JP2020011926A - ハロゲン化エーテル類の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】吸入麻酔剤として有用な1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)または1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を工業規模で効率的に製造する方法の提供。【解決手段】合成中間体として1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルを経由する、1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)または1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造法。【選択図】なし
Description
本発明は、重要な吸入麻酔薬である1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)または1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)、及び該吸入麻酔薬の合成中間体として有用な1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルの製造方法に関する。
ハロゲン化エーテル類として有用な1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)または1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)は、共に重要な吸入麻酔薬であり、生体に優しく、かつ安全性の高い薬剤として広く利用されている。
イソフルランに関する製造例は、クロロジフルオロメタンと2,2,2−トリフルオロエタノールとの反応により得られる2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(CF3CH2OCHF2)を、更に塩素化することから得られる(特許文献1、特許文献2)。また、2,2,2−トリフルオロエタノールに対し、ジメチル硫酸を用いるメチルエーテル化により2,2,2−トリフルオロエチルメチルエーテル(CF3CH2OCH3)を合成し、さらにそれを塩素化、フッ素化を行うことでイソフルランを合成できる(特許文献3)。
デスフルランに関する製造例は、1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(CF3CHClOCHF2;イソフルラン)の塩素原子をフッ素化する方法、2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(CF3CH2OCHF2)の1位炭素上の1つの水素原子をフッ素化する方法、または1,2,2,2−テトラフルオロエチルジクロロメチルエーテル(CF3CHFOCHCl2)の2つの塩素原子をフッ素化する方法が挙げられる。その中でもイソフルランは、それ自体が吸入麻酔薬として幅広く使用されており入手可能な化合物であるため、イソフルランを原料に用いたデスフルラン製法は、数多く報告されている。例えば、イソフルランのハロゲン交換フッ素化反応として、アルカリ金属フッ化物を使用する方法(特許文献4)、三フッ化臭素を使用する方法(特許文献5)、フッ化水素を使用する方法(特許文献6〜9)が知られている。
しかしながら、従来から知られているイソフルランまたはデスフルランの製造方法は、効率が良いとは言えず、改善が求められていた。
例えば、イソフルランの製法として特許文献1〜3に記載の方法は、環境負荷の大きい試薬や、取り扱いの難しい試薬を大量に用いるものが多く、工業的に好ましい製法とは言い難かった。
また、デスフルランの製法として特許文献4に記載の方法は、フッ化カリウムを用いたフッ素化反応を開示しているが、反応条件は高温かつ高圧である為、工業的な製法として採用しにくく、かつ低収率である。特許文献5に記載の方法では、使用している三フッ化臭素は、毒性と腐食性の強い試薬であり、取り扱いが困難な点が挙げられる。特許文献6または7に記載の方法は、原料であるイソフルラン及び目的物であるデスフルランのエーテル部位(「−O−」)の開裂に由来した不純物の副生が生じる。特許文献8または9に記載の方法は、変換率は中程度であり満足な結果を得ていない。
本発明は、入手が容易な2,2,2−トリフルオロエタノールを出発原料とし、取り扱いが簡便で安全な各種試剤を用いて、1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)または1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を効率的に製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の問題点を鑑み、鋭意検討を行った。その結果、合成中間体として1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルを経由することで、1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)または1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を、効率的に得られることを見出し、本発明の完成に至った。従来の方法と比較し、この製造方法は反応基質の分解を抑制でき、かつ有害な廃棄物を最小限に抑えられるため、工業的な規模の生産に特に適していることが明らかになった。
また、前述の合成中間体を、特定の反応条件(ルイス酸触媒)でフッ素化をすることによって、イソフルランまたはデスフルランを高選択的に作り分けられることを見出した。
さらに、2,2,2−トリフルオロエタノールから該合成中間体を、高収率で簡便に得られることを見出した。
すなわち本発明は、以下の[発明1]から[発明11]に記載する、ハロゲン化エーテルとして有用な1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)または1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法を提供する。
[発明1]
以下の工程を含む、式[1]:
[発明1]
以下の工程を含む、式[1]:
で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)または式[2]:
で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法。
[第1工程]
脱水剤の存在下、2,2,2−トリフルオロエタノールに、ホルムアルデヒドと、フッ化水素と、を反応させることにより式[3]:
[第1工程]
脱水剤の存在下、2,2,2−トリフルオロエタノールに、ホルムアルデヒドと、フッ化水素と、を反応させることにより式[3]:
で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルを得る工程。
[第2工程]
第1工程にて得られた、前記式[3]で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルに対し、光照射下、塩素(Cl2)を反応させることにより式[4]:
[第2工程]
第1工程にて得られた、前記式[3]で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルに対し、光照射下、塩素(Cl2)を反応させることにより式[4]:
で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルを得る工程。
[第3工程]
第2工程にて得られた、前記式[4]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルに対し、ルイス酸触媒存在下、フッ化水素を用いるフッ素化を行うことにより前記式[1]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)または前記式[2]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を得る工程。
