JP2018177700A - 1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法 - Google Patents

1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法 Download PDF

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健史 細井
峰男 渡辺
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峰男 渡辺
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Hideaki Imura
英明 井村
謙亮 廣瀧
Kensuke Hirotaki
謙亮 廣瀧
直也 上島
Naoya Ueshima
直也 上島
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Abstract

【課題】
吸入麻酔剤として有用な、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を効率よく、工業的規模で製造する方法を提供する。
【解決手段】
ルテニウム触媒存在下、トリフルオロ酢酸メチルの水素化反応により合成したフルオラールの等価体(ヘミアセタール)に対し、フッ化水素とオルトギ酸トリメチルを作用させることで、簡便にデスフルランの合成中間体である1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルに変換できる。得られた1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルは塩素化、続いてフッ素化反応を行うことにより、効率的にデスフルランへ誘導可能である。
【選択図】なし

Description

本発明は、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法に関する。
1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテルはデスフルランとして知られている重要な吸入麻酔剤である。該吸入麻酔剤は、極めて低い生体内代謝率を有しており、生体に優しく安全性の高い薬剤として広く使用されている。
デスフルランに関する製造例は、それの前駆体として2,2,2−トリフルオロ−1−クロロエチルジフルオロメチルエーテル(CFCHClOCHF;イソフルラン)、2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(CFCHOCHF)、そして1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル(CFCHFOCHCl)に対して、フッ素化する方法が挙げられる。
イソフルランのハロゲン交換フッ素化反応として、アルカリ金属フッ化物を使用する方法(特許文献1)、三フッ化臭素を使用する方法(特許文献2や特許文献3)、フッ化水素を使用する方法(特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7)が知られている。2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテルを、直接フッ素化する反応としては、フッ素ガスを使用する方法(特許文献8)、高次金属フッ素化合物を使用する方法(特許文献9や特許文献10)が知られている。
1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対するフッ素化反応は、フッ化水素を使用する方法が知られている(特許文献11)。
米国特許4874901号明細書 米国特許4762856号明細書 米国特許5015781号明細書 特開平2−279646号公報 米国特許6800786号明細書 国際公開第2006/076324号 特表2010−533211号明細書 米国特許3897502号明細書 特開平4−273839号公報 特開平6−192154号公報 西独国特許2361058号明細書
デスフルランの製造方法については、デスフルラン等のエーテル部位(「−O−」)を持つ化合物の物性上、過酷な条件下にてフッ素化反応を行った場合、エーテル部位の開裂に伴った分解物の副生が問題となってくる。従来からの方法は、高価な出発原料を採用する割に変換率が悪く、効率の良い方法ではなかった。また、これらの高価な出発原料を合成する方法は、環境負荷の大きい試薬や、取り扱いの難しい試薬を用いるものが多く、工業的に好ましい製法とは言い難い。
特許文献1に記載の方法は、フッ化カリウムを用いたフッ素化反応を開示しているが、反応条件は高温かつ高圧である為、工業的な製法として採用しにくく、かつ低収率である。特許文献2や特許文献3に記載の方法についても、使用している三フッ化臭素は、毒性と腐食性の強い試薬であり、取り扱いが困難な点が挙げられる。特許文献4や特許文献5に記載の方法は、五塩化アンチモン触媒の存在下、室温付近の条件でフッ化水素を用いた液相フッ素化を行うことにより、目的とするデスフルランを得ている。しかし、フッ化水素自身、酸性物質でもあり、また、一般的に反応活性が高いとされる五塩化アンチモンを使用しているため、原料であるイソフルランや目的物であるデスフルランのエーテル部位の開裂に由来した不純物の副生が多く生じていた。
特許文献6に記載の方法は、クロミア触媒の存在下での気相フッ素化反応を行っているが、変換率は中程度であり、満足な結果を得ていない。特許文献7に記載の方法は、活性炭に担持したアンチモン触媒の存在下での気相フッ素化反応を行っているが、こちらも変換率は必ずしも高いとは言えなかった。
一方、特許文献8に記載の方法は、爆発の危険もあり、また、取り扱いが不便で目的物が低収率ということもあり、工業的な製造としては採用しにくい。特許文献9や特許文献10に記載の方法は、反応を円滑に行うためには、大過剰の高次金属フッ素化合物が必要であり、経済的な観点から好ましくない。また、特許文献11に記載の方法は、何れも低収率〜中程度の収率であり、吸入麻酔剤としての製造方法としては採用しにくく、何れの方法も課題が残されたままである。
一方、本発明で開示する、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対するフッ素化反応(本発明の第4工程に対応)については、特許文献11に記載がなされているが、該公報によれば、五塩化アンチモン触媒の存在下、室温付近にてフッ化水素を用いた液相フッ素化を行うことにより、目的とするデスフルランを得ているが、低収率(21%)であった(特許文献11)。これらの反応例により、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対するフッ素化反応によるデスフルランの合成には、低収率という課題が残されていた。
以上のように、原料の入手が容易な出発原料を用い、フッ素化試薬を用いて、効率的にデスフルランを製造する方法が強く望まれていた。
本発明者らは、上記の問題点を鑑み、鋭意検討を行った。その結果、式[1]:
Figure 2018177700
[式中、Meはメチル基を表す。]
で表されるトリフルオロ酢酸メチルに対し、ルテニウム触媒の存在下、水素(H)を反応させることにより、式[2]:
Figure 2018177700
で表される2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒド(フルオラール)またはそれの等価体(なお、2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒドや、該アルデヒドの等価体を、本明細書で、単に「フルオラール類」と言うことがある。)を製造し(第1工程)、次いで、得られたフルオラール類に対し、フッ化水素及びオルトギ酸トリメチルを作用させることにより、デスフルランの中間体として有用な、式[3]:
Figure 2018177700
[式中、Meはメチル基を表す。]
で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルを選択的に得ることを見出した(第2工程)。
また、得られた1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルに対し、ラジカル開始剤存在下もしくは光照射下、塩素(Cl)を反応させることにより、デスフルランの前駆体である、式[4]:
Figure 2018177700
で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルへ誘導し(第3工程)、続いて、得られた1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対し、フッ化水素を用いたフッ素化反応により、反応基質の分解を抑制しながら高変換率にて、式[5]:
Figure 2018177700
で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を得る(第4工程)知見を見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は工業的にも非常に安価であり、かつ、入手可能なトリフルオロ酢酸メチルを出発原料とし、前述した各工程を経ることで、目的物であるデスフルランが従来よりも格段と有利に製造できることとなった。分離の難しい不純物が殆ど生成せず、有害な廃棄物も生じない。従来の製造方法と比べても、工業的規模で実施する上で優位性の高い方法である。
すなわち、本発明は、以下の[発明1]から[発明22]に記載する、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法を提供する。
[発明1]
以下の4工程を含む、式[5]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法。
第1工程:式[1]で表されるトリフルオロ酢酸メチルに対し、ルテニウム触媒及び塩基の存在下、水素(H)を反応させることにより、式[2]で表される2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒド(フルオラール)またはそれの等価体に変換する工程。
第2工程:第1工程で得られた2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒド(フルオラール)またはそれの等価体に対し、フッ化水素を反応させることにより、式[3]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルに変換する工程。
