JP4862374B2 - 4,4,4−トリフルオロブテン酸の製造方法 - Google Patents

4,4,4−トリフルオロブテン酸の製造方法 Download PDF

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本発明は医薬、農薬及び含フッ素重合体等の機能性材料の製造原料または合成中間体として有用な、4,4,4−トリフルオロブテン酸の製造方法に関する。
含フッ素カルボン酸化合物は、種々の生理活性が期待できることから、医薬品や農薬としての研究開発がなされている(非特許文献1)。中でも、4,4,4−トリフルオロブテン酸誘導体は機能性材料の製造原料または合成中間体として、含フッ素ケミカル誘導体の重要な中間体である。
従来、4,4,4−トリフルオロブテン酸の製造方法としては、次のものが知られている。
(1)ヨウ化トリフルオロメチルとアクリロニトリルから生成する、4,4,4−トリフルオロクロトニトリルを加水分解することにより製造する方法(特許文献1)。(2)3,3,3−トリフルオロプロピンにシアン化水素を作用させ、4,4,4−トリフルオロクロトニトリルとし、次いで加水分解処理により製造する方法(特許文献2)。(3)3,3,3−トリフルオロプロペンに臭化トリクロロメチルを反応させ、2−ブロモ−1,1,1−トリフルオロ−4,4,4−トリクロロブタンとし、これを硫酸で処理することにより製造する方法(非特許文献2)。(4)ヨウ化トリクロロメチルと、3,3,3−トリフルオロプロペンあるいは3,3,3−トリフルオロプロピンから誘導される1,1,1−トリクロロ−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテンを硫酸で処理することにより製造する方法(非特許文献3)。(5)1−ブロモ−1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエタンから4,4,4−トリフルオロブテナールを合成し、次いでこれをクロム酸酸化に付すことにより製造する方法(非特許文献4)。(6)トリフルオロアセトアルデヒドと酢酸誘導体から得られる4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシブタン酸の脱水により製造する方法(非特許文献5)、(7)トリフルオロアセト酢酸エチルの還元反応、脱水反応、さらに加水分解反応を行うことにより製造する方法(非特許文献6)。
英国特許0772110号明細書 英国特許0772109号明細書 フッ素化学入門 三共出版(2004年) Journal of the American Chemical Society、第76巻、479頁〜481頁 1954年(米国) Journal of the Chemical Society、922頁〜923頁 1953年(英国) Journal of Fluorine Chemistry、第111巻、227頁〜232頁 2001年(英国) Journal of the American Chemical Society、第76巻、3722頁〜3725頁 1954年(米国) Journal of Organic Chemistry、第49巻、1430頁〜1434頁 1984年(米国)
これまで知られている4,4,4−トリフルオロブテン酸類の製造方法は、小規模での実施には好適であるが、大規模での製造に際しては必ずしも満足のいくものではなかった。特許文献1で使用されているヨウ化トリフルオロメチル、特許文献2で使用されている3,3,3-トリフルオロプロピンは高価であり、工業的規模での入手は困難である。さらに特許文献2では大量の取扱いが難しいシアン化化合物を用いる必要がある。
また、非特許文献2および非特許文献3の方法では、反応に臭化トリクロロメチルもしくはヨウ化トリクロロメチルを用いている為、反応後に臭化物塩もしくはヨウ化物塩が副生し、これらの処理に負荷がかかる。また、非特許文献4の方法では、最終工程で大量の取扱いが難しいクロム酸を用いる必要がある。さらに原料に高価な1−ブロモ−1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエタンを用いている。非特許文献5の方法では、4,4,4−トリフルオロブテン酸を製造する際、多段階を要し、原料に高価なトリフルオロアセトアルデヒドを必要とする。非特許文献6の方法では、4,4,4−トリフルオロブテン酸を製造する際、多段階を要し、さらに原料に高価なトリフルオロアセト酢酸エチルを必要とする。
上述のように、4,4,4−トリフルオロブテン酸類を製造するための従来の方法は、高価で入手困難な原料を必要としたり、廃棄が困難な副生物を産出したりするなど、大規模で製造するためには十分な方法とはいえず、改善が求められていた。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた。その過程で、出発原料として1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン類を使用することを発案した。1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン類は工業的に大量に生産されており、従来知られていた4,4,4−トリフルオロブテン酸類を製造するための出発原料と比べ、工業的に非常に安価に入手可能である。
