JP6806990B2 - α−フルオロアルデヒド類の製造方法 - Google Patents

α−フルオロアルデヒド類の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、α−フルオロアルデヒド類の製造方法に関する。
従来のパーフルオロアルデヒド類の製造方法としては、パーフルオロエステル類を水素化リチウムアルミニウムで還元することにより製造する方法が知られている(非特許文献1)。
α,α−ジフルオロアセトアルデヒドの製造方法としては、α、α−ジフルオロ酢酸エステル類を、水素化リチウムアルミニウム等のヒドリド還元剤により還元することにより製造する方法が知られている(非特許文献2)。
一方、ルテニウム/スズ型バイメタル触媒(電子価が−4、配位数が6のルテニウム錯体を還元して、ルテニウム/スズ型メタル触媒を製造)の存在下、蒸気相でカルボン酸、カルボン酸エステル又はカルボン酸無水物を還元することにより、対応するアルデヒド及びその誘導体を製造する方法が開示されている(特許文献1)。
さらに、α−フルオロ酢酸エステル類を、ルテニウム触媒(均一系触媒)の存在下、液相中、水素ガスと反応させることにより、α−フルオロアルデヒドを製造する方法(特許文献2)が、また、α,α−ジフルオロ酢酸エステル類を、ルテニウム触媒(均一系触媒)の存在下、液相中、水素ガスと反応させることにより、α,α−ジフルオロアセトアルデヒドを製造する方法(特許文献3)が知られている。
米国特許第5476827号明細書 国際公開第2013/018573号公報 国際公開第2014/115801号公報
Journal of American Chemical Society, 1954, 76(1),p.300-301. Journal of Organic Chemistry, 1993, 58, p.2302-2312.
非特許文献1や非特許文献2に記載の方法は、ヒドリド還元剤を用いており、後処理が煩雑で廃棄物が多いこと、また、過剰還元によるエタノール類の副生もあり、工業的規模で製造するには難があった。
特許文献1に記載の方法は、ルテニウム/スズのバイメタル系を用いており、かつ蒸気相での反応であるため200℃以上の加熱が必要であり、エネルギー効率的に改善が望まれるものであった。
一方、特許文献2や特許文献3に記載の方法は、用いるルテニウム触媒が高価であり経済的に不利であること、および目的物のアルデヒドと該アルデヒドと逐次的に生成する過剰還元によるエタノール類とが、変換率によって大きく左右される傾向があった。
本発明は、フッ素原子を持つエステル類を用いて、工業的に採用し得る安価な条件で、選択性よくフッ素原子を持つアルデヒド類を製造する方法を提供することを課題とする。
本発明は、上記状況を考慮してなされたものであり、本発明者らが鋭意検討したところ、α−フルオロエステル類を、塩基および特定の触媒の存在下、水素(H2)と反応させることにより、高い選択率で対応するα−フルオロアルデヒド類を製造できる知見を得、本発明を完成した。
すなわち本発明は、<1>〜<13>に記載する、α−フルオロアルデヒド類の製造方法を提供する。
<1>
一般式[1]:
Figure 0006806990
[式中、R は水素原子、ハロゲン原子またはハロアルキル基を表し、R はアルキル基または置換アルキル基を表す。]
で示されるα−フルオロエステル類に、
ルテニウム化合物、ロジウム化合物、または白金化合物を活性炭に担持した触媒、
および、塩基の存在下、水素(H )を反応させることにより、一般式[2]:
Figure 0006806990
[式中、R は式[1]と同じ。]
で表されるα−フルオロアルデヒド類を製造する方法であって、
前記ルテニウム化合物が、ルテニウムのフッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、及びオキシフッ化塩化物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記ロジウム化合物が、ロジウムのフッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、及びオキシフッ化塩化物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記白金化合物が、白金のフッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、及びオキシフッ化塩化物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記塩基が、イミン系塩基、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水素化物、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属の炭酸水素塩、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の酸化物、またはアルカリ金属のアルコキシドである、α−フルオロアルデヒド類を製造する方法。
<2>
前記アルカリ金属のアルコキシドが、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、リチウムエトキシド、またはカリウムtert−ブトキシドである、<1>に記載の方法。
<3>
前記触媒が、水素で還元処理した触媒である、<1>または<2>に記載の方法。
<4>
反応を、塩基または触媒を逐次添加することにより行う、<1>乃至<3>の何れかに記載の方法。
<5>
塩基の使用量が、一般式[1]で示されるα−フルオロエステル類1モルに対して0.01モル以上、3モル以下である、<1>乃至<4>の何れかに記載の方法。
<6>
逐次添加が、塩基を少なくとも2回以上に分割して行う、<4>に記載の方法。
<7>
逐次添加が、触媒を少なくとも2回以上に分割して行う、<4>に記載の方法。
<8>
水素圧が0.001〜4MPaの範囲で、かつ、反応温度として0〜40℃の範囲で行う、<1>乃至<7>の何れかに記載の方法。
<9>
アルコール類の存在下で反応を行う、<1>乃至<8>の何れかに記載の方法。
<10>
反応終了後、使用した触媒を回収し、再利用することにより行う、<1>乃至<9>の何れかに記載の方法。
<11>
触媒の回収が、触媒をろ別し、水次いでアルコール類で洗浄することにより行う、<10>に記載の方法。
<12>
反応系中の水分が0.5〜0.001質量%の範囲で行うことを特徴とする、<1>乃至<11>の何れかに記載の方法。
<13>
一般式[2]で示されるα−フルオロアルデヒド類が、下記式
Figure 0006806990
[式中、R は前記一般式[1]のR と同じである。R はアルキル基または置換アルキル基を表す。]
で表されるα−フルオロアルデヒド類等価体として得ることを含む、<1>乃至<12>の何れかに記載の方法。
本発明は、上記<1>〜<13>に係る発明であるが、以下、それ以外の事項(例えば、下記[発明1]−[発明17])についても記載している。
[発明1]
一般式[1]:
Figure 0006806990
[式中、R1は水素原子、ハロゲン原子またはハロアルキル基を表し、R2はアルキル基または置換アルキル基を表す。]
で示されるα−フルオロエステル類に、
ルテニウム化合物、ロジウム化合物、または白金化合物を金属酸化物もしくは活性炭に担持した触媒、
および、塩基の存在下、水素(H2)を反応させることにより、一般式[2]:
Figure 0006806990
[式中、R1は式[1]と同じ。]
で表されるα−フルオロアルデヒド類を製造する方法。
[発明2]
塩基がイミン系塩基または無機塩基である、発明1に記載の方法。
[発明3]
塩基がアルカリ金属のアルコキシドである、発明1または2に記載の方法。
[発明4]
反応を、塩基または触媒を逐次添加することにより行う、発明1乃至3の何れかに記載の方法。
[発明5]
塩基の使用量が、一般式[1]で示されるα−フルオロエステル類1モルに対して0.01モル以上、3モル以下である、発明1乃至4の何れかに記載の方法。
[発明6]
逐次添加が、塩基を少なくとも2回以上に分割して行う、発明4に記載の方法。
