JP2017137267A - 環状硫酸エステルの製造方法 - Google Patents

環状硫酸エステルの製造方法 Download PDF

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Ryuichi Okamoto
隆一 岡本
安本 学
Manabu Yasumoto
学 安本
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Abstract

【課題】医農薬中間体として有用な環状硫酸エステルの効率的な製造方法を提供する。
【解決手段】
環状硫酸エステルは、出発原料である1,2−ジオール類を、無機塩基の存在下、スルフリルハライドと反応させることにより製造できる。
更に、1,2−ジオール類に対して特定の反応条件で反応させることで、本発明の目的物である環状硫酸エステルを高い選択率で単離できる好ましい知見を得た。
本発明は、従来から単離にやや難があった環状硫酸エステルを、単一の工程で簡便な作業により高い生産性で環状硫酸エステルの製造ができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、環状硫酸エステルの製造方法に関する。
環状硫酸エステルは医農薬中間体として重要な化合物である。環状硫酸エステルの従来の製造方法として、特許文献1に、1,2−ジオール類に塩化チオニル(SOCl2)を用いて環状亜硫酸エステルに変換し、次いで、該エステルを酸化するといった、2つの工程を経ることにより環状硫酸エステルを製造する方法が開示されている(下記スキーム)。
Figure 2017137267
それに対して、有機塩基の存在下、1,2−ジオール類にスルフリルクロリド(SO2Cl2)を用いて1工程で製造している例もある。例えば、特許文献2に、イミダゾール存在下、1,1,1−トリフルオロ−2,3−プロパンジオールにスルフリルクロリドを反応させて含フッ素環状硫酸エステルを製造する方法が開示されている(下記スキーム)。
Figure 2017137267
一方、特許文献3に、トリエチルアミン存在下、1,1,1−トリフルオロ−2,3−プロパンジオールにスルフリルクロリドを反応させて含フッ素環状硫酸エステルを製造する方法が開示されている(下記スキーム)。
Figure 2017137267
一方、非特許文献1に、1,2−ジオール類に塩化チオニルを反応させ、環状亜硫酸エステルを製造する方法が開示されている。
なお、本出願人は、特許文献4において、(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類前駆体の製造方法において、当該前駆体は、有機塩基の存在下、1,2−ジオール類にスルフリルフルオリド(SO22)を反応させ、対応する環状硫酸エステル体を経由することにより製造できる旨、開示している。
国際公開2008/045419号公報 特開2006−328011号公報 特開2008−230970号公報 国際公開2011/152155号公報
J.Am.Chem.Soc.1988年,110号, p.7538−7539.
本発明の目的は、環状硫酸エステルの工業的な製造方法を提供することにある。
特許文献1に記載の方法、すなわち、1,2−ジオール類を環状亜硫酸エステルに変換し、次いでそれを酸化するという方法は、反応が2工程になり煩雑な作業を要するため、必ずしも工業的な製造には適していなかった。
さて、1,2−ジオール類にスルフリルクロリド等のスルフリルハライドを反応させ、1段階で環状硫酸エステルを製造しようとすると収率が低下してしまうことが知られている。一般的に、環状硫酸エステルの構造はひずみのエネルギーが高いことに起因し、収率が低下してしまう旨、非特許文献1で開示している。
そこで、特許文献2や特許文献3の発明者らは、反応条件を鋭意検討した結果、1,2−ジオール類に対し1段階で環状硫酸エステルを製造できる知見を見出し、該文献でその旨を開示している。
一方、1,2−ジオール類に対し、有機塩基存在下、スルフリルフルオリドを反応させる方法は特許文献4に記載の方法で既に公知であるが、この特許文献4に記載の方法は、生成した環状硫酸エステル体、それ自体は単離できず、該エステル体がフッ化物イオン(F-)による置換反応を受けて開環し、対応するフッ素化体を得ている。このことは、生成した環状硫酸エステルの構造自身が持つひずみのエネルギーが高さ(不安定)に影響され、環状硫酸エステルが更に反応を生じて開環反応が進行したものと推測される(すなわち、不安定な化合物(環状硫酸エステル)から安定な化合物(開環フッ素化物)への変換が進行したものと考えられる)。
そこで、特許文献4の基質について類似の反応条件を採用しても、環状硫酸エステルが仮に生成したとしても開環フッ素化物へ変換され、当該エステルの形で単離できるかどうか、不明であった。
このようなことから、単一の工程かつ簡便な方法による、高い生産性を持つ環状硫酸エステルの製造方法が望まれていた。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、1,2−ジオール類を無機塩基の存在下、スルフリルハライドと反応させることにより、環状硫酸エステルが効率よく製造できることを見出した。