第3工程:第2工程で得られた1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルに対し、ラジカル開始剤の存在下もしくは光照射下、塩素(Cl)を反応させることにより、式[4]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに変換する工程。
第4工程:第3工程で得られた1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対し、フッ化水素を反応させることにより、式[5]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)に変換する工程。
[発明2]
第1工程において、ルテニウム触媒が均一系触媒である、発明1に記載の製造方法。
[発明3]
第1工程において、ルテニウム触媒が式[6]:
Figure 2018177700
[式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香環基または置換芳香環基を表し、Arはそれぞれ独立に芳香環基または置換芳香環基を表し、Xはそれぞれ独立に形式電荷が−1または0の配位子(但し、3つのXの形式電荷の合計は−2)を表し、nはそれぞれ独立に1または2の整数を表す。]
で表される触媒、
または、式[7]:
Figure 2018177700
[式中、Phはフェニル基を表す。]
で表される触媒である、発明1または2に記載の製造方法。
[発明4]
第1工程において、ルテニウム触媒が、式[8]:
Figure 2018177700
[式中、Phはフェニル基を表す。]
で表される触媒である、発明1乃至3の何れかに記載の製造方法。
[発明5]
第1工程において、ルテニウム触媒が不均一系触媒である、発明1に記載の製造方法。
[発明6]
第1工程において、ルテニウム触媒がルテニウム化合物を担体に担持した触媒である、発明1または5に記載の製造方法。
[発明7]
ルテニウム化合物が、ルテニウムのフッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、及びオキシフッ化塩化物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、発明6に記載の製造方法。
[発明8]
担体が、金属酸化物もしくは活性炭である、発明6または7に記載の製造方法。
[発明9]
金属酸化物が、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカまたはマグネシアである、発明8に記載の製造方法。
[発明10]
第1工程における反応を、水素圧が0.001MPa〜10MPaの範囲で、かつ、反応温度として−30℃〜+100℃の範囲で行う、発明1乃至9の何れかに記載の製造方法。
[発明11]
第1工程において、2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒドの等価体が、式[9]:
Figure 2018177700
[式中、Meはメチル基を表す。]
で表される1−メトキシ−2,2,2−トリフルオロエタノールである、発明1乃至10の何れかに記載の製造方法。
[発明12]
第2工程における反応を、オルトギ酸トリメチルの存在下で行う、発明1乃至11の何れかに記載の製造方法。
[発明13]
第2工程における反応を、有機溶媒を用いることなく行う、発明1乃至12の何れかに記載の製造方法。
[発明14]
第3工程において、ラジカル開始剤が有機過酸化物またはアゾ系ラジカル開始剤であり、光照射における光源が、水銀灯、紫外線LED,有機EL、無機EL、紫外線レーザー、及びハロゲンランプからなる群より選ばれる少なくとも1種である、発明1乃至13の何れかに記載の製造方法。
[発明15]
第3工程における反応を、反応溶媒として水の存在下で行う、発明1乃至14の何れかに記載の製造方法。
[発明16]
第3工程において、塩素を反応させることにより、式[4]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルが、式[10]:
Figure 2018177700
で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルを含む混合物として得られる、発明1乃至15の何れかに記載の製造方法。
[発明17]
前記混合物に対し、蒸留精製を行うことにより、該混合物から式[10]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルを分離除去する工程を更に含む、発明16に記載の製造方法。
[発明18]
第3工程において、蒸留精製を行うことにより分離除去した、式[10]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルを回収し、塩素化における出発原料として用いる、発明1乃至17の何れかに記載の製造方法。
[発明19]
第4工程において、反応を気相中で行う、発明1乃至18の何れかに記載の製造方法。
[発明20]
第4工程において、反応を触媒の存在下で行う、発明1乃至19の何れかに記載の製造方法。
[発明21]
第4工程において、触媒が四塩化スズ、二塩化スズ、四フッ化スズ、二フッ化スズ、四塩化チタン、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、及び五フッ化アンチモンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、発明20に記載の製造方法。
[発明22]
第4工程における反応を、触媒を共存させずに行う、請求項1乃至19の何れかに記載の製造方法。
本発明によれば、入手が容易なトリフルオロ酢酸メチルを出発原料とし、取り扱いが容易な各種試剤を用いて、前記で記載した工程を経由することにより、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を効率的に製造できるという効果を奏する。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は以下の実施態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜実施することができる。
本発明は、前記で述べた4つの工程を含む製造方法であり、各工程の関係を図示すると、以下の通りである。
Figure 2018177700
[第1工程]
最初に第1工程について説明する。第1工程は、式[1]で表されるトリフルオロ酢酸メチルに対し、ルテニウム触媒及び塩基の存在下、水素(H)を反応させることにより、式[2]で表される2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒド(フルオラール)またはそれの等価体を得る工程である。
本工程の出発原料であるトリフルオロ酢酸メチルは、市販品(東京化成工業株式会社品)を用いることができる。
なお、本工程で用いるルテニウム触媒は、均一系、不均一系を問わず使用できる。均一系のルテニウム触媒としては、式[6]もしくは式[7]で表される触媒(なお、本明細書で、「均一系のルテニウム触媒」と言うときがある。)が、不均一系のルテニウム触媒としては、ルテニウム化合物を担体に担持した触媒(なお、本明細書で、「不均一系のルテニウム触媒」と言うときがある。)が挙げられる。
これらの触媒について順を追って説明する。
式[6]もしくは式[7]で表されるルテニウム触媒は、例えば、国際公開第2014/036650号に記載された方法を基に、当業者が調製できるが、商用的に市販されているものも利用できる。例えば、式[6]の触媒のうち、式[8]で表されるルテニウム触媒は、商品名「Ru-MACHO」(高砂香料工業株式会社製)として市販されているのを利用するのが便利である。また、該触媒は、水やトルエン等の有機溶媒等が含まれるものも同等に用いることができ、純度は70%以上であれば良く、80%以上が好ましく、90%以上が特に好ましい。
一方、式[7]で表されるルテニウム触媒は、商品名「Ru−SNS」(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製)として市販されているものを用いるのが便利である。
更に、前述したルテニウム触媒以外にも、例えば、Angew.Chem.Int.Ed.2013,52,2538−2542、Organometallics 2012,31,5239−5242、Angew.Chem.Int.Ed.2012,51,2772−2775およびAngew.Chem.Int.Ed.2006,45,1113−1115等に記載されたルテニウム触媒が挙げられる。その代表的なものを図1に示すが(略記号/Et;エチル基、t−Bu;tert−ブチル基、Ph;フェニル基、i−Pr;イソプロピル基)、当然これらに限定されるものではない。これらのルテニウム触媒でも前述したルテニウム触媒と同様の反応条件で用いることが可能である。
Figure 2018177700
なお、式[6]もしくは式[7]で表されるルテニウム触媒、並びに前記図1に示すルテニウム触媒は、何れも有機溶媒に溶かして用いることができる均一系触媒として作用する。
次に、式[6]のルテニウム触媒について説明する。式[6]中、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香環基または置換芳香環基を表し、Arはそれぞれ独立に芳香環基または置換芳香環基を表し、Xはそれぞれ独立に形式電荷が−1または0の配位子(但し、3つのXの形式電荷の合計は−2)を表し、nはそれぞれ独立に1または2の整数を表す。
式[6]で表されるルテニウム触媒のアルキル基は、炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキル基である。具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−オクチル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
置換アルキル基は、前記アルキル基の任意の炭素原子上に、任意の数および任意の組み合わせで、置換基を有するアルキル基のことを言う。係る置換基は、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルコキシ基、シアノ基、低級アルコキシカルボニル基、芳香環基、カルボキシル基、カルボキシル基の保護体、アミノ基、アミノ基の保護体、ヒドロキシル基、ならびにヒドロキシル基の保護体等である。具体的には、フッ素、塩素、臭素、メチル基、エチル基、プロピル基、フルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、フルオロメトキシ基、クロロメトキシ基、ブロモメトキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシルボニル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピロリル基(窒素保護体も含む)、ピリジル基、フリル基、チエニル基、インドリル基(窒素保護体も含む)、キノリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基等が挙げられる。