[発明7]
逐次添加が、触媒を少なくとも2回以上に分割して行う、発明4に記載の方法。
[発明8]
ルテニウム化合物が、ルテニウムのフッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、及びオキシフッ化塩化物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、発明1乃至7の何れかに記載の方法。
[発明9]
ロジウム化合物が、ロジウムのフッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、及びオキシフッ化塩化物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、発明1乃至7の何れかに記載の方法。
[発明10]
白金化合物が、白金のフッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、及びオキシフッ化塩化物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、発明1乃至7の何れかに記載の方法。
[発明11]
金属酸化物が、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、またはマグネシアである、発明1乃至7の何れかに記載の方法。
[発明12]
水素圧が0.001〜4MPaの範囲で、かつ、反応温度として0〜40℃の範囲で行うことを特徴とする、発明1乃至11の何れかに記載の方法。
[発明13]
アルコール類の存在下で反応を行う、発明1乃至12の何れかに記載の方法。
[発明14]
反応終了後、使用した触媒を回収し、再利用することにより行う、発明1乃至13の何れかに記載の方法。
[発明15]
触媒の回収が、触媒をろ別し、水次いでアルコール類で洗浄することにより行う、発明14に記載の方法。
[発明16]
反応系中の水分が0.001〜0.5質量%の範囲で行うことを特徴とする、発明1乃至15の何れかに記載の方法。
[発明17]
一般式[2]で示されるα−フルオロアルデヒド類が、下記式
Figure 0006806990
[式中、R1は前記一般式[1]のR1と同じである。R3はアルキル基または置換アルキル基を表す。]
で表されるα−フルオロアルデヒド類等価体として得ることを含む、発明1乃至16の何れかに記載の方法。
特定の金属触媒を用いて、フッ素原子を持たないケトン体もしくはアルデヒド体における水素化(還元)反応は以前から知られており、また、エステル部位に対する水素化反応も公知である。一方、フッ素原子を持つエステル化合物に対する還元反応は、フッ素原子の持つ特異的な反応性の影響により、目的物のアルデヒド体の他、同時に過剰還元されたアルコール体等の副生成物が多く生じることが多い。例えば、国際公開第2012/105431号公報には、フッ素原子を持つエステル類を、特定のルテニウム触媒存在下、水素ガスで還元反応を行った例が開示されているが、ここでは目的物のアルデヒド体ではなく、過剰に還元反応が進行したβ−フルオロアルコールが高い変換率かつ高い選択率で生成している旨、開示されている。このことは、フッ素原子の持つ特異的な反応性が、当該エステル体を(高い選択率で)アルコール体に変換させたものと推測される。
以上のことから、フッ素原子を持つエステル類に対する還元反応は、触媒の種類によって反応性に違いは出るものの、本願発明における目的化合物であるアルデヒド体を工業的に採用し得る条件で、且つ効率よく得ることは非常に困難であると予想された。
しかしながら本発明者らは、フッ素原子を持つエステル類について、塩基及び特定の触媒存在下、水素を用いて還元反応を試みることで、意外にも高い選択率でもって目的物であるアルデヒド類の製造が可能である知見を得た。
更に、塩基や触媒の種類や量、反応試剤の導入方法といった、特定の反応条件に付すことで、極めて高い選択性でもってアルデヒド類を得る知見を得、さらに、反応後に触媒を回収し、本発明に再利用できる知見も得た。
これらの知見により、本発明では、従来の方法と比べ、高い選択率で目的物を製造することと、触媒の再利用が可能である事からコスト低減できることとなった。生産性にも負荷がかからず、非常に優れた方法である。
なお、本発明のように、α−フルオロエステル類を、本発明で用いる触媒および塩基の存在下、水素と反応させることにより、α−フルオロアルデヒド類を製造する方法は知られていなかった。
本発明によれば、従来技術と比べて入手が容易な原料を用い、変換率や選択率良く、α−フルオロアルデヒド類を製造する方法を提供することができるという効果を奏する。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。なお、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。
本発明に係るα−フルオロアルデヒド類の製造方法(以下、本発明の製造方法ということがある。)は、前述した通り、α−フルオロエステル類を、塩基および触媒の存在下、水素(H2)と反応させることにより、α−フルオロアルデヒド類を製造する方法である。
一般式[1]で示されるα−フルオロエステル類のR1は、水素原子、ハロゲン原子、またはハロアルキル基を表す。当該ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。当該ハロアルキル基は、炭素数1〜18の、直鎖状もしくは分枝状の鎖式または環式(炭素数3以上の場合)のアルキル基の、任意の炭素原子上に、任意の数および任意の組み合わせで、前記のハロゲン原子を有する。ハロゲン原子の中でもフッ素原子が好ましい。
一般式[1]で示されるα−フルオロエステル類のR2は、置換もしくは非置換のアルキル基を表す。非置換のアルキル基は、炭素数1〜18の、直鎖状もしくは分枝状または環式(炭素数3以上の場合)のものである。これらのうち、直鎖状または分岐状のアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、環状のアルキル基としては、炭素数3〜12が好ましい。
具体的には、非置換アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などが挙げられる。
置換アルキル基は、前記非置換のアルキル基の任意の炭素原子上に、任意の数および任意の組み合わせで、置換基を有するアルキル基を示す。係る置換基は、フッ素、塩素および臭素等のハロゲン原子、メチル基、エチル基およびプロピル基等の低級アルキル基、フルオロメチル基、クロロメチル基およびブロモメチル基等の低級ハロアルキル基、メトキシ基、エトキシ基およびプロポキシ基等の低級アルコキシ基、フルオロメトキシ基、クロロメトキシ基およびブロモメトキシ基等の低級ハロアルコキシ基、シアノ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基およびプロポキシカルボニル基等の低級アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、カルボキシル基の保護体、アミノ基、アミノ基の保護体、ヒドロキシル基、ならびにヒドロキシル基の保護体等である。置換基の種類に依っては置換基自体が副反応に関与する場合もあるが、好適な反応条件を採用することにより最小限に抑えることができる。
なお、本明細書において、"低級"とは、炭素数1〜6の、直鎖状もしくは分枝状の鎖式または環式(炭素数3以上の場合)であるものを意味する。さらに、カルボキシル基、アミノ基およびヒドロキシル基の保護基は、Protective Groups in Organic Synthesis,Third Edition,1999,John Wiley & Sons,Inc.等に記載された保護基であるが、具体的には、アルキル基、メチル基が好ましい。
一般式[1]で示されるα−フルオロエステル類のうち、下記式、
Figure 0006806990
[式中、R2は一般式[1]のR2と同じである。]
で表されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類が好ましく、大量規模での入手が容易である。