[発明2]
第1工程で用いる脱水剤が、発煙硫酸、三酸化硫黄、濃硫酸、フルオロ硫酸、クロロ硫酸及びトリフルオロメタンスルホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、発明1に記載の製造方法。
[発明3]
第2工程において、光照射における光源が、水銀灯、紫外線LED、有機EL、無機EL、紫外線レーザー及びハロゲンランプからなる群より選ばれる少なくとも1種である、発明1または発明2に記載の製造方法。
[発明4]
第2工程における反応を、反応溶媒の存在下で行う、発明1乃至3の何れかに記載の製造方法。
[発明5]
第3工程で用いるルイス酸触媒が、ホウ素(III)、スズ(II)、スズ(IV)、チタン(IV)、亜鉛(II)、アルミニウム(III)、アンチモン(III)及びアンチモン(V)からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属ハロゲン化物である、発明1乃至4の何れかに記載の製造方法。
[発明6]
第3工程で用いるルイス酸触媒が、四塩化スズ(IV)、四フッ化スズ(IV)、二塩化スズ(II)及び二フッ化スズ(II)からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属ハロゲン化物である、発明5に記載の前記式[1]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)の製造方法。
[発明7]
第3工程で用いるルイス酸触媒が、五塩化アンチモン(V)、五フッ化アンチモン(V)、三塩化アンチモン(III)及び三フッ化アンチモン(III)からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属ハロゲン化物である、発明5に記載の前記式[2]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法。
[発明8]
第3工程において、液相中での反応を、−10℃〜+150℃の温度範囲で、かつ、0.1MPa〜4MPa(絶対圧。以下、本明細書で同じ)の圧力範囲で行う、発明1乃至発明7の何れかに記載の製造方法。
[発明9]
式[4]:
[第3工程]
第2工程にて得られた、前記式[4]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルに対し、ルイス酸触媒存在下、フッ化水素を用いるフッ素化を行うことにより前記式[1]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)または前記式[2]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を得る工程。
[発明2]
第1工程で用いる脱水剤が、発煙硫酸、三酸化硫黄、濃硫酸、フルオロ硫酸、クロロ硫酸及びトリフルオロメタンスルホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、発明1に記載の製造方法。
[発明3]
第2工程において、光照射における光源が、水銀灯、紫外線LED、有機EL、無機EL、紫外線レーザー及びハロゲンランプからなる群より選ばれる少なくとも1種である、発明1または発明2に記載の製造方法。
[発明4]
第2工程における反応を、反応溶媒の存在下で行う、発明1乃至3の何れかに記載の製造方法。
[発明5]
第3工程で用いるルイス酸触媒が、ホウ素(III)、スズ(II)、スズ(IV)、チタン(IV)、亜鉛(II)、アルミニウム(III)、アンチモン(III)及びアンチモン(V)からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属ハロゲン化物である、発明1乃至4の何れかに記載の製造方法。
[発明6]
第3工程で用いるルイス酸触媒が、四塩化スズ(IV)、四フッ化スズ(IV)、二塩化スズ(II)及び二フッ化スズ(II)からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属ハロゲン化物である、発明5に記載の前記式[1]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)の製造方法。
[発明7]
第3工程で用いるルイス酸触媒が、五塩化アンチモン(V)、五フッ化アンチモン(V)、三塩化アンチモン(III)及び三フッ化アンチモン(III)からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属ハロゲン化物である、発明5に記載の前記式[2]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法。
[発明8]
第3工程において、液相中での反応を、−10℃〜+150℃の温度範囲で、かつ、0.1MPa〜4MPa(絶対圧。以下、本明細書で同じ)の圧力範囲で行う、発明1乃至発明7の何れかに記載の製造方法。
[発明9]
式[4]:
で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルに対し、ルイス酸触媒存在下、フッ化水素を用いるフッ素化を行うことにより式[1]:
で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)または式[2]:
で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を製造する方法。
[発明10]
以下の工程を含む、式[4]:
[発明10]
以下の工程を含む、式[4]:
で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルの製造方法。
[第1工程]
脱水剤の存在下、2,2,2−トリフルオロエタノールに、ホルムアルデヒドと、フッ化水素と、を反応させることにより式[3]:
[第1工程]
脱水剤の存在下、2,2,2−トリフルオロエタノールに、ホルムアルデヒドと、フッ化水素と、を反応させることにより式[3]:
で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルを得る工程。
[第2工程]
第1工程にて得られた、前記式[3]で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルに対し、光照射下、塩素(Cl2)を反応させることにより前記式[4]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルを得る工程。
[発明11]
以下の工程を含む、式[1]:
[第2工程]
第1工程にて得られた、前記式[3]で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルに対し、光照射下、塩素(Cl2)を反応させることにより前記式[4]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルを得る工程。
[発明11]
以下の工程を含む、式[1]:
で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)及び式[2]:
で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を併産する方法。
[第1工程]
脱水剤の存在下、2,2,2−トリフルオロエタノールに、ホルムアルデヒドと、フッ化水素と、を反応させることにより式[3]:
[第1工程]
脱水剤の存在下、2,2,2−トリフルオロエタノールに、ホルムアルデヒドと、フッ化水素と、を反応させることにより式[3]:
で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルを得る工程。
[第2工程]
