボキシル基、カルボキシル基の保護体、アミノ基、アミノ基の保護体、ヒドロキシル基、ならびにヒドロキシル基の保護体等である。さらに、該置換アルキル基は、前記のアルキル基の任意の炭素−炭素単結合が、任意の数および任意の組み合わせで、炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合に置き換わることもできる(当然、これらの不飽和結合に置き換わったアルキル基は、前記の置換基を同様に有することもできる)。置換基の種類に依っては置換基自体が副反応に関与する場合もあるが、好適な反応条件を採用することにより最小限に抑えることができる。
尚、本明細書において、"低級"とは、炭素数1〜6の、直鎖状もしくは分枝状の鎖式または環式(炭素数3以上の場合)であるものを意味する。また、前記の“係る置換基は”の“芳香環基”には、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルコキシ基、シアノ基、低級アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、カルボキシル基の保護体、アミノ基、アミノ基の保護体、ヒドロキシル基およびヒドロキシル基の保護体等が置換することもできる。さらに、ピロリル基、インドリル基、カルボキシル基、アミノ基およびヒドロキシル基の保護基は、Protective Groups in Organic Synthesis,Third Edition,1999,John Wiley & Sons,Inc.等に記載された保護基である。
本発明では、実際に反応に供される段階での化合物が、一般式[1]で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類の範囲内に入っていれば、本願の請求項に含まれるものと定義する。例えば、原料基質としてα,α−ジフルオロ酢酸フェニルエステルを用いても、反応溶媒のメタノールとの間でエステル交換を起こした後で、該メチルエステルが水素化されたものと看做せる場合は、本願の請求項に含まれるものとして扱う。
一般式[1]で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類の中でも、一般式[5]で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類が好ましく、大量規模での入手が容易である。当然、一般式[5]で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類のR2のアルキル基は、一般式[1]で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類のR1において記載したアルキル基と同じである。
一般式[2]で示されるルテニウム錯体のRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香環基または置換芳香環基を表す。該アルキル基および置換アルキル基は、一般式[1]で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類のR1において記載したアルキル基および置換アルキル基と同じである。該芳香環基は、炭素数1〜18の、フェニル基、ナフチル基およびアントリル基等の芳香族炭化水素基、またはピロリル基(窒素保護体も含む)、ピリジル基、フリル基、チエニル基、インドリル基(窒素保護体も含む)、キノリル基、ベンゾフリル基およびベンゾチエニル基等の窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子等のヘテロ原子を含む芳香族複素環基である。該置換芳香環基は、前記の芳香環基の、任意の炭素原子または窒素原子上に、任意の数および任意の組み合わせで、置換基を有する。係る置換基は、前記の“係る置換基は”と同じである。ビシナル位の2つのR(水素原子を除く)が、炭素原子同士で共有結合により環状構造を採ることもできる。該共有結合には、窒素原子、酸素原子または硫黄原子を介したものも含まれる。その中でも8つ全て水素原子が好ましい(2つのnが共に1の場合)。
一般式[2]で示されるルテニウム錯体のArは、それぞれ独立に芳香環基または置換芳香環基を表す。該芳香環基および置換芳香環基は、一般式[2]で示されるルテニウム錯体のRにおいて記載した芳香環基および置換芳香環基と同じである。その中でも4つ全てフェニル基が好ましい。
一般式[2]で示されるルテニウム錯体のXは、それぞれ独立に形式電荷が−1または0の配位子[但し、3つのXの形式電荷の合計は−2(Ruの形式電荷は+2)]を表す。該「形式電荷が−1または0の配位子」は、ヘゲダス遷移金属による有機合成(L.S.Hegedus著、原著第2版、村井真二訳、p.4−9、東京化学同人、2001年)および大学院講義有機化学I.分子構造と反応・有機金属化学(野依良治ほか編、p.389−390、東京化学同人、1999年)等に記載された配位子、BH4 -およびR5CO2 -(R5は水素原子、アルキル基または置換アルキル基を表す。該アルキル基および置換アルキル基は、一般式[1]で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類のR1において記載したアルキル基および置換アルキル基と同じである)等である。その中でも3つの内1つずつ水素原子、塩素原子および一酸化炭素が好ましい。
一般式[2]で示されるルテニウム錯体の3つのX配位子の内、少なくとも1つがBH4を採る場合は、塩基の非存在下に反応を行うことができる(当然、塩基の存在下に反応を行うこともできる)。その中でも一般式[4]で示されるルテニウム錯体のCl配位子がBH4(H−BH3)に置き換わったものが好ましい(国際公開2011/048727号参照)。
一般式[2]で示されるルテニウム錯体のnは、それぞれ独立に1または2の整数を表す。nが1の場合は、窒素原子とリン原子が2つの炭素原子を介して結合していることを意味し、nが2の場合は、窒素原子とリン原子が3つの炭素原子を介して結合していることを意味する。その中でも2つのnが共に1が好ましい。
一般式[4]で示されるルテニウム錯体のPhは、フェニル基を表す。
一般式[2]で示されるルテニウム錯体の中でも、一般式[4]で示されるルテニウム錯体が好ましい。一般式[4]で示されるルテニウム錯体は、市販のRu−MACHOTM(高砂香料工業株式会社製)を用いることができる。一般式[2]で示されるルテニウム錯体は、上記のRu−MACHOTMの製造方法等を参考にして同様に製造することができる。また、水やトルエン等の有機溶媒等が含まれるものも同等に用いることができ、純度は70%以上であれば良く、80%以上が好ましく、90%以上が特に好ましい。
一般式[2]で示されるルテニウム錯体の使用量は、一般式[1]で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類1molに対して0.000001mol以上を用いれば良く、0.00001〜0.005molが好ましく、0.00002〜0.002molが特に好ましい。