本発明の製造方法で用いる触媒は、固体触媒作用を持つものであれば特に限定はされないが、当該触媒は、ルテニウム化合物、ロジウム化合物、または白金化合物を金属酸化物あるいは活性炭に担持した触媒を用いる。このうち、ルテニウム化合物担持触媒の調製時に用いるルテニウム化合物は、ルテニウムのフッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、及びオキシフッ化塩化物からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
一方、ロジウム化合物担持触媒または白金化合物担持触媒の調製時に用いられる、ロジウム化合物または白金化合物の具体的な例としては、ロジウム化合物または白金化合物のフッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、及びオキシフッ化塩化物からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
前記金属酸化物または活性炭は、ルテニウム化合物、ロジウム化合物、または白金化合物を担持する「担体」として機能する。
前記金属酸化物の種類としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、及びマグネシアからなる群より選ばれる少なくとも一種である。
一方、前記活性炭は、各種のものが市販されているのでそれらのうちから選んで使用すればよい。例えば、瀝青炭から製造された活性炭(例えば、カルゴン粒状活性炭CAL(東洋カルゴン(株)製)、椰子殻炭(例えば、日本エンバイロケミカルズ(株)製)などを挙げることができるが、当然これらの種類に限られることはない。
本発明で用いる触媒を調製する方法は限定されないが、例えばルテニウム化合物、ロジウム化合物、または白金化合物を溶液に溶かし、この溶液を担体に含浸させた後、加熱しながら水素(H2)で還元処理することで調整できる。または、担体を予めフッ化水素、塩化水素、塩素化フッ素化炭化水素などによりハロゲンで修飾処理した化合物に、ルテニウム化合物、ロジウム化合物、または白金化合物の可溶性化合物を溶解した溶液を含浸するか、スプレーすることで調製できる。
ここで言う可溶性化合物としては、水、塩酸、アンモニア水、エタノール、アセトンなどの溶媒に溶解する該当金属の硝酸塩、リン酸塩、塩化物、酸化物、オキシ塩化物、オキシフッ化物、などが挙げられる。
ルテニウム化合物、ロジウム化合物または白金化合物の、担体に対する担持量は、担体との合計量に占める割合が、0.1〜80質量%、好ましくは1〜40質量%が適当である。
前記の方法で調製した触媒のうち、金属酸化物を担体とした触媒については、用いる前に所定の反応温度以上の温度で予めフッ化水素、フッ素化炭化水素などのフッ素化剤で処理し、触媒の活性化を行うことが有効である。触媒の活性化においては、あらかじめ塩素化炭化水素で処理後、フッ素化する方法を用いることもできる。また、反応中に酸素、塩素、フッ素化または塩素化炭化水素などを反応器中に供給することは触媒寿命の延長、反応率、反応収率の向上のため有効な手段である。
また、本発明において、含水率の高い触媒を用いると、反応系内に別途存在している塩基の影響を受け、原料であるα−フルオロエステル類の加水分解が優先的に進行し、α−フルオロカルボン酸が生じることがある。本反応条件ではα−フルオロカルボン酸に対する還元反応は進行しないため、含水率が高い触媒を使用する事は、収率の低下となり好ましくない。
触媒の含水率は50質量%以下のものを用いるのがよく、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下である。また、溶媒や塩基由来の水分も当然、原料の加水分解に影響を及ぼすため、少ない方が好ましい。触媒、溶媒、塩基、原料を混合した反応系中の水分は10〜0.001質量%の範囲で行えば良く、好ましくは5〜0.001質量%、より好ましくは0.5〜0.001質量%である。
触媒の使用量は、一般式[1]で示されるα−フルオロエステル類に対し、0.01質量%以上であれば良く、1〜100質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
本発明で使用する塩基は、
(a)3級アミン、(b)含窒素芳香族複素環式化合物、
(c)次のイミン骨格
−C=N−C−
を有する化合物(なお、本明細書で、この化合物を「イミン系塩基」と言うことがある)、
から選ばれる有機塩基、
(d)無機塩基、
または
(e)水酸化テトラアルキルアンモニウム、
である。それぞれの化合物の具体的な例を、以下、明示する。
(a)三級アミン:トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリス(2−エチルへキシル)アミン、N,N−ジメチルデシルアミン、N−ベンジルジメチルアミン、N−ブチルジメチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N′−ジメチルピペラジン、N−メチルピペコリン、N−メチルピロリドン、N−ビニル−ピロリドン、ビス(2−ジメチルアミノ−エチル)エーテル、N,N,N,N',N''−ペンタメチル−ジエチレントリアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N,N',N',N''−ペンタメチルジプロピレントリアミン、トリス(3−ジメチルアミノプロピル)アミン、テトラメチルイミノ−ビス(プロピルアミン)、N−ジエチル−エタノールアミンなど。
(b)含窒素芳香族複素環式化合物:ピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ルチジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、3−(ジメチルアミノ)プロピルイミダゾール、ピラゾール,フラザン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、プリン、1H−インダゾール、キナゾリン、シンノリン、キノキサリン、フタラジン、プテリジン、フェナントリジン、2,6−ジ−t−ブチルピリジン、2,2'−ビピリジン、4,4'−ジメチル−2,2'−ビピリジル、4,4'−ジメチル−2,2'−ビピリジル、5,5'−ジメチル−2,2'−ビピリジル、6,6'−t−ブチル−2,2'−ジピリジル、4,4'−ジフェニル−2,2'−ビピリジル、1,10−フェナントロリン、2,7−ジメチル−1,10−フェナントロリン、5,6−ジメチル−1,10−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンなど。
(c)イミン系塩基:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エンなど。
(d)無機塩基:アルカリ金属、アルカリ土類金属の水素化物(水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウム、水素化カルシウム等)、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等)、アルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸カルシウム等)、アルカリ金属の炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム等)、アルカリ金属、アルカリ土類金属の酸化物(酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム)、アルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物(フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、塩化セシウム等)、アルカリ金属のアルコキシド(リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、リチウムイソプロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムイソプロポキシド、リチウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシドおよびカリウムtert−ブトキシド)など。