しかしながら、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン類は塩化ビニル骨格を有している。これまでこのような塩化ビニル骨格を有する化合物に対して、パラジウム触媒の存在下、一酸化炭素と水を反応させ、対応するビニルカルボン酸を製造する技術は殆ど知られていない。事実、1−クロロプロペンに対してパラジウム触媒の存在下、一酸化炭素と水を反応させても目的とする2−ブテン酸は得られない(参考例を参照)。以上のことから1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン類に対して、パラジウム触媒の存在下、一酸化炭素と水を反応させ、対応する4,4,4−トリフルオロブテン酸類を製造するのは極めて困難であると予想された。
ところが、驚くべきことに、一般の塩化ビニル骨格を有する化合物とは異なり、式[1]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン類
Figure 0004862374
(式[1]中、R1は水素原子、フッ素原子またはトリフルオロメチル基を表し、R2は水素原子、フッ素原子、または塩素原子を表す)
に関しては、「アンモニア、1級アミン、2級アミンの何れにも該当しない塩基」の存在下、一酸化炭素と水を反応させれば、対応する式[2]で表される4,4,4−トリフルオロブテン酸類
Figure 0004862374
(式[2]中、R1及びR2は式[1]に同じ。)
が、穏和な条件下、得られることを本発明者らは見出した。
本発明者らはさらに、本発明の反応においては、塩基の種類のみならず、溶媒の種類も重要であることを見出し、エーテル系溶媒の存在下、特に高い選択率、収率で、目的とする反応が進行するという事実を見出した。また、好適なパラジウム触媒の種類と量、好適な添加物、好適な水分量、反応温度等を明らかにし、発明の完成に到達した。
本発明の最適の条件に従えば、目的とする4,4,4−トリフルオロブテン酸類を、特に穏和な条件および簡便な操作で、収率良く、しかも廃棄物も少なく製造することが可能である。
すなわち本発明は、次の[発明1]〜[発明9]を骨子とする、4,4,4−トリフルオロブテン酸類の製造方法である。
[発明1]式[1]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン類
Figure 0004862374
(式[1]中、R1は水素原子、フッ素原子またはトリフルオロメチル基を表し、R2は水素原子、フッ素原子、または塩素原子を表す)
に対して、パラジウム触媒及び、「アンモニア、1級アミン、2級アミンの何れにも該当しない塩基」の存在下、一酸化炭素と水を反応させることを特徴とする、式[2]で表される4,4,4−トリフルオロブテン酸類
Figure 0004862374
(式[2]中、R1及びR2は式[1]に同じ。)
の製造方法。
[発明2]式[1]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン類
Figure 0004862374
(式[1]中、R1は水素原子、フッ素原子またはトリフルオロメチル基を表し、R2は水素原子、フッ素原子、または塩素原子を表す)
に対して、パラジウム触媒及び、「(a)三級アミン、(b)含窒素芳香族複素環式化合物、(c)次のイミン骨格
−C=N−C−
を有する有機塩基、(d)無機塩基、からなる群より選ばれる塩基」の存在下、一酸化炭素と水を反応させることを特徴とする、式[2]で表される4,4,4−トリフルオロブテン酸類
Figure 0004862374
(式[2]中、R1及びR2は式[1]に同じ。)
の製造方法。
[発明3]式[1]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン類が、式[3]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン
Figure 0004862374
であることを特徴とする、発明1または発明2に記載の、式[4]で表される、4,4,4−トリフルオロブテン酸
Figure 0004862374
の製造方法。
[発明4]式[3]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン類が、(E)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンであることを特徴とする、発明3に記載の、(E)−4,4,4−トリフルオロブテン酸の製造方法。
[発明5]塩基が、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチルベンジルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンから選ばれる三級アミンであることを特徴とする、発明2乃至発明4の何れかに記載の方法。
[発明6]反応をエーテル系溶媒の共存下で行うことを特徴とする、発明1乃至発明5の何れかに記載の方法。
[発明7]エーテル系溶媒が、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,4−ジオキサンよりなる群から選ばれるものであることを特徴とする、発明6に記載の方法。
[発明8]反応を行う際に、3価のリン化合物を共存させることを特徴とする、発明1乃至発明7の何れかに記載の方法。