本発明と特許文献4とを照らし合わせた場合、特許文献4に記載の方法は、有機塩基の存在下、1,2−ジオール類にスルフリルフルオリドを反応させているが、副生するフッ化物イオンにより、生成した環状硫酸エステルがフッ素化され、開環フッ素化物を得る反応が主になっており、環状硫酸エステルのみを選択的に得ることはできなかった(例えば、該文献の実施例8参照)。
それに対し、本発明は無機塩基の存在下でスルフリルハライドを反応させることで、不安定な化合物である環状硫酸エステルを、意外にも高い選択率で効率よく製造できる知見を得た。
また、特定の無機塩基、特定の反応溶媒、1,2−ジオール類に対して特定の当量および反応温度で反応させることで、本発明の目的物である環状硫酸エステルを高い選択率で単離できる好ましい知見を得た。
すなわち本発明は、以下の[発明1]から[発明7]を提供する。
[発明1]
一般式[1]:
Figure 2017137267
[式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立にアルキル基または置換アルキル基を表す。]
で表される1,2−ジオール類を、無機塩基の存在下、スルフリルハライドと反応させることにより、一般式[2]:
Figure 2017137267
[式中、R1、R2、R3はそれぞれ一般式[1]と同じ置換基を表す]
で表される環状硫酸エステルを製造する方法。
[発明2]
一般式[3]:
Figure 2017137267
[式中、Meはメチル基を表し、R3はアルキル基または置換アルキル基を表す。P1およびP2はそれぞれヒドロキシル基の保護基を表し、P1とP2は同じ保護基または異なる保護基を採ることができ、さらにP1とP2は同時に1つの保護基を採ることもできる。]
で表される1,2−ジオール類を、無機塩基の存在下、スルフリルハライドと反応させることにより、一般式[4]:
Figure 2017137267
[式中、Meはメチル基を表し、R3とP1、P2はそれぞれ一般式[3]と同じ置換基を表す]
で表される環状硫酸エステルを製造する方法。
[発明3]
一般式[5]:
Figure 2017137267
[式中、Meはメチル基を表し、R4はメチル基またはエチル基を表す]
で表される1,2−ジオール類を、無機塩基の存在下、スルフリルハライドと反応させることにより、一般式[6]:
Figure 2017137267
[式中、Meはメチル基を表し、R4は式[5]と同じ置換基を表す]
で表される環状硫酸エステルを製造する方法。
[発明4]
スルフリルハライドが、スルフリルフルオリドまたはスルフリルクロリドである、発明1乃至3の何れかに記載の製造方法。
[発明5]
無機塩基がアルカリ金属水素化物、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属炭酸水素塩である、発明1乃至4の何れかに記載の製造方法。
[発明6]
アルカリ金属水素化物、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属炭酸水素塩が、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウムまたは炭酸水素セシウムである、発明5に記載の製造方法。
[発明7]
反応溶媒を用い、かつ、該反応溶媒が脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン系、エーテル系、エステル系、アミド系、ニトリル系、スルホキシド系または水である、発明1乃至6の何れかに記載の製造方法。
本発明は、スルフリルハライドと無機塩基とを組み合わせることにより、単一の工程で簡便な作業により高い生産性で環状硫酸エステルの製造ができるという効果を奏する。
本発明の環状硫酸エステルの製造方法について詳細に説明する。
本発明は、一般式[1]で表される1,2−ジオール類を無機塩基の存在下にスルフリルハライドと反応させることにより、一般式[2]で表される環状硫酸エステルを製造する方法である。反応を通してヒドロキシル基が結合した炭素原子の立体化学は保持される。
一般式[1]で表される1,2−ジオール類のR1、R2、R3は、アルキル基または置換アルキル基を表す。アルキル基は、炭素数が1から12の、直鎖または枝分れの鎖式、または環式(炭素数が3以上の場合)を採ることができる。置換アルキル基は、該アルキル基の任意の炭素原子上に、任意の数でさらに任意の組み合わせで置換基を有する。係る置換基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の低級アルコキシ基等が挙げられる。本明細書において"低級"は炭素数が1から6を意味し、直鎖または枝分れの鎖式、または環式(炭素数が3以上の場合)を採ることができる。その中でもR2については、メチル基が特に好ましい。またR3については、炭素数が1から4のアルキル基または置換アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基(一般式[5]および一般式[6]のR4に対応)が特に好ましい。