なお、本明細書において、“低級”とは、炭素数1〜6の、直鎖状もしくは分枝状の鎖式または環式(炭素数3以上の場合)であるものを意味する。また、前記の“係る置換基は”の“芳香環基”には、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルコキシ基、シアノ基、低級アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、カルボキシル基の保護体、アミノ基、アミノ基の保護体、ヒドロキシル基およびヒドロキシル基の保護体等が置換することもできる。さらに、ピロリル基、インドリル基、カルボキシル基、アミノ基およびヒドロキシル基の保護基は、Protective Groups in Organic Synthesis,Third Edition,1999,John Wiley & Sons,Inc.等に記載された保護基である。
ところで、置換アルキル基は、前述したアルキル基の任意の炭素−炭素単結合が、任意の数および任意の組み合わせで、炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合に置き換わることもできる(当然、これらの不飽和結合に置き換わったアルキル基は、前記の置換基を同様に有することもできる)。置換基の種類に依っては置換基自体が副反応に関与する場合もあるが、好適な反応条件を採用することにより最小限に抑えることができる。
式[6]で表されるルテニウム錯体のRの定義のうち、芳香環基は、芳香族炭化水素基、または窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子等のヘテロ原子を含む芳香族複素環基である。芳香族炭化水素基の具体例としては炭素数6〜18の、フェニル基、ナフチル基及びアントリル基等であり、ヘテロ原子を含む芳香族複素環基の具体例としてはピロリル基(窒素保護体も含む)、ピリジル基、フリル基、チエニル基、インドリル基(窒素保護体も含む)、キノリル基、ベンゾフリル基およびベンゾチエニル基等である。
式[6]で表されるルテニウム錯体のRの定義のうち、置換芳香環基は、Rの定義における芳香環基の任意の炭素原子上に、任意の数および任意の組み合わせで、置換基を有する芳香環基のことを言う。係る置換基は、前述した置換アルキル基における置換基の定義と同じであるため、ここでは繰り返しの記載を省略する。
式[6]で表されるルテニウム錯体のArの芳香環基の具体例としては、前記Rにおける芳香環基が、Arの置換芳香環基における置換基についても、前記Rにおける置換アルキル基と同義である。
式[6]で表されるルテニウム錯体のXは、それぞれ独立に形式電荷が−1または0の配位子[但し、3つのXの形式電荷の合計は−2(Ruの形式電荷は+2)]を表す。該「形式電荷が−1または0の配位子」は、ヘゲダス遷移金属による有機合成(L.S.Hegedus著、原著第2版、村井真二訳、p.4−9、東京化学同人、2001年)および大学院講義有機化学I.分子構造と反応・有機金属化学(野依良治ほか編、p.389−390、東京化学同人、1999年)等に記載された配位子(塩素原子、水素原子、一酸化炭素、RO−(Rはアルキル基または置換アルキル基を表す。)等)、BH−およびRCO−(Rは水素原子、アルキル基または置換アルキル基を表す。)等である(なお、R及びRにおけるアルキル基、置換アルキル基は、前記ルテニウム触媒のRの定義として記載したアルキル基および置換アルキル基と同じである))。その中でも3つのXのうち、1つずつ水素原子、塩素原子および一酸化炭素が好ましい。
本工程の反応は、塩基の存在下で行うことが必要であるが、式[6]で表されるルテニウム触媒の3つのX配位子のうち、少なくとも1つがBHを採る場合は、塩基の非存在下に反応を行うこともできる。その中でも式[6]で示されるルテニウム錯体のCl配位子がBH(H−BH)に置き換わったものが好ましい(国際公開2011/048727号参照)。
式[6]で示されるルテニウム錯体のnは、それぞれ独立に1または2の整数を表す。nが1の場合は、窒素原子とリン原子が2つの炭素原子を介して結合していることを意味し、nが2の場合は、窒素原子とリン原子が3つの炭素原子を介して結合していることを意味する。その中でも2つのnが共に1が好ましい。
式[6]で示されるルテニウム錯体のPhは、フェニル基を表す。
本工程で用いる、均一系のルテニウム触媒(式[6]または式[7])の使用量は、式[1]で表されるトリフルオロ酢酸メチル1モルに対して0.0001モル%以上を用いれば良く、0.001から5モル%が好ましく、0.005から1モル%が特に好ましい。
一方、本工程では、ルテニウム触媒として、ルテニウム化合物を担体に担持した触媒を用いて製造することが可能であり、この触媒は有機溶媒に溶けない、「不均一系触媒」として作用する。
当該触媒で用いる担体は金属酸化物または活性炭であり、触媒の調製に用いるルテニウム化合物は、ルテニウムのフッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、及びオキシフッ化塩化物からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
前記金属酸化物の種類としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、及びマグネシアからなる群より選ばれる少なくとも一種である。
前記活性炭は、担体として用いる活性炭は、木材、木炭、椰子殻炭、パーム核炭、素灰等を原料とする植物系、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭等を原料とする石炭系、石油残滓、オイルカーボン等を原料とする石油系または炭化ポリ塩化ビニリデン等の合成樹脂系があり、市販されているので、これらを利用するのが良い。例えば、瀝青炭から製造された活性炭(三菱化学カルゴン製BPL粒状活性炭、カルゴン粒状活性炭CAL(東洋カルゴン株式会社製))、椰子殻炭(日本エンバイロケミカルズ製G2c、G2x、GS3c、GS3x、C2c、C2x、X2M、三菱化学カルゴン製PCB)等が挙げられるが、これらに限定されない。形状、大きさも通常の粒状で用いることができ、当業者が適宜調整できる。
本工程で用いるルテニウム触媒を調製する方法は限定されないが、例えばルテニウム化合物を溶液に溶かし、この溶液を担体に含浸させた後、加熱しながら水素で還元処理することで調整できる。または、担体を予めフッ化水素、塩化水素、塩素化フッ素化炭化水素などによりハロゲンで修飾処理した化合物に、ルテニウム化合物の可溶性化合物を溶解した溶液を含浸するか、スプレーすることで調製できる。ここで言う可溶性化合物としては、水、塩酸、アンモニア水、エタノール、アセトンなどの溶媒に溶解するルテニウム化合物の硝酸塩、リン酸塩、塩化物、酸化物、オキシ塩化物、オキシフッ化物、などが挙げられる。ルテニウム化合物の担体に対する担持量は、担体との合計量に占める割合が、0.1から80質量%、好ましくは1から40質量%が適当である。
不均一系ルテニウム触媒は、前記の方法により各種調製することもできるが、市販されているものを用いることもできる。例えば、エヌ・イ−ケムキャット社製のルテニウム活性炭粉末(脱水品)であるAタイプ、Bタイプ、Kタイプ、そしてRタイプ等の不均一系触媒を利用するのが便利である。本工程において、含水率の高い触媒を用いると、反応系内に別途存在している塩基の影響を受け、原料であるトリフルオロ酢酸メチルの加水分解が優先的に進行し、トリフルオロ酢酸が生じることがある。本反応条件ではトリフルオロ酢酸に対する還元反応は進行しないため、含水率が高い触媒を使用する事は、収率の低下となり好ましくない。
触媒の含水率は50質量%以下のものを用いるのがよく、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下である。また、溶媒や塩基由来の水分も当然、原料の加水分解に影響を及ぼすため、少ない方が好ましい。触媒、溶媒、塩基、原料を混合した反応系中の全水分量は10から0.001質量%の範囲で行えば良く、好ましくは5から0.001質量%、より好ましくは0.5から0.001質量%である。
不均一系のルテニウム触媒の使用量は、式[1]で表されるトリフルオロ酢酸メチル1モルに対して0.00001モル%以上を用いれば良く、0.001から10モル%が好ましく、0.01から5モル%が特に好ましい。
本工程で用いる塩基は、有機塩基または無機塩基を用いる。本工程で使用する有機塩基は、
(a)3級アミン、
(b)含窒素芳香族複素環式化合物、
(c)下記のイミン骨格:
−C=N−C−
を有する化合物、
から選ばれる有機塩基である。
それぞれの化合物の具体的な例を、以下、明示する。
(a)三級アミン:トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリス(2−エチルへキシル)アミン、N,N−ジメチルデシルアミン、N−ベンジルジメチルアミン、N−ブチルジメチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N′−ジメチルピペラジン、N−メチルピペコリン、N−メチルピロリドン、N−ビニル−ピロリドン、ビス(2−ジメチルアミノ−エチル)エーテル、N,N,N,N',N''−ペンタメチル−ジエチレントリアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N,N',N',N''−ペンタメチルジプロピレントリアミン、トリス(3−ジメチルアミノプロピル)アミン、テトラメチルイミノ−ビス(プロピルアミン)、N−ジエチル−エタノールアミン等。