[発明9]式[3]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン
Figure 0004862374
に対して、該1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン1モルあたり0.001〜0.05モルのパラジウム触媒、0.001〜0.2モルのトリフェニルホスフィン、1〜3モルのトリエチルアミン、1〜15モルのテトラヒドロフランの共存下、1〜15モルの水、0.5〜1.5MPaの一酸化炭素を、50℃〜120℃の温度範囲で反応させることを特徴とする、式[4]で表される、4,4,4−トリフルオロブテン酸
Figure 0004862374
の製造方法。
本発明によれば、医農薬及び含フッ素重合体等の機能性材料の製造原料、または合成中間体として有用な、式[2]で表される4,4,4−トリフルオロブテン酸を、安価に入手できる式[1]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン類を原料として、穏和な条件および簡便な操作で、収率良く、しかも廃棄物も少なく提供できるという効果を奏する。
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の出発原料である、式[1]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン類としては、具体的には1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1−クロロ−2−フルオロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1−クロロ−2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロペン、1−クロロ−1−フルオロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1−クロロ−1,2−ジフルオロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1−クロロ−1−フルオロ−2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロペン、1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1,1−ジクロロ−2−フルオロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1,1−ジクロロ−2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロペン、などが例示できる。
式[1]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン類のうち、R2がClである場合、本発明のカップリング反応を起こすのは、一方のClのみであり、2個目のClは反応前後を通じて不変に保たれる。このうち、R1が水素原子、またはフッ素原子である場合には、該1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン類のトリフルオロメチル基からみて、シス(Z)位のClと、トランス位(E)のClが存在する。このような基質の場合は、シス位、トランス位の何れか一方のClがカップリングを起こした生成物が、通常2種類得られる。
また、式[1]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン類には、置換基の種類により、立体異性体としてシス体(Z体)及びトランス体(E体)が存在するが、本発明において、出発原料としてこれら立体異性体は特に制限はなく、単一の異性体でも、それぞれの異性体の混合物でも使用できる。
上述した、式[1]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのうち、得られる化合物の有用性や、入手の容易さなどから、HCFC−1233zdとして工業的に生産されている、式[3]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを使用するのが好ましく、このシス体(Z体)及びトランス体(E体)のうちでは、(E)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが特に好ましい。
ここで、出発原料として、式[3]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを出発原料として用いた場合、本発明の反応によって、式[4]で表される、4,4,4−トリフルオロブテン酸が得られる。
出発原料として(E)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを用いた場合、二重結合部位のトランス(E体)の構造は異性化することなく保持したまま、(E)−4,4,4−トリフルオロブテン酸が得られる。
本発明で用いられる塩基は、「アンモニア、1級アミン、2級アミンの何れにも該当しない塩基」である。本発明においては、反応を進めるための塩基として、アンモニア、1級アミン、2級アミンを用いると、目的物がほとんど得られず、望まれない副反応が促進され、本発明の目的を達成することは困難である(比較例1,2を参照)。これら以外の塩基を使用した場合に限って目的物が得られるのが、本発明の特徴である。