第1工程にて得られた、前記式[1]で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルに対し、光照射下、塩素(Cl2)を反応させることにより式[4]:
[第2工程]
第1工程にて得られた、前記式[1]で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルに対し、光照射下、塩素(Cl2)を反応させることにより式[4]:
で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルを得る工程。
[第3工程]
第2工程にて得られた、前記式[4]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルに対し、ルイス酸触媒存在下、フッ化水素を用いるフッ素化を行うことにより前記式[1]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)及び前記式[2]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を得る工程。
[第3工程]
第2工程にて得られた、前記式[4]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルに対し、ルイス酸触媒存在下、フッ化水素を用いるフッ素化を行うことにより前記式[1]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)及び前記式[2]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を得る工程。
本発明によれば、入手が容易な2,2,2−トリフルオロエタノールを出発原料とし、取り扱いが簡便で安全な各種試剤を用いて、1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)または1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を効率的に製造できるという効果を奏する。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は以下の実施態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜実施することができる。
本発明は、以下の工程(第1工程から第3工程)を含む。
第1工程:脱水剤の存在下、2,2,2−トリフルオロエタノールに、ホルムアルデヒドと、フッ化水素と、を反応させることにより前記式[3]で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルを得る工程。
第2工程:第1工程にて得られた、前記式[3]で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルに対し、光照射下、塩素(Cl2)を反応させることにより、前記式[4]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルを得る工程。
第3工程:第2工程にて得られた、前記式[4]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルに対し、ルイス酸触媒存在下、フッ化水素を反応させることにより、前記式[1]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)または/及び前記式[2]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を得る工程。
各工程の関係を図示すると、スキーム1の通りとなる。
第1工程:脱水剤の存在下、2,2,2−トリフルオロエタノールに、ホルムアルデヒドと、フッ化水素と、を反応させることにより前記式[3]で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルを得る工程。
第2工程:第1工程にて得られた、前記式[3]で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルに対し、光照射下、塩素(Cl2)を反応させることにより、前記式[4]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルを得る工程。
第3工程:第2工程にて得られた、前記式[4]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルに対し、ルイス酸触媒存在下、フッ化水素を反応させることにより、前記式[1]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)または/及び前記式[2]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を得る工程。
各工程の関係を図示すると、スキーム1の通りとなる。
[第1工程]
最初に第1工程について説明する。第1工程は、脱水剤の存在下、2,2,2−トリフルオロエタノールに、ホルムアルデヒドと、フッ化水素と、を反応させることにより、前記式[3]で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルを得る工程である。
最初に第1工程について説明する。第1工程は、脱水剤の存在下、2,2,2−トリフルオロエタノールに、ホルムアルデヒドと、フッ化水素と、を反応させることにより、前記式[3]で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルを得る工程である。
本工程において使用する原料の2,2,2−トリフルオロエタノールは、市販品(東京化成工業株式会社品、富士フイルム和光純薬株式会社品、シグマアルドリッチジャパン社品等)より容易に調達できる。
本工程のホルムアルデヒドは、単量体は室温(25℃)で無色の気体であり少量の不純物によってただちに重合するため、工業的に使用可能な具体的形態として、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、ホルムアルデヒド水溶液などが挙げられる。
本工程のホルムアルデヒドにおけるパラホルムアルデヒドは、式[5]:
本工程のホルムアルデヒドにおけるパラホルムアルデヒドは、式[5]:
(式[5]中、nは2〜100の整数を表す。)
で表される重合体である。通常、後述するホルムアルデヒド水溶液の水を蒸発乾固することによって得られる。
で表される重合体である。通常、後述するホルムアルデヒド水溶液の水を蒸発乾固することによって得られる。
本工程のホルムアルデヒドにおけるトリオキサンは、ホルムアルデヒドの環状三量体であり、1、3、5−トリオキサンとも呼ばれる。通常、ホルムアルデヒドに酸触媒を反応させることにより得られる。
本工程のホルムアルデヒドにおけるホルムアルデヒド水溶液は、水溶液中ホルムアルデヒドの99%以上が水和物またはオキシメチレングリコールのオリゴマー混合物として存在する。通常、ホルムアルデヒドの濃度は35%〜55%であるが、この範囲外の水溶液であっても本工程で使用することができる。
これらのホルムアルデヒドの中でも、経済性や工業的な入手性を考慮すると、パラホルムアルデヒドを使用することが好ましい。
これらのホルムアルデヒドは、市販されているものをそのまま反応に用いても良いし、加熱処理または酸処理により気体として発生するホルムアルデヒド単量体を反応に用いても良い。操作の簡便性を考慮すると、パラホルムアルデヒドを前処理せずそのまま用いることが好ましい。
本工程におけるホルムアルデヒドの使用量は、2,2,2−トリフルオロエタノールに対し、通常、1当量以上あれば良く、反応を円滑に進行させる為には、1当量から10当量を用いるのが好ましい。反応後の処理操作を考慮すると、1当量から3当量が特に好ましい。
本工程におけるフッ化水素の使用量は、2,2,2−トリフルオロエタノールに対し、通常、1当量以上あれば良く、反応を円滑に進行させる為には、1当量から20当量用いるのが好ましい。さらに、反応後の処理操作を考慮すると、3当量から10当量が特に好ましい。