(e)水酸化テトラアルキルアンモニウム:水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラn−プロピルアンモニウム、水酸化テトラn−ブチルアンモニウムなど。
これらの中でも、有機塩基としてイミン系塩基または無機塩基が好ましい。イミン系塩基の中でも1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンがより好ましい。
一方、無機塩基としてはアルカリ金属のアルコキシドがより好ましく、中でも、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、リチウムエトキシドまたはカリウムtert−ブトキシドが極めて好ましい。
塩基の使用量は、一般式[1]で示されるα−フルオロエステル類1モルに対して0.001モル以上を用いれば良く、0.005〜5モルが好ましく、0.01〜3モルが特に好ましい。
本発明では上記の塩基に加えて、触媒の失活を防ぐ目的でフッ化物イオン(F)捕捉剤として、13族、14族に属する金属から選ばれる少なくとも1種の水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化ガリウム、水酸化インジウム)もしくは酸化物(酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、二酸化ケイ素、二酸化ゲルマニウム、酸化スズ)を添加することができる。
これらの中でも水酸化アルミニウム、水酸化ガリウム、水酸化インジウム、二酸化ケイ素が好ましく、水酸化アルミニウムが特に好ましい。なお、これらは単独もしくは一種以上用いて混合してもよい。
フッ化物イオン捕捉剤の使用量は、一般式[1]で示されるα−フルオロエステル類1モルに対して0.001モル以上を用いれば良く、0.005〜5モルが好ましく、0.03〜1モルが特に好ましい。
本発明の製造方法において反応溶媒を用いることができる。反応溶媒は、本反応の条件下で不活性なものであればよく、特に限定はされないが、例えば、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ニトリル類、酸アミド類、低級エーテル類、アルコール類が挙げられる。
中でも、低級エーテル類およびアルコール類が好ましく、アルコール類が特に好ましい。具体的な化合物としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、プロピオニトリル、フェニルアセトニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、ホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチルピロリドン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,2−エポキシエタン、1、4−ジオキサン、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、置換テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノールおよびシクロヘキサノールが挙げられる。
中でも、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、および2−エポキシエタン、および、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノールおよびシクロヘキサノールが好ましく、メタノール、エタノールおよびn−プロパノールが極めて好ましい。
これらの反応溶媒は、単独でまたは組み合わせて用いることができる。目的物であるα−フルオロアルデヒド類の製造においては、分別蒸留での分離が容易なメタノール、エタノールおよびn−プロパノールが極めて好ましい。
反応溶媒の使用量は、一般式[1]で示されるα−フルオロエステル類1モルに対して0.01L(リットル)以上を用いれば良く、0.03〜10Lが好ましく、0.05〜7Lが特に好ましい。本反応は、反応溶媒を用いずにニートの状態で行うこともできる。
水素(H2)の使用量は、一般式[1]で示されるα−フルオロエステル類1モルに対して1モル以上を用いれば良く、好ましくは1〜10モル程度であり、より好ましくは1〜5モル程度である。
水素圧は、特に制限はないが、通常、0.001〜10MPa(絶対圧基準。以下、本明細書で同じ)の圧力範囲で行えばよく、0.001〜5MPaが好ましい。本発明の効果を最大限に発揮させるには、0.001〜4MPaが極めて好ましい。
反応温度は、−30℃〜100℃で良く、好ましくは0℃〜70℃であり、より好ましくは0℃〜40℃が好ましい。反応温度−30℃よりも低ければ反応は遅いことがある。一方、反応温度が100℃を超えると触媒寿命が短くなり、その一方、反応は速く進行するが、分解生成物等が生成し、本発明における選択率が低下することがある。
なお、本発明において、α−フルオロエステル類に対し水素を反応させる際、水素圧が0.001〜4MPaの範囲で、かつ反応温度として0〜40℃の範囲で行うことは、α−フルオロアルデヒド類を効率的に製造できることからも、好ましい態様の一つである。
本発明における触媒と塩基の反応系への仕込み方法については、前記触媒及び塩基を反応系内に同時に仕込んでも良いが、一方、触媒及び塩基を別々に反応系に仕込んでも良い。
さらに、触媒及び塩基を同時に逐次添加してもよく、触媒または塩基のどちらか一方を反応系に必要量を仕込んだ後、もう一方の試剤を逐次添加しても良い。なお、ここで言う「逐次添加」とは、触媒及び/または塩基を、反応系に順を追って次々と間欠的(一定の時間を隔てることを指す)に反応系に試剤を加えることを意味する。本発明のように、反応系中にα−フルオロ酢酸エステル類1モルに対し、塩基がモル当量で1モル〜0.25モルになるよう、触媒がモル当量で0.0001モル〜0.03モルになるよう、触媒及び/または塩基を、少なくとも2回以上に分割して添加することも可能であり、この添加方法は本発明の好ましい態様の一つである。
触媒の賦活法は触媒の再生に用いられる、一般的な方法を採用することができる。例えば、乾燥空気、塩素、フッ化水素等を活性低下した触媒と適宜接触させることにより再活性化することができる。なお、これらのガスと接触させずに触媒を賦活化させる方法としては、反応に使用した後に分別した触媒を、水および/又はアルコール(エタノール等)で洗浄することにより、繰返し使うこともでき、このことは好ましい態様の一つである(実施例17および実施例18)。
本発明の製造方法は、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。反応器は、耐熱性とフッ化水素、塩化水素等に対する耐食性を有する材質で作られれば良く、ステンレス鋼、ハステロイTM、モネルTM、白金などが好ましい。また、これらの金属でライニングされた材料で作ることもできる。
反応時間は、72時間以内で行えば良く、原料基質および反応条件(反応温度、触媒の種類、量)により異なる。反応器内の圧力等からH2の消費状況を随時観察し、水素(H2)の消費が事実上完了した段階で反応を終了することが好ましい。
或いは、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴等の分析手段により反応の進行状況を追跡し、原料基質の減少が殆ど認められなくなった時点を反応の終点とすることが好ましい。
一般式[2]で示されるα−フルオロアルデヒド類は、強力な電子求引基が直結したアルデヒドであるため、該アルデヒド類の自己重合体、水和体またはヘミアセタール体等の安定な等価体として得られる場合が多い(当然、場合によってはアルデヒドの形で得ることもできる)。例えば、本発明では、ここで言う「ヘミアセタール体」として、下記式、