一般式[3]で表される1,2−ジオール類のP1およびP2は、それぞれヒドロキシル基の保護基を表す。係る保護基としては、Protective Groups in Organic Synthesis、Third Edition、1999、John Wiley & Sons、Inc.に記載されたもの等が挙げられる。P1とP2は同じ保護基または異なる保護基を採ることができ、さらに同時に1つの保護基を採ることもできる。その中でも同時に1つの保護基を採るものが好ましく(下記を参照)、同時にイソプロピリデン基で保護されたもの(本発明では一般式[5]で表される1,2−ジオール類に対応)が特に好ましい。
Figure 2017137267
なお、本発明について、以下に詳細に反応条件を述べるが、一般式[1]で表される1,2−ジオール類だけでなく、当然、一般式[3]並びに一般式[5]で表される1,2−ジオール類についても同様の条件が適用できる。
本発明で用いる無機塩基は、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩又はアルカリ土類金属炭酸水素塩が挙げられる。具体的な化合物としては、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化ルビジウム、水素化セシウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウムが挙げられる。
これらの中でも、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、またはアルカリ土類金属炭酸水素塩が好ましく、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属炭酸塩、またはアルカリ金属炭酸水素塩が特に好ましい。これらのアルカリ金属水素化物、アルカリ金属炭酸塩、またはアルカリ金属炭酸水素塩の具体的な化合物としては、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウムまたは炭酸水素セシウムであるが、これらのうち、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素カリウム、または炭酸水素セシウムが極めて好ましい。
無機塩基の使用量は、一般式[1]で表される1,2−ジオール類1モルに対して0.7モル以上を用いれば良く、0.7から20モルが好ましく、0.7から12モルが特に好ましい。
本発明で用いられるスルフリルハライドの具体的な化合物は、スルフリルフルオリド、スルフリルクロリド、スルフリルブロミドまたはスルフリルヨージド等が挙げられ、これらの中でも実用的な面からスルフリルフルオリドまたはスルフリルクロリドが好ましい。
スルフリルハライドの使用量は、一般式[1]で表される1,2−ジオール類1モルに対して0.7モル以上を用いれば良く、0.8から20モルが好ましく、0.9から15モルが特に好ましい。
反応温度については特に制限はないが、−70〜200℃であればよく、−50〜100℃が好ましく、−30〜80℃が特に好ましい。
本発明では、反応溶媒を用いることができる。反応溶媒としては、脂肪族炭化水素系(n−ヘキサン、n−ヘプタン等)、芳香族炭化水素系(トルエン、キシレン等)、ハロゲン系(塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等)、エーテル系(テトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル等)、エステル系(酢酸エチル、酢酸n−ブチル等)、アミド系(N,N−ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、ニトリル系(アセトニトリル、プロピオニトリル等)、スルホキシド系(ジメチルスルホキシド等)、または水等が挙げられる。
その中でも、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン系、エーテル系、エステル系、アミド系、ニトリル系またはスルホキシド系が好ましく、芳香族炭化水素系、ハロゲン系、エーテル系、エステル系、アミド系またはニトリル系が特に好ましい。
具体的な反応溶媒としてn−ヘプタン、トルエン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリルおよびジメチルスルホキシドが好ましく、トルエン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミドおよびアセトニトリルが特に好ましい。これらの反応溶媒は単独でまたは組み合わせて用いることができる。
反応溶媒の使用量は、一般式[1]で表される1,2−ジオール類1モルに対して0.1L以上を用いれば良く、0.2から30Lが好ましく、0.3から20Lが特に好ましい。