塩基は、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩、炭酸リチウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラn−プロピルアンモニウムおよび水酸化テトラn−ブチルアンモニウム等の水酸化テトラアルキルアンモニウム、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、リチウムイソプロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムイソプロポキシド、リチウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシドおよびカリウムtert−ブトキシド等のアルカリ金属のアルコキシド、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンおよび1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン等の有機塩基、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドおよびカリウムビス(トリメチルシリル)アミド等のアルカリ金属のビス(トリアルキルシリル)アミド、ならびに水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウムおよび水素化ホウ素カリウム等のアルカリ金属の水素化ホウ素等である。その中でもアルカリ金属のアルコキシドが好ましく、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシドおよびカリウムメトキシドが特に好ましい。
塩基を用いる場合の該使用量は、一般式[1]で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類1molに対して0.001mol以上を用いれば良く、0.005〜5molが好ましく、0.01〜3molが特に好ましい。
真の触媒活性種は、一般式[2]で示されるルテニウム錯体から必要に応じて塩基の存在下に誘導されるものと考えられている。よって、触媒活性種を予め調製してから(単離したものも含む)水素化に供する場合も、特許請求の範囲に含まれるものとして扱う。
水素ガスの使用量は、一般式[1]で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類1molに対して1mol以上を用いれば良く、大過剰が好ましく、下記の加圧下での大過剰が特に好ましい。
水素圧は、特に制限はないが、2〜0.001MPaが好ましく、1〜0.01MPaが特に好ましい。
反応溶媒は、n−ヘキサン、シクロヘキサンおよびn−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系、トルエン、キシレンおよびメシチレン等の芳香族炭化水素系、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンおよびα,α,α−トリフルオロトルエン等のハロゲン系、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルおよびアニソール等のエーテル系、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノールおよびシクロヘキサノール等のアルコール系、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド系、アセトニトリル、プロピオニトリルおよびベンゾニトリル等のニトリル系、ジメチルスルホキシド、ならびに水等である。その中でも脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン系、エーテル系およびアルコール系が好ましく、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、エーテル系およびアルコール系が特に好ましい。これらの反応溶媒は、単独でまたは組み合わせて用いることができる。[請求項5]〜[請求項8]で特定した反応溶媒(アルコール系、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン系およびエーテル系)については、2種類以上の反応溶媒を組み合わせて用いた場合でも、特定された反応溶媒の容量比が最も多い状態であれば良いものと定義する。例えば、実施例11および12は、メタノールとtert−ブチルメチルエーテルの混合溶媒を用いているが、実施例11ではtert−ブチルメチルエーテルの容量比が多いため、混合溶媒であってもエーテル系の反応溶媒として特定し、実施例12ではメタノールの容量比が多いため、混合溶媒であってもアルコール系の反応溶媒として特定する。アルコール系の反応溶媒(以下、A)は、反応速度の加速効果を有し、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン系およびエーテル系の反応溶媒(以下、B)は、β,β−ジフルオロエタノールへの過剰還元の抑制効果を有する。本発明の有用性を最大限に発揮させるには、AとBの混合溶媒を用いる態様が好ましく(態様1、実施例11〜13を参照)、該容量比(A:B、AとBの和を100とする)は、60以上:40以下を用いれば良く、70以上:30以下が好ましく、80以上:20以下が特に好ましい。当然、Bは、単独でまたは、Aをマイナー成分として組み合わせて用いることができる。
反応溶媒の使用量は、一般式[1]で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類1molに対して0.03L(リットル)以上を用いれば良く、0.05〜10Lが好ましく、0.07〜7Lが特に好ましい。
反応温度は、アルコール系の反応溶媒を用いる場合、+30℃以下で行えば良く、+25〜−50℃が好ましく、+20〜−40℃が特に好ましく、+15〜−30℃が極めて好ましく、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン系またはエーテル系の反応溶媒を用いる場合、+50℃以下で行えば良く、+45〜−30℃が好ましく、+40〜−20℃が特に好ましく、+35〜−10℃が極めて好ましい。本発明の有用性を最大限に発揮させるには、アルコール系の反応溶媒を用いて、反応温度を20℃以下で行うことが好適であり、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン系またはエーテル系の反応溶媒を用いて、40℃以下で行うことが好適である。
反応時間は、72時間以内で行えば良く、原料基質および反応条件により異なるため、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴等の分析手段により反応の進行状況を追跡し、原料基質の減少が殆ど認められなくなった時点を終点とすれば良い。