一方、本工程では、反応試剤であるフッ化水素を過剰量用いることにより、反応試剤として用いるのと同時に、反応を円滑に進める反応溶媒や脱水剤として機能する。
本工程で用いる脱水剤は、発煙硫酸、三酸化硫黄、濃硫酸、フルオロ硫酸、クロロ硫酸及びトリフルオロメタンスルホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これら脱水剤のうち、取り扱いの関係上、発煙硫酸または濃硫酸が特に好ましい。これら脱水剤は反応を促進する働きがある。
本工程で用いる脱水剤の使用量は、2,2,2−トリフルオロエタノールに対し、通常、0.01当量から3当量あれば良く、経済性を考慮すると、0.01当量から2当量用いるのが好ましい。さらに、0.01当量から1当量が特に好ましい。
本工程は、熱的及び化学的に安定な溶媒、例えばフッ素系溶媒を反応溶媒として用いることができる。フッ素系溶媒の中でも、分子中の水素原子全てがフッ素原子に置換されているパーフルオロ化合物が好ましく、パーフルオロブタン、パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン等のパーフルオロアルカンが特に好ましい。反応溶媒は、単独または二種以上を組み合わせて用いることができる。
一方、本工程において、反応溶媒を用いずに実施することが可能であり、反応後の精製操作が簡便となり、より好ましい。
本工程における温度条件は、+5℃から+150℃の範囲で行えば良く、+25℃から+120℃が好ましく、中でも+40℃から+100℃が特に好ましい。
本工程における圧力条件は、0.1MPaから1MPaの範囲で行えば良く、0.1MPaから0.3MPa付近が好ましい。従って、ステンレス鋼(SUS)の様な材質でできた耐圧反応容器やフッ化水素に対する防食性能を有するテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂で容器内部を被覆(ライニング)した耐圧反応容器を用いることができる。
本工程における反応時間は、通常は24時間以内であるが、2,2,2−トリフルオロエタノールと使用したパラホルムアルデヒドやフッ化水素の使用量に起因した反応条件の違いにより、ガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴等の分析手段により反応の進行状況を追跡し、出発基質が殆ど消失した時点を反応の終点とすることが好ましい。
本工程の後処理操作は、反応終了液に対して、水を用いた洗浄など通常の精製操作を実施することにより、目的とする前記式[3]の2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルを容易に得ることができる。目的物は、必要に応じて、活性炭処理、蒸留、カラムクロマトグラフィー等により、さらに高い化学純度品へ精製することができる。
[第2工程]
次に、第2工程について説明する。第2工程は、第1工程にて得られた前記式[3]で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルに対し、光照射下、塩素(Cl2)を反応させることにより、本発明の合成中間体として有用な前記式[4]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルを得る工程である。
次に、第2工程について説明する。第2工程は、第1工程にて得られた前記式[3]で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルに対し、光照射下、塩素(Cl2)を反応させることにより、本発明の合成中間体として有用な前記式[4]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルを得る工程である。
本工程における塩素の使用量は、前記式[3]で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルに対し、0.1当量から6当量の範囲で行えば良く、中でも0.25当量から4当量が好ましく、0.5当量から3当量が特に好ましい。
塩素の使用量に応じて反応基質の塩素化は進行するため、塩素の使用量を適切に制御することで副生物を制御し、目的物である前記式[4]の1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルを選択的に得ることが可能である。
一方、目的物である前記式[4]の1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルの他、反応条件によっては、原料である前記式[3]の2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテル及び低次塩素化物である式[6]:
の2,2,2−トリフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルについても、当該目的物との混合物として残存するが、この混合物は、通常の蒸留操作より、化合物同士の分離が可能であり、別途回収し、塩素化反応の原料として再び利用することができる。このような回収操作を行うことで、本発明の最終的な目的物である1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(前記式[1];イソフルラン)または1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(前記式[2];デスフルラン)を、より効率良く得ることができる。
使用する塩素は気体および液体のどちらであっても良いが、取扱いの容易さの観点から、気体であることが好ましい。反応器への塩素の供給方法は、反応液中に、塩素を供給できる方法であればよく、特に限定されない。例えば、塩素化の反応開始前に、反応容器内に一括で塩素を仕込む方法、塩素化反応の進行中に逐次的に塩素を供給する方法、塩素化反応の進行中に連続的に塩素を供給する方法などがある。また、反応が激しすぎる場合、アルゴンや窒素等の不活性ガスを塩素に混合させながら(すなわち、塩素を不活性ガスで“希釈する”ことを意味する)導入しても良い。
本工程において光照射における光源は、水銀灯、紫外線LED、有機EL、無機EL、紫外線レーザー及びハロゲンランプからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、これらのうち水銀灯または紫外線LEDを用いて行うのが特に好ましい。
本工程における反応を、反応溶媒の存在下で行うことができる。反応溶媒は、水、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、ニトリル系溶媒、スルホキシド系溶媒等が挙げられる。具体例な反応溶媒としては、水、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、プロピオニトリル及びジメチルスルホキシド等であり、これらの反応溶媒は、単独または二種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、反応溶媒として水を用いる場合、蒸気圧の高い化合物である、前記式[3]で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテル、前記式[4]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルの揮発を効果的に抑制することができる。反応効率の向上も期待されるため、好ましい態様の一つである。
本工程で用いる反応溶媒の使用量は、前記式[3]で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテル100質量部に対し、10質量部から1000質量部の範囲で行えば良く、中でも10質量部から500質量部が好ましく、25質量部から250質量部が特に好ましい。
一方、本工程において、反応溶媒を用いずに実施することが可能であり、反応後の精製操作が簡便となるため、より好ましい形態の一つである。