(b)含窒素芳香族複素環式化合物:ピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ルチジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、3−(ジメチルアミノ)プロピルイミダゾール、ピラゾール,フラザン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、プリン、1H−インダゾール、キナゾリン、シンノリン、キノキサリン、フタラジン、プテリジン、フェナントリジン、2,6−ジ−t−ブチルピリジン、2,2'−ビピリジン、4,4'−ジメチル−2,2'−ビピリジル、4,4'−ジメチル−2,2'−ビピリジル、5,5'−ジメチル−2,2'−ビピリジル、6,6'−t−ブチル−2,2'−ジピリジル、4,4'−ジフェニル−2,2'−ビピリジル、1,10−フェナントロリン、2,7−ジメチル−1,10−フェナントロリン、5,6−ジメチル−1,10−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン等。
(c)イミン系塩基:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン等。
本工程で用いる塩基のうち、用いる無機塩基の種類は、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水素化物、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属の炭酸水素塩、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のハロゲン化物、及びアルカリ金属のアルコキシド等である。
具体的には水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウム、水素化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、アルカリ金属、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、塩化セシウム、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、リチウムイソプロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムイソプロポキシド、リチウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシドおよびカリウムtert−ブトキシド等を用いる。
本工程では、前述した塩基のうち、無機塩基を用いるのが好ましい。更に、無機塩基のうち、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、リチウムイソプロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムイソプロポキシドが特に好ましく、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシドおよびカリウムエトキシドが極めて好ましい。
塩基の使用量は、式[1]で表されるトリフルオロ酢酸メチル1モルに対して0.001モル以上を用いれば良く、0.01から10モルが好ましく、0.01から5モルが特に好ましい。
本工程の製造方法において溶媒を用いることができる。溶媒は、特に限定はされないが、例えば、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ニトリル類、酸アミド類、低級エーテル類、アルコール類が用いられる。具体的には、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、プロピオニトリル、フェニルアセトニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、ホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチルピロリドン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,2−エポキシエタン、1、4−ジオキサン、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、及びn−ヘキサノールおよびシクロヘキサノール等である。中でも、エーテル系およびアルコール系が好ましく、アルコール系が特に好ましい。2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒドまたはその等価体の製造においては、分別蒸留での分離が容易なメタノール、エタノールおよびn−プロパノールが極めて好ましい。なお、これらの反応溶媒は、単独でまたは組み合わせて用いることができる。
反応溶媒の使用量は、式[1]で示されるトリフルオロ酢酸メチル1モルに対して0.01L(リットル)以上を用いれば良く、0.03から10Lが好ましく、0.05から7Lが特に好ましい。本反応は、反応溶媒を用いずにニートの状態で行うこともできる。
水素の使用量は、式[1]で示されるトリフルオロ酢酸メチル1モルに対して1モル以上を用いれば良く、好ましくは1から10モル程度であり、より好ましくは1から5モル程度である。
水素圧は、特に制限はないが、通常、0.001から10MPa(絶対圧。以下、本明細書で同じ)の圧力範囲で行えばよく、0.001から5.0MPaが好ましい。本発明の効果を最大限に発揮させるには、0.1から4.0MPaが極めて好ましい。
反応温度は、通常−30℃から+100℃であり、0℃から+70℃が好ましく、+20℃から+40℃が特に好ましい。反応温度が−30℃より低い場合、反応は遅くなることがある。一方、反応温度が+100℃を超える場合、触媒寿命が短くなり、また、反応は速く進行するが分解生成物等が生成し、本発明における選択率が低下することがある。
本工程における触媒と塩基の反応系への仕込み方法については、前記触媒及び塩基を反応系内に同時に仕込んでも良いが、一方、触媒及び塩基を別々に反応系に仕込んでも良い。さらに、触媒及び塩基を同時に逐次添加してもよく、触媒または塩基のどちらか一方を、反応系に必要量を仕込んだ後、もう一方の試剤を逐次添加しても良い。なお、ここで言う「逐次添加」とは、触媒及び/または塩基を、反応系に順を追って次々と間欠的(一定の時間を隔てることを指す)に反応系に試剤を加えることを意味する。反応系中にトリフルオロ酢酸メチル1モルに対し、塩基がモル当量で1モルから0.25モルになるよう、触媒がモル当量で0.0001モルから0.03モルになるよう、触媒及び/または塩基を、少なくとも2回以上に分割して添加することも可能であり、この添加方法は本工程の好ましい態様の一つである。
本工程の製造は、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。反応器に関しては、耐熱性と耐圧性を有する材質であれば良く、ステンレス鋼(SUS)、ハステロイ、モネル、白金などが好ましい。
反応時間は、72時間以内で行えば良く、原料基質および反応条件(反応温度、触媒の種類、量)により異なる。反応器内の圧力等から水素の消費状況を随時観察し、水素の消費が事実上完了した段階で反応を終了することが好ましい。ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴等の分析手段により反応の進行状況を追跡し、原料基質の減少が殆ど認められなくなった時点を終点とすることが好ましい。
本工程の目的物であるフルオラールは、強力な電子求引基(トリフルオロメチル基)を持つ為、自己重合体、二量体、水和体、アセタール、ヘミアセタール、及びこれらの構造的特徴を持つ化合物等の安定な等価体として得られることが多い。フルオラールの等価体であるヘミアセタール(式[9])を構成するアルコールは、塩基として用いたアルカリ金属のアルコキシドや、反応溶媒として用いたアルコール、および原料基質のエステル部位等に由来する。また、後処理過程で任意のアルコールを加えて平衡を傾けることにより、ヘミアセタールを構成するアルコールを任意のものに置き換えることができる(“任意のアルコール”は、炭素数1から18の、直鎖状もしくは分枝状の鎖式または環式(炭素数3以上の場合)のものである)。当然、同様に水を加えることにより水和体を得ることができる。
後処理は、有機合成における一般的な操作を採用することにより、フルオラールの等価体である、式[9]のヘミアセタールを得ることができる。反応後の後処理について、粗生成物は必要に応じて活性炭処理、分別蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等により高い純度に精製することができる。目的物の沸点が低い場合は、反応終了液を直接、回収蒸留する操作が簡便である。塩基の存在下での反応においては、上記の回収蒸留を行うと比較的酸性度の高いフルオラール類縁体は、用いた塩基との塩または錯体等を形成して釜残に残留する傾向がある。この様な場合には、反応終了液を予め、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸または塩化水素、臭化水素、硝酸、硫酸等の無機酸で中和してから回収蒸留することにより目的物を収率良く得ることができる。
[第2工程]
次に、第2工程について説明する。第2工程は、第1工程で得られた2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒド(フルオラール)またはそれの等価体に対し、フッ化水素を反応させることにより、式[3]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルを得る工程である。
本工程におけるフッ素化剤であるフッ化水素の使用量は、第1工程で得られるヘミアセタール(式[9]で表される化合物)1モルに対し、通常1モル以上あれば良く、2から10モルを用いると反応は円滑に進行するため好ましい。後処理面を考慮すると、3から6モルのフッ化水素を使用するのが特に好ましい。
本工程では、フルオラール類に対し、フッ化水素を反応させる際、反応系内にオルトギ酸トリメチルを添加することで、本工程におけるフッ素化反応の変換率を向上させることができる。本工程のフッ素化反応は、下記式で表されるように、反応の進行と共に、目的物の他、水分子が発生する。オルトギ酸トリメチルは、水分子に対するスカベンジャー(脱水剤)として機能しているものと考えられる。すなわち、オルトギ酸トリメチルはフッ化水素の存在下(酸性条件下)、速やかに加水分解反応を促され、1分子のエステルと2分子のアルコール(メタノール)へ変換される。
オルトギ酸トリメチルと水との反応によりメタノールが生成することで、オルトギ酸トリメチルはフッ素化工程における脱水剤として機能し、それと同時に、該反応で得られるエステル体(下記スキームを参照)は、反応後、目的物(式[3]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル)と容易に分離が可能である。
Figure 2018177700