Figure 0006806990
[式中、R1は一般式[1]のR1と同じである。R3はアルキル基または置換アルキル基を表す。]
で表される化合物が、α−フルオロアルデヒド類等価体として得られる。
よって、請求項における一般式[2]で示されるα−フルオロアルデヒド類には、これらの安定な等価体も含まれるものとして扱う。ヘミアセタール体を構成するアルコールは、塩基として用いたアルカリ金属のアルコキシドや反応溶媒として用いたアルコール、および原料基質のエステル部位(一般式[1]で示されるα−フルオロエステル類のOR2)等に由来する。
なお、このα−フルオロアルデヒド類等価体におけるR3の定義(アルキル基または置換アルキル基)は、前記一般式[2]におけるR2と同じである為、ここでは記載を省略する。
本発明において、α−フルオロアルデヒド類を製造する際の「好ましい反応条件」を以下、述べる。
式[1]で表されるα−フルオロエステル類がα,α−ジフルオロ酢酸エステル類であり、
触媒がルテニウム化合物、ロジウム化合物または白金化合物を活性炭に担持した触媒であって、かつ、該触媒の量が、α,α−ジフルオロ酢酸エステル類に対し5〜30質量%であり、
用いる塩基がアルカリ金属のアルコキシドであって、かつ該アルコキシドの量がα,α−ジフルオロ酢酸エステル類1モルに対し、0.01〜3モルであり、
反応溶媒としてアルコール類であって、該アルコール類の量がα,α−ジフルオロ酢酸エステル類1モルに対し、0.05〜7L、
とし、前述した水素圧及び反応温度を採用することにより、後述の実施例で示すように、該目的物を高選択率で得ることができる。
また、後処理過程で任意のアルコールを加えて平衡を傾けることにより、ヘミアセタール体を構成するアルコールを任意のものに置き換えることができる(“任意のアルコール”は、炭素数1〜18の、直鎖状もしくは分枝状の鎖式または環式(炭素数3以上の場合)のものである)。当然、同様に水を加えることにより水和体を得ることができる。
後処理は、有機合成における一般的な操作を採用することにより、式[2]で示されるα−フルオロアルデヒド類を得ることができる。反応後の後処理について、粗生成物(α−フルオロアルデヒド類またはα−フルオロアルデヒド類等価体)は必要に応じて活性炭処理、分別蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等により高い純度に精製することができる。目的物の沸点が低い場合は、反応終了液を直接、回収蒸留する操作が簡便である。塩基の存在下での反応においては、上記の回収蒸留を行うと比較的酸性度の高い目的物(自己重合体、水和体またはヘミアセタール体等)は用いた塩基との塩または錯体等を形成して釜残に残留する傾向がある。この様な場合には、反応終了液を予めギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸または塩化水素、臭化水素、硝酸、硫酸等の無機酸で中和してから回収蒸留(ジイソプロピルエーテル等の有機溶媒による釜残の回収洗浄も含まれる)することにより目的物を収率良く得ることができる。
後処理過程にて、一般式[2]で示されるα−フルオロアルデヒド類の、該アルデヒド類の安定等価体、特に一般式[3]
Figure 0006806990
[式中、R1は水素原子、ハロゲン原子またはハロアルキル基を表し、R4はメチル基またはエチル基を表す。]
で示されるα−フルオロアルデヒドヘミアセタール体由来の二量体をメタノールまたはエタノール等のアルコール類と接触させることにより、α−フルオロアルデヒド類のヘミアセタール体に収束させる精製操作も可能である。
なお、本発明で用いた触媒は、反応後に目的物である式[2]で示されるα−フルオロアルデヒド類を含む反応液をろ別し、該反応液と触媒とを分離させた後、触媒を含む反応残渣に対し、エタノール等のアルコール類で洗浄し、その後回収することで、本発明の反応に再利用することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例および比較例の一般的製造方法を以下に示し、また、結果の一部を表1に纏めた。
[実施例1〜12]および[比較例1〜3]
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式:
Figure 0006806990
で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類の所定の量(1eq)、触媒(ドライ品(水分含有率2質量%以下)、エヌ・イーケムキャット製)を所定の量(0.002eq)、塩基の所定の量(0.25eq)と反応溶媒の所定の量を加え、反応容器内を水素ガスで3回置換し、水素圧を0.9 MPaに設定し、所定の反応温度および所定の反応時間で攪拌した。反応終了液の19F−NMR分析より、当該エステル類の変換率、並びに下記式:
Figure 0006806990
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体と、過剰に還元された下記式:
Figure 0006806990
で示されるβ,β−ジフルオロエタノールの選択率を算出した。得られたα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体は、1Hと19F−NMR分析およびガスクロマトグラフィー分析において標品と一致した。
Figure 0006806990
Figure 0006806990
なお、実施例9は参考例9と読み替えるものとする。
[比較例4]
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式:
Figure 0006806990
で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類10 g(0.081mol、1 eq)、Ru/C 5 wt%(0.12 mmol、0.002eq、ドライ品(水分含有率2質量%以下)、エヌ・イーケムキャット製)、硫酸0.5 g(0.005 mol、0.06eq)とエタノール38 mL(2.1 mol/L)を加え、反応容器内を水素ガスで3回置換し、水素圧を0.9 MPaに設定し、30℃で6時間攪拌した。反応終了液の19F−NMR分析より、反応が進行していないことがわかった。
Figure 0006806990
[実施例13]
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式:
Figure 0006806990
で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類50 g(0.403 mol、1eq)、Ru/C 5 wt%(0.62 mmol、0.002eq、ドライ品(水分含有率2質量%以下)、エヌ・イーケムキャット製)、ナトリウムエトキシドの20%エタノール溶液36.58 g(ナトリウムエトキシドとして0.101 mol、0.25eq)とエタノール202 mL(2.0 mol/L)を加え、反応容器内を水素ガスで3回置換し、水素圧を3.0 MPaに設定し、30℃で4時間攪拌した。反応終了液の19F−NMR分析より、変換率と、下記式:
Figure 0006806990
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体と、過剰に還元された下記式:
Figure 0006806990
で示されるβ,β−ジフルオロエタノールの選択率は、それぞれ50%、84:16であった。得られたα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体は、1Hと19F−NMR分析およびガスクロマトグラフィー分析において標品と一致した。
Figure 0006806990
[実施例14]反応試剤の追加:塩基と触媒を同時に追加
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式:
Figure 0006806990