本発明で用いる水素化触媒または該前駆体は、一般式[2]または一般式[4]で示されるルテニウム錯体に限定されず、既存のルテニウム触媒も同様に用いることができる。例えば、Angew.Chem.Int.Ed.2013,52,2538-2542、Organometallics 2012,31,5239-5242、Angew.Chem.Int.Ed.2012,51,2772-2775およびAngew.Chem.Int.Ed.2006,45,1113-1115等に記載されたルテニウム触媒が挙げられ、その代表的なもの(均一系のルテニウム触媒)を図1に示すが(略記号/Et;エチル基、t−Bu;tert−ブチル基、Ph;フェニル基、i−Pr;イソプロピル基)、当然これらに限定されるものではない。これらのルテニウム触媒は、一般式[2]または一般式[4]で示されるルテニウム錯体と同様の反応条件(ルテニウム触媒の使用量、必要に応じて塩基の存在下、塩基の種類、塩基の使用量、水素ガスの使用量、水素圧、反応溶媒、反応溶媒の使用量、反応温度、反応時間、後処理および、好ましい態様等)下で用いることができる。
Figure 2014115801
後処理は、有機合成における一般的な操作を採用することにより、目的生成物である一般式[3]で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドを得ることができる。一般式[3]で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドは、強力な電子求引基であるジフルオロメチル基が直結したアルデヒドであるため、自己重合体、水和体、ヘミアセタール体、アセタール体および、これらの構造的特徴が組み合わさった化合物等の安定な等価体として得られる場合が多い(当然、場合によってはアルデヒドの形で得ることもできる)。よって、請求項における一般式[3]で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドには、これらの安定な等価体も含まれるものと定義する。ちなみにヘミアセタール体やアセタール体を構成するアルコールは、塩基として用いたアルカリ金属のアルコキシドや反応溶媒として用いたアルコール、原料基質のエステル部位(一般式[1]で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類のOR1)および過剰還元で副生するβ,β−ジフルオロエタノール等に由来する。
一般式[3]で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体として代表的なものを図2に示すが(略記号/Me;メチル基、Et;エチル基)、当然これらに限定されるものではない。
Figure 2014115801
また、後処理過程にて、一般式[3]で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体、特に図2中の一般式[6]もしくは一般式[7]([7a]、[7b])で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体をメタノールまたはエタノールと接触させることにより、一般式[8]で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドのヘミアセタール体に収束させる精製操作を新たに見出した。本精製操作は、簡便で更に工業的に実施可能である。安定等価体の中でも一般式[8]([8a]、[8b])のヘミアセタール体は、有機合成における中間体として種々の反応に対して良好な反応性を示し、且つ工業的な製造においても取り扱いの容易な化合物である。一方、一般式[6]の安定等価体は、過剰還元で副生するβ,β−ジフルオロエタノールに由来するヘミアセタール体であり、一般式[7]([7a]、[7b])の安定等価体は、一般式[8]のヘミアセタール体が逆反応で遊離したα,α−ジフルオロアセトアルデヒドに付加したニ量体である。一般式[6]もしくは一般式[7]の安定等価体は、一般式[8]のヘミアセタール体に対する、メタノールまたはエタノールの相対的な共存量が少なくなった場合(例えば、分別蒸留の主留回収時等)に副生する化合物である。よって、有用な化合物(中間体)である一般式[8]で示されるヘミアセタール体を高純度(特に90モル%以上)で得るには、マイナー成分として共存する一般式[6]もしくは一般式[7]の安定等価体を、一般式[8]のヘミアセタール体に収束(誘導)させる精製操作が重要となってくる。さらに工業的な製造方法という観点から、簡便な精製操作であることが要求される。ちなみに、類似のフルオラール(α,α,α−トリフルオロアセトアルデヒド)の製造(例えば、特許文献2を参照)における後処理過程では、本願の一般式[6]もしくは一般式[7]の安定等価体に対応する化合物(ジフルオロメチル基がトリフルオロメチル基に置き換わったもの)は殆ど副生せず、本願(α,α−ジフルオロアセトアルデヒドの製造方法)に特有の解決すべき課題であった。
一般式[7]で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体のR3は、メチル基またはエチル基を表す。一般式[8]で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドのヘミアセタール体のR4は、メチル基またはエチル基を表す。メタノールまたはエタノールとの接触は、特に制限はなく、有機合成における一般的な方法を採用することができる。メタノールまたはエタノールの使用量は、一般式[6]もしくは一般式[7]で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体の合計1molに対して0.7mol以上を用いれば良く、0.8〜500molが好ましく、0.9〜300molが特に好ましい。接触温度は、−20℃以上で行えば良く、0〜+150℃が好ましく、+20〜+125℃が特に好ましい。接触時間は、48時間以内で行えば良く、安定等価体(一般式[6]もしくは一般式[7])および接触条件により異なるため、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴等の分析手段により接触の進行状況を追跡し、安定等価体の減少が殆ど認められなくなった時点を終点とすれば良い。本接触は、必要に応じて酸の存在下に行うことにより、ヘミアセタール体(一般式[8])への収束を円滑に行える場合がある。該酸としては、後述の“反応終了液の中和に用いる酸”と同じものを用いることができる。当然、好適な接触条件を採用することにより、本接触は酸の非存在下でも良好に行うことができる。ちなみに、上記の接触をメタノールまたはエタノールの代わりに水で行うことにより、安定等価体として水和体を収率良く得ることができる。