本発明の反応に用いる塩基として、より好ましいものは、(a)三級アミン、(b)含窒素芳香族複素環式化合物、(c)次のイミン骨格
−C=N−C−
を有する有機塩基(「イミン系塩基」)、(d)無機塩基、からなる群より選ばれる塩基である。
これらの塩基のうち、(a)〜(c)は有機塩基であるが、何れも含窒素有機塩基であって、N原子に直接結合する水素(プロティックなH原子)が存在しないことに特徴がある。「含窒素芳香族複素環式化合物」とは、芳香族化合物であって、芳香族複素環を構成するヘテロ原子として、少なくとも1つの窒素原子(N)を有しているものをいう。すなわち、該窒素原子(N)は、共鳴構造の中に取り込まれている。
「含窒素芳香族複素環式化合物」としては、単環化合物の他に、環集合化合物、縮合環化合物も含まれる。芳香環を構成する原子数は、通常5〜30であり、5〜18が好ましく、入手が容易で性能も優れることから原子数が6〜10のものが特に好ましい。これらの単環化合物、環集合化合物、縮合環化合物の環上には、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン(F,Cl,Br,I)、ハロゲン置換アルキル基などがさらに置換していてもよい。
上述の(a)〜(d)に該当する塩基としては、特に、水に1mol・dm-3の濃度で溶解したとき(もしくは飽和溶液になったとき)のpHが8以上となる強度を有する塩基が好ましい。これらの塩基の具体例は次の通りである。
(a)三級アミン:トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリス(2−エチルへキシル)アミン、N,N−ジメチルデシルアミン、N−ベンジルジメチルアミン、N−ブチルジメチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N′−ジメチルピペラジン、N−メチルピペコリン、N−メチルピロリドン、N−ビニル−ピロリドン、ビス(2−ジメチルアミノ−エチル)エーテル、N,N,N,N',N''−ペンタメチル−ジエチレントリアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N,N',N',N''−ペンタメチルジプロピレントリアミン、トリス(3−ジメチルアミノプロピル)アミン、テトラメチルイミノ−ビス(プロピルアミン)、N−ジエチル−エタノールアミンなど。
(b)含窒素芳香族複素環式化合物:ピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ルチジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、3−(ジメチルアミノ)プロピルイミダゾール、ピラゾール,フラザン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、プリン、1H−インダゾール、キナゾリン、シンノリン、キノキサリン、フタラジン、プテリジン、フェナントリジン、2,6−ジ−t−ブチルピリジン、2,2'−ビピリジン、4,4'−ジメチル−2,2'−ビピリジル、4,4'−ジメチル−2,2'−ビピリジル、5,5'−ジメチル−2,2'−ビピリジル、6,6'−t−ブチル−2,2'−ジピリジル、4,4'−ジフェニル−2,2'−ビピリジル、1,10−フェナントロリン、2,7−ジメチル−1,10−フェナントロリン、5,6−ジメチル−1,10−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンなど。
(c)イミン系塩基:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エンなど。
(d)無機塩基:アルカリ金属、アルカリ土類金属の水素化物(水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウム、水素化カルシウム等)、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等)、アルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸カルシウム等)、アルカリ金属の炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム等)、アルカリ金属、アルカリ土類金属の酸化物(酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム)など。
これらの塩基は単独で用いても良いが、2種以上の塩基を組み合わせて使用することもできる。
これら塩基のうち、目的とする式[2]で表される、4,4,4−トリフルオロブテン酸の収率を特に高めるためには、(a)〜(c)の有機塩基を使用するのが好ましく、有機塩基の中でも、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチルベンジルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンから選ばれる三級アミンが好ましく、これらの中でも経済性の観点からトリエチルアミンが特に好ましい。