で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類10 g(0.081mol、1eq)、Ru/C 5 wt%(0.12 mmol、0.002eq、ドライ品(水分含有率2質量%以下)、エヌ・イーケムキャット製)、ナトリウムエトキシドの20%エタノール溶液6.89 g(ナトリウムエトキシドとして0.020 mol、0.25eq)とエタノール13.3 mL(6.0 mol/L)を加え、反応容器内を水素ガスで3回置換し、水素圧を0.9 MPaに設定し、30℃で1時間攪拌した。その後、水素ガスを窒素ガスに置換し、Ru/C 5 wt%(0.12 mmol、0.002eq)、ナトリウムエトキシドの20%エタノール溶液6.89 g(ナトリウムエトキシドとして0.020 mol、0.25eq)を加え、反応容器内を水素ガスで3回置換し、水素圧を0.9 MPaに設定し、30℃で1時間攪拌した。同様の添加操作(Ru/C 5 wt%(0.12 mmol、0.002eq、ドライ品(水分含有率2質量%以下)、エヌ・イーケムキャット製)と、ナトリウムエトキシドの20%エタノール溶液6.89 g(ナトリウムエトキシドとして0.020 mol、0.25eq)を加える操作)を2回繰り返した。反応終了液の19F−NMR分析より、変換率と、下記式:
Figure 0006806990
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体と、過剰に還元された下記式:
Figure 0006806990
で示されるβ,β−ジフルオロエタノールの選択率は、それぞれ79%、95:5であった。得られたα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体は、1Hと19F−NMR分析およびガスクロマトグラフィー分析において標品と一致した。
Figure 0006806990
[実施例15]反応試剤の追加:触媒追加
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式:
Figure 0006806990
で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類10 g(0.081mol、1eq)、Ru/C 5 wt%(0.12 mmol、0.002eq、ドライ品(水分含有率2質量%以下)、エヌ・イーケムキャット製)、ナトリウムエトキシドの20%エタノール溶液27.56 g(ナトリウムエトキシドとして0.080 mol、1.00eq)とエタノール6.3 mL(2.4 mol/L)を加え、反応容器内を水素ガスで3回置換し、水素圧を0.9 MPaに設定し、30℃で1時間攪拌した。その後、水素ガスを窒素ガスに置換し、Ru/C 5 wt%(0.12 mmol、0.002eq、ドライ品(水分含有率2質量%以下)、エヌ・イーケムキャット製)を加え、反応容器内を水素ガスで3回置換し、水素圧を0.9 MPaに設定し、30℃で1時間攪拌した。同様の添加操作(Ru/C 5 wt%(0.12 mmol、0.002eq)を加える操作)を2回繰り返した。反応終了液の19F−NMR分析より、変換率と、下記式:
Figure 0006806990
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体と、過剰に還元された下記式:
Figure 0006806990
で示されるβ,β−ジフルオロエタノールの選択率は、それぞれ82%、88:12であった。得られたα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体は、1Hと19F−NMR分析およびガスクロマトグラフィー分析において標品と一致した。
Figure 0006806990
[実施例16]反応試剤の追加:塩基追加
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式:
Figure 0006806990
で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類10 g(0.081mol、1eq)、Ru/C 20 wt%(0.48mmol、0.008eq、ドライ品(水分含有率2質量%以下)、エヌ・イーケムキャット製)、ナトリウムエトキシドの20%エタノール溶液6.89 g(ナトリウムエトキシドとして0.020 mol、0.25eq)とエタノール6.3 mL(2.4 mol/L)を加え、反応容器内を水素ガスで3回置換し、水素圧を0.9 MPaに設定し、30℃で1時間攪拌した。その後、水素ガスを窒素ガスに置換し、ナトリウムエトキシドの20%エタノール溶液6.89 g(ナトリウムエトキシドとして0.020 mol、0.25eq)を加え、反応容器内を水素ガスで3回置換し、水素圧を0.9 MPaに設定し、30℃で1時間攪拌した。同様の添加操作(ナトリウムエトキシドの20%エタノール溶液6.89 g(ナトリウムエトキシドとして0.020 mol、0.25eq)を加える操作)を2回繰り返した。反応終了液の19F−NMR分析より、変換率と、下記式:
Figure 0006806990
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体と、過剰に還元された下記式:
Figure 0006806990
で示されるβ,β−ジフルオロエタノールの選択率は、それぞれ77%、87:13であった。得られたα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体は、1Hと19F−NMR分析およびガスクロマトグラフィー分析において標品と一致した。
Figure 0006806990
反応終了液をろ過、中和後、蒸留することで目的生成物を含むエタノール溶液を得た。該エタノール溶液の19F−NMR分析により内部標準法(内部標準物質ヘキサフルオロベンゼン)で定量したところ、目的生成物全体の収率は約74%であった。さらに分別蒸留を行うことにより、高純度品に精製することができた(ガスクロマトグラフィー純度90%以上)。
[実施例17]触媒の再利用の検討:
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式:
Figure 0006806990
で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類100 g(0.806mol、1eq)、Ru/C 10 wt%(5.0 mmol、0.006eq、ドライ品(水分含有率2質量%以下)、エヌ・イーケムキャット製)、ナトリウムエトキシドの20%エタノール溶液73.16 g(ナトリウムエトキシドとして0.202 mol、0.25eq)とエタノール202 mL(2.0 mol/L)を加え、反応容器内を水素ガスで3回置換し、水素圧を0.9 MPaに設定し、30℃で4時間攪拌した。反応終了液の19F−NMR分析より、変換率と、下記式:
Figure 0006806990
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体と、過剰に還元された下記式:
Figure 0006806990
で示されるβ,β−ジフルオロエタノールの選択率は、それぞれ47%、81:19であった。得られたα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体は、1Hと19F−NMR分析およびガスクロマトグラフィー分析において標品と一致した。
用いたRu/Cをろ過し、エタノール200gで掛け洗浄した。その後Ru/Cを回収して水200gで30分間攪拌した後にろ過し、再度Ru/Cを回収してエタノール200gで30分間攪拌した後にろ過し、回収した触媒を次の反応(実施例16)へ用いた。
Figure 0006806990
[実施例18]触媒の再利用の検討
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式:
Figure 0006806990