本工程における反応温度は、通常、−50℃から+80℃の範囲で行えば良く、中でも−20℃から+50℃が好ましく、−10℃から+25℃が特に好ましい。反応温度は低温ほど塩素の位置選択性が向上するため、室温以下で反応を実施するのが好ましい。
本工程における圧力条件は、0.05MPa〜1MPaの範囲で行えば良く、0.1MPa〜0.3MPa程度の微加圧の範囲が、より簡便であり好ましい。なお、1MPaを超える圧力で反応を行うことも可能であるが、過剰な圧力条件は設備に負荷がかかるため、前記圧力範囲の中でも大気圧下での反応が好ましい。従って、塩素や副生する塩化水素に対する耐食性を有する石英ガラスやホウケイ酸ガラス等のガラス容器、またはテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂容器を好適に用いることができる。
本工程の反応時間は、通常は12時間以内であるが、ガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴等の分析手段により反応の進行状況を追跡し、出発基質の消失を確認後、反応を終了させることが好ましい。
本工程の方法を採用することによって、原料である前記式[3]で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテル及び目的物である前記式[4]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルのエーテル部位の開裂に由来した不純物の副生を抑制することができる。
反応終了後の後処理操作は、反応終了液に対して通常の蒸留操作を実施することにより、目的とする前記式[4]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルが得られる。必要に応じ、活性炭処理、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等により、さらに高い純度の目的物を得ることが可能である。
一方、前述の通り、反応終了液に対して通常の蒸留操作を実施することにより、原料である前記式[3]で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテル及び低次塩素化物である前記式[6]の2,2,2−トリフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルも容易に分離でき、回収した2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルや2,2,2−トリフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルは再度、塩素化を行うことで、目的物である前記式[4]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルへ誘導することが可能である。
[第3工程]
第3工程について説明する。第3工程は、第2工程にて得られた、前記式[4]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルに対し、ルイス酸触媒存在下、フッ化水素を反応させることにより、前記式[1]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)または/及び前記式[2]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を得る工程である。
第3工程について説明する。第3工程は、第2工程にて得られた、前記式[4]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルに対し、ルイス酸触媒存在下、フッ化水素を反応させることにより、前記式[1]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)または/及び前記式[2]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を得る工程である。
本工程のフッ素化反応により、イソフルランとデスフルランは同時に生成することがあるが、蒸留等の周知の方法により容易に分離してそれぞれを製品として得ることができる。
本工程では、液相中もしくは気相中でフッ素化反応を実施できるが、液相中で行うことがより好ましい。
液相中でフッ素化反応を行う場合、ルイス酸触媒を用いる。ルイス酸は、ホウ素(III)、スズ(II)、スズ(IV)、チタン(IV)、亜鉛(II)、アルミニウム(III)、アンチモン(III)及びアンチモン(V)からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属ハロゲン化物であることが好ましい。中でも、五塩化アンチモン(V)、五フッ化アンチモン(V)、三塩化アンチモン(III)、三フッ化アンチモン(III)、四塩化スズ(IV)、二塩化スズ(II)、四フッ化スズ(IV)及び二フッ化スズ(II)からなる群より選ばれる少なくとも1種のルイス酸触媒が特に好ましい。これらルイス酸触媒は単独または二種以上を組み合わせて使用することができる。
前述の通り、本発明の合成中間体として有用な前記式[4]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルに対し、本工程で特定の反応条件(ルイス酸触媒)を採用することで、1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(前記式[1];イソフルラン)、または1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(前記式[2];デスフルラン)を高選択的に作り分けることができる。
前記式[1]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)を選択的に製造したい場合、ルイス酸は、四塩化スズ(IV)、四フッ化スズ(IV)、二塩化スズ(II)及び二フッ化スズ(II)からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属ハロゲン化物であることがより好ましい。中でも、四塩化スズ(IV)を単独で用いることが特に好ましい。
一方、前記式[2]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を選択的に製造したい場合、ルイス酸は、五塩化アンチモン(V)、五フッ化アンチモン(V)、三塩化アンチモン(III)及び三フッ化アンチモン(III)からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属ハロゲン化物であることがより好ましい。中でも、五塩化アンチモン(V)を単独で用いることが特に好ましい。
本工程におけるルイス酸触媒の使用量は、前記式[4]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテル1モルに対し、1モルあれば十分であり、経済性を考慮すると、0.01モルから0.5モルであり、さらに好ましくは0.01モルから0.25モルである。ルイス酸触媒の使用量が1モルを超えると、高沸点化合物からなるタール生成量が増加するため、目的物である1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(前記式[1];イソフルラン)、または1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(前記式[2];デスフルラン)の収量が低下する傾向がある。
液相中でフッ素化反応を行う場合、フッ化水素の使用量は、前記式[4]で示す1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルに対し、0.2当量から100当量であり、好ましくは0.5当量から50当量であり、さらに好ましくは1当量から10当量である。フッ化水素量が0.2当量未満の場合は、反応における変換率が悪くなる傾向がある。また、フッ化水素量が100当量を超える場合は、経済的な観点から好ましくない。