本発明に使用する塩基の量に特別の制限はないが、式[1]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン類1モルに対して、通常0.9〜10モルであり、1〜5モルであることが好ましく、1〜3モルであることがさらに好ましい。塩基が0.9モルより少ないことは、選択率の上では大きな影響はないが、反応変換率が低く、収率の低下につながり、逆に塩基が10モルよりも多いと、経済的に不利になるので、いずれも好ましくない。
本発明には、水が必要である。水の使用量は、式[1]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン類に1モル対して通常0.5〜50モル、好ましくは0.9〜30モル、より好ましくは1〜15モルの範囲である。十分な収率で目的物を得るためには化学量論量(1モル)以上が存在することが望まれる。
本反応は、溶媒を使用して行うことができ、その方が、反応が円滑に進むため、好ましい。反応溶媒としては例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、アセトン等のアルキルケトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても良いが、2種以上の溶媒を組み合わせて使用することもできる。
これらのうち、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類(「エーテル系溶媒」)を反応溶媒として使用すると、反応速度が著しく向上し、特に高い収率で目的物を得られることを本発明者らは見出した。これらエーテル類の中でも、テトラヒドロフランとジイソプロピルエーテルが特に好ましい結果を与える。また、溶媒の量は、試薬が十分量、溶解し、反応が円滑に進行するように、当業者によって最適化できるが、式[1]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン類1gに対し、溶媒の量(上記非プロトン性極性溶媒の量)は0.5〜5gであるのが通常であり、好ましくは0.8〜3g、さらに好ましくは1〜2gである。
尚、上述の「塩基」が液体である場合には、これら塩基(例えばトリエチルアミンなど)が溶媒としての役割も兼ねるため、これらを過剰に用いて溶媒として機能させることもできる。さらに、上述の水(求核試薬)も液体であるので、溶媒として機能を兼ねさせることができる。
本発明の反応における溶媒の種類、組成は当業者が適宜選択できるが、後述の実施例に示すように、水と塩基を1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン類に対し過剰量用い、溶媒としても機能させると共に、上記テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒を1種または2種以上を組み合わせて用いることが特に好ましい。
本発明で用いるパラジウム触媒としては、具体的には、ビス(トリフェニルホスフィン)(ジクロロ)パラジウム、パラジウム担持活性炭、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトナト)パラジウム、PdCl2[P(o−Me−Ph)32、PdCl2[P(m−Me−Ph)32、PdCl2[P(p−Me−Ph)32、PdCl2(PMe32、PdBr2(PPh32、PdCl2〔P(Ph)2CH2CH2P(Ph)2〕、PdCl2〔P(Ph)2CH2CH2CH2CH2P(Ph)2〕、PdCl2(PhCN)2、Pd(CO)(PPh33、PhPdI(PPh32、PhPdBr(PPh32、PhPdBr(PMePh22、PdCl2(PMePh22、PdCl2(PEt2Ph)2、PdCl2(PMe2Ph)2、Pd2Br4(PPh32、等が好ましい。ここでPhはフェニル基、Meはメチル基、Etはエチル基、o−はオルト置換、m−はメタ置換、p−はパラ置換を表す。これらの触媒は単独で用いても良いが、2種以上の触媒を組み合わせて使用することもできる。
これらは何れも満足すべき触媒活性を示すが、安価で取り扱いやすい塩化パラジウム、酢酸パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)(ジクロロ)パラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトナト)パラジウム、パラジウム担持活性炭などのPd触媒が経済的に好ましく、特に塩化パラジウム、酢酸パラジウムが好ましい。
パラジウム触媒の添加量は、式[1]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン類1モル当たり、通常、0.0001〜0.2モルの範囲を適宜選択することができるが、好ましくは0.001〜0.1モルであり、更に好ましくは0.001〜0.05モルである。
本発明はパラジウム触媒のみでも進行するが、助触媒として3価のリン化合物を用いるとパラジウム錯体の活性が維持されやすいため、特に好ましい。ここで助触媒とは、触媒の活性または選択性を増大させるために少量添加される物質をいう。それらとしては、式[5]
3 −(R4 −)P−R5 [5]