オルトギ酸トリメチルを脱水剤として機能させるには、オルトギ酸トリメチルの使用量を、フルオラール類1当量に対し0.2当量以上、通常は0.5〜1.5当量用いるのが良い。但し、フルオラール類1当量に対しオルトギ酸トリメチルを1.5当量超える量を用いた場合、加水分解により副生するメタノールの影響を受け、フルオラール類との平衡化合物である、式[11]:
Figure 2018177700
で表されるジメチルアセタール(1,1−ジメトキシ−2,2,2−トリフルオロエタン)が生じ、1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルへの選択性がやや低下することがあるので、前述した範囲の量を用いることは、好ましい態様の一つである。
また、本工程におけるオルトギ酸メチルの使用量は、フルオラール類1モルに対し、0.5モル以上あれば良く、通常は0.75から1.5モルを用いると反応は円滑に進行するため好ましい。後処理面を考慮すると、特に0.8から1.3モルが好ましい。
本工程は、耐フッ化水素の高い溶媒を反応に用いることができる。反応溶媒としては、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系、エーテル系、エステル系、アミド系、ニトリル系、スルホキシド系等が挙げられる。具体例としては、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの反応溶媒は、単独または組み合わせて用いることができる。
なお、本工程は無溶媒で反応を行うことができる。反応を無溶媒で行うことは、反応後の精製操作が簡便となり、高純度な該目的物を洗浄操作のみで得る利点があり、より好ましい。
本工程の反応温度は、−50から+100℃の範囲で行えば良く、通常は−20から+50℃が好ましく、中でも0から+20℃が特に好ましい。
圧力条件は、0.1MPa(大気圧)から1.0MPaの範囲で行えば良いが、通常、0.1MPaから0.5MPaが好ましく、特に0.1MPaから0.2MPaがより好ましい。従って、ステンレス鋼(SUS)等の材質でできた耐圧反応容器やフッ化水素に対する耐食性能を有するテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂容器を用いて反応を行うことが好ましい。例えば、フッ化水素の沸点(+19.54℃)以上の温度条件で反応を行う場合には、ステンレス鋼(SUS)等の耐圧反応容器を用いることが好ましい。
本工程の反応時間は、通常は24時間以内であるが、フルオラール類と、使用したフッ化水素の使用量等の反応条件の違いにより時間が変動するので、ガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴等の分析手段により反応の進行状況を追跡し、出発基質が殆ど消失した時点を反応の終点とすることが好ましい。
本工程の後処理操作は、反応終了液に対して通常の精製操作である洗浄を実施することにより、目的とする1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルを容易に得ることができる。目的物は、必要に応じて、活性炭処理、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等により、さらに高い化学純度品へ精製することができる。
[第3工程]
続いて第3工程について説明する。第3工程は、第2工程で得られた1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルに対し、ラジカル開始剤の存在下もしくは光照射下、塩素(Cl)を反応させることにより、式[4]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルを得る工程である。
本工程を行う際、塩素の供給量は、式[3]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルに対し、1.00当量から4.00当量の範囲で行えば良く、中でも1.25当量から3.00当量が好ましく、特に1.50当量から2.50当量の使用量が特に好ましい。塩素の供給量に応じて反応基質の塩素化度は進行するため、塩素の供給量を適切に制御することで、式[10]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテル(本明細書で、「モノクロロメチルエーテル」や「低次塩素化物」と言うときがある)や、式[12]:
Figure 2018177700
で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルトリクロロメチルエーテル(本明細書で、「トリクロロメチルエーテル」や「低次塩素化物」と言うときがある)の副生を最小限に抑えつつ、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルを製造することが可能である。
なお、式[10]で表されるモノクロロメチルエーテルは、通常の蒸留操作で1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルから分離することが可能である。更に、モノクロロメチルエーテルは回収して塩素化反応の原料として再び利用することができる。
本工程は、反応器に塩素を供給する場合、塩素は気体および液体のどちらであっても良いが、取扱いの容易さの観点から、気体であることが好ましい。塩素供給方法は、反応液中に、塩素を供給できる方法であればよく、特に限定されない。例えば、塩素供給方法には、塩素化反応開始前に初期一括で塩素を仕込む方法、塩素化反応中に断続的に塩素を供給する方法、塩素化反応中に連続で塩素を供給する方法などがある。また、反応が激しすぎる場合、アルゴンや窒素等の不活性ガスで塩素を希釈して導入しても良い。
本工程は、原料の1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルに対する塩素化反応の選択性をより向上させるために、ラジカル開始剤を共存させることができる。具体的には、有機過酸化物、アゾ系ラジカル開始剤等を好適に用いることができる。有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル(ベンゾイルペルオキシド)、ケトンペルオキシド、ペルオキシケタール、ハイドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネートを例示できる。アゾ系ラジカル開始剤としては、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(略名“AIBN”、以下、本明細書で略名で記載することがある)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル 2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を例示できる。
ラジカル開始剤を用いる場合、ラジカル開始剤の使用量は、式[3]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル1モルに対して通常0.01から20モル%であり、好ましくは0.1から10モル%、更に好ましくは0.5から5モル%である。 また、ラジカル開始剤は反応の進行状況を観察して、適宜追加することもできる。ラジカル開始剤の量が原料1モルに対して0.01モル%未満では反応が途中で停止しやすく、収率が低下する恐れがあるため好ましくなく、一方、20モル%を超えると経済的に好ましくない。
一方、本工程において光照射を行う場合、光源は水銀灯、紫外線LED,有機EL、無機EL、紫外線レーザー、ハロゲンランプからなる群より選ばれる少なくとも1種であるが、これらのうち水銀灯を用いて行うのが好ましい。
本工程は反応溶媒を用いることができる(後述の実施例で示すように、反応溶媒を用いずに反応を行うことも可能である)。反応溶媒は、水、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系、エーテル系、エステル系、アミド系、ニトリル系及びスルホキシド系等が挙げられる。具体例な反応溶媒としては、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、プロピオニトリル及びジメチルスルホキシド等であり、これらの反応溶媒は、単独または1種類以上を組み合わせて用いることができる。
本工程で用いる反応溶媒の使用量は、出発原料である式[3]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル100質量部に対し、10質量部から1000質量部の範囲で行えば良く、中でも10質量部から500質量部が好ましく、特に25質量部から250質量部の使用量が好ましい。
温度条件は、−50から+80℃の範囲で行えば良く、通常は−20から+50℃が好ましく、中でも−10から+25℃が特に好ましい。反応温度は低温ほど塩素の位置選択性が向上するため、室温以下での反応を実施するのが好ましい。
本工程の圧力条件は、0.1MPaから0.2MPaの範囲で行えば良く、通常は0.1MPaで反応を行うのが好ましい。従って、塩素や副生する塩化水素に対する耐食性を有する石英ガラスやホウケイ酸ガラス等のガラス容器、またはテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂容器を好適に用いることができる。
本工程の反応時間は、通常は24時間以内であるが、採用したラジカル開始剤種や紫外線光の出力に起因した反応条件の違いにより、ガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴等の分析手段により反応の進行状況を追跡し、出発基質の消失を確認後、反応を終了することが好ましい。
後処理は、反応終了液に対して通常の蒸留操作を実施することにより、目的とする式[4]で示す1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルの単体を高純度に得ることができる。目的生成物は、必要に応じて、活性炭処理、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等により、さらに高い化学純度へ精製することができる。
[第4工程]
次に、第4工程について説明する。第4工程は、第3工程で得られた1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対し、フッ化水素を反応させることにより、式[5]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を得る工程である。