本工程において、液相中でフッ素化反応を行う場合、溶媒を用いることができる。溶媒としては、エーテル系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、ニトリル系溶媒、スルホキシド系溶媒等が挙げられる。
これらの反応溶媒の具体例としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−ペンタン、n−ノナン、n−デカン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
これらの中でも、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、プロピオニトリルおよびジメチルスルホキシドが好ましく、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリルが特に好ましい。これらの反応溶媒は単独または二種以上を組み合わせて使用することができる。
反応溶媒の使用量としては、特に制限は無いが、前記式[4]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテル100質量部に対し、10質量部から1000質量部の範囲で行えば良く、中でも10質量部から700質量部が好ましく、特に25質量部から400質量部が好ましい。
液相中でフッ素化反応を行う場合、反応温度は、−20℃から+200℃の範囲で行えば良く、中でも−10℃から+150℃が好ましく、0℃から+100℃が特に好ましい。
液相中でフッ素化反応を行う場合、圧力条件は、0.1MPaから6MPaの範囲で行えば良く、0.1MPaから4MPaが好ましく、0.1MPaから2MPaが特に好ましい。
本工程において、液相中での反応を、−10℃〜+150℃の温度範囲で、かつ、0.1MPa〜4MPa(絶対圧)の圧力範囲で行うことは特に好ましい態様の一つである。
本工程で用いる反応容器としては、通常、ステンレス鋼、ハステロイTM、白金等の金属製のものや、四フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、PFA樹脂等で容器内部を被覆(ライニング)したものであり、常圧または加圧下でも十分反応を行うことができる反応容器を用いるのが好ましい。
本工程の方法を採用することによって、原料であるイソフルラン及び目的物であるデスフルランのエーテル部位の開裂に由来した不純物の副生を抑制することができる。
本工程の方法により得られる生成物は、公知の方法で精製することができる。後処理は、反応終了液に対して通常の蒸留操作を実施することにより、目的とするイソフルランやデスフルランの単体を高純度に得ることができる。目的生成物は、必要に応じて、活性炭処理、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、精密蒸留等により、さらに高い化学純度へ精製することができる。
一方、前述した第一工程から第三工程を行うことによって、イソフルラン及びデスフルランを併産することもできる。
[実施例]
[実施例]
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これらの実施態様に限られない。ここで、組成分析値の「%」は、原料または生成物をガスクロマトグラフィー(特に記述のない場合、検出器はFID)によって測定して得られた組成の「面積%」を表す。
圧力計、温度計、攪拌モーターを備えた1000mlのステンレス鋼製(SUS)オートクレーブ反応器内に2,2,2−トリフルオロエタノール100g(1.0mol、1.0当量)、パラホルムアルデヒド40g(1.3mol、1.3当量)、フッ化水素160g(8.0mol、8.0当量)、そして25%発煙硫酸125g(0.4mol、0.4当量)を量り取った。内温60℃まで昇温後、目的物である2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルを抜き出しながら、1時間反応を継続させた。反応終了後、得られた反応粗体を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を用いて中和処理し、純度93%の2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルを97g得た。
[物性値]
式[3]2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテル;
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm): 5.32(2H,d,J=55.2Hz),4.06(2H,dq,J=1.6Hz,8.4Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl3,CFCl3)δ(ppm):−75.2(3F,t,J=7.2Hz),−153.8(1F,t,J=54.5Hz)
式[3]2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテル;
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm): 5.32(2H,d,J=55.2Hz),4.06(2H,dq,J=1.6Hz,8.4Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl3,CFCl3)δ(ppm):−75.2(3F,t,J=7.2Hz),−153.8(1F,t,J=54.5Hz)
冷却管コンデンサーと温度計を備えた500mlのホウケイ酸ガラスの反応容器に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテル180g(1.3mol、1.0当量)、水115gを量り取った。内温2℃まで冷却下、反応器の外側より2Wの紫外線LEDランプにて紫外線を照射しながら、塩素193g(2.7mol、2.0当量)を発熱に注意しながら、8時間かけて導入した。塩素導入後、未反応分の塩素は窒素を用いてパージし、2層分離することで反応粗体225gを得た。得られた反応粗体をガスクロマトグラフィーによる分析へ供すると、目的物である式[4]の1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルは40%、前記式[6]の2,2,2−トリフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテルは21%、そして目的物の位置異性体である2,2,2−トリフルオロエチルフルオロジクロロメチルエーテルは21%であった。その後、理論段数20段の蒸留塔を用いて精密蒸留を行うことで、目的物である1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルを純度90%で得た。
[物性値]
・式[4]1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテル;
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm): 7.09(1H,d,J=59.1Hz),7.05(1H,d,J=56.0Hz),6.17(1H,q,J=4.1Hz),6.06(1H,q,J=3.9Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl3,CFCl3)δ(ppm):−82.7(1F,d,J=57.8Hz),−82.3(1F,d,J=57.8Hz),−80.2(3F,s),−80.1(3F,s)
・式[6]2,2,2−トリフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテル;
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm): 7.05(1H,d,J=57.8Hz),4.27(2H,m)