粗生成物(α,α−ジフルオロアセトアルデヒドまたは該安定等価体)は、必要に応じて活性炭処理、分別蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等により高い純度に精製することができる。目的生成物の沸点が低い場合は、反応終了液から直接、回収蒸留する操作が簡便である。塩基の存在下での反応においては、上記の回収蒸留を行うと比較的酸性度の高い目的生成物(自己重合体、水和体またはヘミアセタール体等)は、用いた塩基との間で塩または錯体等を形成して釜残に残留する傾向がある。また、目的生成物が塩基の存在下にカニッツァーロ反応を起こす場合もある。この様な時には、反応終了液を予めギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、安息香酸、メタンスルホン酸およびパラトルエンスルホン酸等の有機酸または塩化水素、臭化水素、硝酸および硫酸等の無機酸で中和してから回収蒸留(tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メタノールおよびエタノール等の有機溶媒による釜残の回収洗浄、必要に応じて生成した塩の濾過等も含まれる)を行うことにより、目的生成物を収率良く得ることができる。目的生成物の分別蒸留においては、変換率よりも選択率を優先した反応で得られた粗生成物(回収蒸留等で得た目的生成物)の方が高純度化し易い場合があり、好ましい態様である(態様2)。本発明の反応では、変換率が上がるに連れて選択率が低下する。よって、変換率が65%以下で反応を止めると、高い選択率(後述の90以上:10以下)で目的生成物を得ることができる。該選択率(目的生成物:β,β−ジフルオロエタノール、両化合物の和を100とする)は、60以上:40以下を用いれば良く、70以上:30以下が好ましく、80以上:20以下が特に好ましく、90以上:10以下が極めて好ましい。選択率が90以上:10以下の場合には、目的生成物を高純度化するのに高い理論段数の分別蒸留を必要としない(例えば、回収した釜残からでも製品化が可能。実施例20と21を参照)。また、副生成物であるβ,β−ジフルオロエタノールとの沸点差が大きいヘミアセタール体に誘導した後で分別蒸留する方が高純度化し易い場合があり、好ましい態様である(態様3)。該ヘミアセタール体を構成するアルコールとしては、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールおよびn−ブタノールを用いれば良く、エタノール、n−プロパノールおよびn−ブタノールが好ましく、エタノールおよびn−プロパノールが特に好ましい。当然、メタノールに由来するヘミアセタール体でも、高い理論段数の分別蒸留を採用することにより高純度化することができる。さらに、未反応の原料基質(α,α−ジフルオロ酢酸エステル類)は、分別蒸留にて回収し再利用することができ、好ましい態様である(態様4)。該分別蒸留は、留出温度が70℃以下となる微減圧下、または大気圧下で行えば良く、留出温度が70℃以下となる微減圧下が好ましい。該回収再利用は、用いた反応溶媒の溶液または、反応溶媒との共沸組成として行うこともできる。特に変換率よりも選択率を優先した反応(態様2)との組み合わせは、更に好ましい態様である(態様5)。(態様2〜5は、特に実施例20と21を参照。)
一般式[3]で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体は、類似のフルオラールの安定等価体(水和体およびヘミアセタール体等)の場合と同様の操作(有機合成化学協会誌,1999年,第57巻,第10号,p.102−104等を参照)を採用することにより、α,α−ジフルオロアセトアルデヒドに変換することができる(実施例22と23を参照)。
実施例により本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。略記号/Me;メチル基、Ph;フェニル基、Et;エチル基、t−Bu;tert−ブチル基。
[比較例1〜4]および[実施例1〜13]
比較例1〜4および実施例1〜13の一般製造方法を以下に示し、これらの結果を表1に纏めた。
[一般製造方法]
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式:
Figure 2014115801
で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類の所定の量(1eq)、下記式:
Figure 2014115801
で示されるルテニウム錯体の所定の量(純度94.2%、0.0002eq)、塩基の所定の量(0.25eq)と反応溶媒の所定の量を加え、反応容器内を水素ガスで5回置換し、水素圧を1.0MPaに設定し、所定の反応温度で、所定の反応時間攪拌した。反応終了液の19F−NMR分析より、変換率と、下記式:
Figure 2014115801
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体と、過剰に還元された下記式:
Figure 2014115801
で示されるβ,β−ジフルオロエタノールの選択率を算出した。得られたα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体は、1Hと19F−NMR分析およびガスクロマトグラフィー分析において標品と一致した。
実施例3については、反応終了液から直接、回収蒸留することにより、目的生成物を含むメタノール溶液を得た。該メタノール溶液の19F−NMR分析より内部標準法(内部標準物質α,α,α−トリフルオロトルエン)で定量したところ、目的生成物の収率は約60%であった。さらに、分別蒸留を行うことにより、高純度品に精製することができた(ガスクロマトグラフィー純度90%以上)。
Figure 2014115801
Figure 2014115801
[実施例14]
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式:
Figure 2014115801
で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類45g(360mmol、1eq)、下記式:
Figure 2014115801
で示されるルテニウム錯体47mg(純度94.2%、73μmol、0.0002eq)、ナトリウムエトキシドの20%エタノール溶液31g(ナトリウムエトキシドとして91mmol、0.25eq)とエタノール120mL(0.33L/mol)を加え、反応容器内を水素ガスで5回置換し、水素圧を1.0MPaに設定し、5℃で8時間10分攪拌した。反応終了液の19F−NMR分析より、変換率と、下記式:
Figure 2014115801
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体と、過剰に還元された下記式:
Figure 2014115801
で示されるβ,β−ジフルオロエタノールの選択率は、それぞれ18%、97:3であった。得られたα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体は、1Hと19F−NMR分析およびガスクロマトグラフィー分析において標品と一致した。
Figure 2014115801
[実施例15]
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式:
Figure 2014115801
で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類450g(3.6mol、1eq)、下記式:
Figure 2014115801
で示されるルテニウム錯体470mg(純度94.2%、730μmol、0.0002eq)、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液170g(ナトリウムメトキシドとして910mmol、0.25eq)とメタノール1.2L(0.33L/mol)を加え、反応容器内を水素ガスで5回置換し、水素圧を1.0MPaに設定し、15℃で8時間10分攪拌した。反応終了液の19F−NMR分析より、変換率と、下記式:
Figure 2014115801
[式中、R6はMeまたはEtを表す。]
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体(メチルヘミアセタール体とエチルヘミアセタール体の合計)と、過剰に還元された下記式:
Figure 2014115801
で示されるβ,β−ジフルオロエタノールの選択率は、それぞれ49%、95:5であった。得られたα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体は、1Hと19F−NMR分析およびガスクロマトグラフィー分析において標品と一致した。
Figure 2014115801
[実施例16]
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式:
Figure 2014115801
で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類45g(360mmol、1eq)、下記式:
Figure 2014115801
で示されるルテニウム錯体47mg(純度94.2%、73μmol、0.0002eq)、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液7.0g(ナトリウムメトキシドとして36mmol、0.1eq)とメタノール120mL(0.33L/mol)を加え、反応容器内を水素ガスで5回置換し、水素圧を2.5MPaに設定し、15℃で7時間攪拌した。反応終了液の19F−NMR分析より、変換率と、下記式:
Figure 2014115801
[式中、R6はMeまたはEtを表す。]
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体(メチルヘミアセタール体とエチルヘミアセタール体の合計)と、過剰に還元された下記式:
Figure 2014115801
で示されるβ,β−ジフルオロエタノールの選択率は、それぞれ87%、73:27であった。得られたα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体は、1Hと19F−NMR分析およびガスクロマトグラフィー分析において標品と一致した。
Figure 2014115801
[実施例17]
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式:
Figure 2014115801
で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類45g(360mmol、1eq)、下記式:
Figure 2014115801
で示されるルテニウム錯体47mg(純度94.2%、73μmol、0.0002eq)、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液3.5g(ナトリウムメトキシドとして18mmol、0.05eq)とメタノール120mL(0.33L/mol)を加え、反応容器内を水素ガスで5回置換し、水素圧を2.5MPaに設定し、15℃で4時間攪拌した。反応終了液の19F−NMR分析より、変換率と、下記式:
Figure 2014115801
[式中、R6はMeまたはEtを表す。]
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体(メチルヘミアセタール体とエチルヘミアセタール体の合計)と、過剰に還元された下記式:
Figure 2014115801
で示されるβ,β−ジフルオロエタノールの選択率は、それぞれ64%、82:18であった。得られたα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体は、1Hと19F−NMR分析およびガスクロマトグラフィー分析において標品と一致した。
Figure 2014115801
[実施例18]
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式:
Figure 2014115801
で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類2.2g(20mmol、1eq)、下記式:
Figure 2014115801
で示されるルテニウム触媒24mg(50μmol、0.0025eq)、カリウムメトキシド350mg(5.0mmol、0.25eq)とtert−ブチルメチルエーテル10mL(0.50L/mol)を加え、反応容器内を水素ガスで5回置換し、水素圧を1.0MPaに設定し、40℃で15分攪拌した。反応終了液の19F−NMR分析より、変換率と、下記式:
Figure 2014115801
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体と、過剰に還元された下記式:
Figure 2014115801
で示されるβ,β−ジフルオロエタノールの選択率は、それぞれ92%、12:88であった。得られたα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体は、1Hと19F−NMR分析およびガスクロマトグラフィー分析において標品と一致した。
Figure 2014115801
また、一般式[2]または一般式[4]で示されるルテニウム錯体以外の、前述の既存のルテニウム触媒(前記引用文献4件と図1に記載のもの)を用いても同様の結果が得られた。
[実施例19]
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式:
Figure 2014115801
で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類400g(3.6mol、1eq)、下記式:
Figure 2014115801
で示されるルテニウム錯体470mg(純度94.2%、730μmol、0.0002eq)、ナトリウムメトキシド49g(910mmol、0.25eq)とメタノール1.8L(0.50L/mol)を加え、反応容器内を水素ガスで5回置換し、水素圧を1.0MPaに設定し、15℃で8時間攪拌した。反応終了液の19F−NMR分析より、変換率と、下記式:
Figure 2014115801
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体と、過剰に還元された下記式:
Figure 2014115801
で示されるβ,β−ジフルオロエタノールの選択率は、それぞれ61%、95:5であった。
Figure 2014115801