本工程では、液相中もしくは気相中でフッ素化反応を実施できるが、液相もしくは気相といった違いにより、反応条件が異なってくる。そこで、液相中もしくは気相中でフッ素化反応を行う場合について、それぞれ、順を追って説明する。
[液相中でフッ素化反応を行う場合]
本工程では、液相中でフッ素化反応を行う際、触媒を用いることができる。具体的には、四塩化スズ、二塩化スズ、四フッ化スズ、二フッ化スズ、四塩化チタン、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、及び五フッ化アンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種の触媒が利用できる。これらの触媒は単独、または組み合わせて使用することができる。中でも、四塩化スズ、二塩化スズ、四フッ化スズ、二フッ化スズの使用が好ましく、特に四塩化スズが好適に用いられる。
上記触媒を用いる際の使用量は、式[4]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル1モルに対し、0.01〜50モル%であり、好ましくは0.1〜20モル%であり、さらに好ましくは0.5〜10モル%である。50モル%を超える量を用いると、高沸点化合物からなるタール生成量が増加するため、好ましくはない。なお、液相中におけるフッ素化反応については、触媒を用いずに反応を行うこともできる(後述の実施例)。
液相中でフッ素化反応を行う際のフッ化水素の使用量は、式[4]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル1モルに対し、2から100モルであり、好ましくは5から50モル、さらに好ましくは10から25モルである。フッ化水素の使用量が2モル未満の場合は、反応変換率が悪い。また、100モルを超える使用量は経済的な観点から好ましくない。
液相中でフッ素化反応を行う際の反応温度は、−20℃から+200℃の範囲で行えば良く、通常は+25から+150℃が好ましく、中でも+50から+100℃が特に好ましい。
液相中でフッ素化反応を行う際の圧力条件は、0.1MPaから4.0MPaの範囲で行えば良く、通常は0.1MPaから2.0MPaが好ましく、特に0.1MPaから1.5MPaがより好ましい。
[気相中でフッ素化反応を行う場合]
本工程では、気相中でフッ素化反応を行う際、触媒、すなわち、金属化合物を担体に担持した触媒を用いることができる。具体的には、クロム、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、マグネシウム、ジルコニウム及びアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属化合物を担体に担持した金属化合物担持触媒である。
なお、ここで用いる担体は金属酸化物もしくは活性炭であり、前記金属化合物の具体例は、前述した金属のフッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、及びオキシフッ化塩化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属ハロゲン化物もしくは金属オキシハロゲン化物を、また、前記金属酸化物は、アルミナ、ジルコニア、チタニア及びマグネシアからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
一方、金属酸化物をフッ素化したもの(例えば、フッ素化アルミナ等)についても触媒として使用できる。
これらの触媒のうち、クロム化合物を金属酸化物もしくは活性炭に担持させた触媒が好ましい。
前記金属化合物を担体に担持したものを触媒として用いる場合、担持金属化合物は担体100質量部に対し0.1から100質量部であり、1から50質量部がより好ましい。金属酸化物として用いるアルミナは、一般的にアルミニウム塩水溶液からアンモニアなどを用いて生じさせた沈殿を成型・脱水させて得られるアルミナである。通常、触媒担体用あるいは乾燥用として市販されているγ−アルミナが好ましく用いられる。
触媒(金属化合物担持触媒)を調製する方法は限定されないが、前述したγ−アルミナ等の金属酸化物にクロム、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄の中から選ばれる少なくとも1種の金属の可溶性化合物を溶解した溶液を含浸する、もしくはスプレーをした後、次いで乾燥させる。その後、フッ化水素などのフッ素化剤により、部分的にまたは完全に担体をフッ素化させる(フッ素化アルミナ等)ことで触媒は調製される。触媒の調製の最終段階では、フッ素化反応の反応温度以上の温度でフッ化水素を流通させることが好ましい。従って、通常は200から500℃、中でも300から400℃で好適に処理される。
可溶性化合物としては、水、エタノール、アセトンなどの溶媒に溶解する該当金属の酸化物または塩であれば特に限定されないが、例えば硝酸塩、塩化物、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩などが挙げられる。具体的には、硝酸クロム、三塩化クロム、三酸化クロム、重クロム酸カリウム、硝酸マンガン、塩化マンガン、二酸化マンガン、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸コバルト、塩化コバルト、硝酸鉄、塩化鉄などを用いるのが好ましい。これらの化合物は水和物であっても良く、その金属の価数は任意の価数であって良い。何れの方法で調製した触媒も、使用の前に所定の反応温度以上の温度で予めフッ化水素などのフッ素化剤で処理し、反応中の触媒の組成変化を防止することが有効である。
担体として用いる活性炭は、木材、木炭、椰子殻炭、パーム核炭、素灰等を原料とする植物系、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭等を原料とする石炭系、石油残滓、オイルカーボン等を原料とする石油系または炭化ポリ塩化ビニリデン等の合成樹脂系があり、市販されているので、これらを利用するのが良い。例えば、瀝青炭から製造された活性炭(三菱化学カルゴン製BPL粒状活性炭、カルゴン粒状活性炭CAL(東洋カルゴン株式会社製))、椰子殻炭(日本エンバイロケミカルズ製G2c、G2x、GS3c、GS3x、C2c、C2x、X2M、三菱化学カルゴン製PCB)等が挙げられるが、これらに限定されない。形状、大きさも通常の粒状で用いることができ、当業者が適宜調整できる。本発明において使用する活性炭は比表面積の大きな活性炭が好ましい。活性炭の比表面積ならびに細孔容積は、市販品の規格の範囲で十分であるが、それぞれ400m/gより大きく、0.1cm/gより大きいことが望ましい。またそれぞれ800〜3000m/g、0.2〜1.0cm/gであればよい。さらに活性炭を担体に用いる場合、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性水溶液に常温付近で10時間程度またはそれ以上の時間浸漬するか、活性炭を触媒担体に使用する際に慣用的に行われる硝酸、塩酸、フッ酸等の酸による前処理を施し、予め担体表面の活性化ならびに灰分の除去を行うことが好ましい。
また、反応中に酸素、塩素、フッ素化または塩素化炭化水素などを反応器中に供給することは触媒寿命の延長、反応率、反応収率の向上に有効である。本発明にかかる触媒が、反応により活性を失った際には、再び活性化させることが可能である。すなわち、失活した触媒は、高められた温度で酸化性物質、例えば、酸素、空気、塩素などと接触させることで再活性化することができる。その時の処理温度は、200から550℃であり、中でも300から500℃が好ましい。200℃未満では未活性化の状態のままであり、550℃を超えると触媒が変性して活性を得ることができない場合がある。
以上、気相でフッ素化反応を行う際に用いる触媒は、前記の方法により各種調製することもできるが、市販されているものを用いることもできる。
気相中でフッ素化反応を行う際の反応温度は特に限定されないが、100から500℃であり、100から400℃が好ましく、100から350℃がさらに好ましい。反応温度が500℃を超える場合は、分解生成物が生成し、目的物の選択率が低下することがあるので好ましくない。
気相中でフッ素化反応を行う際の、反応領域へ供給する1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル:フッ化水素のモル比は、反応温度に影響を受けるが、通常1:2から1:50であるが、1:4から1:20が好ましく、1:6から1:15がより好ましい。フッ化水素が少ないと反応の変換率は低下し、目的物の収率が低下することがある。
気相中でフッ素化反応を行う際の、反応領域へ供給する1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルは、反応に関与しない窒素、ヘリウム、アルゴンなどのガスと共に供給することができる。また、同様にフッ化水素を共存させることもできる。このようなガスは、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル1モル当たり100モル以下の比率とし、20モル以下が好ましい。また、反応に関与しないガス類は、使用しなくても構わない。
気相中でフッ素化反応を行う際の反応圧力としては、通常0.1〜6.0MPaの範囲であるが、本工程における好ましい圧力範囲については、好ましくは0.1〜3.0MPa、より好ましくは0.1〜1.5MPaの範囲である。圧力を設定する場合、系内に存在する原料などの有機物が、反応系内で液化しないような条件を選ぶことが好ましい。
気相中でフッ素化反応を行う際の接触時間は、標準状態において、通常0.1から200秒、好ましくは3から100秒である。接触時間が短いと反応率が低下し、接触時間が長すぎると副反応が起こるので好ましくない。
なお、気相中、フッ化水素を流通させることでフッ素化反応を進行させることが可能であるが、このような流通形式では、触媒の保持方法は固定床、流動床、移動床等、いずれの形式でもかまわないが、固定床で行うのが簡便であり、好ましい。
本工程(気相、液相中でのフッ素化反応)で用いる反応容器については、ステンレス鋼(SUS)の様な材質でできた耐圧反応容器やフッ化水素に対する耐食性能を有するテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂にて内部がライニングされた耐圧反応容器を用いて反応を行うことが好ましい。
反応時間は、通常は24時間以内であるが、式[4]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルと使用したフッ化水素の使用量に起因した反応条件の違いにより、ガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴等の分析手段により反応の進行状況を追跡し、出発基質が殆ど消失した時点を反応の終点とすることが好ましい。