で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類100 g(0.806mol、1eq)、実施例15で回収したRu/C 10 wt%(5.0 mmol、0.006eq)、ナトリウムエトキシドの20%エタノール溶液73.16 g(ナトリウムエトキシドとして0.202 mol、0.25eq)とエタノール202 mL(2.0 mol/L)を加え、反応容器内を水素ガスで3回置換し、水素圧を0.9 MPaに設定し、30℃で4時間攪拌した。反応終了液の19F−NMR分析より、変換率と、下記式:
Figure 0006806990
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体と、過剰に還元された下記式:
Figure 0006806990
で示されるβ,β−ジフルオロエタノールの選択率は、それぞれ48%、80:20であった。得られたα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体は、1Hと19F−NMR分析およびガスクロマトグラフィー分析において標品と一致した。
上記に記載の反応後に、実施例15に記載と同様の操作でRu/Cを回収した。
Figure 0006806990
その後、回収したRu/Cを使用して上記のスキームに記載の反応を行い、更に回収したRu/Cを使用して再度反応を行った。合計3回Ru/Cを回収と再利用を繰り返して行うことにより、α,α−ジフルオロ酢酸エステル類300 g(2.4 mol)を反応に供したことに相当する反応終了液を得た。反応終了液に酢酸137g(2.3 mol、0.95eq)を加え、直接、回収蒸留(油浴温度〜77℃、減圧度〜2.1kPa)することにより、目的生成物(α,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体(エチルヘミアセタール体))を含むエタノール溶液を得た。釜残(酢酸ナトリウムと未回収の目的生成物が含まれる固形物)にエタノール300mLを加え、攪拌洗浄し、濾過し、固形物をエタノール300mLで洗浄し、濾液を再び回収蒸留(油浴温度〜77℃、減圧度〜4.5kPa)することにより、目的生成物を含むエタノール溶液を得た。これらの溶液を合わせて分別蒸留(理論段数10段、留出温度65℃、減圧度〜45kPa)することにより、下記式:
Figure 0006806990
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体(エチルヘミアセタール体)を留分として180g得た。1Hと19F−NMR分析およびガスクロマトグラフィー分析より、精製品−1(留分)にはエタノール、β,β−ジフルオロエタノール、α,α−ジフルオロアセトアルデヒドのエチルヘミアセタール体、下記式:
Figure 0006806990
で示されるβ,β−ジフルオロエチルヘミアセタール体および、下記式:
Figure 0006806990
で示されるエチルヘミアセタール体由来の二量体が含まれていることが分かり、それぞれの組成比(モル%)は、<5.4%、0.3%、81.8%、0.2%、12.3%であった。純度を考慮した収率は約59%であった。得られた当該エチルヘミアセタール体は、1Hと19F−NMR分析およびガスクロマトグラフィー分析において標品と一致した。
精製品−1に含まれるβ,β−ジフルオロエチルヘミアセタール体と前記エチルヘミアセタール体由来の二量体の合計に対して、エタノールを1.8eq加え、30℃で2時間攪拌し、精製品−2を得た。精製品−2の1Hと19F−NMR分析より、β,β−ジフルオロエタノール、α,α−ジフルオロアセトアルデヒドのエチルヘミアセタール体、β,β−ジフルオロエチルヘミアセタール体とエチルヘミアセタール体由来の二量体の純度は、それぞれ0.2%、83.2%、0.1%、8.2%であった。また、エタノールの含量は8.7%であった。この操作により、β,β−ジフルオロエチルヘミアセタール体とエチルヘミアセタール体由来の二量体の含量を低減でき、所望のα,α−ジフルオロアセトアルデヒドのエチルヘミアセタール体の含量を向上することができた。
また、上記とは別に、低沸分の除去をエタノールの相対的な共存量が少なく(特に4.0質量%未満)なるまで行うと、エチルヘミアセタール体由来の二量体の含量が格段に増加する場合がある。例えば、β,β−ジフルオロエタノール、α,α−ジフルオロアセトアルデヒドのエチルヘミアセタール体、β,β−ジフルオロエチルヘミアセタール体とエチルヘミアセタール体由来の二量体の純度が、それぞれ0.6%、76.2%、1.4%、18.1%となった(エタノールの含量は3.8%であった)。この様な場合であっても、上記と同様、β,β−ジフルオロエチルヘミアセタール体とエチルヘミアセタール体由来の二量体の合計に対してエタノールを1.8eq.加え、30℃で2時間攪拌する精製操作を採用することにより、それぞれ0.8%、79.39%、0.4%、10.9%に収束させることができた(エタノールの含量は8.9%)。
α,α−ジフルオロアセトアルデヒドのエチルヘミアセタール体、β,β−ジフルオロエチルヘミアセタール体およびエチルヘミアセタール体由来の二量体の、1Hと19F−NMR分析の帰属を以下に示す。
[α,α−ジフルオロアセトアルデヒドのエチルヘミアセタール体]
1H−NMR(基準物質;Me4Si、重溶媒;CDCl3)、δ ppm;1.26(t、3H)、3.63(m、1H)、3.92(m、1H)、4.70(m、1H)、5.60(dt、1H)、ヒドロキシル基のプロトンは帰属できず。
19F−NMR(基準物質;C66、重溶媒;CDCl3)、δ ppm;27.9(ddd、2F)。
[β,β−ジフルオロエチルヘミアセタール体]
1H−NMR(基準物質;Me4Si、重溶媒;CDCl3)、δ ppm;3.92(m、2H)、4.79(m、1H)、5.68(dt、1H)、5.91(ddt、1H)、ヒドロキシル基のプロトンは帰属できず。
19F−NMR(基準物質;C66、重溶媒;CDCl3)、δ ppm;27.0(ddd、2F)、36.1(dt、2F)。
[エチルヘミアセタール体由来の二量体]
1H−NMR(基準物質;Me4Si、重溶媒;CDCl3)、δ ppm;1.28(t、3H)、3.67(m、1H)、3.88(m、1H)、4.78(m、0.5H)、4.90(m、0.5H)、5.04(m、1H)、5.64(m、2H)、ヒドロキシル基のプロトンは帰属できず。
19F−NMR(基準物質;C66、重溶媒;CDCl3)、δ ppm;27.9(m、4F)。
[実施例19]出発原料の基質変更
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式:
Figure 0006806990
で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類50 g(0.454mol、1eq)、Ru/C 5 wt%(0.62 mmol、0.001eq、ドライ品(水分含有率2質量%以下)、エヌ・イーケムキャット製)、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液21.90 g(ナトリウムメトキシドとして0.114 mol、0.25eq)とメタノール190 mL(2.4 mol/L)を加え、反応容器内を水素ガスで3回置換し、水素圧を0.9 MPaに設定し、30℃で6時間攪拌した。反応終了液の19F−NMR分析より、変換率と、下記式:
Figure 0006806990
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体と、過剰に還元された下記式:
Figure 0006806990
で示されるβ,β−ジフルオロエタノールの選択率は、それぞれ22%、100:0であった。得られたα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体は、1Hと19F−NMR分析およびガスクロマトグラフィー分析において標品と一致した。
Figure 0006806990
[実施例20]出発原料の基質変更
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式:
Figure 0006806990