上記の反応を計3回繰り返して行うことにより、α,α−ジフルオロ酢酸エステル類1.2kg(11mol)を反応に供したことに相当する反応終了液を得た。反応終了液に酢酸150g(2.5mol、0.23eq)を加え、直接、回収蒸留(油浴温度〜66℃、減圧度〜2.1kPa)することにより、目的生成物(メチルヘミアセタール体)を含むメタノール溶液を得た。釜残(酢酸ナトリウムと未回収の目的生成物が含まれる固形物)にジイソプロピルエーテル500mLを加え、攪拌洗浄し、濾過し、固形物をジイソプロピルエーテル500mLで洗浄し、濾液を再び回収蒸留(油浴温度〜66℃、減圧度〜4.5kPa)することにより、目的生成物を含むジイソプロピルエーテル溶液を得た。これらの溶液を合わせて分別蒸留(理論段数35段、留出温度92℃、減圧度〜35kPa)することにより[大部分のメタノールとジイソプロピルエーテルが留出した時点で、蒸留釜(目的生成物を含む釜残)にエタノール850g(19mol、1.7eq)を加えて蒸留を継続する]、下記式:
Figure 2014115801
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体(エチルヘミアセタール体)を留分として450g得た。1Hと19F−NMR分析およびガスクロマトグラフィー分析より、精製品(留分)にはメタノール、エタノール、β,β−ジフルオロエタノール、メチルヘミアセタール体、エチルヘミアセタール体、下記式:
Figure 2014115801
で示されるβ,β−ジフルオロエチルヘミアセタール体および、下記式:
Figure 2014115801
で示されるエチルヘミアセタール体由来の二量体が含まれていることが分かり、それぞれの純度(モル%)は、<0.1%、5.6%、3.3%、1.8%、87.3%、0.6%、1.5%であった。純度を考慮した収率は約30%であった。得られたエチルヘミアセタール体は、1Hと19F−NMR分析およびガスクロマトグラフィー分析において標品と一致した。
メチルヘミアセタール体、エチルヘミアセタール体、β,β−ジフルオロエチルヘミアセタール体およびエチルヘミアセタール体由来の二量体の、1Hと19F−NMR分析の帰属を以下に示す。
[メチルヘミアセタール体]
1H−NMR(基準物質;Me4Si、重溶媒;CDCl3)、δ ppm;3.53(s、3H)、4.62(m、1H)、5.60(dt、1H)、ヒドロキシル基のプロトンは帰属できず。
19F−NMR(基準物質;C66、重溶媒;CDCl3)、δ ppm;27.9(ddd、2F)。
[エチルヘミアセタール体]
1H−NMR(基準物質;Me4Si、重溶媒;CDCl3)、δ ppm;1.26(t、3H)、3.63(m、1H)、3.92(m、1H)、4.70(m、1H)、5.60(dt、1H)、ヒドロキシル基のプロトンは帰属できず。
19F−NMR(基準物質;C66、重溶媒;CDCl3)、δ ppm;27.9(ddd、2F)。
[β,β−ジフルオロエチルヘミアセタール体]
1H−NMR(基準物質;Me4Si、重溶媒;CDCl3)、δ ppm;3.92(m、2H)、4.79(m、1H)、5.68(dt、1H)、5.91(ddt、1H)、ヒドロキシル基のプロトンは帰属できず。
19F−NMR(基準物質;C66、重溶媒;CDCl3)、δ ppm;27.0(ddd、2F)、36.1(dt、2F)。
[エチルヘミアセタール体由来の二量体]
1H−NMR(基準物質;Me4Si、重溶媒;CDCl3)、δ ppm;1.28(t、3H)、3.67(m、1H)、3.88(m、1H)、4.78(m、0.5H)、4.90(m、0.5H)、5.04(m、1H)、5.64(m、2H)、ヒドロキシル基のプロトンは帰属できず。
19F−NMR(基準物質;C66、重溶媒;CDCl3)、δ ppm;27.9(m、4F)。
[実施例20]
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式:
Figure 2014115801
で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類40kg(360mol、1eq)、下記式:
Figure 2014115801
で示されるルテニウム錯体47g(純度94.2%、73mmol、0.0002eq)、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液18kg(ナトリウムメトキシドとして91mol、0.25eq)とメタノール120L(0.33L/mol)を加え、反応容器内を水素ガスで5回置換し、水素圧を0.95MPaに設定し、6〜11℃で24時間攪拌した。反応終了液の19F−NMR分析より、変換率と、下記式:
Figure 2014115801
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体と、過剰に還元された下記式:
Figure 2014115801
で示されるβ,β−ジフルオロエタノールの選択率は、それぞれ53%、97:3であった。
Figure 2014115801
反応終了液に酢酸5.3kg(88mol、0.24eq)を加え、直接、回収蒸留(油浴温度〜55℃、減圧度〜25kPa)することにより、未反応の原料基質(α,α−ジフルオロ酢酸メチル)を含むメタノール溶液を100kg回収した。該メタノール溶液を19F−NMRの内部標準法(内部標準物質;C66)で定量したところ、原料基質が17kg(150mol)含まれていた[過剰に還元されたβ,β−ジフルオロエタノールは0.30kg(3.7mol)含まれていた。この副生成物の含量が多い高沸側の留分は廃棄した]。未反応の原料基質の回収率は約90%と良好であった。この回収液に不足分の原料基質と反応溶媒を加えて所定量に調整することで(当然、所定量のルテニウム錯体と塩基も加える)、次ランの水素化に問題なく再利用することができた。
上記の反応を計3回繰り返して行うことにより(2ラン目と3ラン目は、それぞれ1ラン目、2ラン目の未反応の原料基質を回収して再利用した)、α,α−ジフルオロ酢酸エステル類1.1kmol(1,090mol)を反応に供したことに相当する、未反応の原料基質を回収した後の釜残(酢酸ナトリウムと目的生成物が含まれる固形物)を得た。釜残にエタノール100kg(2.2kmol、2eq)を加え、10℃以下で攪拌洗浄し、濾過し、固形物を少量の冷エタノールで洗浄し、濾洗液から回収蒸留(油浴温度〜50℃、減圧度〜0.8kPa)することにより、目的生成物を含むエタノール溶液(1)を170kg得た。再度、釜残を少量の酢酸で中和し(pH6〜7)、エタノール25kgを加えて、上記と同様の攪拌洗浄と回収蒸留を行うことにより、目的生成物を含むエタノール溶液(2)を22kg得た。該エタノール溶液(1)と(2)を合わせて19F−NMRの内部標準法(内部標準物質;C66)で定量したところ、目的生成物(α,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体の合計)が500mol含まれていた。これらの溶液から分別蒸留(理論段数15段、留出温度〜47℃、減圧度〜24kPa)にて低沸分(メタノール、エタノールおよびβ,β−ジフルオロエタノール等)を除去することにより[エチルヘミアセタール体:メチルヘミアセタール体の選択率(両化合物の和を100とする)が95以上:5以下になるまで、エタノールを適宜加えて蒸留を継続する]、下記式:
Figure 2014115801
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体(エチルヘミアセタール体)を主成分とする釜残(精製品−1)を70kg回収した。低沸分の除去操作における目的生成物のロスは殆ど認められなかった(定量値は500molのままで、ここまでのトータル収率は46%であった)。精製品−1の1Hと19F−NMR分析より、β,β−ジフルオロエタノール、メチルヘミアセタール体、エチルヘミアセタール体、下記式:
Figure 2014115801
で示されるβ,β−ジフルオロエチルヘミアセタール体と、下記式:
Figure 2014115801
で示されるエチルヘミアセタール体由来の二量体の純度(モル%)は、それぞれ4.0%、2.7%、86.5%、1.8%、4.9%であった。また、エタノールの含量(重量%)は9.8%であった。
精製品−1に含まれるβ,β−ジフルオロエチルヘミアセタール体とエチルヘミアセタール体由来の二量体の合計に対して、エタノールを1.2eq加え、80℃で2時間攪拌し、単蒸留(留出温度〜44℃、減圧度〜0.5kPa)することにより(エタノールの含量が多い低沸側の留分と、エチルヘミアセタール体由来の二量体の含量が多い釜残は回収再利用した)、精製品−2を回収率83%で得た(回収率は、蒸留前後のα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体の合計で計算した)。精製品−2の1Hと19F−NMR分析より、β,β−ジフルオロエタノール、メチルヘミアセタール体、エチルヘミアセタール体、β,β−ジフルオロエチルヘミアセタール体とエチルヘミアセタール体由来の二量体の純度は、それぞれ1.9%、2.1%、92.2%、0.8%、3.0%であった。また、エタノールの含量は6.5%であった。この操作により、メチルヘミアセタール体、β,β−ジフルオロエチルヘミアセタール体とエチルヘミアセタール体由来の二量体の含量を低減でき、所望のエチルヘミアセタール体の含量を向上することができた。
また、上記とは別に、低沸分の除去をエタノールの相対的な共存量が少なく(特に3.0重量%未満)なるまで行うと、エチルヘミアセタール体由来の二量体の含量が格段に増加する場合がある。例えば、β,β−ジフルオロエタノール、メチルヘミアセタール体、エチルヘミアセタール体、β,β−ジフルオロエチルヘミアセタール体とエチルヘミアセタール体由来の二量体の純度が、それぞれ2.7%、1.6%、78.8%、3.3%、13.6%となった(エタノールの含量は2.3%であった)。この様な場合でも上記の精製操作を採用することにより、それぞれ1.9%、1.2%、91.7%、0.9%、4.3%に収束させることができた(エタノールの含量は6.4%)。
[実施例21]
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式:
Figure 2014115801
で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類45kg(360mol、1eq)、下記式:
Figure 2014115801
で示されるルテニウム錯体47g(純度94.2%、73mmol、0.0002eq)、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液18kg(ナトリウムメトキシドとして91mol、0.25eq)とメタノール120L(0.33L/mol)を加え、反応容器内を水素ガスで5回置換し、水素圧を1.0MPaに設定し、30℃で15分、更に20℃で6時間攪拌した。反応終了液の19F−NMR分析より、変換率と、下記式:
Figure 2014115801
[式中、R6はMeまたはEtを表す。]
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体(メチルヘミアセタール体とエチルヘミアセタール体の合計)と、過剰に還元された下記式:
Figure 2014115801
で示されるβ,β−ジフルオロエタノールの選択率は、それぞれ52%、95:5であった。
Figure 2014115801
反応終了液に酢酸5.3kg(88mol、0.24eq)を加え、直接、回収蒸留(留出温度〜44℃、減圧度〜31kPa)することにより、未反応の原料基質(α,α−ジフルオロ酢酸メチルとα,α−ジフルオロ酢酸エチルの合計、前者がメジャー)を含むメタノール溶液を100kg回収した。該メタノール溶液を19F−NMRの内部標準法(内部標準物質;C66)で定量したところ、原料基質が160mol(メチルエステルとエチルエステルの合計)含まれていた[過剰に還元されたβ,β−ジフルオロエタノール3.8mol、エタノール200molと、α,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体(メチルヘミアセタール体とエチルヘミアセタール体の合計)が5.9mol含まれていた。これらの副生成物の含量が多い高沸側の留分は廃棄した]。未反応の原料基質の回収率は92%と良好であった。この回収液に不足分の原料基質と反応溶媒を加えて所定量に調整することで(当然、所定量のルテニウム錯体と塩基も加える)、次ランの水素化に問題なく再利用することができた。
上記の反応を計3回繰り返して行うことにより(2ラン目と3ラン目は、それぞれ1ラン目、2ラン目の未反応の原料基質を回収して再利用した)、α,α−ジフルオロ酢酸エステル類1.1kmol(1,088mol)を反応に供したことに相当する、未反応の原料基質を回収した後の釜残(酢酸ナトリウムと目的生成物が含まれる固形物)を得た。以降は実施例20と同様の操作を行うことにより、下記式:
Figure 2014115801
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体(エチルヘミアセタール体)を主成分とする釜残(精製品−1)を70kg回収した。α,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体の合計の定量値は500molで、ここまでのトータル収率は46%であった。精製品−1の1Hと19F−NMR分析より、β,β−ジフルオロエタノール、メチルヘミアセタール体、エチルヘミアセタール体、下記式:
Figure 2014115801
で示されるβ,β−ジフルオロエチルヘミアセタール体と、下記式:
Figure 2014115801
で示されるエチルヘミアセタール体由来の二量体の純度(モル%)は、それぞれ1.3%、4.0%、83.4%、1.2%、10.1%であった。また、エタノールの含量(重量%)は4.5%であった。以降は実施例20と同様の操作を行うことにより、精製品−2を回収率80%で得た。精製品−2の1Hと19F−NMR分析より、β,β−ジフルオロエタノール、メチルヘミアセタール体、エチルヘミアセタール体、β,β−ジフルオロエチルヘミアセタール体とエチルヘミアセタール体由来の二量体の純度は、それぞれ0.6%、1.5%、91.8%、0.4%、5.7%であった。また、エタノールの含量は6.5%であった。
[実施例22]
下記式:
Figure 2014115801
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体(メチルヘミアセタール体)を含むジイソプロピルエーテル溶液を加熱分解(油浴温度〜133℃)することにより、下記式:
Figure 2014115801