スルフリルハライドを加えて反応させる際の圧力条件としては、例えばスルフリルフルオリドの場合、0.001〜2.0MPa(絶対圧基準。以下、本明細書で同じ。)の範囲で実施すれば良く、0.001〜1.5MPaが好ましく、0.001〜1.0MPaが特に好ましい。圧力が低すぎると反応速度が遅くなり、工業的に採用し難い。一方、圧力が高すぎると反応が速すぎて反応熱によって温度が上昇しすぎることがある。
スルフリルハライドを導入する方法としては特に制限はないが、例えばスルフリルフルオリドの場合、反応液中にディップ管でスルフリルフルオリドを吹き込む方法でも良く、オートクレイブ等の耐圧反応器を用いて系内を密閉できる状態にした上で、ボンベ等からスルフリルフルオリドを導入する方法でも良い。
スルフリルハライドを加えて反応させる際の反応時間としては、特に制限はないが、通常、スルフリルハライドの添加が終了した後、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、NMR等の手段により、生成物の量に変化がなくなった時点を終点とすることが好ましい。
なお、本発明における特に好ましい実施態様を述べる。
本発明については、式[1]で表される1,2−ジオール類の中でも式[3]または式[5]で表されるジオール類を用い、無機塩基として炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウムまたは炭酸水素ナトリウムを用い、該無機塩基の使用量を、上記ジオール類1モルに対して0.7から12モルとし、スルフリルハライドとしてスルフリルフルオリドを用い、該スルフリルフルオリドの使用量を、上記ジオール類1モルに対して0.9から15モルとし、反応温度について−30〜80℃として反応を行うことで、高収率で環状硫酸エステルを製造できる。
反応に使われる反応容器としては特に制限はないが、例えばスルフリルフルオリドを使用する場合、モネル(TM)、ハステロイ(TM)、ニッケル、又はこれらの金属やポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロポリエーテル樹脂などのフッ素樹脂でライニングされた反応容器などが挙げられる。
後処理は有機合成における一般的な操作を採用することにより、一般式[2]で表される環状硫酸エステルを得ることが出来る。粗生成物は必要に応じて活性炭処理、分別蒸留、カラムクロマトグラフィー等により高い純度に精製することが出来る。
本発明で対象とする環状硫酸エステルは、例えば特許文献1等を参照し、下図に示すように開環フッ素化反応とそれに続く加水分解反応、脱保護反応およびラクトン化反応、そしてジベンゾイル化反応により(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類に変換できる。この場合、環状硫酸エステルを単離する後処理操作を省略して(必要に応じて残存するスルフリルフルオリドを反応系外にパージした後に)、該反応終了液に対し直接、開環フッ素化等の反応をワンポット反応として連続的に行うことができる。この場合、環状硫酸エステルを一度単離してから(2R)−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン類に変換する場合に比べてトータル収率の改善が期待できる場合がある。
Figure 2017137267
なお、ここで言う「開環フッ素化反応」については、本発明に記載の方法で製造した環状硫酸エステルに対し、有機塩基存在下、「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」を反応させることにより、「開環フッ素化物と有機塩基との塩」を製造できる。
具体的な反応条件は、特に制限はなく、特許文献1等、公知の方法を参照しながら効率よく開環フッ素化体を製造できる(後述の参考例1)。
[実施例]
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、Etはエチル基を表す。
ここで、生成物の定量(組成比や収率)については、反応混合物を核磁気共鳴分析装置(NMR)によって測定して得られた組成の「モル%」を基に算出した。
50mlのステンレス製オートクレイブ反応器にアセトニトリル(10ml)、下記式:
Figure 2017137267
で表される1,2−ジオール類(5.0g、20.1mmol)と炭酸カリウム(5.8g、42.3mmol)を入れた。次に反応器を氷浴中で15分間かけて冷却し、その温度のままスルフリルフルオリド(3.1g、30.1mmol)をゆっくり導入した。スルフリルフルオリドの導入が終了したら氷浴中で冷却を行いながら、21時間攪拌した。その後、室温まで昇温し、得られた反応液は吸引濾過することで析出していた固体を除去し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮することにより下記式:
Figure 2017137267