19F−NMR(400MHz,CDCl3,CFCl3)δ(ppm):−78.1(1F,d,J=57.8Hz),−74.5(3F,t,J=8.7Hz)
・2,2,2−トリフルオロエチルフルオロジクロロメチルエーテル:1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):4.34(2H,q,J=7.9Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl3,CFCl3)δ(ppm):−74.1(3F,t,J=8.7Hz),−13.3(1F,s)
・式[4]1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテル;
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm): 7.09(1H,d,J=59.1Hz),7.05(1H,d,J=56.0Hz),6.17(1H,q,J=4.1Hz),6.06(1H,q,J=3.9Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl3,CFCl3)δ(ppm):−82.7(1F,d,J=57.8Hz),−82.3(1F,d,J=57.8Hz),−80.2(3F,s),−80.1(3F,s)
・式[6]2,2,2−トリフルオロエチルフルオロクロロメチルエーテル;
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm): 7.05(1H,d,J=57.8Hz),4.27(2H,m)
19F−NMR(400MHz,CDCl3,CFCl3)δ(ppm):−78.1(1F,d,J=57.8Hz),−74.5(3F,t,J=8.7Hz)
・2,2,2−トリフルオロエチルフルオロジクロロメチルエーテル:1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):4.34(2H,q,J=7.9Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl3,CFCl3)δ(ppm):−74.1(3F,t,J=8.7Hz),−13.3(1F,s)
攪拌機、圧力計、そして冷却コンデンサーを備え付けた50mLオートクレーブ反応容器(SUS316L製)へ、上式に示す1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテル10g(50mmol、1.0当量)、そして四塩化スズ0.65g(2.5mmol、0.05当量)を速やかに量り取った。氷浴にて冷却後、フッ化水素4g(0.2mol、4.0当量)を一括で仕込み、急な発熱に注意しながら20℃まで徐々に昇温した。次いで、0.20MPa付近の反応圧を維持するため副生する塩化水素は冷却コンデンサーを通して系外に除去しながら、8時間の反応を行った。その後、全ての反応液を氷水へ注ぎ込むことで反応を停止した。得られた反応粗体については、ビス−1,4−トリフルオロベンゼンを内部標準とし、19F−NMRにて目的物の1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフラン)に関する定量収率を算出すると、81%であった。また、1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)に関する定量収率を同様に算出すると、2%であった。反応生成物を蒸留で精製することで、純度99.9%の1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフラン)を得た。
[物性値]
・式[1]1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン);
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):6.02(1H,q,J=4.0Hz), 6.41(1H,t,J=72.0Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl3,CFCl3)δ(ppm):J=−88.6(1F,dd,J=72.3Hz,J=161.7Hz),−87.5(1F,dd,J=72.3Hz,J=161.7Hz),−80.7(3F,s)
・式[2]1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン);
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):5.91(1H,dq,J=2.8Hz,54.2Hz),6.43 (1H,t,J=70.5Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl3,CFCl3)δ(ppm):−146.5(1F,d,J=54.8Hz),−86.8(1F,dd,J=69.3Hz,J=161.7Hz),−85.5(1F,dd,J=69.3Hz,J=161.7Hz),−84.6(3F,s)
・式[1]1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン);
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):6.02(1H,q,J=4.0Hz), 6.41(1H,t,J=72.0Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl3,CFCl3)δ(ppm):J=−88.6(1F,dd,J=72.3Hz,J=161.7Hz),−87.5(1F,dd,J=72.3Hz,J=161.7Hz),−80.7(3F,s)
・式[2]1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン);
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm):5.91(1H,dq,J=2.8Hz,54.2Hz),6.43 (1H,t,J=70.5Hz)
19F−NMR(400MHz,CDCl3,CFCl3)δ(ppm):−146.5(1F,d,J=54.8Hz),−86.8(1F,dd,J=69.3Hz,J=161.7Hz),−85.5(1F,dd,J=69.3Hz,J=161.7Hz),−84.6(3F,s)
攪拌機、圧力計、そして冷却コンデンサーを備え付けた50mLオートクレーブ反応容器(SUS316L製)へ、上式に示す1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテル10g(50mmol、1.0当量)、そして五塩化アンチモン0.75g(2.5mmol、0.05当量)を速やかに量り取った。氷浴にて冷却後、フッ化水素8g(0.4mol、8.0当量)を一括で仕込み、急な発熱に注意しながら20℃まで徐々に昇温した。次いで、0.20MPa付近の反応圧を維持するため副生する塩化水素は冷却コンデンサーを通して系外に除去しながら、8時間の反応を行った。その後、全ての反応液を氷水へ注ぎ込むことで反応を停止した。得られた反応粗体については、ビス−1,4−トリフルオロベンゼンを内部標準とし、19F−NMRにて目的物の1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)に関する定量収率を算出すると、51%であった。また、1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフラン)に関する定量収率を同様に算出すると、19%であった。反応生成物を蒸留で精製することで、純度99.9%の1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を得た。
[比較例1]
[比較例1]