後処理は、反応終了液に対して通常の精製操作である洗浄操作と蒸留操作を実施することにより、目的とする式[5]で表されるデスフルランを高収率で得ることができる。目的物は、必要に応じて、活性炭処理、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の精製操作により、さらに化学純度を高めることができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これらの実施態様に限られない。ここで、組成分析値の「%」は、原料または生成物をガスクロマトグラフィー(特に記述のない場合、検出器はFID)によって測定して得られた組成の「面積%」を表す。
[実施例1]
Figure 2018177700
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた500mLステンレス鋼(SUS)製オートクレーブ反応器内にトリフルオロ酢酸メチル50g(390mmol、1当量)、ナトリウムメトキシド2.1g(39mmol、0.1当量)、カルボニルクロロヒドリド[ビス(2−ジフェニルホスフィノエチル)アミノ]ルテニウム(商品名「Ru−MACHO」、高砂香料工業株式会社製)47mg(0.078mmol、0.02mol%)、メタノール195ml(2mol/L)を量り取り、水素圧0.2MPaに水素置換を3回行った後、内温を30℃以下に保ちながら、1.0MPaの水素圧にて反応を24時間行った。反応後、反応液をサンプリングし、19F−NMRにて分析を行ったところ、変換率90%、選択率95%で、フルオラール等価体である目的物のヘミアセタール(フルオラール メチルヘミアセタール)が生成していることを確認した。反応液に対し、酢酸2.3g(39mmol、0.1当量)にて中和後、濾過より中和した際に生じた塩を除去し、得られた濾液から減圧蒸留することにより、収率65%にて該ヘミアセタールを32.9g得た。
[物性データ]
式[2]:フルオラール メチルヘミアセタール(1−メトキシ−2,2,2−トリフルオロエタノール)
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):3.57(3H,s),3.71 (1H,br),4.75(1H,q,J=3.6Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):−84.47(3F,s)
[実施例2]
Figure 2018177700
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた500mLステンレス鋼(SUS)製オートクレーブ反応器内にトリフルオロ酢酸メチル50g(390mmol、1当量)、ナトリウムメトキシド5.3g(98mmol、0.25当量)、ジクロロトリフェニルフォスフィン[ビス(2−エチルチオエチル)アミン]ルテニウム(商品名「Ru−SNS」、シグマアルドリッチジャパン社製)36mg(0.058mmol、0.015mol%)、メタノール195ml(2mol/L)を量り取り、水素圧0.2MPaに水素置換を3回行った後、内温を30℃以下に保ちながら、1.0MPaの水素圧にて反応を24時間行った。反応後、反応液をサンプリングし、19F−NMRにて分析を行ったところ、変換率35%、選択率99%でフルオラール等価体である目的物のヘミアセタールが生成していることを確認した。
[実施例3]
Figure 2018177700
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた500mLステンレス鋼(SUS)製オートクレーブ反応器内にトリフルオロ酢酸メチル50g(390mmol、1当量)、ナトリウムメトキシド5.3g(98mmol、0.25当量)、5質量%担持のルテニウム活性炭粉末(エヌ・イ−ケムキャット社製、Aタイプ)10g(4.95mmol、1.3mol%)、メタノール195ml(2mol/L)を量り取り、水素圧0.2MPaに水素置換を3回行った後、内温を30℃以下に保ちながら、1.0MPaの水素圧にて反応を6時間行った。反応後、反応液をサンプリングし、19F−NMRにて分析を行ったところ、変換率27%、選択率99%にてフルオラール等価体である目的物のヘミアセタールが生成していることを確認した。
[実施例4]
Figure 2018177700
圧力計、温度計保護管、挿入管、そして攪拌モーターを備えた500mLステンレス鋼(SUS)製オートクレーブ反応器内にトリフルオロ酢酸エチル50g(352mmol、1当量)、ナトリウムエトキシド1.9g(35mmol、0.1当量)、カルボニルクロロヒドリド[ビス(2−ジフェニルホスフィノエチル)アミノ]ルテニウム(商品名「Ru−MACHO」、高砂香料工業株式会社製)43mg(0.07mmol、0.02mol%)、エタノール176ml(2mol/L)を量り取り、水素圧0.2MPaに水素置換を3回行った後、内温を30℃以下に保ちながら、1.0MPaの水素圧にて反応を21時間行った。反応後、反応液をサンプリングし、19F−NMRにて分析を行ったところ、変換率95%、選択率78%にてフルオラール等価体である目的物のヘミアセタールが生成していることを確認した。得られたエタノール付加体のヘミアセタールはメタノールによる溶媒置換操作を行うことにより、目的物であるメタノール付加体のヘミアセタールへ誘導可能である。
[実施例5]
Figure 2018177700
氷冷下、圧力計を備えた100mLステンレス鋼(SUS)製オートクレーブ反応器にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、上式に示すフルオラールの等価体であるヘミアセタール5.0g(38.4mmol)、フッ化水素3.8g(192.2mmol)を量り取り、自然昇温後、室温にて2時間攪拌を行った。反応後、0.15MPaの反応圧力を開放し、反応液をサンプリングした。サンプリング液には未反応のフッ化水素を吸着するため、無水塩化カルシウムを添加後、19F−NMRにて測定したところ、変換率29%、選択率94%にて目的とするフッ素化物であるメチルエーテルを得た。
[物性データ]
式[3]:(1,2,2,2−テトラフルオロエチル)メチルエーテル:
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):3.72(3H,s),5.28 (1H,dq,J=60.0,3.2Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):−84.33(3F,s), −146.04(1F,d,J=60.7Hz)
[実施例6]
Figure 2018177700
温度計を備えた250mlのテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)反応器にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、上式に示すハロゲン化ヘミアセタール50.0g(384mmol、1当量)を量り取り、冷却した。冷却後、フッ化水素38.4g(1.92mol、5当量)を内温−2.0℃から15.9℃にて添加し、次いでオルトギ酸メチル40.8g(384mmol、1当量)を内温−1.8℃から29.8℃にて定量ポンプを用い、導入した。自然昇温後、室温にて2時間反応を行ったところで19F−NMRによる分析を行ったところ、変換率78%、選択率91%にて目的とするフッ素化されたメチルエーテル体を得た。反応後、再度冷却を行い、発熱に注意しながらイオン交換水80gを反応液へ添加し、反応を停止させた。10分間の水洗後、2層分離を行うことでGC純度69%の有機層を37.2g得た。得られた有機層にはオルトギ酸メチルの加水分解体であるギ酸メチルやメタノールが含有するため、16%水酸化カリウム溶液80gを用いて洗浄を行うことにより、GC純度87%にてフッ素化されたメチルエーテル体を収率49%にて25.1g得た。
[実施例7]
Figure 2018177700
冷却管コンデンサーと温度計を備えたホウケイ酸ガラスの反応容器にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、式[3]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル150g(1.14mol、1当量)を量り取った。その後、冷却下、反応器の外側より400Wの高圧水銀ランプ(ウシオ社製)にて紫外線を照射しながら、塩素178g(2.51mol、2.2当量)を発熱に注意しながら、5時間かけて導入した。塩素導入後、未反応分の塩素は窒素を用いてパージし、反応粗体199gを得た。この反応粗体を理論段数10段の蒸留塔を用いて分留すると、留分として1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルは93%GC純度にて114g得た。この場合の反応からの収率は50%であった。
[物性データ]
式[4]:1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル:
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):6.05(1H,dq,J=54.2,3.2Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):−83.68(3F,s),−148.66(1F,d,J=54.8Hz)
[実施例8]
Figure 2018177700
冷却管コンデンサーと温度計を備えたホウケイ酸ガラスの反応容器にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル50g(379mmol、1当量)、そしてAIBN1.2g(7.6mmol、2mol%)を量り取った。オイルバス温度を40℃まで加温後、塩素107g(1.52mol、4当量)を発熱に注意しながら、導入を開始した。反応中は基質の塩素化度の進行に伴い、オイルバス温度を昇温させ、最終的には内温66℃まで加温した。塩素導入後、未反応分の塩素は窒素を用いてパージし、反応液をGC分析に供したところ、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルは60GC%、低次塩素化物(モノクロロメチルエーテル)は15GC%、高次塩素化物(トリクロロメチルエーテル)は17GC%、その他は8%であった。
[実施例9]
Figure 2018177700