(式[5]中、R3 、R4 およびR5 は、同一または相異なるアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはハロゲン原子(F,Cl,BrまたはI)を示す。)で示される化合物が好ましい。ここで、アルキル基、アルコキシ基としては、炭素数1〜8の直鎖または分岐鎖のものが好ましく、アリール基、アルコキシ基としては、無置換のものの他に、芳香環上の任意の位置に、前記アルキル基、アルコキシ基、ハロゲンが置換しているものも好適に使用できる。具体的にはトリ−n−ブチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ−o−トリルホスファイト、三塩化リンなどが例示される。またこの他に、式[6]
(R32P−Q−P(R42 [6]
(式[6]中、R3およびR4は前記と同じ、Qは−(CH2m−(mは1〜8の整数。より好ましくは1〜4の整数。)で表されるアルキレン基を表す)
で表されるホスフィンも好ましい。具体的には1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンなどが例示できる。これらのリン化合物は単独で用いても良いが、2種以上のリン化合物を組み合わせて使用することもできる。
これらのリン化合物使用量は、通常上記の金属触媒1モル当たり、0.5〜50モルの範囲を適宜選択することができる。
ここで言う3価のリン化合物は、それ自身の遊離の化合物でも良く、PdCl2[P(Ph)32などのように、パラジウム触媒にあらかじめ配位子として取り込まれたものでも良く、両者を併用してもよい。
本発明で使用される一酸化炭素は、純粋なガスであっても良いが、必ずしも高純度である必要は無く、窒素ガス、アルゴンガス、炭酸ガスのような不活性ガスで希釈して使用しても良い。反応の効率の観点からは、純粋なガスを使用するのが好ましい。一酸化炭素の使用量は、式[1]で表される1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン類1モルに対して1モル以上あれば良い。
反応は常圧で、一酸化炭素ガスもしくは一酸化炭素希釈ガスを流通させることによっても進行するが、耐圧反応容器を用い、容器を密閉して一酸化炭素ガスの加圧条件で反応を行うのが好ましい。常圧より低い場合には、反応が充分に進行せず、収率低下の原因となり、あるいは、反応速度が低下して反応終了までに長時間を要するなどの問題を生ずる場合があり、好ましくない。
加圧下で反応を行う場合、圧力は、通常、0.1〜10MPa、好ましくは0.1〜5MPa、さらに好ましくは0.5〜1.5MPaとするのがよい。一方、10MPaより高くしても、反応性に際立った向上は見られず、装置の強度が要求されるなど、かえって負担が増すことがある。
通常、反応温度は−50℃〜200℃、好ましくは10℃〜150℃で、さらに好ましくは50℃〜120℃の範囲である。
加圧下で反応を行う際の使用する反応器については、反応時に使用する圧力に耐えるものであれば材質に特に制限は無い、ステンレス鋼、ハステロイ、モネルなどの金属製容器を用いて行うこともできるし、ガラス製容器、グラスライニングや樹脂ライニングされた容器も使用することができる。
本発明の中でも、式[3]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンに対して、該1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン1モルあたり0.001〜0.05モルのパラジウム触媒、0.001〜0.2モルのトリフェニルホスフィン、1〜3モルのトリエチルアミン、1〜15モルのテトラヒドロフランの共存下、1〜15モルの水、0.5〜1.5MPaの一酸化炭素を、50℃〜120℃の温度範囲で反応させ式[4]で表される、4,4,4−トリフルオロブテン酸を製造することは、生成物の有用性及び、目的物を高収率で得られるという点で、特に好ましい態様の1つである。
反応終了後、抽出、蒸留、再結晶等の通常の操作により、式[2]で表される4,4,4−トリフルオロブテン酸を得ることができる。
[実施例]
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されない。ここで、組成分析値の「%」とは、反応物の一部を採取して、ガスクロマトグラフィーもしくは核磁気共鳴(NMR)測定によって測定して得られた「面積%」を表す。
[比較例1](E)−4,4,4−トリフルオロブテン酸の製造(塩基としてアンモニアを使用)
100mLのステンレス製攪拌式耐圧容器に(E)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン10g(77mmol)を加え、28%アンモニア水14.5g(239mmol)、酢酸パラジウム460mg(2.04mmol)、トリフェニルホスフィン1.21g(4.57mmol)を加えた後、一酸化炭素を導入して密封し、攪拌しながら内温を90℃になるまで加熱した。反応中は圧力制御弁を用いて内圧を2MPaで維持し、全圧を2MPaに保つように一酸化炭素を逐次供給しながら64時間攪拌した(変換率100%)。反応液を濾過し、得られた個体をジイソプロピルエーテルで洗浄し、固体を乾燥したところ、目的の(E)−4,4,4−トリフルオロブテン酸は全く生成しておらず、3−アミノ−4,4,4−トリフルオロブタン酸アミド(目的化合物である4,4,4−トリフルオロブテン酸アミドのトリフルオロメチル基のα−位に対してアンモニアが付加した構造の化合物)が収率88%で得られた。
このように、塩基としてアンモニアを使用する場合、副反応が優勢となり、目的化合物を高収率で得るのは困難であることがわかった。