で示されるトリフルオロ酢酸エステル類50 g(0.352 mol、1eq)、Ru/C 5 wt%(0.62 mmol、0.002eq、ドライ品(水分含有率2質量%以下)、エヌ・イーケムキャット製)、ナトリウムエトキシドの20%エタノール溶液29.77 g(ナトリウムエトキシドとして0.088 mol、0.25eq)とエタノール190 mL(1.8 mol/L)を加え、反応容器内を水素ガスで3回置換し、水素圧を0.9 MPaに設定し、30℃で6時間攪拌した。反応終了液の19F−NMR分析より、変換率と、下記式:
Figure 0006806990
で示されるトリフルオロアセトアルデヒドの安定等価体と、過剰に還元された下記式:
Figure 0006806990
で示されるトリフルオロエタノールの選択率は、それぞれ38%、99:1であった。得られたトリフルオロアセトアルデヒドの安定等価体は、1Hと19F−NMR分析およびガスクロマトグラフィー分析において標品と一致した。
Figure 0006806990
[実施例21]出発原料の基質変更
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式:
Figure 0006806990
で示されるトリフルオロ酢酸エステル類50 g(0.390 mol、1eq)、Ru/C 5 wt%(0.62 mmol、0.002eq、ドライ品(水分含有率2質量%以下)、エヌ・イーケムキャット製)、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液18.81 g(ナトリウムメトキシドとして0.096 mol、0.25eq)とメタノール 190 mL(2.1 mol/L)を加え、反応容器内を水素ガスで3回置換し、水素圧を0.9 MPaに設定し、30℃で6時間攪拌した。反応終了液の19F−NMR分析より、変換率と、下記式:
Figure 0006806990
で示されるトリフルオロアセトアルデヒドの安定等価体と、過剰に還元された下記式:
Figure 0006806990
で示されるトリフルオロエタノールの選択率は、それぞれ27%、99:1であった。得られたα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体は、1Hと19F−NMR分析およびガスクロマトグラフィー分析において標品と一致した。
Figure 0006806990
[実施例22]
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式:
Figure 0006806990
で示されるα,α−ジフルオロ酢酸エステル類100 g(0.806mol、1eq)、Ru/C 10 wt%(5.0 mmol、0.006eq、ドライ品(水分含有率2質量%以下)、エヌ・イーケムキャット製)、ナトリウムエトキシドの20%エタノール溶液73.16 g(ナトリウムエトキシドとして0.202 mol、0.25eq)とエタノール202 mL(2.0 mol/L)を加え、系内の水分をカールフィッシャーで測定し0.18%である事を確認した後、反応容器内を水素ガスで3回置換し、水素圧を0.9 MPaに設定し、30℃で4時間攪拌した。反応終了液の19F−NMR分析より、変換率と、下記式:
Figure 0006806990
で示されるα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体と、過剰に還元された下記式:
Figure 0006806990
で示されるβ,β−ジフルオロエタノールの選択率は、それぞれ69%、98:2であった。得られたα,α−ジフルオロアセトアルデヒドの安定等価体は、1Hと19F−NMR分析およびガスクロマトグラフィー分析において標品と一致した。
Figure 0006806990
本発明の製造方法により得られるα−フルオロアルデヒド類は、医農薬中間体として利用できる。

Claims (13)

  1. 一般式[1]:
    Figure 0006806990
    [式中、Rは水素原子、ハロゲン原子またはハロアルキル基を表し、Rはアルキル基または置換アルキル基を表す。]
    で示されるα−フルオロエステル類に、
    ルテニウム化合物、ロジウム化合物、または白金化合物を活性炭に担持した触媒、
    および、塩基の存在下、水素(H)を反応させることにより、一般式[2]:
    Figure 0006806990
    [式中、Rは式[1]と同じ。]
    で表されるα−フルオロアルデヒド類を製造する方法であって、
    前記ルテニウム化合物が、ルテニウムのフッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、及びオキシフッ化塩化物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
    前記ロジウム化合物が、ロジウムのフッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、及びオキシフッ化塩化物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
    前記白金化合物が、白金のフッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、及びオキシフッ化塩化物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
    前記塩基が、イミン系塩基、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水素化物、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属の炭酸水素塩、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の酸化物、またはアルカリ金属のアルコキシドである、α−フルオロアルデヒド類を製造する方法。
  2. 前記アルカリ金属のアルコキシドが、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、リチウムエトキシド、またはカリウムtert−ブトキシドである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記触媒が、水素で還元処理した触媒である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 反応を、塩基または触媒を逐次添加することにより行う、請求項1乃至3の何れかに記載の方法。
  5. 塩基の使用量が、一般式[1]で示されるα−フルオロエステル類1モルに対して0.01モル以上、3モル以下である、請求項1乃至4の何れかに記載の方法。
  6. 逐次添加が、塩基を少なくとも2回以上に分割して行う、請求項4に記載の方法。
  7. 逐次添加が、触媒を少なくとも2回以上に分割して行う、請求項4に記載の方法。
  8. 水素圧が0.001〜4MPaの範囲で、かつ、反応温度として0〜40℃の範囲で行う、請求項1乃至の何れかに記載の方法。
  9. アルコール類の存在下で反応を行う、請求項1乃至の何れかに記載の方法。
  10. 反応終了後、使用した触媒を回収し、再利用することにより行う、請求項1乃至の何れかに記載の方法。
  11. 触媒の回収が、触媒をろ別し、水次いでアルコール類で洗浄することにより行う、請求項10に記載の方法。
  12. 反応系中の水分が0.5〜0.001質量%の範囲で行うことを特徴とする、請求項1乃至11の何れかに記載の方法。
  13. 一般式[2]で示されるα−フルオロアルデヒド類が、下記式
    Figure 0006806990
    [式中、Rは前記一般式[1]のRと同じである。Rはアルキル基または置換アルキル基を表す。]
    で表されるα−フルオロアルデヒド類等価体として得ることを含む、請求項1乃至12の何れかに記載の方法。
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