で表される環状硫酸エステルの粗生成物を得た。粗生成物を1H−NMR(内部標準法)で定量したところ上記式で表される目的物が17.3mmol含まれていた。収率は86%であった。
1H―NMR(重溶媒:CDCl3、基準物質:テトラメチルシラン)、δppm:1.33(s、3H)、1.34(t、3H)、1.40(s、3H)、1.82(s、3H)、4.07(dd、1H)、4.18(dd、1H)、4.32(q、2H)、4.38(m、1H)、5.06(d、1H)。
この粗生成物を1H−NMR(内部標準法)で定量したところ、該生成物中に下記式:
Figure 2017137267
で表されるフッ素化された生成物は検出されなかった。
50mlのステンレス製オートクレイブ反応器にトルエン(20ml)、下記式:
Figure 2017137267
で表される1,2−ジオール類(5.0g、20.1mmol)と炭酸カリウム(5.8g、42.3mmol)を入れた。次に反応器を氷浴中で15分間かけて冷却し、その温度のままスルフリルフルオリド(3.1g、30.1mmol)をゆっくり導入した。スルフリルフルオリドの導入が終了したらバス温90℃中で加熱を行いながら、7時間攪拌した。その後、室温に戻し、得られた反応液は吸引濾過することで析出していた固体を除去し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮することにより下記式:
Figure 2017137267
で表される環状硫酸エステルの粗生成物を得た。粗生成物を1H−NMR(内部標準法)で定量したところ上記式で表される目的物が14.9mmol含まれていた。収率は74%であった。この粗生成物を1H−NMR(内部標準法)で定量したところ、該生成物中にフッ素化された生成物は検出されなかった。
50mlのステンレス製オートクレイブ反応器に塩化メチレン(20ml)、下記式:
Figure 2017137267
で表される1,2−ジオール類(5.0g、20.1mmol)と炭酸カリウム(5.8g、42.3mmol)を入れた。次に反応器を氷浴中で15分間かけて冷却し、その温度のままスルフリルフルオリド(3.1g、30.1mmol)をゆっくり導入した。スルフリルフルオリドの導入が終了したらバス温40℃中で加熱を行いながら、23時間攪拌した。その後、室温に戻し、得られた反応液は吸引濾過することで析出していた固体を除去し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮することにより下記式:
Figure 2017137267
で表される環状硫酸エステルの粗生成物を得た。粗生成物を1H−NMR(内部標準法)で定量したところ上記式で表される目的物が17.3mmol含まれていた。収率は86%であった。この粗生成物を1H−NMR(内部標準法)で定量したところ、該生成物中にフッ素化された生成物は検出されなかった。
50mlのステンレス製オートクレイブ反応器にトルエン(20ml)、下記式:
Figure 2017137267
で表される1,2−ジオール類(4.7g、20.1mmol)と炭酸カリウム(5.8g、42.3mmol)を入れた。次に反応器を氷浴中で15分間かけて冷却し、その温度のままスルフリルフルオリド(3.1g、30.1mmol)をゆっくり導入した。スルフリルフルオリドの導入が終了したらバス温90℃中で加熱を行いながら、7時間攪拌した。その後、室温に戻し、得られた反応液は吸引濾過することで析出していた固体を除去し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮することにより下記式:
Figure 2017137267
で表される環状硫酸エステルの粗生成物を得た。粗生成物を1H−NMR(内部標準法)で定量したところ上記式で表される目的物が17.8mmol含まれていた。収率は88%であった。
1H―NMR(重溶媒:CDCl3、基準物質:テトラメチルシラン)、δppm:1.33(s、3H)、1.40(s、3H)、1.84(s、3H)、3.69(s、3H)、4.07(dd、1H)、4.18(dd、1H)、4.38(m、1H)、5.07(d、1H)。
この粗生成物を1H−NMR(内部標準法)で定量したところ、該生成物中に下記式:
Figure 2017137267
で表されるフッ素化された生成物は検出されなかった。
温度計保護管と三方コックを備えた50mlガラス反応器にアセトニトリル(10ml)、下記式:
Figure 2017137267
で表される1,2−ジオール類(5.0g、20.1mmol)と炭酸カリウム(5.8g、42.3mmol)を入れた。次に反応器を氷浴中で15分間かけて冷却し、その温度のままスルフリルクロリド(4.1g、30.1mmol)をゆっくり滴下した。スルフリルクロリドの滴下が終了したら氷浴中で冷却を行いながら、16時間攪拌した。その後、室温まで昇温し、得られた反応液は吸引濾過することで析出していた固体を除去し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮することにより下記式:
Figure 2017137267