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドをガスとして発生させ、ジイソプロピルエーテルを含む留分を回収した。α,α−ジフルオロアセトアルデヒドの1Hと19F−NMR分析の帰属を以下に示す。さらに、発生させたガスの質量分析より、上記式の構造が示唆された。また、α,α−ジフルオロアセトアルデヒドは時間の経過に伴い、該自己重合体が増加した。
1H−NMR(基準物質;Me4Si、重溶媒;CDCl3)、δ ppm;5.73(t、1H)、9.54(s、1H)。
19F−NMR(基準物質;C66、重溶媒;CDCl3)、δ ppm;30.9(d、2F)。
[実施例23]
下記式:
Figure 2014115801
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体(エチルヘミアセタール体)に五酸化二リンを加えて加熱(油浴温度〜110℃)することにより、下記式:
Figure 2014115801
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドをガスとして発生させ、更に冷メタノールにバブリングさせ、下記式:
Figure 2014115801
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体(メチルヘミアセタール体)のメタノール溶液を回収した。回収率は約80%であった。
本発明の製造方法により得られるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドは、医農薬中間体として利用できる。

Claims (12)

  1. 一般式[1]で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類を、一般式[2]で示されるルテニウム錯体の存在下に水素ガス(H2)と反応させることにより、一般式[3]で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドを製造する方法。
    Figure 2014115801
    [式中、R1はアルキル基または置換アルキル基を表す。]
    Figure 2014115801
    [式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香環基または置換芳香環基を表し、Arはそれぞれ独立に芳香環基または置換芳香環基を表し、Xはそれぞれ独立に形式電荷が−1または0の配位子(但し、3つのXの形式電荷の合計は−2)を表し、nはそれぞれ独立に1または2の整数を表す。]
    Figure 2014115801
  2. さらに塩基の存在下に反応を行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 一般式[1]で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類を、一般式[4]で示されるルテニウム錯体および塩基の存在下に水素ガス(H2)と反応させることにより、一般式[3]で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドを製造する方法。
    Figure 2014115801
    [式中、R1はアルキル基または置換アルキル基を表す。]
    Figure 2014115801
    [式中、Phはフェニル基を表す。]
    Figure 2014115801
  4. 前記一般式[1]で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類が、一般式[5]で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類であることを特徴とする、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の方法。
    Figure 2014115801
    [式中、R2はアルキル基を表す。]
  5. アルコール系の反応溶媒を用いて、30℃以下の反応温度で反応を行うことを特徴とする、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の方法。
  6. アルコール系の反応溶媒を用いて、20℃以下の反応温度で反応を行うことを特徴とする、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の方法。
  7. 脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン系またはエーテル系の反応溶媒を用いて、50℃以下の反応温度で反応を行うことを特徴とする、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の方法。
  8. 脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン系またはエーテル系の反応溶媒を用いて、40℃以下の反応温度で反応を行うことを特徴とする、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の方法。
  9. 一般式[1]で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類を、ルテニウム触媒の存在下に水素ガス(H2)と反応させることにより、一般式[3]で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドを製造する方法。
    Figure 2014115801
    [式中、R1はアルキル基または置換アルキル基を表す。]
    Figure 2014115801
  10. ルテニウム触媒が均一系触媒であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
  11. 一般式[3]で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドとβ,β−ジフルオロエタノールとの選択率が、該アルデヒド:該エタノール=90以上:10以下の状態で反応を止め、未反応のα,α−ジフルオロ酢酸エステル類を回収し再利用することを特徴とする、請求項1乃至請求項10の何れかに記載の方法。
  12. 後処理過程にて、一般式[6]もしくは一般式[7]で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体をメタノールまたはエタノールと接触させることにより、一般式[8]で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドのヘミアセタール体に収束させる精製操作を行うことを特徴とする、請求項1乃至請求項11の何れかに記載の方法。
    Figure 2014115801
    Figure 2014115801
    [式中、R3はメチル基またはエチル基を表す。]
    Figure 2014115801
    [式中、R4はメチル基またはエチル基を表す。]
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