100mLオートクレーブ反応容器(SUS316L製)にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、式[4]の1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル10g(49.8mmol、1当量)、そして四塩化スズ1.3g(4.99mmol、10モル%)を量り取った。氷浴にて冷却後、フッ化水素20g(1.00mol、20当量)を一括で仕込み、80℃まで昇温した。8時間の加熱攪拌後、全ての反応ガスを水トラップへ吸収させ、次いで、すり抜けた有機物をドライアイスにて捕集したところ、7.8gの有機物を得た。有機物の回収率は93%であり、得られた1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の純度は98%であった。
[実施例10]
Figure 2018177700
100mLオートクレーブ反応容器(SUS316L製)にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル10g(49.8mmol、1当量)を量り取った。氷浴にて冷却後、フッ化水素20g(1.00mol、20当量)を一括で仕込み、80℃まで昇温した。8時間の加熱攪拌後、全ての反応ガスを水トラップへ吸収させ、次いで、すり抜けた有機物をドライアイスにて捕集したところ、7.7gの有機物を得た。有機物の回収率は92%であり、得られたデスフルランの純度は71%であった。また、捕集した有機物には、反応中間体として、式[13]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテル(1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルがモノフルオロ化された化合物)が26%含有していた。
反応中間体:1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテル(式[13])
Figure 2018177700
[物性データ]
式[5]:1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン):
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):5.91(1H,dq,J=2.8Hz,54.2Hz),6.43(1H,t,J=70.5Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):−146.5(1F,d,J=54.8Hz),−86.8(1F,dd,J=69.3Hz,J=161.7Hz),−85.5(1F,dd,J=69.3Hz,J=161.7Hz),−84.6(3F,s)
本発明で対象とする1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)は、吸入麻酔剤として利用できる。

Claims (22)

  1. 以下の4工程を含む、式[5]:
    Figure 2018177700
    で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法。
    第1工程:式[1]:
    Figure 2018177700
    [式中、Meはメチル基を表す。]
    で表されるトリフルオロ酢酸メチルに対し、ルテニウム触媒及び塩基の存在下、水素(H)を反応させることにより、式[2]:
    Figure 2018177700
    で表される2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒド(フルオラール)またはそれの等価体に変換する工程。
    第2工程:第1工程で得られた2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒド(フルオラール)またはそれの等価体に対し、フッ化水素を反応させることにより、式[3]:
    Figure 2018177700
    [式中、Meはメチル基を表す。]
    で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルに変換する工程。
    第3工程:第2工程で得られた1,2,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテルに対し、ラジカル開始剤の存在下もしくは光照射下、塩素(Cl)を反応させることにより、式[4]:
    Figure 2018177700
    で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに変換する工程。
    第4工程:第3工程で得られた1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルに対し、フッ化水素を反応させることにより、式[5]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)に変換する工程。
  2. 第1工程において、ルテニウム触媒が均一系触媒である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 第1工程において、ルテニウム触媒が式[6]:
    Figure 2018177700
    [式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、芳香環基または置換芳香環基を表し、Arはそれぞれ独立に芳香環基または置換芳香環基を表し、Xはそれぞれ独立に形式電荷が−1または0の配位子(但し、3つのXの形式電荷の合計は−2)を表し、nはそれぞれ独立に1または2の整数を表す。]
    で表される触媒、
    または、式[7]:
    Figure 2018177700
    [式中、Phはフェニル基を表す。]
    で表される触媒である、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 第1工程において、ルテニウム触媒が、式[8]:
    Figure 2018177700
    [式中、Phはフェニル基を表す。]
    で表される、請求項1乃至3の何れかに記載の製造方法。
  5. 第1工程において、ルテニウム触媒が不均一系触媒である、請求項1に記載の製造方法。
  6. 第1工程において、ルテニウム触媒がルテニウム化合物を担体に担持した触媒である、請求項1または5に記載の製造方法。
  7. ルテニウム化合物が、ルテニウムのフッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、及びオキシフッ化塩化物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項6に記載の製造方法。
  8. 担体が、金属酸化物もしくは活性炭である、請求項6または7に記載の製造方法。
  9. 金属酸化物が、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカまたはマグネシアである、請求項8に記載の製造方法。
  10. 第1工程における反応を、水素圧が0.001MPa〜10MPaの範囲で、かつ、反応温度として−30℃〜+100℃の範囲で行う、請求項1乃至9の何れかに記載の製造方法。
  11. 第1工程において、2,2,2−トリフルオロアセトアルデヒドの等価体が、式[9]:
    Figure 2018177700
    [式中、Meはメチル基を表す。]
    で表される1−メトキシ−2,2,2−トリフルオロエタノールである、請求項1乃至10の何れかに記載の製造方法。
  12. 第2工程における反応を、オルトギ酸トリメチルの存在下で行う、請求項1乃至11の何れかに記載の製造方法。
  13. 第2工程における反応を、有機溶媒を用いることなく行う、請求項1乃至12の何れかに記載の製造方法。
  14. 第3工程において、ラジカル開始剤が有機過酸化物またはアゾ系ラジカル開始剤であり、光照射における光源が、水銀灯、紫外線LED,有機EL、無機EL、紫外線レーザー、及びハロゲンランプからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1乃至13の何れかに記載の製造方法。
  15. 第3工程における反応を、反応溶媒として水の存在下で行う、請求項1乃至14の何れかに記載の製造方法。
  16. 第3工程において、塩素を反応させることにより、式[4]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテルが、式[10]:
    Figure 2018177700
    で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルを含む混合物として得られる、請求項1乃至15の何れかに記載の製造方法。
  17. 前記混合物に対し、蒸留精製を行うことにより、該混合物から式[10]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルを分離除去する工程を更に含む、請求項16に記載の製造方法。
  18. 第3工程において、蒸留精製を行うことにより分離除去した、式[10]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルクロロメチルエーテルを回収し、塩素化における出発原料として用いる、請求項1乃至17の何れかに記載の製造方法。
  19. 第4工程において、反応を気相中で行う、請求項1乃至18の何れかに記載の製造方法。
  20. 第4工程において、反応を触媒の存在下で行う、請求項1乃至19の何れかに記載の製造方法。
  21. 第4工程において、触媒が四塩化スズ、二塩化スズ、四フッ化スズ、二フッ化スズ、四塩化チタン、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、及び五フッ化アンチモンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項20に記載の製造方法。
  22. 第4工程における反応を、触媒を共存させずに行う、請求項1乃至19の何れかに記載の製造方法。
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WO2019216163A1 (ja) * 2018-05-09 2019-11-14 セントラル硝子株式会社 1,2,2,2-テトラフルオロエチルメチルエーテルの製造方法

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