圧力計、温度計、撹拌モーターを備えた1Lのステンレス鋼製(SUS)オートクレーブ反応器内に、2,2,2−トリフルオロエタノール100g(1.0mol、1.0当量)、N−メチルピロリドン40g(0.4mol、0.4当量)、そしてクロロジフルオロメタン87g(1.0mol、1.0当量)を量り取った。氷冷下、50%水酸化ナトリウム水溶液184g(2.3mol、2.3当量)を発熱に注意しながら30℃以下の温度で滴下し、その後、室温にて3時間反応を継続した。反応後、反応液を60℃に加熱し、そのまま蒸留により有機物を反応器から抜き出して66gを回収した。得られた有機物をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、純度99%の2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテルであり、その収率を算出すると43%であった。
[比較例2]
[比較例2]
冷却管コンデンサーと温度計を備えた50mlのホウケイ酸ガラスの反応容器に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の攪拌子を入れ、2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル13g(87mmol、1.0当量)、水2.7g、V70(2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、富士フイルム和光純薬株式会社製)0.27g(0.87mmol、0.01当量)を量り取った。反応器を40℃の水浴に浸け、有機物を還流しながら、塩素6.2g(87mmol、1.0当量)を2時間かけて反応器内へ導入した。塩素導入後、反応液をサンプリングしガスクロマトグラフィーによる分析へ供すると、目的物の1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)は3%、原料の2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテルは96%であった。
[比較例3]
[比較例3]
圧力計を備えた100mLステンレス鋼(SUS304)製オートクレーブ反応器に、1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)7.0g(37.9mmol、1.0当量)、金属フッ化物としてフッ化カリウム3.3g(56.9mmol、1.5当量)、相間移動触媒として18−クラウン−6を0.50g(1.9mmol、0.05当量)、そして反応溶媒としてスルホラン49g(700質量部)を量り取った後、150℃まで昇温することで反応を開始した。昇温後、反応を5時間行ったところ、反応圧力は0.4MPaであった。反応後、反応圧力を冷却により大気圧付近まで降下させた後、反応液を採取し、ビス−1,4−トリフルオロベンゼンを内部標準に用い、19F−NMRによる定量分析を行ったところ、目的物のデスフルランは27%であった。
本発明における対象のハロゲン化エーテル化合物である1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)または1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)は、吸入麻酔剤として有効に利用できる。
Claims (11)
- 以下の工程を含む、式[1]:
[第1工程]
脱水剤の存在下、2,2,2−トリフルオロエタノールに、ホルムアルデヒドと、フッ化水素と、を反応させることにより式[3]:
[第2工程]
第1工程にて得られた、前記式[3]で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルに対し、光照射下、塩素(Cl2)を反応させることにより式[4]:
[第3工程]
第2工程にて得られた、前記式[4]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルに対し、ルイス酸触媒存在下、フッ化水素を用いるフッ素化を行うことにより前記式[1]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)または前記式[2]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を得る工程。 - 第1工程で用いる脱水剤が、発煙硫酸、三酸化硫黄、濃硫酸、フルオロ硫酸、クロロ硫酸及びトリフルオロメタンスルホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の製造方法。
- 第2工程において、光照射における光源が、水銀灯、紫外線LED、有機EL、無機EL、紫外線レーザー及びハロゲンランプからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1または請求項2に記載の製造方法。
- 第2工程における反応を、反応溶媒の存在下で行う、請求項1乃至3の何れかに記載の製造方法。
- 第3工程で用いるルイス酸触媒が、ホウ素(III)、スズ(II)、スズ(IV)、チタン(IV)、亜鉛(II)、アルミニウム(III)、アンチモン(III)及びアンチモン(V)からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属ハロゲン化物である、請求項1乃至4の何れかに記載の製造方法。
- 第3工程で用いるルイス酸触媒が、四塩化スズ(IV)、四フッ化スズ(IV)、二塩化スズ(II)及び二フッ化スズ(II)からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属ハロゲン化物である、請求項5に記載の前記式[1]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)の製造方法。
- 第3工程で用いるルイス酸触媒が、五塩化アンチモン(V)、五フッ化アンチモン(V)、三塩化アンチモン(III)及び三フッ化アンチモン(III)からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属ハロゲン化物である、請求項5に記載の前記式[2]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)の製造方法。
- 第3工程において、液相中での反応を、−10℃〜+150℃の温度範囲で、かつ、0.1MPa〜4MPa(絶対圧)の圧力範囲で行う、請求項1乃至請求項7の何れかに記載の製造方法。
- 以下の工程を含む、式[4]:
[第1工程]
脱水剤の存在下、2,2,2−トリフルオロエタノールに、ホルムアルデヒドと、フッ化水素と、を反応させることにより式[3]:
[第2工程]
第1工程にて得られた、前記式[3]で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルに対し、光照射下、塩素(Cl2)を反応させることにより前記式[4]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルを得る工程。 - 以下の工程を含む、式[1]:
[第1工程]
脱水剤の存在下、2,2,2−トリフルオロエタノールに、パラホルムアルデヒドと、フッ化水素と、を反応させることにより式[3]:
[第2工程]
第1工程にて得られた、前記式[3]で表される2,2,2−トリフルオロエチルフルオロメチルエーテルに対し、光照射下、塩素(Cl2)を反応させることにより式[4]:
[第3工程]
第2工程にて得られた、前記式[4]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルクロロフルオロメチルエーテルに対し、ルイス酸触媒存在下、フッ化水素を用いるフッ素化を行うことにより前記式[1]で表される1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(イソフルラン)及び前記式[2]で表される1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(デスフルラン)を得る工程。
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