[比較例2](E)−4,4,4−トリフルオロブテン酸の製造(塩基としてジエチルアミンを使用)
5mLのステンレス製攪拌式耐圧容器に(E)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン1.0g(7.7mmol)を加え、ジエチルアミン2.1mL(15.4mmol)、水1.5mL(83.3mmol)、酢酸パラジウム8.6mg(0.039mmol)、トリフェニルホスフィン40.3mg(0.154mmol)を加えた後、一酸化炭素を導入して密封し、攪拌しながら内温を80℃になるまで加熱した。反応中は圧力制御弁を用いて内圧を1MPaで維持し、全圧を1MPaに保つように一酸化炭素を逐次供給しながら15時間攪拌した(変換率100%)。反応液をガスクロマトグラフィー(GC)で分析したところ、目的化合物である4,4,4−トリフルオロブテン酸は全く生成していなかった(選択率0%)。
このように、二級アミンであるジエチルアミンを塩基として使用する場合、多くの副反応が起こり、目的化合物は全く得られなかった。
(E)−4,4,4−トリフルオロブテン酸の製造(塩基としてトリエチルアミンを使用)
5mLのステンレス製攪拌式耐圧容器に(E)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン1.0g(7.7mmol)を加え、トリエチルアミン3.0mL(23.1mmol)、水1.5mL(77.0mmol)、酢酸パラジウム8.6mg(0.039mmol)、トリフェニルホスフィン40.3mg(0.154mmol)を加えた後、一酸化炭素を導入して密封し、攪拌しながら内温を80℃になるまで加熱した。反応中は圧力制御弁を用いて内圧を1MPaで維持し、全圧を1MPaに保つように一酸化炭素を逐次供給しながら16時間攪拌した(変換率30%)。反応液をガスクロマトグラフィー(GC)で分析したところ、目的化合物である4,4,4−トリフルオロブテン酸が25%生成していた(選択率83%)。
(E)−4,4,4−トリフルオロブテン酸の製造(塩基として水酸化ナトリウムを使用:溶媒としてテトラヒドロフランを使用)
3Lのステンレス製攪拌式耐圧容器に(E)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン150.0g(1.15mol)を加え、水酸化ナトリウム92g(2.3mol)、水225g(12.6mol)、テトラヒドロフラン260g(3.8mol)、酢酸パラジウム(II)516mg(2.3mmol)、トリフェニルホスフィン2.41g(9.2mmol)を加えた後、一酸化炭素を導入して密封し、攪拌しながら内温を80℃になるまで加熱した。反応中は圧力制御弁を用いて内圧を1MPaで維持し、全圧を1MPaに保つように一酸化炭素を逐次供給しながら6時間攪拌した(変換率100%、選択率90%)。反応液を室温に戻し、濃塩酸(12M)(200ml)を加え酸性条件にした後、ジイソプロピルエーテル(200ml)で抽出操作を行い、硫酸マグネシウムで乾燥した。次いで、濾過、溶媒留去して、65gの(E)−4,4,4-トリフルオロブテン酸(収率40%、GC純度90%、)を淡黄色固体として得た。
このように、反応溶媒として、テトラヒドロフランを用いることによって、実施例1の高い選択性を維持しつつ、収率が顕著に向上した。
(E)−4,4,4−トリフルオロブテン酸の製造(塩基としてトリエチルアミンを使用:溶媒としてテトラヒドロフランを使用)
3Lのステンレス製攪拌式耐圧容器に(E)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン390.0g(3mol)を加え、トリエチルアミン708g(7.5mol)、水585g(30mol)、テトラヒドロフラン519g(7.5mol)、酢酸パラジウム(II)3.4g(0.015mol)、トリフェニルホスフィン15.7g(0.06mol)を加えた後、一酸化炭素を導入して密封し、攪拌しながら内温を80℃になるまで加熱した。反応中は圧力制御弁を用いて内圧を1MPaで維持し、全圧を1MPaに保つように一酸化炭素を逐次供給しながら8時間攪拌した。8時間後(変換率100%、選択率90%)、反応液を室温に戻し、12M濃塩酸水溶液(600ml)を加え酸性条件にした後、二層分離した有機相を分離しジイソプロピルエーテル(700ml)で抽出操作を行い、硫酸マグネシウムで乾燥後、濾過、溶媒留去を行い、乾燥させることで、384gの(E)−4,4,4-トリフルオロ−2−ブテン酸(収率91%、GC純度90%)を淡黄色固体として得た。
このように、反応溶媒として、テトラヒドロフランを用い、塩基としてトリエチルアミンを用いることによって、実施例1の高い選択性を維持しつつ、収率が顕著に向上した。
[参考例]1−クロロプロペンのカルボキシル化(実施例3と同様の反応条件)
5mLのステンレス製攪拌式耐圧容器に1−クロロプロペン0.585g(7.7mmol)を加え、トリエチルアミン1.1g(19.3mmol)、水1.4g(77.0mmol)、テトラヒドロフラン0.78g(19.3mmol)、酢酸パラジウム86mg(0.39mmol(1−クロロプロペンに対し5mol%))、トリフェニルホスフィン404mg(1.54mmol)を加えた後、一酸化炭素を導入して密封し、攪拌しながら内温を80℃になるまで加熱した。反応中は圧力制御弁を用いて内圧を1MPaで維持し、全圧を1MPaに保つように一酸化炭素を逐次供給できるようにしながら20時間攪拌した。この間一酸化炭素は全く消費されなかった(変換率0%)。反応液をガスクロマトグラフィー(GC)で分析したところ、目的化合物であるクロトン酸は全く生成していなかった(選択率0%)。