で表される環状硫酸エステルの粗生成物を得た。粗生成物を1H−NMR(内部標準法)で定量したところ上記式で表される目的物が11.5mmol含まれていた。収率は57%であった。
[比較例1]
温度計保護管と三方コックを備えた50mlガラス反応器に塩化メチレン(10ml)、下記式:
Figure 2017137267
で表される1,2−ジオール類(5.0g、20.1mmol)とジイソプロピルエチルアミン(5.5g、42.3mmol)を入れた。次に反応器を氷浴中で15分間かけて冷却し、その温度のままスルフリルクロリド(4.1g、30.1mmol)をゆっくり滴下した。スルフリルクロリドの滴下が終了したら氷浴中で冷却を行いながら、15時間攪拌した。その後、室温まで昇温し、得られた反応液をロータリーエバポレーターで濃縮することにより下記式:
Figure 2017137267
で表される環状硫酸エステルの粗生成物を得た。粗生成物を1H−NMR(内部標準法)で定量したところ上記式で表される目的物が1.0mmol含まれていた。収率は5%であった。
[参考例1]
温度計保護管と三方コックを備えた50mlガラス反応器に、トルエン(1ml)、トリエチルアミン(2.2g、21.1mmol)、実施例1で得られた下記式:
Figure 2017137267
で表される環状硫酸エステル(1.9g、5.3mmol)を加えて、そこにトリエチルアミン・3フッ化水素(0.85g、5.3mmol)を滴下した。その後、90℃のオイルバスで加熱をして3時間反応を行った。この時の内温は85℃であった。得られた反応液に酢酸エチル(2ml)を加え反応液を均一にした後に19F―NMR(内部標準法)で定量したところ上記式:
Figure 2017137267
で表される目的物が5.1mmol含まれていた。収率は96%であった。
19F―NMR(重溶媒:CDCl3、基準物質:ヘキサフルオロベンゼンを−162.2ppmと設定)、δ ppm;−170.4。
本発明で対象とする環状硫酸エステルは、医農薬における中間体として利用できる。

Claims (7)

  1. 一般式[1]:
    Figure 2017137267
    [式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立にアルキル基または置換アルキル基を表す。]
    で表される1,2−ジオール類を、無機塩基の存在下、スルフリルハライドと反応させることにより、一般式[2]:
    Figure 2017137267
    [式中、R1、R2、R3はそれぞれ一般式[1]と同じ置換基を表す]
    で表される環状硫酸エステルを製造する方法。
  2. 一般式[3]:
    Figure 2017137267
    [式中、Meはメチル基を表し、R3はアルキル基または置換アルキル基を表す。P1およびP2はそれぞれヒドロキシル基の保護基を表し、P1とP2は同じ保護基または異なる保護基を採ることができ、さらにP1とP2は同時に1つの保護基を採ることもできる。]
    で表される1,2−ジオール類を、無機塩基の存在下、スルフリルハライドと反応させることにより、一般式[4]:
    Figure 2017137267
    [式中、Meはメチル基を表し、R3とP1、P2はそれぞれ一般式[3]と同じ置換基を表す]
    で表される環状硫酸エステルを製造する方法。
  3. 一般式[5]:
    Figure 2017137267
    [式中、Meはメチル基を表し、R4はメチル基またはエチル基を表す]
    で表される1,2−ジオール類を、無機塩基の存在下、スルフリルハライドと反応させることにより、一般式[6]:
    Figure 2017137267
    [式中、Meはメチル基を表し、R4は式[5]と同じ置換基を表す]
    で表される環状硫酸エステルを製造する方法。
  4. スルフリルハライドが、スルフリルフルオリドまたはスルフリルクロリドである、請求項1乃至3の何れかに記載の製造方法。
  5. 無機塩基がアルカリ金属水素化物、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属炭酸水素塩である、請求項1乃至4の何れかに記載の製造方法。
  6. アルカリ金属水素化物、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属炭酸水素塩が、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウムまたは炭酸水素セシウムである、請求項5に記載の製造方法。
  7. 反応溶媒を用い、かつ、該反応溶媒が脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン系、エーテル系、エステル系、アミド系、ニトリル系、スルホキシド系または水である、請求項1乃至6の何れかに記載の製造方法。
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