このように、フッ素を含まない同様のビニルクロリド基質(1−クロロプロペン)のカルボキシル化は全く進行しないことが確認された。
本発明によれば、安価に入手できる1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを原料として、医薬、農薬及び含フッ素重合体等の機能性材料の製造原料または合成中間体として有用な4,4,4−トリフルオロブテン酸を容易に製造できる。特定の条件下、特に高選択率、高収率で目的物を得ることができる。
図1は、比較例、参考例、実施例における反応の収率を比較したものである。

Claims (9)

  1. 式[1]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン類
    Figure 0004862374
    (式[1]中、R1は水素原子、フッ素原子またはトリフルオロメチル基を表し、R2は水素原子、フッ素原子、または塩素原子を表す)
    に対して、パラジウム触媒及び、「アンモニア、1級アミン、2級アミンの何れにも該当しない塩基」の存在下、一酸化炭素と水を反応させることを特徴とする、式[2]で表される4,4,4−トリフルオロブテン酸類
    Figure 0004862374
    (式[2]中、R1及びR2は式[1]に同じ。)
    の製造方法。
  2. 式[1]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン類
    Figure 0004862374
    (式[1]中、R1は水素原子、フッ素原子またはトリフルオロメチル基を表し、R2は水素原子、フッ素原子、または塩素原子を表す)
    に対して、パラジウム触媒及び、「(a)三級アミン、(b)含窒素芳香族複素環式化合物、(c)次のイミン骨格
    −C=N−C−
    を有する有機塩基、(d)無機塩基、からなる群より選ばれる塩基」の存在下、一酸化炭素と水を反応させることを特徴とする、式[2]で表される4,4,4−トリフルオロブテン酸類
    Figure 0004862374
    (式[2]中、R1及びR2は式[1]に同じ。)
    の製造方法。
  3. 式[1]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン類が、式[3]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン
    Figure 0004862374
    であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の、式[4]で表される、4,4,4−トリフルオロブテン酸
    Figure 0004862374
    の製造方法。
  4. 式[3]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン類が、(E)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンであることを特徴とする、請求項3に記載の、(E)−4,4,4−トリフルオロブテン酸の製造方法。
  5. 塩基が、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチルベンジルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンから選ばれる三級アミンであることを特徴とする、請求項2乃至請求項4の何れかに記載の方法。
  6. 反応をエーテル系溶媒の共存下で行うことを特徴とする、請求項1乃至請求項5の何れかに記載の方法。
  7. エーテル系溶媒が、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,4−ジオキサンよりなる群から選ばれるものであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
  8. 反応を行う際に、3価のリン化合物を共存させることを特徴とする、請求項1乃至請求項7の何れかに記載の方法。
  9. 式[3]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン
    Figure 0004862374
    に対して、該1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン1モルあたり0.001〜0.05モルのパラジウム触媒、0.001〜0.2モルのトリフェニルホスフィン、1〜3モルのトリエチルアミン、1〜15モルのテトラヒドロフランの共存下、1〜15モルの水、0.5〜1.5MPaの一酸化炭素を、50℃〜120℃の温度範囲で反応させることを特徴とする、式[4]で表される、4,4,4−トリフルオロブテン酸
    Figure 0004862374
    の製造方法。
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